以下に添付図面を参照して、この発明にかかる13族窒化物結晶の製造方法、13族窒化物結晶基板の製造方法、13族窒化物結晶および13族窒化物結晶基板の一実施の形態を詳細に説明する。なお、以下の説明において、図には実施形態が理解できる程度に構成要素の形状、大きさ及び配置が概略的に示されているに過ぎず、これにより本発明が特に限定されるものではない。また、複数の図に示される同様の構成については同一の符号を付して示し、その重複する説明を省略する場合がある。
<13族窒化物結晶の結晶製造方法>
本実施形態に係る13族窒化物結晶の製造方法は、以下の第1の工程ないし第4の工程を含む。
(1)下地基板の主面上において、三角格子の格子点位置となるよう13族窒化物結晶の成長開始領域を配置する第1の工程
(2)各成長開始領域から結晶方位を揃えて前記13族窒化物結晶を成長させる第2の工程
(3)結晶成長を継続させて、隣り合う成長開始領域から結晶成長した複数の13族窒化物結晶を連結させて、下地基板の主面上に13族窒化物結晶層を形成する第3の工程
(4)13族窒化物結晶層の冷却過程において、13族窒化物結晶層と下地基板とを剥離させる第4の工程
次に、第1の工程ないし第4の工程についてより詳細に説明する。
(1)第1の工程
第1の工程は、13族窒化物結晶の成長開始領域を形成する工程である。第1の工程には、下地基板の主面上において、三角格子の格子点位置となるよう13族窒化物結晶の成長開始領域を配置する工程である。
13族窒化物の成長開始領域とは、13族窒化物結晶が成長を開始する領域であり、いわゆる種結晶となる領域のことである。好適な実施形態としては、下地基板の主面に形成された13族窒化物を成長開始領域とすることが好ましい。尚、成長開始領域となる13族窒化物の形成方法は、特に限定するものではないが、MOCVDやHVPE等の方法を用いて13族窒化物結晶を下地基板101上に製膜することができる。
次に、図1ないし図3を用いて、13族窒化物結晶の成長開始領域(種結晶領域)105の配置について説明する。図1および図2は、第1の工程で形成される成長開始領域105の配置例を説明する模式図(平面図)である。また、図3(図3−1ないし図3−4)は、13族窒化物結晶の結晶成長過程を説明する模式図である。
図1および図2に示すように、13族窒化物結晶の成長開始領域105は、下地基板101の主面内において、図中点線で示される三角格子の格子点位置となるように配置される。
この三角格子の好適な実施形態としては、図2および図3(図3−1ないし図3−4)に示すように、格子点間隔(格子間隔)が等しい正三角形格子であることが好ましい。また、この三角格子の好適な実施形態としては、図3−1に示すように、三角格子内の各三角形を構成する辺は、成長開始領域105に形成される13族窒化物結晶のa軸(a1、a2、a3)に対して30°の角度を成していることが好ましい。
また、この三角格子の好適な実施形態としては、図3−1に示すように、隣り合う成長開始領域105間の間隔が、1mm以上あることが好ましい。さらに好適な実施形態としては、隣り合う成長開始領域105間の間隔は5mm以上であることが好ましく、さらに好ましくは10mm以上、より好ましくは25mm以上であることが好ましい。このように、隣り合う成長開始領域105間の間隔が大きいほど、結晶欠陥の少ない結晶領域を広くすることができるとともに、13族窒化物結晶の反りを小さくすることができる。
13族窒化物結晶の成長開始領域105の好適な形状としては、円形、六角形、その他の多角形のいずれか1つであることが好ましい。より好適な実施形態としては、13族窒化物結晶の成長開始領域105は円形または六角形であることが好ましい。また、複数の成長開始領域105は互いに離間させて、ドット状とすることが好ましい。
また、13族窒化物結晶の成長開始領域105の好適なサイズとしては、直径1mm以下の円内に入る程度のサイズであることが好ましい。即ち、下地基板101と下地基板101上に成長させた13族窒化物結晶とを熱応力によって剥離させるためには、成長開始領域105はできるだけ小さい方が好ましい。
13族窒化物結晶の成長開始領域105の好適なサイズとしては、直径500μm以下の円内に入る程度のサイズであることが好ましい。さらに好適なサイズとしては、直径200μm以下の円内に入る程度のサイズであることが好ましい。
第1の工程において用いられる下地基板101としては、直径がφ2インチよりも大きな結晶基板を使用することが好ましい。下地基板101としては、例えばサファイア、SiC、MGal2O4、ZnO等の単結晶を用いることができる。
また、下地基板101の好適な実施形態としては、例えばサファイア等の酸化物単結晶基板を用いることが好ましい。サファイアの単結晶基板は、φ6インチ程度までの大きさのものも製品化されている。従って、このサイズのサファイア基板を使用すればφ6インチ程度の大きさの13族窒化物結晶を製造することができる。
図4−1は、第1の工程の一例を説明する図(断面図)である。まず、図中(b)に示すように、下地基板101の主面に13族窒化物膜102を形成する。そして(c)に示すように、13族窒化物膜102上にマスク103を製膜する。次に、(d)に示すようにマスク103上にフォトリソグラフィーでレジストパターン104を形成する。次に、(d)の矢印で示すようにエッチングの工程を経て、(e)に示すように貫通穴のあいたマスク103を形成する。このようにして、貫通穴から露出した13族窒化物膜102の表面を13族窒化物結晶の成長開始領域105とすることができる。
(2)第2の工程
第2の工程は、第1の工程で形成されたそれぞれの成長開始領域105から結晶方位を揃えて13族窒化物結晶106(図3−1参照)を成長させる工程である。また、第2の工程においては、フラックス法によって13族窒化物結晶106を結晶成長させる。
図5は、第2の工程ないし第4の工程において用いられる結晶製造装置1の構成例を示す模式図(断面図)である。結晶製造装置1は、ステンレス製の閉じた形状の耐圧容器11内に、台座24が設けられている。台座24には、13族窒化物の原料を投入して13族窒化物結晶の結晶成長を行うための反応容器12を設置することができる。
また、耐圧容器11の内部空間23には、窒素(N2)ガスとアルゴン(Ar)ガスを充満させ、かつ耐圧容器11内の窒素(N2)圧力とアルゴン(Ar)ガス圧力を制御することを可能にするガス供給管14が、耐圧容器11を貫通して装着されている。
ガス供給管14は窒素供給管17とアルゴン供給管20に分岐しており、それぞれバルブ15、18で剥離することが可能となっている。また、窒素およびアルゴンの圧力はそれぞれ圧力制御装置16、19で調整する事ができる。また、ガス供給管14には、耐圧容器11内の全圧力をモニターする為の圧力計22が設置されている。
