配列番号1は、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)の染色体2Lにおける位置34Eに位置するニコチン性アセチルコリン受容体α−5サブユニットをコードするヌクレオチド配列である;
配列番号2は、キイロショウジョウバエの染色体Xにおける位置18Cに位置するニコチン性アセチルコリン受容体α−7サブユニットをコードするヌクレオチド配列である;
配列番号3は、30Dに位置するショウジョウバエ(Drosophila)のニコチン性アセチルコリンα−6受容体サブユニットのためのフォワードPCRプライマーをコードするヌクレオチド配列である;
配列番号4は、30Dに位置するショウジョウバエのニコチン性アセチルコリンα−6受容体サブユニットのためのリバースPCRプライマーをコードするヌクレオチド配列である;
配列番号5は、34Eに位置するショウジョウバエのニコチン性アセチルコリンα−5受容体サブユニットのためのフォワードPCRプライマーをコードするヌクレオチド配列である;
配列番号6は、34Eに位置するショウジョウバエのニコチン性アセチルコリンα−5受容体サブユニットのためのリバースPCRプライマーをコードするヌクレオチド配列である;
配列番号7は、18Cに位置するショウジョウバエのニコチン性アセチルコリンα−7受容体サブユニットのためのフォワードPCRプライマーをコードするヌクレオチド配列である;
配列番号8は、18Cに位置するショウジョウバエのニコチン性アセチルコリンα−7受容体サブユニットのためのリバースPCRプライマーをコードするヌクレオチド配列である;
配列番号9は、C.elegansのric−3のためのフォワードPCRプライマーをコードするヌクレオチド配列である;
配列番号10は、C.elegansのric−3のためのリバースPCRプライマーをコードするヌクレオチド配列である;
配列番号11は、ショウジョウバエのニコチン性アセチルコリンα−6受容体サブユニットのアミノ酸367〜380に対応するアミノ酸配列である;
配列番号12は、付加されたKozak翻訳開始シグナルを有する、30D nAChRα6のためのフォワードPCRプライマーをコードするヌクレオチド配列である。
配列番号13は、30D nAChRα6のためのリバースPCRプライマーをコードするヌクレオチド配列である。
配列番号14は、付加されたKozak翻訳開始シグナルを有する、C.elegansのric−3のためのフォワードPCRプライマーをコードするヌクレオチド配列である。
配列番号15は、NCBIアクセション番号NM205953を有する遺伝子のヌクレオチド配列である。
配列番号16は、NCBIアクセション番号NM068898を有する遺伝子のヌクレオチド配列である。
配列表は、Nucleic Acids Res.、13:3021〜3030(1985)、および、Biochemical J.、219 (No. 2):345〜373(1984)(これらは本明細書中に参考として組み込まれる)に記載されるIUPAC−IUBMB基準に従って定義されるようなヌクレオチド配列文字のための一文字記号およびアミノ酸のための一文字記号を含む。ヌクレオチド配列データおよびアミノ酸配列データのために使用される記号および形式は、米国特許施行規則§1.822に示される規則に従う。
本発明の1つの態様は、(i)受容体サブユニットをコードするNCBIアクセション番号NM205953を有する遺伝子のコード領域の79位と1485位との間の核酸配列に対する少なくとも50パーセントの同一性を有する核酸と、(ii)イオンチャネルサブユニットをコードする核酸とを含み、スピノシンに対して応答することができる宿主細胞に関連する。
本発明のさらなる態様は、(i)受容体サブユニットをコードするNCBIアクセション番号NM205953を有する遺伝子のコード領域の79位と1485位との間の核酸配列に対する少なくとも50パーセントの同一性を有する核酸と、(ii)アクセサリータンパク質をコードする核酸とを含み、スピノシンに対して応答することができる宿主細胞に関連する。
本発明のさらなる態様は、(a)(i)受容体サブユニットをコードするNCBIアクセション番号NM205953を有する遺伝子のコード領域の79位と1485位との間の核酸配列に対する少なくとも50パーセントの同一性を有する核酸と、(ii)イオンチャネルサブユニットをコードする核酸分子とを、受容体サブユニットおよびイオンチャネルサブユニットを発現させるために宿主細胞にインビトロで導入する工程(この場合、宿主細胞はスピノシンに対して応答することができる);(b)受容体サブユニットを化学化合物に曝す工程;および(c)曝された受容体サブユニットを、化学化合物が受容体サブユニットに影響を及ぼすかどうかを判別するために評価する工程を含む、受容体サブユニットに影響を及ぼす能力について化学化合物をアッセイする方法に関連する。
本発明の別の態様は、(a)(i)受容体サブユニットをコードするNCBIアクセション番号NM205953を有する79位と1485位との間の核酸配列に対する少なくとも50パーセントの同一性を有する核酸を、受容体サブユニットを発現させるために宿主細胞にインビトロで導入する工程(この場合、イオンチャネルサブユニットが宿主細胞によって内因的に産生および発現され、宿主細胞はスピノシンに対して応答することができる);(b)発現した受容体サブユニットを化学化合物に曝す工程;および(c)曝された受容体サブユニットを、化学化合物が受容体サブユニットに影響を及ぼすかどうかを判別するために評価する工程を含む、受容体サブユニットに影響を及ぼす能力について化学化合物をアッセイする方法に関連する。
本発明のさらなる態様は、(a)(i)受容体サブユニットをコードするNCBIアクセション番号NM205953を有する遺伝子のコード領域の79位と1485位との間の核酸配列に対する少なくとも50パーセントの同一性を有する核酸と、(ii)アクセサリータンパク質をコードする単離された核酸分子とを、受容体サブユニットおよびアクセサリータンパク質を発現させるために宿主細胞にインビトロで導入する工程(この場合、宿主細胞はスピノシンに対して応答することができる);(b)発現した受容体サブユニットを化学化合物に曝す工程;および(c)曝された受容体サブユニットを、化学化合物が受容体サブユニットに影響を及ぼすかどうかを判別するために評価する工程を含む、受容体サブユニットに影響を及ぼす能力について化学化合物をアッセイする方法に関連する。
本発明のさらに別の態様は、(a)受容体サブユニットをコードするNCBIアクセション番号NM205953を有する遺伝子のコード領域の79位と1485位との間の核酸配列に対する少なくとも50パーセントの同一性を有する核酸を、受容体サブユニットを発現させるために宿主細胞にインビトロで導入する工程(この場合、アクセサリータンパク質が宿主細胞によって内因的に産生および発現され、宿主細胞はスピノシンに対して応答することができる);(b)発現した受容体サブユニットを化学化合物に曝す工程;および(c)曝された受容体サブユニットを、化学化合物が受容体サブユニットに影響を及ぼすかどうかを判別するために評価する工程を含む、受容体サブユニットに影響を及ぼす能力について化学化合物をアッセイする方法に関連する。
本発明の1つのさらなる態様は、NCBIアクセション番号NM205953を有する遺伝子のコード領域の79位と1485位との間の核酸配列に対する少なくとも50パーセントの同一性を有する核酸によってコードされるポリペプチドのエピトープに特異的に結合する抗体(この場合、前記核酸によってコードされる前記ポリペプチドを発現する宿主細胞はスピノシンに対して応答することができる)に関連する。
本発明の別の態様は、NCBIアクセション番号NM205953を有する遺伝子のコード領域の79位と1485位との間の核酸配列に対する少なくとも50パーセントの同一性をそのコード領域が有する遺伝子に変異を含む生物(この場合、前記変異を含む前記生物は、変異体が由来する親生物と比較してスピノシンに対する低下した応答を示す)に関連する。
本発明のなおさらに別の態様は、(a)(1)NCBIアクセション番号NM205953を有する遺伝子のコード領域の79位と1485位との間の核酸配列に対する少なくとも50パーセントの同一性を有するDNA分子の一方の鎖の対応する部分に対して実質的に相補的なアンチセンスヌクレオチド配列と、(b)前記アンチセンスヌクレオチド配列に機能的に連結され、その結果、前記アンチセンスヌクレオチド配列が、形質転換される細胞において発現されるようにする調節配列とを含むベクター(この場合、形質転換された細胞は非形質転換細胞と比較してスピノシンに対する低下した応答を示す)である。
本発明のさらに1つの態様は、(a)核酸を生物から得る工程;(b)NCBIアクセション番号NM205953を有する遺伝子のコード領域の79位と1485位との間の核酸配列に対する少なくとも50パーセントの同一性を有する核酸の配列を決定する工程;および(c)決定された配列を、スピノシン感受性生物の同じ遺伝子から得られた配列と比較する工程を含み、スクリーニングされた生物およびスピノシン感受性生物が同じ種に由来する、スピノシンに対する抵抗性について生物をスクリーニングする方法である。
さらなる実施形態において、本発明は、(a)(i)NCBIアクセション番号NM205953を有する遺伝子のコード領域の79位と1485位との間の核酸配列に対する少なくとも50パーセントの同一性を有するヌクレオチド配列と、(ii)前記ヌクレオチド配列に機能的に連結された調節配列とを含むベクターを生物の1つまたは複数の細胞に導入し、その結果、前記ヌクレオチド配列が、形質転換される少なくとも前記1つまたは複数の細胞において発現されるようにする工程(この場合、形質転換された細胞は非形質転換細胞と比較してスピノシンに対する増大した応答を示す);(b)受容体サブユニットを発現する形質転換された細胞を化学化合物に曝す工程;および(c)曝された受容体サブユニットを、化学化合物が受容体サブユニットに影響を及ぼすかどうかを判別するために評価する工程を含む、受容体サブユニットに影響を及ぼす能力について化学化合物をアッセイする方法に関連する。
本発明のさらなる特徴および利点が下記の説明において示され、また、一部が説明から明らかであるか、または、本発明の実施によって気づくことができる。本発明の利点は、その文書による記述および請求項において具体的に示される発明によって認識および達成される。上述の一般的な記述および下記の詳細な記述はともに例示的および説明的であり、また、請求項に記載されるような本発明のさらなる説明を提供するために意図されることを理解しなければならない。
様々な定義が、本発明の理解を容易にするために本明細書中に提供される。単位、接頭辞および記号はそれらのSI容認形式で示され得る。別途示されない限り、それぞれ、核酸は左から右に5’から3’の向きで記載され、アミノ酸配列は左から右にアミノからカルボキシルの向きで記載される。本明細書において示される数字範囲は、範囲を規定する数字を含み、規定された範囲の内部におけるそれぞれの整数を含む。アミノ酸は本明細書中では、それらの一般に公知の三文字記号によって、または、IUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commissionによって勧告された一文字記号によって、そのどちらでも示され得る。同様に、ヌクレオチドはそれらの一般に受け入れられている一文字記号によって示され得る。別途提供されない限り、本明細書中で使用されるソフトウエア用語、電気工学用語およびエレクトロニクス用語は、The New IEEE Standard Dictionary of Electrical and Electronics Terms(第5版、1993)において定義される通りである。下記で定義される用語は、全体として本明細書を参照することによってより詳しく定義される。
「アクセサリータンパク質」は、昆虫および無脊椎動物の様々なアクセサリータンパク質(例えば、シャペロンタンパク質など)(これらに限定されない)を含めて、膜輸送、イオンチャネルサブユニット成熟化、折り畳み、ポリペプチド(例えば、受容体サブユニットなど)の輸送および/または組立てに関与する任意のタンパク質を示す。「アクセサリータンパク質をコードする核酸」または「アクセサリータンパク質ポリヌクレオチド」は、アクセサリータンパク質をコードするポリヌクレオチドを示す。これらの用語はまた、アクセサリータンパク質のいずれかのフラグメント、変化体(variant)、ホモログ、対立遺伝子または前駆体(例えば、プレタンパク質またはプロタンパク質)を含む。
「抗体」は、エピトープ決定基に特異的に結合することができる無傷の分子ならびにそのフラグメントを示す。ポリペプチド(例えば、本発明の核酸によってコードされるポリペプチド)と結合する抗体は、無傷のポリペプチドまたはフラグメントを免疫化抗原として使用して調製することができる。このような抗原は、所望されるならば、キャリアタンパク質にコンジュゲート化することができる。
「アンチセンスRNA」は、標的の一次転写物またはmRNAのすべてまたは一部分に対して相補的であり、標的遺伝子の翻訳を阻止するRNA転写物を示す(米国特許第5,107,065号、これは参考として本明細書中に組み込まれる)。アンチセンスRNAの相補性は特定の遺伝子転写物の任意の部分に関してであり得る(すなわち、5’非コード配列、3’非コード配列、イントロンまたはコード配列においてであり得る)。「機能的RNA」は、センスRNA、アンチセンスRNA、リボザイムRNA、または、翻訳されなくてもよいが、それにもかかわらず、細胞プロセスに対する作用を有する他のRNAを示す。
「結合親和性」は、受容体または他のタンパク質と相互作用するリガンドの性向を示す。
「イオン輸送」は、生体系内における、ある場所から別の場所へのイオンの形態での塩および他の電解質の移動を示す。
「エピトープ」は、1つまたは複数の特異的な抗体を誘発し、また、1つまたは複数の特異的な抗体と結合する能力または潜在的可能性を有する高分子の任意の領域(特定の抗体と接触する分子のそのような部分を含む)を示す。
「発現」は、本発明の核酸フラグメントに由来するセンスRNA(mRNA)またはアンチセンスRNAの転写および安定した蓄積を示す。発現はまた、ポリペプチドへのmRNAの翻訳を示す場合がある。「アンチセンス阻害」は、標的タンパク質の発現を抑制することができるアンチセンスRNA転写物の産生を示す。「過剰発現」は、正常な生物または形質転換されていない生物における産生レベルを超える遺伝子導入生物における遺伝子産物の産生を示す。「共抑制」は、同一または実質的に類似する外来遺伝子または内因性遺伝子の発現を抑制することができるセンスRNA転写物の産生を示す(米国特許第5,231,020号、これは参考として本明細書中に組み込まれる)。
「機能的発現」は、宿主細胞におけるイオンチャネル分子の合成および任意の必要な翻訳後プロセシング、その結果、チャネルが細胞膜に正しく挿入され、細胞膜電位における実験的に課された変化に対する応答において、または、適切な薬理学的化合物に曝されたときにイオン輸送を行うことができるようにすることを示す。
「遺伝子」は、コード配列の前に存在する調節配列(5’非翻訳配列)およびコード配列に続く調節配列(3’非翻訳配列)を含めて、特定のタンパク質を発現する核酸フラグメントを示す。「生来的な遺伝子」は、それ自身の調節配列とともに自然界において見出されるような遺伝子を示す。「キメラ遺伝子」は、自然界では一緒に見出されない調節配列およびコード配列を含めて、生来的な遺伝子ではない任意の遺伝子を示す。従って、キメラ遺伝子は、異なる供給源に由来する調節配列およびコード配列、または、同じ供給源に由来するが、自然界で見出される様式とは異なる様式で配置される調節配列およびコード配列を含むことができる。「内因性遺伝子」は、生物のゲノムにおけるその天然の存在場所での生来的な遺伝子を示す。「外来遺伝子」は、宿主生物において通常的には見出されず、しかし、遺伝子移入によって宿主生物に導入される遺伝子を示す。外来遺伝子は、非天然の生物に挿入された生来的な遺伝子、または、キメラ遺伝子を含むことができる。「トランスジーン」は、形質転換手法によってゲノムに導入されている遺伝子を示す。
「ゲノムDNA」は染色体DNAを示し、イントロンを含むことができる。「イントロン」は介在配列である。イントロンは遺伝子内のDNAの非コード配列であり、この場合、イントロンはヘテロ核RNA(hnRNA)に転写され、しかし、その後、核におけるRNAスプライシングによって除かれ、これにより、その後、細胞質において翻訳される成熟mRNAが残る。イントロンの両端における領域は自己相補的であり、このことは、ヘアピン構造をhnRNAにおいて自然に形成することを可能にする。
「宿主細胞」は、単離された核酸フラグメントが安定的または一過性に導入され得る任意の細胞または生物を示す。宿主細胞は、より大きな生物の一部分、組織培養における個々のもの、または、自由生活生物(free-living organism)であり得る。これらには、脊椎動物および非脊椎動物の宿主、真核生物宿主、例えば、哺乳動物細胞(すなわち、SH−SY5Y細胞、COS細胞、HEK−293細胞、PC12)、ラットおよびマウス、周知のモデル生物(例えば、ゼブラフィッシュなど)、アフリカツメガエル(Xenopus)卵母細胞、昆虫細胞(すなわち、昆虫細胞株、例えば、ショウジョウバエSchneider、ショウジョウバエKc、Sf9およびHigh Fiveなど)など、原核生物宿主、例えば、細菌(これには、大腸菌、バチルス属、ストレプトミセス属およびシュードモナス属の菌株が含まれるが、これらに限定されない)など、ならびに、菌類(これには、アスペルギルス属およびトリコデルマ属の種に由来する細胞が含まれるが、これらに限定されない)、酵母(これには、クルイベロミセス属またはサッカロミセス属の種に由来する細胞が含まれるが、これらに限定されない)、および、植物が含まれるが、これらに限定されない。
「昆虫」には、昆虫綱の任意の空気呼吸する節足動物が含まれ、これには、ムスカ・ドメスチカ(Musca domestica)(イエバエ)、ミバエまたはキイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)、ならびに、農業的、医学的または獣医学的に重要な任意の他の昆虫、例えば、ミズス・ペルシカエ(Myzus persicae)(モモアカアブラムシ)、ヘリオチス・ビレセンス(Heliothis virescens)(ニセアメリカタバコガ)、レプチノタルサ・デセムリネアタ(Leptinotarsa decemlineata)(コロラドハムシ)、ブラッテラ・ゲルマニカ(Blattella germanica)(チャバネゴキブリ)、コドリンガ、コナガ、ネッタイシマカ(Aedes aegypti)およびガンビアハマダラカ(Anopheles gambiae)などが含まれるが、これらに限定されない。
「イオンチャネルサブユニット」は、イオンチャネルの形成において他の分子と一緒になることができるサブユニットを含めて、イオンチャネルの一部を形成する任意のタンパク質性分子を示す。「イオンチャネルサブユニットをコードする核酸」または「イオンチャネルサブユニットポリヌクレオチド」は、イオンチャネルサブユニットをコードするポリヌクレオチドを示す。これらの用語にはまた、イオンチャネルサブユニットのいずれかのフラグメント、変化体、ホモログ、対立遺伝子または前駆体(例えば、プレタンパク質またはプロタンパク質)が含まれる。用語「イオンチャネルサブユニットをコードする核酸」はまた、核酸が宿主細胞(例えば、PC12細胞など)によって内因的に産生される実施形態を包含する。
「単離された」は、(1)その天然に存在する環境において見出されるような物質を通常の場合には伴うか、または、そのような物質と通常の場合には相互作用する成分を実質的または本質的に含まない物質(例えば、核酸またはタンパク質など)、または、(2)物質がその天然の環境に存在するならば、その物質が組成に対する意図的なヒトの介入によって既に変化させられており、かつ/または、その物質に対して生来的な場所とは異なる細胞内の場所に置かれていることを示す。
「損傷(lesion)」は、核酸が由来した元の核酸に対する核酸の任意の分子的変化、または、野生型集団から得られた核酸に対する核酸の任意の分子的変化を示す。例えば、傷は、核酸配列における欠失、反転、挿入、重複化、トランジション、トランスバーションまたは再配置であり得る。
