JP5665021B2 - 融合mhc分子連結磁気微粒子、抗原ペプチドのスクリーニング方法、組換えベクター、及び磁性細菌の形質転換体 - Google Patents

融合mhc分子連結磁気微粒子、抗原ペプチドのスクリーニング方法、組換えベクター、及び磁性細菌の形質転換体 Download PDF

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Description

本発明は、融合MHC分子連結磁気微粒子、抗原ペプチドのスクリーニング方法、組換えベクター、及び磁性細菌の形質転換体に関する。
癌は1981年以来、日本人の死亡原因の第一位である。今後も患者数が増加することが予測されており、より有効な治療方法と診断方法の開発が求められている。
現在、癌の治療方法として免疫療法の開発が進められている。免疫療法の代表的な例として、ペプチドワクチン療法が挙げられる。
ペプチドワクチン療法とは、腫瘍細胞に特異的または過剰に発現するタンパク質由来のペプチド(癌抗原ペプチド)をワクチンとして用いる治療方法である。癌抗原ペプチドを用いて、腫瘍細胞に特異的な免疫細胞を誘導し腫瘍細胞を攻撃させる。
免疫機構の開始点として重要な役割を担っているのが、MHC/抗原ペプチド複合体である。T細胞は細胞表面のT細胞受容体(TCR)を介して抗原提示細胞表面または腫瘍細胞表面のMHC/抗原ペプチド複合体を認識することで機能を発揮する。したがって、ペプチドワクチン療法の開発のためには、簡便にかつ高効率で癌抗原ペプチドを同定することが重要である。
MHC(major histocompatibility complex、主要組織適合遺伝子複合体)はクラスIとクラスIIの二種類に大別され、発現する細胞や抗原提示の機構が異なる。抗原ペプチドは、MHCクラスI上に提示されるペプチドが180種類、MHCクラスII上に提示されるペプチドが75種類同定されている。現在ではMHC上に提示される抗原ペプチドの配列を抗原タンパク質中から予測するアルゴリズムが開発され、抗原ペプチドの同定に応用されている(非特許文献1及び2参照)。
現在、アルゴリズムを使って同定されたMHCクラスI結合性抗原ペプチドについて、ペプチドワクチン療法の臨床試験が行われている。しかし、臨床有効率は数%に留まり治療方法としては不十分であるとされている。さらには、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)だけでなくヘルパーT細胞も刺激することができるワクチンのデザインが求められており、MHCクラスII結合性抗原ペプチドのワクチンへの利用が考えられている。
したがって、MHCクラスI結合性抗原ペプチド、並びにMHCクラスII結合性抗原ペプチドを、新たに数多く同定することが求められている。
また、現行の抗原ペプチド同定法においてよく採用される工程の一つとして、組換えMHCタンパク質によるペプチドスクリーニングがある(非特許文献3参照)。しかしながら、MHCはα鎖とβ鎖から構成される巨大な構造をとることから組換え発現が難しいという問題がある。さらに、複数のジスルフィド結合を有しているためユニット間の構造を正しく構築することが困難であったり凝集が起こりやすいことから、本来の機能を有した可溶性の組換えタンパク質の生産が難しい。
上記の問題を解決する一手法として、α鎖とβ鎖を別々のプラスミドに導入して発現させる方法が大腸菌において報告されている(非特許文献4参照)。しかしながら、その手順は煩雑であり多くの時間を要するという問題がある。
ところで、磁性細菌は、粒径50〜100nm程度の磁性細菌粒子を生成し、菌体内に保持することが知られている。磁性細菌粒子は脂質二重膜で覆われており、この膜中に存在する膜タンパク質をアンカー分子として用いて、様々な機能性タンパク質を磁性細菌粒子上へディスプレイする技術が確立されている(非特許文献5及び6、特許文献1〜3参照)。
特開2006−75103号公報 特開2006−314314号公報 特開2008−273926号公報
J Pharmacol Sci 2007;105:299-316 Cancer Immunol Immunother 2004;53:196-203 J Mol Biol 2004;340:81-95 Immunome Res 2009;5:2 Appl Environ Microbiol 2004;70:2880-5 Anal Chim Acta 2008;626:71-7
本発明の課題は、抗原ペプチドを高効率かつ高感度でスクリーニングし得る融合MHC分子連結磁気微粒子、及び高効率かつ高感度な抗原ペプチドのスクリーニング方法を提供することである。更には、前記融合MHC分子連結磁気微粒子の製造に用い得る組換えベクター、及びそれを含む磁性細菌の形質転換体を提供することである。
本発明の第一の態様は、磁性細菌由来の磁気微粒子と、前記磁気微粒子上に存在する磁性細菌由来の磁気微粒子膜タンパク質またはその断片と、前記磁気微粒子膜タンパク質またはその断片に連結された、MHC分子のα鎖またはその断片および、β鎖またはその断片ならびに、これらの間に配置された第一のリンカーペプチドを含む抗原ペプチド結合能を有する融合MHC分子と、を備えた融合MHC分子連結磁気微粒子である。
本発明の融合MHC分子連結磁気微粒子は、前記磁気微粒子膜タンパク質またはその断片と前記融合MHC分子とが、第二のリンカーペプチドを介して連結されたものが好ましい。
本発明の第二の態様は、前記融合MHC分子連結磁気微粒子と抗原ペプチドを含む試料とを接触させること、前記接触後の融合MHC分子連結磁気微粒子から、前記接触により融合MHC分子連結磁気微粒子に結合したペプチドを抗原ペプチドとして抽出すること、
を含む抗原ペプチドのスクリーニング方法である。
本発明の抗原ペプチドのスクリーニング方法は、更に、前記接触後の融合MHC分子連結磁気微粒子を磁気を利用して濃縮することを含んでもよい。
本発明の抗原ペプチドのスクリーニング方法は、前記融合MHC分子連結磁気微粒子が、前記試料と接触させる前に融合MHC分子内にジスルフィド結合を形成させる処理をされたものであることが好ましい。また、前記融合MHC分子連結磁気微粒子が、前記試料と接触させる前に洗浄されたものであることが好ましい。
本発明の抗原ペプチドのスクリーニング方法は、癌抗原ペプチドのスクリーニングに好適である。
本発明の第三の態様は、磁性細菌由来の磁気微粒子膜タンパク質またはその断片をコードするDNAと、MHC分子のα鎖またはその断片および、β鎖またはその断片ならびに、これらの間に配置された第一のリンカーペプチドを含む抗原ペプチド結合能を有する融合MHC分子をコードするDNAと、を含む組換えベクターである。
本発明の組換えベクターは、更に、前記磁気微粒子膜タンパク質またはその断片と前記融合MHC分子とを連結する第二のリンカーペプチドをコードするDNAを含むものが好ましい。
本発明の第四の態様は、前記組換えベクターを含む磁性細菌の形質転換体である。
本発明によれば、抗原ペプチドを高効率かつ高感度でスクリーニングし得る融合MHC分子連結磁気微粒子、及び高効率かつ高感度な抗原ペプチドのスクリーニング方法を提供することができる。更には、前記融合MHC分子連結磁気微粒子の製造に用い得る組換えベクター、及びそれを含む磁性細菌の形質転換体を提供することができる。
本発明の実施例1の発現用プラスミドの概念図である。 本発明の実施例2の発現用プラスミドの概念図である。 本発明の実施例4のウエスタンブロットの写真である。 本発明の実施例4のウエスタンブロットの写真である。 本発明の実施例9のNano−LC/MSの解析結果である。 本発明の実施例14のNano−LC/MSの解析結果である。
<融合MHC分子連結磁気微粒子>
本発明の融合MHC分子連結磁気微粒子は、磁性細菌由来の磁気微粒子と、前記磁気微粒子上に存在する磁性細菌由来の磁気微粒子膜タンパク質またはその断片と、前記磁気微粒子膜タンパク質またはその断片に連結された、MHC分子のα鎖またはその断片および、β鎖またはその断片ならびに、これらの間に配置された第一のリンカーペプチドを含む抗原ペプチド結合能を有する融合MHC分子と、を備えたものである。
かかる構成とすることにより、抗原ペプチドと可逆的に結合及び解離することが可能な融合MHC分子の特性と、磁気誘導可能な磁気微粒子の特性とを利用して、抗原ペプチドを高効率かつ高感度でスクリーニングし得る融合MHC分子連結磁気微粒子を提供することができる。
本発明の融合MHC分子連結磁気微粒子は、前記磁気微粒子膜タンパク質またはその断片と前記融合MHC分子とが、第二のリンカーペプチドを介して連結されたものが好ましい。
本発明において、「抗原ペプチド結合能」とは、前記融合MHC分子の抗原ペプチド結合部位が、α鎖とβ鎖とを有する天然型MHC分子の抗原ペプチド結合部位と同等の立体構造を保持することによって抗原ペプチドを結合する能力をいう。
本明細書において、MHC分子、融合MHC分子、又は融合MHC分子連結磁気微粒子と抗原ペプチドとの「結合」とは、抗原ペプチドが、MHC分子、融合MHC分子、又は融合MHC分子連結磁気微粒子に、天然型MHC分子におけるのと同等程度に保持されていることをいう。
(融合MHC分子)
天然型のMHC分子はα鎖とβ鎖のヘテロダイマーであるが、本発明における融合MHC分子は、MHC分子のα鎖またはその断片とMHC分子のβ鎖またはその断片との間に、第一のリンカーペプチドが配置された融合タンパク質である。