なお、窒素ガスは窒化ガリウムの原料であり、これに不活性ガスであるアルゴンを混合するのは、全圧を高くしナトリウムの蒸発を抑制しつつ、窒素ガスの圧力を独立して制御するためである。これにより、制御性の高い結晶成長が可能となる。
好適な実施形態としては、窒素ガス分圧は1Pa以上とすることが好ましい。より好ましくは、窒素ガス分圧を4MPaとすることが好ましい。
尚、窒素供給管17から供給するガスは窒素ガスに限定されるものではなく、窒素を含むガスであればその他のガスを窒素供給管17から供給するとしてもよい。
尚、反応容器12の材質は特に限定するものではなく、BN焼結体、P−BN等の窒化物、アルミナ、YAG等の酸化物、SiC等の炭化物等を使用することができる。また、反応容器12は耐圧容器11から取り外すことができる。
また、耐圧容器11の外側にはヒーター13が設置されている。ヒーター13は任意の温度に制御することが可能となっている。ヒーター13の設定温度と反応容器12内の温度は均熱性がとれるよう構成されるため、ヒーター13を昇温することにより、耐圧容器11および反応容器12を加熱して、反応容器12内に形成される混合融液25の温度を13族窒化物結晶を成長させる結晶成長温度まで上昇させ、かつ当該温度に保持することができる。
結晶成長温度は特に限定されるものではないが、好適な実施形態としては、700℃〜900℃とすることが好ましい。より好適な実施形態としては、結晶成長温度を880℃とすることが好ましい。
また、耐圧容器11はバルブ21部分で結晶製造装置1から取り外すことが可能であり、耐圧容器11部分のみをグローブボックスに入れて作業することができる。即ち、原料を反応容器12に投入する作業は、耐圧容器11をバルブ21部分で取り外して、耐圧容器11をグローブボックスに入れて行う。これにより、反応容器12および耐圧容器11内に不純物が混入することを抑制することができ、高品質の13族窒化物結晶を製造することができる。
第2の工程においては、図5に示すように第1の工程で成長開始領域105を形成した下地基板101を反応容器12内に設置する。
反応容器12の材質は適宜選択できるが、アルミナやYAG、BN、SiC、TaC等が使用できる。
そして、反応容器12内には、フラックスとなるアルカリ金属と、原料となる13族元素が投入され、少なくとも窒素を含む原料ガス(気相)が充填された圧力容器は、結晶成長温度まで昇温される。昇温過程で反応容器内のアルカリ金属および13族元素は溶解し、混合融液25を形成する。また、気相の窒素が混合融液25中に溶解する。
そして、反応容器12を上述した結晶成長温度に保ち、気相中の窒素圧力を所定の範囲内に保って気相から混合融液25中に窒素を継続して送りこむことにより、13族窒化物結晶(例えば窒化ガリウム結晶)の結晶成長条件を保つことができる。第2の工程においてはこのようにして、混合融液に溶解した窒素と13族元素とから13族窒化物結晶を結晶成長させることができる。
即ち、結晶成長条件では、第1の工程において図3−1に示すように配置した結晶成長領域105から、図3−2に示すように13族窒化物結晶106が結晶成長を開始する。この場合に、各結晶成長領域105において成長する13族窒化物結晶106はm面(六角形の各辺)を結晶成長面として結晶方位が揃った状態で結晶成長する。
図4−2は、図4−1で上述した第1の工程後に行われる第2の工程ないし第3の工程の一例を説明する図(断面図)である。第2の工程においては、図中(f)に示すように、13族窒化物膜102上に形成された複数の成長開始領域105において、13族窒化物結晶106が結晶成長を開始する。(f)に示すように、13族窒化物結晶106はまず六角錐状に結晶成長し、その後(g)に示すように、c面を拡大するように六角柱状に結晶成長する。
フラックスとして用いられるアルカリ金属としては、主にナトリウム(Na)が用いられるが、リチウム(Li)やカリウム(K)などの他のアルカリ金属元素を用いてもよい。また、これらを混合して使用するとしてもよい。好適な実施形態としては、フラックスとして用いられるアルカリ金属としては、ナトリウムを用いることが好ましい。
また、原料となる13族元素としては、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)の少なくともいずれか1つを用いることが可能であり、1種類の13族元素を用いてもよいし、複数の13族元素を混合して使用するとしてもよい。好適な実施形態としては、13族元素としてガリウムを用いることが好ましい。
また、原料となる窒素としては、一般的には窒素ガスを用いることができるが、アンモニア等の窒素を含むガスを使用することができる。また、窒素を含む気相中には、このような少なくとも窒素を含むガスの他、アルゴン(Ar)等の不活性ガスや、その他のガスを混合するとしてもよい。
また、混合融液中には、アルカリ金属と13族元素と窒素の他に、ゲルマニウム(Ge)、マグネシウム(Mg)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)等のドーパントを含めるとしてもよい。
さらに、混合融液中には、カルシウム(Ca)、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)等、フラックスとなるアルカリ土類金属や、雑結晶の低減効果を有する炭素(C)等を含めるとしてもよい。
(3)第3の工程
第3の工程においては、第2の工程における13族窒化物結晶の結晶成長をさらに継続させて、隣り合う成長開始領域105から成長した各ドメイン(領域)の13族窒化物結晶106同士を連結させる。これにより、下地基板101の主面上に1枚に連結された13族窒化物結晶層1100(図3−4参照)を形成させる。尚、第3の工程においては、13族窒化物結晶106の結晶成長をフラックス法によって行う。
即ち、第3の工程においては混合融液25の温度および耐圧容器11内の窒素圧力を上述の結晶成長条件にて保持する。そして、第2の工程において図3−2に示すように結晶成長を開始した13族窒化物結晶106を、図3−3に示すようにさらに結晶成長させる。そして、図3−4に示すように、隣り合う13族窒化物結晶のドメイン106同士を連結させて、1枚の13族窒化物層1100を得る。
尚、ドメインとは各成長開始領域105から成長した領域の13族窒化物結晶106のことを示し、ドメイン間の境界領域107に比べて結晶欠陥の少ない領域となる。以降では、ドメインを13族窒化物結晶106または単にドメイン106と称することとする。
