次に、添付図面を参照して本発明の振動式搬送装置の実施形態について詳細に説明する。以下の実施形態は、設置部(架台、支柱部、基台、その他の基盤)の剛性に影響されず、搬送路全長にわたって搬送ムラが少なく、防振機構の挿入によるずれやフラつき(定位の変動)が無い、などの性能を保ちつつ、種々の搬送路の形状と広い質量範囲に適用でき、更に様々な運転周波数にも対応でき、搬送路の設計と調整が現場的で容易であるなど、直線型搬送装置としての機能を最大限に発揮できる構造を追及したものである。
図1に示すように、直進フィーダのような振動搬送機で最も単純なものは、基盤Gに固定されたベース部Bに対して上方に位置する振動体Aの両端を振動方向(図示左右方向)と直交する板ばねD,Dで支持した振動系である。振動体Aを左右いずれかの方向に変位させ、急に離せば板ばねDの変形による弾性エネルギーと速度エネルギーが交換しあって一定の周波数で減衰振動をする。実際の振動式搬送装置では、電磁石や圧電素子などの駆動手段によって振動系の固有周波数に近い周波数で駆動することによって、少ないエネルギーで定常的な振動を持続するようにしている。
一方、図3に示すように、2組の同一の質量及び寸法を備えた振動体AとA′がそれぞれ板ばねDによって支持された振動系があって、振動体AとA′の質量と、これらを支持する板ばねDのばね定数が全く同じで、いずれも板ばねDが共通の強固な基盤G或いはこれに固定されたベース部Bに取り付けられている場合には、振動体AとA′を互いに逆方向つまり逆位相で振動させれば、後に述べるように全ての力が相殺しあい、下のベース部Bや基盤Gには回転モーメントおよび水平方向の駆動力のいずれもが発生しない。したがって、装置を据え付けた架台部には何も振動は伝わらない。これがいわゆる平衡型振動系のモデルである。図4に示す音楽家が調律のために使う音叉も一種の平衡型振動系で、両側の片持梁がお互いに逆位相で曲げ振動をすることで安定した一定周波数の音波を発する。一方の梁(片)を叩くと両側の片が同じ振動数に引き込まれて一定の固有周波数で減衰振動する。
図1に示す一組の振動体Aと板ばねDからなる振動系では、振動による板ばねDの弾性変形による力は振動体Aからベース部Bに伝わり周期的な回転モーメントを発生する。もし図2のようにベース部Bが防振ばねEを有する防振機構により基盤Gから浮動した状態であれば、ベース部Bは周期的に傾いて、縦波を受ける船のように全体がピッチングを起こす。ピッチング運動が発生すると、振動体Aに取り付けた搬送路Tの振動方向が搬送路全長に亘って変化するため、搬送速度が定まらず、搬送の停滞や逆進など、直進フィーダとしての基本的な機能が損なわれる。また、振動体Aの振動による作用力に対しては反作用力が発生するので、ベース部Bには振動体Aと逆の水平方向へ動かす力も発生する。このように図1のような直進フィーダ型の振動系では全体を回転させようとするモーメント力Fmと反作用力に基づく水平方向の力Fhが常に働く。図1のような基本的な形式の直進フィーダも限定的には使われているが、前記のようなモーメント力と反作用力によって変位(変形)しない高い剛性と質量を有する架台部に固定できた時に初めて実用化が可能になる。すなわち、この場合には架台部の強度、剛性によって反作用力を封じ込めている訳であり、振動体Aと搬送路Tが軽くて小さい時はよいが、重くなるほど実用化は困難になる。また、振動工学が教えるとおり、この作用力は運転周波数と振幅量の二乗に比例して増加するので、高い周波数での運転は加速度的に困難になり、極めて頑丈かつ重いベース部Bや基盤Gへの強固な固定が必要になる。
次に、このような基本的なメカニズムを踏まえて、本発明に係る「対称型駆動機構」について説明する。図5は、上記振動モデルの一般的な構成を示すもので、振動ばねDと支持ばねEに振動方向と直交する板ばねがそれぞれ用いられることを示している。図6は本発明に係る振動モデルを示すもので、ベース部Bに対して振動方向(図示左右方向)の二箇所で振動ばねDaによりそれぞれ接続された振動体Aと、ベース部Bに対して振動方向の二箇所で振動ばねDbによりそれぞれ接続された振動体Cとを設け、ベース部Bを振動方向の二箇所で支持ばねEにより支持したものである。図示例ではベース部Bに対して振動体Aと振動体Cを上下対称に配置している。この振動モデルでは、図示左右方向に力を加えると、図7又は図8に示すような態様で振動する。なお、図7及び図8においては、振動体A(及び振動体C)並びにベース部Bが左側に変位した最大振幅時の状態を示し、次の瞬間には右側に移行する時点を表している。
この場合には、振動の位相関係によって異なった動作をする。図7に示すように、上下の振動体AとCが逆位相で動作する場合は、上側の振動体Aと下側の振動体Cは共に反時計回りのモーメントを発生するので両者のモーメントが重なり合ってベース部Bは大きな回転モーメントを受ける。これに対して水平方向への振動力は振動体AとCの振動動作に伴う反力が相殺するのでベース部Bには殆ど作用しない。
次に、上下の振動体AとCが同位相で動作する場合は、図8に示すように、下側の振動体Cの時計回りのモーメントと上側の振動体Aの反時計回りのモーメントとが相殺されて、ベース部Bには回転モーメントが発生しない。但し、水平方向の振動については、振動体AとCの振動動作に伴う反力により、ベース部Bは振動体A及びCとは逆位相の振動力を受ける。後でも触れるようにベース部Bの水平方向への動きは、当該水平方向について剛性の低い支持ばねE(板ばね)で保持すれば架台部への振動伝達は実用上問題ない程度に小さくできる。なお、図8のような同位相での駆動は、図示のような自由な状態では一般に困難で、通常の運転条件では自動的に図7のような逆相運転に入る。
図5〜図8に示す振動モデルでは、2つの振動体AとCをベース部Bに対して対称的に配置して、各々を単に板ばねからなる振動ばねDa,Dbで結合した場合のモデルを示したが、実際の振動搬送機では何らかの駆動機構を組み込まなければ継続的な振動を発生させることはできない。図13〜図20は駆動機構として振動ばねDa、Dbの一部に圧電駆動素子を組み入れたモデルであり、図9〜図11は振動ばねDa,Dbとは別に交流式電磁石により駆動する例である。なお、以下の説明では、上記振動体AとCを合わせたものを第1の質量体1とし、振動体Aを質量部1Aとし、振動体Cを質量部1Bとし、上記ベース部Bを第2の質量体2とする。
まず、圧電駆動体で運転する場合について図13〜図20を参照して説明する。圧電駆動体は、圧電素子の駆動力が向上し信頼性も高くなってきたので、駆動源として普及している。図13に示すように、この振動モデルでは、質量m1の第1の質量体1を二つに分割して質量m1aの質量部1Aと質量m1bの質量部1Bとし、これらの質量部1Aと1Bを、質量m2の第2の質量体2の両側(図示例では上下方向の両側)に配置し、質量部1Aと第2の質量体2の間に図示左右方向である振動方向(実際には搬送方向、以下同様)の二箇所において振動ばね3Aで接続する。また、質量部1Bと第2の質量体2の間に図示左右方向である振動方向の二箇所において振動ばね3Bで接続する。さらに、第2の質量体2は振動方向の二箇所で支持ばね4により支持し、支持ばね4は基盤Gに接続する。このとき、振動ばね3Aを圧電駆動体3Adと増幅ばね3Asが直列に接続されたもので構成し、振動ばね3Bを圧電駆動体3Bdと増幅ばね3Bsが直列に接続されたもので構成する。図示例では、第2の質量体2(の側)に圧電駆動体3Ad、3Bdを接続し、質量部1Aと1B(の側)に増幅ばね3As、3Bsを接続している。
上記圧電駆動体3Ad、3Bdでは、表裏で収縮と膨張が発生するいわゆるバイモルフ型の圧電素子を用い、この圧電素子を厚い鋼製の板材(鋼板)の両側に貼着している。駆動源となる上記鋼板は厚く構成し大きな変形がないようにしているが、これは圧電素子と鋼板との接着が剥離しないようにするためである。ただし、この圧電駆動体3Ad、3Bdだけでは実用的な振動振幅を得られないので、やや薄い板ばねからなる増幅ばね3As、3Bsを中間部に挿入して、この板ばねのバネ定数k3と質量部1A又は質量部1Bの質量m1a、m1bとによって構成される振動系の固有周波数に近い周波数で圧電素子を駆動することで、共振状態を作り出し、効率的に大きな振動振幅を得ることが好ましい。
