JP5789762B2 - 回折音低減装置、回折音低減方法、及び、フィルタ係数決定方法 - Google Patents

回折音低減装置、回折音低減方法、及び、フィルタ係数決定方法 Download PDF

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Description

本発明は、回折音低減装置等に関する。より特定的には、視聴位置以外に伝わる音声を低減する回折音低減装置等に関する。
不快な騒音を低減する手法として、逆位相の音を制御スピーカから再生して騒音を打ち消す、所謂、能動騒音制御の考えは古くから存在している(例えば、特許文献1〜4を参照)。
特開平6−149271号公報 特表平8−500193号公報 特開昭60−201799号公報 特開平2−239798号公報
しかしながら、上記の従来技術においては、騒音を低減するための装置が大型で複雑な構成となるという課題がある。
それ故、本発明は、上記課題に鑑み、コンパクトな構成で音を伝えたくない方向のスピーカ再生音圧を低減し、且つ、音を伝えたい方向には正確に音を伝えることができる回折音低減装置を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決するための回折音低減装置に向けられており、本発明の一形態に係る回折音低減装置は、受聴者の位置及び受聴者の位置以外の位置に、複数の制御点を設け、前記制御点における音圧を制御する回折音低減装置であって、入力信号により示される特性を有する再生音を出力する再生スピーカと、前記再生音のうち受聴者の位置を除く複数の前記制御点の各々に到達した音である回折音の音圧を低減させるための制御音の特性を示す制御信号を再生する少なくとも2つの制御スピーカと、前記入力信号にフィルタ処理を施すことにより、前記制御信号を生成する制御フィルタとを備え、前記再生スピーカは、前記受聴者に対向するように配置され、前記制御スピーカの各々は、前記再生スピーカの周囲に、受聴者に対向することなく配置され、前記制御点は、前記再生スピーカおよび前記制御スピーカにそれぞれ対向するように配置され、前記制御フィルタは、前記回折音の音圧が、前記再生音のうち前記受聴者の位置に到達した音である直接音の音圧よりも、低減するように、前記制御信号を生成する。
なお、本発明は、このような回折音低減装置として実現できるだけでなく、回折音低減装置に含まれる特徴的な手段をステップとする回折音低減方法として実現したり、回折音低減装置が備えるフィルタの係数を決定するフィルタ係数決定方法として実現することもできる。さらに、そのような特徴的なステップをコンピュータに実行させるプログラムとして実現したりすることもできる。そのようなプログラムは、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)等の記録媒体及びインターネット等の伝送媒体を介して流通させることができるのはいうまでもない。
さらに、本発明は、このような回折音低減装置の機能の一部又は全てを実現する半導体集積回路(LSI)として実現したり、このような回折音低減装置を含む回折音低減システムとして実現したりできる。
本発明により、コンパクトな構成で音を伝えたくない方向のスピーカ再生音圧を低減し、且つ、音を伝えたい方向には正確に音を伝える回折音低減装置を提供できる。
図1は、第1の実施形態に係る回折音低減装置のスピーカとマイク構成を示す図である。 図2は、第1の実施形態に係る回折音低減装置の信号処理ブロック図である。 図3は、制御スピーカからマイク間の伝達特性を求めるための信号処理ブロック図である。 図4は、制御すべき回折音の伝達特性を求める信号処理ブロック図である。 図5は、回折音の制御特性を求める信号処理の全体構成図である。 図6は、図5に示した目標特性部の内部信号処理ブロック図である。 図7は、図5に示した制御部の内部信号処理ブロック図である。 図8は、図5に示した音響系模擬部の内部信号処理ブロック図である。 図9は、実施の形態1に係る回折音低減装置の機能ブロックを示す図である。 図10は、第1の実施形態に係る回折音低減装置の実験室でのマイクとスピーカ配置を上から見た図である。 図11は、図10に示した実験配置における回折音低減装置のマイク11での制御効果を示す図である。 図12は、図10に示した実験配置における回折音低減装置のマイク12での制御効果を示す図である。 図13は、図10に示した実験配置における回折音低減装置のマイク13での制御効果を示す図である。 図14は、図10に示した実験配置における回折音低減装置のマイク14での制御効果を示す図である。 図15は、図10に示した実験配置における回折音低減装置のマイク15での制御効果を示す図である。 図16は、図10に示した実験配置における回折音低減装置のマイク401での制御効果を示す図である。 図17は、図10に示した実験配置における回折音低減装置のマイク402での制御効果を示す図である。 図18は、図10に示した実験配置における回折音低減装置のマイク403での制御効果を示す図である。 図19は、第2の実施形態に係る回折音低減装置のスピーカとマイク構成を示す図である。 図20は、第2の実施形態に係る回折音低減装置のスピーカとマイク構成を示す図である。 図21は、第2の実施形態に係る回折音低減装置の信号処理ブロック図である。 図22は、図21に示した補正フィルタと加算器の内部構成及び制御スピーカとの接続構成を示す図である。 図23は、図22に示した補正フィルタの制御特性を求める信号処理の全体構成図である。 図24は、図23に示した目標特性部の内部信号処理ブロック図である。 図25は、図23に示した補正フィルタの内部信号処理ブロック図である。 図26は、図23に示した音響系模擬部の内部信号処理ブロック図である。 図27は、図21に示したANC(Active Noise Control)のFiltered−xフィルタの特性を求める信号処理ブロック図である。 図28は、図21に示したANCの内部信号処理ブロック図である。 図29は、実施の形態2に係る回折音低減装置の機能ブロックを示す図である。 図30は、第2の実施形態に係る回折音低減装置の実験室でのマイクとスピーカの配置図である。 図31は、図30に示した実験配置における回折音低減装置のマイク11での制御効果を示す図である。 図32は、図30に示した実験配置における回折音低減装置のマイク12での制御効果を示す図である。 図33は、図30に示した実験配置における回折音低減装置のマイク13での制御効果を示す図である。 図34は、図30に示した実験配置における回折音低減装置のマイク14での制御効果を示す図である。 図35は、図30に示した実験配置における回折音低減装置のマイク15での制御効果を示す図である。 図36は、図30に示した実験配置における回折音低減装置のマイク16での制御効果を示す図である。 図37は、図30に示した実験配置における回折音低減装置のマイク17での制御効果を示す図である。 図38は、第1の関連技術を示す図である。 図39は、第2の関連技術を示す第1の図である。 図40は、第2の関連技術を示す第2の図である。 図41Aは、第3の関連技術を示す上面図である。 図41Bは、第3の関連技術を示す正面図である。 図41Cは、第3の関連技術の使用状況を示す図である。 図42は、屋内のTV音声が隣室に漏れる場合を示す図である。 図43Aは、図42に基づく音響シミュレーションモデルを示す第1の図である。 図43Bは、図42に基づく音響シミュレーションモデルを示す第2の図である。 図44Aは、音響シミュレーションの解析結果(100Hzの場合)を示す第1の図である。 図44Bは、音響シミュレーションの解析結果(100Hzの場合)を示す第2の図である。 図45Aは、音響シミュレーションの解析結果(200Hzの場合)を示す第1の図である。 図45Bは、音響シミュレーションの解析結果(200Hzの場合)を示す第2の図である。 図46Aは、音響シミュレーションの解析結果(300Hzの場合)を示す第1の図である。 図46Bは、音響シミュレーションの解析結果(300Hzの場合)を示す第2の図である。 図47Aは、音響シミュレーションの解析結果(500Hzの場合)を示す第1の図である。 図47Bは、音響シミュレーションの解析結果(500Hzの場合)を示す第2の図である。 図48Aは、音響シミュレーションの解析結果(100Hzの場合)を示す第3の図である。 図48Bは、音響シミュレーションの解析結果(200Hzの場合)を示す第3の図である。 図48Cは、音響シミュレーションの解析結果(300Hzの場合)を示す第3の図である。 図48Dは、音響シミュレーションの解析結果(500Hzの場合)を示す第3の図である。
本発明の一形態に係る回折音低減装置は、受聴者の位置及び受聴者の位置以外の位置に、複数の制御点を設け、前記制御点における音圧を制御する回折音低減装置であって、入力信号により示される特性を有する再生音を出力する再生スピーカと、前記再生音のうち受聴者の位置を除く複数の前記制御点の各々に到達した音である回折音の音圧を低減させるための制御音の特性を示す制御信号を再生する少なくとも2つの制御スピーカと、前記入力信号にフィルタ処理を施すことにより、前記制御信号を生成する制御フィルタとを備え、前記再生スピーカは、前記受聴者に対向するように配置され、前記制御スピーカの各々は、前記再生スピーカの周囲に、受聴者に対向することなく配置され、前記制御点は、前記再生スピーカおよび前記制御スピーカにそれぞれ対向するように配置され、前記制御フィルタは、前記回折音の音圧が、前記再生音のうち前記受聴者の位置に到達した音である直接音の音圧よりも、低減するように、前記制御信号を生成する。
これによると、本実施の形態においては最少で2つのスピーカと、制御フィルタ(例えば、デジタルシグナルプロセッサから構成される回路等)とにより回折音低減装置を実現できるため、従来技術よりもコンパクトな構成とすることができる。また、制御対象空間が大きくなるに従い演算量が膨大となることもない。したがって、コンパクトな形状で、且つ、低演算で音を伝えたくない方向のスピーカ再生音圧を低減し、且つ、音を伝えたい方向には正確に音を伝える回折音低減装置を提供できる。
また、前記少なくとも2つの制御スピーカのうちの1つと、前記再生スピーカとが同一のスピーカにより構成されており、前記制御フィルタは、前記直接音の音圧が、前記受聴者の位置の制御点において、前記制御信号を再生することなく前記再生スピーカによって前記入力信号がそのまま再生された場合における前記再生音の音圧と等しくなり、かつ、前記回折音の音圧が、前記受聴者の位置以外の位置における制御点において、前記制御信号を再生することなく前記再生スピーカによって前記入力信号がそのまま再生された場合よりも、所定量低減するように、前記入力信号に前記フィルタ処理を施す、としてもよい。
これによると、回折音低減装置は、受聴者による再生音の受聴を妨げることなく、回折音の音圧レベルを低減することができる。
また、前記制御フィルタは、前記入力信号を信号処理して、前記制御点のそれぞれにおいて目標とすべき前記再生音の特性を示す信号である目標信号を決定する目標特性決定ステップと、前記入力信号に、前記制御スピーカのそれぞれに対応づけられた制御フィルタを適用することにより、当該制御スピーカで再生されるべき前記制御信号を算出する制御信号算出ステップと、前記制御信号算出ステップにおいて算出された制御信号に基づいて、前記制御点のそれぞれにおける前記再生音の特性を示す信号である再生信号を算出する音響系模擬ステップと、前記目標信号と前記再生信号とを合成して得られる誤差信号を対応する制御点ごとに算出する加算ステップと、前記加算ステップにおいて算出された前記誤差信号が所定の閾値以上の場合には、前記誤差信号がより小さくなるように前記制御フィルタの係数を更新し、前記誤差信号が所定の閾値未満の場合には、当該制御フィルタの係数を、前記制御フィルタが有すべき前記フィルタ係数として決定する判定ステップとを含むフィルタ係数決定方法により決定されたフィルタ係数を有するとしてもよい。
これによると、回折音低減装置が備える制御フィルタのフィルタ係数を、具体的に決定することができる。
具体的には、前記目標特性決定ステップにおいては、前記制御点ごとに対応づけられたレベル調整器と目標特性フィルタとを前記入力信号に適用することにより、前記目標信号を決定し、前記複数の目標特性フィルタのうち、第1の目標特性フィルタには、前記再生スピーカから前記受聴者の位置に配置された制御点までの伝達特性が設定され、前記第1の目標特性フィルタ以外の目標特性フィルタには、前記再生スピーカから前記受聴者の位置以外に配置された制御点までの伝達特性が設定され、前記レベル調整器のそれぞれは、設定値に応じて、前記入力信号の利得を調整するとしてもよい。