なお、本明細書において「融合タンパク質」とは、2以上のタンパク質またはその断片が連結されている、天然には見出されないタンパク質をいう。融合タンパク質は、それぞれのタンパク質またはその断片をコードする遺伝子をインフレームで連結させて、組換え的に発現させることにより製造することができる。
本発明における融合MHC分子としては、抗原ペプチドとの結合能を有する限り、任意の天然型MHCを基に構成されたものでよい。本発明における融合MHC分子は、抗原ペプチドとの結合能を有する限り、α鎖の一部、及び/又はβ鎖の一部を欠いていてもよく、抗原ペプチドとの結合性や、磁性細菌内で発現させた場合の発現効率の観点から、適宜設計され得る。具体的には、ペプチド結合領域及びペプチド結合領域の構造保持に必要な領域を含む細胞外ドメインを保存し、それ以外のドメイン(例えば、膜貫通ドメイン、細胞内ドメイン)を欠損させたMHCを用い得る。このような融合MHC分子は、当業者が通常行う手順に従って遺伝子組換え技術により作製することができる。
本発明における融合MHC分子を構成する基となる天然型MHCの種類は、スクリーニング対象となる抗原ペプチドの種類に応じて選択される。例えば、内在性抗原由来の抗原ペプチドをスクリーニングするためには、MHCクラスIが選択され、外来性抗原由来の抗原ペプチドをスクリーニングするためには、MHCクラスIIが選択される。また、CD8T細胞に認識され得る抗原ペプチドをスクリーニングするためには、MHCクラスIが選択され、CD4T細胞に認識され得る抗原ペプチドをスクリーニングするためには、MHCクラスIIが選択される。
本発明における融合MHC分子を構成する基となる天然型MHCとしては、ヒト由来に限らず、各種脊椎動物由来を用い得る。ヒトへの臨床適用の観点からは、ヒト免疫機構を活性化し得る抗原ペプチドをスクリーニングするためにヒトMHCを選択し得る。
ヒトMHCはヒト白血球抗原(human leukocyte antigen:HLA)と呼ばれ、MHCクラスIにはHLA−A、HLA−B、HLA−Cの3種類が存在し、MHCクラスIIにはHLA−DR、HLA−DP、HLA−DQの3種類が存在する。HLAは個人間、人種間で多型性に富み、日本人に多い遺伝子型としては、MHCクラスIとして、HLA−A24、HLA−A2等、MHCクラスIIとして、HLA−DR4、HLA−DR1等が知られており、本発明においてはこれらが好適に選択され得る。
本発明における融合MHC分子は、α鎖またはその断片とβ鎖またはその断片との間に、第一のリンカーペプチドが配置された融合タンパク質である。
第一のリンカーペプチドは、α鎖またはその断片とβ鎖またはその断片との間に配置されていればよく、第一のリンカーペプチドのN末端側に、α鎖またはその断片、β鎖またはその断片のいずれが配置されていてもよい。即ち、α鎖またはその断片のC末端とβ鎖またはその断片のN末端とが第一のリンカーペプチドを介して連結されていてもよく、β鎖またはその断片のC末端とα鎖またはその断片のN末端とが第一のリンカーペプチドを介して連結されていてもよい。この際、α鎖またはその断片とβ鎖またはその断片とは、抗原ペプチドとの結合性や磁性細菌内での発現効率の観点から、既述のように適宜設計され得る。
前記第一のリンカーペプチドの長さは、特に制限されないが、融合MHC分子の抗原ペプチド結合活性の観点から、5〜50個のアミノ酸残基から構成されることが好ましい。アミノ酸残基が5個以上であると、α鎖またはその断片とβ鎖またはその断片とから形成される抗原ペプチド結合部位が、適切な立体構造で配置され得ると推測され、融合MHC分子の抗原ペプチド結合活性がより向上する。アミノ酸残基が50個以下であると、リンカー内での高次構造が形成されにくいため、融合MHC分子全体の構造形成が障害されにくいと推測され、融合MHC分子の抗原ペプチド結合活性がより向上する。アミノ酸残基数は、融合MHC分子の抗原ペプチド結合活性の観点から、10〜30個程度がより好ましく、15〜25個程度が更に好ましい。
第一のリンカーペプチドのアミノ酸配列は任意の配列でよい。第一のリンカーペプチドは、複数のアミノ酸残基から構成されるアミノ酸配列を1ユニットとし、当該1ユニットのアミノ酸配列が繰り返して配列されるリンカーペプチドであることが好ましい。1ユニット内のペプチド配列は、5つのアミノ酸の配列で構成されることが好ましいが、これに制限されるものではない。
第一のリンカーペプチドを構成するアミノ酸は、特に制限はないが、融合MHC分子の抗原ペプチド結合活性の観点から、好ましくは、グリシン(G)及びセリン(S)である。ペプチドを構成するアミノ酸がグリシン(G)及びセリン(S)であると、アミノ酸自体の大きさが小さく、リンカー内での高次構造が形成されにくいため、融合MHC分子全体の構造形成の障害にならないと推測される。
具体的には、グリシンを4つ、次いで、セリンを1つ並べて配列した(GS)を1ユニットとしたペプチドから構成されるリンカーペプチドが好ましいが、ここで、1ユニット内の5つのアミノ酸の配列は制限されるものでない。つまり、1ユニット内において、4つのグリシンと1つのセリンによる配列に関しては、任意に配されてよい。
また、第一のリンカーペプチドとしては、上記の4つのグリシンと1つのセリンのアミノ酸配列により構成される1ユニットが繰り返し配列されたリンカーペプチド(以下、「(GS)ポリペプチド」または「GSリンカー」という)が好ましい。ここで、当該1ユニットの繰り返し数(n)には特に制限がなく任意の数でよいが、本発明においては、1回〜10回程度の繰り返し数とすることができ、2回〜6回程度が好ましく、3回〜5回程度がより好ましい。
第一のリンカーペプチドは、本発明においては、上記(GS)ポリペプチドが好ましく、特には、1ユニットの(GS)が3回〜5回繰り返す、(GS)ポリペプチド、(GS)ポリペプチド、(GS)ポリペプチドが好ましい。また、本発明においては、配列番号1により表されるアミノ酸配列のポリペプチドが好ましい。
本発明における融合MHC分子は、抗原ペプチドとの結合能を有する限りにおいて、MHCのペプチド結合領域及びペプチド結合領域の構造保持に必要な領域を含む細胞外ドメインを保存し、それ以外のドメイン(例えば、膜貫通ドメイン、細胞内ドメイン)を欠損させたものが好ましく、α鎖またはその断片とβ鎖またはその断片とが(GS)ポリペプチドを介して連結されたものが好ましい。
(磁性細菌由来の磁気微粒子)
本発明において「磁性細菌」とは、体内に、磁気微粒子(磁性細菌粒子、BacMPs:Bacterial Magnetic Particles、ともいう)を蓄積する能力を有する細菌である。例えば、Magnetospirillum magneticum AMB−1(FERM BP−5458,ATCC700264)、MS−1(IFO15272,ATCC31632,DSM3856)、MSR−1(IFO15272,DSM6361)、MGT−1(FERM P−16617)等のマグネトスピリラム種の磁性細菌、Desulfovibrio sp. RS−1(FERM BP−13283)等のデサルフォビブリオ種の磁性細菌を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
これらの磁性細菌は、粒径50〜100nm程度の磁気微粒子が10〜20個程度チェーン状に連なった構造をしており、厚さ約2〜4nmの有機膜で覆われている。また、磁性細菌によって合成されるBacMPsの形態としては、八面体形、六角柱、弾丸状などの形状があり、これらの形態は種特異的であることが観察されている。
AMB−1が合成するBacMPsは、マグネタイト(Fe)からなる磁気微粒子であり、単磁区構造を持つ強磁性体であるため、弱い磁界に対しても強く反応することから、水溶液中で効率的に磁気による濃縮が行える。また、BacMPsは、脂質膜(脂質二重膜)を本来的に備える。この脂質二重膜を有するため、BacMPsは強磁性体でありながら水溶液中での分散性にも優れている。
前記脂質膜は、例えば界面活性剤を用いた処理等により、BacMPsから除去することができる。また、前記脂質膜を構成する脂質を、脂質以外の分子(ポリマー等)に交換することもできる。本発明においては、BacMPsは、前記脂質膜が除去されたものでもよく、前記脂質膜を構成する脂質が脂質以外の分子に交換されたものでもよい。脂質と交換可能なポリマーとしては、ブロック共重合体やリン脂質極性基を有するポリマー等が挙げられ、ブロック共重合体としては例えば、PMOXA−PDMS−PMOXAからなるブロック共重合体、リン脂質極性基を有するポリマーとしては例えば、MPCポリマーが挙げられる。
本発明における「磁気微粒子」とは、磁気応答性(磁界に対する感応性)を有する微粒子を意味し、外部磁界が存在するとき、磁界により磁化する、あるいは磁石に吸着するなどの磁界に対する感応を示す微粒子を指す。
前記磁気微粒子の形状としては、特に制限されないが、球状、楕円体状、粒状、直方体状、立方体状等の多面体状を好ましく例示することができる。前記磁気微粒子の大きさとしては、特に制限されず、磁性細菌から得られる磁気微粒子の大きさでよい。
(磁気微粒子膜タンパク質またはその断片)
