以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1に示す車両11はワンボックスタイプの乗用車であり、その車体12の側部に設けられた乗降用の開口部13を開閉するための開閉体としてのスライドドア14を備えている。このスライドドア14は、車体12の側部に固定されたガイドレールとしてのセンタレール15に沿って車両前後方向に移動されることで開口部13を開閉するようになっている。
図2に示すように、車体12の側部における開口部後方の上下方向略中央部には、車両前後方向に沿って車室内側に向けて窪む凹部12aが形成されている。センタレール15は、この凹部12a内に配置されている。センタレール15は車室外側に開口する断面略方形形状に形成されており、車体12の側部に沿って車両前後方向に延びる直線部15aと、直線部15aの車両前方側の端部から車室内側へ向けて湾曲する引き込み部15bとを備えている。
一方、スライドドア14の車両後方側の上下方向略中央部にはローラユニット16が設けられている。ローラユニット16は、スライドドア14のドアパネルに固定されたブラケット17に回動軸18を介して取り付けられるセンタアーム19を備えている。センタアーム19は、軸方向を車両上下方向に向けて配置された回動軸18により、スライドドア14に対して水平方向に回動自在に支持されている。このセンタアーム19には、センタレール15側へ向けて屈曲するローラ装着部19aが設けられており、ローラ装着部19aに走行ローラ20と一対の案内ローラ21とが回転自在に取り付けられている。これら走行ローラ20および案内ローラ21はセンタレール15内に配置されており、走行ローラ20がセンタレール15の車両下方向の面を走行するとともに案内ローラ21がセンタレール15の車幅方向両面に支持されて案内されることで、センタアーム19がセンタレール15に沿って移動可能に装着されている。
このセンタアーム19がセンタレール15に沿って車両前後方向に移動することにより、スライドドア14は車体12の側部に沿ってスライド式に開閉される。つまり、センタアーム19がセンタレール15の直線部15aに案内されるとスライドドア14は開状態となり、センタアーム19がセンタレール15の引き込み部15bに案内されると、スライドドア14は車体12の側面と面一となるように車室内側へ引き込まれて閉状態となる。センタアーム19がセンタレール15の引き込み部15bを移動する際には、センタアーム19が回動軸18を軸心としてスライドドア14に対して回動されることにより、スライドドア14が車体12の側部とほぼ平行を保った状態で車両前後方向に移動される。
なお、図1に示すように、スライドドア14の車両前方側の上下端部に設けられたローラユニット22,23は、車体12における開口部13の上下縁部に固定されたアッパレール24、ロワーレール25にそれぞれ移動自在に装着されている。これにより、スライドドア14は計3カ所において車体12に支持されている。また、図2に示すように、車両11の美観性を向上させるために、車体12の側部にはセンタレール15を覆うレールカバー26が装着されている。
この車両11には、スライドドア14を自動的に開閉するために、車両用自動開閉装置としてのパワースライド装置30が設けられている。パワースライド装置30は、スライドドア14の開閉方向に沿って配索された閉側ケーブル31と開側ケーブル32とを備える所謂ケーブル式の開閉装置となっている。また、パワースライド装置30は、一対のケーブル31,32を駆動するための駆動源としての駆動ユニット(PSDモータ)33をスライドドア14内に搭載したドア内蔵型の開閉装置である。この駆動ユニット33は、スライドドア14内においてローラユニット16よりも車両下方側に配置されている。
閉側ケーブル31は、その一端が後述する駆動ユニット33のドラム43に固定されている。そして、駆動ユニット33からローラユニット16を介して車体12側へ配索されてセンタレール15に沿って配索され、その他端部31aがセンタレール15の閉側(センタレール15における車両前方側)の端部付近において車体12の側部に係止されている。また、開側ケーブル32は、その一端が駆動ユニット33のドラム43に固定されている。そして、駆動ユニット33からローラユニット16を介して車体12側へ配索されてセンタレール15に沿って配索され、その他端部32aがセンタレール15の開側(センタレール15における車両後方側)の端部付近において車体12の側部に係止されている。
