ところで、イオン生成装置で発生し得る異常な放電現象としては、接地された(もしくは接地部に導通する)なんらかの異物物体がイオン生成装置の放電電極に接近もしくは接触した場合に、該放電電極と異物物体との間で発生する放電現象がある。
以降、本明細書では、特にことわらない限り、「異常放電」は、上記のように放電電極と異物物体との間で発生する放電を意味する。また、この異物物体は、正常なコロナ放電を発生させるためにイオン生成装置に備えられている構成要素(対向電極等)ではない物体を意味する。
上記の如き異常放電は、火花放電となりやすいことから、放電電極の損傷もしくは急激な劣化、あるいは、放電電極に高電圧を印加する高電圧発生回路の損傷等の不具合を引き起こしやすい。
従って、上記の如き異常放電が発生した場合には、それを速やかに検知し得るようにすることが望まれる。
しかるに、特許文献1に見られる如き従来のイオン生成装置では、以下に示す理由によって、放電電極と異物物体との間で発生する異常放電を確実に検知することが困難なものとなっていた。
すなわち、放電電極と異物物体との間で異常放電が発生した場合には、その放電電流自体は、放電電極と異物物体との間に流れるため、対向電極としての前記アース電極と接地部との間の回路の発光ダイオードやフォトカプラの発光素子に流れる電流とはならない。
また、本願発明者の各種実験、検討によれば、電磁波現象(詳しくは空間の変位電流)に起因してアース電極に誘起される電圧によって、アース電極と接地部との間で、上記異常放電の発生に応じた電流変動は発生し得るものの、その電流変動は通常、比較的短い時間幅のパルス状の変動となる。このため、該電流変動を発光ダイオードや、フォトカプラの発光素子の発光出力に基づいて検知することは極めて困難である。
このようことから、特許文献1に見られる如き従来のイオン生成装置では、放電電極と異物物体との間で発生する異常放電を確実に検知することが困難なものとなっていた。
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、放電電極と異物物体との間で発生する異常放電を高い信頼性で適切に検知することができるイオン生成装置、及び異常放電検知方法を提供することを目的とする。
本発明のイオン生成装置は、上記の目的を達成するために、放電電極に正又は負の高電圧を印加することにより該放電電極からコロナ放電を発生させ、該コロナ放電により空気イオンを生成するイオン生成装置において、
前記放電電極に対向して配置された検出用電極と、該検出用電極と接地部との間に接続され、該検出用電極と接地部との間に流れる電流に応じた電圧信号を出力するインピーダンス回路と、前記電圧信号が入力され、該電圧信号に基づいて、前記放電電極と前記検出用電極以外の異物物体との間で発生する放電である異常放電の発生の有無を検知する異常放電検知手段とを備え、前記異常放電検知手段は、前記異常放電が発生したときに該異常放電の発生に起因して前記電圧信号に含まれるパルス信号を組成する周波数成分を含む高周波成分を通過させ、且つ、該高周波成分よりも低い周波数の低周波成分を遮断する周波数通過特性を有するフィルタリング処理を前記電圧信号に施すフィルタリング手段と、該フィルタリング手段の出力から、前記パルス信号に該当する信号を検出する処理を実行するパルス信号検出手段とを含み、該パルス信号検出手段により前記パルス信号に該当する信号が検出されるか否かにより、前記異常放電の発生の有無を検知するように構成され、
前記フィルタリング手段は、前記電圧信号の電圧値が所定の形態で変化するパルス信号をフィルタリング対象のパルス信号として前記フィルタリング処理を実行するように構成されており、前記所定の形態は、当該パルス信号の発生時に、前記電圧信号の電圧値が、当該パルス信号の発生前の電圧値から、該発生前の電圧値の極性と逆極性の電圧値に変化するという形態であることを特徴とする(第1発明)。
なお、上記インピーダンス回路は、抵抗素子、容量素子等、インピーダンスを有する1つ以上の回路素子により構成される回路を意味する。
また、放電電極に印加する正又は負の高電圧は、正及び負のいずれか一方の極性のみの直流電圧であってもよいが、極性が交互に変化する交流状の電圧であってもよい。
また、前記異物物体は、より詳しくは、前記した如く、正常なコロナ放電を発生させるためにイオン生成装置に備えられている構成要素ではない物体を意味する。
これらのことは、後述の他の発明においても同様である。
上記第1発明によれば、前記放電電極に正又は負の高電圧を印加している状態で、前記異常放電が発生すると、通常、前記放電電極の電位(接地部に対する電位)の大きさが、急激に小さくなる。
一方、前記放電電極の印加される電圧が変化すると、該放電電極と前記検出用電極との間には、それらの間の空間の静電容量に応じた変位電流が発生し、その変位電流によって、前記検出用電極に電圧が誘起される。そして、この誘起電圧によって、放電電極と前記検出用電極との間には、上記変位電流に相当する電流(変位電流と同じ電流値の電流)が前記インピーダンス回路を通って流れる。
