JP5794139B2 - 高強度ラインパイプ用継目無鋼管の製造方法 - Google Patents

高強度ラインパイプ用継目無鋼管の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、原油や天然ガスの輸送に用いられる高強度ラインパイプ用継目無鋼管の製造方法に関する。
一般に、原油や天然ガスを輸送するラインパイプ用の継目無鋼管は、高強度で靭性に優れることが要求され、さらにパイプラインとして敷設する際に溶接によって連結される関係上、溶接性に優れることも要求される。また、原油や天然ガスには硫化水素が含まれることから、その硫化水素に起因してラインパイプに水素誘起割れ(以下、「HIC」という)や硫化物応力割れ(以下、「SSC」という)が発生するおそれがある。このため、ラインパイプ用の継目無鋼管は、耐HIC性や耐SSC性といった耐サワー性に優れることも要求される。
従来、それらの要求に対応するため、鋼管の材質として低炭素鋼を採用し、その鋼組成や熱処理条件の最適化が図られている。そのうちの熱処理条件の最適化は、鋼組成の最適化に比べ、比較的低コストで鋼管の強度調整が可能である。このため、熱処理条件の最適化、とりわけ焼入れ条件の最適化が図られることが多い。
例えば、特許文献1には、耐SSC性に優れた低硬度高靭性の継目無鋼管の製造方法が開示されている。同文献に開示された製造方法では、鋼組成を規定した鋼片から鋼管を熱間で成形する際に、穿孔圧延、傾斜圧延(いわゆる延伸圧延)および形状矯正熱間連続圧延(いわゆる定径圧延)の各段階の材料温度を所定の範囲内に管理し、さらに、成形された鋼管をAr3点以上の温度からAr1点直下の温度まで150℃/s以下の冷却速度で冷却し、引き続き、800〜400℃まで150℃/s以上の冷却速度で冷却し、しかる後に放冷することとしている。
また、特許文献2には、焼割れの防止を目的とした鋼管の焼入れ方法が開示されている。同文献に開示された焼入れ方法は、オーステナイト化温度に加熱された鋼管を水槽内に浸漬させて、鋼管の外面から冷却を行うとともに、鋼管の一端から鋼管内に冷却水を噴射して、鋼管の内面の冷却を行うこととし、その際に、鋼管内に噴射する冷却水の噴射圧を、焼入れの初期は低水圧とし、しかる後に定常圧に昇圧することとしている。
特開平7−26323号公報 特開昭56−127731号公報
ラインパイプ用継目無鋼管の仕様はAPI(米国石油協会)規格で規定され、中でも、X65グレード以上の高強度ラインパイプ用継目無鋼管は、降伏強度(YS)が、X65グレードの場合で450MPa以上、X70グレードの場合で485MPa以上といったように下限を規定され、これに伴って高硬度化する一方、HICを防止する観点から、硬さがビッカース硬さでHv248以下と上限を規定される。特に、鋼管の内面は原油や天然ガスと接触し硫化水素にさらされるため、その管内面の硬さは、安定して規格の上限を超えないように確保する必要がある。
しかし、前記特許文献1に開示された方法では、鋼管をAr3点以上の温度から冷却する際、冷却速度を管理することになるが、その冷却速度の測定や制御は現実的には極めて難しい。また、前記特許文献2に開示された方法では、オーステナイト化温度に加熱された鋼管を水槽内に浸漬させるとともに、鋼管の一端から鋼管内に冷却水を噴射して鋼管に焼入れを行う際、鋼管内に噴射する冷却水の噴射圧を調整することとしているが、焼割れのみに着目し、硬さについて何ら着目していない。したがって、前記特許文献1、2に記載された従来の方法は、高硬度になりがちな高強度ラインパイプ用継目無鋼管に対し、その硬さ、特に管内面の硬さを安定して規格の上限以下に確保できるとはいえない。
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、次の特性を有する高強度ラインパイプ用継目無鋼管の製造方法を提供することである:
管内面の硬さを安定して規格の上限以下に確保すること。