また、第3の工程においては、図4−2(h)に示すように、13族窒化物結晶106はc面の面積が肥大化してマスク103の表面を被覆するようにさらに拡大する。そして、(i)に示すように、隣り合う成長開始領域105から成長した13族窒化物結晶106同士が連結される。そして、さらに13族窒化物結晶106を結晶成長させることにより、(j)にしめすように、複数の13族窒化物結晶106が連結された13族窒化物結晶層1100を得ることができる。この場合に各13族窒化物結晶106の結晶成長を十分に行えば、13族窒化物結晶層1100の表面を(f)に示すように平滑化することが可能である。
以上のように、本実施形態によれば、成長開始領域105を三角格子の格子点位置に配置するので、六方晶の13族窒化物結晶106が結晶成長する場合には、縞状に成長開始領域を配置する場合や、正方格子の格子点位置に成長開始領域を配置する場合等と比べて、隣り合う成長開始領域105から成長した複数の13族窒化物結晶106を効率的に連結させることができる。
尚、正三角形格子の格子点に配置しない場合において、隣り合う13族窒化物結晶間に生じる隙間を各ドメイン106の連結後に埋めるよう結晶成長させることも考えられるが、結晶成長条件によっては複数の結晶方位に結晶成長させることが困難であるため、隣り合うドメイン106同士の連結をスムーズに行うことは困難である。
これに対して本実施形態においては、正三角形格子の格子点に成長開始領域105を配置するので、a軸方向に13族窒化物結晶106が成長する際に、隣り合う成長開始領域105から成長する13族窒化物結晶106のm面(六角形の各辺)の方向を揃えることができる。したがって、図3−2ないし図3−4に示すように、13族窒化物結晶106がm面を結晶成長面として成長する場合に、図3−4に示すように隣り合う13族窒化物結晶106を隙間なく連結することができる。
従来、気相成長法では、隣り合う成長開始領域105の間隔を大きくすると、成長開始領域以外の場所でも結晶核が発生し多結晶となってしまうため、隣り合う成長開始領域105の間隔を大きくすることができなかった。これに対してフラックス法によれば、種結晶のみに成長する結晶成長条件が存在するため、適切な結晶成長条件において結晶成長を行うことにより、成長開始領域105の間隔を広くとっても、その間に結晶核が発生することを防止することができる。従って、フラックス法によれば隣り合う成長開始領域105の間隔を大きく配置することができる。従って、横方向すなわちc面が拡大する方向に成長する領域を大きくとることができるので、低転位密度であるドメイン106の面積を拡大することができる。
一般的に、フラックス法において混合融液にシリコン(Si)が添加されると、13族窒化物結晶の結晶成長は著しく阻害される。これに対して本実施形態の結晶製造方法では、Siが極力混入しないようにしてフラックス法による結晶成長工程(第2の工程〜第3の工程)を行うので、13族窒化物結晶層1100中のSi濃度を、SIMS分析の検出限界(2×1017cm−3)以下まで低減することができる。
また、混合融液25中に、Ca、Ba、Sr等を添加することにより、これらの元素を13族窒化物結晶中に固溶させることができる。
さらに、上述のような結晶成長条件において第2の工程ないし第3の工程を行うことにより、13族窒化物結晶106のc面が下地基板101の主面に平行となるように結晶成長させることができる。これにより、下地基板101の主面に沿って大面積の13族窒化物結晶層1100を製造することができる。
(4)第4の工程
第4の工程は、13族窒化物結晶層の冷却過程において、13族窒化物結晶層と下地基板とを剥離する工程である。
図4−3は、図4−2で上述した第3の工程後に行われる第4の工程ないし第6の工程の一例を説明する図(断面図)である。第3の工程後、13族窒化物結晶106の結晶成長を終了し、反応容器12の温度を結晶成長温度から室温まで下げる。下地基板101と13族窒化物結晶層1100との熱膨張係数は異なるため、ヒーター13の温度を結晶成長温度から室温まで降温する冷却過程において、図中(k)に示すように13族窒化物結晶層1100が下地基板101から剥離する。(第4の工程)
このように、本実施形態によれば、13族窒化物結晶層1100とは熱膨張係数の異なる下地基板101を用いるので、冷却過程において自然に13族窒化物結晶層1100と下地基板101とを剥離することができる。
また、縞状に成長開始領域を配置する場合と比べて、13族窒化物結晶層1100内において応力が均一に分散化されるので、13族窒化物結晶層1100を大口径化した場合でもクラックの発生を抑制することができる。
また、各成長開始領域105は1mm以上の間隔を設けて配置されるので、隣り合うドメイン106同士が接触した場合、各ドメイン106の六角形の外径も1mm以上となる。この間隔を調整することにより、第4の工程において13族窒化物結晶層1100を下地基板101から剥離する際に、容易に剥離することが可能となり、13族窒化物結晶層1100を大口径化してもクラックや反りの発生を抑制することが可能となる。
<13族窒化物結晶>
本実施形態に係る13族窒化物結晶は、上述の第1の工程ないし第4の工程で製造される13族窒化物結晶層1100である。
図7は、13族窒化物結晶層1100をc面から見た図(平面図)である。図7および図3−4に示すように、13族窒化物結晶層1100は、境界領域107を辺とする六角形のドメイン106が、複数連結されて構成されている。境界領域107においては転位密度が高くなるため、顕微鏡等によって観察可能である場合や、酸によるエッチング等によって観察可能である場合がある。この場合には、各ドメイン106の位置を容易に判別することが可能となる。
また、13族窒化物結晶層1100は、下地基板101(図2参照)の主面面積全体を被覆している。即ち、13族窒化物結晶層1100の外径は下地基板101の外径とほぼ等しくなり、上述のように外径が2インチ程度の下地基板101を用いる場合には、13族窒化物結晶層1100の外径も2インチ程度とすることができる。
また、13族窒化物結晶層1100において、六角形の各ドメイン106における辺のうち平行な辺と辺との間隔は、隣り合う成長開始領域105間の間隔と同等となる。即ち、上述のように隣り合う成長開始領域105間の間隔を1mm以上として第1の工程を行った場合には1mm以上となる。
<13族窒化物結晶基板の製造方法>
本実施形態に係る13族窒化物結晶基板の製造方法は下記(5)(6)の工程を含む。
(5)上述の第1の工程ないし第4の工程で製造された13族窒化物結晶を基板として用いて、当該基板上に13族窒化物結晶をさらに結晶成長させる第5の工程
(6)第5の工程で結晶成長させた13族窒化物結晶を用いて結晶基板を製造する第6の工程
次に、第5の工程および第6の工程についてより詳細に説明する。
(5)第5の工程
