JP5804300B1 - 紙用塗料、紙製品、紙製品の製造方法 - Google Patents

紙用塗料、紙製品、紙製品の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】耐水性、耐油性、抗菌性に優れ、かつ、紙表面に薄く均一に塗布することの可能な紙用塗料を提供する。【解決手段】本発明に係る紙用塗料は、流動パラフィン、ショ糖脂肪酸エステル、水溶性樹脂、及び平均粒径が1.5μm以下である抗菌剤を含有する。抗菌剤は銀系抗菌剤であることが好ましく、流動パラフィンの23℃における粘度は1.12?10−1Pa・s以上であることが好ましい。また、ショ糖脂肪酸エステルのHLB値は2以下であることが好ましく、水溶性樹脂は(メタ)アクリル系樹脂等であることが好ましい。本発明の紙製品は、上記紙用塗料の硬化膜が紙の表面に形成され、硬化膜の平均膜厚は0.3μm以上1μm以下であることが好ましい。【選択図】図1

Description

本発明は、紙用塗料、紙製品、紙製包装容器及び紙製品の製造方法に関する。
蟹やエビ等の甲殻類は、冷凍焼けと称される変色を抑制するため、甲羅等を水で充分に濡らした後に冷凍されることが通例である。このため、甲殻類を冷凍するための容器には、充分な耐水性が要求されることから、従来、発泡スチロール製容器が使用されている(特許文献1)。また、ファーストフード店等で使用されているファーストフードの容器には、ラミネート紙が使用されている。
しかしながら、発泡スチロール製容器は、折りたたんで搬送することができず、搬送コストが嵩み、また、プラスチックゴミとして廃棄する必要があるため、廃棄コストや再利用のコストも嵩むという問題を有する。また、容器に何らかの情報(例えば、蟹やエビの内容物の図柄)を表示しようとする場合、発泡スチロールの表面に鮮明な印刷を施すことが技術的に困難であるため、発泡スチロール製容器の内容物を、鮮明な印刷が施された紙製容器(例えば、店頭販売用の紙製容器)等へと移しかえる必要がある。また、ラミネート紙は、耐水・耐油性能を持たせるため、紙表面に薄いプラスチックフィルムを張り合わせた構造をしており、廃棄する際には紙とプラスチックフィルムを容易に(印刷した紙のようにリサイクル装置を用いて大量に古紙として)リサイクルすることができない。
このような実情から、発泡スチロール製容器に代わる容器を、紙で構成することが望まれるが、紙製品は耐水性が低いという課題を有していた。加えて、紙製品には、耐水性のみならず、抗菌性も求められる。また、ファーストフード店等で使用されている紙製品には、耐水性に加えて耐油性・抗菌性(テイクアウト目的で)も求められている。
この課題を解決するため、流動パラフィン、ショ糖脂肪酸エステル、水溶性樹脂及び抗菌剤を含有する紙用塗料が提案されている(特許文献2)。
特開平7−10179号公報 特許第4551992号公報
ところで、紙用塗料を紙の表面に塗工した後の乾燥時間を短縮でき、紙用塗料の使用量を節約できるとともに、専用の塗工機を用いることなく、広く一般に使用されるグラビア印刷機を用いて紙用塗料を紙の表面に塗工できることから、紙表面に形成される紙用塗料の硬化膜を薄膜化することが好ましい。特にファーストフード店やコンビニエンスストアで使用される薄紙については、製造コストの面から表面塗工の高速化が求められるため、グラビア印刷機による高速塗工が必須となっている。しかしながら、図1の(a)に示すとおり、特許文献2の紙用塗料を用いて硬化膜をさらに薄膜化しようとすると、紙用塗料の硬化膜の表面に比較的大きな気泡が形成される場合があり、硬化膜が紙表面の全面で均一に形成されない可能性がある。そのため、特許文献2の紙用塗料については、なお改良の余地がある。
本発明は、以上の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、耐水性、耐油性、抗菌性に優れ、かつ、紙表面に薄く均一に塗布することの可能な紙用塗料を提供することである。
本発明者らは、上記のような課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、抗菌剤として、平均粒径が比較的小さい物を用いることで、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は、具体的に以下のものを提供する。
(1)本発明は、紙の表面に塗布される紙用塗料であって、流動パラフィン、ショ糖脂肪酸エステル、水溶性樹脂、及び抗菌剤を含有し、前記流動パラフィンは、JIS K 5600−2−3法に準じて測定した23℃における粘度が1.12×10−1Pa・s以上であり、前記抗菌剤は、走査電子顕微鏡を用いてJIS H 7804法に準じて測定した平均粒径が0.3μm以上1.5μm以下である、紙用塗料である。
(2)また、本発明は、前記抗菌剤が銀系抗菌剤である、(1)に記載の紙用塗料である。
(3)また、本発明は、前記抗菌剤の含有量が、前記紙用塗料の全質量に対し、0.5質量%以上1.5質量%以下である、(1)又は(2)に記載の紙用塗料である。
(4)また、本発明は、前記ショ糖脂肪酸エステルのHLB値が2以下である、(1)から(3)のいずれかに記載の紙用塗料である。
(5)また、本発明は、前記ショ糖脂肪酸エステルの含有量が、前記紙用塗料の全質量に対し、0.35質量%以上0.8質量%以下である、(1)から(4)のいずれかに記載の紙用塗料である。
