以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。なお、本発明における「おむつ長手方向」とは、おむつの腹側と背側を結ぶ方向(おむつ展開時の前後方向)を意味し、「おむつ幅方向」とは長手方向と直交する方向(おむつ展開時の左右方向)を意味する。
〔紙おむつ1の構造〕
図1は本発明に係る使い捨て紙おむつ1の製品状態外観図であり、図2はその展開図、図3はその裏面図、図4は図2のIV−IV線矢視図、図5は図2のV−V線矢視図である。なお、図面の所要部位において接着部位を×印で明示している。
本発明に係る使い捨て紙おむつ1(以下、単に紙おむつという。)は、着用時に腹部とその両脇を覆う前身頃Fと着用時に臀部及び背部とその両脇を覆う後身頃Bと、これら身頃の間に位置する股間部とからなり、不織布などからなる透液性表面シート11と、ポリエチレン等からなる防漏シート12との間に、綿状パルプなどからなる吸収体13を介在させた吸収性本体10と、この吸収性本体10と一体的に接合され、少なくとも前身頃Fと後身頃Bとを構成するとともに、前身頃F及び後身頃Bのそれぞれの領域に離間して配置され、上層不織布及び下層不織布の間にウエスト部及び胴周り部に沿って多数の弾性伸縮部材が配置された外装シート20,30とから構成されている。また、これら後身頃用外装シート20と前身頃用外装シート30との間の股間部には、吸収性本体10の外面側に股間部用外装シート19を配設することが好ましい。そして、前記外装シート20,30の前身頃Fと後身頃Bとが両側部の接合部40、40において接合されることにより、ウエスト開口部及び左右一対のレッグ開口部が形成されたパンツ型となっている。
本発明に係る紙おむつ1は、前記外装シートが、上層不織布21A及び下層不織布21Bの間に少なくともウエスト部23及び胴周り部24に沿って多数の弾性伸縮部材26…、28…が配置され、前記吸収性本体10の後身頃B側に接合される後身頃用外装シート20と、上層不織布31A及び下層不織布31Bの間にウエスト部21及び胴周り部22に沿って多数の弾性伸縮部材25…、27…が配置され、前記吸収性本体10の前身頃F側に接合される前身頃用外装シート30とからなる2分割のシートで構成されている。
以下、前記吸収性本体10と前記外装シート20、30と前記股間部用外装シート19との構造、およびその組立構造並びに製造方法について順に説明する。
(吸収性本体10の構造)
先ず最初に、吸収性本体10の構造の一例について図2〜図4に基づいて詳述する。
吸収性本体10は、前述したように、不織布などからなる透液性トップシート11と、ポリエチレン等からなるバックシート12との間に、綿状パルプ等の繊維集合体と高吸収性ポリマー等の高吸収材などからなる吸収体13を介在させた構造とされ、体液を吸収保持するものである。前記吸収体13は、坪量が50〜600g/m2程度が好ましく、300〜500g/m2程度がより好ましい。
前記高吸収性ポリマーとしては、たとえばポリアクリル酸塩架橋物、自己架橋したポリアクリル酸塩、アクリル酸エステル−酢酸ビニル共重合体架橋物のケン化物、イソブチレン・無水マレイン酸共重合体架橋物、ポリスルホン酸塩架橋物や、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミドなどの水膨潤性ポリマーを部分架橋したもの等が挙げられる。これらの内、吸水量、吸水速度に優れるアクリル酸またはアクリル酸塩系のものが好適である。前記吸水性能を有する高吸収性ポリマーは製造プロセスにおいて、架橋密度および架橋密度勾配を調整することにより吸水力(吸収倍率)と吸水速度の調整が可能である。前記吸収体13における高吸収性ポリマーの含有比率は、30〜70%程度が適当であるが、これに限るものではない。また、図示例では平面形状を略方形状として成形されたものが使用され、その幅寸法は股間部への当たりによって着用者にゴワ付き感を与えない寸法幅となっている。
前記吸収体13は、被包シート14によって囲繞されている。被包シート14は、ティシュー等の紙材あるいは不織布等の透液性のシートを用いることができる。厚みは0.05〜0.5mm程度が好ましく、0.05〜0.2mm程度がより好ましい。坪量は5〜25g/m2程度が好ましく、5〜15g/m2程度がより好ましい。不織布を用いる場合は、スパンボンド法やSMS法により加工された不織布、特にSMS法により加工された不織布が、薄さと強度のバランスに優れる点で好適である。なお、被包シート14は、少なくとも吸収体13の表面側(肌当接面側)の面が撥水性でなければシートの親水度は特に問わない。
前記吸収体13の表面側(肌当接面側)を覆う透液性トップシート11としては、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維は、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、SMS法、サーマルボンド法、エアスルー法、ポイントボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。特には、表面側からの温度変化を感知し易くするため、スパンボンド法やSMS法により加工された不織布が薄さと強度のバランスに優れる点で好適であり、エアスルー法により加工された不織布は低坪量でも吸収が速やかでかつドライタッチ性に優れるため好適である。これらは1層からなるシートでも2層以上(同一種類あるいは複数種類)からなるシートでもよいが、合計の坪量としては、10〜40g/m2が好ましく、10〜22g/m2がより好ましく、10〜15g/m2が特に好ましい。厚みは1mm以下が好ましく、0.5mm以下がより好ましく、0.3mm以下が特に好ましい。透液性トップシート11に多数の透孔を形成した場合には、尿などが速やかに吸収されるようになり、ドライタッチ性に優れたものとなる。前記透液性トップシート11は、吸収体13の側縁部を巻き込んで吸収体13の裏面側まで延在している。
