JP5796393B2 - 樹脂組成物および樹脂成形体 - Google Patents
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Description
近年地球規模での環境問題に対して、植物由来の樹脂の利用は、温室効果ガス排出量の低減し得る材料として大きな期待が寄せられている。従来から知られている植物由来の樹脂の一つに、セルロース誘導体がある。セルロース誘導体は、従来、塗料としての用途や、繊維としての用途では、広く利用されているが、セルロース誘導体の樹脂成形体への利用に際しては、まだ用いられている例はほとんど見られない。
即ち、請求項1に係る発明は、
セルロースアセテートプロピオネートを100phrと、
アジペート系可塑剤及びポリエステル系可塑剤から選択される少なくとも1種の可塑剤を5phr以上30phr以下と、
縮合リン酸エステル化合物を5phr以上50phrと、
を含む樹脂組成物。
前記可塑剤として前記アジペート系可塑剤を含むと共に、前記縮合リン酸エステル化合物として下記構造式(1)で表される芳香族縮合リン酸エステル化合物を含む請求項1に記載の樹脂組成物。
さらに、メタクリレート及びグリシジル化合物の共重合体を0.1phr以上10phr以下で含む請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
セルロースアセテートプロピオネートを100phrと、
アジペート系可塑剤及びポリエステル系可塑剤から選択される少なくとも1種の可塑剤を5phr以上30phr以下と、
縮合リン酸エステル化合物を5phr以上50phrと、
を含む樹脂成形体。
前記可塑剤として前記アジペート系可塑剤を含むと共に、前記縮合リン酸エステル化合物として下記構造式(1)で表される芳香族縮合リン酸エステル化合物を含む請求項4に記載の樹脂成形体。
さらに、メタクリレート及びグリシジル化合物の共重合体を0.1phr以上10phr以下で含む請求項4又は5に記載の樹脂成形体。
請求項2に係る発明によれば、可塑剤として前記アジペート系可塑剤と共に、縮合リン酸エステル化合物として上記構造式(1)で表される芳香族縮合リン酸エステル化合物を含まない場合に比べ、得られる樹脂成形体の耐衝撃性が向上する樹脂組成物を提供することができる。
請求項3に係る発明によれば、さらに、メタクリレート及びグリシジル化合物の共重合体を0.1phr以上10phr以下で含まない場合に比べ、得られる樹脂成形体の寸法安定性が向上する樹脂組成物を提供することができる。
請求項5に係る発明によれば、可塑剤として前記アジペート系可塑剤と共に、縮合リン酸エステル化合物として上記構造式(1)で表される芳香族縮合リン酸エステル化合物を含まない場合に比べ、耐衝撃性が向上した樹脂成形体を提供することができる。
請求項6に係る発明によれば、さらに、メタクリレート及びグリシジル化合物の共重合体を0.1phr以上10phr以下で含まない場合に比べ、寸法安定性が向上した樹脂成形体を提供することができる。
本実施形態に係る樹脂組成物は、セルロースアセテートプロピオネートと、アジペート系可塑剤及びポリエステル系可塑剤から選択される少なくとも1種の可塑剤と、縮合リン酸エステル化合物と、を含む樹脂組成物である。
そして、セルロースアセテートプロピオネートの含有量を100phrとし、アジペート系可塑剤及びポリエステル系可塑剤から選択される少なくとも1種の可塑剤の含有量(2種併用の場合その合計含有量)を5phr以上30phr以下とし、縮合リン酸エステル化合物の含有量を5phr以上50phrとしている。
なお、「phr」とは、「per hundred resin」の略であり、全樹脂成分(本実施形態ではセルロールプロピオネート)100質量部に対する「質量部」である。
しかしながら、セルロール誘導体(セルロールエステル)に可塑剤を配合すると耐衝撃性が向上するものの、さらに難燃剤を配合すると耐衝撃性が低下することがわかってきた。これは、難燃剤が可塑剤と相溶しないためであると考えられる。
まず、セルロースアセテートプロピオネートと可塑剤としてのアジペート系可塑剤及びポリエステル系可塑剤とは相溶し、可塑剤の配合により、セルロースアセテートプロピオネートの分子間力が緩和され、これにより耐衝撃性が向上するものと考えられる。