(6)また、本発明は、前記水溶性樹脂が、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂及びアクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂からなる群から選択される1種以上を含む、(1)から(5)のいずれかに記載の紙用塗料である。
(7)また、本発明は、(1)から(6)のいずれかに記載の紙用塗料の硬化膜が紙の表面に形成されている紙製品である。
(8)また、本発明は、JIS H8690附則書1「走査型電子顕微鏡による厚さ試験方法」に準じて測定した前記硬化膜の平均膜厚が0.3μm以上1μm以下である、(7)に記載の紙製品である。
(9)また、本発明は、(7)又は(8)に記載の紙製品で形成された紙製包装容器である。
(10)また、本発明は、(1)から(6)のいずれかに記載の紙用塗料を紙表面に塗布する塗布手順と、前記紙用塗料を硬化させる硬化手順とを含む、紙製品の製造方法である。
(11)また、本発明は、前記塗布を、JIS H8690附則書1「走査型電子顕微鏡による厚さ試験方法」に準じて測定した前記紙用塗料の硬化膜の平均膜厚が0.3μm以上1μm以下となるように行う、(10)に記載の紙製品の製造方法である。
(12)また、本発明は、前記塗布手順が、前記紙用塗料を、1mあたりの目付量が200g以下である紙の表面にグラビア印刷機で塗布する手順である、(11)に記載の紙製品の製造方法である。
本発明によると、耐水性、耐油性、抗菌性に優れ、かつ、紙表面に薄く均一に塗布することの可能な紙用塗料を提供できる。
実施例1及び比較例3に係る紙製品について、紙用塗料の硬化膜の表面を走査型電子顕微鏡で観察したときの拡大写真である。 実施例1に係る紙製品について、紙用塗料の硬化膜の表面を走査型電子顕微鏡で観察したときの拡大写真である。 比較例1に係る紙製品について、紙用塗料の硬化膜の表面を走査型電子顕微鏡で観察したときの拡大写真である。 比較例2に係る紙製品について、紙用塗料の硬化膜の表面を走査型電子顕微鏡で観察したときの拡大写真である。 実施例1に係る紙製品について、紙用塗料の硬化膜の、膜の表面に対して垂直な方向における断面を走査型電子顕微鏡で観察したときの拡大写真である。 実施例2に係る紙製品について、紙用塗料の硬化膜の表面を走査型電子顕微鏡で観察したときの拡大写真である。
以下、本発明の具体的な実施形態について、詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
<紙用塗料>
本発明に係る紙用塗料は、流動パラフィン、ショ糖脂肪酸エステル、水溶性樹脂、及び抗菌剤を含有し、流動パラフィンは、JIS K 5600−2−3法に準じて測定した23℃における粘度が1.12×10−1Pa・s以上であり、抗菌剤は、走査電子顕微鏡を用いてJIS H 7804法に準じて測定した平均粒径が0.3μm以上1.5μm以下である。
〔流動パラフィン〕
本発明の紙用塗料は、流動パラフィンを含有する。本発明に係る流動パラフィンは、紙用塗料に含まれるショ糖脂肪酸エステルの作用により、紙用塗料に含まれる水溶性樹脂と充分に混合され、分散する。そのため、本発明に係る紙用塗料を紙に塗布することで、紙表面に形成される紙用塗料の硬化膜を薄膜化しても、耐水性、耐油性及び抗菌性に優れる紙製品を提供できる。
流動パラフィンの種類は特に限定されるものでないが、食品向けの容器等として耐えうる耐熱性の観点から、ノルマルパラフィン、イソパラフィン及びシクロパラフィンのいずれか1種以上であることが好ましい。
流動パラフィンの粘度は、JIS K 5600−2−3法に準じて測定した23℃における粘度が1.12×10−1Pa・s以上であれば特に限定されるものでないが、23℃における粘度が1.20×10−1Pa・s以上であることが好ましく、1.50×10−1Pa・s以上3.05×10−1Pa・s以下であることがより好ましい。本明細書において、粘度は、以下の手法で測定された値をいうものとする。
(1)まず、JIS K 5600−2−3の「5 粘度計のチェック」に記載された手順にしたがい、粘度計をチェックする。粘度計は、ブルックフィールド社製粘度計LVDV2TCP(コーンプレート型システム)を用いるものとする。
(2)測定試料を、呼び目開き125μmのふるいに通し、清浄された容器の中に移しとる。
(3)測定試料を23℃±0.2℃に調整する。
(4)気泡が混入しないように注意しながら、上記粘度計のサンプルカップ(製品名:CPA−44YZ,ブルックフィールド社製)に測定試料を適量入れる。
(5)上記サンプルカップを正規の決められた位置に調整し、表1に示す条件で、測定試料の粘度を測定する。なお、表1において、コーンスピンドルは、ブルックフィールド社製CPA−40Zである。
流動パラフィンの粘度が上記の範囲内にあることで、紙用塗料に粘性が付与され、例えば、印刷機の印刷用ロールに濡れやすくなり、紙の表面に塗料が均一に塗布されるので、紙に耐水性等を充分に付与できる。流動パラフィンの粘度が低すぎると、印刷機の印刷用ロール上に均一に濡れない場合があり、紙の表面に紙用塗料を均一に塗布できない場合がある。流動パラフィンの粘度が高すぎると、流動性パラフィンの流動性が大きく低下する可能性がある。さらに、流動パラフィンの粘度が上記の範囲内にあることで、紙に対して紙用塗料を薄く塗り、紙用塗料の硬化膜を薄膜化したときに、膜表面に現れる気泡の量及び大きさを好適に抑えられるため、紙の表面に塗料が均一に塗布できる。
