JP5723233B2 - 転動疲労寿命に優れた球状化熱処理軸受用鋼材 - Google Patents

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Description

本発明は、軸受部品として用いたときに優れた転動疲労寿命を発揮する球状化熱処理軸受用鋼材に関するものである。
軸受用鋼として、従来からJIS G 4805(1999)に規定されるSUJ2等の高炭素クロム軸受鋼が、自動車や各種産業機械等の種々の分野で用いられている軸受の材料として使用されている。しかし軸受は、接触面圧が非常に高い玉軸受やころ軸受等の内・外輪や転動体等、過酷な環境で用いられるため、非常に微細な欠陥(介在物等)から疲労破壊が生じ易いといった問題がある。この問題に対し、転動疲労寿命そのものを高めて上記保守の回数を低減させるべく、軸受用鋼材の改善が試みられている。
例えば特許文献1には、軸受材料において、欠陥となる酸化物系非金属介在物の個数を厳密に規定することにより高寿命化を図っている。一方で、特許文献2では、上記特許文献1の評価面積よりもはるかに大きい30000mm2の被検面積を観察することによって、特に、硫化物の最大サイズが転動疲労寿命に影響していることを見出した旨示されている。
しかしながら、現在、工業的に用いられている軸受用鋼材の介在物は非常に厳密に制御されたものが多く、こうした介在物の制御だけでは転動疲労寿命を更に向上させることは困難な状況になっている。
そこで、特許文献3、4に示されるように、縞状偏析を低減することによって転動疲労寿命を改善する技術が提案されている。このうち特許文献3では、圧延温度を低めにし、鍛圧比を大きく(60以上)することで、縞状偏析に起因する硬さばらつきを低減するものである。また、特許文献4では、圧延温度は比較的高めとし、鍛圧速度を遅くすることによって、縞状偏析を改善し、その後の球状化熱処理後における炭化物の面積率のばらつきを低減して転動疲労寿命を向上するものである。
これら特許文献3、4の技術では、転動疲労寿命の改善効果は発揮されていると言える。しかしながら、いずれも圧延方法や圧延サイズに制約があって、工業的に自由度の高い方法とは言えない。また、転動疲労寿命の改善効果についても、更に高まる長寿命化要望に必ずしも十分に対応できているとは言えないものである。
特許第3889931号公報 特開2006−63402号公報 特開2009−84647号公報 特開2010−47832号公報
本発明はこの様な事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、転動疲労寿命を更に向上させた軸受を得るための球状化熱処理軸受用鋼材を提供することにある。
本発明に係る転動疲労寿命に優れた球状化熱処理軸受用鋼材とは、C:0.95〜1.10%(質量%の意味、以下同じ)、Si:0.15〜0.90%、Mn:1.2%以下(0%を含まない)、Cr:0.90〜1.60%、P:0.025%以下(0%を含まない)、S:0.025%以下(0%を含まない)を夫々含み、残部が鉄および不可避不純物からなり、鋼材の圧延方向に平行な面において、圧延方向に垂直な方向にEPMA(Electron Probe Micro Analyzer)ライン分析したとき、CrのX線強度値の標準偏差σ1と平均値a1が、下記(1)式の関係を満足すると共に、球状化セメンタイト粒径の標準偏差σ2と平均値a2が下記(2)式の関係を満足する点に要旨を有するものである。
(CrのX線強度値の標準偏差σ1/CrのX線強度値の平均値a1
≦0.25…(1)
(球状化セメンタイト粒径の標準偏差σ2/球状化セメンタイト粒径の平均値a2
≦0.15…(2)
本発明の軸受用鋼材においては、(1)PおよびSの合計含有量を0.020%以下(0%を含まない)に抑制することや、(2)更に他の元素として、Ni:0.25%未満(0%を含まない)、Cu:0.25%未満(0%を含まない)、およびMo:0.08%未満(0%を含まない)よりなる群から選択される1種以上を含有させることも有用であり、抑制または含有される成分に応じて鋼材の特性が更に改善される。
本発明によれば、転動疲労寿命を更に向上させた球状化熱処理軸受用鋼材が実現できるので、軸受用鋼材を軸受に適用したときに、過酷な環境で用いられても優れた転動疲労寿命が発揮でき、無駄な保守(交換、点検等)を低減することができる。
