本発明に係る、アンテナ装置を搭載した移動体の一実施形態について説明する。以下の説明では、移動体としての典型的な自動車(普通車)を挙げて説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、側面に複数の窓が設けられた移動体であれば、任意の移動体に対して適用することができる。すなわち、ここで言う移動体は、自動車に限らず、飛行機や船舶などを含む。また、アンテナ装置の用途は、送受信対応、送信専用または受信専用のいずれでもよい。
以下では、本発明の移動体の一実施形態と、それに搭載するアンテナ装置の放射素子の詳細な構造について説明し、最後に、そのアンテナ装置の放射素子の配設位置についての態様をいくつか例示するとともにそれらの態様におけるアンテナ特性について説明する。
〔実施形態1〕
実施形態1としてピラーの内部にアンテナ装置を配設した態様を説明する。まずは共通事項を説明し、続いて、アンテナ装置の放射素子の配設位置についていくつかの態様を説明する。
<共通事項>
図1は、移動体の典型例である自動車60の外観を示す図である。
自動車60の側面には、複数のウィンドウ630〜632が設けられている。具体的には、図1に示すように、前側面に配置された窓であるフロントウィンドウ(いわゆるフロントガラス)630と、右側面および左側面に配置された窓であるサイドウィンドウ631と、後側面に配置された窓であるリアウィンドウ632と、が設けられている。これらのウィンドウ630〜632は、何れもルーフ(ルーフ部)61とボディ62との間に位置する。
なお、本願明細書において、ルーフ61は、上述の各ウィンドウの上端よりも上方に在る各種構造の総称であり、ボディ62は、上述の各ウィンドウの下端よりも下方に在る各種構造の総称である。すなわち、ボディ62には、乗降用ドア64、トランクカバー66、ボンネット67などが含まれる。
● ピラー
上述した複数のウィンドウ630〜632のうち、互いに隣接する2つのウィンドウの間には、これら2つのウィンドウの間に介在するようにルーフ61からボディ62に延びるピラー1a〜1cが設けられている。ピラー1a〜1cは、ルーフ61を支持するためのものである。本実施形態の自動車60では、図1に示すように、運転席側および助手席側それぞれの前方、側方、後方の3箇所(計6箇所)にピラー1a〜1c設けられている。具体的には、(1)フロントウィンドウ630と運転席(または助手席)の乗降用ドア64に設けられたサイドウィンドウ631との間に配置されたAピラー1aと、(2)運転席(または助手席)の乗降用ドアと後部座席の乗降用ドアとにそれぞれ設けられたサイドウィンドウ631同士の境界部分に配置されたBピラー1bと、(3)後部座席の乗降用ドアに設けられたサイドウィンドウ631とリアウィンドウ632との間に設けられたCピラー1cとが設けられている。ピラー1a〜1cは、その上端が、ルーフ61との境界部分であり、その下端が、ボディ62との境界部分である。
図2は、図1に示す自動車60の車内のうち、前方側の外観構成の一例を示す図である。図2には、フロントウィンドウ630と、運転席および助手席の乗降用ドア64にそれぞれ設けられたサイドウィンドウ631と、これらの間に設けられたAピラー1aとが示されている。本実施形態では、このAピラー1aに、アンテナ装置10が配設されている。
ピラー1a〜1cは、何れも、互いに対向する内装材(絶縁材)と外装材(導体)とからなり、その延在方向に沿った中空部をもつ中空構造体を有している。詳細は後述する。
● アンテナ装置
アンテナ装置10は、概略的に言うと、図3に示すように、放射素子11と、放射素子11の背面に配設された絶縁体12とを備えている。
放射素子11は、可撓性を有する板状の導体であり、2次元面内に配される。ここで言う「2次元面」は、平面に限定されず、円筒面、球面、放物面、双曲面のような曲面の一部を切り取った三次元形状を持つものであってもよい。
絶縁体12は、省略可能な構成である。この絶縁体12を具備するか否かは、アンテナ装置10を設置する対象物の表面が導体であるか否かによる。当該対象物の表面が導体であれば、絶縁体12を具備する必要があり、当該表面が導体でなければ、絶縁体12を具備する必要はない。この点については、後述する。ただし、当該表面が導体でない場合に絶縁体12を具備してもアンテナ機能として問題を生じさせるものではない。
本実施形態では、放射素子11(必要に応じて絶縁体12も)を、Aピラー1aの内部に配設している。
ここで、図4は、Aピラー1aおよびその周辺の外観を示す図である。図4は、自動車の車内側からAピラー1aをみた図である。
アンテナ装置10は、Aピラー1aにおける取り付け位置に特徴がある。すなわち、図4に示すように、Aピラー1aの下端に対するアンテナ装置10の取り付け位置の高さを、Aピラー1aの下端に対するAピラー1aの上端の高さの2/3以下とする構成を採用している。特に、本実施形態においては、Aピラー1aの下端に対するアンテナ装置10の取り付け位置の高さを、Aピラー1aの下端に対するAピラー1aの上端の高さの1/3以上2/3以下とする構成を採用している。
後述するように、アンテナ装置10の取り付け位置の高さをAピラー1aの上端の高さの1/3以上2/3以下とする構成を採用することが最も好ましい。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、図5に示すように、アンテナ装置10の取り付け位置の高さをAピラー1aの上端の高さの1/3以下とする構成を採用してもよい。
なお、本実施形態では、1つの自動車60に対して、1つのアンテナ装置10が設けられている。これは、本発明に用いるアンテナ装置10は、高感度で指向性のない良好なアンテナ装置であるため、従来構成のように複数のアンテナ装置を設ける必要がないからである。しかしながら、本発明は、2つ目以降のアンテナ装置の設置を排除するものではない。
また、本実施形態では、Aピラー1aにアンテナ装置10を配設した構成について説明している。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、Bピラー1bまたはCピラー1cに設けることも可能である。Bピラー1bまたはCピラー1cにアンテナ装置10を設ける場合にも、上記特徴的構成を満たすよう配設する。
・アンテナ装置の詳細
以下に、アンテナ装置10の詳細について説明する。
図6は、アンテナ装置10の放射素子11の構造を示す平面図である。
放射素子11は、例えば薄い樹脂のような基材上に形成されており、例えば導体ワイヤーや導体フィルム、あるいはプリント配線を用いることができる。図3に示す絶縁体12を基材としてもよい。
放射素子11は、一端から他端に連続する導電性経路を持つ1本の線路である。放射素子11が一端から他端に連続する導電性経路を持っていることから、アンテナ装置10は、ループアンテナとして機能する。ループアンテナの感度(利得)は、一般に、ダイポールアンテナやモノポールアンテナの利得と比べて高い。
放射素子11は、図6に示すように、その一端から所定の長さの部分(下記の巻込部211に相当する部分)と、その他端から所定の長さの部分(下記の巻込部211に相当する部分)とが、それぞれ、第1および第2の根本部225、226を構成している。そして、第1および第2の根本部225、226を放射素子11から除いた残りの部分が中間部として構成されている。すなわち、中間部は、第1の根本部225と第2の根本部226とを中継する部分である。
中間部は、その一部がメアンダ化されている。また、上記中間部の残りの一部が第1の幅広部213および第2の幅広部214を構成する。
一方、第1および第2の根本部225、226が巻込部211を構成している。第1の幅広部213と第2の幅広部214とは互いに各々の一部分を共有しあっている。
以上の構成をまとめると、放射素子11の一端から他端に向かって、導電性経路は、第1の根本部225から始まり、第1の幅広部213、第2の幅広部214、放射部212、第2の根本部226の順に連続し、第2の根本部226は、第1の根本部225と隣接する位置に戻っている。