前記吸収体13の裏面側(非肌当接面側)を覆うバックシート12は、ポリエチレンまたはポリプロピレンなどの不透液性プラスチックシートが用いられるが、近年はムレ防止の点から透湿性を有するものが好適に用いられる。この遮水・透湿性シートは、たとえばポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン樹脂中に無機充填材を溶融混練してシートを形成した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートであり、仮にシート厚が同じであれば無孔シートよりも剛性が低下するため、柔軟性の点で勝るものとなる。具体的には、JIS Z0208に準じて測定された透湿度が3000〜12000g/m2・24hr、好ましくは6000〜12000g/m2・24hr、より好ましくは8000〜12000g/m2・24hrの不透液性シートを使用するのが望ましい。
一方、立体ギャザーBSを形成するギャザー不織布15は、折返しによって二重シートとした不織布が用いられ、前記透液性トップシート11によって巻き込まれた吸収体13の側縁部をさらにその上側から巻き込んで吸収体13の裏面側まで延在して接着されている。より具体的には、前記ギャザー不織布15は、紙おむつの長手方向中間部では、立体ギャザーBS形成部分を残し、幅方向中間部から吸収体13の裏面側に亘る範囲がホットメルト接着剤等によって接着され、また長手方向前後端部では、前記幅方向中間部から一方側端縁までの区間が吸収体13の裏面側に亘る範囲で接着されるとともに、前記立体ギャザーBSを形成する部分を吸収体13の上面部にて折り畳むようにしながらホットメルト接着剤等により接着している。
前記二重シート不織布によって形成されたギャザー不織布15の内部には、起立先端側部分に複数本の糸状弾性伸縮部材16、16…が配設されるとともに、吸収体13の側縁部近傍部位に糸状弾性伸縮部材17が配設され、さらに吸収体13の裏面がわ側部に糸状弾性伸縮部材18が夫々配設されている。前記先端部弾性伸縮部材16、16…は、主にはその弾性伸縮力により吸収体側縁部より突出する不織布部分を起立させて立体ギャザーBSを形成するためのものであり、前記糸状弾性伸縮部材17、18は、主にその弾性伸縮力により図6の製品状態図に示されるように、吸収体13の側部を屈曲させ、吸収体13の側部によって立体ギャザーBSの基端側部分を構成するためのものである。前記屈曲部から吸収体側縁までの吸収体13の起立高さHLは、5〜30mm、好ましくは20〜30mmとするのが望ましい。前記起立高さHLが5mm未満の場合には、短すぎて吸収体側部を屈曲させることが困難になるとともに、肌に対する十分なフィット性が確保できない。また、起立高さHLが30mmを超えると、起立長さが長過ぎて効果的に屈曲させることができないなどの問題が生じる。
前記糸状弾性伸縮部材17としては、通常使用されるスチレン系ゴム、オレフィン系ゴム、ウレタン系ゴム、エステル系ゴム、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンブタジエン、シリコン、ポリエステル等の素材を用いることができる。また、太さは470〜940dtex程度が適当であり、外側から見え難くするため、620dtex以下が好ましい。また、テンション(伸張率)は150〜350%として配設するのがよい。なお、糸状弾性伸縮部材に代えて、ある程度の幅を有するテープ状弾性伸縮部材を用いるようにしてもよい。
前述のギャザー不織布15を構成する素材繊維も前記透液性トップシート11と同様に、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンボンド法、SMS法、サーマルボンド法、エアスルー法、ポイントボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工方法によって得られた不織布を用いることができるが、特に前記温度変化物質30を含む層31を側部に配置する場合は側部からの温度変化を感知しやすくするため、また、ムレを防止するために、坪量を抑えて通気性に優れた不織布を用いるのがよい。具体的には、不織布の加工方法としてはスパンボンド法やSMS法によるものが薄さと強度のバランスに優れる点で好適であり、坪量としては、8〜30g/m2が好ましく、10〜22g/m2がより好ましく、10〜15g/m2が特に好ましい。厚みは0.5mm以下が好ましく、0.3mm以下がより好ましく、0.2mm以下が特に好ましい。さらに前記ギャザー不織布16については、尿などの透過を防止するとともに、カブレを防止しかつ肌への感触性(ドライ感)を高めるために、シリコン系、パラフィン金属系、アルキルクロミッククロイド系撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布を用いても良い。