本発明において「磁気微粒子膜タンパク質」とは、前記脂質膜(磁気微粒子膜ともいう)に本来的に存在し得るタンパク質をいう。磁気微粒子膜タンパク質またはその断片は、前記脂質膜を除去しても、或いは前記脂質膜を構成する脂質を脂質以外の分子に交換しても、磁気微粒子上に存在し得る。本発明においては、磁気微粒子上に磁気微粒子膜タンパク質またはその断片が存在すれば、前記脂質膜はなくてもよい。磁気微粒子膜タンパク質またはその断片が磁気微粒子上に安定して存在し得、融合MHC分子が磁気微粒子上に安定して存在し得る観点からは、磁気微粒子は前記脂質膜を備えることが好ましい。
本発明においては、磁気微粒子上に磁性細菌由来の磁気微粒子膜タンパク質またはその断片が存在し、当該磁気微粒子膜タンパク質の全部又は一部に、融合MHC分子が連結されている。磁気微粒子膜タンパク質の全部又は一部が融合MHC分子を磁気微粒子にアンカリングし、融合MHC分子を磁気微粒子表面に効率的に局在させることができる。
磁気微粒子膜タンパク質としては、例えば、マグネトスピリラム種の磁性細菌に由来するものとして、Mms5、Mms6、Mms7、Mms13、Mms16等があり、これらをコードするDNAの塩基配列はアクセス番号AB096081及びAB096082としてDDBJやGenBank等のデータベースに登録されている。
本発明における磁気微粒子膜タンパク質としては、磁気微粒子膜に高発現し得るMms13、Mms6、Mms16、Mms24等が好ましい。これらの中でも、特開2006−75103号公報に記載のMms13がより好ましい。
Mms13のアミノ酸配列は知られている(J Biol Chem 2003;278:8745-50)。Mms13は124アミノ酸からなる膜2回貫通型タンパク質であり、N末端およびC末端が磁性細菌の脂質膜表面にあると考えられている。Mms13の全領域を含む融合タンパク質は、磁気微粒子上に存在することが可能である。また、Mms13のC末端側の膜貫通ドメインでない領域はなくてもよく、当該領域を欠いたMms13を含む融合タンパク質も、磁気微粒子上に存在することが可能である。
(第二のリンカーペプチド)
本発明の融合MHC分子連結磁気微粒子は、前記融合MHC分子と前記磁気微粒子膜タンパク質またはその断片とが、第二のリンカーペプチドを介して連結されたものが好ましい。より具体的には、磁気微粒子膜タンパク質またはその断片のC末端と、融合MHC分子のN末端とが、第二のリンカーペプチドを介して連結されたものが好ましい。融合MHC分子が第二のリンカーペプチドを介して磁気微粒子膜タンパク質またはその断片に連結されていることで、磁気微粒子表面への各種分子や細胞の非特異的な吸着を低減することができ、抗原ペプチドのスクリーニング効率を向上させることができる。
第二のリンカーペプチドは、少なくとも50アミノ酸残基から構成されることが好ましい。少なくとも50アミノ酸残基から構成されることで、磁気微粒子表面への各種分子や細胞の非特異的な吸着を低減することができ、抗原ペプチドのスクリーニング効率を向上させることができる。
第二のリンカーペプチドのアミノ酸配列は任意の配列でよく、好ましくは、主として非電荷極性アミノ酸から構成される。
第二のリンカーペプチドは、複数のアミノ酸残基から構成されるアミノ酸配列を1ユニットとし、当該1ユニットのアミノ酸配列が繰り返して配列されるポリペプチドであることが好ましい。1ユニット内のペプチド配列は、5つのアミノ酸の配列で構成されることが好ましいが、これに制限されるものではない。
第二のリンカーペプチドを構成するアミノ酸は、非電荷極性アミノ酸が好ましく、非電荷極性アミノ酸としては、アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、トレオニン(T)、チロシン(Y)及びセリン(S)から任意に選択されるが、好ましくは、アスパラギン、グルタミン及びセリンからなる群から2つ以上選択される。非電荷極性アミノ酸は親水性アミノ酸でもあり、第二のリンカーペプチドを主として非電荷極性アミノ酸で構成することで、第二のリンカーペプチドを親水性とすることができる。
より好ましくは、第二のリンカーペプチドは、具体的には、第1の種類のアミノ酸(例えば、アスパラギン)を4つ、次いで、第2の種類のアミノ酸(例えば、セリン)を1つ並べて配列した(NS)を1ユニットとしたペプチドから構成されるポリペプチドが好ましいが、ここで、1ユニット内の5つのアミノ酸の配列は制限されるものでない。つまり、1ユニット内において、4つの第1種アミノ酸(アスパラギン)と1つの第2種アミノ酸(セリン)による配列に関しては、任意に配されてよい。
上記では例として、アスパラギンとセリンを選択した場合を説明したが、1ユニットの配列はアスパラギン、グルタミン、トレオニン、チロシン及びセリンから任意に選択した組合せからなるアミノ酸配列が可能である。
また、第二のリンカーペプチドとしては、上記の4つのアスパラギンと1つのセリンのアミノ酸配列より構成される1ユニットが繰り返し配列されたポリペプチド(以下、「(NS)ポリペプチド」または「NSリンカー」という)が好ましい。特に、アスパラギンは、ポリペプチドの親水性と立体障害性の付与の観点から好ましく、セリンは、ポリペプチドに構造上のフレキシビリティを付与することができる。ここで、当該1ユニットの繰り返し数(n)には特に制限がなく任意の値をとり得るが、本発明においては、少なくとも数回、好ましくは10回程度以上、特に20回程度の繰り返しが好ましい。
本発明においては、上記(NS)ポリペプチドが好ましく、特には、1ユニットの(NS)が20回繰り返す、(NS)20ポリペプチドが好ましい。また、本発明においては、配列番号4により表されるアミノ酸配列のポリペプチドが好ましい。
第二のリンカーペプチドは、そのアミノ酸配列内に、プロテアーゼによる消化部位となる配列を設けてもよい。プロテアーゼにより認識され切断される部位を有するように第二のリンカーペプチドを設計することで、プロテアーゼを用いて第二のリンカーペプチドを切断し、融合MHC分子を含む融合タンパク質を、前記磁気微粒子膜タンパク質またはその断片から切り離し単離することが可能となる。プロテアーゼとしては、例えば、トロンビン、トリプシン、キモトリプシン、エンテロキナーゼ、カテプシン等を挙げることができる。
この場合、第二のリンカーペプチド内において、プロテアーゼによる消化部位となる配列を設ける位置としては、特に制限されない。例えば、融合MHC分子に比較的長めのNSリンカーが付いた融合タンパク質を単離しようとする場合には、第二のリンカーペプチドは、(NS)ユニットを0回〜数回繰返した後にプロテアーゼの認識配列を有し、更に(NS)ユニットを10回程度以上、好ましくは15回〜20回程度繰り返す態様が好ましい。
また、融合MHC分子にNSリンカーが付かない、若しくは比較的短いNSリンカーが付いた融合タンパク質を単離しようとする場合には、第二のリンカーペプチドは、(NS)ユニットを10回程度以上、好ましくは15回〜20回程度繰り返した後にプロテアーゼの認識配列を有し、更に(NS)ユニットを0回〜数回繰り返す態様が好ましい。
本発明の融合MHC分子連結磁気微粒子は、磁性細菌由来の磁気微粒子上にMms13を有し、Mms13と融合MHC分子とが(NS)20ポリペプチドを介して連結されたものが好ましく、Mms13のC末端と融合MHC分子のN末端とが(NS)20ポリペプチドを介して連結されたものがより好ましい。
(融合MHC分子連結磁気微粒子の製造方法)
本発明の融合MHC分子連結磁気微粒子を製造する方法は、特に制限されないが、磁性細菌を用いて製造することができる。具体的には、少なくとも下記の工程を含む製造方法とし得る。即ち、磁性細菌由来の磁気微粒子膜タンパク質又はその断片と抗原ペプチド結合能を有する融合MHC分子とが連結された融合タンパク質を磁性細菌内で発現させる発現工程と、磁性細菌から磁気微粒子を単離する単離工程とを含む製造方法である。
前記発現工程は、好ましくは、磁性細菌由来の磁気微粒子膜タンパク質またはその断片と融合MHC分子とが、第二のリンカーペプチドを介して連結された融合タンパク質を発現させる工程とする。
より詳細には、これら融合タンパク質を磁性細菌内で合成するためのDNAを作製し、当該DNAを公知の遺伝子技術によってプラスミドなどのベクターに導入し、組換えベクターを得る。この得られた組換えベクターを、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション等の公知の導入技術によって、前記融合タンパク質を発現することができる発現系を含んでなる磁性細菌に導入し、磁性細菌の形質転換体を得る。そして、当該磁性細菌を公知の培養技術により培養することによって、前記融合タンパク質を磁性細菌内で発現させることができる。
前記組換えベクターは、少なくとも、(i)磁性細菌由来の磁気微粒子膜タンパク質またはその断片をコードするDNA、(ii)MHC分子のα鎖またはその断片および、β鎖またはその断片ならびに、これらの間に配置された第一のリンカーペプチドを含む抗原ペプチド結合能を有する融合MHC分子をコードするDNA、を含む。好ましくは、上記(i)(ii)は、5’側から(i)(ii)の順で配置される。
前記組換えベクターは、更に、(iii)前記磁気微粒子膜タンパク質またはその断片と前記融合MHC分子とを連結する第二のリンカーペプチドをコードするDNAを含み、5’側から(i)(iii)(ii)の順で配置された態様が好ましい。
