図1は、本発明の一実施例としてのハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図であり、図2は、エンジン22の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図1に示すように、ガソリンや軽油などを燃料として動力を出力するエンジン22と、エンジン22を駆動制御するエンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)24と、エンジン22のクランクシャフト26にキャリアが接続されると共に駆動輪38a,38bにデファレンシャルギヤ37を介して連結された駆動軸36にリングギヤが接続されたプラネタリギヤ30と、例えば同期発電電動機として構成されて回転子がプラネタリギヤ30のサンギヤに接続されたモータMG1と、例えば同期発電電動機として構成されて回転子が駆動軸36に接続されたモータMG2と、モータMG1,MG2を駆動するためのインバータ41,42と、インバータ41,42の図示しないスイッチング素子をスイッチング制御することによってモータMG1,MG2を駆動制御するモータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)40と、例えばリチウムイオン二次電池として構成されてインバータ41,42を介してモータMG1,MG2と電力をやりとりするバッテリ50と、バッテリ50を管理するバッテリ用電子制御ユニット(以下、バッテリECUという)52と、車両全体を制御するハイブリッド用電子制御ユニット(以下、HVECUという)70と、を備える。
エンジン22は、図2に示すように、吸気ポートを燃料を噴射する燃料噴射弁126を有するエンジンとして構成されており、エアクリーナ122により清浄された空気をスロットルバルブ124を介して吸入すると共に燃料噴射弁126から燃料を噴射して吸入された空気と燃料とを混合し、この混合気を吸気バルブ128を介して燃焼室に吸入し、点火プラグ130による電気火花によって爆発燃焼させて、そのエネルギにより押し下げられるピストン132の往復運動をクランクシャフト26の回転運動に変換する。エンジン22からの排気は、一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC),窒素酸化物(NOx)の有害成分を浄化する浄化触媒(三元触媒)134aを有する浄化装置134を介して外気へ排出される。
エンジンECU24は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROMやデータを一時的に記憶するRAM,入出力ポート,通信ポートを備える。エンジンECU24には、エンジン22の状態を検出する種々のセンサからの信号、例えば、クランクシャフト26の回転位置を検出するクランクポジションセンサ140からのクランクポジションθcrやエンジン22の冷却水の温度を検出する水温センサ142からの冷却水温Tw,燃焼室内に取り付けられた圧力センサ143からの筒内圧力Pin,燃焼室へ吸排気を行なう吸気バルブ128や排気バルブを開閉するカムシャフトの回転位置を検出するカムポジションセンサ144からのカムポジションθca,スロットルバルブ124のポジションを検出するスロットルバルブポジションセンサ146からのスロットルポジションTH,吸気管に取り付けられたエアフローメータ148からの吸入空気量Qa,同じく吸気管に取り付けられた温度センサ149からの吸気温Ta,吸気管内の圧力を検出する圧力センサからの吸気圧Pa,シリンダブロックに取り付けられてノッキングの発生に伴って生じる振動を検出するノックセンサからのノック信号Ks,浄化装置134の浄化触媒の温度を検出する温度センサ134aからの触媒温度Tc,空燃比センサ135aからの空燃比AF,酸素センサ135bからの酸素信号O2などが入力ポートを介して入力されている。また、エンジンECU24からは、エンジン22を駆動するための種々の制御信号、例えば、燃料噴射弁126への駆動信号や、スロットルバルブ124のポジションを調節するスロットルモータ136への駆動信号、イグナイタと一体化されたイグニッションコイル138への制御信号、吸気バルブ128の開閉タイミングを変更可能な可変バルブタイミング機構150への制御信号などが出力ポートを介して出力されている。エンジンECU24は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によりエンジン22を運転制御すると共に必要に応じてエンジン22の運転状態に関するデータを出力する。なお、エンジンECU24は、クランクポジションセンサ140からのクランクポジションθcrに基づいてクランクシャフト26の回転数即ちエンジン22の回転数Neを演算したり、エアフローメータ148からの吸入空気量Qaとエンジン22の回転数Neとに基づいてエンジン22の負荷としての体積効率(エンジン22の1サイクルあたりの行程容積に対する1サイクルで実際に吸入される空気の容積の比)KLを演算したり、クランクポジションセンサ140からのクランク角θcrに対するカムポジションセンサ144からの吸気バルブ128のインテークカムシャフトのカム角θciの角度(θci−θcr)に基づいて吸気バルブ128の開閉タイミングVTを演算したり、ノックセンサ159からのノック信号Ksの大きさや波形に基づいてノッキングの発生レベルを示すノック強度Krを演算したりしている。
