以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
[車両の基本構成]
図1は、本発明の実施の形態に従う車両100の全体ブロック図である。以下で詳細に説明されるように、車両100は、駆動源として回転電機を用いる電気自動車である。
車両100は、蓄電装置110と、システムメインリレー(System Main Relay:SMR)115と、駆動装置であるPCU(Power Control Unit)120と、モータジェネレータ(モータ)130と、動力伝達ギヤ140と、駆動輪150と、油圧ブレーキ160と、制御装置であるECU(Electronic Control Unit)300とを備える。PCU120は、コンバータ121と、インバータ122と、電圧センサ180,185と、コンデンサC1,C2とを含む。
蓄電装置110は、充放電可能に構成された電力貯蔵要素である。蓄電装置110は、たとえば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池または鉛蓄電池などの二次電池、あるいは電気二重層キャパシタなどの蓄電素子を含んで構成される。
蓄電装置110は、電力線PL1およびNL1を介してPCU120に接続される。そして、蓄電装置110は、車両100の駆動力を発生させるための電力をPCU120に供給する。また、蓄電装置110は、モータジェネレータ130で発電された電力を蓄電する。蓄電装置110の出力はたとえば200V程度である。
蓄電装置110には、電圧センサ170および電流センサ175が設けられる。電圧センサ170は、蓄電装置110の電圧VBを検出し、その検出結果をECU300へ出力する。電流センサ175は、蓄電装置に入出力される電流IBを検出し、その検出値をECU300へ出力する。
SMR115に含まれるリレーは、その一方端が蓄電装置110の正極端子および負極端子に接続され、他方端がPCU120に接続される電力線PL1,NL1に接続される。そして、SMR115は、ECU300からの制御信号SE1に基づいて、蓄電装置110とPCU120との間における電力の供給と遮断とを切換える。
コンバータ121は、ECU300からの制御信号PWCに基づいて、電力線PL1,NL1と電力線PL2,NL1との間で電圧変換を行なう。
インバータ122は、電力線PL2,NL1に接続される。インバータ122は、ECU300からの制御信号PWIに基づいて、コンバータ121から供給される直流電力を交流電力に変換し、モータジェネレータ130を駆動する。
コンデンサC1は、電力線PL1およびNL1の間に設けられ、電力線PL1およびNL1間の電圧変動を減少させる。また、コンデンサC2は、電力線PL2およびNL1の間に設けられ、電力線PL2およびNL1間の電圧変動を減少させる。
電圧センサ180および185は、それぞれコンデンサC1およびC2の両端にかかる電圧VLおよびVHを検出し、その検出値をECU300へ出力する。
モータジェネレータ130は交流回転電機であり、たとえば、永久磁石が埋設されたロータを備える永久磁石型同期電動機である。
モータジェネレータ130の出力トルクは、減速機や動力分割機構を含んで構成される動力伝達ギヤ140を介して駆動輪150に伝達される。モータジェネレータ130は、車両100の走行駆動力を発生させる駆動源となる。モータジェネレータ130は、車両100の回生制動動作時には、駆動輪150の回転によって発電することができる。そして、その発電電力は、PCU120によって蓄電装置110の充電電力に変換される。
車両100の速度(車速)を検出するために、速度センサ190が駆動輪150の近傍に設けられる。速度センサ190は、駆動輪150の回転速度に基づいて、車速SPDを検出し、その検出値をECU300に出力する。また、速度センサとして、モータジェネレータ130の回転角を検出するための回転角センサ(図示せず)を用いてもよい。この場合には、ECU300は、モータジェネレータ130の回転角の時間的変化および減速比などに基づいて、間接的に車速SPDを演算する。
ECU300は、いずれも図1には図示しないがCPU(Central Processing Unit)、記憶装置および入出力バッファを含み、各センサ等からの信号の入力や各機器への制御信号の出力を行なうとともに、蓄電装置110および車両100の各機器の制御を行なう。なお、これらの制御については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)で処理することも可能である。
また、ECU300は、カーナビゲーション装置310が接続されている。このカーナビゲーション装置310は、記憶している地図情報に基づいて、進路のカーブの有無、カーブの形状に関する情報をECU300に送信する。なお、予め道路近傍に設置されたセンサや撮像装置等から得られるITS(Intelligent Transport Systems:道路交通システム)などからの道路情報をECU300に入力するようにしてもよい。
そして、このECU300は、これらの情報を間接的に用いて、カーブに対応する車速を演算する等、減速条件を判断して設定できるように構成されている。
ECU300は、与えられる道路形状に関する情報に基づいて、車両の減速開始タイミングを算出し、減速開始タイミングが到来すると、駆動力変更運転を行ないながら減速が行なわれるようにモータジェネレータ130の回転駆動を制御する。
また、ECU300は、アクセルペダルを備えた操作部320が接続されている。この操作部320からは、アクセルペダル(図示せず)の踏込量に応じて、要求トルク信号TRが指定されて出力されている。要求トルク信号TRは、ECU300に入力されて、ユーザが指定する要求駆動力として用いられる。
更に、ECU300には、表示部330に接続されている。この表示部330は、車両100の乗員室内に設けられたインストルメントパネルのモニタ装置やディスプレイ装置を含む。そして、ECU300から出力された各種表示出力信号が、表示部330によって視覚認識可能な状態で表示される。
各種表示信号には、表示部330に表示される各種メッセージ出力が含まれる。各種メッセージ出力の例として、「減速中:カーブあり」、「回生ブレーキ作動」、「回生ブレーキ作動中」などがある。
