以下、本発明の一実施形態を図1〜図17に基づいて説明する。図1には、一実施形態に係るカラープリンタ2000の概略構成が示されている。
このカラープリンタ2000は、4色(ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー)を重ね合わせてフルカラーの画像を形成するタンデム方式の多色カラープリンタであり、光走査装置2010、4つの感光体ドラム(2030a、2030b、2030c、2030d)、4つのクリーニングユニット(2031a、2031b、2031c、2031d)、4つの帯電装置(2032a、2032b、2032c、2032d)、4つの現像ローラ(2033a、2033b、2033c、2033d)、4つのトナーカートリッジ(2034a、2034b、2034c、2034d)、転写ベルト2040、転写ローラ2042、定着装置2050、給紙コロ2054、レジストローラ対2056、排紙ローラ2058、給紙トレイ2060、排紙トレイ2070、通信制御装置2080、及び上記各部を統括的に制御するプリンタ制御装置2090などを備えている。
なお、ここでは、XYZ3次元直交座標系において、各感光体ドラムの長手方向に沿った方向をX軸方向、4つの感光体ドラムの配列方向に沿った方向をZ軸方向として説明する。
通信制御装置2080は、ネットワークなどを介した上位装置(例えばパソコン)との双方向の通信を制御する。
プリンタ制御装置2090は、CPU、該CPUにて解読可能なコードで記述されたプログラム及び該プログラムを実行する際に用いられる各種データが格納されているROM、作業用のメモリであるRAM、アナログデータをデジタルデータに変換するAD変換回路などを有している。そして、プリンタ制御装置2090は、通信制御装置2080を介して受信した上位装置からの多色の画像情報(ブラック画像情報、シアン画像情報、マゼンタ画像情報、イエロー画像情報)を光走査装置2010に通知する。
感光体ドラム2030a、帯電装置2032a、現像ローラ2033a、トナーカートリッジ2034a、及びクリーニングユニット2031aは、組として使用され、ブラックの画像を形成する画像形成ステーション(以下では、便宜上「Kステーション」ともいう)を構成する。
感光体ドラム2030b、帯電装置2032b、現像ローラ2033b、トナーカートリッジ2034b、及びクリーニングユニット2031bは、組として使用され、シアンの画像を形成する画像形成ステーション(以下では、便宜上「Cステーション」ともいう)を構成する。
感光体ドラム2030c、帯電装置2032c、現像ローラ2033c、トナーカートリッジ2034c、及びクリーニングユニット2031cは、組として使用され、マゼンタの画像を形成する画像形成ステーション(以下では、便宜上「Mステーション」ともいう)を構成する。
感光体ドラム2030d、帯電装置2032d、現像ローラ2033d、トナーカートリッジ2034d、及びクリーニングユニット2031dは、組として使用され、イエローの画像を形成する画像形成ステーション(以下では、便宜上「Yステーション」ともいう)を構成する。
各感光体ドラムはいずれも、その表面に感光層が形成されている。すなわち、各感光体ドラムの表面がそれぞれ被走査面である。なお、各感光体ドラムは、不図示の回転機構により、図1における面内で矢印方向に回転する。
各帯電装置は、対応する感光体ドラムの表面をそれぞれ均一に帯電させる。
光走査装置2010は、プリンタ制御装置2090からの多色の画像情報に基づいて色毎に変調された光束で、対応する帯電された感光体ドラムの表面を走査する。これにより、各感光体ドラムの表面では、光が照射された部分だけ電荷が消失し、画像情報に対応した潜像が各感光体ドラムの表面にそれぞれ形成される。ここで形成された潜像は、感光体ドラムの回転に伴って対応する現像装置の方向に移動する。なお、光走査装置の構成については後述する。
各現像ローラは、回転に伴って、対応するトナーカートリッジからのトナーが、その表面に薄く均一に塗布される。そして、各現像ローラの表面のトナーは、対応する感光体ドラムの表面に接すると、該表面における光が照射された部分にだけ移行し、そこに付着する。すなわち、各現像ローラは、対応する感光体ドラムの表面に形成された潜像にトナーを付着させて顕像化させる。ここでトナーが付着した像(トナー画像)は、感光体ドラムの回転に伴って転写ベルト2040の方向に移動する。
イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各トナー画像は、所定のタイミングで転写ベルト2040上に順次転写され、重ね合わされてカラー画像が形成される。
給紙トレイ2060には記録紙が格納されている。この給紙トレイ2060の近傍には給紙コロ2054が配置されており、該給紙コロ2054は、記録紙を給紙トレイ2060から1枚ずつ取り出し、レジストローラ対2056に搬送する。該レジストローラ対2056は、所定のタイミングで記録紙を転写ベルト2040と転写ローラ2042との間隙に向けて送り出す。これにより、転写ベルト2040上のカラー画像が記録紙に転写される。カラー画像が転写された記録紙は、定着装置2050に送られる。
定着装置2050では、熱と圧力とが記録紙に加えられ、これによってトナーが記録紙上に定着される。トナーが定着された記録紙は、排紙ローラ2058を介して排紙トレイ2070に送られ、排紙トレイ2070上に順次積み重ねられる。
各クリーニングユニットは、対応する感光体ドラムの表面に残ったトナー(残留トナー)を除去する。残留トナーが除去された感光体ドラムの表面は、再度対応する帯電装置に対向する位置に戻る。
次に、前記光走査装置2010の構成について説明する。
光走査装置2010は、一例として図2〜図5に示されるように、4つの光源(2200a、2200b、2200c、2200d)、4つのカップリングレンズ(2201a、2201b、2201c、2201d)、4つの開口板(2202a、2202b、2202c、2202d)、4つのシリンドリカルレンズ(2204a、2204b、2204c、2204d)、光偏向器2104、4つの走査レンズ(2105a、2105b、2105c、2105d)、6枚の折り返しミラー(2106a、2106b、2106c、2106d、2108b、2108c)、及び不図示の走査制御装置などを備えている。
なお、以下では、便宜上、主走査方向に対応する方向を「主走査対応方向」と略述し、副走査方向に対応する方向を「副走査対応方向」と略述する。
光源2200aとカップリングレンズ2201aと開口板2202aとシリンドリカルレンズ2204aと走査レンズ2105aと折り返しミラー2106aは、感光体ドラム2030aに潜像を形成するための光学部材である。
光源2200bとカップリングレンズ2201bと開口板2202bとシリンドリカルレンズ2204bと走査レンズ2105bと折り返しミラー2106bと折り返しミラー2108bは、感光体ドラム2030bに潜像を形成するための光学部材である。
光源2200cとカップリングレンズ2201cと開口板2202cとシリンドリカルレンズ2204cと走査レンズ2105cと折り返しミラー2106cと折り返しミラー2108cは、感光体ドラム2030cに潜像を形成するための光学部材である。
光源2200dとカップリングレンズ2201dと開口板2202dとシリンドリカルレンズ2204dと走査レンズ2105dと折り返しミラー2106dは、感光体ドラム2030dに潜像を形成するための光学部材である。
各カップリングレンズは、対応する光源から射出された光束の光路上に配置され、該光束を略平行光束とする。
各開口板は、開口部を有し、対応するカップリングレンズを介した光束を整形する。
各シリンドリカルレンズは、対応する開口板の開口部を通過した光束を、光偏向器2104の偏向反射面近傍にY軸方向に関して結像する。
光偏向器2104は、2段構造のポリゴンミラーを有している。各ポリゴンミラーは、4面の偏向反射面を有している。そして、1段目(下段)のポリゴンミラーではシリンドリカルレンズ2204aからの光束及びシリンドリカルレンズ2204dからの光束がそれぞれ偏向され、2段目(上段)のポリゴンミラーではシリンドリカルレンズ2204bからの光束及びシリンドリカルレンズ2204cからの光束がそれぞれ偏向されるように配置されている。なお、1段目のポリゴンミラー及び2段目のポリゴンミラーは、互いに位相が略45°ずれて回転し、書き込み走査は1段目と2段目とで交互に行われる。