モータECU40は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROMやデータを一時的に記憶するRAM,入出力ポート,通信ポートを備える。モータECU40には、モータMG1,MG2を駆動制御するために必要な信号、例えばモータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ43,44からの回転位置θm1,θm2や図示しない電流センサにより検出されるモータMG1,MG2に印加される相電流などが入力ポートを介して入力されており、モータECU40からは、インバータ41,42の図示しないスイッチング素子へのスイッチング制御信号などが出力ポートを介して出力されている。また、モータECU40は、HVECU70と通信しており、HVECU70からの制御信号によってモータMG1,MG2を駆動制御すると共に必要に応じてモータMG1,MG2の運転状態に関するデータをHVECU70に出力する。なお、モータECU40は、回転位置検出センサ43,44からのモータMG1,MG2の回転子の回転位置θm1,θm2に基づいてモータMG1,MG2の回転角速度ωm1,ωm2や回転数Nm1,Nm2も演算している。
バッテリECU52は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROMやデータを一時的に記憶するRAM,入出力ポート,通信ポートを備える。バッテリECU52には、バッテリ50を管理するのに必要な信号、例えば、バッテリ50の端子間に設置された図示しない電圧センサからの端子間電圧Vbやバッテリ50の出力端子に接続された電力ラインに取り付けられた図示しない電流センサからの充放電電流Ib,バッテリ50に取り付けられた図示しない温度センサからの電池温度Tbなどが入力されており、必要に応じてバッテリ50の状態に関するデータを通信によりHVECU70に送信する。また、バッテリECU52は、バッテリ50を管理するために、電流センサにより検出された充放電電流Ibの積算値に基づいてそのときのバッテリ50から放電可能な電力の容量の全容量に対する割合である蓄電割合SOCを演算したり、演算した蓄電割合SOCと電池温度Tbとに基づいてバッテリ50を充放電してもよい最大許容電力である入出力制限Win,Woutを演算したりしている。なお、バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、電池温度Tbに基づいて入出力制限Win,Woutの基本値を設定し、バッテリ50の蓄電割合SOCに基づいて出力制限用補正係数と入力制限用補正係数とを設定し、設定した入出力制限Win,Woutの基本値に補正係数を乗じることにより設定することができる。
HVECU70は、CPU72を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU72の他に、処理プログラムを記憶するROM74やデータを一時的に記憶するRAM76,データを記憶保持するフラッシュメモリ78,入出力ポート,通信ポートを備える。HVECU70には、イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号やシフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP,アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ88からの車速Vなどが入力ポートを介して入力されている。HVECU70は、前述したように、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。なお、シフトポジションSPとしては、駐車ポジションやニュートラルポジション,前進走行用のドライブポジション,後進走行用のリバースポジションなどがある。
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20では、運転者によるアクセルペダルの踏み込み量に対応するアクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸36に出力すべき要求トルクTr*を計算し、この要求トルクTr*に対応する要求動力が駆動軸36に出力されるように、エンジン22とモータMG1とモータMG2とが運転制御される。エンジン22とモータMG1とモータMG2との運転制御としては、要求動力に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にエンジン22から出力される動力のすべてがプラネタリギヤ30とモータMG1とモータMG2とによってトルク変換されて駆動軸36に出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御するトルク変換運転モードや、要求動力とバッテリ50の充放電に必要な電力との和に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にバッテリ50の充放電を伴ってエンジン22から出力される動力の全部またはその一部がプラネタリギヤ30とモータMG1とモータMG2とによるトルク変換を伴って要求動力が駆動軸36に出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御する充放電運転モード,エンジン22の運転を停止してモータMG2からの要求動力に見合う動力を駆動軸36に出力するよう運転制御するモータ運転モードなどがある。なお、トルク変換運転モードと充放電運転モードとは、いずれもエンジン22の運転を伴って要求動力が駆動軸36に出力されるようエンジン22とモータMG1とモータMG2とを制御するモードであり、実質的な制御における差異はないため、以下、両者を合わせてエンジン運転モードという。
