以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
(第1実施形態)
図1〜図3は、本発明に係る燃料供給システムの第1実施形態を示している。なお、本実施形態は、本発明を車両用の内燃機関の燃料供給システムに適用したものである。また、この燃料供給システムは、燃料タンク内にサブタンクを設け、そのサブタンク内に燃料ポンプ等を配したものであり、エンジンで遂次消費される燃料消費量分だけサブタンク内に燃料を導入する燃料移送手段として図示しない公知のジェットポンプを有している。
まず、その燃料供給システムの構成について説明する。
図1に示すように、本実施形態の燃料供給システムは、エンジン1(燃料消費部)で消費される燃料、例えばガソリンを貯留する燃料タンク2と、その燃料タンク2のサブタンク2a(以下、単に燃料タンク2という)内に貯留された燃料をエンジン1の複数のインジェクタ3(内燃機関の燃料噴射部、燃料消費部)に圧送・供給する燃料圧送機構10と、この燃料圧送機構10からインジェクタ3に供給される燃料を導入して予め設定されたシステム圧P1に調圧するとともに、そのシステム圧P1を複数の設定圧のうち任意の1つの設定圧に切り換えることができるプレッシャレギュレータ20(可変燃圧調整弁)と、プレッシャレギュレータ20の調圧特性を3方電磁弁45によって切換え操作することができる設定圧切換操作機構40(操作手段)と、を備えている。
エンジン1は、自動車に搭載される多気筒の内燃機関、例えば4サイクルガソリンエンジンであり、このエンジン1の複数の気筒1cに対応して設けられたインジェクタ3は、例えばその噴孔側の端部3aを各気筒1cに対応する吸気ポート1a内に露出している。また、燃料圧送機構10からの燃料は、デリバリーパイプ4を介して各インジェクタ3に分配されるようになっている。
燃料圧送機構10は、燃料タンク2内の燃料を汲み上げるとともに加圧して吐出する吐出量可変の燃料ポンプユニット11と、燃料ポンプユニット11の吸入口側で異物の吸入を阻止するサクションフィルタ12と、燃料ポンプユニット11の吐出口側で吐出燃料中の異物を除去する燃料フィルタ13と、その燃料フィルタ13の上流側または下流側に位置するチェック弁14(逆止弁)と、を含んで構成されている。
燃料ポンプユニット11は、詳細を図示しないが、例えばポンプ作動用の羽根車を有する燃料ポンプ11pと、その燃料ポンプ11pを回転駆動する内蔵直流モータであるポンプ駆動モータ11mとを有している。この燃料ポンプユニット11は、そのポンプ駆動モータ11mへの通電を後述するECU(電子制御ユニット)51により制御されることで駆動および停止されるようになっている。
また、燃料ポンプユニット11は、燃料ポンプ11pの回転により燃料タンク2内から燃料を汲み上げ加圧して吐出することができるとともに、ポンプ駆動モータ11mの供給電圧および負荷トルクに応じて燃料ポンプ11pの回転速度[rpm]や回転トルクを変化させることで、その単位時間当りの吐出量や吐出圧を変化させることができるようになっている。
チェック弁14は、燃料ポンプユニット11からインジェクタ3側への燃料供給方向に開弁する一方、インジェクタ3側から燃料ポンプユニット11側への燃料の逆流方向には閉弁し、加圧された供給燃料の逆流を阻止するようになっている。
図2に示すように、プレッシャレギュレータ20は、燃料が導入される流体導入口21aおよびその燃料が排出される流体排出口21bを有するハウジング21を備えており、このハウジング21は一対の凹状のハウジング部材18、19をそれらの外周部で例えばかしめ結合(詳細図示せず)して形成されている。
ハウジング21の内部には、ハウジング21の内部を2室に区画する隔壁状の調圧部材22が設けられている。この調圧部材22は、ハウジング21との間に流体導入口21aに連通する調圧室23を形成する隔壁部24と、調圧室23内の燃料圧に応じた開度で調圧室23を流体排出口21bに連通させる開弁方向に変位する可動弁体部25とを一体化したものであり、隔壁部24はその一面側で調圧室23内の燃料圧を常時受圧するようになっている。調圧部材22の隔壁部24は、また、その他面側でハウジング21との間に調圧室23側に背圧を付与する背圧室26を形成しており、その背圧室26内には、調圧部材22の可動弁体部25を閉弁方向に付勢する圧縮コイルばね27(弾性部材)が設けられている。また、調圧部材22と共に背圧室26を形成する他方のハウジング部材19には、少なくとも1つの大気圧導入穴19aが形成されている。
