JP5807461B2 - 透明性に優れた射出成形品及びその製造方法 - Google Patents
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Description
しかしながら、ポリエステル樹脂から成る延伸成形容器は耐熱性に劣るという欠点があり、内容物を熱間充填する際の熱変形や容積の収縮変形を生じるため、二軸延伸ブロー容器を成形後に高温に設定された金型で熱固定(ヒートセット)する操作が一般的に行われている。
例えば、一段ブロー成形法において、プリフォーム温度を可及的に高温とし、さらに高速で延伸する際の内部摩擦による発熱或いは結晶化による発熱を利用し、延伸成形と熱固定を同時に進行させて、耐熱性の高いポリエステル樹脂から成る延伸ブローボトルを得る方法が提案されている(特許文献1)。
また上記のように高温条件下での歪硬化による延伸バランスを十分にとるために、無機物を配合してなる延伸成形容器においては、高温条件での延伸ブロー成形においても、延伸速度にかかわらず、歪硬化による良好な延伸バランスを備えると共に優れた耐熱性を具備するものであるが、無機物をバランスよくポリエステル中に微分散させることには限界があり、またポリエステルとは屈折率の異なる無機物の存在により透明性が損なわれるという問題があった。
かかる鎖延長剤を配合して成るポリエステル樹脂から成る延伸成形体は、優れた透明性を有すると共に、熱固定に賦さなくても優れた耐熱性を有するものであるが、反応速度が大きく分岐高分子の生成によりゲル化しやすく、結晶化速度を増大させるという問題があり、分子配向を生じやすい射出成形によってプリフォームを成形する際に、射出成形品自体の白化が生じたり、或いは該プリフォームの延伸加工を行う際に加熱による白化が生じやすいという問題を生じることがわかった。
本発明の他の目的は、透明性及び延伸バランスに優れた耐熱性延伸成形容器を成形することが可能な射出成形品を、生産性及び経済性よく成形可能な製造方法を提供することである。
ΔTc1=2ndTc1 ―1stTc1
式中、2ndTc1は5分間加熱溶融後急冷した試料について示差走査熱量計で測定
した結晶化発熱ピークであり、1stTc1は溶融前の試料について示差走査熱
量計で測定した結晶化発熱ピークをそれぞれ表す、
で表されるΔTc1の値が20℃以下であることを特徴とする射出成形品が提供される。
また本発明の射出成形品を延伸成形してなる延伸成形容器は、延伸バランスに優れており、肉厚分布が安定化しているため、座屈強度などの機械的強度に優れていると共に、うねりやヒケなどの外観異常も十分抑制されている。
更に本発明の射出成形品を延伸成形してなる延伸成形容器は、熱固定を行わなくても、優れた耐熱性を有する延伸成形容器を成形できるため、熱固定に起因する金型汚れの発生が防止されており、金型の頻繁な清掃や金型汚れに起因する透明性の低下と言う問題を生じることがなく、また熱固定に要するエネルギーを低減することもできる。
また耐熱用のポリエステル樹脂に比して低廉な汎用ポリエチレンテレフタレート樹脂を用いて、優れた耐熱性を有する容器を提供することができ、生産性、経済性にも優れている。
更にまた、鎖延長剤と共に末端官能基封止剤をポリエステル樹脂に配合することにより、鎖延長剤を配合した場合に起きる結晶化速度の増大を抑制することができるため、耐熱性付与に有効な固有粘度の低いポリエステル樹脂を使用することができ、より高い耐熱性を付与することも可能になる。
本発明の射出成形品のベース樹脂であるPET樹脂は、一般に重量平均分子量が50000〜100000範囲の直鎖状の高分子であるが、かかるPET樹脂中に鎖延長剤を配合することにより、ベース樹脂中にPET樹脂を枝成分とした長鎖分岐構造を有する高分子が生成される。このようなPET樹脂を枝成分とした長鎖分岐構造を有する高分子の中でも、重量平均分子量Mwが3.0×105以上の高分子量成分は、直鎖状の高分子に比して歪の緩和時間が長いことから、ベース樹脂であるPET樹脂よりも高粘度であり、PET樹脂に比して延伸により変形しにくいことから、この長鎖分岐構造を有する高分子成分の周囲のPET樹脂のみが局所的に過延伸され、かかる局所的な過延伸がネッキング伝播に有効に寄与して、高温条件下で高速延伸を行った場合と同様の延伸バランス(肉厚分布の均一性)を発現することが可能になる。