特に、前記異常放電が発生した場合には、前記放電電極の電位(接地部に対する電位)の大きさが急激に小さくなることに起因して、前記放電電極と検出用電極との間には、小さな時間幅のパルス状の変位電流が発生する。そして、この変位電流に相当するパルス状の電流が前記インピーダンス回路を通って流れる。
これにより、前記インピーダンス回路から出力される電圧信号には、上記パルス状の変位電流に対応するパルス信号が含まれることとなる。また、このようなパルス信号は、比較的高周波の周波数成分により組成される。
そこで、第1発明では、前記インピーダンス回路から出力される電圧信号に、前記フィルタリング手段によって、前記フィルタリング処理を施す。このフィルタリング処理では、前記異常放電が発生したときに該異常放電の発生に起因して前記電圧信号に含まれるパルス信号を組成する周波数成分を含む高周波成分を通過させ、且つ、該高周波成分よりも低い周波数の低周波成分を遮断する。この場合、フィルタリング処理は、前記電圧信号の電圧値が前記所定の形態(当該パルス信号の発生時に、前記電圧信号の電圧値が、当該パルス信号の発生前の電圧値から、該発生前の電圧値の極性と逆極性の電圧値に変化するという形態)で変化するパルス信号をフィルタリング対象のパルス信号として実行される。
このため、前記電圧信号に、前記異常放電の発生に起因する前記パルス信号が含まれている場合には、前記パルス信号に該当する信号(パルス状の信号)が顕著に含まれるような信号が前記フィルタリング手段の出力として得られる。
さらに、第1発明では、前記パルス信号検出手段によって、前記フィルタリング手段の出力から、前記パルス信号に該当する信号を検出する処理が実行される。このとき、前記電圧信号に、前記異常放電の発生に起因する前記パルス信号が含まれている場合には、前記フィルタリング手段の出力は、前記した如く、前記パルス信号に該当する信号(パルス状の信号)が顕著に含まれるような信号となる。
従って、前記電圧信号に、前記異常放電の発生に起因する前記パルス信号が含まれている場合には、該パルス信号を適切に検出することができることとなる。
そして、前記異常放電検知手段は、前記パルス信号検出手段により前記パルス信号が検出されるか否かにより、前記異常放電の発生の有無を検知する。すなわち、該異常放電検知手段は、前記パルス信号検出手段により前記パルス信号が検出され場合に、前記異常放電が発生したことを検知する。
これにより、第1発明によれば、放電電極と異物物体との間で異常放電が発生した場合に、その異常放電の発生を高い信頼性で適切に検知できることとなる。
上記第1発明では、前記パルス信号検出手段は、前記フィルタリング手段の出力から、あらかじめ設定された所定値以上の大きさの電圧値と、あらかじめ設定された所定幅以上の時間幅とを有するパルス状の信号を、前記パルス信号に該当する信号として検出するように構成されていることが好ましい(第2発明)。
ここで、前記フィルタリング手段の出力には、一般に、高周波のノイズ成分が含まれる。ただし、前記異常放電の発生に起因して前記電圧信号に含まれることとなる前記パルス信号は、通常、その大きさ(ピーク値)が一般的なノイズ成分よりも大きく、また、時間幅も一般的なノイズ成分に比して大きい。
そこで、第2発明では、前記パルス信号検出手段は、前記フィルタリング手段の出力から、あらかじめ設定された所定値以上の大きさの電圧値と、あらかじめ設定された所定幅以上の時間幅とを有するパルス状の信号を、前記パルス信号に該当する信号として検出する。
これにより、前記パルス信号検出手段は、前記異常放電の発生に起因して前記電圧信号に含まれることとなる前記パルス信号に該当する信号(パルス状の信号)を、前記フィルタリング手段の出力から高い信頼性で適切に検出できることとなる。
なお、前記パルス状の信号の大きさに関する上記所定値と、時間幅に関する上記所定幅とは、前記パルス信号に該当する信号と、ノイズ成分の信号とを区別し得るようにあらかじめ実験等に基づいて設定しておけばよい。
前記第1又は第2発明のイオン生成装置は、その一形態のイオン生成装置として、例えば前記放電電極に正又は負の高電圧を一定の周期で印加することにより該放電電極からコロナ放電を発生させるイオン生成装置であってもよい。そして、この場合には、前記フィルタリング手段は、通過させる前記高周波成分が、少なくとも前記一定の周期に対応する周波数よりも高い周波数の成分となるように構成されていることが好ましい(第3発明)。
ここで、前記放電電極に正又は負の高電圧を一定の周期で印加するイオン生成装置では、前記異常放電が発生することなく、前記コロナ放電が正常に発生している場合であっても、前記電圧信号には、前記一定の周期(前記放電電極に正又は負の高電圧を印加する周期)に対応する周波数、すなわち、前記一点の周期の逆数値の周波数を有する周波数成分が含まれるようになる。
この場合、第3発明における前記フィルタリング手段は、通過させる前記高周波成分が、少なくとも前記一定の周期に対応する周波数よりも高い周波数の成分となるように構成されているので、該フィルタリング手段の出力には、前記一定の周期に対応する周波数を有する周波数成分が、常に含まれないようになる。
