JP5704533B2 - アルツハイマー病の診断方法および診断薬 - Google Patents

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Description

本発明は、アルツハイマー病の診断方法および診断薬に関する。
アルツハイマー病(以下、単に「AD」ともいう)は、初老期では40歳代後半から50歳代にかけ、高齢期では60歳代後半以降に発症する疾患である。アルツハイマー病を発症すると、記憶障害、意欲障害、判断障害、失語、失行、失認、人格障害、感情障害などの症状が現れ、進行すれば高度の知的障害におちいるという症状が現れる。脳の病理変化としては、老人斑、神経原線維変化、神経細胞消失などが認められ、症状の進行とともに病変は高度となり、顕著な脳萎縮をきたすことが分かっている。老人斑はADの最も特徴的な脳病変であり、その主構成成分はβシート構造をとったβ−アミロイド40およびβ−アミロイド42などのβ−アミロイドタンパク質(以下、Aβともいう)である。
ADの原因は不明であり、根本的な治療方法および予防方法は未だ確立されていない。ADの予防、治療薬の設計および試験における最大の課題の一つは、AD罹患者を早期段階において同定できる簡便で信頼性の高い診断方法が確立されていないことである。ADの早期診断に対する社会的要求は高く、その早急な開発が強く望まれている。
現在、ADの診断は、神経心理学的な評価に大きく依存しており、確立された客観的指標は非常に少ない。脳MRIによる形態学的な評価(萎縮の程度)、PET(陽電子放射断層撮影)、または単一光子放射断層撮影(SPECT)による脳血流の評価が補助的に使用されているが、病態の本質を反映した指標ではないため、信頼性に欠けるという問題点があった。
ADのバイオマーカーの候補として、β−アミロイドタンパク質およびリン酸化タウが研究されている。脳脊髄液中のβ−アミロイドタンパク質量やリン酸化タウ量は信頼性のある指標とされており、脳脊髄液を採取し、該脳脊髄液中のβ−アミロイドタンパク質の濃度を測定するADの診断も行われている。しかしながらこの方法は、脳脊髄液を採取するため侵襲性が高く、患者への負担が大きいため日常臨床での応用が難しいという問題があった。また、ADの診断方法の検討において血中のβ−アミロイドタンパク質を測定した報告があるが、健常人とAD患者との間に有意差が見いだせなかったとされている(非特許文献1および非特許文献2)。
特許文献1には、ヒトが少なくとも4時間絶食した後に、ヒトから循環液のサンプルを分離し該循環液のアミロイド前駆蛋白(APP)の130kDa形態および42kDa形態および/またはその何れかの形態の誘導体の、正常な対照に対する値を測定する事からなるヒトのアルツハイマー病の試験方法であって、130kDa形態および/またはその誘導体の相対的増加、ならびに42kDa形態および/またはその誘導体の相対的減少が該疾病の指標である方法が開示されている。しかしながら、この方法においては、AD罹患患者をより正確に、早期段階で判定できるようにする改善の余地があった。
最近、ADの臨床診断においてPET(陽電子放射断層撮影)を用いたアミロイドイメージングが行われている。この方法では、静脈注射で放射性物質を体内に注入し、次いでPETで脳を撮影することにより脳内のアミロイドの沈着を検出するため、脳内のβ−アミロイドタンパク質量を生体において推し量る手法として期待されている。しかしながら、アミロイドイメージングは、日本国内ではまだ数か所の施設で実施されているのみであるため、コストが高く一般的な診断方法として利用し難いという課題がある。
したがって、簡便であり、かつ低侵襲で安全性が高く、病態を反映する指標を用いた信頼性の高いADの診断方法の開発が望まれている。
特許第3277211号
本発明は、簡便かつ低コストであり、低侵襲(minimally invasive)であるため生体に対する安全性が高く、しかもアルツハイマー病の発症を早期段階でも診断することができる信頼性の高いアルツハイマー病の診断方法、およびアルツハイマー病の診断薬等を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究し、まず記憶障害等のアルツハイマー病特有の症状が現われていない若齢(2〜3カ月齢)のアルツハイマー病(AD)モデルマウス(APP/PS1)を用い、空腹時採血と随時採血(任意のタイミングで採血)とにおける血中β−アミロイド40(Aβ40)値および血中β−アミロイド42(Aβ42)値それぞれの差を分析したところ、空腹および随時において、Aβ40値およびAβ42値に統計学的有意な差がみられることを見出した(図1AおよびB)。一方、野生型(WT)マウス(健常マウス)では、空腹時採血と随時採血とにおいて、血中Aβ40値には僅かな差が見られたが、血中Aβ42値には差は見られなかった(図1AおよびB)。
また、記憶障害等のAD特有の症状を示す老齢(18〜19カ月齢)のADモデルマウス(APP/PS1)を用い、上記と同様に空腹時採血と随時採血とにおける血中Aβ40値および血中Aβ42値の差を分析したところ、該マウスにおいても、両者に統計学的有意な差がみられることを見出した(図2AおよびB)。一方、老齢の野生型(WT)マウス(健常マウス)では、空腹時採血と随時採血とにおいて、血中Aβ40値および血中Aβ42値いずれも差は見られなかった(図2AおよびB)。