図13に示す基本構成には、第1の質量体1の質量m1と第2の質量体2の質量m2の質量配分と、圧電駆動部の配置とによって、図14〜図20に示すものなどの種々のバリエーションが考えられる。図14に示すものは、第1の質量体1(質量部1Aと1Bの合計)の質量m1よりも第2の質量体2の質量m2を重くしていわゆる反作用質量体とした第1のタイプとしている。この場合、第2の質量体2の質量m2を重くする方法は特に限定されるものではないが、図示例では、体積を増加させる手法を採るときの一手法として、第2の質量体2を質量部1A及び1Bとの間の搬送方向の前後二箇所の接続箇所の内側で上下に拡張した、拡張部2Aと2Bを有する形状としている。特に、図示例では第2の質量体2が支持ばね4の振動方向の接続箇所の間で拡張した形状に構成されているので、第2の質量体2の重心周りの安定性が向上する。
図15に示す振動モデルでは、第1の質量体1の質量部1Aに搬送路を備えた搬送部tpを設けている。ただし、搬送部tpは、質量部1Aに限らず、質量部1Bに設けてもよい。質量バランス的には第1の質量体1に搬送部tpを設けることが好ましいが、第2の質量体2に設けてもよい。また、図15では、図14に示すものとは逆に、圧電駆動体3Ad、3Bdを質量部1A又は質量部2B(の側)に接続し、増幅ばね3As、3Bsを第2の質量体2(の側)に接続している。圧電駆動部の配置を図13及び図14に示すものとするか、これとは反対の上下外側に配した図15に示すものとするかは、後述するように図17と図18に示すものなどの他の構造例との間の種々の組み合わせで実現可能である。なお、これらのいずれの接続態様を用いることもできる点は他の図示例、実施例でも同様である。これらの組み合わせには夫々若干の長所、短所はあるが、実験的には図8を参照して説明した前述のものと概ね同じような特性を確認できた。但し、圧電駆動部の配置については、圧電駆動体3Ad、3Bdが質量のより大きい質量体(図14及び図15の場合には第2の質量体2、後述する図17及び図18の場合には第1の質量体1、すなわち、質量部1A及び1B)の側に配置されることで、振幅が相対的に小さくなる。したがって、図14及び図18に示す接続態様の方が若干有利である。
前項で説明したように、この構成では上下の質量部1Aと質量部1Bをどんなに注意深く同相駆動しても自然に逆相にシフトするので、図16(a)の側面図及び図16(b)の正面図に示すように、側板等の連結体cbなどにより質量部1Aと質量部1Bを機械的に結合しなければならない。なお、この連結体cbは、後述する第2のタイプのように第2の質量体2に設けた開口部を通過する構造としてもよい。連結体cbは図示例の側板状のものに限られないが、側板状の連結体cbを用いることで第2の質量体2の構造を変えずにこれを回避して質量部1Aと質量部1Bを連結できる。図示例では、連結体cbに振動方向の前後から切り込んだスリットcba、cbbを形成し、その間に振動方向に延長された形状の連結部cbsが構成されるようにしている。これらのスリットcba、cbb(或いは、連結部cbs)は、後述するように、質量部1A及び質量部1Bが振動方向の前後に振れたときに前後方向の位置に応じて変化する相互間の距離(図示例では上下方向の距離)に追従できるようにするための、振動方向には剛性を確保しつつ質量部1Aと1Bを結ぶ方向の剛性を低くして両質量部の間の距離を変更可能にする弾性変形構造である。
図17に示すものは、図14に示すものとは反対に、第1の質量体1の質量部1Aと1Bの合計の質量m1を第2の質量体2の質量m2よりも重くしていわゆる反作用質量体とした第2のタイプとしている。この場合には、質量バランスにより第2の質量体2に搬送路tpを取り付けるようにすることが好ましい。ここで、第1の質量体1を重く構成する手法は前述と同様に何ら限定されるものではないが、図示例では、質量部1A及び質量部1Bを共に第2の質量体2の側(上下両側)に拡張している。
また、前記の第1のタイプと同様に、質量部1Aと質量部1Bが分離していると同相運転に入ってしまう場合があるので、図17に示すように質量部1Aと1Bを機械的に結合している。ここで、図示例では、質量部1Aと1Bが第2の質量体2の側に拡張された部分をそのまま延長し、第2の質量体2の中央に設けた開口部2nを通して一体に構成し、或いは、直接連結している。この例においても、開口部2nを通過する部分に前述と同様のスリット1a、1bが形成され、その間に連結部1sが構成されることにより、質量部1Aと1Bの間の間隔変化に追従できるように構成される。ここで、質量部1Aと1Bが一体に構成され、或いは、直接連結されるため、第1の質量体1は、質量部1Aと1Bの中間部分において、振動方向には剛性を有しつつ相互の間隔が変動する方向の剛性を低くして当該間隔が変化可能となる弾性変形構造を有するものと考えることができる。なお、この第2のタイプにおいても、上記第1のタイプと同様に、質量部1Aと質量部1Bとを直接接続するのではなく、これらとは別の連結体cbを介して連結してもよい。さらに、この連結体cbを図16に示すような側板で構成してもよい。また、図18は前述のように圧電駆動部の配置(圧電駆動体と増幅ばねの接続態様)を図17に示す構造とは逆に構成したものである。
図19に示す構造では、第2の質量体2に搬送部tpを設けている。この構造においては、図20(a)に示すように、第2の質量体2から側枠などで構成される支持体sbを介して搬送部tpを取り付ける。図示例では質量部1Aの上方で支持体sbにより搬送部tpを支持している。この場合、重心合わせのため、支持体sbの下方位置にはカウンターウエイトcwを設けることが好ましい。また、図19及び図20(a)のように上下方向ではなく、図20(b)のように、第2の質量体2の側方に、張り出すように直接に搬送部tpを取り付ければ、全高を抑えてコンパクトに収めることができる。この場合にも、搬送部tpの幅方向の反対側にカウンターウエイトcwを設けることで幅方向のバランスをとることができる。
なお、図15及び図19では説明のために搬送路を備えた搬送部tpを設けた構造を描いているが、これらの図の構造そのものでは振動方向が水平であり部品を搬送路に載せても搬送はできない。実際には、振動ユニット全体を一定の角度だけ傾斜させて設置することで、搬送路を搬送の向きの斜め上方に押し上げるように振動させればよい。また、振動ばね3A、3Bを搬送方向に向けて斜め上方に向くように傾斜姿勢で取り付けたり、圧電駆動体3Ad、3Bdと増幅ばね3As、3Bsとの間に所定厚みのスペーサを介在させたり、振動ばね3A,3Bを複数のばねで構成してその間に所定厚みのスペーサを介在させたりすることによっても、同様に搬送力を生じさせることができる。
次に、上述の各例の振動態様について説明するために、図22に示すように、図13〜図20に示す構造の圧電駆動部と増幅ばね部を一体のリンクアームLAa、LAbとし、その両端を滑らかに動く支軸で結合した振動ユニットの振動モデルを考える。この振動モデルは平行リンク機構であるので、上下の可動部である質量部1Aと1Bが振動方向の前後の中立位置から前後両端の最大振れ位置まで移動すると(図中2点鎖線参照)、質量部1Aと1Bの相互間隔は、中立位置にあるときの間隔P0に対してP1まで小さくなり、上下の可動部である質量部1Aと1Bのそれぞれの上下方向の移動量の2倍の変位が生ずる。この間隔P0とP1の差を吸収するため、図16〜図19に示したスリットを有する連結構造のように、振動の方向には力を伝えるが、上下方向の動きは許す、方向により異なった剛性を有する連結機構により連結するのが望ましい。
上記の連結機構の例として、図23(a)と(b)には、質量部1Aと質量部1Bを中央部で連結する場合の形状バリエーションを示す。図23(a)の連結機構では、質量部1Aと質量部1Bの間に振動方向前後から切り込まれたスリット1aと1bを形成し、両スリット間に振動方向に延長された形状(細幅形状)の弾性変形可能な連結部1sが構成されることにより、第1の質量体1の振動方向の剛性を確保しつつ上下方向の弾性変形を容易にしている。図23(b)の連結機構では、質量部1Aと質量部1Bを振動方向に伸びる延長形状(細長形状)の別部材による弾性連結材1sで接続し、この弾性連結材1sを延長方向(長手方向)には剛性が高く弾性変形しにくく、上下方向(直交方向)には剛性が低く弾性変形しやすくなるように構成し、これによって、第1の質量体1の振動方向の剛性を確保しつつ上下方向の弾性変形を容易にしている。