ECU300は、PCU120、SMR115などを制御するための制御信号を生成して出力する。なお、図1においては、ECU300として1つの制御装置を設ける構成としているが、たとえば、PCU120用の制御装置や蓄電装置110用の制御装置などのように、機能ごとまたは制御対象機器ごとに個別の制御装置を設ける構成としてもよい。
ECU300は、蓄電装置110に備えられる電圧センサ170,電流センサ175からの電圧VBおよび電流IBの検出値に基づいて、蓄電装置110の充電状態SOC(State of Charge)を演算する。
ECU300は、ユーザによるアクセルペダル(図示せず)の操作に基づいて、定められる要求トルク信号TRを、上位ECU(図示せず)から受ける。ECU300は、ユーザからの要求トルク信号TRに基づいて、コンバータ121およびインバータ122の制御信号PWC,PWIをそれぞれ生成し、モータジェネレータ130の駆動を制御する。
また、ECU300は、ユーザにより設定されるモード信号MODを受ける。このモード信号MODは、以下に後述する慣性走行制御を実行するか否かを指示するための信号である。モード信号MODは、特定のスイッチや操作画面における設定などによって切換えられる。あるいは、特定の条件が成立したことに応答して、モード信号MODが自動的に設定されるようにしてもよい。
ECU300は、たとえば、モード信号MODがオンに設定されている場合には、慣性走行制御を行なうように動作し、モード信号MODがオフに設定されている場合には、慣性走行制御を行なわない通常の走行を行なうように動作する。
また、ECU300は、慣性走行制御が行われている状態で、ユーザ要求パワーとして入力された要求トルク信号で得られる、要求駆動力の変更が所定範囲範囲内に収まる定常走行要求時に、駆動力変更運転を実行する。
ECU300は、定常走行要求時に前方の道路がカーブであると情報を含んだ情報が、カーナビゲーション装置310で取得された場合には、現在の車速よりも減速した車速となるように駆動力変更運転を実行する。
駆動力変更運転の実行中は、車両100の速度が許容範囲内に維持されるように、第1の状態および第2の状態が、ECU300によって切換えられる。
また、第1の状態から第2の状態へは、車両100の速度が許容範囲の上限まで上昇したことに応答して切換えられる。
第2の状態は、駆動力を、車両100の速度を維持することが可能な一定出力の基準駆動力よりも小さく設定された状態である。また、第1の状態へは、車両100の速度が許容範囲の下限まで低下したことに応答して切換えられる。第1の状態における駆動力は、基準駆動力よりも大きく設定されている。
そして、車両100は、第2の状態においては、主に車両100の慣性力によって走行する。
[慣性走行]
このような車両においては、モータジェネレータ130が駆動力を発生させると、蓄電装置の電力が消費される。蓄電装置110の容量は予め定められているので、蓄電装置に蓄えられた電力でできるだけ長距離を走行するためには、走行中のエネルギ効率を向上させて電力消費を抑制することが必要となる。
車両の走行中には車両には慣性力が働いているため、走行中にモータジェネレータによる駆動力を、車速を維持するために必要な駆動力よりも低くした場合は、徐々に車速は低下するものの、しばらくの間は車両の慣性力を用いて走行(以下、「慣性走行」とも称する。)が継続される。
この慣性走行中は、モータジェネレータ130により出力される駆動力が小さいので、蓄電装置からの電力消費が少なくなる。そのため、慣性走行を活用して走行を行なうことができれば、車両走行時のエネルギ効率を改善することが可能となり得る。
そこで、実施の形態においては、図1に示した電気自動車において、ユーザからの要求トルクがほぼ一定であり、それによって車速が常に一定に維持されるような走行がされている場合に、モータジェネレータ130からの駆動力が高出力状態である第1の状態と、モータジェネレータの駆動力が、第1の状態よりも低いレベルである第2の状態とを切換えながら繰り返して走行する運転(以下、「駆動力変更運転」とも称する。)を行なう慣性走行制御を実行し、走行中におけるエネルギ効率の向上を図る。
[慣性走行のエネルギ効率]
図2は、実施の形態における慣性走行制御の概要を説明するためのタイムチャートである。図2においては、横軸には時間が示され、縦軸には車速SPD、モータジェネレータ130の出力、ユーザからの要求パワー、蓄電装置の充放電電力、および蓄電装置のSOCが示される。なお、蓄電装置の充放電電力については、放電電力を正値で表わし、充電電力を負値で表わしている。
図2を参照して、車両100が、平坦な道路を一定の車速V1で走行する場合を考える。この場合、ユーザから要求されるパワーは、ほぼ一定の値として与えられる。なお、「ユーザから要求されるパワーがほぼ一定の値である」とは、多少の変動はあるものの、ある所定時間内において、ユーザ要求パワーが予め定められた所定範囲内(たとえば、±3km/h)に維持される状態を意味する。
再び図1,図2を参照して慣性走行制御を適用しない場合においては、モータジェネレータ130の出力は、破線W13のように、ほぼ一定の大きさで連続して出力される。これにより、車速SPDは、破線W11のように、ほぼ一定に維持される。
このとき、蓄電装置110からは、破線W15のように一定の電力が連続して出力されるために、蓄電装置110のSOCは、破線W17のように、直線的に減少する。
これに対して、慣性走行制御をECU300にて行った場合には、モータジェネレータ130の駆動力を高出力状態とした第1の状態としての加速走行と、モータジェネレータ130の駆動力を低出力状態として、第1の状態よりも低いレベルとする第2の状態としての慣性走行とが交互に繰り返される。
具体的には、図2中の時刻t1までは、慣性走行制御が適用されていない状態であり、モータジェネレータ130に駆動力PM1が、連続的に出力されている。
