JP5673176B2 - 消石灰粒子、軽質炭酸カルシウムの製造方法ならびにそれにより得られた軽質炭酸カルシウムを用いた紙および塗被紙 - Google Patents

消石灰粒子、軽質炭酸カルシウムの製造方法ならびにそれにより得られた軽質炭酸カルシウムを用いた紙および塗被紙 Download PDF

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Description

本発明は、平滑性、光沢発現性が高い製紙用の填料、顔料として使用するに適した軽質炭酸カルシウムの製造方法およびその原料となる消石灰に関する。
近年、印刷物のビジュアル化やカラー化が進み、印刷用紙は、高白色で印刷面感が良好なことが求められている。一方で、コスト削減のため印刷用紙の軽量化が進められている。用紙の軽量化は不透明度を低下させるので、その対策要望が多く、白色度、平滑度、光沢度、面感、不透明度等の改善要求に応える必要に迫られている。その一つの手段として、填料、顔料としての高品質の軽質炭酸カルシウムの開発が行われている。
軽質炭酸カルシウムの製造方法としては、消石灰スラリーに炭酸ガスを吹き込んで反応させる「液−ガス」法および炭酸ナトリウムなどを用いる「液−液」法がある。原料の品質が優れるわが国においては、前者の「液−ガス」法が工業的に広く採用されている。
軽質炭酸カルシウムは数種の結晶構造を持ち、その形状によって紙の品質特性上、様々な特徴を有する。特に、アラゴナイト系炭酸カルシウムを塗被した紙は、高光沢で高不透明度、インキ着肉性およびインキセット性に優れ、剛性および強度も向上する特徴があるため、以下に示すように従来から様々な方法によるアラゴナイト系炭酸カルシウムの製造方法の研究開発が進められてきた。
特許文献1には、炭酸化工程で炭酸ガス量を各段階で調整するアラゴナイト系柱状炭酸カルシウムの製造方法が提案されており、特許文献2には、炭酸化の段階で加温するアラゴナイト系針状炭酸カルシウムの製法が提案されている。
特許文献3には、消石灰スラリーに針状軽質炭酸カルシウムを種結晶として用い、このスラリーに炭酸ガスを導入し炭酸化反応によって該種結晶を所望の粒径まで成長させることを特徴とするアラゴナイト系柱状炭酸カルシウムの製造方法が提案されている。
特許文献4には、アラゴナイト系針状炭酸カルシウムを消石灰スラリーに添加し、0.25kW/m以上の攪拌動力で撹拌しながら炭酸化反応を行うアラゴナイト系針状炭酸カルシウムの製造方法が提案されている。
さらに、種々の添加物を用いるアラゴナイト系炭酸カルシウムの製造方法が提案されている。特許文献5には、リン酸化合物を添加するアラゴナイト結晶形炭酸カルシウムの製造方法が提案されており、特許文献6には、硫酸化合物を添加し紡錘形炭酸カルシウムを得る製紙用炭酸カルシウムの製造方法が提案されている。
また、特許文献7には、アルカリ性水溶液で調製した消石灰スラリーを用いるアラゴナイト結晶形炭酸カルシウムの製造方法が提案されており、特許文献8には、マグネシウムイオンを含む水で調製した消石灰スラリーを用いるアラゴナイト型炭酸カルシウムの製造方法が提案されている。
細粒の消石灰を用いることを特徴とするアラゴナイト系炭酸カルシウムの製造方法が提案されており、特許文献9には、高温状態で消和することで得られた細粒の消石灰粒子を用いるアラゴナイト結晶形炭酸カルシウムの製造方法が提案されている。また、特許文献10には、消石灰スラリーを高速せん断攪拌することにより細かくした消石灰粒子を用いるアラゴナイト系柱状炭酸カルシウムの製造方法が提案されており、特許文献11には、45μm以下の微細消石灰粒子を用いる針状炭酸カルシウムの製造方法が提案されている。
特公昭55−51852号公報 特開昭63−30316号公報 特公平01−34930号公報 特開2000−272919号公報 特開昭63−256514号公報 特開平01−18911号公報 特開2001−270713号公報 特開2001−354416号公報 特開平01−261225号公報 特開平04−295010号公報 特開2005−139012号公報
特許文献1および特許文献2の方法は、各生成条件を厳密に規定する必要があり、かつ合成条件が比較的狭い範囲に限られるという問題がある。また、特許文献3の方法は、操作が複雑であり、生産性が低下する問題がある。特許文献4の方法は、生産性の問題は改善されるものの粒径のバラツキが生じ、品質が不安定であるなどの問題がある。
特許文献5および特許文献6の方法は、種々の高価な添加物を要するためコスト高となる上に、濾水を循環利用する場合、反応系内の添加物の濃度調整が困難であるなどの問題がある。また、特許文献7および8の方法も濾水を循環利用する場合、添加物水溶液の濃度調整が困難であるといった問題がある。
特許文献9、特許文献10および特許文献11の方法は、消石灰スラリーに導入する炭酸ガス量を制御しているため、反応時間が長くなり、生産性が低いといった問題がある。
本発明は、従来技術では困難とされていた微細で粒径の揃った高品質の軽質炭酸カルシウムを簡便かつ効率的に得ることを目的とする。