第1の根本部225において、一端から他端へ向かう取り出しの向きは、図6における左向き(X軸の負の向き)であり、第2の根本部226において、他端から一端へ向かう取り出しの向きは、図6における右向き(X軸の正の向き)である。すなわち、これら2つの取り出しの向きは互いに反対向きとなっている。
すなわち、2つの根本部225および226のいずれにおいても、それらの延びる向きが、給電部(給電点)222を取り囲むようにして、互いに反対向き(180°回転している)。
このため、低周波帯域側の電磁波および高周波帯域側の電磁波のいずれを送受信する場合であっても、それぞれの電磁波に関する高い放射利得を得ることができる。
さらに、放射素子11の第1および第2の根本部225、226の各取り出しの向きは、第1の根本部225の場合、給電線221が延在する向き、つまり、図6における左向き(X軸の負の向き)と同じ向きになり、第2の根本部226の場合、給電線221が後述する給電部222から電源側へ延在する向きと反対の向きとなっている。
具体的には、巻込部211においては、図6において、第1の根本部225の延在する向きが、放射素子11の一方の端から、上向き(Z軸の正の向き)、左向き(X軸の負の向き、取り出しの向き)となっている。すなわち、第1の根本部225は、上向きに延びる第1の直線部225o1、およびこの第1の直線部225o1の端部から左向きに延びる第1の屈曲部225o2(後端直線部)を有する。
また、第2の根本部226の延在する向きが、放射素子11の他方の端から、下向き(Z軸の負の向き)、右向き(X軸の正の向き、取り出しの向き)となっている。すなわち、第2の根本部226は、下向きに延びる第2の直線部226o1、およびこの第2の直線部226o1の端部から右向きに延びる第2の屈曲部226o2(後端直線部)を有する。
このように、巻込部211においては、第1および第2の根本部225、226のいずれにおいても、それらの延在する向きが、給電部222を取り囲むようにして、90°回転している。
また、放射素子11の中間部の一部は、放射部212において、少なくとも1回、より好ましくは2回以上の折り返しパターンからなるメアンダ形状を有している。そして、このメアンダ形状の折り返しパターンの折り返し方向(Z軸方向)は、巻込部211における放射素子11の第2の根本部226の取り出しの向き(X軸の正の向き)、すなわち第2の屈曲部226o2(後端直線部)の向きと垂直である。
ところで、上記巻込部211において、2つの根本部225、226のそれぞれには、上述した給電部222が形成されている。2つの根本部225、226のそれぞれは、給電部222に接続された給電線221から給電されている。具体的には、給電線221を構成する同軸ケーブルの外部導体が上記第1の根本部225に給電し、その同軸ケーブルの内部導体が上記第2の根本部226に給電する。また、外部導体が露出した部分と隣り合う、絶縁性外皮にて覆われている部分(外部導体が露出していない部分)は、第1の幅広部213b上に配置されている。
給電線221からの給電に関し、具体的には、給電部222において、同軸ケーブルの内部導体を介して、所定の周波数帯の信号が第2の根本部226に印加され、外部導体を介して、アース電位が第1の根本部225に印加される。
また、給電線221の下方に位置し、給電線221と重畳する、第1の幅広部213の線幅(X軸方向の長さ)は、放射素子11の巻込部211および放射部212を構成する部分の線幅よりも広くなっている。このため、給電部222において、給電線221との間のインピーダンス整合を実現することができる。
第2の幅広部214も、第1の幅広部213と同様、放射素子11の巻込部211および放射部212を構成する部分の線幅よりも広くなっている。
一方、図6とは異なり、給電線221が給電部222からZ軸の負の向きに延在する場合であれば、この第2の幅広部214が第1の幅広部213の役割を果たすことになる。すなわち、この場合、給電線221の下方に位置し、給電線221と重畳する、第2の幅広部214の線幅(X軸方向の長さ)が、放射素子11の巻込部211および放射部212を構成する部分の線幅よりも広くなっている、といえる。
また、放射素子11の給電部222に接続された給電線221は、後述するように、給電部222の近傍において、ピラー内部に配設されたワイヤーハーネスを構成する複数の電線とともに束ねられて配される。ここでアンテナ装置10(放射素子11)のサイズの一例を、図6における左右方向(X軸方向)の長さが125mm、上下方向(Z軸方向)の長さが25mmとすることができ、放射素子11の厚さの一例を1mmとすることができる。そして、このアンテナ装置10を、上下方向(Z軸方向)の長さが、ワイヤーハーネスの周方向に沿うようにワイヤーハーネスに取り付けることができる。
更に、放射部212が有するメアンダ形状内に短絡部材231が配置されている。短絡部材231は、独立した部材として設けられる場合に限らず、例えば導電性経路を形成する放射素子と同じ材料により、放射素子とともに一体形成されるものであってもよい。ここで、図7を用いて、この短絡部材231の役割について、以下、説明する。
● 短絡部材231の役割
図7は、メアンダ形状を有する放射素子315内に短絡部材331を配置して、放射素子315内に複数の導電性経路を生じさせた状態を示す模式図である。
図7に示すアンテナ301は1本の線路である放射素子315を有し、この放射素子315はメアンダ形状を有する。すなわち、放射素子315はメアンダ化されている。放射素子315には給電部322において給電線が接続される。
短絡部材331は、メアンダ化された放射素子315の例えば異なる2点以上を(複数の点を)短絡させる。図7の例では、短絡部材331の両端部に位置する上下方向に延びる2本の直線部間が短絡されている。これにより、放射素子315には、第1の波長λ1に対応した実線にて示す第1のパス(第1の導電性経路)と、第2の波長λ2に対応した破線にて示す第2のパス(第2の導電性経路)とが形成される。
なお、図7では、同一平面上の隣り合う複数の点を短絡した構成を説明しているが、隣り合っていない複数の点を短絡させてもよい。例えば直線ではないショートバーで短絡したり、2層構造としてショートバーをアンテナとは異なる面に配置して層間導通により離れた2点以上の点を短絡したりしても良い。
このように、アンテナ301では、メアンダ化された放射素子315において、複数の異なる点同士を短絡させるように短絡部材331を設けて、長さの異なる導電性経路の数を増やすことにより、アンテナ301の共振周波数(共振点)の数を増加させることができる。これにより、使用帯域におけるアンテナ301のVSWR特性を向上させることができる。
ここで、アンテナは、導体部材に搭載された場合、導体部材の影響を受けて、使用帯域(例えば、日本向け地上デジタル放送用アンテナであれば470MHz〜770MHz、北米向け地上デジタル放送用アンテナであれば470MHz〜860MH、欧州向け地上デジタル放送用アンテナであれば470〜890MHz)におけるVSWR特性が悪化する(VSWR値が上昇する)場合がある。
このような場合には、図7のアンテナ301において示したように、メアンダ化された放射素子315において、複数の異なる点同士を短絡させるように短絡部材331を設けることによって、使用帯域におけるVSWR特性の悪化(VSWR値の上昇)を抑制することができる。すなわち、導体部材からの影響を考慮し、放射素子315の近傍にダミーの導電部材を配置した状態で、放射素子315において短絡部材331により短絡させる位置を決定して短絡部材331を配置する。これにより、長さの異なる導電性経路の数が増加してアンテナ301の共振周波数が増加する。結果、アンテナ301を導体部材に搭載した場合でも、導体部材の影響による使用帯域におけるVSWR特性の悪化(VSWR値の上昇)を抑制することができる。
