以下本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。図1は、実施の形態に係る洗濯乾燥機の外観を略示する斜視図、図2は、実施の形態に係る洗濯乾燥機の内部構成を略示する縦断面図である。
図2に示すように、洗濯乾燥機は、外装を構成する外筐1の内部に水槽2及び回転ドラム3を備えている。水槽2は、一側の全面に開口20を有する大径の有底円筒体であり、外筐1の底面に立設された複数本の支持脚21(1本のみ図示)により、開口20の側を上向きとし、水平面に対して軸心を傾けた傾斜姿勢を保って弾性支持されている。
外筐1の前面(図2の左側面)には、水槽2の開口20を臨む位置に、蓋体10により開閉自在に洗濯物の投入口11が開設してあり、この投入口11と開口20との間は、ベローズ12により液密に封止されている。図1に示すように、外筐1の前面には、蓋体10の近傍にドア開ボタン13が設けてあり、蓋体10は、ドア開ボタン13の操作により開放される。
回転ドラム3は、水槽2よりもやや小径の有底円筒体であり、水槽2の底部中央に固設されたドラムモータ4の出力軸40に底面を固定し、一側の開口30を水槽2の開口20の内側に臨ませた姿勢で支持してある。このように支持された回転ドラム3は、ドラムモータ4の駆動により、水槽2の内部で同軸上にて回転する。回転ドラム3の周壁には、多数の通水孔32が全面に亘って貫通形成されている。また回転ドラム3の周壁内面には、軸長方向に延びるバッフル33が、周方向に等配をなして複数突設されている。なお図2中には、多数の通水孔32のうちの一部と、一つのバッフル33のみを図示してある。
以上の如く構成された洗濯乾燥機による洗濯は、蓋体10を開放し、投入口11の内側に位置する開口20,30を経て回転ドラム3内に洗濯物を投入し、前記蓋体10を閉止した後、後述するように水槽2の内部に適量の洗濯水を溜め、ドラムモータ4の駆動により、回転ドラム3を所定のパターンで反復回転(タンブリング)せしめて実施される。回転ドラム3内部の洗濯物は、回転ドラム3の内部で洗濯水中に浸され、該回転ドラム3の回転による持ち上げ及び落下を繰り返し、落下時に回転ドラム3の内面に叩きつけられて洗濯される。
図1に示すように、外筐1の前面上部には、各種の操作のための操作部及び各種の表示のための表示部を備える操作パネル15が設けてある。該操作パネル15は、外筐1の前面下部に設けた運転制御部8(図2参照)に接続してあり、後述する洗濯乾燥機の洗濯運転及び乾燥運転、並びにこれらの間の脱水運転は、操作パネル15の操作に応じた運転制御部8の動作により、一連の運転、又は個々に独立した運転として実行される。
図1に示すように外筐1の後部上面には、水道等の給水源との接続が可能な接続口50が設けてある。図2に示すように接続口50は、外筐1の内側に設けた給水弁51に接続してある。給水弁51は、複数の給水出口を有する多連形の電磁弁であり、運転制御部8の指令に応じて、閉止位置を含む複数の切換え位置間で切り換え動作する。
給水弁51の第1給水出口は、給水管52に接続されている。該給水管52は、後述する乾燥風路を構成する導入ダクト61内に延設され、該導入ダクト61内に設けた噴射ノズル7に接続されている。噴射ノズル7は、導入ダクト61の末端において、回転ドラム3の底面中央部に後述の如く開設された導入口65の近傍に、該導入口65を経て回転ドラム3の内部を臨むように設けてある。
運転制御部8は、洗濯運転に使用する洗濯水の給水時に、給水弁51を第1給水出口に切換える。この切換えにより、給水源からの給水は、給水管52を経て噴射ノズル7に達し、該噴射ノズル7から噴射されて、前記導入口65を経て回転ドラム3内に送り込まれる。なお給水管52は、給水弁51の下流側において公知の洗剤ケースに接続して、該洗剤ケース内に予め収容された適量の洗剤を給水と共に水槽2内に送り込むように構成することもできる。