流動パラフィンの含有量は、特に限定されないが、過小であると、耐水性及び耐油性を充分に付与することが困難であり、過大であると、塗料からなる膜を紙製品に形成するのが困難である。そこで、流動パラフィンの含有量の下限は、紙用塗料に含まれる全樹脂の固形分含有量に対し、1質量%であることが好ましく、より好ましくは5質量%、最も好ましくは10質量%である。流動パラフィンの固形分含有量の上限は、全樹脂の固形分含有量に対し、50質量%であることが好ましく、より好ましくは45質量%、最も好ましくは35質量%である。
〔ショ糖脂肪酸エステル〕
本発明に係る紙用塗料は、ショ糖脂肪酸エステルを含有する。流動パラフィンは水溶性樹脂との相溶性が極めて低く、水溶性樹脂に分散しにくい特性を有する。そのため、流動パラフィンを水溶性樹脂と併用するためには、流動パラフィンの水溶性樹脂への分散性を向上させる必要がある。そこで、本発明に係る紙用塗料は、ショ糖脂肪酸エステルを含有する。
一般的な界面活性剤を流動パラフィンとともに混合する(通常、ホモジナイザを用いて約10000rpm以上の回転数での撹拌による)と、多量の泡が発生し、撹拌機器から外部への漏出が懸念されるため、消泡剤を併用することが必須である。しかし、ショ糖脂肪酸エステルは、流動パラフィンとともに混合されても発泡を高度に抑制するため、消泡剤の必要量を低減(消泡剤を使用しなくてもよい)でき、紙用塗料の製造コスト低減及び安全性向上が期待できる。また、ショ糖脂肪酸エステル自体が安全性に優れるため、食品を包装する紙製包装容器を製造する場合等において、特に有利である。
ショ糖脂肪酸エステルの具体例としては、ショ糖ジオレイン酸エステル、ショ糖ジステアリン酸エステル、ショ糖ジパルミチン酸エステル、ショ糖ジミリスチン酸エステル、ショ糖ジラウリン酸エステル、ショ糖モノオレイン酸エステル、ショ糖モノステアリン酸エステル、ショ糖モノパルミチン酸エステル、ショ糖モノミリスチン酸エステル、ショ糖モノラウリン酸エステル等が挙げられ、これらの1種単独又は2種以上を組み合わせて使用し得る。中でも、流動パラフィン及び抗菌剤の分散性をより向上できる点で、HLB値が2以下であるショ糖脂肪酸エステルが好ましく、HLB値が1以下であるショ糖脂肪酸エステルがより好ましい。このようなショ糖脂肪酸エステルとして、ショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ社製)、ショ糖パルミチン酸エステル(三菱化学フーズ社製)、ショ糖オレイン酸エステル(三菱化学フーズ社製)、DKエステル(第一工業製薬社製)等が挙げられる。
ショ糖脂肪酸エステルの含有量は、用いるショ糖脂肪酸エステル、抗菌剤及び流動パラフィンの特性に応じて適宜設定されてよいが、流動パラフィン及び抗菌剤の分散性を向上させる観点で、紙用塗料の全質量に対し、0.35質量%以上が好ましく、0.35質量%以上0.8質量%以下がより好ましい。また、紙溶媒に含有される水溶媒の希釈率を考慮すると、流動パラフィンの固形分含有量に対して5質量%以上10質量%以下であることが好ましい。
〔水溶性樹脂〕
本発明の紙用塗料は、水溶性樹脂を含有する。水溶性樹脂は、所定の粘性を有するため、紙用塗料に粘性が付与され、例えば、印刷機の印刷用ロールに濡れやすくなる。これにより、紙の表面に塗料が均一に塗布されるので、紙に耐水性等を充分に付与できる。
水溶性樹脂は、塗料において従来使用されているいずれの水溶性樹脂であってもよく、ポリビニルアルコール樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル樹脂、水溶性ワニス、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂(SB樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂(AS樹脂)等が挙げられる。中でも、紙表面で硬化した際に粘着性を示さないために、薄紙表面に成膜した後に、ロール状に紙を巻く工程において紙同士が接着しにくいことや、成膜後の膜が透明であるために、紙用塗料を食品の包装紙に対して使用する場合、下地である包装紙の印刷や色調を損なわないことから、水溶性樹脂は、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂及びアクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂からなる群から選択される1種以上であることが好ましい。
水溶性樹脂の含有量は特に限定されるものでないが、紙用塗料の粘度を好適な範囲内にできる点で、水溶性樹脂の固形分含有量が紙用塗料全体に対し3質量%以上50質量%以下であることが好ましく、15質量%以上40質量%以下であることがより好ましい。
〔抗菌剤〕
本発明に係る紙用塗料は、走査電子顕微鏡を用いてJIS H 7804法に準じて測定した平均粒径が0.3μm以上1.5μm以下である抗菌剤を含有する。
抗菌剤の平均粒径は、0.3μm以上1.5μm以下であれば特に限定されないが、0.5μm以上1.0μm以下であることが好ましく、0.6μm〜1.0μmであることが最も好ましい。抗菌剤の平均粒径が小さすぎると、紙用塗料の硬化膜の表面に抗菌剤が現れず、充分な抗菌性が得られない可能性があるため、好ましくない。抗菌剤の平均粒径が大きすぎると、紙に対して薄く塗った場合、塗膜の厚さに対して抗菌剤が塗膜中に沈み込む量が少なくなりすぎるために抗菌剤の保持力が低下し、抗菌剤が脱落しやすくなる。また抗菌剤の平均粒径が大きすぎると、薄く塗るために紙用塗料全体の粘性を下げる場合、抗菌剤が紙用塗料中で沈降しやすくなり、好ましくない。
