<第1実施形態>
以下、第1実施形態に係るグロメット10について説明する(図1参照)。グロメット10は、ワイヤーハーネス1が挿通配索される車体パネルに形成された貫通孔部における止水を行うための部材である。
ワイヤーハーネス1は、複数の電線、仮結束電線等を結束等して配策形態に形成された線状部材である。このワイヤーハーネス1は、自動車に搭載されるワイヤーハーネスであり、車体パネル90に形成された貫通孔部92に挿通配策される(図5、図6参照)。ここでは、貫通孔部92は、略円形に形成されているものとする。
グロメット10は、インナー部材20と、シール部材50とを備え、インナー部材20とシール部材50とが組み合わされて構成される。概略的には、グロメット10は、インナー部材20が車体パネル90の貫通孔部92に挿入されて係止すると共に、シール部材50が貫通孔部92の開口縁部に対して密着することにより、貫通孔部92の貫通方向における止水を図る。
<インナー部材の全体構成>
インナー部材20は、合成樹脂材料により射出成型等されて形成された剛体部材である(図2参照)。このインナー部材20は、開口縁部とワイヤーハーネス1との間に介在してワイヤーハーネス1を保護すると共に、貫通孔部92の開口縁部に係止してシール部材50を該開口縁部に押し付ける部分である。インナー部材20は、本体部22と、係止部32と、鍔部42とを備えている。
本体部22は、貫通孔部92に挿入可能且つワイヤーハーネス1を挿通可能な筒状(ここでは略円筒状)に形成されている。本体部22は、軸方向に沿って連結された挿入部24と、小径部26とを有している。そして、本体部22は、挿入部24が貫通孔部92に挿入されてワイヤーハーネス1と貫通孔部92の開口縁部との間に介在することにより、貫通孔部92の開口縁部からワイヤーハーネス1を保護する(図5参照)。
この本体部22は、貫通孔部92に対して、車体パネル90の一方側から他方側に向けて挿入される。ここで、一般的に車体パネル90の一方側とは車室外側であり、他方側とは車室内側である。そして、主に車室外側において貫通孔部92における止水が図られる。本体部22は、自身の中心軸方向において、挿入部24を前方に向ける姿勢で、貫通孔部92に対して挿入される。ここで、グロメット10について、本体部22の中心軸方向に沿った挿入部24を前方とする方向を挿入方向Sと称する。また、以下の説明において、車体パネル90に対する一方側及び他方側を、それぞれ車体パネル90に対する挿入方向S後方側及び前方側と代えて説明することがある。
挿入部24は、挿入方向Sに直交する断面視において、貫通孔部92と同じかそれより小さい(ここでは僅かに小さい)外径の筒状に設定されている。ここでは、挿入部24は、略円筒形状に形成されているが、貫通孔部92の形状に対応した筒状に形成されていればよく、楕円筒状、矩形筒状等の形状に形成されていてもよい。
また、小径部26は、挿入部24より小さい内径の略円筒状に形成されている。すなわち、小径部26は、内側に挿通されるワイヤーハーネス1の外周部に対して、挿入部24より近接し、該ワイヤーハーネス1の外周部に沿って延在する。もっとも、小径部26は、挿入部24と同径に形成されていても構わない。この小径部26は、挿入部24の挿入方向S後方に連結されている。ここでは、小径部26は、挿入部24に対して、挿入方向Sに略直交する鍔状の連結壁部を介して連結されている。
また、本体部22は、インナー部材20に対してシール部材50をずれ止めするためのずれ止め部27を有しているとよい。このずれ止め部27は、小径部26の外周部から外周側に張り出す鍔状に形成されている。ここでは、ずれ止め部27は、小径部26の挿入方向S後端部に設けられている。もっとも、ずれ止め部27は、小径部26の周方向において部分的に外周側に張り出す形状に形成されていてもよい。また、ずれ止め部27は、シール部材50のずれが問題にならなければ省略されても構わない。
係止部32は、貫通孔部92の開口縁部に対して挿入方向S前方から係止可能に形成された部分である(図5参照)。より具体的には、係止部32は、本体部22の挿入部24の外周部から外周側に張り出す形状に形成されている。この、係止部32は、挿入部24の周方向に間隔をあけて複数(ここでは等間隔に3つ)設けられている。
