JP5750859B2 - シリンダヘッドガスケット - Google Patents

Description

本発明はシリンダヘッドガスケットに関し、詳しくは複数の燃焼室孔および該燃焼室孔を囲繞するフルビードを備えたガスケット基板を有するシリンダヘッドガスケットに関する。

従来、シリンダボアの位置にあわせて形成した複数の燃焼室孔および各燃焼室孔を囲繞するフルビードが形成された一対のガスケット基板と、上記一対のガスケット基板の間に介装された中間板と、上記燃焼室孔を囲繞するとともに上記中間板と一方のガスケット基板との間に介装されたシム板とを備えたシリンダヘッドガスケットが知られている。
このようなシリンダヘッドガスケットとして、シリンダブロックに形成された冷却液通路の位置にあわせて水孔が形成され、さらに隣接する上記フルビードとフルビードとが相互に離隔した位置に形成されたものが知られている（特許文献１）。

国際公開２００８−０８４７１８号公報

上記特許文献１のように、フルビードとフルビードとが相互に離隔している場合、シリンダヘッドガスケットをシリンダブロックとシリンダヘッドとによって挟持すると、フルビードとフルビードとの間の面圧が十分に得られないことがある。
その場合、上記水孔よりシリンダヘッドとシリンダブロックとの間に流入した冷却液がフルビードとフルビードとの間に流入し、上記シリンダボアからの伝熱によって冷却液が蒸発すると、上記ガスケット基板に塗布したコーティングが損傷してしまうという問題があった。
このような問題に鑑み、本発明はフルビードとフルビードとが相互に離隔している場合において、これらフルビードとフルビードとの間への冷却液の流入を阻止することが可能なシリンダヘッドガスケットを提供するものである。

すなわち請求項１おけるシリンダヘッドガスケットは、シリンダボアの位置にあわせて形成した複数の燃焼室孔および各燃焼室孔を囲繞するフルビードが形成された一対のガスケット基板と、上記一対のガスケット基板の間に介装された中間板と、上記燃焼室孔を囲繞するとともに上記中間板と一方のガスケット基板との間に介装されたシム板とを備え、
上記ガスケット基板および中間板にシリンダブロックに形成された冷却液通路の位置にあわせて水孔を形成するとともに、隣接する上記フルビードとフルビードとを相互に離隔した位置に形成したシリンダヘッドガスケットにおいて、
上記シム板を上記フルビードと重合する位置に設け、
さらに上記ガスケット基板に上記複数のフルビードを囲繞するとともに上記シム板と重合しない位置に第１ハーフビードを設け、
該第１ハーフビードを、上記水孔が上記第１ハーフビードによって囲繞された領域の外側に位置するように設けるとともに、燃焼室孔と燃焼室孔とが接近した位置において、第１ハーフビードを燃焼室孔の中心同士を結んだ中心線を挟んで離隔するように形成したことを特徴としている。

上記請求項１のシリンダヘッドガスケットによれば、上記第１ハーフビードによって囲繞された領域への冷却液の流入を阻止することができ、フルビードとフルビードとの間での冷却液の蒸発によるコーティングの損傷を防止することができる。

第１実施例を示すシリンダヘッドガスケットの平面図。 図１におけるＩＩ―ＩＩ部の拡大断面図。 図１におけるＩＩＩ―ＩＩＩ部の拡大断面図。 第２実施例を示すシリンダヘッドガスケットの断面図。 第３実施例を示すシリンダヘッドガスケットの断面図。 第４実施例を示すシリンダヘッドガスケットの断面図。

