以下、本発明の好適な実施の形態を図面に基づいて説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
図1は、本実施形態の流体動圧軸受を適用した回転機器の一例であるディスク駆動装置100の内部構成を説明する説明図である。なお、図1は、内部構成を露出させるためにカバーを取り外した状態を示している。
ベース部材10の上面には、ブラシレスモータ114、アーム軸受部116、ボイスコイルモータ118等が載置される。ブラシレスモータ114は、回転軸を中心に回転すると共に記録ディスク120を搭載するハブ20を有する。記録ディスク120は回転駆動させられることにより磁気的にデータを記録可能な媒体である。ブラシレスモータ114は、例えばスピンドルモータとすることができる。ブラシレスモータ114はU相、V相、W相からなる3相の駆動電流により駆動される。アーム軸受部116は、スイングアーム122を可動範囲AB内でスイング自在に支持する。ボイスコイルモータ118は外部からの制御データにしたがってスイングアーム122をスイングさせる。スイングアーム122の先端には磁気ヘッド124が取り付けられている。ディスク駆動装置100が稼働状態にある場合、磁気ヘッド124はスイングアーム122のスイングに伴って記録ディスク120の表面を僅かな隙間を介して可動範囲AB内で移動し、データをリード/ライトする。なお、図1において、点Aは記録ディスク120の最外周の記録トラックの位置に対応する点であり、点Bは記録ディスク120の最内周の記録トラックの位置に対応する点である。スイングアーム122は、ディスク駆動装置100が停止状態にある場合には記録ディスク120の脇に設けられる待避位置に移動してもよい。
本実施形態において、記録ディスク120、スイングアーム122、磁気ヘッド124、ボイスコイルモータ118等のデータをリード/ライトする構造を全て含むものをディスク駆動装置と表現する場合もあるし、HDDと表現する場合もある。また、記録ディスク120を回転駆動する部分のみをディスク駆動装置と表現する場合もある。
図2は、ブラシレスモータを含むディスク駆動装置100の回転軸部22の軸方向に沿う概略断面図である。ディスク駆動装置100は、固定ユニットS、回転ユニットRを含む。固定ユニットSは、ベース部材10、ステータコア12、ハウジング14、スリーブ16を含む。回転ユニットRは、ハブ20、回転軸部22、マグネット24、スラスト部材26を含む。ベース部材10は、円筒部10aを含み、ハウジング14は、溝14a、底部14b、ハウジング筒部14c、ハウジング平坦部14dを含む。スリーブ16は、円筒部内周面16a、周状張出部16b、スリーブ筒部16cを含み、ステータコア12には、コイル18が巻きつけられている。本実施形態においてハブ20と回転軸部22は回転体200を構成する。回転軸部22は、回転軸となる円柱部22aと、この円柱部22aの一端から回転軸に対して実質的に直角方向である半径方向外側に延設される張出部22bとが一体形成された形状である。また、ハブ20は、中心孔20a、円環部20b、載置座部20c、台座部20dを含む。ハブ20の中心孔20aの内周面と回転軸部22の張出部22bの外周面とが接着剤や溶接などの手段またはその組合せにより接合され、ハブ20と回転軸部22とは実質的に一体部品となり回転体200を構成する。なお、回転体200の詳細は後述する。以下の説明では、全体として、便宜上説明図に示された下方を下と、上方を上と表現する。
ベース部材10は、中心部分の孔部10bと、この孔部10bを囲むように設けられた円筒部10aとを有する。ベース部材10は、孔部10bによってハウジング14を保持する。また、ベース部材10は、ハウジング14を環囲する円筒部10aの外周側にステータコア12を固着する。なお、ハウジング14の外周側と、円筒部10aの内周側との間に環状の第1領域部40が形成されている。第1領域部40は、ベース部材10の孔部10bを囲むような形状を有する。ベース部材10は、アルミダイキャストを切削加工するか、アルミ板をプレス加工またはプレス加工した鉄板にニッケルメッキを施して形成することができる。
ステータコア12は、円筒部10aの外周面に固着される。ステータコア12は、ケイ素鋼板等の磁性材が積層された後、表面に電着塗装や粉体塗装等による絶縁コーディングが施されて形成される。また、ステータコア12は、図3に示すように、外方向に突出する複数の突極12aを有するリング状であり、各突極12aにはコイル18が巻回されている。突極数は、例えばディスク駆動装置100が3相駆動であれば9極とされる。突極12aは、コイル18が巻かれる棒状体12bと、棒状体12bの径方向外側に設けられ、周方向に延在する歯部12cとを有する。歯部12cの外周面12dは、円弧形状に形成される。
実施形態に係るディスク駆動装置100は、小型化の要請に応じて駆動時に発生する振動を低減するため、トルクリップルおよびコギングトルクを小さくすることが好ましい。ディスク駆動装置100では、コイル18により形成される磁束と、マグネット24の磁極との相互作用により駆動トルクが生成される。トルクリップルは、この駆動トルクに含まれる脈動成分であり、回転時のトルクの変動幅である。コギングトルクは、非通電状態で回転体200を動かしたときに発生し、ステータコア12の突極12aおよびマグネット24の着磁の要因により発生する、脈動するトルクである。