(CrのX線強度値の標準偏差σ1/CrのX線強度値の平均値a1)とL10寿命との関係を示すグラフである。 (球状化セメンタイト粒径の標準偏差σ2/球状化セメンタイト粒径の平均値a2)とL10寿命との関係を示すグラフである。
本発明者らは、転動疲労寿命の向上を目指し、介在物制御とは異なる観点として、縞状偏析の影響を更に詳細に検討した。その結果、鋼材の圧延方向に平行な面において、圧延方向に垂直な方向にEPMAライン分析したとき、CrのX線強度値の標準偏差と平均値が、下記(1)式の関係を満足すると共に、球状化セメンタイト粒径の標準偏差σ2と平均値a2が下記(2)式の関係を満足するようにすれば、転動疲労寿命が格段に向上し得ることを見出し、本発明を完成した。
(CrのX線強度値の標準偏差σ1/CrのX線強度値の平均値a1
≦0.25…(1)
(球状化セメンタイト粒径の標準偏差σ2/球状化セメンタイト粒径の平均値a2
≦0.15…(2)
Crの偏析は、球状化熱処理(球状化焼鈍処理)したときの炭化物サイズや面積率の不均一を招き、その結果として軸受として用いたときに転動疲労寿命を低下させることになる。上記(1)式の関係を満足したとき、Crの偏析が著しく低減された状態となって、転動疲労寿命が極めて優れたものとなる。
本発明の軸受用鋼材は、球状化熱処理後、焼入れ・焼戻し前の鋼材を想定したものであるが、上記(1)式の関係は、球状化熱処理前の鋼材、および焼入れ・焼戻し材で実質的に変化しないため、いずれにも本発明の規定を適用できる。上記(1)式の右辺の値は、好ましくは0.23以下であり、より好ましくは0.20以下である。
また、Cr偏析部分と非偏析部分での球状化炭化物の面積率の比が、転動疲労寿命に及ぼすことは知られているが(例えば、前記特許文献4)、本発明者らが検討したところによれば、球状化セメンタイト粒径のばらつきが転動疲労寿命に大きな影響を与えることが判明したのである。即ち、上記(2)式の関係を満足したとき、球状化セメンタイト粒径のばらつきが著しく低減された状態となって、転動疲労寿命が極めて優れたものとなるのである。
尚、上記(2)式の関係は、球状化熱処理の後、焼入れ・焼戻しを施しても大きな変化はないため、球状化熱処理材および焼入れ・焼戻し材のいずれにも本発明の規定を適用できる。上記(2)式の右辺の値は、好ましくは0.13以下であり、より好ましくは0.10以下である。
本発明の鋼材は、JIS G4805(1999)で規定するSUJ2〜4の化学成分組成をベースとするものであり、C:0.95〜1.10%、Si:0.15〜0.90%、Mn:1.2%以下(0%を含まない)、Cr:0.90〜1.60%を満たすものである。これらの元素の範囲限定理由は次の通りである。
[C:0.95〜1.10%]
Cは焼入硬さを増大させ、室温、高温における強度を維持して耐摩耗性を付与するために必須の元素である。従って、0.95%以上含有させなければならず、好ましくは0.98%以上のCを含有させることが望ましい。しかしながら、C含有量が多くなり過ぎると巨大炭化物が生成し易くなり、転動疲労特性に却って悪影響を及ぼす様になるので、C含有量は1.10%以下、好ましくは1.05%以下に抑えるべきである。
[Si:0.15〜0.90%]
Siは固溶強化元素であり、最終的に軸受等の部品とするときに、焼入れ・焼戻し工程において、焼戻し軟化を抑制する効果を発揮する他、炭化物を微細にする効果も発揮する。Si含有量が0.15%未満では、これらの効果が発揮されず、0.90%を超えると、冷間鍛造性および熱間加工性を劣化させる等の悪影響がでるため、0.90%以下とする必要がある。Si含有量の好ましい下限は0.20%以上(より好ましくは0.25%以上)であり、好ましい上限は0.8%以下(より好ましくは0.7%以下)である。
[Mn:1.2%以下(0%を含まない)]
Mnは軸受鋼の焼入れ性を高めるために有効な元素であるが、その含有量が過剰になると、熱間加工後の硬さが高くなり過ぎて工業生産に支障を来す他、最終製品としたときに、残留オーステナイト相を多量に生成して疲労寿命を低下させるため、1.2%以下とする必要がある。Mn含有量の好ましい下限は0.3%以上(より好ましくは0.35%以上)であり、好ましい上限は1.0%以下(より好ましくは0.8%以下)である。
[Cr:0.90〜1.60%]
