JP5804598B2 - 超伝導フラーレンナノ材料及びその製造方法 - Google Patents

超伝導フラーレンナノ材料及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、超伝導フラーレンナノ材料及びその製造方法に関するものである。
フラーレンC60は、1970年にその存在が予言され、1985年に発見された物質である。更に、1991年にそのフラーレンC60にカリウムを添加したK60が超伝導となることが発見された(非特許文献1、非特許文献8)。K60は超伝導転移温度(Tc)が19Kと比較的高く、炭素という軽元素材料からなるので、軽い超伝導体として利用できると期待された。また、Cs60は、加圧によって38Kという高いTcを示した(非特許文献2)。アルカリ金属元素を添加することにより、C60蒸着膜やC60粉末が超伝導化することが報告された。
近年、C60からなるフラーレンナノファイバー(フラーレン細線、フラーレンナノウィスカー(FNW:Fullerene Nanowhisker)を包含する概念の名称)の超伝導化の可能性について示唆された(特許文献1、2)。特許文献1は“Fine carbon wires and methods for producing the same”に関するものであり、“the fullerene nanowhiskers may possibly become superconductors by adding alkali metal elements thereto(35ページ右欄)”と記載され、FNWにアルカリ金属を添加することにより超伝導が発現することが示唆されている。また、特許文献2は“炭素細線及び炭素細線の製造方法”に関するものであり、「FNWはアルカリ金属元素を添加することによって超伝導体となる可能性を有している(段落74)」と記述されている。
液−液界面析出法(LLIP法:Liquid−Liquid Interfacial Precipitation法)により、FNWが形成された報告がある(非特許文献3)。また、断面TEM像を基にして、C60NWが、複数の空孔部が存在する多孔質なコア部分と、緻密質な表面層(シェル部分)から成るコア−シェル構造を有することについての報告がある(非特許文献4)。また、ScN内包C80のフラーレンナノウィスカーやフラーレンナノシートが合成された報告もある(非特許文献5)。また、KOH濃度が9.9×10−3mol/Lより高濃度ではC60NWが生成しないが、低濃度のKOHを添加してC60NWの合成が行われたとの報告もある(非特許文献6)。更にまた、アルカリ金属をドープしたC60ナノチューブの合成についての報告がある(非特許文献7)。
しかし、超伝導フラーレン細線が現実に製造されたとの報告はなかった。
米国特許US−6890505−B2 特開2003−001600号公報
A.F.Hebard,M.J.Rosseinsky,R.C.Haddon,D.W.Murphy,S.H.Glarum,T.T.M.Palstra A.P.Ramirez,and A.R.Kortan,Nature,350,600(1991). A.Y.Ganin,Y.Takabayashi,Y.Z.Khimyak,S.Margadonna,A.Tamai,M.J.Rosseinsky,and K.Prassides,Nature Mater.,7,367(2008) K.Miyazawa,Y.Kuwasaki,A.Obayashi and M.Kuwabara,"C60 nanowhiskers formed by the liquid−liquid interfacial precipitation method",J.Mater.Res.,17[1](2002)83−88. Ryoei Kato and Kun’ichi Miyazawa, "Cross−sectional structural analysis of C60 nanowhiskers by transmission electron microscopy",Diamond & Related Materials,20(2011)299−303 Takatsugu Wakahara,Yoshihiro Nemoto,Mingsheng Xu,Kun−ichi Miyazawa and Daisuke Fujita,"Preparation of endohedral metallofullerene nanowhiskers and nanosheets",Carbon,48(2010)3359-3363. Kun’ichi Miyazawa,Chikashi Nishimura,Masahisa Fujino,Tadatomo Suga and Tetsuro Yoshii,"Fabrication and properties of fullerene nanowhiskers and nanofibers",Transactions of the Materials Research Society of Japan,29[5](2004)1965−1968 Wen Cui,Dedi Liu,Mingguag Yao,Quanjun Li,Ran Liu,Zhaodong Liu,Wei Wu,Bo Zou,Tian Cui,Bingbing Liu,Bertil Sundqvist,"Synthesis of alkali−metal−doped C60nanotubes",Diamond & Related Materials,20(2011)93−96 D.W.Murphy,M.J.Rosseinsky,R.M.Fleming,R.Tycko,A.P.Ramirez,R.C.Haddon,T.Siegrist,G.Dabbagh,J.C.Tully,R.E.Walstedt, "Synthesis and characterization of alkali metal fullerides:AxC60",Journal of Physics and Chemistry of Solids,53[11](1992)1321−1332.
