ところで、特許文献1に開示された技術では、内燃機関の始動を開始する時点での蓄電装置の出力電力が閾値よりも小さい場合に、当該出力電圧が昇圧されない。しかしながら、蓄電装置の出力電圧が昇圧されないがゆえに、内燃機関の始動が完了した後に、回転電機の駆動力が不足するおそれがある。従って、ハイブリッド車両の走行レスポンスが悪化するおそれがある。一方で、閾値(具体的には、回転電機によって内燃機関を始動するために必要な電力)及び蓄電装置の出力電圧の双方のリアルタイムのモニタリングによって出力電圧の昇圧を行うか否かをリアルタイムに変更できるように特許文献1に開示された技術が改良されると仮定すると、蓄電装置の出力電力が閾値よりも大きくなった時点で、出力電圧が昇圧される。しかしながら、場合によっては、不必要に早いタイミングで出力電圧が昇圧されてしまいかねない。このため、昇圧に起因して蓄電装置の消費電力が大きくなってしまう。
本発明が解決しようとする課題には上記のようなものが一例として挙げられる。本発明は、消費電力の低減とハイブリッド車両の走行レスポンスとの間のバランスを考慮した好適なタイミングで昇圧を開始することが可能なハイブリッド車両の制御装置を提供することを課題とする。
<1>
上記課題を解決するために、本発明のハイブリッド車両の制御装置は、内燃機関と、蓄電装置と、前記蓄電装置の出力電圧を昇圧可能な昇圧器と、前記昇圧器から供給される供給電力を交流電力に変換するインバータと、前記インバータから供給される前記交流電力により回転駆動する回転電機とを備えるハイブリッド車両の制御装置であって、前記内燃機関を始動するように前記回転電機を駆動する始動制御手段と、前記内燃機関を始動するために必要とされる前記回転電機のクランキング電力がピークとなってから前記内燃機関の始動が完了するまでの間に前記出力電圧の昇圧を開始するように、前記昇圧器を制御する昇圧制御手段とを備える。
本発明のハイブリッド車両の制御装置によれば、始動制御手段は、内燃機関を始動するように回転電機を駆動する。
始動制御手段の制御の下で内燃機関が始動される場合には、昇圧制御手段は、昇圧器が蓄電装置の出力電圧の昇圧を開始するタイミングを適宜調整する。具体的には、昇圧制御手段は、クランキング電力がピークとなってから内燃機関の始動が完了するまでの間に昇圧を開始するように、昇圧器を制御する。
ここで、「クランキング電力がピークとなる」状態は、例えば、前後の時刻又はその他の時刻におけるクランキング電力よりも高いクランキング電力を必要とする状態を意味している。典型的には、「クランキング電力がピークとなる」状態は、内燃機関を始動している期間中においてクランキング電力が最も高くなる状態を意味する。また、「始動が完了する」状態とは、ハイブリッド車両の仕様や内燃機関の仕様に応じて適宜設定されてもよい。例えば、「始動が完了する」状態は、始動を開始した後に内燃機関の回転数が所定回転数以上となる状態や、始動を開始した後にクランキング電力がゼロとなる状態等が一例となる。
このように、本発明によれば、クランキング電力がピークとなった後であって且つ内燃機関の始動が完了する前に昇圧が開始される。従って、本発明によれば、出力電圧の昇圧が常に内燃機関の始動の開始と同時に又は前に開始されるハイブリッド車両と比較して、昇圧に伴う電力ロスが低減される。このため、本発明によれば、出力電圧の昇圧が常に内燃機関の始動の開始と同時に又は前に開始されるハイブリッド車両と比較して、蓄電装置の消費電力が低減される。
一方で、本発明によれば、出力電圧の昇圧が常に内燃機関の始動の完了と同時に又は後に開始されるハイブリッド車両と比較して、相対的に早いタイミングで昇圧が完了する(例えば、目標電圧まで出力電圧が昇圧される)。このため、本発明によれば、出力電圧の昇圧が常に内燃機関の始動の完了と同時に又は後に開始されるハイブリッド車両と比較して、回転電機の駆動力を早期に確保することができる。言い換えれば、本発明によれば、出力電圧の昇圧が常に内燃機関の始動の完了と同時に又は後に開始されるハイブリッド車両と比較して、例えば、内燃機関の始動が完了してからすぐに回転電機の駆動力を確保することができる。従って、本発明によれば、出力電圧の昇圧が常に内燃機関の始動の完了と同時に又は後に開始されるハイブリッド車両と比較して、走行レスポンスの悪化が好適に抑制される。
このように、本発明のハイブリッド車両の制御装置によれば、消費電力の低減とハイブリッド車両の走行レスポンスとの間のバランスを考慮した好適なタイミングで、蓄電装置の出力電圧の昇圧が開始される。
<2>
本発明のハイブリッド車両の制御装置の他の態様では、前記昇圧制御手段は、前記内燃機関の始動を開始してからの初めての点火タイミングである初爆タイミングと同時に又は当該初爆タイミングから前記内燃機関の始動が完了するまでの間に前記出力電圧の昇圧を開始するように、前記昇圧器を制御する。
この態様によれば、典型的にはクランキング電力がピークとなった後のタイミングである初爆タイミングに合わせて(つまり、初爆タイミングと同時に又は初爆タイミング以降に)、昇圧が開始される。このため、消費電力の低減とハイブリッド車両の走行レスポンスとの間のバランスを考慮した好適なタイミングで、蓄電装置の出力電圧の昇圧が開始される。
<3>
本発明のハイブリッド車両の制御装置の他の態様では、前記昇圧制御手段は、前記ハイブリッド車両が第1状態である場合に前記出力電圧の昇圧を開始する第1タイミングが、前記ハイブリッド車両が前記第1状態とは異なる第2状態である場合に前記出力電圧の昇圧を開始する第2タイミングよりも早くなるように、前記昇圧器を制御する。
この態様によれば、ハイブリッド車両が第1状態(例えば、昇圧を相対的に早いタイミングで開始することが好ましい状態)にある場合には、昇圧が相対的に早いタイミングで開始される。言い換えれば、ハイブリッド車両が第2状態(例えば、昇圧を相対的に早いタイミングで開始しなくともよい状態)にある場合には、昇圧が相対的に遅いタイミングで開始される。従って、ハイブリッド車両の動作状態に合わせて、昇圧を開始するタイミングが適宜調整される。つまり、ハイブリッド車両の動作状態に合わせて、消費電力の低減とハイブリッド車両の走行レスポンスとの間のバランスを考慮した好適なタイミングで、蓄電装置の出力電圧の昇圧が開始される。
<4>
上述の如くハイブリッド車両が第1状態である場合に昇圧を開始する第1タイミングが、ハイブリッド車両が第2状態である場合に昇圧を開始する第2タイミングよりも早くなるハイブリッド車両の制御装置の態様では、前記昇圧制御手段は、前記ハイブリッド車両が前記第2状態である場合には、前記内燃機関の始動を開始してからの初めての点火タイミングである初爆タイミングと同時に又は初爆タイミングから前記内燃機関の始動が完了するまでの間に前記出力電圧の昇圧を開始するように、前記昇圧器を制御し、前記ハイブリッド車両が前記第1状態である場合には、前記クランキング電力がピークとなってから前記初爆タイミングまでの間に前記出力電圧の昇圧を開始するように、前記昇圧器を制御する。
この態様によれば、ハイブリッド車両が第1状態(例えば、昇圧を相対的に早いタイミングで開始することが好ましい状態)にある場合には、クランキング電力がピークとなってから初爆タイミングまでの間に(つまり、相対的に早いタイミングで)昇圧が開始される。一方で、ハイブリッド車両が第2状態(例えば、昇圧を相対的に早いタイミングで開始しなくともよい状態)にある場合には、初爆タイミングに合わせて(つまり、相対的に遅いタイミングで)昇圧が開始される。従って、ハイブリッド車両の動作状態に合わせて、消費電力の低減とハイブリッド車両の走行レスポンスとの間のバランスを考慮した好適なタイミングで、蓄電装置の出力電圧の昇圧が開始される。
<5>
上述の如くハイブリッド車両が第1状態である場合に昇圧を開始する第1タイミングが、ハイブリッド車両が第2状態である場合に昇圧を開始する第2タイミングよりも早くなるハイブリッド車両の制御装置の態様では、前記昇圧制御手段は、前記ハイブリッド車両が前記第2状態である場合には、前記内燃機関の始動を完了する時刻から前記出力電圧の昇圧が完了するまでに要する時間をさかのぼった時刻である最終昇圧時刻に前記出力電圧の昇圧を開始するように、前記昇圧器を制御し、前記ハイブリッド車両が前記第1状態である場合には、前記クランキング電力がピークとなってから前記最終昇圧時刻までの間に前記出力電圧の昇圧を開始するように、前記昇圧器を制御する。
この態様によれば、ハイブリッド車両が第1状態(例えば、昇圧を相対的に早いタイミングで開始することが好ましい状態)にある場合には、クランキング電力がピークとなってから最終昇圧時刻までの間に(つまり、相対的に早いタイミングで)昇圧が開始される。一方で、ハイブリッド車両が第2状態(例えば、昇圧を相対的に早いタイミングで開始しなくともよい状態)にある場合には、最終昇圧時刻に(つまり、相対的に遅いタイミングで)昇圧が開始される。従って、ハイブリッド車両の動作状態に合わせて、消費電力の低減とハイブリッド車両の走行レスポンスとの間のバランスを考慮した好適なタイミングで、蓄電装置の出力電圧の昇圧が開始される。特に、ハイブリッド車両が第2状態にある場合には、最終昇圧時刻までは昇圧が開始されないため、昇圧に伴うロスを最大限低減することができる。