光偏向器2104で偏向されたシリンドリカルレンズ2204aからの光束は、走査レンズ2105a、及び折り返しミラー2106aを介して、感光体ドラム2030aに照射され、光スポットが形成される。この光スポットは、光偏向器2104の回転に伴って感光体ドラム2030aの長手方向に移動する。
また、光偏向器2104で偏向されたシリンドリカルレンズ2204bからの光束は、走査レンズ2105b、及び2枚の折り返しミラー(2106b、2108b)を介して、感光体ドラム2030bに照射され、光スポットが形成される。この光スポットは、光偏向器2104の回転に伴って感光体ドラム2030bの長手方向に移動する。
また、光偏向器2104で偏向されたシリンドリカルレンズ2204cからの光束は、走査レンズ2105c、及び2枚の折り返しミラー(2106c、2108c)を介して、感光体ドラム2030cに照射され、光スポットが形成される。この光スポットは、光偏向器2104の回転に伴って感光体ドラム2030cの長手方向に移動する。
また、光偏向器2104で偏向されたシリンドリカルレンズ2204dからの光束は、走査レンズ2105d、及び折り返しミラー2106dを介して、感光体ドラム2030dに照射され、光スポットが形成される。この光スポットは、光偏向器2104の回転に伴って感光体ドラム2030dの長手方向に移動する。
各感光体ドラムにおける光スポットの移動方向が、「主走査方向」であり、感光体ドラムの回転方向が、「副走査方向」である。
光偏向器2104と各感光体ドラムとの間の光路上に配置される光学系は、走査光学系とも呼ばれている。
各光源は、一例として図6に示されるように、32個の発光部が2次元配列されている面発光レーザアレイ100を有している。ここでは、レーザ発振方向をz軸方向とし、z軸方向に直交する面内における互いに直交する2つの方向をx軸方向及びy軸方向とする。そして、x軸方向が主走査対応方向となり、y軸方向が副走査対応方向となるように設定されている。
32個の発光部は、図7に示されるように、全ての発光部を副走査対応方向に延びる仮想線上に正射影したときに、発光部間隔が等しく(図7では「d1」)なるように配置されている。なお、本明細書では、「発光部間隔」とは2つの発光部の中心間距離をいう。
ここでは、各発光部は、発振波長が780nm帯の垂直共振器型の面発光レーザ(Vertical Cavity Surface Emitting Laser:VCSEL)である。
各発光部は、図8及び図9に示されるように、基板101、バッファ層102、下部半導体DBR103、下部スペーサ層104、活性層105、上部スペーサ層106、上部半導体DBR107、コンタクト層109、上部電極113、下部電極114、及び誘電体層116などを有している。なお、図8は、1つの発光部の平面図であり、図9は、図8のA−A断面図である。
基板101は、表面が鏡面研磨面であり、図10(A)に示されるように、鏡面研磨面(主面)の法線方向が、結晶方位[1 0 0]方向に対して、結晶方位[1 1 1]A方向に向かって15度(θ=15度)傾斜したn−GaAs単結晶基板である。すなわち、基板101はいわゆる傾斜基板である。ここでは、図10(B)に示されるように、結晶方位[0 −1 1]方向が+x方向、結晶方位[0 1 −1]方向が−x方向となるように配置されている。
図9に戻り、バッファ層102は、基板101の+z側の面上に積層され、n−GaAsからなる層である。
下部半導体DBR103は、バッファ層102の+z側に積層され、n−AlAsからなる低屈折率層と、n−Al0.3Ga0.7Asからなる高屈折率層のペアを40.5ペア有している。各屈折率層の間には、電気抵抗を低減するため、一方の組成から他方の組成へ向かって組成を徐々に変化させた厚さ20nmの組成傾斜層が設けられている。そして、各屈折率層はいずれも、隣接する組成傾斜層の1/2を含んで、発振波長をλとするとλ/4の光学的厚さとなるように設定されている。なお、光学的厚さがλ/4のとき、その層の実際の厚さDは、D=λ/4n(但し、nはその層の媒質の屈折率)である。