本明細書において、平均粒径は、走査型電子顕微鏡(以下、「FE−SEM」ともいう。)を用いてJIS H 7804法に準じて測定した値をいうものとする。FE−SEMの観察条件は、以下のとおりである。
型式:JSM−7001F(日本電子)
加速電圧:5 kV
作動距離:4.0 mm
照射電流:小 信号:二次電子像
前処理:Pt蒸着による導電化
観察する試料の作製については、ロール紙表面に塗布した本発明の紙用塗料による膜を対象として測定を行うため、FE−SEMの装置内に入る大きさにロール紙を切り取る。一般的には、3mm角程度に切り取る。
粒子径の測定条件は、JIS H 7804に準じて行う。具体的には、測定は、無作為に抽出した代表的な5視野以上について行う。1視野とは、電子顕微鏡のモニター1画面に映し出される範囲のことを意味する。したがって、5視野とは、電子顕微鏡で5回測定し、そのモニター上に現される5つの画面のこと指す。
撮影倍率は、JIS H 7804に準じて行う。ただし、JIS H 7804には、「最低倍率は5000倍とするが、10000倍が望ましい。」と規定されているが、本明細書では、平均粒径が2.5μm以上である抗菌剤を測定対象とする場合は、撮影倍率を3000倍とし、平均粒径が1μm以上2.5μm以下である抗菌剤を測定対象とする場合は、撮影倍率を5000倍とし、平均粒径が1μm以下である抗菌剤を測定対象の場合は、撮影倍率を15000倍とする。
粒子径の計算は、JIS H 7804に準じて行う。
粒子径及び粒子径分布の測定は、JIS H 7804に準じて行う。
抗菌剤の種類は、特に限定されないが、抗菌性に優れることから、銀系抗菌剤を用いることが好ましい。銀系抗菌剤として、ゼオライト粒子、シリカゲル粒子、アルミナ粒子、リン酸塩粒子等を担体として、これらの担体粒子に銀化合物を担持させた銀担持抗菌剤のほか、炭酸銀等が挙げられる。抗菌剤は、1種類を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
銀担持ゼオライト粒子の例として、「ゼオミック」(シナネンゼオミック社製)が挙げられる。「ゼオミック」は、米国食品医薬品局(FDA)に食品接触物質(Food Contact Substance Notification FCN000047)として認可され、全食品の包装樹脂に適応できるという実績がある。
本発明の紙用塗料中の抗菌剤の含有量は、特に限定されないが、紙用塗料の全質量に対し、0.5質量%以上1.5質量%以下であることが好ましい。これまで、紙用塗料においては、平均粒径が10〜2.5μm程度の抗菌剤が用いられていたことから、紙用塗料の硬化膜の全体に抗菌剤を好適に分散させるためには、硬化膜の膜厚が少なくとも3μm以上になるように紙用塗料を塗布するとともに、抗菌剤の含有量を、紙用塗料の全質量に対し、少なくとも2質量%以上にする必要があった。しかしながら、本発明の紙用塗料に含まれる抗菌剤の平均粒径は1.5μm以下と小さいため、含有量が1.5質量%以下であっても、好適な抗菌作用を発揮する。したがって、本発明では、抗菌剤の含有量は0.5質量%以上1.5質量%以下で足りる。
〔その他の成分〕
本発明に係る紙用塗料は、防カビ剤、分散剤、分散媒等、他の成分を含むものであってもよい。
[防カビ剤]
本発明の紙用塗料は、防カビ剤をさらに含有するのものであってもよい。防カビ剤の種類は、特に限定されないが、安息香酸エステル、オルトフェニルフェノール、ジフェニル等が挙げられる。中でも、人体への安全性の観点から、防カビ剤は、安息香酸エステルであることが好ましい。防カビ剤は、1種類を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
防カビ剤として安息香酸エステルを使用する場合、安息香酸エステルは、炭素数が2以下のアルコール(メタノール、エタノール)に溶解させたものを、紙用塗料に配合することによって、安息香酸エステルが、紙用塗料中の水に溶解させやすくなる。安息香酸エステルの溶媒として、炭素数が3以上のアルコール(プロパノール、ブタノール等)を用いると、安息香酸エステルが紙用塗料中の水に溶けにくい。炭素数2以下のアルコールとしては、エタノール、メタノールが挙げられるが、人体への安全性を考慮して、アルコールはエタノールが好ましい。
[分散剤]
本発明の抗菌剤として、銀担持ゼオライト粒子を用いると、銀イオンの触媒作用によって紙用塗料が短時間でゲル化又は固化することから、塗料を常時流動させたり、塗料を頻繁に製造し直したりする必要があり、製造コストが嵩む。そこで、本発明の紙用塗料は、一般式(1)で示される分散剤をさらに含有することが好ましい。
・・・・(1)
(式中、R及びRは、同一又は異なってよいメチル基又はエチル基であり、R及びRは、同一又は異なってよい直鎖又は分岐のアルキル基であり、m及びnは、同一又は異なってよい100以下の自然数である。)
この分散剤の分子内のポリエチレングリコール構造と、銀ゼオライト中の銀イオンとで錯体が形成される。これにより、液体に分散された状態では、銀イオンが有する樹脂硬化作用が弱められる。しかも、プロピレングリコール基が親水基として作用し、銀ゼオライト自体の水分散性が向上する。よって、紙用塗料の寿命がより長期化するので、製造コストを低減できる。また、塗料を流動させる循環装置のような機構を設ける必要がないため、従来の印刷機を使用できる。
