JP5782671B2 - 撥水性離型薄膜形成方法 - Google Patents
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基材上に離型層としてフッ素化合物を形成させるもの、又はフッ素樹脂そのものを離型層として使用するもの(特許文献2、3)があり、フッ素化合物自体の材料価格が高いことに加え、焼却時に有害なフッ化ガスが発生するといった問題や、外の基材と積層することが難しく、複合材料の作成が難しいものである。
また、ポリオレフィンを使用して離型性を発揮させたもの(特許文献4、5)があり、オレフィン系の材料は低価格で加工性にも優れる一方、耐熱性に劣るため、あまり高温での成型には使用できないものである。このようにいろいろと問題があるものであった。
蒸着法の場合、極めて薄い膜が得られるため、組み合わせる基材の物性、例えば表面形状やヤング率、厚みといった機能を保持したまま離型性を付加できるといったメリットがある。また、薄膜のため、離型層にフッ素材料を使用しても、焼却時のフッ化物の発生量は極めて少ないものとなる。
例えば、常圧下グロー放電プラズマによる大気圧プラズマ中にフッ素ガスを添加して表面処理する方法により離型性を付与するもの(特許文献6)があるが、大気圧プラズマは大量の成膜ガスを使用するため、ヘリウムやフッ素化合物ガスなど高価なガスを使用する場合は工業的に不利となる。また、大面積化した場合、放電の制御と均一性を保持することが難しい。
基材上に環状のフッ素化芳香族化合物を使用して、フッ素含有ダイヤモンドライクカーボン薄膜を積層させる方法(特許文献8)を提案しているものもある。離型性に加え、硬度に優れる薄膜が得られるメリットがあるが、主な成膜材料が高価なフッ素化芳香族化合物であるため、大面積化した場合は工業的には不利である。また、比較的融点の低いプラスチック材料に高温下で蒸着した場合、基材の変形、低分子量物質のブリードにより蒸着膜に欠陥が生じる場合がある。
しかし、酸素ガスと有機珪素化合物との反応により有機珪素化合物中のCH3基及び又はC2H5基とが反応し、メチル基やエチル基が消失したり、中間的な反応生成物(例えば、CH3OH、HCHOなど)が生成されたり、材料自体あるいは酸素が排気されたりするなど、化学式どおりにならず、思いどおりの性能の膜を形成するまでに至っていなかった。
さらに、PE−CVD法はプラスチック基材、特に耐熱性の低い材料や一般の物理蒸着では蒸着困難な低表面エネルギーの材料にも強固に密着した膜を形成可能であるから、任意のプラスチック材料を選択し、透明な撥水膜を形成させることが可能である。これにより、求められる機械物性やコストに合わせて種々の基材を選択することができることとなり、設計自由度が極めて高い製造方法として利用できるメリットがある。
さらに本発明の方法において、CVD法の反応条件として、反応原料が有機珪素化合物のみであり、ガス雰囲気は希ガス等の酸素原子を含まない不活性ガス又は希ガスと希ガス以外の不活性ガス、例えば窒素を加えるだけのガス組成物のみであるので、CVD蒸着条件のみを制御対象とする単純な系であり、所望の表面状態(撥水性、離型性、接触角、剥離強度など)を有する蒸着膜を、制御可能な蒸着条件を制御するだけで確実に形成できる。また、蒸着膜の厚み、適用幅等も基材の搬送速度などを制御することで所望に応じて変化させることができる。
その上、本発明の方法によれば、例えば、表面凹凸の基材を使用すれば、基材と同様の表面に凹凸のある撥水性離型積層フィルム又はシートも作成可能となり、多種多様な製品を作り出すことができる。
有機珪素化合物をPE−CVD法により無酸素雰囲気下で珪素蒸着膜を形成した場合、有機珪素化合物中の炭素含有量が大きい膜が形成可能であり、エチル基(−CH2−CH3)、メチル基(−CH3)が末端として残り、Si−OH基が少なくなることで、極めて低い表面自由エネルギーをとることとなり疎水性の膜を得ることができる。
そして、本発明の方法による有機珪素化合物の蒸着膜は、有機成分を含有する有機珪素
化合物の蒸着膜であり有機無機系薄膜(ハイブリッド)といえるもので、経時変化や温湿度変化に強く、表面状態が安定した膜が形成でき、また、巻き取り加工が可能であり、大面積かつ安価に作成可能である。さらに、本発明の有機珪素化合物の蒸着膜自体の毒性もなく、リサイクル可能であり、燃焼による廃棄を行っても有害ガスがほとんど発生しないというメリットがある。