給水弁51の第2給水出口は、冷却水管53を介して水槽2の前下部に連結してある。水槽2には、下部周面に軸長方向に延びる凹溝22が形成されており、該凹溝22の上部を覆うように冷却板23が架設してある。冷却板23は、後部を下として傾斜しており、上表面に複数の凹部が並設してある。
運転制御部8は、後述する乾燥運転時に、給水弁51を第2給水出口に切換える。この切換えにより給水源からの給水は、冷却水管53を通って冷却板23の前上部に送り込まれ、複数の凹部内に順次滞留しながら冷却板23の上表面に沿って後方に流れる。この給水は、後述するように、乾燥風を冷却する冷却水として使用される。
凹溝22の後下部は、排水ピット24に連通しており、該排水ピット24は、前方に延びる蛇腹状の排水管25により筒形のフィルタケース26に接続されている。排水ピット24には、エアトラップ24aが付設してある。エアトラップ24aは、排水ピット24の内部に連通する空気室であり、該エアトラップ24aの上部には水位センサ24bが取付けてある。
フィルタケース26は、外筐1の前下部に、前部を上とした傾斜姿勢にて支持されており、該フィルタケース26の内部には、リントフィルタ26aが収容されている。リントフィルタ26aは、フィルタケース26内を流れる水中に混在する繊維屑等の異物を捕捉すべく設けてある。リントフィルタ26aは、フィルタケース26の前端部から着脱可能である。リントフィルタ26aの着脱は、異物の捕捉による詰まりを解消するために実施される。
フィルタケース26の後部は、排水弁27を介して外筐1の底面に沿って敷設された排水ホース28に接続されている。またフィルタケース26の中間下部は、循環ポンプ29の吸込側に接続されている。循環ポンプ29は、上方に延びる吐出管29aを備え、該吐出管29aは、前述した給水管52の中途に切換え弁54を介して接続されている。
前述の如く回転ドラム3内に送り込まれる洗濯水は、該回転ドラム3の周壁に設けた通水孔32を経て水槽2内に流れ込む。この洗濯水は、排水弁27が閉である場合、排水ピット24及び排水管25を経てフィルタケース26内に入り、該フィルタケース26、排水管25及び排水ピット24内に充満した後、水槽2の内部に溜まる。このとき、エアトラップ24aの内部には、排水ピット24に洗濯水が充満した後も空気が取り残され。エアトラップ24a内の空気圧は、水槽2内に溜まる洗濯水の水位に応じて上昇する。水位センサ24bは、エアトラップ24a内の空気圧を検出する圧力センサである。水位センサ24bの検出信号は、運転制御部8に与えられており、運転制御部8は、水位センサ24bの検出信号に基づいて、水槽2の内部に溜まる洗濯水の水位を取得する。
循環ポンプ29は、洗濯水の給水後に後述の如く実施される洗濯運転中に、運転制御部8の指令に応じて連続的に、又は間欠的に駆動され、フィルタケース26内の洗濯水を吸い込んで加圧し、吐出管29aに送り出す。前記切換え弁54は、循環ポンプ29の駆動時に切換え動作し、吐出管29aを給水管52に連通する。循環ポンプ29が送り出す洗濯水は、吐出管29a及び給水管52を経て噴射ノズル7に達し、該噴射ノズル7から噴射されて、導入口65を経て回転ドラム3内に戻される。
このように、循環ポンプ29を駆動することにより、水槽2と回転ドラム3との間で洗濯水が循環する。循環する洗濯水は、フィルタケース26を通り、循環水中に含まれる繊維屑等の異物は、フィルタケース26内のリントフィルタ26aに捕捉、除去される。
