PONシステムの構成例を図1に示す。PONシステムは、OLT(101)、複数のONU(102)およびそれらの間を接続するスプリッタ、コネクタ(105)、光ファイバ伝送路(106)から構成される。図1の例では、スプリッタは4分岐スプリッタ(103)、8分岐スプリッタ(104)の2段になっている。OLT(101)及び複数のONU(102)との間で、ポイント・ツー・マルチポイントの通信を行う。本構成図において、光ファイバ伝送路(106―1)を光ファイバ伝送路(106―2)へ切り替える様子についても示している。光ファイバ伝送路を切り替える場合、光信号が瞬断する。
ギガビットクラスのPONの代表的な規格として、IEEE802.3にて標準化されたEPON(Ethernet(登録商標)PON)がある。非特許文献1では、EPONにおけるOLTおよびONUの構成が開示されている。また、10ギガビットクラスのPONの規格として、10G―EPONが標準化されている。一方、ITU−Tにて標準化されたGPON(gigabit−capable PON)もある。さらに、ITU−Tにて10ギガビットクラスのPONの規格として、XG―EPONが標準化されている。
従来のOLTの構成を図2に示す。OLT(201)は、ONUと光ファイバ伝送路(106)を介して接続されるPON−IF(PON−interface)ポート(202)、サービスノードから受信した信号をONUへ転送する信号処理とONUから受信した信号をサービスノードへ転送する信号処理を行うPON信号処理部(203)、サービスノードと接続されるSNI(service node interface)ポート(204)、及び監視制御を行う制御部(205)を含んで構成されている。不図示のサービスノードから転送された下り主信号は、SNIポート(204)、PON信号処理部(203)およびPON−IFポート(202)を介して、ONUに向けて転送される。一般的に、PONの下り信号は、各ONUへ光ファイバ伝送路(106)を介してブロードキャストされるため、PON信号処理部(203)で暗号化される。制御部(205)は、PONの構成上(光ファイバ伝送路(106)を複数のONUで共有している構成)、各ONUからの上り信号が衝突しないタイミングとなるように送信開始時刻を指定する。たとえば、EPONでは、MPCP(multipoint control protocol)とよばれるプロトコルを用い、OLT(101)は、各ONU(102)に対して上り信号の送信開始時刻を記載したGATEフレームが送信し、各ONU(102)は、GATEフレームで指定された時刻にOLT(101)へデータフレームおよびREPORTフレームを送信する。ONUが送信した上りフレームは、PON−IFポート(202)で受信し、PON信号処理部(203)及びSNIポート(204)を介して、不図示のサービスノードに転送される。
ONUの機能ブロック図を図3に示す。ONU(301)は、通信端末と接続するUNI(user network interface)ポート(302)、信号の送受信処理を行うPON信号処理部(303)、光ファイバ伝送路(106)を介してOLTと接続するPON−IFポート(304)、ONUの監視制御を行う制御部(305)を含んで構成されている。下り主信号は、PON−IFポート(305)、PON信号処理部(303)、およびUNIポート(302)を介して、OLTからの信号が不図示の通信端末に向けて転送される。下り信号がOLT(201)で暗号化されている場合、PON信号処理部(303)において復号化処理が行われる。上り主信号は、UNIポート(302)、PON信号処理部(303)およびPON−IFポート(304)を介して、通信端末からの信号がOLTに向けて転送される。
OLT(101)とONU(102)が通信中に、光ファイバ伝送路(106)に対し、伝送路切替を実施した場合、光信号が物理的に一瞬だけ断となる瞬断(物理信号断)が発生する。このとき、通信不可となる時間が瞬断の時間だけでは済まず、長時間化することついて、図4及び図5を用いて説明する。図4は、光信号の瞬断が発生した後の、OLTの制御部(205)が実行する処理フローを示している。図5は、光信号の瞬断が発生した後の、ONUの制御部(305)が実行する処理フローを示している。
図4のOLT制御部(205)の処理フローについて説明する。ここでは、EPONを例にして説明する。まず、瞬断発生(S101)後、OLTはTimestamp Drift Error検知の判定を行う。(S102)。これは、OLTが、OLTと各ONU間の往復伝送遅延時間(RTT:round trip time)を、REPORTフレームを受信する度に計算し、RTTが192nsを超えて変化した場合に、Timestamp Drift Errorを検知する(IEEE802.3規定)。 一般的に、光ファイバ伝送路の切替の際には、伝送路距離が大きく変化する場合がある。この場合、OLTとONU間のRTTが変わる。たとえば、光ファイバ中を進む光信号の速度を20万km/sと仮定すると、19.2m(=20万km/s×192ns÷2)を超えて伝送路距離が変化した場合にTimestamp Drift Errorとなる。