尚、最終昇圧時刻は、内燃機関の始動を完了する時刻(つまり、内燃機関の始動が完了するであろうと推測又は予測される時刻)から出力電圧の昇圧が完了するまでに要する時間(つまり、昇圧を開始してから完了するまでに要する時間)をさかのぼった時刻である。具体的には、例えば、内燃機関の始動を完了する時刻がTcであり、出力電圧の昇圧が完了するまでに要する時間がTiである場合には、最終昇圧時刻は、Tc−Tiとなる。このような最終昇圧時刻までに蓄電装置の出力電圧の昇圧が開始されれば、内燃機関の始動が完了した時点で、昇圧もまた完了している。従って、内燃機関の始動が完了した時点で、回転電機の駆動力が好適に確保される。
<6>
上述の如くハイブリッド車両が第1状態である場合に昇圧を開始する第1タイミングが、ハイブリッド車両が第2状態である場合に昇圧を開始する第2タイミングよりも早くなるハイブリッド車両の制御装置の態様では、前記昇圧制御手段は、前記ハイブリッド車両が前記第2状態である場合には、前記クランキング電力がピークとなってから前記内燃機関の始動が完了するまでの間に前記出力電圧の昇圧を開始するように、前記昇圧器を制御し、前記ハイブリッド車両が前記第1状態である場合には、前記内燃機関の始動を開始してから前記クランキング電力がピークとなるまでの間に又は前記内燃機関の始動を開始する前に前記出力電圧の昇圧を開始するように、前記昇圧器を制御する。
この態様によれば、ハイブリッド車両が第1状態(例えば、昇圧を相対的に早いタイミングで開始することが好ましい状態)にある場合には、内燃機関の始動を開始してから始動要求電力がピークとなるまでの間に又は内燃機関の始動を開始する前に(つまり、相対的に早いタイミングで)昇圧が開始される。言い換えれば、ハイブリッド車両が第1状態にある場合には、クランキング電力がピークとなった後に昇圧を開始する制御がキャンセルされる。一方で、ハイブリッド車両が第2状態(例えば、昇圧を相対的に早いタイミングで開始しなくともよい状態)にある場合には、クランキング電力がピークとなってから内燃機関の始動が完了するまでの間に(つまり、相対的に遅いタイミングで)昇圧が開始される。従って、ハイブリッド車両の動作状態に合わせて、消費電力の低減とハイブリッド車両の走行レスポンスとの間のバランスを考慮した好適なタイミングで、蓄電装置の出力電圧の昇圧が開始される。
<7>
上述の如くハイブリッド車両が第1状態である場合に昇圧を開始する第1タイミングが、ハイブリッド車両が第2状態である場合に昇圧を開始する第2タイミングよりも早くなるハイブリッド車両の制御装置の態様では、前記第1状態は、(i)前記ハイブリッド車両の乗り心地の向上を優先する状態、(ii)前記ハイブリッド車両の走行レスポンスの向上を優先する状態、及び(iii)法規を満たすためのエミッションの低減を優先する状態のうちの少なくとも一つであり、前記第2状態は、前記第1状態以外の他の状態である。
この態様によれば、ハイブリッド車両が第1状態(例えば、昇圧を相対的に早いタイミングで開始することが好ましい状態)にあるか否かが好適に判別される。従って、ハイブリッド車両が第1状態にある場合には、相対的に早いタイミングで昇圧が開始される。
尚、ハイブリッド車両が乗り心地の向上(例えば、NVH(Noise Vibration Harshness)特性の向上)を優先する状態である場合には、消費電力の低減を目的として昇圧の開始が遅延される(例えば、相対的に遅いタイミングで昇圧が開始される)と、当該昇圧の遅延に起因して乗り心地が犠牲になるおそれがある。従って、ハイブリッド車両が乗り心地の向上を優先する状態である場合には、相対的に早いタイミングで昇圧が開始されることが好ましい。
また、ハイブリッド車両が走行レスポンスの向上を優先する状態である場合には、消費電力の低減を目的として昇圧の開始が遅延される(例えば、相対的に遅いタイミングで昇圧が開始される)と、当該昇圧の遅延に起因して、回転電機の駆動力が不足するおそれがある。というのも、回転電機から必要な駆動力を取り出すためには、昇圧が完了していることが好ましい場合が多いからである。従って、ハイブリッド車両が走行レスポンスの向上を優先する状態である場合には、相対的に早いタイミングで昇圧が開始されることが好ましい。
また、ハイブリッド車両が法規を満たすためのエミッションの低減を優先する状態である場合には、消費電力の低減を目的として昇圧の開始が遅延される(例えば、相対的に遅いタイミングで昇圧が開始される)と、当該昇圧の遅延に起因して、エミッションの低減が犠牲になるおそれがある。言い換えれば、ハイブリッド車両が法規を満たすためのエミッションの低減を優先する状態である場合には、昇圧の開始を遅延することで消費電力の低減を実現するよりも、まずは、法規に定められたエミッションの低減を実現することが優先されることが好ましい。従って、ハイブリッド車両が法規を満たすためのエミッションの低減を優先する状態である場合には、相対的に早いタイミングで昇圧が開始されることが好ましい。
<8>
上述の如くハイブリッド車両が第1状態である場合に昇圧を開始する第1タイミングが、ハイブリッド車両が第2状態である場合に昇圧を開始する第2タイミングよりも早くなるハイブリッド車両の制御装置の態様では、前記第2状態は、(i)前記蓄電装置の消費電力の低減を優先する状態及び(ii)前記ハイブリッド車両の走行に寄与する動力を生成する目的とは異なる他の目的で前記内燃機関の始動を開始する状態のうちの少なくとも一つであり、前記第1状態は、前記第2状態以外の他の状態である。
この態様によれば、ハイブリッド車両が第2状態(例えば、昇圧を相対的に早いタイミングで開始しなくともよい状態)にあるか否かが好適に判別される。従って、ハイブリッド車両が第2状態にある場合には、相対的に遅いタイミングで昇圧が開始される。
尚、ハイブリッド車両が蓄電装置の消費電力の低減を優先する状態である場合には、昇圧の開始を遅延する(例えば、相対的に遅いタイミングで昇圧を開始する)ことで、消費電力の低減が比較的容易に実現される。従って、ハイブリッド車両が蓄電装置の消費電力の低減を優先する状態である場合には、相対的に遅いタイミングで昇圧が開始されることが好ましい。
また、ハイブリッド車両がハイブリッド車両の走行に寄与する動力を生成する目的とは異なる他の目的で内燃機関の始動を開始する(例えば、蓄電装置の充電や補機の駆動を目的として始動を開始する)状態である場合には、昇圧の開始が遅れたとしても、回転電機の駆動力が不足する可能性は相対的に小さくなる。つまり、この場合には、消費電力の低減を目的として昇圧の開始が遅延される(例えば、相対的に遅いタイミングで昇圧が開始される)としても、当該昇圧の遅延に起因して、回転電機の駆動力が不足する可能性は相対的に小さくなる。従って、この場合には、相対的に遅いタイミングで昇圧が開始されてもよい。
<9>
上述の如くハイブリッド車両が第1状態である場合に昇圧を開始する第1タイミングが、ハイブリッド車両が第2状態である場合に昇圧を開始する第2タイミングよりも早くなるハイブリッド車両の制御装置の態様では、前記昇圧制御手段は、(i)前記ハイブリッド車両の走行モードが、走行レスポンスを優先するパワーモードである場合、(ii)前記ハイブリッド車両の走行モードが、乗り心地を優先するコンフォートモードである場合、及び(iii)冷機状態にある前記内燃機関を始動する場合の少なくとも一つの場合には、前記ハイブリッド車両が前記第1状態であると判定する。
この態様によれば、昇圧制御手段は、ハイブリッド車両が第1状態であるか否かを好適に判定することができる。
例えば、ハイブリッド車両の走行モードがパワーモードである場合には、ハイブリッド車両が走行レスポンスの向上を優先する状態であると推測される。従って、この場合には、ハイブリッド車両が第1状態にあると判定されることが好ましく、その結果、走行レスポンスを優先するべく、相対的に早いタイミングで昇圧が開始されることが好ましい。
また、ハイブリッド車両の走行モードがコンフォートモードである場合には、ハイブリッド車両が乗り心地の向上を優先する状態であると推測される。従って、この場合には、ハイブリッド車両が第1状態にあると判定されることが好ましく、その結果、乗り心地の向上を優先するべく、相対的に早いタイミングで昇圧が開始されることが好ましい。
また、冷機状態にある内燃機関が始動される場合には、暖機されていない触媒を暖機することでエミッションの低減を優先することが好ましいと推測される。従って、この場合には、ハイブリッド車両が第1状態にあると判定されることが好ましく、その結果、法規を満たすためのエミッションの低減を優先するべく、相対的に早いタイミングで昇圧が開始されることが好ましい。
<10>