この係止部32は、挿入方向Sに略直交して後方に面する係止面を有している。また、係止部32は、挿入方向S前方側に、後方に向けて徐々に外周側に向かう傾斜面を有している。また、係止部32は、挿入部24の外周部から外周側に張り出す形態から、内周側に退避する形態に弾性変形可能に構成されている。ここでは、係止部32は、挿入方向S後方側の端部が自由端とされ、前方側の基端部を基点として挿入部24の内周側に自由端が弾性変形可能に形成されている。
そして、係止部32は、挿入部24が貫通孔部92に挿入される際に、前方を臨む傾斜面が貫通孔部92の開口縁部に当接することにより、挿入部24の内周側に押し込まれて弾性変形する。係止面が貫通孔部92を越えるまで挿入部24が挿入されると、係止部32は、自身の弾性によって挿入部24の外周側に張り出す元の形状に復帰する。これにより、係止部32は、貫通孔部92の開口縁部に対して挿入方向S前方から対向する位置に配設される。
鍔部42は、貫通孔部92の開口縁部に対して、後述するシール部材50の環状止水部52を押し付ける部分である(図5参照)。この鍔部42は、本体部22(ここでは挿入部24)の外周部から外周側に張り出す鍔状に形成され、貫通孔部92の開口縁部に対して挿入方向S後方から対向可能である。すなわち、鍔部42は、挿入部24が貫通孔部92に挿入された状態で挿入方向Sにおいて重複する大きさ(貫通孔部92より大きい外形)に設定されている。
より具体的には、鍔部42は、挿入方向Sに直交する方向に沿って扁平な形状に形成されている。また、鍔部42は、係止部32の係止面に対して、貫通孔部92の開口縁部の厚さ寸法より大きい間隔をあけた挿入方向S後方側の位置に設けられている。また、鍔部42の位置は、係止面に対して開口縁部の厚さ寸法と環状止水部52の厚さ寸法とを足した寸法より小さい間隔をあけた位置である。すなわち、上記位置は、係止部32と鍔部42との間に貫通孔部92の開口縁部と環状止水部52とを挟んだ状態で、弾性体であるシール部材50の環状止水部52が弾性変形して開口縁部に密着するように設定されている。ここでは、鍔部42は、挿入部24の挿入方向S後端部に設けられている。
上記インナー部材20は、合成樹脂材料により成型された剛体の複数の分割成型体201が周方向に並べられて筒状に構成されている。ここでは、インナー部材20は、3つの分割成型体201を有している。この3つの分割成型体201は、周方向2箇所でヒンジ部202により連結されると共に1箇所で開閉可能に分離されている。この分離された部分を開部204と称する。また、各分割成型体201の周方向端部を突合せ端部という。そして、インナー部材20は、ヒンジ部202を基点として分割成型体201同士が内外方向に姿勢変更することにより、開部204で開閉可能に構成されている。すなわち、インナー部材20を開いた状態で開部204を通じてインナー部材20の内側にワイヤーハーネス1を配設することができる。
<分割成型体>
分割成型体201は、分割本体部221と、係止部32と、分割鍔部421と、突合せリブ461とを備えている(図2参照)。以下、分割成型体201について用いる周方向とは、インナー部材20として構成された形態における周方向であるものとして説明する。
分割本体部221は、本体部22の周方向一部分を構成する部分である。ここでは、分割本体部221は、本体部22を周方向に3等分された形状に形成されている。この分割本体部221は、分割挿入部241と、分割小径部261とを有している。すなわち、分割挿入部241は、挿入部24の周方向一部分を構成する部分であり、分割小径部261は、小径部26の周方向一部分を構成する部分である。また、分割小径部261の外周部のうち挿入方向S後端部からは外周側に張り出す分割ずれ止め部271が設けられている。分割ずれ止め部271は、ずれ止め部27の周方向一部を構成する部分である。
係止部32は、分割本体部221から外周側に張り出す形状に形成されている。ここでは、係止部32は分割本体部221の周方向中間部に1つ設けられている。
分割鍔部421は、鍔部42の周方向一部分を構成する部分である。ここでは、分割鍔部421は、鍔部42を周方向に3等分された形状に形成されている。より具体的には、分割鍔部421は、分割本体部221から外周側に張り出す形状に形成されている。