このため、前記異常放電の発生時における前記フィルタリング手段の出力には、該異常放電の発生に起因する前記パルス信号に該当するパルス状の信号が、顕著性の高い信号として得られることとなる。
従って、第3発明によれば、前記異常放電の発生に起因する前記パルス信号が前記電圧信号に含まれている場合に、該パルス信号に該当するパルス状の信号を前記フィルタリン手段の出力から、より一層高い信頼性で適切に検出するようにすることができる。
なお、第3発明のイオン生成装置は、前記放電電極に正及び負の高電圧を交互に印加するイオン生成装置であってもよい。また、放電電極に印加する正及び負の高電圧は、正弦波状の電圧に限らず、パルス状の電圧であってもよい。
前記第1〜第3発明では、前記異常放電検知手段は、前記異常放電が発生したことを検知したとき、前記放電電極への前記高電圧の印加を遮断するように構成されていることが好ましい(第4発明)。
この第4発明によれば、前記異常放電が発生した場合に、前記放電電極への前記高電圧の印加が遮断される。このため、放電電極の損傷もしくは急激な劣化、あるいは、前記高電圧を発生する高電圧発生回路の損傷等が生じるのを防止することができる。
前記第1〜第4発明では、イオン生成装置は、複数の放電電極を備えるものであってもよい。そして、この場合、各放電電極毎に、各別に前記検出電極及びインピーダンス回路を備えるようにしてもよい。
ただし、複数の前記放電電極を有している場合に、該複数の放電電極のうちの少なくとも1グループのN個(N:2以上の整数)の放電電極に対向する1つ以上の前記検出用電極を有するようにして、前記N個の放電電極に対向する1つ以上の前記検出用電極を、単一の前記インピーダンス回路に接続するようにしてもよい(第5発明)。
この第5発明によれば、単一のインピーダンス回路をN個の放電電極に対して共用できるので、前記異常放電の発生を検知し得るイオン生成装置の構成を簡略化できると共に、該イオン生成装置のコストを低減できる。
なお、第5発明では、前記N個の放電電極に対向する検出用電極は、当該N個の放電電極のそれぞれに各別に対向する複数の検出用電極であってもよいが、当該N個の放電電極に対して共通の一体構造の検出用電極であってもよい。
また、前記第1〜第5発明では、前記検出用電極とは別に、コロナ放電を発生させるために前記放電電極に対向して該放電電極の近傍に配置される対向電極が備えられていてもよい。
ただし、前記検出用電極は、対向する前記放電電極との間にコロナ放電を発生させる対向電極としての機能を兼ねるように配置されていてもよい(第6発明)。
この第6発明によれば、前記検出用電極が前記対向電極としての機能を兼ねることで、イオン生成装置の部品点数を削減できる。従って、異常放電の発生を検知し得るイオン生成装置の構成を簡略化できると共に、該イオン生成装置のコストを低減できる。
次に、本発明のイオン生成装置の異常放電検知方法は、放電電極に正又は負の高電圧を印加することにより該放電電極からコロナ放電を発生させ、該コロナ放電により空気イオンを生成するイオン生成装置において、前記放電電極と該放電電極に対向して配置された検出用電極以外の異物物体との間で発生する放電である異常放電の発生の有無を検知する方法であって、前記検出用電極と接地部との間に接続され、該検出用電極と接地部との間に流れる電流に応じた電圧信号を出力するインピーダンス回路を用い、前記異常放電が発生したときに該異常放電の発生に起因して前記電圧信号に含まれるパルス信号を組成する周波数成分を含む高周波成分を通過させ、且つ、該高周波成分よりも低い周波数の低周波成分を遮断する周波数通過特性を有するフィルタリング処理を前記電圧信号に施すステップと、該フィルタリング処理により得られた信号から、前記パルス信号に該当する信号を検出する処理を実行し、前記パルス信号に該当する信号が検出されるか否かによって前記異常放電の発生の有無を検知するステップとを備え、前記フィルタリング処理を前記電圧信号に施すステップは、前記電圧信号の電圧値が所定の形態で変化するパルス信号をフィルタリング対象のパルス信号として前記フィルタリング処理を実行するように構成されており、前記所定の形態は、当該パルス信号の発生時に、前記電圧信号の電圧値が、当該パルス信号の発生前の電圧値から、該発生前の電圧値の極性と逆極性の電圧値に変化するという形態であることを特徴とする(第7発明)。
この第7発明によれば、前記インピーダンス回路から出力される電圧信号に、前記フィルタリング処理を施すことによって、前記異常放電が発生した場合には、前記第1発明と同様に、前記異常放電に発生に起因する前記パルス信号に該当する信号(パルス状の信号)が顕著に含まれる信号が得られる。
従って、上記フィルタリング処理により得られた信号から、前記異常放電の発生に起因する前記パルス信号を適切に検出できる。
このため、該パルス信号が検出されるか否かによって前記異常放電の発生の有無を検知することができる。
従って、第7発明によれば、放電電極と異物物体との間で異常放電が発生した場合に、その異常放電の発生を高い信頼性で適切に検知できる。
なお、第7発明においても、前記第2〜第6発明と同様の態様を採用できる。