上述の如くハイブリッド車両が第1状態であるか又は第2状態であるか否かを判定するハイブリッド車両の制御装置の態様では、前記昇圧制御手段は、(i)前記シフトレバーが駐車レンジに位置する場合、(ii)前記ハイブリッド車両の走行モードが燃費を優先するエコモードである場合、及び(iii)前記シフトレバーが走行レンジに位置する状態で、前記アクセル開度が所定開度以下である場合の少なくとも一つの場合には、前記ハイブリッド車両が前記第2状態であると判定する。
この態様によれば、昇圧制御手段は、ハイブリッド車両が第2状態であるか否かを好適に判定することができる。
例えば、シフトレバーが駐車レンジ(例えば、P(Parking)レンジ)に位置する場合には、ハイブリッド車両が走行していないがゆえに、ハイブリッド車両の走行に寄与する動力を生成する目的とは異なる他の目的で内燃機関の始動が開始されている可能性が高いと推測される。従って、昇圧の開始が遅れたとしても、ハイブリッド車両が走行していないがゆえに回転電機の駆動力が不足する可能性は相対的に小さくなる。或いは、実際の走行を開始するためにシフトレバーが駐車レンジから走行レンジ(例えば、D(Driving)レンジ)に入れられるまでにある程度の時間が必要であるため、当該時間を利用して昇圧を完了させることができる。従って、この場合には、消費電力の低減を目的として昇圧の開始が遅延される(例えば、相対的に遅いタイミングで昇圧が開始される)ことで生ずる影響が相対的に小さくなるため、相対的に遅いタイミングで昇圧が開始されてもよい。
また、例えば、ハイブリッド車両の走行モードがエコモードである場合には、ハイブリッド車両が消費電力の低減を優先する状態であると推測される。従って、この場合には、ハイブリッド車両が第2状態にあると判定されることが好ましく、その結果、消費電力の低減を優先するべく、相対的に遅いタイミングで昇圧が開始されることが好ましい。
また、例えば、シフトレバーが走行レンジに位置する状態でアクセル開度が所定開度以下である場合には、アクセル開度が相対的に小さいがゆえに、ハイブリッド車両の走行に寄与する動力を生成する目的とは異なる他の目的で内燃機関の始動が開始されている可能性が高いと推測される。或いは、アクセル開度が相対的に小さいがゆえに、ハイブリッド車両の走行に寄与するために必要とされる動力が相対的に小さく、結果的に、昇圧の開始が遅れたとしても回転電機の駆動力が不足する可能性は相対的に小さくなる。従って、この場合には、消費電力の低減を目的として昇圧の開始が遅延される(例えば、相対的に遅いタイミングで昇圧が開始される)ことで生ずる影響が相対的に小さくなるため、相対的に遅いタイミングで昇圧が開始されてもよい。
<11>
上述の如くハイブリッド車両が第1状態である場合に昇圧を開始する第1タイミングが、ハイブリッド車両が第2状態である場合に昇圧を開始する第2タイミングよりも早くなるハイブリッド車両の制御装置の態様では、前記昇圧制御手段は、(i)前記ハイブリッド車両のトランスミッションを選択するためにドライバによって操作されるシフトレバーの選択状態、(ii)前記ハイブリッド車両のアクセル開度、(iii)ドライバによって選択される前記ハイブリッド車両の走行モードの選択状態、及び(iv)前記内燃機関の温度の少なくとも一つに基づいて、前記ハイブリッド車両が前記第1状態であるか又は前記第2状態であるか否かを判定する。
この態様によれば、昇圧制御手段は、ハイブリッド車両が第1状態であるか又は第2状態であるか否かを好適に判定することができる。
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施形態から更に明らかにされる。
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
(1)ハイブリッド車両の構成
はじめに、図1を参照して、本実施形態のハイブリッド車両100の構成について説明する。ここに、図1は、本実施形態のハイブリッド車両100の構成の一例を示すブロック図である。
図1に示すように、ハイブリッド車両100は、車輪2と、動力分割機構3と、エンジン4と、モータジェネレータMG1と、モータジェネレータMG2とを備える。また、ハイブリッド車両100は、蓄電装置Bと、昇圧コンバータ10と、インバータ20と、インバータ30と、コンデンサC1と、コンデンサC2と、電源ラインPL1と、電源ラインPL2と、接地ラインSLと、ECU(Electronic Control Unit)60とを更に備える。
動力分割機構3は、エンジン4とモータジェネレータMG1とモータジェネレータMG2とに結合されている。動力分割機構3は、エンジン4とモータジェネレータMG1とモータジェネレータMG2との間で動力を分配する。例えば、動力分割機構3は、サンギヤ、プラネタリキャリヤ及びリングギヤの3つの回転軸を有する遊星歯車機構である。これら各ギヤのうち、内周にあるサンギヤの回転軸はモータジェネレータMG1に連結されており、外周にあるリングギヤの回転軸は、モータジェネレータMG2に連結されている。サンギヤとリングギヤの中間にあるプラネタリキャリヤの回転軸はエンジン4に連結されている。エンジン4の回転は、このプラネタリキャリヤと更にピニオンギヤとによって、サンギヤ及びリングギヤに伝達される。その結果、エンジン4の動力が2系統に分割される。ハイブリッド車両100において、リングギヤの回転軸は、ハイブリッド車両100における車軸に連結されており、この車軸を介して車輪2に駆動力が伝達される。
モータジェネレータMG1は、「回転電機」の一例であり、蓄電装置Bを充電するための或いはモータジェネレータMG2に電力を供給するための発電機として、更にはエンジン4の駆動力をアシストする電動機として機能するように構成されている。加えて、モータジェネレータMG1は、ECU60の制御(特に、後述する始動制御部61の制御)の下で、エンジン4を始動可能な電動機として機能するように構成されている。
モータジェネレータMG2は、「回転電機」の一例であり、エンジン4の動力をアシストする電動機として、或いは蓄電装置Bを充電するための発電機として機能するように構成されている。
蓄電装置Bは、充放電可能な直流電源であり、例えば、ニッケル水素やリチウムイオン等の二次電池(つまり、充電池)からなる。蓄電装置Bは、電源ラインPL1へ直流電力を供給する。また、蓄電装置Bは、昇圧コンバータ10から電源ラインPL1へ出力される直流電力を受けて充電される。
尚、蓄電装置Bは、ハイブリッド車両100の外部の電源から電力の供給を受けることで充電されてもよい。つまり、ハイブリッド車両100は、いわゆるプラグインハイブリッド車両であってもよい。
コンデンサC1は、電源ラインPL1と接地ラインSLとの間に接続され、電源ラインPL1と接地ラインSLとの間の電圧変動を平滑化する。
昇圧コンバータ10は、npn型トランジスタQ1と、npn型トランジスタQ2と、ダイオードD1と、ダイオードD2と、リアクトルLとを含む。npn型トランジスタQ1及びnpn型トランジスタQ2は、電源ラインPL2と接地ラインSLとの間に直列に接続される。ダイオードD1及びダイオードD2は、夫々、npn型トランジスタQ1及びnpn型トランジスタQ2に並列に接続される。リアクトルLは、電源ラインPL1とnpn型トランジスタQ1及びnpn型トランジスタQ2の接続点との間に接続される。
昇圧コンバータ10は、ECU60の制御(特に、後述する昇圧制御部63の制御)の下で、電源ラインPL1の電圧を昇圧して電源ラインPL2へ出力する。より具体的には、昇圧コンバータ10は、npn型トランジスタQ2のオン時に流れる電流をリアクトルLに磁場エネルギとして蓄積し、npn型トランジスタQ2のオフ時にダイオードD1を介して蓄積エネルギを電源ラインPL2へ放出することによって、電源ラインPL1の電圧を昇圧する(言い換えれば、電源ラインPL2の電圧を、電源ラインPL1の電圧以上の任意の電圧に設定する)。
なお、npn型トランジスタQ2のオンデューティーを大きくすることによりリアクトルLにおける電力蓄積が大きくなるため、より高電圧の出力を得ることができる。一方、npn型トランジスタQ1のオンデューティーを大きくすることにより電源ラインPL2の電圧が下がる。そこで、npn型トランジスタQ1及びnpn型トランジスタQ2のデューティー比を制御することで、電源ラインPL2の電圧を電源ラインPL1の電圧以上の任意の電圧に設定することができる。
尚、このデューティー比を制御することで、昇圧コンバータ10は、電源ラインPL1の電圧を昇圧することなく電源ラインPL2へ出力してもよい。つまり、昇圧コンバータ10は、電源ラインPL1の電圧をそのまま電源ラインPL2へ出力してもよい。
コンデンサC2は、電源ラインPL2と接地ラインSLとの間に接続され、電源ラインPL2と接地ラインSLとの間の電圧変動を平滑化する。