エンジン運転モードでは、HVECU70は、アクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accと車速センサ88からの車速Vとに基づいて駆動軸36に出力すべき要求トルクTr*を設定し、設定した要求トルクTr*に駆動軸36の回転数Nr(例えば、モータMG2の回転数Nm2や車速Vに換算係数を乗じて得られる回転数)を乗じて走行に要求される走行用パワーPdrv*を計算し、計算した走行用パワーPdrv*からバッテリ50の充放電要求パワーPb*(バッテリ50から放電するときが正の値)を減じてエンジン22から出力すべきパワーとしての要求パワーPe*を設定する。そして、要求パワーPe*を効率よくエンジン22から出力することができるエンジン22の回転数NeとトルクTeとの関係としての動作ライン(例えば燃費最適動作ライン)を用いてエンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定し、バッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で、エンジン22の回転数Neが目標回転数Ne*となるようにするための回転数フィードバック制御によってモータMG1から出力すべきトルクとしてのトルク指令Tm1*を設定すると共にモータMG1をトルク指令Tm1*で駆動したときにプラネタリギヤ30を介して駆動軸36に作用するトルクを要求トルクTr*から減じてモータMG2のトルク指令Tm2*を設定し、設定した目標回転数Ne*と目標トルクTe*とについてはエンジンECU24に送信し、トルク指令Tm1*,Tm2*についてはモータECU40に送信する。目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを受信したエンジンECU24は、目標回転数Ne*と目標トルクTe*とによってエンジン22が運転されるようエンジン22の吸入空気量制御や燃料噴射制御,点火制御などを行ない、トルク指令Tm1*,Tm2*を受信したモータECU40は、モータMG1,MG2がトルク指令Tm1*,Tm2*で駆動されるようインバータ41,42のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。こうした制御により、エンジン22を効率よく運転しながらバッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で要求トルクTr*を駆動軸36に出力して走行することができる。このエンジン運転モードでは、エンジン22の要求パワーPe*がエンジン22を運転停止した方がよい要求パワーPe*の範囲の上限として定められた停止用閾値Pstop以下に至ったときなどに、エンジン22の運転を停止してモータ運転モードに移行する。
モータ運転モードでは、HVECU70は、アクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸36に出力すべき要求トルクTr*を設定し、モータMG1のトルク指令Tm1*に値0を設定する共にバッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で要求トルクTr*が駆動軸36に出力されるようモータMG2のトルク指令Tm2*を設定してモータECU40に送信する。そして、トルク指令Tm1*,Tm2*を受信したモータECU40は、モータMG1,MG2がトルク指令Tm1*,Tm2*で駆動されるようインバータ41,42のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。こうした制御により、エンジン22を運転停止した状態でバッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で要求トルクTr*を駆動軸36に出力して走行することができる。このモータ運転モードでは、要求トルクTr*に駆動軸36の回転数Nrを乗じて得られる走行用パワーPdrv*からバッテリ50の充放電要求パワーPb*を減じて得られるエンジン22の要求パワーPe*がエンジン22を始動した方がよい要求パワーPe*の範囲の下限として定められた始動用閾値Pstart以上に至ったときなどに、エンジン22を始動してエンジン運転モードに移行する。
次に、こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20の動作、特に、システム起動してエンジン22を始動する際の動作について説明する。図3は、実施例のHVECU70により実行される起動後始動時制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、システム起動してエンジン22を始動する際に実行される。なお、実施例では、シフトポジションSPが駐車ポジションの状態(図示しないパーキングロック機構によって駆動輪63a,63bがロックされている状態)でシステム起動してエンジン22を始動する際を考えるものとした。