「リガンド依存性イオンチャネルサブユニット」は、リガンドによって調節され得る任意のイオンチャネルの一部を形成するサブユニットを示す。これには、ニコチン性アセチルコリン受容体サブユニット、GABA受容体サブユニット、セロトニン受容体サブユニットおよびグルタミン酸受容体サブユニットが含まれるが、これらに限定されない。様々な核酸配列、タンパク質配列、ならびに、多重配列アラインメントおよび系統発生的研究が知られており、公開されているデータベースから、また、ワールドワイドウエブを介して利用可能である。「リガンド依存性イオンチャネルサブユニットをコードする核酸」または「リガンド依存性イオンチャネルサブユニットポリヌクレオチド」は、リガンド依存性イオンチャネルサブユニットをコードするポリヌクレオチドを示す。これらの用語にはまた、リガンド依存性イオンチャネルサブユニットのいずれかのフラグメント、変化体、ホモログ、対立遺伝子または前駆体(例えば、プレタンパク質またはプロタンパク質)が含まれる。
「核酸」は任意の核酸を示し、デオキシリボヌクレオチド塩基またはリボヌクレオチド塩基の一本鎖ポリマーまたは多鎖ポリマーを包含する。核酸にはまた、フラグメント、修飾ヌクレオチドおよび変化体が含まれ得る。従って、本明細書中で使用される用語「ポリヌクレオチド」および用語「核酸」は交換可能に使用される。
「プロモーター」は、典型的には、RNAを産生させるために構造遺伝子の転写を導くDNA配列を示す。典型的には、プロモーターは、転写開始部位に近い、遺伝子の500塩基対上流の領域に存在する。プロモーターが誘導可能なプロモーターであるならば、転写速度が外因性または内因性の誘導剤に応答して増大または低下する。対照的に、プロモーターが構成的プロモーターであるならば、転写速度は誘導剤によって調節されない。
「受容体サブユニット」は、無傷の受容体の構成成分である任意のタンパク質を示す。「ニコチン性アセチルコリン受容体サブユニット」は、無傷のニコチン性アセチルコリン受容体の構成成分である任意のタンパク質(例えば、ニコチン性アセチルコリンのα−5受容体サブニット、α−6受容体サブニットおよびα−7受容体サブニット)を示す。前記受容体サブユニットをコードする核酸に対する参照のすべてが、そのような受容体サブユニットをコードするポリヌクレオチドを示す。これらの用語にはまた、受容体サブユニットのいずれかのフラグメント、変化体、ホモログ、対立遺伝子または前駆体(例えば、プレタンパク質またはプロタンパク質)が含まれる。
「抵抗性」は、スピノシンの効果に対する遺伝的欠損昆虫集団の相対的な応答を示す。一般に、昆虫の系統または集団は、その系統または集団が、適切な基準物または「感受性」集団の許容性よりも少なくとも2倍大きい、好ましくは4倍〜8倍大きい、最も好ましくは少なくとも10倍大きい、試験殺虫剤に対する許容性(これは、処理された集団または群の50パーセントを殺すために要求される用量として評価される)を示すならば、「抵抗性」であると見なされる。
「スピノシンに対して応答する」は、何らかの測定可能な影響がスピノシンに対する暴露から生じることを示し、そのような影響には、行動、生存性、リガンド結合またはイオン輸送における変化が含まれるが、これらに限定されない。
「スピノシン」は、サッカロポリスポラ・スピノサ(Saccharopolyspora spinosa)によって産生される、米国特許第5,362,634号においてA83543として特定された産物を含む発酵産物を示す。これらの化合物は、因子または成分A、B、C、D、E、F、G、H、J、K、L、M、N、O、P、Q、R、S、T、U、V、WおよびYなどと呼ばれており(国際特許出願公開WO93/09126および同WO94/20518もまた参照のこと)、以降、スピノシンA、BおよびCなどとして示される。これらの天然に産生されるスピノシン化合物は、12員の大環状ラクトン、中性糖(ラムノース)およびアミノ糖(ホロサミン)に縮合した5,6,5−三環式の環系からなる(Kirstら(1991)を参照のこと)。これらおよび他の天然スピノシン化合物(サッカロポリスポラ・パゴナ(Saccharopolyspora pagona)によって産生される21−ブテニルスピノシンを含む)が、Midwest Area Northern Regional Research Center(Agricultural Research Service、米国農務省、1815 North University Street、Peoria、Ill.、61604)のストック培養物コレクションのNRRL18719、同18537、同18538、同18539、同18743、同18395および同18823として寄託された培養物からの発酵によって産生され得る。様々なスピノシン化合物がまた、米国特許第5,496,931号、同第5,670,364号、同第5,591,606号、同第5,571,901号、同第5,202,242号、同第5,767,253号、同第5,840,861号、同第5,670,486号および同第5,631,155号に開示される。スピノシンAおよびスピノシンDは、特に活性な殺虫剤である2つのスピノシンである。主にこれら2つのスピノシンから構成される製造物(約85パーセントのスピノシンAおよび約15パーセントのスピノシンD)がDow AgroSciences(Indianapolis、Ind.)によって製造され、スピノサドとして知られている。本明細書中で使用される用語のスピノシンにはまた、合成スピノシンまたは半合成スピノシンである「スピノシン誘導体」が含まれる。
「実質的に類似する」は、1つまたは複数のヌクレオチド塩基における変化が1つまたは複数のアミノ酸の置換をもたらし、しかし、そのDNA配列によってコードされるタンパク質の機能的性質には影響を及ぼさない核酸フラグメントを示す。「実質的に類似する」はまた、1つまたは複数のヌクレオチド塩基における変化が、アンチセンス技術または共抑制技術による遺伝子発現の変化を媒介する核酸フラグメントの能力に影響を及ぼさない核酸フラグメントを示す。「実質的に類似する」はまた、核酸フラグメントの改変を示す(例えば、アンチセンス技術または共抑制技術による遺伝子発現の変化を媒介するか、あるいは、生じたタンパク質分子の機能的性質の変化を媒介する能力に関して、生じた転写物の機能的性質に実質的な影響を及ぼさない1つまたは複数のヌクレオチドの欠失または挿入など)。従って、本発明は具体的な例示的配列よりも多くの配列を包含することが理解される。
例えば、遺伝子発現のアンチセンス抑制および共抑制が、遺伝子のコード領域全体よりも短い領域を表す核酸フラグメントを使用することによって、また、抑制される遺伝子との100パーセントの配列同一性を有しない核酸フラグメントによって達成され得ることが当分野では周知である。そのうえ、所与の部位における化学的に等価なアミノ酸の産生をもたらし、しかし、コードされたタンパク質の機能的性質には影響を及ぼさない遺伝子内の様々な変化が、当分野では周知である。従って、アミノ酸のアラニン(疎水性アミノ酸)に対するコドンを、疎水性がより小さい別の残基(例えば、グリシンなど)をコードするコドンによって、または、疎水性がより大きい残基(例えば、バリン、ロイシンまたはイソロイシンなど)をコードするコドンによって置換することができる。同様に、1つの負荷電残基の別の残基への置換(例えば、グルタミン酸に代わるアスパラギン酸への置換など)、または、1つの正荷電残基の別の残基への置換(例えば、アルギニンに代わるリシンへの置換など)をもたらす変化もまた、機能的に等価な生成物をもたらすことが予想され得る。タンパク質分子のN末端部分およびC末端部分の変化を生じさせるヌクレオチド変化はまた、タンパク質の活性を変化させないことが予想される。提案された改変のそれぞれが、コードされた産物の生物学的活性の保持の決定がそうであるように、十分に当分野における日常的な技術の範囲内である。
そのうえ、実質的に類似する核酸フラグメントはまた、本明細書中に開示される核酸フラグメントとストリンジェントな条件(0.1XのSSC、0.1パーセントのSDS、65℃)のもとでハイブリダイゼーションするその能力によって特徴づけられ得る。
本発明の実質的に類似する核酸フラグメントはまた、本明細書中に開示されるアミノ酸配列に対する、そのような核酸フラグメントがコードするアミノ酸配列のパーセント類似性(これは、当業者によって一般に用いられるアルゴリズムによって明らかにされる)によって特徴づけられ得る。そのヌクレオチド配列が、本明細書中に報告される核酸配列によってコードされるアミノ酸配列に対して80パーセントの類似性を有するアミノ酸配列をコードするそのような核酸フラグメントが好ましい。より好ましい核酸フラグメントは、本明細書中に報告される核酸配列によってコードされるアミノ酸配列に対して90パーセントの類似性を有するアミノ酸配列をコードする。最も好ましいものは、本明細書中に報告される核酸配列によってコードされるアミノ酸配列に対して95パーセントの類似性を有するアミノ酸配列をコードする核酸フラグメントである。配列アラインメントおよびパーセント類似性の計算は、Vactor NTi Suite(InforMax、North Bethesda、MD)から得られるプログラムを使用して行われた。配列の多重アラインメントが、初期値パラメーター(GAPペナルティー=10、GAP伸長ペナルティー=0.1)を伴うClustal法のアラインメント(HigginsおよびSharp、1989)(以降、Clustalアルゴリズム)を使用して行われた。Clustal法を使用する対毎のアラインメントのための初期値パラメーターは、KTUPLE 1、GAPペナルティー=3、WINDOW=5およびDIAGONALS SAVED=5であった。
アミノ酸配列またはヌクレオチド配列の「実質的な部分」は、当業者による配列の手作業による評価によって、または、アルゴリズム(例えば、BLAST(Basic Local Alignment Search Tool:Altschulら、1993;www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/もまた参照のこと)を使用するコンピューター自動化による配列の比較および特定によって、そのどちらであっても、そのポリペプチドまたは遺伝子の推定的な特定をもたらすためのポリペプチドのアミノ酸配列または遺伝子のヌクレオチド配列の十分な部分を示す。一般には、10個以上の連続したアミノ酸の配列または30個以上のヌクレオチドの配列が、ポリペプチド配列または核酸配列を、既知のタンパク質または遺伝子に対して相同的であると推定的に特定するために必要である。そのうえ、ヌクレオチド配列に関しては、20個〜30個の連続したヌクレオチドを含む遺伝子特異的なオリゴヌクレオチドプローブを遺伝子特定の配列依存的な方法(例えば、サザンハイブリダイゼーション)および遺伝子単離の配列依存的な方法(例えば、細菌コロニーまたはバクテリオファージプラークのインサイチューハイブリダイゼーション)において使用することができる。加えて、12塩基〜15塩基の短いオリゴヌクレオチドを、プライマーを含む特定の核酸フラグメントを得るために、PCRにおける増幅プライマーとして使用することができる。従って、ヌクレオチド配列の「実質的な部分」は、その配列を含む核酸フラグメントの特異的な特定および/または単離をもたらすための十分な配列を含む。本明細書では、1つまたは複数の具体的な植物タンパク質をコードする部分的または完全なアミノ酸配列およびヌクレオチド配列が教示される。従って、当業者は、本明細書中に報告されるような配列の助けをかりて、開示された配列のすべての部分または実質的な部分を当業者に公知の様々な目的のために使用することができる。
「転写調節領域」および「調節領域」は、遺伝子の転写を調節するDNAの一部分を示す。調節領域には、様々なシス作用エレメント(これには、プロモーター、エンハンサーおよびホルモン応答エレメントが含まれるが、これらに限定されない)が含まれる場合がある。同様に、イントロンおよび5’UTRは転写に影響を及ぼすことが知られているので、転写調節領域はそのような配列を含むことができる。調節領域は、宿主細胞における核酸の発現を確実にするために、核酸に対して機能的に連結することができる。
「遺伝子導入動物」は、そのゲノムへのDNAの人為的な挿入および安定的な組み込みによって改変されている動物を示す。DNAは染色体またはエピソームエレメントまたは染色体外エレメントにランダムに挿入され得るか、あるいは、DNAは染色体またはエピソームエレメントまたは染色体外エレメントにおける特定の部位に標的化され得る。
「遺伝子組換え細胞」は、人為的に挿入されたDNAを染色体またはエピソームエレメントまたは染色体外エレメントに含有する細胞を示す。
「変化体」は、実質的に類似する配列を示す。一般に、本発明の核酸配列変化体は、生来的なヌクレオチド配列に対する少なくとも46パーセント、48パーセント、50パーセント、52パーセント、53パーセント、55パーセント、60パーセント、65パーセント、70パーセント、75パーセント、76パーセント、77パーセント、78パーセント、79パーセント、80パーセント、85パーセント、86パーセント、87パーセント、88パーセント、89パーセント、90パーセント、91パーセント、92パーセント、93パーセント、94パーセント、95パーセント、96パーセント、97パーセント、98パーセントまたは99パーセントの配列同一性を有し、この場合、パーセント配列同一性は配列全体に基づいており、初期値パラメーターを使用するGAP10分析によって決定される。一般に、本発明のポリペプチド配列変化体は、生来的なタンパク質に対する少なくとも60パーセント、65パーセント、70パーセント、75パーセント、76パーセント、77パーセント、78パーセント、79パーセント、80パーセント、81パーセント、82パーセント、83パーセント、84パーセント、85パーセント、86パーセント、87パーセント、88パーセント、89パーセント、90パーセント、91パーセント、92パーセント、93パーセント、94パーセント、95パーセント、96パーセント、97パーセント、98パーセントまたは99パーセントの配列同一性を有し、この場合、パーセント配列同一性は配列全体に基づいており、初期値パラメーターを使用するGAP10分析によって決定される。GAPでは、NeedlemanおよびWunsch(J. Mol. Biol.、48:443〜453、1970)のアルゴリズムが、一致部分の数を最大にし、かつ、ギャップの数を最小限にする、2つの完全な配列のアラインメントを見出すために使用される。
「変化体」はまた、本発明において含有され、かつ、本発明の生物学的機能のために場合により要求されるモチーフと非常に類似するアミノ酸配列を含有する実質的に類似する配列を示す。一般に、本発明のポリペプチド配列変化体は、規定されたモチーフにおける保存されたアミノ酸残基に対する少なくとも85パーセント、90パーセントまたは95パーセントの配列同一性を有する。
本明細書中で使用される様々な標準的な組換えDNA技術および分子クローニング技術が当分野では周知であり、より詳しくはSambrookおよびRussell(2000)によって記載される。
本発明に含まれる変化体は、コードされた配列において1個だけのアミノ酸または小さい割合のアミノ酸を変化させ、付加し、または欠失する、核酸配列またはポリペプチド配列に対する個々の置換、欠失または付加を含有する場合がある。「保存的に改変された変化体」は、化学的に類似するアミノ酸によるアミノ酸の置換をもたらす変化である。核酸が合成的に調製されるか、または、合成的に変化させられるとき、意図された宿主の公知のコドン優先を利用することができる。
本発明の核酸フラグメントは、同じ種または他の種に由来する相同的なタンパク質をコードするcDNAおよび遺伝子を単離するために使用することができる。配列依存的なプロトコルを使用する相同的な遺伝子の単離が当分野では周知である。配列依存的なプロトコルの例には、核酸ハイブリダイゼーションの方法、ならびに、核酸増幅技術(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応、リガーゼ連鎖反応など)の様々な使用によって例示されるようなDNAおよびRNA増幅の方法が含まれるが、これらに限定されない。
例えば、他のニコチン性アセチルコリン受容体α−6サブユニットをコードする遺伝子(cDNAまたはゲノムDNAとして、そのどちらであっても)を、本発明の核酸フラグメントのすべてまたは一部分をDNAハイブリダイゼーションプローブとして使用して、任意の所望される生物からのライブラリーを当業者に周知の方法論を用いてスクリーニングすることによって直接に単離することができる。本発明の核酸配列に基づく特異的なオリゴヌクレオチドプローブを当分野で公知の様々な方法によって設計および合成することができる(SambrookおよびRussell、2000)。そのうえ、全体配列は、当業者に公知の方法(例えば、ランダムプライマーDNA標識化技術、ニックトランスレーション技術または末端標識化技術など)によってDNAプローブを合成するために、または、利用可能なインビトロ転写システムを使用してRNAプローブを合成するために直接に使用することができる。
加えて、特異的なプライマーを、本発明の配列の一部分またはすべてを増幅するために設計および使用することができる。得られる増幅生成物は増幅反応期間中に直接に標識することができ、または、増幅反応後に標識することができ、全長のcDNAまたはゲノムフラグメントを適切なストリンジェンシーの条件のもとで単離するためのプローブとして使用することができる。
加えて、本発明の核酸フラグメントの2つの短いセグメントは、相同的な遺伝子をコードするより長い核酸フラグメントをDNAまたはRNAから増幅するためにポリメラーゼ連鎖反応の様々なプロトコルにおいて使用することができる。ポリメラーゼ連鎖反応はまた、クローン化された核酸フラグメントのライブラリーに対して行うことができ、この場合、一方のプライマーの配列が本発明の核酸フラグメントに由来し、もう一方のプライマーの配列では、遺伝子をコードするmRNA前駆体の3’末端に対するポリアデニル酸区域の存在が利用される。あるいは、第2のプライマー配列は、クローニングベクターに由来する配列に基づく場合がある。例えば、当業者はRACEプロトコル(Frohmanら、1988)に従って、cDNAを、転写物内の一点と3’末端または5’末端との間の領域のコピー体を増幅するためにPCRを使用することによって作製することができる。3’方向および5’方向に配向するプライマーを本発明の配列から設計することができる。市販の3’RACEシステムまたは5’RACEシステム(Invitrogen、Madison、WI)を使用して、特異的な3’cDNAフラグメントまたは5’cDNAフラグメントを単離することができる(Oharaら、1989;Lohら、1989)。3’RACE法および5’RACE法によって作製された生成物は、全長のcDNAを作製するために組み合わせることができる(FrohmanおよびMartin、1989)。本発明のヌクレオチド配列および推定されたアミノ酸配列が利用できることにより、cDNA発現ライブラリーの免疫学的スクリーニングが容易になる。本発明のアミノ酸配列の一部分を表す合成ペプチドを合成することができる。このようなペプチドは、そのアミノ酸配列を含むペプチドまたはタンパク質に対する特異性を有するポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体を産生させるために動物を免疫化するために使用することができる。その後、これらの抗体は、cDNA発現ライブラリーをスクリーニングして、目的とする全長のcDNAクローンを単離するために使用することができる(Lerner、1984;SambrookおよびRussell、2000)。
本発明では、同一のアミノ酸配列をコードする多数のポリヌクレオチドが含まれる。遺伝暗号の縮重性は、例えば、本発明のポリヌクレオチドの対立遺伝子変化体と選択的にハイブリダイゼーションし、それを検出するために使用することができるそのような「サイレントな変化」を可能にする。加えて、本発明では、対立遺伝子変化体を含む単離された核酸が含まれる。本明細書中で使用される用語「対立遺伝子」は、同じ遺伝子の同族核酸を示す。変化体はまた、例えば、「スプライス」変化体、「種」変化体、「多型」変化体として記載される場合がある。スプライス変化体は基準分子に対する著しい同一性を有し得るが、mRNAプロセシング時におけるエキソンの選択的スプライシングのために、それよりも多い数またはそれよりも少ない数のヌクレオチドを一般に有する。対応するポリペプチドはさらなる機能的ドメインを有する場合があり、または、基準分子に存在するドメインを有しない場合がある。種変化体は、種毎に変化するポリヌクレオチドである。得られるポリペプチドは一般に、互いに比較して著しいアミノ酸同一性を有する。多型変化体は、所与の種の個体の間での特定の遺伝子のポリヌクレオチド配列における変化である。多型変化体はまた、ポリヌクレオチド配列が1つのヌクレオチド塩基によって変化する「一ヌクレオチド多型」(SNP)を包含する場合がある。