突合せリブ461は、分割成型体201のうちの車体パネル90の一方側(挿入方向S後方側)に配設される部分における周方向両端縁部から外側に突出し、周方向に直交する方向に沿って扁平なリブ状に形成されている(図2参照)。この突合せリブ461は、分割成型体201の周方向両端縁部において、分割鍔部421の外周部から分割小径部261の後端部に亘って延在している。より具体的には、突合せリブ461は、分割鍔部421及び分割挿入部241と分割小径部261とを連結する壁部から挿入方向S後方に向けて張り出すと共に、分割小径部261から外周側に向けて張り出している。すなわち、上記分割成型体201の外側とは、分割鍔部421及び分割挿入部241と分割小径部261とを連結する連結壁部においては挿入方向S後方であり、分割小径部261においては外周側である。この突合せリブ461は、後述するシール部材50の中途介在止水部62又は一対の分割介在止水部64を挟み込む部分である(図9参照)。すなわち、突合せリブ461が設けられることにより、分割成型体201同士の突合せ端部において、挟み込む中途介在止水部62及び分割介在止水部64との接触面をより大きく確保することができる。
また、突合せリブ461の先端面は、周方向に沿った形状に形成されている。この突合せリブ461の先端面は、後述するシール部材50の止水張出部66に対して接触する部分である。
また、突合せリブ461の先端部には、分割成型体201の周方向端部とは逆向きに張り出す形状に形成された張出部471が設けられている。なお、この張出部471は、突合せリブ461の先端面に沿って側方に張り出す形状に形成されているとよい。ここでは、張出部471は、周方向に沿って張り出している。図1では、突合せリブ461の延在方向において部分的に設けられている張出部471を示している。この張出部471は、後述するシール部材50の止水張出部66との接触面を確保するための部分である。
複数(ここでは3つ)の分割成型体201は、外周側端部においてヒンジ部202により連結されている。より具体的には、ヒンジ部202は、隣合う分割成型体201の突き合せ端部において、分割鍔部421の外周側端部及び突合せリブ461の外周側端部の少なくとも一部(ここでは挿入方向S全体)を連結する。
インナー部材20は、周方向において、3つの分割成型体201が隙間をあけた形態でヒンジ部202により連結されている。また、インナー部材20は、開部204において周方向に隙間をあけた形態に形成されている。すなわち、インナー部材20は、分割成型体201同士の隙間に、後述するシール部材50の中途介在止水部62及び一対の分割介在止水部64を挟み込み可能な形状に形成されている。
<シール部材>
シール部材50は、弾性材料により形成され、貫通孔部92の開口縁部に対して密着することにより、貫通孔部92の貫通方向における止水を図る部分である(図3参照)。このシール部材50は、環状止水部52と、介在止水部と、止水張出部66と、内側止水部72とを有している。
また、シール部材50は、筒状部分を有すると共に、該筒状部分が周方向において少なくとも一部(ここでは一部)で分離された形状に形成されている。すなわち、シール部材50は、分離された部分から開閉可能である。ここで、シール部材50における分離された部分全体を開部51と称し、その両端部を突合せ端部という。
環状止水部52は、鍔部42に対して一面側(挿入方向S前方)に配設され、鍔部42により、貫通孔部92の開口縁部に対して挿入方向S後方から押し付けられて密着する部分である(図5参照)。この環状止水部52は、貫通孔部92の開口縁部に対して挿入方向S後方から密着可能なように、貫通孔部92より大きい環状に形成されている。ここでは、環状止水部52は、貫通孔部92の形状に対応して円環状に形成されている。また、環状止水部52は、開部51で分離され、シール部材50の突合せ端部の一部を構成する突合せ端部を有する。
