以下に、各実施形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。
(第1実施形態)
本実施形態に係るコンタクタについて、図1〜図3を参照しながら説明する。図1〜図2は本実施形態の原理について説明するための断面図であり、図3はそのフローチャートである。
図3の最初のステップS1では、図1(a)に示すように、針状のコンタクタ母材1と転写用導電体10とを用意する。
コンタクタ母材1の材料は特に限定されない。コンタクタ母材1のばね性と導電性とを高めるという観点からすると、その材料としてベリリウム銅合金やタングステンを使用するのが好ましい。
一方、コンタクタ母材1の耐摩耗性や硬度を優先させたい場合には、コンタクタ母材1の材料として鉄を使用するのが好ましい。
その他に、銅をコンタクタ母材1の材料として使用してもよい。
次に、ステップS2に移る。
ステップS2では、図1(b)に示すように、転写用導電体10の表面にコンタクタ母材1の先端部1aを当接させる。
そして、この状態で第1の電圧発生部21において転写電圧V1を発生させ、その転写電圧V1の一方の極を転写用導電体10に接続し、他方の極をコンタクタ母材1に接続する。
このようにすると、コンタクタ母材1と転写用導電体10との間に電流I1が流れる。そして、この電流I1によって、コンタクタ母材1と転写用導電体10のそれぞれの材料間で電子の移動が促され、これらの材料同士が共有結合するようになる。
なお、電圧V1の極性は特に限定されない。例えば、正極と負極を交互に入れ替えながら電圧を印加してもよい。
そして、ステップS3に移り、図2(a)のように転写用導電体10からコンタクタ母材1を離す。このとき、上記のようにコンタクタ母材1と転写用導電体10の材料同士が共有結合しているので、転写用導電体10の一部が導体膜10aとしてコンタクタ母材1の先端部に転写され、その導体膜10aとコンタクタ母材1とを備えたコンタクタ9が得られる。
また、点線円内に示すように、導体膜10aとコンタクタ母材1との間には、上記の電流I1によって形成された転写用導電体10とコンタクタ母材1のそれぞれの材料の共有結合層10bが形成される。その共有結合層10bは、典型的には、導体膜10aよりも薄くなる。
次に、ステップS4に移る。
ステップS4では、図2(b)に示すように、測定対象の半導体装置30を用意する。
そして、その半導体装置30が備える電極31にコンタクタ9の先端を接触させた状態で試験信号Sをコンタクタ9に供給し、半導体装置30に対する電気的な試験を行う。
このとき、既述のようにコンタクタ9の先端部9aには導体膜10aが形成されているので、コンタクタ母材1が電極31に直接接触しない。そのため、試験を繰り返し行っても、電極31との接触が原因でコンタクタ母材1が磨耗するのを防止でき、その磨耗によりコンタクタ9と電極31との接触抵抗が上昇するのを抑制できる。
以上のように、本実施形態では、図1(b)のようにコンタクタ母材1と転写用導電体10との間に転写電圧V1を印加することにより導体膜10aを形成する。その転写電圧V1の印加の際には、コンタクタ母材1の先端部1aのみが転写用導電体10に接触しているので、その先端部1aのうち半導体装置30の電極31との接触面1bにのみ選択的に導体膜10aを形成することができる。
よって、コンタクタ9の表面のうち、電極31と接触しない部分にまで導体膜10aが不必要に形成されることがなく、コンタクタ9の肥厚化を避けることができる。
しかも、図1(b)のような転写電圧V1の印加を試験装置を利用して行えば、半導体装置の試験ラインで導体膜10aを形成することができ、導体膜10aを溶着する場合に必要な導体を加熱・溶融するための大掛かりな設備も不要となる。
次に、転写用導電体10の好適な材料について説明する。
導体膜10aの低抵抗化という観点からすると、金を転写用導電体10の材料として用いるのが好ましい。
一方、図2(b)のように半導体装置30を試験するときに、コンタクタ9に電極31の材料が付着するのを防止するには、金と比較して電極31と親和性が小さい材料で転写用導電体10を形成するのが好ましい。
二種類の材料の親和性はこれらの共有結合半径で決定される。例えば、一方の材料と他方の材料のそれぞれの共有結合半径の差が小さくなるほど、これらの材料同士が共有結合をして強固に結びつき、親和性が高くなる。逆に、各材料の共有結合半径の差が大きくなるほど、これらの材料同士が共有結合をし難くなり、親和性が低くなる傾向になる。
電極31の材料がアルミニウム、錫、及び鉛のいずれかを含む場合、3族元素〜10族元素は、金と比較して電極31の材料との共有結合半径の差が大きく、電極31との親和性が低い。
よって、転写用導電体10の材料として3族元素〜10族元素のいずれか或いはそれらの合金を用いれば、転写用導電体10が金である場合と比較して、コンタクタ9に電極31の材料が付着するのを抑制することができる。更に、3族元素〜10族元素は、電気抵抗が比較的低いという利点も持ち合せる。
このような利点は、3族元素〜10族元素のなかでも、特に8族元素〜10族元素において顕著に現れる。
本実施形態で使用し得る8族元素〜10族元素とその合金としては、例えば、プラチナ、ニッケル、パラジウム、パラジウム−コバルト合金等がある。
なお、転写用導電体10の材料として電極31の材料と同一のものを使用したのでは、導体膜10aに電極材料が含まれて導体膜10aが酸化し易くなり、また、電極31とは別に転写用導電体10を用意する実益もなくなってしまう。よって、転写用導電体10の材料としては、電極31に含まれる材料とは異なるものを使用するのが好ましい。
ここで、共有結合層10b、導体膜10a、及びコンタクタ母材1のそれぞれの硬度の大小関係は、これらの材料によって定まる。
例えば、導体膜10aの材料が金であり、コンタクタ母材1の材料がベリリウム銅合金である場合には、共有結合層10bの硬度が最も高く、次いでコンタクタ母材1の硬度が高い。そして、導体膜10aの硬度が最も軟らかくなる。