(外装シート20、30の構造)
前記後身頃用外装シート20は、不織布などからなる2枚の上層不織布21A、下層不織布21Bと、その間に少なくとも、ウエスト開口部23回りに伸長下で配置固定されたウエスト部弾性伸縮部材26、26…と、胴周り部24の上下方向に間隔をおいて水平方向に沿って伸長下で配置固定された複数の腰回り弾性伸縮部材28、28…とを備えている。また、おむつ中間両側部に相当する部位に、夫々脚部開口を形成するための凹状の脚回りライン29、29が形成されている。
前記前身頃用外装シート30は、不織布などからなる2枚の上層不織布31A、下層不織布31Bと、その間に少なくとも、ウエスト開口部21回りに配置されたウエスト部弾性伸縮部材25、25…と、胴周り部22の上下方向に間隔をおいて水平方向に沿って配置された複数の腰回り弾性伸縮部材27、27…とを備えている。また、おむつ中間両側部に相当する部位に、夫々脚部開口を形成するための凹状の脚回りライン39、39が形成されている。
前記上層不織布21A、31A及び下層不織布21B、31Bの構成素材としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用い、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工方法にて得られた不織布を用いることができる。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型のバイコンポーネント不織布やサイドバイサイド型繊維、分割型繊維などの複合繊維による不織布を用いることができる。前記バイコンポーネント不織布は、熱融着性に優れたものとすることができるため好ましい。また、後段で詳述するように、外装シートに伸縮性を付与するため、上層不織布21A及び下層不織布21Bは、伸縮機能を持つ素材によって構成することができる。
前記上層不織布21Aと下層不織布21Bとは、少なくとも弾性伸縮部材を配置する領域の実質的に全面に亘って、ホットメルト接着剤等で接着されていることが好ましい。そうすることで、後述のように細かく切断する場合は、弾性伸縮部材の断片がシート間を移動することがなくなるため、好ましい。また、弾性伸縮部材の固定をさらに確実にするために、コントロールシーム塗布、オメガ塗布又はシュアラップ塗布といった、公知の直接塗布方式により弾性伸縮部材の周面にホットメルト接着剤を塗布し、接着力を強化しても良い。接着力を強化しすぎると、細かく切断された弾性伸縮部材が外装シートを細かく収縮させ、外観を損ねることがある。そのような場合には、接着力を強化する必要がある部位のみ、弾性伸縮部材にホットメルト接着剤を直接塗布すれば良い。
そして本発明では、前記後身頃用外装シート20及び前身頃用外装シート30はそれぞれ、所定の伸縮性付与手段によっておむつ長手方向に伸縮性が付与されている。このように外装シート20、30におむつ長手方向の伸縮性を付与するには、前記上層不織布21A、31A及び下層不織布21B、31Bとして、おむつ長手方向に伸縮可能な素材を用いることができる。ここで、おむつ長手方向に伸縮可能な素材とは、少なくとも50%以上の伸度を有するとともに、応力解放後に元に近い長さまで回復する、すなわち低歪な特性を有するものを指す。より具体的には、10N/50mm荷重下での伸長率が50%以上であり、50%伸長後の残留歪み率が25%以下、好ましくは10%以下のものとする。また、前記外装シート20、30の両脇部がおむつ長手方向に良好な収縮力を得るためには、前記上層不織布21A、31A及び下層不織布21B、31Bのうち少なくとも一方は、伸縮可能な素材の中でも特に弾性伸縮可能な素材であることが好ましい。弾性伸縮可能な素材とは、具体的には、伸縮可能な素材であって、かつ伸長率40%時の戻り応力(戻りパワー)が1.0N/50mm以上、好ましくは2.5N/50mm以上の素材である。
上記の荷重下の伸長率及び伸長時の戻り応力は、引っ張り試験にて測定する。引っ張り試験では、室温下にて引張試験機(SHIMADZU社製のAUTOGRAPH AGS−G100N)を用いて、幅50mm(長さ200mm)の試験片を、弛みの無い状態でグリップ間隔150mmでセットし、引張速度500mm/分で引っ張る。
10N/50mm荷重下の伸長率は、グリップ間の応力が0Nからスタートして10N以上(例えば11N)になるまで試料を引っ張り、その間のグリップ間隔と応力との関係を記録し、グリップ間応力が10Nの時点のグリップ間隔L1から次式にて求める。なお、グリップ間の応力が10Nに達する前にシートが破断した時は、破断時のグリップ間隔をL1として、計算する。
荷重下伸長率(%)={(L1−150)/150}× 100
伸長率40%時の戻り応力は、グリップ間隔150mmからスタートして225mmになるまで試料を引っ張り、すぐに(静止せずに)150mmになるまで(同じ速度で)戻す間の、グリップ間隔と応力との関係を記録し、グリップ間隔が225mm(50%伸長状態)から210mm(40%伸長状態)に戻った時点の応力とする。
