《第1の実施形態》
以下、本発明の第1の実施形態を図1〜図4に基づいて説明する。図1には、本発明の第1の実施形態に係る面発光レーザ素子100の概略構成が示されている。
この面発光レーザ素子100は、780nm帯の面発光レーザ素子であり、図1に示されるように、n−GaAs基板101上に、バッファー層102、下部半導体多層膜反射鏡(半導体分布ブラッグ反射器)103、共振器スペーサー層104、多重量子井戸活性層105、共振器スペーサー層106、上部半導体多層膜反射鏡107などの半導体層が、順次積層されている。なお、以下では、これら複数の半導体層が積層されているものを、便宜上「第1の積層体」ともいう。
上部半導体多層膜反射鏡107の途中には、p−AlAsからなる選択酸化層108が形成されている。さらに、積層体の最表面には、GaAsからなるコンタクト層(図示省略)が設けられている。
バッファー層102は、n−GaAsからなる層である。
下部半導体多層膜反射鏡103は、n−Al0.9Ga0.1Asからなる低屈折率層とn−Al0.3Ga0.7Asからなる高屈折率層を組として、該組を42.5組有している。すなわち、下部半導体多層膜反射鏡103では、低屈折率層と高屈折率層とが交互に積層されている。言い換えると、下部半導体多層膜反射鏡103は、1組を1周期とする42.5周期構造を有している。なお、低屈折率層と高屈折率層との間には、電気抵抗を低減するため、一方の組成から他方の組成に向かって組成を徐々に変化させた厚さ20nmの組成傾斜層(図示省略)が設けられている。低屈折率層及び高屈折率層の厚さは、いずれも組成傾斜層を含めて、ブラッグの多重反射の位相条件を満たすように、レーザ発振された光の位相変化がπ/2となる厚さに設定されている。
共振器スペーサー層104は、ノンドープAl0.6Ga0.4Asからなる層である。
多重量子井戸活性層105は、Al0.15Ga0.85As/Al0.6Ga0.4Asからなる層である。
共振器スペーサー層106は、ノンドープAl0.6Ga0.4Asからなる層である。
上部半導体多層膜反射鏡107は、p−Al0.9Ga0.1Asからなる低屈折率層とp−Al0.3Ga0.7Asからなる高屈折率層とを組として、該組を25組有している。すなわち、上部半導体多層膜反射鏡107では、低屈折率層と高屈折率層とが交互に積層されている。言い換えると、上部半導体多層膜反射鏡107は、1組を1周期とする25周期構造を有している。なお、低屈折率層と高屈折率層との間には、電気抵抗を低減するため、一方の組成から他方の組成へ向かって組成を徐々に変化させた厚さ20nmの組成傾斜層(図示省略)が設けられている。低屈折率層及び高屈折率層の厚さは、いずれも組成傾斜層を含めて、ブラッグの多重反射の位相条件を満たすように、レーザ発振された光の位相変化がπ/2となる厚さに設定されている。
また、共振器スペーサー層104と多重量子井戸活性層105と共振器スペーサー層106とからなる領域は、共振器領域と呼ばれており、この共振器領域における光の位相変化が2πとなるように設定されている。すなわち、共振器領域は、一波長共振器構造体を形成している。また、高い誘導放出確率を得るために、多重量子井戸活性層105は、一波長共振器構造体内における中央部の、発振光の定在波の腹に対応する位置に設けられている。
ここでは、各半導体多層膜反射鏡で生じる自由キャリアによる光吸収を低減するために、各半導体多層膜反射鏡中の電界強度に応じて、低屈折率層及び高屈折率層における不純物のドーピング濃度(以下、「不純物濃度」と略述する)を段階的に変化させている。つまり、電界強度が大きな共振器スペーサー層に近い領域の不純物濃度を低く設定し、電界強度が小さくなる方に向けて、段階的に不純物濃度が高くなるように設定されている。
ここでは、一例として図2に示されるように、上部半導体多層膜反射鏡107では、共振器スペーサー層106と接する1組からなる第1の上部層領域107aを除いた24組における低屈折率層と高屈折率層のp型不純物濃度を、8組毎に3段階に変化させている。具体的には、第1の上部層領域107a側の8組からなる第2の上部層領域107bでは、p型不純物濃度を5×1017cm−3、次の8組からなる第3の上部層領域107cでは、p型不純物濃度を1×1018cm−3、表面側の8組からなる第4の上部層領域107dでは、p型不純物濃度を1.5×1018cm−3としている。なお、ここでは、一例として前記選択酸化層108は、第2の上部層領域107bの途中に形成されている。
また、第1の上部層領域107aでは、低屈折率層及び高屈折率層のp型不純物濃度はいずれも1.5×1018cm−3であり、第2の上部層領域107bにおけるp型不純物濃度よりも高くなるように設定されている。
また、ここでは、一例として図2に示されるように、下部半導体多層膜反射鏡103も同様にn型不純物濃度を3段階に分けて変化させている。具体的には、共振器スペーサー層104側の14組からなる第1の下部層領域103aでは、n型不純物濃度を5×1017cm−3、中央の14組からなる第2の下部層領域103bでは、n型不純物濃度を1×1018cm−3、バッファー層102側の14.5組からなる第3の下部層領域103cでは、n型不純物濃度を3×1018cm−3としている。
このように構成される面発光レーザ素子100の共振器領域周辺のバンドエネルギーが図3に模式的に示されている。この図3におけるEcは伝導帯のエネルギーを示し、Evは価電子帯のエネルギーを示し、Efnは電子の擬フェルミエネルギーを示し、Efpは正孔の擬フェルミエネルギーを示している。
上部半導体多層膜反射鏡107のEvから測ったEfpのエネルギーは、正孔密度と対応があり、正孔密度が高い程Efpが大きくなる。なお、Ev及びEfpは正孔に対する擬フェルミエネルギーであるので、エネルギーの負方向が高エネルギー側となる。
ところで、一般的に面発光レーザ素子において、例えばキャリアとして電子に注目すると、n型半導体層から共振器領域(ここでは、活性層を含む共振器スペーサー領域)へ注入された電子は、ポテンシャルエネルギーの低い活性層部に溜まり、発光再結合を生じる。しかし、この際に活性層とバリア層(ここでは、共振器スペーサー層)との間のバンド不連続量が十分でないと、電子の一部は活性層から溢れ出る。溢れ出た電子は活性層を挟んでn型半導体層の反対側に位置するp型半導体層によるポテンシャル障壁によって共振器領域に閉じ込められる。