下部スペーサ層104は、下部半導体DBR103の+z側に積層され、ノンドープの(Al0.1Ga0.9)0.5In0.5Pからなる層である。
活性層105は、下部スペーサ層104の+z側に積層され、Ga0.8In0.2As0.8P0.2/Ga0.5In0.5Pの3重量子井戸構造(TQW構造)の活性層である。量子井戸層は780nm帯の発振波長を得るために、GaInP混晶にAsを導入したものであり0.7%の圧縮歪みを有する。バリア層は、0.6%の引張歪みを導入することによってバンドギャップを大きくし、高いキャリア閉じ込めを実現するとともに、量子井戸層の歪み補償構造を形成している。
上部スペーサ層106は、活性層105の+z側に積層され、ノンドープの(Al0.1Ga0.9)0.5In0.5Pからなる層である。
下部スペーサ層104と活性層105と上部スペーサ層106とからなる部分は、共振器構造体とも呼ばれており、その厚さが1波長の光学的厚さとなるように設定されている。なお、活性層105は、高い誘導放出確率が得られるように、電界の定在波分布における腹に対応する位置である共振器構造体の中央に設けられている。
上部スペーサ層106と上部半導体DBR107との間に、p−Al0.5In0.5Pからなる半導体層H(図9では、図示省略)を1層有している。この半導体層Hは、屈折率が3.074で、λ/4の光学的厚さとなるように設定されている。
上部半導体DBR107は、半導体層Hの+z側に積層され、p−Al0.9Ga0.1Asからなる低屈折率層とp−Al0.3Ga0.7Asからなる高屈折率層のペアを29.5ペア有している。
上部半導体DBR107における半導体層Hに接している層は、低屈折率層(p−Al0.9Ga0.1As)である。該低屈折率層は、屈折率が3.074で、2λ/4の光学的厚さとなるように設定されている。
すなわち、半導体層Hと、上部半導体DBR107における半導体層Hに接している低屈折率層(p−Al0.9Ga0.1As)は、屈折率が同じであり、該2つの層は光学的には1つの層とみなすことができる。
上部半導体DBR107における半導体層Hに接している低屈折率層を除く各屈折率層はいずれも、λ/4の光学的厚さとなるように設定されている。
上部半導体DBR107における低屈折率層の1つには、p−AlAsからなる被選択酸化層が厚さ30nmで挿入されている。
この被選択酸化層の挿入位置は、電界の定在波分布において、活性層105から3番目となる節に対応する位置である。
コンタクト層109は、上部半導体DBR107の+z側に積層され、p−GaAsからなる。
なお、このように基板101上に複数の層が積層されたものを、以下では、便宜上「積層体」ともいう。
次に、面発光レーザアレイ100の製造方法について説明する。
(1)上記積層体を有機金属気相成長法(MOCVD法)あるいは分子線エピタキシャル成長法(MBE法)による結晶成長によって作成する。
ここでは、III族の原料には、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルガリウム(TMG)、トリメチルインジウム(TMI)を用い、V族の原料には、フォスフィン(PH3)、アルシン(AsH3)を用いている。また、p型ドーパントの原料には四臭化炭素(CBr4)、ジメチルジンク(DMZn)を用い、n型ドーパントの原料にはセレン化水素(H2Se)を用いている。
(2)積層体の表面に所望のメサ形状に対応する1辺が25μmの正方形状のレジストパターンを形成する。
(3)誘導結合型(ICP)ドライエッチング法で、上記レジストパターンをフォトマスクとして四角柱状のメサを形成する。ここでは、エッチングの底面は下部スペーサ層104中に位置するようにした。
(4)フォトマスクを除去する。
(5)積層体を水蒸気中で熱処理する。ここでは、メサの外周部から被選択酸化層108中のAlが選択的に酸化される。そして、メサの中央部に、Alの酸化層108aによって囲まれた酸化されていない領域108bを残留させる。これにより、発光部の駆動電流の経路をメサの中央部だけに制限する、酸化狭窄構造体が作成される。上記酸化されていない領域108bが電流通過領域(電流注入領域)である。ここでは、種々の予備実験の結果から、電流通過領域108bが所望の大きさとなるように、熱処理の条件(保持温度、保持時間等)を適切に選択している。