一方、導体膜10aの材料がプラチナであり、コンタクタ母材1の材料が銅である場合には、共有結合層10bの硬度が最も高く、次いで導電膜10aの硬度が高い。そして、コンタクタ母材1の硬度が最も軟らかくなる。
また、図1(b)のステップにおいて使用する転写電圧V1の電圧値は特に限定されない。但し、短時間でコンタクタ9に導体膜10aを形成する観点からすると、試験信号Sの最大電圧よりも高い電圧に転写電圧V1を設定するのが好ましい。
このように転写電圧V1を高く設定することで、コンタクタ9と転写用導電体10との間を流れる電流I1が増大し、短時間でコンタクタ9に導体膜10aを形成することが可能となる。
更に、その転写電圧V1をパルス電圧とすると、電流I1が断続的に流れるようになり、直流電圧と比較して電流I1に伴うジュール熱でコンタクタ9が過度に加熱されるのを防ぐことができる。
本願発明者は、転写電圧V1として、通電時間を1000ミリ秒、電圧の遮断時間を500ミリ秒とするパルス電圧を使用し、コンタクタ9と転写用導電体10との間にそのパルス電圧を10サイクル印加した。
図4は、これにより形成された導体膜10aの顕微鏡写真をもとにして描いた図である。
なお、この例では、コンタクタ母材1の材料として銅を使用し、転写用導電体10の材料として金を使用した。また、コンタクタ母材1の直径は1.6mmで、転写電圧V1の印加によって流れた電流I1の電流密度は18A/mmであった。
図4に示すように、このようなパルス電圧を使用することで、金と銅との共有結合により導体膜10aを形成することができた。また、その形成エリアは0.2mm×0.5mm程度であり、転写用導電体10と接触した部分のコンタクタ母材1の表面にのみ選択的に導体膜10aを形成することができた。
なお、パルス電圧のデューティー比は特に限定されず、コンタクタ母材1の材料の性質等にあわせて適宜設定し得る。
例えば、ジュール熱によるコンタクタ母材1の軟化を防止するという観点からするとデューティー比をなるべく小さくするのが好ましい。一方、コンタクタ母材1の軟化が特に問題にならない場合には、デューティー比を大きくしたり連続通電を行ったりして共有結合層10bの形成を促し、短時間で導体膜10aを形成するのが好ましい。
また、図5のように、導電体10とコンタクタ9との当接位置をずらしながら、複数回に分けて導体膜10aを転写するようにしてもよい。このようにすると、コンタクタ9との接触で導電体10の同じ部分が局所的に膜減りするのを防止しながら、導体膜10aの厚膜化を図ることが可能となる。
(第2実施形態)
本実施形態は、コンタクタ母材の表面に導電性皮膜を形成した点で第1実施形態と相違する。そのコンタクタについて、図6〜図7を参照しながら説明する。図6〜図7は、本実施形態の原理について説明するための断面図である。なお、図6〜図7において、第1実施形態で説明したのと同じ要素には第1実施形態と同じ符号を付し、以下ではその説明を省略する。
まず、図6(a)に示すように、コンタクタ母材1の表面に電界めっきにより導電性皮膜11を形成する。この導電性皮膜11の好適な材料については後述する。
また、そのコンタクタ母材1と共に、第1実施形態で説明した転写用導電体10を用意する。
次いで、図6(b)に示すように、導電性皮膜11を介して転写用導電体10の表面にコンタクタ母材1の先端部1aを当接させ、この状態でコンタクタ母材1と転写用導電体10との間に第1の電圧発生部21で発生した転写電圧V1を印加する。
これにより、導電性皮膜11と転写用導電体10との間に電流I1が流れるので、導電性皮膜11と転写用導電体10の各材料間で電子の移動が促され、これらの材料同士が共有結合するようになる。
そのため、図7(a)のように転写用導電体10からコンタクタ母材1を離すと、転写用導電体10の一部が導体膜10aとして導電性皮膜11に転写され、その導体膜10aとコンタクタ母材1とを備えたコンタクタ9が得られる。
その後に、図7(b)に示すように、半導体装置30の電極31にコンタクタ9の先端を接触させた状態で試験信号Sをコンタクタ9に供給し、半導体装置30に対する電気的な試験を行う。
このとき、第1実施形態と同様の理由により、電極31との接触でコンタクタ母材1が磨耗するのを導体膜10aにより防止できる。
以上のように、本実施形態では、導体膜10aを形成する前に、予めコンタクタ母材1の表面に導電性皮膜11を形成した。
導電性皮膜11は導体膜10aによって保護されるので、試験を繰り返しても導電性皮膜11が磨耗したり剥がれたりすることはなく、導電性皮膜11を再度形成する工程が省ける。
導電性皮膜11の機能はその材料により定まる。
例えば、導電性皮膜11と導電体10との親和性が、導電体10とコンタクタ母材1との親和性よりも高ければ、導電性皮膜11がない場合と比較してコンタクタ母材9に導体膜10aを転写し易くなり、導電性皮膜11は導体膜10aのつなぎ材となる。
既述のように、二種類の材料は、それらの共有結合半径の差が小さいほど親和性が高くなる。
よって、転写用導電体10と導電性皮膜11のそれぞれの材料の共有結合半径の差が、転写用導電体10とコンタクタ母材1のそれぞれの材料の共有結合半径の差よりも小さくなるように各材料を選択すれば、導電性皮膜11が導体膜10aのつなぎ材となる。
図8は、この場合のコンタクタ9の断面図である。
図8に示されるように、導体膜10aと導電性皮膜11との界面には、上記の電流I1によって、これらの材料の共有結合層10cが形成される。その共有結合層10cは、典型的には、導体膜10aよりも薄くなる。
この場合の各材料は特に限定されない。例えば、コンタクタ母材1としてベリリウム(共有結合半径90pm)と銅の合金、導電性皮膜11としてニッケル(共有結合半径121pm)、転写用導電体10として金(共有結合半径は144pm)を使用し得る。
これによれば、金とニッケルのそれぞれの共有結合半径の差(23pm)が、金とベリリウムのそれぞれの共有結合半径の差(54pm)よりも小さくなり、導電性皮膜11中のニッケルが導体膜10a中の金に対するつなぎ材になる。