しかしながら、p型半導体層によるポテンシャル障壁の高さが十分でない場合には、溢れ出た電子は共振器領域からp型半導体層へリークしてしまう。このリークした電子はp型半導体層中で再結合して消滅してしまうので、レーザ発振には寄与しない無効電流成分となる。
電子のリークは、高注入とした場合や、環境温度が上昇した場合のように、電子の運動エネルギーが大きくなった場合に顕著に生じるので、ピーク出力や温度特性を低下させる要因になる。
以上はキャリアとして電子の場合について具体例に説明を行ったが、正孔の場合についても全く同様に議論ができる。
p型半導体層によって形成されるポテンシャル障壁の高さは、p型半導体層のバンドギャップエネルギーと、正孔の密度によって決定され、バンドギャップエネルギーが大きい程、かつ正孔密度が高い程、電子に対するポテンシャル障壁の高さは高くなる。つまり、共振器スペーサー層に接するp型半導体層の正孔密度が高い程、電子を効率良く共振器領域に閉じ込めることができる。
面発光レーザ素子100では、上部半導体多層膜反射鏡107の共振器領域に接する1組のp型不純物濃度を高く設定しているため、電子に対するポテンシャルエネルギーが従来(図4参照)に比べて△Eだけ高くなり、電子のリークを効果的に抑制することができる。
ところで、従来、面発光レーザ素子においては、共振器領域周辺の多層膜反射鏡の不純物濃度を高くすることは吸収損失の増加をもたらすと考えられているため、意図的に多層膜反射鏡の不純物濃度を高く設定するということは行われていなかった。本第1の実施形態に係る面発光レーザ素子100では、意図的に上部半導体多層膜反射鏡107の不純物濃度を高く設定しているが、低屈折率層と高屈折率層とからなる1組分のみの不純物濃度を高く設定しており、その厚さは、多層膜反射鏡への光の沁み出し距離(有効共振器長)に比べると薄いので、不純物濃度を高く設定したことによるスロープ効率への影響よりも、キャリアリークを低減したことによる効果の方を大きく得ることができる。
例えば、キャリアとして電子を例に挙げると、波長780nmを有する面発光レーザ素子において、p型Al0.9Ga0.1As/Al0.3Ga0.7Asからなる多層膜反射鏡の共振器周辺の不純物濃度を5×1017cm−3程度に低く設定した場合には、スロープ効率に関して大幅な向上が見られるものの、電子のリークに関しては大きな改善は見られなかった。
しかし、例えば多層膜反射鏡の共振器に接する低屈折率層と高屈折率層とからなる1組分の不純物濃度を1.5×1018cm−3〜2×1018cm−3程度と、周辺の多層膜反射鏡に対して高濃度に設定した場合には、電子のリークは殆ど抑制され、温度特性、ピーク出力が向上する効果を十分に確認することができた。また、更に多層膜反射鏡の共振器に接する2組の不純物濃度を周辺の多層膜反射鏡に対して高濃度に設定した場合でも、スロープ効率への影響は殆ど見られなかった。
以上のように、ここでは、多層膜反射鏡に不純物濃度を高くした領域を設けることによって、多層膜反射鏡へのキャリアのリークを抑制することが可能になり、スロープ効率を高く保ったまま、ピーク出力、温度特性を大幅に改善できる効果が得られた。
《製造方法》
次に、面発光レーザ素子100の製造方法について簡単に説明する。
(1)上記第1の積層体を有機金属気相成長法(MOCVD法)による結晶成長によって作成する。III族の原料には、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルガリウム(TMG)、トリメチルインジウム(TMI)を用い、V族の原料にはアルシン(AsH3)ガスを用いている。また、p型ドーパントの原料には四臭化炭素(CBr4)を用い、n型ドーパントの原料にはセレン化水素(H2Se)を用いている。
(2)公知の写真製版技術を用いて、第1の積層体の中央部に直径20μmの円形レジストパターンを形成した後、公知のドライエッチング技術を用いて、表面のコンタクト層からn型下部半導体多層膜反射鏡103までの各層を除去し、溝を形成する。
(3)加熱水蒸気雰囲気中で選択酸化層108を酸化して電流狭窄層を形成する。図1では、選択酸化層108において酸化された領域が黒く示されている。ここでは、選択酸化層108における非酸化領域(開口領域)の直径を3μmとしている。
(4)公知の気相化学堆積法(CVD法)を用いて、第1の積層体の全面にSiO2層109を形成する。
(5)光出射部となる領域とその周辺のSiO2層を除去する。
(6)絶縁性樹脂110のスピンコートを行い、溝に絶縁性樹脂110を埋め込む。なお、いわゆるメサ上面に塗布された絶縁性樹脂は除去する。
(7)光出射部となる領域に直径6μmの円形レジストパターンを形成し、p側電極材料の蒸着を行った後、リフトオフによって光出射部の電極材料を除去して、p側リング状電極111を形成する。
(8)n−GaAs基板101の裏面を研磨した後、n−GaAs基板101の裏面に蒸着によってn側電極112を形成し、アニールによって、両電極のオーミック導通をとる。
以上説明したように、本第1の実施形態に係る面発光レーザ素子100によると、上部半導体多層膜反射鏡107における共振器スペーサー層106に接する第1の上部層領域107aでは、第2の上部層領域107bよりもp型不純物濃度を高く設定している。これにより、共振器領域から上部半導体多層膜反射鏡107へのキャリアのリークが抑制され、その結果として、従来よりもピーク出力、及び温度特性を向上させることが可能となる。
ところで、2種のキャリアのうち、電子は正孔に対して有効質量が軽く、熱的にポテンシャル障壁を乗り越えやすく、また量子力学的にもトンネルし易いという性質がある。従って、本質的に電子は共振器領域からリークし易いという特性を有している。つまり、特に電子がp型半導体多層膜反射鏡へ顕著にリークすることが、面発光レーザ素子のピーク出力、温度特性を低下させる原因となっている。本第1の実施形態に係る面発光レーザ素子100では、p型半導体多層膜反射鏡(ここでは、上部半導体多層膜反射鏡107)において、不純物濃度を高く設定した領域を設けているため、電子のリークを抑制することができ、その結果として、スロープ効率を高く保ったまま、ピーク出力、温度特性を効果的に向上させることができる。