軽質炭酸カルシウムは、通常、水に生石灰を加えて調製した消石灰スラリーに、炭酸ガスを吹き込む炭酸ガス化合法により工業的に生産されている。しかし、本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、所望の性状を備えた軽質炭酸カルシウムを得るには、消石灰粒子の形状が重要な技術要素であることを見出した。
本発明は、このような知見に基づいてなされたものであり、下記(1)〜(4)の消石灰粒子およびそれを原料とる軽質炭酸カルシウムの製造方法、さらには該製造方法により得られた軽質炭酸カルシウムを用いた紙および塗被紙を要旨とする。
(1)軽質炭酸カルシウムの原料として用いられる消石灰粒子であって、体積粒度分布における粒径が1.0μm以下の粒子の累積体積が3.2%以下、かつ100μm以下の粒子の累積体積が95%以上であることを特徴とする消石灰粒子。
(2)軽質炭酸カルシウムの製造方法であって、前記(1)に記載の消石灰粒子をスラリー化し、20〜70℃の該消石灰スラリーに二酸化炭素含有ガスを吹き込んで炭酸化することにより軽質炭酸カルシウムを製造することを特徴とする軽質炭酸カルシウムの製造方法
(3)前記(2)に記載の製造方法で得られた軽質炭酸カルシウムを填料として用いた紙。
(4)前記(2)に記載の製造方法で得られた軽質炭酸カルシウムを顔料として用いた塗被紙。
本発明の消石灰粒子を原料として用いることで、微細で粒径が均一な軽質炭酸カルシウムが得られ、その軽質炭酸カルシウムを、内添用の填料あるいは塗工用の顔料として用いることによって、表面平滑性、不透明度および印刷品質に優れた紙を得ることができる。
高品質の軽質炭酸カルシウムを得るためには、原料となる消石灰粒子の形状、とりわけ粒径を厳密に管理することが重要となる。このため本発明者らは、レーザー回折法により消石灰粒子の体積粒度分布を測定することとした。体積粒度分布における粒径が1.0μm以下の微細な消石灰粒子の累積体積が20%を超えると、それを原料として用いた時に紡錘状の軽質炭酸カルシウムが生成される。この生成物である炭酸カルシウムには、粗粒の粒子が混在し、粒径も不均一であるため、填料ないし顔料に用いた場合には品質が劣る。従って、粒径が1.0μm以下の消石灰粒子の累積体積は20%以下とする。1.0μm以下の消石灰粒子の累積体積は、15%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。
一方、粒径が100μmを超える粗粒の粒子が多量に含む消石灰を原料として炭酸化反応を行うと、生成物は未反応の消石灰粒子を核としてその表面に針状軽質炭酸カルシウムが生成される毬栗状の構造を呈するようになるため、填料ないし顔料に用いた場合には品質が劣る。従って、生成される軽質炭酸カルシウムの品質を向上させるためには、粒径が100μmを超える消石灰粒子の累積体積は5%を超えないようにする。すなわち、粒径が100μm以下の粒子の累積体積は95%以上とする。
このように、消石灰粒子の粒度分布をシャープにすることで、炭酸化反応が均一に進行し、生成される軽質炭酸カルシウムの粒径をより均一にすることができる。さらに、消石灰粒子の平均粒径としては、2〜50μmであることが好ましい。より好ましい消石灰粒子の平均粒径の上限値は35μmである。
消石灰の製造方法としては、生石灰すなわち酸化カルシウムに理論水和量の2倍前後の水を加えて水和を行う乾式消和法、および理論水和量を大きく超える量の水の存在下で水和を行う湿式消和法の2種類が挙げられる。本発明においてはいずれの方法を用いても良いが、湿式消和法では消石灰粒子の粒径が不均一になるとともに、微細な粒子が多く形成されるため、乾式消和法を用いる方が好ましい。
消石灰粒子は、消和方法だけでなく、石灰石の焼成条件(例えば、焼成温度、焼成時間、生石灰の粒度分布など)、生石灰の消和条件(例えば、使用する消和水質、消和温度、消和時間、消和時の攪拌条件など)などの諸条件を適宜設定することで調整が可能である。また、消石灰粒子を所望の粒径に調整する方法としては、乾式消和および湿式消和で生成した消石灰を篩分けにより粗粒粒子を除去する方法、遠心分離などで微細粒子を分離する方法などがある。
消石灰粒子の原料である生石灰中の二酸化炭素含有率が低い方が、針状の軽質炭酸カルシウムが得られやすい。そのため、本発明で使用する生石灰は、JIS R9011:2006に準じて測定された二酸化炭素含有率が1.5%以下であることが好ましい。より好ましくは1.0%以下である。
炭酸化に供する消石灰スラリーの固形分濃度は、5質量%未満とすると、生産効率が低下し、40質量%を超えると微細な軽質炭酸カルシウムが生成されて、粘度も上昇して、操業性が劣る。従って、消石灰スラリーの固形分濃度は5〜40質量%であることが好ましい。消石灰スラリーの固形分濃度のより好ましい下限は8質量%であり、より好ましい上限は20質量%である。
また、炭酸化開始時の消石灰スラリー温度は、生成物である軽質炭酸カルシウムの結晶形状に影響を及ぼすため、調整する必要がある。炭酸化開始温度が20℃未満であると、炭酸ガスまたは炭酸ガス含有ガスを吹き込んだ際、微細な針状結晶が凝集したものになり、一方、70℃を超えると針状と紡錘状のものが混在して、均一な粒径の炭酸カルシウム粒子が形成されず、品質が発現しないおそれがある。従って、炭酸化開始温度は20〜70℃であることが望ましく、30〜70℃であることがより望ましい。
