JP5730093B2 - フッ化ビニリデン系重合体の製造方法 - Google Patents
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Description
前記懸濁重合が、親水性‐親油性バランス(HLB)が1〜8のソルビタン脂肪酸エステルの存在下で行われることを特徴とする。
前記懸濁重合を行う際に、前記モノマー100質量部に対して、懸濁剤が0.02質量部以上、0.25質量部未満、前記ソルビタン脂肪酸エステルが0.01質量部以上、0.5質量部未満存在することが好ましい。
本発明のフッ化ビニリデン系重合体の製造方法は、フッ化ビニリデンを主成分とするモノマーを、懸濁剤を含む水性媒体中に分散し、懸濁重合を行うことにより、フッ化ビニリデン系重合体を製造する方法であり、前記懸濁重合が、親水性‐親油性バランス(HLB)が1〜8のソルビタン脂肪酸エステルの存在下で行われることを特徴とする。
本発明のフッ化ビニリデン系重合体の製造方法では、フッ化ビニリデンを主成分とするモノマーを原料として用いる。
前記カルボキシル基含有モノマーとしては、不飽和一塩基酸、不飽和二塩基酸、不飽和二塩基酸のモノエステル等が好ましい。
前記カルボン酸無水物基含有モノマーとしては、前記不飽和二塩基酸の酸無水物、具体的には、無水マレイン酸、無水シトラコン酸が挙げられる。
本発明のフッ化ビニリデン系重合体の製造方法では、懸濁剤を用いる。
懸濁剤としては、特に限定はないが、メチルセルロース、メトキシ化メチルセルロース、プロポキシ化メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ゼラチン等を用いることができる。
ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等が好ましい。
懸濁剤の使用量としては、懸濁重合を行う際に使用する全モノマー(フッ化ビニリデンを主成分とするモノマー)100質量部に対して0.02質量部以上、0.25質量部未満存在することが好ましく、0.03質量部以上、0.2質量部未満存在することがより好ましく、0.05質量部以上、0.1質量部以下存在することが特に好ましい。前記範囲内では、モノマーの懸濁粒子が安定であり、気泡の発生も少なく好ましい。
本発明のフッ化ビニリデン系重合体の製造方法では、前述のように水性媒体中に前記フッ化ビニリデンを主成分とするモノマーを分散させ、懸濁重合を行う。
本発明のフッ化ビニリデン系重合体の製造方法は、懸濁重合を親水性‐親油性バランス(HLB)が1〜8のソルビタン脂肪酸エステルの存在下で行うことを特徴とする。
HLBを求める方法としては、幾つかの方法があるが、本発明においてHLBは、Griffinの式によって決定される値である。
本発明に用いるソルビタン脂肪酸エステルとしては、HLBが1〜8であればよいが、通常は、ソルビタンのトリ脂肪酸エステル、ソルビタンのジ脂肪酸エステル、ソルビタンのモノ脂肪酸エステル、およびこれらの混合物を用いることができる。
本発明のフッ化ビニリデン系重合体の製造方法は、前述のようにフッ化ビニリデンを主成分とするモノマーを、懸濁剤を含む水性媒体中に分散し、懸濁重合を行うが、該懸濁重合が、前記HLBが1〜8のソルビタン脂肪酸エステルの存在下で行われることを特徴とする。
本発明のフッ化ビニリデン系重合体の製造方法は、懸濁重合をHLBが1〜8のソルビタン脂肪酸エステルの存在下で行うことにより実施可能であり、付帯設備の増加を必要としない。また、本発明のフッ化ビニリデン系重合体の製造方法は、重合系内のスケール付着の増大がおこらない。
本発明の製造方法で得られるフッ化ビニリデン系重合体は、嵩密度が高い。具体的には、本発明の製造方法で得られるフッ化ビニリデン系重合体の嵩密度は、通常は0.46g/cm3以上であり、好ましくは0.50g/cm3以上である。また、嵩密度の上限としては特に限定はないが、通常は0.80g/cm3以下である。
また、本発明の製造方法で得られるフッ化ビニリデン系重合体のインヘレント粘度(樹脂4gを1リットルのN,N−ジメチルホルムアミドに溶解させた溶液の30℃における対数粘度。以下、同様)は、0.5〜5.0dl/gの範囲内の値であることが好ましく、1.0〜4.0dl/gの範囲内の値であることがより好ましい。
実施例、比較例で得られたフッ化ビニリデン系重合体粉末の物性は以下の方法で測定した。
1リットルのN,N−ジメチルホルムアミドに、フッ化ビニリデン系重合体粉末4gを添加し、80℃で8時間かけて溶解させた溶液を調整した。この溶液を30℃に保持してウベローデ粘度計で対数粘度を測定し、下式によりインヘレント粘度を求めた。
対数粘度[η]=ln(ηrel)/C
ここでηrelは、試料溶液の落下秒数/溶媒の落下秒数、Cは試料溶液の濃度(0.4g/dl)を表す。