ここで、融合MHC分子、磁性細菌由来の磁気微粒子膜タンパク質またはその断片、及び第二のリンカーペプチドの詳細及び好ましい態様は、既述のとおりである。
DNAの塩基配列は、磁性細菌内での発現をより容易にするため、磁性細菌で多用されるコドン使用頻度に基づいて作成されることが好ましい。例えば、磁性細菌としてMagnetospirllum magneticum AMB−1のコドン使用頻度データベースを参照する。
前記(ii)の融合MHC分子をコードするDNAとしては、そのDNAがコードするタンパク質が抗原ペプチド結合能を有する限り特に制限されないが、例えば、以下のDNAが好ましく挙げられる。
MHCクラスI由来の融合MHC分子をコードするDNAとしては、下記の(a)、(b)又は(c)が好ましいDNAの具体例として挙げられる。
(a)配列番号7の塩基配列、配列番号2の塩基配列、及び配列番号8の塩基配列がこの順に配置されてなるDNA、
(b)前記(a)のDNAがコードするアミノ酸配列の1個又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり抗原ペプチド結合能を有するタンパク質をコードするDNA、
(c)前記(a)又は(b)のDNAと相補的なDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAであって、抗原ペプチド結合能を有するタンパク質をコードするDNA。
MHCクラスII由来の融合MHC分子をコードするDNAとしては、下記の(d)、(e)又は(f)が好ましいDNAの具体例として挙げられる。
(d)配列番号9の塩基配列、配列番号3の塩基配列、及び配列番号10の塩基配列がこの順に配置されてなるDNA、
(e)前記(d)のDNAがコードするアミノ酸配列の1個又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり抗原ペプチド結合能を有するタンパク質をコードするDNA、
(f)前記(d)又は(e)のDNAと相補的なDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAであって、抗原ペプチド結合能を有するタンパク質をコードするDNA。
なお、本明細書で「1個又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加された」というときの欠失等されるアミノ酸の個数は、そのアミノ酸配列からなるタンパク質が抗原ペプチド結合能を有する範囲であればよく、例えば、1〜9個程度であり、抗原ペプチド結合能の観点からは少ない方がよく、好ましくは1〜6個程度、より好ましくは1〜4個程度である。
本明細書における「ストリンジェントな条件下」とは、相同性が高いDNA同士、例えば60%以上、好ましくは80%以上の相同性を有するDNA同士がハイブリダイズし、それより相同性が低いDNA同士がハイブリダイズしない条件が挙げられる。より具体的には、ナトリウム濃度が150〜900mM、好ましくは600〜900mMであり、温度が60〜65℃、好ましくは65℃での条件をいう。
本明細書において「相同性」を具体的な数値として示す場合、例えば、汎用されている相同性検索アルゴリズムであるBLAST(Basic Local Alignment Search Tool)(NCBI、又はAltschul, S. F. et al. J. Mol. Biol., 215:403-410(1990))を用いた配列比較で決定することができる。
前記ベクターとしては、例えば、特開平8−228782号公報に記載のpRK415、特開平11−285387号公報に記載のpMS−T1またはその誘導体を好適に用いることができる。
前記ベクターは、磁気微粒子膜タンパク質をコードするDNAのプロモーター領域の配列(プロモーター配列)を搭載することが好ましい。このプロモーター配列は、例えば、特開2006−75103号公報、特開2006−314314号公報等に記載されている。これらの中でも、高転写活性を有するPmms16プロモーター、Pmsp1プロモーター、Pmsp3プロモーターを好適に用いることができる。
また、前記ベクターは、選択マーカーとして抗生物質耐性遺伝子(例えば、アンピシリン耐性遺伝子など)を含んでよい。
前記単離工程は、公知の手法に従って、磁性細菌の培養物から融合MHC分子連結磁気微粒子を採集する工程とする。例えば、培養された菌体を破砕又は溶菌した後、遠心分離にかけることで又は磁気を利用して、融合MHC分子連結磁気微粒子を単離することが可能である。
<抗原ペプチドのスクリーニング方法>
本発明の抗原ペプチドのスクリーニング方法は、本発明の融合MHC分子連結磁気微粒子と抗原ペプチドを含む試料とを接触させること、前記接触後の融合MHC分子連結磁気微粒子から、前記接触により融合MHC分子連結磁気微粒子に結合したペプチドを抗原ペプチドとして抽出すること、を含む。
かかる構成とすることにより、抗原ペプチドを高効率かつ高感度でスクリーニングすることができる。
融合MHC分子連結磁気微粒子と抗原ペプチドを含む試料とを接触させる方法としては、特に制限されず、例えば、適切なバッファー中で、室温(20〜26℃)にて30分〜10時間程度インキュベートすることによって行われる。このとき、前記試料に融合MHC分子連結磁気微粒子を添加してもよく、融合MHC分子連結磁気微粒子を含む溶液に前記試料を投入してもよい。
前記接触後の融合MHC分子連結磁気微粒子から、前記接触により融合MHC分子連結磁気微粒子に結合したペプチドを抗原ペプチドとして抽出する方法としては、特に制限されない。例えば、融合MHC分子連結磁気微粒子がおかれた環境、具体的には融合MHC分子連結磁気微粒子を含む溶液の塩濃度やpHを調整することで、融合MHC分子連結磁気微粒子に結合した抗原ペプチドを解離させて抽出することができる。
抽出した抗原ペプチドについては、公知の解析技術により、分子量、アミノ酸配列、立体構造等を同定することが可能である。
本発明の抗原ペプチドのスクリーニング方法は、更に、前記接触後の融合MHC分子連結磁気微粒子を磁気を利用して濃縮することを含んで構成し得る。融合MHC分子連結磁気微粒子を構成する磁気微粒子が磁気応答性を有することを利用して、磁気により融合MHC分子連結磁気微粒子を濃縮することが可能であり、抗原ペプチドのスクリーニング効率を向上させることができる。
融合MHC分子連結磁気微粒子を磁気を利用して濃縮する方法としては、特に制限されず任意の方法でよい。具体的な方法としては、実施例に記載の方法が挙げられる。
本発明の抗原ペプチドのスクリーニング方法においては、前記融合MHC分子連結磁気微粒子が、前記試料と接触させる前に、融合MHC分子内にジスルフィド結合を形成させる処理をされたものであることが好ましい。融合MHC分子内にジスルフィド結合を形成させる処理(以下、「ジスルフィド結合形成処理」ともいう)をされた融合MHC分子連結磁気微粒子を、前記試料と接触させることで、抗原ペプチドとの結合能が向上し、スクリーニング効率をより上げることができる。これは、前記ジスルフィド結合形成処理により、融合MHC分子内にそのアミノ酸配列に基づくジスルフィド結合が形成され、融合MHC分子がより適切な立体構造をとって安定化することによると推測されるが、特定の理論に拘束されるものではない。
前記ジスルフィド結合形成処理としては、特に制限されず、例えば酸化処理が挙げられる。酸化処理により、融合MHC分子内のSH基が酸化されてジスルフィド結合が形成され得る。
前記酸化処理の方法としては、特に制限されず、融合MHC分子内にジスルフィド結合を形成させ得る公知のいかなる方法でもよい。例えば、適切な濃度の還元型グルタチオンと酸化型グルタチオンとを含むバッファー中で、融合MHC分子連結磁気微粒子をインキュベートする方法が好ましく挙げられる。当該方法においては、還元型グルタチオンの濃度としては、1〜5mMが好ましく、酸化型グルタチオンの濃度としては、0.01〜0.5mMが好ましい。より好ましくは、還元型グルタチオンの濃度を5mMとし、酸化型グルタチオンの濃度を0.5mMとする。インキュベートの温度及び時間は特に制限されないが、4℃又は室温(20〜26℃)にて30分〜10時間程度としてよい。
上記の還元型グルタチオンと酸化型グルタチオンとを含むバッファー中でインキュベートする方法は、例えば、Methods in Molecular Biology 2009;524:383-405に記載されており、具体的な方法としては、実施例に記載の方法が挙げられる。
本発明の抗原ペプチドのスクリーニング方法においては、前記融合MHC分子連結磁気微粒子が、前記試料と接触させる前に洗浄されたものであることが好ましい。洗浄された融合MHC分子連結磁気微粒子を用いることで、前記接触により融合MHC分子連結磁気微粒子に結合したペプチドを抗原ペプチドとして抽出する際に、抗原ペプチド以外の非特異的に抽出される分子を低減することができ、抗原ペプチドのスクリーニング効率をより上げることができる。
洗浄方法としては、融合MHC分子連結磁気微粒子から融合MHC分子を失わせない限りにおいて特に制限されない。例えば、前記接触により融合MHC分子連結磁気微粒子に結合したペプチドを抗原ペプチドとして抽出する際に用い得る抽出用の緩衝液の中で、室温にて静置又は緩やかに撹拌することで洗浄する方法が挙げられる。