補足すると、以上説明した本発明では、前記コロナ放電により生成される空気イオンを除電対象物に向って送風するファン等の送風手段が備えられていてもよい。
本発明の一実施形態を図1〜図6を参照して説明する。図1に示すように、本実施形態のイオン生成装置1は、コロナ放電によって正及び負の空気イオンを生成するための構成として、放電電極2と、この放電電極2に印加する正及び負の高電圧を発生する高電圧発生回路3とを備える。
さらにイオン生成装置1は、異常放電の発生の有無を検知するための構成として、放電電極2に対向して配置された検出用電極4と、該検出用電極4及び接地部5の間に接続されたインピーダンス回路6と、このインピーダンス回路6から出力される電圧信号Vpが入力される異常放電検知出力発生回路7とを備える。
上記異常放電は、放電電極2と検出用電極4以外の異物物体との間での放電である。
高電圧発生回路3は、パルス状の正の高電圧及び負の高電圧を、出力端子3aから一定の周期で交互に出力する回路である。なお、高電圧発生回路3から出力される高電圧の周波数(正及び負の高電圧の発生周期の逆数値の周波数)は、本実施形態では、例えば260Hzの周波数である。
かかる高電圧発生回路3としては、例えば特開2009−4177号公報等にて本願出願人が提案した回路が採用される。ただし、高電圧発生回路3は、他の公知の回路構成のものであってもよい。また、高電圧発生回路3は、正弦波状の交流高電圧を出力する回路であってもよい。
放電電極2は、先鋭な先端部を有するように針状の導体により構成されている。この放電電極2は、本実施形態では、絶縁体から成る容量性部材8と、高圧ケーブル9とを介して高電圧発生回路3の出力端子3aに接続されている。容量性部材8は、所定の容量値を有するコンデンサとして機能する部材である。従って、放電電極2は、高電圧発生回路3の出力端子3aに容量結合の形態で接続されている。
なお、放電電極2と高電圧発生回路3の出力端子3aとの間に、容量性部材8と直列に抵抗素子が介装されていてもよい。あるいは、容量性部材8の代わりに、抵抗素子を介して放電電極2を高電圧発生回路3に接続する(すなわち、放電電極2を、高電圧発生回路3の出力端子3aに抵抗結合の形態で接続する)ようにしてもよい。
検出用電極4は、導体により構成されており、放電電極2に近接して対向するように配置されている。より具体的には、本実施形態では、検出用電極4は、図2(a),(b)に示すように、例えば環状に形成されている。そして、検出用電極4は、放電電極2の先端部の周囲を囲むようにして(換言すれば、放電電極2の軸心方向と直交する方向で、放電電極2の外周面と間隔を存するようにして)、該放電電極2と同軸心に配置されている。
ただし、検出用電極4は、例えば図2(a)に二点鎖線で示すように、放電電極2の軸心方向で該放電電極2の先端から若干の間隔を存するように該放電電極2の前方側に配置されていてもよい。また、検出用電極4の形状は、環状に限らず線状、あるいは、板状等であってもよい。
補足すると、本実施形態のイオン生成装置1は、図示しない除電対象物の除電を行なうための除電装置として利用されるものである。このため、本実施形態のイオン生成装置1では、除電対象物の除電を行なう場合には、放電電極2の近辺でコロナ放電により生成される正及び負の空気イオンを、該放電電極2の前方に配置される除電対象物に向って移送するために、図示しない送風ファン等のエア供給機構(送風手段)によって、図2(a)に破線矢印で示す如く、放電電極2の前方側に向ってエア供給(送風)が行なわれるようになっている。
そして、検出用電極4は、放電電極2側から除電対象物への空気イオンの移送が極力妨げられないようにするために、上記の如く放電電極2の軸心方向と直交する方向で、放電電極2と間隔を存するように配置されている。
また、本実施形態では、検出用電極4は、放電電極2との間でコロナ放電を発生させる対向電極としての機能を兼ねるものである。そして、検出用電極4と、放電電極2の先端部との間の間隔(あるいは検出用電極4の半径)は、放電電極2と検出用電極4との間のコロナ放電が適切に発生し得るように設定されている。
ここで、検出用電極4の配置に関する本願発明者の実験、検討によれば、前記異常放電の発生の有無を適切に検知し得るようにする上では、検出用電極4と放電電極2の先端の間の、該放電電極2の軸心方向での距離が、−50〜50mmの範囲内の距離(好適には、−50〜0mmの範囲内の距離)となり、且つ、検出用電極4と放電電極2の先端の間の、該放電電極2の軸心方向と直交する方向での距離が、50mm以下の距離(好適には、10〜30mmの範囲内の距離)となるように、放電電極2に対する検出用電極4の配置位置を設定しておくことが望ましい。
なお、放電電極2の軸心方向での上記距離は、詳しくは、放電電極2の先端から該放電電極2の基端側に近づく距離を負の距離(−50mm等)、放電電極2の先端から該放電電極2の基端側と反対側に離れる距離を正の距離(50mm等)としている。例えば図2(a)に実線で示す検出用電極4と放電電極2の先端との間の、該放電電極2の軸心方向の距離が負の距離であり、図2(a)に二点差線で示す検出用電極4と放電電極2の先端との間の、該放電電極2の軸心方向の距離が正の距離である。