本発明に含まれる核酸の変化体は、例えば、オリゴヌクレオチド特異的変異誘発、リンカースキャニング変異誘発、および、ポリメラーゼ連鎖反応を使用する変異誘発などによって得ることができる。一般には、McPherson(1991)もまた参照のこと。従って、本発明はまた、本発明の配列との実質的な配列類似性を有するヌクレオチド配列を含むDNA分子を包含する。
特定の核酸配列に関して、「保存的に改変された変化体」は、そのアミノ酸配列の同一の変化体または保存的に改変された変化体をコードするそのような核酸を示す。遺伝暗号の縮重性のために、非常に数多くの機能的に同一の核酸により、任意の所与のタンパク質がコードされる。例えば、GCA、GCC、GCGおよびGCUのコドンはすべてがアミノ酸のアラニンをコードする。従って、アラニンがいずれかのコドンによって指定されるすべての位置において、そのコドンを、コードされているポリペプチドを変化させることなく、記載された対応するコドンのいずれかに変えることができる。そのような核酸変化は「サイレントな変化」であり、保存的に改変された変化体の1つの種を表す。ポリペプチドをコードする本明細書中における核酸配列はどれもまた、それにより、遺伝暗号を参照することによって、その核酸の可能なすべてのサイレントな変化が記載される。当業者は、核酸におけるそれぞれのコドン(AUG(これは通常、メチオニンに対する唯一のコドンである)およびUGG(これは通常、トリプトファンに対する唯一のコドンである)を除く)が、機能的に同一の分子を生じさせるために改変され得ることを認識する。従って、本発明のポリペプチドをコードする核酸のそれぞれのサイレントな変化は、それぞれの記載されたポリペプチド配列に事実上含まれており、また、請求項に記載される発明の範囲内である。
アミノ酸配列に関して、当業者は、コードされた配列における1つだけのアミノ酸または小さい割合のアミノ酸を変化させ、付加し、または欠失する、核酸配列、ペプチド配列、ポリペプチド配列またはタンパク質配列に対する個々の置換、欠失または付加が、そのような変化が化学的に類似するアミノ酸によるアミノ酸の置換をもたらす「保存的に改変された変化体」であることを認識する。従って、1〜50からなる整数の群から選択される任意の数のアミノ酸残基をそのように変化させることができる。従って、例えば、1、2、3、14、25、37、45または50の変化を行うことができる。保存的に改変された変化体は、典型的には、保存的に改変された変化体が由来する改変されていないポリペプチド配列と類似する生物学的活性を提供する。例えば、基質特異性、酵素活性またはリガンド/受容体結合は一般に、その生来的な基質に対する生来的なタンパク質の少なくとも20パーセント、30パーセント、40パーセント、50パーセント、60パーセント、70パーセント、80パーセントまたは90パーセントである。機能的に類似するアミノ酸を提供する保存的置換表が当分野では周知である。
例えば、下記の6つの群はそれぞれが、互いに保存的置換であるアミノ酸を含有する:1)アラニン(A)、セリン(S)、トレオニン(T);2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4)アルギニン、(R)、リシン(K);5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);および6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)。当分野で公知の他の許容され得る保存的置換パターンもまた使用することができる(Creighton(1984)を参照のこと);例えば、GCGパッケージ、BLASTまたはCLUSTALのような配列比較プログラムのスコア化行列など。
「ベクター」は、連結されている別の核酸を運ぶことができる核酸分子を示す。ベクターの1つのタイプが「プラスミド」であり、これは、さらなるDNAセグメントを連結することができる環状の二本鎖DNAループを示す。別のタイプのベクターが、さらなるDNAセグメントをウイルスゲノムに連結することができるウイルスベクターである。いくつかのベクターは、導入される宿主細胞における自律的複製が可能である(例えば、細菌の複製起点を有する細菌ベクター、および、エピソーム哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞に導入されたとき、宿主細胞のゲノムの中に組み込まれ、それにより、宿主のゲノムと一緒に複製される。そのうえ、いくつかのベクターは、機能的に連結される遺伝子の発現を導くことができる。そのようなベクターは本明細書中では「発現ベクター」として示される。一般に、組換えDNA技術において有用な発現ベクターは、多くの場合、プラスミドの形態である。本明細書において、「プラスミド」および「ベクター」は、プラスミドがベクターの最も一般に使用される形態であるので、交換可能に使用され得る。しかしながら、本発明は、等価な機能を果たすそのような他の形態の発現ベクター、例えば、ウイルスベクター(例えば、複製欠陥のレトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ関連ウイルス)などを含むことが意図される。
「電位依存性イオンチャネルサブユニット」は、電位における変化によって調節される任意のイオンチャネルの一部を形成するサブユニットを示す。これには、カルシウム、ナトリウム、カリウムおよび塩素の電位依存性イオンチャネルサブユニットが含まれるが、これらに限定されない。そのような電位依存性イオンチャネルをコードする様々な核酸配列が知られており、NCBIデータベースから公的に入手可能である。「電位依存性イオンチャネルサブユニットをコードする核酸」または「電位依存性イオンチャネルサブユニットポリヌクレオチド」は、電位依存性イオンチャネルサブユニットをコードするポリヌクレオチドを示す。これらの用語はまた、電位依存性イオンチャネルサブユニットのいずれかのフラグメント、変化体、ホモログ、対立遺伝子または前駆体(例えば、プレタンパク質またはプロタンパク質)を含む。
2.詳細な説明
本発明の実施形態は、特定の核酸を含有し、かつ、いくつかのアミノ酸を好適な条件のもとで発現することができる宿主細胞に関連する。本発明の宿主細胞は、好ましくは少なくとも100個の連続したヌクレオチドの長さ(特に、少なくとも500個の連続したヌクレオチドの長さ)にわたって、特に配列の全長にわたって、受容体サブユニットをコードするNCBIアクセション番号NM205953を有する遺伝子のコード領域の79位と1485位との間の配列との少なくとも50パーセントの同一性、好ましくは少なくとも60パーセントの同一性、特に少なくとも70パーセントの同一性、より好ましくは少なくとも80パーセントの同一性、特に、90パーセントの同一性、91パーセントの同一性、92パーセントの同一性、93パーセントの同一性、94パーセントの同一性、95パーセントの同一性、96パーセントの同一性、97パーセントの同一性、98パーセントの同一性、99パーセントの同一性および100パーセントの同一性をもたらす核酸を含む。NCBIアクセション番号NM205953を有する遺伝子はキイロショウジョウバエのゲノムの染色体2Lにおいて位置30Dに位置する。例示的な核酸配列には、ショウジョウバエおよび他の無脊椎動物の核酸配列、例えば、線虫(Caenorhabditis elegans)(NCBIアクセション番号NM072806)、ガンビアハマダラカ(Anopheles gambiae)(NCBIアクセション番号AY705401)、アフィス・メリフェラ(Aphis mellifera)(NCBIアクセション番号AY500239)およびヘリオチス・ビレセンス(Heliothis virescens)(NCBIアクセション番号AF143847)が含まれるが、これらに限定されない。これらの例示的な核酸配列に対応するアミノ酸配列もまた公的に知られており、入手可能である。
いくつかの実施形態において、この核酸配列はニコチン性アセチルコリン受容体のα−6サブユニットをコードする。他の実施形態において、受容体サブユニットをコードする核酸配列は、(a)NCBIアクセション番号NM205953を有する核酸配列;(b)アクセション番号NM205953を有するキイロショウジョウバエ由来の受容体サブユニットのスプライス変化体をコードする配列(これには、例えば、公知の配列、および、公開されているデータベースから入手可能な配列(NCBIアクセション番号NM164874、同NM205951、同NM135472、同NM205952、同NM205953、同AF321445、同AF321446、同AF321447、同AF321448および同AF321449)が含まれる);および(c)(a)〜(b)において定義される配列と同じアミノ酸配列を遺伝暗号の縮重性のためにコードする配列からなる群より選択される配列を含む核酸である。
本発明のさらなる実施形態において、宿主細胞はさらに、イオンチャネルサブユニットをコードする核酸を含む。イオンチャネルサブユニットをコードする核酸は宿主細胞によって内因的に産生されてもよく、または、されなくてもよいことが当業者によって理解される。イオンチャネルサブユニットが内因的に産生される場合、この核酸を宿主細胞に別々に導入する必要はない。例示的なイオンチャネルサブユニットには、リガンド依存性イオンチャネルサブユニット、例えば、ニコチン性アセチルコリン受容体サブユニット、γ−アミノ酪酸(GABA)受容体サブユニット、セロトニン受容体サブユニット、グルタミン酸受容体サブユニットおよびそれらの機能的なフラグメントなど、ならびに、電位依存性イオンチャネルサブユニット、例えば、カルシウム、ナトリウム、カリウム、塩素電位依存性イオンチャネルサブユニットおよびそれらの機能的なフラグメントなどが含まれる。いくつかの実施形態において、宿主細胞は、ニコチン性アセチルコリン受容体サブユニットであるイオンチャネルサブユニットをコードする核酸を含む。さらなる実施形態において、ニコチン性アセチルコリン受容体サブユニットをコードする核酸は、(a)配列番号1を有する核酸配列;(b)好ましくは少なくとも100個の連続したヌクレオチドの長さ(特に、少なくとも500個の連続したヌクレオチドの長さ)にわたって、特に配列の全長にわたって、ニコチン性アセチルコリン受容体サブユニットをコードする配列番号1を有する遺伝子のコード領域の925位と2424位との間の配列との少なくとも50パーセントの同一性、好ましくは少なくとも60パーセントの同一性、特に少なくとも70パーセントの同一性、より好ましくは少なくとも80パーセントの同一性、特に、90パーセントの同一性、91パーセントの同一性、92パーセントの同一性、93パーセントの同一性、94パーセントの同一性、95パーセントの同一性、96パーセントの同一性、97パーセントの同一性、98パーセントの同一性、99パーセントの同一性および100パーセントの同一性を有する核酸;(c)ニコチン性アセチルコリン受容体サブユニットのスプライス変化体をコードするヌクレオチド配列(これには、公知の配列、および、公開されているデータベースから入手可能な配列(NCBIアクセション番号NM176035、同NM205986、同NM205985、同AF272778)が含まれる);および(d)(a)〜(c)において定義される配列と同じアミノ酸配列を遺伝暗号の縮重性のためにコードする配列からなる群より選択される配列を含む。配列番号1を有する遺伝子はキイロショウジョウバエのゲノムの染色体2Lにおいて位置34Eに位置するということは言及しなければならない。
本発明の実施形態において、宿主細胞はスピノシンに対して応答することができる。このことは、当業者によって容易に利用可能であり、また、理解されている方法によって、例えば、本明細書中に記載されるように、電位固定分析、イオンフラックスアッセイ、ゲルシフトアッセイ、ウエスタンブロット、放射標識された競合アッセイ、ファージに基づく発現クローニング、および、クロマトグラフィーによる共分画化などによって判別することができる。
上記で示された配列を含む宿主細胞に加えて、本発明の実施形態はまた、アクセサリータンパク質をコードする核酸をさらに含む宿主細胞に関連する。具体的な実施形態において、アクセサリータンパク質をコードする核酸は、無脊椎動物のアクセサリータンパク質をコードする核酸である。さらなる実施形態において、アクセサリータンパク質をコードする核酸は、NCBIアクセション番号NM068898を有する核酸;(b)好ましくは少なくとも100個の連続したヌクレオチドの長さ(特に、少なくとも500個の連続したヌクレオチドの長さ)にわたって、特に配列の全長にわたって、アクセサリータンパク質をコードするNCBIアクセション番号NM068898を有する遺伝子のコード領域の1位と1137位との間の配列との少なくとも36パーセントの同一性、好ましくは少なくとも40パーセントの同一性、特に少なくとも50パーセントの同一性、好ましくは少なくとも60パーセントの同一性、特に少なくとも70パーセントの同一性、より好ましくは少なくとも80パーセントの同一性、特に、90パーセントの同一性、91パーセントの同一性、92パーセントの同一性、93パーセントの同一性、94パーセントの同一性、95パーセントの同一性、96パーセントの同一性、97パーセントの同一性、98パーセントの同一性、99パーセントの同一性および100パーセントの同一性を有する配列;(c)NCBIアクセション番号NM068898を有する線虫のric−3アクセサリータンパク質のスプライス変化体をコードする配列;および(d)(a)〜(c)において定義される配列と同じアミノ酸配列を遺伝暗号の縮重性のためにコードする配列からなる群より選択される核酸である。そのうえ、本発明の実施形態はまた、イオンチャネルサブユニットをコードする第2の核酸をさらに含み得る宿主細胞に関連する。イオンチャネルサブユニットをコードする具体的な第2の核酸は、リガンド依存性イオンチャネルをコードする第2の核酸である。いくつかの実施形態において、宿主細胞は、ニコチン性アセチルコリン受容体サブユニットであるリガンド依存性イオンチャネルサブユニットをコードする第2の核酸を含む。さらに他の実施形態において、ニコチン性アセチルコリン受容体サブユニットをコードする核酸は、ニコチン性α−7受容体サブユニットをコードする核酸である。さらにさらなる実施形態において、ニコチン性α−7受容体サブユニットをコードする第2の核酸は、(a)好ましくは少なくとも100個の連続したヌクレオチドの長さ(特に、少なくとも500個の連続したヌクレオチドの長さ)にわたって、特に配列の全長にわたって、ニコチン性α−7受容体サブユニットをコードする配列番号2を有する遺伝子のコード領域の106位と1617位との間の配列との少なくとも50パーセントの同一性、好ましくは60パーセントの同一性、特に少なくとも70パーセントの同一性、より好ましくは少なくとも80パーセントの同一性、特に、90パーセントの同一性、91パーセントの同一性、92パーセントの同一性、93パーセントの同一性、94パーセントの同一性、95パーセントの同一性、96パーセントの同一性、97パーセントの同一性、98パーセントの同一性、99パーセントの同一性および100パーセントの同一性を有する核酸;(b)配列番号2を有するニコチン性α−7受容体サブユニットをコードする配列に対する少なくとも50パーセントの同一性を有する配列;(c)キイロショウジョウバエ由来のニコチン性α−7受容体サブユニットをコードする配列のスプライス変化体(これには、公知の配列、および、公開されているデータベースから入手可能な配列(NCBIアクセション番号NM206791、同NM167645、同NM206790、同NM080340、同AJ554210、同AY036614)が含まれる);および(d)(a)〜(c)において定義される配列と同じアミノ酸配列を遺伝暗号の縮重性のためにコードする配列からなる群より選択される配列を含む核酸である。配列番号2を有する遺伝子はキイロショウジョウバエのゲノムの染色体Xにおいて位置18Cに位置するということは言及しなければならない。
本発明のさらなる実施形態は、受容体サブユニットをコードするNCBIアクセション番号NM205953を有する遺伝子のコード領域の79位と1485位との間の核酸配列に対する少なくとも50パーセントの同一性を有する核酸と、(ii)アクセサリータンパク質をコードする核酸とを含み、スピノシンに対して応答することができる宿主細胞に関連する。このような特定の実施形態では、イオンチャネルサブユニットをコードする核酸を宿主細胞に導入する必要はない。
本発明の別の態様は、上記の核酸配列を含有するベクターを含む宿主細胞、好ましくは、発現ベクターを含む宿主細胞に関連する。本発明の実施形態において、上記タイプのベクターが提供され、この場合、ヌクレオチド配列は、ベクターに同様に存在し、かつ、ヌクレオチド配列内に配置される調節ヌクレオチド配列に機能的に連結され、また、そのような調節ヌクレオチド配列の制御下にある。このような調節ヌクレオチド配列は本発明のヌクレオチド配列に対して異種であり得る(すなわち、調節ヌクレオチド配列は異なる生物または異なる遺伝子に由来し得る)か、または、同族的であり得る(すなわち、調節ユニットにおいて本発明のヌクレオチド配列と一緒に天然に存在する)。
本発明の組換え発現ベクターは、核酸を、宿主細胞におけるこの核酸の発現のために好適な形態で含む。このことは、組換え発現ベクターが、発現される核酸配列に機能的に連結される、発現のために使用される宿主細胞に基づいて選択された1つまたは複数の調節配列を含むことを意味する。組換え発現ベクター内において、「機能的に連結される」は、目的とするヌクレオチド配列が、このヌクレオチド配列の発現を(例えば、インビトロ転写/翻訳システムにおいて、または、ベクターが宿主細胞に導入されているときには宿主細胞において)可能にする様式で調節配列に連結されることを意味することが意図される。調節配列には、多くのタイプの宿主細胞におけるヌクレオチド配列の構成的な発現を導く調節配列、および、ヌクレオチド配列の発現を特定の宿主細胞においてだけ導く調節配列(例えば、組織特異的な調節配列)が含まれる。発現ベクターの設計は、形質転換される宿主細胞の選択、および、所望されたタンパク質の発現レベルなどのような要因に依存し得ることが当業者によって理解される。
組換え発現ベクターは原核生物細胞または真核生物細胞におけるタンパク質の発現のために設計することができる。例えば、タンパク質を、細菌細胞(例えば、大腸菌など)、昆虫細胞(バキュロウイルス発現ベクターを使用して)、酵母細胞または哺乳動物細胞において発現させることができる。様々な好適な宿主細胞がさらには(Goeddel、1990)において議論される。
本発明の宿主細胞が特定されると、本発明はさらに、受容体サブユニットと相互作用するか、または、受容体サブユニットに影響を及ぼす化学的薬剤の能力について、すなわち、スピノシン様に作用する化学的薬剤の能力について化学化合物をアッセイする方法を提供する。従って、本発明の別の態様は、下記の工程を含む、受容体サブユニットに影響を及ぼす能力について化学化合物をアッセイする方法に関連する:(a)(i)受容体サブユニットをコードするNCBIアクセション番号NM205953を有する遺伝子のコード領域の79位と1485位との間の核酸配列に対する少なくとも50パーセントの同一性を有する核酸と、(ii)イオンチャネルサブユニットをコードする核酸分子とを、受容体サブユニットおよびイオンチャネルサブユニットを発現させるために宿主細胞にインビトロで導入する工程(この場合、宿主細胞はスピノシンに対して応答することができる);(b)発現した受容体サブユニットを化学化合物に曝す工程;および(c)発現し、暴露された受容体サブユニットを、化学化合物が受容体サブユニットに影響を及ぼすかどうかを判別するために評価する工程。
様々な方法が、核酸を宿主細胞に導入するために当分野では公知である。1つの方法がマイクロインジェクションであり、この場合、DNAが、細いガラスニードルを介して細胞の核の中に直接に注入される(または、RNAが細胞の細胞質の中に直接に注入される)。あるいは、DNAを、正荷電の化学基(DEAE、すなわち、ジエチルアミノエチル)が連結されている不活性な炭水化物ポリマー(デキストラン)とともにインキュベーションすることができる。DNAがその負荷電のリン酸基によりDEAE−デキストランに付着する。これらの大きいDNA含有粒子が次に細胞の表面に付着し、細胞の表面は、その後、エンドサイトーシスとして知られているプロセスによってそのような粒子を取り込むと考えられる。DNAの一部が細胞の細胞質における破壊を回避し、核に逃れ、その後、核において、DNAの一部が、細胞における任意の他の遺伝子のようにRNAに転写され得る。別の方法において、細胞は、リン酸カルシウムとの沈殿物の形態でDNAを効率的に取り込む。エレクトロポレーションにおいて、細胞は、DNAを含有する溶液に入れられ、穴がその膜において一時的に開くようにする+短時間の電気的パルスに曝される。DNAが、DEAE−デキストラン法およびリン酸カルシウム法では通過するエンドサイトーシス小胞(このような小胞の通過はときにはDNAの破壊または損傷をもたらし得る)を迂回して、そのような穴を通って細胞質に直接に入る。DNAはまた、細胞膜と融合し、その内容物を直接に細胞質内に送達する人工の脂質小胞(リポソーム)に取り込むことができる。主に植物細胞および植物組織とともに使用される一層より直接的な方法では、DNAがタングステンの微小弾丸の表面に吸収され、ショットガンに類似する装置により発射されて細胞に入れられる。