本発明は、本発明の撥水性離型薄膜形成方法によれば、撥水性炭素含有有機珪素化合物の連続蒸着膜の厚みがナノメートルレベルからマイクロメートルレベルまで正確に任意の膜厚レベルで制御して形成することが可能であり、離型性が維持でき、かつ転移性もほとんどなく、しかも、撥水性をも制御可能である安定的に連続蒸着膜を形成することができる。
また、本発明の離型積層フィルム又はシートにおいては、離型層に求められる離型性及び撥水性に加えて、省資源、省エネあるいは廃棄処理をも考慮し、基材フィルムと離型層との間に化学結合が形成され、優れた密着性が発揮されるものとするため、CVD法により有機珪素化合物の連続蒸着膜を形成することから、ハロゲン系元素を含有せず、被離型材と離型層との剥離力が小さく、基材フィルムと離型層とは密着性に優れ、かつ剥離しにくく、離型層の離型性を長期に維持できるものである。
本発明にかかる撥水性炭素含有有機珪素化合物蒸着膜を有する撥水性離型積層フィルム及び撥水性薄膜形成方法についてその層構成の一例を例示して図面を用いて説明すると、図1は、本発明にかかる撥水性炭素含有有機珪素化合物の蒸着膜を有する撥水性離型積層フィルムについてその層構成の一例を示す概略的断面図である。
蒸着膜2aである撥水性離型層を形成するプラズマ化学気相成長法は、例えば、図2に示すようなプラズマ化学気相成長蒸着装置を用い、真空チャンバ内で基材フィルムをプラズマ化学気相成長する雰囲気下に順次送り出し、巻き取り式のプラズマ化学気相成長方式を適用し、連続的に撥水性離型薄膜形成することができるものである。
本発明で用いる基材フィルムは又はシートは、用途に応じ、基材フィルム又はシートに求められる物性、性能に適合するプラスチック材料を選択し、かつその表面粗さ、基材の厚み、表面凹凸形状など用途に応じた基材性状を設定、選択することにより決まるものである。
さらに、例えば、テンター方式、あるいは、チューブラ方式等を利用して1軸ないし2軸延伸処理してもよい。
本発明における一般的な添加剤としては、離型積層フィルム又はシートの基材として必要な機能を維持するため、例えば、滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、帯電防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、染料、顔料等の着色剤等を使用することができる。
本発明の方法では、ガス組成物の供給量を変更するだけで形成される有機珪素化合物の連続蒸着膜中に、有機珪素化合物に起因する炭素原子を有する有機成分を含有し、かつ、Si−C結合の含有量を調整してなる均一な撥水性を有する離型層を形成することができ、本発明にかかる撥水性離型積層フィルム又はシートを確実に簡単に製造することができる。
有機珪素化合物の連続蒸着膜層に含有する化合物としては、特に、CH3部位を持つハイドロカ−ボンを基本構造とするものを多く含有するものが撥水性離型層として好ましいものである。
本発明の方法では、形成される有機珪素化合物の連続蒸着膜中に、ガス組成物の供給量を任意に変更するだけで有機珪素化合物に起因する炭素含有の有機成分を確実に含有し、かつSi−C結合の含有量が所定値をとることができる均一で十分な撥水性を有する離型層を形成することができ、また本発明にかかる優れた撥水性離型積層フィルム又はシートを製造することができる。
本発明においては、有機珪素化合物として、特に、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(TMDSO)、テトラエトキシシラン(TEOS)又はヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)を原料として使用することが、その取り扱い性、形成された有機珪素化合物の蒸着膜の撥水性等の特性から、特に、好ましい。
したがって、ガス組成物は、上記のモノマー材料のほかのガス成分として、通常の蒸着法において行っているような酸素ガスを供給することを止め、無酸素状態にする必要がある。また、蒸着法で通常使用される酸化性を持つガス、例えばオゾンガスや笑気ガス(N2O)などの使用も止めることが必要である。撥水性は、CH3基及び/又はC2H5基の存在量で制御可能であり、酸素供給源がガス成分の有機珪素化合物中の分子内酸素原子含有量のみの制御で可能となる。