Crは、Cと結びついて微細な炭化物を形成し、耐摩耗性を付与すると共に、焼入性の向上に寄与する元素である。この様な効果を発揮させるには、Cr含有量を0.90%以上とする。好ましくは1.0%以上である。しかし、Crが過剰に存在すると、粗大な炭化物が生成し、転動疲労寿命が却って低下する。従ってCr含有量は1.60%以下とする。好ましくは1.5%以下である。
PやSについては、JIS G 4805(1999)で規定するSUJ2〜4の化学成分組成に示される通り、夫々P:0.025%以下(0%を含まない)、S:0.025%以下(0%を含まない)とする必要があるが、これらの元素は縞状偏析を助長する傾向があり、その結果としてCrの偏析も助長する傾向がある。こうしたことから、PやSについては合計含有量(P+S)で0.020%以下(0%を含まない)とすることが好ましい。PおよびSの合計含有量は、より好ましくは0.015%以下であり、更に好ましくは0.010%以下であるが、量産工程で製造する観点からは、その下限が0.006%程度となる。
本発明で規定する含有元素は上記の通りであって、残部は鉄および不可避不純物であり、該不可避不純物として、原料、資材、製造設備等の状況によって持ち込まれる元素(例えば、Al、O、N等)の混入が許容され得る。尚、転動疲労寿命を高めるため、下記元素を規定範囲内で積極的に含有させることも可能である。
[Ni:0.25%未満(0%を含まない)、Cu:0.25%未満(0%を含まない)、およびMo:0.08%未満(0%を含まない)よりなる群から選択される1種以上]
Ni、Cu、Moは、いずれも母相の焼入性向上元素として作用し、硬さを高めて転動疲労特性の向上に寄与する元素である。これらの効果は、好ましくはNiで0.03%以上、Cuで0.03%以上、Moで0.01%以上含有させることによって有効に発揮される。しかし、Ni含有量が0.25%以上、あるいはMo含有量が0.08%以上になると、加工性が劣化し、Cu含有量が0.25%以上になると熱間圧延時の割れを助長するので、好ましくは夫々上記範囲内とするべきである。
本発明の軸受用鋼材は、上記化学成分組成を満たす鋼材を、例えばソーキング炉で加熱した後、熱間圧延して球状化熱処理することにより得られるが、上記(1)式の関係を満足するようにCrの偏析を低減するためには、その製造条件もできるだけ厳密に制御することが好ましい。
本発明の球状化熱処理軸受用鋼材を得るためには、上記化学成分組成を満たす鋼材を、鋳造から軸受部品となるまでの或る段階で、適正な条件で加熱する必要があるが、その加熱条件は、鋼材が鋳造されてからの加工履歴に大きく依存する。即ち、本発明で問題としているのは、鋳造時に不可避的に生じるミクロ偏析がその後の圧延で縞状に伸びた縞状偏析であるが、圧延や鍛造での一次鍛圧比によって、縞状偏析の幅が変化する。従って、縞状偏析を熱処理で改善するためには、縞状偏析の幅に応じた加熱条件を設定する必要がある。
従来では、偏析を低減するために、鋳造後の鋳片を加熱して、CrやCの拡散を行ってきたのであるが、実用的な熱処理温度と時間では、偏析元素の均質化が不十分であった。そのため、その後の圧延処理で偏析を低減する必要があったが、圧延処理では加熱温度が低過ぎて、必ずしも偏析を低減することはできていなかった。
そこで、本発明では、鋳片のままでなく、或る程度圧延若しくは鍛造した後に、偏析を低減する熱処理を行うことによって、偏析を大幅に改善し、その後の圧延条件の制約を少なくして、一般的な加工条件を含めて加工条件によらず、その後の球状化熱処理、焼入れ・焼戻しを経て軸受部品としたときの転動疲労寿命を向上し得たのである。
具体的な条件として、鋳造後に一旦一次鍛圧比(「鋳片の鋳造方向に垂直な断面積/圧延材若しくは鍛造材の加工方向に垂直な断面積」を言う。以下同じ)で3以上まで圧延若しくは鍛造した段階で、1200〜1350℃で加熱処理(拡散熱処理)を施し、ミクロ偏析を改善した後、任意の条件で圧延や鍛造を施すことで、夫々の部品に合わせたサイズの軸受用鋼材が実現できる。そのときの加熱時間は、Crの拡散に基づく、後述する(3)式の関係を満足することが目安となり、工業的に無駄なく効率的な製造条件が提供できることになる。
上記の考え方は、一次鍛圧比によって変わる縞状偏析の幅に応じて、Crの拡散が十分となる加熱温度と時間に設定することがポイントとなる。一次鍛圧比をRf、加熱温度をT(K)、加熱時間をt(時間)とすると、下記の関係がある。
縞状偏析の幅 ∝ √(1/Rf)
拡散距離 ∝ √(拡散係数×t)
拡散係数 ∝ exp(−Q/RT)
但し、Q:拡散の活性化エネルギー
R:気体定数