これらの知見は、血中Aβ値をアルツハイマー病の診断指標とする場合、採血時の血糖状態を考慮に入れる必要があることを示唆していると考えられた。
そこで、上記知見に基づき、ADモデルマウス(APP/PS1)にグルコース水溶液を投与してグルコース負荷をかけた状態とし、グルコース負荷状態における血中Aβ40値およびAβ42値をそれぞれ分析したところ、空腹時と比較して血中Aβ40値およびAβ42値がいずれも顕著に増加していることを見出した(図5A〜Eおよび図6A〜E)。一方、野生型(WT)マウス(健常マウス)に同様の試験を行ったところ、グルコース負荷状態においても、空腹時と比較して血中Aβ40値およびAβ42値にはほとんど差がなかった(図5A〜Eおよび図6A〜E)。なお、グルコース負荷を行ったときの血糖値およびインスリン値の変化はADモデルマウスと健常マウスとで差がなかった(図3A〜Dおよび図4A〜D)。
このように、グルコース負荷中の血中Aβ増加量(上昇の程度)は、健常マウスよりもADモデルマウスで明らかに大きかった。この知見から本発明者らは、この空腹時とグルコース負荷状態とにおける血中Aβ値の差(グルコース負荷による血中Aβの増加量)がアルツハイマー病の診断指標に有用であることを見出した。
さらに、同じADモデルマウスでも、若齢ADモデルマウスと老齢ADモデルマウスとを比較すると、グルコース負荷による血中Aβ増加量は老齢ADモデルマウスの方が大きかった。このため、グルコース負荷による血中Aβ増加量は、病態の進行の程度も反映する指標であることに想到した(図5A〜Eおよび図6A〜E)。
ADモデルマウス(APP/PS1)は、ヒトのアルツハイマー病の病態を反映していると考えられている(McGowan E. et al, Amyloid phenotype characterization of transgenic mice overexpressing both mutant amyloid precursor protein and mutant presenilin 1 transgenes. Neurobiol Dis. 1999 Aug;6(4):231-44.)。本発明者らが用いた若齢モデルマウス(APP/PS1)は、若齢であるため記憶障害等のAD特有の症状は現われていない個体であったため、ヒトの早期段階(症状が現われていない)のAD罹患者の病態を反映するものであると考えられた。また、老齢モデルマウスは、記憶障害等のAD特有の症状が現われたヒトAD罹患者の病態を反映するものであると考えられた。
また例えば、ADモデルマウスに有効であったアルツハイマー病のワクチンが臨床においてヒトのAD患者にも有効であったことからも(Schenk D. et al., Immunization with amyloid-beta attenuates Alzheimer-disease-like pathology in the PDAPP mouse. Nature. 1999 Jul 8;400(6740)173-7.およびNicoll JA. et al, Neuropathology of human Alzheimer disease after immunization with amyloid-beta peptide: a case report. Nat Med. 2003 Apr;9(4):448-52.)、ADモデルマウスにおける上記結果はヒトにも応用可能であると考えられた。
このように脳内および全身の糖代謝の関連性からアルツハイマー病の病態を反映する指標を見出した研究は、現時点では報告されていない。本発明は、上記疾患モデル動物の病態解析の中で、アルツハイマー病、糖代謝および認知機能障害をリンクする病態指標を初めて見出し、これを診断に応用することに想到したものである。本発明者らはさらに、糖尿病の診断に使用されている手法をアルツハイマー病の診断に応用することも可能であることに想到したが、これは、安全性、低侵襲性および低コストの面で非常に優れた診断技術となり得るものである。
本発明者らは上記知見に基づきさらに研究を重ね、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、以下の(1)〜(12)に関する。
(1)エネルギー負荷をかけた哺乳動物から採取した血液のサンプル中のβ−アミロイドタンパク質値を測定する工程を含むことを特徴とするアルツハイマー病の診断方法。
(2)さらに、エネルギー負荷をかけた哺乳動物から採取した血液のサンプル中のβ−アミロイドタンパク質値と、該哺乳動物から空腹時に採取した血液のサンプル中のβ−アミロイドタンパク質値とを比較して、エネルギー負荷による血中β−アミロイドタンパク質の増加量を求める工程を含む前記(1)に記載の診断方法。
(3)さらに、該哺乳動物におけるエネルギー負荷による血中β−アミロイドタンパク質の増加量と、健常哺乳動物におけるエネルギー負荷による血中β−アミロイドタンパク質の増加量とを比較する工程を含む前記(2)に記載の診断方法。
(4)エネルギー負荷が、糖負荷である前記(1)〜(3)のいずれかに記載の診断方法。
(5)エネルギー負荷が、グルコース負荷である前記(1)〜(4)のいずれかに記載の診断方法。