加えて、この組成に、難燃剤として縮合リン酸エステル化合物を配合すると、縮合リン酸エステル化合物と可塑剤としてのアジペート系可塑剤及びポリエステル系可塑剤とが相溶し、しかも、縮合リン酸エステル化合物のリン酸エステルと可塑剤が持つカルボキシル基とが水素結合による相互作用が働くと考えられ、縮合リン酸エステル化合物の構造が立体障害となりセルロースアセテートプロピオネートの分子間力がより一層緩和され、これにより、可塑剤を単独で配合した場合に比べて、一層耐衝撃性が向上するものと考えられる。
ここで、樹脂成形体の光沢は表面で種類の異なる各成分が乱反射して生じることが知られているが、乱反射が発生し難い度合いまで各成分が相溶して分散されるため、得られる樹脂成形体の光沢が低減されると考えられる。
そして、各成分が相溶して分散していることから、機械的特性(特に伸び)も向上すると考えられる。
これにより、得られる樹脂成形体の耐衝撃性が向上し易くなる。
この理由は定かではないが、これら可塑剤と縮合リン酸エステル化合物とは、セルロースアセテートプロピオネートと共に、互いに、相溶し易いものであるためと考えられるからである。
なお、この観点からすると、本実施形態に係る樹脂組成物において配合する各成分は、溶解度パラメータ(SP値)の差(絶対値)が8以下(望ましくは5以下)であることがよいと考えられる。
このような溶解度パラメータ(SP値)の差(絶対値)が上記範囲内の成分を適用すると、互いの成分が相溶し易くなり、耐衝撃性、その他機械的特性等が向上し易くなる。
溶解解度パラメータ(SP値)は、化学構造の原子又は原子団の蒸発エネルギー(Δei)とモル体積(Δvi)より求めるFedorsの下記計算式により算出した値である。
・式:[SP値=(ΣΔei/ΣΔvi)1/2]
これにより、得られる樹脂成形体の寸法安定性が向上する。
特に、セルロースアセテートプロピオネートと架橋構造を形成すると考えられるメタクリレート及びグリシジル化合物の共重合体を適用すると、その架橋構造により、樹脂成形体の寸法安定性と共に、耐衝撃性及び弾性率も向上すると考えられる。
また、セルロースアセテートプロピオネートと架橋構造を形成すると考えられるメタクリレート及びグリシジル化合物の共重合体を適用すると、その架橋構造により、樹脂組成物の溶融粘度が向上し、成形性も向上すると考えられる。
−セルロースアセテートプロピオネート−
セルロースアセテートプロピオネートは、セルロースをプロピオン酸でエステル化したものである。
この重量平均分子量が小さすぎると、流動性が過剰となり加工が難しい場合があり、この重量平均分子量が大きすぎると、流動性が不足し加工が難しい場合がある。
なお、重量平均分子量は、ゲルパーミッションクロマトグラフィー装置(島津製作所製Prominence GPC型)を用い、測定カラムにはShim−pack GPC−80Mを使用して測定された値である。
この含有量では、樹脂組成物(その成形体)が日本バイオプラスチック協会による「グリーンプラ」又は「バイオマスプラ」識別表示制度の認証が得られる。
可塑剤としては、アジベート系可塑剤、及びポリエステル系可塑剤から選択される少なくとも1種が適用される。これら可塑剤はセルロースアセテートプロピオネートとの相溶性を示す点、及び、難燃剤としての縮合リン酸エステル化合物と水素結合による相互作用を及ぼすカルボキシル基を持つ点で共通する特徴を有する。
アジベート系可塑剤としては、例えば、ビス(2−エチルヘキシル)アジペート、ジイソデシルアジペート、ベンジオクチルアジペート等が挙げられる。
ポリエステル系可塑剤としては、例えば、ポリ(1,3−ブタンジオールアジペート)、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート等が挙げられる。
可塑剤の重量平均分子量は、特に限定されるものではないが、例えば、300以上3000以下の範囲であることが好ましい。
この重量平均分子量が小さすぎると、流動性が過剰となり加工が難しい場合があり、また、成形加工時に可塑剤のガス化による成形不良が生じやすくなる場合がある。この重量平均分子量が大きすぎると、可塑剤の分散不良により流動性が不足し加工が難しい場合がある。