これらの方法のいくつか(マイクロインジェクション、エレクトポレーションおよびリポソーム融合)は、タンパク質を細胞の中に導入するために適合化されている。総説については、ManninoおよびGould-Fogerite(1988);ShigekawaおよびDower(1988);Capecchi(1980);およびKleinら(1987)を参照のこと。
核酸を細胞に導入するためのさらなる方法はウイルスベクターの使用を伴う。ウイルスの成長は、ウイルスゲノムを細胞の中に入れる能力に依存するので、ウイルスは、それを行うためのより巧妙かつ効率的な方法を工夫している。タンパク質製造のために広く使用されている1つのそのようなウイルスが昆虫ウイルス(バキュロウイルス)である。バキュロウイルスは、目を見張るようなレベルにその構造タンパク質の1つ(コートタンパク質)を感染期間中に産生するので、研究者の関心を引きつけた。外来遺伝子がこのウイルス遺伝子の代わりに使用されることになったならば、外来遺伝子が高レベルで産生されると考えられる。バキュロウイルスは、ワクシニアのように、非常に大きく、従って、外来遺伝子が組換えによってウイルスゲノムに設置されるに違いない。外来遺伝子をバキュロウイルスにおいて発現させるために、目的とする遺伝子が、ウイルスゲノムの小さい一部分を有するプラスミドにおいてウイルスのコートタンパク質遺伝子に代わりにクローン化される。組換えプラスミドが野生型のバキュロウイルスDNAと一緒に昆虫細胞に同時トランスフェクションされる。低頻度ではあるが、プラスミドおよびウイルスDNAは相同的な配列によって組換えが生じ、これにより、ウイルスゲノム内への外来遺伝子の挿入がもたらされる。ウイルスのプラークが発生し、組換えウイルスを含有するプラークは、コートタンパク質を有しないので異なって見える。組換えウイルスを伴うプラークが選択され、拡大培養される。その後、このウイルスストックは、昆虫細胞の新鮮な培養物に感染させ、これにより、外来タンパク質の高発現を生じさせるために使用される。バキュロウイルスベクターの総説については、Miller(1989)を参照のこと。様々なウイルスベクターがまた、哺乳動物細胞を形質転換するために使用されている(例えば、バクテリオファージ、ワクシニアウイルス、アデノウイルスおよびレトロウイルスなど)。
示されたように、細胞を形質転換するこれらの方法のいくつかでは、中間プラスミドベクターの使用が要求される。米国特許第4,237,224号(CohenおよびBoyer)には、制限酵素切断およびDNAリガーゼによる連結を使用する組換えプラスミドの形態での発現システムの作製が記載される。このような組換えプラスミドは、その後、形質転換によって導入され、原核生物を含む単細胞培養物、および、組織培養で成長させた真核生物細胞において複製される。DNA配列が、SambrookおよびRussell(2000)によって記載されるように、当分野において公知の標準的なクローニング手法を使用してプラスミドベクターにクローン化される。
本発明のいくつかの実施形態では、イオンチャネルサブユニットをコードする核酸を内因的に産生する宿主細胞が利用され、従って、イオンチャネルサブユニットをコードする核酸を宿主細胞に別に導入することが不要である。従って、これらの実施形態は、下記の工程を含む、受容体サブユニットに影響を及ぼす能力について化学化合物をアッセイする方法に関連する:(a)(i)受容体サブユニットをコードする核酸配列を、受容体サブユニットを発現させるために宿主細胞にインビトロで導入する工程(この場合、イオンチャネルサブユニットが宿主細胞によって内因的に産生および発現され、宿主細胞はスピノシンに対して応答することができる);および、その後、(b)受容体サブユニットを化学化合物に曝す工程;および(c)曝された受容体サブユニットを、化学化合物が受容体サブユニットに影響を及ぼすかどうかを判別するために評価する工程。
本発明の別の態様は、下記の工程を含む、受容体サブユニットに影響を及ぼす能力について化学化合物をアッセイする方法に関連する:(a)(i)受容体サブユニットをコードするNCBIアクセション番号NM205953を有する遺伝子のコード領域の79位と1485位との間の核酸配列に対する少なくとも50パーセントの同一性を有する核酸と、(ii)アクセサリータンパク質をコードする核酸分子とを、受容体サブユニットおよびアクセサリータンパク質を発現させるために宿主細胞にインビトロで導入する工程(この場合、宿主細胞はスピノシンに対して応答することができる);(b)発現した受容体サブユニットを化学化合物に曝す工程;および(c)発現し、暴露された受容体サブユニットを、化学化合物が受容体サブユニットに影響を及ぼすかどうかを判別するために評価する工程。
本発明のいくつかの実施形態では、アクセサリータンパク質を内因的に産生する宿主細胞が利用され、従って、アクセサリータンパク質をコードする核酸を宿主細胞に別に導入することが不要である。従って、これらの実施形態は、下記の工程を含む、受容体サブユニットに影響を及ぼす能力について化学化合物をアッセイする方法に関連する:(a)(i)受容体サブユニットをコードする核酸配列を、受容体サブユニットを発現させるために宿主細胞にインビトロで導入する工程(この場合、アクセサリータンパク質が宿主細胞によって内因的に産生および発現され、宿主細胞はスピノシンに対して応答することができる);および、その後、(b)発現した受容体サブユニットを化学化合物に曝す工程;および(c)曝された受容体サブユニットを、化学化合物が受容体サブユニットに影響を及ぼすかどうかを判別するために評価する工程。
いずれの場合でも、本発明による宿主細胞は、新しい昆虫駆除化合物を開発および特定するために様々な化学化合物(例えば、可能性のある殺虫剤および農薬など)にさらし、これらの化合物とのその相互作用について評価することができる。本発明の実施形態において、そのような化学化合物は化学化合物の混合物である。例示的なスクリーニング方法がEldefrawiら(1987)およびRauhら(1990)において記載される。
曝された宿主細胞を、化学化合物が受容体サブユニットに影響を及ぼすかどうかを毛判別するために評価することは、当分野で公知の任意の方法によって行うことができる。1つの実施形態において、そのような評価は、例えば、イオンチャネルを介したイオン輸送を、例えば、カエル(アフリカツメガエル)の卵母細胞におけるチャネルの機能的発現の後でのイオンチャネルの電位固定分析などによってモニターすることを含む(アフリカツメガエルの卵母細胞において発現させた受容体およびイオンチャネルの電位固定分析の一般的な議論については、Taglialatelaら(1992)およびStuhmer(1992)を参照のこと)。
イオン輸送は、1つまたは複数の化学化合物を含有する培地において細胞をプレインキュベーションし、放射性トレーサー(例えば、放射性カルシウム(45Ca2+)または放射性ナトリウム(22Na+)など)を含有する培地を加え、細胞をさらにこの培地においてインキュベーションし、その後、細胞をろ過によって単離することによってモニターすることができる。イオン輸送は液体シンチレーション計数または他の放射測定法技術による細胞内の放射性トレーサーの測定によって検出される(BloomquistおよびSoderlund、1988)。別の実施形態において、受容体に対する化学化合物の影響は、細胞をプレインキュベーションして、カルシウム選択性またはナトリウム選択性の蛍光性キレート化剤と平衡させ、細胞を洗浄し、細胞を試験剤にさらし、その後、蛍光を測定することにより細胞内のカルシウムまたはナトリウムにおける増大をモニターすることによって評価することができる(DeriおよびAdam-Vizi、1993;Linら、1999;PCT国際特許出願公開WO2004033647;PCT国際特許出願公開WO20031009;Wilcox、1999)。
さらなる実施形態において、受容体サブユニットに対する化学化合物の影響は、受容体サブユニットに対する化合物の結合親和性を測定することによって評価することができる。結合は、当業者には周知の結合アッセイによって明らかにすることができ、そのような結合アッセイには、限定されないが、ゲルシフトアッセイ、ウエスタンブロット、放射標識された競合アッセイ、ファージに基づく発現クローニング、クロマトグラフィーによる共分画化、共沈殿、架橋、相互作用捕捉/ツーハイブリッド分析、サウスウエスタン分析およびELISAなどが含まれ、これらは、例えば、Current Protocols in Molecular Biology(1999、John Wiley & Sons、NY)(これはその全体が参考として本明細書中に組み込まれる)に記載される。スクリーニングされる化合物には、任意の化合物が含まれ、スクリーニングされる化合物は、細胞外起源、細胞内起源、生物学的起源または化学的起源に限定されない。本発明の方法ではまた、標識(例えば、放射性標識、蛍光標識、化学発光標識、酵素標識および免疫原性標識など)に結合されるリガンド(特に、可能性のある農薬)が含まれる。そのような試験で用いられる核酸は溶液に遊離していてもよく、または、固体支持体に結合していてもよく、または、細胞表面に提供されていてもよく、または、細胞内に存在していてもよく、または、細胞の一部分と会合していてもよい。当業者は、例えば、受容体サブユニットと、試験されている化合物との間での複合体の形成を測定することができる。あるいは、当業者は、試験されている化合物によって引き起こされる、受容体サブユニットとその基質との間での複合体形成の減少を調べることができる。
加えて、本発明のアッセイは、検出が、例えば、CCDカメラ、ルミノメーター、または、任意の他の好適な光検出システムを使用して行われ得るハイスループットスクリーニングの開発に特に適している。この様式では、細胞は、例えば、試験物質と、細胞内カルシウムの検出のために必要な試薬とが加えられ得るマルチウエルプレートにおいて提供され得る。そのうえ、市販の装置、例えば、「FLIPR−fluorimetric imaging based plate reader」(Molecular Devices Corp、Sunnyvale、Calif.、USA;Woodら、2000)および「VIPR」(voltage ion probe reader)(Aurora、Bioscience Corp.、CA、USA)などを使用することができる。ハイスループット全細胞アッセイでの細胞蛍光の非常に精密な測定が「FLIPR」により可能になっている。FLIPRは、電位感受性の蛍光性色素を使用して哺乳動物細胞の膜電位を測定することにおいてかなり有用であることが示されており、しかし、本質的に任意の細胞蛍光現象を測定するために有用である。この装置では、小角度レーザー散乱照明、および、標準的な96ウエルプレートにおけるウエルの底から約200ミクロン以内で蛍光を選択的に励起するためのマスクが使用される。小角度のレーザーは、光を細胞の単層に選択的に導くことによってバックグラウンドを減少させる。これにより、周りの培地のバックグラウンド蛍光が避けられる。このシステムでは、その後、CCDカメラが、プレート底の全領域を画像化して、それぞれのウエルの底における生じた蛍光を測定するために使用される。測定されたシグナルはそのウエルの領域にわたって平均化され、従って、細胞集団の平均応答の尺度となる。このシステムは、それぞれのウエルにおける蛍光を同時に測定し、従って、ウエル毎の測定による逐次測定の不正確さを回避するという利点を有する。このシステムはまた、96ウエルプレートまたは384ウエルプレートのそれぞれのウエルからの蛍光シグナルを1秒あたり2回もの速さで読み取るように設計される。この特徴は、非常に迅速な測定を並行して行うことができるということをFLIPRにもたらしている。この特性により、薬物発見のための1組の機能的アッセイに対する代用マーカーとして使用することができる、細胞の多くの生理学的性質における変化の測定が可能になる。FLIPRはまた、最高水準の感度を有するように設計される。このことにより、FLIPRは非常に小さい変化を非常に精密に測定することが可能になる。「カメレオン」と呼ばれるカルシウム用の新しい蛍光指示体もまた使用することができ、これは、補因子を伴うことなく遺伝子的にコードされ、特定の細胞内の場所に対して標的化可能である。このようないわゆる「カメレオン」は、緑色蛍光タンパク質(GFP)の青色発光変異体またはシアン色発光変異体のタンデム融合体、カルモジュリン、カルモジュリン結合ペプチドM13、および、強化された緑色発光GFPまたは黄色発光GFPからなる。カルシウムが結合すると、カルモジュリンがM13ドメインの周りに集まり、これにより、隣接するGFPの間での蛍光共鳴エネルギー移動の増大(Miyawakiら、1997)または減少(Romoserら、1997)が生じる。
本発明の様々な宿主細胞および方法論が特定されると、NCBIアクセション番号NM205953を有する遺伝子のコード領域の79位と1485位との間の核酸配列に対する少なくとも50パーセントの同一性、好ましくは60パーセントの同一性、特に少なくとも70パーセントの同一性、より好ましくは少なくとも80パーセントの同一性、特に、90パーセントの同一性、91パーセントの同一性、92パーセントの同一性、93パーセントの同一性、94パーセントの同一性、95パーセントの同一性、96パーセントの同一性、97パーセントの同一性、98パーセントの同一性、99パーセントの同一性および100パーセントの同一性を有する核酸によってコードされるポリペプチドのエピトープに対して惹起され得る(すなわち、特異的に結合する)抗体がさらに提供され、この場合、そのような核酸によってコードされるポリペプチドを発現する(好ましくは、機能的に発現する)宿主細胞はスピノシンに対して応答することができる。好ましくは、抗体は、アミノ酸367〜アミノ酸380であるエピトープに特異的に結合し、核酸配列は、NCBIアクセション番号NM205953を有する核酸配列である。本発明の抗体には、特定されたエピトープに結合することができるポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体、ならびに、これらの抗体のフラグメント、および、ヒト化形態が含まれる。本発明の抗体のヒト化形態は、当分野で公知の手法の1つ(例えば、キメラ化など)を使用して作製することができる。本発明の抗体のフラグメントには、Fabフラグメント、Fab2フラグメントおよびFdフラグメントが含まれるが、これらに限定されない。
本発明はまた、上記で記載された抗体を産生することができるハイブリドーマを提供する。ハイブリドーマは、特異的なモノクローナル抗体を分泌することができる不死化された細胞株である。
一般に、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体、ならびに、所望する抗体を産生することができるハイブリドーマを調製するための様々な技術が当分野では周知である(Campbell(1984)およびSt. Grothら(1980)を参照のこと)。抗体を産生することが公知の任意の動物(マウス、ウサギなど)を抗原性のニコチン性アセチルコリン受容体α−6サブユニットタンパク質(またはその抗原性フラグメント)により免疫化することができる。様々な免疫化方法が当分野では周知である。そのような方法には、タンパク質の皮下注射または腹腔内注射が含まれる。当業者は、免疫化のために使用されるニコチン性アセチルコリン受容体α−6サブユニットタンパク質の量が、免疫化される動物、タンパク質の抗原性、および、注射部位に基づいて変化することを認識する。
免疫原として使用されるタンパク質は、タンパク質の抗原性を増大させるために修飾することができ、または、アジュバントにおいて投与することができる。タンパク質の抗原性を増大させる様々な方法が当分野では周知であり、そのような方法には、抗原を異種のタンパク質(例えば、グロブリンまたはβ−ガラクトシダーゼなど)とカップリングすること、または、免疫化期間中にアジュバントを含むことによる方法が含まれるが、これらに限定されない。モノクローナル抗体については、免疫化された動物からの脾臓細胞が取り出され、ミエローマ細胞(例えば、SP2/O−Ag15ミエローマ細胞など)と融合され、モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞にすることができる。
当分野で周知の数多くの方法のいずれか1つを、所望する特性を有する抗体を産生するハイブリドーマ細胞を特定するために使用することができる。このような方法には、ELISAアッセイ、ウエスタンブロット分析または放射免疫アッセイによりハイブリドーマをスクリーニングすることが含まれる(Lutzら、1988)。所望する抗体を分泌するハイブリドーマはクローン化され、そのクラスおよびサブクラスが、当分野で公知の手法(Campbell、1984)を使用して決定される。ポリクローナル抗体については、抗体を含有する抗血清が免疫化動物から単離され、所望する特異性を有する抗体の存在について、上記手法のいずれかを使用してスクリーニングされる。
本発明はさらに、検出可能に標識された形態での上記の抗体を提供する。抗体は、放射性同位体、親和性標識(例えば、ビオチン、アビジンなど)、酵素標識(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼなど)、蛍光性標識(例えば、FITCまたはローダミンなど)、常磁性原子、ナノ粒子などの使用によって検出可能に標識することができる。そのような標識化を達成するための様々な手法が当分野で周知であり、例えば、Sternbergerら(1970)、Bayerら(1979)、Engvalら(1972)およびGoding(1976)、Yeら(2005)を参照のこと。
本発明の標識された抗体またはそのフラグメントは、特定されたエピトープを有する受容体サブユニットを発現する細胞または組織を特定するために、あるいは、特定されたエピトープを有する受容体サブユニットタンパク質を含有するサンプルを特定するために、あるいは、特定されたエピトープを有する受容体サブユニットのサンプル中での存在を検出するために、インビトロアッセイ、インビボアッセイおよびインサイチューアッセイのために使用することができる。より具体的には、従って、そのような抗体またはそのフラグメントは、サンプルを抗体またはそのフラグメントと接触させることによって、特定されたエピトープを有する受容体サブユニットのサンプル中での存在を検出するために使用することができる。抗体またはそのフラグメントは、サンプルに存在する要求されたエピトープを有する任意の受容体サブユニットに結合し、それとの複合体を形成する。その後、その複合体を検出することができ、それにより、サンプルにおける受容体サブユニットの存在を検出することができる。
本発明の別の態様は、NCBIアクセション番号NM205953を有する遺伝子のコード領域の79位と1485位との間の核酸配列に対する少なくとも50パーセントの同一性をそのコード領域が有する遺伝子を含む生物に関連し、この場合、変異を含むそのような生物は、変異体が由来する親生物と比較して、スピノシンに対する低下した応答を示す。
目的とする遺伝子における変異は、受容体サブユニットタンパク質が発現されない生物、または、受容体サブユニットタンパク質が発現されるが、変化したリガンド結合部位を含有する生物をもたらし得る。遺伝子における変異は、当分野で公知のいくつかの変異誘発方法のいずれかによって生じさせることができる(Ashburner、1989;Wood、1988)。変異を遺伝子またはゲノムにおいて生じさせるための技術には、下記で記載されるように、放射線(例えば、X線、UVまたはγ線);化学物質(例えば、EMS、MMS、ENU、ホルムアルデヒドなど);および、トランスポゾン挿入により誘導される発育不全を含めて、可動性エレメントによる挿入変異誘発、または、トランスポゾン媒介による欠失(例えば、雄性組換え)の使用が含まれる。遺伝子の発現を変化させる他の方法には、遺伝子を誤発現させるためのトランスポゾン(例えば、Pエレメント、EPタイプの「過剰発現トラップ」エレメント、マリナー(mariner)エレメント、piggyBacトランスポゾン、ヘルメス(hermes)、ミノス(minos)、スリーピングビューティー(sleeping beauty)など);アンチセンス;二重鎖RNA干渉;ペプチドアプタマーおよびRNAアプタマー;誘導された欠失;相同的組換え;優性ネガティブ対立遺伝子;およびイントラボディー(intrabody)の使用が含まれる。