排水弁27は、洗濯運転の後に開放される。この開放により水槽2内の洗濯水は、排水管25及びフィルタケース26を経て排水ホース28に排水される。このとき、洗濯水中に含まれる繊維屑等の異物は、フィルタケース26内のリントフィルタ26aに捕捉、除去され、排水ホース28を経て下水管に排出される虞れがない。
洗濯乾燥機は、乾燥風を循環させる乾燥風路を更に備えている。乾燥風路は、水槽2の底面に沿って延び、該水槽2と一体形成された導出ダクト60及び導入ダクト61を有している。図3は、導出ダクト60及び導入ダクト61の形成態様の説明図である。本図は、水槽2の底面を前方から見た状態を略示したものであり、図の上下は、図2の上下に対応している。なお、水槽2の外面には、強度確保のための多数のリブが設けてあるが、図3においては、これらのリブの図示を省略してある。
図3に示すように、導出ダクト60は、水槽2の底面の最下部を含めて周方向に適宜の長さを有して延び、一側端部で斜め上方に立ち上がるように設けられている。図3には、水槽2の下部周面に前述の如く形成された凹溝22、及び該凹溝22の上部に架設した冷却板23も図示してある。導出ダクト60の下部は、冷却板23の後位置で水槽2内に開口する導出口62に連通している。導出ダクト60の上端部は、水槽2の上部周面に上向きに突設された導出管63に連通している。
導入ダクト61は、水槽2の底面中央部に同軸をなして設けた円形部と、該円形部に連続し、斜め上方に延びる直線部とを備えている。直線部の上端は、水槽2の上部周面に上向きに突設された導入管64に連通している。一方、円形部の中心位置には、ドラムモータ4の出力軸40が突出しており、この突出部と同軸をなすように水槽2の内部に向けて開口する円形断面の導入口65が開設されている。
図4は、ドラムモータの支持部近傍の拡大断面図である。図中に一部を示すドラムモータ4の出力軸40は、軸受41により回転自在に支持され、水槽2の内側に向けて突出しており、この突出端部は、連結ブラケット42を介して回転ドラム3の底面の中心位置に固定されている。連結ブラケット42と回転ドラム3との間には、薄肉の封止板66が挾持固定されている。封止板66の外周には、導入ダクト61の末端の導入口65の内側に対向する鍔部が周設され、該鍔部の外面には、導入口65に内嵌固定されたオイルシール67が当接している。
回転ドラム3の底面には、連結ブラケット42の固定部よりも外側の周上に複数の導入孔34が並設してあり、これらの導入孔34は、封止板66の対応位置に設けられた連通孔68を介して導入口65に連通している。
図2に示すように水槽2の上部には、乾燥風を起風する送風ファン6が配してある。該送風ファン6は、吸込側のフィルタ6aと吐出側のヒータ6bと共にユニット化され、外筐1の内部に固定支持されている。水槽2の上部に突出する導出管63の端部は、送風ファン6の吸込側に連結され、同じく導入管64の端部は、送風ファン6の吐出側に連結されている。
送風ファン6が駆動された場合、該送風ファン6は、水槽2内の空気を導出ダクト60及び導出管63を経て吸い込んで加圧し、吐出側に連結された導入管64及び導入ダクト61に送り出す。導入ダクト61内に送り出される空気は、水槽2の外周から中央に向けて流れて導入口65に達し、連通孔68及び導入孔34を通って回転ドラム3内に導入される。回転ドラム3内に導入された空気は、周壁に形成された通水孔32を通って水槽2内に流出し、前述の如く形成された導出口62を経て導出ダクト60内に入り、送風ファン6に再度吸い込まれる。
送風ファン6及びヒータ6bは、洗濯乾燥機の乾燥運転時に運転制御部8からの指令に応じて動作する。また乾燥運転時に運転制御部8は、ドラムモータ4を駆動し、回転ドラム3を所定のパターンで反復回転(タンブリング)させ、更に、給水弁51を第2給水出口に切換えて、冷却板23上に冷却水を流すように動作する。