インバータ20及びインバータ30は、夫々、モータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2に対応して設けられる。インバータ20は、ECU60の制御の下で、モータジェネレータMG1を力行モードまたは回生モードで駆動する。インバータ30は、ECU60の制御の下で、モータジェネレータMG2を力行モードまたは回生モードで駆動する。
ECU60は、本発明の「制御装置」の一例を構成しており、ハイブリッド車両100の動作全体を制御することが可能に構成された電子制御ユニットである。ECU60は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等を備えている。
本実施形態では特に、ECU60は、その内部に実現される論理的な又は物理的な処理ブロックとして、始動制御部61と、昇圧制御部62を備えていることが好ましい。
始動制御部61は、エンジン4を始動するようにモータジェネレータMG1を制御する。具体的には、始動制御部61は、例えばエンジン4を始動するためにモータジェネレータMG1に要求される電力であるクランキング電力を算出する。始動制御部61は、算出されたクランキング電力に応じたクランキングトルク発生させることを指示する制御信号をモータジェネレータMG1に出力する。その結果、モータジェネレータMG1は、クランキング電力に応じたクランキングトルクを発生させるように動作する。
昇圧制御部62は、クランキング電力がピーク値を取るタイミングである電力ピークタイミングに応じて定まるタイミングで、電源ラインPL1の電圧の昇圧を開始するように、昇圧コンバータ10を制御する。その結果、昇圧コンバータ10は、クランキング電力がピーク値を取るタイミングである電力ピークタイミングに応じて定まるタイミングで、電源ラインPL1の電圧の昇圧を開始するように動作する。
(2)ハイブリッド車両の基本動作
図1のハイブリッド車両100においては、主として発電機として機能するモータジェネレータMG1、主として電動機として機能するモータジェネレータMG2、及びエンジン4の夫々の動力配分がECU60及び動力分割機構3により制御されることで、走行状態が制御される。以下に、幾つかの状況に応じたハイブリッド車両100の動作について説明する。
(2−1)始動時
例えば、ハイブリッド車両100の始動時においては、蓄電装置Bの電気エネルギを用いてモータジェネレータMG1が電動機として駆動される。このモータジェネレータMG1の動力によってエンジン4がクランキングされエンジン4が始動する。
尚、後に詳述するように、本実施形態では、モータジェネレータMG1の動力によってエンジン4がクランキングされることでエンジン4が始動する場合には、昇圧コンバータ10による電源ラインPL1の電圧の昇圧を開始する昇圧開始タイミングが適宜調整される。
(2−2)発進時
発進時には、蓄電装置Bの蓄電状態に応じて2種類の態様を採り得る。例えば、通常の(即ち、SOC(State of Charge)が良好な)発進時においては、モータジェネレータMG1によって蓄電装置Bを充電する必要は生じない。このため、エンジン4は暖機のためだけに始動し、ハイブリッド車両100は、モータジェネレータMG2の動力により発進する。一方、蓄電状態が良好ではない(即ち、SOCが低下している)場合、エンジン200の動力によりモータジェネレータMG1が発電機として機能する。その結果、蓄電装置Bが充電される。
(2−3)低負荷走行時
例えば、低速走行時や緩やかな坂を下っている場合には、比較的エンジン4の効率が悪い。このため、インジェクタを介した燃料の噴射が停止されることによりエンジン4が停止され、ハイブリッド車両100は、モータジェネレータMG2による動力のみで走行する。尚、この際、SOCが低下していれば、エンジン4はモータジェネレータMG1を駆動するために始動し、モータジェネレータMG1により蓄電装置Bの充電が行われる。
(2−4)通常走行時
エンジン4の燃費或いは燃焼効率が比較的良好な運転領域においては、ハイブリッド車両100は主としてエンジン4の動力によって走行する。この際、エンジン4の動力は、動力分割機構3によって2系統に分割され、一方は、車軸を介して車輪2に伝達され、他方は、モータジェネレータMG1を駆動して発電に供される。更に、この発電された電力により、モータジェネレータMG2が駆動され、モータジェネレータMG2によりエンジン4の動力がアシストされる。尚、この際、SOCが低下している場合には、エンジン4の出力を上昇させて、モータジェネレータMG1により発電された電力の一部が蓄電装置Bへ充電される。
(2−5)制動時
減速が行われる際には、車輪2から車軸を介して伝達される動力によってモータジェネレータMG2を回転させ、発電機として動作させる。これにより、車輪12の運動エネルギが電気エネルギに変換され、蓄電装置Bが充電される、所謂「回生」が行われる。
(3)エンジンの始動時における昇圧動作
続いて、図2から図7を参照して、本実施形態のハイブリッド車両100に特有の動作である、エンジン4の始動時における昇圧コンバータ10の昇圧動作について説明する。尚、以下では、エンジン4の始動時における昇圧コンバータ10の昇圧動作に関する2つの動作例についての説明を進める。
(3−1)第1動作例
初めに、図2及び図3を参照して、エンジン4の始動時における昇圧コンバータ10の昇圧動作の第1動作例について説明する。図2は、エンジン4の始動時における昇圧コンバータ10の昇圧動作の第1動作例の流れを示すフローチャートである。図3は、エンジン4の始動時における昇圧コンバータ10の昇圧動作の第1動作例の流れを示すタイミングチャートである。
図2に示すように、昇圧制御部62は、蓄電装置Bの状態(例えば、SOC)を検出する(ステップS11)。加えて、昇圧制御部62は、エンジン4の状態(例えば、エンジン水温等)を検出する(ステップS12)。加えて、昇圧制御部62は、ハイブリッド車両100の運転条件を検出する(ステップS13)。
その後、始動制御部61は、エンジン4の始動要求があるか否かを判定する(ステップS14)。尚、始動要求としては、ハイブリッド車両100の走行に寄与する動力の生成を目的とするエンジン4の始動要求や、蓄電装置BのSOCの回復を目的とするエンジン4の始動要求や、補機(例えば、オルタネータ等)の駆動を目的とするエンジン4の始動要求や、暖機を目的とするエンジン4の始動要求等が一例としてあげられる。
ステップS14の判定の結果、エンジン4の始動要求がないと判定される場合には(ステップS14:No)、始動制御部61は、エンジン4を始動するようにモータジェネレータMG1を制御しなくともよい。また、この場合には、昇圧制御部63は、電源ラインPL1の電圧の昇圧を開始するように昇圧コンバータ10を制御しなくともよい。
他方で、ステップS14の判定の結果、エンジン4の始動要求があると判定される場合には(ステップS14:Yes)、図3の最上段に示す始動フラグが、「未始動状態」を示す値から、「始動中状態」を示す値に変更される。その結果、始動制御部61は、エンジン4を始動するようにモータジェネレータMG1を制御する。具体的には、始動制御部61は、例えばエンジン4を始動するためにモータジェネレータMG1に要求される電力であるクランキング電力を算出する。始動制御部61は、算出されたクランキング電力に応じたクランキングトルク発生させることを指示する制御信号をモータジェネレータMG1に出力する。その結果、モータジェネレータMG1は、クランキング電力に応じたクランキングトルクを発生させるように動作する。その結果、エンジン4の始動が開始される。
このとき、昇圧制御部62は、現在のタイミングが、クランキング電力がピーク値を取るタイミングである電力ピークタイミング以降のタイミングであるか否かを判定する(ステップS15)。電力ピークタイミングは、例えば、図3の3段目のグラフに示すように、クランキング電力が最大となるタイミングを意味している。
尚、本実施形態では、始動制御部61は、必要なクランキング電力(或いは、クランキング電力に応じたクランキングトルク)を算出した上で当該算出したクランキング電力(或いは、クランキング電力に応じたクランキングトルク)をモータジェネレータMG1の動作指令値として用いるフィードフォワード制御によって、モータジェネレータMG1を制御している。従って、昇圧制御部62は、始動制御部61の動作指令値を監視することで又は始動制御部61から必要な情報(例えば、過去の、現在の及び未来の動作指令値等)を取得することで、現在のタイミングが電力ピークタイミング以降のタイミングであるか否かを判定してもよい。
但し、始動制御部61は、クランキング電力(或いは、クランキング電力に応じたクランキングトルク)を直接的に又は間接的に関ししながらクランキング電力以外の任意のパラメータをモータジェネレータMG1の動作指令値として用いるフィードバック制御を行ってもよい。この場合であっても、昇圧制御部62は、始動制御部61の動作指令値を監視することで又は始動制御部61から必要な情報を取得することで、現在のタイミングが電力ピークタイミング以降のタイミングであるか否かを判定してもよい。