調圧部材22の隔壁部24は、具体的には、例えば基布材料層に燃料に対し劣化し難いゴム層を一体的に接着した可撓性のダイヤフラムで構成されており、調圧部材22の可動弁体部25は、隔壁部24の中央部に支持された例えば金属製の円板状の弁体プレートで構成されている。
一方、ハウジング21の内部には、調圧室23の内部で調圧部材22の可動弁体部25に対向するように第1弁座部31および第2弁座部32が同心に配置されており、第1弁座部31および第2弁座部32は、互いに径が異なり同軸に配置された外側筒状部材35および内側筒状部材36によって構成されている。ここで、第1弁座部31はその内周側に流体排出口21bに連通する排出通路31hを形成しており、第2弁座部32は、その内周側で第1弁座部31との間に、ハウジング21の操作圧給排口21cに連通する操作圧給排通路32hを形成している。
プレッシャレギュレータ20のハウジング21、調圧部材22および外側筒状部材35は、燃料ポンプユニット11から吐出された燃料を径方向外側の流体導入口21aから導入して隔壁部24にその燃料圧を受圧させる環状の導入側通路37(第1燃料通路)を形成している。また、第1弁座部31の内側の排出通路31hは、調圧室23から流体排出口21bを通して燃料タンク2内に戻される燃料を通すリターン通路(第2燃料通路)となっており、操作圧給排通路32hは、燃料圧送機構10で加圧された燃料を設定圧の切換え操作圧の燃料として操作圧給排口21cを通して調圧室23側に導入したりその操作圧を操作圧給排口21cを通して燃料タンク2内に解放したりすることができるようになっている。
また、ハウジング21の流体導入口21aは、燃料圧送機構10のチェック弁14より下流側の回路部分である燃料通路15に分岐通路15aを介して接続されており、ハウジング21の操作圧給排口21cは、3方電磁弁45を介して、燃料圧送機構10のチェック弁14より上流側の回路部分である分岐通路16に接続されている。
3方電磁弁45は、燃料圧送機構10の分岐通路16に接続された第1ポート45aと、ハウジング21の操作圧給排口21cに接続された第2ポート45bと、燃料タンク2内に開放されたドレーンポート相当の第3ポート45cとを有している。この3方電磁弁45は、燃料圧送機構10で加圧された燃料を操作圧給排通路32h内に導入するよう第1ポート45aおよび第2ポート45bを連通させるとともに第3ポート45cを閉止する供給状態と、操作圧給排通路32hを燃料タンク2内に開放するよう第2ポート45bおよび第3ポート45cを連通させるとともに第1ポート45aを閉止する排出状態とのうち任意の一方に切換え可能な電磁弁である。
また、3方電磁弁45は、電磁操作部45dの通電・励磁状態をECU51により制御されることで、前述の供給状態と排出状態とに切換え制御されるようになっており、例えば電磁操作部45dが通電・励磁されるとき(以下、ON状態ともいう)に前記排出状態となり、電磁操作部45dが通電・励磁されないとき(以下、OFF状態ともいう)に前記供給状態となるように設定されている。
この3方電磁弁45およびECU51は、前述の分岐通路16と共に、プレッシャレギュレータ20の設定圧の切換え制御を実行する設定圧切換操作機構40を構成している。そして、設定圧切換操作機構40は、プレッシャレギュレータ20と後述するポンプコントローラ52と共に、燃料ポンプユニット11からインジェクタ3に供給される燃料の圧力をプレッシャレギュレータ20により予め設定された複数の設定圧力レベルPL,PHのうち任意の圧力レベルに調整可能な燃料圧力調整装置50を構成している。