補足すると、放電電極2と検出用電極4との間の空間は、電気的には、図3において参照符号Aを付して示す如き等価回路で表現される。この等価回路Aは、放電電極2と検出用電極4との間の静電容量に相当する容量素子Caに、放電電極2と検出用電極4との間のコロナ放電によって流れる放電電流の抵抗に相当する抵抗素子Rdisを、スイッチSWdisを介して並列接続した回路である。
この場合、上記スイッチSWdisは、コロナ放電の発生状態でONとなり、コロナ放電が発生していない状態ではOFFとなるスイッチである。従って、等価回路Aは、コロナ放電の発生状態では、容量素子Caと抵抗素子Rdisとの並列回路により構成され、コロナ放電が発生していない状態では、容量素子Caにより構成される回路である。
インピーダンス回路6は、インピーダンスを有する回路素子により構成された回路である。このインピーダンス回路6は、本実施形態では、図3に示すように、単一の抵抗素子10により構成された回路である。
そして、インピーダンス回路6は、検出用電極4と接地部5との間でインピーダンス回路6を介して流れる電流に応じた電圧信号Vpとして、抵抗素子10に発生する電圧を出力する。該抵抗素子10に発生する電圧は、本実施形態では、検出用電極4と接地部5との間の電圧に一致する。
この場合、インピーダンス回路6の抵抗素子10の抵抗値は、放電電極2と前記異物物体との間で異常放電が発生した場合に電圧信号Vpに含まれることとなる後述のパルス信号が異常放電検知出力発生回路7で検知可能な大きさの信号となるように設定される。その抵抗値は、例えば3kΩ程度に設定される。
なお、インピーダンス回路6の回路構成は、図3の構成に限られるものではない。例えば、2つ以上の抵抗素子を直列もしくは並列に接続して構成されていてもよい。そして、インピーダンス回路6は、検出用電極4と接地部5との間の電圧を分圧した電圧を電圧信号Vpとして出力するようにしてもよい。さらに、インピーダンス回路6は、抵抗素子に加えて、例えば容量素子を含んでいてもよい。
インピーダンス回路6は、基本的には、放電電極2に印加される正又は負の高電圧に応じて、放電電極2と検出用電極4との間の空間に発生する変位電流に応じた電圧信号(放電電極2に印加する高電圧の周波数よりも高周波域の周波数成分を含む電圧信号)を出力し得るように構成されていればよい。
異常放電検知出力発生回路7は、本発明における異常放電検知手段に相当するものである。ここで、異常放電検知出力発生回路7の具体的な構成を説明する前に、インピーダンス回路6から出力される電圧信号Vpについて説明しておく。
放電電極2に高電圧発生回路3から正及び負の高電圧のいずれか一方、例えば正の高電圧を印加した場合、接地部5に対する放電電極2の電位(実測値)は、異常放電が発生しない正常な場合には、図5のグラフa1で示すように変化する。
一方、放電電極2への正の高電圧の印加途中で、放電電極2と異物物体との間で火花放電等の異常放電が発生した場合には、放電電極2の電位(実測値)は、図5のグラフa2で示すように変化する。すなわち、異常放電の発生に伴い、放電電極2の電位の大きさが急激に低下する(急激にゼロ電位に近づく)。
なお、上記のような放電電極2の電位の変化は、放電電極2に負の高電圧を印加した場合についても同様である。この場合には、放電電極2の電位は、図5のグラフa1,a2の極性を反転させた形態で変化する。
他方、放電電極2への正又は負の高電圧の印加時には、放電電極2と検出用電極4との間の静電容量に応じて、該放電電極2と検出用電極4との間に、放電電極2の電位の変化に伴う変位電流が発生し、その変位電流によって、検出用電極4に電圧が誘起される。そして、この誘起電圧によって、検出用電極4と接地部5との間には、上記変位電流に相当する電流(変位電流と同じ電流値の電流)が前記インピーダンス回路6を通って流れる。これにより、該インピーダンス回路6から上記変位電流に応じた電圧信号Vpが出力される。
このとき、異常放電が発生していない正常な状態では、電圧信号Vpは放電電極2の電位の変化と同様の形態で概ね滑らかに変化するが、異常放電が発生した場合には、放電電極2の電位が前記した如く急激に変化することに応じて、前記変位電流も急激に変化する。このため、インピーダンス回路6から出力される電圧信号Vpに急峻なパルス信号が含まれるようになる。
例えば、異常放電の発生によって、図5のグラフa2で示すように放電電極2の電位が変化した場合、インピーダンス回路6から出力される電圧信号Vpは、概ね図6(a)に示すような形態で変化して、該電圧信号Vpに異常放電に起因するパルス信号が含まれるようになる。
そこで、本実施形態の前記異常放電検知出力発生回路7は、放電電極2に正及び負の高電圧の一方、例えば正の高電圧が印加されている状態でインピーダンス回路6から入力される電圧信号Vpから、異常放電に起因するパルス信号の有無を検出するように機能するものである。
