JP5736653B2 - 希土類焼結磁石及び希土類焼結磁石の製造方法 - Google Patents

希土類焼結磁石及び希土類焼結磁石の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、希土類焼結磁石及び希土類焼結磁石の製造方法に関し、特に、希土類焼結磁石の角型性を向上させること、Dyの使用量を抑制すること、保磁力HcJを向上させることに有用な希土類焼結磁石及び希土類焼結磁石の製造方法に関する。
R−Fe−B(Rは希土類元素)の組成を有する希土類焼結磁石(R−Fe−B系希土類焼結磁石)は、優れた磁気特性を有する磁石である。特許文献1には、R(Rは、希土類元素の少なくとも1種であり、Ndおよび/またはPrが必須元素として含まれる)、Cu、FeおよびBを含有し、R含有量が11.7〜13.5モル%、Cu含有量が0.01〜0.1モル%、B含有量が5〜7モル%、残部が実質的にFeであり、最大エネルギー積が400kJ/m以上である焼結磁石が開示されている。
特開2002−327255号公報、段落0005
磁石の磁気特性は、一般にB=4πI+Hの関係にあるが、4πI−H曲線は、磁石内部(磁石固有)の特性を表しており、B−H曲線は磁石の外部にあらわれる特性を表している。保磁力は減磁曲線における磁界の強さを表しており、B−H減磁曲線で磁束密度が零に対応するものをB保磁力HcB、4πI−H減磁曲線で磁気分極が零に対応するものをJ保磁力HcJという(以下、本明細書中では断りのない限り保磁力HcJという)。また、磁界(H)が零のときの磁束密度の値を残留磁束密度(Br)という。磁束密度が残留磁束密度(Br)の90%のときの磁界の値をHkという。このHkをHcJで除した値を角型性(HcJ/Hk)という。磁石の磁気特性を表す指標としては、一般に、残留磁束密度Br及び保磁力HcJが用いられる。減磁曲線の角型性が低いものは磁石として実際に発揮できる特性は低くなるため、磁石では減磁曲線の角型性も重要な要素である。特許文献1は、保磁力HcJの向上や角型性の改善については言及されておらず、改善の余地がある。
また、近年においては、R−Fe−B系希土類焼結磁石の用途が拡大しており、特に高温環境で使用される場合には、高い保磁力HcJが要求される。R−Fe−B系希土類焼結磁石の保磁力HcJを増加させるためには、重希土類元素であるDyを添加する手法がある。しかし、Dyは高価であるとともに、産出地が偏在しており、またDyの使用量が増加するとともに磁化は低下(残留磁束密度Brが低下)するという問題がある。このため、Dyの使用量を抑制しつつ、保磁力HcJを向上させたいという要請もある。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、R−T−B系希土類焼結磁石の角型性を向上させること、Dyの使用量を抑制しつつR−T−B系希土類金属磁石の保磁力HcJを向上させることとのうち、少なくとも一つを実現することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明者はRTB系の希土類焼結磁石について鋭意研究した。その結果、本発明者は、結晶粒間の結晶粒界がある特定の組成を持つ場合に高HcJが得られ、また、前記特定の組成を有する結晶粒界に出現させるためには、原料合金の組成を調整することが必要であることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものである。
本発明に係る希土類焼結磁石は、複数のR14B(Rは希土類元素のうちNdとPrとの少なくとも一方及びDyとTbとの少なくとも一方を含み、TはFeを必須とし、CoとNiとの少なくとも一つを含む遷移金属元素)の結晶粒と、隣接する前記結晶粒の間に存在し、前記結晶粒の表面よりもNd及びCuの量が多く、かつDyの量が少ない結晶粒界と、を含むことを特徴とする。
このように、結晶粒の表面よりも結晶粒界の方がDyの量が少なくなるようにすることで、焼結時においては、R14Bの結晶粒と結晶粒界との濡れ性が向上する。その結果、多くの結晶粒間に結晶粒界が形成され、より良好な界面状態を実現できるという報告がある。結晶粒と結晶粒界との間の界面状態が良好になると、結晶粒界は隣接する結晶粒同士の磁気的結合を分断することができるので、角型性を向上させることができるとともに、高い保磁力HcJが得られる。また、本発明では、結晶粒の表面付近のみがDyリッチになるため、効率的にDyの機能を利用できる。その結果、Dyの使用量を抑制しつつ保磁力HcJを向上させることができる。さらに、重希土類元素であるDyに起因する残留磁束密度Brの低下も抑制できる。
本発明の好ましい態様としては、前記結晶粒界は、TよりもRが多く、かつ、T/Cuが2以上30以下であり、前記結晶粒界に含まれるNdの量は、前記結晶粒と前記結晶粒界との両方に含まれるNdの量に対して1.8以上であり、前記結晶粒界に含まれるDyの量は、前記結晶粒の表面のDyの量に対して2/3以下であることが望ましい。十分に解析はできていないが、これによって、結晶粒の表面にDyをより確実に偏析させることができるので、より良好な界面状態を実現しやすくなる。また、結晶粒の表面付近のみをよりDyリッチにしやすくなるので、保磁力HcJを向上させることができるものと推測される。
