JP5732967B2 - ハードコート樹脂成型体 - Google Patents
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Description
また、上記の用途では風雨や砂塵等による自然での傷付きや、清掃、洗浄作業における傷付き、落書きや過度な汚染を洗浄する際に有機溶剤等の使用による溶解劣化等により、耐傷性や耐薬品性などの性能も要求される。
これらの性能を満足させるためアクリル樹脂やポリカーボネート樹脂などの樹脂板に高耐候なハードコート層を設けることが行われている。ハードコート層には、熱硬化樹脂や紫外線硬化樹脂、電子線硬化樹脂などが用いられている。
例えば、特許文献1では、ポリカーボネート樹脂フィルム又はシートの少なくとも一面に、紫外線吸収剤を0.1〜10重量%含有するアクリル樹脂フィルム又はシートが積層され、積層体の一方のアクリル樹脂層側にはハードコート処理が施されており、該積層体がハードコート処理層を外層として熱可塑性樹脂成形品に積層一体化されていることを特徴とする耐擦傷性に優れた樹脂成形品が提案されている。
そして、特許文献2には、ポリカーボネート樹脂層の一方の面に、厚さ50〜120μmのアクリル樹脂層を共押出しによって積層した総厚さが0.4〜1.5mmの積層体であって、アクリル樹脂層上にハードコート処理を施し、アクリル樹脂を共押出していない面が液晶側になる様に使用される液晶ディスプレーカバー用ポリカーボネート樹脂積層体が開示されており、このアクリル樹脂がベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリチル酸フェニルエステル系、トリアジン系の紫外線吸収剤を0.01〜3重量%含有することも記載されている。ハードコート処理は市販のハードコート剤などを用い、紫外線硬化や熱硬化により処理されている。
しかしながら、上述の各発明におけるハードコート層の形成は、紫外線硬化や熱硬化によりなされているので、アクリル樹脂フィルムの電子線照射後の着色を抑制し得るものではなかった。
一般的に樹脂板は、ガラスと比べて軽量であったり衝撃時の破損や飛散の危険がないといった特徴を持っているため、ガラス代替としての需要が高い。ガラス代替としてアクリル樹脂やポリカーボネート樹脂が選定される理由として、ガラスに匹敵する高い透明性が挙げられるが、電子線硬化型樹脂を用いたハードコート層をこれに形成する場合、上述の通り電子線照射によって基板に着色が発生するため、高透明性が損なわれる結果となる。
すなわち、本発明は、
[1]トリアジン系紫外線吸収剤を含有するアクリル樹脂フィルムからなる基材と電子線硬化型樹脂及びトリアジン系紫外線吸収剤を含有する電子線硬化型樹脂組成物の電子線硬化物からなるハードコート層とを有するハードコートシートをポリカーボネート樹脂基体上に有するハードコート樹脂成型体であって、該ハードコート層が該ハードコート樹脂成型体の表層に配置され、該ハードコートシートの紫外線透過率が波長350nmにおいて1.0%以下であることを特徴とするハードコート樹脂成型体、及び
[2]トリアジン系紫外線吸収剤を含有するアクリル樹脂フィルムからなる基材の上に、電子線硬化型樹脂及びトリアジン系紫外線吸収剤を含有する電子線硬化型樹脂組成物を積層する工程と、該電子線硬化型樹脂組成物の層に電子線照射し該層を架橋硬化してハードコート層を形成しハードコートシートを製造する工程と、該ハードコートシートをポリカーボネート樹脂基体に該基材側が該樹脂基体に対向するように熱融着する工程とを含むハードコート樹脂成型体の製造方法である。
ここで、紫外線透過率は、分光光度計(例えば、株式会社日立ハイテクノロジーズ製日立分光光度計U−4100)を用い、ハードコートシートの波長350nmでの透過率を測定する値である。
紫外線透過率が波長350nmにおいて1.0%以下とすることにより、ハードコートシートのアクリル樹脂フィルム及びハードコート樹脂成型体のポリカーボネート樹脂基体の変色を防止することができると共に、ハードコート樹脂成型体の耐候性を確保することができる。
本発明のハードコート樹脂成型体6は、少なくともハードコートシート4及びポリカーボネート樹脂基体5を有する。ハードコートシート4は、少なくとも基材1とハードコート層3を有し、基材1とハードコート層3との間に、更に所望によりプライマー層2を有することが好ましい。