(6)積層体の表面に、分離用(チップ切り出し用)の溝を形成するためのレジストマスクを設ける。
(7)上述したレジストマスクをエッチングマスクとして、ドライエッチング法により分離用(チップ切り出し用)の溝を形成する。
(8)プラズマCVD法を用いて、SiNからなる保護層111を形成する。ここでは、保護層111の光学的厚さがλ/4となるようにした。具体的には、SiNの屈折率nが1.86、発振波長λが780nmであるため、実際の膜厚(=λ/4n)は約105nmに設定した。
(9)レーザ光の射出面となるメサ上部に、いわゆる窓開けを行うためのエッチングマスク(マスクMという)を作成する。ここでは、メサ上面の周囲、及びメサ上面の低反射率領域となる領域がエッチングされないようにマスクMを作成する。
(10)BHFにて保護層111をエッチングする。
(11)マスクMを除去する。上部電極113の開口部となる領域内に残っている保護層111が、前記誘電体層116である。この誘電体層116は、反射率を中心部の反射率よりも低くする機能を有している。
(12)メサ上部の光射出部となる領域(射出領域)に一辺10μmの正方形状のレジストパターンを形成し、p側の電極材料の蒸着を行なう。p側の電極材料としてはCr/AuZn/Auからなる多層膜、もしくはTi/Pt/Auからなる多層膜が用いられる。
(13)光射出部となる領域に蒸着された電極材料をリフトオフし、上部電極113を形成する。この上部電極113で囲まれた領域が射出領域である。
(14)基板101の裏側を所定の厚さ(例えば100μm程度)まで研磨した後、下部電極114を形成する(図9参照)。ここでは、下部電極114はAuGe/Ni/Auからなる多層膜である。
(15)アニールによって、上部電極113と下部電極114のオーミック導通をとる。これにより、メサは発光部となる。
(16)チップ毎に切断し、それぞれセラミックパッケージに実装する。
このように製造された面発光レーザアレイ100では、半導体層H(Al0.5In0.5P)と、上部半導体DBR107における半導体層Hに接している低屈折率層(Al0.9Ga0.1As)は、図11に示されるように屈折率が略同一となるため、これら2層は光学的には1層とみなすことができる。
この場合は、任意の位置にP/As界面を設定することが可能である。そして、図12に示されるように、界面における吸収が最小となる電界強度の節の位置にP/As界面を設定することができるため、高効率とすることができる。
また、P/As界面における価電子帯のエネルギー差は、図13における符号γで示される。これは、従来の(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P層とAl0.3Ga0.7As層を用いる場合の価電子帯のエネルギー差(図14における符号α参照)よりも小さくすることができる。そこで、素子抵抗を小さくすることができる。
ところで、面発光レーザにおいては、活性層で発生した光が共振器構造体を挟む上部半導体DBR及び下部半導体DBRの間で反射を繰り返すことによって増幅され、射出領域よりレーザ光として取り出されるため、下部半導体DBR〜共振器構造体〜上部半導体DBR内部の損失(光吸収)は最小限に抑制しなければならない。
光吸収の吸収源となるもののひとつに層中のキャリアが良く知られている。これに対しては特許文献1に示されているように、面発光レーザ内部の電界強度分布を考慮し、それが最小となる箇所(節)に選択的に高ドープしている。
半導体DBRの材料として、高屈折率層と低屈折率層の屈折率差を大きく設定できることからAlGaAs系材料が広く用いられている。活性層の材料としては、格子歪みを導入することで高利得化が可能で、且つAlを含まない材料を選択できることから(Al)GaInPAs系材料が望ましい。
しかしながら、AlGaAs系材料と(Al)GaInPAs系材料を組み合わせた場合、P/As界面において、成長雰囲気をAsH3+PH3とAsH3との間で切り替える必要がある。