OLTは、Timestamp Drift Errorを検知すると、当該のONUを登録抹消する(S104)。また、ONUからのREPORTフレームがOLTに到達しない場合も発生し得る。REPORTフレームがOLTへ到達しない状態が1秒経過すると、MPCP Timeout(S103)となる。このとき、OLTは当該のONUを登録抹消する(S104)。登録抹消状態となったONUを再登録するため、OLTとONU間でMPCP Discovery処理(S105)が実行され、ONUは送信許可が与えられた状態になる。
次に、OAM(operations,administration,and maintenance) Discovery処理(S106)が実行され、保守運用管理用のOAMフレームの送受信が行える状態になる。次に、認証機能処理(S107)が実行され、OLTは接続されたONUが接続すべき機器であるかを確認する。一連の登録処理が実行されたのち、OLTとONU間の通信が可能な状態となり、通信が再開され(S108)、通常状態に戻る(S109)。なお、光信号が瞬断した場合においても、瞬断時間が非常に短く、かつ伝送距離変化が小さい場合は、Timestamp Drift ErrorやMPCP Timeoutが検知されない場合がある。この場合は、通常状態を保ったままとなる(S103からS109への遷移となる処理)。
図5のONU制御部(305)の処理フローについて説明する。まず、光信号の瞬断が発生すると(S201)、光信号強度が規程値を下回り、PON−IFポートにおいてLOS(loss of signal)が検知される(S202)。さらに、光信号強度が下がりきらずLOS検知されなかった場合でも、切替後に伝送路距離が変化したために、GATEフレームに記載されたTimestamp(OLTのローカル時刻)とONUのローカル時刻が大きくずれ、Timestamp Drift Errorとなることがある(S203)。なお、LOS検知はG−PONで規定されている。
また、伝送路距離が変化しなくても、光信号の瞬断時にONUが内部クロックに基づく自走モードになる場合がある。その際は光信号の瞬断が解消した際にもONUには、OLTのローカル時刻とONUのローカル時刻のずれが発生し、ONUは、Timestamp Drift Errorを検知する。ここで、IEEE802.3では、OLTのローカル時刻とONUのローカル時刻のずれが128nsを超えた場合に、ONUでTimestamp Drift Errorとなることを規定している。IEEE802.3では、各装置のクロックの誤差が+−100ppmを許容している。したがって、OLTとONUのクロック誤差をそれぞれ+−100ppmと仮定すると、最短で640μs(=128ns÷(100ppm+100ppm))の瞬断でTimestamp Drift Errorとなる可能性がある。また、ONUは、1秒を超えてOLTからのMPCPフレームが受信できない場合、MPCP timeoutを検知する(S204)。
LOS検知、Timestamp Drift Error、MPCP timeoutのいずれかに当てはまる場合、論理リンク断の状態(S205)に遷移する。それ以外の場合は、光信号が瞬断したことをONUでは検知できなかったこととなり、そのまま通常状態(S210)に戻る。論理リンク断の状態(S205)において、光信号は瞬断のみですぐに回復しており、OLTとONUの間で、通信を再開するための処理を実行する。この登録処理はOLTとONUの間で実行されるもので、OLTの処理S105、S106、S107に対応した処理となる。ONUでも、MPCP Discoveryシーケンス(S206)、OAM Discoveryシーケンス(S207)、認証機能処理(S208)が実行される。これら処理S206〜S208が完了した後、OLTとONUは通信を再開する(S209)。この処理が完了すると、通信が可能な通常状態(S210)に戻ることとなる。
光信号の瞬断が発生し、論理リンク断となったのち、主信号の導通が再開するまでの時間、通信は不可状態のままとなる。この論理リンク断時間は、処理S206〜S208に必要な時間となり、光信号が瞬断している時間よりも、はるかに長い時間にわたる通信サービス停止となる。
通信サービスへの影響を低減するため、光ファイバ伝送路の切替を自動化し、光信号が瞬断する時間を数ミリ秒単位に短縮したとしても、光信号断と判断するまでの時間が短いため、瞬断時間よりもはるかに長い時間にわたり、通信サービスが停止するという問題が生じる。また、OLTの冗長化構成をとった場合でも、別のOLTへ切り替わる際に瞬断が発生するが、ONUの再登録処理に時間がかかるため、高速な冗長切替が実現できないという問題も生じる。
さらに、光ファイバ伝送路の切替を実行した場合に、切替前と切替後の伝送路距離が異なってしまう場合、RTTが規程値以上に変化することにより、Timestamp Drift Errorが発生する。この結果、LOS信号を検出するよりも高速に切り替えることができたとしても、RTTが規程値以上に変化することで、ONUが登録抹消される状態となり、論理リンク断になるという問題も生じる。