なお、ニッケルに代えて、ニッケルと金との合金を導電性皮膜11の材料として使用してもよい。
また、導電性皮膜11中のニッケルは、金と比較して酸化されやすいので、図6(b)のステップで電流I1を通電する前に、薬液処理や機械研磨によって導電性皮膜11の表層の自然酸化膜を予め除去しておくのが好ましい。これにより、自然酸化膜によって共有結合層10c(図8参照)の形成が阻害されるのを抑制でき、導電性皮膜11上に共有結合層10cを良好に形成できる。
一方、導電性皮膜11の材料として、転写用導電体10の材料と同一の材料を使用してもよい。
その場合、転写用導電体10と導電性皮膜11のそれぞれの材料として金を使用するのが好ましい。金は、ニッケルと比較して酸化され難いので、上記のように導電性皮膜11の自然酸化膜を除去しなくても、導電性皮膜11上に導体膜10aを良好に形成することが可能となる。
(第3実施形態)
第1、第2実施形態では、コンタクタ9の先端に導体膜10aを形成することにより、コンタクタ9が磨耗するのを防いだ。
その導体膜10aは、試験を繰り返すうちに磨耗してその膜厚が薄くなるので、以下のようにして導体膜10aを修復するのが好ましい。
図9〜10は、本実施形態の原理について説明するための断面図である。また、図11はそのフローチャートである。
図11の最初のステップS10では、図9(a)に示すように、試験を繰り返し行ったコンタクタ9を用意する。
そのコンタクタ9においては、半導体装置の電極との接触により導体膜10aが磨耗しており、その表層部分10xが消失している。
次に、ステップS11に移る。
本ステップでは、図9(b)に示すように、修復対象の導体膜10aと同一材料を含む転写用導電体10にコンタクタ9の先端を当接させ、これらの間に第1の電圧発生部21の転写電圧V1を印加する。これにより、転写用導電体10とコンタクタ9との間に電流I1が流れ、導体膜10aの表層と転写用導電体10の材料とが共有結合をするようになる。
次いで、ステップS12に移り、図10(a)のように転写用導電体10からコンタクタ9を離す。このとき、上記のステップS11において導体膜10aの表層と転写用導電体10の材料とが共有結合しているので、転写用導電体10の一部が導体膜10aに付着し、消失していた導体膜10aの表層部分10xが修復される。
この後は、ステップS13に移り、図10(b)のように修復されたコンタクタ9を用いて後続の半導体装置30に試験信号Sを供給し、当該半導体装置30に対する試験を行う。
以上のように、本実施形態では、磨耗により消失した導体膜10の表層部分10xを修復するので、試験を複数回繰り返し行ってもコンタクタ9の先端部分を導体膜10aで保護できるようになる。
(第4実施形態)
第1〜第3実施形態では、コンタクタ9の先端を磨耗から保護することについて説明した。
これに対し、本実施形態では、コンタクタ9に付着した電極材料をクリーニングにより除去することについて説明する。
図12〜図14は、本実施形態の原理について説明するための断面図である。また、図15は、そのフローチャートである。なお、これらの図において、第1実施形態で説明したのと同じ要素には第1実施形態と同じ符号を付し、以下ではその説明を省略する。
図15の最初のステップS20では、図12(a)に示すように、第1実施形態に従って先端に導体膜10aが形成されたコンタクタ9を用意する。
そして、ステップS21において、半導体装置30の電極31にそのコンタクタ9の先端を接触させた状態で試験信号Sをコンタクタ9に供給し、半導体装置30に対する電気的な試験を行う。
本ステップでは、このような試験を所定個数であるn個の半導体装置30に対して連続的に行う。所定個数nは、例えば100個である。
このように試験を行うと、図12(b)のように電極31の材料31aがコンタクタ9の先端に付着することがある。
その材料31aが酸化すると、コンタクタ9と電極31との接触抵抗が上昇し、試験精度が低下する。
そこで、コンタクタ9の先端に付着した材料31aを除去するため、以下のようなステップを行う。
まず、ステップS22において、図13(a)に示すように、クリーニング用導電体35を用意する。そのクリーニング用導電体35の好適な材料については後述する。
そして、ステップS23に移り、図13(b)のようにクリーニング用導電体35にコンタクタ9の先端を当接させ、クリーニング用導電体35とコンタクタ9との間に第2の電圧発生部22で発生したクリーニング電圧V2を印加する。
このようにすると、電極材料31aとクリーニング用導電体35との間に電流I2が流れ、その電流I2により、電極材料31aとクリーニング用導電体35のそれぞれの間で電子の移動が促され、これらが共有結合をするようになる。
なお、電圧V2の極性は特に限定されない。例えば、正極と負極を交互に入れ替えながら電圧を印加してもよい。
その後、ステップS24に移り、図14(a)のように、クリーニング用導電体35からコンタクタ9を離す。
このとき、上記のように電極材料31aとクリーニング用導電体35とが共有結合をしているので、電極材料31aはコンタクタ9を離れてクリーニング用導電体35に付着するようになる。
次に、ステップS25に移る。
本ステップでは、図14(b)に示すように、電極材料31aが除去されてクリーニングされたコンタクタ9から後続の半導体装置30の電極31に試験信号Sを供給し、その半導体装置30に対して電気的な試験を行う。
以上により、本実施形態の基本ステップを終了する。
図13(b)に示したように、本実施形態では、クリーニング電圧V2の印加のみで簡単にコンタクタ9から電極材料31aを除去し、コンタクタ9をクリーニングすることができる。これにより、コンタクタ9に付着した電極材料31aの酸化が原因でコンタクタ9と電極31(図14(b)参照)との間の接触抵抗が増大するのを抑制できるので、半導体装置30に対する試験を正確に行うことが可能となる。