フッ化ビニリデン系重合体粉末をエポキシ樹脂で固定し、ミクロトームを用いて冷却下で粒子を切断した。切断した粒子断面を上にしてSEM試料台に固定し、白金をスパッタし、フッ化ビニリデン系重合体粉末の断面についてSEM観察を行った。
フッ化ビニリデン系重合体粉末の粒度分布を、(株)平工製作所製ロータップ式II型ふるい振とう機D型を用い、JIS K 0069−3.1に従って、乾式ふるい分け法により測定した。平均粒径の算出は、粒度分布の測定結果を元に、対数正規分布法にて求めた。平均粒径は、粒度累積分布において、50%累積値(D50)を示す粒径とした。
フッ化ビニリデン系重合体粉末の嵩密度は、JIS K 6721−3.3「かさ比重」の測定法に従って測定した。具体的には、充分にかき混ぜた粉末試料約120mlを嵩比重測定装置のダンパーを差し込んだ漏斗に入れた後、速やかにダンパーを引抜き、試料を受器に落とす。受器から盛り上がった試料は、ガラス棒ですり落とした後、試料の入った受器の質量を0.1gまで正確に量り、次の式によって嵩密度を求めた。
S=(C−A)/B
S:嵩密度(g/cm3)
A:受器の質量(g)
B:受器の内容積(cm3)
C:試料の入った受器の質量(g)
測定は3回行い、平均値を算出した。試験結果は、小数点以下3桁まで測定した数値を、3桁目を四捨五入することにより丸めて表示した。
内容積2リットルのオートクレーブに、1024gのイオン交換水、0.2gのメチルセルロース、400gのフッ化ビニリデン、0.6gのジイソプロピルパーオキシジカーボネート(IPP)、1.8gの酢酸エチルを仕込み、26℃で19時間懸濁重合を行った。懸濁重合の重合収率は90%であった。なお、重合収率は、仕込みのモノマー質量と、得られたポリマー質量との比から算出した。
得られたフッ化ビニリデン系重合体粉末(c1)のインヘレント粘度は3.2dl/g、平均粒径は170μm、嵩密度は0.38g/cm3であった。また、フッ化ビニリデン系重合体粉末(c1)の断面のSEM写真を図1に示す。
内容積2リットルのオートクレーブに、1024gのイオン交換水、0.4gのメチルセルロース、0.2gのソルビタントリオレエート(span85、下記式(1)参照)、400gのフッ化ビニリデン、0.6gのジイソプロピルパーオキシジカーボネート(IPP)、1.8gの酢酸エチルを仕込み、26℃で31時間懸濁重合を行った。懸濁重合の重合収率は89%であった。
得られたフッ化ビニリデン系重合体粉末(1)のインヘレント粘度は3.1dl/g、平均粒径は150μm、 嵩密度は0.46g/cm3であった。また、フッ化ビニリデン系重合体粉末(1)の断面のSEM写真を図2に示す。
内容積2リットルのオートクレーブに、1024gのイオン交換水、0.2gのメチルセルロース、0.4gのソルビタントリオレエート(span85)、400gのフッ化ビニリデン、0.6gのジイソプロピルパーオキシジカーボネート(IPP)、1.8gの酢酸エチルを仕込み、26℃で79時間懸濁重合を行った。懸濁重合の重合収率は89%であった。
得られたフッ化ビニリデン系重合体粉末(2)のインヘレント粘度は3.1dl/g、平均粒径は220μm、嵩密度は0.53g/cm3であった。また、フッ化ビニリデン系重合体粉末(2)の断面のSEM写真を図3に示す。
内容積2リットルのオートクレーブに、1024gのイオン交換水、0.4gのメチルセルロース、0.2gのソルビタンモノラウレート(span20、下記式(2)参照)、400gのフッ化ビニリデン、0.6gのジイソプロピルパーオキシジカーボネート(IPP)、1.8gの酢酸エチルを仕込み、26℃で53時間懸濁重合を行った。しかし、オートクレーブ内で重合物がクランプ(懸濁粒子が充分にできずに、大きな塊)となり、正常な懸濁重合粒子が得られなかった。
Claims (4)
- フッ化ビニリデンを主成分とするモノマーを、懸濁剤を含む水性媒体中に分散し、懸濁重合を行うことにより、フッ化ビニリデン系重合体を製造する方法であり、
前記懸濁重合が、親水性‐親油性バランス(HLB)が1〜8のソルビタン脂肪酸エステルの存在下で行われることを特徴とするフッ化ビニリデン系重合体の製造方法。 - 前記懸濁剤が、セルロース誘導体である請求項1に記載のフッ化ビニリデン系重合体の製造方法。
- 前記懸濁重合を行う際に、前記モノマー100質量部に対して、懸濁剤が0.02質量部以上、0.25質量部未満、前記ソルビタン脂肪酸エステルが0.01質量部以上、0.5質量部未満存在する請求項1または2に記載のフッ化ビニリデン系重合体の製造方法。
- 得られるフッ化ビニリデン系重合体の嵩密度が0.46g/cm3以上である請求項1〜3のいずれか一項に記載のフッ化ビニリデン系重合体の製造方法。
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