起動後始動時制御ルーチンが実行されると、HVECU70は、まず、図示しないフラッシュメモリに記憶されている始動必要噴射量Qfstを入力する(ステップS100)。ここで、始動必要噴射量Qfstは、エンジン22を始動するのに必要と考えられるポート用燃料噴射バルブ126からの1回当たりの燃料噴射量であり、工場出荷時などには、予め定められた初期値(例えば、23ccや25cc,27ccなど)がフラッシュメモリ78に記憶されており、エンジン22の始動を失敗すると、後述のステップS220の処理により更新された値がフラッシュメモリ78に記憶されるものとした。なお、始動必要噴射量Qfstの初期値は、車両を出荷する国や地域などに応じて異なる値が設定されるものとしてもよいし、これに拘わらず一律の値が設定されるものとしてもよい。
こうして始動必要噴射量Qfstを入力すると、入力した始動必要噴射量Qfstに基づいて、次式(1)により、エンジン22の回転に同期して燃料噴射弁126から燃料を噴射する同期噴射の実行を開始する回転数としての同期噴射開始回転数Nst[rpm]を設定する(ステップS110)。ここで、式(1)中、「Finj」は、ポート用燃料噴射バルブ126の1秒当たりの燃料噴射量(流量)[cc/s]であり、ポート用燃料噴射バルブ126の仕様に応じた値(例えば、180cc/sや185cc/s,190cc/sなど)が定められる。この式(1)を用いると、例えば、始動必要噴射量Qfstが185cc/sで始動必要噴射量Qfstが25ccのときには、同期噴射開始回転数Nstは略890rpmとなる。
Nst=60・2・Finj/Qfst (1)
続いて、クランクポジションセンサ140からのクランクポジションθcrに基づいて演算されたエンジン22の回転数NeをエンジンECU24から通信により入力する(ステップS120)。そして、エンジン22をモータリング(クランキング)するためのトルクをモータMG1のトルク指令Tm1*に設定すると共に(ステップS130)、設定したモータMG1のトルク指令Tm1*とプラネタリギヤ30のギヤ比ρとを用いて、次式(2)により、モータMG1から出力されてプラネタリギヤ30を介して駆動軸36に作用するトルクをキャンセルするためのトルクをモータMG2のトルク指令Tm2*に設定し(ステップS140)、設定したモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*をモータECU40に送信する(ステップS150)。図4は、エンジン22を始動する際のプラネタリギヤ30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図の一例を示す説明図である。図中、左のS軸はモータMG1の回転数Nm1であるサンギヤの回転数を示し、C軸はエンジン22の回転数Neであるキャリアの回転数を示し、R軸はモータMG2の回転数Nm2である駆動軸36の回転数Nrを示す。式(2)は、この共線図を用いれば容易に導くことができる。なお、いま、シフトポジションSPが駐車ポジションの状態(図示しないパーキングロック機構によって駆動輪63a,63bがロックされている状態)を考えているから、モータMG2については駆動しないものとしてもよい。
Tm2*=Tm1*/ρ (2)
そして、エンジン22の回転数Neを同期噴射開始回転数Nstと比較し(ステップS160)、エンジン22の回転数Negが同期噴射開始回転数Nst未満のときには、ステップS120に戻る。こうしてステップS120〜S160処理を繰り返し実行して、ステップS160でエンジン22の回転数Neが同期噴射開始回転数Nst以上であると判定されると、エンジン22の点火制御や燃料噴射制御(同期噴射制御)の実行指令をエンジンECU24に送信する(ステップS170)。この指令を受信したエンジンECU24は、エンジン22の点火制御や燃料噴射制御(同期噴射制御)を実行する。
次に、エンジン22の点火制御や燃料噴射制御(同期噴射制御)を開始してから予め定められた完爆予定時間t1が経過したか否かおよびエンジン22が完爆したか否かを判定し(ステップS180,S190)、エンジン22の点火制御や燃料噴射制御(同期噴射制御)を開始してから完爆予定時間t1が継続しておらずエンジン22も完爆していないときには、ステップS120に戻る。ここで、完爆予定時間t1は、エンジン22の点火制御や燃料噴射制御(同期噴射制御)を開始してからエンジン22の完爆までに要する時間より若干長い時間として定められ、例えば、100msecや150msec,200msecなどを用いることができる。
こうしてステップS120〜S190の処理を繰り返し実行して、エンジン22の点火制御や燃料噴射制御(同期噴射制御)を開始してから完爆予定時間t1が継続する前にエンジン22が完爆したときには(ステップS190)、本ルーチンを終了する。