以下図示実施例について説明すると、図１ないし図３は第１実施例にかかるシリンダヘッドガスケット１を示し、図１はシリンダヘッドガスケット１の平面図を、図２は図１におけるＩＩ―ＩＩ部の断面図を、図３は図１におけるＩＩＩ―ＩＩＩ部の断面図をそれぞれ示している。
上記シリンダヘッドガスケット１は、シリンダヘッド２およびシリンダブロック３に当接する１対のガスケット基板４，５と、該一対のガスケット基板４，５の間に介装された中間板６と、シリンダヘッド２側のガスケット基板４と上記中間板６との間に介装されたシム板７とを備えている。
これらガスケット基板４，５および中間板６はＳＵＳ３０１−Ｈにより製造され、これらの板厚は同一に設定され、本実施例ではそれぞれ約０．２ｍｍの板厚となっている。また上記ガスケット基板４，５の上面と下面の全域には、ヘタリ防止やシール性向上のため、フッ素、ニトリル系等の樹脂からなる約２５μｍのコーティングが施されている（図示せず）。
一方、上記シム板７はＳＵＳ３０４-１／２により製造され、該シム板７の板厚はガスケット基板４，５および中間板６の半分程度の厚さになっている。

また図１に示すように、上記ガスケット基板４，５および中間板６には、シリンダブロック３に形成されたシリンダボア３ａの位置に形成された燃焼室孔８と、図示しない締結ボルトを挿通するための複数のボルト孔９と、冷却液を流通させるための複数の水孔１０と、潤滑油を流通させるための油孔１１とが穿設されている。
上記水孔１０のうち、隣接する燃焼室孔８と燃焼室孔８との間に位置する２つの水孔１０は、隣接する燃焼室孔８の中心と燃焼室孔８の中心とを結んだ中心線Ｃに対して直交する方向に整列するように形成されている。
そしてシリンダヘッド２およびシリンダブロック３には、この２つの水孔１０に対応する位置に、冷却液を流通させる冷却液通路２ａ、３ｂがそれぞれ形成されており、シリンダヘッド２側の冷却液通路２ａは、該シリンダヘッド２の下面に水孔１０よりも若干大径の開口部を有し、シリンダブロック３側の冷却液通路３ｂはシリンダブロック３の上面にシリンダヘッド２側の冷却液通路２ａよりもさらに大径の開口部を有している（図１、図２参照）。
なお図１には上記燃焼室孔８と燃焼室孔８との間に設けられた２つの水孔１０に対応する冷却液通路２ａ、３ｂのみを図示しているが、その他の水孔１０に対応する位置にもそれぞれ図示しない冷却液通路２ａ、３ｂが形成されている。

最初に、上記中間板６は上記ガスケット基板４，５と平面形状が同形に形成された平板状の部材であり、上記水孔１０や油孔１１等が穿設されるものの、下記フルビード４ａ、５ａ、第１ハーフビード４ｂ，５ｂ、第２ハーフビード４ｃ、５ｃは形成されていない。
上記シム板７は、燃焼室孔８を囲繞するリング状の部材であって、各燃焼室孔８に設けられるとともに上記中間板６にレーザ溶接などの手段によって固定されるようになっている。
シム板７の内周端は上記燃焼室孔８を構成するよう中間板６の燃焼室孔８と同径に穿設され、外周端は後に詳述するように上記ガスケット基板４，５に形成された第１ハーフビード４ｂ，５ｂと重合しない位置まで設けられている。
このような構成により、隣接する燃焼室孔８と燃焼室孔８とが接近した位置においては、シム板７とシム板７との間に間隙が形成されるようになっている。

次に、上記一対のガスケット基板４，５には、それぞれ各燃焼室孔８を無端状に囲繞する環状のフルビード４ａ、５ａと、これらフルビード４ａ、５ａを無端状に囲繞する第１ハーフビード４ｂ，５ｂと、ガスケット基板４，５の外縁部に沿って形成された第２ハーフビード４ｃ、５ｃとが形成されている。
なお図１において、上記フルビード４ａ、５ａを示す実線は、該フルビード４ａ、５ａの頂部の稜線を示し、第１、第２ハーフビード４ｂ、５ｂ、４ｃ、５ｃを示す実線はこれらハーフビードにおける中間板６側の基部とシリンダブロック３またはシリンダヘッド２側の基部との中間部分を示している。
シリンダヘッド２側のガスケット基板４のフルビード４ａは、シリンダヘッド２に向けて突出するとともに、その内周側および外周側の基部が上記シム板７に重合するようになっている。
一方、シリンダブロック３側のガスケット基板５のフルビード５ａは、シリンダブロック３に向けて突出するとともに、内周側および外周側の基部が中間板６の裏面側より上記シム板７の固定された範囲に重合するようになっている。
そして本実施例のエンジンの場合、隣接するシリンダボア３ａとが相互に離隔しており、このためガスケット基板４、５におけるフルビード４ａ、５ａとフルビード４ａ、５ａとの間には、平坦部４ｄ、５ｄが形成されるようになっている。