本発明の好ましい態様としては、前記結晶粒界に含まれるCuの量は、前記結晶粒と前記結晶粒界との両方に含まれるCuの量の10倍以上であることが望ましい。これによって、結晶粒界に均一に(R−Cu)リッチ相が形成され、結晶粒が被覆される結果、保磁力HcJがさらに向上し、かつ、保磁力HcJのばらつきも少なくなる。
この他の元素としては、前記結晶粒は、さらにM(Mは少なくともCu)を含むことが望ましい。さらに、前記Bの一部がCで置換されているR−Fe−Bの結晶粒であってもよい。Cは耐食性を向上させる作用を有するので、得られた希土類焼結磁石の耐食性が向上する。
本発明に係る希土類焼結磁石の製造方法は、主に結晶粒となる第1合金から得られた第1合金粉末と、前記結晶粒の間の主に結晶粒界となる第2合金から得られた第2合金粉末とを少なくとも含む複数の合金粉末からなる粉体を、所定の形状に成形して成形体を作製する工程と、前記成形体を焼結する工程と、を含み、前記第2合金粉末は、Nd、Dy、Fe及びCuを含み、1≦Nd/Cu≦10かつ1≦Dy/Cu≦50かつNd+Dyは25質量%以上であることを特徴とする。
前記成形体を焼結する前における前記第1合金粉末のD50粒径及び前記第2合金粉末のD50粒径は、0.1μm以上10μm以下であることが望ましい。また、第2合金粉末のD50を第1合金粉末のD50よりも小さくすることが好ましい。より好ましくは、第2粉末合金のD50を第1合金粉末のD50の1/3以下にするとよい。焼結前において、第1合金粉末及び第2粉末合金のD50(メジアン径)をこのような範囲とすることにより、磁気特性を向上させることができる。
本発明は、R−T−B系希土類焼結磁石の角型性を向上させること、Dyの使用量を抑制しつつR−T−B系希土類金属磁石の保磁力HcJを向上させることとのうち、少なくとも一つを実現できる。
図1は、本実施形態に係る希土類焼結磁石の組織を示す模式図である。 図2は、本実施形態に係る希土類焼結磁石の隣接する2個の結晶粒と結晶粒界との拡大図である。 図3は、本実施形態に係る希土類金属磁石の結晶粒表面付近と結晶粒界とに存在する元素を測定した結果を示す図である。 図4は、本実施形態の比較例に係る希土類金属磁石の結晶粒表面付近と結晶粒界とに存在する元素を測定した結果を示す図である。 図5は、本実施形態に係る希土類焼結磁石の製造方法のフローチャートである。
以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明により本発明が限定されるものではない。また、以下の説明における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。また、以下に開示する構成は、適宜組み合わせることが可能である。
[希土類焼結磁石]
図1は、本実施形態に係る希土類焼結磁石の組織を示す模式図である。図2は、本実施形態に係る希土類焼結磁石の隣接する2個の結晶粒と結晶粒界との拡大図である。図3、図4は、本実施形態の比較例に係る希土類金属磁石の結晶粒表面付近と結晶粒界とに存在する元素を測定した結果を示す図である。図1に示すように、希土類焼結磁石1は、複数の結晶粒(主相)2と、隣接する結晶粒2の間に存在する結晶粒界(粒界相)3とを含む。結晶粒界3は、隣接する結晶粒2の間に存在するので、2結晶粒界ともいう。希土類焼結磁石1は、原料の合金粉末を成形した後、焼結することによって作製される。希土類金属磁石1は、R−T−B系希土類焼結磁石である。
希土類焼結磁石1の結晶粒2の組成は、R14Bという組成式で表すことができる。結晶粒2は、R14B型の正方晶からなる結晶構造を有する。Rは希土類元素のうちNdとPrとの少なくとも一方、及びDyとTbとの少なくとも一方を含み、TはFeを必須とし、CoとNiとの少なくとも一つを含む遷移金属元素である。本実施形態において、希土類焼結磁石1には、希土類焼結磁石1に着磁した磁石製品と、希土類焼結磁石1を着磁していないものとの両方を含む。希土類焼結磁石1の結晶粒2の平均粒径は、通常1μmから30μm程度である。
図3、図4は、図2に示す希土類金属磁石1の結晶粒2の表面付近と結晶粒界3とに存在する元素を、TEM−EDS(Transmission Electron Microscopy - Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)で測定した結果である。ただし、結晶粒界3は薄い(2nmから10nm程度)ため、元素の測定が困難である。このため、測定試料表面における電子ビームのスポット径を小さくする必要がある。具体的には、ビーム径は0.5nm以下とし、好ましくは0.2nm以下である。このような微小なスポット径とするためには、電界放射型の電子銃を有するTEMを使うことが好ましい。測定のステップ(隣接する測定点の間隔)は1nm以下が好ましく、例えば、本実施形態では0.5nm程度である。TEM−EDSを用いて観察される試料の厚さは100nm以下が好ましい。一般にTEM−EDSでは、組成の定量性が高くないが、必要に応じて「組成が明確な結晶粒で組成を校正する」手法を用いることで、定量性を高めることができる。本実施形態では、この手法により定量性を向上させている。