炭酸ガスまたは炭酸ガス含有ガスの吹き込み量は、特に制限はないが、生産性の点から、反応開始前の消石灰1kg当たり100%炭酸ガス(1気圧、20℃換算)を2l/分以上とすることが好ましく、3l/分以上とすることがより好ましく、5l/分以上とすることが最も好ましい。
炭酸化反応は、バッチ式または連続式のいずれでもよく、炭酸化反応槽も炭酸ガスを吹き込むことが出来るものであればよい。また、反応槽に攪拌機を備えて、攪拌しながら炭酸化を行うことにより、炭酸ガスが微細になり、スラリー中の消石灰粒子との接触が良くなることにより、反応が均一かつ効率的に行われる。
炭酸化反応前の消石灰スラリーに種晶を添加してもよい。種晶としてアラゴナイト系針状軽質炭酸カルシウムを予め添加しておくことで、類似の針状結晶が効率よく生成される。種晶の添加率は、水酸化カルシウム:アラゴナイト系針状軽質炭酸カルシウム=99.7:0.3〜95:5となるようにするのが好ましい。
炭酸化反応の炭酸ガス含有ガスの好適なものとしては、二酸化炭素を含有する混合ガス、例えば、石灰石焼成排ガス、パルプ製造プラントの石灰焼成排ガス、セメント製造キルン排ガス、発電ボイラー排ガス、ゴミ焼却排ガスなどが挙げられる。炭酸ガス含有ガスとして上記排ガスを用いる場合、排ガス中の石灰石、石灰、硫黄酸化物、未燃カーボン等のダストをバグフィルター、電気集塵機、乾式スクラバー、湿式スクラバーもしくはこれらの組合せを用いることによって排ガスを浄化することが好ましい。
このようにして得られた炭酸カルシウムスラリーにおいて、炭酸化処理によって生じた微細な軽質炭酸カルシウムの1次粒子が凝集して、2次粒子が形成される。この炭酸カルシウムスラリーは、製紙用填料として適度な粒径であるため、そのまま用いることができる。製紙用填料として用いる場合、炭酸カルシウムスラリーの平均粒径が1.5μm未満は、歩留り低下、強度低下などを起すおそれがあり、一方、15μmを超えると不透明度の悪化や粉落ちなどの印刷トラブルを引き起こすおそれがある。従って、平均粒径は1.5〜15μmであることが好ましい。より好ましくは2〜10μmである。
炭酸カルシウムスラリーを塗工用顔料として用いる場合、脱水して脱水組成物とする脱水工程と、該脱水工程により得られる脱水組成物に水分を加えてスラリー状の分散組成物とする分散工程と、所望の粒径に調整する粉砕工程を備えてもよい。
脱水工程は、濾過、遠心分離、加圧脱水、圧搾などの操作により、固形分濃度70%程度まで脱水を行うことができる。好適な脱水装置としては、フィルタープレス、ベルトプレスなどがある。脱水工程後の脱水ケーキの固形分濃度が低い場合は、乾燥工程を付加して所望の固形分濃度まで上げることができる。乾燥機としては、ロータリードライヤー、ディスクドライヤー気流乾燥機、流動乾燥機などがある。また、脱水工程と乾燥工程が一体となった乾燥機能付きフィルタープレスを用いることもできる。
分散工程は、脱水工程により得られる脱水組成物に水分を加えてスラリー状の分散組成物とするものであればよい。分散工程時に水分以外に、分散剤を添加することで、軽質炭酸カルシウムを良好に分散することができ、製紙用材料としての品質が向上すると共に、取り扱いも容易になるので好ましい。分散剤としては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム等の合成高分子系の分散剤など、一般的な分散剤を使用することができる。
分散工程で使用される分散機としては、コーレスミキサ、攪拌式ディスパーサーまたは混合容器を自転させ、アジテータのような攪拌工具を別駆動で回転させる構成の高せん断分散機、例えば、日本アイリッヒ(株)製のインテンシブミキサなどが挙げられる。高せん断分散機を用いることで、高濃度かつ粘度の低い分散スラリーを調製することができるので好ましい。
本発明において、軽質炭酸カルシウムの粒径を微細化するために、粉砕処理工程を分散工程後に備えても良い。粉砕工程に用いる粉砕機としては、サンドミル、ビーズミル、湿式ボールミル、振動ミル、攪拌槽型ミル、流通管型ミル、コボールミルなどの湿式粉砕機を使用することができる。また、粉砕処理は炭酸化処理工程において、二酸化炭素を吹き込みながら行ってもよい。
軽質炭酸カルシウムの粒径を微細化することによって、紙に仕上げた際に不透明度、白色度、光沢度、平滑度および印刷適性が極めて優れたものが得られる。本発明の軽質炭酸カルシウムの粒度分布は、レーザー回折法により測定される。平均粒径が0.7μmを超えると平滑度、光沢度が低下し、印刷適性が劣る。従って、平均粒径は、0.7μm以下とするのが好ましく、0.6μm以下とするのがより好ましい。他方、平均粒径が0.1μm未満とするためには過大なエネルギーを要し、紙での品質向上効果も小さく、印刷適性、特に強度が低下する難点が生じる。従って、平均粒径は、0.1μm以上とするのが好ましく、0.2μm以上とするのがより好ましい。また、累積体積95%の粒径(以下、D95)も重要な要素となり得る。粗粒の粒子が多量に混在し、D95が3.0μmを超えると平滑度や光沢度が低下し、塗工層強度も低下する。従って、D95が3.0μm以下であることが好ましい。D95は2.5μm以下であることがより好ましい。