時刻t1において、ユーザにより慣性走行制御の実行が指示されると、モータジェネレータ130の駆動力PM1が、比較的小さな駆動力PM2に低下される(図2中の実線W12)。駆動力PM2は、現在の車速V1を維持することができる駆動力よりも小さいため、図2中の実線W10のように、慣性力による走行が開始されて徐々に車速SPDが低下する。駆動力PM2は、ゼロであってもよい。
このとき、蓄電装置110からの充放電電力(図2中の実線W14)が低下するので、一定出力の場合(図2中比較として示す破線W17)と比べてSOCの減少量が抑制される(図2中の実線W16)。
そして、車速SPDが、目標とする車速V1に対して予め定められた許容範囲の車速下限値LLまで低下すると(図2中の時刻t2)、モータジェネレータ130の駆動が高出力状態に切換えられる。このときのモータジェネレータ130の駆動力は、車速V1を維持するために必要とされる駆動力PM1よりも大きい駆動力PM3に設定される。これによって、車両100が加速する。この加速走行中は、慣性走行制御を行なわない場合に比べるとSOCの減少量はやや大きくなるが、時刻t1からt2までの慣性走行により電力消費が抑制されるため、一定出力の場合に比べてトータルのSOCは高い状態が維持される(図2中の実線W16)。
また、車速SPDが予め定められた上記の許容範囲の車速上限値ULまで上昇すると、再びモータジェネレータ130が第1の状態よりも低いレベルである第2の状態としての低出力状態にされて(図2中の時刻t3)、慣性走行が実行される。
その後、同様に、車速SPDが車速下限値LLまで低下するとモータジェネレータ130が第1の状態である高出力状態に切換えられ、さらに車速SPDが車速上限値ULまで上昇するとモータジェネレータ130が第2の状態である低出力状態に切換えられる。
このような駆動力変更運転を繰り返すことによって、車速SPDは上記の許容範囲内では変動するものの、平均速度をほぼ車速V1に維持しながら、蓄電装置のSOCの減少を抑制することができる。その結果、減速のもたつき感を減少させてドライバビリティを向上させつつ、全体としてエネルギ効率が向上され、蓄電装置110に蓄えられた電力による走行可能距離を拡大することができる。
加速走行を行なう際のモータジェネレータ130の駆動力、および加速時間については、任意に設定可能である。たとえば、加速時間を所定の時間に設定し、その期間内に車速SPDを車速下限値LLから車速上限値ULまで増加できるようなモータ駆動力とするようにしてもよい。
あるいは、加速に用いるモータジェネレータ130の駆動力を所定の出力にして、加速時間については成り行きとするようにしてもよい。加速時間が短すぎると、大きなパワーが必要となるので、トルクショックが生じる可能性がある。逆にモータ駆動力が小さすぎると、加速時間、すなわちモータジェネレータの駆動時間が長くなり慣性走行が実施されにくくなる。したがって、加速時間と加速時のモータ駆動力は、ドライバビリティおよびエネルギ効率を勘案して適切に設定される。
なお、高出力状態におけるモータ駆動力は、同じ大きさとしてもよいし(PM3=PM5)、異なる大きさにしてもよい(PM3≠PM5)。低出力状態におけるモータ駆動力についても、同じ大きさとしてもよいし(PM2=PM4)、異なる大きさにしてもよい(PM2≠PM4)。
慣性走行制御においては、上述のように、ユーザからの要求パワーがほぼ一定で、所定範囲内に収まる定常走行用要求時に、図2で示したような駆動力変更運転が実行される。
あるいは、迅速に減速を行なうことが必要な場合には、減速要求を受けている期間にモータジェネレータ130のモータ駆動力を低くする。より迅速に減速を行なうことが必要な場合には、減速要求を受けている期間に、モータジェネレータ130で回生制動(回生ブレーキ)または、ブレーキ装置で制動を行なうようにしてもよい。この場合には、モータジェネレータ130は、回生発電により負のモータ駆動力を出力し、その発電電力によって蓄電装置110を充電する。これによって、さらにSOCが増加して車速SPDを速度許容範囲内に維持しつつ、エネルギ効率を向上させることができる。
[実施の形態1]
図3は、実施の形態1で走行する車両と、曲線路としてのカーブとの関係を示す模式的な平面図である。
図4は、この実施の形態1の駆動力変更運転における減速設定情報の設定について説明するためのフローチャートである。
実施の形態1において、ECU300で実行される慣性走行制御処理を説明する図4〜図6に示されるフローチャート中の各ステップについては、ECU300に予め格納されたプログラムを所定周期で実行することによって実現される。あるいは、一部のステップについては、専用のハードウェア(電子回路)を構築して処理を実現することも可能である。
車両制御がスタートすると、ステップ(以下、ステップをSと略す。)10において、カーナビゲーション装置310は、車両100の前方の進路の形状に関する情報を取得してECU300に出力する。この前方の進路の形状に関する情報には、曲線路の曲率半径、長さ、曲線路の入口までの距離等、前方の曲線路の形状に関する情報が含まれる。
S20に処理が進むと、ECU300は、この前方の道路が、曲線路(カーブ)であるか否かを判断する。
このS20では、前方の道路にカーブがある場合には、S30に処理が進み、一方S20において、カーブがない場合には、S40に処理が進む、S40では、減速設定情報がクリアされ、S50では、ECU300は、処理をメインルーチンに戻す。
S30に処理が進んだ場合には、ECU300は、現在の車両100の車速と、カーブの入口までの距離から、減速設定情報を算出して設定する。
この減速設定情報は、前方のカーブの形状に関する情報に基づいて、カーブに進入する際にカーブを通過可能な速度を上限速度として、減速の目標となるカーブ入口における車速V3を含む。
この減速設定情報は、駆動力変更運転による減速を用いて、減速を開始するタイミングを示す減速開始時期(又は位置)を含む。
また、この減速設定情報には、モータジェネレータ130の回生駆動トルクを用いて、回生ブレーキをかけるタイミングを示す回生開始時期(又は位置)を含む。
そして、ECU300は、電圧VBおよび電流IBの検出値に基づいて演算された充電状態SOC、速度センサ190で検出された現在の車速V1、目標となる車速V3から、減速を開始する時刻t1、回生制動を開始する時刻t2を含む減速設定情報を算出する。