本発明は、直径、厚さ又は長さが1μm未満であり、超伝導特性を発現する超伝導フラーレンナノ材料(超伝導フラーレン細線、超伝導フラーレン薄膜及び超伝導フラーレン微結晶)及びその製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、液−液界面析出法と金属蒸気による金属元素添加法を組み合わせることにより、C60フラーレン細線にアルカリ金属イオンを均一に添加でき、C60フラーレン細線を超伝導体とすることを初めて可能にして、本発明を完成した。
本発明は、以下の構成を有する。
(1)フラーレン分子結晶と、前記フラーレン分子結晶中に添加された金属イオンと、を有し、前記フラーレン分子結晶の直径、厚さ又は長さのいずれかが1μm未満とされ、かつ、前記フラーレン分子結晶には当該結晶の成長方向に対する垂直断面の多孔質コア部に1つ以上の空孔部が設けられていると共に
前記金属イオンが、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン及び希土類金属イオンの群から選択される1又は2以上の金属イオンであり、
前記金属イオンの添加量がフラーレン分子1個に対して金属イオン6個未満の濃度であり、
前記空孔部の直径が1nm以上200nm未満であり、
遮蔽体積分率(超伝導体積分率)が80%以上であることを特徴とする超伝導フラーレンナノ材料。
(2)前記金属イオンがKイオンであり、前記金属イオンの添加量がフラーレン分子1個に対して金属イオン3個の濃度であることを特徴とする(1)に記載の超伝導フラーレンナノ材料。
(3)前記超伝導フラーレンナノ材料の臨界電流密度Jcが2×10 A/cm 以上であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の超伝導フラーレンナノ材料。
(4)前記フラーレン分子結晶がC60、C70以上の高次フラーレン及びそれらの誘導体並びにそれらの元素内包体の群から選択される1又は2以上のフラーレン分子により構成されていることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の超伝導フラーレンナノ材料。
(5)前記フラーレン分子結晶がフラーレンナノチューブ又はフラーレンナノウィスカーであることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の超伝導フラーレンナノ材料。
(6)フラーレン分子結晶の直径が1μm未満であり、かつ、長さ/直径のアスペクト比が3以上のフラーレン細線であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の超伝導フラーレンナノ材料。
(7)フラーレン分子結晶の厚さが1μm未満であり、かつ、厚さ/直径のアスペクト比が1未満のフラーレン薄膜であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の超伝導フラーレンナノ材料。
(8)フラーレン分子結晶の長さ及び直径が1μm未満であり、かつ、長さ/直径のアスペクト比が1以上3未満のフラーレン微結晶であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の超伝導フラーレンナノ材料。
(9)フラーレン良溶媒にフラーレンを分散させたフラーレン溶液に、フラーレン貧溶媒からなる溶液を重層して液−液界面を形成した2層溶液を調製し、これを拡散混合した拡散混合液を調製してから、前記拡散混合液を濾別・乾燥して、直径、厚さ又は長さが1μm未満のフラーレン分子結晶を作製する工程と、
前記フラーレン分子結晶をアルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素及び希土類金属元素の群から選択される1又は2以上の金属元素とともにガラス管に封入してから、前記ガラス管を加熱して発生させた金属蒸気にフラーレン分子結晶を曝して、金属元素をフラーレン分子結晶に添加する工程と、
前記金属イオンの添加されたフラーレン分子結晶の遮蔽体積分率を飽和させる熱処理を行う工程と、
を有することを特徴とする超伝導フラーレンナノ材料の製造方法。
(10)前記加熱温度が、封入する金属元素の昇華温度以上であることを特徴とする(9)に記載の超伝導フラーレンナノ材料の製造方法。
(11)前記2層溶液に超音波を照射することを特徴とする(9)又は(10)に記載の超伝導フラーレンナノ材料の製造方法。
(12)前記フラーレン良溶媒がトルエンであり、前記フラーレン貧溶媒がイソプロピルアルコールであることを特徴とする(9)〜(11)のいずれかに記載の超伝導フラーレンナノ材料の製造方法。
(13)前記拡散混合液を静置することを特徴とする(9)〜(12)のいずれかに記載の超伝導フラーレンナノ材料の製造方法。
本発明の超伝導フラーレンナノ材料によれば、フラーレン分子結晶中に金属イオンを均一に添加することができ、かつ、8面体空隙及び4面体空隙に充填しつつ、超伝導に関与する電子の増加を促し、超伝導を発現させることができる。
本発明の超伝導フラーレンナノ材料の製造方法によれば、拡散混合して、直径、厚さ又は長さが1μm未満のフラーレン分子結晶を作製することができるとともに、濾別・乾燥することにより、フラーレン分子結晶に1つ以上の空孔部を形成することができ、かつ、金属蒸気にフラーレン分子結晶を曝すことにより、フラーレン分子結晶の表面及び空孔部を介して均一に金属イオンを拡散させることができる。なお、蒸気となっている金属元素はフラーレン分子結晶内に入ってイオン化される。これにより、超伝導を発現可能なフラーレンナノ材料を製造できる。