実施形態に係るステータコア12は、歯部12cの周方向の端に位置する周端12eが、歯部12cの径方向最外端に位置する突端12gを通る外接円12fより径方向内側に位置するように形成される。周端12eは、歯部12cの周方向の端のとがった先端である。発明者らは、図4(a)〜図4(c)に示すように、突極12aの歯部12cの形状を様々に変化させたステータコア12を作成し、コギングトルクおよびトルクリップルの変化を測定した。図4(a)に示すステータコア12の歯部12cは、その外周面12dの全体が外接円12fと同じ曲率半径となるように形成されている。図4(b)に示すステータコア12の歯部12cは、図4(a)の歯部12cの外周面12dの端部を削った形状を有し、外周面12dの中央部が外接円12fと同じ曲率半径であるものの、歯部12cの周端12eが外接円12fより径方向内側に位置する。図4(c)の歯部12cの周端12eは、図4(b)に比べてさらに外接円12fより径方向内側に位置する。
非通電状態で回転体200を回転させるとコイル18に逆起電力が発生する。この逆起電力が正弦曲線に近いほど、コギングトルクおよびトルクリップルが低減され、駆動時に回転体200が滑らかに回転することが可能となり、駆動時の振動を低減することができる。図4(a)〜図4(c)の構造における逆起電力を比較すると、図4(a)の構成の場合の逆起電力が正弦曲線から最も乖離し、図4(c)の構成の場合の逆起電力が正弦曲線に最も近い形状となった。つまり、周端12eが、歯部12cの径方向最外端に位置する突端12gを通る外接円12fより径方向内側に位置するように形成される程、コギングトルクおよびトルクリップルを低減して駆動時に発生する振動を低減することができることを発明者らは見いだした。
コイル18の巻き線端末は、ベース部材10の底面に配設されたFPC(フレキシブル基板)上に半田付けされている。引き出された線端末は解けないように接着剤で固定される。この固定は、超音波洗浄時等に線端末が共振し大きな振幅で振動し断線することを防止するためになされる。所定の駆動回路によりFPCを通じて3相の略正弦波状の電流がコイル18に通電されると、コイル18はステータコア12の突極に回転磁界を発生する。マグネット24の駆動用磁極と、当該回転磁界との相互作用により回転駆動力が生じ、回転ユニットRが回転する。
なお、リング状のマグネット24の軸方向下端面と隙間を介して対向するベース部材10上の位置に吸引プレート44が固定されている。吸引プレート44は、リング状の部材であり、軟磁性材料で例えば冷間圧延鋼板をプレスすることで形成される。吸引プレート44はマグネット24と間に軸方向の磁気的吸引力を生じる。つまり、吸引プレート44は回転ユニットRが回転時に受ける浮上力と逆方向の回転体吸引力を生じさせる。そして、回転ユニットRの回転時に浮上力と回転体吸引力と回転ユニットに加わる重力とがバランスして周囲の部材と非接触で当該回転ユニットRが回転するようにしている。
ハウジング14は、円筒部10aの孔部10bの内周面に接着または圧入により固着される。また、ハウジング14は、スリーブ16を環囲するハウジング筒部14cと、張出部22b側の端部に設けられアキシャル方向の面を有するハウジング平坦部14dと、ハウジング筒部14cのうちのハウジング平坦部14dとは反対側の端部を密閉する底部14bとを結合した略カップ状をなす。このような形状によって、ハウジング14は、スリーブ16の下端を塞ぎ、かつスリーブ16の上端を突出させるように配置する。なお、底部14bとハウジング筒部14cとが一体に形成されてもよく、底部14bとハウジング筒部14cとが別の部材として固着して形成されてもよい。ハウジング14は、銅系の合金、粉末冶金による焼結合金、ステンレスのほか、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアミドなどのプラスチック材料によっても形成されてもよい。ハウジング14にプラスチック材料を用いる場合は、ディスク駆動装置100の静電気除去性能を確保するため、固有抵抗が10の6乗(Ω・m)以下となるよう、プラスチック材料にカーボン繊維を含ませて構成することが望ましい。
ハウジング14の内周面には、アキシャル方向に延在する溝14aが形成されている。この溝14aは、ハウジング筒部14c内にスリーブ16を嵌合させた際、ハウジング14の両端面側を連結する連通孔となる。連通孔は、潤滑剤28が充填されることによって連通路Iとなる。溝14aの断面形状は、凹んだ円弧状や凹部とすることができる。この連通路Iについては後述する。