第5の工程では、第4の工程で剥離された13族窒化物結晶層1100を基板として用いて、この基板上に13族窒化物結晶をさらに結晶成長させる工程である。尚、以下では、13族窒化物結晶層1100を13族窒化物結晶基板1100と記する場合もある。
即ち、第5の工程においては、図4−3(l)に示すように、第4の工程において剥離した13族窒化物結晶層1100を新たな基板として用いて、同図(m)に示すように13族窒化物結晶層1100の主面上に13族窒化物結晶1200をさらに結晶成長させる。
尚、13族窒化物結晶層1100はそのまま基板として用いてもよいし、13族窒化物結晶層1100を複数枚にスライス加工した後にスライスされた基板の少なくとも1枚を基板として用いるとしてもよい。
第5の工程において用いられる結晶成長方法としては、MOCVD法、HVPE(ハロゲン化気相エピタキシー)法、昇華法等の気相成長法、または、フラックス法、アモノサーマル法等の液相成長法を用いることができる。
より好適な実施形態としては、第5の工程においてHVPE法による結晶成長を行うことが好ましい。HVPE法は、13族元素の塩化物ガスとアンモニアガスの反応により13族窒化物を結晶成長させる方法であるが、MOCVD法や昇華法等の他の気相成長法に比べ成長速度が速いので、厚い結晶層を成長するのに好適な方法である。
さらに好適な実施形態としては、第5の工程においてフラックス法による結晶成長を行うことが好ましい。
図6は、第5の工程をフラックス法で行う場合に用いる結晶製造装置1の構成例を示す模式図(断面図)である。図6に示す結晶製造装置1の構成は、図5で上述した結晶製造装置1の構造と同様であるため、ここでの説明を省略する。図6に示すように、第5の工程では、反応容器12内に13族窒化物結晶基板1100を設置し、この13族窒化物結晶基板1100上にフラックス法によって13族窒化物結晶1200を結晶成長させる。フラックス法については、図5において上述したためここでの説明を省略する。
フラックス法は、他の液相成長法に比べ成長速度が速く、不純物の混入も少ないので、高純度かつ厚い結晶層を成長させるのには好適な結晶成長方法である。また、HVPE法のように、反応管からシリコンが固溶する可能性も無いため、低Si濃度すなわち低キャリア濃度のn型の13族窒化物結晶1200を成長させることができる。
好適な実施形態としては、フラックス法において用いられるアルカリ金属はナトリウムであり、13族元素はガリウムであることが好ましい。
上述のように、本実施形態の第5の工程によれば、13族窒化物結晶基板1100を基板として、その上にさらに13族窒化物結晶1200を成長させるので、基板と基板上に成長する結晶との間で、結晶格子の整合性や熱膨張率の整合性を向上させることができる。従って、結晶成長させた13族窒化物結晶1200の転位密度を低減することができる。
(6)第6の工程
第6の工程は、第5の工程で結晶成長させた13族窒化物結晶1200を用いて結晶基板を製造する工程である。
即ち、第6の工程においては、図4−3に示すように、第5の工程で製造された13族窒化物結晶1200を(n)に示すようにスライス加工して、自立した13族窒化物結晶基板1210a〜1210g(1210)を得る。また、スライス加工された基板はそれぞれ外径加工や表面研磨等の各種加工が行われる。尚、外径加工はスライス前の13族窒化物結晶1200に対して行うとしてもよい。
図4−4は、第6の工程によって得られる13族窒化物結晶基板1210の斜視図である。図4−4に示すように、13族窒化物結晶基板1210(1210a〜1210g)においては、13族窒化物結晶基板1100の各ドメイン106に対応するように、ドメイン1106が形成される。
<13族窒化物結晶>
本実施形態に係る13族窒化物結晶は、第5の工程で製造される13族窒化物結晶1200(図4−3参照)である。
第5の工程で13族窒化物結晶1200をHVPE法で結晶成長させた場合には、反応管からSiが固溶する(オートドーピング)ため、13族窒化物結晶1200中のSi濃度が2×1017cm−3よりも多くなる。
一方、第5の工程で13族窒化物結晶1200をフラックス法で結晶成長させた場合には、上述のようにSiの混入を極力減らして結晶成長を行うので、13族窒化物結晶1200中のSi濃度は、SIMS分析の検出限界(2×1017cm−3)以下となる。以上のように、第5の工程で用いる結晶成長方法を選択することにより結晶中のSi濃度を制御することが可能である。
また、混合融液25中にCa、Ba、Sr等を混合した場合には、これらの元素を13族窒化物結晶1200中に固溶させることが可能である。
<13族窒化物結晶基板>
また、本実施形態に係る13族窒化物結晶基板は、上述の第6の工程で製造される13族窒化物結晶基板1210(図4−4、図8参照)である。
図8は、13族窒化物結晶基板1210を主面側から見た図(平面図)である。図8に示すように、第6の工程で製造される13族窒化物結晶基板1210は、c面を主面として、主面内に結晶欠陥の多い境界領域1107を境界とする六角形のドメイン1106を複数含んでいる。
ドメイン1106は、第5の工程において13族窒化物結晶1200が13族窒化物結晶基板1100上に結晶成長する際に、ドメイン106および境界領域107の性質が伝播して形成すると考えられる。従って、ドメイン1106のサイズはドメイン106のサイズと同等となるので、第1の工程において成長開始領域105の間隔を制御することにより、ドメイン1106のサイズも制御することが可能である。
図9は、ドメイン1106のサイズが異なる13族窒化物結晶基板1210の一例を示す図(平面図)である。第1の工程において成長開始領域105間の間隔(図3−1参照)を広く設けた場合には、図9に示すようにドメイン1106のサイズを図8に示す場合よりも大きくすることができる。
上述のように、成長開始領域105間の間隔(図3−1参照)を1mm以上とする場合には、ドメイン1106の六角形状において該六角形の辺のうち平行な辺と辺の間隔は1mm以上となる。
尚、好適な実施形態としては、ドメイン1106の六角形状において該六角形の辺のうち平行な辺と辺の間隔は5mm以上であり、さらに望ましくは10mm以上、さらに望ましくは25mm以上である。
本実施形態によれば、ドメイン1106ごとの形状を均一に揃えることができる。これにより、各ドメイン1106に対してデバイスプロセスを行う場合には、それぞれのドメイン1106ごとにマスク形状を変更することなく、統一化された形状およびサイズのマスク等を用いてデバイス加工を行うことができる。従って、デバイス加工プロセスを効率化することができる。
尚、13族窒化物結晶基板1210のサイズは、第1の工程において用いられる下地基板101の大きさによって決まるため、その外径は2インチより大きく、φ3インチ、φ4インチ、φ6インチ等と一般的に用いられる単結晶基板(下地基板101)と同等の大きさとすることが可能である。
