JP5705046B2 - 電源システム - Google Patents
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Description
近年急激に増加しているリチウムイオン電池等の非水系二次電池は、正極にコバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、又は、それらを組み合わせた複合材料を用い、負極にグラファイトやハードカーボン等の炭素材料を用い、電解質にエチレンカーボネート等の有機溶媒を使用している。
この非水系二次電池では、充電末期にて電圧が上昇する際、正極及び負極が極めて強い酸化・還元状態におかれ、アルカリ水溶液系二次電池に比べて材料が非常に不安定化しやすいので、一定の電圧以上まで過充電すると正極では電解液の酸化・結晶構造の破壊により発熱し、負極では金属リチウムが析出し、電池を急激に劣化させる等の不具合を招くおそれがある。また、過充電時の電解液分解は電池内のガス発生や不可逆容量の増加を招き、これも電池の劣化の要因となる。
この非水系二次電池を、従来のアルカリ水溶液系二次電池と同じ定電流充電方式で充電すると、過充電になりやすく、特に、充電電流が大きくなる程、分極により電圧が上昇し、過充電の傾向が強くなり、電池の故障を招くおそれがあった。このため、従来の非水系二次電池では、一定電流で充電した後、一定の電圧に達すると電流を減少させ、所定の電流値に達したら充電を終了する定電流定電圧充電方式を採用している(例えば、特許文献2参照)。
しかも、定電流定電圧充電方式で組電池を充電すると、組電池内の各セルの僅かな特性差でも定電圧充電領域で各セルの電圧が大きくばらつき、過充電に至るセルが生じるため、この電圧ばらつきを解消するための充電バランス回路が必要であった。このため、組電池の部品点数が多くなり、高価になってしまう。
この構成によれば、組電池の充電時の電圧の上昇が緩やかであり、充電末期に急激に電圧が上昇する特性が得られ、充電バランス回路を必要とせずに良好なサイクル寿命で充電でき、且つ、定電流定電圧充電方式に比べて充電時間の短縮に有利である。このため、簡易な構成で、過充電を回避して充電することができ、充電時間も短縮できる。
また、上記構成において、前記組電池は、各セルの電圧ばらつきを解消する充電バランス回路を備えることなく各セルを接続して構成されるようにしても良い。この構成によれば、部品点数が少なく、安価に構成することができる。
また、上記構成において、前記組電池は、一定の電流で充電した場合に、満充電の90%以上となる充電末期で、充電末期以前よりも電池電圧が急上昇する特性に形成され、前記所定の電圧値は、前記充電末期内の電圧値に設定される値であり、即ち、3.4V〜3.6Vの間で任意に設定される値である。この構成によれば、過充電を確実に回避しつつ、ほぼ満充電の状態で充電停止させることができる。
また、予め定めた放電時の下限電圧とは2.0V〜2.2Vの間で任意に設定される値である。この構成によれば、過放電を確実に回避することができる。
図1は、本発明の実施形態に係る電源システム10を示す図である。
この電源システム10は、電力で動作する機器の電源となる組電池モジュール11と、組電池モジュール11を充電する充・放電装置21とを備えている。
組電池モジュール11は、複数のセル(単電池とも言う)12を有する組電池13と、組電池13の充電/放電を制御する充・放電制御装置(制御装置)31とを有しており、充・放電制御装置31は、各セル12に電圧モニター線32を介して接続される電圧計33を用いて各セル12をモニターし、充・放電停止回路35によって各セル12のいずれか1セルの電圧が所定の電圧値に達すると、充電をリレースイッチ34によって停止させる構成としたものである。
図2は、セル12の略図を示している。各セル12は、充電・放電に伴ってリチウムイオンを放出・吸蔵する正極活物質を有する正極14と、充電・放電に伴ってリチウムイオンを吸蔵・放出する負極活物質を有する負極15と、正極14と負極15との間に設けられるセパレータと、正極14と負極15とを満たす非水電解液(図には現れず)とを有し、これらはラミネート外装体16に封入され、非水系二次電池の一種であるリチウムイオン電池として構成されている。
詳述すると、本実施形態では、正極活物質にオリビン型リン酸鉄リチウム(LiFePO4)を用い、導電剤にアセチレンブラック粉状品を用い、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)を用い、ディスパー付プラネタリーミキサーで攪拌混合してペーストを調整し、正極14の基材となる厚み20μmのアルミニウム箔に塗布し、乾燥後にプレスして所定サイズにサイジングすることにより、正極14に用いる正極板を作製している。