水槽2及び回転ドラム3を含む乾燥風路内には、送風ファン6を駆動することにより前述した空気(乾燥風)の循環が生じる。この乾燥風は、ヒータ6bを通過する際に加熱されて回転ドラム3内に導入され、該回転ドラム3内の洗濯物に接触し、該洗濯物の水分を奪って水槽2内に流出する。回転ドラム3内の洗濯物は、該回転ドラム3の回転による持ち上げ、落下を繰り返しており、回転ドラム3内に導入される乾燥風と良好に接触する。
水槽2に流出した乾燥風は、該水槽2の底面下部に開口する導出口62に向けて流れ、この間に前記冷却板23上に流れる冷却水と接触して冷却され、含有水分を凝縮除去された乾き空気となって導出口62に送り出される。なお、凝縮除去された水分は、冷却板23上の冷却水と共に後向きに流れて凹溝22内に流れ落ち、排水ピット24に集められ、排水管25及びフィルタケース26を通って排水ホース28内に排水される。
一方、乾き空気となった乾燥風は、導出ダクト60内を上昇し、導出管63を経て送風ファン6に吸い込まれて加圧され、ヒータ6bにより再加熱されて導入ダクト61内を下降し、導入口65を通って回転ドラム3の内部に導入される。回転ドラム3内の洗濯物は、以上のように冷却及び加熱を伴って循環する乾燥風と接触を繰り返すことで乾燥せしめられる。
以上の如く乾燥風路を構成する導入ダクト61の内部には、前述したように給水管52が延設されている。図2及び図3に示すように、給水管52は、給水弁51の位置から導入ダクト61の外面に沿って下方に延び、中途部で導入ダクト61の内部に進入して内面に沿って更に下方に延設され、導入ダクト61の最下部に設けた噴射ノズル7に接続されている。図4に示すように、噴射ノズル7は、斜め上方に向けた噴射口を導入ダクト61末端の導入口65に対向せしめて取付けてある。なお、導入ダクト61内の給水管52は、例えば、内壁面に設けた凹溝内に埋め込み、導入ダクト61内での前述した乾燥風の流れを阻害しないようにしている。
以上の構成により、給水管52からの給水は、給水管52の末端に接続された噴射ノズル7に達し、該噴射ノズル7の噴射口からミスト化されて噴射される。このように噴射される洗濯水は、図4中に矢符により示す如く、噴射口に対向する導入口65を通り、更に前記連通孔68及び導入孔34を経て回転ドラム3の内部に送り込まれる。
このような給水は、前述したように洗濯運転の開始前に実施される。洗濯運転に使用する洗濯水は、給水管52の末端の噴射ノズル7から噴射され、乾燥風の導入口65を経て回転ドラム3の内部全体に拡がった状態で送り込まれ、該回転ドラム3内の洗濯物に直接的に降り注ぐ。従って、回転ドラム3内の洗濯物は、給水開始直後から洗濯水により濡らされ、給水完了後の洗濯運転の開始直後から高い洗浄効果、すすぎ効果が得られ、洗濯運転の所要時間を短縮することができる。
また、以上の洗濯水の給水に際し、乾燥風路に設けた送風ファン6、又は送風ファン6及びヒータ6bを動作させてもよい。このことは、運転制御部8の動作によりにより給水弁51を第1給水出口に切換えて給水を行わせる際に、送風ファン6、又は送風ファン6及びヒータ6bに動作指令を与えることにより実現できる。
送風ファン6を動作させた場合、乾燥風路内に前述した空気の流れが生じ、導入ダクト61の末端の導入口65を経て回転ドラム3内に吹き出す。噴射ノズル7が噴射するミスト化された洗濯水は、このような空気の流れに助勢されて回転ドラム3内の全体に拡がるように送り込まれ、該回転ドラム3内の洗濯物を一層確実に濡らすことができる。
送風ファン6と共にヒータ6bを動作させた場合、ヒータ6bにより加熱された温風が回転ドラム3内に吹き出し、該回転ドラム3内の洗濯物は、温風との接触により加熱される。この結果、洗い工程においては洗濯水中に含まれる洗剤成分の活性が高まり、汚れ落ちを良好にすることが可能となる。逆にすすぎ工程においては、洗濯物中に残る洗剤成分の溶け出しを促進し、洗濯運転の所要時間を短縮することができる。