これによると、制御スピーカのうち再生スピーカを兼ねる制御スピーカに対応するレベル調整器と、それ以外の制御スピーカに対応するレベル調整器との利得を個別に調整することができる。
より具体的には、前記複数のレベル調整器のうち、前記第1の目標特性フィルタに対応するレベル調整器に設定された利得の設定値よりも、他の目標特性フィルタに対応するレベル調整器に設定された利得の設定値の方が小さいとしてもよい。
これによると、制御スピーカのうち再生スピーカを兼ねる制御スピーカに対応するレベル調整器の利得を、他の制御スピーカに対応するレベル調整器の利得よりも大きくすることにより、再生スピーカから再生される再生音のうち受聴者が受聴する音を聞きやすくすることができる。また、再生音のうち回折音を低減することができる。
また、前記音響系模擬ステップにおいては、前記制御信号の各々について、当該制御信号に前記制御点のそれぞれに到達するまでの経路の伝達特性を示す音響系模擬フィルタを適用し、前記音響系模擬フィルタが適用された前記複数の制御信号を前記制御点毎に加算することにより、各制御点における再生信号を算出するとしてもよい。
これによると、対象とする伝達特性のもとで、制御音による回折音の低減効果を計算機内で算出することができる。
また、前記判定ステップにおいては、前記入力信号に対して前記制御スピーカの各々から前記制御点の各々までの音の伝達特性を示す音響系模擬フィルタを適用し、前記誤差信号が所定の閾値以上の場合には、前記音響系模擬フィルタの出力信号と、前記誤差信号とに基づいて、次回に算出される誤差信号がより小さくなるように前記制御フィルタのフィルタ係数を更新するとしてもよい。
これによると、制御部は、次回にフィードバックとして得られる誤差信号がより小さくなるように、制御フィルタのフィルタ係数を決定することができる。
また、さらに、前記入力信号を信号処理して、複数の目標信号Dnを出力する目標特性部と、前記入力信号を信号処理して、複数の制御信号Cnを出力する制御部と、前記制御部から出力された前記複数の制御信号Cnの各々を信号処理して、前記複数の制御信号Cnの各々に対応する再生信号Onを出力する音響系模擬部と、前記目標信号Dnのそれぞれと、当該目標信号Dnに対応する前記再生信号Onとを合成することにより、複数の誤差信号Enを出力する演算器とを備え、前記回折音低減装置は、前記複数の誤差信号を所定の閾値より小さくすることにより、前記制御フィルタの制御特性を、Cn=Dn/Onとして算出することにより求めるとしてもよい。
これによると、回折音低減装置は、フィルタ係数を求めるための演算を行う構成要素を備えているため、設置された空間ごとに、より適切なフィルタ係数を決定することができる。
また、前記回折音低減装置は、さらに、前記制御フィルタの各々が出力する前記制御信号を入力とする補正フィルタと、加算器とを備え、前記再生スピーカは、前記少なくとも2つの制御スピーカとは異なるスピーカにより構成され、前記少なくとも2つの制御スピーカのうち、第1の制御スピーカは、その振動板が、前記受聴者に対向するように配置され、前記第1の制御スピーカ以外の制御スピーカは、前記再生スピーカの周囲に、前記受聴者に対向しないように配置され、前記補正フィルタは、当該補正フィルタが適用された前記制御信号を再生した制御音を前記受聴者の位置における前記再生音の特性に影響を与えないようなレベルまで低減するフィルタ係数を有し、前記加算器は、前記補正フィルタが適用された各制御信号を、対応する前記制御スピーカ毎に集約し、集約された制御信号を、対応する制御スピーカに出力するとしてもよい。
これによると、既存の再生スピーカに、制御スピーカを後から追加することにより、再生スピーカにより再生される再生音のうちの回折音を低減することができる。
本発明の一形態に係るフィルタ係数決定方法は、入力信号により示される特性を有する再生音を出力する再生スピーカと、前記再生音のうち複数の制御点の各々に到達した音である回折音の音圧を低減させるための制御音の特性を示す制御信号を再生する少なくとも2つの制御スピーカと、前記入力信号にフィルタ処理を施すことにより、前記制御信号を生成する制御フィルタとを備える回折音低減装置における前記制御フィルタのフィルタ係数決定方法であって、前記入力信号を信号処理して、前記制御点のそれぞれにおいて目標とすべき前記再生音の特性を示す信号である目標信号を決定する目標特性決定ステップと、前記入力信号に、前記制御スピーカのそれぞれに対応づけられた制御フィルタを適用することにより、当該制御スピーカで再生されるべき前記制御信号を算出する制御信号算出ステップと、前記制御信号算出ステップにおいて算出された制御信号に基づいて、前記制御点のそれぞれにおける前記再生音の特性を示す信号である再生信号を算出する音響系模擬ステップと、前記目標信号と前記再生信号とを合成して得られる誤差信号を対応する制御点ごとに算出する加算ステップと、前記加算ステップにおいて算出された前記誤差信号が所定の閾値以上の場合には、前記誤差信号がより小さくなるように前記制御フィルタの係数を更新し、前記誤差信号が所定の閾値未満の場合には、当該制御フィルタの係数を、前記制御フィルタが有すべき前記フィルタ係数として決定する判定ステップとを含む。
本発明の一形態に係る回折音低減方法は、入力信号により示される特性を有する再生音を出力する再生スピーカと、前記再生音のうち複数の制御点の各々に到達した音である回折音の音圧を低減させるための制御音の特性を示す制御信号を再生する少なくとも2つの制御スピーカと、前記入力信号にフィルタ処理を施すことにより、前記制御信号を生成する制御フィルタとを備える回折音低減装置による回折音低減方法であって、前記入力信号を信号処理して、複数の目標信号Dnを出力する目標特性算出ステップと、前記入力信号を信号処理して、複数の制御信号Cnを出力する制御信号算出ステップと、前記制御信号算出ステップにおいて出力された前記複数の制御信号Cnの各々を信号処理して、前記複数の制御信号Cnの各々に対応する再生信号Onを出力する音響系模擬ステップと、前記目標信号Dnのそれぞれと、当該目標信号Dnに対応する前記再生信号Onとを合成することにより、複数の誤差信号Enを出力する演算ステップと、前記複数の誤差信号を所定の閾値より小さくすることにより、前記制御フィルタの制御特性を、Cn=Dn/Onとして算出することにより求める、制御特性算出ステップとを含む。
以下、本発明をより詳細に説明する前に、本発明の関連技術及び課題について、より詳細に説明する。
従来、ヘッドホンやダクト(管路)などの空間サイズが小さく限定された1次元空間では能動騒音制御の実用例があり、その制御方式もアナログ式以外にデジタル式でも実現されている。1次元制御であれば比較的低演算で実現できるので、デジタル式でもコストを低く抑えることができるためである。しかし、一般家庭の部屋やオフィス、自動車室内などの空間サイズが大きい3次元空間では、効果を得るための多数の制御点を有さねば広いエリアで一定効果を確保できないため、演算量が多くなり、低コストで実現することが困難である。
ところで、ここでいう騒音とは、工場騒音や車のエンジン音など、一般に騒音と呼ばれているものに限られない。例えば、電車内でヘッドホンオーディオを聴いている人にとっては快適な音であっても、その周囲の人にとってはヘッドホンから漏れてくる音が不快な音、つまり騒音と感じられるものもある。以前から、家庭内でオーディオやTVを楽しむと、一方では、隣の部屋などに音漏れが生じて不快感を与える問題が指摘されていた。オーディオやTVを楽しむ人は大音量で聴きたいという願望があるが、すると漏れ音も当然大きくなり、場合によっては隣人とのトラブルも発生してしまう。
図38は、特許文献1に示される、例えば住宅の壁に能動振動(騒音)制御装置を施して、壁の振動を抑えることで壁を伝播して放射される騒音を低減する第1の関連技術を示している。図38において、40001は遮音壁、40002は遮音壁40001を励起するように設置したアクチュエータ、40003は遮音壁40001の振動を検出する振動センサ、40004は騒音センサ、40005は振動センサ40003の出力信号を入力する換算回路、40006は換算回路40005の出力信号と騒音センサ40004の出力信号とを取得して制御信号をアクチュエータ40002に出力する制御回路を示す符号である。
複数の振動センサ40003から出力する電気信号を遮音壁40001より放射される音響放射パワーに換算回路40005で換算する。制御回路40006は騒音センサ40004の出力信号と換算回路40005の出力信号とから換算回路40005の出力信号である放射音圧換算値が小さくなるような制御信号を生成し、アクチュエータ40002に出力する。このような構成の遮音壁40001では、振動センサ40003を設置した点の騒音に起因する振動をアクチュエータ40002によって制振することにより騒音の伝達量を低減させ、これによって遮音性能の向上を図っている。
また、特許文献2に示されるような第2の関連技術について、図39、図40を参照しながら説明する。図39において、50001は高透過損パネル、50002はセル、50003はアクチュエータを示す符号である。また図40において、50004はセル50002の壁面S1に設置した第1のセンサ手段、50005はセル50002の壁面S2に設置した第2のセンサ手段、50006は制御装置を示す符号である。
高透過損パネル50001は多数のセル50002を並べて構成される。個々のセル50002はフィードフォワード制御技術によりセル50002に入射する騒音を低減させる。具体的には、第1のセンサ手段50004と第2のセンサ手段50005の出力信号とに基づき制御装置50006で演算した制御信号によってアクチュエータ50003を駆動する。これによって高透過損パネル50001を透過する騒音は低減する。こうして遮音性能の向上を図っている。
一方、壁を伝わる騒音(不要な音)を低減する技術以外に、必要な音(TV音声など)を視聴位置だけに伝える技術も存在する。これが所謂、指向性制御である。
基本的な指向性制御として、ホーンスピーカなど幾何学的形状を利用したものが古くから存在する。これは高域では比較的指向性を得やすい手法である。しかし、低周波で鋭い指向性を得るためには、口径や奥行きの大きなものが必要であり、スピーカが大型化してしまう。そこで、最近では第3の関連技術として、以下の手法を利用することが多い。
(1)パラメトリックスピーカ(超音波スピーカ)
超音波に対する空気の非線形性を利用し、音声信号で変調された超音波から空気中で元の音声信号を復調する方式であり、鋭い指向性を得ることができる(特許文献3参照)。
(2)アレイスピーカ(トーンゾイレスピーカ)
直線状に並べた複数スピーカから放射された音の合成によって指向性を得ることができる。アナログ方式では、低域の指向性がアレイの長さで決まるため、低周波で指向性を制御したい場合に小型化できない。しかし、デジタル方式では、低域から高域まで広い周波数帯域で指向性を制御可能である(特許文献4参照)。
図41A〜図41Cにアレイスピーカのスピーカ配置例を示す。なお、図41A及び図41Bにおける矢印は、指向性の制御が可能な方向を示す。また、通常はスピーカの前方に受聴者がいると想定されるため、図41Cにおいてはスピーカの前方に鋭い指向性をつけている。
通常、アレイスピーカは直線状に一列にスピーカが配置されるものが多い。しかし、パラメトリックスピーカでは平面的(マトリクス状)に配置するのが通常なので、この配置で説明する。スピーカアレイ20000は、個々のスピーカが複数個集まったものである。このように平面的に配置した場合、左右上下及び前方に指向性を制御することができる。基本的に指向性制御は、音を伝えたい方向に音を強めあう制御(その結果、相対的に、音を伝えたくない方向の再生音圧が下がる)である。通常は、受聴者の居る前方に鋭い指向性を持つように制御する。その結果、受聴者にはTV音声などの必要な音を伝えることができ、受聴者の居る方向以外には音が伝わりにくくすることができる。
ところで、第1及び第2の関連技術において、壁を伝わる騒音を低減するためには、基本的には壁一面に騒音制御を施さなくてはいけない。すると、図38の場合では振動センサ40003とアクチュエータ40002とが多数必要となり、また、たとえ図39、図40の場合であっても、第1のセンサ手段50004と第2のセンサ手段50005とアクチュエータ50003とが多数必要となり、演算量の増大を招く。
ここで、第1及び第2の関連技術の問題点を明らかにするために、騒音遮断する壁の面積を変化させ、制御対象空間の騒音低減量を、音響シミュレーションを用いて比較した。