スライドドア14内において駆動ユニット33とローラユニット16との間には、ケーブル31,32を案内するための閉側アウタケーシング35および開側アウタケーシング36が湾曲させた状態、つまり、たるみを持たせた状態で設けられている。これらアウタケーシング35,36は可撓性を有する樹脂材料によりチューブ状に形成されている。すなわち、駆動ユニット33とローラユニット16との間においてケーブル31,32は、アウタケーシング35,36内に挿通されてアウタケーシング35,36に沿って案内される。
図3は駆動ユニットの内部構造の一部を示す背面図であり、駆動ユニット33をスライドドア14のドアパネルに固定するためのブラケット40を取り外した状態を示している。
図3に示すように、駆動ユニット33は、モータ本体41とモータ本体41の出力によりケーブル31,32を駆動する駆動部42とを有している。駆動部42は、図示しない減速機構およびクラッチ機構を介してモータ本体41の出力が伝達されるドラム43を備えている。ドラム43にはケーブル31,32の一端が固定され、ケーブル31,32が一端から他端に向けてそれぞれ反対方向に巻き掛けられている。これにより、モータ本体41の出力により一対のケーブル31,32が相互に逆向きに駆動される。つまり、ドラム43が図3における時計回り方向に回転される場合には、開側ケーブル32がドラム43により巻き取られるとともに閉側ケーブル31がドラム43により送り出されることで、スライドドア14が開側へ牽引されて自動開動作する。逆に、ドラム43が図3における反時計回り方向に回転される場合には、閉側ケーブル31がドラム43により巻き取られるとともに開側ケーブル32がドラム43により送り出させることで、スライドドア14が閉側へ牽引されて自動閉動作することとなる。
なお、モータ本体41としては、例えばブラシ付直流モータ等の正逆両方向に回転可能な電動モータが用いられる。また、スライドドア14が手動により開閉されるときには、駆動部42に設けられた図示しないクラッチ機構によりモータ本体41とドラム43との間の動力伝達経路が遮断される。
駆動ユニット33には、ケーブル31,32に所定の張力を付与するためのテンショナ機構44が組み付けられている。テンショナ機構44は、アウタケーシング35,36の一端に装着されたエンドキャップ45a,45bをケーブル31,32の配索方向に沿って進退移動自在に収容するテンショナケース46と、テンショナケース46内に設けられてエンドキャップ45a,45bをテンショナケース46から突出させる方向(エンドキャップ45a,45bをドラム43から離間させる方向)へ付勢するコイルばね47a,47bとを備えている。このテンショナ機構44により、エンドキャップ45a,45bがテンショナケース46から突出されると、駆動ユニット33とローラユニット16との間のアウタケーシング長が長くなるため、つまりケーブル31,32の全長に対するアウタケーシング長の比率が大きくなるため、アウタケーシング35,36の内部に挿通されるケーブル31,32に所定の張力が付与されることとなる。したがって、センタアーム19がセンタレール15の引き込み部15bに案内される等して、駆動ユニット33とセンタレール15の両端側との間で配索されるケーブル31,32のケーブル長が変化しても、テンショナ機構44によりケーブル31,32の張力が保たれるので、ケーブル31,32に緩みが生じないようになっている。
但し、本実施の形態においては、テンショナ機構44を駆動ユニット33に組み付けるようにしたが、ケーブル31,32の他端部31a,32aをそれぞれ車体12の側部に係止するための図示しない係止ユニットにテンショナ機構を組み付けるようにしても良い。
次に、ローラユニット16の構造について説明する。図4はローラユニットを示す斜視図であり、図5はローラユニットの分解斜視図である。図6はスライドドアの開状態におけるローラユニットを示す平面図であり、図7はスライドドアの閉状態におけるローラユニットを示す平面図である。図8はローラユニットにおけるケーブルの配索態様を示す説明図であり、図6におけるA−A線に沿う一部切り欠き断面図である。図9は図6におけるB−B線に沿う断面図であり、図10はスライドドアの開状態および閉状態における開側ケーブルの配索態様を示す説明図である。なお、図10において、スライドドア14の開状態における部材には符号にAを付し、スライドドア14の閉状態における部材には符号にBを付して説明する。