また、ポテンシャル障壁の高さは、半導体材料のバンドギャップエネルギーと、ドーピング濃度(キャリア濃度)によって決まるので、ドーピングを高濃度に設定した半導体層のバンドギャップエネルギーが大きい程、キャリアリークを抑制する効果が大きい。
近赤外から可視帯までの面発光レーザ素子はGaAsを基板とすることが可能であり、AlGaInP材料はGaAs基板に格子整合する材料の中で最もバンドギャップエネルギーが大きな材料である。また、AlGaInPの屈折率はAlGaAsと略同じ範囲であり、多層膜反射鏡の材料として用いることができる。
従って、ドーピングを高濃度に設定する半導体層にAlGaInP混晶を用いると、AlGaAs材料に比べて高いポテンシャル障壁を形成することができ、多層膜反射鏡へのキャリアのリークを更に効果的に抑制することができる。
なお、上記第1の実施形態において、一例として図5に示されるように、共振器スペーサー層と接する1組107aのうち、高屈折率層のp型不純物濃度を前記共振器スペーサー層106側の8組107bにおけるp型不純物濃度と同じ5×1017cm−3とし、低屈折率層のp型不純物濃度を1.5×1018cm−3としても良い。すなわち、低屈折率層のp型不純物濃度のみを共振器スペーサー層106側の8組107bにおけるp型不純物濃度よりも高くなるように設定しても良い。
同材料系からなる混晶半導体の屈折率とバンドギャップエネルギーには対応関係があり、多層膜反射鏡を構成する2種の層(低屈折率層と高屈折率層)のうち、低屈折率層の方がバンドギャップエネルギーが大きく、共振器領域にキャリアを閉じ込める作用が大きい。また、キャリアを閉じ込めるのに必要な厚さは、トンネルが生じない厚さ以上であれば良いので、30nm以上あれば十分である。赤外から可視帯までの面発光レーザ素子における多層膜反射鏡はこの要件を満たしている。
従って、多層膜反射鏡の1組のうち低屈折率層の不純物濃度のみを高く設定することによって、キャリアに対する閉じ込め効果を高く保ったまま、高屈折率層における吸収を低減することが可能である。
ところで、発振波長を短波とするためには、活性層にバンドギャップエネルギーの大きな半導体材料を用いる必要があり、一般に活性層とバリア層(ここでは、共振器スペーサー層)、及び多層膜反射鏡の低屈折率層との間に十分なバンドギャップエネルギー差を確保することが難しい。このため特に850nm帯よりも短波長帯の面発光レーザ素子では、元々キャリアリークが生じやすい傾向があり、多層膜反射鏡のドーピング濃度を低濃度に設定した場合には、顕著なキャリアリークを生じる。つまり、このような波長帯において本発明の構成を用いると、大きな特性の改善効果を得ることができる。
《第2の実施形態》
以下、本発明の第2の実施形態を図6及び図7に基づいて説明する。図6には、本発明の第2の実施形態に係る面発光レーザ素子200の概略構成が示されている。
この面発光レーザ素子200は、780nm帯の面発光レーザ素子であり、図6に示されるように、n−GaAs基板201上に、バッファー層202、下部半導体多層膜反射鏡203、共振器スペーサー層204、多重量子井戸活性層205、共振器スペーサー層206、上部半導体多層膜反射鏡207などの半導体層が、順次積層されている。なお、以下では、これら複数の半導体層が積層されているものを、便宜上「第2の積層体」ともいう。
上部半導体多層膜反射鏡207の途中には、p−AlAsからなる選択酸化層208が形成されている。さらに、第2の積層体の最表面には、GaAsからなるコンタクト層(図示省略)が設けられている。
バッファー層202は、n−GaAsからなる層である。
下部半導体多層膜反射鏡203は、n−Al0.9Ga0.1Asからなる低屈折率層とn−Al0.3Ga0.7Asからなる高屈折率層を組として、該組を40.5組有している。すなわち、下部半導体多層膜反射鏡203では、低屈折率層と高屈折率層とが交互に積層されている。言い換えると、下部半導体多層膜反射鏡203は、1組を1周期とする40.5周期構造を有している。なお、低屈折率層と高屈折率層との間には、電気抵抗を低減するため、一方の組成から他方の組成に向かって組成を徐々に変化させた厚さ20nmの組成傾斜層(図示省略)が設けられている。低屈折率層及び高屈折率層の厚さは、いずれも組成傾斜層を含めて、ブラッグの多重反射の位相条件を満たすように、レーザ発振された光の位相変化がπ/2となる厚さに設定されている。
共振器スペーサー層204は、ノンドープAl0.6Ga0.4Asからなる層である。
多重量子井戸活性層205は、Al0.15Ga0.85As/Al0.6Ga0.4Asからなる層である。
共振器スペーサー層206は、ノンドープAl0.6Ga0.4Asからなる層である。
上部半導体多層膜反射鏡207は、p−(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pからなる低屈折率層213とp−Al0.3Ga0.7Asからなる高屈折率層214とを有する第1の上部層領域207aと、p−Al0.9Ga0.1Asからなる低屈折率層とp−Al0.3Ga0.7Asからなる高屈折率層とを組として、該組を24組有している。
なお、低屈折率層213と高屈折率層214の間には、電気抵抗を低減するため、厚さ20nmのp−(Al0.1Ga0.9)0.5In0.5Pのヘテロスパイク緩衝層(図示省略)を設けている。また、p−Al0.9Ga0.1Asからなる低屈折率層とp−Al0.3Ga0.7Asからなる高屈折率層の間には、電気抵抗を低減するため、一方の組成から他方の組成に向かって組成を徐々に変化させた厚さ20nmの組成傾斜層(図示省略)が設けられている。低屈折率層及び高屈折率層の厚さは、いずれも組成傾斜層を含めて、ブラッグの多重反射の位相条件を満たすように、レーザ発振された光の位相変化がπ/2となる厚さに設定されている。
ここでは、各半導体多層膜反射鏡で生じる自由キャリアによる光吸収を低減するために、各半導体多層膜反射鏡中の電界強度に応じて、低屈折率層及び高屈折率層における不純物濃度を段階的に変化させている。つまり、電界強度が大きな共振器スペーサー層に近い領域の不純物濃度を低く設定し、電界強度が小さくなる方に向けて、段階的に不純物濃度が高くなるように設定されている。