環状止水部52は、環状基部53と、内側環状突部54と、外側環状突部56とを有している。概略的には、環状止水部52は、環状基部53の挿入方向S前方側から内側環状突部54及び外側環状突部56が突出する形状に形成されている。そして、環状止水部52は、内側環状突部54及び外側環状突部56が貫通孔部92の開口縁部に密着することにより止水を図る。
環状基部53は、鍔部42の挿入方向S前端面に接触して配設される部分である。すなわち、環状基部53は、鍔部42に対して挿入方向S前方に配置された状態で、挿入部24を囲うと共に外周側部分を含む少なくとも内外方向一部で周方向に亘って鍔部42と挿入方向Sに重複する形状に形成されている。また、環状基部53は、挿入方向Sに直交する方向に扁平な形状を成している。
内側環状突部54は、貫通孔部92の開口縁部に対して挿入方向S後方側から密着して、その内外方向において止水する部分である。より具体的には、内側環状突部54は、環状基部53から挿入方向S前方に向けて突出する形状に形成されている。この内側環状突部54は、環状基部53に沿って、鍔部42に対して挿入方向Sに重複する位置に設けられている。また、内側環状突部54は、先端部ほど肉薄となる形状に形成されている。すなわち、内側環状突部54は、貫通孔部92の開口縁部に対して押し付けられた際に、主として先端側部分が弾性変形して圧縮されることにより、該開口縁部に対してより強く密着する。
外側環状突部56は、内側環状突部54と同様に、貫通孔部92の開口縁部に対して挿入方向S後方側から密着して、その内外方向において止水する部分である。この外側環状突部56は、内側環状突部54の外周側に環状基部53に沿って、少なくとも基端部が鍔部42に対して挿入方向Sに重複する位置に設けられている。より具体的には、外側環状突部56は、環状基部53から挿入方向S前方側に向けて外周側に傾斜するように突出する形状に形成されている。また、外側環状突部56は、先端部ほど肉薄となる形状に形成されている。すなわち、外側環状突部56は、貫通孔部92の開口縁部に対して押し付けられた際に、主として先端側(外周側)の部分が挿入方向Sに対して傾斜角が大きくなる側に弾性変形して開口縁部に対して密着する。
上記内側環状突部54は、貫通孔部92の開口縁部に対してより強く密着する部分であり、外側環状突部56は、開口縁部に対してより大きい面積で密着する部分である。
ここでは、環状基部53の挿入方向S後方には、隙間をあけて背面環状部58が設けられている。より具体的には、背面環状部58は、環状基部53に対して外周端部で連結されている。そして、環状基部53と背面環状部58との間には、内周側に開口して鍔部42の外周側部分を配設可能な環状の溝部59が設けられている。溝部59の幅寸法は、鍔部42の厚さ寸法と略同じに設定されているとよい。
介在止水部は、中途介在止水部62と一対の分割介在止水部64とを有している。中途介在止水部62及び一対の分割介在止水部64は、複数の分割成型体201のうちの車体パネル90の一方側(挿入方向S後方側)に配設される部分において、複数の分割成型体201の突合せ端部間に介在し、分割成型体201間の止水を図るための部分である(図9参照)。より具体的には、中途介在止水部62及び分割介在止水部64は、隣合う分割成型体201の周方向に対向する突合せリブ461同士の間に挟み込まれる。この中途介在止水部62及び分割介在止水部64は、分割成型体201の突合せ部分に対応して周方向において等間隔に設けられている。
中途介在止水部62は、ヒンジ部202により連結された分割成型体201の突合せ端部(突合せリブ461)同士の間に挟まれる部分である。ここでは、中途介在止水部62は、周方向2箇所に設けられている。
より具体的には、中途介在止水部62は、環状止水部52(環状基部53)の周方向一部から、内周側且つ挿入方向S後方側で分割成型体201の突合せリブ461に対応する形態で延在するように形成されている。すなわち、中途介在止水部62は、周方向において、突合せリブ461に対して延在方向に亘って重複する形状に形成されている。ここでは、中途介在止水部62は、周方向において突合せリブ461全体に重複し、周方向視において略L字形状を成している。また、中途介在止水部62は、周方向に直交する方向に沿って扁平な形状に形成されている。また、中途介在止水部62は、溝部59を横切って延在していると共に、内周側端部において、後述する内側止水部72の内在筒状部74に連続している。