ステップS15の判定の結果、現在のタイミングが電力ピークタイミング以降のタイミングでない(つまり、現在のタイミングが電力ピークタイミング前のタイミングである)と判定される場合には(ステップS15:No)、昇圧制御部62は、現在のタイミングが電力ピークタイミング以降のタイミングであるか否かを判定し続ける。
他方で、ステップS15の判定の結果、現在のタイミングが電力ピークタイミング以降のタイミングあると判定される場合には(ステップS15:Yes)、昇圧制御部62は、電源ラインPL1の電圧の昇圧を開始するように、昇圧コンバータ10を制御する(ステップS16)。その結果、昇圧コンバータ10は、電源ラインPL1の電圧の昇圧を開始する(ステップS16)。
つまり、本実施形態では、図3の2段目のグラフ中の太い実線で示すように、昇圧コンバータ10は、電力ピークタイミング以降に、電源ラインPL1の電圧の昇圧を開始する。このとき、昇圧制御部62は、電力ピークタイミング以降であって且つエンジン4の始動が完了するまでの間に電源ラインPL1の電圧の昇圧を開始するように、昇圧コンバータ10を制御する。つまり、昇圧コンバータ10は、電力ピークタイミング以降であって且つエンジン4の始動が完了するまでの間に、電源ラインPL1の電圧の昇圧を開始する。
尚、電源ラインPL1の電圧の昇圧を開始するタイミングは、電力ピークタイミング以降であって且つエンジン4の始動が完了するまでの間に収まるタイミングであれば、任意のタイミングであってもよい。例えば、始動制御部61は、電力ピークタイミングの直後に電源ラインPL1の電圧の昇圧を開始するように、昇圧コンバータ10を制御してもよい。この場合、昇圧コンバータ10は、電力ピークタイミングの直後に、電源ラインPL1の電圧の昇圧を開始する。或いは、始動制御部61は、電力ピークタイミングから所定時間を経過した後に電源ラインPL1の電圧の昇圧を開始するように、昇圧コンバータ10を制御してもよい。この場合、昇圧コンバータ10は、電力ピークタイミングから所定時間を経過した後に、電源ラインPL1の電圧の昇圧を開始する。或いは、始動制御部61は、エンジン4の始動が完了する直前に電源ラインPL1の電圧の昇圧を開始するように、昇圧コンバータ10を制御してもよい。この場合、昇圧コンバータ10は、エンジン4の始動が完了する直前に、電源ラインPL1の電圧の昇圧を開始する。
但し、電源ラインPL1の電圧の昇圧を開始するタイミングは、初爆タイミング(つまり、エンジン4の始動を開始してから1回目の点火タイミング)に合わせた任意のタイミングであってもよい。例えば、電源ラインPL1の電圧の昇圧を開始するタイミングは、初爆タイミングと同時のタイミングであってもよいし、初爆タイミング以降の任意のタイミングであってもよい。尚、初爆タイミングは、典型的には、電力ピークタイミング以降であって且つエンジン4の始動が完了するまでの間に収まる。
また、電源ラインPL1の電圧の昇圧は、エンジン4の始動が完了するまでに完了していることが好ましい。従って、始動制御部61は、遅くとも、電源ラインPL1の電圧の昇圧を開始してから完了するまでに必要な時間をエンジン4の始動が完了する時刻から差し引いた時刻に電源ラインPL1の電圧の昇圧を開始するように、昇圧コンバータ10を制御することが好ましい。この場合、昇圧コンバータ10は、遅くとも、電源ラインPL1の電圧の昇圧を開始してから完了するまでに必要な時間をエンジン4の始動が完了する時刻から差し引いた時刻に、電源ラインPL1の電圧の昇圧を開始する。このタイミングで電源ラインPL1の電圧の昇圧が開始されれば、電源ラインPL1の電圧の昇圧は、エンジン4の始動が完了するまでに完了する。
ここで、「エンジン4の始動が完了するタイミング」は、始動フラグが「始動中状態」を示す値から「始動完了状態」を示す値に変更されるタイミングである。始動フラグが「始動完了状態」を示す値に変更されるタイミングは、例えば、図3の4段目のグラフに示すように、エンジン4の始動を開始した後にエンジン4の回転数が所定回転数R_th以上となる状態が一例としてあげられる。或いは、始動フラグが「始動完了状態」を示す値に変更されるタイミングは、例えば、図3の3段目のグラフに示すように、エンジン4の始動を開始した後にクランキング電力がゼロとなる状態が他の一例としてあげられる。但し、始動フラグが「始動完了状態」を示す値に変更されるタイミング(つまり、エンジン4の始動が完了するタイミング)を判定する条件は、ハイブリッド車両100の仕様やエンジン4の仕様等に応じて適宜設定されてもよい。
以上説明したように、本実施形態によれば、クランキング電力がピークとなる電力ピークタイミング以降であって且つエンジン4の始動が完了するまでの間の任意のタイミングで電源ラインPL1の電圧の昇圧が開始される。
ここで、図3の2段目のグラフ中の太い一点鎖線で示すように、電源ラインPL1の電圧の昇圧が、常にエンジン4の始動の開始と同時に又はエンジン4の始動の開始よりも前に開始される第1比較例のハイブリッド車両について説明する。第1比較例のハイブリッド車両では、本実施形態のハイブリッド車両100と比較して、電源ラインPL1の電圧の昇圧が相対的に早いタイミングで開始されるがゆえに、当該昇圧に起因した電力ロスが相対的に多く発生する。その結果、図3の5段目のグラフ中の太い一点鎖線で示す第1比較例のハイブリッド車両における蓄電装置の消費電力は、図3の5段目のグラフ中の太い線で示す本実施形態のハイブリッド車両100における蓄電装置Bの消費電力よりも大きくなってしまう。つまり、本実施形態のハイブリッド車両100では、第1比較例のハイブリッド車両と比較して、電源ラインPL1の電圧の昇圧に伴う電力ロスが低減されるがゆえに、蓄電装置Bの消費電力が低減される。
一方で、図3の2段目のグラフ中の太い点線で示すように、電源ラインPL1の電圧の昇圧が、常にエンジン4の始動の完了と同時に又はエンジン4の始動の完了よりも後に開始される第2比較例のハイブリッド車両について説明する。第2比較例のハイブリッド車両では、本実施形態のハイブリッド車両100と比較して、電源ラインPL1の電圧の昇圧が相対的に遅いタイミングで開始されるがゆえに、エンジン4の始動が完了した時点でモータジェネレータMG2の駆動力が不足するおそれがある。つまり、第2比較例のハイブリッド車両では、エンジン4の始動が完了した時点で電源ラインPL1の電圧の昇圧が完了していないがゆえに、エンジン4の始動が完了した時点でハイブリッド車両100の走行に必要なモータジェネレータMG2の駆動力を確保することができないおそれがある。というのも、ハイブリッド車両100の走行に必要なモータジェネレータMG2の駆動力を確保するためには、電源ラインPL1の電圧の昇圧が完了していることが好ましいことが多いからである。しかるに、本実施形態のハイブリッド車両100では、第2比較例のハイブリッド車両と比較して、モータジェネレータMG2の駆動力を早期に確保することができる。言い換えれば、本実施形態のハイブリッド車両100では、第2比較例のハイブリッド車両と比較して、エンジン4の始動が完了した時点で又はエンジン4の始動が完了してから遅滞なくモータジェネレータMG2の駆動力を確保することができる。従って、本実施形態のハイブリッド車両100では、第2比較例のハイブリッド車両と比較して、モータジェネレータMG2の駆動力の不足に伴う走行レスポンスの悪化が好適に抑制される。加えて、本実施形態では、エンジン4の始動自体を遅延させることがないため、モータジェネレータMG2の駆動力の不足に伴う走行レスポンスのみならず、エンジン4の始動の遅延に伴う走行レスポンスの悪化もまた好適に抑制される。
このように、本実施形態のハイブリッド車両100によれば、蓄電装置Bの消費電力の低減とハイブリッド車両100の走行レスポンスとの間のバランスを考慮した好適なタイミングで、電源ラインPL1の電圧(言い換えれば、蓄電装置Bの電圧)の昇圧が開始される。
尚、一般的には、クランキング電力がピークとなった後は、クランキングシャフトの回転(或いは、ピストンの往復運動)によって発生する慣性力や、クランキングシャフトの回転(或いは、ピストンの往復運動)によって低減する摩擦力に起因して、クランキング電力が相対的に小さくなる。言い換えれば、一般的には、クランキング電力がピークとなるまでは、相対的に運動量の少ない又は運動していないがゆえに摩擦力が大きく且つ慣性力が小さいクランキングシャフト(或いは、ピストン)を動かす必要があるため、クランキング電力は相対的に大きい。このため、クランキング電力がピークとなった後に電源ラインPL1の電圧の昇圧が開始されれば、仮に昇圧に伴う電力ロスが発生したとしても、当該電力ロスがエンジン4の始動(言い換えれば、エンジン4を始動させるためのモータジェネレータMG1の動作)に影響を与えることは殆どない。具体的には、例えば、昇圧に伴う電力ロスによって蓄電装置Bの出力電力がクランキング電力を下回ってしまうことは殆どない。従って、電力ピークタイミング以降に電源ラインPL1の電圧の昇圧が開始されれば、エンジン4の始動自体に影響を与えることなく上述した効果が享受される。