(6)β−アミロイドタンパク質が、β−アミロイド40および/またはβ−アミロイド42である前記(1)〜(5)のいずれかに記載の診断方法。
(7)エネルギー負荷から15分後〜8時間後までの間のいずれかの時点に哺乳動物から採取した血液のサンプル中のβ−アミロイドタンパク質値と、該哺乳動物から空腹時に採取した血液のサンプル中のβ−アミロイドタンパク質値とを比較する前記(2)に記載の診断方法。
(8)血液のサンプルが、血漿である前記(1)〜(7)のいずれかに記載の診断方法。
(9)血液のサンプルが、血液から分離した血漿成分を4〜200倍に希釈したものである前記(1)〜(8)のいずれかに記載の診断方法。
(10)エネルギー負荷をかけた哺乳動物から採取した血液のサンプル中のβ−アミロイドタンパク質値の、アルツハイマー病判定のための使用。
(11)エネルギー負荷をかけた哺乳動物から採取した血液のサンプルの、アルツハイマー病の判定におけるβ−アミロイドタンパク質値測定用試料を製造するための使用。
(12)グルコースを含むことを特徴とするアルツハイマー病の診断薬。
本発明によれば、アルツハイマー病またはその可能性を簡便かつ低コスト、低侵襲に、しかも早期の段階でも正確に診断、検査または判定することができる。このため、アルツハイマー病の新しい治療薬および予防薬等の開発が可能となる。
図1AおよびBは、若齢の野生型マウスおよびアルツハイマー病モデルマウスの空腹時および随時採血の血漿中のβ−アミロイドタンパク質値(図1A:Aβ40、図1B:Aβ42)を測定した結果を示す図である。 図2AおよびBは、老齢の野生型マウスおよびアルツハイマー病モデルマウスの空腹時および随時採血の血漿中のβ−アミロイドタンパク質値(図2A:Aβ40、図2B:Aβ42)を測定した結果を示す図である。 図3A〜Dは、若齢の野生型マウスおよびアルツハイマー病モデルマウスのグルコース負荷後の血糖値および血漿インスリン濃度の経時変化(図3A:血糖値、図3C:血漿インスリン濃度)、並びに血糖値およびインスリン値のAUCを示す図(図3B:血糖値、図3D:インスリン値)である。 図4A〜Dは、老齢の野生型マウスおよびアルツハイマー病モデルマウスのグルコース負荷後の血糖値および血漿インスリン濃度の経時変化(図4A:血糖値、図4C:血漿インスリン濃度)、並びに血糖値およびインスリン値のAUC(図4B:血糖値、図4D:インスリン値)を示す図である。 図5A〜Eは、野生型マウスおよびアルツハイマー病モデルマウスのグルコース負荷後の血漿中のβ−アミロイド40値の経時変化(図5A〜D)およびβ−アミロイド40値変化のAUCを示す図(図5E)である。 図6A〜Eは、野生型マウスおよびアルツハイマー病モデルマウスのグルコース負荷後の血漿中のβ−アミロイド42値の経時変化(図6A〜D)およびβ−アミロイド42値変化のAUC(図6E)を示す図である。
本発明のアルツハイマー病の診断方法は、エネルギー負荷をかけた哺乳動物から採取した血液のサンプル中のβ−アミロイドタンパク質値を測定する工程を含む。
哺乳動物から採取した血液のサンプル中のβアミロイドタンパク質値を、以下、単に「血中Aβ値」ともいう。血中Aβ値は、通常、血液のサンプル中のAβ濃度またはAβ量である。
本発明において、「エネルギー負荷をかけた」とは、体内でエネルギーとなる栄養素を摂取させた、または、該栄養素を経口投与または非経口投与したことを意味する。エネルギー負荷をかけた哺乳動物は、通常、空腹時と比較して、血糖値、血中インスリン値等が上昇している状態の哺乳動物である。哺乳動物としては、例えば、ヒト、サル、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ブタ、ウサギ、イヌ、ネコ、ラット、マウス、モルモット等が挙げられる。
本明細書中、「空腹時」とは、通常約12時間以上の絶食(飲水は可)後である。例えばヒトであれば、通常少なくとも約12時間以上、好ましくは約16時間以上絶食(飲水は可)した状態である。絶食する時間の上限は、通常約18時間である。
哺乳動物にエネルギー負荷をかける方法としては特に限定されず、栄養素を含む飲食物等を哺乳動物に摂取させる、または栄養素を含む薬剤等を哺乳動物に経口投与または非経口投与すればよい。本発明においては、栄養素を哺乳動物に摂取させる、経口投与する、または静脈注射することによりエネルギー負荷をかけることが好ましい。
エネルギー負荷をかけるために哺乳動物に投与等される栄養素としては、糖、タンパク質および脂質からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、血糖値を上昇させる栄養素がより好ましい。特に好ましくは糖である。
糖としては、グルコース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、フルクトースまたはマンノースなどの単糖類;セロビオース、ショ糖、ラクトース、マルトースなどの二糖類;デキストリンまたは可溶性澱粉などの多糖類が挙げられる。中でも、単糖類が好ましく、グルコースがより好ましい。すなわち本発明においては、エネルギー負荷が糖負荷であることが好ましく、グルコース負荷であることがより好ましい。