図6に示したアンテナ装置10では、上で述べたような短絡部材331として、短絡部材231が、メアンダ化された放射部212に配置されている。短絡部材231を配置する位置および箇所の決定は、例えば、次のようにして行われる。
短絡部材231の配置は、放射素子11が誘電体を介して金属板上に配置された状態で、使用帯域内の各周波数におけるVSWR値が、短絡部材231を配置していない場合よりも小さくなるように決める。より好ましくは、放射素子11が誘電体を介して金属板上に配置された状態で、使用帯域内の各周波数におけるVSWR値が、3.5以下になるように決める。
より具体的に言えば、ダミー金属板上に誘電体を介して配置された放射素子11上に短絡部材231を仮置きした上で、使用帯域におけるVSWR値をモニタしながら短絡部材231を移動する。そして、使用帯域内の各周波数においてVSWR値が短絡部材を配置していない場合よりも小さくなる位置が見出された場合、その短絡部材231をその位置に固定する。一方、使用帯域内の各周波数においてVSWR値が短絡部材を配置していない場合よりも小さくなる位置を見出せなかった場合、使用する短絡部材231を形状またはサイズの異なるものに取り替えながら、上記の試行を繰り返す。
短絡部材231は、放射素子11の所定の位置同士を短絡させるものであり、例えば、金属材料などの導電材料を用いることができる。短絡部材231は、例えば放射素子11に直接接触し、放射素子11を短絡させる。
ここで、短絡部材231の有無とVSWR特性との関係について調べた実験結果について、以下に説明する。
● 短絡部材の有無による効果
この実験においては、図8に示すように、350mm×250mmの導体部材としての金属板403上に、誘電体層402を介してアンテナ装置401(放射素子)を搭載した。誘電体層402については後述する。
アンテナ装置401には、図6に示したアンテナ装置10、および図9に示すアンテナ501を使用し、それぞれについてVSWR特性を測定した。なお、図9のアンテナ501は、図6のアンテナ装置10に設けられている短絡部材231が設けられていない点を除き、図6のアンテナ装置10と同一の構成を有する。
図10は、アンテナ装置10およびアンテナ501の各VSWR特性の測定結果を示すグラフである。図10において、「短絡部材有り」のグラフがアンテナ装置10の測定結果であり、「短絡部材無し」のグラフがアンテナ501の測定結果である。なお、この測定時においては、誘電体層402の厚さdは5mm、比誘電率εrは1であった。
図10に示す実験結果からは、アンテナ装置10において短絡部材231を配置し、短絡を生じさせることにより、地上波デジタルテレビ帯域(470MHz〜770MHz)のうち、800MHz以下の帯域においてVSWRを3.5以下に抑えられることが分かる。
一方、短絡部材の無いアンテナ501の場合、650MHz〜750MHzの帯域においてVSWRを3.5以下に抑えられることが分かる。
ただし、アンテナ501においても、約650MHz〜750MHzの周波数帯では、VSWRが3.5以下に抑えられているので、この周波数帯では良好な送受信を行うことができる。これは、アンテナ501がメアンダ形状の導電性経路を持つ放射素子11を備えていることによる効果であると考えられる。
アンテナ501の場合には、良好な周波数帯が約650MHz〜750MHzという結果になっているが、これは単なる一例に過ぎない。すなわち、メアンダ形状の設計によって、VSWRを3.5以下とする周波数の値と範囲とを様々に変えることができる。したがって、使用周波数帯によっては、短絡部材は無くてもよい。
● 誘電体の厚さによる効果
本願発明者等は、図8に示すように、アンテナ装置401と導体部材としての金属板403との間に誘電体層402を設けることにより、アンテナ装置401と導体部材(金属板403)との間の距離を数mm程度に小さくしても実用に耐えるVSWR特性を有するアンテナを実現できることを見出した。この際、誘電体層402の比誘電率εrは1以上10以下に設定することが望ましい。これは、比誘電率εrを10よりも大きくすると、放射効率の低下が無視できなくなるためである。
図11に、誘電体層402の厚さdを変化させ、各厚さdにおけるアンテナ装置401のVSWR特性の測定結果を示す。ここでは、図6のアンテナ装置10をアンテナ装置401として用いている。
また、厚さdとして、d=無限大(∞)、d=5mm、d=2mm、d=0mm、の4条件を用意した。なお、d=無限大とは、アンテナ装置10と金属板403との距離が無限大、つまり、金属板403が存在しない状況を意味する条件である。また、d=0mmは、アンテナ装置10が金属板403に対して可能な限り薄い絶縁膜等の絶縁部材を介して接触するように搭載されている状況を意味する条件である。つまり、d=0mmは、アンテナ装置10の導体部分と金属板403とが直接接触しないで、可能な限りアンテナ装置10と金属板403とが接近している状態の距離を示している。
図11に示すように、d=無限大、d=5mmの2つ条件において、470MHz〜770MHzの帯域においてVSWRを3.5以下に抑えられることが分かる。また、d=2mmとした場合でも、670MHz近傍の帯域を除けば、470MHz〜770MHzの帯域においてVSWRを3.5以下に抑えられることが分かる。このことから次のようなことがいえる。
d=無限大、すなわち、アンテナ装置10が金属板403に搭載されていなければ、アンテナ装置10は金属板403からの影響を受けることは無い。言い換えると、アンテナ装置10が金属板403に無限遠から徐々に金属板403に近づくとすれば、金属板403に近づけば近づくほど、金属板403からの影響を強く受けるはずである。
したがって、図11の結果からいえることは、アンテナ装置10と金属板403との間の誘電体層402の厚さd、すなわち、アンテナ装置10と金属板403との間の距離を5mm以上とすれば、470MHz〜770MHzの帯域において、VSWRを3.5以下に抑えることができるといえる。また、アンテナ装置10と金属板403との間の距離を2mm以上とすれば、一部の例外的な帯域を除けば、470MHz〜770MHzの帯域においてVSWRを3.5以下に抑えられるといえる。
なお、図11は、比誘電率εrが約2〜3の厚さ1mm以下のアンテナ基材を使用した場合で、基材以外の隔離、すなわち誘電体層402の厚さを、比誘電率εr=約1の材料(発泡スチロールなど)で設けた場合の特性を示している。
従って、図11に示す特性では、厚さd=2mmの時、670MH近傍でVSWRが劣化するが、本発明では必ずしも670MHz帯域のVSWRが劣化するわけではない。これは、図11に示す特性が、短絡部材やメアンダ形状、アンテナ基材の比誘電率εrおよび厚さ、誘電体層402の比誘電率εr等を最適化することにより調整することが可能だからである。
図12は、図6に示したアンテナ装置10の550MHz帯域における放射パターンを示すグラフである。図12の(a)は、xy面における放射パターン、図12の(b)は、yz面における放射パターン、図12の(c)は、zx面における放射パターンをそれぞれ示している。このときの誘電体層402の厚さdは5mm、比誘電率εrは1であった。また、図12中に示すEθは、垂直偏波Vに対するアンテナの放射パワーを表わし、Eφは、水平偏波Hに対するアンテナの放射パワーを表わし、Etotalはアンテナの全放射パワーを表している。
図12によれば、xy面における放射パターン、yz面における放射パターン、zx面における放射パターンのいずれにおいても、放射無指向性が実現されていることが分かる。
<アンテナ装置の変形例[1]>
図13は、アンテナ装置10の変形例であるアンテナ装置10aを示している。以下、アンテナ装置10と異なる部分について、その詳細な説明を行うものとし、同様の部分については、説明を省略する。