結晶粒2の表面付近と結晶粒界3とに存在する元素は、次のようにして求めた。まず、TEM−EDSを用いて、隣接する2個の結晶粒2の表面付近及び結晶粒界3を、図2に示す測定ラインAに沿って走査させながらR(Nd、Dy)量(質量%)及びT(Fe)量(質量%)、Cu量(質量%)を測定する。測定ラインAは、隣接する結晶粒2同士の表面付近から結晶粒界3を跨いでいる。このときの測定ステップは、上述したように0.5nm程度である。この測定ステップが大きいと、高精度の元素分布測定が困難となる。図3、図4は、このようにして測定された結晶粒2の表面付近及び結晶粒界3(図2の測定ラインA)における元素の分布を示している。これらの図において、横軸は、測定ラインA上における測定開始点からの距離Lを示し、縦軸はFe、Nd、Dy、Cuの量(質量%)を示している。また、縦軸と平行な点線で挟まれた部分が結晶粒界3である。
図3に示す結果は、磁気特性が良好、すなわち、保磁力(HcJ)及び角型性(Hk/HcJ)が高く、かつ残留磁束密度(Br)も比較的高い値に維持できているものである。図4に示す結果は、磁気特性が思わしくないもの(比較例)である。磁気特性が良好であるものは、Feの量は結晶粒2の表面よりも結晶粒界3の方が大幅に低下しており、Cuの量は結晶粒2の表面よりも結晶粒界3の方が増加している。また、磁気特性が良好のものは、Ndの量は、結晶粒2の表面よりも結晶粒界3の方が大幅に増加し、反対に、Dyの量は結晶粒2の表面よりも結晶粒界3の方が低下している。
これに対して、磁気特性が思わしくないものは、結晶粒2の表面よりも結晶粒界3の方がFeの量は低下しており、Cuの量は結晶粒2の表面よりも結晶粒界3の方がわずかに増加している。また、磁気特性が思わしくないものは、Ndの量は、結晶粒2の表面よりも結晶粒界3の方が増加し、Dyの量は結晶粒2の表面と結晶粒界3とでほとんど変化しない。このように、磁気特性が良好であるものと思わしくないものとでは、希土類金属磁石1の結晶粒2の表面と結晶粒界3とに存在する元素の組成が異なり、特に、Dy分布の挙動とNd分布の挙動とが大きく異なることが分かった。なお、本実施形態において、結晶粒2の表面とは、結晶粒2の表面及び表面から所定の距離(10nmから20nm)だけ結晶粒2の内部側の領域をいう。
本実施形態において、希土類焼結磁石1の結晶粒界3は、結晶粒2の表面よりもNd及びCuの量が多く、かつDyの量が少ない。これによって、希土類金属磁石1は、角型性が向上するとともに高い保磁力HcJが得られる。この理由は明らかでないが、結晶粒2の表面よりも結晶粒界3の方がDyの量が少なくなるようにすることで、焼結時においては、R14Bの結晶粒2と結晶粒界3との濡れ性が向上すると考えられる。その結果、多くの結晶粒2間に結晶粒界3が形成され、より良好な界面状態を実現できる。結晶粒2と結晶粒界3との間の界面状態が良好になると、結晶粒界3は隣接する結晶粒2同士の磁気的結合を分断することができるので、角型性の向上及び高い保磁力HcJが得られると考えられる。
このように、希土類金属磁石1の結晶粒2の表面付近と結晶粒界3とにおけるDy分布の挙動が、希土類焼結磁石1の磁気特性に大きく影響すると考えられる。また、希土類焼結磁石1は、結晶粒2の表面付近のみがDyリッチになるので、保磁力HcJを向上させることができると考えられる。このように、結晶粒2の表面付近にDyを偏在させることにより、効率的に保磁力HcJを向上させつつ、高価なDyの添加量を抑制できる。このように、希土類金属磁石1は、高い保磁力HcJが得られるため、高温環境で使用されるもの、例えば、エアコン用の電動機やハイブリッド車両、あるいは電気自動車の駆動用電動機等の用途において好適である。
希土類金属磁石1の結晶粒界3は、TよりもRが多く、かつ、T/Cuが2以上30以下であり、また、結晶粒界3に含まれるNd(本実施形態ではNdあるいはNd+Pr)の量は、結晶粒2と結晶粒界3との両方に含まれるNdの量に対して1.8以上であり、さらに、結晶粒界3に含まれるDyの量は、結晶粒2の表面のDyの量に対して2/3以下であることが好ましい。結晶粒界3の組成をこのようにすることで、角型性が向上するとともに高い保磁力HcJが得られる。また、結晶粒界3の組成を上記のようにすることで、希土類金属磁石1の組成において、同じ重希土類元素(Dy、Tb)の量であれば、残留磁束密度Brを維持しつつより高い保磁力HcJが得られ、角型性も向上する。結晶粒界3の組成が上記範囲となっている領域は、結晶粒界3の全領域に対して50%以上とすることが好ましい。これによって、角型性の向上、高い保磁力HcJ、残留磁束密度Brの維持という効果をより確実に得ることができる。本実施形態において、上述したように、希土類金属磁石1のRは、NdとPrとの少なくとも一方を軽希土類元素として含み、また、DyとTbとの少なくとも一方を重希土類元素として含む。Rは、さらにYを含み、Sc、La、Ce、Pm、Sm、Eu、Gd、Ho、Er、Tm、Yb、Luのうち、少なくとも一つを有していてもよい。