しかも、このように電気的なエネルギを利用してコンタクタ9をクリーニングする方法では、コンタクタ9にブラッシングや研磨を行って電極材料31aを除去する場合とは異なり、コンタクタ9に機械的なダメージが入り難い。よって、過度なブラッシング等によってコンタクタ9が変形したりその先端が損失したりする心配がなく、クリーニング前と同程度の接触圧で電極31にコンタクタ9を当てることができる。
更に、ブラッシング等では電極材料31aのみを選択的に除去するのが困難で、その周囲のコンタクタ9も傷つけるおそれがあるが、本実施形態ではクリーニング用導電体35と共有結合をした電極材料31aのみを選択的に除去することができる。
なお、クリーニング電圧V2の電圧値は特に限定されないが、クリーニング用導電体35に電極材料31aを確実に付着させるには、試験信号Sの最大電圧よりも大きな電圧値にクリーニング電圧V2を設定するのが好ましい。
更に、電流I2に伴うジュール熱でコンタクタ9が受けるダメージを低減するためには、クリーニング電圧V2としてパルス電圧を使用し、電流I2が断続的に流れるようにするのが好ましい。
次に、クリーニング用導電体35の好適な材料について説明する。
クリーニング用導電体35に電極材料31aを付着させやすくするという観点からすると、クリーニング用導電体35の材料としては、電極材料31aと親和性が高いものを使用するのが好ましい。
既述のように、二種類の材料の親和性は、それらの共有結合半径が近いほど高くなる。
よって、電極材料31aが錫や鉛等の14族元素を含むときは、これらの元素と同程度の共有結合半径を有する11族元素をクリーニング用導電体35の材料として使用することで、クリーニング用導電体35に電極材料31aを付着させ易くすることができる。これらの元素のうち、代表的なものの共有結合半径は次の表1のとおりである。
表1に示されるように、11族元素は、8族元素や10族元素と比較して共有結合半径が14族元素に近く、クリーニング用導電体35の材料として好適であることが理解される。
また、電極材料31aと導体膜10aとの間の親和性と比較して、電極材料31aとクリーニング用導電体35との間の親和性が強くなるように各材料を選択してもよい。このようにすると、電極材料31aは、親和性がより強いクリーニング用導電体35側に付着しようとする。よって、導体膜10a側に電極材料31aを残さずに、クリーニング用導電体35側に電極材料31aを付着させることができるようになる。
また、上記では、コンタクタ9の磨耗を防ぐべくその先端に導体膜10aを予め形成したが、導体膜10aが形成されていないコンタクタ9に対しても本実施形態を適用し、電極材料31aのクリーニングを行ってもよい。
(第5実施形態)
第4実施形態では、n個の半導体装置30に対して試験を行った後に、コンタクタ9のクリーニングを行った。
これに対し、本実施形態では、コンタクタ9と電極31との接触抵抗に基づいて、コンタクタ9をクリーニングするタイミングを決定する。
図16は、本実施形態の原理について説明するための断面図である。
本実施形態では、図16に示すように、二つのコンタクタ9に接触抵抗測定部50を接続する。
接触抵抗測定部50は、基準電圧V3を発生する第3の電圧発生部51と、抵抗値を計測する計測部52とを有する。
計測部52は、二つのコンタクタ9と半導体装置30の内部回路を流れる電流I3と基準電圧V3に基づき、各コンタクタ9の間の全抵抗Rを式R=V3/Iから求める。
図16に示すように、各コンタクタ9と電極31との間には接触抵抗rが存在し、電流I3の通電経路には二つの接触抵抗rが直列接続されている。よって、上記の全抵抗Rには、これら二つの接触抵抗rも含まれる。試験を繰り返すうちに導体膜10aは磨耗し、これが原因で各接触抵抗rは次第に上昇する。計測部52は、初回の試験時からの全抵抗Rの増分が接触抵抗rの2倍に等しいとみなし、接触抵抗rの値を計測する。
図17は、本実施形態の原理について示すフローチャートである。
最初のステップS30では、コンタクタ9を用いて半導体装置30に対して試験を行う。
次いで、ステップS31に移り、ステップS30の試験時にコンタクタ9と電極31との接触抵抗rが所定値r0を超えていたかどうかを判断する。
ここで、超えていない(NO)と判断された場合には、コンタクタ9のクリーニングは不要であるので、再びステップS30を行い、後続の半導体装置30に対して試験を行う。
一方、越えている(YES)と判断された場合には、コンタクタ9の先端に電極材料31aが相当量付着していると考えられる。
そこで、この場合はステップS32に移行し、コンタクタ9のクリーニングを行う。クリーニング方法は、第4実施形態のS21〜S23と同じなので、ここでは省略する。
そして、ステップS33に移り、試験対象となる半導体装置30がまだ存在するかどうかを判断する。
ここで、存在する(YES)と判断した場合には再びステップS30に移り、存在しない(NO)と判断した場合には処理を終える。
以上説明した本実施形態によれば、コンタクタ9と電極31との接触抵抗rを実際に測定してコンタクタ9のクリーニングの要否を判断する。よって、コンタクタ9の先端に少量の電極材料31aしか付着していない場合に不必要なクリーニングによって工程が増大するのを防止できる。
(第6実施形態)
本実施形態では、第1〜第3実施形態で説明した転写用導電体10や第4〜第5実施形態で説明したクリーニング用導電体35の好適な形態について説明する。
図18は、本実施形態に係るダミーウエハの斜視図である。
このダミーウエハ57は、ステンレス板等の補強板56の上に転写用導電体10とクリーニング導電体35のいずれか一方を形成してなり、ウエハ状の外形を有する。
このようなダミーウエハ57をウエハプローバ内で使用することで、製品ウエハに対する試験の合間に、第1〜第3実施形態のようにプローバ9に導体膜10aを転写したり、第4〜第5実施形態のようにプローバ9のクリーニングを行ったりすることができる。
また、ダミーウエハ57の外形が製品ウエハの外形と同じなので、既存のウエハプローバを改造せずに、そのウエハプローバ内でダミーウエハ57を良好にハンドリングすることが可能となる。
図19は、本実施形態に係るダミーパッケージの斜視図である。