アンテナ装置10aのサイズは、図13における左右方向(X軸方向)の長さが83mm、上下方向(Z軸方向)の長さが56mmである。
巻込部211aにおいて、放射素子11aの2つの根本部225a、226aのそれぞれに、給電部222aが形成されている。2つの根本部225a、226aのそれぞれは、給電部222aに接続された給電線221aから給電されている。
なお、第1の根本部225aは、図6に示した第1の根本部225の第1の直線部225o1および第1の屈曲部225o2に対応する第1の直線部225a1および第1の屈曲部225a2(後端直線部)を有する。同様に、第2の根本部226aは、図6に示した第2の根本部226の第2の直線部226o1および第2の屈曲部226o2に対応する第2の直線部226a1および第2の屈曲部226a2(後端直線部)を有する。
給電線221aは、その延在する向きが、上記の実施の形態1の給電線221とは異なり、図13のZ軸の負の向きとなっている。
このため、放射素子11aの2つの根本部225a、226aの取り出しの向きは、いずれも、給電線221が延在する向きと直交している。
また、第1の幅広部213aは、給電線221aの下方に位置し、給電線221aと重畳する部分の線幅(X軸方向の長さ)が、放射素子11aの巻込部211aおよび放射部212aを構成する部分の線幅よりも広くなっている。
図13とは異なり、給電線221aは給電部222aからX軸の負の向きに延在していてもよい。
更に、放射部212aが有するメアンダ形状内に短絡部材231aおよび短絡部材232aが配置されている。この短絡部材231aおよび短絡部材232aの役割については、上記と同じである。
次に、短絡部材231aおよび232aの有無によるVSWR特性の違いについて、以下に説明する。
● 変形例[1]の短絡部材の有無による効果
上記と同様、図8に示すように、350mm×250mmの金属板403上に、誘電体層402を介してアンテナ装置401(放射素子)を搭載した。
アンテナ装置401には、図13に示したアンテナ装置10a、図14に示すアンテナ502、および図15に示すアンテナ503を使用し、それぞれについてVSWR特性を測定した。図14のアンテナ502は、図13の短絡部材232aが放射部212aのメアンダ形状部内に配置されていないことを除き、図13のアンテナ装置10aと同一の構成を有する。また、図12のアンテナ503は、図13の短絡部材231aおよび232aが放射部212aのメアンダ形状部内に配置されていないことを除き、図13のアンテナ装置10aと同一の構成を有する。
図16に、アンテナ装置10a、アンテナ502およびアンテナ503の各VSWR特性の測定結果を示す。図16において、「短絡部材有り」のグラフがアンテナ装置10aの測定結果であり、「短絡部材無し」のグラフがアンテナ503の測定結果であり、「第2の短絡部材無し」のグラフがアンテナ502の測定結果である。なお、この測定時においては、誘電体層402の厚さdは5mm、比誘電率εrは1であった。
図16に示すように、先ず、「第2の短絡部材無し」のグラフから、短絡部材231aを配置し、短絡を生じさせることにより、地上波デジタルテレビ帯域(470MHz〜770MHz)のうち、低周波帯域においてVSWRを3.5以下に抑えられることが分かる。
更に、「短絡部材有り」のグラフから、短絡部材232aを配置し、短絡を生じさせることにより、地上波デジタルテレビ帯域(470MHz〜770MHz)のうち、高周波帯域においてもVSWRを3.5以下に抑えられることが分かる。
ただし、「短絡部材無し」のグラフから、前述したように、アンテナ503においても、約550MHz〜620MHzの周波数帯および約680MHz〜770MHzの周波数帯では、VSWRが3.5以下に抑えられているので、この周波数帯では良好な送受信を行うことができる。これは、アンテナ503がメアンダ形状の導電性経路を持つ放射素子11aを備えていることによる効果であると考えられる。したがって、使用周波数帯によって、短絡部材の設置数は0も含んで変更可能である。
● 変形例[1]の誘電体の厚さによる効果
図17に、誘電体層402の厚さdを変化させ、各厚さdにおけるアンテナ装置401のVSWR特性の測定結果を示す。ここでは、図13のアンテナ装置10aをアンテナ装置401として用いている。
また、厚さdとして、d=無限大(∞)、d=5mm、d=2mm、d=0mm、の4条件を用意した。
図17に示すように、d=無限大、d=5mmの2つ条件において、420MHz〜920MHzの帯域においてVSWRを3.1以下に抑えられることが分かる。
また、d=無限大、d=5mm、d=2mmの3つ条件において、420MHz〜870MHzの帯域においてVSWRを3.5以下に抑えられることが分かる。
このことから、アンテナ装置10aと金属板403との間の距離を2mm以上とすれば、420MHz〜870MHzの帯域において、VSWRを3.5以下に抑えられるといえる。
ここで、図17は、比誘電率εrが約2〜3の厚さ1mm以下のアンテナ基材を使用した場合で、基材以外の離隔、すなわち誘電体層402の厚さdを、比誘電率εr=約1の材料(発泡スチロールなど)で設けた場合の特性を示している。
なお、d=0mmの場合でも、例えば、450MHz近傍の周波数帯、約520MHz〜690MHzおよび約750MHz〜830MHzなどの周波数帯では、VSWRを3.5以下に抑えられ、良好な送受信を行うことができる。したがって、使用周波数帯が特性の周波数に限定して構わない場合には、本発明のメアンダ形状の放射素子11を備えたアンテナ装置10aを、導体面とは絶縁した状態が保った状態で、できるだけ接近させることができる。
図18は、図13に示したアンテナ装置10aの550MHz帯域における放射パターンを示すグラフである。図18の(a)は、xy面における放射パターン、図18の(b)は、yz面における放射パターン、図18の(c)は、zx面における放射パターンをそれぞれ示している。このときの誘電体層402の厚さdは5mm、比誘電率εrは1であった。
図18によれば、xy面における放射パターン、yz面における放射パターン、zx面における放射パターンのいずれにおいても、放射無指向性が実現されていることが分かる。
<アンテナ装置の変形例[2]>
アンテナ装置の更なる変形例について説明する。図19は、アンテナ装置10bの平面図である。
図6に示したアンテナ装置10と図19のアンテナ装置10bとの相違点は、図19のアンテナ装置10bには、メアンダ形状を有する放射部212の、給電部222から離れた側に、短絡部材231´を設けている点にある。その他については、図6のアンテナ装置10と同じである。
本変形例[2]のアンテナ装置10bも、図13に示した変形例[1]のアンテナ装置10aと同様に、金属板403との間の距離を2mm以上とすれば、420MHz〜870MHzの帯域において、VSWRを3.5以下に抑えられ、また、xy面における放射パターン、yz面における放射パターン、zx面における放射パターンのいずれにおいても、放射無指向性が実現される。
以上のように、本実施形態では、高感度で指向性のないアンテナ装置10、10a、10bをAピラー1aの内部に配設する。
以下では、Aピラー1aにアンテナ装置10を配設する本実施形態における、アンテナ装置10の配設位置の具体例をいくつか挙げる。
<ピラーへのアンテナ装置の配設例1>
図20は、図2に示すAピラー1aを切断線H−H´によって切断した場合の矢視断面図である。
Aピラー1aは、合成樹脂などの絶縁材からなる内装材13と、導体からなる外装材14とから構成されている。内装材13は、自動車60(図1)の車内の壁部を構成しており、外装材14は自動車60の外殻を構成している。
外装材14は断面円弧状を呈する一方、内装材13は断面直線状や断面円弧状などの断面形状(図20には、直線状の断面の両端にそれぞれ短円弧状の断面が連続した断面形状を有する内装材を示している)を呈しており、Aピラー1aは、外装材14の断面の端部と、内装材13の断面の端部とが互いに当接した状態で、外装材14と内装材13とが連結されることにより、筒状(中空構造)を成している。