スリーブ16は、ハウジング14の内周面に接着または圧入により固着され、ベース部材10の中心部分の孔部10bと同軸に固定されている。また、スリーブ16は、回転軸部22を収納することによって回転軸部22を支承する環状のスリーブ筒部16cと、スリーブ筒部16cの回転体200側端部において外径方向に延在された周状張出部16bとを結合した形状を有する。また、スリーブ筒部16cの内部に、円筒部内周面16aが形成されており、円筒部内周面16aが回転軸部22を囲む。周状張出部16bとスリーブ筒部16cとが一体に形成されてもよいし、周状張出部16bとスリーブ筒部16cとが別の部材として固着して形成されてもよい。なお、周状張出部16bと、ハウジング筒部14cとの間に環状の第2領域部42が形成されている。スリーブ16は、銅系の合金、粉末冶金による焼結合金、ステンレスのほか、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアミドなどのプラスチック材料によっても形成される。スリーブ16にプラスチック材料を用いる場合は、ディスク駆動装置100の静電気除去性能を確保するため、固有抵抗が10の6乗(Ω・m)以下となるよう、プラスチック材料にカーボン繊維を含ませて構成する。また、粉末冶金による焼結合金でスリーブ16を形成する場合、スリーブ16は多孔質性を有することができるので部品の軽量化に寄与できる。ただし、スリーブ16が多孔質性を有する場合でスリーブ16の一部がベース部材10から露出するような構造の場合、ディスク駆動装置100の内部側に充填された清浄空気、例えばヘリウムを多く含むような空気が多孔質性に起因して外部に抜けてしまうことがある。スリーブ16の一部が外部に露出するような構成を成す場合は、露出した多孔質部分を塞ぐ処理を施しておくことが望ましい。例えば、露出部分の表面に樹脂等で構成されるシール部材を塗布したり、酸化処理を施してもよい。また、図2に示すように、他の部品、例えばハウジング14等で塞いだり、他の部材を変形させて封止するようにしてもよい。
回転体200の下面側、つまりスリーブ16と対向する側には、スラスト部材26を固定するための固定ブラケット202が固定されている。固定ブラケット202は、接着剤等を用いて強固に固定されている。固定ブラケット202の形状や固定方法については後述する。なお、固定ブラケット202とハブ20とは一体に形成されてもよい。例えば、プレス加工や切削加工により形成することができる。この結果、固定ブラケット202の回転体200に対する結合強度が向上する点で有利である。固定ブラケット202の内周面にスラスト部材26が固着される。また、回転体200の円環部20bの内周面にマグネット24が固着される。マグネット24は、ベース部材10に固着されたステータコア12に対向するように、回転軸部22と同心状態で固着される。
スラスト部材26は、スリーブ16を環囲するフランジ部26eと、ハウジング14を環囲する下垂部26cとを有する。フランジ部26eは、固定ブラケット202の内壁に接着剤で固着され、下垂部26cは、フランジ部26eの外縁部分に結合されるとともに固定ブラケット202の内壁に接着剤で固着される。このようにして、フランジ部26eは、スリーブ筒部16cの外周を隙間を介して囲み、かつ周状張出部16bの下面に狭い隙間を介して配置される。スラスト部材26は、回転体200と一体的に回転するが、その際、フランジ部26eは、第2領域部42内で回転し、下垂部26cは、第1領域部40内で回転する。
フランジ部26eは、スラスト上面とスラスト下面とを有するアキシャル方向に薄い形状を有する。また、下垂部26cは、フランジ部26eの外周側下面にアキシャル方向に延びる。フランジ部26eのスラスト下面とハウジング14の上端部であるハウジング平坦部14dとで第1スラスト動圧発生部(第1スラスト動圧軸受SB1)を構成し、フランジ部26eのスラスト上面と周状張出部16bの下面とで第2スラスト動圧発生部(第2スラスト動圧軸受SB2)を構成する。下垂部26cのアキシャル方向の長さはフランジ部26eのアキシャル方向の長さよりも長い。また、下垂部26cの内周面26dは、フランジ部26eの逆側に向かって半径が小さくなるテーパ状を有しており、後述するキャピラリーシール部TSを構成する。
スラスト部材26は、スラスト動圧発生部を構成する他に、回転ユニットRが固定ユニットSから抜けることを防止する機能を有する。衝撃によって、回転ユニットRと固定ユニットSとが相対的に移動すると、フランジ部26eは周状張出部16bの下面と接触する。その結果、スラスト部材26は、固定ブラケット202から外れる方向に応力を受ける。下垂部26cと固定ブラケット202のアキシャル方向の接合距離が短いと、接合強度が弱くなるので、小さな衝撃でも、接合が破壊される可能性が高くなる。つまり、下垂部26cと固定ブラケット202との接合距離を長くするほど、衝撃に強くなる。
一方、フランジ部26eが厚くなると、キャピラリーシール部TSが短くなり、キャピラリーシール部TSにおいて保持可能な潤滑剤28の容量が小さくなる。そのため、衝撃によって、潤滑剤28が飛散すると直ちに潤滑剤不足となる可能性がある。潤滑剤不足によって、流体動圧軸受は機能を低下させ焼き付きなどの機能不全を生じやすくなる。このような課題に対応するために、ディスク駆動装置100は、フランジ部26eを薄くすることによって、キャピラリーシール部を上下方向に長くしている。その結果、保持可能な潤滑剤28の量が大きくなり、衝撃によって、もし潤滑剤28が飛散しても容易には潤滑剤不足とならないように構成している。つまり、スラスト部材26のアキシャル方向の距離は、下垂部26cに対して長く、フランジ部26eに対して短くなるように設計される。