その際、(Al)GaInPAs系材料もしくはAlGaAs系材料表面のP原子あるいはAs原子が脱離して格子欠陥が形成され、この格子欠陥もキャリアと同様に吸収源となりうる。
すなわち、電界強度が節の箇所に選択的に高ドープするのと同様に、P/As界面についても電界強度を節の箇所に設定するのが望ましい。
しかしながら、(Al)GaInPAs系材料と、AlGaAs系材料を接合する場合、価電子帯エネルギー差に起因する素子抵抗の増加についても配慮しなければならない。
(Al)GaInPAs系材料とAlGaAs系材料の接合面を電界強度の節の位置に設定する場合、定在波の位相反転を考慮すると、該接合面における(Al)GaInPAs系は低屈折率層、AlGaAs系材料は高屈折率層でなければならない(図15参照)。(Al)GaInPAs系材料を(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pとし、AlGaAs系材料をAl0.3Ga0.7Asとすると、価電子帯のエネルギー差が大きいため(図14参照)、素子抵抗が高くなる可能性がある。
一方、P/As界面の一側を(Al0.1Ga0.9)0.5In0.5Pからなる層とし、他側をAl0.9Ga0.1Asからなる層とした場合、該P/As界面での価電子帯のエネルギー差は、図16における符号βで表され、比較的エネルギー差が小さいため、素子抵抗に与える影響は小さい。
しかしながら、両者の屈折率を比較すると、図11から、(Al0.1Ga0.9)0.5In0.5Pの屈折率>Al0.9Ga0.1Asの屈折率であるため、(Al0.1Ga0.9)0.5In0.5Pからなる層を高屈折率層、Al0.9Ga0.1Asからなる層を低屈折率層と設定せざるを得ず、必然的に図17に示されるような構成になり、P/As界面は電界強度分布における腹の位置に設定され、該P/As界面に存在する格子欠陥により吸収が増加する可能性がある。
以上説明したように、本実施形態に係る面発光レーザアレイによると、各発光部は基板101、バッファ層102、下部半導体DBR103、共振器構造体、上部半導体DBR107、上部電極113、下部電極114、配線部材115、及び誘電体層116などを有している。
上部スペーサ層106と上部半導体DBR107との間に、p−Al0.5In0.5Pからなる半導体層Hが設けられている。この半導体層Hは、屈折率が3.074で、λ/4の光学的厚さとなるように設定されている。
上部半導体DBR107における半導体層Hに接している層は、p−Al0.9Ga0.1Asからなる低屈折率層である。該低屈折率層は、屈折率が3.074で、2λ/4の光学的厚さとなるように設定されている。
すなわち、半導体層H(p−Al0.5In0.5P)と上部半導体DBR107における半導体層Hに接している低屈折率層(p−Al0.9Ga0.1As)は、屈折率が同じであり、該2つの層は光学的には1つの層とみなすことができる。
この場合は、P/As界面が電界強度の節の位置に配置され、且つP/As界面に隣接する2つの層の価電子帯のエネルギー差が小さくなり、素子抵抗の上昇を招くことなく、発光効率を向上させることができる。
また、光走査装置2010によると、各光源が面発光レーザアレイ100を有しているため、各感光体ドラムの光走査を精度良く行うことができる。
カラープリンタ2000は、光走査装置2010を備えているため、結果として、高品質の画像を形成することができる。
ところで、面発光レーザアレイ100では、各発光部を副走査対応方向に延びる仮想線上に正射影したときの発光部間隔が等間隔d1であるので、点灯のタイミングを調整することで感光体ドラム上では副走査方向に等間隔で発光部が並んでいる場合と同様な構成と捉えることができる。
そして、例えば、上記間隔d2を2.65μm、光走査装置2010の光学系の倍率を2倍とすれば、4800dpi(ドット/インチ)の高密度書き込みができる。もちろん、主走査対応方向の発光部数を増加したり、副走査対応方向のピッチd2(図7参照)を狭くして間隔d1を更に小さくするアレイ配置としたり、光学系の倍率を下げる等を行えばより高密度化でき、より高品質の印刷が可能となる。なお、主走査方向の書き込み間隔は、発光部の点灯のタイミングで容易に制御できる。