ここでは、一例として図7に示されるように、上部半導体多層膜反射鏡207では、共振器スペーサー層106と接する第1の上部層領域207aを除いた24組における低屈折率層と高屈折率層のp型不純物濃度を、8組毎に3段階に変化させている。具体的には、第1の上部層領域207a側の8組からなる第2の上部層領域207bでは、p型不純物濃度を5×1017cm−3、次の8組からなる第3の上部層領域207cでは、p型不純物濃度を1×1018cm−3、表面側の8組からなる第4の上部層領域207dでは、p型不純物濃度を1.5×1018cm−3としている。なお、ここでは、一例として前記選択酸化層208は、第2の上部層領域207bの途中に形成されている。
また、第1の上部層領域207aにおける低屈折率層213では、p型不純物濃度を1.5×1018cm−3、第1の上部層領域207aにおける高屈折率層214では、p型不純物濃度を5×1017cm−3としている。すなわち、低屈折率層213のp型不純物濃度は、第2の上部層領域207bにおけるp型不純物濃度よりも高くなるように設定されている。
また、ここでは、一例として図7に示されるように、下部半導体多層膜反射鏡203も同様にn型不純物濃度を3段階に分けて変化させている。具体的には、共振器スペーサー層204側の14組からなる第1の下部層領域203aでは、n型不純物濃度を5×1017cm−3、中央の14組からなる第2の下部層領域203bでは、n型不純物濃度を1×1018cm−3、バッファー層102側の14.5組からなる第3の下部層領域203cでは、n型不純物濃度を3×1018cm−3としている。
《製造方法》
次に、面発光レーザ素子200の製造方法について簡単に説明する。
(1)上記第2の積層体を有機金属気相成長法(MOCVD法)による結晶成長によって作成する。III族の原料には、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルガリウム(TMG)、トリメチルインジウム(TMI)を用いている。AlGaInP層以外の層におけるV族の原料にはアルシン(AsH3)ガスを用い、AlGaInP層におけるV族の原料には、フォスフィン(PH3)ガスを用いている。また、n型ドーパントの原料にはセレン化水素(H2Se)を用い、p型ドーパント原料にはシクロペンタジフェニルマグネシウム(Cp2Mg)を用いている。
(2)公知の写真製版技術を用いて、第2の積層体の中央部に直径20μmの円形レジストパターンを形成した後、公知のドライエッチング技術を用いて、表面のコンタクト層からn型下部半導体多層膜反射鏡203までの各層を除去し、溝を形成する。
(3)加熱水蒸気雰囲気中で選択酸化層208を酸化して電流狭窄層を形成する。図6では、選択酸化層208において酸化された領域が黒く示されている。ここでは、選択酸化層208における非酸化領域(開口領域)の直径を3μmとしている。
(4)公知の気相化学堆積法(CVD法)を用いて、第2の積層体の全面にSiO2層209を形成する。
(5)光出射部となる領域とその周辺のSiO2層を除去する。
(6)絶縁性樹脂210のスピンコートを行い、溝に絶縁性樹脂210を埋め込む。なお、いわゆるメサ上面に塗布された絶縁性樹脂は除去する。
(7)光出射部となる領域に直径6μmの円形レジストパターンを形成し、p側電極材料の蒸着を行った後、リフトオフによって光出射部の電極材料を除去して、p側リング状電極211を形成する。
(8)n−GaAs基板201の裏面を研磨した後、n−GaAs基板201の裏面に蒸着によってn側電極212を形成し、アニールによって、両電極のオーミック導通をとる。
以上説明したように、本第2の実施形態に係る面発光レーザ素子200によると、上部半導体多層膜反射鏡207における共振器スペーサー層206に接する低屈折率層をバンドギャップエネルギーの大きなAlGaInP材料により形成し、このAlGaInP材料のp型不純物濃度を第2の上部層領域207bにおけるp型不純物濃度よりも高く設定している。これにより、共振器領域から上部半導体多層膜反射鏡207へのキャリアのリークが抑制され、その結果として、従来よりもピーク出力、及び温度特性を向上させることが可能となる。
なお、上記第1及び第2の実施形態では、発振(発光)波長が780nm帯の場合について説明したが、これに限らず、780nm帯以外の発振波長であっても良い。この場合には波長帯に応じて、活性層の材料、多層膜反射鏡の材料、積層される組(周期)数を適切に選ぶことにより、同様にして面発光レーザ素子を作製することが可能であり、また同様な効果を得ることができる。
《第3の実施形態》
以下、本発明の第3の実施形態を図8及び図9に基づいて説明する。図8には、本発明の第3の実施形態に係る面発光レーザ素子300の概略構成が示されている。
この面発光レーザ素子300は、850nm帯の面発光レーザ素子であり、図8に示されるように、n−GaAs基板301上に、バッファー層302、下部半導体多層膜反射鏡303、共振器スペーサー層304、多重量子井戸活性層305、共振器スペーサー層306、上部半導体多層膜反射鏡307などの半導体層が、順次積層されている。なお、以下では、これら複数の半導体層が積層されているものを、便宜上「第3の積層体」ともいう。
上部半導体多層膜反射鏡307の途中には、p−AlAsからなる選択酸化層308が形成されている。さらに、第3の積層体の最表面には、GaAsからなるコンタクト層(図示省略)が設けられている。
バッファー層302は、n−GaAsからなる層である。
下部半導体多層膜反射鏡303は、n−Al0.9Ga0.1Asからなる低屈折率層とn−Al0.15Ga0.85Asからなる高屈折率層を組として、該組を40.5組有している。すなわち、下部半導体多層膜反射鏡303では、低屈折率層と高屈折率層とが交互に積層されている。言い換えると、下部半導体多層膜反射鏡303は、1組を1周期とする40.5周期構造を有している。なお、低屈折率層と高屈折率層との間には、電気抵抗を低減するため、一方の組成から他方の組成に向かって組成を徐々に変化させた厚さ20nmの組成傾斜層(図示省略)が設けられている。低屈折率層及び高屈折率層の厚さは、いずれも組成傾斜層を含めて、ブラッグの多重反射の位相条件を満たすように、レーザ発振された光の位相変化がπ/2となる厚さに設定されている。