また、50%伸長後の残留ひずみ率は、上記戻り応力測定において、戻る途中でグリップ間の伸張応力が0(あるいは0.005N未満)になった時点のグリップ間隔L2から次式にて求める。
残留ひずみ率(%)={(L2−150)/150}× 100
なお、おむつ長手方向に伸縮可能な素材を用いるのは前記上層不織布21A、31A及び下層不織布21B、31Bのうちいずれか一方のみでもよく、その場合、他方の素材としては、おむつ長手方向に伸長のみ可能な素材を用いればよい。ここで、おむつ長手方向に伸長のみ可能な素材とは、少なくとも50%以上の伸度を有するものであり、応力解放後に長さがほとんど回復せず、応力解放後に少なくとも伸度の半分程度の歪みが残留する高歪な特性を有するものを指す。より具体的には、10N/50mm荷重下での伸長率が50%以上であり、50%伸長後の残留歪み率が25%以上のものとする。ここで、本発明における「伸縮性」とは、「伸長性」と「収縮性」の両方の特性を有するものであると定義する。
また、前記上層不織布21A、31A及び下層不織布21B、31Bは、おむつ長手方向に伸縮可能な素材であっても、伸長のみ可能な素材であっても、おむつ長手方向の引っ張り強度は5N/50mm以上、特に10N/50mm以上であることが好ましい。
上述のような特性を有するおむつ長手方向に伸張可能な素材又はおむつ長手方向に伸縮可能な素材としては、少なくとも1方向に伸縮性を有する不織布、具体的に例示するとポリウレタン、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミドなどの可逆的に塑性変形し易い弾性樹脂材料からなる長繊維で構成した不織布、または引き延ばされた際に繊維自体の繊維直径は変化しないものの、ジグザグ状またはスパイラル状の捲縮が形成され、この捲縮が引き延ばされることによって伸縮性を示すようにした不織布等を使用することができる。
また、前記外装シート20、30におむつ長手方向の伸縮性を付与するには、後身頃用外装シート20を例に挙げて詳述すると、図8に示されるように、上層不織布21Aと下層不織布21Bとの間に配置される少なくとも前記腰回り弾性伸縮部材群として、縦糸28aと横糸28bとからなるネット状弾性伸縮部材28Aを伸長下で配置固定することができる。これにより、前記外装シート20の構成不織布としておむつ長手方向に伸縮可能な素材を使用しなくても、おむつ幅方向及びおむつ長手方向に同時に伸縮性を付与することができるようになる。なお、縦糸28a及び横糸28bとして、それぞれ別の糸状弾性伸縮部材を交差するように配置し、ネット状弾性伸縮部材28Aとしてもよい。ネット状弾性伸縮部材28Aを用いる場合は、上層不織布21A及び下層不織布21Bの両方に、上記のおむつ長手方向に伸長のみ可能な素材を用いてもよい。そうすると、前記ネット状弾性伸縮部材28Aを少なくともおむつ長手方向には伸長させることなく配置固定することができるため、製造が容易である。一方、上層不織布21Aと下層不織布21Bのいずれか一方若しくは両方として前述のおむつ長手方向に伸縮可能な素材を使用した上で、胴周りに前記ネット状弾性伸縮部材28Aを配置してもよく、この場合にはネット状弾性伸縮部材28Aが上層不織布21A及び下層不織布21Bの伸縮性を補助して、より高度なフィット性が発揮できる。なお、図8に示されるように、前身頃用外装シート30に配設される腰回り弾性伸縮部材群としても同様に、縦糸27aと横糸27bとからなるネット状弾性伸縮部材27Aを使用できる。
なお、前述のおむつ長手方向の伸縮機能は、後身頃用外装シート20及び前身頃用外装シート30の双方に付与することもできるし、図9に示されるように、いずれか一方にのみ、図示例では後身頃用外装シート20にのみに付与することもできる。
以上のようにしておむつ長手方向に伸縮性が付与された外装シート20、30は、おむつ幅方向中央部が前記吸収性本体10に対し、おむつ長手方向であって股下側方向に伸張状態で接合されている。そうすると、外装シート20、30の、おむつ幅方向中央部は、おむつ長手方向の収縮に抗する剛度を有する吸収性本体10が配置されているため、いくらかは収縮するがおむつ幅方向両側部ほどに収縮することはなく、そのため、おむつ幅方向中央部の長手方向寸法がおむつ幅方向両側部における長手方向寸法より長くなる。このため、外装シート20、30の股下側方向縁には、吸収性本体10の接合縁から脇部にかけて、紙おむつの脚周り開口部に相当する凹状の脚周りライン29、39が形成されるようになる。なお、外装シート20、30の、おむつ長手方向寸法の最大値と最小値の寸法比は、後身頃用外装シート20では1.2〜1.6、前身頃用外装シートでは1.1〜1.4であることが好ましく、後身頃用外装シート20の前記寸法比が前身頃用外装シート30の前記寸法比よりも大きいことが好ましい。かかる脚周りライン29、39は、従来の紙おむつのように、外装シートをロールカッター等によって切断して形成するものではないため、切断工程が省略できるとともに、外装シートを構成する不織布が無駄になることがなく、廃棄物も出ないので製造コストを削減することができるようになる。