下垂部26cの外周面は固定ブラケット202の内周面に圧入により固着する方法があるが、下垂部26cが圧入により応力を受けると、下垂部26cの内周面に変形を生じ、この変形のためキャピラリーシール部TSの機能が損なわれるおそれがある。これに対応するために、前述のごとく、下垂部26cの外周面は、固定ブラケット202の内周面より小径とし、両者を接着により固着する。その結果、下垂部26cの変形が防止され、キャピラリーシール部TSの機能は十分に発揮される。
マグネット24は、円環部20bの内周に固着されて、ステータコア12の外周に狭い隙間を介して対向するように設けられる。マグネット24は、Nd−Fe−B(ネオジウム−鉄−ボロン)系の材料で形成され、表面には電着塗装やスプレー塗装が施され、内周側は12極に着磁されている。
次に、ディスク駆動装置100の構成における流体動圧軸受について説明する。ラジアル方向の流体動圧軸受は、回転軸部22の外周面22cと、スリーブ16の円筒部内周面16aと、両者の間隙に充填されたオイル等の潤滑剤28とを含んで構成されるラジアル動圧発生部を含む。ラジアル動圧発生部は、アキシャル方向に離隔して、回転体200の張出部22bから遠い方に第1ラジアル動圧軸受RB1を配置し、張出部22bから近い方に第2ラジアル動圧軸受RB2を配置する。第1ラジアル動圧軸受RB1と第2ラジアル動圧軸受RB2は、円筒部内周面16aと外周面22cとの隙間に設けられて、ラジアル方向の動圧を発生して回転ユニットRを支持する。第1ラジアル動圧軸受RB1と第2ラジアル動圧軸受RB2は、対向する外周面22cと円筒部内周面16aとの少なくとも一方に動圧を発生させるための第1ラジアル動圧溝、第2ラジアル動圧溝が形成されている。この動圧溝は、例えばヘリングボーン状に形成される。
回転ユニットRが回転すると、ラジアル動圧溝がラジアル動圧を発生させ、当該ラジアル動圧により円柱部22aはスリーブ16に対してラジアル方向に所定の間隙を有して支持される。本実施形態の場合、第1ラジアル動圧溝のアキシャル方向の形成幅が、第2ラジアル動圧溝のアキシャル方向の形成幅よりも狭く形成されている。これにより、円柱部22aのアキシャル方向で異なる強さの側圧に対応したラジアル動圧が、第1ラジアル動圧軸受RB1と第2ラジアル動圧軸受RB2で発生する。その結果、高いシャフト剛性と低いシャフトロスとの最適バランスが得られる。
一方、スラスト方向の動圧軸受は、第1スラスト動圧軸受SB1、第2スラスト動圧軸受SB2を含む。ここで、第1スラスト動圧軸受SB1、すなわち第1スラスト動圧発生部は、フランジ部26eのスラスト下面とハウジング14の上端部と、それらのアキシャル方向の間隙に充填された潤滑剤28とによって形成される。また、第2スラスト動圧軸受SB2、すなわち第2スラスト動圧発生部は、フランジ部26eのスラスト上面と周状張出部16bの下面と、それらのアキシャル方向の間隙に充填された潤滑剤28によって形成される。
これらのアキシャル方向の間隙の少なくとも一方の対向面に動圧を発生させるためのスラスト動圧溝(図示せず)が形成されている。このスラスト動圧溝は、例えばスパイラル状またはヘリングボーン状に形成される。スラスト動圧軸受SBは、回転ユニットRの回転にともなって、全体としてはポンプイン方向の動圧を発生し、この圧力によりアキシャル方向の力、つまり浮上力を回転ユニットRに作用させる。第1ラジアル動圧軸受RB1、第2ラジアル動圧軸受RB2、第1スラスト動圧軸受SB1,第2スラスト動圧軸受SB2における間隙に充填された潤滑剤28は、互いに共用されるとともに、キャピラリーシール部TSによりシールされて外部への漏出が防止されている。
キャピラリーシール部TSは、ハウジング14の外周面14eとスラスト部材26の内周面26dとによって構成されている。外周面14eは、上面側から下面側へ向かうにしたがって小径となるような傾斜面を有する。一方、これに対向する内周面26dも、上面側から下面側に向かうにしたがって小径となるような傾斜面を有する。
このような構成によって、外周面14eおよび内周面26dは、それらの隙間が上面側から下面側に向かうにしたがって拡がるような、キャピラリーシール部TSを形成する。ここで、キャピラリーシール部TSの途中に、潤滑剤28と外気との境界面(液面)が位置するように、潤滑剤28の充填量が設定されているので、毛細管現象により潤滑剤28は、このキャピラリーシール部TSによりシールされる。その結果、潤滑剤28の外部への漏出が防止されている。つまり、潤滑剤28は、第1ラジアル動圧軸受RB1、第2ラジアル動圧軸受RB2、第1スラスト動圧軸受SB1、第2スラスト動圧軸受SB2を含み、さらにハウジング14とスラスト部材26との間の空間、周状張出部16bと固定ブラケット202との間の空間等を含む潤滑剤保持部に充填されることになる。