共振器スペーサー層304は、ノンドープAl0.15Ga0.85Asからなる層である。
多重量子井戸活性層305は、GaAs/Al0.15Ga0.85Asからなる層である。
共振器スペーサー層306は、ノンドープAl0.15Ga0.85Asからなる層である。
上部半導体多層膜反射鏡307は、p−Al0.9Ga0.1Asからなる低屈折率層とp−Al0.15Ga0.85Asからなる高屈折率層とを組として、該組を25組有している。
なお、低屈折率層と高屈折率層の間には、電気抵抗を低減するため、一方の組成から他方の組成に向かって組成を徐々に変化させた厚さ20nmの組成傾斜層(図示省略)が設けられている。低屈折率層及び高屈折率層の厚さは、いずれも組成傾斜層を含めて、ブラッグの多重反射の位相条件を満たすように、レーザ発振された光の位相変化がπ/2となる厚さに設定されている。
ここでは、各半導体多層膜反射鏡で生じる自由キャリアによる光吸収を低減するために、各半導体多層膜反射鏡中の電界強度に応じて、低屈折率層及び高屈折率層における不純物濃度を段階的に変化させている。つまり、電界強度が大きな共振器スペーサー層に近い領域の不純物濃度を低く設定し、電界強度が小さくなる方に向けて、段階的に不純物濃度が高くなるように設定されている。
ここでは、一例として図9に示されるように、上部半導体多層膜反射鏡307では、共振器スペーサー層306と接する1組からなる第1の上部層領域307aを除いた24組における低屈折率層と高屈折率層のp型不純物濃度を、8組毎に3段階に変化させている。具体的には、第1の上部層領域307a側の8組からなる第2の上部層領域307bでは、p型不純物濃度を5×1017cm−3、次の8組からなる第3の上部層領域307cでは、p型不純物濃度を1×1018cm−3、表面側の8組からなる第4の上部層領域307dでは、p型不純物濃度を1.5×1018cm−3としている。なお、ここでは、一例として前記選択酸化層308は、第2の上部層領域307bの途中に形成されている。
また、第1の上部層領域307aでは、低屈折率層及び高屈折率層のp型不純物濃度はいずれも1.5×1018cm−3であり、第2の上部層領域307bにおけるp型不純物濃度よりも高くなるように設定されている。
また、ここでは、一例として図9に示されるように、下部半導体多層膜反射鏡303では、共振器スペーサー層304と接する1組からなる第1の下部層領域303aを除いた39.5組における低屈折率層と高屈折率層のn型不純物濃度を3段階に分けて変化させている。具体的には、第1の下部層領域303a側の13組からなる第2の下部層領域303bでは、n型不純物濃度を5×1017cm−3、次の13組からなる第3の下部層領域303cでは、n型不純物濃度を1×1018cm−3、バッファー層302側の13.5組からなる第4の下部層領域303dでは、n型不純物濃度を3×1018cm−3としている。
また、第1の下部層領域303aでは、低屈折率層及び高屈折率層のn型不純物濃度はいずれも1.5×1018cm−3であり、第2の下部層領域303bにおけるn型不純物濃度よりも高くなるように設定されている。
《製造方法》
次に、面発光レーザ素子300の製造方法について簡単に説明する。
(1)上記第3の積層体を有機金属気相成長法(MOCVD法)による結晶成長によって作成する。III族の原料には、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルガリウム(TMG)、トリメチルインジウム(TMI)を用い、V族の原料にはアルシン(AsH3)ガスを用いている。また、p型ドーパントの原料には四臭化炭素(CBr4)を用い、n型ドーパントの原料にはセレン化水素(H2Se)を用いている。
(2)公知の写真製版技術を用いて、第3の積層体の中央部に直径20μmの円形レジストパターンを形成した後、公知のドライエッチング技術を用いて、表面のコンタクト層からn型下部半導体多層膜反射鏡303までの各層を除去し、溝を形成する。
(3)加熱水蒸気雰囲気中で選択酸化層308を酸化して電流狭窄層を形成する。図8では、選択酸化層308において酸化された領域が黒く示されている。ここでは、選択酸化層308における非酸化領域(開口領域)の直径を3μmとしている。
(4)公知の気相化学堆積法(CVD法)を用いて、第3の積層体の全面にSiO2層309を形成する。
(5)光出射部となる領域とその周辺のSiO2層を除去する。
(6)絶縁性樹脂310のスピンコートを行い、溝に絶縁性樹脂310を埋め込む。なお、いわゆるメサ上面に塗布された絶縁性樹脂は除去する。
(7)光出射部となる領域に直径6μmの円形レジストパターンを形成し、p側電極材料の蒸着を行った後、リフトオフによって光出射部の電極材料を除去して、p側リング状電極311を形成する。
(8)n−GaAs基板301の裏面を研磨した後、n−GaAs基板301の裏面に蒸着によってn側電極312を形成し、アニールによって、両電極のオーミック導通をとる。
以上説明したように、本第3の実施形態に係る面発光レーザ素子300によると、上部半導体多層膜反射鏡307における共振器スペーサー層306に接する第1の上部層領域307aでは、第2の上部層領域307bよりもp型不純物濃度を高く設定している。また、下部半導体多層膜反射鏡303における共振器スペーサー層306に接する第1の下部層領域307aでは、第2の下部層領域307bよりもn型不純物濃度を高く設定している。これにより、共振器領域から各半導体多層膜反射鏡へのキャリアのリークが抑制され、その結果として、従来よりもピーク出力、及び温度特性を向上させることが可能となる。
《第4の実施形態》
以下、本発明の第4の実施形態を図10及び図11に基づいて説明する。図10には、本発明の第4の実施形態に係る面発光レーザ素子400の概略構成が示されている。
この面発光レーザ素子400は、650nm帯の面発光レーザ素子であり、図10に示されるように、n−GaAs基板401上に、バッファー層402、下部半導体多層膜反射鏡403、共振器スペーサー層404、多重量子井戸活性層405、共振器スペーサー層406、上部半導体多層膜反射鏡407などの半導体層が、順次積層されている。なお、以下では、これら複数の半導体層が積層されているものを、便宜上「第4の積層体」ともいう。