尚、上記重量平均分子量Mwが3.0×105以上の高分子量成分の量が1.0重量%よりも少ない場合には、充分な延伸バランスの改善を図ることができず、その一方あまり多いと射出成形性に劣るようになるので好ましくない。
すなわち、PET樹脂(A)と、このPET樹脂(A)の末端官能基と反応性を有する官能基を持つ鎖延長剤(B)から成り、重量平均分子量Mwが3.0×105以上の高分子量成分を1.0重量%以上の量で含有する樹脂組成物から成り、且つ上記式(1)で表されるΔTc1の値が20℃以下である射出成形品は、ヘイズ(Haze)が2.2%以下と透明性に優れていると共に、延伸バランスにも優れている(実施例1〜5)。
これに対して、PET樹脂(A)と、このPET樹脂(A)の末端官能基と反応性を有する官能基を持つ鎖延長剤(B)から成り、重量平均分子量Mwが3.0×105以上の高分子量成分を1.0重量%以上の量で含有する樹脂組成物からなるが、上記式(1)で表わされるΔTc1が20℃より大きい場合には、透明性に劣っていると共に、加熱中に過度に結晶化が進行してしまい、延伸成形ができない(比較例1,3,4,5)。また上記式(1)で表わされるΔTc1は20℃以下であるが、重量平均分子量Mwが3.0×105以上の高分子量成分を1.0重量%未満の量で含有する樹脂組成物からなる場合には、透明性は優れているものの延伸バランスの悪い成形品しか得られないことが明らかである(比較例2)。
例えば、反応温度を下げる、滞留時間を短くする、鎖延長剤を少量ずつ分けて入れる、鎖延長剤添加後に速やかに攪拌混練して拡散させる、等反応の進行を遅らせる手法や、剪断速度を上げて、長鎖高分子成分を破壊する等の手法によって結晶化速度を制御することができる。
好適には、PET樹脂(A)に該PET樹脂の末端官能基に対する末端官能基封止剤(C)を配合し、次いで該PET樹脂(A)の末端官能基と反応性を有する官能基を持つ鎖延長剤(B)を配合して、溶融混練することにより、重量平均分子量Mwが3.0×105以上の高分子量成分を1.0重量%以上の量で含有する樹脂組成物を調製して、これを用いることが特に望ましい。これにより後述する実施例の結果から明らかなように、透明性及び延伸バランスに優れた延伸成形品が提供できることが明らかである(実施例1〜4及び比較例4)。
本発明の射出成形品の成形に用いるエチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂は、ジカルボン酸成分が、ジカルボン酸成分の50%以上、特に80%以上がテレフタル酸であり、且つジオール成分として、ジオール成分の50%以上、特に80%以上がエチレングリコールであるポリエステル樹脂を用いる。かかるエチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂は、ポリエステル樹脂の中でも機械的性質や熱的性質及び成形加工性をバランス良く満たしている。
ジオール成分としては、ジオール成分の50%以上、特に80%以上がエチレングリコールであることが、機械的性質や熱的性質から好ましく、エチレングリコール以外のジオール成分としては、1,4−ブタンジオール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−へキシレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、グリセロール、トリメチロールプロパン等を挙げることができる。
また、延伸容器に耐熱性を好適に賦与するためには、0.60〜0.80dL/gの範囲の固有粘度を有するエチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂を使用することが望ましい。
さらに、前述した通り、溶融重合樹脂やリサイクル樹脂のような分子量の低いエチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂を使用した場合でも、良好な加工性と優れた耐熱性を賦与することが可能になる。