希土類焼結磁石1は、Cuを含有している必要があるが、Cuの含有量が多すぎると、保磁力HcJが却って減少し、残留磁束密度Brも減少するため、最大エネルギー積が減少するおそれがある。一方、Cu含有量が少ないと、残留磁束密度Brを維持しつつ、より高い保磁力HcJが得られ、かつ角型性も向上するという効果が得られなくなるおそれがある。かかる観点から、希土類焼結磁石1は、Cuを0.01質量%以上0.5質量%以下、さらには0.02質量%以上0.3質量%以下とすることが好ましい。
希土類金属磁石1は、結晶粒界3に含まれるCuの量を、結晶粒2と結晶粒界3との両方に含まれるCuの量の10倍以上とすることが好ましく、15倍以上がさらに好ましい。この場合、結晶粒2は、さらにM(Mは少なくともCu)を含んでいてもよい。Cuは、Cuに富む(R−Cu)リッチ相を結晶粒界3に形成することがある。焼結時においては、前記(R−Cu)リッチ相が、R14Bの結晶粒2の表面と結晶粒界3との濡れ性をさらに向上させるため、希土類焼結磁石1は、結晶粒界3に均一に(R−Cu)リッチ相が形成され、これによって結晶粒2が被覆される結果、保磁力HcJがさらに向上し、かつ、保磁力HcJのばらつきも少なくなると考えられる。多結晶粒界とは、図1において、3個の結晶粒に挟まれた三重点、及び4個以上の結晶粒の間に存在する結晶粒界である。
希土類焼結磁石1は、Bを含有するが、Bの含有量が少なすぎると菱面体組繊となるため保磁力HcJが低下し、Bの含有量が多すぎるとBリッチな非磁性相が多くなるため残留磁束密度Brが低下する。かかる観点から、希土類焼結磁石1は、Bを0.8質量%以上1.2質量%以下含む必要がある。希土類金属磁石1は、Bの一部がCで置換されていてもよい。希土類元素は酸化されやすいため、一般に希土類金属磁石1は耐食性が低い。Cは、耐食性を向上させる作用を有するので、Bの一部をCで置換することにより、希土類金属磁石1の耐食性が向上し、その結果、希土類金属磁石1の耐久性も向上する。
希土類焼結磁石1のTとしてFeを用いる。なお、Feの一部をCoで置換してもよい。CoでFeの一部を置換することにより、保磁力HcJの温度依存性及び耐食性を改善することができ、さらに残留磁束密度Brも向上させることができる。ただし、Coにより保磁力HcJが低下するおそれがあるので、Coの置換量は保磁力HcJの低下が許容できる範囲とする。さらに、希土類焼結磁石1は、上述した各元素の他、微量添加物又は不可避的不純物として、例えば、P、S、Al、Ti、V、Cr、Mn、Bi、Nb、Ta、Mo、W、Sb、Ge、Sn、Zr、Si、Hf、Ga、Zn、O、C、N等のうち少なくとも一つが含有されていてもよい。
希土類焼結磁石1は、酸化によって磁気特性が影響を受けるので、希土類焼結磁石1中の酸素含有量を好ましくは3000ppm以下、より好ましくは2500ppm以下とする。希土類焼結磁石1の酸素含有量は少ないほど好ましいが、製造工程における酸化は不可避であるため、酸素含有量を0にすることはできない。このため、通常、酸素は500ppm以上含有される。希土類焼結磁石1の酸素含有量を抑えるためには、製造の際にAr、N等の非酸化性雰囲気中で粉砕、混合、成形等の各工程を実行し、かつ、各工程における雰囲気中の酸素分圧を厳密に管理することが好ましい。次に、本実施形態に係る希土類焼結磁石の製造方法について説明する。
[希土類焼結磁石の製造方法]
図5は、本実施形態に係る希土類焼結磁石の製造方法のフローチャートである。本実施形態に係る希土類焼結磁石1は、希土類焼結磁石1の最終組成となるように2種以上の合金を組み合わせた後に焼結して製造される。本実施形態では、主として結晶粒2となる第1合金(主合金)と、主として結晶粒界3となる第2合金(副合金)とを組み合わせるが、3種以上の合金を組み合わせてもよい。本実施形態に係る希土類焼結磁石の製造方法を用いて希土類焼結磁石1を製造するにあたり、ステップS1で、第1合金及び第2合金が作製される。
第1合金及び第2合金は、例えば、ストリップキャスティング法を用いて作製される。ストリップキャスティング法によれば、第1合金及び第2合金において結晶粒の成長を抑えて、磁気特性を改善できるので好ましい。第1合金及び第2合金の作製方法はこれに限定されるものではなく、例えば、鋳造(遠心鋳造等)を用いてもよい。ステップS1は、原料合金作製工程である。