栄養素を含む飲食物としては特に限定されないが、例えば糖であれば、糖そのもの、または糖を含む水溶液が好ましい。栄養素を含む経口投与用の製剤としては、例えば錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤等の固形製剤;乳剤、シロップ剤、懸濁剤等の液状製剤が挙げられる。非経口投与する場合には、例えば、栄養素を注射剤、点滴剤、噴霧剤、スプレー剤、座薬等の剤型にして投与することができる。
グルコース負荷をかける場合であれば、グルコースまたはグルコースを含む水溶液を経口および静脈からなる群より選択される投与経路により投与することが好ましい。好ましくは、経口投与する。グルコース負荷には、市販のグルコース水溶液を用いることもでき、糖尿病の診断に利用されるグルコース負荷試験で用いられる市販のグルコース液、例えば、75gグルコース液(例えば、味の素ファルマ社製)等を好適に用いることができる。
グルコース負荷をかけるために投与するグルコースの量は、投与経路、哺乳動物の体重等に応じて適宜選択すればよく、経口投与する場合であれば、通常体重1kgあたりグルコースを約500〜5000mg、好ましくは約1000〜3000mg投与することが好ましい。また、この量のグルコースを一回で経口投与することが好ましい。
例えばヒトであれば、グルコース約50〜200gを1回で経口投与することが好ましく、より好ましくはグルコース約75〜100gを1回で投与する。例えば、上述した75gグルコース液等のグルコース液等を1回で経口投与することにより簡便にグルコース負荷をかけることができる。
静脈投与の場合は、例えば、約5〜70%グルコース水溶液、好ましくは約30〜50%グルコース水溶液を静脈注射または静脈点滴することによってグルコース負荷をかけることができる。グルコース水溶液の投与量は、通常体重1kgあたりグルコースとして約500〜5000mg、好ましくは約1000〜3000mgとなるように投与することが好ましい。ヒトであれば、上記グルコース水溶液を通常約50〜500mL、好ましくは約50〜200mL、より好ましくは約50〜100mL、これを約5〜10分かけて静脈投与することが好ましい。
本発明におけるエネルギー負荷をかけた哺乳動物は、エネルギー負荷により空腹時と比較して血糖値が上昇している状態の動物が好ましい。
血液のサンプルとしては、エネルギー負荷をかけた哺乳動物の血液の成分を含むものであればよく、血液の成分としては、例えば、血液、血漿または血清が好ましい。より好ましくは、血漿である。血液のサンプルは、哺乳動物から公知の方法、例えば、静脈採血によって採取した血液から、公知の方法で調製することができる。好ましくは、へパリン採血により採取した血液を用いて血液のサンプルを調製する。血漿は、公知の方法、例えば、和光純薬工業社製のβアミロイドELISAキットを用いて、該キットに付属の添付文書に記載の方法に従って、採血した血液から血漿成分を分離することにより調製することができる。
本発明においては、血液のサンプルが、血液から分離した血漿成分を約4〜200倍に希釈したものであることが好ましく、約4〜100倍に希釈したものがより好ましく、約10〜20倍に希釈したものがさらに好ましい。血漿成分の希釈方法および希釈液は、βアミロイドタンパク質値の測定方法に応じて適宜選択すればよく、特に限定されない。血漿成分の希釈は、例えば、和光純薬工業社から販売されているβアミロイドELISAキット付属の検体希釈液を用いて行うことが好ましい。
本発明における血液のサンプルには、後述するAβの測定方法に応じて、さらに界面活性剤・変性剤処理等を行なってもよい。
エネルギー負荷をかけた哺乳動物から採取した血液のサンプルは、アルツハイマー病の判定、検査または診断に用いるβ−アミロイドタンパク質測定用試料として好適であり、例えば、そのままβ−アミロイドタンパク質測定用試料として用いることができるが、本発明の効果を奏することになる限り、β−アミロイドタンパク質値の測定方法等に応じて、適宜他の成分を添加してもよい。このような血液のサンプルを含む組成物も、本発明における血液のサンプルに含まれる。
β−アミロイドタンパク質(Aβ)としては、例えば、β−アミロイド40(Aβ40)、β−アミロイド42(Aβ42)、オリゴマーAβ等が挙げられ、中でも、本発明においては、β−アミロイド40および/またはβ−アミロイド42の値を測定することが好ましい。
血液のサンプル中のAβ値の測定方法としては特に限定されず、公知の方法に従って測定することができる。例えば、ELISA(Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay)、ウェスタンブロッティング法、MS等により容易にAβ値を測定することができる。ELISAにより測定する場合は、市販されているβアミロイドELISAキット(商品名、和光純薬工業社製)を用い、該キットに添付された説明書の記載の方法に従って容易にAβ値を測定することができる。ウェスタンブロッティング法によるAβ値の測定は、例えば、Huang SM et al., Neprilysin-sensitive synapse-associated amyloid-beta peptide oligomers impair neuronal plasticity and cognitive function. J Biol Chem. 2006 Jun 30;281(26):17941-51に記載された方法に従って、行うことができる。MSによるAβ値の測定は、例えば、Wang R et al., The profile of soluble amyloid beta protein in cultured cell media. Detection and quantification of amyloid beta protein and variants by immunoprecipitation-mass spectrometry. J Biol Chem. 1996 Dec 13;271(50):31894-902.に記載された方法に従って行うことができる。