また、フレームの暗号化時に、時刻情報を暗号化に使用する暗号化方式(特許文献1)を使用している場合、RTTが変化したために、受信したフレームの復号化ができないという問題におちいる。この場合、OLTから送付されたGATEフレーム自体が、解読できず、時刻情報の更新ができなくなり、論理リンク断になるという問題が生じる。
本発明では、光信号を計画的に瞬断させる場合に、光信号の瞬断が発生しても、登録抹消・論理リンク断の状態へ移行する際に保護時間を設け、瞬断しても通信への影響を少なくすることとした。
また、本発明は、光ファイバ伝送路の長さが切替により異なることとなった場合に、OLTからONUに対し、即時にRTTを補正するために制御フレームを送信するリンク断防止機能をOLTに実装し、制御フレームを受信後、速やかにRTTを補正し通信の再開を図るリンク断防止手順を実行することで、通信への影響を少なくすることとした。
具体的には、本願発明は、1台のOLTと複数のONUとを光ファイバ伝送路を介してポイント・ツー・マルチポイントの通信を行うPONシステムであって、前記OLT及び前記ONUは、リンク断防止モードの設定により、光信号の受信断又は光ファイバ伝送路の距離変化を検出した後、保護時間を持ってリンク断と判定することを特徴とするPONシステムである。
具体的には、本願発明は、1台のOLTと複数のONUとを光ファイバ伝送路を介してポイント・ツー・マルチポイントの通信を行うPONシステムのリンク断防止方法であって、前記OLT及び前記ONUは、リンク断防止モードの設定により、光信号の受信断又は光ファイバ伝送路の距離変化を検出した後、保護時間を持ってリンク断と判定することを特徴とするPONシステムのリンク断防止方法である。
本願発明により、光信号の瞬断が発生しても、通信への影響が少なくなる。
本願発明では、前記ONUは、前記OLTからの指示により、前記リンク断防止モードを設定し、前記リンク断防止モードにある前記ONUは、光信号の受信断を検出した後、保護時間内に光信号の受信回復を検出した場合又は光ファイバ伝送路の距離変化を検出した後、保護時間内に前記ONUのローカル時刻が再設定された場合に、前記リンク断防止モードを解除することが好ましい。
本願発明により、光信号の瞬断が発生しても、通信への影響が少なくなる。
本願発明では、前記OLTは、ONU毎に前記リンク断防止モードを設定することが好ましい。
本願発明により、複数のONUを収容するPONシステムにおいて、スプリッタとONUとの間の光ファイバ伝送路が支障移転する場合でも、個別のONU毎にリンク断防止策を施すことができる。
本願発明は、前記OLTは、前記ONUにフレームの送信開始時刻を指示するGATEフレームに対する前記ONUからの応答であるREPORTフレームの受信断をもって前記リンク断と判定し、前記REPORTフレームの受信回復をもってリンク回復と判定することが好ましい。
本願発明により、ONUとのリンク維持を容易に判定することができる。
本願発明は、前記OLTは、前記保護時間内に、前記リンク断防止モードの設定を指示したONUからの前記REPORTフレームの受信回復がなかった場合に、当該ONUの登録を抹消することが好ましい。
本願発明により、ONUの登録を抹消することにより、ONUに対して早期に再接続の機会を付与することができる。
本願発明は、前記OLTは、前記ONUに対し、OLTとONU間のRTTを測定するためのRTT補正コマンドを送信し、当該ONUから前記RTT補正コマンドに対応するREPORTフレームの受信回復をもってリンク回復と判定することが好ましい。
本願発明により、瞬断の前後で伝送路距離が変化した場合であっても、容易に対応することができる。
本願発明は、前記RTT補正コマンドとして、EPON規格のDiscovery Gateフレームを利用することが好ましい。
本願発明により、瞬断の前後で伝送路距離が変化した場合であっても、容易に対応することができる。
本願発明は、前記OLTは、通常状態のONUとの通信を維持しながら、前記リンク断防止モードにあるONUに前記RTT補正コマンドを送信することが好ましい。
本願発明により、通常状態のONUとリンク断防止モードにあるONUの混在を許容することができる。
本願発明により、伝送路の切替や、光部品交換等で光信号が瞬断する場合に、リンク状態を維持し、通信サービスの完全停止状態に陥ることを防止するため、電話などの通信サービスをユーザが使用中であっても回線切替が可能となる。
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施の例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
(第一の実施形態)