本発明の要旨は、次の通りである。
質量%で、C:0.03〜0.08%、Si:0.05〜0.50%、Mn:1.0〜3.0%、P:0.05%以下、S:0.01%以下、Cr:0.01〜1.00%、Mo:0.02〜1.20%、Ti:0.005〜0.100%、Al:0.005〜0.100%、Ca:0.001〜0.005%およびN:0.01%以下を含有し、さらにNi:0.01〜1.50%、Cu:0.01〜1.50%、B:0.00005〜0.0050%、Nb:0.005〜0.100%およびV:0.01〜0.10%のうちの1種以上を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、下記(1)式で表されるPcmが0.10〜0.20%である鋼組成を有し、降伏強度が450MPa以上であり、管内面の硬さがHv248以下である低炭素鋼の高強度ラインパイプ用継目無鋼管の製造方法であって、
当該製造方法は、
前記鋼組成を有する鋼管を成形する成形工程と、
成形された鋼管をオーステナイト化温度に加熱し、その後に、前記鋼管を水槽内に浸漬させるとともに、前記鋼管の一端から鋼管内に冷却水を噴射して前記鋼管に焼入れ処理を施す焼入れ工程と、
焼入れされた鋼管に焼戻し処理を施す焼戻し工程と、を含み、
前記焼入れ工程では、鋼管内を流れる冷却水の流速vが6.0〜10.0m/sを満足する条件で焼入れを行うこと、
を特徴とする高強度ラインパイプ用継目無鋼管の製造方法。
Pcm=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5B …(1)
ただし、上記(1)式中、元素記号はその元素の含有量[質量%]を示す。
本発明の高強度ラインパイプ用継目無鋼管の製造方法は、下記の顕著な効果を有する:
管内面の硬さを安定して規格の上限以下に確保できること。
実施例の試験結果として、焼入れで鋼管内を流れる冷却水の流速と鋼管の内面におけるビッカース硬さの関係を示す図である。 本発明の高強度ラインパイプ用継目無鋼管の製造方法における焼入れ時の状況を説明する模式図である。
本発明者は、上記目的を達成するため、API規格のX65グレード以上の高強度ラインパイプ用継目無鋼管を製造する際、鋼管の材質として低炭素鋼を採用することを前提とし、種々の試験を実施して焼入れ条件の最適化を図る検討を重ねた。
すなわち、後述する実施例で実証するように、鋼組成を種々変更した低炭素鋼の鋼管を用い、条件を種々変更して焼入れおよび焼戻しの各処理を行い、これにより得られた鋼管の内面および肉厚中央部の硬さ、並びに降伏強度を調査する試験を実施した。このとき、オーステナイト化温度に加熱された鋼管の焼入れ法としては、鋼管を水槽内に浸漬させるとともに、鋼管の一端から鋼管内に冷却水を噴射して、鋼管を内外面からに冷却する焼入れ法(以下、「浸漬噴射式焼入れ法」ともいう)を適用した。
試験の結果、焼入れ工程において、浸漬噴射式焼入れ法による焼入れで鋼管内を流れる冷却水の流速vが6.0〜10.0[m/s]を満足する条件で焼入れを行えば、鋼管の降伏強度を規格の下限以上に確保できると同時に、管内面の硬さを安定して規格の上限以下に確保できることが判明した。
図1は、実施例の試験結果として、焼入れで鋼管内を流れる冷却水の流速と鋼管の内面におけるビッカース硬さの関係を示す図である。図1に示すように、鋼管内を流れる冷却水の流速vが10.0m/s以下を満足すれば、管内面の硬さが安定して規格の上限(Hv248)以下に確保されることがわかる。一般に、本発明の冷却方法のように、鋼管を水槽内に浸漬させるとともに、鋼管の一端から鋼管内に冷却水を噴射して冷却する場合、鋼管内面が最も硬くなる。したがって、管内面の硬度を規格の上限以下にすれば、鋼管全体の硬度を規格の上限以下にすることができる。また、流速vが6.0m/sを下回ると、鋼管の降伏強度が規格の下限(X65グレードの場合:450MPa、X70グレードの場合:485MPa)を下回るため、鋼管の降伏強度を規格の下限以上に確保するには、流速vが6.0m/s以上を満足する必要があることがわかる。