また、図24(a)〜(c)には、質量部1Aと質量部1Bを両側の側板状の連結体cbで連結する場合(図16に示す場合)の形状バリエーションを挙げる。図24(a)の連結機構では、連結体cbの上下方向の中間部分に振動方向の前後から切り込まれたスリットcba、cbbを形成し、その間に振動方向に伸びる延長形状の弾性変形可能な連結部cbsが設けられることで上下方向の弾性変形を容易にした構造としている。図24(b)の連結機構では、連結体cbに、質量部1Aに固定される下方に頂点を有する三角形状の第1連結部cbAと、質量部1Bに固定される上方に頂点を有する三角形状の第2連結部cbBと、第1連結部cbAの頂点に相当する下端と第2連結部cbBの頂点に相当する上端を接続する振動方向に延長された形状の弾性連結部cbSとを設けている。この構造では、比較的細幅に構成された第1連結部cbAと弾性連結部cbSとの間、第2連結部cbBと弾性連結部cbSとの間の領域で弾性的に屈曲変形が生ずることにより、すなわち、弾性連結部cbSの延長方向が振動方向からずれるように姿勢を変えることにより、第1連結部cbAと第2連結部cbBが上下方向に移動可能となるように構成される。図24(c)の連結機構では、質量部1Aに固定される三角形状の第1連結部cbA′と質量部1Bに固定される第2連結部cbB′を設け、第1連結部cbA′と第2連結部cbB′が頂点同士で接続された構造を有する。この場合にも、四隅の固定穴の横に設けた長孔cboによって、当該長孔cboの両側に弾性変形しやすく構成された、振動方向に延長された形状の部分が構成されるため、振動方向の剛性を確保しつつ上下方向に弾性変形しやすく構成できる。
なお、上記連結部や連結体はいずれも上下方向に弾性変形可能に構成されたものとして質量部1Aと1Bにそれぞれ固定されているが、その代わりに、剛体からなる連結部や連結体を質量部1Aと1Bの少なくともいずれか一方に対して長孔などを利用して上下方向に移動可能に連結するとともに、質量部1Aと1Bの少なくともいずれか一方に対して回動不能に連結される(例えば完全に固定される)ように構成された連結リンクであってもよい。このようにすると、当該連結リンクは、質量体1Aと1Bの上下方向の距離変動を許容しつつ、振動方向には質量体1Aと1Bを同期させるように作用する。本発明に係る連結部は、結果としてこのように作用するものであれば、上述の弾性変形可能な連結部若しくは連結体と上記連結リンクのいずれであっても構わない。
前記のように、第1の質量体1の質量m1と第2の質量体2の質量m2を比較して、軽い質量体の側に搬送部tpを設ける理由は、両質量体1,2の振幅はその質量m1、m2の比に反比例するので、負荷である搬送部tpは軽い側に設けたほうが効率がよいからである。これはニュートンの「運動の第2法則」と、「第3法則(作用・反作用の法則)」によって導かれる。図21に示すような水平面上において基盤Gにばね4(ばね定数k0)で拘束された第2の質量体2と、この第2の質量体2(質量はM2)とばね3(ばね定数k1)で接続された第1の質量体1(質量はm1)とがそれぞれ抵抗無く動く車輪に乗って移動可能に構成されたモデルでは、二つの質量体1と2がそれぞれ自由に動けるので振動工学でいうところの2振動系であり、図13〜図22と同じ振動系と考えられる。ここで、ばね4のばね定数k0を限りなく0とした場合は、ばね3によって第1の質量体1と第2の質量体2は同じ力Fを及ぼしあうので、次の数1に示す角振動数ωを用いると、数2に示す運動方程式が得られる。なお、fは周波数、x1は第1の質量体の振幅(x座標)、x2は第2の質量体2の振幅(x座標)である。これによって、以下の数3に示す関係が成立する。
次に、図9〜図12を参照して、電磁石で駆動するモデルについて説明する。駆動源は上記の圧電素子から電磁石に変えているが、先のモデルと同様に圧電駆動体と増幅ばねの組み合わせを用いることで容易に等価な構成を実現できる。ここで、本モデルでは、図9に示すように、弾性支持構造として、図22のリンクアームに相当する、第1の質量体1の質量部1A(質量=m1a)、1B(質量=m1b)と第2の質量体2(質量=m2)を接続するリンクアームLAa,LAbと、第2の質量体2を基盤Gに接続するリンクアームLA2が振動方向の二箇所でそれぞれ両端の白丸で描いた抵抗の無い回転自在の継ぎ手によって結合されるとともに、第1の質量体1の質量部1A、1Bと第2の質量体2との間のばね要素SRa(ばね定数=ka),SRb(ばね定数=kb)、第2の質量体2と基盤Gとの間のばね要素SR2(ばね定数=k0)によって各質量部1A,1Bと第2の質量体2が概ね水平方向に弾性的に保持されている。なお、図9の上記構造は実際の構成とは異なり等価構造を図示しているが、実際の製品は振動方向と直交する板ばね(振動ばね)によってリンクアームの水平方向の動きとばね要素の付与を併せて行うだけで、働きは同じである。なお、ばね要素SR2のばね定数k0は、ばね要素SRa,SRbのばね定数ka,kbに比べてはるかに弱いばね定数とし、系全体の固有周波数を、ばね要素ka、kbと質量m1a、m1b、m2で構成される振動ユニットによって発生する振動周波数に対して、1/10以下に抑えるようにすることが好ましい。
図9に示すモデルにおいては、質量部1A、1Bを鉄などの強磁性体で作り、第2の質量体2に固定した電磁石Mga、Mgbに交番電圧を印加すれば、空隙を介して間歇的に吸引するので3つの質量体はお互いに振動する。図13〜図22を参照して説明したとおり、質量部1Aと1Bがフリーの状態では殆ど図9の矢印のように上下逆相で振動する。たとえ電磁石Mga、Mgbを同相で駆動しても同相で動くことは難しい。図7及び図8を参照して説明した内容と同様に、上下逆相で振動する場合にはピッチング振動が発生し、リンクアームLAa、LAbには図矢印のように左右逆方向のプッシュ・プル力が働き、第2の質量体2を介して基盤G(架台部)を強く揺らすことになる。
これに対して、図10に示すモデルでは、第2の質量体2の外側を通って、或いは、図12に示すように第2の質量体2に設けられた開口部2nを貫通して、連結部cbなどを介して、或いは、直接に、質量部1Aと質量部1Bが機械的に結合されている。これにより、質量部1Aと1Bは互いに違う方向に動くことは出来ず、電磁石Mga、Mgbを同相で駆動すれば、同相で運転を継続できる。これにより、前記のようなピッチング力は発生しなくなる。水平方向には反作用による振動が発生するが、リンクアームLAa、LAbと弱いばね要素SR2によって基盤G(架台部)への伝達は殆ど問題なく遮断することができる。この場合、図示していないが、図23及び図24を参照して説明したように、水平方向(振動方向)の力は伝えるが、上下方向には剛性を下げた連結構造で質量部1Aと1Bを結合するのが望ましい。これが無いと特に振幅が大きくなった場合、リンク機構(実際には板ばね)に大きな負担がかかるので運転効率と寿命の点で問題が発生する。なお、図9〜図12に示す各実施例でも上記連結リンクのような構造を用いることができることは勿論である。
このように、上下の質量部1Aと1Bを連結した構造では、図11に示すように電磁石Mga(Mgbでもよい。)を一つだけ用いて駆動した場合、機械的な対称性は崩れるものの、下側に適当なカウンターウエイトとして例えば電磁石Mgaと同質量のおもり(図示せず。)を着けて対称性を確保すれば、動作の対称性が損なわれることはない。電磁石での吸引駆動は、振動のトリガーのように作用するので、駆動力の多少のアンバランスは問題にならない。但し、一つの電磁石Mgaのみを用いると振動エネルギーとしては半減するので、必要な振幅値を確保できるか確認する必要がある。
駆動力としては色々なものが考えられるが、例えば図12に示すような空気圧によって往復運動するピストンpsを第2の質量体2の一部にシリンダーcdと共に組み込めば、電磁石と同様にこの振動系を駆動できる。この場合には、電磁バルブによって空気圧の供給方向を一定の周波数で切り替えることで共振駆動、または強制駆動で所要の振動を得ることができる。空気圧を加えるだけで自動的に往復運動を継続するフリーピストンタイプもあるのでこれを使えば制御機構は不要になる。
次に、この対称型駆動機構の振動式搬送装置を運転する際に最も重要な重心位置とその調整等について説明する。ここまで説明した本発明の種々のタイプを試作実験したところ、従来機に比べいずれも優れた性能を発揮することを確認できたが、性能の鍵を握るのは重心位置であり、その調整に尽きるといっても過言ではない。そこで、次に、図6〜図20によって説明してきた対称型駆動機構の重心について詳細に考察してみる。