必要な加熱時間t ∝ (1/Rf)×(exp(−Q/RT))
本発明者らは、上記の考え方に基づいて、Crのミクロ偏析を低減するためには、拡散熱処理条件を実験によって確かめ、推奨する熱処理条件を得た。即ち、加熱時間(拡散熱処理時間)tを、下記(3)式を満足するように設定し、その時間よりも20%程度以上長くしても改善幅は飽和するため、上限は工業的観点から決定した。尚、[(3)式の右辺]×1.2程度が推奨される。
t>8×10-9×(1/Rf)×exp[69.7/(0.001986242×T)]
…(3)
尚、拡散熱処理温度を1200℃以上としているのは、工業的に合理的な時間内で処理を終えるために設定した下限であり、1350℃以下としているのは、この温度を超えて加熱すると、工業的に加熱設備コストが増大し、鋼材の表面に分厚い酸化膜が生成して次の圧延工程のための酸化皮膜除去工程コストが増大するためである。また、一次鍛圧比を大きくすればするほど、拡散熱処理時間は短くてすむが、工業的に連続炉で熱処理する場合は良いが、バッチ炉で熱処理を行う場合には、炉の大きさに合わせて切断する必要が生じるため、生産性が著しく低下する。従って、一次鍛圧比は3以上(より好ましくは5以上)、10以下(より好ましくは8以下)程度が好ましい。
また、球状化熱処理後のセメンタイト粒径のばらつきを低減して、上記(2)式の関係を満足させるためには、下記の方法に従えば良い。まず、球状化熱処理前の素材として、上記した製造方法によって前記(1)の関係を満足する鋼材を用い、更に加工条件(二次圧延若しくは二次鍛造の加熱温度)と球状化熱処理条件を適正にする必要がある。
このとき加工条件(二次加工条件)としては、一般的な温度よりも低い温度(1000℃以下、好ましくは980℃以下)とすることが好ましい(好ましい下限は800℃程度)。また、球状化熱処理は、Cr偏析が抑制できている分だけ低温加熱とし(例えば、730〜755℃×5〜10時間)、その後の冷却において通常よりも冷却速度を速く設定する(例えば、10〜50℃/時)とすることで、比較的微細で粒径の揃った球状化セメンタイトとすることができる。冷却速度が速くなり過ぎると、軟質化が不十分となり、冷間鍛造性が劣化することになる。このときの冷却速度は、好ましくは20℃/時以上、40℃/時以下である。
本発明の軸受用鋼材は、所定の部品形状にされた後球状化熱処理され、更に焼入れ・焼戻しされて軸受部品を製造するものであるが、鋼材段階の形状についてはこうした製造に適用できるような線状・棒状のいずれも含むものであり、そのサイズも、最終製品に応じて適宜決めることができる。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することは勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
下記表1に示す各種化学成分組成の鋼を150kg真空熔解によって溶製し、直径:230mm(丸棒材)のインゴットを作製した。
Figure 0005723233
上記で得られたインゴットを用い、下記表2に示す条件(鍛造温度、一次鍛圧比)で一旦所定の一次鍛圧比まで熱間鍛造した後、種々の条件で加熱処理を行い[拡散熱処理温度、拡散熱処理時間、および(3)式の右辺の値(8×10-9×(1/Rf)×exp[69.7/(0.001986242×T)])、更に熱間鍛造(二次鍛造温度、トータル鍛圧比)して、直径:65mmの丸棒とした。
Figure 0005723233
得られた丸棒を球状化熱処理し、更に焼入れ・焼戻しを実施してスラスト転動疲労試験を実施した。このときの球状化熱処理の条件は、750℃×6時間加熱して、680℃まで5時間かけて(平均冷却速度14℃/時)徐冷した。焼入れ・焼戻しの条件は、840℃×30分で加熱後油焼入れし、160℃×120分で焼戻しした。このとき、比較例として、一般的な条件の760℃×6時間加熱して、680℃まで8時間かけて(平均冷却速度10℃/時)徐冷したものについても準備した(試験No.10)
得られた各鋼材(焼入れ・焼戻し材)からスラスト試験片を作製し、面圧:5.3GPaにてスラスト転動疲労試験を各10回ずつ実施し、疲労寿命L10(累積破損確率10%における疲労破壊までの応力繰り返し数)を評価し、疲労寿命L10が9×106回以上を合格基準とした。