設定圧切換操作機構40の3方電磁弁45が前記排出状態となるとき、すなわち、操作圧給排通路32hの内部の燃料圧Pwが燃料タンク2内の圧力と同等な低圧になるときには、調圧部材22の実質的な受圧領域の面積が可動弁体部25の外周部とその周囲の隔壁部24の環状受圧面のみとなる。一方、この3方電磁弁45が供給状態となるとき、すなわち、操作圧給排通路32hに加圧された燃料が供給されることで操作圧給排通路32hの内部の燃料圧Pwが高圧になるときには、調圧部材22の受圧領域の面積が、隔壁部24の外側の環状受圧面のみならず、第2弁座部32および操作圧給排通路32hに対向する内側の環状の受圧面領域(図示せず)を含むものとなる。したがって、操作圧給排通路32hに操作圧(加圧された燃料)が供給されるか否かによって調圧部材22の受圧領域の面積が変化する。そして、調圧部材22のこの受圧領域の面積が増大すると、圧縮コイルばね27の付勢力に対抗して調圧部材22を開弁させる燃圧が小さくて済むので、環状の導入側通路37内の燃料の調圧レベルが低下する。逆に、操作圧給排通路32hが燃料タンク2内に開放され、調圧部材22の受圧領域の面積が縮小されると、圧縮コイルばね27の付勢力に対抗して調圧部材22を開弁させるのに大きな燃圧が必要になるので、環状の導入側通路37内の燃料の調圧レベルが上昇するようになっている。
プレッシャレギュレータ20は、このように、燃料ポンプユニット11から圧送されて調圧室23内の環状の導入側通路37に導入される燃料の圧力に応じて、その燃料の一部を燃料タンク2に戻すよう開弁することで、環状の導入側通路37内の燃料を予め設定された設定圧に調整する調圧機能を有するとともに、燃料ポンプユニット11から吐出されインジェクタ3に供給される燃料を調圧室23内の操作圧給排通路32hに選択的に導入することで、その設定圧を予め設定された低圧側の設定圧と高圧側の設定圧とのうち任意の一方の設定圧に切換え可能になっている。
なお、プレッシャレギュレータ20の高圧側の設定圧は、エンジン停止直後等にデリバリーパイプ4内の燃料温度が高温になっても、燃料ベーパが生じ難い燃料圧(例えば、ゲージ圧で324kPa以上)の設定値となっている。また、低圧側の設定圧は、例えばゲージ圧で200kPaであり、走行中にデリバリーパイプ4内の燃料温度が比較的低温になったとき、燃料ベーパが生じ難い燃料圧設定値となっている。
また、このようなプレッシャレギュレータ20の調圧機能および設定圧切換え機能は、排出通路31hを通して調圧室23から燃料タンク2内に排出される余剰燃料の戻り流量(リターン流量)が予め設定された第1の戻り流量(第1戻り流量)の範囲内にあるときであり、第1の戻り流量の範囲を超える流量範囲についてはその調圧特性が変化する。この点については、後述する。
ECU51は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)等の不揮発性メモリからなるバックアップメモリに加えて、入力インターフェース回路および出力インターフェース回路等を含んで構成されており、このECU51には車両のイグニッションスイッチのON/OFF信号が取り込まれるとともに、図2に示すように、バッテリー100からの電源供給がなされるようになっている。さらに、ECU51の入力インターフェース回路には、各種センサ群が接続されており、これらセンサ群からのセンサ情報がA/D変換器等を含む入力インターフェース回路を通してECU51に取り込まれるようになっている。ECU51の出力インターフェース回路には、インジェクタ3や燃料ポンプユニット11、3方電磁弁45等のアクチュエータ類を制御するためのリレースイッチや、燃料ポンプユニット11の駆動電流を可変制御するためのスイッチング素子等が接続されている。
このECU51は、ROM内に格納された制御プログラムを実行することで、公知の電子スロットル制御、燃料噴射量制御、点火時期制御、燃料カット制御、可変バルブタイミング制御等を実行することができる。例えば、ECU51は、エアフローメータにより検出される吸入空気量とクランク角センサにより検出されるエンジン回転数とに基づいて燃焼毎に必要な基本噴射量を算出し、さらにエンジン1の運転状態に応じた各種補正や空燃比フィードバック補正等を施した燃料噴射量を算出し、その燃料噴射量に対応する燃料噴射時間だけ対応するインジェクタ3を開弁駆動する。なお、ここでの燃料噴射時間は、インジェクタ3に供給される燃圧の設定値に応じて理論空燃比を保つよう設定される。