なお、Aピラー1a自体の構成は、後述する配設例2以降においても共通である。また、内装材13および外装材14の具体的材質は、周知のものを採用することができる。
本配設例1では、このようなAピラー1aにおける内装材13の空洞側表面13aに沿って、平板状の放射素子11(本配設例1ではアンテナ装置10は平板状の放射素子11からなる)が取り付けられている。すなわち、空洞側表面13aと平板状の放射素子11の表面とがほぼ平行になるようにアンテナ装置10が配設されている。
ここで、図20に示す構成の場合、平板状の放射素子11は、外装材14から離間して配置される必要がある。
離間させる距離(以下、離間距離という)Lは、詳細は後述するが、VSWR特性を考慮して、例えば2mmに設定される。ただし、上記離間距離Lは2mmに限定されるものではなく、VSWRを3.5以下に抑えられる離間距離である2mm以上であればよい。
距離Lが2mm以上設けられればよい。
また、上述したようにアンテナ装置10は可撓性を備えているので、仮に空洞側表面13aの内面形状が湾曲している場合であっても、これに沿った形状として容易に貼付けることができる。曲率半径Rが5mm以上の曲面に沿って取り付けられるなら、アンテナ装置10は良好な特性を維持することができる。
アンテナ装置10の取り付け方法としては、特に制限はないが、アンテナ装置10を保持するシート状の基材として、例えば2mm以上の厚みを持つ柔軟性の高い粘着テープなどを用いると、空洞側表面13aの貼着箇所に、リブのような***物が存在していても、空洞側表面13aの内面形状およびリブの形状に沿わせて、アンテナ装置10を貼着することができる。
しかしながら、上述の貼着に限定されるものではなく、ビスなどの取付部品を用いて空洞側表面13aに取り付けることも可能である。
なお、本配設例1では、内装材13の空洞側表面13aにアンテナ装置10が配設されているが、代わりに、内装材13の車内側表面にアンテナ装置10が配設されていてもよい。その場合には、最外層に、平板状の放射素子11を保護する保護層が設けられる。ただ、内装材13の空洞側表面13aであれば視認されないので、空洞側表面13aにアンテナ装置10を配設することが好ましい。
以上のように、本配設例1では、内装材13の空洞側表面13aにアンテナ装置10が配設されている。自動車用内装材は樹脂のような誘電体で形成されることが一般的である。そのため、移動体用内装材の表面は、導体の影響を受けにくい場所であり、アンテナ装置の設置場所として好適である。
特に上記の構成において、平板状の放射素子11は、導体材料からなる外装材14の表面から離間して配置されている。この構成によれば、導体の影響を受けてアンテナの特性が劣化することを回避することができる。具体的には、外装材14に対する平板状の放射素子11の離間距離Lは、少なくとも2mmである。これによれば、アンテナを導体付近に搭載する場合でも、VSWR値を3.5以下に抑えた使用可能な周波数帯域を発現させることができる。
また平板状の放射素子11は可撓性をもつため、湾曲している内装材13の空洞側表面13aであっても、これに沿わせて簡単に取り付けることができる。具体的には、上記平板状の放射素子が、内装材の表面形状に沿って曲率半径5mm以上で湾曲して取り付けることができる、曲率半径が5mm以上の曲面に沿って取り付けることで、良好な特性を維持することができる。
本配設例1の態様におけるアンテナ性能については、後述する(本実施形態の作用効果)において説明する。
<ピラーへのアンテナ装置の配設例2>
図21は、本配設例2において、図2に示すAピラー1aを切断線H−H´によって切断した場合の矢視断面図である。
本配設例2では、Aピラー1aにおける、導体で形成された外装材14の内側表面14aにアンテナ装置10が配設されている。
外装材14の内側表面14aが導体で構成されているため、本配設例2では、平板状の放射素子11が内側表面14aから離間して配置される。
離間距離Lは、詳細は後述するが、VSWR特性を考慮して、例えば2mmに設定される。ただし、上記離間距離Lは2mmに限定されるものではなく、VSWRを3.5以下に抑えられる離間距離である2mm以上であればよい。
この態様においては、上記離間距離Lに相当する厚みを有するシート状の絶縁体12を外装材14の内側表面14aに設置し、このシート状の絶縁体12の上に平板状の放射素子11を設置すればよい。
このように、外装材14の内側表面14aから2mm以上離間させればよいから、比較的狭い空間に対してもアンテナ装置10を配設することが可能となる。よって、アンテナ装置10は、その設置に要するスペースが少なくて済む。
なお、本配設例2では、シート状の絶縁体12を用いて離間距離Lを確保している。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、図22のような構成であってもよい。図21は、図20の変形例である。図21では、離間距離Lに相当する厚さを有する所定数のスペーサ(絶縁体)15を内側表面14aの適所に設置し、このスペーサ15上に平板状の放射素子11を設置して、ビスなどの取付部品16によって平板状の放射素子11をスペーサ15に固定する構成が考えられる。
なお、本配設例2では、外装材14の内側表面14aにアンテナ装置10が配設されているが、代わりに、外装材14の外側表面にアンテナ装置10が配設されていてもよい。その場合には、最外層に、平板状の放射素子11を保護する保護層が設けられる。ただ、外装材14の内側表面14aであれば視認されないので、内側表面14aにアンテナ装置10を配設することが好ましい。
ここで、導電性材料層を含む外装材の典型例は、自動車、飛行機、電車、船舶などのボディの形成材として汎用されている金属であるが、ボディに要求される剛性を備えていれば、金属に限定されず、上記外殻の範疇に導電性樹脂材などが含まれてもよい。
以上のように、本配設例2では、外装材14の内側表面14aにアンテナ装置10が配設されている。この構成において、外装材の表面または裏面に対する平板状の放射素子11の離間距離が、少なくとも2mmである。これにより、アンテナ装置を導体付近に搭載する場合でも、VSWR値を3.5以下に抑えた使用可能な周波数帯域を発現させることができる。
また、外装材14と平板状の放射素子11との間に誘電体層を介在させ、誘電体層に平板状の放射素子11を固定することができる。これにより、放射素子と外殻との間に誘電体層が介在するので、アンテナ装置を例えば自動車の車体などの金属部材上に設ける場合に、誘電体層が金属部材からの悪影響を抑制することができる。これにより、アンテナ装置は、良好なVSWR特性を維持することができる。
また、外装材の表面の一部を覆うカバー部材を用いて、カバー部材の内側には、外装材の表面との間に空間部が形成され、カバー部材の内側の面に沿って平板状の放射素子11が固定された構成としてもよい。これにより、アンテナ装置を移動体の外殻の表面に設置する場合に、防水および保護等の観点から不可欠なカバー部材を、導電性材料層から受ける悪影響を抑制する上記支持部材として有効に活用することができる。なお、この構成では、放射素子と外殻との間に空気層が誘電体層として介在する。これにより、アンテナ装置は、良好なVSWR特性を維持することができる。
また、本配設例2では、平板状の放射素子11を湾曲させてもよく、その場合、曲率半径は5mm以上であれば、アンテナ装置10は良好な特性を維持することができる。
本配設例2の態様におけるアンテナ性能については、後述する(本実施形態の作用効果)において説明する。
<ピラーへのアンテナ装置の配設例3>