また、負極活物質にグラファイトを用い、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)水溶液を用い、結着剤としてスチレンブタジエンラバーを用い、粘度調整用にイオン交換水を加えて、ディスパー付プラネタリーミキサーで攪拌混合してペースト化し、負極15の基材となる厚み10μmの銅(Cu)箔に塗布し、乾燥後にプレスして所定サイズにサイジングすることにより、負極15に用いる負極板を作製している。
そして、正極板(正極14)と負極板(負極15)とをセパレータを介して交互に積層して積層体を形成し、これらを前記電解液と共にラミネート外装体16(図2参照)に封入することによって、定格出力電圧3.2V、定格容量20Ahのラミネートセル(以下、単に「セル」と言う)を作製している。
このリレースイッチ34が閉成のときは、組電池13と入出力端子17とが接続するので、組電池13の充電や放電が可能となり、リレースイッチ34が開放のときは、組電池13と入出力端子17とが切り離されるので、充電停止や放電停止となる。
オリビン構造のリチウム遷移金属複合酸化物は、結晶中の全ての酸素がリンと共有結合し、強固なリン酸塩(PO4 3−)ポリアニオンを構成している。このため、従来のリチウムイオン電池の電極に使用されるコバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム等に比べて非常に安定しており、熱安定性が高く、過充電や高温に対して高い安全性を有している。
図3及び図4に示すように、本実施形態のセル12は、充電末期付近までは電圧VAの上昇が非常に緩やかであり、充電末期に急激に電圧VA,VBが上昇している。ここで、充電末期とは、満充電の少なくとも90%以上の領域である。
このように充電末期で、充電末期以前よりも電圧が急上昇する特性を有するので、一定の電流で充電し、充電末期内の所定の上限電圧(充電停止電圧)V1(図3、図4では3.6V)で充電を停止するようにすれば、過充電を避けつつ満充電に近い充電量が得られる。
また、1.0CA充電の場合、0.5CA充電よりも短時間で充電できるが、このような急速充電においても、充電末期付近までは電圧の上昇が非常に緩やかであり、充電末期に急激に電圧が上昇する現象は変わらなかった。このため、定電流の急速充電でも、同じ充電方法で、過充電を避けつつ満充電に近い充電量を得ることができる。
充・放電制御装置31において、組電池モジュール11の充電時や放電時(ステップS11)、電圧計33は、各セル12の電圧を測定し(ステップS12)。充・放電停止回路35は、各セル12の電圧をモニターし、いずれか1セルの電圧が、予め記憶された上限電圧V1以上か否かを判定する(ステップS13)。そして、いずれか1セルの電圧が上限電圧V1以上の場合に(ステップS13:YES)、充・放電停止回路35は、リレースイッチ34を開放する(ステップS14)。これにより、充電によって、いずれか1セルの電圧が上限電圧V1に達すると、それ以上の充電が直ちに停止される。
一方、いずれのセルの電圧も上限電圧V1未満の場合(ステップS13:NO)、充・放電停止回路35は、いずれかのセル12の電圧が、予め記憶された下限電圧V2未満か否かを判定する(ステップS15)。そして、いずれかのセル12の電圧が下限電圧V2未満の場合に(ステップS15:YES)、充・放電停止回路35は、リレースイッチ34を開放する(ステップS16)。これにより、放電によって、いずれか1セルの電圧が下限電圧V2に達した時点で、それ以上の放電が直ちに停止される。
図6は、組電池モジュールを0.5CAで充電・放電したときの各セル12の電圧曲線を示しており、縦軸を「セル電圧」、横軸を「充放電容量」で示した図である。なお、図6中、充電時の電圧曲線は符号f1を付して示し、放電時の電圧曲線は符号f2を付して示しており、充電・放電時、各セル12の電圧はほぼ揃っている。
本実施形態では、セル12が1個でも3.6V以上であれば充電を停止するため、電圧危険領域を超えて過充電されたセルは無かった。また、セル12が1個でも2.2V未満であれば放電を停止するため、過放電されたセル12も無かった。従って、充電・放電共に全セル12が電圧安全領域内であった。
この場合も、セル12が1個でも3.6V以上であれば充電を停止するため、電圧危険領域を超えて過充電されたセル12は無かった。また、セル12が1個でも2.2V未満であれば放電を停止するため、過放電されたセルも無かった。急速充電・放電の場合も充電・放電共に全セル12が電圧安全領域内であった、また、充放電容量も0.5CA充放電と同等の容量が得られた。この組電池モジュール11を実施例1の組電池モジュールと言う。