加えて、一般的には、初爆タイミング以降は、エンジン4の燃焼室内での燃焼(言い換えれば、当該燃焼に伴うクランキングシャフトの自発的な回転)に起因して、クランキング電力が相対的に小さくなる。このため、初爆タイミングに合わせて昇圧が開始されれば、仮に昇圧に伴う電力ロスが発生したとしても、当該電力ロスがエンジン4の始動(言い換えれば、エンジン4を始動させるためのモータジェネレータMG1の動作)に影響を与えることは殆どない。具体的には、例えば、昇圧に伴う電力ロスによって蓄電装置Bの出力電力がクランキング電力を下回ってしまうことは殆どない。従って、初爆タイミングに合わせて電源ラインPL1の電圧の昇圧が開始されれば、エンジン4の始動自体に影響を与えることなく上述した効果が享受される。
尚、初爆が行われてからエンジン4の燃焼室内で燃焼が安定するようになるまでに要する時間は、エンジン4の仕様にもよるが、概ね0.3秒程度となる。というのも、燃焼が安定するまでにエンジン4のサイクルで3サイクル程度が必要であるが、仮にエンジン4を始動している最中のエンジン4の回転数を1200回転/分(rpm)と仮定すると、1サイクルあたり0.1秒の時間を要するため、燃焼が安定するようになるまでに要する時間が0.1×3=0.3秒となる。一方で、電源ラインPL1の電圧の昇圧を開始してから完了するまでに要する時間は、昇圧コンバータ10の仕様等にもよるが、概ね0.1秒となる。このため、初爆タイミングに合わせて電源ラインPL1の電圧の昇圧が開始されれば、エンジン4の始動が完了するまでに電源ラインPL1の電圧の昇圧が完了することになる。
尚、上述の説明では、クランキング電力を直接的に参照することで、電源ラインPL1の電圧の昇圧を開始するタイミングが調整されている。一方で、クランキング電力と相関性を有する他の指標(例えば、クランキングトルク等)を参照する(つまり、クランキング電力を間接的に参照する)ことで、電源ラインPL1の電圧の昇圧を開始するタイミングが調整されてもよい。
(3−2)第2動作例
続いて、図4から図7を参照して、エンジン4の始動時における昇圧コンバータ10の昇圧動作の第2動作例について説明する。図4は、エンジン4の始動時における昇圧コンバータ10の昇圧動作の第2動作例の流れを示すフローチャートである。図5から図7の夫々は、エンジン4の始動時における昇圧コンバータ10の昇圧動作の第2動作例の流れを示すタイミングチャートである。尚、上述した第1動作例と同様の動作については、同一のステップ番号を付して、その詳細な説明を省略する。
図4に示すように、第2動作例においても、第1動作例と同様に、ステップS11からステップS14までの動作が行われる。具体的には、昇圧制御部62は、蓄電装置Bの状態(例えば、SOC)を検出する(ステップS11)。昇圧制御部62は、エンジン4の状態(例えば、エンジン水温等)を検出する(ステップS12)。昇圧制御部62は、ハイブリッド車両100の運転条件を検出する(ステップS13)。始動制御部61は、エンジン4の始動要求があるか否かを判定する(ステップS14)。運転条件としては、例えば、ハイブリッド車両100の走行モードや、ハイブリッド車両100のシフトレバーのレンジや、ハイブリッド車両100に対する制振要求指示(或いは、制振制御カット指示)の有無や、エンジン4の暖機状態(例えば、エンジン4ないしは触媒の温度)や、アクセル開度や、ハイブリッド車両100の過去の、現在の若しくは未来の走行状態等が一例としてあげられる。
ステップS14の判定の結果、エンジン4の始動要求がないと判定される場合には(ステップS14:No)、始動制御部61は、エンジン4を始動するようにモータジェネレータMG1を制御しなくともよい。また、この場合には、昇圧制御部63は、電源ラインPL1の電圧の昇圧を開始するように昇圧コンバータ10を制御しなくともよい。
他方で、ステップS14の判定の結果、エンジン4の始動要求があると判定される場合には(ステップS14:Yes)、始動制御部61は、エンジン4を始動するようにモータジェネレータMG1を制御する。その結果、エンジン4の始動が開始される。
このとき、昇圧制御部62は、ステップS13で検出した運転条件に基づいて、電源ラインPL1の電圧の昇圧を開始するタイミングを設定する(ステップS21)。
具体的には、昇圧制御部62は、ステップS13で検出した運転条件に基づいて、ハイブリッド車両100が走行レスポンスの向上を優先させる状態にあるか否かを判定してもよい。昇圧制御部62は、ハイブリッド車両100が走行レスポンスの向上を優先させる状態にあるか否かを判定するために、ハイブリッド車両100の走行モード(例えば、ドライバが指定可能な走行モード)が、走行パワーないしは走行レスポンスを重視又は優先するパワーモードであるか否かを判定してもよい。ハイブリッド車両100の走行モードがパワーモードであると判定される場合には、ハイブリッド車両100が走行レスポンスの向上を優先させる状態にあると判定されてもよい。他方で、ハイブリッド車両100の走行モードがパワーモードでないと判定される場合には、ハイブリッド車両100が走行レスポンスの向上を優先させる状態にないと判定されてもよい。
ハイブリッド車両100が走行レスポンスの向上を優先させる状態にあると判定される場合には、ハイブリッド車両100が走行レスポンスの向上を優先させる状態にないと判定される場合と比較して、電源ラインPL1の電圧の昇圧を開始するタイミングが早められることが好ましい。言い換えれば、昇圧制御部62は、ハイブリッド車両100が走行レスポンスの向上を優先させる状態にあると判定される場合に電源ラインPL1の電圧の昇圧を開始するタイミングが、ハイブリッド車両100が走行レスポンスの向上を優先させる状態にないと判定される場合に電源ラインPL1の電圧の昇圧を開始するタイミングよりも早くなるように、電源ラインPL1の電圧の昇圧を開始するタイミングを設定することが好ましい。
というのも、ハイブリッド車両100が走行レスポンスの向上を優先する状態である場合には、蓄電装置Bの消費電力の低減を目的として電源ラインPL1の電圧の昇圧の開始が遅延される(例えば、相対的に遅いタイミングで昇圧が開始される)と、当該昇圧の遅延に起因して、モータジェネレータMG2の駆動力が不足するおそれがある。言い換えれば、昇圧の遅延に起因して、ハイブリッド車両100の走行に必要な駆動力をモータジェネレータMG2が出力することができるようになるタイミングが遅くなってしまうおそれがある。というのも、上述したように、モータジェネレータMG2から必要な駆動力を取り出すためには、電源ラインPL1の電圧の昇圧が完了していることが好ましい場合が多いからである。従って、ハイブリッド車両100が走行レスポンスの向上を優先する状態である場合には、相対的に早いタイミングで昇圧が開始されることが好ましい。
例えば、ハイブリッド車両100が走行レスポンスの向上を優先させる状態にあると判定される場合には、昇圧制御部62は、図5の2段目のグラフに示すように、電力ピークタイミング以降であって且つ初爆タイミングまでの間の任意のタイミングを、電源ラインPL1の電圧の昇圧を開始するタイミングに設定してもよい。他方で、ハイブリッド車両100が走行レスポンスの向上を優先させる状態にないと判定される場合には、昇圧制御部62は、図5の3段目のグラフに示すように、初爆タイミング以降であって且つエンジン4の始動が完了するまでの間の任意のタイミングを、電源ラインPL1の電圧の昇圧を開始するタイミングに設定してもよい。
或いは、例えば、ハイブリッド車両100が走行レスポンスの向上を優先させる状態にあると判定される場合には、昇圧制御部62は、図6の2段目のグラフに示すように、電力ピークタイミング以降であって且つ電源ラインPL1の電圧の昇圧を開始してから完了するまでに必要な時間をエンジン4の始動が完了する時刻から差し引いた時刻までの間の任意のタイミングを、電源ラインPL1の電圧の昇圧を開始するタイミングに設定してもよい。他方で、ハイブリッド車両100が走行レスポンスの向上を優先させる状態にないと判定される場合には、昇圧制御部62は、図6の3段目のグラフに示すように、電源ラインPL1の電圧の昇圧を開始してから完了するまでに必要な時間をエンジン4の始動が完了する時刻から差し引いた時刻(或いは、当該時刻以降であって且つエンジン4の始動が完了するまでの間の任意のタイミング)を、電源ラインPL1の電圧の昇圧を開始するタイミングに設定してもよい。
或いは、例えば、ハイブリッド車両100が走行レスポンスの向上を優先させる状態にあると判定される場合には、昇圧制御部62は、図7の2段目のグラフに示すように、エンジン4の始動を開始してから電力ピークタイミングまでの間の任意のタイミング又はエンジン4の始動を開始する前の任意のタイミングを、電源ラインPL1の電圧の昇圧を開始するタイミングに設定してもよい。他方で、ハイブリッド車両100が走行レスポンスの向上を優先させる状態にないと判定される場合には、昇圧制御部62は、図5の3段目のグラフに示すように、電力ピークタイミングからエンジン4の始動が完了するまでの間の任意のタイミングを、電源ラインPL1の電圧の昇圧を開始するタイミングに設定してもよい。