また、キャピラリーシール部TSは、外側の傾斜面である内周面26dが上面側から下面側に向かうにしたがって小径となるように設定されている。そのため、回転ユニットRの回転にともない、潤滑剤28には、それが充填された部分の内部方向に移動させる方向の遠心力が作用するので、外部への漏出がより確実に防止される。また、連通路Iは、ハウジング14の内周面にアキシャル方向に形成された溝14aにより確保される。連通路Iにより、第1ラジアル動圧軸受RB1および第2ラジアル動圧軸受RB2の両側が連通されているので、ラジアル動圧軸受の単独の圧力バランスが崩れても、全体の圧力バランスが良好に維持される。また、回転ユニットRに外部から力が加わるなどの外乱によって、第1ラジアル動圧軸受RB1、第2ラジアル動圧軸受RB2、スラスト動圧軸受SBにおける動圧のバランスが崩れても、即座に圧力が平均化してバランスが維持される。その結果、固定ユニットSに対する回転ユニットRの浮上量が安定し、信頼性の高いディスク駆動装置100が得られる。
図5は、本実施形態の回転体200の形状を詳細に説明する断面図である。前述したように、回転体200は、ハブ20と回転軸部22とで構成される。本実施形態の回転体200に相当する従来の構造は、ほぼストレート形状の棒状シャフトがカップ型のハブに形成された接続孔に固定されている。そのため、棒状シャフトとハブとは、ハブの厚み分の接続代により接続されることになる。ところで、電子機器は小型軽量化および薄型化の要求がある。ディスク駆動装置を搭載する電子機器においても同様である。そのため、ディスク駆動装置のハブも薄型化が求められる。ハブの薄型化は棒状シャフトとハブとの接続代の短縮化を招く。その結果、棒状シャフトとハブとの十分な接合強度が確保できなかったり、棒状シャフトとハブとの接合時の直角度が確保できない等の問題が生じていた。
それに対応し、本実施形態の回転体200における回転軸部22は、棒状シャフトの形状ではなく、ハブ20と接続されるべき部分として張出部22bが棒状シャフトである円柱部22aの一端から半径方向外側に向けて延設されている。つまり、円柱部22aと張出部22bとが一体形成されている。円柱部22aと張出部22bとを一体にした回転軸部22は、例えば単一素材をプレス加工することによって形成できる。円柱部22aに対して半径方向に延びる張出部22bを一体形成することにより、張出部22bの軸方向の厚みを薄くしても円柱部22aに対する張出部22bの強度は容易に確保できる。また、円柱部22aと張出部22bとの直角度は、プレス加工の精度により容易に向上できる。また、プレス加工後に張出部22bの下面22dと円柱部22aの外周面22cとを研削加工して研磨することにより、外周面22cの径寸法や円筒度精度を向上させると同時に、外周面22cに対する張出部22bの直角度は容易に向上できる。外周面22cは、スリーブ16に収納される収納部となる。なお、下面22dと外周面22cとを同時に研磨することにより直角度をさらに容易に確保できる。この場合の同時とは、2面同時に研磨できる砥石により加工することを意味してもよいし、研磨時の回転軸部22に対するチャッキングを解放せずに連続加工することを意味してもよい。なお、回転軸部22をプレス加工を用いて製造することにより、全体を切削加工して製造する場合に比べバリの発生や切削屑の残留が軽減され品質向上の点で有利である。
本実施形態の場合、円柱部22aと張出部22bとを接続している軸方向の長さは、例えば1.0mm以下、望ましくは、0.7mmとしている。上述したように、円柱部22aと張出部22bを一体成形しているので、軸方向の長さを縮小しても剛性を維持できると共に、直角度の確保を容易に行いつつ、回転体200全体としての軸方向の短縮化(薄型化)に寄与できる。なお、円環部20bの外周面と載置座部20cの上面は、研磨加工が施され、記録ディスク120を円柱部22aに対して直角に載置できるように配慮されている。また、載置座部20cの軸方向の厚みは、接続部20e(または張出部22b)の軸方向の厚みより厚く形成している。つまり、張出部22bの回転軸方向の厚みは、載置座部20cの回転軸方向の厚みより薄い。この部分の厚みは、回転体200の軸方向の厚みには関与しないので、載置座部20cの厚みを厚くすることで記録ディスク120の支持安定性を向上できるとともに、回転体200の薄型化に寄与できる。
本実施形態の円柱部22aの下端外周部22fは先細りとなるテーパ形状としている。また、下端底部22gは窪み形状としている。円柱部22aの下端をテーパ形状や窪み形状とすることで、スリーブ16およびハウジング14で囲まれた空間に潤滑剤28の液溜まりスペースを形成できる。その結果、潤滑剤28の貯留性能の向上に寄与できる。
回転軸部22における円柱部22aと張出部22bとの接続部分には、円柱部22aの正規の直径部分である外周面22cより半径方向に突出して直径を拡大する突条部が形成されている。この突条部は基準段部22hとして形成できる。円柱部22aの直径の加工精度は、回転体200を安定的に高速回転させる上で重要であり、円柱部22aの直径の加工精度の管理が必要である。基準段部22hは、円柱部22aの直径を計測する場合に用いる測定基準位置を示すマークとして利用できる。例えば、抜き取り検査や全数検査等で円柱部22aの直径が設計許容値を満たしているかを検査する場合、この基準段部22hに測定器の測定子を当接させて測定する。このように基準段部22hを設けておくことにより、抜き取り検査や全数検査における測定再現性が保証され、測定信頼性が向上できる。