キャリア−ガスとして、アルゴンガスまたはヘリウムガス等の希ガス、又は窒素ガス、あるいはそれらの混合ガスなどの不活性ガスを含有させることができる。
さらに、プラスチック基材にプラズマ化学気相成長を適用する方法としては、一般的には、プラズマ発生装置内でロール状のプラスチック基材を巻き取りながら、あるいはプラズマ発生装置内をプラスチック基材が通過することにより、プラスチック基材上にプラズマ化学気相成長させ、有機珪素化合物の連続蒸着膜を形成し、撥水性離型薄膜を形成する方法及び撥水性離型積層フィルム又はシートを製造することができる。
具体例を挙げると、CH32部位を持つハイドロカ−ボンを挙げることができる。上記以外でも蒸着過程の条件等を変化させることにより、有機珪素化合物の連続蒸着膜層中に含有される有機成分の種類、量等を変化させることができる。
有機成分の含有量は、原料となる蒸着モノマーの有機珪素化合物により変わってくると考えて差し支えなく、撥水性及び離型性を容易に制御できることになる。炭素含有有機珪素化合物の蒸着膜における炭素を含有する密度及び平面的な広がりの密度分布を有機珪素化合物の分子構造から予測し、制御することも期待できる。一般的には、有機成分の含有量が0.1〜80%位、好ましくは、5〜60%位が望ましいものである。含有率が、0.1%未満であると、有機珪素化合物の連続蒸着膜層の離型性が低下し、あるいは、その耐衝撃性、延展性、柔軟性等が不十分となり、曲げ等により、擦り傷、クラック等が発生し易く、その安定性を維持することが困難になり、また、80%を越えると、離型性、蒸着膜の密着性も低下して好ましくない。
また、蒸着膜が撥水性を発揮するためには、少なくとも10Å以上の撥水性コーティング膜の厚みが必要である。撥水性コーティング膜の厚みが10Å未満だと連続した蒸着膜として存在しなくなる。
本発明においては、プラズマ化学気相成長装置11の真空チャンバ12内に配置された巻き出しロール13から基材1を繰り出し、該基材1は補助ロール14を介して所定の速度で冷却・電極ドラム15周面上に搬送する。ガス供給装置16、17及び原料揮発供給装置18等から酸素ガス、不活性ガス、有機珪素化合物の蒸着用モノマーガス等を供給し、蒸着用混合ガス組成物を調製しながら原料供給ノズル19を通して真空チャンバ12内に該蒸着用混合ガス組成物を導入し、上記冷却・電極ドラム15の周面上に搬送された基材1の上に、グロー放電プラズマ20によって発生したプラズマを照射して、有機珪素化合物の連続蒸着膜層を成膜化する。なお、冷却・電極ドラム15は、真空チャンバ12の外に配置されている電源21から所定の電力を印加する。また、冷却・電極ドラム15の近傍には、マグネット22を配置してプラズマの発生を促進している。
そして、有機珪素化合物の連続蒸着膜の層を形成した基材1は、所定の巻き取りスピードで補助ロール23を介して巻き取りロール24に巻き取って、本発明にかかる有機珪素化合物の連続蒸着膜層をプラズマ化学気相成長法により形成した基材とするものである。なお、図中、25は真空ポンプを表す。
上記の例示は、プラズマ化学気相成長法の一例を示すものであり、これによって本発明は限定されるものではないことは言うまでもないことである。
図示しないが、本発明においては、有機珪素化合物の連続蒸着膜層としては、有機珪素化合物の連続蒸着膜層の1層だけではなく、その2層あるいはそれ以上を積層した多層膜の状態でもよく、また、使用する有機珪素化合物も1種または2種以上の混合物で使用し、また、異種の材質で混合した有機珪素化合物の連続蒸着膜層を構成することもできる。
可撓性に富む連続蒸着膜層となる。また、プラズマにより基材1の表面が清浄化され、基材1の表面に極性基やフリ−ラジカル等が発生するので、形成される有機珪素化合物の連続蒸着膜層と基材1との結合が形成され、密着性が高いものとなるという利点を有する。従って、有機珪素化合物の連続蒸着膜層は、基材との密着性に優れ、更に、膜厚の均一性も高い。また、有機珪素酸化物の蒸着膜は真空中で成膜化することからその表面に塵埃等が付着することはなく、有機珪素化合物基本骨格のSi−O結合が連鎖して蒸着膜を形成することから、分子鎖中に均一にSi−C結合が配置され、均一な撥水性及び離型性を有する優れた特性を有する蒸着膜が形成されるものである。