本発明は、上記の知見に基づき完成させたものである。すなわち、本発明の高強度ラインパイプ用継目無鋼管の製造方法は、低炭素鋼の鋼管を成形する成形工程と、成形された鋼管をオーステナイト化温度に加熱し、その後に、前記鋼管を水槽内に浸漬させるとともに、前記鋼管の一端から鋼管内に冷却水を噴射して前記鋼管に焼入れ処理を施す焼入れ工程と、焼入れされた鋼管に焼戻し処理を施す焼戻し工程と、を含み、前記焼入れ工程では、鋼管内を流れる冷却水の流速vが6.0〜10.0m/sを満足する条件で焼入れを行うこと、を特徴とする。
以下に、本発明の製造方法を上記のように規定した理由および好ましい態様について説明する。
1.低炭素鋼の成分組成
本発明で採用する低炭素鋼の具体的な組成は、以下の通りである。以下の記述において、成分含有量の「%」は「質量%」を意味する。
C:0.03〜0.08%
Cは、焼入れ性を高め、強度を確保する上で必要な元素である。その含有量が0.03%未満であると、必要な強度が得られない。一方、その含有量が0.08%を超えると、母材の靭性が劣化するだけでなく、溶接後の熱影響部(HAZ部)における靱性が劣化する。このため、C含有量は0.03〜0.08%とする。
Si:0.05〜0.50%
Siは、鋼の溶製時に脱酸剤として作用し、強度の向上にも寄与する。これらの効果を得るためには、0.05%以上含有させるのが望ましい。一方、その含有量が0.50%を超えると、HAZ部の靱性劣化をもたらす。このため、Si含有量は0.05〜0.50%とする。
Mn:1.0〜3.0%
Mnは、焼入れ性を高め、強度と靱性を向上させる元素として有効である。その含有量が1.0%未満では、必要な強度と靭性が得られない。一方、その含有量が3.0%を超えると、中心偏析部の硬度上昇に伴って耐HIC性の劣化が顕著になる。このため、Mn含有量は1.0〜3.0%とする。
P:0.05%以下
Pは、不純物であるが、中心偏析を助長するなどの作用があり、耐HIC性を劣化させる。この傾向は0.05%を超える含有で顕著になるので、P含有量は0.05%以下に制限する。
S:0.01%以下
Sは、不純物であり、多量に存在すると溶接割れの原因となり、MnS等の割れの起点となり得る介在物を形成する上、HAZ部の靱性確保に悪影響を及ぼす。この傾向は0.01%を超える含有で顕著になるので、S含有量は0.01%以下に制限する。
Cr:0.01〜1.00%
Crは、Mnと同様に低Cでも十分な強度と靭性を得るために有効な元素である。この効果を得るには、0.01%以上の含有が必要であり、一方、1.00%を超える含有は溶接性を劣化させる。このため、Cr含有量は0.01〜1.00%とする。
Mo:0.02〜1.20%
Moは、靭性の改善と強度の上昇に有効な元素である。この効果を得るには、0.02%以上の含有が必要であり、一方、1.20%を超える含有は溶接性を劣化させる。このため、Mo含有量は0.02〜1.20%とする。
Ti:0.005〜0.100%
Tiは、微細な窒化物を形成することによってオーステナイト粒の粗大化を防止し、靱性を向上させるのに有効な元素である。この効果を得るには、0.005%以上を含有させる必要がある。一方、その含有量が0.100%を超えると、炭化物の析出により、かえって靱性が低下する。このため、Ti含有量は0.005〜0.100%とする。
Al:0.005〜0.100%
Alは、Siと同様に、脱酸剤として有効な元素である。その含有量が0.005%未満であると、充分な脱酸ができず母材の靭性が劣化する。一方、その含有量が0.100%を超えると鋼の清浄度が低下する。このため、Al含有量は0.005〜0.100%とする。
Ca:0.001〜0.005%
Caは、MnSの形態を球状化させ、衝撃値を向上させる有用な元素である。その含有量が0.001%未満では、その効果は実効に乏しい。一方、0.005%を超える含有では、鋼の清浄度が低下し、耐HIC性や靭性に悪影響を及ぼす。このため、Ca含有量は0.001〜0.005%とする。