今、図3に示すように、走行中の車両100がカーブの入口に接近すると、車両100に設けられたカーナビゲーション装置310が、このカーブの形状に関する情報を出力する。ECU300は、このカーブの形状に関する情報を受けて、駆動力変更運転による減速を行なうか否かを判定する。
カーブの形状に関する情報により、現在の車両100の位置がカーブに差し掛かる手前であることが想定される場合には、現在の車両100の車速と、カーブの入口までの距離から、減速設定情報として、減速開始時期(又は位置)、回生開始時期(又は位置)が算出されて設定される。
車両100は、設定された減速開始時期(又は位置)、回生開始時期(又は位置)、に従って順次、駆動力変更運転による減速制御、回生ブレーキによる減速制御を行う。車両100は、駆動力変更運転による出力を低下させることにより、車速V2まで減速される。
車速V2は、次に行なわれる回生制動に伴う減速エネルギの回収が行なわれて蓄電装置110に充電されても、SOC値が、蓄電装置110のSOC制御閾値を越えることがないように、減速設定情報から設定される。
さらに、車速V2からモータジェネレータ130の回生制動により、カーブを通過可能な車速V3まで、車両100を減速させる制御信号が設定される。
所定の車速V3まで減速された車両100は、車速V3のままカーブの入口から出口まで走行して、直線路で再び車速V1に戻る。
[車両の基本走行制御]
図5は、本発明の実施の形態の車両が、駆動力変更運転制御を伴う基本走行を行う際のフローチャートである。
慣性走行制御がスタートすると、ECU300は、S100にて、ユーザによって設定されるモード信号MODに基づいて、慣性走行制御が選択されているか否かを判定する。
モード信号MODがオフに設定されており、慣性走行制御が選択されていない場合(S100にてNO)は、以降の処理(S110〜S148)がスキップされ、S150においてECU300は処理をメインルーチンに戻す。
モード信号MODがオンに設定されており、慣性走行制御が選択されている場合(S100にてYES)は、処理がS110に進められ、ECU300は、次に、要求トルク信号TRに基づいて、ユーザからの要求パワーがほぼ一定であるか否かを判定する。
ユーザ要求パワーがほぼ一定である場合(S110にてYES)は、処理がS120に進められて、ECU300は、駆動力変更運転を実行するように選択する。駆動力変更運転の詳細については、後に図6で説明する。その際に図4で説明した減速設定情報が用いられる。
なおステップS120のルーチン処理が進み、駆動力変更運転が実行される。その後、メインルーチンに処理が戻され、次回の制御周期において再びS100から処理が実行される。ユーザ要求パワーが、加速または減速のために変動した場合(S110にてNO)は、処理がS115に進められて、ECU300は、駆動力変更運転を中断する。
そして、ECU300は、ユーザ要求パワーによって加速が指示されている場合(S117にてYES)は、モータジェネレータ130を高出力状態で駆動して、車両100を加速する(S146)。
一方、ユーザから減速が指示されている場合(S117にてNO)は、処理がS148に進められる。
S148に処理が進むと、ECU300が、モータジェネレータ130を低出力状態に切換えた慣性走行による減速または、モータジェネレータ130を回生状態で駆動することによる回生制動を伴う減速のいずれかを実行する。あるいは、慣性走行による減速と回生制動を伴う減速とを交互に切換えながら減速するようにしてもよい。
その後、ユーザによる加速または減速動作が終了して、ユーザ要求パワーがほぼ一定である状態になると(S110にてYES)、S120に処理が進み駆動力変更運転が再開される。
以上のような処理に従って制御を行なうことによって、ユーザからの要求パワーが、図7に示すように、ほぼ一定である状態(定常走行期間)において、ECU300は、慣性走行と加速走行とを繰り返する駆動力変更運転を実行する。このため、ユーザからの要求駆動力の変化が所定範囲内に収まる定常走行要求時は、車速SPDが、破線W11の車速V1を中心としてほぼ一定の許容速度範囲内に維持される。よって、図2のSOCの減少量の比較(W16,W17)で示されるように、エネルギ効率を向上させることができる。
図6は、図5のS120の制御内容を示すフローチャートである。
図7は、この実施の形態1の車両100の制御方法の一例を示すタイムチャートである。図7を参照しつつ、車両100の前方の進路にカーブを有する道路があるという情報をカーナビゲーション装置310からの情報で得る場合の処理の順序に沿って説明する。
この実施の形態1の車両100の制御がスタートすると、S121では、カーナビゲーション装置310から与えられた前方の道路の情報の中に、減速設定情報があるか否かが判定される。たとえば減速設定情報は、「カーブがある」という情報を含む。
S121において減速設定情報がある場合には、ECU300は、次のS122に処理を進め、減速設定情報が無い場合には、ECU300は、S128に処理を進める。
S122では、ECU300は、減速開始時期または減速開始位置が過ぎたか否かが判定される。S122で、減速開始時期または減速開始位置が過ぎていると判定された場合には、ECU300は、S123に処理を進める。S123では、ECU300から出力されたメッセージ出力信号によって、表示部330に「減速中:カーブあり」といった内容で、減速開始のメッセージ表示が行なわれる。これにより、なぜ減速が開始されたかが認識されて、ユーザの違和感が緩和される。
また、S122で、減速開始時期または減速開始位置が過ぎていると判定されない場合には、S128に処理が進む。
S128では、ECU300は、ユーザ要求パワーに対応させて、車速上限値(UL)、車両下限値(LL)、パルス高さ(PMH,PML)を設定して、S130へ処理を進める。
一方、S123におけるメッセージ出力が行なわれた後、S124では、回生開始時期または回生位置が過ぎたか否かが判定される。
S124で、回生開始時期または回生開始位置が過ぎていると判定された場合には、ECU300は、S125に処理を進める。S125では、ECU300から出力されたメッセージ出力信号によって、表示部330に「回生ブレーキ作動」といった内容で、回生ブレーキによる減速開始のメッセージ表示が行なわれる。