洗濯運転は、以上の如き洗濯水の給水完了後に実施される。このとき、運転制御部8は、循環ポンプ29を駆動し、切換え弁54を切換え動作させる。これにより、前述した洗濯水の循環が生じ、この循環水は、吐出管29a、給水管52を通って噴射ノズル7から回転ドラム3内に送り込まれる。噴射ノズル7は、乾燥風の導入口65に面し、また給水をミスト化して噴射するから、噴射ノズル7から噴射される循環水は、回転ドラム3内に拡がった状態で送り込まれ、洗濯途中の洗濯物にシャワー状に降り注ぐ。このような洗濯水の循環により洗浄効果、すすぎ効果を一層高めることができる。
また噴射ノズル7によるミストの噴射は、前述した乾燥運転中にも、後述する所定のパターンで実施される。図5は、洗濯乾燥機の制御系の構成を示すブロック図である。運転制御部8は、CPU(Central Processing Unit)8a、ROM(Read Only Memory)8b、RAM(Random Access Memory)8c及び入出力インターフェイス(I/O)8dを共有バスで接続してなるコンピュータである。
入出力インターフェイス8dには、前述した操作パネル15が接続してある。操作パネル15には、電源スイッチ、運転開始を指令するスタートスイッチ、運転内容を選択するためのスイッチ等、使用者により操作される各種のスイッチが設けられている。また操作パネル15は、操作補助のための表示、運転状態の表示等の各種の表示を行わせるための表示部を備えている。操作パネル15の操作内容は、入出力インターフェイス8dを介してCPU8aに与えられており、CPU8aは、操作パネル15の表示部に入出力インターフェイス8dを介して動作指令を与え、該表示部に所定の表示を行わせる。
また入出力インターフェイス8dには、前述した水位センサ24bが接続してあり、また、荷重センサ16、温度センサ80が接続してある。荷重センサ16は、図2に示す如く、水槽2の支持脚21に付設され、該支持脚21の支持荷重を検出するセンサである。温度センサ80は、乾燥風の導出口62の近傍に設けられ、回転ドラム3内に送り込まれる乾燥風の温度を検出するセンサである。
水位センサ24b、荷重センサ16、温度センサ80の検出信号は、入出力インターフェイス8dを介してCPU8aに与えられる。CPU8aは、前述の如く、水位センサ24bの検出信号に基づいて水槽2の内部の貯留水の水位を取得し、また荷重センサ16の検出信号に基づいて回転ドラム3内に投入された洗濯物の量を取得する。またCPU8aは、温度センサ80の検出信号を、乾燥運転の終了判定に使用する。
更に入出力インターフェイス8dは、ドラムモータ4、給水弁51、排水弁27、送風ファン6及びヒータ6b、より詳しくは、これらの駆動回路に接続してある。CPU8aは、操作パネル15の操作内容に従ってROM8bに格納された制御プログラムを実行し、ドラムモータ4、給水弁51、排水弁27、送風ファン6及びヒータ6bに動作指令を与え、前述した洗濯運転及び乾燥運転、更には脱水運転を実行する。
洗濯運転時の運転制御部8の動作は、前述した通りである。脱水運転時の運転制御部8の動作は、排水弁27を開放動作させて水槽2内の貯留水を排水した後、ドラムモータ4の駆動により回転ドラム3を高速回転させる動作である。回転ドラム3内の洗濯物は、高速回転に伴う遠心力の作用により回転ドラム3の内面に押し付けられて回転し、該洗濯物に含まれる水は、回転ドラム3の周壁に設けた通水孔32を通って水槽2内に流出し、排水ピット24に集められて、排水管25、フィルタケース26、排水ホース28を経て機外に排水される。