また、本実施形態によれば、上述の各工程によって13族窒化物結晶基板1210の曲率半径を20m以上とすることができる。
以上説明したように、本実施形態によれば、三角格子の格子点位置となるよう13族窒化物結晶の成長開始領域を配置するため、六方晶構造の13族窒化物結晶の製造効率を向上させることができるとともに、格子点の配置を制御することにより13族窒化物層の歪みを低減することができる。これにより、大口径かつ反りが少ない13族窒化物結晶の製造方法、13族窒化物結晶基板の製造方法、13族窒化物結晶および13族窒化物結晶基板を提供することができるという効果を奏する。
次に、13族窒化物結晶の製造方法および13族窒化物結晶基板の製造方法のその他の実施形態について説明する。
(製造方法の第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について、図10−1ないし図10−4を用いて説明する。
図10−1は、第2の実施形態における第1の工程の一例を説明する図(断面図)である。まず、図中(b)に示すように、下地基板201の主面に13族窒化物膜202を形成する。そして(c)に示すように、13族窒化物膜202上にレジスト等でパターン203を形成する。次に、(d)に示すように13族窒化物膜202およびパターン203の表面上にマスク204を製膜する。その後、(e)に示すように、レジストパターン203を除去して、レジストパターン203以外の領域にマスクを形成する。このようにして、マスク204の開口部から露出した13族窒化物膜202の表面を13族窒化物結晶の成長開始領域205とすることができる。
上述において、マスク103、204の構成材料は特に限定されないが、好適な実施形態としては、タングステン、タンタル、アルミナ、YAG、MgO、窒化シリコン等を使用することが可能である。また、マスク103、204はスパッタ等によって13族窒化物膜102、202上に製膜することができる。
図10−2は、図10−1で上述した第1の工程後に行われる第2の工程ないし第3の工程の一例を説明する図(断面図)である。図中(f)に示すように、13族窒化物膜202上に形成された複数の成長開始領域205において、13族窒化物結晶206が結晶成長を開始する。(f)に示すように、13族窒化物結晶206はまず六角錐状に結晶成長し、その後(g)に示すように、c面を拡大するように六角柱状に結晶成長する。(第2の工程)
そして、(h)に示すように、c面はマスク204の表面を被覆するようにさらに拡大し、(i)に示すように、隣り合う成長開始領域205から成長した13族窒化物結晶206同士が連結される。(第3の工程)
そして、さらに13族窒化物結晶206を結晶成長させることにより、(j)にしめすように、複数の13族窒化物結晶206が連結された13族窒化物結晶層2100を得ることができる。この場合に各13族窒化物結晶206の結晶成長を十分に行えば、13族窒化物結晶層2100の表面を(j)に示すように平滑化することが可能である。
図10−3は、図10−2で上述した第3の工程後に行われる第4の工程ないし第6の工程の一例を説明する図(断面図)である。図4−3で上述した工程と同様に、第4の工程(図中(k)参照)、第5の工程(図中(l)(m)参照)、第6の工程(図中(n)参照)が行われる。
図10−4は、第6の工程によって得られる13族窒化物結晶基板2210の斜視図である。図10−4に示すように、13族窒化物結晶基板2210(2210a〜2210g)においては、隣り合う成長開始領域から成長した13族窒化物結晶のドメイン1206が配列される。
(製造方法の第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について、図11−1ないし図11−4を用いて説明する。
図11−1は、第3の実施形態における第1の工程の一例を説明する図(断面図)である。まず、図中(b)に示すように、下地基板301の主面に13族窒化物膜302を形成する。そして、(c)に示すように、13族窒化物膜302上に貫通穴のあいた板をマスク303として載せる。このようにして、貫通穴から露出した13族窒化物膜302の表面を13族窒化物結晶の成長開始領域305とすることができる。
尚、上述において、板状のマスク303の構成材料は特に限定されないが、タングステン、タンタル、サファイア、アルミナ、YAG、MgO、窒化シリコン等が使用できる。
また、上述において、成長開始領域以外の領域は、下地基板101、201、301の表面を露出させておいても良い。このような場合に、下地基板101、201、301の構成材料としては、第2の工程において下地基板101、201、301上における13族窒化物の核発生が抑制される材質が好適である。一例として、下地基板101、201、301の構成材料としては、サファイア、MGal2O4等の酸化物基板が好適である。
図11−2は、図11−1で上述した第1の工程後に行われる第2の工程ないし第3の工程の一例を説明する図(断面図)である。図中(d)に示すように、13族窒化物膜302上に形成された複数の成長開始領域305において、13族窒化物結晶306が結晶成長を開始する。(d)に示すように、13族窒化物結晶306はまず六角錐状に結晶成長し、その後(e)に示すように、c面を拡大するように六角柱状に結晶成長する。(第2の工程)
そして、(f)に示すように、c面はマスク303の表面を被覆するようにさらに拡大し、(g)に示すように、隣り合う成長開始領域305から成長した13族窒化物結晶306同士が連結される。(第3の工程)
そして、さらに13族窒化物結晶306を結晶成長させることにより、(h)にしめすように、複数の13族窒化物結晶306が連結された13族窒化物結晶層3100を得ることができる。この場合に各13族窒化物結晶306の結晶成長を十分に行えば、13族窒化物結晶層3100の表面を(h)に示すように平滑化することが可能である。
図11−3は、図11−2で上述した第3の工程後に行われる第4の工程ないし第6の工程の一例を説明する図(断面図)である。図4−3で上述した工程と同様に、第4の工程(図中(i)参照)、第5の工程(図中(j)(k)参照)、第6の工程(図中(l)参照)が行われる。
図11−4は、第6の工程によって得られる13族窒化物結晶基板3210の斜視図である。図11−4に示すように、13族窒化物結晶基板3210(3210a〜3210g)においては、隣り合う成長開始領域から成長した13族窒化物結晶のドメイン1306が配列される。
(製造方法の第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について、図12−1ないし図12−4を用いて説明する。