次に、上記第１ハーフビード４ｂ，５ｂについて説明するが、ここではシリンダヘッド２側のガスケット基板４に設けた第１ハーフビード４ｂについて説明し、同じ構成を有するシリンダブロック３側のガスケット基板５に設けた第１ハーフビード５ｂの説明を省略する。
まず、上記第１ハーフビード４ｂはガスケット基板４に形成された上記燃焼室孔８を囲繞する全てのフルビード４ａを無端状に囲繞するように形成され、かつ燃焼室孔８と燃焼室孔８とが接近した位置において、第１ハーフビード４ｂは上記中心線Ｃを挟んで離隔するように形成されている。
また第１ハーフビード４ｂは、上記水孔１０が当該第１ハーフビード４ｂによって囲繞された領域よりも外側に位置するように設けられており、かつシリンダヘッド２およびシリンダブロック３に設けた冷却液通路２ａ、３ｂと重ならないような位置に設けられている。
本実施例の場合、第１ハーフビード４ｂにおける上記燃焼室孔８と燃焼室孔８との間に位置する部分は、上記中心線Ｃに直行する方向に設けられた２つの水孔１０の間を通過することから、当該部分が他の部分に比べてくびれた形状を有し、当該部分は曲線を組み合わせた滑らかな形状を有している。
そして上記第１ハーフビード４ｂにおける上記シム板７側の内周縁は中間板６に対して離隔する方向に突出し、外周縁が中間板６側に位置して上記中間板６に当接するようになっている。
また上記第１ハーフビード４ｂにおける上記シム板７側の内周縁は上記シム板７の外周側の端部と重合しないように形成され、図２に示す第１ハーフビード４ｂがシム板７の外周に沿って形成されている部分では、上記シム板７の外周縁に対して約１ｍｍ離隔した状態を維持するようになっている。

次に、第２ハーフビード４ｃ、５ｃは、上記燃焼室孔８、フルビード４ａ、５ａ、第１ハーフビード４ｂ、５ｂを囲むとともに、ガスケット基板４，５の外縁部に沿って形成されている。
詳しくは、図１に示すように上記第１ハーフビード４ｂ，５ｂの周囲に配置された水孔１０を囲繞するように形成され、かつ水孔１０と上記ボルト孔９との間を通過するように形成されている。
そしてこの第２ハーフビード４ｃ、５ｃは、外周縁が中間板６に対して離隔する方向に突出し、内周縁が中間板６側に位置して上記中間板６に当接するようになっている。
この第２ハーフビード４ｃ、５ｃを設けることにより、上記水孔１０を流通する冷却液がシリンダヘッド２とシリンダブロック３との間から外部に漏出してしまうのを防止するようになっている。

上記構成を有するシリンダヘッドガスケット１をシリンダヘッド２とシリンダブロック３とによって挟持すると、上記ガスケット基板４，５のフルビード４ａ、５ａが弾性変形しながら圧縮され、これにより燃焼室孔８からの排気ガスの漏出を防止するようになっている。
また燃焼室孔８を囲繞するように上記中間板６にはシム板７が固定され、かつフルビード４ａ，５ａがこのシム板７と重合するように形成されていることから、燃焼室孔８の周辺の荷重を大きくすることができ、該燃焼室孔８周辺のシール性能を良好にするようになっている。
そして、本実施例のシリンダヘッドガスケット１は、複数の燃焼室孔８をそれぞれ囲繞する複数のフルビード４ａ、５ａを、上記第１ハーフビード４ｂ，５ｂによって無端状に囲繞した構成を有している。
シリンダヘッドガスケット１をシリンダヘッド２とシリンダブロック３とによって挟持すると、上記第１ハーフビード４ｂ、５ｂが弾性変形してシリンダヘッド２とシリンダブロック３に密着し、これにより第１ハーフビード４ｂ、５ｂよりも燃焼室孔８側に形成された領域はその外部より区画されることとなる。