一方、エンジン22が完爆せずに、エンジン22の点火制御や燃料噴射制御(同期噴射制御)を開始してから完爆予定時間t1が継続したときには(ステップS180)、エンジン22の始動を失敗したと判断する。同期噴射開始回転数Nstが高い場合、燃料噴射弁126からの燃料噴射時間が短くなることから、エンジン22の始動(完爆)に必要な燃料が燃料噴射弁126から噴射されず、エンジン22の始動を失敗することがある。特に、外気温が所定温度(例えば、−20℃や−15℃,−10℃など)以下の冷間時や、燃料が燃焼性の悪いいわゆる粗悪燃料のときなどには、燃料が霧化しにくいために、エンジン22の始動を失敗しやすい。
こうしてエンジン22の始動を失敗したと判断すると、モータMG1,MG2を一旦駆動停止し(ステップS200)、所定時間t2が経過するのを待つ(ステップS210)。ここで、所定時間t2は、例えば、エンジン22の始動を失敗したときにエンジン22が回転停止するまでに要する時間やそれより若干長い時間など(例えば、数秒など)を用いることができる。
そして、始動必要噴射量Qfstに所定値ΔQfstを加えて始動必要噴射量Qfstを更新して(ステップS220)、更新した始動必要噴射量Qfstを用いて同期噴射開始回転数Nstを再計算(更新)し(ステップS110)、ステップS120以降の処理を実行する。ここで、所定値ΔQfstは、始動必要噴射量Qfstを増加させる程度であり、例えば、0.5ccや1cc,2ccなどを用いることができる。また、実施例では、同期噴射開始回転数Nstを更新すると、更新後の値をフラッシュメモリ78に記憶させるものとした。ステップS220,S110の処理により、更新後の同期噴射開始回転数Nstは、更新前の同期噴射開始回転数Nstより低い値となる。したがって、エンジン22の始動を失敗したとき(前回に始動を試みたとき)に比して同期噴射開始回転数Nstを低くしてエンジン22の始動を再度試みることになるから、エンジン22の始動を失敗したときに比して同期噴射制御の開始時の燃料噴射弁126からの燃料噴射時間が長くなって燃料噴射量が多くなり、エンジン22をより確実に始動することができる。
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20によれば、基本的には、エンジン22を始動する際には、モータMG1によってエンジン22がモータリングされながらエンジン22の回転数Neが同期噴射開始回転数Nst以上に至ったときに燃料噴射弁126からの同期噴射が開始されてエンジン22が始動されるようエンジン22とモータMG1とを制御する始動時制御を実行する。そして、エンジン22の始動を失敗したときには、同期噴射開始回転数Nstを低くして始動時制御を再実行する。これにより、エンジン22の始動を失敗したときにその後にエンジン22をより確実に始動することができる。
実施例のハイブリッド自動車20では、始動必要噴射量Qfstを用いて上述の式(1)により同期噴射開始回転数Nstを計算するものにおいて、エンジン22の始動を失敗したときには、始動必要噴射量Qfstを増加させることによって同期噴射開始回転数Nstを低下させるものとしたが、始動必要噴射量Qfstを用いずに、エンジン22の始動を失敗したときに、同期噴射開始回転数Nstを直接低下させる(例えば、20rpmや30rpm,50rpmなど低下させる)ものとしてもよい。
実施例のハイブリッド自動車20では、吸気ポートに燃料を噴射する燃料噴射弁(ポート用燃料噴射弁)126を有するエンジン22を用いるものとしたが、ポート用燃料噴射弁と筒内に燃料を直接噴射する筒内用燃料噴射弁とを有するエンジンを用いるものとしてもよい。ポート用燃料噴射弁と筒内用燃料噴射弁とを有する場合、ポート用燃料噴射弁だけを有するものに比してポート用燃料噴射弁の定格(1秒当たりの燃料噴射量(流量))を小さくすることが多いため、ポート用燃料噴射弁だけを有するものと同一の同期噴射開始回転数を用いると、エンジン22の始動をより失敗しやすくなると考えられる。このため、エンジン22の始動を失敗したときにその後にエンジン22をより確実に始動できるようにすることの意義がより大きい。
実施例のハイブリッド自動車20では、シフトポジションSPが駐車ポジションの状態でシステム起動してエンジン22を始動するときについて説明したが、システム起動後に最初にエンジン22を始動するときであれば、走行中にエンジン22を始動するときについても実施例と同様に考えることができる。このときには、モータMG2からは、アクセル開度Accと車速Vとに基づく駆動軸36に出力すべき要求トルクTr*と、モータMG1から出力されてプラネタリギヤ30を介して駆動軸36に作用するトルク(−Tm1*/ρ)をキャンセルするためのトルクと、の和のトルクをバッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で出力すればよい。なお、システム起動後に2回目以降にエンジン22を始動するときについては、システム起動後に最初にエンジン22を始動したときの同期噴射開始回転数Nstを用いてエンジン22の始動を試みればエンジン22の始動を失敗する可能性は低いと考えられる。
実施例のハイブリッド自動車20では、始動必要噴射量Qfstは、工場出荷時などには予め定められた初期値がフラッシュメモリ78に記憶されており、エンジン22の始動を失敗すると更新された値がフラッシュメモリ78に記憶されるものとしたが、その後に、給油が行なわれたときなどには初期値にリセットされるものとしてもよい。これは、給油が行なわれると、燃料が粗悪燃料から通常の燃料になるなど霧化しやすくなった可能性があるためである。