上部半導体多層膜反射鏡407の途中には、p−AlAsからなる選択酸化層408が形成されている。さらに、第4の積層体の最表面には、GaAsからなるコンタクト層(図示省略)が設けられている。
バッファー層402は、n−GaAsからなる層である。
下部半導体多層膜反射鏡403は、n−Al0.5Ga0.5Asからなる高屈折率層413とn−(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pからなる低屈折率層414とを有する第1の下部層領域403aと、n−Al0.95Ga0.05Asからなる低屈折率層とn−Al0.5Ga0.5Asからなる高屈折率層を組として、該組を54.5組有している。
なお、低屈折率層414と高屈折率層413の間には、電気抵抗を低減するため、厚さ20nmのn−(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pヘテロスパイク緩衝層(図示省略)を設けている。また、n−Al0.95Ga0.05Asからなる低屈折率層とn−Al0.5Ga0.5Asからなる高屈折率層の間には、電気抵抗を低減するため、一方の組成から他方の組成に向かって組成を徐々に変化させた厚さ20nmの組成傾斜層(図示省略)が設けられている。低屈折率層及び高屈折率層の厚さは、いずれも組成傾斜層を含めて、ブラッグの多重反射の位相条件を満たすように、レーザ発振された光の位相変化がπ/2となる厚さに設定されている。
共振器スペーサー層404は、ノンドープ(Al0.6Ga0.4)0.5In0.5Pからなる層である。
多重量子井戸活性層405は、GaInP/(Al0.5Ga0.5)0.5In0.5Pからなる層である。
共振器スペーサー層406は、ノンドープ(Al0.6Ga0.4)0.5In0.5Pからなる層である。
上部半導体多層膜反射鏡407は、p−(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pからなる低屈折率層415とp−Al0.5Ga0.5Asからなる高屈折率層416とを有する第1の上部層領域407aと、p−Al0.95Ga0.05Asからなる低屈折率層とp−Al0.5Ga0.5Asからなる高屈折率層とを組として、該組を34組有している。
なお、低屈折率層415と高屈折率層416の間には、電気抵抗を低減するため、厚さ20nmのp−(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pのヘテロスパイク緩衝層(図示省略)を設けている。また、p−Al0.95Ga0.05Asからなる低屈折率層とp−Al0.5Ga0.5Asからなる高屈折率層の間には、電気抵抗を低減するため、一方の組成から他方の組成に向かって組成を徐々に変化させた厚さ20nmの組成傾斜層(図示省略)が設けられている。低屈折率層及び高屈折率層の厚さは、いずれも組成傾斜層を含めて、ブラッグの多重反射の位相条件を満たすように、レーザ発振された光の位相変化がπ/2となる厚さに設定されている。
ここでは、各半導体多層膜反射鏡で生じる自由キャリアによる光吸収を低減するために、各半導体多層膜反射鏡中の電界強度に応じて、低屈折率層及び高屈折率層における不純物濃度を段階的に変化させている。つまり、電界強度が大きな共振器スペーサー層に近い領域の不純物濃度を低く設定し、電界強度が小さくなる方に向けて、段階的に不純物濃度が高くなるように設定されている。
ここでは、一例として図11に示されるように、上部半導体多層膜反射鏡407では、共振器スペーサー層406と接する第1の上部層領域407aを除いた34組における低屈折率層と高屈折率層のp型不純物濃度を3段階に変化させている。具体的には、第1の上部層領域407a側の11組からなる第2の上部層領域407bでは、p型不純物濃度を5×1017cm−3、次の11組からなる第3の上部層領域407cでは、p型不純物濃度を1×1018cm−3、表面側の12組からなる第4の上部層領域407dでは、p型不純物濃度を1.5×1018cm−3としている。なお、ここでは、一例として前記選択酸化層408は、第2の上部層領域407bの途中に形成されている。
また、第1の上部層領域407aにおける低屈折率層415では、p型不純物濃度を1.5×1018cm−3、第1の上部層領域407aにおける高屈折率層416では、p型不純物濃度を5×1017cm−3としている。すなわち、低屈折率層415のp型不純物濃度は、第2の上部層領域407bにおけるp型不純物濃度よりも高くなるように設定されている。
また、ここでは、一例として図11に示されるように、下部半導体多層膜反射鏡403では、共振器スペーサー層404と接する1組からなる第1の下部層領域403aを除いた54.5組における低屈折率層と高屈折率層のn型不純物濃度を3段階に分けて変化させている。具体的には、第1の下部層領域403a側の18組からなる第2の下部層領域403bでは、n型不純物濃度を5×1017cm−3、次の18組からなる第3の下部層領域403cでは、n型不純物濃度を1×1018cm−3、バッファー層402側の18.5組からなる第4の下部層領域403dでは、n型不純物濃度を1.5×1018cm−3としている。
また、第1の下部層領域403aにおける低屈折率層414では、n型不純物濃度を1.5×1018cm−3、第1の下部層領域403aにおける高屈折率層413では、n型不純物濃度を5×1017cm−3としている。すなわち、低屈折率層414のn型不純物濃度は、第2の下部層領域403bにおけるn型不純物濃度よりも高くなるように設定されている。
《製造方法》
次に、面発光レーザ素子400の製造方法について簡単に説明する。
(1)上記第4の積層体を有機金属気相成長法(MOCVD法)による結晶成長によって作成する。III族の原料には、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルガリウム(TMG)、トリメチルインジウム(TMI)を用いている。AlGaInP層以外の層におけるV族の原料にはアルシン(AsH3)ガスを用い、AlGaInP層におけるV族の原料には、フォスフィン(PH3)ガスを用いている。また、n型ドーパントの原料にはセレン化水素(H2Se)を用い、p型ドーパント原料にはシクロペンタジフェニルマグネシウム(Cp2Mg)を用いている。