本発明に用いる鎖延長剤としては、エチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂(A)の末端官能基と反応性を有する官能基を有する鎖延長剤(B)であれば、従来公知のものを使用することができる。
鎖延長剤の、ポリエステル樹脂の末端官能基と鎖延長を伴う反応性を有する官能基としては、エポキシ基、カルボジイミド基、イソシアネート基等を挙げることができる。
鎖延長剤として使用できるエポキシ基含有化合物としては、メタクリル酸グリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル化合物、グリシジルメタクリレート、グリセリンジメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジメタクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)ジメタクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)ジアクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)ジメタクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)ジアクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールジアクリレート等のグリシジルエステル等を挙げることができる。
また上記の鎖延長剤以外にも、オキサゾリン化合物、フェニルカーボネート系またはフェニルエステル系化合物、ラクタム化合物、芳香族テトラカルボン酸無水物等を挙げることができる。
上記エポキシ変性スチレン・(メタ)アクリルコポリマーに使用する、エポキシ官能性(メタ)アクリルモノマーの例としては、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの両方を挙げることができ、これらのモノマーの具体例には、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等の1,2−エポキシ基を含有するモノマーが含まれる。
また非官能性(メタ)アクリル酸モノマーとしては、(メタ)アクリル酸エステルが挙げられ、具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−アミル、(メタ)アクリル酸i−アミル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸n−デシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等が挙げることができる。
非官能性スチレンモノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、o−クロロスチレン、ビニルピリジン、及びこれらの化学種の混合物を挙げることができる。
このような鎖延長剤としては、これに限定されないが、JoncrylADR4370S,4368F/S,4368C/CS,4300(BASF社製)等を挙げることができる。
本発明の射出成形品においては、上述したPET樹脂及び鎖延長剤からなる樹脂組成物の結晶化速度の増大を防止する目的で、PET樹脂の末端官能基、特にカルボキシル基の反応性を制御し得る封止作用を有する末端官能基封止剤を配合することが好適である。
末端官能基封止剤としては、ポリエステル樹脂の末端官能基を封止可能なものである限り、従来公知のものを使用することができ、これに限定されないが、N,N−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジシクロへキシルカルボジイミド、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド、N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド等のモノカルボジイミド及びポリカルボジイミド化合物を含むカルボジイミド化合物、2,2′−m−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−p−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2−フェニル−2−オキサゾリン、スチレン・イソプロペニル−2−オキサゾリン等のオキサゾリン化合物;2−メトキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン等のオキサジン化合物;N−グリシジルフタルイミド、シクロへキセンオキシド、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレートなどのエポキシ化合物等を挙げることができる。
本発明においては、衛生的であると共に、高い反応性を有しながら、高分子量化しないという点で、カルボジイミド化合物から成る末端官能基封止剤を好適に用いることができる。カルボジイミド化合物は、芳香族、脂環族及び脂肪族のいずれでもよい。具体的には、LA−1(日清紡社製)等を用いることができる。
また末端官能基封止剤は、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
本発明の射出成形品においては、PET樹脂(A)、該PET樹脂の末端官能基と反応性を有する官能基を持つ鎖延長剤(B)から成る樹脂組成物を用いること、及びこの樹脂組成物が、重量平均分子量Mwが3.0×105以上の高分子量成分を1.0重量%以上となるように調製することが重要であり、更に末端官能基封止剤(C)を含有することが好適であり、この場合PET樹脂(A)に末端官能基封止剤(C)を配合し、次いで鎖延長剤(B)を配合して、溶融混練することが望ましい。
本発明において、鎖延長剤(B)は、樹脂組成物中10乃至4000ppm、特に100乃至1000ppmと極少量配合することが好ましい。すなわち、本発明においては、延伸成形における伸張粘度が長時間緩和に極めて敏感であることから、鎖延長剤を極少量配合することにより生成する少量の、長鎖分岐構造を有する高分子成分の存在で大きな効果を得ることが可能になるのである。
末端官能基封止剤(C)は、樹脂組成物中100乃至15000ppm、特に100乃至5000ppmの濃度で含有されていることが好ましい。
マスターバッチ調製における溶融混合は、180〜320℃の温度で、PET樹脂(A)及び末端官能基封止剤(C)の溶融混練を、これに限定されないが1秒乃至30分間行った後、鎖延長剤を添加し、1秒乃至30分間混練することが好ましい。
また、末端官能基封止剤(C)を用いない場合は、PET樹脂(A)を押出機に投入して溶融混練し、次いで同一押出機の下流側で鎖延長剤(B)を添加した後、すみやかに鎖延長剤(B)に攪拌混練を加え拡散させるような、スクリュー構成や回転数、吐出量等の成形条件を適用し、更に溶融混合してマスターバッチを製造し、これをPET樹脂に配合することが好ましい。
本発明の射出成形品は、前述したPET樹脂(A)、該PET樹脂の末端官能基と反応性を有する官能基を持つ鎖延長剤(B)から成り、重量平均分子量Mwが3.0×105以上の高分子量成分を1.0重量%以上含有する樹脂組成物を用いる限り、従来公知の射出成形により成形することができる。
このような射出成形品としては、シート、フィルム、カップ、トレイ、プリフォーム、ボトル等、従来公知の種々の成形品を挙げることができる。
また本発明の射出成形品は、前述したPET樹脂(A)及び鎖延長剤(B)から成り、重量平均分子量Mwが3.0×105以上の高分子量成分を1.0重量%以上含有する樹脂組成物から成る層を少なくとも一層有すればよく、該樹脂組成物の単層構造であってもよいし、或いは該樹脂組成物から成る層に他の熱可塑性樹脂層を組み合わせた多層構造とすることもできる。多層構造の場合には、前述したPET樹脂が内外層を構成することが特に好ましい。
また、本発明に用いる上記PET樹脂又は上記ポリエステル樹脂以外の熱可塑性樹脂には、射出成形品、或いはこれを延伸成形して成る延伸成形容器の品質を損なわない範囲で種々の添加剤、例えば、着色剤、紫外線吸収剤、離型剤、滑剤、核剤、及びガスバリア性