例えば、図13に示す振動モデルにおいては、第1の質量体1の質量部1Aと質量部1Bが同質量(m1a=m1b)で、第2の質量体2からみて質量部1Aと質量部1Bの重心位置が対称的な等距離にあり、更に振動方向(図示左右方向に対応する水平方向)にみても、また、幅方向(紙面と直交する方向に対応する水平方向)にみても、各重心位置が中心点にあるという前提で考えている。また、第2の質量体2の重心が図示のように振動方向、幅方向、上下方向の各方向について対称の位置に存在する(縦・横・高さの中央の点対称位置に重心がある)という条件においては、質量部1Aと質量部1Bを合成した重心位置は言うまでもなく中心点にくるので第2の質量体2の重心位置と合致する。このような条件であればこれまでの説明のように、振動に伴うモーメントアームがゼロとなり、モーメント力は上下の質量部1A、1Bの振動により完全に相殺されるので、第2の質量体2には水平方向の反力のみが加わり、この反力のみにより第2の質量体2が振動する。この動きは両端の支持板(ばね要素4に対応する防振ばね、振動方向には剛性が小さいもの。)により容易に逃がすことができるので、架台(基盤)への有害なピッチング振動などの伝達を劇的に減少させることができる。
ピッチング振動については前記のとおりであるが、振動の伝達ということを逆からみれば、本発明の振動系自体がその系の中で振動に伴う回転モーメント力を相殺して発生させないということであり、その結果、架台への固定方法を選ばないということになり、極端には何も固定しない浮動状態でも完全に動作することを意味する。このことは評価テストの中でも実証しており、包装材のキャップロール(エア入り突起付梱包材)等に載せただけで、また反対に硬いコンクリートの床にベース部をがっちりと直接固定しても、その搬送状態に変化はない。
図13を参照して説明したように、第2の質量体2については、構造体の3次元的な中心点に対して点対称に各部材を配し、徹底した直交形状の設計を行うことにより、機械加工が容易になるとともに、これにより加工精度も向上する。また、結果的に重心位置も3次元的な中心点に持ってくるようにしているので総合的な重心の調整と検証が容易になる。しかしながら、本考案の原理に照らせば、重心位置は必ずしも中心点でなくともよい。図26(a)は振動方向に対して直交する断面上に質量部1A、1B及び第2の質量体2の重心位置1ga、1gb、2gが配置される場合について、当該断面上の各部の配置を示す模式図である。第1の質量体1の質量部1A、質量部1Bの重心位置1ga、1gbが共に図の右方にシフトした場合であっても、第2の質量体2の重心位置2gもそこへシフトすれば何も問題はない。更に、第1の質量体1の質量部1A、1Bの重心位置1gaと1gbを結んだ線が振動方向に沿った水平な面P2(後述)と直交しないで、図26(b)のように斜めに交差する場合であっても、第2の質量体2の重心位置2gが質量部1Aの重心位置1gaと質量部1Bの重心位置1gbを結んだ線Lab上に存在すれば問題はない。また、この線Labを大きく倒して、幅方向(振動方向と直交する水平方向)に質量部1A、質量部1Bの重心位置1ga、1gbを配した横型構造にした場合でも問題はないことになる。
一方、図26(c)のように、質量部1Aと質量部1Bの重心位置1gaと1gbは必ずしも第2の質量体2の重心位置2gから等距離、等質量でなくてもよい場合がある。異なる質量の質量部1Aと質量部1Bを合成した重心位置は、各質量部の重心点1gaと1gbを結んだ線上で、かつ、各質量部の質量m1aとm1bに反比例して按分した位置に来るので、そこに第2の質量体2の重心位置2gが在ればこれも問題はない。すなわち、重心位置1gaと2gの距離をSa、重心位置1gbと2gの距離をSbとしたとき、m1a×Sa=m1b×Sb、つまり、m1a/m2b=Sb/Saが成立すれば、上記と等価な状況となる。
更に、実物は3次元の物体であるので、その重心位置については、図26(a)〜(c)に示す振動方向と直交する断面上の2次元的な重心位置の考察だけでは十分ではない。図26の2次元的な配置に加えて、図の紙面と直交する方向(振動方向)の位置関係を考慮すると、図25のような立体的なモデルが必要になる。図25は、いずれも振動方向と平行で相互に直交する面Pxと面P2とを基準として、各質量体の重心の位置関係を示す斜視図である。ここで、図26を参照して振動方向と直交する断面上で重心位置1ga、1gb、2gの関係を説明した上述の議論では、この振動方向(図13では水平方向)における中心点を通過する断面上に第2の質量体2の重心位置2gが位置するものとしていたが、実際には各質量部1A、1B及び第2の質量体2は振動方向に振動するため、それらの重心位置1ga,1gb、2も振動方向に移動する。しかし、微少な振幅で水平に振動する限りは力学の法則(力の作用位置は、作用線上のどこからでも同じ)からすれば同じことになるので、各質量部1A、1B及び第2の質量体2の振動に伴う当該振動方向の重心位置1ga、1gb、2gのずれは許容できる。但し、現実の物として板ばねで拘束して略水平振動をさせるものでは、これまでの原理で説明したように僅かではあるがモーメント力が発生する。
しかしながら、上述のような振動に伴う重心位置のずれではなく、静止時或いは中立位置における各質量部1A,1B及び第2の質量体2の本来的な重心位置1ga、1gb、2gが振動方向に相互にずれている場合であっても、全体のモーメントが相殺される関係が成立する場合がある。すなわち、3次元的な重心位置の組み合わせを考慮し、図25に示すモデルを考えると、先ず、「第2の質量体2の重心位置2gを通り、振動方向に平行で、かつ、水平な面(或いは、第2の質量体2が板状であるときの厚み方向と直交する面)」を面P2と定義したとき、この面P2上で同じく「振動方向に平行で第2の質量体2の重心位置2gを通る線」を線L2とする。この線L2を含み、上記面P2と交差する(すなわち、線L2で面P2と交差する)面Pxを考えた時、この面Px内に、第1の質量体1の質量部1A、1Bの重心位置1ga,1gbと第2の質量体2の重心位置2gが全て含まれるという条件を満たすように構成する。この時、図26(a)に示すように、面P2に平行で、かつ、質量部1Aの重心位置1gaを通過する面P1a、及び、面P2に平行で、かつ、質量部1Bの重心位置1gbを通過する面P1bを考えると、上述のように、面P2と面P1aの距離Sa、面P2と面P1bの距離Sbが同じで、かつ、面Pxが面P2と直交する関係が実用的には調整が簡単で判りやすく望ましい。しかしながら、図26(b)に示す場合と同様に拡大して考えると、前述のように、原理的には面Pxと面P2の交差角は、90度(直交する場合)に限らず、180度を含めてどのような角度でもよい。更には、図26(c)に示すように、質量部1Aと1Bの質量の比と、距離Saと距離Sbの比との関係が守られ、かつ、質量部1Aと1Bの合成された重心点が線L2上に乗ればよいということになる。
図25の場面では、図26に示す振動方向と直交する断面上に各重心位置が全て配置される場合に限らず、質量部1Aと1Bの重心位置1gaと1gbが振動方向に異なる位置にあっても構わない。このとき、振動ユニットの振動動作時において第1の質量体1全体の重心位置(上記重心位置1gaと1gbを合成した重心位置1g)と、第2の質量体2の重心位置2gとが上記振動方向に沿った直線上に共に配置されるように構成されていれば、第1の質量体1と第2の質量体2の間で生ずる振動方向の反力が減殺されるとともに、搬送路に沿った振動方向のばらつきも低減される。この点はあくまでも第1の質量体1と第2の質量体2との間の関係であるが、次に述べるように、第2の質量体2が第1の質量体1の質量部1Aと1Bから受けるモーメント力が相殺される関係については、質量部1Aの重心位置1gaと質量部1Bの重心位置1gbが振動方向の異なる位置に配置されている場合であっても以下のように成立する場合がある。
一方、図27に示すように、可動部Aがベース部Bに対して振動方向の二箇所において当該振動方向に揺動可能に弾性支持されている場合を考えると、この弾性支持構造は平行リンクと振動方向に接続されたばね要素を有する支持構造と等価になる。この場合、図27(a)に示すように可動部Aの重心位置gaが振動方向前後の二つの接続箇所の間の中心点にある場合にはモーメントアームMAは短く垂直姿勢となるが、図27(b)に示すように可動部A′の重心位置ga′が上記中心点から振動方向にずれるとモーメントアームMA′は長く傾斜した姿勢となり、特に、図示のように前後二つの接続箇所の外側に重心位置ga′が配置されるとモーメントアームMA′の長さ及び傾斜はさらに増大する。