なお、軽質炭酸カルシウムを上記所望の粒径とするために脱水工程後に分散工程および粉砕工程を設けることが好ましいが、分散処理後の平均粒子が所望の平均粒径の範囲にある場合、粉砕を行わずに、そのまま塗工用顔料として使用してもよい。
また、分散工程において、軽質炭酸カルシウムの脱水組成物を重質炭酸カルシウムスラリーに混合して、混合スラリーとして湿式粉砕機で粉砕することで、高濃度なスラリーを調製することも可能である。なお、軽質炭酸カルシウムと重質炭酸カルシウムの比率は、塗被紙の白紙品質などに応じて、適宜調整することが可能である。
本発明による軽質炭酸カルシウムは、以下のような用途に用いることができる。
一般的に紙を製造する工程には、例えば、パルプを製造する工程、パルプを混合、叩解し、填料等の薬品を添加する調成工程、紙を抄いて乾燥させる抄紙工程、紙の表面に顔料等を塗工する塗工工程、そして仕上げ加工工程がある。本発明の軽質炭酸カルシウムは、上記調成工程における填料または上記塗工工程における顔料として用いることができる。
(1)填料としての用途
本発明で得られた軽質炭酸カルシウムは、一般的に使用されている填料、例えば、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、石膏、タルク、カオリン、クレー、焼成カオリン、ホワイトカーボン、非晶質シリカ、デラミネートカオリン、ケイソウ土、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛等の無機系填料や尿素ホルマリン樹脂微粒子、微小中空粒子等の有機系填料等と混合して使用することもできる。填料は2種以上の混合使用も可能である。混合比率は紙の品質に応じて調整することが可能であり、特に限定はない。填料の配合量は、一般に、紙(原紙)灰分が3〜20質量%の範囲となるように添加される。
パルプとしては、例えば、一般に使用されているLBKPやNBKP等の漂白化学パルプ、砕木パルプ(GP)、加圧式砕木パルプ(PGW)、リファイナ砕木パルプ(RGP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)等の機械パルプ、脱墨古紙パルプ(DIP)、損紙などが適宜混合使用される。また、ケナフ等の非木材繊維原料から得られるパルプ繊維、合成パルプ、無機繊維等の1種以上を原紙に配合することもできる。機械パルプやDIPは、必要に応じて漂白して使用することもでき、漂白の程度も任意に行うことができる。なお、パルプの漂白には、塩素ガスのような分子状塩素や二酸化塩素のような塩素化合物を使用しない漂白工程を採用することが、環境保全の観点から好ましく、このような漂白工程を経たパルプとしては、ECF(Elemental Chlorine Free)パルプやTCF(Totally Chlorine Free)パルプを挙げることができる。
また、紙中にはパルプや填料の他に、内添サイズ剤、アニオン性、ノニオン性、カチオン性もしくは両性の歩留り向上剤、濾水性向上剤、紙力増強剤等で例示される各種の抄紙用内添助剤を、必要に応じて添加することができる。内添サイズ剤の具体例としては、アルキルケテンダイマー系、アルケニル無水コハク酸系、スチレン−アクリル系、高級脂肪酸系、石油樹脂系サイズ剤、ロジン系サイズ剤等が挙げられる。また、歩留り向上剤、濾水性向上剤、紙力増強剤の具体例としては、アルミニウム等の多価金属化合物(具体的には、硫酸バンド、塩化アルミニウム、アルミン酸ソーダ、塩基性アルミニウム化合物等)、各種澱粉類、ポリアクリルアミド、尿素樹脂、ポリアミド・ポリアミン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリアミン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド等が挙げられる。
紙の抄造条件は特に限定はなく、抄紙機としては、例えば、長網式抄紙機、ギャップフォーマー型抄紙機、円網式抄紙機、短網式抄紙機等の商業規模の抄紙機が、目的に応じて適宜選択して使用できる。抄紙方式としては、酸性抄紙、中性抄紙、弱アルカリ性抄紙等のいずれの方式も使用することができる。紙上に各種サイズプレス機およびロールコーターなどで澱粉等の天然接着剤やポリビニルアルコール等の合成接着剤を用いてサイズ処理を行なうことも可能である。
本発明で得られた軽質炭酸カルシウムを填料として使用した紙は、不透明度、平滑性を付与することができ、従来の填料を内添した紙であれば特に限定はないが、紙の種類としては、包装用紙、紙容器、インクジェット用紙、PPC用紙などの記録用紙、新聞用紙、上質紙、中質紙、各種塗工用原紙、壁紙、繊維板、写真用原紙、含浸用原紙、難燃紙などが挙げられる。
本発明の軽質炭酸カルシウムを填料として内添した紙の坪量については、特に限定はないが、所望する効果が発揮されるのは、30〜500g/m程度の範囲である。なお、本発明の軽質炭酸カルシウムはこの範囲を超えた板紙、カード等の厚紙にも添加できる。
(2)塗工用顔料としての用途