ここで、実施例1の組電池モジュール11では、各セル12の性能のばらつきが予め定めた基準範囲内に収まるように各セル12が選定されている。この性能の選定によって、充電時のセル電圧のばらつきを抑えるようにしている。
実施例1と同様にして、定格電圧3.2V、定格容量20Ahのラミネートセルを作製した後、このラミネートセルを8個直列に接続し、実施例1と同様の24V系の組電池モジュールを作製した。
そして、この組電池モジュールを、充・放電装置21を定電流定電圧方式を用いて充・放電を行ない、充電時には充電バランス回路を使用せずに充電した。なお、充・放電は、28.8Vまで定電流で充電し、28.8Vに達したら定電圧充電を行った。
図8は、この比較例1の組電池モジュールを1.0CAの定電流定電圧充電方式で急速充電したときの各セル12の電圧曲線を示しており、縦軸を「セル電圧」、横軸を「充電時間」で示した図である。この図に示すように、定電流充電領域では各セルの電圧にばらつきは殆どないが、定電圧充電領域では各セルの電圧ばらつきが多くなっている。各セル12の電圧ばらつきが多いため、電圧危険領域を超えて過充電されるセル12が生じるおそれがある。
本実施例では、各セル12の性能のばらつきが予め定めた基準範囲内に収まるように選定したが、各セル12を無作為に抽出した場合にも同様の結果が得られ、定電圧定電流方式にて充電を行なった場合は、更に電圧のばらつきが大きなものであった。
正極活物質にコバルト酸リチウムを用い、導電剤にアセチレンブラック粉状品を用い、バインダーとしてPVDFを用い、ディスパー付プラネタリーミキサーで攪拌混合してペーストを調整し、正極14の基材となる厚み20μmのアルミニウム箔に塗布し、乾燥後にプレスして正極14に用いる正極板を作製した。
正極板以外は、実施例1と同様にして定格電圧3.6V、定格容量20Ahのラミネートセルを作製した後、このラミネートセルを7個直列に接続し、実施例1と同様の24V系の組電池モジュールを作製した。
この組電池モジュールのセルの上限電圧V1を4.2V、下限電圧V2を2.8Vとし、実施例1と同様に、組電池モジュールを0.5CA、1.0CAの定電流定電圧で充電した。つまり、各セルの電圧が全て4.2V未満であれば充電を継続し、いずれか1セルの電圧が4.2V以上であれば、リレースイッチ34を開放して充電を停止した。また、組電池モジュールが放電し、各セルの電圧が全て2.8V以上であれば放電を継続し、いずれか1セルの電圧が2.8V未満であれば、リレースイッチ34を開放して放電を停止した。
比較例2と同様にして定格電圧3.6V、定格容量20Ahのラミネートセルを作製した後、このラミネートセルを7個直列に接続し、比較例2と同様の24V系の組電池モジュールを作製した。
この組電池モジュールを充・放電装置21を定電流定電圧方式を用いて充・放電を行ない、充電時には充電バランス回路を使用し充電した。なお、充・放電は、電圧が28.8Vまでは定電流で充電し、28.8Vに達したら定電圧充電を行った。
正極活物質にマンガン酸リチウムを用い、導電剤にアセチレンブラック粉状品を用い、バインダーとしてPVDFを用い、ディスパー付プラネタリーミキサーで攪拌混合してペーストを調整し、正極14の基材となる厚み20μmのアルミニウム箔に塗布し、乾燥後にプレスして正極14に用いる正極板を作製した。
正極板以外は、実施例1と同様にして定格電圧3.6V、定格容量20Ahのラミネートセルを作製した後、このラミネートセルを7個直列に接続し、実施例1と同様の24V系の組電池モジュールを作製した。
この組電池モジュールのセルの上限電圧V1を4.2V、下限電圧V2を2.8Vとし、実施例1と同様に、組電池モジュールを0.5CAの定電流で充電した。つまり、各セルの電圧が全て4.2V未満であれば充電を継続し、いずれか1セルの電圧が4.2V以上であれば充電を停止した。また、組電池モジュールが放電し、各セルの電圧が全て2.8V以上であれば放電を継続し、いずれか1セルの電圧が2.8V未満であれば放電を停止した。
上記各組電池モジュールを、1.0CAで急速充電・放電を繰り返した。このときのサイクル寿命特性を図9に示す。なお、図9において縦軸を「放電容量/定格容量」、横軸を「サイクル寿命」で示した。
図9に示すように、実施例1の組電池モジュールが最も放電容量の低下が少なく、次に比較例1,2,4の順で放電容量の低下が少なかった。
具体的には、実施例1の組電池モジュール11は、約1000サイクルの充電・放電を行うと、「放電容量/定格容量」が約108%から約96%へと低下した。一方、比較例1の組電池モジュールは、約1000サイクルの充電・放電を行うと、約113%から約64%へと大きく低下した。また、比較例2の組電池モジュールは、約700サイクルで約75%から約30%へと大幅に低下し、比較例4の組電池モジュールは、600サイクルに満たないうちに約77%から約20%まで大幅に低下した。