本発明で用いられる基材1は、その表面にハードコート層などの層を形成でき、かつポリカーボネート樹脂基体5などの被転写体に熱融着し得るもの又は接着剤層や易接着層を介して接着し得るものであるという観点からアクリル樹脂フィルムが用いられる。アクリル樹脂は、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルの重合体であり、例えば、ポリメタクリル酸メチル樹脂が挙げられる。
本発明において、基材1として用いられるアクリル樹脂フィルムはトリアジン系紫外線吸収剤を含有する。トリアジン系紫外線吸収剤は、他の紫外線吸収剤と比較して、電子線照射後のアクリル樹脂の着色を起こしにくいので、アクリル樹脂フィルムの電子線照射後の着色を好適に抑制することができる。
基材1の厚さとしては、通常は25〜200μm程度である。厚さが25μm以上であれば、樹脂フィルムに皺、カール等の欠点が発生し難く、取り扱い易いので好ましい。一方、200μm以下であれば、熱融着時の熱伝導が早く、熱融着の作業性が良くなるので好ましい。上記の理由より、基材1の厚さは40〜125μmが好ましく、50〜100μmがより好ましい。
なお、基材1は、可撓性を持つ限り、印刷などで模様や文字などが付与されていても良い。
本発明に係る基材1には、紫外線吸収剤(UVA)として、トリアジン系紫外線吸収剤が用いられる。耐候性を有するために必須とされる紫外線吸収能が高く、また紫外線などの高エネルギーに対しても劣化しにくいばかりでなく、アクリル樹脂フィルムの電子線照射後の着色を抑制し得るからである。
トリアジン系紫外線吸収剤としては、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤である2−(2−ヒドロキシ−4−[1−オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジン(BASF社製、商品名「TINUVIN 479」)、2−(4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヒドロキシフェニル、とオキシラン{特に、[(C10―C16、主としてC12―C13アルキルオキシ)メチル]オキシラン}との反応生成物(BASF社製、商品名「TINUVIN 400」)、2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−4,6−ビス−(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンと(2−エチルヘキシル)−グリシド酸エステルの反応生成物(BASF社製、商品名「TINUVIN 405」)、2,4−ビス[2−ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル]−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3−5−トリアジン(BASF社製、商品名「TINUVIN 460」)などが挙げられる。
アクリル樹脂フィルム中のトリアジン系紫外線吸収剤の含有量は、アクリル樹脂100質量部に対して、0.1〜15質量部、より好ましくは0.5〜10質量部、更に好ましくは1〜7質量部である。
本発明に係る基材1には、耐候性を更に向上させるために、所望により光安定剤などの耐候性改善剤を含有させても良い。
光安定剤としては、ヒンダードアミン系の光安定剤(HALS)などが好ましく挙げられ、具体的には、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート(BASF社製、商品名「TINUVIN 292」)、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル)エステル、1,1−ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンの反応生成物、(BASF社製、商品名「TINUVIN 123」)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、メチル(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、2,4−ビス[N−ブチル−N−(1−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ]−6−(2−ヒドロキシエチルアミン)−1,3,5−トリアジン)などのヒンダードアミン系光安定剤が挙げられる。