次に、ステップS2へ進み、第1合金及び第2合金は粗粉砕される。本実施形態において、粗粉砕は、水素粉砕及び機械粉砕(例えば、ディスクミル)が用いられるが、粗粉砕の手段はこれに限定されるものではない。水素粉砕を用いる場合、本実施形態においては、第1合金及び第2合金を室温付近から100℃の間で水素雰囲気中に1時間から5時間保持して水素を第1合金及び第2合金に吸蔵させ、粉砕させる。その後、第1合金及び第2合金を500℃から600℃に昇温させて1時間から10時間程度保持することにより、第1合金及び第2合金を脱水素する。粗粉砕が終了したら、ステップS3へ進み、粗粉砕された第1合金及び第2合金の粉末は微粉砕される。本実施形態において、微粉砕は不活性ガス(例えば、Nガス)を用いたジェットミルが用いられるが、これに限定されるものではない。微粉砕によって、第1合金から第1合金粉末が得られ、第2合金からは第2合金粉末が得られる。ステップS2及びステップS3が、原料合金粉末作製工程である。微粉砕後における第1合金粉末のD50粒径及び第2合金粉末のD50粒径は、0.1μm以上10μm以下とすることが好ましい。これによって、希土類焼結磁石1の磁気特性が向上する。第2合金粉末のD50を第1合金粉末のD50よりも小さくすることが好ましい。より好ましくは、第2粉末合金のD50を第1合金粉末のD50の1/3以下にするとよい。ここで、D50とは、レーザ光線のフラウンフォーファー回折法により測定されたD50平均粒径をいい、累積体積比率が50%になる粒径をいう。具体的には測定装置(MALVERN社製マスターマイザー2000)を用いて測定された値である。
第2合金粉末は、Nd、Dy、Fe及びCuを含み、1≦Nd/Cu≦10かつ1≦Dy/Cu≦50かつNd+Dyは25質量%以上である。第2合金粉末中のNd+Dyの量をできる限り多くしてもよいが、これらは希土類元素であり酸化しやすいため、実用上は50質量%程度が上限となる。これによって、希土類元素の酸化が抑制されるので、磁気特性の低下が抑制されるとともに、希土類焼結磁石1の製造において、第2合金粉末を取り扱いやすくなる。原料合金作製工程においては、上述した合金組成となるように、第2合金となる元素が配合される。なお、希土類焼結磁石1は、結晶粒界3にNd及びCuを多く出現させる必要があるが、主として結晶粒界3となる第2合金にNd及びCuを含ませることで、結晶粒界3にNd及びCuを出現させやすくなる。また、結晶粒界3となる第2合金にDyを含ませることにより、結晶粒界3と接する結晶粒2の表面付近にDyを偏在させることができる。これによって、希土類焼結磁石1の保磁力HcJを向上させることができる。
第1合金粉末及び第2合金粉末が作製されたら、ステップS4に進み、これらを所定の比率で混合させる。ステップS4が混合工程である。本実施形態では、微粉砕後に第1合金粉末と第2合金粉末とを混合したが、原料となる合金を複数用いる場合、これらの混合は合金の段階(水素粉砕前)、粗粉砕前、微粉砕前等、粉体の成型前であればいずれでもよい。また、3種類以上の合金を使用する場合は、それぞれの合金から得られた合金粉末を混合するタイミングはそれぞれ異なっていてもよい。ただし、それぞれの前記合金粉末の粒径を制御する観点からは、微粉砕後に混合することが好ましい。
第1合金粉末及び第2合金粉末を混合させたら、ステップS5に進み、主に結晶粒となる第1合金粉末と、主に結晶粒界となる第2合金粉末とを少なくとも含む複数の合金粉末からなる粉体を所定の形状に成形して、成形体を作製する。すなわち、本実施形態では、3種類以上の合金粉末を混合した粉体を用いて成形体を作製してもよい。ステップS5が成形工程となる。成形工程では、所定の成形圧力を前記粉体に加えて成形するが、この場合、第1合金粉末及び第2合金粉末を配向させるため、800kA/m以上の大きさの磁場中で成形することが好ましい。成形圧力は、10MPaから500MPa程度が好ましい。
その後、ステップS6に進み、成形体が焼結される。ステップS6が焼結工程である。焼結工程では、ステップS5で得られた成形体が、真空(減圧雰囲気)中において、所定の温度条件で所定時間焼結されることにより、焼結体が得られる。例えば、焼結温度を1000℃から1100℃の範囲とし、1時間から10時間程度焼結する。焼結時間が短いと焼結体の密度や磁気特性にバラツキが大きくなり、焼結時間が長すぎると希土類焼結磁石1の生産性が低下する。このため、前記バラツキと前記生産性とのバランスを考慮して、焼結時間が決定される。
焼結工程が終了したら、ステップS7に進み、前記焼結体に時効処理が施される。ステップS7が時効工程である。時効工程は、希土類焼結磁石1の組織を調整することにより磁気特性を調整する工程である。時効工程においては、焼結温度よりも低い温度に焼結体を所定時間保持する。時効処理は、2段階としてもよい。この場合、1段目の時効温度は700℃から900℃、2段目の時効温度は450℃から600℃として、それぞれの温度範囲に1時間から10時間時効、焼結体が保持される。高い磁気特性(保磁力HcJや良好な角型性)が得られるように、適切な条件で時効処理を施す。時効処理の終了した焼結体は、必要に応じて加工され、腐食抑制のための表面処理(めっきや樹脂の被覆)が施されて、希土類焼結磁石1が完成する。なお、この後に着磁される。