(2)公知の写真製版技術を用いて、第4の積層体の中央部に直径20μmの円形レジストパターンを形成した後、公知のドライエッチング技術を用いて、表面のコンタクト層からn型下部半導体多層膜反射鏡403までの各層を除去し、溝を形成する。
(3)加熱水蒸気雰囲気中で選択酸化層408を酸化して電流狭窄層を形成する。図10では、選択酸化層408において酸化された領域が黒く示されている。ここでは、選択酸化層408における非酸化領域(開口領域)の直径を3μmとしている。
(4)公知の気相化学堆積法(CVD法)を用いて、第4の積層体の全面にSiO2層409を形成する。
(5)光出射部となる領域とその周辺のSiO2層を除去する。
(6)絶縁性樹脂410のスピンコートを行い、溝に絶縁性樹脂410を埋め込む。なお、いわゆるメサ上面に塗布された絶縁性樹脂は除去する。
(7)光出射部となる領域に直径6μmの円形レジストパターンを形成し、p側電極材料の蒸着を行った後、リフトオフによって光出射部の電極材料を除去して、p側リング状電極411を形成する。
(8)n−GaAs基板401の裏面を研磨した後、n−GaAs基板401の裏面に蒸着によってn側電極412を形成し、アニールによって、両電極のオーミック導通をとる。
以上説明したように、本第4の実施形態に係る面発光レーザ素子400によると、上部半導体多層膜反射鏡407における共振器スペーサー層406に接する低屈折率層をバンドギャップエネルギーの大きなAlGaInP材料により形成し、このAlGaInP材料のp型不純物濃度を第2の上部層領域407bにおけるp型不純物濃度よりも高く設定している。また、下部半導体多層膜反射鏡403における共振器スペーサー層404に接する低屈折率層をバンドギャップエネルギーの大きなAlGaInP材料により形成し、このAlGaInP材料のn型不純物濃度を第2の下部層領域403bにおけるn型不純物濃度よりも高く設定している。これにより、共振器領域から各半導体多層膜反射鏡へのキャリアのリークが抑制され、その結果として、従来よりもピーク出力、及び温度特性を向上させることが可能となる。
なお、上記各実施形態では、面発光レーザ素子の構造として選択酸化構造を電流狭窄構造に用いる場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば水素イオン注入によって形成した高抵抗領域を電流狭窄構造に用いた構造であっても良い。
また、上記各実施形態では、結晶成長方法としてMOCVD法を用いる場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば分子線結晶成長法(MBE法)等のその他の結晶成長法を用いることもできる。
《面発光レーザアレイ》
図12には、本発明の一実施形態に係る面発光レーザアレイLAの概略構成が示されている。この面発光レーザアレイLAは、前記面発光レーザ素子100、前記面発光レーザ素子200、及び前記面発光レーザ素子300のうちのいずれかの面発光レーザ素子が複数個(ここでは、一例として24個)集積されている。従って、この面発光レーザアレイLAによれば、従来よりもピーク出力、及び温度特性を向上させることが可能となる。
なお、面発光レーザアレイLAは、2次元アレイだけでなく、1次元アレイであっても良い。
《レーザプリンタ》
図13には、本発明の一実施形態に係る画像形成装置としてのレーザプリンタ500の概略構成が示されている。
図13に示されるレーザプリンタ500は、光走査装置900、感光体ドラム901、帯電チャージャ902、現像ローラ903、トナーカートリッジ904、クリーニングブレード905、給紙トレイ906、給紙コロ907、レジストローラ対908、転写チャージャ911、除電ユニット914、定着ローラ909、排紙ローラ912、及び排紙トレイ910などを備えている。
帯電チャージャ902、現像ローラ903、転写チャージャ911、除電ユニット914及びクリーニングブレード905は、それぞれ感光体ドラム901の表面近傍に配置されている。そして、感光体ドラム901の回転方向に関して、帯電チャージャ902→現像ローラ903→転写チャージャ911→除電ユニット914→クリーニングブレード905の順に配置されている。
感光体ドラム901の表面には、感光層が形成されている。ここでは、感光体ドラム901は、図13における面内で時計回り(矢印方向)に回転するようになっている。
帯電チャージャ902は、感光体ドラム901の表面を均一に帯電させる。
光走査装置900は、帯電チャージャ902で帯電された感光体ドラム901の表面に、上位装置(例えばパソコン)からの画像情報に基づいて変調された光を照射する。これにより、感光体ドラム901の表面では、画像情報に対応した潜像が感光体ドラム901の表面に形成される。ここで形成された潜像は、感光体ドラム901の回転に伴って現像ローラ903の方向に移動する。なお、この光走査装置900の構成については後述する。
トナーカートリッジ904にはトナーが格納されており、該トナーは現像ローラ903に供給される。
現像ローラ903は、感光体ドラム901の表面に形成された潜像にトナーカートリッジ904から供給されたトナーを付着させて画像情報を顕像化させる。ここでトナーが付着された潜像は、感光体ドラム901の回転に伴って転写チャージャ911の方向に移動する。
給紙トレイ906には記録紙913が格納されている。この給紙トレイ906の近傍には給紙コロ907が配置されており、該給紙コロ907は、記録紙913を給紙トレイ906から1枚ずつ取り出し、レジストローラ対908に搬送する。該レジストローラ対908は、転写ローラ911の近傍に配置され、給紙コロ907によって取り出された記録紙913を一旦保持するとともに、該記録紙913を感光体ドラム901の回転に合わせて感光体ドラム901と転写チャージャ911との間隙に向けて送り出す。
転写チャージャ911には、感光体ドラム901の表面上のトナーを電気的に記録紙913に引きつけるために、トナーとは逆極性の電圧が印加されている。この電圧により、感光体ドラム901の表面の潜像が記録紙913に転写される。ここで転写された記録紙913は、定着ローラ909に送られる。