原紙の少なくとも片面に、本発明で得られた軽質炭酸カルシウムを含有する顔料と接着剤を主成分とする塗被層を1層以上形成させることで製造することができる。本発明で得られた軽質炭酸カルシウムは、顔料として用いた場合、平滑性、光沢発現性、不透明度、インキセット性に優れた性質をもっており、これら効果を発現させるために、塗被層中の全顔料の5質量%以上含有させるのが好ましい。本方法で得られた軽質炭酸カルシウムを含有した塗被層を原紙と接触させることで、平滑性、インキセット性の向上効果をより一層発現させることができる。また、従来の軽質炭酸カルシウムより光沢発現性に優れるため、最外塗被層中に配合されているカオリン配合量の削減が可能となる。
本発明において、塗被層中に含有する本方法で得られた軽質炭酸カルシウム以外の顔料としては、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、シリカ、アルミナ珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、ベントナイト、ゼオライト、セリサイト、スクメタイト等の無機顔料や、密実型、中空型、貫通孔型のプラスチックピグメント、バインダーピグメント等の有機顔料等、通常の塗被紙分野に使用される顔料を使用することが可能であり、これらの中から1種以上を適宜選択して使用できる。
以上のような顔料を含む塗被層の接着剤成分には、通常は分散型接着剤を使用する。分散型接着剤としては、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体などの共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル系重合体ラテックス、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのビニル系重合体ラテックスなどが例示できる。
上記の分散型接着剤と共に少量の水溶性接着剤を併用することができる。水溶性接着剤としては、酸化澱粉、エステル化澱粉、冷水可溶性澱粉などの各種澱粉類、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白などの蛋白質類、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロースなどのセルロース誘導体、ポリビニルアルコールやその変性品などが例示できる。
本発明の塗被紙の塗被層には、必要に応じて、青系統あるいは紫系統の染料や有色顔料、蛍光増白染料、増粘剤、保水剤、酸化防止剤、老化防止剤、導電誘導剤、消泡剤、紫外線吸収剤、分散剤、pH調整剤、離型剤、耐水化剤、撥水剤等の各種助剤を適宜配合することができる。
原紙上に設ける塗被層は、1層または2層以上の多層にするかは特に限定はない。多層の場合、全てが同一である必要はなく、要求される品質レベルに応じて適宜調整することが可能である。また、塗被層の塗被量も、特に限定されるものではなく、塗被紙の白紙品質、印刷品質などに応じて調整することが可能であるが、一般的には、片面あたり5〜40g/m程度である。
本発明における塗被層を設ける際の塗工方式については、通常の塗被紙製造分野で使用されている各種の塗工装置、例えばエアーナイフコーター、各種のブレードコーター、ゲートロールコーター、ロールコーター、ダイコーター、カーテンコーター等を適宜使用することができる。
このようにして得られた塗被紙は、各種公知公用の仕上げ装置、例えばスーパーカレンダ、グロスカレンダ、ソフトカレンダ、マットカレンダ等に通紙して製品仕上げを施してもよい。
また、本発明の軽質炭酸カルシウムを填料として使用した原紙と、本発明の軽質炭酸カルシウムを原料とする無機粒子を含有する塗被層とを組み合わせて、塗被紙としてもよい。
以下に、具体例を挙げて本発明を説明するが、それらに限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に断らない限り、「部」および「%」は、それぞれ「質量部」および「質量%」を意味する。
1.軽質炭酸カルシウムの作製
下記の本発明例1、4および6、比較例1、2ならびに参考例1〜4の要領において、軽質炭酸カルシウムを作製し、評価を行った。
(本発明例1)
本発明例1では、工業用生石灰(CO含有率0.3%)1kgあたり、消和水として30℃の水を0.5kg添加して、ニーダーを用いて30分間消化した。得られた消石灰を440メッシュ(32μm)の篩で分級した後、40℃の水と混合させて、12%の消石灰スラリー10kgを調製した。次に、攪拌周速5.0m/s、炭酸ガス(ガス濃度100%)を12l/分の流量で、pHが7〜8となるまで炭酸化させ、軽質炭酸カルシウムを得た。
参考例1
参考例1では、本発明例1において、消和水を0.8kgとした以外は、本発明例1と同様にして軽質炭酸カルシウムを得た。
参考例2
参考例2では、本発明例1において、消化後分級せず得られた12%の消石灰スラリーを、解砕メディアである直径1.0〜1.4mmのガラスビーズを充填してサンドグラインダーで湿式粉砕処理を10分間行った以外は、本発明例1と同様にして軽質炭酸カルシウムを得た。
(本発明例4)