本実施形態において、原料合金作製工程、原料合金粉末作製工程、混合工程、成形工程における酸素濃度は100ppmとした。これにより、第1合金や第2合金、あるいは第1合金粉末や第2合金粉末中の希土類元素の酸化を抑制して、得られる希土類焼結磁石1の磁気特性の低下を抑制できる。なお、酸素濃度は、希土類焼結磁石1の組成設計や工程設計により前記の濃度以外であってもよい。また、前記酸素濃度はそれぞれの工程で変更されてもよい。例えば、成形(ステップS5)以前の工程までは酸素濃度を3000ppmとし、成型工程は大気中としてもよい。
希土類焼結磁石1は、設計された最終組成となるように2種以上の合金を組み合わせた後に焼結して製造されるが、前記2種以上の合金のうち、希土類元素(Dy又はTb)を含む少なくとも1種の合金は、同時にBを含有しないようにすることが好ましい。これによって、原料合金の段階でDyFe14B(又はTbFe14B)相が存在しないので、焼結時に結晶粒2へのDy(又はTb)の拡散が抑制され、その結果Dy(又はTb)を結晶粒2の表面に集中させやすくなる。
[評価例]
本実施形態に係る希土類焼結磁石の製造方法を用い、原料となる合金の組成を変更して複数の希土類焼結磁石を作製し、評価した。なお、以下における比較例は、従来例を意味するものではなく、従来例に対して効果が認められることもある。原料となる合金の組成を表1に示す。なお、表1に示す合金は、いずれも残部がFeである。第1合金「A」、「B」、「C」、「D」、「E」、「F」のB量は、いずれも1.05質量%である。合金「A」、「B」、「C」、「D」、「E」、「F」が第1合金であり、希土類焼結磁石の主相となる。第2合金「あ」、「い」、「う」、「え」、「お」、「か」、「き」、「く」、「け」、「こ」は、第1合金:第2合金の配合比率が質量の比率で95:5となるようにしたときに、希土類焼結磁石が設定された組成となるようにするためのものである。第2合金「a」、「b」、「c」は、第1合金:第2合金の配合比率が質量の比率で90:10となるようにしたときに、希土類焼結磁石が設定された組成となるようにするためのものである。
Figure 0005736653
本評価例において、第1合金「A」、「B」、「C」、「D」、「E」、F」、及び第2合金「あ」「い」、「う」、「え」、「お」、「か」、「き」、「く」、「け」、「こ」「a」、「b」、「c」は、いずれもストリップキャスティング法により製造された。その後、第1合金「A」、「B」、「C」、「D」、「E」、「F」、及び第2合金「あ」、「い」、「う」、「え」、「お」、「か」、「き」、「く」、「け」、「こ」、「a」、「b」、「c」それぞれに水素粉砕、及びディスクミルによる粗粉砕を施した。水素粉砕は、室温かつH雰囲気中で1時間保持して第1合金及び第2合金に水素を吸蔵させて粉砕し、その後、600℃で2時間保持して脱水素した。ディスクミルによる粗粉砕の後、Nガスを使用したジェットミルによる微粉砕が施され、第1合金粉末及び第2合金粉末が得られた。得られた第1合金粉末及び第2合金粉末は、D50粒径が3μmから5μmの範囲となった。なお、第1合金「A」の第1合金粉末及び第2合金「あ」の第2合金粉末は、それぞれD50粒径が4μmであった。
得られた第1合金粉末及び第2合金粉末は、それぞれ表2に示すように組み合わされ、第2合金「あ」、「い」、「う」、「え」、「お」、「か」、「き」、「く」、「け」、「こ」から得られた第2合金粉末は、第1合金:第2合金の配合比率が質量の比率で95:5となるように第1合金粉末と混合される。第2合金「a」、「b」、「c」から得られた第2合金粉末は、第1合金:第2合金の配合比率が質量の比率で90:10となるように第1合金粉末と混合される。混合後の粉体は、1194.3kA/m(15kOe)の磁場中において成型圧力98MPa(1.0ton/cm)で成型された。実施例1(合金「A」+合金「あ」)で得られた成型体は、1080℃で4時間焼結され、その後、1段目の時効処理として900℃で1時間保持された後、2段目の時効処理として550℃で1時間保持されて、希土類焼結磁石の試料が作製された。表2中の「結晶粒界の組成」の割合が異なるその他の実施例2から11、及び比較例1から5に係る希土類焼結磁石の試料は、実施例1と同様の条件で成型体を作成し、「結晶粒界の組成」の割合に応じて、1040℃から1100℃の温度範囲内で4時間焼結された。焼結後、1段目の時効処理として800℃から900℃の温度範囲内で1時間保持された後、2段目の時効処理として500℃から600度の温度範囲内で1時間保持されて、その他の実施例2から11、及び比較例1から5に係る希土類焼結磁石の試料が作製された。第2合金「あ、「い」、「う」、「え」、「お」、「か」、「き」、「く」、「け」、「こ」及び第2合金「a」、「b」、「c」は、Bを含まない合金であり、得られる第2合金粉末のD50粒径は、Bを含む第1合金「A」、「B」、「C」、「D」、「E」、「F」から得られる第1合金粉末よりも小さくすることが好ましい。