また、ECU51は、各種センサ群からのセンサ情報およびROMに予め格納された設定値やマップ情報に基づいて、エンジン1の運転中にその負荷状態を繰返し判定し、部分負荷の運転領域においては3方電磁弁45を供給状態に復帰させる非励磁状態(以下、OFF状態という)として、燃料ポンプユニット11からの燃料をプレッシャレギュレータ20の低圧側の設定圧に調圧させるようになっている。さらに、ECU51は、エンジン1の高負荷時等には、燃料ポンプユニット11からの燃料を高圧側の設定圧に切り換えるようになっている。そのため、ECU51のROMおよびバックアップメモリに格納される設定値には高低に異なる複数の燃料圧の設定値が含まれ、ROMおよびバックアップメモリに格納されるマップ情報には、運転負荷の判定とその判定結果に応じた燃料圧の切換制御のためのマップ等が含まれている。
ECU51は、また、エンジン1の運転中、要求される燃料噴射量に応じて燃料ポンプユニット11の吐出量を好適な吐出量に制御するよう、例えば予め設定された複数段階の吐出量のうち好適な吐出量を選択し、その吐出量に対応するポンプ駆動モータ11mの駆動電圧をコマンド値としてポンプコントローラ52に出力するようになっている。
ポンプコントローラ52は、図1に示すように燃料タンク2の上部に設けられており、図外のバッテリーからの電源供給により作動するようになっている。このポンプコントローラ52は、ECU51からのポンプ制御信号と、ポンプ駆動モータ11mの端子電圧を検出する前記電圧検出部の検出信号との偏差に応じて、燃料ポンプユニット11のポンプ駆動モータ11mに印加する電圧を制御したり、燃料圧送機構10の異常診断のためのポンプ駆動モータ11mの作動状態に応じた診断用信号をECU51に供給したりすることができるようになっている。
具体的には、ポンプコントローラ52には、ECU51からのポンプ制御信号に応じて燃料ポンプユニット11のポンプ駆動モータ11mに対する通電をON/OFF切換えするリレースイッチ回路や、ポンプ駆動モータ11mに印加する電圧またはポンプ駆動モータ11mへの供給エネルギを可変制御するための図示しないスイッチング素子等が内蔵されている。ここにいうスイッチング素子は、例えばPWM(Pulse Width Modulation)入力信号に応じて燃料ポンプユニット11のポンプ駆動モータ11mのコイルへの供給エネルギを可変制御するMOS−FET形のトランジスタで構成されている。なお、ポンプコントローラ52には、ポンプ駆動モータ11mの端子電圧を検出する図示しない電圧検出部や、ポンプ駆動モータ11mの回転数[rpm]を検出する回転速度検出部を有していてもよい。
ECU51は、上述のようなポンプコントローラ52と協働し、ポンプ駆動モータ11mの駆動電圧を制御することにより、燃料ポンプユニット11の吐出量(単位時間当りの吐出量)を制御するようになっており、エンジン1の通常の運転中にはプレッシャレギュレータ20から燃料タンク2に戻される燃料の戻り流量を第1の戻り流量の範囲Z1(図3中に斜線で示す範囲)内に制御するようになっている。
図3に示すように、プレッシャレギュレータ20は、上述のバルブ構造を有することで、燃料の戻り流量がポンプコントローラ52による通常の流量制御範囲である第1の戻り流量の範囲Z1内にあるとき、例えばエンジン1の始動時以外のリターン流量の範囲内にあるとき、燃料の圧力を戻り流量の増加に対して低増加率である第1の増加率(図3中のΔP1/ΔR)で漸増させつつ設定圧力レベルPLまたはPHに保持することができる。
一方、プレッシャレギュレータ20の流体排出口21bの近傍には、内側筒状部材36の一端側内周部(図2中の下端側内週部)に保持されて環状絞り部材39が設けられており、内側筒状部材36内の排出通路31hは、この環状絞り部材39により絞られたオリフィス孔部31hr(オリフィス)を有している。そして、プレッシャレギュレータ20は、排出通路31hを通り燃料タンク2内に戻る燃料の戻り流量が第1の戻り流量の範囲を超える第2の戻り流量の範囲Z2(第2戻り流量の範囲)内に達しているとき、排出通路31hを通して燃料タンク2内に戻る調圧室23からの燃料の流れがオリフィス孔部31hrにより絞られることで、戻り流量の増加に対して燃料の圧力を第1の増加率より大きい高増加率である第2の増加率(図3中のΔP2/ΔR)で増加させる調圧特性を有している。これにより、プレッシャレギュレータ20は、燃料の戻り流量が第1の戻り流量の範囲Z1より多い第2の戻り流量の範囲Z2内の特定の戻り流量Z3(第2戻り流量)に達するときには、燃料の調整圧力レベルが通常(燃料の戻り流量が第1の戻り流量の範囲Z1内にあるとき)より上昇する調圧特性を有している。