この定着ローラ909では、熱と圧力とが記録紙913に加えられ、これによってトナーが記録紙913上に定着される。ここで定着された記録紙913は、排紙ローラ912を介して排紙トレイ910に送られ、排紙トレイ910上に順次スタックされる。
除電ユニット914は、感光体ドラム901の表面を除電する。
クリーニングブレード905は、感光体ドラム901の表面に残ったトナー(残留トナー)を除去する。なお、除去された残留トナーは、再度利用されるようになっている。残留トナーが除去された感光体ドラム901の表面は、再度帯電チャージャ902の位置に戻る。
《光走査装置》
次に、前記光走査装置900の構成及び作用について図14を用いて説明する。
この光走査装置900は、前記面発光レーザ素子100、前記面発光レーザ素子200、及び前記面発光レーザ素子300のうちのいずれかの面発光レーザ素子を含む光源11、カップリングレンズ12、シリンドリカルレンズ13、ポリゴンミラー14、fθレンズ15、トロイダルレンズ16及び上記各部を統括的に制御する不図示の主制御装置を備えている。
前記カップリングレンズ12は、光源11から出射された光ビームを略平行光に整形する。
前記シリンドリカルレンズ13は、カップリングレンズ12を透過した光ビームをポリゴンミラー14の反射面に集光する。
前記ポリゴンミラー14は、高さの低い正六角柱状部材からなり、側面には6面の偏向面が形成されている。そして、不図示の回転機構により、図14に示される矢印の方向に一定の角速度で回転されている。したがって、光源11から出射され、シリンドリカルレンズ13によってポリゴンミラー14の偏向面に集光された光ビームは、ポリゴンミラー14の回転により一定の角速度で偏向される。
前記fθレンズ15は、ポリゴンミラー14からの光ビームの入射角に比例した像高をもち、ポリゴンミラー14により一定の角速度で偏向される光ビームの像面を、主走査方向に対して等速移動させる。
前記トロイダルレンズ16は、fθレンズ15を透過した光ビームを感光体ドラム901の表面上に結像する。
以上説明したように、本実施形態に係る光走査装置900によると、光源11は前記面発光レーザ素子100、前記面発光レーザ素子200、及び前記面発光レーザ素子300のうちのいずれかの面発光レーザ素子を含んでいるため、感光体ドラム901の表面上を安定して走査することが可能となる。
また、本実施形態に係るレーザプリンタ500によると、前記面発光レーザ素子100、前記面発光レーザ素子200、及び前記面発光レーザ素子300のうちのいずれかの面発光レーザ素子を含む光走査装置900を備えているため、高精細な画像を安定して形成することが可能となる。
なお、上記実施形態に係る光走査装置900において、前記光源11は前記面発光レーザアレイLAを含んでいても良い。この場合には、同時に複数の走査を行うことができ、その結果、レーザプリンタ500では高速に画像を形成することができる。
また、上記実施形態では、画像形成装置としてレーザプリンタ500の場合について説明したが、これに限定されるものではない。要するに、前記面発光レーザ素子100、前記面発光レーザ素子200、及び前記面発光レーザ素子300のうちのいずれかの面発光レーザ素子、又は前記面発光レーザアレイLAを有する画像形成装置であれば、高精細な画像を安定して形成することが可能となる。
また、カラー画像を形成する画像形成装置であっても、カラー画像に対応した光走査装置を用いることにより、高精細な画像を高速度で形成することが可能となる。
また、画像形成装置として、カラー画像に対応し、例えばブラック(K)用の感光体ドラム、シアン(C)用の感光体ドラム、マゼンダ(M)用の感光体ドラム、イエロー(Y)用の感光体ドラムのように複数の感光体ドラムを備えるタンデムカラー機であっても良い。
《光通信システム》
図15には、本発明の一実施形態に係る光通信システム1000の概略構成が示されている。
図15に示される光通信システム1000は、機器1と機器2との間を、光ファイバアレイを用いて接続したものである。送信側である機器1には、前記面発光レーザ素子100、前記面発光レーザ素子200、及び前記面発光レーザ素子300のうちのいずれかの面発光レーザ素子が1次元に複数集積されている面発光レーザアレイと、該面発光レーザアレイの駆動回路とを含む面発光レーザアレイモジュールが設けられている。また、受信側である機器2には、受光素子が1次元に複数集積されているPDアレイと、該PDアレイの出力信号を増幅及び整形する信号処理回路とを含むフォトダイオードアレイモジュールが設けられている。
以上説明したように、本実施形態に係る光通信システム1000によると、前記面発光レーザ素子100、前記面発光レーザ素子200、及び前記面発光レーザ素子300のうちのいずれかの面発光レーザ素子を用いているため、安定した光通信を行うことが可能となる。
なお、上記実施形態に係る光通信システム1000は、面発光レーザアレイを用いる場合について説明したが、前記面発光レーザ素子200、及び前記面発光レーザ素子300のうちのいずれかの単一の面発光レーザ素子を用いても良い。また、機器間の光通信だけでなく、ボード間、チップ間、及びチップ内の光通信に応用することも可能である。
100…面発光レーザ素子、101…n−GaAs基板、102…バッファー層、103…下部半導体多層膜反射鏡、104…共振器スペーサー層、105…多重量子井戸活性層、106…共振器スペーサー層、107…上部半導体多層膜反射鏡、200…面発光レーザ素子、201…n−GaAs基板、202…バッファー層、203…下部半導体多層膜反射鏡、204…共振器スペーサー層、205…多重量子井戸活性層、206…共振器スペーサー層、207…上部半導体多層膜反射鏡、300…面発光レーザ素子、301…n−GaAs基板、302…バッファー層、303…下部半導体多層膜反射鏡、304…共振器スペーサー層、305…多重量子井戸活性層、306…共振器スペーサー層、307…上部半導体多層膜反射鏡、400…面発光レーザ素子、401…n−GaAs基板、402…バッファー層、403…下部半導体多層膜反射鏡、404…共振器スペーサー層、405…多重量子井戸活性層、406…共振器スペーサー層、407…上部半導体多層膜反射鏡、500…レーザプリンタ、900…光走査装置、1000…光通信システム。