アクリル樹脂フィルム中の光安定剤の含有量はアクリル樹脂100質量部に対して、通常0.05〜10質量部であり、好ましくは0.5〜7質量部、より好ましくは1〜5質量部であり、特に好ましくは2〜5質量部である。
ハードコート層3は、耐候性と耐傷性などのハードコート性などを付与する層であり、図1に示すように基材1の一方の面に設けられる。このハードコート層3は、電子線硬化型樹脂組成物を架橋硬化してなり、電子線硬化型樹脂としては、従来から電子線硬化型の樹脂として慣用されている重合性オリゴマー及び重合性モノマーの中から適宜選択して用いることができる。そのような電子線硬化型樹脂としては、重合性オリゴマー及び/又は重合性モノマー、特には、多官能の重合性オリゴマー及び/又は多官能の重合性モノマーが挙げられる。
電子線硬化型樹脂は、無溶媒で塗布することができ、取り扱いが容易である。
また、電子線硬化型樹脂組成物は光重合開始剤を含まないので、光重合開始剤に起因する臭気やハードコート層の着色を防ぐことができる。
重合性オリゴマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つオリゴマー、例えば、エポキシ(メタ)アクリレート系、ウレタン(メタ)アクリレート系やポリエーテル系ウレタン(メタ)アクリレートやカプロラクトン系ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート系、ポリエーテル(メタ)アクリレート系のオリゴマーなどが好ましく挙げられ、これらのうち、特に多官能性のウレタン(メタ)アクリレート系が、耐候性とハードコート性を両立させる点で好ましく、分子量としては、1000〜10000程度のものが好ましい。
ここで、多官能性とは、重合性オリゴマー又は重合性モノマーが、分子内に、複数のラジカル重合性不飽和基、好ましくは2〜20のラジカル重合性不飽和基、より好ましくは3〜10のラジカル重合性不飽和基を有することをいう。
重合性モノマーとしては、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイドトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
上述の重合性オリゴマー及び重合性モノマーは1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
ハードコート層3中のトリアジン系紫外線吸収剤の含有量は、ハードコート層3を形成する樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1〜5質量部、より好ましくは0.1〜2質量部である。0.1〜2質量部とすることにより、ハードコート層3の架橋阻害の影響を少なくし、耐傷性及び耐候性を向上できる。
ハードコート層3中の光安定剤の含有量は、ハードコート層3を形成する樹脂100質量部に対して、0.1〜25質量部、より好ましくは0.3〜10質量部、更に好ましくは0.5〜5質量部である。含有量が0.1質量部以上であればハードコート層が光劣化によって割れ、剥離等が生じるのを抑制でき、25質量部以下であれば電子線硬化型樹脂の架橋が阻害されることによるハードコート性の低下を軽減できる。
本発明に係るハードコート層3は、電子線反応性光安定剤(分子内に電子線反応性基を有する光安定剤)を含有することが更に好ましく、電子線反応性ヒンダードアミン系光安定剤を含有することが特に好ましい。これにより、架橋阻害の影響を少なくするため、耐傷性を向上することができると共に、耐候剤のブリードアウトを軽減できるので、ブリードアウトによる性能低下を効果的に抑制することが可能となる。ここで、電子線反応性基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基などのエチレン性二重結合を有する官能基が挙げられる。