本発明の第一の実施形態として、リンク断防止手順について説明する。本手順は、図1、図2又は図3のPONシステムにおいて、OLT(101、201)の制御部(205)とONU(102、301)の制御部(305)において実施されるものである。このPONシステムにおいて、光ファイバ伝送路(106−1)を光ファイバ伝送路(106−2)に切り替えた際に発生する瞬断に対して、OLTの制御部(205)において実行されるリンク断防止手順を図6に、ONUの制御部(305)において実行されるリンク断防止手順を図7に示す。
図6のOLTのリンク断防止手順について説明する。OLTは、光ファイバ伝送路の切替が実行されるよりも事前に、切替により瞬断の影響を受けるONU毎に、通常状態からリンク断防止モードに移行するように指示する。図6の手順では、1台のONUのみが光ファイバ伝送路の切替により瞬断の影響を受ける場合を示すが、複数台のONUが影響を受ける場合は、影響を受けるすべてのONUに対して指示することとなる。
最初に、リンク断防止モードに設定され、本手順が開始される(S301)。OLTではONUに送付したGATEフレームの応答として、REPORTフレームを受信するかを監視する。OLTが規定時間内にREPORTフレームを受信しなければ、ONUとの間で光信号の瞬断が発生したと判定する(S302)。なお、IEEE802.3規格では、規定時間として、Report Timeout値の50msが規定されている。つまり、ONUは、REPORTフレームを少なくとも50msに1回送信するように規定されている。IEEE802.3規格を採用してもよいが、RTTを考慮した短い時間に設定すれば、短時間での検出が可能となる。OLTがREPORTフレームを受信した場合は、論理リンク断が発生していないため、通常状態と同様にONUとの通信を実行し(S303)、光ファイバ伝送路の切替が終了後に発出されるリンク断防止モードの終了命令があるかを確認する(S304)。終了命令がある場合は、通常状態へ移行し、本手順を終了する。終了命令がなければREPORTフレームの受信確認(S302)から再実行する。
処理S302において、OLTが、REPORTフレームを受信しなかった場合、瞬断と判定し、通信が回復するまでの時間を測定するためのタイマを開始する(S306)。OLTは、ONUに対しGATEフレームを継続して送信し、通常状態と同様の通信を実行する(S307)。通信が可能な状態に戻ったかを確認するため、OLTから送信したGATEフレームの応答として、ONUからのREPORTフレームを受信したかを判定する(S308)。OLTが、REPORTフレームを受信した場合は、通信可能な状態であり、処理S304へ遷移する。処理S304において、リンク断防止モードの終了命令が出されていれば(S304)、通常状態に遷移して一連の処理を終了する(S305)。処理S304において、リンク断防止モードの終了命令が出ていなければ、再度瞬断が発生する場合に備えて、処理S302へ遷移し、処理を繰り返す。
処理S308において、OLTは、ONUからのREPORTフレームを受信していなければ、通信は回復していないため、回復を待つ最大時間である保護時間が経過したかを確認する(S309)。時間が経過していない場合、処理S307へ戻る。保護時間が経過した場合は、通信の回復が望めないため、OLTは当該ONUの登録を抹消し、論理リンク断とする(S310)。当該ONUの再登録処理が行われるが、この処理は従来例と同じ手順となる。OLTとONUの間で、通信を再開するための処理が実行される。この登録処理はOLTとONUの間で実行されるもので、OLTでは、MPCP Discoveryシーケンス(S311)、OAM Discoveryシーケンス(S312)、認証機能処理(S313)を実行する。登録シーケンスが完了した後、OLTとONUは通信を再開する(S314)。この処理が完了すると、通信が可能な通常の状態(S305)に戻り、一連の処理を終了する。
次に、図7に示したONUの制御部(305)で実行されるリンク断防止手順を説明する。光ファイバ伝送路の切替により影響を受けるONUは、光ファイバ伝送路切替の事前に、リンク断防止モードに移行するようにOLTから指示される。なお、複数台のONUが光ファイバ伝送路の切替の影響を受ける場合、個々のONUに対してリンク断防止モードへ移行するようにOLTから指示される。通常状態からリンク断防止モードに移行し、本手順が開始される(S401)。OLTからONUへ、連続的に光信号が送信されており、光ファイバ伝送路の切替が実施されたとき、ONUは即時にLOSを検知する(S402)。
光信号の強度が規程値以下に低下しない場合や、切替が未実施の場合には、LOSが検知されない。この場合、ONUはOLTから送信されたGATEフレームに記述された送信時刻にREPORTフレームとデータフレームを送信する通常の通信処理を実行する(S403)。その後、ONUはリンク断防止モードの終了命令が出ているかを確認し(S404)、終了命令が出て入れば通常モードに遷移し、処理を終了する(S405)。終了命令が出ていなければ、LOS検知処理から再開する(S402)。
処理S402において、ONUは、LOS、Time Stamp Drift ErrorおよびMPCP timeoutのいずれかを検知した場合、論理リンク状態の回復を待つため、保護時間のあいだ待つ処理を実行する(S406)。その後、ONUは論理リンク状態を確認し(S407)、回復していれば、通信を再開するため、通常と同様の通信処理を実行する(S403)。それ以降の処理は、先の説明と同様である。