また、ECU51およびポンプコントローラ52は、エンジン1の運転状態のうち予め設定された特定の運転状態、例えばエンジン始動時には、全気筒分の複数のインジェクタ3における燃料消費量が比較的少量(例えば、10L(リットル)/h(時間))であるにもかかわらず、燃料ポンプユニット11の吐出量をその可変制御範囲内の最大流量域(例えば、200L/h)に制御するようポンプ電圧を高い値(例えば12V)に高め、プレッシャレギュレータ20からの燃料の戻り流量を第2の戻り流量の範囲Z2内の特定の戻り流量Z3(例えば、190L/h;第1の戻り流量の範囲のいずれの戻り流量より多い戻り流量)に到達させるようになっている。
すなわち、ECU51およびポンプコントローラ52は、他の状態に比べてインジェクタ3の燃料消費量が相対的に少なく戻り流量が相対的に増加する特定の燃料消費状態、例えばエンジン1の始動時の状態の下で、プレッシャレギュレータ20の戻り流量が第2の戻り流量Z2の範囲内の特定の戻り流量である第2の戻り流量Z3になるよう燃料ポンプユニット11の吐出量を制御し、図3に示すように、インジェクタ3に供給される燃料の圧力を通常の設定圧力レベルPL,PHを超える高圧の特定圧力レベルPSに制御することができるようになっている。
このように、本実施形態におけるプレッシャレギュレータ20は、インジェクタ3に供給される燃料の圧力を第1の設定圧力レベルPLに調圧可能な第1設定状態と、インジェクタ3に供給される燃料の圧力を第1の設定圧力レベルPLより高い第2の設定圧力レベルPHに調圧可能な第2設定状態とに切換え可能であるとともに、第1の設定状態下で燃料の戻り流量が第1の戻り流量の範囲Z1内にあるときには戻り流量の増加に対して燃料の圧力を低増加率である第1の増加率ΔP1/ΔRで漸増させつつ第1の設定圧力レベルPLに保持する一方、燃料の戻り流量が第1の戻り流量の範囲Z1を超える第2の戻り流量の範囲Z2内に達したときには戻り流量の増加に対して燃料の圧力を第1の増加率ΔP1/ΔRより大きい高増加率ΔP2/ΔRで増加させる調圧特性を有している。
また、本実施形態におけるポンプコントローラ52は、ECU51からのポンプ制御信号に従って、エンジン1の始動時以外の運転状態下では、プレッシャレギュレータ20の戻り流量が第1の戻り流量の範囲Z1内になるよう燃料ポンプユニット11の吐出量を制御する第1のポンプ制御モードで作動し、一方、エンジン1の始動時の運転状態下では、プレッシャレギュレータ20の戻り流量が第2の戻り流量の範囲内の特定の戻り流量である第2の戻り流量Z3になるよう燃料ポンプユニット11の吐出量を制御し、インジェクタ3に供給される燃料の圧力を第2の設定圧力レベルPHを超える特定圧力レベルPSに制御する第2のポンプ制御モードで作動するようになっている。すなわち、ポンプコントローラ52は、他の状態に比べてインジェクタ3の燃料消費量が相対的に少なく戻り流量が相対的に増加する特定の燃料消費状態における作動モードとして第2のポンプ制御モードを、特定の燃料消費状態以外の状態における作動モードとして第1のポンプ制御モードを、それぞれ有している。
次に、作用について説明する。
上述のように構成された本実施形態の燃料供給装置では、エンジン1の停止中、燃料ポンプユニット11のポンプ駆動モータ11mおよび3方電磁弁45への通電はそれぞれ停止されている状態にある。
このとき、プレッシャレギュレータ20の操作圧給排通路32hには加圧された燃料が供給されないが、ECU51は、エンジン1の現在の停止状態に入る直前に3方電磁弁45を一旦ON状態(排出状態)にしてプレッシャレギュレータ20を高圧側の設定圧力レベルPHに切り換えた後で停止しているので、チェック弁14からインジェクタ3までの燃圧保持区間における燃圧は、燃料ベーパを生じ難い比較的高い燃圧に維持されている。