図42は、家60000のある部屋で人60005がTV60002を視聴している場合に、TV60002内のスピーカ60003から再生された音が壁60001を伝わって隣室に侵入する例を示している。よって、人60004の居る隣室が、騒音を静かにする制御対象空間である。騒音(TV音声)は壁60001を伝わって隣室へ進入しているため、壁60001からの騒音侵入を遮断できれば、人60004が居る制御対象空間全体で騒音低減できると推察される。
図43A及びBは図42に基づく解析モデルである。より詳細には、図43Aは家60000を上から見た図(イメージなので縦横比に意味はない)を、図43Bは制御対象空間側から見た壁60001を示している。具体的には、TV内蔵の再生スピーカに相当するスピーカ60003を音源として騒音を発生させる。そのときの壁60001の振動によって発生する制御対象空間での音圧分布と、壁60001で伝達する騒音を所定量遮断したとき(すなわち、壁60001の振動を所定量低減したとき)の制御対象空間での音圧分布との差分を、騒音低減量として求める。このとき、壁60001に対して一点鎖線で囲まれた比較的小さな領域を遮断領域とする場合と、点線で囲まれた比較的大きな領域を遮断領域とする場合と、実線で囲まれた壁60001全体を遮断領域とする場合とを比較する。なお、解析面は、図43A及びBにおける面A(ハッチングで示す)である。
図44A及びBは騒音の周波数が100Hzの場合、図45A及びBは周波数200Hzの場合、図46A及びBは周波数300Hzの場合、図47A及びBは周波数500Hzの場合の結果を示す。図44A、図45A、図46A、及び図47Aが図43Bの一点鎖線で囲まれた領域(小エリア)を20dB騒音遮断した場合の結果を示す。また、図44B、図45B、図46B、及び図47Bが図43Bの点線で囲まれた領域(中エリア)を20dB騒音遮断した場合の結果を示す。
表示している音圧分布は、遮断前の音圧を0dB基準として、遮断後の音圧を示している。つまり、マイナス表示(−20dBなど)が騒音低減していることを示しており、色が黒く、濃い方が、低減効果が大きい(低減効果を分かりやすく示すために、白色で数値を挿入している)。いずれの周波数でも、一点鎖線で囲まれた領域(小エリア)よりも、点線で囲まれた領域(中エリア)を騒音遮断した場合の方が広い範囲で騒音低減効果が大きい。
図48A〜Dは壁60001全体(大エリア)を20dB騒音遮断した場合の結果を示している。詳細には、図48Aは騒音の周波数が100Hzの場合、図48Bは周波数が200Hzの場合、図48Cは周波数が300Hzの場合、及び図48Dは周波数が500Hzの場合における結果を示す。どの周波数でも制御対象空間全体で20dBの騒音低減効果が得られている。
以上から、制御対象空間において、可能な限り広い範囲で騒音低減効果を得るためには、騒音が侵入する壁のできる限り広い面(理想的には壁全体)を均一に騒音制御する必要性がある。つまり、第1及び第2の関連技術の方法では、騒音低減量とその効果エリアを大きくさせようとするに伴い、振動を検出するセンサと振動を発生する(そのことで騒音による振動を抑制する)アクチュエータが多数必要となり、制御演算量が膨大となることがわかる。
次に、第3の関連技術の手法を用いれば、パラメトリックスピーカでは、個々の超音波再生スピーカは小型であり、且つ、鋭い指向性を得ることができる反面、変換効率が低い、あるいは低周波再生に不向き、さらには超音波に対する受聴者の保護などの課題がある。
一方、アレイスピーカでは、デジタル方式を用いて低域から高域まで広い周波数帯域で指向性を制御することができる。しかし、直線状(例えば横方向)あるいは平面状に複数のスピーカを配置するため、その長さが長くなり、コンパクトな形状にまとめることができないという課題を有している。
それ故、本発明は、上記課題に鑑み、コンパクトな形状で、且つ、低演算量、低コストな構成で、音を伝えたくない方向のスピーカ再生音圧を低減し、且つ、音を伝えたい方向には正確に音を伝えることができる回折音低減装置を提供することを目的とする。なお、本発明において回折音とは、スピーカから受聴者へ直接に届く直接音以外の音を総称した音をいう。
特に、本発明は、音を伝える方向に位置する受聴位置において、回折音低減装置を動作させても、動作させない場合と同等の音響特性が再現できるようにすることで、受聴者に違和感を与えることなく回折音を制御することを目的とし、さらには市販のTVなどに後付しても同等効果を得ることを目的とする。
以下、本発明の実施の形態について、図を用いて説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。本発明は、請求の範囲だけによって限定される。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、本発明の課題を達成するのに必ずしも必要ではないが、より好ましい形態を構成するものとして説明される。
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係る回折音低減装置の構成について説明する。図1は、第1の実施形態に係る回折音低減装置のスピーカ構成を示す図である。
図1において、(a)は制御スピーカ1(制御スピーカ1は、例えばTVスピーカと兼用している)を正面とする正面図であり、(b)は(a)のスピーカ構成を右側から見た側面図、(c)は(a)のスピーカ構成を上から見た上面図である。このように、回折音低減装置は、制御スピーカ1の上下左右後に、少なくともそれぞれ1つずつの制御スピーカ2〜6を配置したスピーカ構成となっている。そして、各制御スピーカ1〜6に対向する位置にマイク11〜16を設置し、これを制御点としている。ここで、制御スピーカ1は必要な音(例えばTV音声)を再生する再生スピーカを兼ねている。マイク11は受聴者位置そのもの、あるいは受聴者の居る方向に設置される。なお、マイク11の位置において、制御点の位置と受聴者の位置とが一致してもよい。
すなわち、本実施の形態に係る回折音低減装置は、受聴者の位置及び受聴者の位置以外の位置に、複数の制御点を設け、制御点における音圧を制御する回折音低減装置である。より詳細には、入力信号により示される特性を有する再生音を出力する再生スピーカ1と、再生音のうち受聴者の位置を除く複数の制御点の各々に到達した音である回折音の音圧を低減させるための制御音の特性を示す制御信号を再生する少なくとも2つの制御スピーカ(1〜6)とを備えている。また、後述するように、入力信号にフィルタ処理を施すことにより、制御信号を生成する制御フィルタを備えている。ここで、再生スピーカは、受聴者に対向するように配置される。また、制御スピーカの各々は、再生スピーカの周囲に、受聴者に対向することなく配置される。さらにまた、制御点は、再生スピーカおよび制御スピーカにそれぞれ対向するように配置される。
ここで、本実施の形態に係る回折音低減装置が目標とする制御効果は、以下の2つである。第1に、制御スピーカ1(再生スピーカでもある)から再生された音が、マイク11において、本実施の形態に係る回折音低減装置による制御の有無に関わらず、同等特性を保持すること。第2に、本実施の形態に係る回折音低減装置による制御無しの場合に制御スピーカ1から再生された再生音のうちの回折音と比較して、本実施の形態に係る回折音低減装置による制御有りの場合は、マイク12〜16において所定量の音圧レベルの低減を実現することである。
より具体的には、本実施の形態に係る回折音低減装置による制御無しの場合の制御スピーカ1からのマイク11への伝達特性がD1、マイク12への伝達特性がD2、マイク13への伝達特性がD3、マイク14への伝達特性がD4、マイク15への伝達特性がD5、マイク16への伝達特性がD6とする。ここで、本実施の形態に係る回折音低減装置による回折音を1/10に低減(=−20dBに低減)させる場合、マイク11ではD1のままで、且つ、マイク12ではD2/10、マイク13ではD3/10、マイク14ではD4/10、マイク15ではD5/10、マイク16ではD6/10となるように制御できればよい。そのためには、本実施の形態に係る回折音低減装置は、図2に示す制御フィルタ21〜26によって、音源20(例えばTV音声の出力装置)から取得した入力信号を信号処理して制御信号を生成し、各制御信号を制御スピーカ1〜6から再生させる。ここで、上述した制御効果を得るためには、制御フィルタ21〜26の制御特性の求め方が重要となる。具体的には、制御フィルタ21〜26は、回折音の音圧が、再生音のうち受聴者の位置に到達した音である直接音の音圧よりも低減するように、制御信号を生成する。
なお、制御フィルタ21〜26の制御特性は、本実施の形態に係る回折音低減装置が求めてもよく、外部の計算機により事前に求められた値を本実施の形態に係る回折音低減装置に記憶させておいてもよい。
よって、以下、この制御特性の求め方について説明する。
まずは、制御スピーカ1〜6からマイク11〜16の間の各伝達特性を求めておく必要がある。図3は、制御スピーカ6からマイク11〜16の間の伝達特性を求めるための信号処理ブロック図を示している。図3において、測定音源20からの測定信号(以後、入力信号ともいう)が制御スピーカ6から測定音として再生される。同時に、測定音源20からの測定信号は、Fxフィルタ31〜36とLMS演算器41〜46に入力される。Fxフィルタ31〜36において、その制御係数と測定音源20からの測定信号が畳み込み演算され、その結果を減算器51〜56に入力する。一方、制御スピーカ6で再生された測定音は、マイク11〜16で検出され、減算器51〜56に入力される。そして、減算器51〜56において、マイク11〜16の検出信号からFxフィルタ31〜36の出力信号がそれぞれ減算され、その結果が各LMS演算器41〜46にそれぞれ入力される。LMS演算器41〜46では、測定音源20からの測定信号を参照信号とし、減算器51〜56からの出力信号をエラー信号として、エラー信号が最小値になるようにLMS(最小二乗)演算を行う。つまり、LMS演算器41〜46において、Fxフィルタ31〜36の係数更新量を求め、現在の制御係数に更新量を加えて次の新たな制御係数とすることにより、Fxフィルタ31〜36が有する制御係数(Fx61〜Fx66)を更新する。この一連の動作を繰り返すことで、LMS演算器41〜46の各エラー信号、つまり減算器51〜56の出力信号は最小値(理想的には、限りなく0)に近づいていく。この結果、Fxフィルタ31〜36の特性(=制御係数)は、それぞれ制御スピーカ6からマイク11〜16の間の伝達特性に近似されていく。なお、測定信号は、できるだけ多様な周波数の音を含む信号であることが望ましい。例えば、測定信号としてホワイトノイズを使用すること等が考えられる。
実際には、LMS演算器が、例えば全てのエラー信号がそれぞれ所定の閾値未満となるまで、上記LMS演算を繰り返すことにより、Fxフィルタ31には制御スピーカ6からマイク11の伝達特性Fx61が、Fxフィルタ32には制御スピーカ6からマイク12の伝達特性Fx62が、・・・・、Fxフィルタ36には制御スピーカ6からマイク16の伝達特性Fx66が、求められる。なお、LMS演算の繰り返し処理の終了をLMS演算器が判定する条件としては、少なくとも1つのエラー信号が所定の閾値未満となることを条件としてもよい。また、全てのエラー信号の合計値が、所定の閾値未満となることを条件としてもよい。
なお、ここでは、制御スピーカ6を用いた場合を例に挙げたが、制御スピーカ1〜5の場合も同様に求めることができる。つまり、制御スピーカ1の場合は伝達特性Fx11〜Fx16が求められる。また、制御スピーカ2の場合は伝達特性Fx21〜Fx26が求められる。また、制御スピーカ3の場合は伝達特性Fx31〜Fx36が求められる。また、制御スピーカ4の場合は伝達特性Fx41〜Fx46が求められる。また、制御スピーカ5の場合は伝達特性Fx51〜Fx56が求められる。
次に、制御すべき回折音を測定する必要がある。これは、制御スピーカ1からマイク11〜16への伝達特性をそれぞれ求めることに等しく、図4にこれを求める構成を示す。図4と図3とを比べれば明らかなように、図4は伝達特性Fx11〜Fx16を求めることと同じである。つまり、伝達特性Fx11=D1、伝達特性Fx12=D2、伝達特性Fx13=D3、伝達特性Fx14=D4、伝達特性Fx15=D5、伝達特性Fx16=D6、となる。
最後に、最終的な制御特性である図2における制御フィルタ21〜26の係数を、図5に示す信号処理構成を利用して求める。