上記の緩衝液としては、例えば酸性の緩衝液、より具体的には、0.05〜0.2mol/L程度、好ましくは0.1〜0.15mol/L程度のクエン酸を含有するpH3程度のリン酸緩衝液を例示することができる。
前記ジスルフィド結合形成処理と、前記洗浄とは、いずれを先に行ってもよいが、前記洗浄を先に行うことが好ましい。前記ジスルフィド結合形成処理と、融合MHC分子連結磁気微粒子と試料とを接触させることとの間に他の処理を入れないことで、前記ジスルフィド結合形成処理によってより適切な立体構造をとった融合MHC分子がその構造を保持したまま、抗原ペプチドと接触することができると推測され、抗原ペプチドのスクリーニング効率をより上げることができる。
本発明の抗原ペプチドのスクリーニング方法における試料としては、特に制限されず、天然物でも人工合成物でもよく、例えば、各種の動物または植物由来の試料、培養細胞由来の試料、菌、細菌またはウイルス由来の試料などが挙げられる。これらの試料は、そのまま使用しても、精製して用いてもよく、又は必要に応じて適切な溶媒に懸濁されるか、若しくは適宜希釈されて用いられ得る。
本発明の抗原ペプチドのスクリーニング方法は、癌抗原ペプチドのスクリーニングに好適に用いることができる。癌抗原ペプチドをスクリーニングする場合、前記試料としては、血清等のヒト全血由来の試料、癌細胞の破砕液等の癌患者由来の試料、癌細胞の培養上清が例示される。
癌としては、例えば、肺癌、気管及び気管支癌、口腔上皮癌、食道癌、胃癌、結腸癌、直腸癌、大腸癌、肝臓及び肝内胆管癌、腎臓癌、膵臓癌、前立腺癌、乳癌、子宮癌、卵巣癌、脳腫瘍、悪性黒色腫(メラノーマ)、皮膚癌等の上皮細胞などが悪性化した癌や腫瘍、筋肉腫、骨肉腫、ユーイング肉腫等の支持組織を構成する細胞である筋肉や骨が悪性化した癌や腫瘍、白血病、悪性リンパ腫、骨髄腫、バーキットリンパ腫等の造血細胞由来の癌や腫瘍等が挙げられるが、これらに制限されるものではない。
本発明によれば、融合MHC分子連結磁気微粒子を用いて抗原ペプチドをスクリーニングするためのキットが提供され得る。この抗原ペプチドスクリーニング用のキットは、少なくとも、本発明の融合MHC分子連結磁気微粒子を含み、抗原ペプチドと結合した融合MHC分子連結磁気微粒子を磁気を利用して濃縮するための手段を含み得る。融合MHC分子連結磁気微粒子は、融合MHC分子連結磁気微粒子の形態で提供されてもよく、融合MHC分子連結磁気微粒子の作製に供する組換えベクター又は磁性細菌の形質転換体を含む発現系の形態で提供されてもよい。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は質量基準である。
試薬類は全て研究用の市販特級品またはそれに準じたものを用い、試薬等の調製は適宜、蒸留水または蒸留水をMilliQ Lab(日本ミリポア)で処理した純水を用いた。
画像解析は、画像解析ソフトウェアAqua cosmos(浜松ホトニクス)を用いて行った。
N末端ビオチン標識ペプチドは、株式会社ベックスに合成を依頼し、その他のペプチドは、Gl Biochem (Shanghai) Ltd.に合成を依頼した。これまでのMHCに関する研究で、ペプチドのN末端をビオチン化してもMHC−ペプチド間の結合を妨げないことが示されており(J Cell Biol 2004;119:531-42)、本実施例では、ペプチドのN末端に下記のビオチン化C6リンカーを連結したペプチドを使用した。

(実施例1)
<融合MHCクラスI分子発現用プラスミドの構築と磁性細菌の形質転換>
Mms13と、NSリンカーと、HLA−A24(実際には、HLA−A24のβ鎖とα鎖とがGSリンカーを介して連結された融合タンパク質)とを、この順番に融合させた融合タンパク質(以下、「Mms13−NS linker−HLA−A24融合タンパク質」という)の発現用プラスミドpUM13LA24(図1参照)を、以下のようにして構築した。なお、HLA−A24遺伝子は、日本人に認められるMHCクラスI型遺伝子の中で、最も多く見られる遺伝子である。
NSリンカー((NS)18+LVPRGS+(NS))(配列番号5)をコードする遺伝子(303bp)(配列番号6)を含むプラスミド(pUC18(100))(TAKARA BIO社に遺伝子合成を発注)から制限酵素SspIを用いてNSリンカー遺伝子を切り出し、Mms13遺伝子を含むプラスミドpUMP16M13のSspIサイトに導入し、プラスミドpUM13L(100)を構築した。
pUMGP16M13は、SspI消化したpUMGにPmms16プロモーター、及びその下流にmms13遺伝子を含むPCR産物をライゲーションしたプラスミドである(Appl Environ Microbiol 2006;72:465-71, Methodのconstruction of expression vectorsを参照)。なお、pUMP16M13は、アンピシリン耐性遺伝子を含む。
次に、HLA−A24のβ鎖遺伝子(配列番号7)とα鎖遺伝子(配列番号8)とが、GSリンカー((GS))(配列番号1)をコードする遺伝子(45bp)(配列番号2)を介して連結され、更にその3’末端にFLAG−tag(DYKDDDDK)(配列番号11)をコードする遺伝子(配列番号12)が連結された融合遺伝子(末尾には更にストップコドンtgaが付加されている)(MBL社に遺伝子合成を発注)を、pUM13L(100)のNSリンカー遺伝子の下流に導入し、プラスミドpUM13LA24を構築した。
遺伝子組換えの際に用いる大腸菌は、Top10 (インビトロジェン) を用いた。
NSリンカー((NS)18+LVPRGS+(NS))内のアミノ酸(LVPRGS)は、トロンビンの消化部位である。本実施例においては、NSリンカー内に、HLA−A24の回収を予定してトロンビンの認識部位を設けたが、NSリンカーは4つのアスパラギンと1つのセリンの1ユニットを20回繰り返したポリペプチド((NS)20ポリペプチド)とすることができる。
上記で得られたpUM13LA24を、磁性細菌AMB−1にエレクトロポレーションにて導入し、形質転換体を得た。
(実施例2)
<融合MHCクラスII分子発現用プラスミドの構築と磁性細菌の形質転換>
Mms13と、NSリンカーと、HLA−DR4(実際には、HLA−DR4のα鎖とβ鎖とがGSリンカーを介して連結された融合タンパク質)とを、この順番に融合させた融合タンパク質(以下、「Mms13−NS linker−HLA−DR4融合タンパク質」という)の発現用プラスミドpUM13LDR4(図2参照)を、以下のようにして構築した。なお、HLA−DR4遺伝子は、日本人に認められるMHCクラスII型遺伝子の中で、最も多く見られる遺伝子である。
まず、実施例1と同様にしてプラスミドpUM13L(100)を構築した。
次に、HLA−DR4のα鎖遺伝子(配列番号9)とβ鎖遺伝子(配列番号10)とが、GSリンカー(配列番号1)をコードする遺伝子(配列番号3)を介して連結され、更にその3’末端にFLAG−tag(配列番号11)をコードする遺伝子(配列番号13)が連結された融合遺伝子(末尾には更にストップコドンtgaが付加されている)(MBL社に遺伝子合成を発注)を、pUM13L(100)のNSリンカー遺伝子の下流に導入し、プラスミドpUM13LDR4を構築した。
遺伝子組換えの際に用いる大腸菌は、Top10 (インビトロジェン) を用いた。
本実施例においては、実施例1と同様、NSリンカー内に、HLA−DR4の回収を予定してトロンビンの認識部位を設けたが、NSリンカーは4つのアスパラギンと1つのセリンの1ユニットを20回繰り返したポリペプチド((NS)20ポリペプチド)とすることができる。
上記で得られたpUM13LDR4を、磁性細菌AMB−1にエレクトロポレーションにて導入し、形質転換体を得た。
(実施例3)
<磁性細菌を用いた融合MHC分子連結磁気微粒子の作製>
実施例1及び2で得られた磁性細菌AMB−1の各形質転換体のプレカルチャーを、それぞれ10LのMSGM(magnetic spirillum growth medium)(J Bacteriol 1979;140:720-9)に植菌し(プレカルチャー/MSGM=1/1000(v/v))、室温(24〜26℃)にて約5〜7日間、静置培養した。植菌時には、MSGMをアルゴンガスでバブリング(pUM13LA24の場合は5〜10分間、pUM13LDR4の場合は30〜40分間)することにより微好気状態を形成した。なお、MSGMにはアンピシリンを添加した(5.0μg/ml)。
融合MHC分子連結磁気微粒子の磁性細菌からの分離は、Tanakaらの方法(Anal Chem 2000;72:3518-22)に準じて行った。即ち、静置培養して得られた培養物を遠心分離し(9000G、4℃、10分)、磁性細菌の菌体を集菌した。この菌体をHEPES緩衝液(10mM、pH7.4)に懸濁し、フレンチプレス(有限会社大岳製作所、5501M)を用いて1500kg/cmの圧力で3回破砕処理した。
この菌体破砕液をガラス容器に移し、ガラス容器の外側にNd−Fe−B(ネオジウム−鉄−ボロン)磁石を設置することにより、融合MHC分子連結磁気微粒子を集積させ、菌体破砕液の上清を除去した(以下、磁石を用いた集積物と上清との分離を「磁気分離」という)。HEPES緩衝液を加え懸濁した後に磁気分離することを10回繰り返し、融合MHC分子連結磁気微粒子の洗浄を行った。洗浄した融合MHC分子連結磁気微粒子は、PBS緩衝液に懸濁し、4℃で保存した。