エンジン1が始動されるときには、ECU51により燃料ポンプユニット11が起動されるが、3方電磁弁45はOFF状態のままである。このとき、エンジン1のインジェクタ3の燃料消費量は他の状態に比べて相対的に少なく、プレッシャレギュレータ20からの戻り流量は相対的に増加する状態、すなわち特定の燃料消費状態となる。
このとき、エンジン1の燃料消費量が少量であるにもかかわらず、ECU51およびポンプコントローラ52が燃料ポンプユニット11の吐出量をその可変制御範囲内の最大流量域に制御する高い電圧(例えば、12V)を供給するので、プレッシャレギュレータ20からの燃料の戻り流量が特定の戻り流量Z3に到達する。
したがって、排出通路31hを通して燃料タンク2内に戻る調圧室23からの燃料の流れがオリフィス孔部31hrにより絞られることで、プレッシャレギュレータ20が、戻り流量の増加に対して燃料の圧力を第1の増加率より大きい第2の増加率で増加させることになり、エンジン1の特定の燃料消費状態においては、インジェクタ3に供給される燃料の圧力が特定の燃料消費状態以外のプレッシャレギュレータ20の設定圧力レベルPL,PHを超える特定圧力レベルPSに制御される。よって、燃料圧送機構10による燃料圧送の再開時に、即座に十分な燃料圧での燃料供給を開始することができる。
エンジン1の始動から一定時間が経過した後の通常の運転状態、例えばその部分負荷運転時には燃費や燃料ポンプユニット11の信頼性の面から低圧側の設定圧が要求される。この部分負荷運転時においては、3方電磁弁45が操作圧給排通路32hに操作圧を供給するOFF状態となり、プレッシャレギュレータ20の設定圧が低圧側の設定圧力レベルPLに切り換えられる。また、ポンプコントローラ52から燃料ポンプユニット11への供給電圧が比較的低い値(例えば、8V)に抑えられる。
高負荷要求時には、3方電磁弁45がON状態となり、調圧室23内の燃料が導入側通路37において高圧側の設定圧力レベルPHに調圧される。このとき、ポンプコントローラ52から燃料ポンプユニット11への供給電圧は、プレッシャレギュレータ20の戻り流量が第1の戻り流量の範囲内になるよう制御されるか保持される。
一方、エンジン1が停止される際には、3方電磁弁45がON状態となり、エンジン1の停止に先立ってプレッシャレギュレータ20の設定圧が一旦高圧側の設定圧力レベルPHに切り換えられる。したがって、エンジン1の停止直後における燃料ベーパの発生が有効に抑制され、上述のようにエンジン1の始動性が向上することになる。
このように、本実施形態においては、インジェクタ3の燃料消費量が他の状態に比べて相対的に少なくプレッシャレギュレータ20の戻り流量が相対的に増加する特定の燃料消費状態の下では、戻り流量が第1の戻り流量の範囲Z1内のいずれの戻り流量よりも多量となる特定の戻り流量Z3になるよう燃料ポンプユニット11の吐出量が大流量域、例えば通常の吐出量可変範囲のうちの最大流量域に制御され、インジェクタ3に供給される燃料の圧力が設定圧力レベルPL,PHを超える特定圧力レベルPSに達することとなる。したがって、燃料圧力調整装置50に設定圧切換えの手段を増設したり燃料ポンプを大型化したりすることなく、設定圧を一時的に高くしたい状態であってプレッシャレギュレータ20の戻り流量が比較的多くなるときに、燃料の圧力を一時的に特定圧力レベルPSにまで高めることができる。
また、本実施形態においては、ポンプコントローラ52が第1のポンプ制御モードで作動するときには、戻り流量が第1の戻り流量の範囲Z1内になるよう燃料ポンプユニット11の吐出量が制御され、ポンプコントローラ52が第2のポンプ制御モードで作動するときには、戻り流量が第2の戻り流量の範囲Z2内の特定の戻り流量Z3になるよう燃料ポンプユニット11の吐出量が制御されて、インジェクタ3に供給される燃料の圧力が第2の設定圧力レベルPHを超える特定圧力レベルPSに制御されることになる。したがって、第1の設定圧力レベルPLと第2の設定圧力レベルPHとの2段階に切換え可能なプレッシャレギュレータ20を用いながら、その設定圧切換えの手段を増設したりすることなく、それらと異なる第3の設定圧としての特定圧力レベルPSに切換え可能な、すなわち燃料圧力の多段切換えが可能な、さらに装置構成の簡素な燃料圧力調整装置50を実現できる。