図23は、Aピラー1aの一部を示した図である。本配設例3では、外装材14と内装材13とによって形成される筒状の中空部に、アンテナ装置10を有したワイヤーハーネス17が通っている態様である。すなわち、本配設例3では、アンテナ一体型ハーネスをAピラー1aに通して、アンテナ装置10の取り付け位置の高さを、Aピラー1aの高さの1/3以上2/3以下とする態様である。
図24は、アンテナ一体型のワイヤーハーネス17の斜視図である。図25は、図24に示したワイヤーハーネス17を切断線S−S´において切断した状態を示した矢視断面図である。
ワイヤーハーネス17は、複数の電線33を束ねて構成され、このワイヤーハーネス17の表層に平板状の放射素子11が巻き付いている。
ワイヤーハーネス17は、図25に示すように、複数の電線33と、これら電線33を束ねるためのテープ部材32と、シールド材31とを有している。
複数の電線33は、それぞれが、導線部と、当該導線部を被覆して導線部同士を互いに絶縁させる絶縁部とを有している。
テープ部材32は、電線33を束ねることができるものであれば、材質や厚みなどの他の条件については特に制限はないが、ワイヤーハーネスとして望ましい性能を発揮することができる材質を選択するとよい。例えば、磨耗性、耐熱性、密着性などに優れた材質を選択することが好ましい。
また、テープ部材32は、絶縁材から構成されていることが好ましい。なぜなら、電線33の被覆が損傷した場合であっても、電線33の導線部とアンテナ装置10との間の絶縁を維持することができ、被覆の損傷した電線33がアンテナ性能に悪影響を与えることがないからである。
なお、本実施形態では複数の電線33を束ねている手段としてテープ部材を用いているが、本発明はこれに限定されるものではなく、電線を束ねる従来周知の材料を用いることができる。
テープ部材32によって束ねられたワイヤーハーネス17の外面は、シールド材31で被覆されている。
シールド材31は、束ねられている電線33群をシールドする役割を担っており、導電性材料からなる。シールド材31により、電線33群からのノイズを遮断することができ、シールド材31の外装側に取り付けられるアンテナ装置10への当該ノイズの影響を遮断することができる。なお、シールド材31はワイヤーハーネス17の外面全てを覆っている必要はなく、アンテナ装置10が取り付けられる領域およびその周辺のみを覆っていても良い。
なお、テープ部材32およびシールド材31はともに、ワイヤーハーネス17の全長と等しい幅を有している必要はなく、全長よりも短い幅のテープを部分的に重畳させながら巻着させてもよい。
また、図24に示すワイヤーハーネス17は、先端において複数の電線33が露出しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、先端にコネクタなどの部品あるいは他の電子機器が連結していてもよい。
また、本実施形態では、1本のワイヤーハーネス17にアンテナ装置10を設置した構成を説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、ワイヤーハーネス17同士を束ねて、束ねた表面にアンテナ装置10を設置した構成であってもよい。
アンテナ装置10は、図24に示すようにワイヤーハーネス17の表面、具体的には図25に示すようにシールド材31の表面に沿って、当該表面の一部を覆うように、配設されている。
本実施形態で用いているワイヤーハーネス17の表面(側面ともいう)、すなわちシールド材31の表面は、曲面である。そのため、その表面の一部を覆うアンテナ装置10もまた図24に示すように湾曲しており、シールド材31の表面に巻き付けられた構成となっている。
アンテナ装置10は、誘電体部12と平板状の放射素子11とを有しており、誘電体部12がシールド材31と平板状の放射素子11との間に配置された構成となっている。
誘電体部12は、誘電体材料から構成されており、シールド材31と平板状の放射素子11との間を絶縁するために設けられている。シールド材31と平板状の放射素子11とは、この誘電体部12によって、所定の間隔で離間されている。具体的には、後述するように、導電性材料であるシールド材31と、平板状の放射素子11との間が、少なくとも2mm離間されていればよい。
誘電体部12は、シールド材31と平板状の放射素子11との間を所定の間隔で保持するスペーサとして機能するものであれば、その構造に特に制限はない。例えば、平板状の放射素子11の全面を覆う二次元面状の誘電体層であってもよいが、平板状の放射素子11の一部分を覆うものであってもよい。あるいは、貫通孔や凹部が設けられてなるものであってもよく、所定の間隔と同じ突出高を有する複数の突起体から構成してもよい。
ワイヤーハーネス17のシールド材31の表面に巻き付けられたアンテナ装置10は、平板状の放射素子11の両端部分が巻き付けによって互いに重畳しなければよい。例えば、ワイヤーハーネス17(シールド材31)の外周(円周)が120mmの場合、これに巻き付けられたアンテナ装置10の平板状の放射素子11における、シールド材31の外周に沿った長さは120mm未満であればよい。
また、このように湾曲した平板状の放射素子11の場合、その曲率半径Rが5mm以上であることが好ましい。曲率半径Rが5mm以上の曲面に沿って取り付けられるなら、良好なアンテナ特性を維持することができる。
ワイヤーハーネス17(シールド材31)へのアンテナ装置10の取り付け方法には特に制限はないが、接着剤を用いた貼着や、固定用ツメを用いた固定などを挙げることができる。
また、平板状の放射素子11の給電部222に接続された給電線221は、図24に示すように、給電部222の近傍において、ワイヤーハーネス17の複数の電線33とともに束ねられて、ワイヤーハーネス17の内部を、複数の電線33とともに配されている。図24では、テープ部材32およびシールド材31の給電部222近傍に孔18が設けられており、当該孔34から給電線221がワイヤーハーネス17内部に引き込まれて、複数の電線33と束ねられている。なお、給電線221のワイヤーハーネス17内部への引き込み方法はこれに限定されるものではない。また、図24では、給電線221が放射素子11から離れる方向にワイヤーハーネス17内部を延伸しているが、延伸方向は反対方向であってもよい。
なお、ワイヤーハーネス17のシールド材31の更に外装に絶縁材が少なくとも2mmの厚さで設けられている場合には、アンテナ装置10は、誘電体部12を設けず、当該絶縁材の表面に平板状の放射素子11を形成してもよい。
また、図24は説明の便宜上、アンテナ装置10が最外層に配設された構成となっているが、ワイヤーハーネス17をアンテナ装置10ごと覆う外装部材が配されていてもよい。
また、本配設例3では、シールド材31にアンテナ装置10を取り付けたが、本発明はこれに限定されるものではなく、ワイヤーハーネス(シールド材31)の表面を覆う外装部材を更に備えており、放射素子11がこの外装部材におけるシールド材31との対向面に形成されていてもよい。この点について説明する。
図26は、図25と同じく、ワイヤーハーネスの断面図である。図26に示すワイヤーハーネス17aには、アンテナ装置10を覆うように外装部材30が配されている。
外装部材30は、アンテナ装置10を外部衝撃から保護するのに加えて、アンテナ装置10に不都合に導体が接近することを防ぐ。具体的には、外装部材30としては、プラスチック材などから構成することができる。
外装部材30の取り付け方法としては、例えば、プラスチック材などからなる外装部材の長手方向に沿って開裂部を設け、アンテナ装置10を実装した後に、外装部材の開裂部を開裂させてワイヤーハーネス17およびアンテナ装置10を覆えばよい。
また、図26では、ワイヤーハーネス17およびアンテナ装置10の全周を外装部材30が覆っているが、本発明はこれに限定されるものではなく、少なくとも、アンテナ装置10を覆うような構成であってもよい。
以上のように、本配設例3の構成は、ワイヤーハーネス17にアンテナ装置10(平板状の放射素子11)が巻き付いた構成であり、当該アンテナ装置10が、図4に示すAピラー1aの特定の領域に位置している。