この含有量が、少なすぎると、樹脂成形体の耐衝撃性向上が実現され難くなる傾向にあり、多すぎると、樹脂組成物の成形性が低下すると共に、得られる樹脂成形体の引張り強度が低下することがある。
難燃剤としては、縮合リン酸エステル化合物が適用される。
縮合リン酸エステル化合物としては、例えば、芳香族縮合リン酸エステル化合物が挙げられ。具体的には例えば、ペンタエリスリトールジホスフェートや、下記一般式(I)、(II)で表わされるリン酸エステル化合物が挙げられる。
芳香族縮合リン酸エステル化合物としての市販品としては、例えば、大八化学社製PX−200、PX−201、PX−202、CR−733S、CR−741、CR747などの市販品が挙げられる。
この含有量が、少なすぎると、得られる樹脂成形体の耐衝撃性が低下し易くなると共に、樹脂成形体の難燃性の発現が生じ難くなる一方、多すぎると、樹脂組成物の成形性が低下したり、樹脂成形体の表面に現れ(ブリード)で外観を損なうことがある。
メタクリレート及びグリシジル化合物の共重合体は、メタクリレートと、グリシジル化合物と、を共重合させたものである。構造的には、ラダ―構造でもブロック共重合体構造でもよい。なお、メタクリレートに代えて、アクリレートを共重合させたものであってもよい。
ここで、グリシジル化合物としては、例えば、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、等が挙げられ、好適にはグリシジルメタクリレートである。
この含有量が、少なすぎると、得られる樹脂成形体の寸法安定性が向上し難くなる一方、多すぎると、樹脂組成物の成形性が低下することがある。
本実施形態に係る樹脂組成物は、効果を損なわない範囲で上記各成分の他、その他の成分を含んでいてもよい。
その他の成分としては、例えば、難燃助剤、ドリップ防止剤、可塑剤、酸化防止剤、離型剤、耐光剤、耐候剤、着色剤、顔料、改質剤、帯電防止剤、耐加水分解防止剤、充填剤、補強剤(ガラス繊維、炭素繊維、タルク、クレー、マイカ、ガラスフレーク、ミルドガラス、ガラスビーズ、結晶性シリカ、アルミナ、窒化ケイ素、窒化アルミナ、ボロンナイトライド等)等が挙げられる。
その他成分は、樹脂組成物中に、例えば、0phr以上10phr以下であることがよく、0phr以上5phr以下であることがより望ましい。ここで、「0phr」とはその他の成分を含まない形態を意味する。
本実施形態に係る樹脂組成物は、上記各成分を溶融混練することにより製造される。
ここで、溶融混練の手段としては公知の手段を用いることができ、例えば、二軸押出し機、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機、コニーダ等が挙げられる。
本実施形態に係る樹脂成形体は、上記本実施形態に係る樹脂組成物を含んで構成される。具体的には、本実施形態に係る樹脂成形体は、上記本実施形態に係る樹脂組成物を成形することにより得られる。
なお、例えば射出成形、押し出し成形、ブロー成形、熱プレス成形、カレンダ成形、コーテイング成形、キャスト成形、ディッピング成形、真空成形、トランスファ成形などの成形方法により本実施形態に係る樹脂組成物を成形し、本実施形態に係る樹脂成形体が得られる。
図1の画像形成装置100は、本体装置110の前面にフロントカバー120a,120bを備えている。これらのフロントカバー120a,120bは、操作者が装置内を操作するよう開閉自在となっている。これにより、操作者は、トナーが消耗したときにトナーを補充したり、消耗したプロセスカートリッジを交換したり、装置内で紙詰まりが発生したときに詰まった用紙を取り除いたりする。図1には、フロントカバー120a,120bが開かれた状態の装置が示されている。
表1〜表5に従った成分を2軸混練装置(東芝機械製、TEM58SS)にて、シリンダ温度210℃で混練し、樹脂組成物のペレットを得た。
得られたペレットを、射出成型機(東芝機械社製、製品名「NEX500」)を用いて表1〜表5に示したシリンダ温度、金型温度50℃で射出成型し、ISO多目的ダンベル試験片(ISO527引張試験、ISO178曲げ試験に対応、試験部厚さ4mm、幅10mm)と、UL−94におけるVテスト用UL試験片(厚さ:1.6mm)を成形した。