図6は、乾燥運転時の運転制御部8の動作内容を示すフローチャートである。乾燥運転は、前述の如く、洗濯運転及び脱水運転に連続した運転、又は独立した運転として実施される。乾燥運転の開始時に運転制御部8のCPU8aは、運転パターンを設定し(ステップS1)、またミスト噴射パターン及びタンブリングパターンを設定し(ステップS2、S3)、これらの運転パターン、ミスト噴射パターン及びタンブリングパターンを使用して乾燥運転を実行する(ステップS4)。
運転パターンの設定は、乾燥運転の複数の工程に分け、夫々の工程の時間を設定するものである。図7は、運転パターンの一例を示す図表である。本図においては、乾燥運転を乾燥ほぐし、乾燥1、乾燥2、送風の各工程に分け、更に、乾燥2の工程を、A、B,Cの3つの工程に分けた上で、各工程の時間を、洗濯物の量(Y1〜Y14)に応じて10通りに設定している。
乾燥ほぐしは、脱水完了後に水分を含んだ状態で回転ドラム3内に偏在する洗濯物をほぐすために実施される工程であり、この工程は、送風ファン6及びヒータ6bを駆動し、ドラムモータ4の駆動により後述するパターンで回転ドラム3をタンブリングさせて実施される。図7に示す如く、乾燥ほぐしの時間は、洗濯物の量の如何に拘らず一定時間(5分)に設定される。
乾燥1は、乾燥ほぐしを終えた洗濯物を所定の乾燥度に達するまで大まかに乾燥させる工程であり、送風ファン6及びヒータ6bを駆動し、ドラムモータ4の駆動により後述するパターンで回転ドラム3をタンブリングさせて実施される。図7に示す如く、乾燥1の時間は、洗濯物の量の如何に拘らず一定時間(25分)に設定される。
乾燥2は、乾燥1を終えた洗濯物を十分に乾燥させる仕上げ工程である。乾燥2のA工程は、洗濯物の量が多い場合、一定時間の乾燥1の実施により乾燥度の不足が生じることを補うために設けられた工程であり、乾燥1と同様に、送風ファン6、ヒータ6bを駆動し、ドラムモータ4の駆動により後述するパターンで回転ドラム3をタンブリングさせて実施される。
図7に示すように、乾燥2Aの工程は、洗濯物の量が3kg以上である場合に、洗濯物の量が多くなるに従って長い時間に設定される。なお洗濯物の量は、前述の如く、荷重センサ16の検出信号に基づいて、より具体的には、回転ドラム3内への洗濯物の投入前後の荷重センサ16の検出信号の変化に基づいて取得される。乾燥1。乾燥2Aの工程において、回転ドラム3内の洗濯物は、前述の如く循環する乾燥風と繰り返し接触することで乾燥せしめられる。
乾燥2のB、C工程は、乾燥1又は乾燥2Aを終えた後に実施される工程であり、送風ファン6、ヒータ6bを駆動し、またドラムモータ4の駆動により回転ドラム3をタンブリングさせると共に、給水弁51を第1給水出口に断続的に切換え、噴射ノズル7から所定の噴射パターンでミストを断続的に噴射せしめて実施される。
一般的に、回転ドラム3の内部には、シャツ等の薄手の洗濯物と、タオル等の厚手の洗濯物が混在しており、乾燥1、乾燥2Aを継続して実施した場合、厚手の洗濯物の乾燥が終了する前に薄手の洗濯物が過乾燥状態となり、しわが生じる等、良好な仕上がり状態が得られない虞れがある。乾燥2のB、C工程でのミストの噴射は、回転ドラム3内の洗濯物、特に、薄手の洗濯物に適度の湿り気を与え、全ての洗濯物を良好な仕上がり状態とするために行われる。
図7に示すように、乾燥2B、2Cの工程は、洗濯物の量が多くなるに従って長い時間に設定される。また図7においては、洗濯物の量を14段階(Y1〜Y14)に分け、乾燥2A、2B、2Cの時間を10段階に設定してあるが、これらの段階分けは適宜に変更することができる。また図7に示す各工程の時間は、あくまでも例示であり、これらと異なる値としてもよいことは言うまでもない。