ローラユニット16は、駆動ユニット33側からローラユニット16へ配索されたケーブル31,32を車体12側へ案内するために、ガイドプーリ50およびドア側プーリ51,52を有している。第1のプーリとしてのガイドプーリ(振分プーリ)50はローラユニット16のセンタレール15側に配置され、ケーブル31,32をローラユニット16(センタアーム19)からセンタレール15の両端側へそれぞれ配索している。第2のプーリとしてのドア側プーリ(中間プーリ)51,52はローラユニット16の駆動ユニット33側に配置され、ケーブル31,32を駆動ユニット33側からガイドプーリ50へ配索している。
図6に示すように、スライドドア14のドアパネル14aには、センタアーム19の車両前方側に隣接させて、ドア側プーリ51,52を回転自在に収容する第2のプーリケースとしてのドア側プーリケース53が固定されている。ドア側プーリケース53は車両前後方向に延びるケース状をしており、ドア側プーリケース53の駆動ユニット33側(車両前方側、図中の左方向)の端部には樹脂製のケーシングキャップ54が組み付けられている。ケーシングキャップ54には、図8に示すように、一対のアウタケーシング35,36の他端が車両上下方向に並べて配置された状態で纏めて装着されている。このケーシングキャップ54を介して、駆動ユニット33側からアウタケーシング35,36により案内されたケーブル31,32がドア側プーリケース53内へ導かれている。
ドア側プーリケース53のセンタアーム19側(車両後方側、図中の右方向)の端部には、ドア側プーリ51,52を収容する略円筒形状のプーリ収容部53aが形成されている。プーリ収容部53a内には車両上下方向に延びる円柱形状の第2の回転軸55が支持されており、回転軸55によりドア側プーリ51,52がプーリ収容部53a内に回転自在に支持されている。ドア側プーリ51,52および回転軸55はプーリ収容部53aにより覆われており、ドア側プーリ51,52がドア側プーリケース53を介してスライドドア14のドアパネル14aに回転自在に取り付けられている。このプーリ収容部53aの側面にはセンタアーム19側に開口する引出孔56が形成されており、ドア側プーリ51,52のプーリ溝51a,52aが引出孔56を介してセンタアーム19側に対向している。
図8に示すように、一対のドア側プーリ51,52は、これらドア側プーリ51,52の間に位置して回転軸55に固定されたワッシャ57により相互に干渉しないように、同軸上に並べて配置されている。ケーシングキャップ54からドア側プーリケース53内へ導かれた閉側ケーブル31は、一対のドア側プーリ51,52のうち車両下方側のドア側プーリ51のプーリ溝51aに車室外側(スライドドア14側)から巻き掛けられ、引出孔56を介してドア側プーリケース53の外部へ引き出されている。また、ケーシングキャップ54からドア側プーリケース53内へ導かれた開側ケーブル32は、一対のドア側プーリ51,52のうち車両上方側のドア側プーリ52のプーリ溝52aに車室外側から巻き掛けられ、引出孔56を介してドア側プーリケース53の外部へ引き出されている。つまり、ケーブル31,32はそれぞれドア側プーリ51,52のプーリ溝51a,52aに同じ向きに巻き掛けられている。駆動ユニット33のドラム43によって一方のケーブルを巻き取るとともに他方のケーブルを送り出す際には、一対のドア側プーリ51,52が互いに逆向きに回転することによりケーブル31,32が相互に干渉することなく滑らかに駆動される。
プーリ収容部53aの軸方向(車両上下方向)両端壁には、それぞれプーリ収容部53aの外側に向けて回転軸55の軸方向に突出する一対の円筒状の揺動軸58a,58bが設けられており、一対の揺動軸58a,58bが相互に同軸上に形成されている。この揺動軸58a,58bは回転軸55に対してドア側プーリ51,52の約半径分だけ車室外側へオフセットして設けられており、図9に示すように、ドア側プーリケース53がスライドドア14に固定された状態でドア側プーリケース53の揺動軸58a,58bがセンタアーム19の回動軸18と同軸上に配置されている。
ドア側プーリケース53は、ドアパネル14aに形成された図示しない貫通孔を介してプーリ収容部53aがスライドドア14の外部へ迫り出した状態で、スライドドア14のドアパネル14aに固定されている。ドア側プーリケース53には、プーリ収容部53aよりも車両前方側に位置して、ドアパネル14aの貫通孔を閉塞するドアシール部53bが形成されており、ドアシール部53bに装着されるドアシール材59によりドアパネル14aの貫通孔が水密に密閉されるようになっている。