処理S407において、ONUは、通信状態が回復していないことを確認した場合、回復を待つ最大時間である保護時間が経過したかを確認する(S408)。経過していなければ、処理S406から、再び実行する。保護時間を経過していた場合、ONUは通信状態が回復していないと判断し、未登録状態と同様に、論理リンク断とする(S409)。ONUの再登録処理が行われるが、この処理はOLTと連携して実行されるため、OLTに対応した手順となる。この登録処理はOLTとONUの間で実行され、ONUは、MPCP Discoveryシーケンス(S410)、OAM Discoveryシーケンス(S411)、認証機能処理(S412)を実行する。登録シーケンスが完了した後、OLTとONUは通信を再開する(S413)。この処理が完了すると、通信が可能な通常の状態(S405)に戻り、一連の処理を終了する。
図6のOLTのリンク断防止手順1がOLTにおいて実行され、図7のONUのリンク断防止手順1がONUにおいて実行されることにより、光ファイバ伝送路の切替の影響を受ける、瞬断の際の切替時のシーケンスを図8を用いて説明する。図8では、OLTとONUの通信処理として、GATEフレーム、REPORTフレーム、データフレームのやり取りされる様子を説明する。
最初に、OLTに対するリンク断防止モード遷移の指示(S301)と切替の影響を受ける切替ONUに対するリンク断防止モード遷移の指示(S401)が出され、OLTおよびONUは、リンク断防止モードに移行する(801)。リンク断防止モードへ移行後も、通常の通信処理が行われているが、途中で光ファイバ伝送路の切替が実行される(802)。この切替により発生した光信号の瞬断により、OLTからのGATEフレームが切替ONUには到達しない(803)。切替の影響を受けない、非切替ONUに対しては、通常どおりOLTからのGATEフレームが到達し、通信が実行される(804)。切替により発生した瞬断はすぐに回復し、切替ONUへもフレームが到達できる状態に戻る(805)。その後OLTからONUに対して送信されたGATEフレームは、切替ONUに対しても到着する(806)。このGATEフレームに記載されている送信開始時間に基づき、OLT−ONU間の通信が再開される(807)。その後、光ファイバ伝送路の切替を管理している作業者が、切替作業の終了後、OLTと切替ONUに対しリンク断防止モードから通常状態への復帰を指示し、すべての作業を完了させる(808)。
これまで説明してきた処理は、1台のONUに対する処理であるが、光ファイバ伝送路の切替により、複数台のONUが切替の影響を受ける場合もある。その際には、OLTは切替の影響を受けるすべてのONUに対し、ONUごとに図6のOLTのリンク断防止手順1を実行することとなる。また、各ONUは図7のONUのリンク断防止手順1を実行する。
(第二の実施形態)
本発明の第二の実施形態では、リンク断防止モードにある際に、光ファイバ伝送路の切替により、伝送路距離が変わってしまい、RTTが変化したためTime Stamp Drift Errorを検知した場合の手順を示す。暗号化に時刻情報を用いる場合や、ONUが光信号の瞬断時に自走クロックモードに入った結果、ONUは、Time Stamp Drift Errorを検知した場合、Time Stamp Drift Errorを検知する前に、GATEフレームを復号化できず、送信開始時刻や、現在時刻情報が得られず、通信不可の状態におちいる。このような場合に、切替ONUに対し、OLTから時刻情報を更新するためにRTT補正コマンド送信する手順をもったリンク断防止手順を説明する。
OLTの制御部(205)において実行されるリンク断防止手順2を、図9を用いて説明する。本手順は、光ファイバ伝送路の切替により影響を受けるONUに対する、OLTの処理を示したものである。光ファイバ伝送路の切替の影響を受けるONUは、個別に対応した本手順を実行することとなる。最初に、OLTに対し、リンク断防止モードに遷移するように指示され手順が開始される(S501)。OLTは、当該ONUとの通信が瞬断状態となったことを認識するため、GATEフレームの応答となるREPORTフレームの到着を監視する。また、通信断が、ONUの電源断によるものなのか、光ファイバ伝送路の切替によるものなのかを区別するため、OLTは、IEEE802.3で規定されているOAMフレームのDying gaspも監視する。ある一定期間にREPORTフレームとOAMフレーム(Dying gaspの通知)を受信しなかった場合に、通信断の状態になったと判定する(S502)。受信して通信断でないと判定した場合、リンク断防止モードの終了命令が出ているかを確認する(S503)。終了命令が出て入れば一連の処理を終了し、通常状態に遷移する(S504)。終了命令が出ていなければ、処理S502から再開する。
