JP5688411B2 - 歯科用金属粉末製の歯部の製造方法 - Google Patents

Description

本発明は、歯科用金属粉末から製造する歯部の製造方法に関する。本発明の歯部とは、特に、ブリッジ歯型、キャップおよび既製の義歯であると理解される。

技術水準

金属製の歯部の製造には、歯科技術において依然として主に、ワックス溶融法が使用され、かかる溶融法においては、ワックス型を模型上に成形し、かかるワックス型は、流し込む目的物に対応する。ワックス型により、流し込む型の中に孔が形成され、次いで金属を注入する。この方法は、極めてコスト高であり、多大な手作業の技能を必要とする。

この理由から、既に、溶融金属ではなく焼結される金属粉末で製作する方法も提案されている。これらの方法はいずれも、多くの理由から実用において成果を収められていない。

しかしながら、１つの有望な方法が、EP 1 885 278 B1 (WoIz)に開示されている。ここでは、懸濁液の電気泳動により、型上に金属層を堆積させ、ここで、かかる層を、焼成皿上に固定することにより、または２重の型が残留することにより、あるいは埋没材または耐熱粉末で充填したマッフル炉中に挿入することにより、堆積した金属層が焼結により安定化する。

金属製の歯部の製造に加え、歯科市場の約１０％を占める、オールセラミック製の義歯が知られている。一般的な方法は、セラミック製の、特に酸化ジルコニウム製の鎮水圧プレスブロックから、ＣＡＤ／ＣＡＭ技術により歯型を削り出すことである。ここで、患者の歯または模型をスキャンし、スキャンした型に基づいて歯型を削る。この方法により、大型金属ブロックからも歯部を削り出す。この方法の大きな欠点は、とりわけセラミックの切り出しが粉塵とつながり、切削機への高い機械的要求が出されることである。単純な、すなわち、安価な切削機は、したがって短すぎる寿命を有する。資金コストが、平均的な歯科研究室の経済力を頻繁に上回る、コスト高の切削機自体は、許容し得ないメンテナンスコストを要する。これらの理由により、既に多くの歯科研究室において、切削機は使用されないままとなっている。

課題の位置付け

よって、請求項１に記載の発明の課題は、歯科研究室において、金属製の歯部の製作のための前述の切削機を使用できることであり、その質は、歯科の全ての要求を満たす。

態様の例

以下は、ＣｒＣｏ合金製の歯部の製造によって、本発明をより詳細に説明する。しかしながら、本発明は、ＣｒＣｏ合金に限定されず、あらゆる他の非鉄合金および貴金属合金に使用可能である。

本発明において、ＣｒＣｏ歯科用金属粉末のスラリーから出発する。EP 1885 278 B1 (Wolz)において、歯科用金属スラリーの製造が初めて記載されている。改良されたスラリーは、ここで使用される、WOLCERAM CrCo-Schlickerの名称にて商業的に入手可能である。これは、有機化合物および保存剤を少量添加した、９８重量％のＣｒＣｏ粉末および２重量％の水からなる。このスラリーを使用する前に、凝集を防止するため、スラリーの調整が強く推奨される。これに適した装置が、ドイツ国特許文献DE 10 2005 023 737 B4 (WoIz)に開示されている。調製後、９５ｍｍの直径および２０ｍｍの厚さの円形ディスクを製造するために、シリコーンゴム製の型に充填する。スラリーが型内で固化し、乾燥して使用可能なブランク（Rohling）（グリーン体）となる。スラリー中に気泡がないことを確実にするため、さらに６ｂａｒにおいて加圧処理を行い、スラリーから空気を押し出す。続いて、型を乾燥キャビネット中で、６５℃で７時間乾燥しながら、乾燥プロセスが続く。乾燥を、真空下および／または加圧下でも行うことができる。望ましいのは、型の底部を吸水層（例えば、吸い取り紙など）で覆うことであり、これにより、スラリーの表面上だけでなく、底面上でも水を抜くことができる。これにより、生じた含水率における濃度勾配が減少し、非水溶性賦形剤の表面上への放出を防止する。乾燥による結果物は、ブランクの型に対応し、一般的なＣＡＤ／ＣＡＭ−切削機において加工される、ディスク型のグリーン体である。大型ブランク（グリーン体）から、両側から約３０個の歯部が切り出され、これらはブリッジによりまだ結合されている。ブリッジを除去した後、３０個の歯部が残る。金属製のディスクからの切削とは反対に、本発明の方法においては、材料がまだかなり柔らかいため、ブリッジの除去およびブリッジ部位の平滑化をおこなうのは簡単である。

得られたグリーン歯部に、次いで、無酸素焼結を行う。このため、過去の特許出願10 2009 037 737.9(出願日２００９年８月１７日)に開示されているように、それらを焼結炉に入れる。グリーンのＣｏＣｒ歯部の焼結を、１１９０℃で４５分間行う。酸素置換のため、２．５ｌ／分のアルゴンを導入する。焼結により、通常さらに外装することが可能な、ＣｒＣｏ−金属製の金属性光沢のある歯部が得られる。焼結中に生じた収縮は、対応するＣＡＭ／ＣＡＤ−プログラムにより相殺されなければならないことは言うまでもない。

焼結された生成物は、以下の特性を示す。化学的組成は、発光スペクトルにより決定される。Ｃｏ−％ 残り、Ｍｎ−％ ＜１．０、Ｃｒ−％ ２８．０〜３０．０、Ｓｉ−％ ＜１．０、Ｍｏ−％ ５．０〜６．０、Ｆｅ−Ｃ−Ｎｉ 微量 ＜０．５％である。

技術データ：
密度（ｇ／ｃｍ^３） ８．３
平均線熱膨張係数 ２５〜５００℃（１０^−６Ｋ^−１） １４．５
弾性率（ＧＰａ） ２２８．７
０．２％弾性限界（ＭＰａ） ８１７
破断延性（％） ９．７
ビッカース硬さ（ＨＶ５／３０） ３７５
化学的溶解性（μｇ／ｃｍ^２） ＜４

基準：ＩＳＯ ９６９３：１９９９；ＩＳＯ ２２６７４：２００６；ＩＳＯ １０９９３−５：１９９９

切削機には、冷却剤として水を使用して作動するものもあるため、原材料がまだ水溶性であることによる問題が生じ得る。２５０〜４００℃で２〜３時間のブランクの焼き戻しにより、材料は、水の存在下でも難なく切削することができるようになる。次いで、材料は、水溶性環境中で安定する。

Claims (5)

1. 歯科用金属粉末製の歯部の製造方法であって、以下の方法ステップ：
   ａ）歯科用金属粉末のスラリーを提供すること、ｂ）型中にこれらのスラリーを注ぎ込むこと、ｃ）機械的に安定なブランクが生じるまで、注ぎ込んだスラリーから懸濁液液体を除去すること、ｄ）所望の空間形状にブランクを切削すること、ｅ）ブランクから切り出された歯部を無酸素焼結すること、を特徴とする、前記方法。
2. 懸濁液の水が、乾燥により除去されることを特徴とする、請求項１に記載の方法。
3. 吸い取り紙により、懸濁液液体の除去が型の底部で行われること、を特徴とする、請求項１または２に記載の方法。
4. 歯科用金属粉末が、ＣｒＣｏ合金からなること、を特徴とする、請求項１〜３のいずれか一項に記載の方法。
5. ブランクが、２５０〜５００℃で焼き戻されること、を特徴とする、請求項１〜４のいずれか一項に記載の方法。