変異誘発を様々な変異誘発剤によって達成することができる。当分野で公知の変異誘発剤の例には、化学的変異原(例えば、化学物質が結合しているDNA分子に含有される遺伝子の活性、タンパク質コード能または発現に影響を及ぼす(例えば、それらを増大または低下させる)DNAインターカレーション化学物質またはDNA結合化学物質)、物理的変異原(例えば、UV光、イオン化放射線(γ放射線、β放射線およびα放射線、X線)、生化学的変異原(例えば、制限酵素、DNA修復変異原、DNA修復阻害剤、エラーを生じさせやすいDNAポリメラーゼおよび複製タンパク質)などが含まれるが、これらに限定されない。DNA配列における変異誘発変化は変異原/DNA相互作用の直接の結果として生じ得る。あるいは、変異原によって加えられる損傷に対する応答でのDNA修復機構が、変異をもたらすことに関係する場合がある。
いくつかの実施形態において、化学的変異誘発が、変異を標的の細胞または生物における1つまたは複数の遺伝子において誘導するために使用される。細胞または生物を変異させるために一般に使用される化学的変異原の一例がN−エチル−N−ニトロソウレア(ENU)である。本発明において有用な化学的変異原の他の例には、エチルメタンスルホナート(EMS)およびICR191が含まれるが、これらに限定されない。多くの他の化学的変異原が当分野で知られており、本発明において有用である(例えば、Friedbergら(1995)を参照のこと;これは、様々な化学的変異原を教示すること、および、遺伝子変異を様々な細胞および生物において誘導することにおけるそれらの使用のために参考として本明細書中に組み込まれる)。当業者は、変異が、欠失変異、挿入変異、フレームシフト変異、ナンセンス変異、ミスセンス変異またはスプライシング変異であり得ることを認識する。
遺伝子の破壊および不活性化のためのトランスポゾン挿入変異誘発技術の有用性が明らかにされており、当分野では周知である。ショウジョウバエでは、数多くの技術が、Pエレメントトランスポゾンを使用する挿入変異誘発のために開発されている。Pエレメントトランスポゾン誘導による劣性致死性変異の集団(P致死体)を作製する技術が、ショウジョウバエにおける新規な必須遺伝子の迅速な特定のために特に好適である(Cooleyら、1988;Spraldingら、1995;Ohら、2003)。Pエレメントおよびショウジョウバエゲノムの配列は知られているので、Pエレメントにより破壊されている転写ユニットを、Pエレメント挿入の一方の端部または両方の端部から挿入に隣接する配列の中へ配列決定することによって迅速に特定することが通常の場合には可能である。本発明において、ショウジョウバエの目的とする遺伝子の破壊は、ホモ接合性であるときには致死性をもたらさず、しかし、スピノシンまたはその誘導体の致死的作用に対する抵抗性をもたらす。この遺伝子の変異は、コードされた対象タンパク質に影響を及ぼす化合物が効果的な殺虫剤化合物であること、および、このタンパク質クラスが、農薬のスクリーニングおよび開発のための優れた標的であることを示している。加えて、このクラスのタンパク質に影響を及ぼす化合物は治療的適用を有し得る。
スピノシン抵抗性の表現型(スピノシン誘導体抵抗性の表現型を含む)はまた、共抑制法によって生じさせることができる(Bingham、1997;Smyth、1997;QueおよびJorgensen、1998)。共抑制は、目的とする遺伝子の部分セグメントに対応するセンス鎖RNAの発現または注入によって生じる低下した遺伝子発現の現象である。共抑制の効果が、機能喪失の表現型を生じさせるために植物およびC.elegansにおいて広範囲に用いられており、また、ショウジョウバエにおける共抑制が1つだけ報告されており、この報告では、Adh遺伝子の低下した発現が、共抑制法を使用してwhite−Adhトランスジーンから誘導された(Pal-Bhadraら、1997)。
スピノシン抵抗性の表現型を生じさせるための別の方法は、二重鎖DNA干渉(dsRNAi)によるものである。この方法は、遺伝子のコード領域に由来する二本鎖RNAの干渉特性に基づくものであり、C.elegansの遺伝学的研究において非常に有用であることが立証されており(Fireら、1998)、また、機能喪失の表現型をショウジョウバエにおいて生じさせるためにもまた使用することができる(KennerdellおよびCarthew、1998;MisquittaおよびPatterson、1999)。この方法の一例において、目的とする遺伝子(例えば、対象遺伝子など)の実質的な部分に由来する相補的なセンスRNAおよびアンチセンスRNAがインビトロで合成される。得られたセンスRNAおよびアンチセンスRNAは注入緩衝液においてアニーリングさせられ、二本鎖RNAが動物に注入されるか、または、そうでない場合には、(その食物において、または、RNAを含有する緩衝液に浸すことによって)動物に導入される。注入された動物の子孫が、その後、目的とする表現型について詳しく調べられる(PCT出願公開WO99/32619)。
機能喪失(すなわち、スピノシン抵抗性の表現型)を生じさせるために使用することができるさらなる方法には、タンパク質機能の優性の阻害剤として作用するペプチドアプタマーの使用(KoloninおよびFinley、1998;Xuら、1997;Hoogenboomら、1998)、RNAアプタマーの使用(Goodら、1997;Ellingtonら、1995;Bellら、1998;Shiら、1999)およびイントラボディーの使用(Chenら、1994;Hassanzadehら、1998aおよび1998b)が含まれる。
細胞内に発現させた抗体、すなわち、イントラボディーは、細胞の内部で標的分子に特異的に結合し、その標的分子を不活性化するために設計された一本鎖の抗体分子である。イントラボディーが細胞アッセイおよび完全な生物体(例えば、ショウジョウバエなど)において使用されている(Chenら、1994;Hassanzadehら、1998aおよび1998b)。誘導可能な発現ベクターを、対象タンパク質と特異的に反応するイントラボディーを用いて構築することができる。このようなベクターを、アプタマーについて上記で記載されたのと同じ様式でモデル生物に導入し、研究することができる。
変異した生物は、所望の表現型について、すなわち、スピノシンに対する抵抗性についてスクリーニングすることができ、また、所望の表現型を惹起させる遺伝子を、そのような生物(すなわち、本発明のこの態様による変異した生物)を特定するために、選択、特定および特徴づけすることができ、例えば、そのクローン化、配列決定、マッピングなどを行うことができる。
本発明のもう1つの態様は、(a)(1)受容体サブユニットをコードするNCBIアクセション番号NM205953を有する遺伝子のコード領域の79位と1485位との間の核酸配列に対する少なくとも50パーセントの同一性、好ましくは60パーセントの同一性、特に少なくとも70パーセントの同一性、より好ましくは少なくとも80パーセントの同一性、特に、90パーセントの同一性、91パーセントの同一性、92パーセントの同一性、93パーセントの同一性、94パーセントの同一性、95パーセントの同一性、96パーセントの同一性、97パーセントの同一性、98パーセントの同一性、99パーセントの同一性および100パーセントの同一性を有するDNA分子の一方の鎖の対応する一部分に対して実質的に相補的なアンチセンスヌクレオチド配列と、(b)前記アンチセンスヌクレオチド配列に機能的に連結され、その結果、前記アンチセンスヌクレオチド配列が、形質転換される細胞において発現されるようにする調節配列とを含むベクター(この場合、形質転換された細胞は非形質転換細胞と比較してスピノシンに対する低下した応答を示す)である。
アンチセンス分子は、受容体サブユニットをコードするDNA分子全体に対して、すなわち、完全な分子と同じヌクレオチド長さのDNA分子全体に対して相補的であり得る。しかしながら、それよりも短い分子により機能することが望ましい場合がある。この場合、完全なアンチセンス分子のフラグメントを使用することができる。好適なフラグメントは、完全な分子をコードするmRNAにハイブリダイゼーションすることができ、好ましくは少なくとも20個のヌクレオチドからなる。このようなアンチセンス分子およびそのフラグメントは、受容体サブユニット遺伝子産物のmRNAに対して相補的であるRNA分子または一本鎖DNA分子を細胞に導入することによって、(すなわち、アンチセンス分子を導入することによって)キイロショウジョウバエの受容体サブユニット遺伝子産物の定常状態レベルを低下させるために使用することができる。アンチセンス分子は受容体サブユニット遺伝子産物のmRNAと塩基対形成することができ、それにより、mRNAのタンパク質への翻訳を妨げる。従って、キイロショウジョウバエの受容体サブユニットに対するアンチセンス分子は、受容体サブユニットをコードするmRNAの、機能的な受容体への翻訳を妨げることができる。
より具体的には、受容体サブユニットをコードするmRNAに対して相補的なアンチセンス分子またはそのフラグメントを、キイロショウジョウバエの機能的な受容体サブユニットの発現を低下させるために使用することができる。機能的な受容体サブユニットの発現の第1のレベルを有する細胞が最初に選択され、その後、アンチセンス分子(またはそのフラグメント)が細胞に導入される。アンチセンス分子(またはそのフラグメント)により、キイロショウジョウバエの受容体サブユニットの発現が阻止され、これにより、その細胞におけるキイロショウジョウバエの機能的な受容体サブユニットの発現の第2のレベルがもたらされる。この第2のレベルは最初の第1のレベルよりも小さい。
典型的には、対象遺伝子(ゲノムDNAまたはcDNAのいずれかに由来する)のコード領域の遺伝子融合体を含有するか、あるいは、調節が十分に特徴づけられている特異的なプロモーターおよび転写エンハンサー、好ましくは、異種のプロモーター/エンハンサー(すなわち、発現している対象経路遺伝子に対して非生来的であるプロモーター/エンハンサー)に機能的につながれたアンチセンスRNA、共抑制RNA、干渉性dsRNA、RNAアプタマー、ペプチドアプタマーまたはイントラボディーをコードするように操作された遺伝子を含有する遺伝子導入動物が作製される。
遺伝子導入動物または組換え細胞株を作製するために外因性の核酸配列を動物または培養細胞のゲノムに組み込むために様々な方法が広く知られている。無脊椎動物の動物モデルについては、最も一般的な方法は転移因子の使用を伴う。核酸配列をモデル生物のゲノムに組み込むために使用することができる好適な転位因子がいくつか存在する。様々な転位因子が、配列を目的とする遺伝子に挿入し、その結果、そのコードされた遺伝子が正しく発現されないようにし、これにより、機能喪失の表現型を有する「ノックアウト」動物を作製するために特に有用である。様々な技術が、ショウジョウバエにおけるPエレメントの使用(RubinおよびSpradling、1982;米国特許第4,670,388号)およびC.elegansにおけるTc1の使用(Zwaalら、1993;EpsteinおよびShakes、1995)について十分に確立されている。他のTc1様転位因子を使用することができる(例えば、ミノス、マリナーおよびスリーピングビューティーなど)。加えて、様々な種において機能する転位因子が特定されている(例えば、PiggyBac(Thibaultら、1999)、ホボ(hobo)およびヘルメスなど)。
機能喪失の表現型を作製することに加えて、転位因子は、目的の遺伝子あるいはその変異体または誘導体をさらなる遺伝子として動物のゲノムの任意の領域に組み込み、これにより、遺伝子の誤発現(過剰発現を含む)を生じさせるために使用することができる。遺伝子導入ショウジョウバエにおける遺伝子の誤発現のために特に設計された好ましいベクターがpGMR(Hayら、1994)に由来し、これは長さが9Kbであり、大腸菌のための複製起点;アンピシリン抵抗性遺伝子;挿入された配列を可動化するための3’末端および5’末端でのPエレメントトランスポゾン;Whiteマーカー遺伝子;hsp70エンハンサーのTATA領域およびa−チューブリン遺伝子の3’非翻訳領域を含む発現ユニットを含有する。発現ユニットは、エンハンサーを挿入するために設計された第1の多重クローニング部位(MCS)と、目的とする遺伝子を挿入するために設計された500塩基下流側に位置する第2のMCSとを含有する。転位因子の代わりとして、相同的組換え技術または遺伝子ターゲッティング技術を、目的とする遺伝子を動物の相同的な遺伝子の一方のコピー体または両方のコピー体の代わりにするために使用することができる。トランスジーンを外因性プロモーターエレメントまたは内因性プロモーターエレメントのいずれかの調節下に置くことができ、また、ミニ遺伝子または大きいゲノムフラグメントのいずれかとして挿入することができる。1つの適用において、遺伝子機能を、異所的発現によって、例えば、ショウジョウバエ(Brandら、1994)またはC.elegans(MelloおよびFire、1995)を使用して分析することができる。
遺伝子導入動物を作製するために使用することができる十分に特徴づけられた異種プロモーターの例には、熱ショックプロモーター/エンハンサー(これは温度誘導による誤発現のために有用である)が含まれる。ショウジョウバエでは、これらには、hsp70遺伝子およびhsp83遺伝子が含まれ、C.elegansでは、hsp16−2およびhsp16−41が含まれる。組織特異的なプロモーター/エンハンサーもまた有用であり、このようなプロモーター/エンハンサーには、ショウジョウバエでは、eyeless(MozerおよびBenzer、1994)、sevenless(Bowtellら、1991)、および、眼における発現のために有用であるガラス応答性プロモーター/エンハンサー(Quiringら、1994);および、羽における発現のために有用であるdpp遺伝子またはvestigal遺伝子に由来するプロモーター/エンハンサー(Stachling-Hamptonら、1994;Kimら、1996)が含まれる。最後に、優性アクティブまたは優性ネガティブなトランスジーンの活性を、経路が通常の場合には活性である領域に制限することが必要である場合、その経路における遺伝子(例えば、対象タンパク質経路遺伝子など)の内因性プロモーターを使用することが有用であり得る。
C.elegansにおいて、有用な組織特異的プロモーター/エンハンサーの例には、myo−2遺伝子プロモーター(これは咽頭筋特異的発現のために有用である);hlh−1遺伝子プロモーター(これは体筋特異的発現のために有用である)およびmec−7遺伝子プロモーター(これは触覚ニューロン特異的な遺伝子発現のために有用である)が含まれる。好ましい実施形態において、対象経路遺伝子の誤発現を導くための遺伝子融合体が、優性の選択マーカー(例えば、rol−6など)を含有するプラスミドと一緒にネマトーダに注入される形質転換ベクターに組み込まれる。遺伝子導入動物が、roller表現型を示す動物として同定され、そのような遺伝子導入動物は、対象経路遺伝子の誤発現によってもたらされた目的とするさらなる表癌型について詳しく調べられる。
ショウジョウバエでは、外因性DNAを用いる二成分制御システムが、遺伝子の誤発現を広範囲の様々な発達段階特異的なパターンおよび組織特異的なパターンで調べるときには有用である。二成分外因性調節システムの2つの例には、酵母に由来するUAS/GAL4システム(Hayら、1997;Ellisら、1993;BrandおよびPerrimon、1993)、および、大腸菌に由来する「Tetシステム」(Belloら、1998)が含まれる。
優性ネガティブ変異(これにより、その変異は、あるタンパク質がそのタンパク質の野生型コピー体の正常な機能を妨害させ、また、優性ネガティブ変異は機能喪失または低下した機能の表現型を遺伝子の正常なコピー体の存在下でもたらすることができる)を、公知の方法を使用して行うことができる(Hershkowitz、1987)。
本発明の1つの態様において、安定的に形質転換された遺伝子導入サカナが提供される。1つの実施形態において、遺伝子導入サカナは、プロモーターに機能的に連結された導入されている受容体サブユニット遺伝子が安定的に組み込まれているか、または、そうでない場合には取り込まれているゲノムを有する。プロモーターは、好ましくは、器官特異的または組織特異的(細胞特異的を含む)なプロモーター、あるいは、特定の組織において調節され得るプロモーターである。受容体サブユニット遺伝子は、典型的にはサカナ以外の動物に由来し、好都合には、本明細書中でさらに記載されるような組換えベクターの一部であり得る。好ましくは、受容体サブユニット遺伝子は無脊椎動物の受容体サブユニットである。そのようなサカナは、受容体サブユニットに関連するその遺伝情報を再現し、その子孫に渡す能力を有するという点で、安定なサカナ系統を形成することができる。
広範囲の様々なサカナを本発明において利用することができる。例示的なサカナには、硬骨魚(例えば、ゼブラフィッシュなど)が含まれる。特にゼブラフィッシュは、他の動物モデルと比較して、好都合に利用することができる。例えば、ゼブラフィッシュは、遺伝子スクリーニング、修飾因子スクリーニングおよび化学的スクリーニングが容易であり、子宮外(ex-utero)で迅速に発達し、かつ、その生活環の多くについて透明であり、また、子孫の大きな集団を毎週もたらす。ゼブラフィッシュは比較的小さい施設(9リットルのタンク1個で54匹までの成体魚を収容する)で育てることができ、また、非常に多くの子孫を確実にもたらすことができる(それぞれの成熟したメスは典型的には1週あたり100個〜300個の卵を産卵する)。これらの卵は体外受精し、胚は透明であり、このことにより、造血系組織ならびに他の器官系および組織系の初期の発達を、解剖顕微鏡のみを使用して直接に観察することが可能である。胚の発達は極めて迅速であり、血液細胞の形成を含むほとんどの器官系が受精後5日までに完全に発達する。完全な繁殖可能な成熟化が3ヶ月までに到達する。
ベクターは、プロモーターに機能的に連結された、受容体サブユニットをコードする遺伝子を含む。好ましくは、プロモーターは器官特異的または組織特異的なプロモーターである。
ほとんどの哺乳動物プロモーターはサカナでは十分に機能しないことが見出されているので、その場合、ゼブラフィッシュ、フグまたは他のサカナ種のゲノムの調節配列を、多くの場合、目的とするコード配列の上流側に、その内部に、また、その下流側に特異的にクローン化しなければならず、これは、当業者には日常的な手法によって達成することができる。同様な手法を他(例えば、ゼブラフィッシュ)の器官特異的プロモーターおよび組織特異的プロモーターの構築のために利用することができ、これらは当業者に周知である。
トランスジーンを送達用のベクターに含めることができる。本明細書中で使用されるように、また、当分野で公知のように、ベクターは、形質転換(すなわち、個々の細胞の遺伝物質がそのゲノムへの外因性DNAの取り込みによって変化させられるプロセス)を導くために設計された遺伝物質を含む核酸構築物を示す。ベクターは、位置的に、また、連続して方向づけられた多数の遺伝子エレメント、すなわち、カセットにおける核酸が、マイクロインジェクションされた1個の細胞の受精した胚において転写され、また、所望されるならば、翻訳され得るように他の必要なエレメントまたは所望されるエレメントと機能的に連結された多数の遺伝子エレメントを含有することができる。
組換え発現ベクターを、上記で示されたヌクレオチド配列を、当業者に周知の方法、および、数多くの刊行物に記載されるような方法に従ってベクターに組み込むことによって構築することができる。
本発明において有用である広範囲の様々なベクターが知られている。好適なベクターには、プラスミドベクター、ウイルスベクターが含まれ、ウイルスベクターには、レトロウイルスベクター(例えば、Millerら(1993)を参照のこと)、アデノウイルスベクター(例えば、Erzurumら(1993)、Zabnerら(1994)およびDavidsonら(1993)を参照のこと)、アデノ関連ウイルスベクター(例えば、Flotteら(1993)を参照のこと)、ヘルペスウイルスベクター(例えば、Andersonら(1993)を参照のこと)およびレンチウイルスベクター(例えば、Leverら(2000)を参照のこと)が含まれる。ベクターは、調節エレメントを含めて、指定された宿主細胞(例えば、本明細書中に記載される遺伝子導入サカナ宿主細胞など)における核酸の効率的な発現のために必要な、または、望ましい他の公知の遺伝子エレメントを含むことができる。例えば、ベクターは、プロモーター(本明細書中に記載されるように器官特異的または組織特異的であるプロモーターを含む)、および、遺伝子の転写を達成するためにプロモーターと協同する任意の必要なエンハンサー配列を含むことができる。「エンハンサー」によって、細胞(例えば、本明細書中に記載される遺伝子導入サカナ宿主細胞など)におけるプロモーター活性を刺激することができるヌクレオチド配列エレメントが意味される。ベクターは、例えば、線状化された形態であってもよい。