分割介在止水部64は、環状止水部52の各突合せ端部から分割成型体201の突合せリブ461に対応する形態で延在するように一対設けられている。この一対の分割介在止水部64は、開部204において隣合う分割成型体201の突合せ端部(突合せリブ461)同士の間に挟まれる部分である。そして、一対の分割介在止水部64は、環状止水部52の突合せ端部が突き合わされて接触した状態で、共に突き合わされて接触する。なお、一対の分割介在止水部64の突合せ端部は、開部51の突合せ端部の一部を構成している。
より具体的には、分割介在止水部64は、環状止水部52の突合せ端部から、内周側且つ挿入方向S後方側で突合せリブ461に対応する形態で延在するように形成されている。すなわち、分割介在止水部64は、周方向において、突合せリブ461に対して延在方向に亘って重複する形状に形成されている。ここでは、分割介在止水部64は、周方向において突合せリブ461全体に重複し、周方向視において略L字形状を成している。また、一対の分割介在止水部64は、それぞれ周方向に直交する方向に沿って扁平な形状に形成されている。また、分割介在止水部64は、溝部59を横切って延在していると共に、内周側端部において、後述する内側止水部72の内在筒状部74に連続している。
また、中途介在止水部62及び分割止水部64と分割成型体201の突合せ端部との合わせ面は、周方向に直交する方向に沿う形状に設定されている。
止水張出部66は、中途介在止水部62及び一対の分割介在止水部64の先端部から周方向に張り出す形状に形成された部分である(図9参照)。この止水張出部66は、分割成型体201の周方向端部(ここでは突合せリブ461の先端部)に対して接触する部分である。また、止水張出部66は、張出部471の外側面に対しても接触していてよい。
より具体的には、止水張出部66は、中途介在止水部62において、先端部から周方向両側に張り出すように一対設けられている。また、止水張出部66は、分割介在止水部64において、先端部から周方向において突合せ端部とは反対側に向けて張り出すように設けられている。
ここでは、止水張出部66は、周方向に沿った面を有し、同様に周方向に沿った突合せリブ461の先端部に接触する。すなわち、止水張出部66と突合せリブ461の先端部との接触面は、周方向に沿うように設定されている。また、換言すると、止水張出部66と突合せリブ461の先端部との接触面は、分割成型体201の突合せ端部と中途介在止水部62及び分割介在止水部64との合わせ面に直交する形状に設定されている。特に、突合せリブ461が挿入方向S後方に向けて突出する部分においては、突合せリブ461の先端部と止水張出部66との接触面は、挿入方向Sに直交するように設定されている。
内側止水部72は、ワイヤーハーネス1の外周部に接触して小径部26の内周側に配設される内在筒状部74を有する部分である(図5、図6参照)。この内側止水部72は、周方向一部で分離され、その両端部を突合せ端部という。内側止水部72の突合せ端部は、シール部材50の開部51の突合せ端部の一部を構成している。内側止水部72は、上記内在筒状部74と、後端環状部78とを有している。
後端環状部78は、小径部26の挿入方向S後端部の外周部を囲う部分である。この中途介在止水部62及び分割介在止水部64の挿入方向S後端部に連続して設けられている。また、後端環状部78は、小径部26の挿入方向S後端部も覆うように、小径部26の外周部を覆う部分から挿入方向S後方に亘って存在する形状に形成されている。
また、後端環状部78は、内側にずれ止め部27を配設可能な形状に形成されている。より具体的には、後端環状部78は、ずれ止め部27に対して挿入方向S両側から当接する内壁部を有している。これにより、内側止水部72は、インナー部材20に対して挿入方向Sに位置決めされる。なお、環状止水部52は鍔部42において挿入方向Sに位置決めされるため、シール部材50は、全体としてインナー部材20に対して挿入方向Sに位置決めされる。
内在筒状部74は、本体部22(小径部26)の内側に配設され、後端環状部78の内周側端部から挿入方向S前方に延在するする筒状の部分である。この内在筒状部74は、挿入方向Sにおいて少なくとも1つ(ここでは1つ)の止水壁部76を有している。