本発明の超伝導フラーレンナノ材料の一例を示す図であって、超伝導フラーレン細線を示す図である。 フラーレンC60、金属イオンKを用いたときの結晶構造の金属元素添加量依存性を説明する図である。 60、K60、K60の電子のt1uバンド構造である。 本発明の実施形態である超伝導フラーレンナノ材料の製造方法を示すフローチャートである。 本発明の超伝導フラーレンナノ材料の一例を示す図であって、超伝導フラーレン薄膜を示す図である。 本発明の超伝導フラーレンナノ材料の一例を示す図であって、超伝導フラーレン微結晶を示す図である。 60粉末のSEM写真であって、図7(a)はKドープ前、図7(b)はK3.3ドープ後である 60NWのSEM写真であって、図8(a)はKドープ前であり、図8(b)はK3.3ドープ後である。 Kドープ前(Before heat)のサンプルとK60NW(x=1.6〜6.0)のZFCにおける磁化率M/H(縦軸)の温度変化を示すグラフである。 Kドープ前(Before heat)のサンプル(比較例1サンプル)とKドープC60NW(実施例1〜7サンプル)の2Kの遮蔽体積分率をK濃度(仕込み組成)関数としたグラフである。 3.360NW(実施例4サンプル)の2Kの遮蔽体積分率を熱処理時間の関数としたグラフである。 60結晶粉末(下)とC60NW(上)のX線回折図形である。 60NWの断面TEM(透過電子顕微鏡)像である。 3.360NWの臨界電流密度Jと磁場の関係を示すグラフである。
(本発明の第1の実施形態)
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態である超伝導フラーレンナノ材料、その製造方法、超伝導フラーレン細線、超伝導フラーレン薄膜及び超伝導フラーレン微結晶について説明する。
超伝導フラーレンナノ材料は、直径、厚さ又は長さのいずれかが1μm未満であって、フラーレン分子からなり、超伝導特性を発現する材料である。
具体的には、直径が1μm未満の超伝導フラーレン細線、厚さが1μm未満の超伝導フラーレン薄膜及び直径及び厚さ(長さ)、すなわち、粒径が1μm未満の超伝導フラーレン微結晶が該当する。
<超伝導フラーレンナノ材料:超伝導フラーレン細線>
まず、本発明の第1の実施形態である超伝導フラーレンナノ材料について説明する。
図1は、本発明の実施形態である超伝導フラーレンナノ材料の一例を示す図であって、超伝導フラーレン細線を示す図である。
図1(a)は平面図であり、図1(b)は図1(a)のA−A’線における断面図であり、図1(c)は図1(b)のB部における拡大模式図である。
図1に示すように、本発明の実施形態である超伝導フラーレンナノ材料1は、超伝導フラーレン細線10であり、針状のフラーレン分子結晶11と、フラーレン分子結晶11中に添加された金属イオンMと、を有する。
金属イオンMの添加量が、フラーレン分子1個に対して金属イオン6個未満の濃度である。
図1(a)に示すように、フラーレン分子結晶11は結晶成長方向に対する垂直断面形状が六角形の針状結晶又は非晶質針状晶である。非晶質針状晶はフラーレンがランダムに配列したものであり、また、部分的に非晶質部分を有する針状結晶であってもよい。しかし、垂直断面形状が六角形に限られるものではなく、三角形、四角形、八角形等の多角形であってもよい。また、円形及びリング形状とされていてもよい。
なお、フラーレンの直径が1000nm未満の針状結晶又は非晶質針状晶はフラーレンナノファイバーとも呼ぶ。なお、フラーレンナノウィスカーは直径1000nm未満の単結晶状のフラーレンナノファイバーである。
フラーレン分子結晶11は、結晶成長方向に対して平行な方向に延伸する中空構造を有するフラーレンナノチューブでもよい。なお、フラーレンナノチューブは直径1000nm未満のフラーレンチューブである。
フラーレン分子結晶11の直径d11は1μm未満である。長さk11は限定されていない。しかし、長さk11/直径d11のアスペクト比は3以上である。
フラーレン分子がひとつずつリニアにつながり、長さk11が3nm以上のものはフラーレンナノファイバーである。長さk11が5μm以下のものは極短フラーレンナノウィスカーと呼ばれる。
図1(a)に示すように、結晶成長方向はfcc[110]方向である。
図1(b)に示すように、フラーレン分子結晶11は、多孔質コア部11aと緻密質表層部11bのコア−シェル構造をとっている。前記結晶成長方向に対する垂直断面で、多孔質コア部11aには1つ以上の空孔部11cが設けられている。
空孔部11cは、1つ以上あればよい。これにより、内部表面が増えるので金属元素をより速く拡散できる。
空孔部11cは、直径1nm以上200nm未満である。C60分子1個が抜けても空孔ができ、この小さい空孔も拡散を助ける。そこで、空孔部11cの直径は1nm以上であればよい。
フラーレン分子結晶11は、C60、C70以上の高次フラーレン及びそれらの誘導体並びにそれらの元素内包体の群から選択される1又は2以上のフラーレン分子により構成されている。
フラーレン分子結晶11として、C60、C70、76、C80、C60−C70複合体等を挙げることができる。
また、フラーレン分子結晶11として、例えば、(C60[C(COOC]、C60(2−methoxycarbonyl−N−methylpyrrolidine)、C60N)等のフラーレン誘導体等を挙げることができる。
また、フラーレン分子結晶11として、C60誘導体−C80の複合体、C60誘導体−C70−C80の複合体等を挙げることができる。
更にまた、フラーレン分子結晶11として、ScN、Gd、Li、及び、He、Ne、Kr、Xeなどの希ガス等の群から選択される1又は2以上の元素を内包するC60元素内包体、C70の元素内包体又はC80、82の元素内包体等を挙げることができる。ScNのようなクラスターとして包含してもよい。
以上の構成により、フラーレン分子結晶11は、具体的には、C60ナノチューブ、C60−C70ナノウィスカー、C60−C70ナノチューブ、C70ナノウィスカー、C70ナノチューブ、C60誘導体ナノウィスカー、C60誘導体ナノチューブ、C60−C60誘導体ナノウィスカー、C60−C60誘導体ナノチューブ、ScN内包C80フラーレンナノウィスカー等の元素内包フラーレンナノウィスカー、ScN内包C80フラーレンナノチューブ等の元素内包フラーレンナノチューブ等である。
金属イオンMは、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン及び希土類金属イオンである。