以上のようにして、Mms13−NS linker−HLA−A24融合タンパク質を連結した磁気微粒子(以下、単に「HLA−A24連結磁気微粒子」という)、及びMms13−NS linker−HLA−DR4融合タンパク質を連結した磁気微粒子(以下、単に「HLA−DR4連結磁気微粒子」という)を得た。
以下、融合MHC分子連結磁気微粒子の質量を言う場合、当該質量は、融合MHC分子連結磁気微粒子を適量のPBSに分散させ吸光度(660nm)を測定し、検量線により乾燥質量に換算した値である。
(実施例4)
<磁気微粒子上のMHCの発現評価>
実施例3で得られたHLA−A24連結磁気微粒子1.0mg、HLA−DR4連結磁気微粒子8.0mgに、1%SDS溶液をそれぞれ30μl、25μl添加した。それぞれをVoltexミキサー及び超音波により撹拌しながら煮沸した(100℃、20〜30分)。次いで、磁気分離により上清を回収し各サンプルとした。各サンプルに3×SDSサンプルバッファーを加え(HLA−A24のサンプルには15μl、HLA−DR4のサンプルには12.5μl)、5分間煮沸後、SDS−PAGE(アクリルアミド濃度12.5%)を行った。続いて、泳動後のゲルをPVDF膜へセミドライ法で転写した。転写後のPVDF膜に対し、FLAG配列に対するアルカリホスファターゼ(ALP)標識マウス由来抗FLAGモノクローナル抗体(シグマ アルドリッチ ジャパン)(1μg/ml、PBS−T)(HLA−A24のサンプルには15ml、HLA−DR4のサンプルには10ml)を反応させた(室温、1時間)。PBS−Tによる10分間の洗浄を3回繰り返した後、基質としてNBT/BCIP-Blue Liquid Substrate(SIGMA,USA)を加え発色させた。
HLA−A24連結磁気微粒子についての結果を図3に、HLA−DR4連結磁気微粒子についての結果を図4に示す。図3及び4において、Mはマーカーのレーン、1は融合MHC分子連結磁気微粒子のサンプルのレーン、2は野生型の磁性細菌AMB−1から得た磁気微粒子のサンプルのレーンである。
Mms13−NS linker−HLA−A24融合タンパク質は75kDaであり、当該サイズにバンドが確認された。Mms13−NS linker−HLA−DR4融合タンパク質は74kDaであり、当該サイズにバンドが確認された。本結果により、磁気微粒子上へのHLA−A24の発現、及びHLA−DR4の発現が確認された。
(実施例5)
<ELISAによる磁気微粒子上のMHCクラスIの発現評価>
実施例3で得られたHLA−A24連結磁気微粒子100μgに、ALP標識マウス由来抗FLAGモノクローナル抗体100μl(10μg/ml)を添加し、30分室温で反応させた。反応後、PBSで洗浄し(200μl×3回)、磁気微粒子の懸濁液50μlを96ウェルマイクロタイタープレートに移した。50μlのルミホス530(Lumigen PPD, 4-Methyoxy-4(3-phosphatephenyl) spiro[1, 2-dioxeteane-3, 2’adamantine]disodium salt、3.3 ×10−4M)(和光純薬)を加え2分間室温で反応させた後、発光プレートリーダー(Lucy2 luminescence reader、アロカ)を用いて発光強度(kcounts/sec)を測定した。結果を表1に示す。
表1に示すとおり、野生型の磁気微粒子100μg当たりの発光強度が157kcounts/secであるのに対し、HLA−A24連結磁気微粒子100μg当たりの発光強度は993kcounts/secであった。FLAG−tagはHLA−A24のC末端部位に存在することから、実施例3で得られたHLA−A24連結磁気微粒子上において、HLA−A24融合タンパク質のC末端が磁気微粒子表面に局在していることが確認された。
(実施例6)
<融合MHCクラスI分子連結磁気微粒子の機能評価>
[ビオチン標識癌抗原ペプチドを用いたHLA−A24連結磁気微粒子の結合能評価]
実施例3で得られたHLA−A24連結磁気微粒子100μgに、PBSで50μg/mlに調製したビオチン標識癌抗原ペプチドを1ml加え、4℃で3時間反応させた。癌抗原ペプチドとしては、MAGE1ペプチド(NYKHCFPEI)(配列番号14)、CDC27ペプチド(FSWAMDLDPKGA)(配列番号15)を用いた。
反応後、PBSで洗浄し(200μl×3回)、ALP標識ストレプトアビジン(Roche、PBSで1000倍希釈)1mlを加え、室温で30分間反応させた。次いで、PBSで洗浄し(200μl×3回)、50μlのPBSに懸濁したものをサンプルとした。96ウェルマイクロタイタープレートに移し、50μlのルミホス530を加え2分間室温で反応させた後、前記発光プレートリーダーを用いて発光強度(kcounts/sec)を測定した。結果を表2に示す。
ここで用いたMAGE1ペプチドは、HLA−A24への結合が報告されている癌抗原ペプチドである(Int J Cancer 1999;80:169-72)。CDC27ペプチドは、MHCクラスIIへの結合が報告されている癌抗原ペプチドである(Science 1999;284:1351-4)。
表2に示すとおり、HLA−A24連結磁気微粒子をCDC27ペプチドと反応させた場合には、野生型の磁気微粒子と同程度にほとんど発光が見られなかった。HLA−A24連結磁気微粒子をMAGE1ペプチドと反応させた場合には、強い発光強度が観察された。このことから、HLA−A24連結磁気微粒子は、MHCクラスIタイプの癌抗原ペプチド結合能を有することが確認された。
(実施例7)
<融合MHCクラスI分子連結磁気微粒子の機能評価>
[グルタチオン処理によるHLA−A24連結磁気微粒子の結合能の変化の評価]
実施例6において、ビオチン標識ペプチドの調製に用いたPBSを、5mM還元型グルタチオンと0.5mM酸化型グルタチオンを含むPBSに代え、癌抗原ペプチドとして、MAGE1ペプチド(配列番号14)、CDC27ペプチド(配列番号15)、及びCMVpp65ペプチド(QYDPVAALF)(配列番号16)を用いた以外は実施例6と同様にして、発光強度(kcounts/sec)を測定した。結果を表3に示す。
なお、CMVpp65ペプチドは、HLA−A24への結合が報告されている癌抗原ペプチドである(Immunol Lett 2004;95:199-205)。
表3に示すとおり、HLA−A24連結磁気微粒子は、MAGE1ペプチド及びCMVpp65ペプチドと反応させた場合に強い発光強度を示すことから、MHCクラスIタイプの癌抗原ペプチド結合能を有することが確認された。
また、HLA−A24連結磁気微粒子は、グルタチオンを含むPBSで処理した場合に発光強度が増大することから、酸化条件においてHLA−A24連結磁気微粒子と癌抗原ペプチドとの結合量が増大することが確認された。このことから、HLA−A24に存在するシステイン間のジスルフィド結合が酸化条件において強化され、癌抗原ペプチドとの結合能が向上したことが示唆された。
(実施例8)
<融合MHCクラスI分子連結磁気微粒子の機能評価>
[ELISAによるペプチド結合時のHLA−A24の構造評価]
実施例3で得られたHLA−A24連結磁気微粒子100μgに、PBS又は5mM還元型グルタチオンと0.5mM酸化型グルタチオンを含むPBSで50μg/mlに調製した癌抗原ペプチドを1ml加え、4℃で3時間反応させた。癌抗原ペプチドとしては、MAGE1ペプチド(配列番号14)、CDC27ペプチド(配列番号15)、及びCLCA2ペプチド(LLGNCLPTV)(配列番号17)を用いた。
反応後、PBSで洗浄し(200μl×3回)、一次抗体としてマウス由来抗HLA−ABCモノクローナル抗体(W6/32)50μl(10μg/ml、PBS)を加え、室温で30分反応させた。反応後、PBSで洗浄し(200μl×3回)、2次抗体としてALP標識ヤギ由来抗マウスIgG抗体(インビトロジェン)50μl(10μg/ml、PBS)を加え、室温で30分反応させた。その後PBSで洗浄し(200μl×3回)、50μlのPBSに懸濁しサンプルとした。96ウェルマイクロタイタープレートに移し、50μlのルミホス530を加え2分間室温で反応させた後、前記マイクロプレートリーダーを用いて発光強度(kcounts/sec)を測定した。結果を表4に示す。
なお、CLCA2ペプチドは、HLA−A24と同じMHCクラスIに属するHLA−A2へ結合する癌抗原ペプチドとして同定されている(J Immunol 2002;169:540-7)。
マウス由来抗HLA−ABCモノクローナル抗体W6/32は、抗原ペプチドと複合体を形成し、立体構造が保たれたHLAにのみ特異的に結合することが報告されている(Cell 1978;14:9-20)。
表4に示すとおり、HLA−A24連結磁気微粒子をPBSで調製した抗原ペプチドと反応させた場合には、ペプチド無添加の場合と同程度の弱い発光強度であった。一方、グルタチオンを含むPBSで調製したMHCクラスI結合性抗原ペプチド(MAGE1ペプチド、CLCA2ペプチド)と反応させた場合には、高い発光強度が観察された。このことから、磁気微粒子上に発現しているHLA−A24は、HLA−A24内に存在するシステイン間のジスルフィド結合が酸化条件において強化され、マウス由来抗HLA−ABC モノクローナル抗体(W6/32)が認識可能な構造を形成したことが示唆された。HLA−A24連結磁気微粒子上のHLA−A24は、ヒト細胞上に発現した天然型HLA−A24と同様の構造をとってMHCクラスI結合性の抗原ペプチドに結合していることが示唆された。