止水壁部76は、グロメット10に挿通されるワイヤーハーネス1の外周部に密着して、グロメット10とワイヤーハーネス1との間の止水を図る部分である。この止水壁部76は、挿入方向Sに貫通してワイヤーハーネス1を挿通可能なハーネス挿通孔部77を有し、小径部26の内側を貫通方向(挿通方向S)に遮る形状に形成されている。
より具体的には、ハーネス挿通孔部77は、略円形に形成されている。もっとも、ハーネス挿通孔部77は、ワイヤーハーネス1の外形状に対応した形状に形成されていればよく、例えば、楕円形等であってもよい。
また、止水壁部76は、薄膜部により構成されることにより、ハーネス挿通孔部77を拡径可能に弾性変形可能にされている。より具体的には、ハーネス挿通孔部77は、車体パネル90の貫通孔部92に挿通配索される対象の複数サイズのワイヤーハーネス1のうちの最も小径なものの直径と同じかそれより僅かに小さい直径に設定されている。また、止水壁部76は、貫通孔部92に挿通配索される対象の複数サイズのワイヤーハーネス1のうちの最も大径なものを、ハーネス挿通孔部77を拡げて挿通可能な程度に弾性変形容易なように膜厚及び形状等が設定されているとよい。
ここでは、止水壁部76は、本体部22の周方向に直交する断面視において、内周側を向く頂点を挟んだ一対の薄膜部を有する山状に形成されている。すなわち、止水壁部76と小径部26との間には、環状の空間が形成されている。そして、止水壁部76は、上記形状により、内周側から外周側に向けて押圧されると、内周側を向く頂点が外周側に移動して一対の薄膜部がそれぞれ挿入方向S両側に膨らむ形態に弾性変形する(図7、図8参照)。より具体的には、止水壁部76の外周側には、止水壁部76の外周部に接触する形態で小径部26が存在している。このため、止水壁部76が外周側に押圧されると、止水壁部76は小径部26により外周側への移動を規制されて弾性変形する。
さらに、ハーネス挿通孔部77は、止水壁部76のうちの一対の分割介在止水部64の突合せ端部側に偏心した位置に形成されている(図9参照)。ここでは、ハーネス挿通孔部77は、一対の分割介在止水部64の突合せ端部側で止水壁部76の外周部に内接する位置に形成されている。すなわち、薄膜部によって構成される止水壁部76は、突合せ端部における突合せ面積が小さいため、突合せ端部が突き合わされる向きの力がより大きく作用する位置で突き合わされていることが好ましい。ここで、一対の分割介在止水部64は開部204において隣合う分割成型体201の間に挟み込まれて密着するため、シール部材50の開部51における突合せ端部のうち一対の分割介在止水部64に近い位置でより強く突き合わされる。そこで、ハーネス挿通孔部77の位置を上記のように設定して、止水壁部76の突合せ端部を一対の分割介在止水部64により近い位置の最小限の寸法にとどめている。
上記グロメット10は、インナー部材20の開部204及びシール部材50の51を開いて、該開部204、51を通じてワイヤーハーネス1に装着される。なお、このグロメット10の装着は、ワイヤーハーネス1が貫通孔部92に挿通配索される前の段階で行われてもよいし、その後の段階で行われてもよい。
より具体的には、グロメット10は、開部204、51を開くと、インナー部材20のヒンジ部202を基点として分割成型体201が姿勢変更すると共に、シール部材50が弾性変形する。そして、グロメット10の開部204、51が開いた状態において、ワイヤーハーネス1をハーネス挿通孔部77内に配設する態様で本体部22内に配設する。ワイヤーハーネス1の直径がハーネス挿通孔部77より大きい場合には、ハーネス挿通孔部77を拡げてワイヤーハーネス1を配設するとよい。そして、開部204、51を閉じる(シール部材50自身の弾性により戻る)ことにより、グロメット10をワイヤーハーネス1に取り付けることができる。この状態で、ハーネス挿通孔部77の開口縁部は、ワイヤーハーネス1の外周部に接触している。また、シール部材50の突合せ端部は周方向に対向し好ましくは接触している。