本発明においては、エネルギー負荷(糖等の栄養素摂取または投与)によって血糖値の上昇がピークに達した後、血糖値が空腹時血糖値に低下するまでの間に哺乳動物から採取した血液のサンプル中のAβ値を測定することが好ましい。例えば、本発明におけるエネルギー負荷をかけた(または、エネルギー負荷をかけた状態)の哺乳動物は、エネルギー負荷(エネルギー負荷時)から通常約15分後〜8時間後までの間、好ましくは約40分後〜8時間後までの間、より好ましくは約1時間後〜8時間後までの間、さらに好ましくは、約1時間後〜6時間後までの間、特に好ましくは約1時間後〜2時間後までの間の哺乳動物である。なお、本発明においては、哺乳動物にエネルギー負荷をかけた後、該哺乳動物からの血液のサンプルの採取が全て終了するまでは、該哺乳動物に栄養素を摂取させないことが好ましい。具体的には、エネルギー負荷をかけた後、血液のサンプルの採取が終了するまでは、栄養素を含む飲食物等を哺乳動物に摂取させず、かつ栄養素を含む薬剤等を該哺乳動物に経口投与および非経口投与しないことが好ましい。
本発明においては、エネルギー負荷(エネルギー負荷時)から、通常約15分後〜8時間後までの間、好ましくは約40分後〜8時間後までの間の1または2以上の時点、より好ましくは約1時間後〜8時間後までの間の1または2以上の時点、さらに好ましくは約1時間後〜6時間後までの間の1または2以上の時点、特に好ましくは約1時間後〜2時間後までの間の1または2以上の時点に哺乳動物から採取した血液のサンプル中のAβ値を測定する。なお、エネルギー負荷から一定時間後、2以上の異なる時点において血液を採取した場合には、各時点で得た血液のサンプルごとに別々にAβ値を測定することが好ましい。つまり、エネルギー負荷時から、X分後、Y分後およびZ分後(X<Y<Z)のそれぞれの時点で採取した血液のサンプル中については、エネルギー負荷からX分後における血中Aβ値、Y分後における血中Aβ値、Z分後における血中Aβ値を、それぞれ測定することが好ましい。
本発明においてはまた、縦軸を、血中Aβ値変化(ΔAβ)、横軸を時間(分)としたグラフにおける、エネルギー負荷時(例えばグルコース投与時)の血中Aβ値変化(0)を通る時間軸に平行な直線と、ΔAβ推移との曲線に囲まれた面積(以下、「血中Aβ値変化のAUC」(Area Under the blood concentration time Curve)ともいう)を求めることも好ましく、血中Aβ値変化のAUCを指標としてアルツハイマー病を判定することもできる。例えば、後述するように、エネルギー負荷後一定時間における該哺乳動物の血中Aβ値変化のAUCが、健常動物の血中Aβ値変化のAUCと比較して大きいと、アルツハイマー病の可能性が高いと判定することができる。
血中Aβ値変化のAUCは、通常エネルギー負荷から約120分までの結果、好ましくは、約480分までの結果により評価することが好ましい。
本発明においては、上述した(1)エネルギー負荷をかけた哺乳動物から採取した血液のサンプル中のβ−アミロイドタンパク質値(血中Aβ値)または(2)血中Aβ値変化のAUCを、アルツハイマー病の判定の指標に用いることが好ましい。
(1)をアルツハイマー病の判定に用いる場合には、エネルギー負荷をかけた哺乳動物から採取した血液のサンプル中のβ−アミロイドタンパク質値と、該哺乳動物から空腹時に採取した血液のサンプル中のβ−アミロイドタンパク質値とを比較して、エネルギー負荷による血中β−アミロイドタンパク質の増加量を求め、該増加量をアルツハイマー病の判定の指標に用いることが好ましい。同一個体におけるエネルギー負荷状態および空腹時の血中Aβ値を比較することにより、アルツハイマー病をより確実に判定することができる。この場合、空腹時と比較して、エネルギー負荷による血中Aβ値の増加量(上がり幅)が顕著に大きい場合にアルツハイマー病の可能性が高いと判定される。
すなわち本発明の診断方法は、さらに、エネルギー負荷をかけた哺乳動物から採取した血液のサンプル中のβ−アミロイドタンパク質値と、該哺乳動物から空腹時に採取した血液のサンプル中のβ−アミロイドタンパク質値とを比較して、エネルギー負荷による血中β−アミロイドタンパク質の増加量を求める工程を含むことが好ましい。
上記「エネルギー負荷による血中Aβの増加量」とは、以下の式により計算される、空腹時の血中Aβ値(血中Aβ(0))と、エネルギー負荷状態(エネルギー負荷からX分(またはX時間)後)における血中Aβ値(血中Aβ(X))との差である。空腹時の血中Aβ値(血中Aβ(0))は、好ましくはエネルギー負荷直前の血中Aβ値である。