処理S502において、OLTがREPORTフレームやDying gaspの受信を確認できず、通信断と判定すると、リンク断防止の処理を実行する。始めに、通常状態の通信処理(S505)を実施する。これは、光ファイバ伝送路の切替の影響を受けるONU以外のONUに対する通信を実施するための処理である。この処理では、通常状態のOLTとONUの間の通信処理が実施される。続いて、当該ONUのRTTを補正するためにRTT補正コマンドをOLTから送出する(S506)。RTT補正コマンドとして、たとえば、IEEE802.3で規定されているDiscovery Gateフレームを用いれば、ブロードキャストフレームであり、暗号化しないので、OLTに接続されている全ONUが一斉に受信可能で、かつ、暗号化で使用する時刻情報も補正することができる。当該ONU側で、RTT補正コマンドを受信し、補正処理が完了すれば、ONUはOLTへREPORTフレームを送出する。OLTでは、このREPORTフレームの到着を確認する(S507)。OLTが、REPORTフレームを確認できれば、当該ONUとの通信を再開するための一連の処理(S509以降)を実施する。REPORTフレームを確認できなければ、規定回数RTT補正コマンドの送信処理を行っているかを確認する(S508)。規定回数を実施していなければ、処理S505から再度実行する。規定回数実行していれば、本処理を終了し、OLTは当該ONUとの通信再開が失敗したと判断し、S511以降の処理を実行する。
処理S507において、OLTがREPORTフレームを確認した以降の処理について説明する。OLTは、当該ONUに対し、送信開始時刻を指定するため、当該ONUのRTTを補正しておく(S509)。次に、通常の通信処理を行い、OLTは当該ONUとの通信を再開する(S510)。その後、リンク断防止モードの終了命令が出ているかを確認し(S503)、終了命令が出て入れば一連の処理を終了する(S504)。終了命令が出ていなければ、処理S502から再開する。
処理S508において、OLTが、当該ONUとの通信再開に失敗した場合、当該ONUを登録抹消し、論理リンク断と判定する(S511)。論理リンク断と判定した後、当該ONUの再登録処理を行う。この処理は従来例と同じ手順となる。OLTとONUの間で、通信を再開するための処理が実行される。この登録処理はOLTとONUの間で実行されるもので、OLTとの間で、MPCP Discoveryシーケンス(S512)、OAM Discoveryシーケンス(S513)、認証機能処理(S514)を実行する。登録シーケンスが完了すると、OLTとONUは通信を再開する(S515)。この処理が完了すると、通信が可能な通常の状態(S504)に戻り、一連の処理が終了する。
次に、ONUの制御部(305)において実行されるリンク断防止手順2を、図10を用いて説明する。本手順は、光ファイバ伝送路の切替により影響をうけるONUにおける処理を示したものである。OLTがONUに対し、リンク断防止モードに遷移するように指示する。この指示を受けて、ONUは最初の手順を開始する(S601)。ONUは、LOSを検出しないか(S602)、または、Timestamp Drift Errorを検知していないか、およびMPCP timeoutを超えていないかを監視している(S603)。いずれかに該当する場合、論理リンク回復処理を行うため、S606以下の処理を実行する。いずれにも該当しない場合、通信は継続されており、リンク断防止モードの終了命令が出ているかの確認が行われる(S604)。終了命令が出て入れば、通常状態に遷移し、一連の処理を完了する(S605)。終了命令が出ていなければ、光ファイバ伝送路の切替による瞬断の発生にそなえて、処理S602から再開する。
処理S602、S603のいずれかに該当し、通信断状態になったのちに実行される論理リンク回復処理について説明する。光ファイバ伝送路の切替の影響を受けて通信が断状態となったONUは、通信が回復するのを待つため、保護時間だけ待機し(S606)、光信号が回復したかを確認する(S607)。光信号が回復していれば、S609以降の通信回復のための処理を実行する。光信号が回復していない場合、最大保護時間のあいだ光信号の回復を待ったかを確認し、最大保護時間が経過していない場合は、処理S606から実行する。最大保護時間が経過していれば、登録を抹消する処理(S615)以降を実行する。
光信号が回復した場合、ONUはOLTから送信されるRTT補正コマンドの受信を待つ(S609)。RTT補正コマンドを受信できない場合、次のタイミングを待つことになる。RTT補正コマンドの受信確認(S609)が規定回数実行されたかを確認する(S610)。規定回数実行されていなければ、再度、RTT補正コマンドの受信を待つため、OLTと他のONUが通信をする時間である、規定時間だけ待ち合わせる(S611)。その後、処理S609から、再度、実行する。処理S610において、規定回数実行されているなら、RTT補正コマンドの受信に失敗したものとして、処理S615以降で登録が抹消され、再度、通信を再開するために再登録処理を実行する手順へすすむ。