光安定剤としては、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニルメタクリレート(BASF社製、商品名「サノール LS−3410」)又は(日立化成工業株式会社製、商品名「FA−711MM」)、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニルメタクリレート(日立化成工業株式会社製、商品名「FA−712HM」)などの電子線反応性ヒンダードアミン系光安定剤、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート(BASF社製、商品名「TINUVIN 292」)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、メチル(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、2,4−ビス[N−ブチル−N−(1−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ]−6−(2−ヒドロキシエチルアミン)−1,3,5−トリアジン)などのヒンダードアミン系光安定剤が挙げられる。
本発明において、所望により用いられる耐傷フィラーとしては、無機系と有機系のフィラーがあり、無機物では、例えば、α−アルミナ、シリカ、カオリナイト、酸化鉄、ダイヤモンド、炭化ケイ素等の球状粒子が挙げられる。粒子形状は、球、楕円体、多面体、鱗片形等が挙げられ、特に制限はないが、球状が好ましい。
また、本発明で用いられるハードコート層3用の電子線硬化型樹脂組成物には、その性能を阻害しない範囲で各種添加剤を含有することができる。各種添加剤としては、例えば重合禁止剤、架橋剤、帯電防止剤、接着性向上剤、酸化防止剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤などが挙げられる。
ハードコート層3の厚さとしては、通常は1〜20μm程度であり、優れた耐候性とその持続性、更には耐傷性や透明性、鏡面性とを得る観点から、3〜15μmが好ましい。
本発明において、基材1とハードコート層3との間にプライマー層2が配設されることが好ましい。
このプライマー層2は、ハードコート層3と基材1との層間密着性を向上させるために設けられる。それだけでなく、ハードコート層3に対する応力緩和層として機能し、ハードコート層3の耐候劣化による割れを抑制する効果も期待できる。
プライマー層としてはプライマー層を挟んで対峙する両層の密着性が向上する樹脂を適宜選定すれば良く、特に制限は無いが、柔軟性、強靭性及び弾性に優れている点で熱可塑性ウレタン樹脂が好ましい。このような特定のプライマー層3を設けることで、表面保護層3にかかるせん断力を緩和することができ、光劣化等により表面保護層3にクラックが発生することを抑制できる。
ウレタン樹脂としては、例えば、ポリエステル系、ポリエーテル系、アクリル系、ポリカーボネート系等の熱可塑性ウレタン樹脂を単独使用又は混合使用する。 熱可塑性ウレタン樹脂としては、例えば、架橋構造を持たないウレタン樹脂であって、その骨格構造が直線状又は枝分かれした構造を有するものが好適に挙げられる。また、水分等で硬化せず経時的安定性が良好な点で、イソシアネート基を持たない飽和熱可塑性ウレタン樹脂も好適である。 一方、耐水性が特に要求される場合などは、ある程度架橋構造を有するウレタン樹脂が好適であり、特に強靭性が要求される場合には、ポリエステル系ウレタンアクリル共重合体、ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体が好適である。
プライマー層2にハードコート層3で用いられる電子線硬化型樹脂と反応性を有する樹脂を含有しても良い。これにより、プライマー層2とハードコート層3の層間密着性が向上する。特に、厳しい耐候性試験の後であってもその密着性は落ちないことから、本発明に係るハードコートフィルム4は、耐久性の高い、すなわち、長時間屋外で使用されても密着性が維持されるものとなる。
ここで、ジイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族系イソシアネートや、イソホロンジイソシアネート、水素転化キシリレンジイソシアネートなどの脂環式系イソシアネートが好ましく挙げられる。アクリルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸やアルキル基の炭素数が1〜6程度の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