作製された試料の磁気特性はパルス磁場方式のBHトレーサーを用いて評価された。作製された試料の組成はICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合プラズマ)を用いて分析された。結晶粒界及び結晶粒の表面の組成は、TEM−EDSによる線分析により評価された。TEM−EDSは、プローブ直径が0.1nm、測定のステップは0.5nmとした。結晶粒界及び結晶粒の表面の組成は、作製された試料から5箇所の結晶粒界(厚さは2nmから10nm程度)近傍を分析した結果の平均値である。評価及び分析結果を表2に示す。
表2中において、Ndとは、Nd又はNd+Prを示している。すなわち、試料がPrを含む場合(実施例2)、表2中のNdはNd+Prの合計値である。同様に、Dyとは、Dy又はDy+Tbを示している。すなわち、試料がTbを含む場合(実施例6)、表2中のDyはDy+Tbの合計値である。表2中における試料全体のNd、Dy、Cuは、上述したICPにより分析されたものである。なお、表2の表面Dyは、一つの結晶粒全体の質量に対する、結晶粒の表面付近に存在するDyの質量の割合であり、TEM−EDSにより測定され、評価される。
Figure 0005736653
Hk/HcJで定義される角型性は、96%以上を判定の基準とした。実施例1から実施例12の分析結果によれば、それぞれの結晶粒界におけるFe、Nd(Prを含む)、Dy(Tbを含む)、Cuの組成プロファイルが、図3に示すようになっている。すなわち、実施例1から実施例12の分析結果によれば、結晶粒の表面よりも結晶粒界の方がNd及びCuの量が多く、かつDyの量は少ない。一方、比較例1から比較例5は、それぞれの結晶粒界におけるFe、Nd(Prを含む)、Dy(Tbを含む)、Cuの組成プロファイルが、図4に示すようになっている。すなわち、比較例1から比較例5の分析結果によれば、結晶粒の表面よりも結晶粒界の方がNdは多く、Dy及びCuの量は結晶粒の表面と結晶粒界とでほぼ一定であり、かつFeの量は結晶粒の表面よりも結晶粒界の方が少ない。
[磁気特性の評価]
実施例1から実施例12の組成を見ると、これらの結晶粒界の組成は、T(本評価例ではFe、以下同様)よりもR=Nd+Dyが多く、かつ、T/Cuが2以上30以下である。また、実施例1から実施例11の結晶粒界に含まれるNdの量は、全体(すなわち結晶粒と前記結晶粒界との両方)に含まれるNdの量に対して1.8以上であり、結晶粒界に含まれるDyの量は、結晶粒の表面のDyの量に対して2/3(66.7%)以下である。さらに、実施例1から実施例11は、結晶粒界に含まれるCuの量が、全体(すなわち、結晶粒と結晶粒界との両方に含まれるCuの量)の10倍以上である。これらの範囲に上記パラメータが存在することにより、実施例1から実施例11は、角型性及び保磁力HcJが向上するとともに、残留磁束密度Brも向上する。
TよりもR(Nd+Dy、なお、Ndの一部はPrで置換可能であり、Dyの一部はTbで置換可能)が多いことは、表2のNdとDyとの和をTと比較すればよい。試料全体(すなわち結晶粒と前記結晶粒界との両方)に含まれるNdに対する、結晶粒界に含まれるNdの割合は、表2中の「Nd(倍)結晶粒界/全体」の値である。結晶粒の表面のDyの量に対する、結晶粒界に含まれるDyの割合は、表2中の「Dy(倍)結晶粒界/表面」の値である。試料全体(すなわち、結晶粒界及び結晶粒との両方)に対する、結晶粒界に含まれるCuの割合は、表2中の「Cu(倍)結晶粒界/全体」の値である。
比較例1から比較例4は、角型性が96%に満たず、判断の基準に達していない。これは、上記パラメータが上述した範囲に存在しないことが原因であると考えられる。比較例5は、角型性は許容できるが、その他の磁気特性(Br)や保磁力(HcJ)が、同程度のDy(全Dy)を含む実施例3、5、6、8と比較して劣る。これは、Fe(T)よりもR=Nd+Dyが少なく、かつ、Fe(T)/Cu、結晶粒界に含まれるNdの量の全体に対する割合、結晶粒界に含まれるCuの量の全体に対する割合が、上記範囲外にあることが原因であると考えられる。
重希土類元素であるDyは、Ndと比較して価格が6倍程度と高価である。このため、R−T−B系希土類焼結磁石においては、Dyの使用量を低減したいという要求がある。実施例1から実施例11、及び比較例1から比較例5の中から、保磁力HcJが同程度のもの同士を比較する。まず、比較例1は、保磁力HcJが1257kA/mであり、実施例の中から保磁力HcJが同程度のものを抽出すると、実施例1(保磁力HcJは1233kA/m)、実施例2(保磁力HcJは1321kA/m)、実施例7(保磁力HcJは1241kA/m)が挙げられる。実施例1、2、7は、いずれも角型性が比較例1よりも優れ、また、残留磁束密度Brも実施例2を除き実施例1、7の方が比較例1よりも高い。比較例1に含まれる全Dyの量は1.8質量%であり、実施例1、2、7に含まれる全Dyの量はいずれも1.3質量%である。このことから、実施例1、2、7は、比較例1よりも少ないDyの量で比較例1と同等以上の磁気特性を発揮できるといえる。