以下に、かかる機能を有する異常放電検知出力発生回路7を具体的に説明する。異常放電検知出力発生回路7は、本実施形態では、図3に示す如く、インピーダンス回路6から出力される電圧信号Vpが入力されるハイパスフィルタ11と、このハイパスフィルタ11の出力から、前記異常放電が発生したときに電圧信号Vpに含まれることとなるパルス信号に該当する信号(パルス状の信号)を検出して、該パルス状の信号の有無を示す出力を、異常放電の発生の有無を示す出力として生成するパルス信号検出部12とを備える。
ハイパスフィルタ11は、本発明におけるフィルタリング手段に相当するものである。このハイパスフィルタ11は、インピーダンス回路6から入力される電圧信号Vpのうち、所定の遮断周波数よりも低域側の周波数成分を遮断し、該遮断周波数以上の周波数成分を通過する周波数通過特性(ハイパス特性)を有する。
この場合、ハイパスフィルタ11の上記遮断周波数は、高電圧発生回路3から出力される高電圧の周波数(正及び負の高電圧の発生周期の逆数値の周波数)よりも高い周波数に設定されている。
その遮断周波数は、より詳しくは、異常放電を生じることなく放電電極2のコロナ放電が正常に行なわれている場合にインピーダンス回路6から出力される電圧信号Vpに応じてハイパスフィルタ11から出力される信号(特に、放電電極2への高電圧の印加周期の逆数値の基本周波数成分の信号と、その基本周波数の整数倍の高調波成分の信号)の大きさが十分に微小なものとなり、且つ、異常放電に起因するパルス信号が電圧信号Vpに含まれる場合には、該パルス信号に該当する信号が、ハイパスフィルタ11から出力されるように設定される。本実施形態では、この遮断周波数は、例えば30kHz程度に設定されている。
かかるハイパスフィルタ11としては、種々様々の形態の回路構成を採用することができる。一例として、ハイパスフィルタ11は、例えば図4に示すようなアナログフィルタ(増幅回路を含むアナログフィルタ)により構成される。
このハイパスフィルタ11は、コンデンサ11a、抵抗素子11b、トランジスタ11c、抵抗素子11dを図示の如く接続して構成されている。そして、該ハイパスフィルタ11は、放電電極2に正の高電圧が印加されている状態でインピーダンス回路6から入力される電圧信号Vpからコンデンサ11aを介して高周波成分を抽出(低周波成分を遮断)し、この高周波成分を、トランジスタ11cを介して増幅することで、電圧信号Vpの高周波成分を示す検出信号Vadを出力する。
例えば、インピーダンス回路6の電圧信号Vpが、図6(a)に示すようなパルス信号を含む電圧信号である場合に、図4のP1の位置の電圧(トランジスタ11cのベースに対する入力電圧)は、図6(b)に示すようにパルス状に変化する信号となる。このとき、ハイパスフィルタ11から出力される検出信号Vadは、図6(c)に示すようにパルス状に変化する信号、すなわち、電圧信号Vpに含まれるパルス信号に該当するパルス状の信号となる。
なお、異常放電が発生していない状態では、ハイパスフィルタ11から出力される検出信号Vadは、ほぼゼロレベルの電圧値に維持される信号となる。
ここで、インピーダンス回路6から出力される電圧信号Vpには、一般には、ハイパスフィルタ11を通過可能な高周波のノイズ成分が含まれる。ただし、そのようなノイズ成分は、通常、瞬時的にひげ状に立ち上がるような信号である。なお、図6(a)〜(c)では、図を判り易くするための便宜上、上記の如きノイズ成分を除去した形で信号波形を記載している。
上記ノイズ成分に対して、前記異常放電の発生に起因して電圧信号Vpに含まれることとなるパルス信号、ひいては、該パルス信号に該当する信号としてハイパスフィルタ11から出力されるパルス状の信号は、そのピーク値及び時間幅の一方又は両方が、通常、上記の如きノイズ成分よりも大きなものとなる。
そこで、パルス信号検出部12は、ハイパスフィルタ11の出力(検出信号Vad)から、あらかじめ設定された所定値以上の大きさの電圧値(ピーク値)を有し、且つ、あらかじめ設定された所定幅以上の時間幅を有するパルス状の信号を、異常放電が発生した場合に電圧信号Vpに含まれることとなるパルス信号に該当する信号として検出する。そして、パルス信号検出部12は、該パルス状の信号が検出されたか否かを示す信号Voutを、前記異常放電の有無を示す異常放電検知信号Voutとして出力する。なお、パルス信号検出部12は、本発明におけるパルス信号検出手段に相当するものである。
このような機能を有するパルス信号検出部12は、種々様々の形態の回路構成によって実現できる。一例として、パルス信号検出部12は、例えば図4に示すような回路により構成される。このパルス信号検出部12は、ハイパスフィルタ11の出力(検出信号Vad)が入力されるシュミットトリガ回路12aと、このシュミットトリガ回路12aの出力を積分する積分回路12bと、この積分回路12bの出力が入力されるシュミットトリガ回路12cとを備える。
シュミットトリガ回路12aは、ハイパスフィルタ11の出力(検出信号Vad)に、所定値以上の大きさのピーク値を有するパルス状の信号が含まれている場合に、そのパルス状の信号の幅に相当するパルス幅を有する矩形波信号を出力する。例えば、図6(c)に示したように、検出信号Vadに、異常放電に対応するパルス信号が含まれている場合に、シュミットトリガ回路12aの出力電圧(図4のP2の位置の電圧)は、図6(d)に示すような矩形波信号となる。