プライマー層2中のトリアジン系紫外線吸収剤の含有量は、プライマー層2を形成する樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1〜50質量部、より好ましくは1〜40質量部、更に好ましくは10〜35質量部であり、特に好ましくは20〜35質量部である。
また、プライマー層2中のヒンダードアミン系光安定剤の含有量は、プライマー層2を形成する樹脂100質量部に対して、0.05〜15質量部、より好ましくは0.5〜12質量部、更に好ましくは1〜10質量部であり、特に好ましくは3〜10質量部である。
以上のようにして得られるハードコートシート4の基材1側を、ポリカーボネート樹脂基体5に、接着又は熱融着して、ハードコート層3を有するハードコート樹脂成型体6が得られる(図1参照)。
ハードコート樹脂成型体を形成するポリカーボネート樹脂基体5は、いわゆるポリカーボネートシートと呼ばれるものであり、通常、板状のものが用いられる。その厚さは、通常は0.5〜30mmであり、加工性や施工しやすさ、透明性等により2〜15mmの範囲が好ましい。
本発明の第2の発明であるハードコート樹脂成型体6の製造方法は、トリアジン系紫外線吸収剤を含有するアクリル樹脂フィルムからなる基材1の上に、電子線硬化型樹脂及びトリアジン系紫外線吸収剤を含有する電子線硬化型樹脂組成物を積層する工程(以下、「第1工程」ということがある。)と、該電子線硬化型樹脂組成物の層に電子線照射し該層を架橋硬化してハードコート層3を形成しハードコートシート4を製造する工程(以下、「第2工程」ということがある。)と、該ハードコートシート4をポリカーボネート樹脂基体5に該基材側が該樹脂基体に対向するように熱融着する工程(以下、「第3工程」ということがある。)とを含むことを特徴とする。上記の第1工程は、アクリル樹脂フィルムからなる基材1の上に、プライマー層2を積層する工程(以下、「第1−a工程」ということがある。)と、プライマー層2の上に電子線硬化型樹脂及びトリアジン系紫外線吸収剤を含有する電子線硬化型樹脂組成物を積層する工程(以下、「第1−b工程」ということがある。)とを含むことが好ましい。
トリアジン系紫外線吸収剤を含有するアクリル樹脂フィルムからなる基材1の上に、所望によりプライマー層2を積層する工程である。プライマー層2の樹脂組成物として、上記熱可塑性ウレタン樹脂を含む組成物をそのままで又は溶媒に溶解若しくは分散させた状態のものを用い、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコートなどの公知の方式、好ましくはグラビアコートにより塗布が行われる。塗布後、必要に応じ、乾燥が行われる。
(第1工程又は第1−b工程)
基材1又はプライマー層2の上に電子線硬化型樹脂及びトリアジン系紫外線吸収剤を含有する電子線硬化型樹脂組成物を積層する工程である。硬化後の厚さが通常1〜20μm程度となるように、第1−a工程と同様の公知の方式、好ましくはグラビアコートにより行われる。
なお、樹脂組成物が溶剤を含むような場合は、樹脂組成物の架橋反応が阻害されないよう、塗布後、熱風乾燥機などにより塗布層を予め加熱乾燥してから電子線を照射することが好ましい。
上記の電子線硬化型樹脂組成物の層に電子線照射し該層を架橋硬化してハードコート層3を形成しハードコートシート4を製造する工程である。ここで、電子線の加速電圧については、用いる樹脂や層の厚さに応じて適宜選定し得るが、通常加速電圧70〜300kV程度で未硬化樹脂層を硬化させることが好ましい。
本発明において、架橋硬化するための電子線照射線量は、通常30〜150kGyの範囲である。30kGy以上であれば、架橋硬化に十分であり、150kGy以下であれば、架橋以外の崩壊が起こる影響が耐傷性等の物性面において寄与しない。以上の点から更に50〜120kGyがより好ましい。
電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器を用いることができる。
得られたハードコートシート4をポリカーボネート樹脂基体5に、ハードコートシート4の基材1側がポリカーボネート樹脂基体5に対向するように、熱融着する工程である。熱融着する部分を、ホットエアー処理、フレーム処理(ガス火炎等により被熱融着部を加熱溶融する。)などの公知処理方法により熱融着すれば良い。この手法の場合、接着剤層又は易接着層を設けなくても良いので、工程を簡素化でき、経済性も高いので、好ましい。