図5において、測定音源20からの測定信号(reference信号)が目標特性部2000で所定の処理を施され、目標信号(desire信号)として出力される。次に、目標信号は、加算器61〜66に入力される。一方、測定信号(reference信号)は制御部1000にも入力され、ここで所定の処理を施されて制御信号(control信号)として出力される。その後、制御信号は、音響系模擬部3000により処理された後に、出力信号(out信号)として、加算器61〜66に入力される。加算器61〜66では、目標信号(desire信号)と出力信号(out信号)とをそれぞれ加算し、その結果をエラー信号(error信号)として制御部1000に入力する。
ここで、図5の目標特性部2000は図6に示す構成になっている。目標特性フィルタ2001〜2006には、図4で求めた伝達特性D1〜D6が係数として設定されている。レベル調整器2101〜2106には任意のレベルが設定可能である。図1や図2で説明したように制御スピーカ1からマイク11〜16への回折音の到達レベルを制御するためには、レベル調整器2101の利得を1に、レベル調整器2102〜2106の利得を0.1に、それぞれ設定すればよい。なお、遅延器2200は、図5のシステム全体の因果律を満たすために必要な遅延時間を設定するためのものである。これによって、入力されたreference信号が所定の遅延時間を有して、伝達特性D1と等しいdesire1信号、伝達特性D2の1/10に等しいdesire2信号、伝達特性D3の1/10に等しいdesire3信号、伝達特性D4の1/10に等しいdesire4信号、伝達特性D5の1/10に等しいdesire5信号、伝達特性D6の1/10に等しいdesire6信号として、それぞれ出力される。なお、目標特性部2000は必ずしも遅延器2200を備えなくてもよい。前述したように、遅延器2200の目的は、システム全体の因果律を満たすことである。したがって、目標特性部2000の外部にある遅延器が、測定信号又は目標信号を遅延させる処置を施しても、同様に発明の効果を奏する。
図7は、図5の制御部を示すブロック図である。図7において、図3で求めた伝達特性Fx11〜Fx16がFxフィルタ1011〜1106に、フィルタ係数として設定されている。また、伝達特性Fx21〜Fx26がFxフィルタ1021〜Fxフィルタ1026(記載を省略)に、フィルタ係数として設定されている。また、伝達特性Fx31〜Fx36がFxフィルタ1031〜Fxフィルタ1036(記載を省略)に、フィルタ係数として設定されている。また、伝達特性Fx41〜Fx46がFxフィルタ1041〜Fxフィルタ1046(記載を省略)に、フィルタ係数として設定されている。また、伝達特性Fx51〜Fx56がFxフィルタ1051〜Fxフィルタ1056(記載を省略)に、フィルタ係数として設定されている。また、伝達特性Fx61〜Fx66がFxフィルタ1061〜Fxフィルタ1066に、フィルタ係数として設定されている。
図7において、入力されたreference信号は、制御フィルタ1001〜1006で信号処理され、その出力が位相反転器1201〜1206において位相反転されてcontrol1〜6信号として出力される。一方、reference信号は、Fxフィルタ1011〜1016、・・・・、Fxフィルタ1061〜1066にも入力され、各伝達特性Fx11〜Fx16、・・・・、Fx61〜Fx66と畳み込み処理される。さらに、畳み込み処理の演算結果は、LMS演算器1111〜1116、・・・・、1161〜1166に入力される。LMS演算器1111〜1116、・・・・、1161〜1166には、error1〜6信号も入力される。その後、図3の場合と同様に、ここで制御フィルタ1001〜1006の係数更新量を求め、制御フィルタ1001〜1006の現在の係数に加えることで次の新しい係数として更新する。このように複数のエラー信号も用いて制御フィルタの複数の係数を更新する適応信号処理技術は、Multiple Error LMS algorithmと呼ばれるものであり、例えば、ACTIVE CONTROL OF SOUND(非特許文献)(P.A. Nelson & S.J. Elliott,ACADEMIC PRESS,P397〜410)に記載されている。
図7の制御部1000から出力された信号であるcontrol1〜6は、図5の音響系模擬部3000に入力される。
図8は、この音響系模擬部3000を示すブロック図である。図3で求めた伝達特性Fx11〜Fx16がFxフィルタ3011〜3016(一部記載を省略)に、フィルタ係数として設定されている。また、伝達特性Fx21〜Fx26がFxフィルタ3021〜Fxフィルタ3026(一部記載を省略)に、フィルタ係数として設定されている。また、伝達特性Fx31〜Fx36がFxフィルタ3031〜Fxフィルタ3036(一部記載を省略)に、フィルタ係数として設定されている。また、伝達特性Fx41〜Fx46がFxフィルタ3041〜Fxフィルタ3046(一部記載を省略)に、フィルタ係数として設定されている。また、伝達特性Fx51〜Fx56がFxフィルタ3051〜Fxフィルタ3056(一部記載を省略)に、フィルタ係数として設定されている。また、伝達特性Fx61〜Fx66がFxフィルタ3061〜Fxフィルタ3066(一部記載を省略)に、フィルタ係数として設定されている。
よって、control1信号はFxフィルタ3011〜3016で伝達特性Fx11〜Fx16と畳み込み処理される。同様に、control2信号はFxフィルタ3021〜3026で伝達特性Fx21〜Fx26と、畳み込み処理される。また、control3信号はFxフィルタ3031〜3036で伝達特性Fx31〜Fx36と、畳み込み処理される。また、control4信号はFxフィルタ3041〜3046で伝達特性Fx41〜Fx46と、畳み込み処理される。また、control5信号はFxフィルタ3051〜3056で伝達特性Fx51〜Fx56と、畳み込み処理される。また、control6信号はFxフィルタ3061〜3066で伝達特性Fx61〜Fx66と、畳み込み処理される。
その後、各Fxフィルタの出力が図8に示すように加算器3100〜3129(一部記載を省略)において、それぞれ加算され、out1〜6信号として出力される。ここで、out1信号は、図2の制御スピーカ1〜6からの制御音がマイク11で示される制御点に到達した合成音の特性を表す信号に相当している。同様に、out2信号は制御スピーカ1〜6からの制御音がマイク12で示される制御点に到達した合成音の特性を表す信号に相当する。また、out3信号は制御スピーカ1〜6からの制御音がマイク13で示される制御点に到達した合成音の特性を表す信号に相当する。また、out4信号は制御スピーカ1〜6からの制御音がマイク14で示される制御点に到達した合成音の特性を表す信号に相当する。また、out5信号は制御スピーカ1〜6からの制御音がマイク15で示される制御点に到達した合成音の特性を表す信号に相当する。また、out6信号は制御スピーカ1〜6からの制御音がマイク16で示される制御点に到達した合成音の特性を表す信号に相当する。
また、本実施の形態では、制御スピーカ1と再生スピーカとが兼用されており、制御スピーカ1から再生される制御音は、入力信号の再生音でもある。したがって、out1〜out6で示される各信号は、各制御点における、再生音と制御音との合成音の特性を示す信号であるといえる。
図6〜8で説明した内容から明らかなように、図5の加算器61は図2のマイク11に、加算器62はマイク12に、加算器63はマイク13に、加算器64はマイク14に、加算器65はマイク15に、加算器66はマイク16に、それぞれ相当する。また、図5のerror1〜6信号が、マイク11〜16の出力信号にそれぞれ相当する。そして、図7における制御部1000内の制御フィルタ1001〜1006は、error1〜6信号が最小となるように自身の係数を更新する。この結果、制御部1000と音響系模擬部3000の合成特性が目標特性部2000と等しくなるように制御される。このことは、つまり、図7における制御フィルタ1001〜1006が、目標特性部2000と音響系模擬部3000の逆フィルタとなっていることを示している。例えば、図5における制御部1000の伝達関数を−H(−は、図7の位相反転器1201〜1206を示す)、目標特性部2000の伝達関数をD、音響系模擬部3000の伝達関数をC’とすると、加算器では、
D−H・C’≒0
となるように、制御部Hの特性が求められていくので、
H=D/C’
となる。
これを図2に当てはめて考えると、Hは制御フィルタ21〜26の特性(つまり、図7の制御フィルタ1001〜1006に相当)を示す。制御スピーカ1〜6からマイク11〜16までの伝達特性をCとすると、C≒C’なので、マイク11〜16で実現される特性は、
H・C≒D
となり、希望する制御効果が得られることになる。つまり、制御スピーカ1(再生スピーカを兼ねる)から再生された再生音が、マイク11においては、回折音低減装置による制御の有無に関わらず、D1と同等特性を示す。また、再生音の音圧は、マイク12ではD2/10、マイク13ではD3/10、マイク14ではD4/10、マイク15ではD5/10、マイク16ではD6/10となる(回折音を1/10に低減する場合)。
図9は、以上の述べた方法により決定されたフィルタ係数を有する制御フィルタ104を備える回折音低減装置100の機能ブロックを示す。なお、図9は、再生スピーカ101及び制御スピーカ102それぞれの論理的な構成を示す。具体的には、再生スピーカ101は、少なくとも1つのスピーカから構成されている。また、制御スピーカ102は、少なくとも2つのスピーカから構成されている。したがって、回折音低減装置100は、再生音として入力信号を再生する再生スピーカ101と、再生音のうち複数の制御点の各々に到達した音である回折音の音圧を低減させるための制御音の特性を示す制御信号を再生する少なくとも2つの制御スピーカ102と、入力信号にフィルタ処理を施すことにより、制御信号を生成する制御フィルタ104とを備える。
これによると、制御スピーカのうちの1台を再生スピーカと兼用する本実施の形態においては、最少で2つのスピーカと制御フィルタ(例えば、デジタルシグナルプロセッサ等の演算器により実現できる)との構成により回折音低減装置を実現できる。したがって、従来技術よりもコンパクトな構成とすることができる。また、制御対象空間が大きくなっても演算量が膨大となることもない。したがって、コンパクトな形状で、且つ、低演算で音を伝えたくない方向のスピーカ再生音圧を低減し、且つ、音を伝えたい方向には正確に音を伝える回折音低減装置を提供できる。さらに、構成がコンパクトかつ、演算量が少ないことから、装置の製造コストを抑えることもできる。
より具体的には、本実施の形態においては、回折音低減装置100が備える少なくとも2つの制御スピーカのうちの1つと、再生スピーカとが同一のスピーカにより構成されている。また、回折音低減装置100が備える制御フィルタ104は、直接音の有する特性が、制御信号を再生することなく再生スピーカによって入力信号がそのまま再生された場合に受聴者の位置において当該再生音が有する特性と等しくなり、かつ、回折音の有する特性が、直接音の有する特性から所定量だけ音圧レベルを低減した特性となるように、入力信号にフィルタ処理を施す。より詳細には、制御フィルタ104は、直接音の音圧が、受聴者の位置の制御点において、制御信号を再生することなく再生スピーカによって入力信号がそのまま再生された場合における再生音の音圧と等しくなり、かつ、回折音の音圧が、受聴者の位置以外の位置における制御点において、制御信号を再生することなく再生スピーカによって入力信号がそのまま再生された場合よりも、所定量低減するように、入力信号にフィルタ処理を施す。
例えば、例えばTVを視聴している場合には、受聴者位置あるいは受聴者の居る方向では回折音低減装置による制御の有無に関わらず、TV音声の特性を変化させることなく、且つ、受聴者方向以外に回折する音を低減できる。したがって、受聴者は周囲に気兼ねなくTV視聴ができる。
なお、本実施形態では回折音の低減レベルを1/10としたが、1/3や1/2など、部屋の環境などの状況によって、都度、希望する任意のレベルに設定すればよい。また、マイク12〜16で同じ低減レベルとしたが、これも状況次第で異なる設定にしてもよい。例えば、TVの右側に人が居るのでそちらを主に静かにしたい場合には、図1のマイク12の低減レベルを1/10とし、マイク13〜16はそれぞれ1/3にするなどとしてもよい。
また、図5において加算器61〜加算器66は、目標信号desire1〜desire6と、出力信号out1〜out6とをそれぞれ加算している。これは、図7において、位相反転器1201〜1206が、制御フィルタ1001〜1006の出力信号が有する位相を反転させていることに対応する。したがって、図7において、制御部1000が位相反転器1201〜1206を有していない場合には、desire1〜desire6からout1〜out6をそれぞれ減算する、減算器を加算器61〜加算器66の代わりに使用すればよい。すなわち、加算器61〜加算器66は、加算器以外の演算器であってもよい。