また、CVD法により有機珪素化合物の連続蒸着膜を形成することから基材フィルムとの密着性に優れかつナノオーダーの膜厚みで優れた離型性を有する離型積層フィルム又はシートが得られることから、塗工型の離型積層フィルム又はシートに見られるような離型層の製品への転移が起きず、製品の後処理、製品の品質管理などの面で優れ、歩留まりも向上し、かつ撥水性離型積層フィルム又はシートの使用期間が長くなり、製造コストも低減できる。
本発明における実施例は、下記測定方法を用いて各種測定を行い、評価した。以下に実施例の物性値の測定方法及び評価方法を説明する。
(1)炭素含有量の測定
X線光電子分析装置(島津製作所製ESCA3400)を使用し、最表面から深さ方向に3.0nmイオンエッチングし、エッチングされた離型層を構成する有機珪素化合物の蒸着膜の元素分析から炭素含有率をC/Si比により算出した。
製造した撥水性離型積層フィルム又はシートの撥水性離型層表面の撥水性を評価するため、作成した撥水性離型積層フィルム又はシートの表面に対する水の接触角及びジヨードメタンの接触角を、接触角試験機(協和界面科学株式会社製:CA−DT型)装置を用いて、異なる場所で5回測定を実施し、5回の平均値を以て各接触角の測定値を求めた。JISにおける濡れ張力として、JIS K 6768に定義された濡れ指示薬による方法でも測定したが、微量なメチル基及び/又はエチル基の含有量の評価をするには精度的に不十分であった。
試料調製:製造した撥水離型性積層フィルム(12μm)の離型層側と貼り合わせ用基
材として50μm厚未延伸ポリエチレンフィルム(出光ユニテック製LS−722CN)のコロナ放電処理面とを、ウレタン系接着剤として、酢酸エチル:ロックペイント製アドロックRU−77:脂肪族イソシアネート(ロックペイント製:H−7)=30:10:1を乾燥後の塗布量が4.0g/m2となるようにコート(4μm)して貼り合わせ、剥離強度試験としてORIENTIC TENSILON RTC−1310Aを用い、試験片として15mm巾に切り出した積送品を剥離速度50mm/minにてT字剥離を行い、剥離強度を測定した。
(実施例1)
基材として、厚さ12μの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製の「P60」)の片面にコロナ処理を施したものを用い、該2軸延伸ポリエステルフィルムを巻取り式PE−CVD法蒸着装置の繰り出し側に、コロナ処理面が被蒸着面となるように設置し、その後、該基材フィルムを巻き出し、巻上げ張力を1.4N/mに設定し、巻き取り式PE−CVD法蒸着装置の容器を密閉し、排気ポンプを稼動させて減圧するとともに、蒸着ドラムの冷却装置の出口側温度を0℃に冷却した。
装置内圧力をキャパシタンスマノメーターにより測定し、0.5Paに到達した段階で、蒸着モノマーとしてヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)を採用し、HMDSOは常温で液体状態であるので、液体状態で流量を計量し、その供給ラインの流量を1600sccm(standard cc/min、1atm、0℃あるいは、25℃など一定温度で規格化されたsccmを意味する。) に、また、装置内の雰囲気ガスとしてヘリウムを用い、その供給ラインの流量を800sccmに、それぞれ設定し、PE−CVD法蒸着装置の真空チャンバ内へ供給し、PE−CVD法蒸着装置の容器内の圧力を5.0Paに調整した。
上記のとおりPE−CVD法蒸着装置を設定し、蒸着装置の動作が安定化した後、下記PE−CVD法の蒸着条件として、印加電圧:40KHzの交流電源8kW、フィルムの搬送速度:30m/min、成膜圧力:5.0Pa、基材保持温度:0℃で、ヘキサメチレンジシロキサンを蒸着原料としたプラズマ化学気相成長を二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムのコロナ放電処理面に施し、厚さ10nmの有機珪素化合物の蒸着膜を成膜し、炭素含有有機珪素化合物の蒸着膜を有する撥水性離型積層フィルムを製造した後、基材フィルムの搬送を停止させ、捲き取り部の撥水性離型積層フィルムを回収し、所定の物性測定を実施した。