より密着性を向上させるために、ハードコートフィルム4とポリカーボネート樹脂基体5との少なくとも一方に接着剤層又は易接着層を設けて、上記方法にて熱融着させても良い。また、熱融着処理方法を望まない場合は、ハードコートフィルム4とポリカーボネート樹脂基体5との少なくとも一方に接着剤層又は易接着層を設けて、接着処理(ラミネート)により本発明のハードコート樹脂成型体を製造しても良い。
これらの接着手法では、接着時に電子線照射するような接着処理(ラミネート)ではないので、ポリカーボネート基体に電子線照射することがなく、電子線照射によるポリカーボネート基体の変色を防止できる。
上記の製造法のいずれかにより、本発明のハードコート樹脂成型体6が得られる。
(評価方法)
(1)紫外線透過率
実施例及び比較例で得られた耐候ハードコートシートにおいて、株式会社日立ハイテクノロジーズ製日立分光光度計U−4100を用い、波長350nmでの透過率を測定した。
(2)色差
実施例及び比較例で得られた耐候ハードコートシートにおいて、各硬化反応終了後7日後の色差と基材フィルムの色差との差ΔEを測定し、その値を下記の基準で評価した。
○ :ΔE≦1.0
× :ΔE>1.0
実施例及び比較例で得られたハードコート樹脂成型体を、ダイプラ・ウィンテス株式会社製メタルウェザーにセットし、ライト条件(照度:60mW/cm2、ブラックパネル温度63℃、層内湿度50%RH)で20時間、結露条件(照度:0mW/cm2、ブラックパネル温度30℃、層内湿度98%RH)で4時間、水噴霧条件(結露条件の前後10秒間)の条件で500時間放置する耐候性試験を行った。該試験後、25℃50%RHの条件下で2日間保持してから、板表面のクラックや黄変などの外観を目視で下記の基準により評価した。
(塗膜外観)
○ :外観変化は全くなかった。
△ :表面に微細なクラックがあった。
× :表面に無数のクラックがあった。
(基材黄変)
○ :外観変化は全くなかった。
△ :若干の黄変がみられた。
× :著しく黄変した。
実施例及び比較例で得られたハードコート樹脂成型体について、スチールウール(日本スチールウール株式会社製、ボンスター#0000)を用いて、300g/cm2の荷重をかけて5往復擦り、外観を目視で評価した。評価基準は以下の通りである。
○ :外観にほとんど変化なかった。
△ :外観に微細の傷つきや艶変化があった。
× :外観に傷つきがあり、艶変化があった。
(5)ブリードアウトの評価
実施例及び比較例で得られたハードコート樹脂成型体を80℃温水下で24時間保管した後、ハードコート樹脂成型体の表面を指で触って、下記の基準で評価した。
○ :べたつきは全くなかった。
△ :紫外線吸収剤などのブリードによるべたつきは若干あるが、実用上問題なかった。
× :ブリードによるべたつきが著しかった。
(6)耐薬品性
実施例及び比較例で得られたハードコート樹脂成型体について、ラッカーシンナー(小原化学塗料株式会社製)をスポイトで数滴滴下し時計皿で蓋をして24時間放置した後、滴下したラッカーシンナーを拭き取り、外観を目視で評価した。評価基準は以下のとおりである。
○ :外観にほとんど変化なかった
× :外観に溶解や変色、艶変化があった
基材1に厚さ100μmのトリアジン系紫外線吸収剤(後述の*1参照)をアクリル樹脂100質量部に対して1質量部含有するアクリル樹脂(ポリメタクリル酸メチル樹脂)フィルムを用い、該基材1の片面に下記プライマー層2を膜厚3μmとなるように塗布し、その上から下記ハードコート層3を膜厚5μmとなるように塗布した後、165kV−100kGyの条件で電子線を照射して硬化させ、ハードコートシート4を得た。該ハードコートシート4を樹脂成型体5(ポリカーボネート板、厚さ2mm)の片面に160℃の条件でホットエアー処理により熱融着して、ハードコート樹脂成型体6を得た。得られたハードコート樹脂成型体6を上記の方法により、紫外線透過率、色差、耐候性(外観)、耐候性(基材黄変)、耐傷性、ブリードアウト及び耐薬品性を評価した。結果を第1表に示す。
(プライマー層)
ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体100質量部に対して、トリアジン系紫外線吸収剤(後述の*3参照)30質量部、ヒンダードアミン系光安定剤(後述の*4参照)8質量部、ヘキサメチレンジイソシアネート硬化剤7質量部を添加した。
(ハードコート層)