上昇のための無機層状化合物などを配合することができる。
本発明の延伸成形容器は、上述した射出成形品を延伸成形することにより製造することができ、特に射出成形により成形されたプリフォームを二軸延伸ブロー成形することにより製造することができる。
本発明においては、110乃至120℃の延伸温度条件で延伸ブロー成形することが好ましい。すなわち、延伸成形物の優れた耐熱性を付与し得る高温延伸条件下では、高速延伸を行わないと延伸バランスが悪化してしまうが、延伸速度を高めることには限界があるため、従来は低残留歪みという高温延伸のメリットを犠牲にして、低温(95乃至105℃)で延伸成形を行っていたが、本発明の射出成形品であるプリフォームを用いることにより、110乃至120℃という高温条件下で延伸する場合にも、延伸速度を可及的に高くすることなく、従来の延伸成形装置を用いて、延伸バランスに優れた延伸形成容器を得ることが可能となるのである。尚、延伸温度、すなわちプリフォームの加熱温度は、延伸ブロー成形される直前のプリフォームの外表面温度であり、放射温度計、熱画像測定器等によって測定することができる。
プリフォームを上記温度に均一且つ高速で加熱するためには、延伸ブローに先立って、プリフォームの内外から熱風、赤外線ヒーター、高周波誘導加熱された鉄芯の内部挿入等の手段で加熱することが好ましい。
また、本発明で得られる低残留歪みと延伸バランスの両立という作用効果は、熱固定によらず得ることができるものであり、本発明の延伸成形容器においては、熱固定を行わなくても、耐熱(熱間充填)用途や、耐熱圧用途容器のような60〜100℃の範囲の温度に対する耐熱性を発現できる。これにより、金型の頻繁な清掃が必要になったり、或いは成形回数が多くなったときの透明性の低下という、熱固定を行うことにより生じる問題が有効に解消されると共に、熱固定に要するエネルギーを低減することができるが、ボイル殺菌や、レトルト殺菌等に対応可能な100℃を超える高温に対する耐熱性を求めるような場合や、耐熱性を有すると共に容器肉厚を薄くして容器の軽量化を図るような場合にまで、熱固定を行うことを排除するものではない。
二軸延伸容器における延伸倍率は、面積倍率で1.5乃至25倍が適当であり、この中でも軸方向延伸倍率を1.2乃至6倍とし、周方向延伸倍率を1.2乃至4.5倍とするのが好ましい。
熱固定後金型からの取り出しに際して冷風で冷却することがハンドリング性の点から望ましい。
また本発明では、延伸ブロー容器において延伸加工がなされている部位の耐熱性を向上できるが、容器口部など成形法上延伸加工がなされない部分においては、肉厚を厚めに設定することや、ブロー成形前に加熱結晶化することなどにより耐熱性を向上させることができる。
実施例にて使用した材料を示す。
(1)ポリエチレンテレフタレート樹脂
PET1:BK6180(日本ユニペット(株)製)、イソフタル酸共重合比率=1.5mol
%共重合PET(IV=0.83)
PET2:RT543CTHP(日本ユニペット(株)製)、HomoPET(IV=0.75)
ADR-4368C(BASF社製)、エポキシ基含有スチレン−アクリル系共重合体。エポキシ当量=286g/mol、重量平均分子量(Mw)=6700、重量平均エポキシ官能基数(1分子中のエポキシ基数)=9〜10個
(3)末端官能基封止剤
LA-1(日清紡ケミカル(株)製)、カルボジイミド化合物。
バレル設定温度を280℃とした造粒設備付帯二軸混練押出機(TEM-26SS:東芝機械(株))を用い、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET1)、鎖延長剤および末端官能基封止剤の濃度比が所定の濃度となるように構成された非晶マスターバッチ樹脂ペレットを作製した。尚、図3及び図4にその概略を示すように、2軸押出機はバレルが10区画化されており、図中Nで示される部分が混練部、それ以外の斜線部分は搬送部である。また図中F1で示される部分がPET樹脂の供給部、F2で示される部分が鎖延長剤の供給部である。