その結果、ハイブリッド車両100が走行レスポンスの向上を優先させる状態にあると判定される場合には、相対的に早いタイミングで昇圧が開始されるがゆえに、走行レスポンスの悪化が好適に抑制される。一方で、ハイブリッド車両100が走行レスポンスの向上を優先させる状態にないと判定される場合には、図5から図7の夫々の6段目のグラフ中の太い実線で示すように、蓄電装置Bの消費電力が低減される。
或いは、昇圧制御部62は、ステップS13で検出した運転条件に基づいて、ハイブリッド車両100がNVH(Noise Vibration Harshness)特性の向上を優先させる状態にあるか否かを判定してもよい。昇圧制御部62は、ハイブリッド車両100がNVH特性の向上を優先させる状態にあるか否かを判定するために、ハイブリッド車両100の走行モードが、乗り心地を重視又は優先するコンフォートモードであるか否かを判定してもよい。ハイブリッド車両100の走行モードがコンフォートモードであると判定される場合には、ハイブリッド車両100がNVH特性の向上を優先させる状態にあると判定されてもよい。他方で、ハイブリッド車両100の走行モードがコンフォートモードでないと判定される場合には、ハイブリッド車両100がNVH特性の向上を優先させる状態にないと判定されてもよい。或いは、昇圧制御部62は、ハイブリッド車両100がNVH特性の向上を優先させる状態にあるか否かを判定するために、ハイブリッド車両100に対して制振要求指示がなされているか否か(言い換えれば、制振制御カット指示がなされているか否か)を判定してもよい。制振要求指示がなされている(言い換えれば、制振制御カット指示がなされていない)と判定される場合には、ハイブリッド車両100がNVH特性の向上を優先させる状態にあると判定されてもよい。他方で、制振要求指示がなされていない(言い換えれば、制振制御カット指示がなされている)と判定される場合には、ハイブリッド車両100がNVH特性の向上を優先させる状態にないと判定されてもよい。
ハイブリッド車両100がNVH特性の向上を優先させる状態にあると判定される場合には、ハイブリッド車両100がNVH特性の向上を優先させる状態にないと判定される場合と比較して、電源ラインPL1の電圧の昇圧を開始するタイミングが早められることが好ましい。言い換えれば、昇圧制御部62は、ハイブリッド車両100がNVH特性の向上を優先させる状態にあると判定される場合に電源ラインPL1の電圧の昇圧を開始するタイミングが、ハイブリッド車両100がNVH特性の向上を優先させる状態にないと判定される場合に電源ラインPL1の電圧の昇圧を開始するタイミングよりも早くなるように、電源ラインPL1の電圧の昇圧を開始するタイミングを設定することが好ましい。
というのも、ハイブリッド車両100がNVH特性の向上を優先する状態である場合には、消費電力の低減を目的として電源ラインPL1の電圧の昇圧の開始が遅延される(例えば、相対的に遅いタイミングで昇圧が開始される)と、当該昇圧の遅延に起因してNVH特性が犠牲になるおそれがある。従って、ハイブリッド車両100がNVH特性の向上を優先する状態である場合には、相対的に早いタイミングで昇圧が開始されることが好ましい。
また、ハイブリッド車両100において制振制御が行われていない場合には、制振制御が行われている場合と比較して、ハイブリッド車両100の車速が同じであったとしても、クランキングトルクとモータジェネレータMG1の回転数との乗数のピークが小さくなる傾向にある。従って、ハイブリッド車両100において制振制御が行われていない場合には、電源ラインPL1の昇圧が開始されない(或いは、完了しない)としても、当該昇圧前の電圧で動作するモータジェネレータMG1によってエンジン4の始動に必要なクランキングトルクが充足される可能性が相対的に高くなる。言い換えれば、ハイブリッド車両100において制振制御が行われていない場合には、電源ラインPL1の昇圧が開始されない(或いは、完了しない)としても、エンジン4の始動に影響が生ずる可能性は相対的に低くなる。従って、ハイブリッド車両100において制振制御が行われていない場合には、相対的に早いタイミングで昇圧が開始されなくともよい(言い換えれば、相対的に遅いタイミングで昇圧が開始されてもよい)。
尚、ハイブリッド車両100がNVH特性の向上を優先させる状態にあると判定される場合に電源ラインPL1の電圧の昇圧を開始するタイミングは、上述したハイブリッド車両100が走行レスポンスの向上を優先させる状態にあると判定される場合と同様の態様で設定されてもよい。同様に、ハイブリッド車両100がNVH特性の向上を優先させる状態にないと判定される場合に電源ラインPL1の電圧の昇圧を開始するタイミングは、上述したハイブリッド車両100が走行レスポンスの向上を優先させる状態にないと判定される場合と同様の態様で設定されてもよい。
或いは、昇圧制御部62は、ステップS13で検出した運転条件に基づいて、ハイブリッド車両100がエミッションの低減(例えば、法規を満たすためのエミッションの低減)を優先させる状態にあるか否かを判定してもよい。昇圧制御部62は、ハイブリッド車両100がエミッションの低減を優先させる状態にあるか否かを判定するために、エンジン4(或いは、エンジン4が備える触媒)が冷機状態にあるか否かを判定してもよい。エンジン4が冷機状態にあると判定される場合には、触媒が暖機されていないと推測されるがゆえに、エミッションが悪化してしまうおそれがある。従って、エンジン4が冷機状態にあると判定される場合には、触媒を暖機することでエミッションの低減を図るために、ハイブリッド車両100がエミッションの低減を優先させる状態にあると判定されてもよい。他方で、エンジン4が冷機状態にない(つまり、暖機状態にある)と判定される場合には、触媒もまた暖機されていると推測されるがゆえに、エミッションが悪化してしまうおそれが少ない。従って、エンジン4が冷機状態にないと判定される場合には、ハイブリッド車両100がエミッションの低減を優先させる状態にないと判定されてもよい。尚、昇圧制御部62は、例えばエンジン4の温度(特に、冷却水の水温)や触媒の温度等に基づいて、エンジン4が冷機状態にあるか否かを判定してもよい。
ハイブリッド車両100がエミッションの低減を優先させる状態にあると判定される場合には、ハイブリッド車両100がエミッションの低減を優先させる状態にないと判定される場合と比較して、電源ラインPL1の電圧の昇圧を開始するタイミングが早められることが好ましい。言い換えれば、昇圧制御部62は、ハイブリッド車両100がエミッションの低減を優先させる状態にあると判定される場合に電源ラインPL1の電圧の昇圧を開始するタイミングが、ハイブリッド車両100がエミッションの低減を優先させる状態にないと判定される場合に電源ラインPL1の電圧の昇圧を開始するタイミングよりも早くなるように、電源ラインPL1の電圧の昇圧を開始するタイミングを設定することが好ましい。
というのも、ハイブリッド車両100がエミッションの低減を優先する状態である場合には、消費電力の低減を目的として電源ラインPL1の電圧の昇圧の開始が遅延される(例えば、相対的に遅いタイミングで昇圧が開始される)と、当該昇圧の遅延に起因してエミッションの低減が犠牲になるおそれがある。言い換えれば、ハイブリッド車両100がエミッションの低減を優先する状態である場合には、電源ラインPL1の電圧の昇圧の開始を遅延することで消費電力の低減を実現するよりも、まずは、法規に定められたエミッションの低減を実現することが優先されることが好ましい。従って、ハイブリッド車両100がエミッションの低減を優先する状態である場合には、相対的に早いタイミングで昇圧が開始されることが好ましい。
尚、ハイブリッド車両100がエミッションの低減を優先させる状態にあると判定される場合に電源ラインPL1の電圧の昇圧を開始するタイミングは、上述したハイブリッド車両100が走行レスポンスの向上を優先させる状態にあると判定される場合と同様の態様で設定されてもよい。同様に、ハイブリッド車両100がエミッションの低減を優先させる状態にないと判定される場合に電源ラインPL1の電圧の昇圧を開始するタイミングは、上述したハイブリッド車両100が走行レスポンスの向上を優先させる状態にないと判定される場合と同様の態様で設定されてもよい。