このダミーパッケージ59は、ステンレス板等の補強板58の上に転写用導電体10とクリーニング導電体35のいずれか一方を形成してなり、半導体パッケージ状の外形を有する。
このダミーパッケージ59をICテスタ内で使用することで、製品パッケージに対する試験の合間に、第1〜第3実施形態のようにプローバ9に導体膜10aを転写したり、第4〜第5実施形態のようにプローバ9のクリーニングを行ったりすることができる。
更に、ダミーパッケージ59が製品パッケージと同一の外形を有するので、既存のICテスタ内でダミーパッケージ59を良好にハンドリングすることができる。
なお、このようにウエハプローバやICテスタを使用せずに、図20のような専用のコンタクタ処理装置60を使用してもよい。
図20は、本実施形態に係るコンタクタ処理装置60の断面図である。
このコンタクタ処理装置60は、導電性のステージ61と、既述の第1の電圧発生部21を有する。そして、第1の電圧発生部21で発生した転写電圧V1の一方の極がステージ61に接続され、他方の極がコンタクタ9に接続される。
また、ステージ61の上には、補強板56を下側にしてダミーウエハ57が載置される。なお、図20では、転写用導電体10が形成されたダミーウエハ57が載置された場合を例示している。
このとき、補強板56の材料としてステンレスのような導電性材料を使用すると、導電性のステージ61を介して補強板56に電流を供給することができる。よって、転写用導電体10とコンタクタ9との間に電流I1が流れるようになり、第1実施形態のようにしてコンタクタ9の先端に導体膜10aを転写することができる。
図21は、上記の第1の電圧発生部21に代えて、第2の電圧発生部22を設けてなるコンタクタ処理装置60の断面図である。
この場合は、ステージ61の上に、クリーニング用導電体35が形成されたダミーウエハ57を載置する。
この場合も、補強板56の材料として導電性材料を用いることで、クリーニング用導電体35とコンタクタ9との間に電流I2が流れ、第3〜第4実施形態のようにしてコンタクタ9のクリーニングを行うことができる。
なお、図20及び図21では、ステージ61の上にダミーウエハ57を載置した例を説明したが、ダミーウエハ57に代えて図19のダミーパッケージ59を載置してもよい。
図22は、補強板56の材料として樹脂やゴム等の絶縁体を使用する場合の断面図である。
この場合は、補強板56が絶縁体となるので、図20及び図21のように補強板56を通じて導電体10とコンタクタ9との間に電圧を印加することができない。
そこで、図22の例では、転写用導電体10に二つのコンタクタ9を同時に当接し、これらのコンタクタ9と導電体10とで電流経路を形成するようにする。この状態で二つのコンタクタ9の間に転写電圧V1を印加すると、補強板56が絶縁体であっても、各コンタクタ9に電流I1を流すことができ、これらのコンタクタ9に導体膜10aを転写することができるようになる。
なお、図22の例では転写電圧V1を用いたが、これに代えてクリーニング電圧V2を用いてもよい。この場合、転写用導電体10に代えてクリーニング用導電体35を使用することで、二つのコンタクタ9の先端をクリーニングすることができる。
図23(a)〜(c)は、これらダミーウエハ57とダミーパッケージ59の補強板56の好適な材料について説明するための断面図である。
図23(a)の例では、補強板61の材料としてゴム等の弾性体を使用する。
この場合、ダミー57、59にコンタクタ9を接触させると、補強板56が弾性変形し、コンタクタ9の先端部分が補強板56の内部に埋め込まれるようになる。
そのため、ダミー57、59が転写用導電体10を備えている場合には、補強板56が弾性変形している状態で転写用導電体10とコンタクタ9との間に転写電圧V1を印加することで、コンタクタ9の先端の広範な範囲に導体膜10aを転写することができる。
同様に、ダミー57、59がクリーニング用導電体35を供えている場合には、クリーニング用導電体35とコンタクタ9との間にクリーニング電圧V2を印加することで、コンタクタ9の先端の広範な範囲をクリーニングすることができる。
図23(b)は、補強板56として、導電性を有する弾性体を使用した場合の断面図である。
そのような弾性体としては、例えば、補強板56の主面の法線方向に平行な複数の金属細線が埋め込まれたゴムや、カーボン等の導電性粒子が分散されたゴムがある。導電性を有する弾性体を使用することで、図20、図21に示したように、補強板56側からコンタクタ9に電流I1、I2を供給することができる。
図23(c)は、コンタクタ9の先端部の断面形状を中央が凹んだ凹状にした場合の断面図である。
凹状の先端は、第7実施形態において後述するように、電極30がはんだバンプ等の突起電極である場合に好適である。
(第7実施形態)
第1〜第6実施形態では、コンタクタ9を備えた試験装置について特に限定しなかった。
本実施形態では、半導体装置をウエハレベルで試験するウエハプローバにコンタクタ9を使用する。
図24は、本実施形態に係る試験装置の構成図である。なお、図24において、第1〜第6実施形態で説明したのと同じ要素にはこれらと同じ符号を付し、以下ではその説明を省略する。
この試験装置70は、ウエハプローバであって、テスタ74、プローバ76、試験部77、スイッチ部78、電圧発生部80、及び制御部81を有する。
このうち、プローバ76は、ステージ72を収容した筐体71を備える。ステージ72は、不図示のステッピングモータにより、試験対象となるウエハWを水平面内や鉛直方向に駆動する。
また、筐体71内には複数のウエハWを収容するマガジン73が設けられており、搬送ロボット83がステージ72とマガジン73との間でそのウエハWを往復させる。また、搬送ロボット83は、ダミー置き場84に置かれたダミーウエハ57をステージ72上に移動させる機能も有する。
ステージ72の上方の筐体71上にはプローブカード76が固定される。
そのプローブカード76には、第1〜第5実施形態で説明したコンタクタ9がプローブとして設けられる。また、プローブカード76は、コンタクトリング79に支持された複数のポゴピン85に当接しており、そのポゴピン85からコンタクタ9に試験信号Sが供給される。