一方、図5に示すように、センタアーム19には、ローラ装着部19aよりも車両下方側に位置して、センタレール15側に開口する開口部19bが形成されている。支持部材60は先端部を開口部19bへ向けて突出させた状態で、基端部においてセンタアーム19にボルト61により固定されている。支持部材60の先端部には、車両上下方向に延びる円柱形状の第1の回転軸62の軸方向基端部が固定されており、回転軸62の軸方向先端側が支持部材60から車両上方側に向けて延びている。この回転軸62には、ガイドプーリ50を回転自在に収容する第1のプーリケースとしてのガイドプーリケース63が回動自在に取り付けられている。
ガイドプーリケース63は、センタアーム19の開口部19bとドア側プーリケース53のプーリ収容部53aとの間で延びるケース状をしており、ガイドプーリケース63のセンタアーム19側(車両後方側)の端部には、ガイドプーリ50を収容する略円筒形状のプーリ収容部63aが形成されている。ガイドプーリケース63はプーリ収容部63aの軸心において回転軸62により回動自在に支持されており、回転軸62によりガイドプーリ50がプーリ収容部63a内に回転自在に支持されている。ガイドプーリ50および回転軸62の軸方向他端側はプーリ収容部63aにより覆われており、ガイドプーリ50が支持部材60を介してセンタアーム19に回転自在に取り付けられている。ガイドプーリケース63は、プーリ収容部63aがセンタアーム19の開口部19bを介してセンタレール15側へ一部突出した状態で配置されており、プーリ収容部63aの当該突出部分の側壁にセンタレール15側に開口する引出孔64(図11に示す)が形成されている。
図8に示すように、ガイドプーリ50は、一対のプーリ溝50a,50bが同軸上に並べて形成された2段プーリとなっており、ガイドプーリ50のプーリ溝50a,50bが引出孔64を介してセンタレール15側に対向している。ドア側プーリケース53からセンタアーム19側へ引き出された閉側ケーブル31は、ガイドプーリ50の一対のプーリ溝50a,50bのうち車両下方側のプーリ溝50aに車室外側から巻き掛けられ、引出孔64およびセンタアーム19の開口部19bを介してセンタレール15の閉側へ配索されている。また、ドア側プーリケース53からセンタアーム19側へ引き出された開側ケーブル32は、ガイドプーリ50の一対のプーリ50a,50bのうち車両上方側のプーリ溝50bに車室内側(車体12側)から巻き掛けられ、引出孔64およびセンタアーム19の開口部19bを介してセンタレール15の開側へ配索されている。つまり、ケーブル31,32はそれぞれガイドプーリ50のプーリ溝50a,50bに相互に逆向きに巻き掛けられている。駆動ユニット33のドラム43によって一方のケーブルを巻き取るとともに他方のケーブルを送り出す際には、ガイドプーリ50がケーブル31,32を互いに逆向きに案内することによりケーブル31,32が相互に干渉することなく滑らかに駆動される。
ガイドプーリケース63のスライドドア14側(車両前方側)の端部には、ドア側プーリケース53のプーリ収容部53aを覆う連結収容部63bが形成されている。連結収容部63bはドア側プーリケース53側に開口しており、プーリ収容部53aを収容し、覆蓋可能なケース状に形成されている。プーリ収容部53aが連結収容部63bに覆われた状態でプーリ収容部53aの軸方向両端壁をそれぞれ車両上下方向外側から覆う連結収容部63bの軸方向両端壁には、図9に示すように、ドア側プーリケース53の揺動軸58a,58bに対応させて、それぞれ連結収容部63bの内側に向けて開口する一対の連結溝65a,65bが形成されている。連結溝65a,65bは、回転軸55,62の軸心を結ぶ線分に平行に延びる長孔形状をしており、一対の連結溝65a,65bが相互に回転軸62の軸方向に対向して形成されている。また、連結収容部63bはドア側プーリケース53の引出孔56を覆い、引出孔56から直接雨水等により被水することを抑制している。
ガイドプーリケース63には、プーリ収容部63aと連結収容部63bとの間にケーブルカバー部63cが一体に形成されている。ケーブルカバー部63cは、ガイドプーリ50とドア側プーリ51,52との間で配索されるケーブル31,32に沿って形成され、ケーブルカバー部63cによりガイドプーリ50とドア側プーリ51,52との間でケーブル31,32が覆われている。