また、インク等で印刷処理されていると、紙表面が疎水性になるため、水系塗料の紙表面への濡れ性が低下し、これにより水系塗料が紙表面に均一に塗布されず、均一な塗膜を形成するのが困難になることが懸念される。一方、疎水性表面への濡れ性のみを追求すると、銀ゼオライトの水系中での分散性が低下し、これにより均質な塗膜を形成するのが困難になることが懸念される。しかし、一般式(1)で示される分散剤は分子内にポリエチレングリコール構造及びアセチレングリコール構造を兼ね備えるので、ポリエチレングリコール構造によって、水と疎水性の紙表面との相溶性が向上するため、疎水性の紙表面への水系塗料の濡れ性を向上できる。また、アセチレングリコール構造によって、銀ゼオライトの水への分散性が向上する。これにより、紙表面が疎水性であっても、均一かつ均質な塗膜を形成できる。
なお、一般式(1)におけるm又はnが小さすぎると、水と疎水性の紙表面との相溶性が充分に向上しないために、疎水性の紙表面への水系塗料の濡れ性を充分に向上できないことが懸念される。そこで、m又はnは4以上であることが好ましい。これにより、疎水性の紙表面への水系塗料の濡れ性を充分に向上でき、より均一な塗膜を形成できる。
[分散媒]
エタノール等の低沸点アルコールの添加量を変化させると、紙用塗料の粘性が増減する。よって、エタノールの添加量を適宜設定することで、所望の粘性を有する紙用塗料が製造され、紙に均一量の塗料を容易に印刷できる。また、エタノール等の低沸点アルコールは、塗布後に短い時間で乾燥するため、長時間の乾燥による紙製品の反り返り等を抑制できる。
また、紙用塗料が塗布された紙製品に分散媒が残存していると、包装対象の特性(特に食品の味や香り)を損なうことが懸念される。しかし、エタノール等の低沸点アルコールによれば、速乾性を有しかつ人体への毒性がないので、紙製品への残存を抑制できるとともに、安全性を向上できる。
〔紙用塗料の粘度〕
紙用塗料の粘度は特に限定されるものでないが、塗工機への塗工性を考慮すると、23℃における粘度が2.5×10−3Pa・s以上5.20×10−1Pa・s(520×10−3Pa・s)以下であることが好ましく、3.0×10−3Pa・s以上3.00×10−1Pa・s(300×10−3Pa・s)以下であることがより好ましい。
〔紙用塗料の製造方法〕
本発明に係る紙用塗料の製造方法は、特に限定されるものではなく、例えば、以下のような方法で製造できる。まず、流動パラフィンを水と混合し、この混合液にショ糖脂肪酸エステルを添加し混合することで、エマルションを得る。混合は、通常、ホモジナイザを用いて約10000〜20000rpm以上の回転数で撹拌することによって行われる。そして、エマルションを水溶性樹脂等の溶液と混合(従来公知の撹拌でよい)し、その後、抗菌剤を溶液に添加して各成分を分散させることで、紙用塗料を得ることができる。
〔用途〕
本発明に係る「紙用塗料」の用途は特に限定されるものでないが、中でも、耐水性、耐油性及び抗菌性が要求される種々の用途、例えば、人体との直接的又は間接的な接触が予想される紙製品に好適に適用できる。例えば、ダンボールや厚紙に代表される包装用紙(特に食品)、建築関連の壁材、床材等に好適に適用できる。
<紙製品>
本発明は、以上の紙用塗料の硬化膜が紙の表面に形成されている紙製品を包含する。
紙の種類は特に限定されるものでなく、コートボール紙、和紙、不織布、ダンボール紙等が挙げられる。中でも、本発明は、1mあたりの目付量が70g〜35g程度の包装紙等の薄紙に対しても、従来型のグラビア印刷機で紙用塗料を好適に塗工できる点で特徴を有する。
上記硬化膜の膜厚は、特に限定されないが、平均膜厚が0.3μm以上1μm以下であることが好ましい。上記のとおり、本発明の紙用塗料は、抗菌剤の平均粒径が1.5μm以下であり、23℃における流動パラフィンの粘度が1.12×10−1Pa・s以上であるため、硬化膜の平均膜厚を1μm以下に薄膜化したとしても、充分な耐水性、耐油性及び抗菌性が得られるとともに、紙用塗料の硬化膜の表面に形成される気泡の発生状態を改善できる。
加えて、紙用塗料の硬化膜の平均膜厚を1μm以下に薄膜化することで、紙製品の単位面積当たりの原料単価を抑制できるとともに、紙用塗料に含まれるエタノール等の分散媒の乾燥時間を短縮できる。乾燥性が向上することで、紙製品同士の融着(ブロッキング)が抑えられることから、生産性の向上にもつながる。
本発明において、平均膜厚は、次の手法で算出するものとする。まず、走査型電子顕微鏡を用い、測定対象となる紙製品について、紙用塗料の硬化膜の、膜の表面に対して垂直な方向における5,000倍の断面拡大写真を撮影する。この拡大写真は、少なくとも縦(硬化膜の厚さ方向)5cm±1cm、横(硬化膜の幅方向)7cm±1cmであるものとする。続いて、拡大写真を縦方向に10等分し、10等分した各々の長方形について、中心軸での硬化膜の厚さを測定する。そして、得られた10個の値の平均を「平均膜厚」とする。
本発明に係る紙製品は、紙製包装容器等の素材として有用である。紙製包装容器等の素材として用いる場合、紙製品には、折り目が形成されていることが好ましい。これにより、折り目に沿って紙製品を折り曲げやすく、包装容器を容易に製造することができる。折り目の配置は、製造する包装容器の寸法に応じ適切に選択すればよい。なお、折り目の個数は、特に限定されず1又は複数であってよく、折り目同士は連続していても、断続していてもよい。
また、本発明に係る紙製品は、紙製包装容器以外でも、例えば、精肉のポリパックの底に配置する敷紙や、魚の刺身の下に配置する敷紙、ハンバーガーやフライドポテトの包み紙として使用することができる。また、本発明に係る紙製品は、カップケーキや弁当のポテトサラダ等の容器としても使用できる。