試験部77は、上記の試験信号Sを生成して信号線87に出力する試験信号生成部86を有する。その試験信号Sに基づいてウエハWから出力された出力信号は、試験部77内の判断部82に取り込まれる。判断部82は、ウエハWの各半導体装置からの出力信号に基づき、その半導体装置が所定の機能を有しているかどうかを判断する。
更に、試験部77には、第5実施形態で説明した接触抵抗測定部50も設けられる。
スイッチ部78は、電圧発生部80で発生した転写電圧V1やクリーニング電圧V2と、試験信号Sのいずれか一方を選択し、信号線87を介してテスタ74に供給する。
このように、試験信号生成部86とは別に電圧発生部80を設けることで、試験に使用しない各電圧V1、V2の電圧値を試験信号Sの最大電圧よりも容易に高くすることができる。
スイッチ部78の構成は特に限定されないが、ポゴピン85の個数に応じた複数のリレーをスイッチ部78として使用するのが好ましい。
また、スイッチ部78のスイッチング動作により、プローブカード76における全てのコンタクタ9を電圧発生部80に接続したり、それらの一部のみを電圧発生部80に接続したりすることができる。
そのスイッチ部78の切り替えのタイミングは、制御部81から出力される切り替え信号T1により制御される。
制御部81は、切り替え信号T1の他に、搬送ロボット83を駆動するための搬送信号T2と、ステージ72の昇降量や水平面内での移動量を制御するためのステージ信号T3も出力する。これらの信号T2、T3により、搬送ロボット83やステージ72の動きが制御されることになる。
更に、制御部81は、各信号T1〜T3の出力タイミングを記憶するプログラム部81aを有する。
各信号T1〜T3の出力タイミングは、ユーザが任意にプログラム部81aに記憶させることができる。これにより、制御部81の制御下で、コンタクタ9の先端への導体膜10aの転写やコンタクタ9のリーニングのタイミングを任意のタイミングで行うことができ、図3、図10、図14、及び図16等の各フローチャートを自動で実行することができる。
図25はプローブカード76の平面図であり、図26は図25の部分拡大断面図である。
プローブカード76は、配線層と絶縁層とを積層してなる回路基板であって、図25のようにその中央部には開口76aが形成される。
図26に示すように、プローブとして供せられるコンタクタ9は、そのプローブカード76の上面から開口76aの下方に延出するように設けられる。
なお、プローブカード76の上面とコンタクタ9との間には絶縁性のスペーサ88が設けられる。このスペーサ88により、ウエハWの上面から測ったコンタクタ9の最大高さが高くなり、コンタクタ9とウエハWとの接触θを大きくとることができる。
また、コンタクタ9の後端は、銅膜等をパターニングしてなる最上層の配線パターン89に接続される。その配線パターン89は、既述のポゴピン85に当接し、そのポゴピン85から試験信号Sの供給を受ける。
図27は、ウエハWの拡大平面図である。
図27に示すように、上記のようなプローブカード76は、チップ領域の周辺部分に電極31が配列されるペリフェラル型の半導体装置30の試験に特に好適である。
図28は、コンタクタ9の曲げ方の例を示す側面図である。
この例では、プローブカード76の上面からの高さH1〜H3を各コンタクタ9で変えることにより各コンタクタ9同士の間隔を広め、プローブカード76の上方でこれらのコンタクタ9同士が互いに接触する危険性を低減する。
図29は、図28のA側から見た側面図である。
図29に示すように、各コンタクタ9の直径は、電極31に接する先端部9aで最も細く、先端部9aから離れるについて太くなる。
このように先端部9aを細くすることで、電極31の狭ピッチ化に対応することができる。また、先端部9aから離れた部分で各コンタクタ9を太くすることで、コンタクタ9の強度を維持することができる。
例えば、プローブカード76の上方での各コンタクタ9の直径を100μm〜130μmにしてその強度を維持しながら、配列ピッチが約50μmの微細な電極31に対応できる。
図30(a)〜(c)は、上記した図27に示した各コンタクタ9の側面図である。
上記のように各コンタクタ9に高低差を設けたことで、図29(a)〜(c)に示すように、ウエハWとの接触角θ1〜θ3はコンタクタ9ごとに異なることになる。
図31(a)〜(c)は、図30(a)〜(c)のそれぞれのコンタクタ9の先端部9aに、第1実施形態に従って導体膜10aを転写した場合の断面図である。
第1実施形態で説明したように、導体膜10aは、電極31aと接触する部分の先端部9aのみに選択的に形成される。そのため、本実施形態のようにウエハWとの接触角θ1〜θ3がコンタクタ9ごとに異なる場合には、導体膜10aが転写される部分についてもコンタクタ9ごとに異なることになる。
めっき法ではこのようにコンタクタ9ごとに導体膜10aの転写位置を変えるのは非常に困難であるが、第1実施形態に従えば電極31と当接する部分のコンタクタ9のみに簡単に導体膜10aを形成できる。
図32は、コンタクタ9への通電経路の一例を示す断面図である。
この例では、ダミーウエハ57の導電体10に二つのコンタクタ9が当接する。そして、ポゴピン85を介して、一方のコンタクタ9に転写電圧V1の一方の極を接続し、他方のコンタクタ9に転写電圧V1の他方の極を接続する。
これにより、ステージ72が導電性であるか絶縁性であるかを問わず、各コンタクタ9に電流I1を流すことができる。
なお、コンタクタ9をクリーニングする場合には、転写電圧V1に代えてクリーニング電圧V2を印加し、転写用導電体10に代えてクリーニング用導電体35を用いればよい。
このような通電経路によれば、転写電圧V1を印加するための特別な加工をダミーウエハ57に施す必要がないので、市販されているウエハプローバを利用して既述の第1〜第6実施形態を実施することができる。