前記アルカリ金属イオンは、Naイオン、Kイオン、Rbイオン、Csイオンの群から選択され、前記アルカリ土類金属イオンは、Caイオン、Srイオン、Baイオンの群から選択され、前記希土類金属イオンは、Ybイオン、Smイオンの群から選択されることが好ましい。
金属イオンMは1又は2以上添加される。すなわち、2以上の異なる金属イオンMを添加してもよい。
図1(c)は、非特許文献8の図1(c)を基にした模式図である。
図1(c)に示すように、フラーレン分子1個に対して金属イオン3個にしたときに、fcc結晶構造の4面体空隙(Tetrahedral−site)2個及び8面体空隙(Octahedral−site)1個の配列ナノ空間の半分を埋める。このとき、C60の3重縮退しているt1u軌道に電子が半分充填され、Fermiレベルの状態密度NEFが高くなる。C60のfcc構造のphonon frequencyが高くなり、BCS理論による超伝導転移温度を上げる。このようにして、超伝導特性を発現させることができる。
このように、金属イオンMの添加量は、フラーレン分子1個に対して金属イオン3個が好ましいが、フラーレン分子1個に対して金属イオン6個未満とすれば、fcc結晶構造の4面体空隙(Tetrahedral−site)2個及び8面体空隙(Octahedral−site)1個の一部あるいは全部、bcc結晶構造の4面体空隙(Tetrahedral−site)6個の一部を埋めることができ、t1u軌道に電子を完全に充填することがないので、そうしてもよい。2個以上4個以下が好ましい。
金属イオンMを添加したC60のフラーレン分子結晶11の化学式は、具体的には、K60、Rb60、CsRbC60、CsRb60、RbKC60、RbK60、CsK60、RbNa60、Ca60、NaCs60、Sr60、Cs60、NaRb0.25Cs0.7560、NaRb0.5Cs0.560、NaRb0.75Cs0.2560、Yb2.7560、Sm60(x〜3)、KBa60、Ba60、RbBa60等である。
図2は、フラーレンとしてC60、金属イオンとしてKを用いたときの結晶構造の金属イオン添加量依存性を説明する図であって、非特許文献1の図1(a)、(d)を基にした模式図である。
図2(a)は無添加の結晶構造であり、絶縁体である。
図2(b)はC60分子1個に対してKイオン3個にしたときの結晶構造である。この結晶構造では、超伝特性が発現する。
図2(c)はC60分子1個に対してKイオン6個にしたときの結晶構造である。この結晶構造では、超伝特性が発現しない。
図3はC60、K60、K60の電子のt1uバンド構造である。
図3に示すように、C60は超伝導に関与できる電子がないので、絶縁体となる。一方、K60は超伝導に関与できる電子が多く、エネルギーを得するので、超伝導になる。逆に、K60は超伝導に関与できる電子がほとんどなく、エネルギーを得しないので、超伝導にならない。
なお、フラーレン細線が超伝導特性を発現するには、フラーレン細線全体で均一に金属イオンがフラーレン分子1個に対して3個となるように添加されていることが好ましい。全体として、金属イオンがフラーレン分子1個に対して3個となるように添加されていても、濃度分布がある場合は、fcc結晶構造の4面体空隙及び8面体空隙が充填された部分は超伝導特性が発現する部分となり、全く充填されていない部分は絶縁体の部分となる。またbcc構造の4面体空隙6個を全て充填した部分は超伝導を発現しない。
<超伝導フラーレンナノ材料の製造方法>
本発明の実施形態である超伝導フラーレンナノ材料の製造方法は、フラーレン分子結晶作製工程S1と、金属イオン添加工程S2と、を有する。
図4は、本発明の実施形態である超伝導フラーレンナノ材料の製造方法を示すフローチャートである。
(フラーレン分子結晶作製工程S1)
フラーレン分子結晶作製工程S1は、フラーレン良溶媒にフラーレンを分散させたフラーレン溶液に、フラーレン貧溶媒からなる溶液を重層して液−液界面を形成した2層溶液を調製し、これを拡散混合した拡散混合液を調製してから、前記拡散混合液を濾別・乾燥して、フラーレン分子結晶を作製する工程である。
前記フラーレン良溶媒としてトルエンを用いることができる。また、前記フラーレン貧溶媒として、イソプロピルアルコールのようなアルコールを用いることができる。これにより、液−液界面を形成した2層溶液を作製できる。
前記2層溶液に超音波を照射することが好ましい。例えば、10秒間超音波を照射する。これにより、拡散混合を十分行うことができる。
なお、溶媒の種類と組成、添加物の種類、温度、及び、超音波照射条件を変えることにより、直径、厚さ又は長さのいずれかが1μm未満のフラーレンナノ材料(フラーレン分子結晶)を任意のアスペクト比で作製でき、直径が1μm未満のフラーレン細線、厚さが1μm未満のフラーレン薄膜及び直径、厚さがともに1μm未満のフラーレン微結晶を作製できる。また、フラーレン細線は、フラーレンナノチューブ又はフラーレンナノウィスカー(針状結晶又は非晶質針状晶)として作製できる。
例えば、前記2層溶液に超音波を10分照射することによりフラーレン薄膜を作製でき、前記2層溶液に超音波を0〜10分照射することにより微結晶を作製できる。
前記拡散混合液を静置することが好ましい。拡散混合液中、フラーレン分子結晶は典型的には六方晶で結晶成長を行う。溶液中で、溶媒和により、典型的には六方晶を維持する。これにより、均一な溶媒和結晶(典型的には六方晶)を形成することができる。
しかし、拡散混合液中の溶媒和結晶(典型的には六方晶)は、柔らかい状態であり、たやすく変形する。そのため、これを濾別・乾燥すると、典型的にはより固い立方晶に変態する。このとき、1つ以上の空孔部が結晶内に生成される。
空孔部は、直径1nm以上200nm未満とされる。空孔部及びその連結部は、次の金属イオン添加工程S2において、金属イオンの拡散パスとして機能する。
(金属イオン添加工程S2)