上記の点を本発明の振動モデルに適用して、図28(a)に示すように、第2の質量体2の上下に配置される第1の質量体の質量部1Aと質量部1Bにおいて、質量部1Aの重心位置1gaと、質量部1Bの重心位置1gbが振動方向にみて異なる位置にある場合を考える。この場合には、質量部1AのモーメントアームMAaと質量部1BのモーメントアームMAbとが相互に異なる長さ及び傾斜角を有することになる。このため、両モーメントアームMAaとMAbの相違によって振動時におけるモーメント力が相殺されることはないようにも思えるが、実際には、モーメントアームMAaとMAbが異なる場合でも全体のモーメントは相殺される場合がある。すなわち、図28(b)に示すモーメントアームMAa,MAbの長さをr(raとrb)、モーメントアームMAa,MAbの傾斜角をθ(θaとθb)、質量部1A,1Bと第2の質量体2の間の距離をS(SaとSb)とすると、モーメント力はモーメントアームの長さr=S/sinθ(Sは質量部1A、1Bと第2の質量体2との間の相互距離)と、回転方向の分力Fr=Fsinθ(Fは重心位置への作用力F=mxω2)の積となる。このとき、回転方向の分力Frは重心位置1ga、1gbが回転中心から遠ざかるほど傾斜角θが小さくなるために減るが、長さrは逆に増加するので、モーメント力S×Fはモーメントアームの長さrや傾斜角θとは無関係に一定となるため、振動方向に重心位置1gaと1gbが異なる位置に移動した場合でもモーメントアームMAaとMAbによるモーメント力の関係は変わらず、ra・Fsinθa=rb・Fsinθbとなって質量部1Aと1Bのモーメント力が相殺される場合が考えられる。尤も、これは完全に水平方向に振動しているという前提であって実際には必ずしも理論通りにはいかないので、現実的にはこの振動方向にも重心位置のずれは大きくしない方が無難である。
なお、上記説明においては、質量部1Aと1Bによるモーメント力が完全に相殺される場合について種々考察した結果を述べてきたが、各質量部1Aの質量と1Bの質量との関係、距離SaとSbの関係、モーメントアームの角度θaとθbとの関係などが厳密に条件を満たしていない場合でも、回転モーメントが完全には相殺されないものの、図8に示す基本構成では、モーメント力の減殺作用によって結果的に従来構造よりもピッチング動作が低減されることは明らかであり、これは、本発明に係る振動系或いは振動ユニットの基本構成による作用効果である。
[実施例1]
次に、試作、実験によって性能を確認した各種の実施例をあげて順次説明する。なお、以下の実施例はいずれも上述の原理的なモデルに基づくものであり、基本的な構成及び作用効果は同様であるので省略し、要部と具体的構造のみを説明する。
最初に、構造例を示す実施例1を図29に基づいて説明する。図29は、実施例1の側面図及びこの側面図の振動ユニットの中心軸線Xo(振動ユニット全体の重心位置を通過する振動方向に沿った軸線)に沿った投影図を示す。本実施例の振動系は、図14に示した第1のタイプの振動モデルに対応するもので、第1の質量体1の質量部1A及び1Bと、第2の質量体2と、振動方向(図示左右方向)の二箇所において質量部1Aと第2の質量体2を弾性接続する振動ばね3Aと、振動方向の二箇所において質量部1Bと第2の質量体2を弾性接続する振動ばね3Bとを有する振動ユニットを具備する。また、本実施例の振動系全体は、上記振動ユニットに加えて、振動方向の二箇所において第2の質量体2を架台10上で弾性支持する支持ばね4を有する。原理の項で説明したように、本実施例では上下に配した第1の質量体の質量部1Aと1Bの部材側面に側板からなる2枚の連結体cb(図示二点鎖線)を両側からねじ止め等により固定し、上下の質量部1A、1Bの両部材がお互いに自由に動くことのないよう連結している。但し、微少な上下動は許すよう剛性を低下させた形状の連結構造を備えている。連結体cbの形状は図24(b)と同様の第1連結部cbAと第2連結部cbBを有するが、図24(b)とは異なり、その間の弾性連結部に中央開口cbS′を設けることによって上下方向の弾性変形を容易にしている。勿論、前述の図24(a)〜(c)に示されるものや上述の連結リンクを用いることもできる。この点は他の実施例でも同様である。これによって、上下の質量部1A、1Bは振動方向には拘束されるので、同相、同一周波数で運転でき、しかも振幅に伴う上下動の変動を受け流すことができる。
第1の質量体の質量部1Aの上部には搬送路を備えた搬送部tpを搭載できるようになっているので、実際には搬送部tpも含めて質量部1Aが構成される。一方、質量部1Bにはその下面にねじ等でカウンターウエイトcwを取付けることができるので、上と同様にカウンターウエイトも含めて質量部1Bが構成される。更に、搬送部tpとカウンターウエイトcwは側板である連結部cbによって結合されているので一体の第1の質量体1として振動する。なお、カウンターウエイトcwに調整ウエイトcw1、cw2などを付加したり取り外したりすることによって質量の調整や重心位置の調整を行うことも可能である。
次に、第2の質量体2は一体となったソリッドな塊であり、鋳鋼などの材料で作られている。第2の質量体2は基本的には矩形状に構成してもよいが、本実施例では、質量部1A側に張り出した部分2Aと、質量部1Bの側に張り出した部分2Bとを有する。また、第2の質量体2の振動方向の二箇所(図示例では振動方向の前後の両端)には、振動ばね3A、3Bの圧電駆動部(厚い鋼製の基板の両側に圧電素子を貼着したもの)を構成する圧電駆動体3Ad、3Bdがねじ止め等により固定されている。本実施例の圧電駆動部は中心軸線Xoに対して完全に上下方向対称な構造であるので、第2の質量体2の両側の圧電駆動体3Ad、3Bdの圧電素子は計4つとなり、これらの圧電駆動体にバイモルフ型の素子を採用すれば基板の両側に貼着されるから素子としては全部で8つとなる。圧電駆動体3Ad、3Bdの反対側の端部には増幅ばね3As、3Bsが押さえ金と板ナットを介した2本のボルト等で固定されている。更に、この増幅ばね3As、3Bsの他端は第1の質量体の質量部1Aと1Bにそれぞれ固定されている。このように質量部1A、1Bと第2の質量体2の4つの接続箇所とも第2の質量体2の上下左右の中心点(重心点)を中心とした点対称の位置に配置され、これらの接続箇所で第1の質量体1と第2の質量体2とが連結されることにより、全体として本実施例の振動ユニットが構成される。
本実施例の振動ユニットは、第2の質量体2の中心軸線Xoに沿った方向の両端部が連結金具等からなる連結構造13を介して両側の支持ばね4,4の上端と接続固定され、これらの支持ばね4,4の下方の他端が架台10に接続固定された状態で設置される。架台10は床面や別途の基台に取り付けられて基盤Gを構成する。ここで、基盤Gは工場の床面そのもの、床面上に設置される取付け架台、床面上に設置される防振台などの種々の構成を採ることができる。この点はいずれの実施例でも同様である。なお、本実施例では、第1の質量体1(質量部1A及び1B)と、第2の質量体2と、振動方向の前後二箇所の振動ばね3(3A及び3B)と、振動方向の前後二箇所の支持ばね4とからなる振動系全体は、架台10や搬送部tpに設けられる搬送路に対して図示斜め右上側へ傾斜するように設置され、これによって振動ばね3の撓み振動によって搬送路が斜め右上に押し上げられるように振動するため、搬送路上に配置される図示しない部品等の搬送物は図示右側へ搬送される。
次に、本実施例の動作を説明する。圧電素子は電圧をかける方向によって膨張または収縮する。圧電駆動部3Ad、3Bdの鋼板の両側に貼った圧電素子は一方の側が膨張する時、他方の側は収縮するように電圧を掛けて駆動する。したがって、圧電素子の極性は実際の駆動に際してそれが実現できるように貼着する必要がある。この対称駆動機構においては、例えば、図示右側の振動ばね3Aにおいて右側の圧電素子が膨張する場合は図示左側の振動ばね3Aの右側の圧電素子も同じく膨張するように極性をそろえて駆動しなければならない。この時、下側の振動ばね3Bについても上記と全く同様に圧電駆動の態様を揃えなければならない。つまり図29の左右方向に関しては、上下左右の振動ばね3A、3Bにおいて右側の圧電素子は一斉に膨張するようにし、同時に左側の圧電素子は一斉に収縮するようにしなければならない。