また、回転軸部22の円柱部22aをプレス加工によって形成する場合、円柱部22aの内部にプレス金型の挿入孔22iを形成する必要がある。また、挿入孔22iからプレス金型の抜きを容易にするために、挿入孔22iの開放端に上方に向かって拡径するテーパ部22jを設けている。ところで、回転体200に記録ディスク120を載置して固定する場合、クランプ部材(不図示)により上方から押さえ込む必要がある。この場合、クランプ部材を固定するためのネジを螺合させるネジ部を挿入孔22iに形成する。回転体200の中央部である挿入孔22iにネジ部を形成することで、クランプ部材による記録ディスク120の押圧固定を全周にわたって均質に行うが可能なる。また、テーパ部22jはクランプ部材の位置決め用孔としても機能する。例えば、クランプ部材の中央部にテーパ部22jに対応するテーパ状の突起部を設けておけば、テーパ部22jと突起部を係合させるのみでクランプ部材のセンタリングが行われる。その結果、クランプ部材の位置合わせが容易になると共にクランプ部材の片寄りによる記録ディスク120の不均一なクランプを抑制できる。なお、テーパ部22jの深さをクランプ部材を固定するネジの頭部が収納できる深さに設定することにより回転体200の軸方向の厚みを低減できる。さらに、円柱部22aに挿入孔22i、テーパ部22jを形成することで、円柱部22a自体の軽量化にも寄与できる。
本実施形態の場合、張出部22bの直径は円柱部22aの直径の1.5倍以上、さらに好ましくは2倍以上としている。張出部22bの直径を大きく確保することでプレス加工によって一体形成する領域が増大し、回転軸部22全体としての剛性を向上できる。また、プレス加工によって製造できる領域が拡大され、上述したバリや切削屑の残留の問題も軽減される。張出部22bの外縁部は、外周側端部には半径方向外側に延在する段部22eが形成されている。ハブ20は、接続部20eと円環部20bと載置座部20cとで構成される。接続部20eは中央に中心孔20aを有し、中心孔20aには、張出部22bの段部22eと係合する対応段部20fが形成されている。段部22eおよび対応段部20fの半径方向の延設面積を増大することで回転軸部22とハブ20との接続強度や接続安定性を向上できる。記録ディスク120は、載置座部20cに載置される。そして、回転軸部22にネジで固定されるクランプ部材(図示せず)によって押圧固定される。その際、段部22eと対応段部20fの接続部分にベース部材10側(下側)に向う強い力が加わる。これに対応して段部22eは対応段部20fに対してベース部材10側(下側)に設けるようにしてもよい。この構造は、記録ディスク120の固定が回転軸部22とハブ20の接続を解消する方向に働くことを防止し、ハブ20と回転軸部22との接続信頼性の向上に寄与する点で有利である。また、回転軸部22とハブ20との組み立ては段部22eと対応段部20fとの組合せにより行うことができるので、組立容易性の点で段部22eと対応段部20fの形成が好ましい。また、段部22eと対応段部20fとを係合させた後は、張出部22bと接続部20eとの接続部を溶接等により接合することが望ましく、容易に接合強度を確保できる。溶接点は、接続部の全周で行ってもよいし、等間隔でスポット溶接してもよい。
円環部20bは、接続部20eに接続され円柱部22aの回転軸方向に延設されている。この円環部20bの延設長さは、載置される記録ディスク120の枚数に応じて決定することが可能である。例えば、複数の記録ディスク120を載置する仕様の場合、記録ディスク120の枚数分の厚みと、各記録ディスク120を分離載置するためのスペーサの厚みとの合計量に応じた延設長さとすればよい。そして、この円環部20bの一部には、半径方向外側に延設される載置座部20cが一体形成されている。載置座部20cの半径方向外側への延設長さは、記録ディスク120の中央孔周囲の非記録領域に対応して決定されている。
円環部20bと接続部20eの接続部分には台座部20dが形成され、マグネット24の固定を安定化させると共にマグネット24の漏れ磁束が増加することを抑制している。また、円環部20bと載置座部20cとの接続部分には、円環部20bと載置座部20cとの接続部分に基準段部20gを形成するように凹部20hが軸方向に窪んだ形状として形成されている。円環部20bの直径の加工精度は、記録ディスク120を安定的に載置支持する上で重要であり、円環部20bの直径の加工精度の管理が必要である。基準段部20gは、円環部20bの直径を計測する場合に用いる測定基準位置を示すマークとして利用できる。例えば、抜き取り検査や全数検査等で円環部20bの直径が設計許容値を満たしているかを検査する場合、この基準段部20gに測定器の測定子を当接させて測定する。このように基準段部20gを設けておくことにより、抜き取り検査や全数検査における測定再現性が保証され、測定信頼性が向上できる。また、凹部20hを形成することにより、記録ディスク120の中央孔周辺を基準段部20gと載置座部20cとにより実質的に複数点支持する形態とすることができる。記録ディスク120を載置する載置座部20cは研磨加工等により平滑化されているが、少しでも凹凸やうねりが残った場合、載置座部20cで記録ディスク120の被支持面を全面支持していた場合、その影響を受けやすい。そこで、凹部20hを形成することにより支持面積を削減し、凹凸やうねりによるリスクを軽減すると共に、載置座部20cの軽量化、すなわちハブ20の軽量化に寄与している。