さらに、従来のように外装シート20、30を切断しないため、特に脚周り開口部の弾性伸縮部材27…、28…が切断されることがなく、しかも外装シート20、30がおむつ長手方向に伸張状態で接合されることにより、外装シート20、30の胴周り部に沿って配置された腰回り弾性伸縮部材27…、28…が、前記脚周りライン29、39に沿って湾曲するため、特に脚周りのフィット性が各段に向上するとともに、脚周り部からの体液の漏れ防止効果が向上する。
上記のような効果は、後身頃用外装シート20、前身頃用外装シート30の一方または両方に対して、上層不織布21A、31A及び下層不織布21B、31Bの両方に、おむつ長手方向に伸長のみ可能な素材を用い、さらにネット状弾性伸縮部材27A,28Aのような縦糸27a、28aを配置しないようにして、外装シート20、30がおむつ長手方向に伸縮性を有さず、伸長性のみ有するように構成しても得ることができる。従って、本発明はこのようにおむつ長手方向に伸長性のみが付与された外装シート20、30のおむつ幅方向中央部が、前記吸収性本体10に対し、おむつ長手方向であって股下側方向に伸張状態で接合されている構成も含むものである。
一方、前記後身頃用外装シート20及び前身頃用外装シート30のウエスト部に配置されるウエスト部弾性部材26…、25…は、ウエスト開口縁近傍に上下方向に間隔をおいて配設された複数条の糸ゴム状弾性部材であり、身体のウエスト部回りを締め付けるように伸縮力を与えることにより紙おむつ1を身体に装着させる。このウエスト部弾性伸縮部材26…、25…は、図示例では糸ゴムを用いたが、例えばテープ状の伸縮部材やネット状の伸縮部材を用いてもよい。
前記後身頃用外装シート20及び前身頃用外装シート30の胴周り部に配置される腰回り弾性部材群28…、27…は、脇部接合範囲の内、概ねウエスト部を除く上部から下部までの範囲に亘り、上下方向に間隔をおいて水平方向に沿って配設された糸ゴム状の弾性伸縮部材であり、前身頃F及び後身頃Bの腰回り部分に夫々水平方向の伸縮力を与え、紙おむつを身体に密着させる。腰回り弾性部材群28…、27…は、腰周り部分に水平方向の伸縮力を与える糸状の弾性伸縮部材であればよく、前述のような、水平方向の糸状弾性部(横糸27b、28b)だけでなく垂直方向(おむつ長手方向)にも糸状弾性部(縦糸27a、28a)を有するネット状弾性伸縮部材でもよい。なお、前記ウエスト部弾性部材26…、25…と腰回り弾性部材群28…、27…との境界は必ずしも明確でなくてよい。例えば、後身頃Bに上下方向に間隔をおいて水平方向に配置された弾性部材の内、数は特定できなくても、上部側の何本かがウエスト部弾性部材として機能し、残りの弾性部材が腰回り弾性部材として機能していればよい。
なお、前記弾性伸縮部材25…〜28…は、上層不織布21A及び下層不織布21Bの間に配置した状態や、細かく切断した場合にその断片が目立たないように、透明度の高いものを使用することが好ましい。
前記外装シート20、30の、吸収性本体10との固定部が、おむつ幅方向とおむつ長手方向のいずれか一方若しくは両方に弾性収縮性を付与された状態で固定されていると、吸収性本体10は弾性収縮性により収縮する。吸収性本体10の収縮の程度は弾性収縮力や吸収性本体10の剛性により異なるが、吸収性本体10が収縮するとその内部の吸収体13も縮められて吸収性が低下するので好ましくない。そこで、図3に示されるように、前記外装シート20、30はそれぞれ、吸収性本体10と重なる領域またはそのうちの少なくとも一部の領域(吸収性本体10と重なる領域の70%以上の領域が好ましい)に多数の切断部C、C…が設けられることによって腰回り弾性伸縮部材27…、28…が細かく切断されていることが好ましい。
ここで、弾性伸縮部材27、28が「細かく切断される」とは、後述の不連続化手段によって、弾性伸縮部材を所定の間隔で細かく切断し、弾性伸縮部材の伸縮力が機能しない状態にすることである。このような状態とするためには、例えば、弾性伸縮部材を1〜10mmの間隔で、好ましくは1〜5mmの間隔で、後述の所定のカットパターンによって切断するようにする。吸収性本体10に対して伸長した状態で外装シート20、30に固定されている弾性伸縮部材27、28は、このように細かく切断されることで弾性収縮性を失うため、吸収体13が縮められることがない。
前記弾性伸縮部材28…を切断し不連続化するには、前記後身頃用外装シートとなる外装シート用連続シートを製造した後、表面に凸部が形成されこの凸部にカッターを複数個配列したカッターロールと、このカッターロールと対向する対向ロールとの間に前記外装シート用連続シートを通過させ、この外装シート用連続シートの弾性伸縮部材28…を前記カッターロールの凸部および対向ロール間での加圧および加熱の内の少なくとも一方により切断するものである。対向ロールは、両ロールの回転によってカッター部が下がり、カッターロールのカッター部のみと当接するように、カッターロールと離間させておくと良い。かかる不連続化手段は、前身頃用外装シート30に配設される弾性伸縮部材27…にも同様に施すことができる。
切断部C、C…では、少なくとも前記弾性伸縮部材27…、28…が切断されていればよいが、さらに前記上層不織布21A、31A及び下層不織布21B、31Bのうちいずれか一方または両方に切り込みが入るように形成されていると、後述する開口が容易になるため好ましい。しかし、不織布に切込みが入っていなくても、前記カッターロールの凸部および対向ロール間での加圧および加熱の内の少なくとも一方により切断加工により、切断部C、C…の不織布の繊維の強度または繊維同士の結合強度が低下されておれば、あるいは切断部C、C…の不織布が薄膜化して伸びと強度が低下されておれば、伸張時の開口は容易である。