金属イオン添加工程S2は、前記フラーレン分子結晶をアルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素及び希土類金属元素から選択される1又は2以上の金属とともにガラス管に封入してから、前記ガラス管を加熱して発生させた金属蒸気にフラーレン分子結晶を曝して、金属イオンをフラーレン分子結晶に添加する工程である。
前記加熱温度が、封入した金属元素の昇華温度以上であることが好ましい。これにより、封入した金属を昇華させることができる。蒸気となっている金属元素はフラーレン分子結晶内に入ってイオン化される。ガラス管に密閉されていることにより、金属元素は蒸気として、一定の圧力のもと、前記フラーレン分子結晶の表面及び複数の空孔部から内部に効率よく、かつ、均一に添加される。
フラーレン分子結晶は直径、厚さ又は長さのいずれかが1μm未満であるので、表面からだけでも、短時間に、金属イオンを均一に拡散させることができる。
更に、フラーレン分子結晶は複数の空孔部を有しているので、これを金属元素の拡散パスに利用して、より短時間に、金属イオンを均一に拡散させることができる。
空孔部はそれぞれ分離して形成されているが、複数の空孔部を連結する結晶部分の距離が短いので、この結晶部分において金属イオンは容易に隣接する空孔部に移動できる。そのため、空孔部を連結する結晶部分の移動と、空孔部内の移動を繰り返すことにより、結晶全体により均一に金属イオンを拡散させることができると考えられる。
ガラス管としては、例えば、石英ガラスが用いられる。
(本発明の第2の実施形態)
<超伝導フラーレンナノ材料:超伝導フラーレン薄膜>
まず、本発明の第2の実施形態である超伝導フラーレンナノ材料について説明する。
図5は、本発明の実施形態である超伝導フラーレンナノ材料の一例を示す図であって、超伝導フラーレン薄膜を示す図である。
図5(a)は平面図であり、図5(b)は図5(a)のC−C’線における断面図である。
本発明の実施形態である超伝導フラーレンナノ材料2(超伝導フラーレン薄膜20)は、フラーレン分子結晶21の厚さk21が1μm未満であり、長さk21/直径d21のアスペクト比が1未満であるフラーレン分子結晶21と、フラーレン分子結晶21中に添加された金属イオンと、を有する。
超伝導フラーレン薄膜20は、フラーレン分子結晶21の厚さk21が1μm未満であり、厚さk21/直径d21のアスペクト比が1未満である他は本発明の第1の実施形態である超伝導フラーレン細線10と同様の構成とされている。
なお、シート状のフラーレン分子結晶であるフラーレンシートのうち厚さk21が1μm未満のものはフラーレンナノシートと呼ぶ。
直径d21は限定されない。
通常、直径d21が1μm以上100μm以下で、厚さk21が10nm以上600nm以下のものが作られる。
本発明の実施形態である超伝導フラーレンナノ材料2(超伝導フラーレン薄膜20)の製造方法は、フラーレン分子結晶作製工程S1において、超音波照射条件を10分として、フラーレンナノチューブ又はフラーレンナノウィスカーではなく、厚さk21が1μm未満であり、厚さk21/直径d21のアスペクト比が1未満であるシート状のフラーレン分子結晶(フラーレンナノシート)を作製する他は本発明の実施形態である超伝導フラーレンナノ材料1(超伝導フラーレン細線10)の製造方法と同様の構成である。
これにより、超伝導フラーレンナノ材料2(超伝導フラーレン薄膜20)を製造できる。
(本発明の第3の実施形態)
<超伝導フラーレンナノ材料:超伝導フラーレン微結晶>
まず、本発明の第3の実施形態である超伝導フラーレンナノ材料について説明する。
図6は、本発明の実施形態である超伝導フラーレンナノ材料の一例を示す図であって、超伝導フラーレン微結晶を示す図である。
図6(a)は平面図であり、図6(b)は図6(a)のD−D’線における断面図である。
本発明の実施形態である超伝導フラーレンナノ材料3(超伝導フラーレン微結晶30)は、フラーレン分子結晶31の直径d31及び長さk31、すなわち、粒径が1μm未満であり、長さk31/直径d31のアスペクト比が1以上3未満である微粒子状のフラーレン分子結晶31と、フラーレン分子結晶31中に添加された金属イオンと、を有する。
超伝導フラーレン微結晶30は、フラーレン分子結晶31の直径d31及び長さk31が1μm未満であり、長さk31/直径d31のアスペクト比が1以上3未満である他は本発明の第1の実施形態である超伝導フラーレン細線と同様の構成とされている。
なお、粒子状のフラーレン分子結晶であるフラーレン粒子のうち直径d31及び長さk31が1μm未満のものはフラーレン微粒子と呼ぶ。
本発明の実施形態である超伝導フラーレンナノ材料3(超伝導フラーレン微結晶30)の製造方法は、フラーレン分子結晶作製工程S1において、超音波照射条件を0〜10分として、フラーレンナノチューブ又はフラーレンナノウィスカーではなく、直径d31及び長さk31が1μm未満であり、長さk31/直径d31のアスペクト比が1以上3未満である粒子状のフラーレン分子結晶(フラーレン微結晶)を作製した他は本発明の実施形態である超伝導フラーレンナノ材料1(超伝導フラーレン細線10)の製造方法と同様の構成とされている。
これにより、超伝導フラーレンナノ材料3(超伝導フラーレン微結晶)30を製造できる。
本発明の実施形態である超伝導フラーレンナノ材料1〜3は、フラーレン分子結晶11、21、31と、前記フラーレン分子結晶中に添加された金属イオンMと、を有し、前記フラーレン分子結晶の直径、厚さ又は長さのいずれかが1μm未満とされ、かつ、前記フラーレン分子結晶には1つ以上の空孔部11c、21c、31cが設けられており、前記金属イオンの添加量がフラーレン分子1個に対して金属イオン6個未満の濃度である構成なので、フラーレン分子結晶中に金属イオンが均一に添加され、かつ、8面体空隙及び4面体空隙を完全に充填することなく、超伝導に関与する電子の増加を促し、超伝導を発現させることができる。
本発明の実施形態である超伝導フラーレンナノ材料1〜3は、前記フラーレン分子結晶がC60、C70以上の高次フラーレン、及び、それらの誘導体並びにそれらの元素内包体の群から選択される1又は2以上のフラーレン分子により構成されている構成なので、フラーレン分子結晶内に超伝導を発現する電子軌道を形成できる。