或いは、昇圧制御部62は、ステップS13で検出した運転条件に基づいて、ハイブリッド車両100が消費電力(つまり、蓄電装置Bの消費電力)の低減を優先させる状態にあるか否かを判定してもよい。昇圧制御部62は、ハイブリッド車両100が消費電力の低減を優先させる状態にあるか否かを判定するために、ハイブリッド車両100の走行モードが、低燃費走行を優先させるエコモードであるか否かを判定してもよい。ハイブリッド車両100の走行モードがエコモードであると判定される場合には、ハイブリッド車両100が消費電力の低減を優先させる状態にあると判定されてもよい。他方で、ハイブリッド車両100の走行モードがエコモードでないと判定される場合には、ハイブリッド車両100が消費電力の低減を優先させる状態にないと判定されてもよい。
ハイブリッド車両100が消費電力の低減を優先させる状態にあると判定される場合には、ハイブリッド車両100が消費電力の低減を優先させる状態にないと判定される場合と比較して、電源ラインPL1の電圧の昇圧を開始するタイミングが遅らされることが好ましい。言い換えれば、昇圧制御部62は、ハイブリッド車両100が消費電力の低減を優先させる状態にあると判定される場合に電源ラインPL1の電圧の昇圧を開始するタイミングが、ハイブリッド車両100が消費電力の低減を優先させる状態にないと判定される場合に電源ラインPL1の電圧の昇圧を開始するタイミングよりも遅くなるように、電源ラインPL1の電圧の昇圧を開始するタイミングを設定することが好ましい。
尚、ハイブリッド車両100が消費電力の低減を優先させる状態にあると判定される場合に電源ラインPL1の電圧の昇圧を開始するタイミングは、上述したハイブリッド車両100が走行レスポンスの向上を優先させる状態にないと判定される場合と同様の態様で設定されてもよい。同様に、ハイブリッド車両100が消費電力の低減を優先させる状態にないと判定される場合に電源ラインPL1の電圧の昇圧を開始するタイミングは、上述したハイブリッド車両100が走行レスポンスの向上を優先させる状態にあると判定される場合と同様の態様で設定されてもよい。
或いは、昇圧制御部62は、ステップS13で検出した運転条件に基づいて、ステップS14でのエンジン4の始動要求が、ハイブリッド車両100の走行に寄与する動力の生成とは異なる他の目的でのエンジン4の始動要求(以降、適宜“走行目的外始動要求”と称する)であるか否かを判定してもよい。尚、走行目的外始動要求としては、例えば、蓄電装置BのSOCの回復を目的とするエンジン4の始動要求や、補機(例えば、オルタネータ等)の駆動を目的とするエンジン4の始動要求や、暖機を目的とするエンジン4の始動要求等が一例としてあげられる。
昇圧制御部62は、ステップS14での始動要求が走行目的外始動要求であるか否かを判定するために、ハイブリッド車両100のトランスミッション(より具体的には、変速ギヤ)を選択するためにドライバによって操作されるシフトレバーのレンジを判定してもよい。シフトレバーがPレンジであると判定される場合には、ステップS14での始動要求が走行目的外始動要求であると判定されてもよい。他方で、シフトレバーがPレンジでないと判定される場合には、ステップS14での始動要求が走行目的外始動要求でないと判定されてもよい。
或いは、昇圧制御部62は、ステップS14での始動要求が走行目的外始動要求であるか否かを判定するために、シフトレバーのレンジに加えて、アクセル開度が所定開度以下であるか否かを判定してもよい。シフトレバーがDレンジであり且つアクセル開度が所定開度以下であると判定される場合には、ステップS14での始動要求が走行目的外始動要求であると判定されてもよい。他方で、シフトレバーがDレンジでないか又はアクセル開度が所定開度以下でないと判定される場合には、ステップS14での始動要求が走行目的外始動要求でないと判定されてもよい。
ステップS14での始動要求が走行目的外始動要求であると判定される場合には、ステップS14での始動要求が走行目的外始動要求でないと判定される場合と比較して、電源ラインPL1の電圧の昇圧を開始するタイミングが遅らされることが好ましい。言い換えれば、昇圧制御部62は、ステップS14での始動要求が走行目的外始動要求であると判定される場合に電源ラインPL1の電圧の昇圧を開始するタイミングが、ステップS14での始動要求が走行目的外始動要求でないと判定される場合に電源ラインPL1の電圧の昇圧を開始するタイミングよりも遅くなるように、電源ラインPL1の電圧の昇圧を開始するタイミングを設定することが好ましい。
というのも、シフトレバーがPレンジである場合には、ハイブリッド車両100が走行していないがゆえに、ハイブリッド車両100の走行に寄与するための駆動力をモータジェネレータMG2が早期に発生させる必要性が相対的に低い。従って、シフトレバーがPレンジである場合にまで相対的に早いタイミングで昇圧が開始される必要性が相対的に小さくなる。加えて、シフトレバーがPレンジである場合には、ハイブリッド車両100が走行を開始するために、シフトレバーがDレンジに変更される必要がある。この場合、シフトレバーがPレンジからDレンジに変更される時間を、電源ラインPL1の電圧の昇圧が行われる時間として活用することができる。従って、シフトレバーがPレンジである場合にまで相対的に早いタイミングで昇圧が開始される必要性が相対的に小さくなる。このため、シフトレバーがPレンジである場合(つまり、ステップS14での始動要求が走行目的外始動要求である場合)には、相対的に早いタイミングで昇圧が開始されなくともよい(言い換えれば、相対的に遅いタイミングで昇圧が開始されてもよい)。
或いは、シフトレバーがDレンジであり且つアクセル開度が所定開度以下である(つまり、ハイブリッド車両100の走行に寄与するための駆動力の要求が相対的に小さい)場合には、ハイブリッド車両100の車速が相対的に低速であると推測される。ハイブリッド車両100の車速が相対的に低速である場合には、ハイブリッド車両100の車速が相対的に高速である(例えば、アクセル開度が所定より大きい)場合と比較して、モータジェネレータMG1のクランキングトルクが同一であったとしても、始動中の回転数が相対的に狭い範囲内で変化する。従って、シフトレバーがDレンジであり且つアクセル開度が所定開度以下である場合には、電源ラインPL1の昇圧が開始されない(或いは、完了しない)としても、当該昇圧前の電圧で動作するモータジェネレータMG1によってエンジン4の始動に必要なクランキングトルクが充足される可能性が相対的に高くなる。言い換えれば、シフトレバーがDレンジであり且つアクセル開度が所定開度以下である場合には、電源ラインPL1の昇圧が開始されない(或いは、完了しない)としても、エンジン4の始動に影響が生ずる可能性は相対的に低くなる。従って、シフトレバーがDレンジであり且つアクセル開度が所定開度以下である場合には、相対的に早いタイミングで昇圧が開始されなくともよい(言い換えれば、相対的に遅いタイミングで昇圧が開始されてもよい)。
尚、ステップS14での始動要求が走行目的外始動要求であると判定される場合に電源ラインPL1の電圧の昇圧を開始するタイミングは、上述したハイブリッド車両100が走行レスポンスの向上を優先させる状態にないと判定される場合と同様の態様で設定されてもよい。同様に、ステップS14での始動要求が走行目的外始動要求でないと判定される場合に電源ラインPL1の電圧の昇圧を開始するタイミングは、上述したハイブリッド車両100が走行レスポンスの向上を優先させる状態にあると判定される場合と同様の態様で設定されてもよい。
その後、昇圧制御部62は、現在のタイミングが、ステップS21で設定したタイミング(つまり、電源ラインPL1の電圧の昇圧を開始するタイミング)であるか否かを判定する(ステップS22)。
ステップS22の判定の結果、現在のタイミングがステップS21で設定したタイミングでないと判定される場合には(ステップS22:No)、昇圧制御部62は、現在のタイミングがステップS21で設定したタイミングであるか否かを判定し続ける。
他方で、ステップS22の判定の結果、現在のタイミングがステップS21で設定したタイミングであると判定される場合には(ステップS22:Yes)、昇圧制御部62は、電源ラインPL1の電圧の昇圧を開始するように、昇圧コンバータ10を制御する(ステップS16)。その結果、昇圧コンバータ10は、電源ラインPL1の電圧の昇圧を開始する(ステップS16)。
以上説明したように、第2動作例においても、第1動作例と同様に、蓄電装置Bの消費電力の低減とハイブリッド車両100の走行レスポンスとの間のバランスを考慮した好適なタイミングで、電源ラインPL1の電圧(言い換えれば、蓄電装置Bの電圧)の昇圧が開始される。特に、第2動作例では、ハイブリッド車両100の運転条件を考慮したより好適なタイミングで、電源ラインPL1の電圧の昇圧が開始される。従って、ハイブリッド車両100の運転条件に応じて、蓄電装置Bの消費電力の低減とハイブリッド車両100の走行レスポンスとの間のバランスをより好適に図ることができる。
尚、本発明は、請求の範囲及び明細書全体から読み取るこのできる発明の要旨又は思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うハイブリッド車両の制御装置もまた本発明の技術思想に含まれる。