かかるシュミットトリガ回路12aにより、検出信号Vadからピーク値が小さいノイズ成分が除去される。
このシュミットトリガ回路12aの出力を入力する積分回路12bは、例えば可変抵抗値の抵抗素子12b1及びコンデンサ12b2を図示の如く接続して構成される。そして、該積分回路12bは、シュミットトリガ回路12aの出力(矩形波信号)を、あらかじめ調整された抵抗素子12b1の抵抗値とコンデンサ12b2の容量値とに応じて規定される所定の時定数で積分した信号をコンデンサ12b2から出力する。
例えば、シュミットトリガ回路12aから、図6(d)に示したような矩形波信号が積分回路12bに入力された場合に、積分回路12bの出力電圧(図4のP3の位置の電圧)は、図6(e)に示すような信号となる。
なお、上記積分回路12bは、換言すれば、ローパス特性のフィルタである。
この積分回路12bの出力を入力するシュミットトリガ回路12cは、積分回路12bの出力レベル(電圧値)が所定値以上となった場合に、ハイレベルの矩形波信号を出力し、積分回路12bの出力レベルが所定値よりも小さい状態では、ローレベルの信号を出力する。
例えば図6(e)に示したような信号が積分回路12bから出力された場合に、シュミットトリガ回路12cから、図6(f)に示すようなハイレベルの矩形波信号が出力される。
このようにシュミットトリガ回路12cから出力される信号が、前記異常放電検知信号Voutである。
ここで、前記積分回路12bの出力レベルが所定値以上となるということは、シュミットトリガ回路12aに入力されたパルス状の信号が、所定値以上の大きさの電圧値(ピーク値)を有し、且つ、所定幅以上の時間幅を有するパルス状の信号であることを意味する。
従って、パルス信号検出部12は、上記の回路構成によって、所定値以上の大きさの電圧値(ピーク値)を有し、且つ、あらかじめ設定された所定幅以上の時間幅を有するパルス状の信号を検出できることとなる。
そのため、パルス信号検出部12がシュミットトリガ回路12cから出力する異常放電検知信号Voutが、電圧信号Vpに異常放電の発生に起因するパルス信号が含まれるか否かを示す信号として得られることとなる。
なお、本実施形態では、異常放電検知出力発生回路7の出力(パルス信号検出部12から出力される異常放電検知信号Vout)は、前記高電圧発生回路3の動作制御に利用され、該異常放電検知信号Voutが、異常放電の発生を示すハイレベルの矩形波信号になった場合に、それに応じて、高電圧発生回路3の作動(高電圧の出力)が停止される。
この場合、高電圧発生回路3の作動を停止させることに加えて、表示器、ランプ、ブザー等の報知器(図示省略)によって、異常放電が発生した旨を作業者等に報知するようにしてもよい。
補足すると、前記異常放電検知出力発生回路7のハイパスフィルタ11や、パルス信号検出部12の回路構成は、図4に示したものに限定されるものでないことはもちろんであり、他の回路構成を採用してもよい。
また、ハイパスフィルタ11の代わりに、低域側の遮断周波数に加えて、高域側の遮断周波数をも有するバンドパスフィルタを用いてもよい。さらに、ハイパスフィルタ11は、FFT等のデジタル処理、あるいはソフトウェア処理によって、電圧信号Vpにハイパス特性(又はバンドパス特性)のフィルタリング処理を施すものであってもよい。
また、例えば、ハイパスフィルタ11(又はバンドパスフィルタ)の出力をA/D変換器を介してデジタル値として検知し、その検知したデジタル値から、CPU等を有する演算処理ユニットのソフトウェア処理によって、異常放電に起因するパルス信号の有無を検出するようにしてもよい。
また、異常放電検知出力発生回路7は、異常放電の発生に起因するパルス信号が電圧信号Vpに含まれていない状態では、ハイレベルの信号を出力し、該パルス信号が電圧信号Vpに含まれている場合に、ローレベルの信号を出力するようにしてもよい。
次に、本実施形態のイオン生成装置1の異常放電の検知に関する全体的な作動を説明する。
除電対象物(帯電物体)の除電を行なう場合に、高電圧発生回路3を起動することで、該高電圧発生回路3の出力端子3aから放電電極2に、正及び負の高電圧が一定周期で交互に印加される。なお、この場合、エア供給機構による送風も行なわれる。ただし、送風を行なうことは必須ではない。
このとき、放電電極2に正又は負の高電圧が印加されている期間において、放電電極2と対向電極としての検出用電極4との間で該放電電極2の先端部に集中するように発生する電界によって、放電電極2の先端部からコロナ放電が発生する。そして、このコロナ放電によって空気がイオン化することで、空気イオンが生成される。
この場合、放電電極2に正の高電圧が印加された状態でのコロナ放電によって、正の空気イオンが生成され、放電電極2に負の高電圧が印加された状態でのコロナ放電によって、負の空気イオンが生成される。
そして、このように生成される正及び負の空気イオンによって、除電対象物の帯電電荷が中和され、該除電対象物の除電がなされる。