本発明の実施形態である超伝導フラーレンナノ材料1〜3は、前記金属イオンが、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン及び希土類金属イオンの群から選択される1又は2以上の金属イオンである構成なので、フラーレン分子結晶内に超伝導を発現する電子軌道を形成できる。
本発明の実施形態である超伝導フラーレンナノ材料1〜3は、空孔部11c、21c、31cが、直径1nm以上200nm未満である構成なので、金属蒸気にフラーレン分子結晶を曝すだけで、フラーレン分子結晶内に金属イオンを均一に拡散させることができる。
本発明の実施形態である超伝導フラーレンナノ材料1〜3は、前記フラーレン分子結晶がフラーレンナノチューブ又はフラーレンナノウィスカーである構成なので、超伝導フラーレン細線を形成できる。
本発明の実施形態である超伝導フラーレンナノ材料1は、フラーレン分子結晶11の直径d11が1μm未満であり、かつ、長さk11/直径d11のアスペクト比が3以上のフラーレン細線10である構成なので、フラーレン分子結晶中に金属イオンを均一に添加することができ、かつ、8面体空隙及び4面体空隙に充填しつつ、超伝導に関与する電子の増加を促し、超伝導を発現させた細線とすることができる。
本発明の実施形態である超伝導フラーレンナノ材料2は、フラーレン分子結晶21の厚さk21が1μm未満であり、かつ、厚さk21/直径d21のアスペクト比が1未満のフラーレン薄膜20である構成なので、フラーレン分子結晶中に金属イオンを均一に添加することができ、かつ、8面体空隙及び4面体空隙に充填しつつ、超伝導に関与する電子の増加を促し、超伝導を発現させた薄膜とすることができる。
本発明の実施形態である超伝導フラーレンナノ材料3は、フラーレン分子結晶31の長さ31及び直径d31が1μm未満のフラーレン微結晶30であり、かつ、長さk31/直径d31のアスペクト比が1以上3未満である構成なので、フラーレン分子結晶中に金属イオンを均一に添加することができ、かつ、8面体空隙及び4面体空隙に充填しつつ、超伝導に関与する電子の増加を促し、超伝導を発現させた微結晶とすることができる。
本発明の実施形態である超伝導フラーレンナノ材料1〜3の製造方法は、フラーレン良溶媒にフラーレンを分散させたフラーレン溶液に、フラーレン貧溶媒からなる溶液を重層して液−液界面を形成した2層溶液を調製し、これを拡散混合した拡散混合液を調製してから、前記拡散混合液を濾別・乾燥して、直径、厚さ又は長さが1μm未満のフラーレン分子結晶を作製する工程S1と、前記フラーレン分子結晶をアルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素及び希土類金属元素の群から選択される1又は2以上の金属元素とともにガラス管に封入してから、前記ガラス管を加熱して発生させた金属蒸気にフラーレン分子結晶を曝して、金属イオンをフラーレン分子結晶に添加する工程S2と、を有する構成なので、直径、厚さ又は長さが1μm未満のフラーレン分子結晶を作製することができるとともに、濾別・乾燥することにより、フラーレン分子結晶に1つ以上の空孔部を形成することができ、かつ、金属蒸気にフラーレン分子結晶を曝すことにより、フラーレン分子結晶の表面及び空孔部を介して均一に金属イオンを拡散させることができる。これにより、超伝導を発現可能なフラーレンナノ材料を製造できる。
本発明の実施形態である超伝導フラーレンナノ材料1〜3の製造方法は、前記加熱温度が、封入する金属元素の昇華温度以上である構成なので、ガラス管内に金属蒸気を発生させることができ、この金属蒸気にフラーレン分子結晶を曝すことにより、フラーレン分子結晶の表面及び空孔部を介して均一に金属イオンを容易に拡散させることができる。これにより、フラーレン分子結晶内に均一に金属イオンを添加でき、超伝導を発現可能なフラーレンナノ材料を製造できる。
本発明の実施形態である超伝導フラーレンナノ材料1〜3の製造方法は、前記2層溶液に超音波を照射する構成なので、所定の形状・大きさのフラーレン分子結晶を結晶成長させることができる。例えば、超音波照射条件を制御して、極短のフラーレンナノチューブ又はフラーレンナノウィスカーを生成できる。
本発明の実施形態である超伝導フラーレンナノ材料1〜3の製造方法は、前記フラーレン良溶媒がトルエンであり、前記フラーレン貧溶媒がイソプロピルアルコールである構成なので、2層溶液を形成でき、2層溶液の界面形成とその後の拡散混合過程、及び、均一溶液中で、フラーレン分子結晶を結晶成長させることができる。
本発明の実施形態である超伝導フラーレンナノ材料1〜3の製造方法は、前記拡散混合液を静置する構成なので、拡散混合液中、フラーレン分子結晶を均一な六方晶として結晶成長させることができる。
本発明の実施形態である超伝導フラーレンナノ材料(超伝導フラーレン細線、超伝導フラーレン薄膜及び超伝導フラーレン微結晶)及びその製造方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で、種々変更して実施することができる。本実施形態の具体例を以下の実施例で示す。しかし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1、比較例1)
(フラーレン分子結晶作製工程S1:C60FNWの作製)
まず、C60粉末(99.5%、MTR、アメリカ)を飽和させたトルエン(特級、99.5%、和光純薬工業)溶液に、2−プロパノール(特級、99.7%、和光純薬工業(株))を重層して液−液界面を形成した。
次に、10秒間の超音波照射により、2液を強制的に拡散混合した後、10℃で24時間静置して、拡散混合液を調製した。
次に、前記拡散混合液をフィルター(No.5B、(有)桐山製作所)で濾別したものを自然乾燥して、C60NWを得た。このC60NWの直径は540±160nm、平均長は4.4±2.6μmであった。このC60NWを比較例1サンプルとした。