言いかえれば、本実施の形態に係る回折音低減装置が備える制御フィルタは、以下の(A)〜(E)のステップを含むフィルタ係数決定方法により決定されたフィルタ係数を有する。
(A)入力信号(図5のreference)を信号処理して、制御点のそれぞれにおいて目標とすべき再生音の特性を示す信号である目標信号(図5のdesire1〜desire6)を決定する目標特性決定ステップ。
(B)入力信号に、制御スピーカのそれぞれに対応づけられた制御フィルタ(図7の制御フィルタ1001〜1006)を適用することにより、当該制御スピーカで再生されるべき制御信号(図7のcontrol1〜control6)を算出する制御信号算出ステップ。
(C)制御信号算出ステップにおいて算出された制御信号に基づいて、制御点のそれぞれにおける再生音の特性を示す信号である再生信号(図8のout1〜out6)を算出する音響系模擬ステップ。
(D)目標信号と再生信号とを合成して得られる誤差信号(図5のerror1〜error6)を対応する制御点ごとに算出する加算ステップ。
(E)加算ステップにおいて算出された誤差信号が所定の閾値以上の場合には、誤差信号がより小さくなるように制御フィルタ104の係数を更新し、誤差信号が所定の閾値未満の場合には、その時点における制御フィルタ104の係数を、制御フィルタ104が有すべきフィルタ係数として決定する判定ステップ。
より詳細には、目標特性決定ステップにおいては、図6を参照して、制御点ごとに対応づけられたレベル調整器2101〜2106と目標特性フィルタ2001〜2006とを入力信号に適用することにより、目標信号(desire1〜6)を決定する。ここで、複数の目標特性フィルタのうち、第1の目標特性フィルタ(本実施の形態においては、目標特性フィルタ2001)には、再生スピーカから受聴者の位置に配置された制御点までの伝達特性が設定されている。また、第1の目標特性フィルタ以外の目標特性フィルタには、再生スピーカから受聴者の位置以外に配置された制御点までの伝達特性が設定されている。
また、レベル調整器のそれぞれは、設定値に応じて、入力信号の利得を調整する。より詳細には、複数のレベル調整器のうち、第1の目標特性フィルタに対応するレベル調整器(本実施の形態においては、レベル調整器2101)に設定された利得の設定値よりも、他の目標特性フィルタに対応するレベル調整器に設定された利得の設定値の方が小さい。
また、音響系模擬ステップでは、図8を参照して、制御信号の各々について、制御点のそれぞれに到達するまでの経路の伝達特性を示す音響系模擬フィルタ(Fxフィルタ3011〜3066)を当該制御信号に適用する。その後、音響系模擬フィルタが適用された複数の制御信号を制御点毎に、加算器3100〜3129において加算することにより、各制御点における再生信号を算出する。
また、図7を参照して、制御部1000が行う判定ステップでは、入力信号に対して制御スピーカの各々から制御点の各々までの音の伝達特性を示す音響系模擬フィルタ(Fxフィルタ1011〜1066)を適用する。
その後、誤差信号(error1〜error6)が所定の閾値以上の場合には、音響系模擬フィルタ(Fxフィルタ1011〜1066)の出力信号と、対応する誤差信号とに基づいて、次回の加算ステップにおいて算出される誤差信号がより小さくなるように制御フィルタの係数(FIR1〜FIR6)を更新する。
なお、本実施の形態に係る回折音低減装置は、さらに、入力信号(図5のreference)を信号処理して複数の目標信号Dn(図5のdesire1〜desire6)を出力する目標特性部2000と、入力信号を信号処理して、複数の制御信号Cn(図5のcontrol1〜control6)を出力する制御部1000と、制御部1000から出力された複数の制御信号Cnの各々を信号処理して、複数の制御信号Cnの各々に対応する再生信号On(図5のout1〜out6)を出力する音響系模擬部3000と、目標信号Dnのそれぞれと、当該目標信号Dnに対応する再生信号Onとを合成することにより、複数の誤差信号En(図5のerror1〜error6)を出力する加算器(演算器)61〜66とを備えてもよい。このとき、回折音低減装置は、複数の誤差信号のそれぞれを所定の閾値より小さくすることにより、制御フィルタ104の制御特性を、
Cn=Dn/On
として、求めることができる。
ここで、本実施の形態に係る回折音低減装置の効果を検証するために実際に行った実験例を以下に記す。図10は実験室でのマイクとスピーカ配置を上から見た図である。図10の400は、再生スピーカが置かれた部屋の隣室を示しており、その内部に評価用のマイク401〜403を設置している。この実験では、制御スピーカを床からある高さに配置するためにスタンドを設けているので、図1における制御スピーカ6は用いないで5個の制御スピーカ1〜5を使用している。よって、マイクも5個のマイク11〜15を用いている。つまり、制御スピーカの下方は制御しない構成である。
この実験の目標は、制御スピーカ1(再生スピーカを兼ねる)からの再生音が、マイク11が置かれた位置では制御の有無に関わらず同等特性となるように制御し、マイク12〜15が置かれた位置では音圧レベルが1/3に低減するように制御することである。図11〜図15を参照して結果を示す。なお、図11〜図15において、縦軸は、計測位置における音圧レベル(dB)を示し、横軸は計測した音の周波数(Hz)を示す。
図11はマイク11が置かれた位置での制御効果を示す。制御ON(細線)でも制御OFF(太線)とほとんど変わらない特性が得られている。図12はマイク12が置かれた位置での制御効果を示す。制御ON時には約10dBの低減効果(=1/3に低減)が得られている。同様に、図13はマイク13が置かれた位置での制御効果を示す。制御ON時には約10dBの低減効果が得られている。図14はマイク14が置かれた位置での制御効果を示す。制御ON時には約10dBの低減効果が得られている。図15はマイク15が置かれた位置での制御効果を示す。制御ON時には約10dBの低減効果が得られている。
このように、制御点である各マイク11〜15において、目標効果が得られたので、隣室400内ではどのような効果があるのかを測定した。図16〜17を参照して結果を示す。なお、図16〜図18において、縦軸は、回折音低減装置をOFFにした時とONにした時とでの音圧レベルの差(dB)を示す。横軸は、計測した音の周波数(Hz)を示す。
図16はマイク401が置かれた位置での制御効果(制御OFF−ONの差分)を示す。5〜15dBの回折音低減効果が得られている。同様に、図17はマイク402が置かれた位置での制御効果を、図18はマイク403が置かれた位置での制御効果をそれぞれ示す。どちらも5〜10dBの回折音低減効果が得られている。
以上から、制御スピーカ1〜5を用いて、マイク11〜15における回折音を制御することにより、隣室400へのTV音声(制御スピーカ1からの再生音)の漏れ音を低減できるがわかる。実験では、マイク12〜15において、50Hz付近(制御スピーカのfoなど特性に因る)〜1kHzの広帯域で回折音が低減されている。またマイク401〜403でも、80Hz付近〜500Hz付近で効果が得られている。したがって、第3の関連技術である指向性スピーカでは困難であった低域での制御効果を得ることができ、また隣室との壁一面の振動を制御する第1及び第2の関連技術や、第3の関連技術である指向性スピーカと比べて、大変コンパクトな形状で、演算量も大きく削減可能である。
なお、図10に示す実験では下方向の制御スピーカ6を削減したが、理想的には削減しない方が望ましい。但し、この実験でも良好な効果が得られているように、システムに適用する条件に応じて、効果に悪影響を与えない範囲で制御スピーカ数を削減するのは自由である。少なくとも、制御点に向き合う位置ごとに1台の制御スピーカを配置すればよい。
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係る回折音低減装置の構成について説明する。図19は、第2の実施形態に係る回折音低減装置のスピーカ構成を示す図である。
図19において、(a)は再生スピーカ10(例えばTVスピーカ)を正面とする正面図である。(b)は(a)を右側から見た側面図である。(c)は(a)を上から見た上面図である。このように、本発明の実施の形態2に係る回折音低減装置は、再生スピーカ10の上下左右後に、少なくともそれぞれ1つずつの制御スピーカ1〜8を配置したスピーカ構成となっている。そして、各制御スピーカ1〜8に対向する位置にそれぞれマイク11〜18を設置し、これを制御点としている。ここで、再生スピーカ10は必要な音(例えばTV音声)を再生するスピーカであり、マイク11及びマイク12は受聴者位置そのもの、あるいは受聴者の居る方向に設置される。
よって、目標とする制御効果は、以下の2つである。第1に、再生スピーカ10から再生された音が、マイク11〜12において、本実施の形態に係る回折音低減装置による制御の有無に関わらず、同等特性を保持すること。第2に、本実施の形態に係る回折音低減装置による制御無しの場合に再生スピーカ10から再生された再生音のうちの回折音と比較して、本実施の形態に係る回折音低減装置による制御有りの場合は、マイク13〜18において所定量の音圧レベルの低減を実現することである。
ところで、第1の実施形態では再生スピーカと制御スピーカとが兼用された構成となっていた。しかし、第2の実施形態では再生スピーカは、例えば単なるTVに内蔵されたスピーカとしてTV音声を再生するだけである。再生スピーカの周囲に配置された制御スピーカ1〜8が再生スピーカ10からの回折音を低減する制御を行う。
回折音を低減するためには、マイク13〜18において、再生スピーカ10からの再生音が低減されればよい。このため、制御スピーカ1〜8は、マイク13〜18において再生スピーカ10からの再生音を低減する、所謂、アクティブ騒音制御(ANC)を実行すればよい。但し、このとき、そのANC制御音がマイク11〜12に伝播すると、再生スピーカ10からのTV音声の特性が変化してしまう。よって、これを解決するために、制御スピーカ1〜8から再生されるANC制御音がマイク11〜12に伝播しないようにする必要がある。つまり、マイク11〜12において、TV音声と干渉して特性が変化しないレベルまでANC制御音を低減できればよい。これはすなわち、制御スピーカ1〜8から再生される制御音がマイク11〜12に回折しないようにすることであり、その制御方法は第1の実施形態で説明したとおりである。要するに、制御スピーカ1〜8からの制御音がマイク11〜12において所定レベル低減されるように回折音制御を施した上で、マイク13〜18において再生スピーカ10からのTV音声をANC制御すればよい。
例えば、図19の制御スピーカ4で説明する。制御スピーカ4で再生された制御音は、マイク11〜18へと伝播していく。マイク11〜12へは本来、伝達特性D41、D42で伝播する。しかし、制御スピーカ1〜8を用いて回折音制御を行うことにより、制御スピーカ4からマイク11〜12へ伝播する音を、例えばD41/10、D42/10と低減させる。すると、マイク11〜12における制御スピーカ4からの音は十分にレベルが低いため、再生スピーカ10から再生された再生音と干渉しない。これを同様に、他の制御スピーカにも当てはめて回折音制御すれば、マイク11〜12において、全ての制御スピーカ1〜8からの音が再生スピーカ10から再生された再生音と干渉しないことになる。これら回折音制御をするフィルタが、図21に示す補正フィルタ10000〜15000である。補正フィルタ10000〜15000が有するフィルタ係数は、図21に示される構成により、決定することができる。詳細は後述する。
次に、図20に示す再生スピーカ10からの再生音は、なんの制御もなされない場合には、マイク11〜18へと伝播していく。ここで、再生スピーカ10からの再生音がマイク13〜18へと伝播していかないようにするために、回折音制御された制御スピーカ1〜8を用いて、再生スピーカ10からマイク11〜18への伝播音をANCによって打ち消す。これが、図21に示すANC5000である。ACN5000の設計方法については、後述する。
では、図21における補正フィルタ10000〜15000とANC5000の動作及び設計方法について、図22〜27を用いて具体的に説明していく。