さらに、本実施形態の燃料供給システムでは、特定の燃料消費状態の下でポンプコントローラ52が第2のポンプ制御モードにて作動するので、燃料ポンプユニット11を大型化することなく、設定圧を一時的に高くしたい状態であってプレッシャレギュレータ20の戻り流量が比較的多くなるときに、燃料の圧力を一時的に特定圧力レベルPSにまで高めることができる。
また、プレッシャレギュレータ20は、燃料の圧力を受圧する調圧部材22(弁体)の受圧面積を第1設定状態と第2設定状態とで変化させることにより、第1の設定圧力レベルPLと第2の設定圧力レベルPHとのうち任意の設定圧力レベルに切換え可能となっているので、燃料圧力調整装置50は、シールが要求される室数を抑えた小形で簡素なプレッシャレギュレータ20を有するものとなる。
なお、プレッシャレギュレータ20の排出通路31hには、調圧室23から燃料タンク2内に戻る燃料の流れを絞るオリフィス孔部31hrが設けられているので、オリフィス孔部31hrの絞り効果によってオリフィス孔部31hrより上流側の排出通路31h内の燃料の圧力が高まることになり、さらに、排出通路31hを通る燃料の流量が増えるか排出通路31hにおける絞りがきつくなるほど、排出通路31h内の燃料の圧力とプレッシャレギュレータ20の調圧室23内の燃料の圧力とが高くなる。
上述のように、本実施形態の燃料供給システムにおいては、戻り流量の大小によって調圧特性が変化する燃料圧力調整装置50を用いるとともに、インジェクタ3の燃料消費量が他の状態に比べて少なくなる特定の燃料消費状態下で燃料ポンプユニット11の吐出量をその大流量域側に制御することにより、インジェクタ3への供給燃料圧力を通常の設定圧力レベルを超える特定圧力レベルPSに調圧するようにしているので、燃料圧力調整装置50に設定圧切換えの手段を増設したり燃料ポンプユニット11を大型化したりすることなく、燃料の圧力を一時的に特定圧力レベルPSまで高めることができる。
特に、本実施形態では、ポンプコントローラ52が第1のポンプ制御モードで作動するときに戻り流量が第1の戻り流量の範囲Z1内になるよう燃料ポンプユニット11の吐出量が制御され、ポンプコントローラ52が第2のポンプ制御モードで作動するときに戻り流量が第2の戻り流量の範囲Z2内の特定の戻り流量になるよう燃料ポンプユニット11の吐出量が制御されて、インジェクタ3に供給される燃料の圧力が第2の設定圧力レベルPHを超える特定圧力レベルPSに制御されるようにしているので、第1、第2の設定圧力レベルPL,PHに切換え可能なプレッシャレギュレータ20を用いながら、設定圧切換えの手段を増設したり燃料ポンプユニット11のサイズを増大させたりすることなく、燃料圧力の多段切換えが可能になる。その結果、簡単なポンプ吐出量の制御によって燃料圧力を所要の圧力に多段切換え可能に調整しつつインジェクタ3に供給することができる低コストの燃料供給システムを提供することができる。
(第2実施形態)
図4および図5は、本発明に係る燃料供給システムの第2実施形態を示す図である。
なお、本実施形態は、上述の第1実施形態と略同様の全体構成を有し、プレッシャレギュレータのリターン側の構成のみが第1実施形態とは相違するものである。したがって、第1実施形態と同様の構成については図1〜図3に示した第1実施形態の対応する構成要素の参照符号を用い、第1実施形態との相違点についてのみ以下に説明する。
図4に示すように、本実施形態の燃料調整装置60においては、プレッシャレギュレータ20の排出通路31h(第2燃料通路)の途中に、その調圧室23から燃料タンク2内に戻る燃料のうちオリフィス孔部31hrより上流側の排出通路31h内の燃料の圧力を特定圧力レベルPSに制限するリリーフ弁61が付設されている。
このリリーフ弁61は、排出通路31hに連通する弁孔61aを形成する弁座62と、この弁座62に対向しつつ弁孔61a内の排出通路31hからの燃料の圧力を受圧するピストン状の受圧部材63と、この受圧部材63を弁座62に着座する閉弁方向に常時付勢するスプリング64と、を有している。
図5に示すように、本実施形態においては、プレッシャレギュレータ20は、上述のようなバルブ構造にリリーフ弁61を併用することで、燃料の戻り流量が第2の戻り流量Z3の付近に近付くときにリリーフ弁61を作動させ、オリフィス孔部31hrより上流側の排出通路31h内の燃料の圧力を特定圧力レベルPSのリリーフ弁61のリリーフ設定圧までに制限することができる。