図7に示すように、洗濯物の量が所定量(6kg)を超える場合、乾燥2B、2Cの工程は設定されず、乾燥2Aに十分に長い時間(165分)が設定される。これは、洗濯物の量が多い場合、回転ドラム3内の洗濯物に十分な隙間が存在せず、噴射ノズル7から噴射されるミストが導入位置の近くの洗濯物に集中して当たって濡らすこととなり、遠くの洗濯物との間の乾き度の差異が大きくなって、仕上がり状態が悪くなるためである。
乾燥2の後に実施される送風工程は、乾燥工程において、乾燥風との接触により高温となった洗濯物を冷却するための工程であり、この工程は、ヒータ6bを動作させずに送風ファン6を駆動し、ドラムモータ4の駆動により回転ドラム3をタンブリングさせて実施される。図7に示す如く、送風工程の時間は、洗濯物の量の如何に拘らず一定時間(10分)に設定されるが、この時間は、後述の如く、送風工程への移行前の状態に応じて変更される。
乾燥2B、2Cの各工程でのミストの噴射は、ステップS2で設定されるミスト噴射パターンに従って実施される。図8は、ミスト噴射パターンの一例を示す図表である。本図中のON/OFF時間は、給水弁51の開放/閉止時間、同じく回数は、ON/OFF時間での開放/閉止の繰り返し回数、間隔は、繰り返し動作の実行間隔である。
図8においては、前述の如くY1〜Y14に分けた洗濯物の量のうち、ミスト噴射を行わないY13、Y14を除くY1〜Y12を3つの組に分け、各組について、ON/OFF時間、回数、間隔が定められており、ステップS2においては、洗濯物の量に基づいて図8のいずれかのミスト噴射パターンが設定され、乾燥2B、2Cの各工程でのミストの噴射は、設定されたミスト噴射パターンに従って実行される。これにより、回転ドラム3内部には、洗濯物の量が多くなるに従って多くのミストが噴射されることとなり、回転ドラム3内の洗濯物を過不足なく濡らすことができる。
なお、図8においては、ON/OFF時間を一定とし、回数及び間隔を異ならせてあるが、ON/OFF時間を異ならせてもよい。また図8においては、洗濯物の量を3段階に分けてミスト噴射パターンが定めてあるが、洗濯物の量は、2段階、又は3段階以上に分け、夫々の段階でミスト噴射パターンを定めてもよい。更に、図8に示すON/OFF時間、回数、間隔の各数値は、あくまでも例示であることは言うまでもない。
以上の如きミスト噴射パターンは、乾燥2B、2Cの各工程において共通であり、乾燥2B、2Cでは、S3において設定されるタンブリングパターンが相違する。図9は、タンブリングパターンの一例を示す図表である。本図中の回転は、回転ドラム3が回転する時間を示し、停止は、その後に停止する時間を示している。同じく回転数は、回転中の回転速度を、また持続時間は、夫々の回転数を持続する時間を、更に加速度は、回転数の移行時の加速度を示している。本図に従ってタンブリングパターンが設定された場合、乾燥ほぐし、乾燥1、送風の各工程において、回転ドラム3は、30秒間の回転と5秒間の停止とを回転方向を反転しながら繰り返し、回転中においては、65rpmの回転数を20秒間、95rpmの回転数を10秒間夫々持続する。更に、0rpmから65rpmへの移行は、15rpm/sの加速度で、65rpmから95rpmへの移行は、50rpm/sの加速度で行われる。このようなタンブリングパターンは、CPU8aによるドラムモータ4の駆動制御によって実現することができる。
図9に示すタンブリングパターンは、例えば、回転ドラム3内に種々の量の洗濯物を投入して回転ドラム3を回転させ、内部の洗濯物の挙動を観察する実験の結果として定めたものである。回転ドラム3内での洗濯物の挙動は、乾き度合いの進行に応じた洗濯物の重量変化に伴って変化することから、乾燥2A、2B、2Cの各工程においては、Y1〜Y14の洗濯物の量を3つの組に分け、夫々に対して個別に定めてある。