図12−1は、第4の実施形態における第1の工程の一例を説明する図である。まず、図中(b)に示すように、下地基板401の主面に13族窒化物膜402を形成する。そして、(c)に示すように、13族窒化物膜402上にフォトリソグラフィー等によってレジストパターン403を形成する。そして、ドライエッチング等の手法を用いて、(c)の矢印で示すようにレジストパターン403で被覆された部分以外の13族窒化物膜402を除去する。このようにして(d)に示すように下地基板401の表面を露出させる。その後、(e)に示すように、レジストパターン403を取り除き、レジストパターン403で保護されていた13族窒化物膜402を成長開始領域405とすることができる。
図12−2は、図12−1で上述した第1の工程後に行われる第2の工程ないし第3の工程の一例を説明する図(断面図)である。図中(f)に示すように、下地基板401上に形成された複数の成長開始領域405において、13族窒化物結晶406が結晶成長を開始する。(f)に示すように、13族窒化物結晶406は成長開始領域405を種結晶として、そのc面を拡大するように六角柱状に結晶成長する。(第2の工程)
そして、(g)に示すように、そのc面は下地基板401の表面を被覆するようにさらに拡大し、(h)に示すように、隣り合う成長開始領域405から成長した13族窒化物結晶406同士が連結される。(第3の工程)
そして、さらに13族窒化物結晶406を結晶成長させることにより、(i)にしめすように、複数の13族窒化物結晶406が連結された13族窒化物結晶層4100を得ることができる。この場合に各13族窒化物結晶406の結晶成長を十分に行えば、13族窒化物結晶層4100の表面を(i)に示すように平滑化することが可能である。
図12−3は、図12−2で上述した第3の工程後に行われる第4の工程ないし第6の工程の一例を説明する図(断面図)である。図4−3で上述した工程と同様に、第4の工程(図中(j)参照)、第5の工程(図中(k)(l)参照)、第6の工程(図中(m)参照)が行われる。
図12−4は、第6の工程によって得られる13族窒化物結晶基板4210の斜視図である。図12−4に示すように、13族窒化物結晶基板4210(4210a〜4210g)においては、隣り合う成長開始領域から成長した13族窒化物結晶のドメイン1406が配列される。
(製造方法の第5の実施形態)
次に、第5の実施形態について、図13−1ないし図13−4を用いて説明する。
図13−1は、第5の実施形態における第1の工程の一例を説明する図(断面図)である。第1の工程においては、下地基板501上に形成した貫通穴のあいたリフトオフ用マスクを介して、13族窒化物膜を製膜し、リフトオフ用マスクを除去して、残った13族窒化物膜を成長開始領域とすることもできる。
まず、図中(b)に示すように、下地基板501上にSiO2等のリフトオフ用マスク502を製膜する。その後、(c)に示すようにフォトリソグラフィー等でレジストパターン503を形成し、ドライエッチング等の手法を用いて図中矢印で示すように、SiO2等のリフトオフ用マスク材料502に開口部を形成する。その後、(d)に示すようにレジストパターン503を除去した後、(e)に示すように13族窒化物膜504を製膜する。そして、リフトオフ用マスク502を除去して、リフトオフ用マスク502の開口部に製膜され、下地基板501上の13族窒化物膜504を成長開始領域505とすることもできる。
図13−2は、図13−1で上述した第1の工程後に行われる第2の工程ないし第3の工程の一例を説明する図(断面図)である。図中(f)に示すように、下地基板501上に形成された複数の成長開始領域505において、13族窒化物結晶506が結晶成長を開始する。(f)に示すように、13族窒化物結晶506は成長開始領域505を種結晶として、そのc面を拡大するように六角柱状に結晶成長する。(第2の工程)
そして、(h)に示すように、そのc面は下地基板501の表面を被覆するようにさらに拡大し、(i)に示すように、隣り合う成長開始領域505から成長した13族窒化物結晶506同士が連結される。(第3の工程)
そして、さらに13族窒化物結晶506を結晶成長させることにより、(j)にしめすように、複数の13族窒化物結晶506が連結された13族窒化物結晶層5100を得ることができる。この場合に各13族窒化物結晶506の結晶成長を十分に行えば、13族窒化物結晶層5100の表面を(j)に示すように平滑化することが可能である。
図13−3は、図13−2で上述した第3の工程後に行われる第4の工程ないし第6の工程の一例を説明する図(断面図)である。図4−3で上述した工程と同様に、第4の工程(図中(k)参照)、第5の工程(図中(l)(m)参照)、第6の工程(図中(n)参照)が行われる。
図13−4は、第6の工程によって得られる13族窒化物結晶基板5210の斜視図である。図13−4に示すように、13族窒化物結晶基板5210(5210a〜5210g)においては、隣り合う成長開始領域から成長した13族窒化物結晶のドメイン1506が配列される。
(製造方法の第6の実施形態)
次に、第6の実施形態について、図14−1ないし図14−4を用いて説明する。
また、その他の好適な実施形態にかかる第1の工程は、下地基板上に13族窒化物結晶を積層する工程と、積層した13族窒化物結晶の表面を、複数の貫通孔を有するマスクで被覆する工程と、を含み、これら貫通孔から露出する13族窒化物結晶の表面を成長開始領域とする。次に、図14−1を参照して本実施形態の具体例について説明する。
図14−1は、第6の実施形態における第1の工程の一例を説明する図(断面図)である。第1の工程においては、図中(b)に示すように、貫通穴のあいた板を下地基板601上にのせてリフトオフ用のマスク602として用いるとしてもよい。この場合、(c)に示すように、下地基板601およびマスク602上に13族窒化物膜603を製膜する。その後、(d)に示すように、マスク602を下地基板601から取り外して、貫通穴の底に製膜された13族窒化物膜603を成長開始領域605とすることもできる。
なお、マスク602の構成材料としては、特に限定されるものではないが、タングステン、タンタル、サファイア、アルミナ、YAG、MgO、窒化シリコン、石英等のうち少なくともいずれか1つを構成材料として含むことが好ましい。
図14−2は、図14−1で上述した第1の工程後に行われる第2の工程ないし第3の工程の一例を説明する図(断面図)である。図中(e)に示すように、下地基板601上に形成された複数の成長開始領域605において、13族窒化物結晶606が結晶成長を開始する。(e)に示すように、13族窒化物結晶606は成長開始領域605を種結晶として、そのc面を拡大するように六角柱状に結晶成長する。(第2の工程)