〔紙製品の製造方法〕
本発明に係る紙製品の製造方法は、紙用塗料を紙表面に塗布する塗布手順と、紙用塗料を硬化させる硬化手順とを含む。
[塗布手順]
紙用塗料の塗布は、紙の表面に抗菌効果が付与される限りにおいて、その方法は特に限定されない。例えば、含浸、印刷用ロール等による転写、スプレーによる散布等が挙げられる。
ところで、本発明の紙用塗料に含まれる抗菌剤の平均粒径は、1.5μm以下であるため、上記のとおり、紙用塗料の硬化膜の平均膜厚を1μm以下と薄膜化できる。これまで、流動パラフィン、ショ糖脂肪酸エステル、水溶性樹脂及び抗菌剤を含有する紙用塗料を紙の表面に塗布する場合、紙用塗料の硬化膜の平均膜厚が3μm以上になるように紙用塗料を塗布する必要があったため、1mあたりの目付量が200g〜21g程度の包装紙等の薄紙に紙用塗料を塗工するには、水溶媒を乾燥させるために非常に長い乾燥炉を有する専用の乾燥炉を備える必要があり、目付量が200g〜21gの薄紙になると紙用塗料の塗工量が多いために紙が塗料を吸った際に破断するのを防止するためのテンションコントロールを備える等、専用の塗工機を用いる必要があった。しかしながら、本発明は、紙用塗料の硬化膜を1μm以下と薄膜化できるため、乾燥機が水系塗料に対応しているものであれば、従来型のグラビア印刷機を用いて紙用塗料を上記薄紙に塗工することができる。加えて、塗膜を薄膜化することによって、塗膜による応力が少なくなるため、薄紙への塗工を容易に行うことができる。
[硬化手順]
紙用塗料の硬化は、熱風乾燥、活性エネルギー線照射といった従来公知の種々の方法で行われてよい。このうち、活性エネルギー線(例えば、遠赤外線)照射は、熱による紙製品の損傷を抑制できる点で好ましい。
なお、紙表面には、文字、模様、色彩を印字してもよい。印字内容としては、例えば、包装される内容物の情報が挙げられ、具体的には、包装される食品の絵柄、商品名、生産地、流通者等が挙げられる。印刷は、塗膜を被覆せずに塗膜の特性(特に抗菌性)を発揮できるよう、塗布の前に行われてもよいが、これに限られず、塗料の硬化の後に行われてもよい。いずれの態様においても、紙への印刷は、発泡スチロールへの印刷と異なり、容易に行うことができる。
<紙製包装容器>
本発明は、以上の紙製品で形成された紙製包装容器を包含する。ここで「紙製包装容器」は、箱状、袋状等任意の形状であってよい。なお、紙製包装容器を分解(例えば、折り曲げの一部又は全部を戻す)して紙製品へと戻し、この紙製品を再利用して紙製包装容器を製造することは、本発明に係る紙製包装容器の製造に該当する。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるもので
はない。
<実施例1>
流動パラフィン(製品名:ノルマルパラフィン、イソパラフィンからなるパラフィンオイル,カネダ社製)2.27kgにショ糖脂肪酸エステル(製品名:F−10,第一工業製薬社製)0.2kgを添加し、湯せんで80℃に加熱しながら撹拌した。その後、室温にまで冷やしてから、水を10.22kg添加し、よく撹拌した後、アクリル樹脂水溶液(製品名:アクアパックワニスF−2,アクリル樹脂エマルション,T&K toka社製)を17kg添加し、よく撹拌した。その後、抗菌剤として、平均粒径が0.9μmである銀担持ゼオライト粒子(製品名:ノバロン,東亜合成社製)0.4kgを添加し、よく分散させた後、さらに水を26kg添加、撹拌して、実施例1に係る紙用塗料を得た。なお、流動パラフィンのJIS K 5600−2−3法に準じて測定した23℃における粘度は、1.81×10−1Pa・sであり、実施例1に係る紙用塗料のJIS K 5600−2−3法に準じて測定した23℃における粘度は、3.97×10−3Pa・sであった。
グラビア印刷機の印刷用ロールとして印刷面の平らなロールを用い、そのロール表面に実施例1に係る紙用塗料を付着させ、それを1mあたりの目付量が23gである紙の表面に、紙用塗料の硬化膜の平均膜厚が1μm以下になるように転写した。その後、塗工紙を120℃の雰囲気中に10秒間かけて乾燥させることで、実施例1に係る紙製品を得た。
<実施例2>
流動パラフィン(製品名:ノルマルパラフィン、イソパラフィンからなるパラフィンオイル,カネダ社製)2.27kgにショ糖脂肪酸エステル(製品名:F−10,第一工業製薬社製)0.2kgを添加し、湯せんで80℃に加熱しながら撹拌した。その後、室温にまで冷やしてから、水を10.22kg添加し、よく撹拌した後、アクリル樹脂水溶液(製品名:アクアパックワニスF−2,アクリル樹脂エマルション,T&K toka社製)を17kg添加し、よく撹拌した。その後、抗菌剤として、平均粒径が1.5μm程度である銀担持ゼオライト粒子(製品名:ゼオミック,シナネンゼオミック社製)0.4kgを添加し、よく分散させた後、さらに水を26kg添加、撹拌して、実施例2に係る紙用塗料を得た。なお、流動パラフィンのJIS K 5600−2−3法に準じて測定した23℃における粘度は、3.05×10−1Pa・sであり、実施例2に係る紙用塗料のJIS K 5600−2−3法に準じて測定した23℃における粘度は、3.99×10−3Pa・sであった。
グラビア印刷機の印刷用ロールとして印刷面の平らなロールを用い、そのロール表面に実施例2に係る紙用塗料を付着させ、それを1mあたりの目付量が23gである紙の表面に、紙用塗料の硬化膜の平均膜厚が1μm以下になるように転写した。その後、塗工紙を120℃の雰囲気中に10秒間かけて乾燥させることで、実施例2に係る紙製品を得た。