N:0.01%以下
Nは、多量に存在すると、母材およびHAZ部の靱性を悪化させる。通常、Tiを添加することにより、NをTiNの形態で鋼中に固定し無害化しているが、Nが0.01%を超えて存在する場合は、加熱時にHAZ部でTiNが鋼中に固溶して、HAZ部を硬化させ、靱性が劣化する。このため、N含有量は0.01%以下とする。
Nb、V、Cu、BおよびNiのうちの1種以上
Nb:0.005〜0.100%
Nbは、含有させなくてもよいが、微細な炭窒化物を形成し、強度を上昇させる効果を有する。この効果を得るには、その含有量を0.005%以上とする必要がある。一方、0.100%を超えて含有すると、脆化が顕著となる。このため、積極的に含有させる場合には、Nb含有量は0.005〜0.100%とする。
V:0.01〜0.10%
Vは、含有させなくてもよいが、Nbと同様に、炭窒化物を形成し鋼の強度を上昇させる。しかし、Nbほどの効果はないため、0.01%以上の含有量とすればよい。一方、0.10%を超える含有では、鋼の靱性を損なうことになる。このため、積極的に含有させる場合には、V含有量は0.01〜0.10%とする。
Cu:0.01〜1.50%
Cuは、含有させなくてもよいが、強度を高める他に靭性を改善する元素である。この効果を得るには、0.01%以上の含有が必要であり、一方、1.50%を超える含有は溶接性を劣化させる。このため、積極的に含有させる場合には、Cu含有量は0.01〜1.50%とする。
B:0.00005〜0.00500%
Bは、微量でも焼入れ性を高め、強度を向上させるためには有効な元素である。この効果を得るには、0.00005%以上含有させる必要がある。しかし、0.00500%を超えて含有させると、HAZ部の硬化を招く。このため、B含有量は0.00005〜0.00500%とする。
Ni:0.01〜1.50%
Niは、強度を高める他に靭性を改善する元素である。この効果を得るには、0.01%以上の含有が必要である。しかし、Niは高価な元素であり、1.50%を超えて含有させてもコスト上昇のわりには効果が小さい。このため、Ni含有量は0.01〜1.50%とする。
Pcm:0.10〜0.20%
下記(1)式で表されるPcmは、一般には溶接割れ感受性組成と称され、溶接性および焼入れ性の指標として用いられる。Pcmは、X65グレード以上の強度を確保するためには0.10%以上が必要であるので、その下限を0.10%とする。一方、Pcmは、0.20%を超えると、溶接性が悪くなる上、強度の上昇に伴って高硬度化を招くので、その上限を0.20%とする。
Pcm=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5B …(1)
ただし、上記(1)式中、元素記号はその元素の含有量[質量%]を示す。
なお、上記した成分組成の低炭素鋼の残部は実質的に鉄(Fe)であり、上記以外の元素および不可避不純物については、本発明の効果を損なわない範囲で含有してもよい。
2.高強度ラインパイプ用継目無鋼管の製造方法
(1)成形工程
本発明の製造方法では、低炭素鋼の鋼管の成形は、例えば、マンネスマン・マンドレルミル製管法によって行うことができる。この製管法は、上記した鋼組成からなる低炭素鋼の丸鋼片(ビレット)を素材とし、この丸鋼片を加熱して穿孔機(ピアサー)で穿孔することにより厚肉の中空素管(ホローシェル)に成形した後、その中空素管をマンドレルミルに通して薄肉の素管に延伸圧延する。そして、マンドレルミル圧延で得られた素管を、必要に応じて再加熱した後、ストレッチレデューサーまたはサイザーによって定径圧延し、最終製品管の外径と肉厚に仕上げる。このようにして、上記の鋼組成からなる低炭素鋼の鋼管が成形される。
(2)焼入れ工程