また、本実施形態の円環部20bは、載置座部20cの形成位置より下方に突出部20iを形成している。これは、円環部20bが支持するマグネット24のバックヨークと成る部分であり、突出部20iを形成することによりマグネット24の漏れ磁束が増加することを防止している。また、突出部20iの直径を載置座部20cの直径より小さくする、つまり、載置座部20cに対して凹形状にすることよっても漏れ磁束の増加を抑制している。
本実施形態の場合、回転体200を構成する回転軸部22およびハブ20は、例えば強磁性を有するステンレス鋼、例えばSUS430で構成することが望ましい。この場合、発ガス軽減のための、硫黄の含有量は0.1%以下にすることが望ましい。また、少なくとも回転軸部22は、発ガスを抑制するために、表面を無電解ニッケルメッキ等の別部材で被膜を形成することが望ましい。また、このように表面処理を施すことにより表面硬度の向上ができる。なお、本実施形態の回転体200は流体動圧軸受として潤滑剤充填部を構成しているので、高い表面硬度を要求されると共に、表面粗さを小さくすることが要求される。この点に対し、本実施形態の回転体200は、回転軸部22を高硬度のステンレス鋼で作成する点、その表面に被膜を形成して表面硬度を高めている点で実用に適している。
以上のように、回転体200を円柱部22aと張出部22bから成る回転軸部22とハブ20で構成することにより、回転体200の剛性維持や接続部分の直角度の維持を行い安定した回転性能を維持したまま、回転軸方向の薄型化が容易に実現できる。
図6は、回転体の別の構成例を説明する断面図である。図6の構成の場合、図5における回転軸部22とハブ20が一体形成されている。つまり、回転体300は、円柱部300a、張出部300b、円環部300c、載置座部300dが一体化され構成されている。
そして、少なくとも円柱部300aと張出部300bとは、プレス加工によって一体形成される。この場合、円環部300cと載置座部300dは切削加工によって形成してもよいし、プレス加工により同時に形成してもよい。プレス加工部分を増やすことにより切削加工に伴うバリや切削屑の残留可能性が軽減され品質の上で好ましい。なお、張出部300bの下面300eと円柱部300aの外周面300fとを研削加工して研磨することにより円柱部300aと張出部300bの直角度は容易に向上できる。外周面300fは、スリーブ16に収納される収納部となる。なお、下面300eと外周面300fを同時に研磨することにより直角度をさらに容易に確保できる。この場合の同時とは、2面同時に研磨できる砥石により加工することを意味してもよいし、研磨時の回転体300に対するチャッキングを解放せずに連続加工することを意味してもよい。
本実施形態の場合、円柱部300aと張出部300bとを接続している軸方向の長さは、例えば1.0mm以下、望ましくは、0.7mmとしている。上述したように、円柱部300aと張出部300bを一体成形しているので、軸方向の長さを縮小しても剛性を維持できると共に、直角度の確保を容易に行いつつ、回転体300全体としての軸方向の短縮化(薄型化)に寄与できる。なお、円環部300cの外周面と載置座部300dの上面は、研磨加工が施され、記録ディスク120を円柱部300aに対して直角に載置できるように配慮されている。また、載置座部300dの軸方向の厚みは、張出部300bの軸方向の厚みより厚く形成している。つまり、張出部300bの回転軸方向の厚みは、載置座部300dの回転軸方向の厚みより薄い。この載置座部300dの厚みは、回転体300の軸方向の厚みには関与しないので、載置座部300dの厚みを厚くすることで記録ディスク120の支持安定性を向上できるとともに、回転体300の薄型化に寄与できる。
本実施形態の円柱部300aの下端外周部300gは先細りとなるテーパ形状としている。また、下端底部300hは窪み形状としている。円柱部300aの下端をテーパ形状や窪み形状とすることで、スリーブ16およびハウジング14で囲まれた空間に潤滑剤28の液溜まりスペースを形成できる。その結果、潤滑剤28の貯留性能の向上に寄与できる。
回転体300における円柱部300aと張出部300bとの接続部分には、円柱部300aの正規の直径部分である外周面300fより半径方向に突出して直径を拡大する突条部が形成されている。この突条部は基準段部300iとして形成できる。この基準段部300iも図5で説明した基準段部22hと同様に機能し、円柱部300aの直径を計測する場合に用いる測定基準位置を示すマークとして利用できる。基準段部300iを設けておくことにより、抜き取り検査や全数検査における測定再現性が保証され、測定信頼性が向上できる。
また、回転体300の円柱部300aをプレス加工によって形成する場合、円柱部300aの内部にプレス金型の挿入孔300jを形成する必要がある。また、挿入孔300jからプレス金型の抜きを容易にするために、挿入孔300jの開放端は、上方に向かって拡径するテーパ部300kを設けている。この挿入孔300jおよびテーパ部300kは、図5で説明した挿入孔22i、テーパ部22jと同様に機能して同様な効果を示す。つまり、記録ディスク120を安定的に支持するクランプ部材を良好の固定する機能を有する。