一方、S124で、回生開始時期または回生開始位置が過ぎていると判定されない場合には、ECU300は、S129に処理を進める。
S129では、減速計画に従って車速上限値(UL)、車速下限値(LL)、パルス高さ(PMH,PML)が設定される。
この実施の形態1の車両100の制御では、図7中の時刻t1〜t2に示すように、車速の低下にほぼ比例して、許容速度範囲(UL〜LL)が、徐々に小さくなるように設定され、PCU120における駆動力の制御がECU300によって行なわれる。
このため、駆動力PMH2,PMH3は、一定の車速で走行していた際の駆動力PMH1よりも小さく、出力時間も徐々に短く(TH1>TH3)なるように出力されて、車速SPDを車速V1から車速V2まで徐減させる。
すなわち、S130で、車速SPDが車速上限値UL以上であった場合には、ECU300は、S140に処理を進める。S140では、ECU300は、モータ駆動力が低くなるように、パルス高さPMH1よりも、パルス高さPMH2又はPMH3の大きさを減少させるか、または、間隔TL1よりも、間隔TL3の時間を広げて、モータ出力波形のデューティ比を低下させる。
図7中、車速V3が車速上限値ULに到達したかまたは超えた場合には、S140でモータ駆動力を低下させて車速SPDを低下させる。
S130で、車速SPDが車速上限値ULに到達していない場合には、S135に処理を進める。S135では、車速SPDが、車速下限値LL以下に低下したか否かが判定される。
S135で、車速SPDが車速下限値LL以下に低下した場合には、モータ駆動力が高くなるようにECU300は、モータ出力波形のデューティ比および/またはパルス高さを上昇させて、車速下限値LL以下に低下とならないように車速を維持する。
S135で、車速SPDが車速下限値LLまで低下していない場合には、ECU300は現在のモータジェネレータ130の状態を保持する。
S144の処理が終了するとS145において図5のフローチャートに処理が戻る。
一方、S124で回生開始時期または回生開始位置が過ぎると判定されると、S125で、「回生ブレーキ作動」といった減速開始のメッセージ表示が、時刻t2の直前に予告表示されて、S126に処理が進む。
S126に処理が進むと、時刻t2でECU300から、回生ブレーキを作動させる制御信号PWC,PWIがPCU120に送信される。
制御信号PWC,PWIにより、モータジェネレータ130の回生ブレーキが制動動作する。
時刻t2から時刻t3までの間に設けられたエネルギ回収期間TC3内では、制動動作に伴って車速V2からV3まで減速されながら、蓄電装置110に回生エネルギPC1が回収される。
回生エネルギPC1の回収により蓄電装置110のSOC値が、SOC2からSOC3まで上昇する。上昇したSOC3値は、最大でもSOC制御閾値を超えることがないように回収する回生エネルギPC1の総量が減速制御計画によって予め設定されている。
この減速制御計画では、車速V2からカーブに進入できる車速V3まで、車両100を減速させる減速度が、円滑に継続されてユーザーに違和感を与えることが無いように設定される。たとえば、直前の駆動力変更運転と同等の減速度または大きな減速度となるように、好ましくは、直前の駆動力変更運転と同等の減速度よりもやや大きな減速度となるように設定されている。
そして、ECU300では、この減速度を得るために予め回生制動によって回収される回生エネルギPC1の値が設定されている。また、この回生エネルギPC1の値によって、回生制動が行なわれるエネルギ回収期間TC3の長さが設定されて、総量が調整される。
S127では、ECU300から出力されたメッセージ出力信号によって、表示部330に「回生ブレーキ作動中」といった内容で、回生実施のメッセージ表示が行なわれる。そして、S145で図5に示すメインルーチンに処理が戻る。
この実施の形態1の車両100は、回生ブレーキが作動して減速された車速V3となった時刻t3で、カーブの入口に到達する。このため、時刻t3から、カーブの出口に到達する時刻t4までの間、車両100を駆動力変更運転によって、常に一定の車速V3で通過させることができる。
なお、時刻t3〜t4における最大の車速V3−4maxは、たとえばカーブ形状に合わせて設定される安全走行速度とすることができる。
常に一定の車速V3で走行する車両100が、カーブの出口に差し掛かると、一時的に比較的大きな駆動力PMaがモータジェネレータ130から出力されて加速される。このため、時刻t4以降は、直線路で再び同じ車速V5(V5=V1)まで直ちに戻すことができる。
この実施の形態では、カーブを通過する際の駆動力変更運転と、回生ブレーキとの組み合わせを用いている。このため、車両走行状態と道路形状から事前に減速を開始するタイミングを算出し、入口手前でのみ、比較的強めの回生ブレーキを作動させて、充分な減速および回生エネルギPC1の回収が行える。従って、カーブの出口まで低い駆動力PMH4で継続して駆動力変更運転されていても、蓄電装置110のSOC値は、回生エネルギPC1が回収されている分、大きな値を維持できる。よって、車速V1近くまで短時間で戻す加速度を発生させる駆動力PMaを、容量に余裕のある蓄電装置110から瞬時に出力させることができる。
また、カーブに進入する前の直線路における車速V1と同じ車速V5まで戻す時間を短縮できるので、時刻t4以降の直線路では、ユーザ要求パワーに応じた駆動力PMH1およびPML1を交互に繰り返す駆動力変更運転を早期に再開できる。
この実施の形態1では、車両100がカーブを走行している間(時刻t3〜t4)も、駆動力PMH4が慣性走行制御で断続的に連続して与えられている。このため、車速V3は一定速度以上に維持され、直線路を走行している際の車速V1、V5との差を必要以上に大きくなる虞が減少する。また、カーブで出口に到達する時刻t4で更に大きな駆動力PMaを出力するタイミングが、駆動力PMH4を出力している期間に一致すると、モータジェネレータ130の出力変動を少なくすることができ、ユーザ要求パワーに応じた一定の車速V5まで、円滑に加速されて良好なドライバビリティが得られる。