また、この場合には、カラープリンタ2000では書きこみドット密度が上昇しても印刷速度を落とすことなく印刷することができる。また、同じ書きこみドット密度の場合には印刷速度を更に速くすることができる。
また、面発光レーザアレイ100を効率良く活用することで、寿命が向上するので、書き込みユニットもしくは光源ユニットの再利用が可能となる。
なお、上記実施形態では、半導体層H(p−Al0.5In0.5P)の光学的厚さがλ/4の場合について説明したが、これに限定されるものではなく、m1を自然数とすると、(2m1−1)×λ/4であれば良い。
また、上記実施形態では、上部半導体DBR107における半導体層Hに接する低屈折率層(p−Al0.9Ga0.1As)の光学的厚さが2λ/4の場合について説明したが、これに限定されるものではなく、m2を自然数とすると、m2×λ/2であれば良い。
また、上記実施形態では、半導体層Hがp−Al0.5In0.5Pからなる層であり、上部半導体DBR107における半導体層Hに接する低屈折率層がp−Al0.9Ga0.1Asからなる層の場合について説明したが、これに限定されるものではない。要するに、半導体層Hが、(Al1−aGaa)1−bInbPcAs1−c(0≦a≦1、b≠0、c≠0)からなる半導体層であり、上部半導体DBR107における半導体層Hに接する低屈折率層が、半導体層Hと同じ屈折率を有する、Al1−dGadAs(0≦d≦1)からなる低屈折率層であれば良い。
また、上記実施形態では、上部スペーサ層106と上部半導体DBR107との間に、半導体層Hのみが設けられる場合について説明したが、これに限定されるものではなく、上部スペーサ層106と上部半導体DBR107との間に、半導体層Hを低屈折率層とする半導体DBRが設けられても良い。
また、上記実施形態では、メサの横断面の外形形状が略正方形の場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、メサの横断面の外形形状を、円形、楕円形あるいは長方形など任意の形状とすることができる。
また、上記実施形態では、基板の主面の法線方向が、結晶方位[1 0 0]方向に対して、結晶方位[1 1 1]A方向に向かって傾斜している場合について説明したが、これに限定されるものではない。要するに、主面の法線方向が、結晶方位<1 0 0>の一の方向に対して、結晶方位<1 1 1>の一の方向に向かって傾斜している基板であれば良い。
また、上記実施形態では、各光源が面発光レーザアレイ100を有する場合について説明したが、これに限らず、各光源が面発光レーザアレイ100と同様にして作成され、発光部が1つの面発光レーザ素子を有していても良い。
また、上記実施形態では、発光部の発振波長が780nm帯の場合について説明したが、これに限定されるものではない。感光体の特性に応じて、発光部の発振波長を変更しても良い。
また、面発光レーザアレイ100は、画像形成装置以外の用途に用いることができる。その場合には、発振波長は、その用途に応じて、650nm帯、850nm帯、980nm帯、1.3μm帯、1.5μm帯等の波長帯であっても良い。
また、上記実施形態では、画像形成装置として多色のカラープリンタの場合について説明したが、これに限定されるものではなく、単色のプリンタであっても良い。
また、上記実施形態では、トナー画像を記録紙に転写する画像形成装置について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、レーザ光によって発色する媒体(例えば、用紙)に直接、レーザ光を照射する画像形成装置であっても良い。
また、像担持体として銀塩フィルムを用いた画像形成装置であっても良い。この場合には、光走査により銀塩フィルム上に潜像が形成され、この潜像は通常の銀塩写真プロセスにおける現像処理と同等の処理で可視化することができる。そして、通常の銀塩写真プロセスにおける焼付け処理と同等の処理で印画紙に転写することができる。このような画像形成装置は光製版装置や、CTスキャン画像等を描画する光描画装置として実施できる。