(実施例9)
<融合MHCクラスI分子連結磁気微粒子の機能評価>
[HLA−A24結合性抗原ペプチドのスクリーニング]
実施例3で得られたHLA−A24連結磁気微粒子1mgに、クエン酸バッファー(0.06mol/L NaHPO、0.13mol/L クエン酸、pH3.0)50μlを加え30分間室温でインキュベートすることで、HLA−A24連結磁気微粒子を洗浄した。その後、磁気分離により上清を取り除き、HLA−A24連結磁気微粒子を回収した。
洗浄したHLA−A24連結磁気微粒子に、PBSで50μg/mlに調製したMAGE1ペプチド(配列番号14)とCDC27ペプチド(配列番号15)とを1:1の割合又は1:10の割合で混合したペプチド溶液をそれぞれ1mlずつ加え、4℃で3時間反応させた。反応後、磁気分離により上清を取り除き、HLA−A24連結磁気微粒子を回収した。次いで、HLA−A24連結磁気微粒子に前記クエン酸バッファー50μlを加え、30分間室温でインキュベートした。磁気分離により上清を回収し、上清を下記のA溶液で10倍希釈し、上清中に含まれたペプチドをNano−LC/MSにより解析した。結果を図5に示す。
Nano−LC/MS解析において、固定相はA溶液(2%アセトン、0.1%ギ酸)、移動相はB溶液(80%アセトン、0.1%ギ酸)を用いた。Nano−LC/MS解析装置は、direct nanoflow LC system(DiNa; KYA Technologies, Tokyo, Japan)とESI IT Mass spectrometer(LCQ-DECA XP; Thermo Fisher Scientific, San Jose, CA, USA)を用いた。カラムはC18逆相カラム(C18 Trap Column; 1 mm in length; id, 0.5 mm; C18 Separation Column; 50 mm in length; id, 0.1 mm)を用いた。LCによる分離は下記の条件で行った。各分析の前にはA溶液で10分以上カラムの平衡化を行った。そして、サンプルを注入した後、Nano−LC/MSをInjection モードに切り替え、A溶液を10分流してから解析を開始した。カラムにより分離されたペプチド溶液は直接質量分析計に導入し分析した。
・温度:室温
・流速:300nL/min
・勾配:A溶液;100%;2.1分、B溶液;0−8% Linear Gradient;3分、B溶液;8−45%Linear Gradient;30分、B溶液;45−100% Linear Gradient;5分、B溶液;100%;10分、A溶液;100%;20分
・計測時間:70分
MAGE1ペプチドは、分子量1489.79である。また、MAGE1ペプチドには塩基性のアミノ酸であるリシンとヒスチジンが1つずつ含まれるため、2つのプロトンが付加されやすく、上記解析により観察されるピークとしては2価イオンのピークが予測される。
図5に示すとおり、ペプチド混合比を1:1にした場合には、MAGE1ペプチドに相当するm/z 1489.59に最も強いピークが検出された。また、ペプチド混合比を1:10にした場合には、MAGE1ペプチドに2つプロトンが付加された際の質量電荷比に相当するm/z 745.62に最も強いピークが検出された。
このことから、HLA−A24連結磁気微粒子を用いることで抗原ペプチドを濃縮して抽出することができ、Nano−LC/MS等により抗原ペプチドの同定が可能であることが示された。
(実施例10)
<融合MHCクラスII分子連結磁気微粒子の機能評価>
[ビオチン標識ペプチドを用いた試料濃度およびアッセイ時間の評価]
使用するビオチン標識ペプチドはDMSO溶液で5mMに調節後、PBSで各濃度に調節して使用した。
実施例3で得られたHLA−DR4連結磁気微粒子100μgに、PBSで0〜60μM(0、12.5、25、50、及び60μM)に調製したビオチン標識癌抗原ペプチドを100μl加え、90分間室温で反応させた。ポジティブコントロールのペプチドとしては、CLIPペプチド(PKPPKPVSKMRMATPLLMQA)(配列番号18)、及びネガティブコントロールのペプチドとしては、HER2ペプチド(TYLPTNASL)(配列番号19)を用いた。
その後PBSで洗浄し(100μl×3回)、ALP標識ストレプトアビジン(PBSで1000倍希釈)100μlを加え、30分間室温で反応させた。次いで、Tris−HCl(pH7.4)で洗浄し(150μl×2回)、50μlのTris−HClに懸濁させてサンプルとした。96ウェルマイクロタイタープレートに移し、50μlのルミホス530を加え5分間室温で反応させた後、前記発光プレートリーダーを用いて発光強度(kcounts/sec)を測定した。結果を表5に示す。
また、実施例3で得られたHLA−DR4連結磁気微粒子100μgに、PBSで50μMに調製したビオチン標識CLIPペプチド(配列番号18)を100μl加え、室温で0〜6時間(0、1、3、5、及び6時間)反応させた。それぞれの反応時間経過後に、上記と同様の方法でALP標識ストレプトアビジンを加え反応させ、発光強度(kcounts/sec)の測定を行った。発光強度の解析結果を表6に示す。
ここで用いたCLIPは、MHCクラスIIが細胞内で生成される過程で、抗原結合部位であるαユニットとβユニット間に結合しているペプチドとして同定されている(Nature 1992;358:764-8)。HER2ペプチドは、MHCクラスIに属するHLA−Aに結合する癌抗原ペプチドである(Blood 2002;99:3717-24)。
表5に示すとおり、HLA−DR4連結磁気微粒子をCLIPペプチドと反応させた場合、HER2ペプチドと反応させた場合に比較し、最大約4倍の発光強度を示した。このことから、HLA−DR4連結磁気微粒子は、MHCクラスII上に提示される抗原ペプチドに結合することが確認された。
表6に示すとおり、ペプチド反応時間を検討した結果、反応時間5時間で最大量のペプチドの結合が見られた。
(実施例11)
<融合MHCクラスII分子連結磁気微粒子の機能評価>
[ビオチン標識癌抗原ペプチドを用いたHLA−DR4連結磁気微粒子の結合能評価]
実施例3で得られたHLA−DR4連結磁気微粒子100μgに、PBSで50μMに調製したビオチン標識癌抗原ペプチドを100μl加え、90分間室温で反応させた。癌抗原ペプチドとしては、HER2ペプチド(配列番号19)、NY−ESO−1 119−143ペプチド(PGVLLKEFTVSGNILTIRLTAADHR)(配列番号20)、MAGE−A3 146−160ペプチド(FFPVIFSKASSSLQL)(配列番号21)を用いた。
その後PBSで洗浄し(100μl×3回)、ALP標識ストレプトアビジン(PBSで1000倍希釈)100μlを加え、30分間室温で反応させた。次いで、PBSで洗浄し(100μl×3回)、Tris−HClにバッファーに交換後、50μlのTris−HClに懸濁したものをサンプルとした。96ウェルマイクロタイタープレートに移し、50μlのルミホス530を加え5分間室温で反応させた後、前記発光プレートリーダーを用いて発光強度(kcounts/sec)を測定した。結果を表7に示す。
なお、MAGE−A3 146−160ペプチド(Cancer Res 2001;61:4773-8)と、NY−ESO−1 119−143ペプチド(Cancer Res 2000;60:4946-52)は、HLA−DR4への結合が報告されている癌抗原ペプチドである。
表7に示すとおり、HLA−DR4連結磁気微粒子をHER2ペプチドと反応させた場合には、ペプチド無添加の場合と同様にほとんど発光が見られなかった。MAGE−A3 146−160ペプチドと反応させた場合、及びNY−ESO−1 119−143ペプチドと反応させた場合には、強い発光強度が観察された。このことから、HLA−DR4連結磁気微粒子は、MHCクラスIIタイプの癌抗原ペプチド結合能を有することが確認された。
(実施例12)
<融合MHCクラスII分子連結磁気微粒子の機能評価>
[ELISAによるペプチド結合時のHLA−DR4の構造評価]
実施例3で得られたHLA−DR4連結磁気微粒子100μgに、PBSで50μMに調製した癌抗原ペプチドを100μl加え、90分間室温で反応させた。癌抗原ペプチドとしては、HER2ペプチド(配列番号19)、NY−ESO−1 119−143ペプチド(配列番号20)、MAGE−A3 146−160ペプチド(配列番号21)を用いた。
その後、一次抗体としてPBSに懸濁したマウス由来抗HLA−DRモノクローナル抗体L243(Biodesign International)100μlを加え、室温で30分反応させた。反応後、PBSで洗浄し(100μl×3回)、2次抗体としてALP標識ヤギ由来抗マウスIgG抗体(インビトロジェン)100μlを加え、室温で30分反応させた。その後PBSで洗浄し(100μl×3回)、50μlのPBSに懸濁しサンプルとした。96ウェルマイクロタイタープレートに移し、50μlのルミホス530を加え5分間室温で反応させた後、前記マイクロプレートリーダーを用いて発光強度(kcounts/sec)を測定した。結果を表8に示す。