本実施形態においても、第1、第2の設定圧力レベルPL,PHに切換え可能なプレッシャレギュレータ20を用いながら、設定圧切換えの手段を増設したり燃料ポンプユニット11のサイズを増大させたりすることなく、燃料圧力の多段切換えが可能になり、簡単な制御によって燃料圧力を所要の高・低の圧力に多段切換え可能に調整しつつインジェクタ3に供給することができる低コストの燃料供給システムを提供することができる。
さらに、本実施形態では、プレッシャレギュレータ20の排出通路31h上に、調圧室23から燃料タンク2内に戻る燃料のうちオリフィス孔部31hrより上流側の排出通路31h内の燃料の圧力を特定圧力レベルPSに制限するリリーフ弁61が付設されているので、排出通路31h内の燃料の圧力が特定圧力レベルPSに確実に制限可能となり、燃料圧力が過度に昇圧されることを未然に防止できる。
なお、上述の各実施形態においては、他の状態に比べてエンジン1のインジェクタ3における燃料消費量が相対的に少なくプレッシャレギュレータ20の戻り流量が相対的に増加する特定の燃料消費状態として、高温再始動時等のエンジン始動時を例に挙げたが、ここにいう高温再始動時とは、アイドリングストップを実行する車両でエンジン1を一時停止させた後に再始動させるときに限らず、例えばハイブリッド方式のパワーユニットを搭載する車両でそのパワーユニットの効率を高めるためにエンジン1を一時停止させた後に再始動するためにイグニッションON要求が発生したとき等であってよい。また、本発明にいう始動時とは、手動操作に応じたイグニッションスイッチのON要求によりエンジン1が始動される場合であってもよいことはいうまでもない。
また、上述の実施形態においては、プレッシャレギュレータ20が高設定圧と低設定圧の2段階に切換え可能な調圧弁となっていたが、設定圧が1つのみに固定された1段の調圧弁を有し、そのリターン側に設けたオリフィスと燃料消費量が少なくリターン流量が多くなる特定の燃料消費状態で燃料ポンプユニット11の吐出量をその大流量域に制御することで、上述したプレッシャレギュレータ20の第1設定状態における調圧特性と略同様な調圧特性(曲げ点の両側で戻り流量の増加(ΔR)に対する調圧レベルの上昇幅(ΔP1、ΔP2)が相違し、大流量側で大きくなる特性)として、エンジン1の始動時にも一時的に高燃料圧力に調圧可能な可変燃圧調整方式の燃料供給システムとすることも可能である。また、特定圧力レベルPSが第1の設定圧レベルPLより高圧でかつ第2の設定圧力レベルPHより低圧となることも考えられる。
また、上述の各実施形態では、排出通路31hにオリフィス孔部31hrを設けていたが、排出通路31hの全体が所定の戻り流量を超えるとオリフィス効果を生じる程度の断面積および長さに設定されてもよい。
さらに、燃料消費部は、エンジン1のインジェクタ3に限定されず、燃料を逐次消費する他の燃料消費部への燃料供給システムにも本発明を適用することができることは勿論である。
以上説明したように、本発明の燃料供給システムは、戻り流量の大小によって調圧特性が変化する燃料圧力調整装置を用いるとともに、燃料消費部の燃料消費量が他の状態に比べて少なくなる特定の燃料消費状態下で燃料ポンプの吐出量を大流量域側に制御して、燃料消費部への供給燃料圧力を通常の設定圧力レベルを超える特定圧力レベルに調圧するようにしているので、燃料圧力調整装置に設定圧切換えの手段を増設したり燃料ポンプを大型化したりすることなく、燃料の圧力を一時的に特定圧力レベルまで高めることができ、また、第1、第2の設定圧力レベルに切換え可能な調圧弁を用いながら、設定圧切換えの手段を増設したり燃料ポンプのサイズを増大させたりすることなく、燃料圧力の多段切換えが可能になり、その結果、簡単な制御によって燃料圧力を所要の高・低の圧力に切換え可能に調整しつつ燃料消費部に供給することができる低コストの燃料供給システムを提供することができるという効果を奏するものであり、燃料ポンプによって内燃機関に供給される燃料の圧力を切換え可能な燃料供給システムに好適な燃料供給システム全般に有用である。