非晶マスターバッチ樹脂ペレットの作製に際して、ポリエチレンテレフタレート樹脂と末端官能基封止剤は最上流のバレル1区画目の材料投入口から一緒に投入するが、鎖延長剤の投入方法としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂および末端官能基封止剤と一緒に投入する同時投入、もしくは120℃に加熱溶融して、上流から6区画目のバレル開口部より投入する逐次投入の二通りで行った。
また、スクリュー構成は、鎖延長剤の投入を行うバレル6区画目から10区画目までの長さをLとした時に、ニーディングゾーンをバレル6区画目から下流側へ0.56Lの位置から、0.11Lの範囲に設定した構成1(図3)及び、ニーディングゾーンをバレル6区画目から下流側へ0.40Lの位置から0.21Lの範囲に設定した構成2(図4)の二通りで行った。
このようにして得られた非晶マスターバッチ樹脂ペレットを150℃4時間真空下にて加熱し、結晶化及び乾燥処理を行った。
鎖延長剤および末端官能基封止剤が所定の濃度となるように、乾燥処理済みのポリエチ
レンテレフタレート樹脂と上記マスターバッチペレットを射出成形機(NN75JS:(
株)新潟鐵工所)のホッパーへ供給し、バレル設定温度を280℃、サイクルタイム36
秒にて射出成形して、90×90×3mmの射出成形板を成形した。
上記射出成形板を二軸延伸試験装置(x6H−S:(株)東洋精機製作所)にて二軸延
伸成形した。成形条件を次に示す。
チャンバー内温度:115℃
延伸前加熱時間:5分30秒
延伸方法:同時二軸延伸
延伸倍率:縦軸3倍、横軸3倍
延伸速度:両方向において、10m/分
上記マスターバッチ樹脂ペレットを乾燥処理済みのポリエチレンテレフタレートと所定の混合比にてドライブレンドしたものを射出成形機(NN75JS:(株)新潟鐵工所)のホッパーへ供給し、バレル設定温度を280℃、サイクルタイム30秒にて射出成形して、重量28g、口径28mmのボトル用プリフォームを成形した。
その後、口部を予め加熱により結晶白化させたプリフォームの胴部を、外側より赤外線ヒーターにて、内部から加熱鉄芯によって、表面温度が115℃となるように加熱した後、二軸延伸ブローして、おおよその延伸倍率が縦3倍、横3倍、面積9倍となる容量500mlの図3に示す延伸ブローボトルを成形した。金型温度は155℃に設定した。また、ブローエアには、室温(20℃)及び140℃の圧縮空気を使用し、離型時には容器内に室温(20℃)のクーリングエアを導入した。
(1)示差走査熱量計によるΔTc1
上記射出成形板の中央部分、または、延伸ブローボトルの底部中心近傍から約5mgサンプル片を切り出し、示差走査熱量計(Diamond DSC:パーキンエルマー社製)にて結晶化温度を測定した。ここで、結晶化温度とは結晶化による発熱がピークに達した温度を指す。以下の(i)〜(iv)の測定条件で一連の測定を行った。
(i)20℃から290℃へ10℃ / 分で昇温
(ii)290℃にて5分間保持
(iii)290℃より20℃へ150℃ / 分で降温
(iv)20℃から290℃へ10℃ / 分で昇温
このうち、(i)において測定される結晶化発熱ピーク温度を1stTc1、(iv)
において測定される結晶化発熱ピーク温度を2ndTc1と定義し、さらに
ΔTc1=2ndTc1―1stTc1
とする。
1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−イソプロパノールとクロロホルムの重量比が10:90の混合溶媒5mlで10mgのサンプル樹脂片を完全に溶解させ、孔径0.45μmのフィルターを通した後、光散乱、示差屈折計、差圧粘度検出器を備えたゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(Integrated System For GPC/SEC:旭テクネイオン(株)製、Triple Detector Module TriSEC Model 302:Viscotek社製)を用いて分析を行った。分析および解析ソフトにはOmniSEC4.2(Viscotek社製)を用い、横軸を累積重量分率、縦軸を重量平均分子量としてプロットし、3.0×105以上の分子量成分の含有率を算出した。測定条件を次に示す。
展開溶媒:クロロホルム
流速:1ml/min.