平板状の放射素子11が、シールド材31表面に沿った平板状であることから、設置するためのスペースは極わずかである。例えば、後述のように放射素子が厚さ1mmの導体だとすれば、ワイヤーハーネスの直径が2mmほど太くなるだけで済む。よって、従来構成のアンテナ装置ならば設置することができなかったような狭スペースでも本発明の場合は設置可能である。
そして、平板状の放射素子11におけるシールド材31表面の側には、誘電体部12が設けられていることにより、平板状の放射素子11とワイヤーハーネスの電線33との間を絶縁する、もしくは絶縁に近い状態を実現することができる。
これにより、ワイヤーハーネス17の電線33の近傍に平板状の放射素子11を配置することができ、配置しても平板状の放射素子の特性が妨げられることがなく、良好なアンテナ特性を示すことが可能である。
しかしながら、上記の構成に代えて、シールド材31表面が誘電体によって構成されていれば、当該誘電体の表面に直接平板状の放射素子11を配してもよい。この構成によっても、放射素子11は、電線33から絶縁される、もしくは絶縁に近い状態になるため、電線33によって放射素子11の特性を妨げられることがなく、良好なアンテナ特性を示すことが可能である。
また、平板状の放射素子11は、シールド材31の曲面に沿った形状となっている。これによれば、狭いスペースであってもアンテナ装置を配設することができる。具体的には、放射素子11の曲面の曲率半径が5mm以上であれば、良好な特性を維持することができる。
本配設例3の態様におけるアンテナ性能については、以下の<本実施形態の作用効果>において説明する。
<本実施形態の作用効果>
本実施形態では、図4に示すように、Aピラー1aの下端に対するアンテナ装置10の取り付け位置の高さを、Aピラー1aの下端に対するAピラー1aの上端の高さの2/3以下とする構成を採用している。
上述のように、ルーフ61は、一般的に導電性材料を用いて構成されており、且つ、水平方向に広がった構造を有しているが、地上デジタル放送の搬送波は、水平方向から入射する水平偏波であるため、ルーフ61の作用によって大きく減衰してしまう。図27は、この点を説明する図である。図27では、図1に示したBピラー1bとその上部に広がるルーフ61とを示しており、模式的に、アンテナ装置10を各位置に配設した場合の受信パワーを示している。図27中に示した値は受信パワーの相対値であり、0dB=51dBm(Bピラー1bに配設した場合の最大受信パワーを基準とする)である。図27によれば、アンテナ装置10をルーフ61に配置した場合に関して、アンテナ装置10がウィンドウから遠ざかるほど受信パワーが低下すること、すなわち、ルーフ61に沿って伝播する電磁波がルーフ61の作用によって減衰することが分かる。
図28は、Aピラー1aを上述のように高さで3等分し、ピラー上部、ピラー中央部、ピラー下部として、それぞれにアンテナ装置10を配設した場合の受信パワーを示している。なお、図28に示す値は、図27と同じく受信パワーの相対値であり、また、上述したアンテナ装置の配設例1〜3のいずれでも図27に示す値と略同じである。図28に示されているように、ピラー上部、ピラー中央部、ピラー下部のうち、ピラー中央部にアンテナ装置10を配置した場合に、受信パワーが最も強くなる。これは、ピラー中央部には、各ウィンドウから車内に進入した電磁波がルーフ61およびボディ62を構成する金属部材によって減衰されることなく到達し得るためである。
図28において、受信パワーがピラー中央部に続いて強いのは、ピラー下部に配置したアンテナ装置10である。ピラー下部は、ルーフ61から最も離れているため、ピラー下部には、各ウィンドウから車内に侵入した電磁波がルーフ61の作用により減衰されることなく到達し得るためである。ただし、ボディ62(図1)を構成する金属部材による減衰を受けるため、ピラー中央部に配置した場合と比べて受信パワーは低くなる。
更に図29に基づいて、ピラーへの配設位置と受信パワーとの相関について説明する。図29はいずれも紙面上方が自動車60の前方であり、紙面下方が自動車60の後方である。図29は、電磁波の方向による受信電力の差を模式的に示す図であり、図29の(a)が進行方向の左側のAピラーの上部にアンテナ装置10を配置した場合、図29の(b)が同ピラーの中央部にアンテナ装置10を配置した場合、図29の(c)が同ピラーの下部にアンテナ装置10を配置した場合を示す。なお、図29に示す値は、図27および図28と同じく受信パワーの相対値であり、また、上述したアンテナ装置の配設例1〜3のいずれでも図29に示す値と略同じである。
図29の(a)に示すアンテナ装置10の場合、右側後方からの電磁波が大きく減衰して受信パワーが−10dBで示されている。これに対して、図29の(c)に示すアンテナ装置10の場合、同じく右側後方からの電磁波に対する受信パワーは−7dBで示されている。このことからも、ピラー上部よりもピラー下部のほうが電磁波の減衰を抑えることができることがわかる。
さらに、図29の(b)に示すアンテナ装置10の場合、右側後方からの電磁波に対する受信パワーは−5dBとなり、ピラー下部よりも更に電磁波の減衰を抑えることができることがわかる。
以上のことから、アンテナ装置10は、ピラー1a〜1cの下端に対するアンテナ装置10の取り付け位置の高さを、ピラー1a〜1cの下端に対するピラー1a〜1cの上端の高さの2/3以下とすることが好ましい。これにより、アンテナ装置10をルーフ61から離して搭載することができ、よって、受信パワーを上昇させることができる。そして、ルーフ61からもボディ62からも離れており、その近傍も窓があって比較的広く開放しているピラー1a〜1cの中間部(中央部)に配設すれば、電磁波の減衰をより一層抑えることができるため、より好ましい。
なお、本実施形態では、アンテナ装置を、ルーフ61を支持するピラー1a〜1cに配設しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、隣り合うウィンドウの間に在る部材であって、その部材が、ボディからルーフまでの高さを3等分した領域のうちの、当該ボディに近い2つ分の当該領域内、好ましくは中間の1つ分の当該領域に在れば、当該領域にアンテナ装置10を搭載することができる。そのような部材の一例は、図30に示すようなシートベルトの上部固定具40や、図31に示すようなAピラー1aの近傍にある部材41がある。
〔実施形態2〕
本発明に係る他の実施形態について、図32に基づいて説明すれば以下の通りである。尚、本実施形態では、上記実施形態1との相違点について説明するため、説明の便宜上、実施形態1で説明した部材と同一の機能を有する部材には同一の部材番号を付し、その説明を省略する。
上記の実施形態1では、ピラー1a〜1c、もしくは、ピラー近傍に配設されている部材(図30および図31)にアンテナ装置を取り付けている。これに対して、本実施形態では、ウィンドウ周囲に配設されている部材にアンテナ装置を取り付けている。
図32は、本実施形態のアンテナ装置配設位置を示す図である。本実施形態では、リアウィンドウ632の周囲に配設されている部材にアンテナ装置10を取り付けている。
ここで、「ウィンドウの周囲に配設されている部材」は、窓枠を構成している部材に相当する。本実施形態の自動車60は、いわゆるハッチバックタイプの車種であり、後部座席の後方にあるリアウィンドウ632を具備するバックドア68(介在部)が開閉する構造となっている。そして、本実施形態では、図32に示すバックドア68におけるリアウィンドウ632の側方部分(介在部)にアンテナ装置10が配設されている。この側方部分は、Cピラー1cの近傍に在って、Cピラー1cの長さ方向に沿って所定の長さを有して構成されている。また、この側方部分は、アンテナ装置を内部空間に配設できるように、配設領域が中空構造になっている。