(金属イオン添加工程S2:C60FNWへのカリウムドープ)
次に、C60NWに対してモル比1.6となるカリウム(K)を、C60NWとともに、石英チューブ(内径5.5mm)内に封入した。KとC60NWは、石英チューブ中で近接配置した。封入は、Kの酸化を防ぐためにアルゴンガス雰囲気のグローブボックス内で行い、さらに3×10−3Paの減圧下で真空封入した。
次に、真空封入した石英チューブを電気炉中で24時間、200℃で加熱した。
以上の工程により、C60NW中にKをモル比1.6(K濃度(仕込み組成))で拡散させた実施例1サンプルを作製した。
(実施例2〜7)
次に、C60NWに対するカリウム(K)のモル比を2.3(実施例2)、3.0(実施例3)、3.3(実施例4)、4.0(実施例5)、4.6(実施例6)、6.0(実施例7)とした他は実施例1と同様にして、実施例2〜7サンプルを作製した。
(比較例2、3)
次に、C60粉末(99.5%、MTR、アメリカ)を用意した。これを比較例2サンプルとした。
次に、C60粉末にカリウムドープを行った。なお、非特許文献6で示したように、液−液界面析出法でC60NWを形成する際にKOHを用いてC60NWへカリウムをドープする方法は、Kを高濃度添加しようとすると、C60NWを生成できず、適当でない。そのため、フラーレンに金属を添加するために一般に用いられているアルカリ金属の直接反応法により、C60粉末にモル比3.3のKを添加して、K3.360粉末(比較例3サンプル)を作製した。
<特性評価>
まず、走査電子顕微鏡(SEM、Hitachi SU−70)を用いて微細構造観察を行った。
図7はC60粉末のSEM写真であって、図7(a)はKドープ前、図7(b)はK3.3ドープ後である。つまり、図7(a)はC60粉末(比較例2サンプル)のSEM写真であり、図7(b)はK3.360粉末(比較例3サンプル)のSEM写真である。
Kドープ前のC60粉末は、大気中で安定であった。
しかし、図7(b)に示すように、Kドープ後は、K3.360粉末にはクラックが発生した。このK3.360粉末は、24時間大気暴露により、クラックがより多数発生して崩壊した。
図8はC60NWのSEM写真であって、図8(a)はKドープ前であり、図8(b)はK3.3ドープ後である。つまり、図8(a)はC60NW(比較例1サンプル)のSEM写真であり、図8(b)はK3.360NW(実施例4サンプル)のSEM写真である。
60NW及びK3.360NWの断面形状は6角形が多かった。
Kドープ前のC60NWは、大気中で安定であった。
また、図8(b)に示すように、Kドープ後でも、K3.360NW(実施例4サンプル)にはクラックは発生せず、大気中で安定であった。
次に、超伝導量子干渉計(SQUID,Quantum Design MPMS−5S)を用いて、Kドープ前(Before heat)のサンプル(比較例1サンプル)及びKドープ後のサンプル(実施例1〜7サンプル)の磁化率を測定した。
磁化率測定は、ゼロ磁場で冷却してから20Oeで保持した(ゼロフィールドクーリング(Zero Field Cooling、ZFC))後、行った。
図9は、Kドープ前(Before heat)のサンプルとK60NW(x=1.6〜6.0)のZFCにおける磁化率M/H(縦軸)の温度変化を示すグラフである。サンプル単位質量(g)と単位印加磁場(Oe)によって、磁化率M/Hを規格化した。
図9に示すように、Kドープ前(Before heat)のサンプル(比較例1サンプル)の磁化率M/Hは温度によらずほとんど0で一定であった。
一方、Kドープ後のサンプル(実施例1〜7サンプル)は、超伝導転移開始温度TcのK組成によるサンプル間の差異はほとんど無く、17Kであった。超伝導転移開始温度Tc以下の温度領域では、特性が大きく変化し、K3.360NW(実施例4サンプル)が最も大きな磁化率を示した。
図10は、Kドープ前(Before heat)のサンプル(比較例1サンプル)とKドープC60NW(実施例1〜7サンプル)の2Kの遮蔽体積分率をK濃度(仕込み組成)関数としたグラフである。
遮蔽体積分率は、完全反磁性磁化率(−1/4π)に対する測定磁化率である。図10に示すように、K濃度(仕込み組成)x=3.3で遮蔽体積分率が最大値約80%となった。
図11は、K3.360NW(実施例4サンプル)の2Kの遮蔽体積分率を熱処理時間の関数としたグラフである(熱処理温度200℃)。比較のために、同条件で熱処理したK3.360粉末(比較例3サンプル)の遮蔽体積分率も示した。
図11に示すように、約24時間で、K3.360NW(実施例4サンプル)の2Kの遮蔽体積分率は飽和して、約80%となった。
一方、直接反応法を用いたK3.360粉末(比較例3サンプル)では、24時間の熱処理によっても、遮蔽体積分率(超伝導体積分率)が1%未満であった。また、3週間の熱処理によっても、遮蔽体積分率(超伝導体積分率)が約35%であった(図示略)。
これらの結果を比較すると、K3.360NW(実施例4サンプル)は、K3.360粉末(比較例3サンプル)に比べて、良質な超伝導体であることが分かった。
次に、エネルギー分散型X線分析装置(EDAX、Genesis)及びX線回折装置により測定を行った。
図12は、C60粉末(下)とC60NW(上)のX線回折図形である。C60とC60NWはいずれも面心立方晶が主体であった。
図13は、C60NWの断面TEM(透過電子顕微鏡)像である。白線スケールは0.5μmの長さを表す。
図13の断面TEM像に示すように、C60NWは、複数の空孔部が存在する多孔質なコア部分と、緻密質な表面層(シェル部分)から成るコア−シェル構造をとっていた。この構成は、非特許文献4にも同様の記載がある。
空孔部は、微小な空隙(ポア)、積層欠陥、転位等の格子欠陥により生成されたものであり、空孔部がKの拡散を助けて、熱力学的に安定なK60NWの生成を促進したと考えた。
図14は、K3.360NWの臨界電流密度Jと磁場の関係を示すグラフである。