張出部300bと円環部300cの接続部分には台座部300mが形成されている。また、円環部300cと載置座部300dとの接続部分には、円環部300cと載置座部300dとの接続部分に基準段部300nを形成するように凹部300pが軸方向に窪んだ形状として形成されている。この台座部300m、基準段部300n、凹部300pも図5で説明した台座部20d、基準段部20g、凹部20hと同様に機能して同様な効果を奏する。また、本実施形態の円環部300cは、載置座部300dの形成位置より下方に突出部300qを形成している。この突出部300qも図5で説明した突出部20iと同様な効果を奏する。
本実施形態の場合、回転体300は、例えば強磁性を有するステンレス鋼、例えばSUS430で構成することが望ましい。この場合、発ガス軽減のための、硫黄の含有量は0.1%以下にすることが望ましい。また、回転体300は発ガスを抑制するために、表面を無電解ニッケルメッキ等の別部材で被膜を形成することが望ましい。また、このように表面処理を施すことにより表面硬度の向上ができる。なお、本実施形態の回転体300は流体動圧軸受として潤滑剤充填部を構成しているので、高い表面硬度を要求されると共に、表面粗さを小さくすることが要求される。この点に対し、本実施形態の回転体300は、円柱部300aを高硬度のステンレス鋼で作成する点、その表面に被膜を形成して表面硬度を高めている点で実用に適している。
なお、回転体300は、プレス加工工程と、調整工程と、表面コーティング工程を経て製造される。プレス加工工程は、円柱部300aと張出部300bと円環部300cと載置座部300dとを一体的にプレス加工する。プレス加工された円柱部300aと張出部300bと円環部300cと載置座部300dは調整工程において、例えば研削加工や研磨加工により加工寸法や直角度が調整される。そして、表面コーティング工程において、加工寸法等の調整がなされた各部分も含めて回転体300全体に無電解ニッケルメッキ等が施され、発ガス抑制や表面硬度の向上が成される。
以上のように、回転体300を円柱部300a、張出部300b、円環部300c、載置座部300dを一体で形成することにより、回転体300の剛性維持や接続部分の直角度の維持を行い安定した回転性能を維持したまま、回転軸方向の薄型化が容易に実現できる。
図7は、図6の回転体300に固定ブラケット202を接続した状態を説明する断面図である。固定ブラケット202は、張出部300bの下面300eと接続される底部202aとこの底部202aの端部から下方に延びる下垂部202bとで構成される。下垂部202bの内周面にスラスト部材26が接合される。固定ブラケット202は、回転体300と同等の材料で形成することが望ましく、例えば、ステンレス鋼(例えばSUS303)等が防錆特性が高い点で好ましい。固定ブラケット202は、例えば切削加工やプレス加工により作成可能であり、切削加工を用いる場合、寸法精度を容易に確保できる点で望ましい。回転体300と固定ブラケット202との接合は、種々の方法が採用できる。例えば接着は作業が容易な点で望ましい。また溶接は接合強度を容易に確保できる点で望ましい。なお、固定ブラケット202の底部202aの厚みが厚くなると、円柱部300aがスリーブ16に収納される部分が短く成ってしまうので、固定ブラケット202の強度を維持できる範囲内で薄くすることが好ましい。
本実施形態に係る流体動圧軸受を適用したディスク駆動装置100は以下のような特徴を備える。即ち、回転軸部は、回転軸方向に延びる円柱部と回転軸に対して直角に延びる張出部とが一体形成されているので、円柱部と張出部の接続部分の強度確保や接合直角度の確保が容易にできる。また、円柱部と張出部を一体形成しているので、円柱部と張出部の接続代を大きくする必要がないので接続代に相当する部分を短くできる。その結果、支持安定性に影響する円柱部の長さを短くすることなく、接続代に相当する部分の薄型化により回転軸部の軸方向長さを短縮できる。つまり、回転体の薄型化ができる。一方、ハブを構成する載置座部は、張出部の外周側端部に接続される。この場合、張出部と載置座部を含むハブとの接続部分は、半径方向に延設される面をそれぞれオーバーラップさせることで広い接続面積を確保できるため、回転軸部とハブの接続強度を容易に確保できる。また、張出部とハブとの接続部分は、回転軸方向に薄くできるので回転体の回転軸方向の薄型化に寄与できる。なお、回転軸部とハブは、切削加工やプレス加工と研削加工、研磨加工等の併用によって作成することができる。また、回転軸部とハブは、接着剤や溶接等により接合できる。
本実施の形態は主にHDDに用いられる場合について説明したが、これに限られない。
例えば、図2に示される構造のブラシレスモータを製作し、そのブラシレスモータをCD(Compact Disc)装置、DVD(Digital Versatile Disc)装置等の光学ディスク記録再生装置に搭載してもよい。
以上、実施の形態にもとづき本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎないことはいうまでもなく、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が可能であることはいうまでもない。