なお、図33に示すように、ステージ72に転写電圧V1の一方の極を接続し、他方の極をコンタクタ9に接続してもよい。この場合は、ステージ72とダミーウエハ57の補強板56の双方に導電性材料を使用することで、ステージ72からコンタクタ9に至る通電経路が確保され、電流I1を流すことができる。
また、図33の例において、導体膜の転写に代えてクリーニングを行うときは、転写電圧V1に代えてクリーニング電圧V2を使用すると共に、転写用導電体10に代えてクリーニング用導電体35を使用すればよい。
(第8実施形態)
第7実施形態では、半導体装置をウエハレベルで試験するウエハプローバについて説明した。
これに対し、本実施形態では、個片化された半導体装置を試験するICテスタについて説明する。
図34は、本実施形態に係る試験装置90の構成図である。なお、図34において、第1〜第7実施形態で説明したのと同じ要素にはこれらの実施形態と同じ符号を付し、以下ではその説明を省略する。
この試験装置90は、ICテスタであって、テスタ91と制御部102とを有する。
このうち、テスタ91内には、試験部92、電圧発生部100、及びスイッチ部101が設けられる。
試験部92は、試験信号Sを発生する試験信号生成部103と、試験対象の半導体装置30の出力信号に基づいて当該半導体装置30が所定の機能を有しているかどうかを判断する判断部104を備える。更に、既述の接触抵抗測定部50も試験部92に設けられる。
一方、電圧発生部100は、転写電圧V1やクリーニング電圧V2を発生し、それらをスイッチ部101に供給する。このように試験信号生成部103とは別に電圧発生部100を設けることで、試験に使用しない各電圧V1、V2の電圧値を試験信号Sの最大電圧よりも容易に高くすることができる。
スイッチ部101は、制御部102から出力される切り替え信号T5に基づいて、各電圧V1、V2と試験信号Sのいずれか一方を選択してポゴピン93に出力する。
スイッチ部101の構成は特に限定されないが、ポゴピン93の個数に応じた複数のリレーをスイッチ部101として使用するのが好ましい。
また、スイッチ部101のスイッチング動作により、ソケット95におけるスプリングプローブ96の全てを電圧発生部100に接続したり、それらの一部のみを電圧発生部100に接続したりすることができる。
ポゴピン93の上にはテストボード94が載置される。テストボード94は、配線パターンと絶縁層とを積層してなる回路基板であって、その上にはソケット95が設けられる。
ソケット95は、スプリングプローブ96と樹脂性のソケット本体99とを有する。そのソケット95の上方にはハンドラ97が設けられ、ハンドラ97に把持された半導体装置30がスプリングプローブ96に押圧される。
ハンドラ97の動きは、制御部102から出力される搬送信号T6により制御される。
制御部102は、既述の接触抵抗測定部50から出力される抵抗信号T7を受け、スプリングプローブ96と半導体装置30との間の接触抵抗値を把握することがき、第5実施形態のように接触抵抗値に基づいてクリーニングの要否を判断できる。
更に、制御部102には、各信号T5、T6の出力タイミングを記憶するプログラム102aが設けられる。各信号T5、T6の出力タイミングは、ユーザが任意にプログラム部102aに記憶させることができる。これにより、制御部102の制御下において、スプリングプローブ96の先端への導体膜10aの転写やコンタクタ9のリーニングのタイミングを任意のタイミングで行うことができ、図3、図10、図14、及び図16等の各フローチャートを自動で実行することができる。
図35は、上記したスプリングプローブ96の拡大断面図である。
スプリングプローブ96は、スプリング112を収容したスリーブ111を有する。スリーブ111の中には、プランジャとして機能する一対のコンタクタ9が設けられる。これらのコンタクタ9のうち、一方は半導体装置30の電極31に当接し、他方はテストボード94の電極109に当接する。また、各コンタクタ9は、上記のスプリング112によって互いに離れる方向に付勢され、これにより各電極31、109に十分な力で押圧される。
コンタクタ9の先端部9aの形状は特に限定されない。表面が平坦な電極31に当接する場合は、試験時に電極31の表面の自然酸化膜を破って電極31と確実にコンタクトできるように、図35のように錐状に尖った先端部9aとするのが好ましい。
試験時の磨耗からコンタクタ9を保護すべく、その先端部9aには、第1実施形態で説明した導体膜10aが選択的に形成される。
その導体膜10aをめっき法により形成することも考えられる。しかし、めっき法では先端部9aのみに選択的に導体膜10aを形成するのが困難であり、コンタクタ9の全表面に導体膜10aが形成されてしまう。更に、スプリングプローブ96を分解してコンタクタ9のみを取り出すのも困難なので、スプリング112やスリーブ111に不必要にめっきを施すことになってしまう。こうなると、スプリングプローブ96の各部品の寸法がめっきの分だけ増大してスリーブ111内をコンタクタ9が摺動し難くなったり、スプリング112のバネ性が変動したりするという問題がある。
これに対し、第1実施形態のように電気エネルギを利用してコンタクタ9に導体膜10aを転写すれば、電極31に当接する先端部9aのみに導体膜10aを形成でき、スプリングプローブ96の各部の動きを阻害する問題がない。
図36は、先端部9aの形状の別の例を示す断面図である。
この例では、先端部9aを中央が凹んだ凹状にする。このようにすると、電極31がはんだバンプのような突起電極の場合、電極31の表面の複数の点で先端部9aが当接するようになる。そして、当接した部分では電極31の表面の自然酸化膜が破れ、コンタクタ9を電極31に電気的に確実に接続することが可能となる。
なお、この場合においても、第1実施形態に従って先端部9aに導体膜10aを転写し、試験時の磨耗から先端部9aを保護するのが好ましい。
(第9実施形態)
図37は、本実施形態に係る試験装置130の模式図である。なお、図37において、第8実施形態で説明したのと同じ要素には第7実施形態と同じ符号を付し、以下ではその説明を省略する。