比較例5は、保磁力HcJが2228kA/mであり、実施例の中から保磁力HcJが同程度のものを抽出すると、実施例3(保磁力HcJは2308kA/m)、実施例5(保磁力HcJは2260kA/m)、実施例6(保磁力HcJは2586kA/m)、実施例8(保磁力HcJは2268kA/m)が挙げられる。実施例3、5、6、8は、いずれも角型性が比較例1よりも優れ、かつ保磁力HcJも大きい。また、残留磁束密度Brは、実施例3、5、6、8の方が比較例5よりも高い。比較例5に含まれる全Dyの量は7.3質量%であり、実施例3、5、6、8に含まれる全Dyの量はいずれも7.0質量%である。このことから、実施例3、5、6、8は、比較例5よりも少ないDyの量で比較例1よりも高い磁気特性を発揮できるといえる。
次に、全Dyの量が同程度のもの同士を比較する。比較例3、4は、いずれもDyの量が7.0質量%である。実施例3、5、6、8も、全Dyの量は7.0質量%で比較例3、4と同一である。比較例3は、保磁力HcJが2157kA/mであり、比較例4は、保磁力HcJが2109kA/mである。実施例3、5、6、8の残留磁束密度Brは、比較例3、4の残留磁束密度Brと同等以上であり、角型性は比較例3、4よりも実施例3、5、6、8の方が優れ、保磁力HcJは比較例3、4よりも実施例3、5、6、8の方が高い。
また、比較例5は、全Dyの量が7.3質量%である。実施例4も、全Dyの量は7.3質量%で比較例5と同一である。比較例5は、保磁力HcJが2228kA/mであり、実施例4は、保磁力HcJが2363kA/mである。実施例4の残留磁束密度Brは、比較例5の残留磁束密度Brよりも高い。このように、実施例4は、Dyの添加に起因する残留磁束密度Brの低下を抑制できるといえる。また、角型性は、比較例5よりも実施例4の方が優れ、保磁力HcJは比較例5よりも実施例4の方が高い。このように、全Dyの量が同じであれば、実施例は比較例に対して同等以上の磁気特性を発揮できるといえる。
[第2合金粉末の組成]
第2合金粉末は、第2合金「い」、「え」、「お」、「か」、「け」を用いたものが比較例1から比較例5となっており、いずれも角型性は実施例1から実施例11よりも劣る。第2合金「い」、「え」、「お」、「か」、「け」は、1≦Dy/Cu≦50及びNd+Dyは25質量%以上という条件は満たす。しかしながら、第2合金「い」、「え」、「お」、「け」は、Ndを含まず、さらにNd/Cuが0である。また、第2合金「か」は、Ndは含むがNd/Cuは0.5である。
このように、第2合金「い」、「え」、「お」、「か」、「け」は、Nd−Dy−Fe合金、すなわち、Ndを含むという条件と、1≦Nd/Cu≦10という条件との少なくとも一方を満たさない。これが、比較例1から比較例5で角型性が実施例1から実施例11よりも劣り、同程度の保磁力HcJ同士、あるいは同程度のDyの量同士の試料を比較した場合に、比較例の磁気特性は実施例よりも劣る原因であると考えられる。
以上のように、本発明に係る希土類焼結磁石及び希土類焼結磁石の製造方法は、希土類焼結磁石の角型性を向上させること、Dyの使用量を抑制すること、保磁力HcJを向上させることに有用である。
1 希土類焼結磁石
2 結晶粒
3 結晶粒界

Claims (4)

  1. 複数のR14B(Rは希土類元素のうちNdとPrとの少なくとも一方及びDyとTbとの少なくとも一方を含み、TはFeを必須とし、CoとNiとの少なくとも一つを含む遷移金属元素)の結晶粒と、
    隣接する2個の前記結晶粒の間に存在し、前記結晶粒の表面よりもNd及びCuの量が多く、かつDyの量が少ない結晶粒界と、
    を含み、
    前記結晶粒界の厚さが2nmから10nmであることを特徴とする希土類焼結磁石。
  2. 前記結晶粒界は、TよりもRが多く、かつ、T/Cuが2以上30以下であり、前記結晶粒界に含まれるNdの量は、前記結晶粒と前記結晶粒界との両方に含まれるNdの量に対して1.8以上であり、前記結晶粒界に含まれるDyの量は、前記結晶粒の表面のDyの量に対して2/3以下である請求項1に記載の希土類焼結磁石。
  3. 前記結晶粒界に含まれるCuの量は、前記結晶粒と前記結晶粒界との両方に含まれるCuの量の10倍以上である請求項1又は2に記載の希土類焼結磁石。
  4. 主に結晶粒となる第1合金から得られた第1合金粉末と、前記結晶粒の間の主に結晶粒界となる第2合金から得られた第2合金粉末とを少なくとも含む複数の合金粉末からなる粉体を、所定の形状に成形して成形体を作製する工程と、
    前記成形体を焼結する工程と、
    を含み、
    前記第2合金粉末は、Nd、Dy、Fe及びCuを含み、1≦Nd/Cu≦かつ6.5≦Dy/Cu≦31かつNd+Dyは27質量%以上であることを特徴とする希土類焼結磁石の製造方法。
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