図22は、図21における補正フィルタ10000〜15000と加算器6000及び制御スピーカ1〜8の構成を示している。補正フィルタ10000は、ANC5000から出力された信号を回折音制御フィルタ10001〜10008で信号処理し、その結果を加算器6000に入力する。他の補正フィルタ11000〜15000も同様に、ANC5000から出力された信号を回折音制御フィルタ11001〜15008で信号処理し、その結果を加算器6000に入力する。加算器6000では、制御スピーカ1に対応する各補正フィルタ11000〜15000からの出力信号を加算器6001、6011、・・・、で加算して1つの信号(control1)とし、これを制御スピーカ1に入力する。制御スピーカ2〜8についても同様に、加算器6000において、それぞれ対応する各補正フィルタ10000〜15000からの出力信号を1つにまとめて、対応する制御スピーカに入力する。
ここで、補正フィルタ10000〜15000の制御特性の求め方であるが、第1の実施形態で説明した方法を用いればよい。例えば、補正フィルタ11000を例にとると、第1の実施形態の図5における制御部1000が、図23における補正フィルタ11000に相当する。
図23において、測定音源20からの測定信号(reference信号)が目標特性部2000で所定の処理を施された後、目標信号(desire信号)として出力される。出力された目標信号は、加算器61〜68に入力される。一方、測定信号(reference信号)は補正フィルタ11000にも入力される。ここで補正フィルタ11000は、測定信号に所定の処理を施して制御信号(control信号)を出力する。その後、制御信号は、音響系模擬部3000により処理された後に、出力信号(out信号)として、加算器61〜68に入力される。加算器61〜68は、目標信号(desire信号)と出力信号(out信号)とをそれぞれ加算し、その結果をエラー信号(error信号)として補正フィルタ11000に入力する。
以下、補正フィルタ10000〜15000の制御特性の求め方(すなわち、フィルタ係数の決定方法)について、より詳細に説明する。
図23の目標特性部2000は図24に示す構成になっている。目標特性フィルタ2001〜2008には、図19に示す伝達特性D41〜D48が係数として設定されている。なお、伝達特性D41〜D48は、図4で説明したように求めればよい。レベル調整器2101〜2108には任意のレベルが設定可能である。例えば、図19のマイク11、12に制御スピーカ4からの再生音が伝達しないようにするためには、レベル調整器2101〜2102の利得を0.1に設定すればよい。このとき、他のレベル調整器2103〜2108の利得は、基本的には1を設定すればよい。仮にレベル調整器2103〜2108の利得に1以外を設定したとしても、図21のANC5000で補正されるため、0.1のように極端に小さい値を設定しなければ大きな問題ではない。なお、遅延器2200は、図23のシステム全体の因果律を満たすために必要な遅延時間を設定するためのものである。これによって、入力されたreference信号が所定の遅延時間を有して、伝達特性D41の1/10に等しいdesire1信号として出力される。また、伝達特性D42の1/10に等しいdesire2信号として出力される。また、伝達特性D43に等しいdesire3信号として出力される。また、伝達特性D44に等しいdesire4信号として出力される。また、伝達特性D45に等しいdesire5信号として出力される。また、伝達特性D46に等しいdesire6信号として出力される。また、伝達特性D47に等しいdesire7信号として出力される。また、伝達特性D48に等しいdesire8信号として出力される。
図25は、図23の補正フィルタ11000を示すブロック図である。制御スピーカ1からマイク11〜18までの伝達特性Fx11〜Fx18がFxフィルタ11011〜11018に、フィルタ係数としてそれぞれ設定されている。また、制御スピーカ2からマイク11〜18までの伝達特性Fx21〜Fx28がFxフィルタ11021〜11028(記載を省略)に、フィルタ係数としてそれぞれ設定されている。また、制御スピーカ3からマイク11〜18までの伝達特性Fx31〜Fx38がFxフィルタ11031〜11038(記載を省略)に、フィルタ係数としてそれぞれ設定されている。また、制御スピーカ4からマイク11〜18までの伝達特性Fx41〜Fx48がFxフィルタ11041〜11048(記載を省略)に、フィルタ係数としてそれぞれ設定されている。また、制御スピーカ5からマイク11〜18までの伝達特性Fx51〜Fx58がFxフィルタ11051〜11058(記載を省略)に、フィルタ係数としてそれぞれ設定されている。また、制御スピーカ6からマイク11〜18までの伝達特性Fx61〜Fx68がFxフィルタ11061〜11068(記載を省略)に、フィルタ係数としてそれぞれ設定されている。また、制御スピーカ7からマイク11〜18までの伝達特性Fx71〜Fx78がFxフィルタ11071〜11078(記載を省略)に、フィルタ係数としてそれぞれ設定されている。また、制御スピーカ8からマイク11〜18までの伝達特性Fx81〜Fx88がFxフィルタ11081〜11088にフィルタ係数としてそれぞれ設定されている。
図25において、入力されたreference信号は、制御フィルタ11001〜11008で信号処理され、その出力が位相反転器11201〜11208において位相反転されてdiffraction1〜8信号として出力される。一方、reference信号は、Fxフィルタ11011〜11018、・・・・、Fxフィルタ11081〜11088にも入力され、各伝達特性Fx11〜Fx18、・・・・、Fx81〜Fx88と畳み込み処理される。その後、Fxフィルタ11011〜11018、・・・・、Fxフィルタ11081〜11088の出力は、それぞれ、LMS演算器11111〜11118、・・・・、11181〜11188に入力される。LMS演算器11111〜11118、・・・・、11181〜11108には、対応するerror1〜8信号も入力される。その後、LMS演算器11111〜11118、・・・・、11181〜11108は、制御フィルタ11001〜11008の係数更新量を求め、制御フィルタ11001〜11008の現在の係数に加えることで次の新しい係数を算出する。
図25の補正フィルタ11000から出力されたdiffraction1〜8信号は、図23の音響系模擬部3000に入力される。図26は、この音響系模擬部3000を示すブロック図である。伝達特性Fx11〜Fx18がFxフィルタ3011〜3018(一部記載を省略)に、フィルタ係数としてそれぞれ設定されている。また、伝達特性Fx21〜Fx28がFxフィルタ3021〜Fxフィルタ3028(一部記載を省略)に、フィルタ係数としてそれぞれ設定されている。また、伝達特性Fx31〜Fx38がFxフィルタ3031〜Fxフィルタ3038(一部記載を省略)に、フィルタ係数としてそれぞれ設定されている。また、伝達特性Fx41〜Fx48がFxフィルタ3041〜Fxフィルタ3048(一部記載を省略)に、フィルタ係数としてそれぞれ設定されている。また、伝達特性Fx51〜Fx58がFxフィルタ3051〜Fxフィルタ3058(一部記載を省略)に、フィルタ係数としてそれぞれ設定されている。また、伝達特性Fx61〜Fx68がFxフィルタ3061〜Fxフィルタ3068(一部記載を省略)に、フィルタ係数としてそれぞれ設定されている。また、伝達特性Fx71〜Fx78がFxフィルタ3071〜Fxフィルタ3078(一部記載を省略)に、フィルタ係数としてそれぞれ設定されている。また、伝達特性Fx81〜Fx88がFxフィルタ3081〜Fxフィルタ3088(一部記載を省略)にフィルタ係数としてそれぞれ設定されている。
よって、diffraction1信号はFxフィルタ3011〜3018で伝達特性Fx11〜Fx18と畳み込み処理される。同様に、diffraction2信号はFxフィルタ3021〜3028で伝達特性Fx21〜Fx28と畳み込み処理される。また、diffraction3信号はFxフィルタ3031〜3038で伝達特性Fx31〜Fx38と畳み込み処理される。また、diffraction4信号はFxフィルタ3041〜3048で伝達特性Fx41〜Fx48と畳み込み処理される。また、diffraction5信号はFxフィルタ3051〜3058で伝達特性Fx51〜Fx58と畳み込み処理される。また、diffraction6信号はFxフィルタ3061〜3068で伝達特性Fx61〜Fx68と畳み込み処理される。また、diffraction7信号はFxフィルタ3071〜3078で伝達特性Fx71〜Fx78と畳み込み処理される。また、diffraction8信号はFxフィルタ3081〜3088で伝達特性Fx81〜Fx88と畳み込み処理される。そして各Fxフィルタの出力が図26に示すように加算器3100〜3155(一部記載を省略)において、対応する制御点ごとにそれぞれ加算され、out1〜8信号として出力される。
ここで、out1信号は、図21の制御スピーカ1〜8からの制御音がマイク11に到達する信号に相当している。同様に、out2信号は制御スピーカ1〜8からの制御音がマイク12に到達する信号に、相当する。また、out3信号は制御スピーカ1〜8からの制御音がマイク13に到達する信号に、相当する。また、out4信号は制御スピーカ1〜8からの制御音がマイク14に到達する信号に、相当する。また、out5信号は制御スピーカ1〜8からの制御音がマイク15に到達する信号に、相当する。また、out6信号は制御スピーカ1〜8からの制御音がマイク16に到達する信号に、相当する。また、out7信号は制御スピーカ1〜8からの制御音がマイク17に到達する信号に、相当する。また、out8信号は制御スピーカ1〜8からの制御音がマイク18に到達する信号に、相当する。
図24〜図26で説明した内容から明らかなように、図23の加算器61は図21のマイク11に、相当する。また、加算器62はマイク12に、相当する。また、加算器63はマイク13に、相当する。また、加算器64はマイク14に、相当する。また、加算器65はマイク15に、相当する。また、加算器66はマイク16に、相当する。また、加算器67はマイク17に、相当する。また、加算器68はマイク18に、相当する。
また、図23のerror1〜8信号が、マイク11〜18の出力信号にそれぞれ相当する。そして、図25における補正フィルタ11000内の制御フィルタ11001〜11008は、error1〜8信号が最小となるように自身の係数(diffract41〜diffract48)を更新する。この結果、補正フィルタ11000と音響系模擬部3000との合成特性が目標特性部2000と等しくなるように制御される。つまり、補正フィルタ11000に入力されたreference信号は、音響系模擬部3000を経由して、加算器61〜62ではそれぞれD41/10、D42/10となる。また、加算器63〜68ではそれぞれD43、D44、D45、D46、D47、D48となる。
以上は、制御スピーカ4を例にとって説明したが、制御スピーカ3についても同様に制御を行い、補正フィルタ10000とする。制御スピーカ5〜8についても同様に、それぞれ補正フィルタ12000〜15000を求める。
この結果、図21におけるANC5000からの各出力信号anc1〜6が示す音は、補正フィルタ10000〜15000と加算器6000とによって回折音が制御される。また、制御スピーカ1〜8から再生される制御音はマイク13〜18には指定された音圧で伝達される一方、マイク11〜12においては1/10にレベル低減される。よって、ANC5000はマイク11〜12に影響を与えないでマイク13〜18における制御を行うことができる。
次に、ANC5000の動作について説明する。ANC5000から見ると、補正フィルタ10000〜15000から、加算器6000と制御スピーカ1〜8とを経由して、マイク13〜18までの伝達経路が、所謂、2次経路となる。よって、これをFiltred−xフィルタとして同定する必要がある。図27は、補正フィルタ10000を例にした場合を示している。
図27において、測定音源20からの測定信号が補正フィルタ10000と加算器6000とを介して制御スピーカ1〜8から測定音として再生される。ここで、補正フィルタ10000は、図21〜図26で説明したように、回折音が制御されている。よって、制御スピーカ1〜8から再生される制御音は、図21のマイク13〜18には伝播するが、マイク11〜12には伝播しない(と見なせる)。