図14に示すように、磁化測定結果より、K3.360NWの臨界電流密度Jは2×10A/cm以上であった。また、印加磁場を増大してもJの減少が小さかった。更に、10kOe以上の高磁場印加において、Jの変化は小さかった。
また、K3.360NW(実施例4サンプル)の密度は約2g/cmであり、非常に軽い素材であった。実施例1〜3、実施例5〜7サンプルもほぼ同じ密度であった。
これにより、K60NW(x=1.6〜6.0:実施例1〜7サンプル)は、軽い超伝導材料という新規な製品とすることができる可能性があることが分かった。
本発明は、超伝導フラーレンナノ材料(超伝導フラーレン細線、超伝導フラーレン薄膜及び超伝導フラーレン微結晶)及びその製造方法に関するものであり、軽く、大気中で安定であるとともに、遮蔽体積分率(超伝導体積分率)が80%の良質の超伝導体を製造することができ、超伝導フラーレン細線の長さを長くした場合には、これらの優れた特性を有する超伝導フラーレンファイバーとすることができ、軽くフレキシブルな超伝導線材を製造または使用する産業等(電力産業、電気電子産業、機械工業、化学工業、航空宇宙産業、自動車産業、鉄道産業、船舶産業等)において利用可能性がある。
1、2、3…超伝導フラーレンナノ材料、10…超伝導フラーレン細線、11…フラーレン分子結晶、11a…多孔質コア部、11b…緻密質表層部、11c…空孔部、20…超伝導フラーレン薄膜、21…フラーレン分子結晶、21a…多孔質コア部、21b…緻密質表層部、21c…空孔部、30…超伝導フラーレン微結晶、31…フラーレン分子結晶、31a…多孔質コア部、31b…緻密質表層部、31c…空孔部。

Claims (13)

  1. フラーレン分子結晶と、前記フラーレン分子結晶中に添加された金属イオンと、を有し、前記フラーレン分子結晶の直径、厚さ又は長さのいずれかが1μm未満とされ、かつ、前記フラーレン分子結晶には当該結晶の成長方向に対する垂直断面の多孔質コア部に1つ以上の空孔部が設けられていると共に
    前記金属イオンが、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン及び希土類金属イオンの群から選択される1又は2以上の金属イオンであり、
    前記金属イオンの添加量がフラーレン分子1個に対して金属イオン6個未満の濃度であり、
    前記空孔部の直径が1nm以上200nm未満であり、
    遮蔽体積分率(超伝導体積分率)が80%以上であることを特徴とする超伝導フラーレンナノ材料。
  2. 前記金属イオンがKイオンであり、前記金属イオンの添加量がフラーレン分子1個に対して金属イオン3個の濃度であることを特徴とする請求項1に記載の超伝導フラーレンナノ材料。
  3. 前記超伝導フラーレンナノ材料の臨界電流密度Jcが2×10 A/cm 以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の超伝導フラーレンナノ材料。
  4. 前記フラーレン分子結晶がC60、C70以上の高次フラーレン及びそれらの誘導体並びにそれらの元素内包体の群から選択される1又は2以上のフラーレン分子により構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の超伝導フラーレンナノ材料。
  5. 前記フラーレン分子結晶がフラーレンナノチューブ又はフラーレンナノウィスカーであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の超伝導フラーレンナノ材料。
  6. フラーレン分子結晶の直径が1μm未満であり、かつ、長さ/直径のアスペクト比が3以上のフラーレン細線であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の超伝導フラーレンナノ材料。
  7. フラーレン分子結晶の厚さが1μm未満であり、かつ、厚さ/直径のアスペクト比が1未満のフラーレン薄膜であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の超伝導フラーレンナノ材料。
  8. フラーレン分子結晶の長さ及び直径が1μm未満であり、かつ、長さ/直径のアスペクト比が1以上3未満のフラーレン微結晶であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の超伝導フラーレンナノ材料。
  9. フラーレン良溶媒にフラーレンを分散させたフラーレン溶液に、フラーレン貧溶媒からなる溶液を重層して液−液界面を形成した2層溶液を調製し、これを拡散混合した拡散混合液を調製してから、前記拡散混合液を濾別・乾燥して、直径、厚さ又は長さのいずれかが1μm未満のフラーレン分子結晶を作製する工程と、
    前記フラーレン分子結晶をアルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素及び希土類金属元素の群から選択される1又は2以上の金属元素とともにガラス管に封入してから、前記ガラス管を加熱して発生させた金属蒸気にフラーレン分子結晶を曝して、金属イオンをフラーレン分子結晶に添加する工程と、
    前記金属イオンの添加されたフラーレン分子結晶の遮蔽体積分率を飽和させる熱処理を行う工程と、
    を有することを特徴とする超伝導フラーレンナノ材料の製造方法。
  10. 前記加熱温度が、封入する金属元素の昇華温度以上であることを特徴とする請求項9に記載の超伝導フラーレンナノ材料の製造方法。
  11. 前記2層溶液に超音波を照射することを特徴とする請求項9又は請求項10に記載の超伝導フラーレンナノ材料の製造方法。
  12. 前記フラーレン良溶媒がトルエンであり、前記フラーレン貧溶媒がイソプロピルアルコールであることを特徴とする請求項9〜11のいずれか1項に記載の超伝導フラーレンナノ材料の製造方法。
  13. 前記拡散混合液を静置することを特徴とする請求項9〜12のいずれか1項に記載の超伝導フラーレンナノ材料の製造方法。
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