かかる切断部C、C…を設けることにより、低歪な伸縮性シートに、部分的に高歪な領域(伸縮性がない又は少ない領域)を形成することができる。すなわち、外装シート20、30をおむつ長手方向に伸張させる際にこの切断部C、C…が開口して実質的に歪んだ状態になるため、外装シート20、30のおむつ長手方向の弾性収縮性が低下する。従って、吸収体13が縮められることがない。
前記切断部C、C…は、吸収性本体10と重なる領域において、おむつ長手方向に対して傾斜した斜線状に設けられることが好ましい。切断部Cを斜線状に設けるのは、おむつ長手方向に沿った線状とした場合には、外装シート20、30をおむつ長手方向に伸長した際に、切断部C、C…が開口せず、外装シートを歪ませることができず、一方おむつ長手方向に直交した線状とした場合には、弾性伸縮部材27…、28…を細かく切断することが困難になるためである。なお、切断部Cを斜線状とすることにより、カット部がヒラヒラしない、切りくずが発生しないなどの利点が得られる。他方、前記切断部Cは、半円形状やV字状、X字状などの曲線状や折れ線状またはこれらの組合せからなる形状でもよいし、円形状や四角形状、三角形状でもよいが、少なくともおむつ長手方向に対して傾斜した部分を有する形状であることが好ましい。
また、前記切断部C、C…の配列パターン(カットパターン)について、図10及び図11に基づいて詳述する。図10及び図11は、後段で詳述する紙おむつ1の製造工程における外装シート用連続シートの拡幅工程前後の切断部C、C…の配列パターンを示したものである。前記切断部C、C…の配列パターンは、同じ形状の切断部Cが縦横に等間隔で繰り返されるパターンでもよいが、図10に示されるように、紙おむつの幅方向中央部から左右対称の配列パターンとしてもよいし、図11に示されるように、おむつ長手方向の縦1列の配列を左右対称に交互に入れ替えて順次形成した配列パターンとしてもよい。
前記切断部Cが斜線状とされる場合、斜線1本当たりの長さは、腰回り弾性伸縮部材27…、28…のおむつ長手方向の離隔幅より長く、その離隔幅の2倍より短くすることが好ましい。また、おむつ長手方向線からの傾斜角度は、30〜60度であることが好ましく、40〜50度であることがより好ましく、45度であることが最も好ましい。
前記切断部C、C…の配列パターンは、前記切断部C、C…によって腰回り弾性伸縮部材27…、28…が確実におむつ幅方向に細かく切断されるようにするため、糸ゴム状の腰回り弾性伸縮部材27…、28…とした場合、図10に示されるように、おむつ幅方向の横1行の配列によって形成されるおむつ長手方向の投影長さが、隣接する同じく横1行の投影長さと重なりを持つように配列されていることが好ましい。一方、腰回り弾性伸縮部材27…、28…がネット状である場合、図11に示されるように、隣接する横各行及び縦各列の配列によるおむつ長手方向の投影長さ及びおむつ幅方向の投影長さがそれぞれ、重なりを持つように配列された配列パターンとすることが好ましい。なお、上記いずれの場合においても、切断部C、C…同士が重なることはない。
上述の通り、外装シート20、30には、吸収性本体10と重なる領域に多数の切断部C、C…が設けられているため、外装シート20、30がおむつ長手方向に伸張状態で吸収性本体10に接合されても、吸収性本体10のおむつ長手方向への縮こまりが殆ど生じない。さらに前記切断部C、C…が設けられることによって弾性伸縮部材27…、28…が細かく切断されているため、吸収性本体10のおむつ幅方向への縮こまりも殆ど生じない。このため、吸収性本体10の中央部長手方向に沿って身体へのフィット性が維持でき、体液等を効果的に吸収することができる。
また吸収性本体10と重なる領域に多数の切断部C、C…が設けられることによって弾性伸縮部材27…、28…が細かく切断される一方で、吸収性本体10の両側近傍の外装シート20、30には切断部C、C…が設けられないため、吸収性本体10の両側部は、外装シート20、30のおむつ長手方向及び幅方向への収縮力によって、着用者の身体に押しつけられるようになる。このため、吸収性本体10の両側からの体液等の漏れが確実に防止できるようになる。
なお、外装シート20、30の両脇部は、ウエスト部及び胴周り部に沿って多数の弾性伸縮部材25…〜28…が配置されるとともに、おむつ長手方向に伸縮性が付与されているため、縦方向及び横方向に作用する伸縮力によって身体にフィットし、紙おむつ1のずり落ちなどが確実に防止できるようになっている。
ところで、図2に示されるように、後身頃用外装シート20の両側部42、42において、前身頃用外装シート30との接合部40、40に配置された胴周り部24の弾性伸縮部材28…も、細かく切断されることが好ましい。これにより両側部42、42が、接合部40、40が剥がれたり歪んだりしない平滑な固着領域となり、製品の外観が向上する。前記両側部42の切断範囲(K)は、10〜50mm、好ましくは15〜30mmとするのがよい。
(股間部用外装シート19の構造)