ヌクレオチド配列はまた、融合タンパク質が形成されるように、また、レポーター遺伝子産物の存在および/または存在場所が視覚化され得るか、または、そうでない場合には特定され得るように、レポーター遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列に融合することができる。用語「コードする」(“encoding”および“coding”)は、ヌクレオチド配列が、転写および翻訳の機構によって、一連のアミノ酸が、ポリペプチドを産生するために特定のアミノ酸配列に組み立てられ得る情報を細胞に提供するプロセスを示す。そのようなヌクレオチド配列の一例として、GFPをコードするヌクレオチド配列を本発明では都合よく利用することができ、その結果、発達中の胚および/または孵化した稚魚、もしくは、そうでない場合には成魚の様々な領域が融合タンパク質の発現時に蛍光を発するようにすることができる。あるいは、他のレポーター遺伝子産物を利用することができ、これらには、ルシフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、β−グルクロニダーゼおよびアルカリホスファターゼが含まれる。本明細書中に記載されるレポーター遺伝子産物の存在を明らかにするための様々なアッセイ、および、その活性または量を明らかにすることを含む様々なアッセイが当分野では知られており、例えば、Current Protocols in Molecular Biology(Ausubelら編、John Wiley & Sons)(これは定期的および周期的に更新される)において議論される。本明細書中で議論されるレポーター遺伝子産物についてのアッセイのさらなる記載が、例えば、下記の刊行物に見出され得る:ルシフェラーゼについては、Nguyen, V.T.ら(1988)を参照のこと;β−ガラクトシダーゼについては、例えば、Martin, C.S.ら(1997)、JainおよびMagrath(1991)を参照のこと;β−ガラクトシダーゼ、β−グルクロニダーゼおよびアルカリホスファターゼについては、例えば、Bronsteinら(1994)を参照のこと;クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼについては、Cullenら(1987)、Gorman, C.ら(1982)、Minerら(1988)、Sleigh(1986)、HrubyおよびWilson(1992)を参照のこと。
本発明のさらに別の態様において、遺伝子の前方には、部位特異的なリコンビナーゼ認識部位(例えば、Flox部位、Lox部位またはFRT部位)が隣接する、強い転写停止部位を含むレポーター遺伝子(例えば、蛍光性タンパク質遺伝子(例えば、GFP、RFP、BFP、YFPまたはdsRED2)またはルシフェラーゼタンパク質遺伝子など)が存在する。遍在性遺伝子プロモーター(例えば、EF1−αまたはβ−アクチン)は、「Lox化」、「Flox化」または「FRP化」されたレポーター遺伝子の発現を行わせることができる。第2の遺伝子産物(例えば、受容体サブユニット遺伝子)がレポーター遺伝子に隣接するが、第2の遺伝子産物(例えば、受容体サブユニット遺伝子)は、レポーター遺伝子内の強い転写停止部位のために、リコンビナーゼタンパク質の発現の非存在下では発現されない。しかしながら、リコンビナーゼタンパク質の発現が細胞において活性化されるとき、Lox化、Flox化またはFRP化されたレポーター遺伝子産物が切り出され、第2の遺伝子が遍在性遺伝子プロモーターに並置される。加えて、組織特異的な組換えが、レーザーの使用による熱ショック誘導可能な部位特異的リコンビナーゼトランスジーンのレーザー活性化によって促進され得る。レーザー活性化は発生学的な発達の期間中の個々の細胞に対して標的化することができる。
本発明のさらに別の態様において、遺伝子導入サカナを作製する方法が本明細書中に提供される。1つの実施形態において、方法は、プロモーターに機能的に連結された無脊椎動物の受容体サブユニットを含む核酸をサカナの受精卵(すなわち、サカナの胚を含む)またはサカナの未受精卵に導入することを含む。核酸は、本明細書中に記載されるベクターの一部であってもよい。サカナの受精卵が使用されるとき、この方法は、サカナの胚を遺伝子導入サカナに発達させることを含む。ニコチン性受容体サブユニットをコードする遺伝子が未受精卵に導入されるとき、この方法は、卵を受精させること、および、サカナの胚を遺伝子導入サカナに発達させることを含む。核酸構築物を、当分野で公知の様々な方法によって卵に導入することができ、そのような方法には、機械的方法、化学的方法、親油性の方法、レトロウイルス感染法およびエレクトロポレーションが含まれる。例示的な機械的方法には、例えば、マイクロインジェクションが含まれる。例示的な化学的方法には、例えば、リン酸カルシウムまたはDEAE−デキストランの使用が含まれる。例示的な親油性の方法には、脂質媒介によるトランスフェクションのためのリポソームおよび他のカチオン性作用因の使用が含まれる。そのような方法は一般に当分野では周知であり、そのような方法の多くが、例えば、Gene Transfer Methods: Introducing DNA into Living Cells and Organisms(NortonおよびSteel、2000)、および、Current Protocols in Molecular Biology(Ausubelら)(これは定期的および周期的に更新される)に記載される。サカナを伴うマイクロインジェクション技術が、例えば、ChenおよびPowers(1990)、および、FletcherおよびDavis(1991)にさらにより詳しく記載される。サカナを伴う様々なエレクトロポレーション技術が、例えば、Powersら(1992)およびLuら(1992)においてさらにより詳しく記載される。DNAをサカナの卵または胚にレトロウイルスベクター(例えば、汎親和性レトロウイルスベクターなど)による感染によって導入するための技術が、例えば、Burns, J.C.ら(1993)においてさらに記載される。
トランスジーンを含むベクターまたは他の核酸を、未受精卵に、または、所望の発達段階にある受精卵に導入することができる。本明細書中に記載されるような異なるトランスジーンをそれぞれがコードする多数のベクターを使用することができる。受精卵または胚を使用するとき、核酸を胚に(すなわち、発達の1細胞段階において)導入することが好ましい。しかしながら、核酸はまた、2細胞段階、4細胞段階などを含めて、より後期の発達段階で与えることができる。従って、核酸を、桑実胚、胞胚などに導入することができる。上記の遺伝子組換え構築物を取り込む少なくとも1つの単離された核酸分子が接合子に導入される。加えて、核酸がより後期の発達段階で卵に導入されるとき、上記の遺伝子組換え構築物を取り込む少なくとも1つの単離された核酸分子が、例えば、桑実胚、胞胚などの少なくとも1つの細胞に導入される。
サカナの卵は標準的な方法によって適切なサカナから得ることができる。そのようなサカナの多くを、例えば、ペット店から商業的に購入することができる。受精卵は当分野で公知の様々な方法によって得ることができる。例えば、所望する数の適切に成長したサカナ(例えば、3ヶ月齢〜12ヶ月齢のサカナなど)を、所望する比率のメス対オス(例えば、2:1など)とともに、適切な大きさの容器(例えば、タンクなど)に入れることができる。卵を、例えば、サカナをタンク内の繁殖チャンバーに交配後の適切な期間(例えば、10分〜60分など)にわたって入れることによって集めることができる。そのような方法が、例えば、Culpら(1991)において記載される。あるいは、サカナの卵は、当業者に公知の方法によって人工授精することができる。当業者は、そのような受精したサカナの卵を得る他の方法を熟知している。
核酸構築物をサカナの卵または胚に導入した後、サカナの卵または胚には、成魚への発達を助ける環境が与えられる。そのような環境には、例えば、E3卵水における28.5℃での15日間の成長、その後、循環する系の水に16日目まで導入すること(Westerfield、2000)が含まれ得る。
本明細書中に記載されるように作製された遺伝子導入サカナは、ゲノムDNAのドットブロットハイブリダイゼーションおよびサザンブロットハイブリダイゼーションをはじめとする、当分野で公知の一般的な手法によって特定することができる。簡単に記載すると、そのような方法では、例えば、Chen, T.T.ら(1996)において記載されるように、サカナの組織からのゲノムDNAの単離、制限酵素によるDNAの消化、および、消化されたDNA生成物のサザンブロットハイブリダイゼーションが伴う。予備的なスクリーニングを、Luら(1992)およびChenら(1993)において記載されるように、ゲノムDNAを一片のひれ組織から単離し、トランスジーンの配列をポリメラーゼ連鎖反応によって増幅し、増幅された生成物のサザンブロット分析を行うことによって達成することができる。加えて、ニコチン性受容体サブユニット−蛍光性融合タンパク質(受容体サブユニット−GFP融合タンパク質を含む)が、導入された核酸によってコードされるならば、蛍光についての視覚による予備的なスクリーニングを使用することができる。
作製された遺伝子導入サカナは、好ましくは、そのゲノムに安定的に組み込まれたトランスジーンを有する。このことは、トランスジーンが、染色体外であることとは対照的に、サカナのゲノムに組み込まれていることを意味する。遺伝子導入サカナは、典型的には、孵化後の所望される時間で試験薬物または試験剤と接触させられる。本発明の他の形態では、サカナ卵とともに含有されるサカナの胚を試験剤と接触させることができる。
受容体サブユニットコードするDNAフラグメントを、当業者に周知の任意の標準的な方法によって遺伝子導入マウスのゲノムに組み込むことができる。当分野で公知の様々な技術はどれも、トランスジーンを動物に導入して、遺伝子導入動物の創始体系統を作製するために使用することができる(例えば、Hoganら(1986および1994)、米国特許第5,602,299号、同第5,175,384号、同第6,066,778号および同第6,037,521号を参照のこと)。そのような技術には、前核マイクロインジェクション(米国特許第4,873,191号)、レトロウイルス媒介による生殖系列への遺伝子移入(Van der Puttenら、1985)、胚性幹細胞における遺伝子ターゲティング(Thompsonら、1989)、胚のエレクトポレーション(Lo、1983)、および、***媒介による遺伝子移入(Lavitranoら、1989)が含まれるが、これらに限定されない。
例えば、様々な発達段階にある胚細胞を、遺伝子導入動物の作製のためのトランスジーンを導入するために使用することができる。種々の方法が、胚細胞の発達の段階に依存して使用される。接合子はマイクロインジェクションのための良好な標的であり、接合子にマイクロインジェクションする様々な方法が広く知られている(米国特許第4,873,191号を参照のこと)。マウスでは、雄性前核は直径が約20マイクロメートルのサイズに達し、これは1〜2ピコリットル(pl)のDNA溶液の再現性のある注入を可能にする。遺伝子移入のための標的としての接合子の使用は、ほとんどの場合において、注入されたDNAが最初の卵割の前に宿主ゲノムに取り込まれるという点で大きな利点を有する(Brinsterら、1985)。結果として、遺伝子導入非ヒト動物の細胞のすべてが、取り込まれたトランスジーンを有することになる。このことはまた、一般に、創始体の子孫へのトランスジーンの効率的な伝播でも反映される。これは、生殖細胞の50パーセントがトランスジーンを有するからである。受容体サブユニット核酸フラグメントの前核へのマイクロインジェクションにより、遺伝子導入マウスが作製される。
本発明の遺伝子導入動物はまた、ターゲティングベクターを胚性幹(ES)細胞に導入することによって作製することができる。ES細胞は、着床前の胚を適切な条件のもとでインビトロで培養することによって得られる(Evansら、1981;Bradleyら、1984;Gosslerら、1986;およびRobertsonら、1986)。トランスジーンを、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム共沈殿、プロトプラスト融合またはスフェロプラスト融合、リポフェクション、および、DEAE−デキストラン媒介によるトランスフェクションをはじめとする、当分野で公知の様々な方法を使用してDNAトランスフェクションによってES細胞に効率的に導入することができる。トランスジーンはまた、レトロウイルス媒介による形質導入によって、または、マイクロインジェクションによってES細胞に導入することができる。そのようなトランスフェクションされたES細胞は、その後、ES細胞を胚盤胞段階の胚の胞胚腔に導入した後で胚に定着させ、生じるキメラ動物の生殖系列に寄与させることができる(これはJaenisch(1988)において総説される)。トランスフェクションされたES細胞を胞胚腔に導入することに先立って、トランスフェクションされたES細胞は、トランスジーンがそのような選抜のための手段を提供するならば、トランスジーンが組み込まれているES細胞を濃縮するための様々な選抜プロトコルに供することができる。あるいは、PCRを、トランスジーンが組み込まれているES細胞についてスクリーニングするために使用することができる。この技術では、トランスフェクションされたES細胞を胞胚腔への移入の前に適切な選抜条件のもとで成長させることが必要であることが避けられる。
加えて、レトロウイルス感染もまた、トランスジーンを非ヒト動物に導入するために使用することができる。発達中の非ヒト胚を胚盤胞段階にインビトロで培養することができる。この期間中、割球はレトロウイルス感染のための標的となり得る(Janenich、1976)。割球の効率的な感染が、透明帯を除去するための酵素処理によって得られる(Hoganら、1986)。トランスジーンを導入するために使用されるウイルスベクターシステムは、典型的には、トランスジーンを運搬する複製欠陥レトロウイルスである(Jahnerら、1985;Van der Puttenら、1985)。トランスフェクションが、割球をウイルス産生細胞の単層の上で培養することによって容易かつ効率的に得られる(Van der Puttenら、1985;Stewartら、1987)。あるいは、感染をより後期の段階で行うことができる。ウイルスまたはウイルス産生細胞を胞胚腔に注入することができる(Jahnerら、1982)。取り込みが、遺伝子導入動物を形成する細胞のサブセットのみにおいて生じるので、創始体のほとんどがトランスジーンについてモザイク状になる。さらに、創始体は、ゲノムにおける種々の位置でのトランスジーンの様々なレトロウイルス挿入(これは一般には子孫において分離する)を含有し得る。加えて、トランスジーンを妊娠中期の胚の子宮内レトロウイルス感染によって生殖系列に導入することもまた可能である(Jahnerら、1982)。当分野で公知である、遺伝子導入動物を作製するためにレトロウイルスまたはレトロウイルスベクターを使用するさらなる手段では、レトロウイルス粒子、または、レトロウイルスを産生するマイトマイシンC処理細胞を受精卵または初期胚の卵黄周囲隙にマイクロインジェクションすることが伴う(国際特許出願公開WO90/08832;HaskellおよびBowen、1995)。
受容体サブユニットポリペプチドをコードするcDNAを含むDNAフラグメントを非ヒト哺乳動物(例えば、マウスなど)における1細胞胚の前核にマイクロインジェクションすることができる。注入された胚は偽妊娠メスの卵管/子宮に移植され、最終的には、遺伝子導入動物が得られる。
創始体動物が作製されると、創始体動物は、特定の動物のコロニーを作製するために、繁殖、同系交配、異系交配または交雑することができる。そのような育種法の例には、下記が含まれるが、それらに限定されない:別個の系統を確立するために、2つ以上の組み込み部位を有する創始体動物を異系交配すること;それぞれのトランスジーンの付加的発現の影響のためにトランスジーンをより高レベルで発現する複合遺伝子組換え体を作製するために、分離した系統を同系交配すること;発現を強化すること、および、DNA分析による動物のスクリーニングについての必要性を除くことの両方のために所与の組み込み部位についてホモ接合性であるマウスを作製するために、ヘテロ接合の遺伝子導入マウスを交雑すること;複合型のヘテロ接合系統またはホモ接合系統を作製するために、分離したホモ接合性系統を交雑すること;トランスジーンの発現に対する変更対立遺伝子の影響および発現の生理学的影響を調べるために、動物を異なる同系交配された遺伝学的背景体に交配すること。
本発明は、トランスジーンをすべてのその細胞に有する遺伝子導入非ヒト哺乳動物、ならびに、トランスジーンを、すべてのその細胞ではなく、一部の細胞に有する哺乳動物、すなわち、モザイク状動物を提供する。トランスジーンは単一のトランスジーンとして組み込まれ得るか、または、コンカテマー(例えば、頭・頭のタンデム体または頭・尾のタンデム体)で組み込まれ得る。
遺伝子導入動物は、受容体サブユニットが発現される表現型を有するそのような動物を選択するためにスクリーニングおよび評価される。最初のスクリーニングを、例えば、動物細胞を分析して、トランスジーンの組み込みが起こっていることを確認するために、サザンブロット分析またはPCR技術を使用して行うことができる。遺伝子導入動物の細胞におけるトランスジーンのmRNA発現のレベルもまた、動物から得られた組織サンプルのノーザンブロット分析、インサイチューハイブリダイゼーション分析、および、逆転写酵素−PCR(rt−PCR)(これらに限定されない)を含む様々な技術を使用して評価することができる。遺伝子導入非ヒト哺乳動物は、本発明の方法において有用である表現型を有するそのような動物を特定するためにさらに特徴づけられ得る。
本発明のスクリーニング方法において、一定量の候補薬剤が生物(例えば、ショウジョウバエ)に投与される。投与後、生物(例えば、ハエ)に対する候補薬剤の影響が、典型的には、対照(例えば、候補薬剤が投与されていない遺伝子導入ハエまたは野生型ハエ)との比較によって明らかにされる。ハエについては、候補薬剤は一般には、ハエが培養液を餌とするように、薬剤をハエの養分培養液(例えば、さらなる栄養剤を伴う水、水溶液など)に混合し、培養液をハエ(幼虫または成体のハエのいずれか、通常の場合には成体のハエ)の存在下に置くことによって経口投与される。薬剤を他の生物に投与するための様々な方法が当業者には容易に利用可能である。一般に、多数のアッセイ混合物が、候補薬剤の様々な濃度に対する示差的な応答を得るために、種々の薬剤濃度と同時に処理される。典型的には、これらの濃度の1つが陰性コントロールとして役立つ(すなわち、化合物なし)。好ましい実施形態において、ハイスループットスクリーニングプロトコルが用いられ、この場合、多数の候補化合物が、多数の生物を使用して同時に試験されるる。「多数」によって、複数が意味され、その場合、複数は少なくとも10〜50を意味し、通常の場合には少なくとも100を意味し、より通常の場合には少なくとも1000を意味するが、数は10,000または50,000またはそれ以上であってもよく、しかし、多くの場合、5000を超えない。
本発明の方法は、様々な異なる潜在的に殺虫性の候補化合物をスクリーニングすることにおいて使用が見出される。候補化合物には、数多くの化学クラスが包含され、だが、典型的には、候補化合物は有機分子であり、好ましくは、分子量が50ダルトンを超え、2,500ダルトン未満である小さい有機化合物である。候補化合物は、タンパク質との構造的相互作用(具体的には、水素結合形成)のために必要な官能基を含み、典型的には、アミン基、カルボニル基、ヒドロキシル基またはカルボキシル基を少なくとも含み、好ましくは、これらの官能化学基の少なくとも2つを含む。候補化合物は、多くの場合、上記官能基の1つまたは複数により置換された環状炭素構造もしくは複素環構造および/または芳香族構造もしくは多環芳香族構造を含む。候補化合物はまた、ペプチド、糖類、脂肪酸、ステロイド、プリン系化合物、ピリミジン系化合物、それらの誘導体、構造的アナログまたは組合せ(これらに限定されない)をはじめとする生体分子の中に見出される。