(植物度)
各例で使用した樹脂組成物について、植物度を下記式により算出した。
式:植物度=セルロースアセテートプロピオネート質量×(セルロース質量/セルロースアセテートプロピオネート質量)/全質量
得られたISO多目的ダンベル試験片を目視し、光沢の有無について調べた。
−UL−V試験−
Vテスト用UL試験片を用い、UL−94HB試験に規定の方法に準拠して、ULチャンバ(東洋精機製)にて、UL−Vテストを実施した。結果の表示は、難燃性が高い方から順にV−0、V−1、V−2、HBであり、HBより劣る場合、即ち試験片が延焼してしまった場合を「failure」と示した。
なお、射出成形できず、試験片を作製できなかったものは、実質上生産不可能という理由から、検討を中止した。
−引張り強さ、伸び−
ISO多目的ダンベル試験片を用い、ISO527に準拠して、評価装置(島津製作所製、精密万能試験機オートグラフAG−IS 5kN)にて、引張り強さ、及び伸びについて測定した。
ISO多目的ダンベル試験片にノッチ加工を施し、これを用い、JIS−K7111(2006年)に準拠して、評価装置(東洋精機製DG−UB2)にて、シャルピー衝撃試験によりシャルピー衝撃強度を測定した。
ISO多目的ダンベル試験片を用い、ISO178曲げ試験に準拠して、HDT測定装置(東洋精機社製、HDT−3)を用にて、1.8MPaの荷重における荷重たわみ温度を測定した。
−湿熱試験後の耐衝撃性−
ISO多目的ダンベル試験片に対して、次のようにして湿熱試験を行った後、上記同様にしてシャルピー衝撃強度を測定した。
湿熱試験は、湿熱試験機(THN042PA;ADVANTEC製)にて65℃×85%×400時間の条件で行った。
ISO多目的ダンベル試験片に対して、上記湿熱試験を行う前後で、ダンベル試験片のTD方向(幅方向)の寸法変化(湿熱試験前/湿熱試験後)を調べた。
ISO多目的ダンベル試験片を目視にて観察し、ブリードの発生の有無について調べた。
また、縮合リン酸エステル化合物として構造式(1)で表される芳香族縮合リン酸エステル化合物を含む実施例5は、構造式(1)で表される芳香族縮合リン酸エステル化合物を含まない実施例19及び20に比べ、耐衝撃性が向上していることがわかる。
また、メタクリレート及びグリシジル化合物の共重合体を特定量適用した実施例14〜18は、実施例5に比べ、寸法安定性が向上していることがわかる。
110 本体装置
120a、120b フロントカバー
136 用紙供給部
138 用紙排出部
142 プロセスカートリッジ
150、152 筐体
Claims (6)
- セルロースアセテートプロピオネートを100phrと、
アジペート系可塑剤及びポリエステル系可塑剤から選択される少なくとも1種の可塑剤を5phr以上30phr以下と、
縮合リン酸エステル化合物を5phr以上50phrと、
を含む樹脂組成物。 - 前記可塑剤として前記アジペート系可塑剤を含むと共に、前記縮合リン酸エステル化合物として下記構造式(1)で表される芳香族縮合リン酸エステル化合物を含む請求項1に記載の樹脂組成物。
- さらに、メタクリレート及びグリシジル化合物の共重合体を0.1phr以上10phr以下で含む請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
- セルロースアセテートプロピオネートを100phrと、
アジペート系可塑剤及びポリエステル系可塑剤から選択される少なくとも1種の可塑剤を5phr以上30phr以下と、
縮合リン酸エステル化合物を5phr以上50phrと、
を含む樹脂成形体。 - 前記可塑剤として前記アジペート系可塑剤を含むと共に、前記縮合リン酸エステル化合物として下記構造式(1)で表される芳香族縮合リン酸エステル化合物を含む請求項4に記載の樹脂成形体。
- さらに、メタクリレート及びグリシジル化合物の共重合体を0.1phr以上10phr以下で含む請求項4又は5に記載の樹脂成形体。
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