前記股間部用外装シート19は、図4に示されるように、後身頃用外装シート20と前身頃用外装シート30との間の股間部であって、前記吸収性本体10の外面側に配設されている。ここで、前記股間部用外装シート19は、後身頃用外装シート20及び前身頃用外装シート30の下層不織布21B、31Bと同じ素材のものを用いてもよい。そうすると、前記股間部用外装シート19と、後身頃用外装シート20及び前身頃用外装シート30との境界が目立たなくなる。また、前記股間部用外装シート19は、後身頃用外装シート20及び前身頃用外装シート30の下層不織布21B、31Bと異なる素材のものを用いるようにしてもよい。股間部に位置する前記股間部用外装シート19は、着用者の股の間で擦れることが多いため、前後身頃のシートよりも柔軟性、耐摩耗性に優れた不織布素材を用いることが好ましい。前記股間部用外装シート19の耐摩耗性を向上するためには、股間部用外装シート19の外面側からエンボスを施すことにより、股間部用外装シート19と防漏シート12との一体化を図るようにすることができる。股間部用外装シート19は前記吸収性本体10の全長にわたって設けてもよいが、離間して配置されている後身頃用外装シート20と前身頃用外装シート30とを連結するように、股間部のみに設けるのが好ましい。連結のために外装シート20、30と股間部用外装シート19とがおむつ長手方向に重複する長さは10〜30mm程度が適当であり、連結部はホットメルト等の接着剤による接着またはヒートシールや超音波シール等による溶着、あるいはこれらの組み合わせにより固定することが好ましい。また、股間部用外装シート19には、おむつ長手方向には伸長せず且つ引張強度の強いシート、具体的にはおむつ長手方向の10N/50mm荷重下での伸長率が40%以下、おむつ長手方向の引張強度が15N/50mm以上のシートを使用することが好ましい。このように構成されていると、おむつ装着時に着用者がおむつを上に向けて引き上げる際に、後身頃用外装シート20及び前身頃用外装シート30の股間部側縁が剥れ難くなる。股間部用外装シート19の両側部が吸収性本体10と離間(離間幅は10〜20mm程度でよい)し、少なくともこの部分で外装シート20、30と股間部用外装シート19とが強固に連結されるように構成されていると、その効果はより顕著なものとなる。
また、股間部用外装シート19を吸収性本体10より幅広に(おむつ幅方向寸法が長いように)設け、股間部用外装シート19の両側部が吸収性本体10の両側縁よりおむつ幅方向外方に延在するように構成していると、股間部用外装シート19を介して連結された後身頃用外装シート20と前身頃用外装シート30とが、吸収性本体10の両側部で互いに引き合いながら連動してフィットするようになるため好ましい。
股間部用外装シート19の両側部には、おむつ長手方向に弾性伸縮部材を伸長下で配置固定してもよい。そうすると、吸収性本体10の長手方向に沿って身体へのフィット性が向上する。特に後身頃用外装シート20と前身頃用外装シート30のいずれか一方若しくは両方がおむつ長手方向に伸縮可能に構成されている場合は、その効果が顕著である。この場合、股間部用外装シート19の両側部の弾性伸縮部材固定部は、吸収性本体10(吸収体)13と離間していると、弾性伸縮部材の収縮が吸収体13に直接働かなくなり、吸収体13の吸収性が低下し難くなるため好ましい。さらに、股間部用外装シート19が吸収性本体10より幅広に設けられ、股間部用外装シート19の両側部が吸収性本体10の両側縁よりおむつ幅方向外方に配置されていると、後身頃用外装シート20、前身頃用外装シート30と股間部用外装シート19とが一体的に伸縮するようになり、フィット性がさらに向上するため好ましい。股間部用外装シート19の両側部の弾性伸縮部材としては、立体ギャザーBSの糸状弾性伸縮部材17と同様のものを用いることができる。本数は片側1〜3本程度が適当であり、少なくとも股間部用外装シート19の側縁に配置されていることが好ましい。配置間隔は3〜8mm程度、テンション(伸張率)は150〜250%程度が適当である。
(紙おむつの組立)
前記吸収性本体10と後身頃用外装シート20と前身頃用外装シート30とは、図7に示されるように、後身頃用外装シート20及び前身頃用外装シート30の上面側に吸収性本体10がホットメルト等の接着剤によって接着され一体化される。そして、吸収性本体10が折り返しラインSにて前後方向に折り重ねられ、前身頃Fの接合部40、40と後身頃Bの接合部40,40とを熱溶着またはホットメルト接着剤などによって接合することにより、図1に示されるパンツ型紙おむつ1に組み立てられる。
〔紙おむつ1の製造方法〕
図12は、ライン方向を紙おむつ幅方向とした横流れ方式の場合の組立工程図である。同図に示されるように、先ず、外装シート用連続シートの製造工程として、前記後身頃用外装シート20の伸張解除状態でのおむつ長手方向寸法と、前記前身頃用外装シート30の伸張解除状態でのおむつ長手方向寸法とを合わせた幅寸法を有する2枚の連続不織布をラインに繰り出すとともに、これら連続不織布の間にライン方向に沿って、ウエスト部弾性伸縮部材及び胴周り部弾性伸縮部材に対応する多数の弾性伸縮部材を介在させて外装シート用連続シートW1を製造する。
次に、弾性伸縮部材の切断工程として、この外装シート用連続シートW1に対して、前身頃F及び後身頃Bに対して、切断部C、C…を設けることによって前記弾性伸縮部材を細かく切断する。