(エルギー負荷による血中Aβの増加量)(ΔAβ(X))=血中Aβ(X)−血中Aβ(0)
エルギー負荷による血中Aβの増加量は、例えば、エネルギー負荷(エルギー負荷時)から通常約15分後〜8時間後までの間、好ましくは約40分後〜8時間後までの間の何れかの時点、より好ましくは約1時間後〜8時間後までの間の何れかの時点、さらに好ましくは、約1時間後〜6時間後までの間の何れかの時点、特に好ましくは約1時間後〜2時間後までの間の何れかの時点の血中Aβ値と、空腹時の血中Aβ値との差であることが好ましい。また、この時間内において、2以上の異なる時点におけるエルギー負荷による血中Aβの増加量をそれぞれ求めることも好ましい。
本発明の診断方法は、さらに、該哺乳動物におけるエネルギー負荷による血中Aβの増加量と、健常哺乳動物におけるエネルギー負荷による血中Aβの増加量を比較する工程を含むことが好ましい。健常哺乳動物にエネルギー負荷をかける方法、健常哺乳動物から血液のサンプルを調製する方法等は、上述したものと同様である。
上述したように、エネルギー負荷による血中Aβ増加量(血中Aβの上昇の程度)は、健常哺乳動物よりもアルツハイマー病罹患哺乳動物の方が大きいため、上記式により計算されるエネルギー負荷から一定時間(X分)後における血中Aβの増加量(ΔAβ(X))を、被験哺乳動物と健常動物とで比較することにより、アルツハイマー病を判定することができる。例えば、該哺乳動物におけるエルギー負荷による血中Aβの増加量(ΔAβ(X))が、健常動物におけるエルギー負荷による血中Aβの増加量(ΔAβ(X))と比較して大きい場合(例えば、通常約1.5倍以上、好ましくは約3倍以上、より好ましくは約4倍以上、さらに好ましくは約5倍以上)にアルツハイマー病の可能性が高いと判定される。
該哺乳動物(被験哺乳動物)におけるエネルギー負荷による血中Aβの増加量と、健常哺乳動物におけるエネルギー負荷による血中Aβの増加量との比較には、エネルギー負荷をかけた場合の血中Aβ値変化のAUCを用いることもでき、エネルギー負荷をかけた場合の該哺乳動物における血中Aβ値変化のAUCが、健常哺乳動物における血中Aβ値変化のAUCより大きいと(例えば、通常約1.5倍以上、好ましくは約3倍以上、より好ましくは約4倍以上、さらに好ましくは約5倍以上)、アルツハイマー病の可能性が高いと判定することができる。血中Aβ値変化のAUCは、通常エネルギー負荷から約120分までの結果、好ましくは約480分までの結果により評価することが好ましい。
グルコースを含むアルツハイマー病の診断薬は、上記アルツハイマー病の診断、検査または判定において哺乳動物にエネルギー負荷をかける際に好適に用いられる。このような診断薬も、本発明に包含される。グルコースの含有量は、本発明の効果を奏することになる限り特に限定されない。例えば、グルコースを含み、経口および静脈からなる群より選択される投与経路により1回で、採血の約15分〜8時間前に投与される診断薬が好適である。このような診断薬は、約12〜16時間絶食した哺乳動物に、経口および静脈からなる群より選択される投与経路により1回で投与されることが好ましい。診断薬は、グルコースを約50〜200g含むことが好ましく、約50〜100gを含むことがより好ましく、約75〜100g含むことがさらに好ましい。
グルコースを含む診断薬は、上記診断、検査または判定において哺乳動物にエネルギー負荷をかける際に好適に用いられる。グルコースを含み、約12〜16時間絶食した哺乳動物に、経口および静脈からなる群より選択される投与経路により1回で、採血の約15分〜8時間前に投与される診断薬も、上記診断、検査または判定において哺乳動物にエネルギー負荷をかける際に好適に用いられる。このようなアルツハイマー病の診断薬も、本発明の1つである。上記診断薬は、経口投与用の場合、好ましくはグルコース約50〜200g(より好ましくは約50〜100g)を含む、グルコース濃度が約0.2〜0.5g/mLの水溶液である。静脈投与用の場合、好ましくは約50〜200g(より好ましくは約50〜100g)を含むグルコース濃度が約0.2〜0.5g/mLの水溶液である。このような診断薬は、約12〜16時間絶食した哺乳動物に、経口投与または静脈注射により1回で、採血の約40分〜8時間前に投与されることが好ましい。
上記診断薬を含むアルツハイマー病診断薬キットも、本発明の好ましい態様の1つである。キットは、静脈注射のための器具、血液を採取するための採血器具;β−アミロイドタンパク質を測定するための抗体、試薬等;その他、緩衝液、説明書、界面活性剤、変性剤などを適宜含んでもよい。
本発明により、簡便に、高い信頼性でアルツハイマー病を診断、検査または判定することができ、アルツハイマー病の早期診断が可能となる。また、アルツハイマー病の病態の進行を診断、検査または判定することができる。
次に本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
1. 使用動物
PSAPPトランスジェニックアルツハイマー病モデルマウス(雄、若齢:2−3カ月齢、老齢:18−19カ月齢、各n=5〜7、以後Tgと呼ぶ)および健常野生型マウス(雄、若齢:2−3カ月齢、老齢:18−19カ月齢、各n=5〜7、以後WTと呼ぶ)を使用し、血中Aβ値(血漿Aβ濃度)、血糖値、血中インスリン値等の測定を行った。TgおよびWTは、The Jackson Laboratory(ジャクソン・ラボラトリー)から購入した。