これらドア側プーリケース53とガイドプーリケース63とは、連結収容部63b内にプーリ収容部53aが収容された状態で、一対の揺動軸58a,58bが一対の連結溝65a,65b内にその長手方向に沿って移動自在に挿入されることにより組み付けられている。これにより、ガイドプーリケース63はドア側プーリケース53に対して、揺動軸58a,58bを軸心として揺動自在、且つ揺動軸58a,58bが連結溝65a,65b内を移動可能な範囲内において連結溝65a,65bの長手方向に沿って移動自在に取り付けられている。
図6および図7に示すように、ドア側プーリケース53に対するガイドプーリケース63の揺動軸58a,58bは、ドア側プーリ51,52の回転軸55に対して車室外側へオフセットして設けられており、センタアーム19の回動軸18と同軸上に配置されている。これら揺動軸58a,58bは回転軸55に対してドア側プーリ51,52の約半径分オフセットされ、揺動軸58a,58bおよび回動軸18がドア側プーリ51,52におけるケーブル31,32の巻き掛け位置付近に配置されている。
センタアーム19がセンタレール15の引き込み部15bを移動する際には、回動軸18を軸心としてセンタアーム19がスライドドア14に対して回動される。このとき、ガイドプーリ50は、支持部材60を介してセンタアーム19に取り付けられているため、センタアーム19とともに回動軸18を軸心としてスライドドア14に対して回動される。一方、ドア側プーリ51,52は、ドア側プーリケース53を介してスライドドア14に取り付けられているため、センタアーム19が回動してもスライドドア14に対して移動することはない。
そのため、センタアーム19が回動軸18を軸心としてスライドドア14に対して回動されると、ガイドプーリ50とドア側プーリ51,52とのピッチ、つまりガイドプーリ50の回転軸62とドア側プーリ51,52の回転軸55との軸間距離が変化することとなる。すなわち、ドア側プーリ51,52の回転軸55に対してセンタアーム19の回動軸18を車室外側へドア側プーリ51,52の約半径分だけオフセットさせたので、図10に示すように、スライドドア14の開状態におけるガイドプーリ50Aとドア側プーリ51A,52AとのピッチPAよりも、スライドドア14の閉状態におけるガイドプーリ50Bとドア側プーリ51B,52BとのピッチPBの方が大きくなる。また、センタアーム19が回動軸18を軸心としてスライドドア14に対して回動されると、ドア側プーリ51,52におけるケーブル31,32の巻き角つまりケーブル巻き掛け長さが変化することとなる。すなわち、ケーブル31,32がドア側プーリ51,52に車室外側から巻き掛けられているので、図10に示すように、スライドドア14の開状態におけるドア側プーリ51A,52Aのケーブル巻き掛け長さLAよりも、スライドドア14の閉状態におけるドア側プーリ51B,52Bのケーブル巻き掛け長さLBの方が小さくなる。
したがって、センタアーム19がスライドドア14に対して回動するのに伴って、ガイドプーリ50とドア側プーリ51,52とのピッチが変化したとしても、ドア側プーリ51,52におけるケーブル31,32の巻き掛け長さが変化するため、全体として、ガイドプーリ50とドア側プーリ51,52との間で配索されるケーブル31,32のケーブル長変化を抑えることができる。例えば、センタアーム19が開状態から閉状態に回動される場合には、ガイドプーリ50とドア側プーリ51,52との間のピッチが開状態におけるピッチPAから閉状態におけるピッチPBに大きくなるが、その分、ドア側プーリ51,52における開側ケーブル32の巻き掛け長さが開状態におけるケーブル巻き掛け長さLAから閉状態におけるケーブル巻き掛け長さLBに小さくなるので、全体としてPA+LA≒PB+LBとなり、ローラユニット16において配索される開側ケーブル32のケーブル長変化を抑えることができる。なお、図10においては開側ケーブル32を図示して説明したが、閉側ケーブル31においても同様にケーブル長変化を抑えられることはもちろんである。これにより、ケーブル31,32に緩みが生じることが抑制されるので、パワースライド装置30を円滑に作動させることが可能となる。