6官能ウレタンアクリレート100質量部に対してトリアジン系紫外線吸収剤(後述の*6参照)0.7質量部、電子線反応性ヒンダードアミン系光安定剤(後述の*8参照)4.3質量部を添加した。
プライマー層を塗布せず、基材1の片面にハードコート層3を膜厚5μmとなるように塗布した以外は、実施例1と同じようにしてハードコート樹脂成型体6を得た。実施例1と同様にして評価した結果を第1表に示す。
ハードコート層組成物において、電子線反応性ヒンダードアミン系光安定剤(後述の*7参照)4.3質量部を用いず、非反応性ヒンダードアミン系光安定剤(後述の*8参照)4.3質量部を用いた以外は、実施例1と同じようにしてハードコート樹脂成型体6を得た。実施例1と同様にして評価した結果を第1表に示す。
ハードコート層組成物のトリアジン系紫外線吸収剤(後述の*6参照)0.7質量部を4.7質量部に増量した以外は、実施例1と同じようにしてハードコート樹脂成型体6を得た。実施例1と同様にして評価した結果を第1表に示す。
ハードコート層組成物のトリアジン系紫外線吸収剤(後述の*6参照)0.7質量部を1.5質量部に増量した以外は、実施例1と同じようにしてハードコート樹脂成型体6を得た。実施例1と同様にして評価した結果を第1表に示す。
ハードコート層組成物の6官能ウレタンアクリレート100質量部を3官能ウレタンアクリレート100質量部に変更した以外は、実施例1と同じようにしてハードコート樹脂成型体6を得た。実施例1と同様にして評価した結果を第1表に示す。
実施例7
基材のトリアジン系紫外線吸収剤(後述の*1参照)1質量部を0.1質量部に減量し、プライマー層を塗布せず、ハードコート層組成物のトリアジン系紫外線吸収剤(後述の*6参照)0.7質量部を2.3質量部に増量した以外は、実施例1と同じようにしてハードコート樹脂成型体6を得た。実施例1と同様にして評価した結果を第1表に示す。
基材として、アクリル樹脂100質量部に対してベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(後述の*2参照)1質量部を含有するアクリル樹脂(ポリメタクリル酸メチル樹脂)フィルム(厚さ100μm)を用いた以外は実施例1と同じようにしてハードコート樹脂成型体を得た。実施例1と同様にして評価した結果を第1表に示す。
ハードコート層組成物として6官能ウレタンアクリレート100質量部に対してトリアジン系紫外線吸収剤(後述の*6参照)を添加せず、電子線反応性ヒンダードアミン系光安定剤(後述の*8参照)4.3質量部を添加した組成物を用いた以外は実施例1と同じようにしてハードコート樹脂成型体を得た。実施例1と同様にして評価した結果を第1表に示す。
基材として、アクリル樹脂100質量部に対して紫外線吸収剤を含有しないアクリル樹脂(ポリメタクリル酸メチル樹脂)フィルム(厚さ100μm)を用い、ハードコート層組成物として6官能ウレタンアクリレート100質量部に対してトリアジン系紫外線吸収剤(後述の*6参照)を添加せず、電子線反応性ヒンダードアミン系光安定剤(後述の*8参照)4.3質量部を添加した組成物を用い、プライマー層組成物としてポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体100質量部に対して、トリアジン系紫外線吸収剤を添加せず、ヒンダードアミン系光安定剤(後述の*4参照)8質量部、ヘキサメチレンジイソシアネート硬化剤7質量部を添加した組成物を用いた以外は実施例1と同じようにしてハードコート樹脂成型体を得た。実施例1と同様にして評価した結果を第1表に示す。
ハードコート層組成物としてアクリルポリオール(後述の*5参照)100質量部に対してヘキサメチレンジイソシアネート硬化剤7質量部、トリアジン系紫外線吸収剤(後述の*6参照)0.7質量部、電子線反応性ヒンダードアミン系光安定剤(後述の*8参照)4.3質量部を添加した組成物を用いて熱硬化によりハードコートシートを得た以外は、実施例1と同じようにしてハードコート樹脂成型体を得た。実施例1と同様にして評価した結果を第1表に示す。
*1: 2−(2−ヒドロキシ−4−[1−オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジン(BASF社製、商品名「TINUVIN 479」)
*2: 2−(2−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、(BASF社製、商品名「TINUVIN PS」)