本発明の製造方法では、成形工程で成形された鋼管を焼入れ炉によってオーステナイト化温度に加熱し、その後に、浸漬噴射式焼入れ法により鋼管を焼入れする。この焼入れ処理時の鋼管の加熱温度TQは、具体的にはAc3点の温度〜1000℃とし、実運用では900〜980℃程度とする。
図2は、本発明の高強度ラインパイプ用継目無鋼管の製造方法における焼入れ時の状況を説明する模式図である。図2に示すように、オーステナイト化温度(加熱温度TQ)に加熱された鋼管1は、水槽2内の水中に浸漬される。このとき、水槽2内には、鋼管1の一端1aに隣接してその軸心上にノズル3が配置されており、このノズル3から冷却水が連続して吐出される。これにより、鋼管1の一端1aから鋼管1内に冷却水が噴射され、その冷却水は管内を流れてその他端1bから排出される(図2中の白抜き矢印参照)。このようにして、鋼管1は、管内を流れる冷却水によって内面からも効果的に冷却され、その結果として内外面から均一に焼入れされる。
なお、鋼管1は、水槽2内に浸漬された状態で、図示しない駆動ローラーと従動ローラーによって鋼管1の軸心を中心にして回転可能に支持されており、駆動ローラーの駆動に伴って回転しながら焼入れされる。
このような焼入れ工程において、焼入れ時に鋼管内を流れる冷却水の流速vを6.0〜10.0m/sの範囲に設定し、この設定した条件で焼入れ処理を施す。流速vは、ノズル3から吐出される冷却水の流量[m3/s]で調整され、この吐出流量を鋼管1の内周側の断面積[m2]で除算することにより求められる。
このように鋼管内を流れる冷却水の流速vを規定するのは以下の理由による。流速vを低くした場合、焼入れ時に管内面に発生する水蒸気膜を除去するエネルギーが小さくなることから、熱伝達率が低下するのに伴って冷却速度が低下し、その結果として管内面の硬さ低減を実現できる。ただし、あまりに流速vを低下させると、鋼管の強度低下が著しくなる。また、逆に流速vを高くすると、管内面の高硬度化がもたらされる。このため、鋼管の強度を維持しつつ硬さの低減を安定して実現する観点から、流速vは6.0〜10.0m/sの範囲内とする。なお、冷却水の温度(水温)は、15℃〜40℃が好ましい。
(3)焼戻し工程
本発明の製造方法では、焼入れ工程で焼入れされた鋼管を焼戻し炉によって再加熱し、一定時間保持した後に徐冷する。この焼戻し処理時の鋼管の加熱温度は、具体的にはAc1点以下とし、実運用では580〜650℃程度とする。
本発明によれば、API規格のX65グレード以上の高強度ラインパイプ用継目無鋼管を製造するに際し、焼入れ工程において、上記の条件で焼入れを行うことにより、鋼管の降伏強度を規格の下限(X65グレードの場合:450MPa、X70グレードの場合:485MPa)以上に確保できると同時に、管内面の硬さを安定して規格の上限(Hv248)以下に確保することが可能になる。
下記表1および表2に示すように、成分組成を種々変更した低炭素鋼の鋼片を用い、マンネスマン・マンドレルミル製管法により、外径および肉厚を種々変更した継目無鋼管を成形し、成形した各鋼管に浸漬噴射式焼入れ法による焼入れ処理を施し、その後に焼戻し処理を施して、X65グレード以上の高強度ラインパイプ用継目無鋼管を製造する試験を実施した。焼入れに際しては、下記表2に示すとおりに、鋼管の加熱温度TQを900〜950℃の範囲で変更し、焼入れ時の鋼管内を流れる冷却水の流速vを5.4〜11.9m/sの範囲で変更した。また、焼戻しに際しては、同表に示すとおりに、鋼管の加熱温度を580〜640℃の範囲で変更した。なお、試験No.1〜3、5、10〜13の鋼片について、そのNb含有量が0.001%となっているが、これは積極的に添加したものではなく、不純物として含有されているものである。
Figure 0005794139
Figure 0005794139