なお、ワイヤーハーネス1にグロメット10を装着した状態で、後端環状部78の外周部からその挿入方向S後方に延出するワイヤーハーネス1の外周部に亘ってテープを巻き付けてもよい。これにより、グロメット10とワイヤーハーネス1との間における止水性を向上させることができると共に、ワイヤーハーネス1に対するグロメット10の位置決めをすることができる。
そして、グロメット10は、貫通孔部92に対して挿入されることにより車体パネル90に取り付けられる。より具体的には、挿入部24を挿入方向S前方に向けて貫通孔部92に挿入する。これにより、係止部32が貫通孔部92の開口縁部に対して挿入方向S前方から係止する。また、環状止水部52の環状基部53が鍔部42により挿入方向S前方に向けて押圧されることにより、内側環状突部54及び外側環状突部56が貫通孔部92の開口縁部に対して挿入方向S後方側から密着する。
また、挿入部24が貫通孔部92に挿入されることにより、各分割成型体201は、締め付けられてインナー部材20が縮径する向きに移動しようとする。これにより、隣合う分割成型体201における突合せリブ461が、中途介在止水部62又は一対の分割介在止水部64を周方向により強く挟み込む。すなわち、グロメット10における挿入部24は、貫通孔部92に挿入されることにより分割成型体201同士が中途介在止水部62及び一対の分割介在止水部64を圧縮する態様で挟み込むように、貫通孔部92より僅かに大きく設定されているとよい。これにより、突合せリブ461と中途介在止水部62又は一対の分割介在止水部64と(インナー部材20とシール部材50と)の密着度、及び、一対の分割介在止水部64同士(シール部材50同士)の密着度を高めて止水性能を向上させる。また、突合せリブ461と中途介在止水部62又は一対の分割介在止水部64との合せ面の挿入方向S後方側又は外周側には、止水張出部66が存在している。このため、挿入方向S後方側又は外周側から前記合せ面に対して直接水等がかかることが防止される。
上記実施形態の構成に係るグロメット10によると、シール部材50が、ワイヤーハーネス1を挿通可能なハーネス挿通孔部77が形成され、ワイヤーハーネス1が挿通される筒状の本体部22の内側に配設されて本体部22の内側を部分的に貫通方向に遮る止水壁部76を有している。また、止水壁部76が、ハーネス挿通孔部77を拡径可能に弾性変形可能に形成されている。このため、ハーネス挿通孔部77より大きいサイズのワイヤーハーネス1に対しても、止水壁部76が弾性変形してハーネス挿通孔部77が拡径されることにより、止水壁部76が外周部に密着する。これにより、止水性能を維持しつつ複数サイズのワイヤーハーネス1に適用可能である。
また、止水壁部76が、本体部22の周方向に直交する断面視において、内周側を向く頂点を挟んだ一対の薄膜部を有する山形状に形成されているため、ハーネス挿通孔部77より大きいサイズのワイヤーハーネス1がハーネス挿通孔部77に挿通されると、本体部22の外周側に押し潰される形態で安定して変形する。これにより、止水壁部76のワイヤーハーネス1に対する密着状態をより安定させることができ、止水性能の向上に寄与する。
また、インナー部材20が、複数の分割成型体201が周方向に並んで形成され、シール部材50が、環状止水部52の周方向において一部で分離されているため、インナー部材20の分割成型体201同士の間及びシール部材50の分離部分の間を通じて内側にワイヤーハーネス1を配設することができる。また、シール部材50が環状止水部52部の突合せ端部からそれぞれ内周側に延在すると共に延在方向一部で止水壁部76の外周部に連続する一対の分割介在止水部64を含む少なくとも1つの介在止水部を備えている。そして、ハーネス挿通孔部77が、一対の分割介在止水部64の突合せ端部側に偏心した位置に形成されている。このため、本体部22の内外方向において止水壁部76のうちのハーネス挿通孔部77から一対の分割介在止水部64の間に存在する突合せ端部の寸法をより小さくすることができ、シール部材50が周方向一部で分離された形状に形成されている場合でも、止水性能を確保することができる。
また、ハーネス挿通孔部77が、一対の分割介在止水部64の突合せ面側で止水壁部76の外周部に内接する位置に形成されているため、本体部22の内外方向において止水壁部76のうちのハーネス挿通孔部77から一対の分割介在止水部64の間に存在する突合せ端部の寸法を最小限にすることができ、止水性能をより確実に確保することができる。