また、図37ではテストボード94については平面図で表し、それ以外の要素については断面図で表している。
本実施形態では、試験部92、電圧発生部100、及びスイッチ部101をテストボード94に設ける。
このうち、試験部92には、第7実施形態と同様に接触抵抗測定部50、試験信号生成部、及び判断部104が設けられる。
また、電圧発生部100は、例えば、外部電源110からポゴピン93を通じて供給された電圧を昇圧する昇圧回路であって、スイッチング部101に対して既述の転写電圧V1やクリーニング電圧V2を出力する。
そして、スイッチ部101は、例えばリレーであって、上記の各電圧V1、V2と試験部92から出力された試験信号Sのいずれか一方を選択してソケット95に対して出力する。
また、切り替え信号T5はポゴピン93を介してスイッチ部101に供給され、抵抗信号T7はポゴピン93を介して制御部102に取り込まれる。
この場合、スイッチ部101は、ソケット95の全てのスプリングプローブ96を、一括して電圧発生部100か試験部92のどちらかに接続する。これにより、全てのスプリングプローブ96を電圧発生部100に同時に接続し、各スプリングプローブ96に同時に導体膜10aを転写したりクリーニングしたりすることができるようになる。
以上説明した各実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1) 第1の材料を含むコンタクタ母材と、
前記コンタクタ母材の先端部のうち、半導体装置の電極との接触面にのみ選択的に形成された、第2の材料を含む導体膜と、
を有することを特徴とするコンタクタ。
(付記2) 前記導体膜と前記コンタクタ母材との界面に、前記第1の材料と前記第2の材料との共有結合層が形成されたことを特徴とする付記1に記載のコンタクタ。
(付記3) 前記コンタクタ母材の表面に第3の材料を含む皮膜が形成され、
前記皮膜の上に前記導体膜が形成されたことを特徴とする付記1に記載のコンタクタ。
(付記4) 前記第2の材料と前記第3の材料のそれぞれの共有結合半径の差は、前記第2の材料と前記第1の材料のそれぞれの共有結合半径の差よりも小さいことを特徴とする付記3に記載のコンタクタ。
(付記5) 前記第2の材料と前記第3の材料は同一であることを特徴とする付記3に記載のコンタクタ。
(付記6) 前記第2の材料は、3族元素〜10族元素のいずれかであることを特徴とする付記1〜3のいずれかに記載のコンタクタ。
(付記7) 前記電極は、アルミニウム、錫、及び鉛のいずれかを含むことを特徴とする付記6に記載のコンタクタ。
(付記8) 前記第2の材料は、前記電極に含まれる材料とは異なることを特徴とする付記1に記載のコンタクタ。
(付記9) 試験信号と、該試験信号の最大電圧よりも高く、かつ、試験に使用しない電圧のいずれか一方を選択してコンタクタに供給するスイッチ部を備えたことを特徴とする半導体装置の試験装置。
(付記10) 前記コンタクタに接続されるテストボードを更に有し、
前記テストボードに、前記試験信号を生成する試験信号生成部と、前記電圧を発生する電圧発生部と、前記スイッチ部とが設けられたことを特徴とする付記9に記載の半導体装置の試験装置。
(付記11) ダミーの表面に設けられた導電体に前記コンタクタが当接した状態で、該コンタクタに前記電圧が供給されることを特徴とする付記9又は付記10に記載の半導体装置の試験装置。
(付記12) 前記ダミーが載置される導電性のステージを更に有し、
前記ステージに前記電圧の一方の極が接続され、前記コンタクタに前記電圧の他方の極が接続されることを特徴とする付記11に記載の半導体装置の試験装置。
(付記13) 前記コンタクタが二つ設けられ、該二つのコンタクタの両方が前記導電体に当接している状態で、一方の前記コンタクタに前記電圧の一方の極が印加され、他方の前記コンタクタに前記電圧の他方の極が接続されることを特徴とする付記11に記載の半導体装置の試験装置。
(付記14) 半導体装置の電極にコンタクタの先端が接触した状態で、前記コンタクタから前記電極に試験信号を供給することにより、前記半導体装置に対して試験を行うステップと、
前記試験の後、第1の導電体に前記コンタクタの前記先端が当接した状態で、前記第1の導電体と前記コンタクタとの間に、前記試験信号の最大電圧よりも大きなクリーニング電圧を印加するステップと、
前記クリーニング電圧を印加した後、前記第1の導電体から前記コンタクタを離すことにより、該コンタクタの前記先端に付着している前記電極の材料を前記第1の導電体に移し、前記コンタクタをクリーニングするステップと、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
(付記15) 前記電極と前記コンタクタとの接触抵抗を測定するステップを更に有し、
前記第1の導電体と前記コンタクタとの間に前記クリーニング電圧を印加するステップは、前記接触抵抗が所定値を超えたときに行われることを特徴とする付記14に記載の半導体装置の製造方法。
(付記16) 前記第1の導電体は弾性体の上に形成され、
前記クリーニング電圧を印加するステップは、前記コンタクタの前記先端が前記第1の導電体に当接して前記弾性体が変形した状態で行われることを特徴とする付記14に記載の半導体装置の製造方法。
(付記17) 第2の導電体に前記コンタクタの前記先端が当接した状態で、前記第2の導電体と前記コンタクタとの間に、前記試験信号の前記最大電圧よりも大きな転写電圧を印加するステップと、
前記転写電圧を印加した後、前記第2の導電体から前記コンタクタを離すことにより、前記第2の導電体の材料の一部を前記コンタクタの前記先端に転写するステップとを更に有することを特徴とする付記14に記載の半導体装置の製造方法。
(付記18) 前記転写電圧として、パルス電圧を使用することを特徴とする付記17に記載の半導体装置の製造方法。
(付記19) 前記第2の導電体と前記コンタクタとの間に前記転写電圧を印加するステップは、前記第2の導電体と前記コンタクタとの当接位置をずらしながら、複数回に分けて行われることを特徴とする付記17に記載の半導体装置の製造方法。