圧電駆動部3Ad、3Bdは分厚い鋼板で出来ているため曲げ剛性が非常に大きいので、圧電素子による強い膨張/収縮力にも関わらずそれほどの曲げ量は期待できない。そこで、圧電駆動による振動機器では増幅ばねと称する薄い鋼板製のばね板を介在させて必要な振幅を得るようにしている。本実施例でも4枚の増幅ばね3As、3Bsを第1の質量体1と第2の質量体2に間に入れて振幅量を拡大している。
次に、第2の質量体2は接続構造13を介して両側の支持ばね4,4によって架台10と接続されているが支持ばね4は比較的薄い鋼板等によって作られているので、図左右(水平)方向の変位に対しては剛性が弱くなっている。従って、原理の項でも前述のように反作用による水平振動の基盤Gへの伝達は効果的に遮断される。
上述のように本発明の振動系では重心位置が重要であるが、本実施例では重心位置の調整や確認作業が容易に出来るよう種々の工夫をしている。図29に示すように、接続構造13は、図示例の場合、圧電駆動体3Ad、3Bdの中央部を挟み込んで第2の質量体2に固着すると同時に支持ばね4とも連結する構造であり、詳細は図30に示される。なお、図30には図29の図示左側の接続構造13を振動ユニット固定機構15とともに示している。接続構造13は、上記第2の質量体2にボルト等で固定される図31に示す第1接続部材13aと、第1接続部材13aに対してボルト等で支持ばね4を挟持した状態で固定される図30に示す第2接続部材13bとを含む。ここで、第1接続部材13aの側面にはV字型の溝部13a1が形成される。
重心のチェック方法は例えば以下のようにする。図29の左右の第1接続部材13aの溝部13a1間と略同ピッチになる間隔で、図32に示すように共通の支持板SB上に2本の尖ったピンPNを固定したものを予め用意しておく。なお、図32には、左右のうち一方の第1接続部材13aとピンPNのみを示している。そして、搬送路を備えた搬送部tpを第1の質量体1の質量部1Aに固定した状態で、接続構造13を解放して支持ばね4を切り離してから振動ユニットを水平に寝かせ、上記ピンPNが溝部13a1に係合するようにして2本のピンPNで振動ユニットを支持する。この支持状態で釣り合いを見ながら、振動ユニット全体が概ね水平になるように、カウンターウエイトcwを増減する。本実施例では、第2の質量体2はソリッドな塊であり、図29に示す振動ユニットの中心軸線Xo上に対称に設計されているので、その重心点は第1接続部材13aの厚み方向の中心線上、すなわち上記溝部13a1上に存在する。従って、前記のように重心調整とチェックを行えば、第1の質量体1の質量部1Aと質量部1Bを合わせた重心位置は第2の質量体2の重心位置と同一線上に存在することになり、前述したように二つの質量部1Aと1Bの重心の条件を満たすことになり、ピッチングは発生せず、その結果、架台10に有害な上下動は伝達されない。本実施例に限らず、図示例の組み合わせを反対にしたもの、つまり両側の接続構造13に設けた連結部材に尖った突起部を設けて、適当な平板上に寝かせて突起部を天秤の支点のようにして重心チェックをすることもできる。
前述したように、振動ユニットと2枚の支持ばね4による振動系全体の固有の周波数が上記振動ユニットの運転周波数の1/10以下になるように、支持ばね4を比較的弱いばね定数とすれば、振動ユニットにおいて第1の質量体1と第2の質量体2を水平方向へは抵抗無く振動させ、その振動を遮断するように構成できる。しかし、その一方で、支持ばね4には、上方から視た平面内では振動ユニットがふらつかないように強い保持力をもって架台10と結合し、振動ユニットを確実に支持する必要がある。そのため、図29の投影図に示すように支持ばね4の板面の中央部をくり抜いて開口部4aを設けることで、実効的なばね定数を小さくしている。一方、強度の低下によるスパン中央部での座屈を防ぐため、両側の側辺4bを折り曲げて見掛けの剛性、すなわち、支持方向(上下方向)の剛性を上げている。
このような構成では通常の運転時は問題なくとも、輸送や調整時に図29の左右方向に力をかけると変位が過大になり、周辺装置との接続部等で干渉が起きたり支持ばね4が永久変形したりすることがある。そのため、図30に示すように、輸送時には、振動ユニット固定機構15により、架台10に固定された支柱15aに装着されたボルト15b、15cを使って第2の質量体2を固定する。すなわち、第2連結部材(押さえ板)13bの外面側に設けたねじ穴を用いてボルト15bによって支柱15aを第2連結部材13bに締結すれば振動ユニットは固定される。運転時はボルト15bを取り外し、ボルト15cと第2連結部材13bとの間の隙間Zを運転時の振動振幅に若干プラスした値に調整して図示の止めナットでボルト15cを固定する。なお、図30では運転状態の上記隙間Zを図示しているが、実際には図示のようにボルト15bを締めて固定したときには振動ユニット全体が支柱15aの側に引き寄せられて上記隙間Zはなくなるように構成される。
[実施例2]
次に、実施例2を図33に基づいて説明する。本実施例において、実施例1と共通した部品は同じ名称としている。本実施例は図18に示す第2のタイプの振動モデルを原理としたもので、上記実施例1と同様に図18と対応する部位には対応する符号を付す。前述したように、本実施例では内側上下に配した第1の質量体1の質量部1Aと1Bをいわゆる反作用質量体としている。ここでは質量部1Aと1Bは一体の構造になっていて、微少な上下の変位を許すために剛性を低下させた形状の連結部1sを備えている。この実施例では、連結部1sを形成するためのスリット1a,1bを形成する必要があるため、例えばワイヤカット加工などを前提に設計されているが、これに限らず、図23(b)に示すような連結部材1sとすることで、通常の部品による組立が可能なものにすることができる。この連結部1sによって第1の質量体1の質量部1Aと1Bは振動の方向には拘束されているので、同相で運転でき、かつ振幅に伴う質量部1Aと1Bの間の上下方向の距離変動は受け流すことができる。
第2の質量体2の本体は、振動方向前後と上下を1周する、側面から見て略「ロ」字型のフレーム形状をした例えばアルミダイキャストなどで一体成型した物である。ここで、上部2aと下部2bの間の図示左右の中央端部2cで振動ばね3A、3Bを構成する増幅ばね3As、3Bsと結合される。また、第2の質量体2は、図34(c)に示すように上記本体の上部2aに上方の搬送部tpを固定し、下部2bに下方のカウンターウエイトcw、cw′を固定して一体化したものである。また、この第2の質量体2は、全体の剛性を向上させる補強材とカバーの機能も兼ねて、強度の高い例えばステンレス鋼などで作った側板2sで両側から覆われている。以上のように構成された第2の質量体2の全体と、前記第1の質量体1の質量部1Aと1Bを合わせた反作用質量体とが相補的に(お互いに逆方向に調和して)振動しあい、対称型駆動の直進フィーダとして作動する。
重心の合わせ方は本実施例も前記実施例1と略同じであるが、本実施例では、第2の質量体2の下部2bの図示左側に装着された取付基部aoを中心として回動可能に取り付けられた回動取付板amと、この回動取付板amの図示右側の先端に固定された重心調整用カウンターウエイトcw″を有する重心調整機構17が設けられている。具体的には、図34(d)に示すように、一対の回動取付板amが取付基部aoを中心に下部2bに取り付けられ、一対の回動取付板amの先端の間に円柱状のおもりである重心調整用カウンターウエイトcw″が固定されている。回動取付板amは円弧状長孔apとボルトの組み合わせにより所定範囲内において下部2bに対して取付基部aoを中心に上下に無段階に旋回できるように構成されており、これによって細かく精密な重心合わせが簡単に出来るようになっている。
図34(a)にも示すように、第2の質量体2のアルミダイキャスト成型したフレーム状部品の中央端部2cの振動方向の前後外側には支持ばね4がそれぞれ取り付けられ、実施例1と同様に、第2の質量体2が振動方向二箇所の支持ばね4により架台10と結合されている。なお、架台10に設けられた振動ユニット固定機構15も実施例1と同じである。
本実施例は、実施例1より全高を低く抑えられる点で優れているとともに、重心位置がより正確に、しかも簡単に調整でき、その結果、振動の漏れも非常に少なく理想的な動作を実現することが可能になるという利点を有する。
[実施例3]