このような作動中において、放電電極2からのコロナ放電が正常に発生している場合には、異常放電検知出力発生回路7の前記した作動によって、該異常放電検知出力発生回路7から出力される異常放電検知信号Voutは、異常放電が発生していないことを示す信号(本実施形態ではローレベルの信号)に維持される。
一方、接地された(もしくは接地部に導通する)なんらかの異物物体が放電電極2に接近もしくは接触すると、放電電極2と該異物物体との間で異常放電が発生する。
このとき、インピーダンス回路6から出力される電圧信号Vpに、前記したように、異常放電の発生に起因するパルス信号が含まれることとなる。
そして、このパルス信号に該当するパルス状の信号が、異常放電検知出力発生回路7の前記した作動によって、ハイパスフィルタ11の出力(検出信号Vad)から検出され、該異常放電検知出力発生回路7から、異常放電が発生していることを示す異常放電検知信号Vout(本実施形態では、ハイレベルの矩形波信号)が出力される。
これに応じて、前記高電圧発生回路3の作動が停止され、放電電極2への正及び負の高電圧の印加が遮断される。
以上の如く、本実施形態によれば、放電電極2と異物物体との間で異常放電が発生した場合に、該異常放電の発生を、高い信頼性で検知することができる。そして、その検知に応じて直ちに、放電電極2への正及び負の高電圧の印加を遮断することで、放電電極2の損傷もしくは急激な劣化、あるいは、高電圧発生回路3の損傷を防止することができる。
補足すると、前記高電圧発生回路3の出力端子3aと、異物物体との間で異常放電が生じることもある。その場合においても、前記インピーダンス回路6の電圧信号Vpには、放電電極2と異物物体との間で異常放電が発生した場合と概ね同様に、異常放電に起因するパルス信号が含まれることとなる。そして、この場合においても、異常放電検知出力発生回路7により、当該異常放電の発生を検知できる。
次に、本発明の実施形態の変形態様をいくつか説明する。
前記実施形態では、放電電極2が単一である場合のイオン生成装置1を例にとって説明したが、本発明を適用するイオン生成装置は、複数の放電電極2を備えるものであってもよい。
その場合、各放電電極2毎に、検出用電極4、インピーダンス回路6及び異常放電検知出力発生回路7の組を備えるようにしてもよいが、イオン生成装置に備える全ての放電電極2を、例えばN個(N:2以上の整数)ずつのグループに分類しておき、各グループのN個の放電電極2に対して、単一のインピーダンス回路6及び異常放電検知出力発生回路7を共用してもよい。
例えば、図7に示すように、1つのグループに属するN個(図示例では5個)の放電電極2のそれぞれに対向して配置された検出用電極4を、単一のインピーダンス回路6に並列に接続し、このインピーダンス回路6の出力(電圧信号Vp)を、前記実施形態と同様の異常放電検知出力発生回路7に入力するようにしてもよい。なお、この場合、上記N個の放電電極2には、同じ高電圧が高電圧発生回路3から同時に印加される。
このようにしても、インピーダンス回路6から出力される電圧信号Vpは、異常放電の発生時に、それに起因するパルス信号が前記実施形態と同様に含まれるものとなる。従って、異常放電検知出力発生回路7により、該パルス信号を適切に検出して、異常放電の発生を検知できる。
なお、図7に示す例では、N個の放電電極2のそれぞれ毎に、検出用電極4を備えるようにしているが、それらの検出用電極4を一体に構成して、N個の放電電極2に対して共通の検出用電極4を備えるようにしてもよい。この場合には、当該共通の検出用電極4は、例えば、各放電電極2にそれぞれ臨む複数の貫通穴を穿設した板状の導体部材、あるいは、N個の放電電極2の側方に配置した棒状の導体部材により構成することができる。
また、前記実施形態では、異常放電検知出力発生回路7は、放電電極2に正の高電圧が印加された状態でのインピーダンス回路6の電圧信号Vpに、異常放電の発生に起因するパルス信号が含まれているか否かを検知するようにしたが、放電電極2に負の高電圧が印加された状態でのインピーダンス回路6の電圧信号Vpに、異常放電の発生に起因するパルス信号が含まれているか否かを検知するようにしてもよい。
あるいは、放電電極2に正の高電圧が印加された状態と、負の高電圧が印加された状態との両方で、インピーダンス回路6の電圧信号Vpに、異常放電の発生に起因するパルス信号が含まれているか否かを検知するようにしてもよい。
また、前記実施形態では、放電電極2に正及び負の高電圧を交互に印加するイオン生成装置(交流方式のイオン生成装置)を例にとって説明したが、本発明を適用するイオン生成装置は、放電電極2に正及び負の高電圧のうちの一方の極性の高電圧だけを印加するよな直流方式のイオン生成装置であってもよい。さらに、この場合、正の高電圧を印加する放電電極と、負の高電圧を印加する放電電極とを各別に備える直流方式のイオン生成装置であってもよい。
これらの直流方式のイオン生成装置においても、前記実施形態のイオン生成装置と同様の構成で、放電電極に対向する検出用電極と接地部とを接続するインピーダンス回路と、異常放電検知出力発回路と備えるようにすることで、前記実施形態と同様に、異常放電の発生を検知することができる。