ガードカラム:TSKguardcolumn HXL−L(東ソー株式会社製)
使用カラム:TSKgel G4000HXLとTSKgel G5000HXLを併用(いずれも東ソー株式会社製)
尚、キャリブレーション用のスタンダードサンプルにはPolyCALTM standards、TDS−PS−NB、Polystyrene standards−ps235kおよびps99k(いずれもviscotek社製)を用いた。
(3−1)ボトルの延伸バランス
予めプリフォームの胴部にネックリングより底部に向かって、油性ペンにより10mm間隔の打点をしておき二軸延伸ブローした。このブローボトルにおいて、胴部における打点間隔が30mm程度に収まり均等であるものを延伸バランス良好(○)と判定した。
(3−2)延伸成形シートの延伸バランス
予め油性インクによって10mm四方の格子が書かれた射出成形板を前記方法に従って二軸延伸成形し、得られた延伸成形シートにおいて格子が均一に引き延ばされているものを○、中央付近が延伸されておらず不均一に伸ばされているものを×とした。なお、加熱中に結晶化が過度に進行し延伸成形不可能だったものは判定を行っていない。
図1及び図2に、良好な延伸バランスが得られたシートの外観の模式図、及び延伸バランスの悪いシートの外観の模式図をそれぞれ示す。
射出成形板及び、成形した延伸ブローボトルの胴部パネル部を切り出した試料のHazeをカラーコンピュータ(SM-4:スガ試験器(株))を用いて測定した。測定値は、任意の3点の平均値をとった。
マスターバッチペレットを作製する際、用いる二軸押出機のスクリュー構成を図3に示す構成1とし、鎖延長剤をバレルの中腹から逐次投入して押し出し成形を行った。そのマスターバッチペレットと乾燥処理済みのポリエチレンテレフタレート樹脂(PET1)を鎖延長剤濃度が1000ppmおよび末端官能基封止剤濃度が4000ppmとなるようにドライブレンドし、射出成形機(NN75JS:(株)新潟鐵工所)のホッパーへ供給し、バレル設定温度を280℃、サイクルタイム36秒にて射出成形して、90×90×3mmの射出成形板を成形した。この成形板のΔTc1、Mw3.0×105以上の分子量成分含有率およびHazeを前記方法に従い測定した。また、この成形板を前記方法に従い二軸延伸成形し、延伸バランスの評価を行った。
末端基封止剤濃度を100ppmにすること以外、実施例1と同様に射出成形板を成形した。この成形板のΔTc1、Mw3.0×105以上の分子量成分含有率およびHazeを前記方法に従い測定した。また、この成形板を前記方法に従い二軸延伸成形し、延伸バランスの評価を行った。
鎖延長剤濃度を20ppmおよび末端基封止剤濃度を100ppmにすること以外、実施例1と同様に射出成形板を成形した。この成形板のΔTc1、Mw3.0×105以上の分子量成分含有率およびHazeを前記方法に従い測定した。また、この成形板を前記方法に従い二軸延伸成形し、延伸バランスの評価を行った。
末端基封止剤濃度を1000ppmにすること以外、実施例1と同様に射出成形板を成形した。この成形板のΔTc1、Mw3.0×105以上の分子量成分含有率およびHazeを前記方法に従い測定した。また、この成形板を前記方法に従い二軸延伸成形し、延伸バランスの評価を行った。
鎖延長剤濃度を5000ppmおよび末端基封止剤濃度を20000ppmにすること以外、実施例1と同様に射出成形板を成形した。この成形板のΔTc1、Mw3.0×105以上の分子量成分含有率およびHazeを前記方法に従い測定した。また、この成形板を前記方法に従い二軸延伸成形し、延伸バランスの評価を行った。
鎖延長剤濃度を9ppmおよび末端基封止剤濃度を4000ppmにすること以外、実施例1と同様に射出成形板を成形した。この成形板のΔTc1、Mw3.0×105以上の分子量成分含有率およびHazeを前記方法に従い測定した。また、この成形板を前記方法に従い二軸延伸成形し、延伸バランスの評価を行った。
鎖延長剤濃度を1000ppmおよび末端基封止剤濃度を90ppmにすること以外、実施例1と同様に射出成形板を成形した。この成形板のΔTc1、Mw3.0×105以上の分子量成分含有率およびHazeを前記方法に従い測定した。また、この成形板を前記方法に従い二軸延伸成形し、延伸バランスの評価を行った。
マスターバッチペレットを作製する際、鎖延長剤をポリエチレンテレフタレート樹脂および末端官能基封止剤と一緒に材料投入口に同時投入すること以外、実施例4と同様に射出成形板を成形した。この成形板のΔTc1、Mw3.0×105以上の分子量成分含有率およびHazeを前記方法に従い測定した。また、この成形板を前記方法に従い二軸延伸成形し、延伸バランスの評価を行った。