(蒸着条件)
基材: 二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(東レ(株)製の「P60」)
蒸着面: コロナ放電処理
蒸着材料: ヘキサメチレンジシロキサン(HMDSO)
雰囲気ガス: Heガス
導入ガス比: HMDSO:He=1600:800[sccm]
巻き取り型PE−CVD装置
印加電圧: 40KHz交流電源、8kW
フィルムの搬送速度: L/S=30m/min
成膜圧力: 5.0[Pa]
基材保持温度: 0℃
前記蒸着材料としてHMDSOの2量体のもの、雰囲気ガスとして窒素ガス、導入ガス比をTEOS:N2=800:800[sccm]としたこと以外は実施例1と同様にして、プラズマ化学気相成長による有機珪素化合物の蒸着膜の成膜条件を下記のとおり設定して、炭素含有有機珪素化合物の蒸着膜を有する撥水性離型積層フィルムを得た。
(蒸着条件)
基材: 二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(東レ(株)製の「P60」)
蒸着面: コロナ放電処理
蒸着材料: ヘキサメチレンジシロキサン(HMDSO)の2量体
雰囲気ガス: 窒素ガス
導入ガス比: HMDSO(2量体):He=800:800[sccm]
巻き取り型PE−CVD装置
印加電圧: 40KHz交流電源、8kW
フィルムの搬送速度: L/S=30m/min
成膜圧力: 5.0[Pa]
基材保持温度: 0℃
前記蒸着材料としてテトラエトキシシラン、導入ガス比をTEOS:He=1600:1600[sccm]としたこと以外は実施例1と同様にして、プラズマ化学気相成長による有機珪素化合物の蒸着膜の成膜条件を下記のとおり設定し、炭素含有有機珪素化合物の蒸着膜を有する撥水性離型積層フィルムを得た。
(蒸着条件)
基材:二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(東レ(株)製の「P60」)
蒸着面: コロナ放電処理
蒸着材料: テトラエトキシシラン(TEOS)
雰囲気ガス: Heガス
導入ガス比: TEOS:He=1600:1600[sccm]
巻き取り型PE−CVD装置
印加電圧: 40KHz交流電源、8kW
フィルムの搬送速度: L/S=30m/min
成膜圧力: 5.0[Pa]
基材保持温度: 0℃
プラズマ化学気相成長膜が成膜される基材フィルムの基材保持温度を100℃としたこと以外は実施例1と同様にして、プラズマ化学気相成長による有機珪素化合物の蒸着膜の成膜条件を下記のとおり設定し、有機珪素化合物の蒸着を行い、有機珪素化合物の蒸着膜を有する積層フィルムを得た。
(蒸着条件)
基材: 二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(東レ(株)製の「P60」)
蒸着面: コロナ放電処理
蒸着材料: ヘキサメチレンジシロキサン(HMDSO)
雰囲気ガス: Heガス
導入ガス比: HMDSO:He=1600:800[sccm]
巻き取り型PE−CVD装置
印加電圧: 40KHz交流電源、8kW
フィルムの搬送速度: L/S=30m/min
成膜圧力: 5.0[Pa]
基材保持温度: 100℃
前記蒸着材料として、ヘキサメチレンジシロキサンと酸素ガスの混合ガスに、雰囲気ガスとして、ヘリウムガスと酸素ガスの混合ガスを、それぞれ供給し、その導入ガス比をHMDSO:O2:He:O2=800:800:800:100[sccm]とし、酸素過剰状態にしたこと以外は実施例1と同様にして、プラズマ化学気相成長による有機珪素化合物の蒸着膜の成膜条件を下記のとおり設定し、有機珪素化合物の蒸着を行い有機珪素化合物
の蒸着膜を有する積層フィルムを得た。
(蒸着条件)
基材: 二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(東レ(株)製の「P60」)
蒸着面: コロナ放電処理
蒸着材料: ヘキサメチレンジシロキサン(HMDSO)+酸素ガス
雰囲気ガス: Heガス+酸素ガス