2. 採血およびサンプル調製方法、並びに測定方法
採血は覚醒状態のマウスの尾静脈から行った。へパリン採血後、4℃、1200g、20分間遠心分離して血漿を得た。
血糖測定は、ヒト用血糖測定器具(グルテストエース、三和化学研究所社製)を用いて行った。
血漿インスリン濃度の測定は、ELISA法により、超高感度マウスインスリン測定キット(森永生科学研究所社製)を用いて行った。
血漿Aβ濃度の測定は、ELISA法により、Human/Rat βAmyloid(40)および(42) ELISA Kit wako(和光純薬工業社製)を用いて行った。
測定値について、統計的有意差の有無は、t検定を行なって求めた。P<0.05の場合を、統計学的に有意差であるとした。
3. AUCの計算方法
グルコースAUCとは、縦軸を血糖値(mg/dL)、横軸を時間(分)としたグラフにおける、グルコース負荷時(投与時)の血糖値を通る時間軸に平行な直線と、血糖値推移との曲線に囲まれた面積と定義した。
インスリンAUCとは、縦軸を血漿インスリン濃度(ng/mL)、横軸を時間(分)としたグラフにおける、グルコース負荷時(投与時)の血漿インスリン濃度を通る時間軸に平行な直線と、血漿インスリン濃度推移との曲線に囲まれた面積と定義した。
グルコースAUCおよびインスリンAUCは、グルコース負荷から480分までの結果により評価した。
ΔAβのAUC(血中Aβ濃度変化量)とは、縦軸をΔAβ、横軸を時間(分)としたグラフにおける、グルコース負荷(投与)時のΔAβを通る時間軸に平行な直線と、ΔAβ推移との曲線に囲まれた面積と定義した。ΔAβのAUCは、グルコース負荷から480分までの結果により評価した。
試験例1
空腹時と随時とにおける血中Aβ値の差の測定
初めに、空腹時と随時における血中Aβ値(血漿Aβ濃度)の差の有無につき、TgとWTそれぞれにおいて評価を行った。空腹時採血は16時間の絶食後に行った。空腹時採血、随時採血いずれも午前(明期)のほぼ同一時刻に行った。若齢および老齢マウスについて、体重、血糖値(空腹時および随時)、および血漿インスリン値(空腹時および随時)に関してTgとWTとで差はなかった(表1)。
表1に、試験に用いたPSAPPトランスジェニックマウス(Tg(表1中、「TG」))および野生型マウス(WT)のメタボリックパラメータを示す。メタボリックパラメータは、体重、血糖値、および血漿インスリン濃度である。表1中、数値は、平均±SE(標準誤差)である。また、「NS」は、有意差がないことを意味する。
Figure 0005704533
表1から分かるように、若齢マウスおよび老齢マウスのいずれにおいても、PSAPPマウス(Tg)および野生型マウス(WT)の間には、メタボリックパラメータについては有意差は認められなかった。
図1Aおよび図1Bに、若齢の野生型マウスおよびアルツハイマー病モデルマウスの空腹時および随時採血の血漿中のβ−アミロイドタンパク質値を測定した結果を示す(図1A:Aβ40、図1B:Aβ42)。図1〜6中の「TG」は、アルツハイマー病モデルマウス(Tg)を意味する。図2Aおよび図2Bに、老齢の野生型マウスおよびアルツハイマー病モデルマウスの空腹時および随時採血の血漿中のβ−アミロイドタンパク質値を測定した結果を示す(図2A:Aβ40、図2B:Aβ42)。
若齢マウスにおいて、血漿Aβ40濃度は空腹時および随時いずれにおいてもTgがWTより有意に(**P<0.01)高値を示した(図1A)。また、空腹時と随時とを比較すると、TgおよびWTいずれにおいても、血漿Aβ40濃度に有意な差(##P<0.01)が見られた(図1A)。血漿Aβ42濃度もTgがWTより有意に(**P<0.01)高値であったが、空腹時と随時とで有意な差(#P<0.05)がみられたのはTgのみであった(図1B)。老齢マウスの血漿Aβ40濃度(図2A)およびAβ42濃度(図2B)も同様にTgでWTより有意に高値(**P<0.01)であったが、Tgでのみ空腹時と随時の値に有意な差(#P<0.05)が見られた。
この結果から、特にアルツハイマー病マウスにおいて、空腹時と随時とにおいて血漿Aβ濃度が変化していることが判明した。
試験例2
次に、糖負荷試験による血漿Aβ濃度の変化を評価した。糖負荷は、16時間の絶食後、2g/kg体重量のグルコースを20%グルコース溶液を用いて腹腔内投与することにより行った。糖負荷後、15、30、60、120、240、および480分後に採血を行った。若齢マウス(図3)および老齢マウス(図4)において、糖負荷後の血糖値および血漿インスリン濃度の変化に差はなかった。図3Aは、エネルギー負荷(0分)からの血糖値の経時変化を、図3BはグルコースAUCを、図3Cは、エネルギー負荷(0分)からの血漿インスリン濃度の経時変化を、図3DはインスリンAUCを、それぞれ示す(いずれも若齢マウス)。図4Aは、エネルギー負荷(0分)からの血糖値の経時変化を、図4BはグルコースAUCを、図4Cは、エネルギー負荷(0分)からの血漿インスリン濃度の経時変化を、図4DはインスリンAUCを、それぞれ示す。図中、NSは、有意差がないことを意味する。
このことから、TgおよびWTいずれのマウスにも同等の糖負荷がかけられたことが確認された。