S609において、RTT補正コマンドを受信した場合、ONUは、補正コマンドにより転送された情報に基づき、時刻の補正を行う(S612)。次に、OLTに対しREPORTフレームを送信し、OLTへ通信が開催できる状態になったことを通知する。(S613)。その後、OLTからGATEフレームが送信され、ONUは通常の通信を行う処理を開始する(S614)。リンク断防止モードの終了命令が出ているかの確認を行い(S604)。終了命令が出て入れば、通常状態に遷移し、一連の処理を完了する(S605)。終了命令が出ていなければ、切替による瞬断の発生にそなえて、処理S602から再開する。
処理S608において、光信号が回復しなかった場合、または処理S610においてRTT補正コマンドを受信しなかった場合、ONUは登録抹消され、論理リンク断になる(S615)。当該ONUの再登録処理が行われるが、この処理は従来例と同じ手順となる。OLTとONUの間で、通信を再開するための処理が実行される。この登録処理はOLTとONUの間で実行されるもので、OLTとの間で、MPCP Discoveryシーケンス(S616)、OAM Discoveryシーケンス(S617)、認証機能処理(S618)を実行する。登録シーケンスが完了した後、OLTとONUは通信を再開する(S619)。この処理が完了すると、通信が可能な通常の状態(S605)に戻り、一連の処理を終了する。
図9のOLTのリンク断防止手順2がOLTにおいて実行され、図10のONUのリンク断防止手順2がONUにおいて実行されることにより、光ファイバ伝送路の切替の影響を受ける、切替ONUがRTT補正を受けて論理リンク断が防止される様子を、瞬断の際の切替時のシーケンスを図11を用いて説明する。図11では、OLTとONUの通信処理として、GATEフレーム、REPORTフレーム、データフレームがやり取りされる様子を説明する。
最初にOLTに対するリンク断防止モード遷移の指示(S501)と切替の影響を受ける切替ONUに対するリンク断防止モード遷移の指示(S601)が出され、リンク断防止モードに移行する(1101)。リンク断防止モードへ移行後も、通常の通信処理が行われているが、(1102)のタイミングにおいて光ファイバ伝送路の切替が実行される。この切替において、切替による光信号の瞬断と伝送路距離の変化が生じる(1103)。伝送路距離の変化によりRTTが変わり、特許文献1の共通鍵暗号通信を用いているPONシステムでは、切替ONUでは下りフレームの復号化が不可となり、暗号化されたGATEフレームの受信ができなくなる(1104)。切替ONUは、暗号化されたGATEフレームが判読できず、REPORTフレームが送信できない。このため、OLTはREPORTフレームを受信していないと判定する(1105)。このとき、OLTは接続されているすべてのONUに対してGATEフレームの送信を停止する。そして、GATEフレームの送信停止直前までに、非切替ONUに対して割り当てた上りフレームの送信を待ってから切替ONUのRTTを補正するため、RTT補正状態となる(1106)。なぜなら、GATEフレームの送信停止直前までに、非切替ONUに対して割り当てた上りフレームと、RTT補正コマンドに応答するREPORTフレームが衝突しないようにするためである。
なお、非切替ONUに対して割り当てた上りフレームをすべて送信させるのに待つ時間は、1つのGATEフレームで割り当てる送信許可開始時刻の最大値(実装依存)と送信許可量の最大値(実装依存)の和よりも大きくするとよい。
RTT補正状態になって以降(1106)、OLTは切替ONUに対し、RTT補正コマンドを送信する(1107)。図11では、RTT補正コマンドとして、前出のDiscovery GATEフレームを送信している。Discovery GATEフレームはブロードキャストフレームであるから、そのフレーム1つで複数の切替ONUの時刻補正が可能となる。切替ONUはRTT補正コマンドを受信し、時刻の補正を行う(1108)。切替ONUは、Discovery GATEフレームの応答として、OLTにREPORTフレームを送信する。ここで、非切替ONUは、すでにOLTに登録されているので、Discovery GATEフレームを破棄する。REPORTフレームを受信したOLTは、切替ONUのRTTを補正し、通信が行える状態になる(1109)。このRTT補正状態から、他のONUとOLTが通信を行う通常の通信状態となる(1110)。ただし、この図の場合では、すでに切替ONUの通信状態は回復できており、OLTが送信されたGATEフレームを、切替ONUは受信することができる(1111)。このGATEフレームに記述された送信開始時刻に、切替ONUからOLTに対し、通信が再開される(1112)。その後、一連の切替処理が終了した時点で、リンク断防止処理の停止命令が、OLTと切替ONUに指示され、通常の通信状態が継続される状態に戻り、すべての作業が完了する(1113)。
これまで説明してきた処理は、1台のONUに対する処理であるが、光ファイバ伝送路の切替により、複数台のONUが切替の影響を受ける場合もある。その際には、OLTは切替の影響を受けるすべてのONUに対し、ONUごとに図9のOLTのリンク断防止手順2を実行することとなる。また、各ONUでは図10のONUのリンク断防止手順2を実行する。