一方、上記水孔１０は、この第１ハーフビード４ｂ，５ｂによって囲繞された領域よりも外側に設けられているため、この水孔１０を介してシリンダヘッド２とシリンダブロック３との間に流入した冷却液は、この第１ハーフビード４ｂ，５ｂによって燃焼室孔８側の領域への流入が阻止されることとなる。
特に、第１ハーフビード４ｂ、５ｂをシリンダヘッド２およびシリンダブロック３に形成した冷却液通路２ａ、３ｂの開口部と重ならないように設けているため、上記領域への冷却液の流入を阻止することが可能となっている。
そして上記第１ハーフビード４ｂ，５ｂに囲繞された領域の内部には、隣接するフルビード４ａ、５ａとフルビード４ａ、５ａとの間に形成された平坦部４ｄ、５ｄが位置していることから、この平坦部４ｄ、５ｄへの冷却液の流入が阻止されるようになっている。
このように上記平坦部４ｄ、５ｄへの冷却液の流入を防止することで、冷却液の蒸発による上記平坦部４ｄ、５ｄに塗布されたコーティングの損傷を防止することが可能となっている。
つまり、従来のフルビードとフルビードとが離隔したシリンダヘッドガスケットでは、上記平坦部の面圧が低いことから、当該部分に上記水孔から冷却液が入り込みやすい状態となっていた。
その結果、シリンダボアでの爆発によって燃焼室孔周辺のガスケット基板が加熱され、伝熱により上記平坦部で冷却液が蒸発し、その蒸気によって上記コーティングが損傷され、はく離してしまうという問題があった。

そして、本実施例のシリンダヘッドガスケット１では、上記第１ハーフビード４ｂ，５ｂが上記シム板７よりも外側に設けられて該シム板７と重合しないように設けられている。
このような構成とすることで、第１ハーフビード４ｂ，５ｂに過大な荷重が作用しないようにすることができ、上記フルビード４ａ、５ａと第１ハーフビード４ｂ，５ｂとに荷重が分散することで燃焼室孔８周辺のシール性が悪化しないようになっている。

図４〜図６は第２〜第４実施例におけるシリンダヘッドガスケット１を示し、それぞれ図１におけるＩＩ−ＩＩ部と同じ位置の断面図を示している。なお、第１実施例と共通する部材については同じ符号を用いて説明するものとし、共通する部分についての説明を省略する。
図４に示す第２実施例のシリンダヘッドガスケット１は、第１実施例のシリンダヘッドガスケット１に対し、上記第１ハーフビード４ｂ、５ｂおよび第２ハーフビード４ｃ、５ｃの突出方向を反対方向にした構成を有している。
具体的には、第１ハーフビード４ｂ，５ｂにおけるシム板７側の内周側が中間板６側に突出し、外周側が上記シリンダブロック３やシリンダヘッド２側に突出する構成となっている。
次に図５に示す第３実施例のシリンダヘッドガスケット１は、シリンダブロック３側のガスケット基板５に設けた第１ハーフビード５ｂおよび第２ハーフビード５ｃの突出方向を第１実施例に対して反対方向に突出させ、さらに上記中間板６に、上記ガスケット基板４，５の第１ハーフビード４ｂ，５ｂと同じ位置に、第３ハーフビード６ａを形成した構成となっている。
このように中間板６に第３ハーフビード６ａを設けることにより、上記平坦部４ｄ、５ｄへの冷却液の流入をより効果的に阻止することが可能となる。
図６に示す第４実施例のシリンダヘッドガスケット１は、シリンダブロック３側のガスケット基板５に設けた第１ハーフビード５ｂおよび第２ハーフビード５ｃの突出方向を第１実施例に対して反対方向に突出させ、さらにシリンダブロック３側のガスケット基板５と中間板６との間に、第３ハーフビード１２ａを設けた第２中間板１２を介装した構成となっている。
このように第２中間板１２を設けて、該第２中間板１２に第１ハーフビード１２ａを形成することにより、上記平坦部４ｄ、５ｄへの冷却液の流入をより効果的に阻止することが可能となる。
なお、第１ハーフビード４ｂ，５ｂの突出方向や、中間板６や第２中間板１２に第３ハーフビード６ａ、１２ａを設ける構成は、適宜組み合わせることが可能であり、上記第１〜第４実施例の構成に限定されるものではない。