*3: 2−(4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヒドロキシフェニル、とオキシラン{[(C10―C16、主としてC12―C13アルキルオキシ)メチル]オキシラン}との反応生成物(BASF社製、商品名「TINUVIN 400」):17質量部
BASF社製、商品名「TINUVIN 479」:13質量部
*4: デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル)エステル、1,1−ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンの反応生成物、(BASF社製、商品名「TINUVIN 123」)
*5: 大日本インキ工業株式会社製、商品名「UCグロスG−120」、
*6: BASF社製、商品名「TINUVIN 479」
*7: BASF社製、商品名「TINUVIN 123」
*8: 1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニルメタクリレート(BASF社製、商品名「サノール LS−3410」)
また、実施例1〜7のハードコート樹脂成型体は、いずれも耐候性(外観)及び耐傷性の両方が良好であった。実施例4のハードコート樹脂成型体は、電子線反応性ヒンダードアミン系光安定剤を含有するので、ブリードアウトしにくく、実施例3のハードコート樹脂成型体と同程度のブリードアウトしにくさであった。
一方、比較例2のハードコート樹脂成型体は、表面に無数のクラックが発生し、耐候性(外観)に劣った。比較例3のハードコート樹脂成型体は、表面に無数のクラックが発生し、耐候性(外観)に劣ると共に、表面が著しく黄変し、耐候性(基材黄変)も劣った。また、比較例4のハードコート樹脂成型体は、耐傷性の評価において外観に傷つき及び艶変化があり、耐傷性に劣り、ブリードによるべたつきが著しかった。
2.プライマー層
3.ハードコート層
4.ハードコートシート
5.ポリカーボネート樹脂基体
6.ハードコート樹脂成型体
Claims (5)
- トリアジン系紫外線吸収剤を含有するアクリル樹脂フィルムからなる基材と電子線硬化型樹脂及びトリアジン系紫外線吸収剤を含有する電子線硬化型樹脂組成物の電子線硬化物からなるハードコート層とを有するハードコートシートをポリカーボネート樹脂基体上に有するハードコート樹脂成型体であって、該ハードコート層が該ハードコート樹脂成型体の表層に配置され、該ハードコートシートの紫外線透過率が波長350nmにおいて1.0%以下であり、該電子線硬化型樹脂が6〜10官能のウレタンアクリレートオリゴマーを含有してなり、該基材と該ハードコート層との間に、ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体を含有してなるプライマー層を有することを特徴とするハードコート樹脂成型体。
- 前記ハードコート層が、電子線反応性ヒンダードアミン系光安定剤を含有する請求項1に記載のハードコート樹脂成型体。
- 前記プライマー層がトリアジン系紫外線吸収剤及び/又はヒンダードアミン系光安定剤を含有する請求項1又は2に記載のハードコート樹脂成型体。
- 前記ハードコート層のトリアジン系紫外線吸収剤含有量が、電子線硬化型樹脂100質量部に対して、0.1〜2.0質量部である請求項1〜3のいずれかに記載のハードコート樹脂成型体。
- トリアジン系紫外線吸収剤を含有するアクリル樹脂フィルムからなる基材の上に、ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体を含有してなるプライマー層を形成する工程と、該プライマー層の上に電子線硬化型樹脂及びトリアジン系紫外線吸収剤を含有する電子線硬化型樹脂組成物を積層する工程と、該電子線硬化型樹脂組成物の層に電子線照射し該層を架橋硬化してハードコート層を形成しハードコートシートを製造する工程と、該ハードコートシートをポリカーボネート樹脂基体に該基材側が該樹脂基体に対向するように熱融着する工程とを含んでなり、該電子線硬化型樹脂が6〜10官能のウレタンアクリレートオリゴマーを含有してなるハードコート樹脂成型体の製造方法。
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