本発明例4では、本発明例1において、得られた消石灰を100メッシュ(150μm)の篩で分級した以外は、本発明例1と同様にして軽質炭酸カルシウムを得た。
参考例3
参考例3では、本発明例4において、工業用生石灰(CO含有率2.1%)とした以外は、本発明例4と同様にして軽質炭酸カルシウムを得た。
(本発明例6)
本発明例6では、本発明例1において、消石灰スラリーに種結晶として針状軽質炭酸カルシウム(商品名:TP123CS、奥多摩工業社製)を固形分換算で消石灰:針状軽質炭酸カルシウム=99:1となる比率で添加した以外は、本発明例1と同様にして軽質炭酸カルシウムを得た。
参考例4
参考例4では、工業用生石灰(CO含有率0.3%)1kgあたり、消和水として60℃の水を9kg添加して、ニーダーを用いて120分間消化した。得られた消石灰を330メッシュ(45μm)の篩で分級した後、遠心分離機を用いて、微粒スラリーと粗粒スラリーに分離した。分離した粗粒消石灰スラリーを40℃まで冷却し、12%の消石灰スラリー10kgを調製した。次に、消石灰スラリーに種結晶として針状軽質炭酸カルシウム(商品名:TP123CS、奥多摩工業社製)を固形分換算で消石灰:針状軽質炭酸カルシウム=99:1となる比率で添加した。攪拌周速5.0m/s、炭酸ガス(ガス濃度100%)を12l/minの流量でpH=7〜8となるまで炭酸化させ、軽質炭酸カルシウムを得た。
(比較例1)
比較例1では、本発明例1において、得られた消石灰を分級せずに炭酸化した以外は、本発明例1と同様にして軽質炭酸カルシウムを得た。
(比較例2)
比較例2では、参考例2において、消和水として60℃の水を9kg添加し、120分間消化した以外は、参考例2と同様にして軽質炭酸カルシウムを得た。
上記の本発明例および比較例で得られた軽質炭酸カルシウムを下記の粉砕処理を行った後、顔料評価紙を作製した。
(顔料評価用炭酸カルシウムの粉砕処理)
前記本発明例および比較例で得られた炭酸カルシウムスラリーをフィルタープレス・ドライヤーロールフィット(株式会社宇野澤組鐵工所製)により脱水・操作操作を行い、固形分濃度73%のケーキを得た。次いで、インテンシブミキサを用いて炭酸カルシウムに対し1.0%ポリアクリル酸ソーダ分散剤(商品名:アロンT−50、東亜合成社製)を加えて分散し、炭酸カルシウムスラリーを調製した。さらに、上記炭酸カルシウムスラリーを、解砕メディアとして直径1.0〜1.4mmのガラスビーズを用いてサンドグラインダーで湿式粉砕処理を50分間行い、固形分濃度71%の顔料評価用炭酸カルシウムスラリーを調製した。
(顔料評価紙の作製)
上記の方法により調製された炭酸カルシウムスラリーに対して、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(商品名:T2628G、JSR社製)6部(固形分)、予め糊化した酸化澱粉(商品名:王子エースB、王子コーンスターチ社製)3部(固形分)を添加して混合攪拌し、塗料を調製した。そして、得られた塗料を米坪70g/mの上質原紙に、片面当り乾燥重量で12g/mとなるように手塗りブレードコーターを使用して両面に塗被を行い、乾燥後、40℃のスーパーカレンダに2回通紙処理して顔料評価紙を得た。
上記本発明例比較例および参考例で得られた消石灰、炭酸化後、粉砕後に得られた軽質炭酸カルシウムおよび顔料評価紙について、下記の評価を行い、その結果を表1に示した。
(粒径測定)
レーザー回折法(日機装社製マイクロトラックHRAX−100)による粒度分布を測定した。消石灰粒子においては、1μm以下および100μm以下の累積体積、ならびに平均粒径を求めた。また、炭酸化後の炭酸カルシウムスラリーにおいては、平均粒径を求めた。粉砕により微細化された軽質炭酸カルシウムにおいては、平均粒径および累積体積が95%に相当する粒径をD95として求めた。なお、累積体積50%に相当する粒径を平均粒径とした。
(白紙光沢度)
JIS P8142に準拠して、75度における白紙面の光沢度を測定した。
(印刷強度)
RI印刷試験機(明製作所製)で、印刷インキ(商品名:紙試験用SD50紅、東洋インキ社製)を、0.6ml使用して印刷を行い、印刷面のピッキングの程度を目視評価した。
○:ピッキングが全く発生せず、良好。
△:ピッキングが少し発生し、やや劣る。実用上は許容レベル。
×:ピッキングが多く発生し、劣る。
Figure 0005673176
表1より、請求項1に規定の範囲内にある本発明例1、4および6、ならびに参考例1〜4によって得られた軽質炭酸カルシウムは、顔料評価紙の品質において白色光沢度および表面強度ともに良好な結果を示した。
特に、乾式消和法により生成した消石灰粒子を細粒の篩によって分級した後に炭酸化を行った本発明例1、および本発明例1の炭酸化の際に種晶を用いた本発明例6では、微細な針状の炭酸カルシウムが得られ、顔料評価紙品質においても良好な結果が得られた。
また、本発明例1の分級を比較的粗粒の篩によって行った本発明例4では、わずかに粗粒の消石灰粒子が混在するものの、微細な針状の炭酸カルシウムが得られ、顔料評価紙品質において、本発明例1および6に次いで良好な結果が得られた。