本実施形態では、バックドア68の上記側方部分にアンテナ装置10が取り付けられている。具体的には、アンテナ装置の取り付け位置の高さ(側方部分の下端に対するアンテナ装置の取り付け位置の高さ)が、側方部分の下端に対する側方部分の上端の高さの2/3以下である、より好ましくは、2/3以下1/3以上である。
ここで、上記側方部分は、その上端が、ルーフ61との境界部分であり、その下端が、ボディ62との境界部分である。
本実施形態の構成によっても、各ウィンドウから車内に進入した電磁波がルーフ61およびボディ62を構成する金属部材によって減衰されることなく到達し得る。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
〔まとめ〕
本発明に係る移動体は、以上のように、アンテナ装置が搭載された移動体であって、側面に複数の窓が設けられ、互いに隣接する2つの窓の間に介在するように当該移動体のルーフ部から延びる介在部を備えた移動体において、上記アンテナ装置は、2次元面内に配された放射素子であって、該放射素子の一方の端部を含み第1の給電点が設けられる第1の根本部と、該放射素子の他方の端部を含み第2の給電点が設けられる第2の根本部と、上記第1の根本部と上記第2の根本部とを中継するメアンダ形状の中間部とからなる放射素子を備えており、上記アンテナ装置は、上記介在部に取り付けられており、上記介在部の下端に対する上記アンテナ装置の取り付け位置の高さが、上記介在部の下端に対する上記介在部の上端の高さの2/3以下である、ことを特徴としている。
上記アンテナ装置は、上記のように、上記放射素子の第1の根本部に設けられた第1の給電点と、上記放射素子の第2の根本部に設けられた第2の給電点とから給電を受ける。このため、上記アンテナ装置は、ループアンテナとして機能する。したがって、上記アンテナ装置の感度(利得)は、ダイポールアンテナやモノポールアンテナの感度よりも高くなる。更に、上記アンテナ装置においては、上記のように、上記放射素子の中間部がメアンダ化されている。したがって、上記アンテナ装置の指向性は、上記放射素子の中間部がメアンダ化されていない場合よりも弱くなる。すなわち、上記アンテナ装置は、感度が高く、かつ、指向性の弱いアンテナ装置となる。
このため、上記アンテナ装置は、上記介在部に取り付けた場合に、上記移動体の内部から見て当該介在部が存在する方向から到来する電磁波のみならず、上記移動体の内部から見て当該介在部が存在する方向以外の方向から到来し、上記移動体の側面に設けられた窓を介して上記移動体の内部に進入した電磁波をも感度良く受信することができる。
ただし、上記ルーフ部は、一般的に導電性材料を用いて構成されており、且つ、水平方向に広がった構造を有している。このため、上記移動体の側面に設けられた窓を介して上記移動体の内部に入り込み、上記ルーフ部に沿って伝播する電磁波は、上記ルーフ部の作用によって直ちに減衰し、上記移動体の内部に深く進入することはない。このため、上記アンテナ装置であっても、上記介在部へのアンテナ装置の取り付け位置の高さ(介在部の下端に対する高さ)が、介在部の下端に対する介在部の上端の高さの2/3よりも高い場合、すなわち、上記介在部の上記ルーフ部に近い部分に取り付けた場合には、上記移動体の側面に設けられた窓を上記移動体の内部に進入した電磁波を感度良く受信できないことがある。
そこで、本発明では、上記のように、上記介在部の下端に対する上記アンテナ装置の取り付け位置の高さを、上記介在部の下端に対する上記介在部の上端の高さの2/3以下とする。これにより、上記移動体に対してどのような方向から到来する電磁波であろうとも、確実に感度良く受信することができる。このため、ダイバーシティ受信を行う必要がない。
なお、上記2次元面は、平面に限定されず、円筒面、球面、放物面、双曲面のような曲面の一部を切り取った三次元形状を持つ面であってもよい。
また、ルーフ部とは、上記移動体の外殻のうち、上記複数の窓よりも上方にある部分のことを指す。
また本発明に係る移動体の一形態において、上記アンテナ装置は、上記介在部に取り付けられており、上記介在部の下端に対する上記アンテナ装置の取り付け位置の高さが、上記介在部の下端に対する上記介在部の上端の高さの、2/3以下であって、1/3以上である、ことが好ましい。
上記の構成によれば、上記アンテナ装置の取り付け位置の高さが、上記介在部の下端に対する上記介在部の上端の高さの、2/3以下であって、1/3以上である。すなわち、上記アンテナ装置が、介在部の中間部分に取り付けられている。この中間部分は、上記複数の窓よりも上方にあるルーフ部からも、上記複数の窓よりも下方にあるボディ部からも離れている。そのため、上記介在部の上端(上記ルーフ部側の端)を含む部分に上記アンテナ装置を取り付けた場合、または、上記介在部の下端(上記ルーフ部側と反対側の端)を含む部分に上記アンテナ装置を取り付けた場合と比べて、窓を介して上記移動体の内部に進入した電磁波を感度良く受信することができる。
具体的には、上記介在部は、窓枠を構成する部材であることが好ましい。
上記の構成によれば、窓の近傍にアンテナ装置を配設することになるため、電磁波を良好に受信することができる。
しかしながら、これに限定されるものではなく、上記介在部は、上記ルーフを支持するピラーであってもよい。
上記の構成としても、アンテナ装置を窓の近傍に配設することができるため、良好に電磁波を受信することができる。
本発明に係る移動体の一形態において、上記介在部は、導電性材料層が設けられた外装材を有しており、上記アンテナ装置は、上記放射素子を、上記導電性材料層から離間した状態で、上記外装材の表面または裏面に沿うように保持する誘電体である支持部材を更に備えている、ことが好ましい。
上記の構成によれば、上記放射素子が上記外装材の導電性材料層から離間されるので、上記アンテナ装置の特性が上記導電性材料層の作用によって極端に劣化することがない。したがって、移動体の導電性材料層を含む外装材の表面または裏面に対して、高感度かつ無指向性という特性の良い薄型のアンテナ装置を取り付けることができる。すなわち、窓枠やピラーのような狭スペースの場所であっても、アンテナ装置を取り付けて、良好なアンテナ機能を発揮させることができる。
本発明に係る移動体の一形態において、上記介在部は、複数の電線を束ねて構成されたワイヤーハーネスが中空部に配された中空構造体であり、上記放射素子は、上記ワイヤーハーネスの表面に沿って配置され、上記第1の給電点および上記第2の給電点に接続された給電線は、上記複数の電線と束ねられている、ことが好ましい。
上記の構成によれば、ワイヤーハーネスの表面(すなわちワイヤーハーネスにおける長さ方向に沿った表面)に沿った二次元面状の放射素子が具備され、ワイヤーハーネスの表面において放射素子により電磁波の送受信を行うことが可能である。
また、上記放射素子が、ワイヤーハーネスの表面に沿った2次元面内に配されることから、設置するためのスペースは極わずかである。例えば、後述のように放射素子が厚さ1mmの導体だとすれば、ワイヤーハーネスの直径が2mmほど太くなるだけで済む。よって、従来構成のアンテナ装置ならば設置することができなかったような狭スペースでも設置可能である。
なお、「放射素子は、ワイヤーハーネスの表面に沿って配置され」とは、放射素子が、(1)ワイヤーハーネスの表面に取り付けられているという状態のみならず、後述するように、(2)ワイヤーハーネスの表面に直接触れていない状態も含まれる。ここで、この(2)には、更に、ワイヤーハーネスの表面に誘電体が取り付けられていて当該誘電体の外表面に放射素子が設けられている状態、ワイヤーハーネスの表面に沿った誘電体の内面に取り付けられている状態、および、ワイヤーハーネスの表面に沿った誘電体の内部に埋設されている状態が含まれる。
本発明に係る移動体の一形態において、上記介在部は、絶縁材料からなる内装材を有しており、上記放射素子は、上記内装材の表面または裏面に沿って配置されている、ことが好ましい。
上記の構成によれば、上記平板状の放射素子を、上記内装材の表面または裏面に沿わせて配設しているので、設置スペースが狭くて済む。