候補化合物は、合成化合物または天然化合物のライブラリーを含めて、広範囲の様々な起源から得られる。例えば、数多くの手段が、ランダム化されたオリゴヌクレオチドおよびオリゴペプチドの発現を含めて、広範囲の様々な有機化合物および生体分子のランダム合成および制御された合成のために利用可能である。あるいは、細菌抽出物、菌類抽出物、植物抽出物および動物抽出物の形態での天然化合物のライブラリーが入手可能であり、または、容易に作製される。加えて、天然または合成的に作製されたライブラリーおよび化合物は、従来の化学的手段、物理的手段および生化学的手段によって容易に改変され、また、コンビナトリアルライブラリーを作製するために使用することができる。公知の薬理学的化合物を、構造的アナログを作製するために、方向付けされた化学的修飾またはランダムな化学的修飾(例えば、アシル化、アルキル化、エステル化、アミド化など)に供することができる。可能性のある新しい殺虫剤化合物または治療剤化合物はまた、合理的薬物設計またはコンピューターモデル化などの方法を使用して創出することができる。
上記のスクリーニング方法は、候補化合物を殺虫剤としてのその効力(および安全性)について評価する多段階スクリーニングプロセスの一部である場合がある。本発明の多段階スクリーニングプロセスにおいて、候補化合物または化合物ライブラリーは本発明の遺伝子導入生物におけるスクリーニングに供される。加えて、事前のインビボスクリーニング工程を用いることができ、この場合、化合物は最初に、殺虫性薬剤としてのその可能性についてのインビトロスクリーニングアッセイに供される。任意の通常のインビトロスクリーニングアッセイを用いることができ、この場合、様々な好適なインビトロスクリーニングアッセイが当業者には公知である。
本発明によってまた、本発明のスクリーニング方法を行う際に使用されるキットが提供される。本発明のキットは、本発明の生物、または、そのような生物を作製するための手段(例えば、本発明のオスの生物およびメスの生物)、必要不可欠な遺伝子(例えば、トランスジーン、トランスポザース遺伝子、GAL4など)を有するベクターを含む。ハエは適切な容器(例えば、バイアル)で飼育することができる。本発明のキットはまた、動物のための栄養培養液(例えば、ショウジョウバエの培養液)を含むことができる。殺虫剤バイオアッセイによるショウジョウバエ集団における抵抗性についてのPCRに基づくモニターリングの直接的な比較を利用するスクリーニング方法が当業者には利用可能である。Aronstein, K.ら(1993)。
ショウジョウバエのニコチン性アセチルコリンα−6サブユニットのクローニング
ポリA+mRNAを、FastTrack2.0 mRNA単離キット(Invitrogen、Carlsbad、CA)を使用して凍結ショウジョウバエの頭から単離した。ショウジョウバエの頭(0.326g)および15mlの溶解緩衝液をDounceホモジナイザーに加え、10ストロークを使用して、溶解を達成させた。続いて、キットの説明書に従い、最終的なmRNAペレットを25μlの溶出緩衝液に再懸濁した。A260/A280の読み取りを、200μlの溶出緩衝液における5μlのmRNAを使用して行った。mRNA濃度は0.139μg/μlであり、総回収量は3.475μgであった。第1鎖cDNAを、Invitrogen cDNAサイクルキット(Invitrogen、Carlsbad、CA)を20μlの反応液および3.5μlのmRNA(0.4865μgのmRNA)において使用して、かつ、キットの説明書に従って合成した。PCRを、下記のように、FailSafe PCRキット(Epicentre、Madison、WI)を使用して25μlの反応液において行った:1μlのcDNA、2.5μlの、配列番号3および配列番号4を有する各プライマー(10pM/μlで)、0.5μlのFailSafe酵素、12.5μlの2X FailSafe PCRミックス(A〜L)、および、5μlのH2O。反応を下記のようにPerkinElmer Cetus DNAサーマルサイクラーにおいて行った:95℃/30秒、55℃/30秒および72℃/2分を30サイクル。各反応液の5μlを1パーセントアガロース/TBEゲルで分析した。プレミックスA、DおよびGを使用する反応では、予想された1497bpの生成物が生じた。各反応液の残る20μlを調製用の1パーセントアガロースゲルで泳動し、生じたバンドを切り出し、Qiaex II(Qiagen、Valencia、CA)を使用してゲルから精製した。精製されたPCR生成物を製造者(Invitrogen、Carlsbad、CA)によって記載されるようにpCR2.1−TOPOに連結し、TOP10細胞に形質転換した。プラスミドDNAを、Wizard Plus SVミニプレップキット(Promega、Madison、WI)を使用して、それぞれのPCR生成物について18個のクローンから単離した。プラスミドDNAを、3つの制限パターン(932bp+565bpの2つのフラグメント、1497bpの1つだけのバンドまたはわずかにより大きい1つだけのバンド)をもたらすEcoRIによる消化によって分析した。数個のクローンを配列決定することにより、エキソン3およびエキソン8の変化しうるスプライシングから生じるスプライス変化体が明らかにされた(Grausoら、2002)。EcoRI消化において特定された1つだけの制限フラグメントは、RNAi編集の結果として内部のEcoRI部位が存在しないことの結果である(Grausoら、2002)。ショウジョウバエの30D遺伝子をpCR2.1−TOPOからBamHIフラグメントとして取り出し、標準的な分子技術を使用してpAcP(+)IE1−3(Novagen、Madison、WI)およびpGH19(Limanら、1992)にサブクローン化した。
ショウジョウバエのニコチン性アセチルコリンα−5サブユニットのクローニング
第1鎖cDNAの合成を、Superscript II第1鎖合成キット(Invitrogen、Carlsbad、CA)と、テンプレートとしてのショウジョウバエの胚mRNA(Clontech、Palo Alto、CA)とを使用して行った。PCRを、下記のサイクル処理条件とともに、配列番号5および配列番号6を有するプライマーと、2X反応ミックスA〜Fとを用いてFailSafe PCRキット(Epicntre、Madison、WI)を使用して行った:95℃/3分間の変性、その後、95℃/30秒、55℃/30秒、72℃/2.5分の30サイクル、その後、72℃での最後の10分間の伸長。予想された2440bpの生成物が反応Aおよび反応Dにおいて増幅された。PCR生成物をpCRBluntII−TOPOに連結し、数個のクローンを配列決定した。NCBIアクセション番号AF272778から3つだけの塩基変化を含有する1つのクローンが特定された。これらのヌクレオチド変化は、603位(開始Mに対して)におけるI−Vおよび795位におけるI−Mである2つのアミノ酸置換をもたらしていた(これらはともに保存的アミノ酸置換である)。この遺伝子をpCRBluntII−TOPOからXbaIフラグメントとして切り出し、標準的な分子技術を使用してpAcP(+)IE1−3およびpGH19にサブクローン化した。
ショウジョウバエのニコチン性アセチルコリンα−7サブユニットのクローニング
第1鎖cDNAを、Superscript II第1合成キット(Invitrogen、Carlsbad、CA)を使用してショウジョウバエ幼虫のmRNA(Clontech、Palo Alto、CA)から合成した。PCRを、ThermalAce PCRキット(Invitrogen、Carlsbad、CA)、配列番号7および配列番号8を有するプライマー、ならびに、グラジエントブロックを使用する下記のサイクル処理条件を使用して行った:95℃/3分、その後、95℃/30秒、45.5℃、53.3℃または60℃/30秒、74℃/2分の30サイクル、その後、74℃での10分間の伸長。それぞれの反応が、予想された1633bpの生成物をもたらした。60℃のアニーリング温度の反応から得られた生成物をpCRBluntII−TOPOに連結し、正しいサイズの挿入体を含有するクローンを特定し、配列決定した。CからTへの1塩基変化が特定され、これは、ATG開始に対して1378位において、早まった停止コドンをもたらしていた。QuickChange II部位特異的変異誘発キット(Stratagene、La Jolla、CA)を使用して、そのTをCに戻した。最終的な配列は、アミノ酸311においてトレオニンになったリシンと、AJ554210クローンでのようなVSGVRGの代わりにFPのアミノ酸配列を有するC末端とを除いて、NCBIアクセション番号AJ554210の配列と非常に一致していた。この遺伝子をpCRBluntII−TOPOからXbaIフラグメントとして切り出し、標準的な分子技術を使用してpAcP(+)IE1−3およびpGH19にサブクローン化した。
C.elegansのric−3のクローニング
C.elegansのric3遺伝子に対応するPCR生成物をpCR2.1−TOPOに連結し、正しい(1137bp)挿入体を含有するクローンを特定した。PCR増幅を、FailSafe PCRキットと、BamHI部位を付加するための配列番号9および配列番号10を有するプライマーとを使用して行った。得られたPCR生成物をpCR2.1−TOPOにクローン化し、正しいサイズの挿入体を含有する数個のクローンを配列決定した。NCBIアクセション番号NM068898と同一の配列を有するクローンを特定した。この遺伝子をp2.1−TOPOからBamHIフラグメントとして切り出し、標準的な分子技術を使用してpAcP(+)IE1−3およびpGH19にサブクローン化した。
機能的アッセイ
宿主細胞の調製
アフリカツメガエル(Xenopus 1、Ann Arbor、MI.;Nasco、Fort Atkinson、WI.)を2g/lのトリカインメタンスルホナートの溶液に浸けることによって麻酔し、卵母細胞をカエルから手術により取り出し、96mM NaCl、2mM KCl、1.8mM CaCl2、1mM MgCl2、5mM HEPES、2.5mMピルビン酸Na、100ユニット/mlのペニシリンおよび0.1mg/mlのストレプトマイシンからなる培養液(pH7.6)に入れた。卵母細胞を、見かけ上はCa2+を含まないプロテアーゼ処理溶液に分散して、卵母細胞の濾胞除去を行った。プロテアーゼ処理溶液は、88mM NaCl、2.5mM KCl、1mM MgCl2、5mM HEPES、2.5mMピルビン酸Na、100ユニット/mlのペニシリンおよび0.1mg/mlのストレプトマイシン(pH7.6)、および、1.5mg/mlのコラゲナーゼIA(Sigma Chemical Co.、St.Louis、MO)からなった。単離後、卵母細胞を徹底的に洗浄し、上記のCa2+含有培養液に戻し、18℃で貯蔵した。
ツメガエル卵母細胞への注入のためのcRNAの合成
cRNAの合成を下記のように行った:プラスミドDNAを下記の制限酵素の1つで線状化した:NotI、XhoIまたはNheI。続いて、線状化DNAを、T7 mMessage mMachineキット(Ambion、Austin、TX)を製造者の説明書に従って使用するcRNA合成のためのテンプレートとして使用した。
核酸分子の導入
ツメガエルの卵母細胞へのcRNAを注入するためのマイクロピペットをDMZ−Universal Puller(Zeitz−Instruments、Munchen、ドイツ)で引っ張った。注入されるcRNAを陰圧によりマイクロピペットに引き入れた。約10ng〜50ngのcRNAを、Nanoject II卵母細胞インジェクター(Drummond Scientific Co.、Broomall、PA)を使用して陽圧を加えることによって卵母細胞に注入した。核酸を下記のように卵母細胞に導入した:(1)ニコチン性アセチルコリン受容体α−6サブユニット(30D);(2)ニコチン性α−5受容体サブユニット(34E);(3)ニコチン性アセチルコリン受容体α−6サブユニットおよびC.elegans ric−3(30Dおよびric−3);(4)ニコチン性α−5受容体サブユニットおよびC.elegans ric−3(34Eおよびric−3);(5)ニコチン性アセチルコリン受容体α−6サブユニットおよびニコチン性α−5受容体サブユニット(30Dおよび34E);および(6)ニコチン性アセチルコリン受容体α−6サブユニット、ニコチン性α−5受容体サブユニットおよびC.elegans ric−3(30D、34Eおよびric−3)。
電位固定分析
電位固定記録のためのコントロール外部溶液は、88mM NaCl、1mM KCl、0.41mM CaCl2、2.4mM NaHCO3、0.3mM Ca(NO3)2、0.82mM MgSO4・7H2Oおよび15mM HEPESからなった(pH7.6)。記録用チャンバーは、重力により供給される灌流システムにより連続的に灌流された。ニコチン(1mM)を外部溶液に加え、その後、30秒間にわたって灌流液に加えた。その後、ニコチンを、少なくとも10分間、外部溶液から洗い流した。その後、スピノシンAをジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解し、その後、外部溶液に10μMの最終濃度で溶解し、その後、灌流液に60秒間にわたって加えた。その後、スピノシンAを外部溶液から洗い流した。DMSOの最終濃度は0.1パーセント(v/v)を一度も超えなかった。
電位固定記録を注入後1日〜5日で行った。一部の記録を、OC−725C Oocyte Clamp(Warner Instruments、Hamden、CT)を使用して手作業により行い、その一方で、ほとんどが、Roboocyte Automated Oocyte Recording System(Multichannel Systems、Reutlingen、ドイツ)を使用して行われた。手動記録については、1MΩ〜5MΩの最終抵抗を有する記録用微小電極をDMZ−Universal Puller(Zeitz−Instruments、Munchen、ドイツ)により製造し、3mM KClで満たした。標準的な2電極電位固定技術を使用して、ニコチンまたはスピノシンAの適用に対する応答での電流を記録した。卵母細胞を−60mVに電位固定し、ニコチンまたはスピノシンAの適用により誘導される電流をピーク振幅で測定した。データを上記の増幅器により増幅し、AcqKnowledgeハードウエア/ソフトウエア(BIOPAC Systems,Inc.、Santa Barbara、CA)またはRoboocyte Automated Oocyte Recording System(ソフトウエア(Multichannel Systems、Reutlingen、ドイツ)のいずれかを使用してコンピューターに記録した。
結果および考察
結果を下記の表1に示す。
「−」は、無視できるほどの電流が誘導されたことを示す。
「+」は小さい振幅の電流を示す。
「++」は中程度の振幅の電流を示す。
「++++」は大きな振幅の電流を示す。
「無視できる」、「小さい」、「中程度」および「大きい」の記述子は、この場合に示されるデータセットにおける相対的な用語である。
上記の表1から理解され得るように、30D(染色体2Lにおいて30Dに位置するニコチン性アセチルコリン受容体α−6サブユニット)のcRNAが単独で注入された卵母細胞はニコチン応答またはスピノシンA応答のいずれも示さなかった。34E(染色体2Lにおいて34Eに位置するニコチン性アセチルコリン受容体α−5サブユニット)のcRNAが単独で注入されたか、または、34Eおよびric−3の両方のcRNAが注入された卵母細胞は、小さい振幅のニコチン応答を示したが、スピノシンA応答は無視できるほどであった。30Dおよびric−3のcRNAが注入された卵母細胞は、ニコチンまたはスピノシンAのどちらに対しても小さい振幅の応答を示した。このことは、ニコチン性アセチルコリン受容体α−6サブユニットをパートナータンパク質(すなわち、アクセサリータンパク質)と一緒に発現させることにより、α−6受容体に影響を及ぼす能力を有する化学的薬剤が検出可能であることを明白に示している。34Eおよび30DのcRNAが注入された卵母細胞は、ニコチンまたはスピノシンAのどちらに対しても中程度の振幅の応答を示した。このことはさらに、ニコチン性アセチルコリン受容体α−6サブユニットをパートナータンパク質(すなわち、イオンチャネルサブユニット)と一緒に発現させることにより、α−6受容体に影響を及ぼす能力を有する化学的薬剤が検出可能であることを明白に示している。34E、30Dおよびric−3のcRNAが注入された卵母細胞は、ニコチンまたはスピノシンAのどちらに対しても大きい振幅の応答を示した。このことはさらに、ニコチン性アセチルコリン受容体α−6サブユニットを多数のパートナータンパク質と一緒に発現させることにより、α−6受容体に影響を及ぼす能力を有する化学的薬剤が検出可能であることを明白に示している。
結合アッセイ
昆虫細胞におけるニコチン性アセチルコリン受容体サブユニットの発現
バキュロウイルス媒介の発現のために、染色体2Lにおいて30Dに位置するニコチン性アセチルコリン受容体α−6サブユニットに対する遺伝子を、標準的な分子クローニング技術を使用してバキュロウイルス転移ベクターpAcP(+)IE1−3(Novagen、Madison、WI)にクローン化した。組換えウイルスを作製するために、Sf9細胞を2mlのSf900II SFM(Invitrogen、Carlsbad、CA)において6ウエル培養プレートに8x105細胞/ウエルで播種し、27℃で1時間にわたって接着させた。12x75mmのポリスチレンチューブにおいて、DNA/脂質混合物を、86μlの滅菌水、5μlの、0.1μg/μlでの転移ベクター、5μlのBacPAK6 Bsu36I線状DNA(Clontech、Palo Alto、CA)、および、4μlのBacfectin(Clontech、Palo Alto、CA)を一緒にすることによって調製し、この混合物を室温で15分間インキュベーションした。DNA/脂質混合物をインキュベーションしている間に、培地を接着細胞から除き、1.5mlの新鮮な培地で置き換えた。その後、DNA/脂質混合物を、穏やかにゆすりながら滴下様式で細胞に加え、細胞混合物を27℃で5時間インキュベーションした。その後、さらに1.5mlのSf900II SFMを加え、細胞混合物をさらに4日間〜5日間27℃でインキュベーションした。細胞混合物を卓上遠心分離機において1000rpmで5分間遠心分離して、細胞破片を除いた。組換えウイルスを含有する上清(トランスフェクション培地)を清浄なチューブに移し、4℃で貯蔵した。
組換えウイルスを増幅するために、1x106細胞/mlの密度でのSf9細胞の50mlを125mlの使い捨て三角フラスコに加えた。その後、1mlのトランスフェクション培地を細胞に加え、混合物を27℃および140rpmで48時間インキュベーションした。48時間後、トランスフェクション混合物を卓上遠心分離機において1000rpmで5分間遠心分離した。上清を清浄なフラスコに移し、P1ウイルスストックと称した。ニコチン性アセチルコリン受容体サブユニットの発現のために、50mlのSf9細胞を2x106細胞/mlの密度で125mlの三角フラスコに播種した。1mlのP1ウイルスストックを細胞に加え、フラスコを27℃において140rpmで24時間インキュベーションした。100μlのサンプルを、ニコチン性アセチルコリン受容体サブユニットの発現を確認するためのウエスタンブロット分析のためにフラスコから取り出し、残りの培養物を結合アッセイにおいて使用した。
D.Mel−2細胞における発現のための30D nAChRα6のクローニング
以前にクローン化されたショウジョウバエnAChRα−6遺伝子を、SpeI部位を5’末端および3’末端において付加するためのプライマー(配列番号12および配列番号13)を使用してPCR増幅した。配列番号12のプライマーは、D.Mel−2細胞における発現を高めるためにKozak翻訳開始配列を5’末端に付加した。得られた生成物をpCR2.1−TOPO(Invitrogen、Carlsbad、CA)に連結し、配列決定した。配列は、プライマーにより導入された変化を除いて、nAChR 30Dについて以前に決定された通りであった。この遺伝子をSpeIによりpCR2.1−TOPOベクターから切り出し、SpeIにより線状化され、エビのアルカリホスファターゼにより処理されたpMT/V5−HisAおよびpIB/V5−HisAの両方に連結した。それぞれについて正しいクローンを制限消化および配列決定によって特定し、確認した。プラスミドを、Qiagen EndoFree Maxiキット(Qiagen、Valencia、CA)を使用して拡大した。
D.Mel−2細胞における発現のためのC.elegans ric3のクローニング