その後、離隔配置工程として、前記外装シート用連続シートW1を所定の幅方向位置でライン方向に沿って切断(スリット)した後、ライン幅方向に離隔配置する。ここで、各外装シート用連続シートの離隔距離は、次工程の拡幅工程において、外装シート用連続シートをライン幅方向に伸張させた状態で、製品となる紙おむつ1の展開状態の配設位置となるように離隔配置する。
そして、拡幅工程として、離隔配置した外装シート用連続シートをそれぞれ、ライン幅方向であってライン中心側方向に伸張する。外装シート用連続シートをライン幅方向に伸張させるには、公知の拡幅手段を用いることができる。例えば、各外装シート用連続シートのライン幅方向内側部分を上面側から巻き掛ける第1巻き掛けロールと下面側から巻き掛ける第2巻き掛けロールとをライン流れ方向に若干離間させて配置し、これら巻き掛けロールの回転軸のライン幅方向外側をライン流れ方向に向かって傾斜して配設することによって、前記外装シート用連続シートを内側に拡幅させることができる。図示例では、各外装シート用連続シートをそれぞれ、ライン幅方向であってライン中心側方向に伸張させているが、各外装シート用連続シートをそれぞれライン幅方向であってライン外側方向に伸張させることもできるし、各外装シート用連続シートをそれぞれライン幅方向であってライン中心側方向及びライン外側方向に伸張させることもできる。
また、離隔して配置される後身頃用外装シート20と前身頃用外装シート30とを連結する股間部用外装シート19を股間部に設ける紙おむつ1の製造工程においては、前記拡幅工程の前段で、離隔配置した各外装シート用連続シート間に、紙おむつ1の股間部に相当する部位に股間部用外装シート19を接合する。したがって、この場合、各外装シート用連続シートをそれぞれライン幅方向に伸張するのではなく、前記股間部用外装シート19を介して連結された両外装シート用連続シートを一体的にライン幅方向であってライン外側方向に伸張することができるようになる。このような工程を経て製造する場合は、両外装シート用連続シートのうち、ライン幅方向に拡幅(おむつ長手方向に伸張)されるのは、ライン流れ方向(おむつ幅方向)において前記股間部用外装シートを中心とした範囲であるため、拡幅するだけで(拡幅の解除なしで)凹状の脚回りライン29、39をそれぞれ形成することができる。この場合は、上層不織布21A、31A及び下層不織布21B、31Bの両方に、おむつ長手方向に伸長のみ可能な素材を用い、さらにネット状弾性伸縮部材27A、28Aのような縦糸27a、28aを配置しないようにしてもよい。さらにこの場合は、弾性伸縮部材27、28の切断部Cを開口させる必要がないため、切断部Cの形状はおむつ長手方向に沿った線状としてもよく、弾性伸縮部材27、28を細かく切断せずに1箇所のみで切断して接着剤の塗布の調整により切断個所を含む所定範囲が収縮しないようにしてもよく、吸収性本体10がおむつ幅方向に収縮するが、弾性伸縮部材27、28を切断しないようにすることも可能である。なお、前記股間部用外装シートは、おむつ長手方向には伸縮性が付与されない一般的な不織布等からなるシート、あるいはおむつ長手方向には伸長のみ可能な不織布等からなるシートを使用することが適当であり、特におむつ長手方向には伸長せず且つ引張強度の強いシート、具体的にはおむつ長手方向の10N/50mm荷重下での伸長率が40%以下、おむつ長手方向の引張強度が15N/50mm以上のシートを使用することが好ましい。
次に、吸収性本体接合工程として、各外装シート用連続シートをそれぞれライン幅方向に拡幅させた状態で、前記離隔配置された外装シート用連続シート上に、ホットメルトなどの接着剤によって吸収性本体10を接合する。ここで、前記接着剤は、外装シート用連続シートに形成された切断部C、C…から紙おむつ表面に露出する場合があるので、固化後に粘着性を有さないものを用いるのが好ましい。かかる接着剤は、予め吸収性本体10と外装シート用連続シートのいずれか一方若しくは両方に塗布しておくようにする。また、前記弾性伸縮部材の切断工程の前に各外装シート用連続シートに塗布しておいてもよい。一方、外装シート用連続シート及び吸収性本体10の外面側に、前記吸収性本体10の平面形状と同程度の寸法の不織布等からなるカバーシートを接合しても良い。このカバーシートは、前記股間部用外装シートを兼用したものでもよく、外装シート用連続シートに吸収性本体10及び前記カバーシートを接合する順番は任意である。
しかる後、伸張解除工程として、前記外装シート用連続シートの伸張状態を解除し、ヒートシールまたは超音波シール等からなる融着手段あるいは接着剤による接着手段によって後身頃用外装シート20と前身頃用外装シート30の接合部40、40を形成するサイドシール工程を経た後、裁断工程として、個々の製品形状に裁断し、紙おむつ1を組み立てる。
なお各工程の順序は、本発明の実施が可能な範囲で、任意に変更することができる。例えば、弾性伸縮部材の切断工程は離隔配置工程や拡幅工程の後に設けてもよい。また、外装シート用連続シートW1をライン方向に沿って切断(スリット)して一対の外装シート用連続シートを形成するのではなく、一対の外装シート用連続シートを別個に形成してもよい。ただし、サイドシール工程は伸張解除工程の後とすることが好ましい。伸張解除前にサイドシールすると、接合部40、40が硬化し、伸張解除時に外装シート20、30の接合部40、40近傍がおむつ長手方向に十分収縮しないおそれがある。