更に、ECU300は、車両100に搭載されているカーナビゲーション装置310からの情報によって、車両前方の進路にカーブを有する道路の情報を得る。このため、カーブ入口に到達する前の直線路では、充分な距離を持たせて早い段階で、駆動力変更運転による減速を開始でき、更にエネルギ効率を向上させることができる。
この実施の形態1の車両100では、ECU300が、カーナビゲーション装置310からの情報に基づいて減速開始タイミングに加えて、減速開始タイミングの時刻t1より遅い時点のモータジェネレータ130による回生開始タイミングを算出する。減速開始タイミングが時刻t1で到来すると、ECU300は、モータジェネレータ130を制御して、駆動力変更運転を行ないながら減速を行う。そして、回生開始タイミングが時刻t2で到来すると、ECU300は、モータジェネレータ130による駆動力発生を停止させてモータジェネレータ130による回生制動を行うように制御する。
図7では、回生ブレーキの作動により、時刻t2から時刻t3までの間、回生エネルギPC1が回収される。このため、回収された回生エネルギPC1により、SOC値がSOC2からSOC3まで上昇する。時刻t3では蓄電装置110のSOC3が、SOC制御閾値以下となるように、予めカーナビゲーション装置310からの情報に基づいて減速制御計画が予め設定されている。よって、SOC値がSOC制御閾値を越えることはない。
また、カーブに進入する際、油圧ブレーキを使用せずに減速できる場合が多くなる。このため、油圧ブレーキの制動動作に伴うエネルギの損失も抑制することができる。
[実施の形態2]
実施の形態2では、減速判定時期と回生開始時期とが一致して同じ時刻t11である場合の例を説明する。
図8は、実施の形態2の車両の制御方法の一例を示すタイムチャートである。実施の形態2においては、図1におけるPCU120、モータジェネレータ130およびECU300、カーナビゲーション装置310等の主要部の構成は同一である。また、図8について図7のタイムチャートと重複する部分の説明は繰り返さない。
ECU300は、カーナビゲーション装置310からの情報に基づき、SOC値を参照して、減速開始タイミングに加えて、減速開始タイミングと同時点のモータジェネレータ130による回生開始タイミングを減速計画と共に算出する。
そして、減速開始タイミングが時刻t11で到来すると、駆動力変更運転に代えてモータジェネレータ130による回生制動が行なわれるように、モータジェネレータ130が制御される。
このため、カーブの入口手前の直線路で、時刻t12となると充分減速エネルギを回収できるSOC1値となり、駆動力変更運転を停止する制御信号と共に、ECU300では、回生ブレーキを作動させる制御信号がPCU120に送信される。
回生ブレーキの作動により、図8中、時刻t11〜t12までのエネルギ回収期間TC1において、車速がV1からV2に減速されると共に、回生エネルギPC2が回収される。
これによりSOC値が、SOC1からSOC2まで上昇する。この際、カーブを通過することができる車速V2まで減速されても、上昇したSOC2がSOC制御閾値以下となるように減速制御計画が予め立てられている。したがって、時刻t11からカーブの入口に到達する時刻t12までの間の回生制動による減速度を予め設定することにより、回生制動を開始する時刻t11を、カーナビゲーション装置310からのカーブの形状の情報に基づき設定できる。
図8の例では図7と比較すると、時刻t11までの直線路では、蓄電装置110のSOC値の状況を考慮しつつ、回生ブレーキの制動を開始する時刻t11をカーブ入口の直前まで近接させることができる。よって減速度の増大によって生じる乗り心地の悪化等のドライバビリティの許す限り、回生制動のエネルギ回収効率の最も効率の良い減速度で、車速V2まで短時間で減速させることができる。しかも、減速判定時期と同じ時刻t11から回生制動が開始されるので、カーブ付近を通過するのに必要とされる時間を短縮することができる。
[実施の形態3]
実施の形態3では、減速判定時期と回生開始時期とが一致して同じ時刻t21である場合を例に説明する。
図9は、実施の形態3の車両の制御方法の一例を示すタイムチャートである。実施の形態3においては、図1におけるPCU120、モータジェネレータ130およびECU300、カーナビゲーション装置310等の主要部の構成は同一である。また、図9について図7、図8のタイムチャートと重複する部分の説明は繰り返さない。
図9では、図8のタイムチャートに示されたECU300による制御に加えて更に、カーナビゲーション装置310からの情報に基づき、SOC値を参照して、減速開始タイミングに加えて、減速開始タイミングと同時点のモータジェネレータ130による回生制動の制動開始タイミングを減速計画と共に算出する。
この実施の形態3の車両では、モータジェネレータ130による回生制動として、複数回に分けて断続して制動を加える間欠制動が採用されている。
ECU300は、カーナビゲーション装置310から前方の道路の形状の情報に基づき、SOC値を参照して、減速開始タイミングに加えて、減速開始タイミングと同時点のモータジェネレータ130による回生開始タイミングを減速計画と共に算出する。
そして、減速開始タイミングが時刻t21で到来すると、駆動力変更運転に代えてモータジェネレータ130による間欠制動が行なわれる。
すなわち、減速制御計画に沿って時刻t21では、回生ブレーキの作動させて回生エネルギPC31を回収する制御信号が、減速開始のタイミングでPCU120に送信される。回生エネルギPC31の回収終了後、間隔を置いた時刻t22では、回生ブレーキを作動させる制御信号がPCU120に送信される。回生エネルギPC32の回収後、間隔を置いた時刻t23では、回生ブレーキを作動させる制御信号がPCU120に送信される。回生エネルギPC33の回収後、間隔を置いた時刻t24では、回生ブレーキを作動させる制御信号がPCU120に送信されて、回生エネルギPC34の回収が行なわれる。
この実施の形態3では、実施の形態2の回生エネルギPC2に代わる各回生エネルギPC31〜PC34の回収時間は各々短く、各回生エネルギPC31〜PC34同士は、ほぼ同じ長さの回収時間に設定されている。