以前にクローン化されたC.elegans ric3遺伝子を、Kozak翻訳開始シグナルを付加するためのプライマー(配列番号14および配列番号10)を使用してPCR増幅した。得られたPCR生成物をpCR2.1−TOPOに連結し、配列決定した。配列は、導入されたKozak配列を除いて、以前に記載された通りであった。この遺伝子をBamHIフラグメントとして単離し、BamHIにより切断され、エビのアルカリホスファターゼにより処理されたpIB/V5−HisAおよびpMT/V5−HisAに連結した。正しいクローンを制限消化および配列決定によって特定し、確認した。プラスミドを、Qiagen EndoFree Maxiキットを使用して拡大した。
D.Mel−2細胞におけるショウジョウバエnAChRα6の一過性発現
D.Mel−2細胞を、抗生物質/抗菌剤を含有するショウジョウバエSFMにおいて75cm2のフラスコに1.9x107細胞/フラスコで播種し、27℃で一晩インキュベーションした。トランスフェクションミックスを、1630μlの滅菌水、40μgのpIB/V5−HisA/ric3、40μgのpIB/V5−HisA/30Dおよび250μlのCellFectinを混合することによって12x75mmのポリスチレンチューブにおいて調製した。これらの試薬を穏やかに混合し、室温で15分間インキュベーションした。トランスフェクションミックスをインキュベーションしている間に、細胞を、抗生物質を含まない10mlの新鮮なショウジョウバエSFMにより洗浄し、その後、この培地を細胞から除き、抗生物質を含まない6mlの新鮮なショウジョウバエSFMと取り替えた。トランスフェクションミックスに、抗生物質を含まない4mlのショウジョウバエSFMを加え、その後、これをフラスコに移した。これらの試薬をピペッティングによって穏やかに混合し、その後、27℃で一晩インキュベーションした。
D.Mel−2細胞におけるショウジョウバエnAChRα6の安定的発現
D.Mel−2細胞をInvitrogen(Carlsbad、CA)から購入し、50mlの体積を使用して使い捨ての125ml振とうフラスコで成長させた。細胞を、5ml/Lの抗生物質−抗菌剤(100X)(Gibco、Carlsbad、CA)を含有するショウジョウバエSFMにおいて1週間に2回、3x105細胞/mlに継代培養した。D.Mel−2細胞を5x105細胞/mlの細胞密度で12ウエルプレートに播種し、27℃で一晩インキュベーションした。12x75mmのポリスチレンチューブにおいて、6μgのpIB/V5−HisA/ric3、82μlの滅菌H2O、および、12μlのCellFectin(Invitrogen、Carlsbad、CA)を加えた。サンプルを穏やかに混合し、室温で15分間インキュベーションした。トランスフェクションミックスをインキュベーションしている間に、1つの細胞ウエルからの培地を取り出し、抗生物質を含まない1mlの新鮮な培地と取り替えた。15分後、培地を細胞から除いた。このトランスフェクションミックスに0.5mlの培地(抗生物質なし)を加えた。その後、この溶液を細胞に加えた。混合物を27℃で48時間インキュベーションした。48時間後、細胞を、細胞スクレーパーを使用してプレートから掻き取り、6ウエルプレートの4つのウエル(それぞれが、抗生物質を伴う2mlのショウジョウバエSFMを含有する)に分けた。細胞を27℃で1時間にわたって接着させた;培地を除き、25μg/mlのブラスチシジンS(Invitrogen、Carlsbad、CA)を含有する2mlの新鮮な培地と取り替えた。細胞を27℃で5日間インキュベーションした。5日後、細胞をウエルからゆるく掻き取り、1つのチューブにまとめた。細胞を卓上遠心分離機において600rpmで遠心分離した;培地を除き、細胞を、25μg/mlのブラスチシジンSを含有する新鮮なショウジョウバエSFMにおける50mlの振とう培養液に再懸濁した。細胞を27℃/140rpmでインキュベーションした。細胞を3x105細胞/mlの細胞密度に1週間に2回、継代培養した。4週間後、選抜を10μg/mlのブラスチシジンSに低下した。選抜下での3ヶ月の成長の後、12ウエルプレートに5x105細胞/ウエルで播種し、細胞を27℃で一晩インキュベーションした。下記の試薬を3つの12x75mmのポリスチレンチューブのそれぞれに加えた:2μgのpMT/V5−HisA/30D、0.15μgのpCoHygro(Invitrogen、Carlsbad、CA)(発現プラスミド:選抜プラスミドの40:1の比率)、89μの滅菌H2O、および、12μlのCellFectin。サンプルを穏やかに混合し、室温で15分間インキュベーションし、その後、上記で記載されたようにトランスフェクションした。24時間後、トランスフェクションミックスを含有する培地を除き、抗生物質を含有する1mlの新鮮な培地と取り替えた。インキュベーションを27℃でさらに24時間続けた。細胞を12ウエルプレート(3つのウエル)からゆるく掻き取り、2つの6ウエルプレートに分けた。細胞を6時間にわたって接着させ、その時点で、培地を、200μg/ml、150μg/ml、100μg/mlまたは50μg/mlのヒグロマイシンBを含有する2ml/ウエルの新鮮な培地と取り替えた。インキュベーションを27℃で続けた:4日〜5日毎に、培地を、ヒグロマイシンを含有する培地と4日〜5日毎に取り替えた。プレートにおける2週間の選抜の後、200μg/mlの選抜からの細胞をゆるく掻き取り、その後、穏やかにペレット化し、200μg/mlのヒグロマイシンBを含有する25mlの新鮮な培地に再懸濁し、その後、125mlの振とうフラスコに入れた。インキュベーションを27℃/140rpmで続け、細胞は、選抜下で細胞が拡大し続けることが許された。30D nAChRの発現を誘導するために、細胞を卓上遠心分離機において630rpmで5分間遠心分離した。細胞を、ヒグロマイシンBを含まない新鮮な培地に2x106細胞/mlで再懸濁し、硫酸銅を600μMの最終濃度で加えた。細胞を27℃/140rpmで24時間インキュベーションした。
形質転換細胞の調製
結合アッセイのために、昆虫細胞およびcRNA注入のツメガエル卵母細胞を下記のように調製した:昆虫細胞を室温での遠心分離機で穏やかに遠心分離した。上清をデカンテーションにより除き、ペレットを、200mMスクロース、10mMリン酸緩衝液、1mM EDTA、1mM PMSFをpH7.2〜7.4で含有する冷たい貯蔵緩衝液において2回洗浄した。最終ペレットを冷たい貯蔵緩衝液で希釈し、小分けした。これらの細胞アリコートを結合アッセイでの使用のために−80℃で貯蔵した。
ツメガエルの卵母細胞は電気生理学的アッセイについて以前に記載されたように注入され、結合アッセイのために無傷のままで使用された。
放射性リガンド排除結合アッセイ
2つの主要な放射性リガンドを結合アッセイで使用した:従来のα7放射性リガンドである[3H]メチルリカコニチン(MLA)、および[3H]ジヒドロスピノシンA(DHSA)。両方の放射性リガンドについて、使用された結合緩衝液は10mMリン酸ナトリウム(7.2〜7.4)からなった。D.Mel−2細胞懸濁物を使用するすべての実験が、50μlの細胞懸濁物を用いて行われた。ツメガエル卵母細胞の結合アッセイのために、卵母細胞をプールし(2個〜5個の卵母細胞)、1mlの結合緩衝液に移した。この後、結合緩衝液を穏やかに吸引し、新鮮な結合緩衝液と2回取り替えて、何らかの残留する卵母細胞水浴媒体を洗い流した。卵母細胞のそれぞれのプールに加えられた緩衝液の最終体積は50μl〜100μlであった。標識されていないニコチンおよびスピノシンAを40mMの濃度で100パーセントのDMSOおよび100パーセントのエタノールにおいてそれぞれ配合し、(必要ならば)室温で超音波処理した。その後の希釈物を結合緩衝液において作製した。溶媒の最終濃度はそれぞれのウエルにおいて0.1パーセント未満で維持された。25μlの標識されていない競合化合物を細胞懸濁物または卵母細胞に加えた。細胞または細胞抽出を、10℃([3H]DHSAについて)で、また、[3H]MLAについては室温で化合物と15分間〜30分間プレインキュベーションした。サンプルを、プレート振とう機を使用して穏やかに振とうした。この混合物に25μlの1nM〜10nMの[3H]MLAまたは[3H]DHSAを100ulの総体積の結合緩衝液において加えた。プレート振とう機を使用して30分間〜90分間穏やかに振とうしながら、反応を96ウエルの浅いウエルのマイクロタイタープレートにおいて三連で行い、10℃([3H]DHSAについて)で、また、[3H]MLAについては室温でインキュベーションした。細胞抽出物については、結合放射能および遊離放射能の分画物を、TomTec(CT)96ウエルセルハーベスターを使用してGF/Cガラス繊維フィルターマットでの穏やかな真空によって分離した。[3H]DHSAを利用するそのようなアッセイについては、フィルターマットを、非特異的な結合を減らすために、0.5パーセントのPEI(w/v;脱イオン水に希釈)に1時間〜2時間、事前に浸けた。しかしながら、[3H]MLAアッセイの場合には、フィルターマットを、2mg/mlのBSAを含有する10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.2〜7.4)で短時間、前処理した。それぞれのサンプルを、氷冷した結合緩衝液で3回、素早く洗浄した。フィルターマットを60℃でオーブンにおいて乾燥し、サンプルからの放射能を、Meltilex固体シンチラント(PerkinElmer、フィンランド)を使用してWallac MicroBeta Counter(Wallac、CT)により3分間にわたって計数した。
全卵母細胞結合の場合、反応を、氷冷した結合緩衝液の添加によって停止させ、その後、2回の吸引工程を間での結合緩衝液による洗浄とともに行った。卵母細胞を、7mlのシンチレーションカクテル(UltimaGold MV、Packard Biosciences、CT)を含有するシンチレーションバイアルに移し、ボルテックスし、その後、液体シンチレーションカウンター(Tri−carb 2900TR、Packard Biosciences、CT)で3分間にわたって計数した。
結果および考察
表2.Dmα6による注入後3日での無傷のツメガエル卵母細胞における[
3H]MLA結合
表2に示される結果は、ニコチンの存在下で観測される[
3H]MLAの著しい排除(72パーセント)に起因するDα6−ニコチン性受容体のニコチン様性質を明らかにしている。これらの卵母細胞データは卵母細胞の機能的データ(すなわち、電流の誘導)と相関しており、ツメガエルの卵母細胞で発現させたDα6−ニコチン性受容体におけるスピノシンの影響についての証拠を提供している。加えて、これらのデータは、ツメガエルの卵母細胞で発現させたDα6−ニコチン性受容体における[
3H]MLAの結合とのスピノシンAの相互作用を初めて明らかにしている。加えて、Sf9昆虫細胞およびS2昆虫細胞で一過性に発現させたDα6−ニコチン性受容体における[
3H]MLAの用量依存的な排除が観測されており、このことは、そのようなアッセイが、α6−ニコチン性受容体と相互作用する新規な化学物質を特定するためのハイスループットスクリーニングのために使用され得ることを示唆している。
下記の図3に示されるように、Dα6およびC.elegansのric3を発現するD.Mel−2細胞における[
3H]DHSA結合は、[
3H]MLAに関して認められる全体的な結合よりも大きく改善される。
加えて、[3H]DHSAを使用して観測されるD.Mel−2細胞での薬理学は、ムスカリン様薬剤(例えば、ムスカリンおよびアトロピンなど)によるのではなく、ニコチンによる排除によって明らかにされるように、事実上、ニコチン様である。従来のニコチン様アンタゴニスト(例えば、MLAおよびα−ブンガロトキシンなど)による[3H]DHSA結合の排除がより高濃度で明らかにされ得るが、この受容体複合体に対するこれらのリガンドの全体的な親和性は比較的不良である。他のニコチン様リガンド(例えば、イミダクロプリド、エピバチジン、チアメトキサム、カルバミルコリンおよびロベリンなど)は[3H]DHSA結合を著しく排除しなかった。この結合のさらなる特徴づけを、多数の公知のスピノシンアナログの影響をこの[3H]DHSA結合アッセイで評価することによって行った。著しい排除が糖(ラムノースまたはフロセミド)に関しては観測されなかった。また、スピノシンAのシュードアグリコン(pseudoagylcone)による著しい排除が認められなかった。スピノシンA、ジヒドロスピノシンA、および、スピノシンAの多数の生物学的に活性な誘導体が、[3H]DHSA結合の著しい排除を引き起こすことが示された。これらのデータは、この[3H]DHSA結合アッセイにより、スピノシンAの結合部位とのリガンドの相互作用が予測され、従って、この[3H]DHSA結合アッセイは、構造活性相関を明らかにするために使用することができるという結論をさらに支持している。さらに、これらのデータは、このアッセイ/受容体組合せが、スピノシン標的部位と相互作用する新規な薬剤の発見において有用であり得ることを示唆している。
ショウジョウバエ30D特異的(ニコチン性アセチルコリン受容体α−6サブユニット)ポリクローナル抗体の作製
Vector NTiプログラムのアラインメント特徴を使用して、すべての発表された昆虫のニコチン性アセチルコリン受容体サブユニット配列をアラインメントした。30Dに特有である30Dコード領域のアミノ酸367〜380に対応する15アミノ酸のペプチドが特定された。配列番号11のペプチド配列を、ペプチド特異的なポリクローナル抗体の作製のためにZymed Laboratories Inc.(San Francisco、CA)に付託した。宿主細胞におけるニコチン性α−6受容体サブユニットの発現を、この30D特異的抗体をウエスタンブロットにおける一次抗体として使用して確認した。この30D特異的抗体は、ニコチン性α−5受容体サブユニットまたはニワトリのα−7受容体サブユニットを発現する宿主細胞から単離されたタンパク質とは反応しなかった。
本発明の生物
スピノシンA抵抗性のキイロショウジョウバエを2つの方法によって選抜した。1つの方法では、遺伝子型cn bw dpのホモ接合性のオスのハエを集め、メスの非存在下で2日〜5日放置した。オスを2時間〜3時間絶食させ、その後、1パーセントのスクロース(w/v)における変異原エチルメタンスルホナート(EMS)の40mM〜50mMの溶液を約16時間与えた。EMS処理の後も生存し続けたオスを、ホモ接合状態においてスピノシンAに対する抵抗性を付与するニコチン性アセチルコリンα−6受容体サブユニットのヌル対立遺伝子についてホモ接合性であるメスと、または、遺伝子型CyO/InGla(CyOはスピノシンAに対する抵抗性を付与する)のメスとのいずれかとかけ合わせた。このかけ合わせから得られた卵を成虫に発達させた。2日間〜5日間放置した後、成虫を、給餌、および、標準的なキイロショウジョウバエ給餌用媒体が、5パーセントのスクロースにおける100ppmのスピノシンAの溶液が含浸されたろ紙で覆われているバイアルにハエを置くことによる接触の両方によってスピノシンAにさらした。個々のハエを、ハエが化合物に対する36時間〜96時間の暴露の後でスピノシンAの毒性症状をほとんど示さなかったか、または、全く示さなかったならば、スピノシンAに対して抵抗性であるとしてスコア化した。推定されるスピノシンA抵抗性成虫を、第2染色体を同質遺伝子化するためにCyO/InGla遺伝子型のハエと個々に交雑させた。これらの交雑から得られる第2染色体についてホモ接合性の子孫をスピノシンA抵抗性について再び選抜した。
第2の方法では、スピノシンA抵抗性を付与するヌル対立遺伝子についてホモ接合性であり、かつ、hs−hid(heat-shock-head involution defective)トランスジーンをY染色体に有するキイロショウジョウバエのオスを、スピノシンA抵抗性を付与するヌル対立遺伝子についてホモ接合性であるメスとかけ合わせた。このかけ合わせから得られた卵を集め、発達させた。5日後〜6日後、発達中の幼虫を37℃で2時間置いた。この熱ショック処理により、hid遺伝子産物の異所性および致死性の発現がもたらされる。hs−hid構築物はY染色体で運ばれるので、この熱ショック処理の致死的影響はオスの幼虫に限定される。従って、メスの幼虫のみが成虫に発達する。この様式で集められた約13,000匹の未交尾のメスの成虫ハエを、以前に記載されたようにEMSにより変異処理されている4,000匹を超えるcn bw dpホモ接合性のオスとかけ合わせた。抵抗性の幼虫を、かけ合わせから得られた卵を集め、卵を、0.1ppmのスピノシンAを含有する培地にばらまくことによって選抜した。発達中の幼虫を3日後にスピノシンAに対する抵抗性についてスコア化した。抵抗性であるとしてスコア化された幼虫を、新鮮な培地を含有するバイアルに移し、スピノシンAの非存在下での発達を継続させた。出現する成虫を、第2染色体を同質遺伝子化するために遺伝子型CyO/InGlaのハエと交雑させした。この交雑から得られる第2染色体についてホモ接合性の子孫をスピノシンA抵抗性について再び選抜した。
スピノシンAに対する抵抗性を付与したキイロショウジョウバエのニコチン性アセチルコリンα−6受容体サブユニットをコードする約10個の変異対立遺伝子を、記載された2つの方法によって単離した。これらの対立遺伝子の分析により、いくつかの異なるタイプの変異が明らかにされた。これらには、早まった停止コドンを遺伝子配列に導入した変異、遺伝子配列によってコードされるポリペプチドにおける一アミノ酸の置換をもたらす変異、および、mRNAスプライシングに影響を及ぼした変異が含まれる。スピノシンAに対する抵抗性をもたらした導入されている早まった停止コドンの一例が、グルタミン26に対するCAAコドンが停止コドンTAAに変化した、NCBIアクセション番号NM205953を有するニコチン性アセチルコリン受容体α−6サブユニットにおける変異である。スピノシンAに対する抵抗性をもたらすアミノ酸置換の一例が、システイン168に対するTGCコドンがセリンのTCCコドンに変化した、NCBIアクセション番号NM205953を有するニコチン性アセチルコリン受容体α−6サブユニットにおける変異である。スピノシンAに対する抵抗性をもたらすmRNAスプライス部位変異の一例が、イントロン4の端部におけるスプライスアクセプター部位がTAGCGCからTAACGCに変異している、NCBIアクセション番号NM205953を有するニコチン性アセチルコリン受容体α−6サブユニットにおける変異である。
変異型ハエを使用する21−ブテニル−スピノシンのスクリーニング
Oregon野生型系統の10匹の成体キイロショウジョウバエ(5匹のオスおよび5匹のメス)と、スピノシン抵抗性系統の10匹の成体ハエとを1回の処理につき使用した。2組(これらは10匹からなる)を1回の処理につき準備した。スピノシンAおよび21−ブテニル−スピノシンアナログのストック液を2:1のアセトン:水において1000ppmで配合し、その後、要求される濃度に10パーセントのスクロースにおいて希釈した。バイアルには、綿ガーゼ(約1/4インチ)を介して500ulの処理液(またはコントロール用の溶媒)を入れ、ハエをそれぞれのバイアルに加え、綿栓により栓をした。ハエを、12:12の明暗サイクルとともに室温で維持しながら、処理後72時間モニターした。
結果
すべてのハエを処理後72時間で死亡について観測した。100ppmのスピノシンAまたは21−ブテニル−スピノシンでは、すべての野生型ハエが死亡を示した。同じ濃度において、著しい死亡率がスピノシン抵抗性ハエでは観測されなかった。用量応答データ(すなわち、LD50)は、スピノシンA抵抗性ハエは、野生型ハエと比較したとき、スピノシンAに対する抵抗性が少なくとも100倍大きかったことを示唆していた。加えて、スピノシンA抵抗性ハエは、21−ブテニル−スピノシン系化合物によって表される新しいクラスのスピノシン系化合物に対して(LD50に基づいて)100倍をこえる抵抗性であった。これらのデータは、スピノシンA α−6ニコチン性受容体サブユニットと相互作用する新規な化合物を発見するためのスクリーニングとしてのスピノシンA抵抗性ハエ(すなわち、標的部位変異体)の有用性を明らかにしている。
好ましい実施形態が本明細書中に示されており、また、詳しく記載されているが、様々な改変、付加および削除などを、本発明の精神から逸脱することなく行うことができ、従って、これらは、請求項において定義されるような本発明の範囲に含まれると見なされることは、関連技術分野の技能を有する当業者には明らかである。
本明細書で引用されたすべての刊行物および特許出願は、それぞれの個々の刊行物または特許出願が、参考として組み込まれることが具体的かつ個々に示されていたかのように参考として本明細書中に組み込まれる。上述の発明は、理解の明確化のために例示および例としていくらか詳しく記述されているが、いくつかの変化および改変が、添付された請求項の範囲の精神または範囲から逸脱することなく本発明に対して行われ得ることが、本発明の教示に照らして当業者には容易に明らかである。