本発明例1の消和水をわずかに増やした参考例1、分級を行わずに消石灰粒子の粉砕を行った参考例2、および湿式消和法により生成した消石灰粒子を篩および遠心分離を用いて分級した参考例4では、微細な消石灰粒子が比較的多く生成されるため、一部紡錘状の炭酸カルシウムが生じた。顔料評価紙品質において、本発明例1、4および6と比較してわずかに劣るものの、下記の比較例1および2よりは優れていた。
参考例3では、消石灰粒子の原料として二酸化炭素含有率の高い生石灰を用いたため、一部紡錘状の炭酸カルシウムが生じた。参考例1、2および4と同様に品質がわずかに劣るものの、下記の比較例1および2よりは優れていた。
一方、比較例1では、本発明例1の分級を行わず、粗粒の消石灰粒子が本発明の規定を超える量含まれるため、炭酸カルシウムが一部毬栗状を呈し、顔料評価紙品質の結果が著しく悪化した。
また、比較例2では、湿式消和法により生成した消石灰粒子を破砕のみ行い、分級しなかったため細粒の消石灰粒子が本発明の規定を超える量含まれ、炭酸カルシウムが紡錘状を呈し、顔料評価紙品質の結果が悪化した。
2.填料として使用した上質紙の作製
上記の本発明例および比較例で得られた軽質炭酸カルシウムを粉砕処理した後、填料として使用して、上質紙を作製した。
(本発明例8)
本発明例8では、広葉樹パルプ(LBKP濾水度450ml)のスラリー(濃度2.5%)に、本発明例1の軽質炭酸カルシウムをパルプ絶乾重量当たり15部、カチオン化澱粉(商品名:エースK100、王子コーンスターチ社製)0.8部、硫酸バンド0.5部、アルキルケテンダイマー(商品名:K−287、荒川化学工業社製)0.1部をそれぞれ添加し、固形分濃度0.5%の紙料を調製した。調製した紙料をオントップのツインワイヤー抄紙機で抄紙、乾燥し、続いて、ゲートロールコーターで酸化澱粉の塗布量が乾燥重量で両面合計1.5g/mとなるように塗布、乾燥後、3ニップのマシンカレンダに通紙して、米坪70g/mの上質紙を得た。
参考例5
参考例5では、填料の軽質炭酸カルシウムを参考例1の軽質炭酸カルシウムとした以外は、本発明例8と同様にして上質紙を得た。
参考例6
参考例6では、填料の軽質炭酸カルシウムを参考例2の軽質炭酸カルシウムとした以外は、本発明例8と同様にして上質紙を得た。
(比較例3)
比較例3では、填料の軽質炭酸カルシウムを比較例1の軽質炭酸カルシウムとした以外は、本発明例8と同様にして上質紙を得た。
(比較例4)
比較例4では、填料の軽質炭酸カルシウムを比較例2の軽質炭酸カルシウムとした以外は、本発明例8と同様にして上質紙を得た。
上記で得た上質紙の品質を、下記の項目の評価を行い、結果を表2に示した。評価は、特に記載ない限り、23℃、50RH%の環境下で行った。
(PPS平滑度の測定)
パーカープリントサーフ(PPS)表面平滑度試験機(機種名:MODEL M−569型、MESSMER BUCHEL社製、英国)を用い、バッキングディスク:ソフトラバー、クランプ圧力:0.98MPaで5回平滑度測定を行ない、その平均を求めた。
(層間強度の測定)
インターナルボンドテスタを使用し、JAPAN TAPPI No.18−2に準拠して測定した。
Figure 0005673176
表2より、本発明の軽質炭酸カルシウムを填料として用いた本発明例8ならびに参考例5および6の上質紙は、比較例3および4で得られた上質紙と比較して、平滑度および層間強度において優れる結果となった。
さらに詳細を見ると、上記で評価した炭酸カルシウムの品質が優れる程、それを填料として用いた上質紙の品質が優れる傾向が明瞭に認められる。
3.顔料として使用した塗被紙の作製
上記本発明例および比較例で得られた軽質炭酸カルシウムを粉砕処理した後、顔料として配合して、下記の要領において塗被紙を作製した。
(i)2層両面塗被紙の作製
(本発明例11)
本発明例11では、以下に示す通りに下塗り塗被液および上塗り塗被液の調製を行った。
平均粒径1.3μmの重質炭酸カルシウム(商品名:ハイドロカーブK−9、備北粉化工業社製)100質量%からなる顔料スラリーに、顔料100部に対して、酸化澱粉(商品名:エースB、前出)4部、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(商品名:T2628G、前出)6部(いずれも固形分換算)、さらに、助剤として消泡剤及び染料を添加し、最終的に固形分濃度62%の下塗り塗被液を調製した。
本発明例6の粉砕処理で得た軽質炭酸カルシウム75%、平均粒径1.3μmの重質炭酸カルシウム(商品名:ハイドロカーブK−9、前出)25%からなる顔料スラリーに、顔料100部に対して、酸化澱粉(商品名:エースB、前出)2部、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(商品名:T2628G、前出)10部(いずれも固形分換算)、さらに、助剤として消泡剤及び染料を添加し、最終的に固形分濃度65%の上塗り塗被液を調製した。
(比較例5)
比較例5では、本発明例11の上塗り塗被液の顔料を、比較例2の粉砕処理で得た軽質炭酸カルシウム75%、平均粒径1.3μmの重質炭酸カルシウム(商品名:ハイドロカーブK−9、前出)25%とした以外は、本発明例11と同様にして塗被液を調製した。
(比較例6)