続いて、焼戻し後の各鋼管に対し、それぞれの管端部を切断し、切断した管端部から硬さ試験用の試片と引張試験用の試片を採取し、鋼管の内面および肉厚中央部の硬さ、並びに降伏強度を調査した。硬さ試験は、ISO6507−1に準拠して行い、管内面より肉厚方向に1.5mmの深さ位置で円周方向に3点以上、10kgfの測定荷重でビッカース硬さを測定し、そのうちの最大値を鋼管の内面硬さとして採用した。これと同時に、鋼管の肉厚中央部の位置で円周方向に3点以上、同様にビッカース硬さを測定し、これらの平均値を鋼管の肉厚中央部の硬さ、すなわち内部硬さとして採用した。また、降伏強度を調査する引張試験は、ISO6892−1に準拠して行った。
そして、鋼管の硬さおよび降伏強度がAPI規格のX65グレード以上で要求される規格、すなわち硬さがビッカース硬さでHv248以下であること、および降伏強度(YS)が、X65グレードの場合で450MPa以上、X70グレードの場合で485MPa以上であること、を満足するか否かを評価した。上記表2に調査結果も併せて示す。なお、前記図1は、この試験結果を整理したものである。
表2中で、「評価」の欄の記号の意味は次の通りである。
○:優。規格を満足することを示す。
△:良。規格を満足するが、外れるおそれがあることを示す。
×:不可。規格を満足しないことを示す。
表2および図1に示す結果から次のことが示される。試験No.2、6、7、および10〜15は、本発明で規定する焼入れ条件、すなわち鋼管内を流れる冷却水の流速vが6.0〜10.0m/sである条件を満足し、硬さおよび降伏強度のいずれも規格を満たした。また、試験No.5および9は、流速vが10.0m/sを超えているにもかかわらず、硬さの規格を満たしているが、これと流速vが同等の試験No.8で硬さ規格を満たしていないため、場合によっては、硬さが規格を外れるおそれがあるといえる。このことから、本発明で規定する焼入れ条件で焼入れを行えば、鋼管の降伏強度を規格の下限以上に確保できると同時に、管内面の硬さを安定して規格の上限以下に確保できることが明らかになった。
本発明は、API規格のX65グレード以上の高強度ラインパイプ用継目無鋼管を製造するのに有用である。
1:鋼管、 1a:鋼管の一端、 1b:鋼管の他端、
2:水槽、 3:ノズル

Claims (1)

  1. 質量%で、C:0.03〜0.08%、Si:0.05〜0.50%、Mn:1.0〜3.0%、P:0.05%以下、S:0.01%以下、Cr:0.01〜1.00%、Mo:0.02〜1.20%、Ti:0.005〜0.100%、Al:0.005〜0.100%、Ca:0.001〜0.005%およびN:0.01%以下を含有し、さらにNi:0.01〜1.50%、Cu:0.01〜1.50%、B:0.00005〜0.0050%、Nb:0.005〜0.100%およびV:0.01〜0.10%のうちの1種以上を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、下記(1)式で表されるPcmが0.10〜0.20%である鋼組成を有し、降伏強度が450MPa以上であり、管内面の硬さがHv248以下である低炭素鋼の高強度ラインパイプ用継目無鋼管の製造方法であって、
    当該製造方法は、
    前記鋼組成を有する鋼管を成形する成形工程と、
    成形された鋼管をオーステナイト化温度に加熱し、その後に、前記鋼管を水槽内に浸漬させるとともに、前記鋼管の一端から鋼管内に冷却水を噴射して前記鋼管に焼入れ処理を施す焼入れ工程と、
    焼入れされた鋼管に焼戻し処理を施す焼戻し工程と、を含み、
    前記焼入れ工程では、鋼管内を流れる冷却水の流速vが6.0〜10.0m/sを満足する条件で焼入れを行うこと、
    を特徴とする高強度ラインパイプ用継目無鋼管の製造方法。
    Pcm=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5B …(1)
    ただし、上記(1)式中、元素記号はその元素の含有量[質量%]を示す。
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