JP5717363B2 - プラスチックレンズ成形用成形型およびプラスチックレンズの製造方法 - Google Patents
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Description
しかしながら、実際に眼鏡を製造する際に眼鏡フレームに枠入れされるレンズの大部分は子午線方向が短く、水平方向が長い。したがって注型重合により得られた円形のプラスチックレンズ(レンズブランクス)の子午線方向の上下端部は切断されて廃棄されているのが実情である。この廃棄される部分に使用されたプラスチックレンズ原料液は実際の眼鏡レンズには不要なものであるため、原料液の使用量を低減し製造コストを抑えるためには、枠入れ時に除去される部分は可能な限り少なくすることが望ましい。また、環境負荷の点からも、枠入れ時の廃棄物量は低減することが望ましい。
これに対し本発明者らは上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、2つのモールドのうちの一方を、外形が円形であり、かつ一方に開口し他方が閉塞した凹部を有する有底モールドとすることにより非円形レンズを成形することができ、しかもモールド同士の位置合わせが容易な成形型を構成できること、更には上記有底モールドは円形レンズの製造にも適用可能であること、を見出した。これは、成形するレンズ形状にかかわらず上記有底モールドの外形は円形であるため他方の円形モールドとの位置合わせが容易であることと、凹部を所望のレンズ形状に対応する形状に設計することにより非円形レンズをはじめとする各種形状のレンズが成形可能となること、によるものである。
本発明は、以上の知見に基づき完成された。
[1]外形が円形であり、かつ一方に開口し他方が閉塞した凹部を有する有底モールドと、
上記有底モールドの開口端を蓋閉する円形モールドと、
上記2つのモールドの周囲を取り囲むことにより、上記蓋閉状態を固定するシーリング部材と、
を有し、
前記凹部の断面形状は前記有底モールドの外形とはサイズおよび形状の少なくとも一方が異なり、
前記有底モールドの開口端の端面が前記円形モールドとの当接面となって前記有底モールドの凹部が円形モールドによって蓋閉されることによって、該有底モールド内にプラスチックレンズ原料液注入用キャビティが形成されることを特徴とする、プラスチックレンズ成形用成形型。
[2]前記有底モールドの凹部の断面形状は非円形である、[1]に記載のプラスチックレンズ成形用成形型。
[3]前記有底モールドの凹部は、内部底面に光学面を形成可能な成形面を有する、[1]または[2]に記載のプラスチックレンズ成形用成形型。
[4]前記シーリング部材は側面にプラスチックレンズ原料液注入口を有し、前記有底モールドは側面周縁部に切り欠を有し、前記注入口と切り欠が連通することにより、前記キャビティ内へプラスチックレンズ原料液を注入するための流路が形成される、[1]〜 [3]のいずれかに記載のプラスチックレンズ成形用成形型。
[5]前記有底モールドの外形と前記円形モールドの外形は、同一形状の円形である[1]〜 [3]のいずれかに記載のプラスチックレンズ成形用成形型。
[6][1]〜[5]のいずれかに記載のプラスチックレンズ成形用成形型のプラスチックレンズ原料液注入用キャビティにプラスチックレンズ原料液を注入し、上記キャビティ内でプラスチック原料液の硬化反応を行うことによりプラスチックレンズを得ることを特徴とする、プラスチックレンズの製造方法。
更に、本発明によれば円形レンズに比べて枠入れされるレンズ形状に近い形状を有する非円形のプラスチックレンズを製造することができる。これにより、枠入れ時の廃棄物量およびプラスチックレンズ原料液の使用量を大幅に低減することができる。
従来の注型重合では、2つの円形モールドの周囲を取り囲むことにより形成されたキャビティ内でプラスチックレンズの重合を行っていたため、必然的に成形されるレンズは円形レンズに限られることとなる。これに対し本発明のプラスチックレンズ成形用成形型(以下、単に「成形型」ともいう)では、プラスチックレンズ原料液注入用キャビティは有底モールドの凹部を円形モールドによって蓋閉することにより形成されるため、成形されるレンズの形状は、凹部の形状によって決定される。したがって、凹部の形状を所望のレンズ形状に対応する形状に設計することにより、非円形レンズをはじめとする各種形状のレンズを成形することができる。また、円形レンズを製造する場合には、有底モールドの凹部のサイズ(直径)を変えることにより、他方のモールドとして同一の円形モールドを使用しつつ、サイズの異なる円形レンズを製造することもできる。更に、上記有底モールドは、仮に凹部の形状が非円形であったとしても、外形は円形であるため他方の円形モールドとの位置合わせが容易である。
以下、本発明の成形型について、更に詳細に説明する。
また、図1に示す有底モールド1は、側面周縁部に切り欠3を有する。この切り欠は、プラスチックレンズ原料液の流路の一部をなす。この点については後述する。