<比較例1>
抗菌剤として、平均粒径が2.5μmである銀担持ゼオライト粒子(製品名:ゼオミック,シナネンゼオミック社製)及び、流動パラフィンとしてJIS K 5600−2−3法に準じて測定した23℃における粘度は、1.11×10−1Pa・sである流動パラフィンを用いたこと以外は、実施例1と同じ手法にて紙用塗料を作製した。紙用塗料の硬化膜の平均膜厚が7μmになるように転写した以外は、実施例1と同じ手法にて比較例1に係る紙製品を得た。また、比較例1に係る紙用塗料のJIS K 5600−2−3法に準じて測定した23℃における粘度は、3.90×10−3Pa・sであった。
<比較例2>
抗菌剤として、平均粒径が2.5μmである銀担持ゼオライト粒子(製品名:ゼオミック,シナネンゼオミック社製)及び、流動パラフィンとしてJIS K 5600−2−3法に準じて測定した23℃における粘度は、1.11×10−1Pa・sである流動パラフィンを用いたこと以外は、実施例1と同じ手法にて、比較例2に係る紙用塗料及び紙製品を得た。また、比較例2に係る紙用塗料のJIS K 5600−2−3法に準じて測定した23℃における粘度は、3.92×10−3Pa・sであった。
<比較例3>
流動パラフィンとしてJIS K 5600−2−3法に準じて測定した23℃における粘度は、1.11×10−1Pa・sである流動パラフィンを用いたこと以外は、実施例1と同じ手法にて、比較例3に係る紙用塗料及び紙製品を得た。また、比較例3に係る紙用塗料のJIS K 5600−2−3法に準じて測定した23℃における粘度は、3.95×10−3Pa・sであった。
実施例1〜2、比較例1〜3の紙用塗料の硬化膜の平均膜厚、流動パラフィンの粘度、抗菌剤の平均粒径を、表2に示す。
<評価>
実施例及び比較例を比べるため、実施例及び比較例に係る紙製品について、紙用塗料の硬化膜の表面及び断面を観察した。結果を図1〜6に示す。図1中、(a)は比較例3に係る紙製品における紙用塗料の硬化膜の表面状態を示す走査型電子顕微鏡の500倍拡大写真であり、(b)は実施例1に係る紙製品における紙用塗料の硬化膜の表面状態を示す走査型電子顕微鏡の1,000倍拡大写真である。図2は、実施例1に係る紙製品における紙用塗料の硬化膜の表面状態を示す走査型電子顕微鏡の300倍拡大写真である。図3は、比較例1に係る紙製品における紙用塗料の硬化膜の表面状態を示す走査型電子顕微鏡の450倍拡大写真である。図4は、比較例2に係る紙製品における紙用塗料の硬化膜の表面状態を示す走査型電子顕微鏡の300倍拡大写真である。図5は、実施例1に係る紙製品における紙用塗料の硬化膜の断面状態を示す走査型電子顕微鏡の5,000倍拡大写真である。図6は、実施例2に係る紙製品における紙用塗料の硬化膜の表面状態を示す走査型電子顕微鏡の1,500倍拡大写真である。走査型電子顕微鏡の条件は、加速電圧を、比較例3と実施例1の断面については10kVとし、実施例1の表面と実施例2と比較例1、2、4については15kVとした点以外は粒径の測定手法で説明したものと同じである。
図1から、実施例1に係る紙用塗料の硬化膜表面が、比較例3に係る紙用塗料の硬化膜表面に比べ、気泡の大きさが小さく、また、気泡の数そのものが少ないことが確認された。すなわち、紙用塗料の硬化膜表面における気泡の発生状況が改善されることが確認された。これは、流動系パラフィンの23℃における粘度が1.12×10−1Pa・s以上と、比較例3に比べて大きいことにより、硬化膜中の抗菌剤と水溶性樹脂とのなじみがよくなり、その結果、流動性パラフィンの抜けがよくなったからであると推察される。これにより、硬化膜の平均膜厚が1μm以下であっても、流動系パラフィンの23℃における粘度が1.12×10−1Pa・s以上であることによって、気泡の発生状態を改善できることが示された。このように、本発明によると、気泡の発生状態を改善できることから、硬化膜の平均膜厚を1μm以下と薄膜化することが可能であるため、紙製品1m当たりの原料単価を抑制することができる。また、紙用塗料の膜厚を薄膜化することで、紙用塗料に含まれるエタノール等の分散媒を乾燥させる際の乾燥性が乾燥時間を短縮することが可能であり、さらに乾燥性が向上することで、紙製品同士の融着(ブロッキング)が抑えられるので、生産性を向上することができると考えられる。
また、実施例1に係る紙製品について、JIS Z 2801に基づき、抗菌性の評価を行った。具体的には、まず、実施例1に係る紙製品を湿熱滅菌(121℃、15分間)した後、紙(4cm×4cm)の片面に、表3に示す大腸菌、黄色ブドウ球菌、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、サルモネラ菌をそれぞれ所定量接種し、フィルムで密着させた。続いて、35℃にて24時間保持した後、各紙上の菌数を測定した。測定は、3つのサンプルについて行い、それぞれの平均を計算した。なお、菌の調製には、1/500普通ブイヨン(栄研化学株式会社製)を使用した。
また、無処理の、1mあたりの目付量が23gである紙を対象例に係る紙製品として準備し、実施例1に係る紙製品と同様の手順で抗菌性の評価を測定した。
実施例1に係る紙製品についての菌数の経時変化を表4に示し、対象例に係る紙製品について菌数の経時変化を表5に示す。
表4及び5に示されるように、実施例1に係る紙製品では、対象例に係る紙製品と異なり、24時間後に、大腸菌、黄色ブドウ球菌、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、及びサルモネラ菌の全てが検出されなかった。これにより、本発明に係る紙用塗料は、硬化膜の平均膜厚が1μm以下であっても、優れた抗菌性を紙製品に付与できることが確認された。