これらの各回生エネルギPC31〜PC34の間には、間隔が設定されていてモータジェネレータ130による回生制動が、複数回に分けられて断続して制動が加えられる。
車速V1である時刻t21から、車速V2まで減速される時刻t25に至るまでの時間が、短時間であっても、各回生エネルギPC31〜PC34の大きさおよび長さ、各回生エネルギPC31〜PC34の間隔を変更することが設定により変更可能である。
これにより、回収される回生エネルギPC31〜PC34の総和の設定で、所望の車速V2まで減速とできるように設定される。
このため、図8に示すエネルギ回収期間TC1と異なる時間で、より好ましくは、短いエネルギ回収期間TC2であっても、車両100が急減速にならないように、良好な乗り心地の減速度に設定可能で、ドライバビリティを向上させることができる。
更に、各回生エネルギPC31〜PC34の大きさおよび長さは、同一減速度、同一間隔となるように設定されているが、回生ブレーキが徐々に大きな制動力を得られるように、段階的に大きくなる設定としてもよい。また、各制御信号の間隔は、この段階的な出力変動の設定に合わせて短くなるように設定することが望ましく、所望の減速フィーリングを設定できる。
このように、カーブの入口手前の直線路で、バッテリのSOC値が充分減速エネルギを回収できるSOC1となると、ECU300は、駆動力変更運転を停止する制御信号と共に、回生エネルギPC31〜PC34を回収する制御信号を出力する。これにより、複数回に分けられた回生制動が断続してモータジェネレータ130により行われる。
回生ブレーキの制動動作により、時刻t21〜t25において、車速がV1からV2に減速されると共に、回生エネルギPC31〜PC34が回収される。
これによりSOC値が、SOC1からSOC2まで上昇する。この際、カーブを通過する車速の中央値であるV2まで減速されても、SOC2がSOC制御閾値以下となるように、時刻t21からカーブの入口に到達する時刻t25までの間の回生制動による減速度が予め設定されている。
このため、カーナビゲーション装置310から得られる情報で道路形状から事前に減速を開始する最適なタイミングが算出されて、エネルギ効率を向上させることができる。しかも、蓄電装置110のSOC値に基づいて、回生ブレーキの制動を開始する時刻t21を直線路のうちカーブ入口の直前地点に対応する時刻に近接させて設定しても、間欠制動により円滑に減速するので、乗り心地等のドライバビリティを更に向上させることができる。
このように、車両100は、回生エネルギPC31〜PC34をドライバビリティを損なうことなく円滑に回収でき、カーナビゲーション装置310の情報からカーブ手前の減速を開始するタイミングを算出して、エネルギ効率を向上させることができる。
以上説明した実施の形態1〜3について、最後に再び図面を参照しながら総括する。
本発明による車両100は、車両100の走行駆動力を発生するモータジェネレータ130と、モータジェネレータ130を制御するためのECU300とを備える。
ECU300は、ユーザからの要求駆動力の変化が所定範囲内に収まる定常走行要求時に、モータジェネレータ130について、駆動力を発生させる第1の状態と、モータジェネレータ130の駆動力を第1の状態よりも低いレベルとする第2の状態とを切換えながら車両100を走行させる駆動力変更運転を実行する。
ECU300は、カーナビゲーション装置310から与えられる情報に基づいて、車両100の減速開始タイミングを算出し、減速開始タイミングが到来すると、減速を行うようにモータジェネレータ130を制御する。
ECU300は、車両100に搭載されているカーナビゲーション装置310からの情報によって、車両前方の進路にカーブを有する道路の情報を得る。このため、カーブ入口に到達する前の直線路では、充分な距離を持たせて早い段階で、駆動力変更運転による減速および回生制動を開始でき、更にエネルギ効率を向上させることができる。
好ましくは、情報は、曲線路があるという情報を含む。
より好ましくは、ECU300は、前方の曲線路の入口に向けて要求駆動力に応じた車速を、駆動力変更運転又は回生制動により減速し、減速された車速で曲線路に進入して駆動力変更運転を継続する。
より好ましくは、ECU300は、カーナビゲーション装置から与えられた前方の曲線路の形状に関する情報に基づいて曲線路に進入する車速を決定する。
より好ましくは、駆動源は、モータを含む。車両は、モータに電力を供給する蓄電装置をさらに備え、ECU300は、カーナビゲーション装置310から与えられた前方の曲線路の形状に関する情報に基づいて曲線路に進入する際の蓄電装置の充電状態を制御する。
好ましくは、駆動源は、モータジェネレータ130を含む。図7に示すように、ECU300は、情報に基づいて減速開始タイミングに加えて、減速開始タイミングより遅い時点のモータジェネレータ130による回生開始タイミングを算出し、減速開始タイミングが到来すると、駆動力変更運転を行ないながら減速が行なわれるように駆動源を制御し、回生開始タイミングが到来すると駆動源による駆動力発生を停止してモータジェネレータ130による回生制動が行なわれるようにモータジェネレータ130を制御する。
好ましくは、駆動源は、モータジェネレータ130を含む。図8に示すように、ECU130は、情報に基づいて減速開始タイミングに加えて、減速開始タイミングと同時点のモータジェネレータ130による回生開始タイミングを算出し、減速開始タイミングが到来すると、駆動力変更運転に代えてモータジェネレータ130による回生制動が行なわれるようにモータジェネレータ130を制御する。
より好ましくは、図9の回生制動の時間TP3に示すようにモータジェネレータ130による回生制動は、複数回に分けて断続して制動を加える間欠制動によって行なわれる。
より好ましくは、ECU130は、カーブの出口で、要求駆動力に応じた車速に戻す。 好ましくは、車両100は、ユーザが要求駆動力を指定するためのアクセルペダルを操作部320として備えている。ECU300は、減速開始タイミングが到来した場合には、アクセルペダルによって指定された要求駆動力よりも小さい駆動力に対応する駆動力変更運転が実行されるようにモータジェネレータ130を制御する。