なお、上記各実施例におけるシム板７は、各燃焼室孔８を囲繞するリング状の独立した部材となっているが、隣接する燃焼室孔８と燃焼室孔８とが接近した位置で相互に連結した１つの部材からなるシム板としてもよい。
この場合においても、上記第１ハーフビード４ｂ、５ｂを当該シム板と重合しない位置に設けて、第１ハーフビード４ｂ、５ｂに過大な荷重が作用しないようにする必要がある。

１ シリンダヘッドガスケット ２ シリンダヘッド
３ シリンダブロック ４，５ ガスケット基板
４ａ，５ａ フルビード ４ｂ、５ｂ 第１ハーフビード
４ｃ、５ｃ 第２ハーフビード ６ 中間板
７ シム板

Claims (6)

1. シリンダボアの位置にあわせて形成した複数の燃焼室孔および各燃焼室孔を囲繞するフルビードが形成された一対のガスケット基板と、上記一対のガスケット基板の間に介装された中間板と、上記燃焼室孔を囲繞するとともに上記中間板と一方のガスケット基板との間に介装されたシム板とを備え、
   上記ガスケット基板および中間板にシリンダブロックに形成された冷却液通路の位置にあわせて水孔を形成するとともに、隣接する上記フルビードとフルビードとを相互に離隔した位置に形成したシリンダヘッドガスケットにおいて、
   上記シム板を上記フルビードと重合する位置に設け、
   さらに上記ガスケット基板に上記複数のフルビードを囲繞するとともに上記シム板と重合しない位置に第１ハーフビードを設け、
   該第１ハーフビードを、上記水孔が上記第１ハーフビードによって囲繞された領域の外側に位置するように設けるとともに、燃焼室孔と燃焼室孔とが接近した位置において、第１ハーフビードを燃焼室孔の中心同士を結んだ中心線を挟んで離隔するように形成したことを特徴とするシリンダヘッドガスケット。
2. 上記シム板は複数の燃焼室孔のそれぞれを囲繞するとともに、隣接するシム板とシム板とが相互に離隔した位置に設けられ、さらに各シム板をそれぞれ上記中間板に固定したことを特徴とする請求項１に記載のシリンダヘッドガスケット。
3. 上記ガスケット基板におけるフルビードは上記中間板に対して離隔する方向に突出し、
   上記第１ハーフビードは、上記シム板側の内周端が中間板に対して離隔する方向に突出し、外周端が中間板側に突出することを特徴とする請求項１または請求項２のいずれかに記載のシリンダヘッドガスケット。
4. 上記ガスケット基板におけるフルビードは上記中間板に対して離隔する方向に突出し、
   上記第１ハーフビードは、上記シム板側の内周端が中間板側に突出し、外周端が中間板に対して離隔する方向に突出することを特徴とする請求項１または請求項２のいずれかに記載のシリンダヘッドガスケット。
5. 上記ガスケット基板に、上記燃焼室孔、フルビード、第１ハーフビードを囲むとともに該ガスケット基板の外縁部に沿って形成された第２ハーフビードを設けたことを特徴とする請求項１ないし請求項４のいずれかに記載のシリンダヘッドガスケット。
6. 上記中間板に、上記第１ハーフビードに重合する第３ハーフビードを設けたことを特徴とする請求項１ないし請求項５のいずれかに記載のシリンダヘッドガスケット。

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