また、ガイドプーリケース63は、プーリ収容部63aにおいてガイドプーリ50の回転軸62に回動自在に支持されるとともに、連結収容部63bにおいてドア側プーリケース53に設けられた揺動軸58a,58bに揺動自在且つ移動自在に連結されており、センタアーム19がスライドドア14に回動されるのに伴ってガイドプーリケース63はスライドドア14に対して揺動される。このとき、揺動軸58a,58bがセンタアーム19の回動軸18と同軸上に配置されているため、ガイドプーリケース63はドア側プーリケース53に対して揺動軸58a,58bを軸心として揺動されることとなる。つまり、揺動軸58a,58bとガイドプーリ50の回転軸62との軸間距離が変化することなく、ガイドプーリケース63はセンタアーム19と共に回動軸18を軸心として回動される。
このように、ガイドプーリ50の回転軸62およびドア側プーリ51,52の回転軸55をプーリケース53,63により覆うようにしたので、回転軸55,62が雨水等により被水することが抑制される。これにより、回転軸55,62に塗布されたグリスが雨水により流れてしまったり、回転軸55,62に塵埃等が付着したりすることが抑制され、これらを原因とする異音やフリクションの発生を防止することができる。
また、ドア側プーリケース53に対するガイドプーリケース63の揺動軸58a,58bをセンタアーム19の回動軸18と同軸上に配置するようにしたので、ガイドプーリケース63をセンタアーム19と共に回動軸18を軸心として回動させることができる。これにより、ガイドプーリケース63の動きがシンプルとなり、ローラユニット16の構造を簡略化することが可能となる。
なお、本実施の形態においては、揺動軸58a,58bが挿入される連結溝65a,65bを長孔形状としたが、揺動軸58a,58bとガイドプーリ50の回転軸62との軸間距離が変化することがないため、例えば、連結溝65a,65bを揺動軸58a,58bが揺動自在に挿入される円孔形状としても良い。また、本実施の形態においては、ガイドプーリケース63を回転軸62により回動自在に支持するようにしたが、ガイドプーリケース63はセンタアーム19と共に回動されるため、ガイドプーリケース63を回転軸62に固定するようにしても良い。さらに、本実施の形態においては、揺動軸58a,58bをドア側プーリケース53に設けるとともに連結溝65a,65bをガイドプーリケース63に形成するようにしたが、揺動軸58a,58bをガイドプーリケース63に設けるとともに連結溝65a,65bをドア側プーリケース53に形成するようにしても良い。
図11はドア側プーリケースとガイドプーリケースとの組み付け状態を示す斜視図であり、スライドドア14の閉状態において車室内側から見た斜視図である。図12(A)、(B)はそれぞれスライドドアの開状態および閉状態におけるドア側プーリケースとガイドプーリケースとの組み付け状態を示す平面図である。
図12に示すように、ドア側プーリケース53のプーリ収容部53aには、車室内側に対向する側壁により、揺動軸58a,58bを軸心とする円弧状の被カバー壁67が設けられている。一方、ガイドプーリケース63の連結収容部63bには、スライドドア14の開状態において車室内側に対向する側壁によりカバー壁68が設けられている。カバー壁68は、ドア側プーリケース53とガイドプーリケース63とが組み付けられた状態において揺動軸58a,58bを軸心とする円弧状に形成されており、カバー壁68の内径は被カバー壁67の外径よりも大きく設定されている。
センタアーム19がスライドドア14に対して回動されるのに伴って、ガイドプーリケース63がドア側プーリケース53に対して揺動軸58a,58bを軸心として揺動されると、スライドドア14の開状態ではプーリ収容部53aのほぼ全体が連結収容部63b内に収容され、スライドドア14の閉状態ではプーリ収容部53aの一部が連結収容部63bの外部へ迫り出す。そのため、図12(A)に示すようにスライドドア14の開状態においては、被カバー壁67のほぼ全体がカバー壁68により所定の隙間をあけて覆われる。スライドドア14の開状態において、揺動軸58a,58bを中心とする被カバー壁67とカバー壁68とがラップする角度をαとすると、角度αは揺動軸58a,58bを中心とするガイドプーリケース63の揺動角度βよりも大きく設定されている。これにより、図12(B)に示すようにスライドドア14の閉状態においても、被カバー壁67の一部がカバー壁68に所定の隙間をあけて覆われることとなる。つまり、ガイドプーリケース63がドア側プーリケース53に対して揺動する際に、カバー壁68と被カバー壁67の少なくとも一部とが常にラップすることとなる。