ここで、図3に基づき、通常の注型重合で使用される成形型について説明する。図3に示す成形型10は、レンズの前面(凸面)を形成すべく凹面側に成形面を有する凹面型である円形モールド(第一モールド)11、レンズの後面(凹面)を形成すべく凸面側に成形面を有する円形モールド(第二モールド)12を有し、環状のガスケット13が両モールドの周面を取り囲むことによって内部にキャビティ14が形成されている。第一モールドおよび第二モールドは、製造治具にて取り扱い可能な非転写面(非使用面17)とレンズの光学表面を転写させるための転写面(使用面16)を有する。使用面16はレンズの光学面形状および表面状態を転写する面である。この成形型では、注入口部15から注入されたプラスチックレンズ原料液が、ガスケット13の側面に設けられた注入口18からキャビティ14内へ導入され、キャビティ14内で硬化反応が行われる。したがって、得られる成形体は、モールドと同様に円形である。
本発明のプラスチックレンズの製造方法は、本発明のプラスチックレンズ成形用成形型のプラスチックレンズ原料液注入用キャビティにプラスチックレンズ原料液を注入し、上記キャビティ内でプラスチック原料液の硬化反応を行うことによりプラスチックレンズを得るものである。
本発明のプラスチックレンズの製造方法では、有底モールドの凹部を円形モールドによって蓋閉することにより形成されたキャビティ内でプラスチックレンズ原料液の硬化反応を行うことにより、凹部と同様の形状を有するプラスチックレンズを製造することができる。したがって、例えば凹部の断面形状を非円形とすれば非円形のレンズを得ることができる。前述のように、非円形のプラスチックレンズは、従来の円形レズに比べて枠入れ時の廃棄物量、更にはプラスチックレンズ原料液の使用量を低減できるため、環境面およびコスト面のいずれにおいても有利である。
以下、本発明のプラスチックレンズの製造方法について、更に詳細に説明する。
(1)有底モールドの成形
オレフィン系熱可塑性樹脂であるポリエチレンエラストマー(住友化学社製エクセレンFX)を用いて、断面形状が角丸四角形である凹部(短径62mm、長径73mm、内部側面の高さ18mm)を有する、外形が円形の有底モールド(外径81.5mm、高さ23mm)を射出成形により得た。有底モールドを成形するための金型としては、有底モールド凹部の内部底面に転写される面が鏡面研磨加工を施した凹面である金型を使用した。この金型を使用することにより、凹部の内部底面が光学面を形成可能な凸形状の成形面である有底モールドが成形された。
成形した有底モールドの側面の周縁部にカッターによって切り欠を形成した。
以上の工程により、図1に示す形状の有底モールドを得た。
上記(1)で得た有底モールドを、上記と同様のポリエチレンエラストマー製の環状のガスケット内に挿入した。この際、ガスケット側面の注入口と有底モールドの切り欠が一致するように位置決めした。その後、ガスケットの開口に、凸面を形成すべく凹形状の成形面を有する円形のガラスモールドを嵌め込むことにより、図4に断面図を示す成形型を組み立てた。
上記(2)で得た成形型を、ガスケットの注入口部が鉛直上方を向くように配置した後、注入口部からジエチレングリコールビスアリルカーボネート樹脂(CR−39)の原料液を、有底モールドの凹部を円形モールドで蓋閉することにより形成したプラスチックレンズ原料液注入用キャビティ内に導入し、該キャビティが満たされた後に、所定の重合プログラムに従って硬化反応を行った。硬化反応終了後、成形型からレンズを取り出した。成形型から取り出したレンズの形状は、有底モールドの凹部と同様の形状、即ち、短径62mm、長径73mmの角丸四角形であった。即ち、非円形レンズを得ることができた。得られたレンズの厚さは、上記凹部の内部側面高さと同様であった。
有底モールドの凹部の断面形状を円形(直径75mm)に変更した点以外、実施例1と同様に成形型の作製およびプラスチックレンズの成形を行うことにより、直径75mmの円形レンズを得た。
Claims (6)
- 外形が円形であり、かつ一方に開口し他方が閉塞した凹部を有する有底モールドと、
上記有底モールドの開口端を蓋閉する円形モールドと、
上記2つのモールドの周囲を取り囲むことにより、上記蓋閉状態を固定するシーリング部材と、
を有し、
前記凹部の断面形状は前記有底モールドの外形とはサイズおよび形状の少なくとも一方が異なり、
前記有底モールドの開口端の端面が前記円形モールドとの当接面となって前記有底モールドの凹部が円形モールドによって蓋閉されることによって、該有底モールド内にプラスチックレンズ原料液注入用キャビティが形成されることを特徴とする、プラスチックレンズ成形用成形型。 - 前記有底モールドの凹部の断面形状は非円形である、請求項1に記載のプラスチックレンズ成形用成形型。
- 前記有底モールドの凹部は、内部底面に光学面を形成可能な成形面を有する、請求項1または2に記載のプラスチックレンズ成形用成形型。
- 前記シーリング部材は側面にプラスチックレンズ原料液注入口を有し、前記有底モールドは側面周縁部に切り欠を有し、前記注入口と切り欠が連通することにより、前記キャビティ内へプラスチックレンズ原料液を注入するための流路が形成される、請求項1〜3のいずれか1項に記載のプラスチックレンズ成形用成形型。
- 前記有底モールドの外形と前記円形モールドの外形は、同一形状の円形である請求項1〜4のいずれか1項に記載のプラスチックレンズ成形用成形型。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載のプラスチックレンズ成形用成形型のプラスチックレンズ原料液注入用キャビティにプラスチックレンズ原料液を注入し、上記キャビティ内でプラスチック原料液の硬化反応を行うことによりプラスチックレンズを得ることを特徴とする、プラスチックレンズの製造方法。
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