これまで、インナー部材20が貫通孔部92の開口縁部に対して挿入方向S前方側から係止する係止部32を有する構成について説明してきたが、インナー部材は、他部材により貫通孔部92に対して位置決めされてもよい。例えば、インナー部材の挿入部の先端側部分に嵌合可能な別部材である位置決め用部材を採用することができる。そして、車体パネル90の車室外側からインナー部材の挿入部が挿入され、位置決め用部材が車室内側から挿入部に嵌められることにより、位置決め用部材が貫通孔部92の開口縁部に対して挿入方向S前方側から係止してインナー部材の位置決めが行われてもよい。
また、シール部材50が周方向一部で分離された形状である例で説明してきたが、シール部材50は周方向複数個所で分離されて複数部材によって構成されていてもよい。この場合、分離された周方向複数箇所において、環状止水部の分割体の各突合せ端部から内周側に延在する分割介在止水部が設けられる。そして、複数の分割成型体201によって複数の一対の分割介在止水部が挟み込まれることにより、シール部材の分割体同士が突き合わされた状態に維持される。
さらに、ワイヤーハーネス1を側方から内部に配設可能な形態のグロメット10について説明してきたが、グロメットは、周方向に分割されないインナー部材及びシール部材により構成されていてもよい。すなわち、グロメットは、一体筒状のインナー部材の外側に、一体又は別体の環状止水部52と内側止水部72とを有するシール部材が外嵌めされることにより構成されていてもよい。なお、シール部材に開部が設けられないため、ハーネス挿通孔部77は、止水壁部76の中心に対して偏心していなくともよい。
また、これまで、開部51を有するシール部材50におけるハーネス挿通孔部77が止水壁部76の中心に対して一対の分割介在止水部64側に偏心した位置に形成されている例で説明してきたが、止水壁部76における突合せ端部同士の密着を確保できれば、止水壁部76は偏心していなくともよい。
また、これまで、止水壁部76が断面視山状に形成されている例で説明してきたが、止水壁部76は、ハーネス挿通孔部77を拡径可能に弾性変形可能であればよい。例えば、止水壁部76は、挿入方向Sに直交する板状に形成されていてもよい。
<第2実施形態>
以下、第2実施形態に係るグロメット110について説明する(図10、図11参照)。このグロメット110のうち第1実施形態に係るグロメット10の構成と異なる部分は、シール部材150における止水壁部76の数だけである。グロメット110のうち第1実施形態に係るグロメット10の構成と同様の部分については、同符号を付し、説明を省略する。
グロメット110のシール部材150は、内側止水部172の内在筒状部174において複数(ここでは2つ)の止水壁部76を有している。すなわち、止水壁部76は、本体部22の貫通方向(挿入方向S)において2つ設けられている。そして、2つの止水壁部76は蛇腹状を成している。
図10、図11では、2つの止水壁部76が挿入方向Sにおいて連続して設けられている例を示しているが、2つの止水壁部76は、挿入方向Sにおいて離間して設けられていてもよい。また、止水壁部76は、3以上の複数設けられていてもよい。
この構成に係るグロメット110によると、止水壁部76が本体部22の貫通方向において複数設けられているため、より止水性能を向上させることができる。また、ハーネス挿通孔部77に挿通されるワイヤーハーネス1をインナー部材20内において挿入方向Sに沿った形態で安定して支持することができる。
また、グロメット110は、第1実施形態に係るグロメット10について示した変形例の構成を採用してもよい。
以上のように、グロメット10、110は詳細に説明されたが、上記した説明は、全ての局面において例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。また、上述した各種変形例は、相互に矛盾しない限り組み合わせて適用可能である。そして、例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。