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22の始動を失敗したときには始動必要噴射量Qfstを所定量ΔQfstだけ大きな値に更新してフラッシュメモリ78に記憶させる(次回以降のエンジン22の始動に用いる)ものとしたが、外気温(エンジン22の吸気ポートの温度)などに応じて燃料の霧化のしやすさが異なるため、エンジン22の始動を失敗したときには、始動必要噴射量Qfstを所定量ΔQfstだけ大きな値に更新してそのときの外気温と関連付けて記憶させて、次回以降に同一の外気温でエンジン22を始動するときに用いるものとしてもよい。
実施例のハイブリッド自動車20では、特に説明していないが、エンジン22の始動性を向上させるために、エンジン22の回転数Neが同期噴射開始回転数Nst以上に至る前に、エンジン22の回転に同期せずに燃料噴射弁126から燃料を噴射する非同期噴射を実行するものとしてもよい。
実施例のハイブリッド自動車20では、モータMG2からの動力を駆動軸36に出力するものとしたが、図5の変形例のハイブリッド自動車120に例示するように、モータMG2からの動力を駆動軸36が接続された車軸(駆動輪38a,38bが接続された車軸)とは異なる車軸(図5における車輪39a,39bに接続された車軸)に出力するものとしてもよい。
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22からの動力をプラネタリギヤ30を介して駆動輪38a,38bに接続された駆動軸36に出力するものとしたが、図6の変形例のハイブリッド自動車220に例示するように、エンジン22のクランクシャフトに接続されたインナーロータ232と駆動輪38a,38bに動力を出力する駆動軸36に接続されたアウターロータ234とを有しエンジン22からの動力の一部を駆動軸36に伝達すると共に残余の動力を電力に変換する対ロータ電動機230を備えるものとしてもよい。
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22からの動力をプラネタリギヤ30を介して駆動輪38a,38bに接続された駆動軸36に出力すると共にモータMG2からの動力を駆動軸36に出力するものとしたが、図7の変形例のハイブリッド自動車320に例示するように、駆動輪38a,38bに接続された駆動軸36に変速機330を介してモータMGを取り付けると共にモータMGの回転軸にクラッチ329を介してエンジン22を接続する構成とし、エンジン22からの動力をモータMGの回転軸と変速機330とを介して駆動軸36に出力すると共にモータMGからの動力を変速機330を介して駆動軸に出力するものとしてもよい。
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、エンジン22が「エンジン」に相当し、モータMG1が「モータ」に相当し、バッテリ50が「バッテリ」に相当し、図3の起動後始動時制御ルーチンを実行するHVECU70と、HVECU70からのエンジン22の点火制御や燃料噴射制御(同期噴射制御)の実行指令に応じてエンジン22を制御するエンジンECU24と、HVECU70からのモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*に基づいてモータMG1,MG2を制御するモータECU40と、が「始動時制御手段」に相当する。
ここで、「エンジン」としては、ガソリンや軽油などを燃料として動力を出力するエンジン22に限定されるものではなく、燃料噴射弁からの燃料噴射を伴って動力を出力するものであれば如何なるタイプのエンジンであっても構わない。「モータ」としては、同期発電電動機として構成されたモータMG1に限定されるものではなく、誘導電動機など、エンジンをモータリング可能なものであれば如何なるタイプのモータであっても構わない。「バッテリ」としては、リチウムイオン二次電池として構成されたバッテリ50に限定されるものではなく、ニッケル水素二次電池やニッケルカドミウム二次電池,鉛蓄電池など、モータに電力を供給可能なものであれば如何なるタイプのバッテリであっても構わない。「始動時制御手段」としては、HVECU70とエンジンECU24とモータECU40とからなる組み合わせに限定されるものではなく、単一の電子制御ユニットによって構成されるものなどとしてもよい。また、「始動時制御手段」としては、エンジン22を始動する際には、モータMG1によってエンジン22がモータリングされながらエンジン22の回転数Neが同期噴射開始回転数Nst以上に至ったときに燃料噴射弁126からの同期噴射が開始されてエンジン22が始動されるようエンジン22とモータMG1とを制御する始動時制御を実行し、エンジン22の始動を失敗したには、同期噴射開始回転数Nstを低くして始動時制御を再実行するものに限定されるものではなく、エンジンを始動する際、モータによってエンジンがモータリングされながらエンジンの回転数が同期噴射開始回転数以上に至ったときに燃料噴射弁からの同期噴射が開始されてエンジンが始動されるようエンジンとモータとを制御する始動時制御を実行し、エンジンの始動を失敗したとき、同期噴射開始回転数を低くして始動時制御を再実行するものであれば如何なるものとしても構わない。
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。