そして、(f)に示すように、そのc面は下地基板601の表面を被覆するようにさらに拡大し、(g)に示すように、隣り合う成長開始領域605から成長した13族窒化物結晶606同士が連結される。(第3の工程)
そして、さらに13族窒化物結晶606を結晶成長させることにより、(h)にしめすように、複数の13族窒化物結晶606が連結された13族窒化物結晶層6100を得ることができる。この場合に各13族窒化物結晶606の結晶成長を十分に行えば、13族窒化物結晶層6100の表面を(h)に示すように平滑化することが可能である。
図14−3は、図14−2で上述した第3の工程後に行われる第4の工程ないし第6の工程の一例を説明する図(断面図)である。図4−3で上述した工程と同様に、第4の工程(図中(i)参照)、第5の工程(図中(j)(k)参照)、第6の工程(図中(l)参照)が行われる。
図14−4は、第6の工程によって得られる13族窒化物結晶基板6210の斜視図である。図14−4に示すように、13族窒化物結晶基板6210(6210a〜6210g)においては、隣り合う成長開始領域から成長した13族窒化物結晶のドメイン1606が配列される。
(製造方法の第7の実施形態)
次に、第7の実施形態について、図15−1ないし図15−4を用いて説明する。
図15−1は、第7の実施形態における第1の工程の一例を説明する図(断面図)である。第1の工程においては、フラックス法によって13族窒化物結晶の成長開始領域を形成するとしてもよい。
例えば、図中(b)に示すように、サファイアの下地基板701上にGa702を載置する。そして、(c)に示すようにナトリウム(Na)の蒸気と窒素ガス(N2)の雰囲気下で下地基板701を加熱する。すると、Ga702中のGaは液化し、この液体Gaに気相中のナトリウム(Na)と窒素(N2)とが溶解して混合融液703を形成し、GaN705が結晶成長する。このようにして結晶成長させたGaN705を13族窒化物結晶の成長開始領域とすることができる。
なお、フラックス法による第1の工程の好適な実施形態として、窒素ガスの圧力は775℃とし、下地基板701の加熱温度は3MPaとする。これにより、効率よくGaN705を結晶成長させることができる。ただし、窒素ガスの圧力および下地基板701の加熱温度はこれに限定されるものではなく、その他の圧力値および温度であってもよい。
図15−2は、図15−1で上述した第1の工程後に行われる第2の工程ないし第3の工程の一例を説明する図(断面図)である。図中(e)に示すように、下地基板701上に形成された複数の成長開始領域705において、13族窒化物結晶706が結晶成長を開始する。(e)に示すように、13族窒化物結晶706は成長開始領域705を種結晶として、そのc面を拡大するように六角柱状に結晶成長する。(第2の工程)
そして、(f)に示すように、そのc面は下地基板701の表面を被覆するようにさらに拡大し、(g)に示すように、隣り合う成長開始領域705から成長した13族窒化物結晶706同士が連結される。(第3の工程)
そして、さらに13族窒化物結晶706を結晶成長させることにより、(h)にしめすように、複数の13族窒化物結晶706が連結された13族窒化物結晶層7100を得ることができる。この場合に各13族窒化物結晶706の結晶成長を十分に行えば、13族窒化物結晶層7100の表面を(h)に示すように平滑化することが可能である。
図15−3は、図15−2で上述した第3の工程後に行われる第4の工程ないし第6の工程の一例を説明する図(断面図)である。図4−3で上述した工程と同様に、第4の工程(図中(i)参照)、第5の工程(図中(j)(k)参照)、第6の工程(図中(l)参照)が行われる。
また、図15−4は、第6の工程によって得られる13族窒化物結晶基板7210の斜視図である。図15−4に示すように、13族窒化物結晶基板7210(7210a〜7210g)においては、隣り合う成長開始領域から成長した13族窒化物結晶のドメイン1706が配列される。
(実施例1)
まず、実施例1における第1の工程について、図12(図12−1ないし図12−4)を用いて説明する。本実施例では、13族窒化物結晶として窒化ガリウム結晶を製造した。
本実施例では、図12−1(a)に示すように、下地基板401としてφ100mmのc面サファイア基板を使用した。まず、図12−1(b)に示すように、サファイア基板401にMOCVDで窒化ガリウム(GaN)をエピタキシャル成長し、GaN層(13族窒化物結晶層)402を形成した。MOCVDによるGaNのエピタキシャル成長は、低温GaNバッファー層を成長した後、高温GaN層を成長する一般的な2ステップ成長で行った。
次いで、図12−1(c)に示すように、GaN層402上にフォトリソグラフィーでレジストパターン403を形成した。レジストパターン403は、図2に示すように直径200μmの円形とした。また、レジストパターン403の配置は正三角形格子の格子位置とし、格子を形成する辺がGaN層402のa軸と30°の角度を成すように配置した。また、隣り合う成長開始領域405間の間隔は12mmとした。
そして、図12−1(c)の矢印で示すようにドライエッチングを行って、図12−1(d)に示すように、レジストパターン403で被覆された部分以外のGaN層402をエッチング除去した。
このようにして、図12−1(d)に示すようにサファイア基板401の表面を露出させた後、レジストパターン403を取り除いた。そして、図12−1(e)に示すように、レジストパターン403で保護されていた部分のGaN層402を成長開始領域405とした。
次に、実施例1における第2の工程ないし第4の工程について図5を参照して説明する。本実施例においては、図5に示す結晶製造装置1を用いてフラックス法により第2の工程ないし第4の工程を行った。
まず、耐圧容器11をバルブ21部分で結晶製造装置1から剥離し、Ar雰囲気のグローブボックスに入れた。次いで、YAG製の内径150mmの反応容器12内に、第1の工程で製造した下地基板401を設置した。次いで、反応容器12内にガリウム(Ga)とナトリウム(Na)を投入した。なお、本実施例では、ガリウムとナトリウムのモル比を0.25:0.75とした。
そして、反応容器12を耐圧容器11内に設置した後に、耐圧容器11を密閉し、バルブ21を閉じて、反応容器12の内部を外部雰囲気と遮断した。尚、一連の作業は高純度のArガス雰囲気のグローブボックス内で行うので、耐圧容器11内部はArガスが充填されている。
次いで、耐圧容器11をグローブボックスから出し、結晶製造装置1に組み込んだ。すなわち、耐圧容器11をヒーター13が外側に設けられている所定の位置に設置し、バルブ21部分で窒素とアルゴンのガス供給管14に接続した。