野生型マウスおよびアルツハイマー病モデルマウスにおける糖負荷後の血漿Aβ40濃度の経時変化を、図5A(若齢)および図5C(老齢)にそれぞれ示す。糖負荷後の血漿Aβ40濃度変化量(ΔAβ(40))を、図5B(若齢)および図5D(老齢)にそれぞれ示す。ΔAβ(40)のAUCを、図5Eに示す。図中、白丸(○)はTgを、黒丸(●)はWTを、それぞれ示す。
若齢Tgマウスにおいて、血漿Aβ40濃度は糖負荷後30分より上昇し、60分後にピークに達し、その後緩やかに減少していた(図5A)。若齢WTにおいても同様の傾向が見られたが、その程度は軽微であった(図5A)。血漿Aβ40値について、0分値からの濃度変化量(ΔAβ)として評価すると、その変化量(増加量)はWTよりもTgにおいて大きい傾向が見られた(図5Bおよび図5E)が、糖負荷後480分の時点では両者の差はなくなっていた。
老齢Tgマウスにおいても同様に糖負荷後の血漿Aβ40濃度の上昇が観察された(図5C)が、若齢Tgマウスと異なり、糖負荷後60〜120分でピークに達した後少なくとも480分後までは高値を維持していた。
血漿Aβ40濃度の0分値からの変化量(ΔAβ)はWTよりもTgが有意に大きく(**P<0.01、図5DおよびE)、糖負荷後480分の時点でもこの差は明らかであった。ΔAβ(40)のAUCを比較すると(図5E)、老齢Tgマウスは老齢WTマウスよりも有意にこの変化量(増加量)が大きく(**P<0.01)、これはかつ若齢Tgマウスの変化量よりも有意に大きいものであった(**P<0.01)。
この結果から、糖負荷試験における血中Aβ40値の変化はTgとWTで有意に異なった動態を示し、かつTgの病態の進行を反映する(若齢Tgと老齢Tgの差)ものであることが分かった。これと同様の傾向が血漿Aβ42濃度に関しても観察された(図6A〜E)。
糖負荷後の血漿Aβ42濃度の経時変化を、図6A(若齢)および図6C(老齢)にそれぞれ示す。糖負荷後の血漿Aβ42濃度変化(ΔAβ(42))を、図6B(若齢)および図6D(老齢)にそれぞれ示す。ΔAβ(42)のAUCを、図6Eに示す。図中、白丸(○)はTgを、黒丸(●)はWTを、それぞれ示す。
特に老齢Tgの血中Aβ42濃度変化量(ΔAβ(42)のAUC)は、老齢WTと比較して有意に(**P<0.01)大きいものであった(図6E)。
試験例3
アルツハイマー病の患者にエネルギー負荷または糖負荷(糖は、経口または静脈投与する)を行い、糖負荷前、並びに、糖負荷後15分、30分、60分、および120分に採血を行い、血中Aβ量を測定する。糖負荷前の血中Aβ量と糖負荷後の血中Aβ量とを用いて、アルツハイマー病を診断する。
本発明は、アルツハイマー病の診断、治療薬および予防薬の開発等において有用であるため、医療および研究分野において有用なものである。

Claims (12)

  1. エネルギー負荷をかけた哺乳動物から採取した血液のサンプル中のβ−アミロイドタンパク質値を測定する工程を含むことを特徴とするアルツハイマー病の判定のための測定方法。
  2. さらに、エネルギー負荷をかけた哺乳動物から採取した血液のサンプル中のβ−アミロイドタンパク質値と、該哺乳動物から空腹時に採取した血液のサンプル中のβ−アミロイドタンパク質値とを比較して、エネルギー負荷による血中β−アミロイドタンパク質の増加量を求める工程を含む請求項1に記載の測定方法。
  3. さらに、該哺乳動物におけるエネルギー負荷による血中β−アミロイドタンパク質の増加量と、健常哺乳動物におけるエネルギー負荷による血中β−アミロイドタンパク質の増加量とを比較する工程を含む請求項2に記載の測定方法。
  4. エネルギー負荷が、糖負荷である請求項1〜3のいずれかに記載の測定方法。
  5. エネルギー負荷が、グルコース負荷である請求項1〜4のいずれかに記載の測定方法。
  6. β−アミロイドタンパク質が、β−アミロイド40および/またはβ−アミロイド42である請求項1〜5のいずれかに記載の測定方法。
  7. エネルギー負荷から15分後〜8時間後までの間のいずれかの時点に哺乳動物から採取した血液のサンプル中のβ−アミロイドタンパク質値と、該哺乳動物から空腹時に採取した血液のサンプル中のβ−アミロイドタンパク質値とを比較する請求項2に記載の測定方法。
  8. 血液のサンプルが、血漿である請求項1〜7のいずれかに記載の測定方法。
  9. 血液のサンプルが、血液から分離した血漿成分を4〜200倍に希釈したものである請求項1〜8のいずれかに記載の測定方法。
  10. エネルギー負荷をかけた哺乳動物から採取した血液のサンプル中のβ−アミロイドタンパク質値の、アルツハイマー病判定のための使用。
  11. エネルギー負荷をかけた哺乳動物から採取した血液のサンプルの、アルツハイマー病の判定におけるβ−アミロイドタンパク質値測定用試料を製造するための使用。
  12. グルコースを含み、経口および静脈からなる群より選択される投与経路により1回で、採血の15分〜8時間前に投与されることを特徴とするアルツハイマー病の診断薬であって、当該採血による血液のサンプル中のβ−アミロイドタンパク質を測定するためのアルツハイマー病の診断薬
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