比較例6では、本発明例11の上塗り塗被液の顔料を、微粒カオリン(商品名:ミラグロスJ、BASF社製)50%、平均粒径1.3μmの重質炭酸カルシウム(商品名:ハイドロカーブK−9、前出)50%とした以外は、本発明例11と同様にして塗被液を調製した。
(塗被紙の作製)
上記の本発明例および比較例で得られた塗被液を用いて塗被紙を作製した。
米坪70.0g/mの上質原紙(緊度0.75g/cm)に、下塗り塗被液を片面当たりの乾燥重量が7g/mとなるようにブレードコーターを使用して両面塗被、乾燥を行い、下塗り塗被層を設けた。次いで、上塗り塗被液を片面当たりの乾燥重量が9g/mとなるようにブレードコーターを使用して両面塗被、乾燥を行い、上塗り塗被層を設けた。このようにして得られた塗被紙を、温度70℃、線圧200kN/mでスーパーカレンダに通紙して、塗被紙を得た。
(ii)1層両面塗被紙の作製
(本発明例12)
本発明例12では、以下に示す通りに塗被液の調製を行った。
本発明例6の粉砕処理で得た軽質炭酸カルシウム65%、平均粒径1.3μmの重質炭酸カルシウム(商品名:ハイドロカーブK−9、前出)35%からなる顔料スラリーに、顔料100部に対して、酸化澱粉(商品名:エースB、前出)4部、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(商品名:T2628G、前出)7部(いずれも固形分換算)、さらに、助剤として消泡剤及び染料を添加し、最終的に固形分濃度62%の塗被液を調製した。
(比較例7)
比較例7では、本発明例12の塗被液の顔料を、比較例2の粉砕処理で得た軽質炭酸カルシウム65%、平均粒径1.3μmの重質炭酸カルシウム(商品名:ハイドロカーブK−9、前出)35%とした以外は、本発明例12と同様にして塗被液を調製した。
(比較例8)
比較例8では、本発明例12の上塗り塗被液の軽質炭酸カルシウムを、微粒カオリン(ミラグロスJ、前出)30%、平均粒径1.3μmの重質炭酸カルシウム(商品名:ハイドロカーブK−9、前出)70%とした以外は、本発明例12と同様にして塗被液を調製した。
(塗被紙の作製)
上記の本発明例および比較例で得られた塗被液を用いて塗被紙を作製した。
米坪70.0g/mの上質原紙(緊度0.75g/cm)に、塗被層用塗被液を片面当たりの乾燥重量が8g/mとなるようにブレードコーターを使用して両面塗被、乾燥を行い、塗被層を設けた。このようにして得られた塗被紙を、温度70℃、線圧200kN/mでスーパーカレンダに通紙して、塗被紙を得た。
上記で得られた各塗被紙について、前記の評価および下記の評価を追加して行った。その結果を表3および表4に示した。
(印刷光沢度)
RI印刷機で、印刷インキ(商品名:FUSION−G 墨、Sタイプ、大日本インキ化学工業社製)0.4cc使用して印刷を行い、光沢度計(GM−26D、村上色彩研究所製)を用いて60度光沢度を測定した。
(インキセット評価)
RI印刷機で、印刷インキ(商品名:FUSION−G 墨、Sタイプ、既述)を0.6cc使用して印刷を行い、3分後に白紙と印刷面を重ねて、再度RI印刷機にニップし、白紙に転写したインキ濃度を目視評価した。
○:インキセットが早く、優れる。
△:インキセットはやや遅いが、実用上問題ない。
×:インキセットが遅く、実用上問題がある。
Figure 0005673176
Figure 0005673176
表3および表4より、2層両面塗被紙および1面両面塗被紙の双方において、本発明の軽質炭酸カルシウムを顔料として用いた本発明例11および12で得られた塗被紙が、比較例5および7と比べて優れる品質を示している。
また、本発明の軽質炭酸カルシウムを顔料として用いた塗被紙は、顔料としてカオリンを用いた塗被紙に匹敵する品質を有することが明らかになった。本発明の軽質炭酸カルシウムはカオリンと比較して安価であるため、高品質の塗被紙をより低コストで製造することが可能となる。
以上の結果から、本発明により得られた軽質炭酸カルシウムは、いずれも白紙および印刷品質共に高品質であることが明らかになった。
本発明は、高品質な軽質炭酸カルシウム、粒径が揃った微細な軽質炭酸カルシウムを極めて容易かつ安定的に製造することができ、本発明の方法で得られた軽質炭酸カルシウムを填料ないし顔料として使用した紙は、白紙光沢度、平滑性、印刷表面強度等に優れる。

Claims (4)

  1. 軽質炭酸カルシウムの原料として用いられる消石灰粒子であって、体積粒度分布における粒径が1.0μm以下の粒子の累積体積が3.2%以下、かつ100μm以下の粒子の累積体積が95%以上であることを特徴とする消石灰粒子。
  2. 軽質炭酸カルシウムの製造方法であって、請求項1に記載の消石灰粒子をスラリー化し、20〜70℃の該消石灰スラリーに二酸化炭素含有ガスを吹き込んで炭酸化することにより軽質炭酸カルシウムを製造することを特徴とする軽質炭酸カルシウムの製造方法
  3. 請求項に記載の製造方法で得られた軽質炭酸カルシウムを填料として用いた紙。
  4. 請求項に記載の製造方法で得られた軽質炭酸カルシウムを顔料として用いた塗被紙。
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