(第三の実施形態)
本発明の第三の実施形態では、複数のONUが共有している光ファイバ伝送路の切替において、切替前後で伝送路距離が変化したONUのRTT補正を一斉に行うリンク断防止方法を示す。複数のONUが共有している光ファイバ伝送路の切替の場合、切替前後の伝送路距離の変化量は、切替を実施したONUすべて同じであると考えられる。つまり、切替を実施したONUのうち1つのONUのRTTの変化量を計測できれば、そのRTT変化量に基づいて切替を実施したその他のONUのRTTを補正することができる。本実施形態は、第二の実施形態において、各ONUに対して行っていたRTT補正コマンド送信を、1つONUに対してのみを行い、RTTの変化量を計算し、他のONUについては、そのRTTの変化量を用いてRTT補正を行うことで、第二の実施形態のリンク断防止手順よりも早く通常状態へ遷移させる方法である。
OLTの制御部(205)において実行されるリンク断防止手順2を、図12を用いて説明する。本手順は、光ファイバ伝送路の切替により影響をうけるONUに対する、OLTの処理を示したものであり、切替の影響を受けるONU個別で本手順が実行されることとなる。最初に、OLTに対し、リンク断防止モードに遷移するように指示され、手順が開始される(S701)。OLTでは、当該ONUとの通信が断状態となったことを判定できるよう、GATEフレームの応答となるREPORTフレームの到着を監視する。また、通信断が、ONUの電源断によるものなのか、切替によるものなのかを区別するため、OLTは、IEEE802.3で規定されているOAMフレームのDying gaspも監視する。ある一定期間にREPORTフレームとOAMフレーム(Dying gaspの通知)が到着しなかった場合に、通信断の状態になったと判定する(S702)。通信断でないと判定した場合、リンク断防止モードの終了命令が出ているかを確認し(S703)、終了命令が出て入れば一連の処理を終了し(S704)、終了命令が出ていなければ、処理S702から再開する。
処理702において、OLTがREPORTフレームの受信を確認できず、通信断と判定すると、リンク断防止の処理を実行する。始めに、通常の通信処理(S705)が実施される。これは、切替の影響を受ける当該のONU以外のONUに対する通信を実施するための処理である。この処理では、通常のOLTとONUの間の通信処理が実施される。続いて、RTT補正が別のONUによってすでにされているかどうかを確認する(S706)。RTT補正がまだされていない場合、OLTからはRTT補正コマンドを送信する(S707)。
当該ONU側で、RTT補正コマンドを受信し、補正処理が完了すれば、ONUからOLTへREPORTフレームが送出される。OLTでは、このREPORTフレームの到着を確認する(S708)。REPORTフレームを確認すれば、切替の影響を受ける当該ONUのRTTを補正する。さらに、当該ONUの補正前後のRTTの変化量を計算し、当該ONUで切替の影響を受けるすべてのONUに対して、そのRTTの変化量を加えることで補正を行う(S709)。補正を終えると、ONUとの通信を再開するための一連の処理(S710)が実施される。
処理S708で、OLTがREPORTフレームを確認できなければ、S712〜S721の処理(図9のS505〜S515と同様の処理)でONU個別にRTT補正を行う。規定回数でRTT補正が成功しなければ、当該ONUとの通信再開が失敗したと判断し、S717以降の処理が実行される。
処理S706において、RTTが別の切替ONUによってすでに補正されている場合の処理について説明する。OLTは、別の切替ONUによって補正されたRTTが本当に正しいかどうかを確認するために、一度、補正後のRTTを用いてONUのREPORTフレーム分の上り帯域を割り当て、送信開始時刻と長さをGATEフレームに記載してONUに送信する。そして、OLTはONUからREPORTフレームが返信されるのを確認する(S711)。REPORTフレームが他のONUの上り信号と衝突せず、OLTがREPORTフレームを受信した場合は、REPORTフレームに記載されているTimestampとGATEフレームに記載したTimestampを用いてRTTを更新する(S715)。
一方、条件分岐S711で、ONUがGATEフレームを受信できずREPORTフレームを送信できなかったり、GATEフレームは受信できても、別の切替ONUによって補正されたRTTが原因でREPORTフレームが他のONUの上り信号と衝突したりして、その結果、OLTがREPORTフレームを受信できなかった場合は、S712〜S721の処理(図9のS505〜S515と同様の処理)でONU個別にRTT補正を行う。規定回数でRTT補正が成功しなければ、当該ONUとの通信再開が失敗したと判断し、S717以降の処理が実行される。
これまで説明してきた処理は、複数台のONUに対するOLTの処理であるが、各ONUの処理は第二の実施形態の図10のONUのリンク断防止手順2を実行すればよい。