各鋼材について、圧延方向に平行な面(鋼材の縦断面)において、球状化焼鈍前の状態で、圧延方向に垂直な方向でのEPMAライン分析(加速電圧:15kV)を、1mm長さ(2μm間隔で約500点分析)で実施し、各データ点のCrのX線強度を用いて平均値と標準偏差を計算し、(CrのX線強度値の標準偏差σ1/CrのX線強度値の平均値a1)を評価した。
また、球状化熱処理材を焼入れ・焼戻しした状態で、ピクラール腐食し、走査型電子顕微鏡(SEM)で、2000倍で任意の箇所の写真を各5視野ずつ撮影し、球状化セメンタイト粒径(円相当直径:同一面積の円に換算したときの直径)を画像解析し、球状化セメンタイト粒径の標準偏差、球状化セメンタイト粒径の平均値を求め、(球状化セメンタイト粒径の標準偏差/球状化セメンタイト粒径の平均値)を評価した。
これらの結果[(CrのX線強度値の標準偏差σ1/CrのX線強度値の平均値a1)、(球状化セメンタイト粒径の標準偏差σ2/球状化セメンタイト粒径の平均値a2)および疲労寿命L10]を、下記表3に示す。
Figure 0005723233
これらの結果から、次のように考察することができる。即ち、試験No.1〜9のものでは、本発明で規定する要件を満足しており、いずれも転動疲労寿命が優れていることがわかる。特に、PとSの合計含有量(「P+S」で表示)が0.020%以下の鋼材(鋼種F)を用いたもの(試験No.6)や、所定量のMoを含有したもの(試験No.8、9)では、より優れた転動疲労寿命を発揮していることが分かる。
これに対し、試験No.10〜14のものでは、本発明で規定する要件を外れているため、いずれも疲労寿命L10が低くなっている。即ち、試験No.10のものは、拡散熱処理条件は適正であるが、球状化熱処理条件が通常の条件であるので(温度が高い)、球状化セメンタイト粒径のばらつきが本発明で規定する要件を外れ、疲労寿命L10が低くなっている。
試験No.11、12のものは、拡散熱処理条件が適正ではなく、また二次鍛造温度も高くなっており、その結果として球状化セメンタイト粒径のばらつきが大きくなって(偏析も改善されていない)、疲労寿命L10が低くなっている。試験No.13のものは、一次鍛造を行っていないため、拡散熱処理条件が不適切となっており、上記試験No.11、12と同様の結果となっている。試験No.14のものは、拡散熱処理を行っていないため、偏析が改善されず、また球状化セメンタイト粒径のばらつきが大きく、疲労寿命L10が低くなっている。
これらのデータに基づいて、(CrのX線強度値の標準偏差σ1/CrのX線強度値の平均値a1)とL10寿命との関係を図1に、(球状化セメンタイト粒径の標準偏差σ2/球状化セメンタイト粒径の平均値a2)とL10寿命との関係を図2に夫々示すが、(CrのX線強度値の標準偏差σ1/CrのX線強度値の平均値a1)および(球状化セメンタイト粒径の標準偏差σ2/球状化セメンタイト粒径の平均値a2)を適切な範囲に制御することによって、優れた疲労寿命(転動疲労寿命)が達成されることが分かる。

Claims (3)

  1. C:0.95〜1.10%(質量%の意味、以下同じ)、
    Si:0.15〜0.90%、
    Mn:1.2%以下(0%を含まない)、
    Cr:0.90〜1.60%、
    P:0.025%以下(0%を含まない)、
    S:0.025%以下(0%を含まない)を夫々含み、
    残部が鉄および不可避不純物からなり、
    鋼材の圧延方向に平行な面において、圧延方向に垂直な方向にEPMAライン分析したとき、CrのX線強度値の標準偏差σ1と平均値a1が、下記(1)式の関係を満足すると共に、球状化セメンタイト粒径の標準偏差σ2と平均値a2が下記(2)式の関係を満足することを特徴とする転動疲労寿命に優れた球状化熱処理軸受用鋼材。
    (CrのX線強度値の標準偏差σ1/CrのX線強度値の平均値a1
    ≦0.25…(1)
    (球状化セメンタイト粒径の標準偏差σ2/球状化セメンタイト粒径の平均値a2
    ≦0.15…(2)
  2. PおよびSの合計含有量を0.020%以下(0%を含まない)に抑制したものである請求項1に記載の球状化熱処理軸受用鋼材。
  3. 更に他の元素として、Ni:0.25%未満(0%を含まない)、Cu:0.25%未満(0%を含まない)、およびMo:0.08%未満(0%を含まない)よりなる群から選択される1種以上を含む請求項1または2に記載の球状化熱処理軸受用鋼材。
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