比較例1、2、4において性能が低下したのは、比較例1では、定電圧充電領域で過充電になったセルの劣化が進んだもの考えられ、比較例2〜3では、充電・放電サイクルを繰り返す毎にセルの内部抵抗が上昇し、1.0CAでの充電分極が大きくなり、定電流充電で充電され難くなったと考えられる。これらのことから、実施例1の組電池モジュール11が、比較例1、2、4と比べて非常に良好なサイクル寿命特性であることが判る。
図10は、比較例2の組電池モジュールを0.5CAの定電流定電圧充電方式と1.0CAの定電流定電圧充電方式とで充電した場合の特性を示す。図10は縦軸の主軸を「電圧」、及び第2軸を「充電電流/充電容量」、即ち満充電時を1.0とした時の容量比、横軸を「充電時間」で示した図である。
ここで、図10は、0.5CAの定電流定電圧充電方式で充電した場合の電圧VC、「充電電流/充電容量」JC、電流IC、及び、1.0CAの定電流定電圧充電方式で充電した場合の電圧VD、「充電電流/充電容量」JD、電流IDを示している。
また、タイミングTCは、0.5CAの定電流定電圧充電方式で、定電流充電から定電圧充電に切り替わるタイミングであり、タイミングTDは、1.0CAの定電流定電圧充電方式で、定電流充電から定電圧充電に切り替わるタイミングである。
図10に示すように、タイミングTC,TDで定電流充電から定電圧充電に切り替わると、充電容量JC,JDの傾きが各々緩やかになるので、傾きが緩やかになる分だけ充電時間が長くなる。
これに対し、実施例1では、定電流充電のみで充電するため、図10に示すような「充電容量の傾きが緩やかになる変化」がなく、充電時間を短くできると考えられる。
また、100%以上の放電容量を得られた組電池モジュールのうち、実施例1の組電池モジュール11が、他の比較例と比べて短時間で充電することが可能であった。
このことから、実施例1の組電池モジュール11が、比較例1〜4と比べて高い初期容量と短い充電時間とを高バランスで両立できることが判った。
しかも、本実施形態では、定電流充電だけで充電するため、定電流定電圧充電方式の充電装置と比べて、充・放電装置21の部品点数を低減して簡易な構成にすることができる。従って、本実施形態では、組電池モジュール11や充・放電装置21からなる電源システム10を安価に提供することが可能になる。
また、急速充電・放電を行っても、殆ど使用できる容量が変わらず、利便性の良い電源システム10を提供することが可能である。
また、本実施形態では、定電流充電だけで充電する構成で、各セル12の性能のばらつきを予め定めた基準範囲内に抑えることが可能であり、充電時のセル電圧のばらつきを簡易かつ確実に抑えることができる。仮に、定電流定電圧方式で充電する場合に充電時のセル電圧のばらつきを精度良く抑えようとすると、充電バランス回路が必要となり、低価格化が困難である。つまり、本実施形態では、これによっても低価格化と過充電防止とを両立することができる。
また、上記実施形態では、ポータブル電源システムを例に説明したが、これに限らず、電気自動車、ハイブリッド車両、鉄道車両等の移動体用電源、非常用電源等のバックアップ用電源、太陽光発電や風力発電等の負荷平準化用電源等にも適用できる。
11 組電池モジュール
12 セル(単電池)
13 組電池
14 正極
15 負極
21 充・放電装置
31 充・放電制御装置(制御装置)
33 電圧計
34 リレースイッチ(遮断部材)
35 充・放電停止回路
V1 上限電圧(充電停止電圧)
V2 下限電圧
Claims (2)
- 非水系二次電池で構成された複数のセルを有する組電池と、組電池の充電・放電を制御する制御装置と、前記組電池を充電・放電する充・放電装置とを備え、各セルの正極にオリビン構造のリチウム遷移金属複合酸化物を用いるとともに負極にグラファイト系材料を用い、前記充・放電装置は、前記組電池を定電流充電し、前記制御装置は、充・放電停止回路を備え、組電池の充電時は該充・放電停止回路によって定電流充電中の各セルの電圧をモニターし、各セルのいずれか1セルの電圧が所定の電圧値に達すると充電を停止させることのみ行うことを特徴とする電源システム。
- 前記充・放電装置は、前記組電池を放電し、前記制御装置は、前記充・放電停止回路によって各セルのいずれか1セルの電圧が予め定めた下限電圧に達すると放電を停止させることを特徴とする請求項1に記載の電源シテム。
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