前記の各測定の結果を表1に示す。
マスターバッチペレットを作製する際、用いる二軸押出機のスクリュー構成を図4に示す構成2とし、鎖延長剤をバレルの中腹から投入して押し出し成形を行った。そのマスターバッチペレットと乾燥処理済みのポリエチレンテレフタレート樹脂(PET2)を鎖延長剤濃度が1000ppmとなるようにドライブレンドし、射出成形機(NN75JS:(株)新潟鐵工所)のホッパーへ供給し、バレル設定温度を280℃、サイクルタイム36秒にて射出成形して、ボトル用プリフォームを射出成形した後、延伸ブローボトルを成形した。尚、この時のプリフォームの加熱温度、即ち延伸温度を115℃、ブロー金型のヒートセット温度を155℃、ブローエア温度を室温(20℃)に設定した。この延伸ブローボトルのΔTc1、Mw3.0×105以上の分子量成分含有率およびHazeを前記方法に従い測定した。また、延伸バランスの評価を行った。
マスターバッチペレットを作製する際、用いる二軸押出機のスクリュー構成を図3に示す構成1とすること以外、すべて実施例5と同様に延伸ブローボトルを作成した。この延伸ブローボトルのΔTc1、Mw3.0×105以上の分子量成分含有率およびHazeを前記方法に従い測定した。また、延伸バランスの評価を行った。
前記の各測定の結果を表2に示す。
また本発明の射出成形品の製造方法においては、汎用PET樹脂に少量の鎖延長剤及び末端官能基封止剤を配合することにより、適度な分子量の分岐高分子を生成することができると共に、結晶化速度が制御された射出成形品を提供することができ、生産性、経済性にも優れており、大量生産される汎用容器に好適に利用できる。
Claims (3)
- エチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂(A)と、該ポリエステル樹脂(A)の末端官能基と反応性を有する官能基を持つ鎖延長剤(B)から成り、重量平均分子量Mwが3.0×105以上の高分子量成分を1.0重量%以上の量で含有する樹脂組成物から成る射出成形品であって、
前記エチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂(A)に、該ポリエステル樹脂(A)の末端官能基に対するカルボジイミド化合物から成る末端官能基封止剤(C)が100乃至15000ppmの濃度で配合されており、前記鎖延長剤(B)が重量平均エポキシ官能基数が4以上であるエポキシ変性スチレン・(メタ)アクリルコポリマーであり、10乃至4000ppmの濃度で含有されており、
下記式
ΔTc1=2ndTc1―1stTc1
式中、2ndTc1は5分間加熱溶融後急冷した試料について示差走査熱量計で測定
した結晶化発熱ピークであり、1stTc1は溶融前の試料について示差走査熱
量計で測定した結晶化発熱ピークをそれぞれ表す、
で表されるΔTc1の値が20℃以下であることを特徴とする射出成形品。 - エチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂から成る層を有する延伸成形容器であって、請求項1記載の射出成形品を二軸延伸ブロー成形することによって得られる延伸成形容器。
- エチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂(A)に該ポリエステル樹脂(A)の末端官能基に対する末端官能基封止剤(C)を配合し、次いで該ポリエステル樹脂(A)の末端官能基と反応性を有する官能基を持つ鎖延長剤(B)を配合して、溶融混練することにより、重量平均分子量Mwが3.0×105以上の高分子量成分を1.0重量%以上の量で含有する樹脂組成物を調製し、該樹脂組成物を射出成形する射出成形品の製造方法であって、
前記エチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂(A)に、該ポリエステル樹脂(A)の末端官能基に対するカルボジイミド化合物から成る末端官能基封止剤(C)が100乃至15000ppmの濃度で配合されており、前記鎖延長剤(B)が重量平均エポキシ官能基数が4以上であるエポキシ変性スチレン・(メタ)アクリルコポリマーであり、10乃至4000ppmの濃度で含有されていることを特徴とする射出成形品の製造方法。
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