なお、MHCクラスIIは、α鎖とβ鎖の間のペプチド結合領域に抗原ペプチドが結合することで複合体構造 (αβヘテロダイマー) が保持されることが知られている。抗HLA−DRモノクローナル抗体L243は、抗原提示状態のHLA−DR/ペプチド複合体に対して特異的に結合することが報告されている(J Biol Chem 1995;270:971-7)。
表8に示すとおり、HLA−DR4連結磁気微粒子をHER2ペプチドと反応させた場合は、ペプチド無添加の場合と同程度の弱い発光強度であったことから、L243と結合していないことがわかった。一方、MAGE−A3 146−160ペプチドと反応させた場合、及びNY−ESO−1 119−143ペプチドと反応させた場合には、強い発光強度が観察されたことから、L243と結合していることがわかった。このことから、磁気微粒子上に発現しているHLA−DR4は、天然型のHLA−DRと同様の構造をとって抗原ペプチドを提示していることが示唆された。
(実施例13)
<融合MHCクラスII分子連結磁気微粒子の機能評価>
[ビオチン標識癌抗原ペプチドを用いたHLA−DR4連結磁気微粒子の抗原特異的結合能の評価]
実施例3で得られたHLA−DR4連結磁気微粒子200μgに、PBSで50μMに調製したビオチン標識癌抗原ペプチドを100μl加え、90分間室温で反応させた。癌抗原ペプチドとしては、MAGE−A3 146−160ペプチド(配列番号21)、MAGE−A3 146−158ペプチド(FFPVIFSKASSSL)(配列番号22)、及びMAGE−A3 146−156ペプチド(FFPVIFSKASS)(配列番号23)を用いた。
その後PBSで洗浄し(100μl×3回)、ALP標識ストレプトアビジン(PBSで1000倍希釈)100μlを加え、30分間室温で反応させた。その後PBSで洗浄し(100μl×3回)、Tris−HClにバッファーに交換後、50μlのTris−HClに懸濁したものをサンプルとした。96ウェルマイクロタイタープレートに移し、50μlのルミホス530を加え5分間室温で反応させた後、前記マイクロプレートリーダーを用いて発光強度(kcounts/sec)を測定した。結果を表9に示す。
ここで用いたMAGE−A3 146−156ペプチド、及びMAGE−A3 146−158ペプチドは、MAGE−A3 146−160ペプチド配列中のMHC結合部位と考えられるアミノ酸を含むペプチドである。
表9に示すとおり、HLA−DR4連結磁気微粒子をMAGE−A3 146−160ペプチドと反応させた場合に、最も強い発光強度が観察され、続いてMAGE−A3 146−158ペプチド、MAGE−A3 146−156ペプチドの順に強い発光強度が観察された。これは、MAGE−A3の抗原ペプチドを同定する際に検討されたT細胞活性化の実験結果(Cancer Res 2001;61:4773-8)と相関している。このことから、HLA−DR4連結磁気微粒子を用いて、抗原ペプチドのMHCクラスIIに対する結合特性を評価できることが示された。
(実施例14)
<融合MHCクラスII分子連結磁気微粒子の機能評価>
[HLA−DR4結合性抗原ペプチドのスクリーニング]
実施例3で得られたHLA−DR4連結磁気微粒子1mgに、PBSで50μMに調製したMAGE−A3 146−160ペプチド(配列番号21)を100μl加え、90分間室温で反応させた。反応後、磁気分離により上清を取り除き、HLA−DR4連結磁気微粒子を回収した。次いで、HLA−DR4連結磁気微粒子にクエン酸バッファー(0.06mol/L NaHPO、0.13mol/L クエン酸、pH3.0)50μlを加え、30分間室温でインキュベートした。磁気分離により上清を回収し、上清中に含まれたペプチドを、実施例9と同様にしてNano−LC/MSにより解析した。結果を図6に示す。
図6に示すとおり、MAGE−A3 146−160ペプチド(分子量1670.98)に2つプロトンが付加された際の質量電荷比に相当するm/z 836.23に最も強いピークが検出された。このことから、HLA−DR4連結磁気微粒子を用いることで抗原ペプチドを濃縮して抽出することができ、Nano−LC/MS等により抗原ペプチドの同定が可能であることが示された。
実施例の結果が示すとおり、融合MHCクラスI分子連結磁気微粒子を用いれば、MHCクラスIに結合性のある抗原ペプチドのスクリーニングが高効率かつ高感度でできる。融合MHCクラスII分子連結磁気微粒子を用いれば、MHCクラスIIに結合性のある抗原ペプチドのスクリーニングが高効率かつ高感度でできる。
よって、本発明の融合MHC分子連結磁気微粒子を用いることにより、高効率かつ高感度な抗原ペプチドのスクリーニング方法を提供することができる。

Claims (10)

  1. 磁性細菌由来の磁気微粒子と、
    前記磁気微粒子上に存在する磁性細菌由来の磁気微粒子膜タンパク質またはその断片と、
    前記磁気微粒子膜タンパク質またはその断片に連結された、第一のリンカーペプチドによって一本鎖化された融合MHC分子と、
    前記磁気微粒子膜タンパク質またはその断片と前記融合MHC分子とを連結する第二のリンカーペプチドと、
    を備え
    前記融合MHC分子が、
    MHCクラスI分子のα鎖またはその断片であって、α ドメイン、α ドメインおよびα ドメインを含む断片と、MHCクラスI分子のβ鎖と、これらの間に配置された第一のリンカーペプチドと、からなる抗原ペプチド結合能を有する融合MHC分子;
    MHCクラスII分子のα鎖またはその断片であって、α ドメインおよびα ドメインを含む断片と、MHCクラスII分子のβ鎖またはその断片であって、β ドメインおよびβ ドメインを含む断片と、これらの間に配置された第一のリンカーペプチドと、からなる抗原ペプチド結合能を有する融合MHC分子;
    のいずれかであり、
    前記第二のリンカーペプチドが、配列番号4で示されるポリペプチドまたは配列番号5で示されるポリペプチドである、
    融合MHC分子連結磁気微粒子。
  2. 前記第一のリンカーペプチドが、(グリシン−グリシン−グリシン−グリシン−セリン)を2回〜6回繰り返すアミノ酸配列のポリペプチドである、請求項1に記載の融合MHC分子連結磁気微粒子。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の融合MHC分子連結磁気微粒子と抗原ペプチドを含む試料とを接触させること、
    前記接触後の融合MHC分子連結磁気微粒子から、前記接触により融合MHC分子連結磁気微粒子に結合したペプチドを抗原ペプチドとして抽出すること、
    を含む抗原ペプチドのスクリーニング方法。
  4. 更に、前記接触後の融合MHC分子連結磁気微粒子を磁気を利用して濃縮することを含む請求項3に記載の抗原ペプチドのスクリーニング方法。
  5. 前記融合MHC分子連結磁気微粒子が、前記試料と接触させる前に融合MHC分子内にジスルフィド結合を形成させる処理をされたものである請求項3又は請求項4に記載の抗原ペプチドのスクリーニング方法。
  6. 前記融合MHC分子連結磁気微粒子が、前記試料と接触させる前に洗浄されたものである請求項3から請求項5のいずれか1項に記載の抗原ペプチドのスクリーニング方法。
  7. 前記抗原ペプチドが癌抗原ペプチドである請求項3から請求項6のいずれか1項に記載の抗原ペプチドのスクリーニング方法。
  8. 磁性細菌由来の磁気微粒子膜タンパク質またはその断片をコードするDNA(i)と、
    第一のリンカーペプチドによって一本鎖化された融合MHC分子をコードするDNA(ii)と、
    前記磁気微粒子膜タンパク質またはその断片と前記融合MHC分子とを連結する第二のリンカーペプチドをコードするDNA(iii)と、
    を含み、
    前記融合MHC分子が、
    MHCクラスI分子のα鎖またはその断片であって、α ドメイン、α ドメインおよびα ドメインを含む断片と、MHCクラスI分子のβ鎖と、これらの間に配置された第一のリンカーペプチドと、からなる抗原ペプチド結合能を有する融合MHC分子;
    MHCクラスII分子のα鎖またはその断片であって、α ドメインおよびα ドメインを含む断片と、MHCクラスII分子のβ鎖またはその断片であって、β ドメインおよびβ ドメインを含む断片と、これらの間に配置された第一のリンカーペプチドと、からなる抗原ペプチド結合能を有する融合MHC分子;
    のいずれかであり、
    前記第二のリンカーペプチドが、配列番号4で示されるポリペプチドまたは配列番号5で示されるポリペプチドである、
    組換えベクター。
  9. 前記DNA(i)、前記DNA(ii)、および前記DNA(iii)が、5’側からDNA(i)、DNA(iii)、DNA(ii)の順で連続して配置されている、請求項8に記載の組換えベクター。
  10. 請求項8又は請求項9に記載の組換えベクターを含む磁性細菌の形質転換体。
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