同時に、測定音源20からの測定信号は、fxフィルタ31〜36とLMS演算器41〜46とに入力される。fxフィルタ31〜36において、その制御係数と測定音源20からの測定信号が畳み込み演算され、その結果を減算器51〜56に入力する。一方、制御スピーカ1〜8で再生された測定音は、マイク13〜18で検出され、それぞれ減算器51〜56に入力される。そして、減算器51〜56において、マイク13〜18の検出信号からfxフィルタ31〜36の出力信号がそれぞれ減算され、その結果がLMS演算器41〜46のうち対応するLMS演算器に入力される。LMS演算器41〜46では、測定音源20からの測定信号を参照信号とし、減算器51〜56からの出力信号をエラー信号として、エラー信号が最小値になるようにLMS演算を行う。つまり、LMS演算器41〜46において、fxフィルタ31〜36の係数更新量をそれぞれ求め、現在の制御係数に更新量を加えて次の新たな制御係数を算出する。算出された制御係数により、fxフィルタ31〜36を更新する。この一連の動作を繰り返すことで、LMS演算器41〜46の各エラー信号、つまり減算器51〜56の出力信号は最小値(理想的には、限りなく0)に近づいていく。この結果、fxフィルタ31〜36の特性(=係数)は、それぞれ補正フィルタ10000から、加算器6000と制御スピーカ1〜8とを経由して、マイク13〜18までの間の伝達特性に近似されていく。
このように、fxフィルタ31には補正フィルタ10000からマイク13の伝達特性fx33が求められる。また、fxフィルタ32には補正フィルタ10000からマイク14の伝達特性fx34が、・・・・、fxフィルタ36には補正フィルタ10000からマイク18の伝達特性fx38が、それぞれ求められる。
なお、ここでは、補正フィルタ10000を例に挙げたが、補正フィルタ11000〜15000の場合も同様に伝達特性を求めることができる。つまり、補正フィルタ11000の場合は伝達特性fx43〜fx48が、求められる。また、補正フィルタ12000の場合は伝達特性fx53〜fx58が、求められる。また、補正フィルタ13000の場合は伝達特性fx63〜fx68が、求められる。また、補正フィルタ14000の場合は伝達特性fx73〜fx78が、求められる。また、補正フィルタ15000の場合は伝達特性fx83〜fx88が、求められる。
以上のように、ANC5000から見たFiltred−xフィルタが求まれば、次にANC5000の制御特性を求めていく。以下、ANC5000の制御特定の決定方法について説明する。
図28は、図21におけるANC5000の内部構成を示している。fxフィルタ5011〜5066には、図27で説明したように、予め求めた伝達特性が係数として設定されている。
再度図21を参照して、測定音源20からのreference信号は、遅延器7000で所定の遅延処理をされた後に再生スピーカ10から再生される。ここで、遅延器7000は、図21に示されるシステム全体における因果律を満足するためのものである。
一方、測定音源20からのreference信号は、ANC5000にも入力され、所定の信号処理を施されてanc1〜6信号を出力する。その後、anc1〜6信号は、補正フィルタ10000〜15000のうち対応する補正フィルタで回折音制御に必要な信号処理が施された後、diffraction1〜6として加算器6000に入力される。加算器6000では、入力された信号であるdiffraction1〜6を対応する制御スピーカ毎に加算することにより、信号(control1〜8)を生成する。また、control1〜8は、制御スピーカ1〜8のうち対応する制御スピーカから再生される。
これによると、再生スピーカ10からの再生音と制御スピーカ1〜8からの制御音とは、マイク13〜18において干渉しあい、その結果がerror信号3〜8として検出される。
図28において、入力されたreference信号は、制御フィルタ5001〜5006で信号処理され、その出力が位相反転器5201〜5206において位相反転された後に、anc1〜6信号として出力される。reference信号は、fxフィルタ5011〜5016、・・・・、fxフィルタ5061〜5066にも入力され、各伝達特性fx33〜fx38、・・・・、fx83〜fx88とそれぞれ畳み込み処理されてLMS演算器5111〜5116、・・・・、5161〜5166にそれぞれ入力される。LMS演算器5111〜5116、・・・・、5161〜5166には、マイク13〜18の出力信号であるerror3〜8信号もそれぞれ入力される。各LMS演算器は、このerror3〜8信号を最小化するように、制御フィルタ5001〜5006の係数更新量を求める。さらに、求めた係数更新量を制御フィルタ5001〜5006の現在の係数に加えて得られた値により、制御フィルタの係数を更新する。この結果、error3〜8信号のレベルが低減される。
すなわち、ANC5000は、所謂、1(参照信号数)−6(制御スピーカ数)−6(制御点数)制御を行っていることになる。その結果、図21において、再生スピーカ10から再生された測定音源20からのreference信号は、マイク13〜18においてレベル低減される。このことは、再生スピーカ10からの再生音が、マイク13〜18において打ち消されたことを意味する。一方、制御スピーカ1〜8から再生される制御音は、マイク13〜18には伝播するが、マイク11〜12には影響しない程度にレベル低減されている。したがって、マイク11〜12では再生スピーカ10からの再生音がそのまま聞こえる。つまり、測定音源20がTV音声だとすれば、マイク11〜12ではTV音声が、ANC5000の動作に関係なく、事前に設定された音圧レベルで聞くことができる。同時に、マイク13〜18では、ANC5000が動作すれば、TV音声が低減されて聞こえなくなる。
図29は、本発明の実施の形態に係る回折音低減装置100Aの機能ブロックを示す。
図29に示されるように、回折音低減装置100Aは、回折音低減装置100と比較して、さらに、制御フィルタ104A(図21の1−6−6ANC5000に相当)が出力する制御信号を入力とする補正フィルタ106(図21の補正フィルタ10000〜補正フィルタ15000に相当)と、加算器108(図21の加算器6000に相当)とを備える。
また、再生スピーカ101Aと、少なくとも2つの制御スピーカ102Aとは異なるスピーカにより構成されている。より詳細には、少なくとも2つの制御スピーカ102Aのうち、第1の制御スピーカ(本実施の形態においては、図21の制御スピーカ1及び制御スピーカ2に相当)は、その振動板が受聴者に対向するように配置される。また、第1の制御スピーカ以外の制御スピーカ(本実施の形態においては、図21の制御スピーカ3〜制御スピーカ8に相当)は、再生スピーカの周囲に、受聴者に対向しないように配置される。
補正フィルタ106は、当該補正フィルタが適用された制御信号が示す制御音が受聴者の位置における再生音の特性に与える影響をより低減させるよう決定されたフィルタ係数(図22のdiffract31〜diffract88)を有する。すなわち、補正フィルタ106は、当該補正フィルタが適用された制御信号を再生した制御音を受聴者の位置における再生音の特性に影響を与えないようなレベルまで低減するフィルタ係数を有する(CL9)。
加算器108は、補正フィルタ106が適用された各制御信号(図22のdiffraction1〜diffraction8)を、対応する制御スピーカ毎に集約し、集約された制御信号を、対応する制御スピーカに出力する。
以上述べた構成によると、例えばTVを視聴している場合には、受聴者位置あるいは受聴者の居る方向では制御の有無に関わらずTV音声の特性を変化させることなく、且つ、受聴者方向以外に回折する音を低減できる。したがって、受聴者は周囲に気兼ねなくTV視聴ができる。
さらに、TV内蔵の再生スピーカ10を制御に用いないため、一般のTV(などの機器)に後付で制御スピーカ1〜8をその周囲に設置すれば、上記効果を実現することができる。
なお、本実施形態では回折音の低減レベルを1/10としたが、1/3や1/2など、部屋の環境などの状況によって、都度、希望する任意のレベルに設定すればよい。
ここで、本実施の形態に係る回折音低減装置の効果を検証するため、実際に行った実験例を図30〜図37を参照して示す。
図30は、TV9000に内蔵された再生スピーカ10と、その周囲に設置された制御スピーカ1〜7と、制御点であるマイク11〜17とを示している。この実験では、TV9000及び制御スピーカ1〜7を床からある高さに配置するために台の上に置いている。そのため、図19〜図20における制御スピーカ8は用いないで7個の制御スピーカ1〜7を使用している。よって、マイクも7個のマイク11〜17を用いている。つまり、制御スピーカの下方は制御しない構成である。この実験の第1の目標は、TV内蔵の再生スピーカ10からの再生音が、マイク11〜12が配置された制御点では制御の有無に関わらず同等特性(制御ON/OFFで再生音が変化しない)とすることである。また、第2の目標は、マイク13〜17が配置された制御点では音圧レベルが1/3に低減するように制御することである。結果を次に示す。
図31はマイク11が配置された制御点での制御効果を示す。制御ON(細線)でも制御OFF(太線)とほとんど変わらない特性が得られている。図32はマイク12が配置された制御点での制御効果を示す。ここでも、制御ONと制御OFFでほとんど変わらない特性が得られている。図33はマイク13が配置された制御点での制御効果を示す。制御ON時には約10dBの低減効果(=1/3に低減)が得られている。同様に、図34はマイク14が配置された制御点での制御効果を示す。制御ON時には約10dBの低減効果が得られている。図35はマイク15が配置された制御点での制御効果を示す。制御ON時には約10dBの低減効果が得られている。図36はマイク16が配置された制御点での制御効果を示す。制御ON時には約10dBの低減効果が得られている。図37はマイク17が配置された制御点での制御効果を示す。制御ON時には約10dBの低減効果が得られている。
以上から、制御スピーカ1〜7を用いて、マイク11〜17の位置において、TV内蔵の再生スピーカ10からの回折音を低減できることがわかる。実験では、マイク13〜17の位置において、60Hz付近〜500Hz付近の広帯域で回折音が低減されている。したがって、第3の関連技術である指向性スピーカでは困難であった低域での制御効果を得ることができる。また隣室との壁一面の振動を制御する第1及び第2の関連技術や、第3の関連技術である指向性スピーカと比べて、大変コンパクトな形状で、演算量も大きく削減可能である。また、TV9000に内蔵された再生スピーカ10から再生音を再生し、その周囲の制御スピーカ1〜7で制御する構成のため、TV9000そのものに手を加える必要はない。既に購入済みのTVに後付で制御スピーカとマイクを設置すれば、回折音を低減することが可能となる。この際、TVを設置する棚やラックに、制御スピーカとマイクを設置したものを予め用意しておくという方法も考えられる。すなわち、TVの製造元や型番などがわかれば、TVサイズや内蔵の再生スピーカの位置などが確定できるため、その条件に合わせたTV用の棚やラックが作製可能となる。したがって、ユーザーはTV購入時あるいは購入後にその専用ラックを購入すれば、手軽に且つ美観に優れた回折音低減装置を実現できる。
ところで、図30に示す実験では下方向の制御スピーカ8を削減したが、理想的には削減しない方が望ましい。但し、この実験でも良好な効果が得られているように、システムに適用する条件に応じて、効果に悪影響を与えない範囲で制御スピーカ数を削減することができる。
なお、実施の形態1及び2において、音響系模擬部の代わりに、スピーカとマイクを使用してもよい。音響系模擬部は、所定の位置に設置された再生スピーカ及び制御スピーカから再生された音の、各制御点における特性を求めるための構成部である。したがって、実際にスピーカとマイクを設置できる場合には、音響系模擬部は不要となる。
なお、ブロック図(図2〜9、図21〜29など)の各機能ブロックは典型的には集積回路であるLSIとして実現される。これらは個別に1チップ化されてもよいし、一部又は全てを含むように1チップ化されてもよい。
例えばメモリ以外の機能ブロックが1チップ化されていてもよい。
ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路又は汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。
さらには、半導体技術の進歩又は派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。バイオ技術の適応等が可能性としてありえる。