このように、ガイドプーリケース63がドア側プーリケース53に対して揺動される際に被カバー壁67の少なくとも一部がカバー壁68により覆われるようにしたので、ガイドプーリケース63の連結収容部63bとドア側プーリケース53のプーリ収容部53aとの間の隙間を介してプーリケース53,63内に雨水や塵埃等の異物が進入することが抑制される。また、被カバー壁67およびカバー壁68を揺動軸58a,58bを軸心とする円弧状に形成したので、ガイドプーリケース63がドア側プーリケース53に対して揺動される際に被カバー壁67とカバー壁68との間の隙間を一定とすることができ、当該隙間を常に小さく設定することが可能となる。したがって、回転軸55が雨水等により被水することがさらに抑制され、回転軸55の防水性を向上させることができる。
次に、ドア側プーリケース53の構造について詳細に説明する。図13はドア側プーリケースを示す斜視図であり、図14(A)、(B)はそれぞれドア側プーリケースの組み付け工程を示す説明図である。図15は図13におけるC−C線に沿う断面図であり、図16は図13におけるD−D線に沿う断面図である。
ドア側プーリケース53は、ドア側プーリ51,52の回転軸55を支持するケース部材70と、ケース部材70に組み付けられるカバー部材71とを有しており、ケース部材70に対してカバー部材71を回転軸55の径方向一方側から組み付けることにより形成されている。
ケース部材70は、ケーブル31,32の配索方向に沿って延びるとともに、その長手方向と直交する側つまり回転軸55の径方向一方側に開口する樹脂製のケース半体である。ケース部材70の長手方向一端部には、回転軸55の径方向に延びる略円板形状の一対の支持壁72が回転軸55の軸方向に相互に所定の間隔をあけて対向して設けられている。一対の支持壁72は、回転軸55の径方向他方側つまりケース部材70の閉塞側において円弧状の被カバー壁67により相互に連結されている。
一対の支持壁72の軸心には、支持壁72の外側面(回転軸55の軸方向における外側の端面)から回転軸55の軸方向に突出する突出部としての円筒状のボス部72aがそれぞれ設けられており、一対のボス部72aにより回転軸55の軸方向両端部が支持されている。そして、一対の支持壁72の間でドア側プーリ51,52が回転軸55により回転自在に支持されており、ドア側プーリ51,52の相互に離反する側の軸方向端面が一対の支持壁72によりそれぞれ覆われている。また、ケース部材70の長手方向一端部には、一対の支持壁72よりも回転軸55の軸方向外側に位置して、一対の支持壁72の外側面にそれぞれ対向する一対の保持リブ73が設けられている。この保持リブ73と支持壁72との間には、回転軸55の径方向一方側に向けて開口する所定の隙間が形成されている。
ケース部材70の長手方向他端側には、ケーシングキャップ54が組み付けられるとともにケーシングキャップ54とドア側プーリ51,52との間でケーブル31,32を収容するケーブル収容部74が設けられている。ケーブル収容部74は回転軸55の径方向一方側に開口しており、ケーシングキャップ54が組み付けられた状態でケーシングキャップ54とドア側プーリ51,52との間で配索されるケーブル31,32がケース部材70の開口側に露出している。このケーブル収容部74の長手方向他端部には、図示しないボルト等によりケース部材70をスライドドア14のドアパネル14aに固定するためのブラケット74aが設けられ、ケーブル収容部74の長手方向一端部には、ケーブル収容部74から回転軸方向55の軸方向外側に延びるドアシール半体74bが設けられている。また、ケーブル収容部74の長手方向他端部には、ケーシングキャップ54の組み付け位置に対して回転軸55の軸方向両側に位置させて、回転軸55の径方向一方側つまりケース部材70の開口側に延びる一対の係合爪75が設けられており、係合爪75の先端部には回転軸55の軸方向に貫通する係合溝75aが形成されている。
一方、カバー部材71は、ケース部材70と組み付けられる樹脂製のケース半体である。カバー部材71は、ケース部材70の長手方向に沿って延びて形成され、カバー部材71の長手方向一端部には、ケース部材70の一対の支持壁72に対応させて、回転軸55の径方向に延びる略円板形状の一対の被覆壁77が回転軸55の軸方向に相互に所定の間隔をあけて対向して設けられている。一対の被覆壁77は、カバー部材71の長手方向と直交する一方側つまり回転軸55の径方向に向けて突出しており、他方側において回転軸55の軸方向に延びる連結壁78により相互に連結されている。