導入ガス比: (HMDSO:O2):(He:O2)=800:800:800:100[sccm]
巻き取り型PE−CVD装置
印加電圧: 40KHz交流電源、8kW
フィルムの搬送速度: L/S=30m/min
成膜圧力: 5.0[Pa]
基材保持温度: 0℃
前記蒸着材料として、ヘキサメチレンジシロキサンと酸素ガスの混合ガスに、雰囲気ガスとして、ヘリウムガスと酸素ガスの混合ガスをそれぞれ供給し、その導入ガス比をHMDSO:O2:He:O2=800:2700:800:100[sccm]とし、比較例2よりさらに酸素過剰状態にしたこと以外は実施例1と同様にして、プラズマ化学気相成長による有機珪素化合物の蒸着膜の成膜条件を下記のとおり設定し、有機珪素化合物の蒸着を行い、有機珪素化合物の蒸着膜を有する積層フィルムを得た。
(蒸着条件)
基材: 二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(東レ(株)製の「P60」)
蒸着面: コロナ放電処理
蒸着材料: ヘキサメチレンジシロキサン(HMDSO)+酸素ガス
雰囲気ガス: Heガス+酸素ガス
導入ガス比: (HMDSO:O2):(He:O2)=800:2700:800:100[sccm]
巻き取り型PE−CVD装置
印加電圧: 40KHz交流電源、8kW
フィルムの搬送速度: L/S=30m/min
成膜圧力: 5.0[Pa]
基材保持温度: 0℃
水接触角及び剥離強度
実施例と比較例と比較して、無酸素雰囲気の条件下の方が優れた撥水性及び離型性を示す蒸着膜が得られ、酸素が過剰な雰囲気であるほど撥水性、離型性が低下することがわかる。また、蒸着時の有機珪素化合物の濃度は、実施例1と3から特に関係しないものと思われる。また、実施例1又は3と実施例2の比較及び比較例に見られる有機珪素化合物のメチル基、エチル基の種類、それらの1分子中の濃度、配置などが変わると、撥水性の程度が変わるものと思われる。有機珪素化合物中のメチル基、エチル基などの有機成分の存在量が多くなる(C/Si比が大きくなる)と、メチル基やエチル基の疎水性基が増え、表面自由エネルギーが低下することに関係しているためであると考えられ、有機珪素化合物の種類により撥水性の制御が容易に行えるものと思われる。また、無酸素雰囲気下では有機珪素化合物の種類により剥離強度に差が出てくることも明らかとなり、十分な離型性を有するものであるので、撥水性の制御の容易さと併せ、安定した撥水性離型性の蒸着膜が形成できることが期待される。また、実施例1と比較例1を比較することで基材保持温度により撥水性及び離型性の面で明らかに大きな影響がみられ、基材フィルムのガラス転移温度以下の寸法安定な条件下で蒸着膜を形成することが均一でかつ均質な撥水性離型層を得るため必要であることが分かる。
1:基材
2(2a):離型層、有機成分含有有機珪素酸化物蒸着膜
11:プラズマ化学気相成長装置
12:真空チャンバ
13:巻き出しロール
14、23:補助ロール
15:冷却・電極ドラム
16、17:ガス供給装置
18:原料揮発供給装置
19:原料供給ノズル
20:グロー放電プラズマ
21:電源
22:マグネット
24:巻き取りロール
25:真空ポンプ
Claims (3)
- プラズマ化学気相成長法(PE-CVD法)によりプラスチック基材上に炭素含有有機珪素化合物膜を形成させてなる撥水性離型積層フィルムにおける撥水性離型薄膜形成方法において、
分子内にSi−O結合を含有する有機珪素化合物を蒸着原料とし、酸素を含まないガス雰囲気下、プラスチック基材をTg以下に冷却保持した状態で前記有機珪素化合物ガスをプラズマ化学気相成長させ、撥水性を有する炭素含有有機珪素化合物膜をプラスチック基材上に成膜することを特徴とする撥水性離型薄膜形成方法。 - 酸素を含まないガス雰囲気が、希ガス又は希ガス以外の不活性ガスの存在するガス雰囲気下であることを特徴とする請求項1に記載の撥水性離型薄膜形成方法。
- 炭素含有有機珪素化合物膜表面に対する水の接触角が90°以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の撥水性離型薄膜形成方法。
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