また、各機能ブロックのうち、符号化又は復号化の対象となるデータを格納する手段だけ1チップ化せずに別構成としてもよい。
以上、図面を参照してこの発明の実施の形態を説明したが、この発明は、図示した実施の形態のものに限定されない。図示した実施の形態に対して、この発明と同一の範囲において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
以上、図面を参照してこの発明の実施の形態を説明したが、この発明は、図示した実施の形態のものに限定されない。図示した実施の形態に対して、この発明と同一の範囲において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
本発明は、TVや音響機器などから再生される音声が、受聴者の居ない方向へ伝播しないように回折音を複数のスピーカで打ち消す回折音低減装置等に適用できる。
1、2、3、4、5、6、7、8、102、102A 制御スピーカ
10、101、101A 再生スピーカ
11、12、13、14、15、16、17、18 マイク
20 音源(測定音源)
21、22、23、24、25、26、104、104A、1001、1002、1003、1004、1005、1006、5001、5002、5003、5004、5005、5006 制御フィルタ
31、32、33、34、35、36、1011〜1016、1021〜1026、・・・、1061〜1066、3011〜3018、3021〜3028、・・・、3081〜3088、11011〜11018、11021〜11028、・・・、11081〜11088 Fxフィルタ
41、42、43、44、45、46、1111〜1116、1121〜1126、・・・、1161〜1166、5111、5112、・・・、5166、11111〜11118、11121〜11128、・・・、11181〜11188 LMS演算器
51、52、53、54、55、56 減算器
61、62、63、64、65、66、67、68、108、3100、3101、・・・、3155、6000、6001、6002、6003、6004、6005、6007、6008、6011、6012、6013、6014、6015、6017、6018 加算器(演算器)
100、100A 回折音低減装置
106、10000、11000、12000、13000、14000、15000 補正フィルタ
400 隣室
401、402、403 (評価用の)マイク
1000 制御部
1201、1202、1203、1204、1205、1206、5201、5202、5203、5204、5205、5206、11201、11202、11203、11204、11205、11206、11207、11208 位相反転器
2000 目標特性部
2001、2002、2003、2004、2005、2006、2007、2008 目標特性フィルタ
2101、2102、2103、2104、2105、2106、2107、2108 レベル調整器
2200 遅延器
3000 音響系模擬部
5000 ANC
5011〜5016、5021〜5026、・・・、5061〜5066 fxフィルタ
7000 遅延器
9000 TV
10001〜10008、11001〜11008、・・・、15001〜15008 回折音制御フィルタ
20000 スピーカアレイ
40001 遮音壁
40002 アクチュエータ
40003 振動センサ
40004 騒音センサ
40005 換算回路
40006 制御回路
50001 高透過損パネル
50002 セル
50003 アクチュエータ
50004 第1のセンサ手段
50005 第2のセンサ手段
50006 制御装置
60000 家
60001 壁
60002 TV
60003 スピーカ
60004、60005 人

Claims (9)

  1. 受聴者の位置及び受聴者の位置以外の位置に、複数の制御点を設け、前記制御点における音圧を制御する回折音低減装置であって、
    入力信号により示される特性を有する再生音を出力する再生スピーカと、
    前記再生音のうち受聴者の位置を除く複数の前記制御点の各々に到達した音である回折音の音圧を低減させるための制御音の特性を示す制御信号を再生する少なくとも2つの制御スピーカと、
    前記入力信号にフィルタ処理を施すことにより、前記制御信号を生成する制御フィルタとを備え、
    前記再生スピーカは、前記受聴者に対向するように配置され、
    前記制御スピーカの各々は、前記再生スピーカの周囲に、受聴者に対向することなく配置され、
    前記制御点は、前記再生スピーカおよび前記制御スピーカにそれぞれ対向するように配置され、
    前記制御フィルタは、前記回折音の音圧が、前記再生音のうち前記受聴者の位置に到達した音である直接音の音圧よりも、低減するように、前記制御信号を生成し、
    前記制御フィルタはさらに、前記入力信号を信号処理して、前記制御点のそれぞれにおいて目標とすべき前記再生音の特性を示す信号である目標信号を決定する目標特性決定ステップを含むフィルタ係数決定方法により決定されたフィルタ係数を有し、
    前記目標特性決定ステップにおいては、前記制御点ごとに対応づけられたレベル調整器と目標特性フィルタとを前記入力信号に適用することにより、前記目標信号を決定し、
    複数の前記目標特性フィルタのうち、第1の目標特性フィルタには、前記再生スピーカから前記受聴者の位置に配置された制御点までの伝達特性が設定され、前記第1の目標特性フィルタ以外の目標特性フィルタには、前記再生スピーカから前記受聴者の位置以外に配置された制御点までの伝達特性が設定され、
    前記レベル調整器のそれぞれは、設定値に応じて、前記入力信号の利得を調整する
    回折音低減装置。
  2. 前記少なくとも2つの制御スピーカのうちの1つと、前記再生スピーカとが同一のスピーカにより構成されており、
    前記制御フィルタは、
    前記直接音の音圧が、前記受聴者の位置の制御点において、前記制御信号を再生することなく前記再生スピーカによって前記入力信号がそのまま再生された場合における前記再生音の音圧と等しくなり、かつ、
    前記回折音の音圧が、前記受聴者の位置以外の位置における制御点において、前記制御信号を再生することなく前記再生スピーカによって前記入力信号がそのまま再生された場合よりも、所定量低減するように、
    前記入力信号に前記フィルタ処理を施す
    請求項1記載の回折音低減装置。
  3. 前記フィルタ係数決定方法はさらに、
    前記入力信号に、前記制御スピーカのそれぞれに対応づけられた制御フィルタを適用することにより、当該制御スピーカで再生されるべき前記制御信号を算出する制御信号算出ステップと、
    前記制御信号算出ステップにおいて算出された制御信号に基づいて、前記制御点のそれぞれにおける前記再生音の特性を示す信号である再生信号を算出する音響系模擬ステップと、
    前記目標特性決定ステップからの出力信号である前記目標信号と、音響系模擬ステップからの出力信号である前記再生信号とを合成して得られる誤差信号を対応する制御点ごとに算出する加算ステップと、
    前記加算ステップにおいて算出された前記誤差信号が所定の閾値以上の場合には、前記誤差信号がより小さくなるように前記制御フィルタの係数を更新し、
    前記誤差信号が所定の閾値未満の場合には、当該制御フィルタの係数を、前記制御フィルタが有すべき前記フィルタ係数として決定する判定ステップとを含む
    請求項1記載の回折音低減装置。
  4. 前記複数のレベル調整器のうち、前記第1の目標特性フィルタに対応するレベル調整器に設定された利得の設定値よりも、他の目標特性フィルタに対応するレベル調整器に設定された利得の設定値の方が小さい
    請求項1記載の回折音低減装置。
  5. 前記音響系模擬ステップにおいては、
    前記制御信号の各々について、当該制御信号に前記制御点のそれぞれに到達するまでの経路の伝達特性を示す音響系模擬フィルタを適用し、
    前記音響系模擬フィルタが適用された前記複数の制御信号を前記制御点毎に加算することにより、各制御点における再生信号を算出する
    請求項3記載の回折音低減装置。
  6. 前記判定ステップにおいては、
    前記入力信号に対して前記制御スピーカの各々から前記制御点の各々までの音の伝達特性を示す音響系模擬フィルタを適用し、
    前記誤差信号が所定の閾値以上の場合には、前記音響系模擬フィルタの出力信号と、前記誤差信号とに基づいて、次回に算出される誤差信号がより小さくなるように前記制御フィルタのフィルタ係数を更新する
    請求項3記載の回折音低減装置。
  7. さらに、前記入力信号を信号処理して、複数の目標信号Dnを出力する目標特性部と、
    前記入力信号を信号処理して、複数の制御信号Cnを出力する制御部と、
    前記制御部から出力された前記複数の制御信号Cnの各々を信号処理して、前記複数の制御信号Cnの各々に対応する再生信号Onを出力する音響系模擬部と、
    前記目標信号Dnのそれぞれと、当該目標信号Dnに対応する前記再生信号Onとを合成することにより、複数の誤差信号Enを出力する演算器とを備え、
    前記回折音低減装置は、前記複数の誤差信号を所定の閾値より小さくすることにより、前記制御フィルタの制御特性を、
    Cn=Dn/On
    として算出することにより、求める
    請求項1記載の回折音低減装置。
  8. 受聴者の位置及び受聴者の位置以外の位置に、複数の制御点を設け、前記制御点における音圧を制御する回折音低減装置であって、
    入力信号により示される特性を有する再生音を出力する再生スピーカと、
    前記再生音のうち受聴者の位置を除く複数の前記制御点の各々に到達した音である回折音の音圧を低減させるための制御音の特性を示す制御信号を再生する少なくとも2つの制御スピーカと、
    前記入力信号にフィルタ処理を施すことにより、前記制御信号を生成する制御フィルタと、
    前記制御フィルタの各々が出力する前記制御信号を入力とする補正フィルタと、
    加算器とを備え、
    前記再生スピーカは、前記受聴者に対向するように配置され、
    前記制御スピーカの各々は、前記再生スピーカの周囲に、受聴者に対向することなく配置され、
    前記制御点は、前記再生スピーカおよび前記制御スピーカにそれぞれ対向するように配置され、
    前記制御フィルタは、前記回折音の音圧が、前記再生音のうち前記受聴者の位置に到達した音である直接音の音圧よりも、低減するように、前記制御信号を生成し、
    前記再生スピーカは、前記少なくとも2つの制御スピーカとは異なるスピーカにより構成され、
    前記少なくとも2つの制御スピーカのうち、第1の制御スピーカは、その振動板が、前記受聴者に対向するように配置され、前記第1の制御スピーカ以外の制御スピーカは、前記再生スピーカの周囲に、前記受聴者に対向しないように配置され、
    前記補正フィルタは、当該補正フィルタが適用された前記制御信号を再生した制御音を前記受聴者の位置における前記再生音の特性に影響を与えないようなレベルまで低減するフィルタ係数を有し、
    前記加算器は、前記補正フィルタが適用された各制御信号を、対応する前記制御スピーカ毎に集約し、集約された制御信号を、対応する制御スピーカに出力する
    回折音低減装置。
  9. 入力信号により示される特性を有する再生音を出力する再生スピーカと、前記再生音のうち複数の制御点の各々に到達した音である回折音の音圧を低減させるための制御音の特性を示す制御信号を再生する少なくとも2つの制御スピーカと、前記入力信号にフィルタ処理を施すことにより、前記制御信号を生成する制御フィルタとを備える回折音低減装置による回折音低減方法であって、
    前記入力信号を信号処理して、複数の目標信号Dnを出力する目標特性算出ステップと、
    前記入力信号を信号処理して、複数の制御信号Cnを出力する制御信号算出ステップと、
    前記制御信号算出ステップにおいて出力された前記複数の制御信号Cnの各々を信号処理して、前記複数の制御信号Cnの各々に対応する再生信号Onを出力する音響系模擬ステップと、
    前記目標信号Dnのそれぞれと、当該目標信号Dnに対応する前記再生信号Onとを合成することにより、複数の誤差信号Enを出力する演算ステップと、
    前記複数の誤差信号を所定の閾値より小さくすることにより、前記制御フィルタの制御特性を、
    Cn=Dn/On
    として算出することにより求める、制御特性算出ステップとを含む
    回折音低減方法。
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