また、図2と図3を比較すると、硬化膜の平均膜厚が1μmである実施例1では、下地の紙繊維が目視できるほど塗膜が薄いが、硬化膜の平均膜厚が7μmである比較例1では塗膜が厚いので下地の紙繊維はほとんど目視できないことが確認された。また、実施例1と比較例1はいずれも、実施例1の方が、硬化膜の平均膜厚が小さいにもかかわらず、耐水、耐油、抗菌性能は同等程度であることが確認された。さらに、抗菌剤の平均粒径が0.9μmであり、かつ、使用した流動パラフィンの23℃における粘度が1.81×10−1Pa・sである実施例1と同様の厚さに薄塗したが、抗菌剤の平均粒径が2.5μmでありる、かつ使用した流動パラフィンの23℃における粘度が1.11×10−1Pa・sである比較例2では、実施例1と比較すると、抗菌剤も塗膜表面に定着せずに膜自体にも大きな気泡が残ることが確認された(図4を参照)。一方、比較例2と比較例3とは、いずれも硬化膜の平均膜厚が1.0μm以下であり、使用した流動パラフィンの23℃における粘度が1.11×10−1Pa・sであるが、抗菌剤の平均粒径が0.9μmである比較例3では、抗菌剤の平均粒径が2.5μmである比較例2より、抗菌剤の定着性が向上し、気泡の大きさが小さくなることが確認された(図4、図1(a)を参照)。また、平均粒径が2.5μmである比較例1、2より、平均粒径が0.9μmである比較例3は、耐水性及び耐油性が著しく低下することが確認された。これにより、抗菌剤の平均粒径が1.5μm以下であり、かつ流動系パラフィンの23℃における粘度を1.12×10−1Pa・s以上であることにより、硬化膜の平均膜厚を1μm以下と薄膜化しても、耐水性、耐油水及び抗菌性を十分に発揮することが示された。
また、図6の写真から、流動パラフィンの23℃における粘度が3.05×10−1Pa・sであり、抗菌剤の平均粒径を1.5μmとした実施例2においても、硬化膜の平均膜厚が1.0μm以下と小さいにも関わらず、気泡の数そのものが少ないこと、抗菌剤が分散しているが確認された。すなわち、実施例2においても、紙用塗料の硬化膜表面における気泡の発生状況が改善され、十分な抗菌性を有することが示された。
なお、上記のとおり、図5は、実施例1の硬化膜の断面図である。部分的に紙表面が窪んでいる箇所においては、膜厚が1.5μmとなっているが、全体的に膜厚が1.0μm以下と薄膜化されていることが確認された。
膜厚を3μm以上とする従来の紙用塗料による紙製品の製造方法では、薄紙(1mあたりの目付量が70g〜35g程度の包装紙等)には塗工するには専用の塗工機が必要であったが、薄膜化が可能となったことにより、通常のグラビア印刷機でも乾燥機が水系塗料に対応しているものであれば、塗工が可能であると考えられる。さらに、塗膜が薄膜化することによって、塗膜による応力が少なくなるため、薄紙への塗工を容易に行うことができると考えられる。

Claims (12)

  1. 紙の表面に塗布される紙用塗料であって、
    流動パラフィン、ショ糖脂肪酸エステル、水溶性樹脂、及び抗菌剤を含有し、
    前記流動パラフィンは、JIS K 5600−2−3法に準じて測定した23℃における粘度が1.12×10−1Pa・s以上であり、
    前記抗菌剤は、走査電子顕微鏡を用いてJIS H 7804法に準じて測定した平均粒径が0.3μm以上1.5μm以下である、紙用塗料。
  2. 前記抗菌剤が銀系抗菌剤である、請求項1に記載の紙用塗料。
  3. 前記抗菌剤の含有量が、前記紙用塗料の全質量に対し、0.5質量%以上1.5質量%以下である、請求項1又は2に記載の紙用塗料。
  4. 前記ショ糖脂肪酸エステルのHLB値が2以下である、請求項1から3のいずれかに記載の紙用塗料。
  5. 前記ショ糖脂肪酸エステルの含有量が、前記紙用塗料の全質量に対し、0.35質量%以上0.8質量%以下である、請求項1から4のいずれかに記載の紙用塗料。
  6. 前記水溶性樹脂が、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂及びアクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂からなる群から選択される1種以上を含む、請求項1から5のいずれかに記載の紙用塗料。
  7. 請求項1から6のいずれかに記載の紙用塗料の硬化膜が紙の表面に形成されている紙製品。
  8. JIS H8690附則書1「走査型電子顕微鏡による厚さ試験方法」に準じて測定した前記硬化膜の平均膜厚が0.3μm以上1μm以下である、請求項7に記載の紙製品。
  9. 請求項7又は8に記載の紙製品で形成された紙製包装容器。
  10. 請求項1から6のいずれかに記載の紙用塗料を紙表面に塗布する塗布手順と、
    前記紙用塗料を硬化させる硬化手順とを含む、紙製品の製造方法。
  11. 前記塗布を、JIS H8690附則書1「走査型電子顕微鏡による厚さ試験方法」に準じて測定した前記紙用塗料の硬化膜の平均膜厚が0.3μm以上1μm以下となるように行う、請求項10に記載の紙製品の製造方法。
  12. 前記塗布手順は、前記紙用塗料を、1mあたりの目付量が200g以下である紙の表面にグラビア印刷機で塗布する手順である、請求項11に記載の紙製品の製造方法。
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