次に、実施例3を図35〜図37に基づいて説明する。実施例1、2と共通する働きの部品は同名称としている。本実施例は実施例2と同じ原理に基づくので同内容の説明は省く。図35及び図36に示すように、本実施例の第2の質量体2では、実施例2のような側面視でロ字状のフレームがなく、振動方向の前後二箇所にそれぞれ設けられた板状の本体部2aの側面に側板部2s(図示二点鎖線)を両側から計4本のボルト等で結合し、側板部2sの上端の上部取付板tsで搬送路を備えた搬送部tpを取り付け固定している。また、側板部2sの下端の下部取付板csによってカウンターウエイトcwを取り付け固定している。なお、側板部2sの両外側には、振動方向の前後二箇所の前記本体部2a同士を連結する補強板2t(図示二点鎖線)が取り付けられている。
ここで、図36に示すように、本体部2aの振動方向の前後には取付部2bがボルト等で固定され、本体部2aと取付部2bの間に増幅ばね3Asに相当する部分と3Bsに相当する部分を一体に備えた上下対称形の板ばね体の上下方向中央部が挟持される態様で固定されている。この板ばね体は増幅ばね3Asに相当する部分と3Bsに相当する部分が一体化されたものであるが、実質上は別体の場合と何ら変わりはない。ただし、この構成は構造を簡易に構成できるとともに取付組立作業も容易になる点で有利である。このような構成は他の実施例でも本実施例のように振動ばね3A、3Bの中央側に増幅ばねが配置される構造であれば同様に採用できる。また、本実施例とは逆に振動ばね3A、3Bの中央側に圧電駆動体が配置される構造であれば、上下両側の圧電駆動体の基板を一体化して、その上下方向中央部を固定する構成を上記と同様に採用可能である。
さらに、当該取付部2bには振動方向の前後外側からボルト等により支持ばね4,4が接続されている。これらの支持ばね4の下端は架台10に結合されている。この架台10は平面視で(上方から見たときに)コの字状に構成され、図35(a)において振動ユニットの背後に配置される背面板10aと、この背面板10aの図示左右両端から図示前面側に突出する取付端部10b,10bとを有し、これらの取付端部10bにそれぞれ支持ばね4の下端が固定されている。
本実施形態では、上記本体部2a、側板部2s、取付部2b、上部取付板ts及び搬送部tp、下部取付板cs及びカウンターウエイトcwの全てが一体となって第2の質量体2を構成している。上部取付板tsの上面には搬送部tpが搭載されるが、図35に示すように、上部取付板tsは各3本のボルトで両側の側板部2sの取付穴に締結されている。ここで、上部取付板tsを固定するための側板部2sの中央の取付穴aoaを除いて、左右両側の取付穴apaはそれぞれ上下方向に延長された長孔になっているので、側板部2sに対して所定角度(実施例では上下に±2°)の範囲で中心軸線Xoに対する搬送部tpの傾きを調整できるため、振動ユニットに対する搬送部tpの取付姿勢を適宜に設定できるようになっている。このような搬送部の取付姿勢調整手段は他の実施例にも適用できる。また、下部取付板csは側板部2sの取付穴aob,apbに対して3本のボルト等で締結されている。ここで、中央の取付穴aobとともに左右両側の取付穴apbはそれぞれ上下方向に延長された長孔になっているため、カウンターウエイトcwの中心軸線Xoに対する上下の向きの取付姿勢(角度)を調整することができるとともに、カウンターウエイトcw全体の上下方向の位置も調整可能となっている。
一方、第1の質量体1については、図37に示すように、質量部1Aと1Bが一体に構成され、その上下中心位置にスリット1aと1bによって構成される連結部1sが形成される点で、上記実施例2と同様であるので、それらの説明は省略する。
なお、図35に示すように、本実施例の設置構造では、振動ユニットを支持ばね4を介して弾性支持する架台10と、この架台10の背面部10aが取り付けられる垂直板状の支柱部11を備えた基台部12とが設けられる。図示例の場合には、この基台部12によって架台10が図示手前側に張り出すように支持されている。上記支柱部11には振動方向に沿って配置された3つの取付穴11aが形成され、これらの取付穴11aがそれぞれ上下方向の長孔に構成されることにより、基台部12に対する架台10の取付位置が上下に移動可能に構成されるとともに、架台10の振動方向(中心軸線Xo)に対する取付角度が調整可能に構成される。このことにより、振動ユニットの設置姿勢、すなわち、中心軸線Xoの水平方向に対する角度を調整可能とすることができる。また、後述する実施例4と同様に架台10を支柱部11に搭載して、架台10と支柱部11の取付位置の調整により振動ユニットの設置姿勢の角度調整を可能にしてもよい。このような振動ユニットの設置姿勢調整手段は他の実施例にも適用できる。
第2の質量体2の振動方向はあくまでも圧電駆動部3Ad、3Bdや増幅ばね3As、3Bsからなる振動ばね3A,3Bに直交する方向(中央軸線Xoに沿った方向)であるため、搬送部tpの搬送路の振動角度は、搬送部tpの取付角度が0°のときには本来の設計角度(例えば、5°)である。ここで、上記取付姿勢調整手段と上記設置姿勢調整手段が共に設けられていると、上記設置姿勢調整手段を用いて振動ユニット(の中心軸線Xo)の設置角度を調整した上で、この振動ユニットの設置角度に拘わらず、上記取付姿勢調整手段を用いて搬送部tpの取付角度を調整して搬送路を水平に設置することができる。これによって、搬送路の振動角度(後述する投射角度φ)を両調整手段の調整角度範囲に応じて変えることができる。本実施例の場合には取付姿勢調整手段が±2°の範囲で取付角度を調整可能であるため、本来の設計角度が5°であれば、3°〜7°の範囲で振動角度を調整できる。なお、これらの構成は他の実施例にも適用できる。
[実施例4]
次に、実施例4を図38〜図40により説明する。この実施例4は実施例3の別ヴァージョン(変形例)として考案したものである。原理的には実施例2,3と同じであるが、搬送路やカウンターウエイトを取付けるためのフレームや側板が無く、図38及び図39に示すように、第2の質量体2の本体は、中央に配置されたロの字型の本体ブロック2hと、この本体ブロック2hの幅方向の両側に取り付けられた一対の側部ブロック2iとを有し、一対の側部ブロック2iに対して直接に搬送路を備えた搬送部tpとカウンターウエイトcwが相互に反対側に取り付けられた構造を備えている。本実施例でも、第2の質量体2の本体に対して搬送部tpの取付け角度を可変に構成している。図40(a)に示すように、搬送部tpは下部の取付部tsと一体化され、取付部tsに設けた3個の取付穴のうち、両側の取付穴saを中央の取付孔soを中心とする円弧状の上下方向に延長された長孔に構成しているので、第2の質量体2の本体に対して搬送部tpの取付角度を調整できるようになっている。
本実施例では、実施例3と同様に、図39に示すように、第2の質量体2に接続された支持ばね4の下端が取り付けられる架台10の背面が支柱部11に取り付けられ、この支柱部11が基台部12に設けられている。したがって、本実施例の振動ユニットは支柱部11の横に張り出すように支持される。架台10は、実施例3と同様に背面に設けられた3ヶ所のねじ穴によってボルト等を介して長孔状の取付穴を有する支柱部11と結合している。これによって、架台10と支柱部11との間も角度調整可能かつ高さ調整可能に構成され、その結果、振動ユニットの設置姿勢、すなわち、中心軸線Xoの水平方向に対する角度を調整することができるようになっている。
一方、カウンターウエイトcwは幅方向に見て搬送部tpの反対側に取り付けられる。そして、図39に示す縦中心線に対して対称になるように、搬送部tp、カウンターウエイトcwを合わせた第2の質量体2の重心のバランスをとるように構成する。このようにしないと、上から見降ろした時、回頭する運動(ヨ−イング)が発生する。但し、本実施例の場合、搬送部tp(カウンターウエイトcw)が第2の質量体2の本体の側方にあるため、上下方向については概ね重心位置に配置されることから、振動ユニットの上下方向のバランスをとるための調整ウエイトの必要性は低い。
本実施例では、搬送部tpの設置位置が低いので装置全体の高さを抑えることができ、また、これまでの実施例のように搬送部tpとカウンターウエイトcwをつなぐ複雑な支持構造が不要になるので全体がシンプルで軽量な構成となる。さらに、増幅ばね3As、3Bsの近傍に搬送部tpを設置できるので、第2の質量体2を全体として高い剛性をもつように構成できる点も利点である。さらに、実施例3と同様に搬送部tpとカウンターウエイトcwの取付角度を調整可能に構成しているので、水平を越して図示取付け例と逆方向にも付けられる。その場合、部品の進行方向が図40に示す例とは反対になるので、一台で搬送方向を両方向のいずれにも設定することが可能になり、搬送方向の勝手による余分な在庫を持つ必要がなくなる。