そして、バルブ21とバルブ18を開けて、Arガス供給管20からガス供給管14にArガスを入れ、圧力制御装置19で圧力を調整して耐圧容器11内の全圧を2MPaにしてバルブ18を閉じた。
次いで、窒素ガス供給管17から窒素ガスを入れ、圧力制御装置16で圧力を調整してバルブ15を開け、耐圧容器11内の全圧を4MPaにした。すなわち、耐圧容器11の内部空間23の窒素の分圧は、2MPaとなる。その後、バルブ15を閉じ、圧力制御装置16を8MPaに設定する。
次いで、ヒーター13に通電し、反応容器12を結晶成長温度まで昇温した。本実施例において、結晶成長温度は880℃とした。結晶成長温度において、反応容器12内のガリウムとナトリウムは融解し、混合融液25を形成する。なお、混合融液25の温度は反応容器12の温度と同温になる。また、このようにヒーター13を加熱すると、耐圧容器11内の気体は熱せられて体積が膨張する。ここで、上述のように圧力制御装置16において圧力値が8MPaと設定されているため、耐圧容器11内の気体の全圧は8MPaとなる。また、窒素分圧は4MPaとなる。
次いで、バルブ15を開け、窒素ガス圧力を8MPaかける。これは窒素が窒化ガリウムの結晶成長で消費されても耐圧容器11内の窒素分圧を4MPaに維持するためである。この状態で300時間保持し、窒素を継続して混合融液25中に溶解させ、下地基板401上にガリウムと窒素からなるGaN結晶406を、図12−2(f)〜(i)に示すように結晶成長させ、GaN結晶層4100を製造した。
300時間後、ヒーター13の通電を止め、混合融液25の温度を室温まで降温した。
耐圧容器11内のガスの圧力を下げた後、耐圧容器11を開けると、反応容器12内の下地基板401上にGaN結晶層4100が結晶成長していた。また、図12−2(j)に示すように、GaN結晶層4100は下地基板401上に形成された成長開始領域405の部分が割れて、きれいに剥離していた。
GaN結晶層4100は、直径が下地基板401の直径の100mmよりも若干大きく、厚さは5mmであった。また、GaN結晶層4100の主面は六方晶の結晶構造におけるc面であった。
成長したGaN結晶層4100の表面を研磨して表面処理を施した。蛍光顕微鏡で観察すると、GaN結晶406が連結した付近、即ち境界領域407においてコントラストが変化しており、c面には六角形状のドメイン406が複数形成されていることがわかった(図7参照)。また、GaN結晶層4100の表面をリン酸でエッチングすると、各ドメイン406の境界領域407においてはエッチピットが多く観察された。また、GaN結晶層4100にはクラックが無く、曲率半径は20mを超えていた。
また、GaN結晶層4100の断面を顕微鏡観察したところ、成長開始領域405から成長したGaN結晶406が、隣接した成長開始領域405から成長したGaN結晶406と合体(連結)し、1枚のGaN結晶層4100を形成した履歴が観察できた。これは、GaN結晶406が連結する箇所においては結晶成長面が微小に変化し、不純物の取り込まれ方が変化するためと考えられる。
同様の結晶成長工程および表面処理を施したGaN結晶層4100を基板として用いて、第5の工程、第6の工程を行った。また、本実施例の第5の工程では、第2の工程と同様にフラックス法による結晶成長を行った。
図6に示すように、本実施例では、反応容器12内にGaN結晶層4100を設置して、当該基板上にGaN結晶4200を成長させた。結晶成長条件は、成長時間を600時間とした以外は第2の工程の諸条件と同様である。
第5の工程後、成長したGaN結晶4200はGaN結晶層4100上にエピタキシャル成長しており、その厚さは10mmであった。
次に、図12−3(m)に示すように、成長したGaN結晶4200を外形研削し、c面に平行にスライスしてGaN結晶基板4210(4210a〜)を複数得た。その後、GaN結晶基板4210の表面を研磨して表面処理を施し、φ100mmのGaN結晶基板4210を製造した。
GaN結晶基板4210の表面をリン酸でエッチングすると、エッチピットが六角形の外周形状に並んで形成された(図8参照)。エッチピットの列即ち境界領域1407で形づけられる六角形状のドメイン1406内は、エッチピットがほとんど形成されていなかった。このドメイン1406において、六角形の辺のうち平行な辺と辺の間隔は約12mmであった。また、GaN結晶基板4210の曲率半径は20mを超えていた。さらに、結晶中のSi濃度は、SIMS分析の検出限界(2×1017cm−3)以下であった。
上述のように、本実施例で製造されたGaN結晶基板4210は、c面内において結晶欠陥の多い領域を境界とする六角形状のドメインを複数含み、該六角形の辺のうち平行な辺と辺の間隔は1mm以上であり、結晶中のシリコン濃度は2×1017cm-3より少なく、2インチよりも大きい外径を有する。
また、本実施例で製造されたGaN結晶基板4210は、上述の13族窒化物結晶と同様の特性に加え、曲率半径が20m以上であり、c面を主面とする自立基板である。
(実施例2)
本実施例では、第5の工程をHVPE法により行った。それ以外の工程は実施例1と同様にした。その結果、製造されたGaN結晶基板の厚みは1mmであった。また、製造されたGaN結晶基板の諸特性は、実施例1のGaN結晶基板4210と同等の特性であったが、GaN結晶中のSi濃度は1×1018cm-3であった。
このように、本実施例で製造されたGaN結晶基板は、結晶中のシリコン濃度が2×1017cm-3以上であり、曲率半径が20m以上であり、2インチよりも大きい外径を有し、c面を主面とする自立基板である。
(実施例3)
本実施例では、第2の工程と第5の工程の結晶成長の際に、混合融液25中にCaを添加した点を除いては、実施例1と同様の工程でGaN結晶基板を製造した。その結果、製造されたGaN結晶基板の諸特性は、実施例1のGaN結晶基板4210と同等の特性であったが、SIMS分析においてGaN結晶中にCaが検出された。
このように、本実施例で製造されたGaN結晶基板は、カルシウム(Ca)、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)のうち少なくともいずれか1種類の元素を含んでいる。
また、このように、本実施例で製造されたGaN結晶基板は、結晶中のシリコン濃度が2×1017cm-3以上であり、結晶中にカルシウム、バリウム、ストロンチウムのうち少なくともいずれか1種類の元素を含み、曲率半径が20m以上であり、2インチよりも大きい外径を有し、c面を主面とする自立基板である。
以上のように、本実施形態により製造される13族窒化物結晶基板は、反りが小さく歪みの少ない自立基板であるので、LEDや電子デバイス用の高品質な基板として用いることができる。