ステップS3においては、回転ドラム3内の洗濯物の量に応じて図9に示すタンブリングパターンのいずれかが設定され、乾燥運転中の各工程において、回転ドラム3は、設定されたタンブリングパターンに従ってタンブリングされる。これにより、回転ドラム3内の洗濯物は、該回転ドラム3内に導入される乾燥風、及び回転ドラム3内に噴射されるミストと確実に接触し、良好な仕上がり状態が得られる。
CPU8aは、乾燥運転の実行中、乾燥が終了したか否かを判定し(ステップS5)、乾燥が終了していないと判定された場合(S5:NO)、乾燥運転を継続し、乾燥運転が終了したと判定された場合(S5:YES)、最後のミスト噴射が終了判定時点から所定時間内になされたか否かを判定する(ステップS6)。所定時間内にミスト噴射がなされていない場合(S6:NO)、CPU8aは、通常送風運転を実施して(ステップS7)、乾燥運転を終了し、所定時間内にミスト噴射がなされている場合(S6:YES)、CPU8aは、延長送風運転を実施して(ステップS8)、乾燥運転を終了する。
ステップS5の判定は、前述の如く、温度センサ80の検出信号に基づいてなされる。温度センサ80は、回転ドラム3内に送り込まれる乾燥風の温度を検出する。乾燥風は、回転ドラム3内の洗濯物と接触して水分を奪い、ヒータ6bの通過により加熱されて回転ドラム3内に送り込まれる。このような乾燥風の温度は、回転ドラム3内の洗濯物の乾燥が進行し、該洗濯物の含有水分が低下するに従って上昇する。CPU8aは、温度センサ80の検出温度が所定値を超えたとき乾燥が終了したと判定する。
通常送風運転は、ステップS1で設定された運転パターンに従った時間で送風を実行する運転である。送風運転は、ヒータ6bを動作させずに、送風ファン6及びドラムモータ4を駆動し、タンブリング動作する回転ドラム3内に低温の乾燥風を循環させる動作である。図7に従って運転パターンが設定される場合、通常送風運転においては、10分の送風が実行される。
延長送風運転においては、通常送風運転を延長して送風が実行される。延長時間は、例えば、5分間である。図10は、送風運転の説明図である。図中に黒い丸印で示す時点で乾燥終了の判定がなされた場合、最後のミスト噴射時点からの経過時間はT1である。また、図中に黒い四角印で示す時点で乾燥終了の判定がなされた場合、最後のミスト噴射時点からの経過時間はT2 である。T2 が所定時間よりも長い場合、T3 時間の送風運転が実行される。一方、T1 が所定時間よりも短い場合、(T3 +ΔT)時間の送風運転が実行される。T3 は、運転パターンの設定により定められた時間(10分)であり、ΔTは、延長時間(5分)である。
以上のような送風時間の延長は、乾燥終了後の仕上がり状態を良好にするために必要である。ミストが噴射された場合、回転ドラム3内の洗濯物は、少量の水分を含んだ状態となる。この水分は、ミスト噴射後の乾燥運転により除去されるが、噴射後の乾燥運転の時間が短い場合、洗濯物の水分が十分に除去されない虞れがある。送風運転の延長は、このような場合に実行され、送風時間を長くすることで洗濯物の残留水分を除去することが可能となる。なお、延長送風運転における延長時間は、最後のミスト噴射時点からの経過時間に応じて長短に変更してもよい。
なお以上の実施の形態においては、噴射ノズル7によるミスト噴射が、回転ドラム3の底面中央部から行われるようにしてあるが、ミスト噴射位置は、回転ドラム3内への噴射が可能であれば適宜の位置に設定可能である。
また以上の実施の形態においては、水槽2及び回転ドラム3が斜め横姿勢に支持された斜めドラム式の洗濯乾燥機について説明したが、本発明は、横姿勢又は縦姿勢に支持された水槽2及び回転ドラム3を備える洗濯乾燥機においても適用可能であり、同様の効果が得られることは言うまでもない。