第2の質量体2の振動方向はあくまでも圧電駆動部3Ad、3Bdや増幅ばね3As、3Bsに直交する方向であるので、搬送路の振動方向の角度(投射角度)は、搬送路の取付角度が0°の時は元々の設計時に設定された角度(例えば、5°)である。また、支柱部11には3ヶ所の縦長穴を設けているので架台10では振動ユニット全体の角度調整と上下位置調整が可能になっている。したがって、この振動ユニットに対する角度調整によって傾いた搬送路を水平に(戻して)セットすることによって搬送路の水平に対する振動角度(投射角度)を3°〜7°の範囲で無段階に調整することができる。なお、本実施形態の搬送部tpの取付姿勢調整手段と振動ユニットの設置姿勢調整手段は他の実施例にも同様に適用できる。
ここで、投射角度(投げ上げ角度ともいう)について簡単に説明する。図43(a)に示すように、搬送部tpの搬送路twの水平面に対する振動の方向を示す角度を投射角度φと呼んでいる。この投射角度φは前記のように振動ばね(増幅ばね)に直交する方向であるので、結局は振動ユニットの取付角度によってこの方向が与えられる。投射角度φによって振動輸送機の搬送状況は大幅に変化する。実用的には5°〜30°程度までの範囲をとり得るが、一般的に、図43(b)及び(c)に示すように、投射角度φが小さいほど被搬送物(部品)は滑らかに進行し、逆に、投射角度φが大きくなるほど搬送状態は乱れて上下に踊りながら荒々しく進行するようになる。搬送路twの表面と被搬送物の物性(特に弾性率と摩擦係数)及び振動周波数の組み合わせで、投射角度φの最適値は変わるが、単なる搬送効率(単位振幅当たりの搬送距離)では10°近辺が最も効率がよい。投射角度φは低い方が理想的に思えるが、搬送路tw自体に昇り勾配が有ると途端に搬送能力(推進力)を失う。また、設計時の投射角度φが小さく設定されているときには、従来の直進フィーダでは振動態様に起因して生ずる搬送方向の位置に応じた振動角度のばらつきによって、実際には搬送方向の特定位置では投射角度φが0°を下回る部位が発生し、その結果、被搬送物が停止したり逆送したりしてしまうことがある。
本発明の対称駆動方式では、振動系のピッチング動作を低減することができるために搬送路twの全長にわたる振動角度のバラつきを極小にできることと、直線型の振動式搬送装置ではボウルフィーダのように昇り坂を設けることは殆どないという理由により、思い切った低い投射角度φを狙って実用化できる。しかしながら5°近辺の非常に低い投射角度φの領域では、前記のように搬送路の表面状態と、部品形状及び材質の組み合わせ、運転周波数などによって、投射角度φの許容される角度範囲が大きく変化する。このような厳しい使用条件では投射角度φの設定最適値を得るには1°以下の微妙な調整や選択が必要になるので、本実施例のように投射角度φを細かく無段階で調整できる機構は非常に効果的で有用なものである。
[実施例5]
次に、実施例5を図41及び図42に示す。これは、上記図9〜図11で説明した各種の電磁式の実施例であるが、全体構成では図11に相当する。但し、リンク機構ではなく板ばねで振動方向角を与えると同時に、必要なばね定数を付与している。第1の質量体1を構成する質量部1Aと1Bは、実施例2〜4と同様に、上下方向の中央において、上下方向の剛性を低下させた連結部1sによって結合している。この実施例では、圧電式振動系ではあるが図19の振動モデルのタイプと駆動形式を除いて同様の振動ユニットの構成を有している。本実施例では駆動源として、振動ばね3A、3Bを構成する板ばねを貫通して振動方向の前後いずれか一方の外側において質量部1Bの側方に突出した横棒smに可動鉄心mg1を取付け、これと対向する側に電磁石mg2を設けている。
本実施例では、図42に示すように、第2の質量体2を構成する平面視でロ字状の枠材からなる本体部2jの振動方向の前後両側に、板ばねを多数重ね合わせて構成した振動ばね3A、3Bに相当するばね構造を2本のボルトで固着している。このばね構造は第1の質量体の質量部1Aと1Bの連結部に対して上下に対称な形状となっている。本体部2jの側方両側には側板部2sが補強板2pと共にねじ止め等により固定されている。側板部2sは右方に長く延在し、図41に示す上部取付板ts、下部取付ブロックmgsを夫々両側から挟んで固定している。また、図42に示すように、本体ブロック2jは中央に開口部2jpを有し、この開口部2jpを通して質量部1Aと1Bが振動方向に延長された形状の連結部1sを介して接続されている。
上部取付板ts上には搬送部tpが取付固定され、下部取付ブロックmgsには上記電磁石mg2が取付固定される。また、下部取付ブロックmgsの下面には重心バランスを取るためのカウンターウエイトcwが取付けられる。図41に示すように、第2の質量体2の本体部2jの振動方向の一方には取付部2kを介して支持ばね4の上端が接続される。また、本体部2jは側板部2sを介して上記下部取付ブロックmgsに固定され、この下部取付ブロックmgsは振動方向の他方の支持ばね4の上端に接続固定される。これらの振動方向の前後の支持ばね4の下端は架台10に接続固定されている。
上記の本体部2j、側板部2s、補強板2p、上部取付板ts、搬送部tp、下部取付ブロックmgs、カウンターウエイトcwは一体となって第2の質量体2を構成し、第1の質量体1を構成する質量部1A、1B及び連結部1sをセットとした反作用質量体と対になって、2自由度振動系の振動ユニットを構成する。第1の質量体1、第2の質量体2及びこれらを接続する振動ばね3A、3Bからなる振動ユニットの固有周波数に近い周波数の交流電圧を電磁石mg2に印加すると、可動鉄心mg1が交番的に吸引され、その結果、大きく増幅された前記二つの質量体の相補的な振動が継続的に発生する。
本実施例でも重心の位置は重要であるが、調整の手順はこれまでの実施例と同様である。即ち振動ユニットの中心軸線Xo上に前記第2の質量体2の重心位置を配置するために、搬送部tpの質量に見合うようにカウンターウエイトcwの質量を増減する。なお、第1の質量体1の質量部1Aに比べて質量部1Bには横棒smと可動鉄心mg1が加わっているので、その質量分を減じるように、質量部1Bの下面に点線で描いた陥凹部1bpを設けて、質量バランスを確保している。このようにすると、質量部1Aと1Bを合わせた重心位置は中心軸線Xo上に配置されるので、カウンターウエイトcwの質量を調整して中心軸線Xo上に第2の質量体2の重心が乗るようにすれば、振動に伴うモーメント力は発生しない。
このようにして得られた振動ユニットの振動軌跡は中心軸線Xoに平行となるので、前実施例と同様に、剛性の低い2枚の支持ばね4(の板面)を振動方向の前後二箇所において中心軸線Xoと直交する姿勢で設置して架台10と夫々連結することで、有害な上下動成分がほとんど発生しないように設置、構成できる。
上記の各実施例では、従来の直進フィーダでは達成できなかった次のような機能・性能を発揮し、多様な形状の搬送シュートと、広範囲な周波数範囲にそれぞれ対応することが可能になる。特に、有害な垂直方向の振動リークが殆ど無くなったことにより、従来の重く大きな固定ベースが不要になり、装置全体のコンパクト化、軽量化が可能である。このように取付部(設置部)の剛性や質量に頼ることがないので、どのような取り付け(設置)条件でも搬送でき、しかも搬送状態への影響が少ない。
また、搬送路の全長にわたって振動角度のばらつきを極小にできるので、従来機では不可能な小さな投射角度φに設定して、すべるような滑らかな搬送を実現できる。同時に長いシュートであっても搬送路の入り口、出口である端部の搬送状態が悪化することがない。
さらに、架台への取り付けは弾性的な防振機構を介することなく機械的に固定できるので、搬送路の入口、出口部での他の装置との間の位置ずれ(高さ方向のずれ)を起こすことがなくなり、安定した物品の受け入れと供給が可能になる。
尚、本発明の振動式搬送装置は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、以下の各振動モデルや実施例において記載されたそれぞれ機構や手段は、相互に矛盾が生じない限り、他の振動モデルや実施例において適宜の組み合わせにて容易に実現することができる。