より好ましくは、ECU130は、駆動力変更運転の実行中は、車両100の速度が許容範囲内に維持されるように、第1および第2の状態を切換えて、モータジェネレータ130を駆動する。
より好ましくは、車両100の速度が許容範囲の車速上限値ULまで上昇したことに応答して第2の状態に切換え、車両100の速度が許容範囲の車速下限値LLまで低下したことに応答して第1の状態に切換える。このため、カーブを走行中も、車速V3は、常に一定に保たれる。
より好ましくは、第1の状態における駆動力は、車両100の速度を維持することが可能な一定出力の基準駆動力よりも大きく設定され、第2の状態における駆動力は、基準駆動力よりも小さく設定される。
より好ましくは、車両100は、第2の状態においては、主に車両100の慣性力によって走行する。よってカーブを走行する前の直線路から、カーブを通過して、進路上の次の直線路を走行する際にも、第1の状態よりも低いレベルである慣性走行が、第1の状態と切換えられながら繰り返されて、駆動力変更運転によるエネルギ効率の向上が図られる。更に、予めカーナビゲーション装置310に備わる地図情報を用いて、進路のカーブの手前までに事前に駆動力変更運転による減速、回生ブレーキによる減速を行なえ、円滑にカーブを通過させることができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、これらの実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
たとえば、上述の実施形態においては、駆動力変更運転の減速動作に続いて、回生ブレーキによる制動が行なわれているものを示して説明してきたが特にこれに限らず、回生ブレーキに代えて、油圧ブレーキ160を使用してブレーキ制動を開始してもよい。すなわち、車両100に設けられたカーナビゲーション装置310からの情報に基づいて、カーブの手前で減速するものであれば、駆動力変更運転の減速動作と共に、回生ブレーキと油圧ブレーキとを同時に働かせてもよい。
更に、実施の形態1では、駆動力変更運転制御の減速動作に続いて、回生ブレーキによる制動が行なわれているものを示して説明してきたが特にこれに限らず、駆動力変更運転制御の減速動作のみで、カーブを通過可能な車速V3まで減速してもよい。この場合、図7に示す減速開始タイミングの時刻t1よりも前に、カーナビゲーション装置310の道路形状の情報を早期にECU300が取得する。そして、車両100がカーブの入口に差し掛かる時刻t2までの駆動力変更運転の走行距離を比較的長くなるように予め設定する。
このため、駆動力変更運転制御によって車両100の駆動力を減少させることにより、カーブの入口手前を通過する時刻t3までにカーブを通過可能な車速V3まで減速させることができる。よって、回生制動を行なう必要がなく蓄電装置110のSOC値が、例えばSOC制御閾値に近く、良好な充電量を確保することが困難な場合には、回収する回生エネルギPC1を少なく、もしくは0に設定することにより、更に円滑なドライバビリティが得られる。
そして、実施の形態3では、減速判定時期でありかつ回生開始時期である時刻t21から、カーブの入口に差し掛かる時刻t25までのエネルギ回収期間TC2内では、間隔を置いて複数回、回生ブレーキによる制動に伴い、回生エネルギPC31〜PC34が回収されている。しかしながらこれに限らず、各制御信号と同等の回生ブレーキを制動動作させる制御信号が、ECU300から何回出力されても良く、制御信号の回数、大きさ、長さ、および制御信号の間隔が限定されるものではない。
また、カーナビゲーション装置310からの情報によって、車両前方の進路にカーブを有する道路の情報を得るようにしているが、例えば、車両に搭載されたカーナビゲーション装置310に記憶された地図情報を元にECU300が、車外からGPS装置等によって得られる位置情報を受信してこれに加えて、車両100の自車位置情報を得てもよい。この場合、地図情報と、前方の進路にあたる道路の道路形状の情報とから、カーブがあることを認識する。
また、車両に搭載されたカーナビゲーション装置310に記憶された地図情報を元に、車両外部のITS等から情報を受信して、進路のに当たる道路の道路形状の情報からカーブがあることを認識できるものであれば、どのような情報取得装置をカーナビゲーション装置310と共に、またはカーナビゲーション装置310に代えて用いてもよい。
また、これらの情報取得装置が接続される道路交通システムITSは、広域道路交通システムITSに限定されるものではなく、このカーブを有する道路の情報を取得できるものであれば、ローカル道路交通システムITS、地域型道路交通システムITS、インフラ協調型安全運転支援システム等どのような道路交通システムであっても、曲線路の形状、好ましくは、曲率半径、長さ等を認識できる道路形状の情報を得られるものであればよい。
更に、カーブ近傍のITSスポット対応の情報を取得できるカーナビゲーション装置310を用いてもよく、ECU310がカーブであることを認識できる道路情報を取得できるものであれば、情報伝達の数量、手段および方法が特に限定されるものではない。
また、ECU300に接続された操作部320として、踏込量に応じて、要求トルク信号TRを出力するアクセルペダルを例示して説明してきたが、要求トルク信号TRは、ECU300に入力されて、ユーザが指定する要求駆動力の設定に用いられるものであればよい。例えば、アクセルペダルに代えて、オートクルーズ装置の車速設定レバー等、他の操作装置によって、要求トルク信号TRが設定されて出力されるもの等であってもよい。
そして、曲線路は、図3に示すように道なりにカーブしている道路に限定されるものではない。例えば、複数の車線を有する直線路で、交差点手前等で車線変更が必要な場合や、減速が必要とされる右折、左折が行なわれる交差点、Y字路、五さ路等、減速が必要とされる箇所であれば、曲線路(カーブ)の形状、交差する道路の数、車線数が限定されるものではない。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した範囲説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。