一対の被覆壁77の内側面(回転軸55の軸方向における内側の端面)には、ケース部材70の一対のボス部72aに対応させて、被覆壁77の軸心からカバー部材71の長手方向一端側に向けて開口する嵌合溝77aがそれぞれ形成されている。また、一対の被覆壁77の外側面には、嵌合溝77aからオフセットした位置に、回転軸55の軸方向に突出する円筒状の揺動軸58a,58bがそれぞれ設けられている。
カバー部材71の長手方向他端側には、ケース部材70のケーブル収容部74に対応させて、カバー部材71の長手方向に延びるケーブルガイド部79が設けられている。ケーブルガイド部79は、その長手方向中央部が回転軸55の径方向つまり被覆壁77の突出方向に向けて湾曲して形成されている。このケーブルガイド部79の長手方向一端部には、ケース部材70のドアシール半体74bに対応させて、ケーブルガイド部79から回転軸55の軸方向外側に延びるとともに被覆壁77の突出方向とは反対側に向けて回転軸55の径方向に延びるドアシール半体79aが設けられている。また、ケーブルガイド部79の長手方向他端部には、ケース部材70の一対の係合溝75aに対応させて、ケーブルガイド部79から回転軸55の軸方向外側に突出する一対の係合突起80が設けられている。
ケース部材70とカバー部材71とを組み付ける際には、まず、図14(A)に矢印で示すように、カバー部材71をケース部材70に対してカバー部材71の長手方向一端側つまり嵌合溝77aの開口方向へ組み付け、被覆壁77を支持壁部72と保持リブ73との間に差し込むとともに、嵌合溝77aにボス部72aを嵌合させる。そして、嵌合溝77aとボス部72aとが嵌合された状態で、図14(B)に矢印で示すように、カバー部材71をケース部材70に対して回転軸55を軸心として回転軸55の周方向に回転させ、係合爪75の係合溝75aと係合突起80とを係合させることにより、ケース部材70とカバー部材71とが互いに組み付けられる。すなわち、ケース部材70に対して回転軸55の径方向一方側つまりケース部材70の開口方向からカバー部材71が組み付けられ、ケース部材70の開口部がカバー部材71により閉塞される。
ケース部材70とカバー部材71とが互いに組み付けられた状態では、図15に示すように、一対の支持壁72の外側面に被覆壁77がそれぞれ突き当てられ、被覆壁77により回転軸55の軸方向両端面が覆われている。この被覆壁77の外側面には保持リブ73が突き当てられ、被覆壁77が支持壁72と保持リブ73との間で保持されている。また、図16に示すように、ケーブル収容部74の開口部はケーブルガイド部79により閉塞され、ケーブル収容部74とケーブルガイド部79との間でケーシングキャップ54が挟み込まれてケーシングキャップ54が固定されるとともに、ケーシングキャップ54とドア側プーリ51,52との間でケーブルガイド部79に沿ってケーブル31,32が案内されている。さらに、ケース部材70の被カバー壁67とカバー部材71の連結壁78との間で長手方向一端側に開口する引出孔56が形成され、ケース部材70のドアシール半体74bとカバー部材71のシール半体79aとによりドアシール部53bが形成されている。
このように、回転軸55の軸方向両端部を支持する一対の支持壁72をケース部材70に設けるとともに、一対の支持壁72の外側面に突き当てられて回転軸55の軸方向両端面を覆う一対の被覆壁77をカバー部材71に設けるようにしたので、ドア側プーリケース53により回転軸55を覆うことができ、回転軸55の防水性を向上させることができる。
また、ボス部72aと嵌合溝77aとを嵌合させた状態で、カバー部材71をケース部材70に対して回転軸55を軸心として回転させることによりケース部材70とカバー部材71とを互いに組み付けるようにしたので、ケース部材70内にケーブル31,32を配索した状態でケーブル31,32に対してカバー部材71を被せるように組み付けることができる。したがって、ケース部材70内にケーブル31,32を配索した状態でケース部材70とカバー部材71とを容易に組み付けることができるため、ドア側プーリケース53内にケーブル31,32を配索する作業が容易となり、パワースライド装置30の組み付け作業性を向上させることができる。さらに、ドア側プーリケース53の長手方向一端部においてボス部72aと嵌合溝77aとが嵌合されているので、ドア側プーリケース53の長手方向他端部において係合溝75aと係合突起80とを係合させることで十分な剛性を持たせることができ、カシメやネジ固定が不要となるため組み付け作業性が向上されるとともに部品点数を削減することが可能となる。
また、カバー部材71のケーブルガイド部79には、図16に矢印で示すように、ケーブル31,32による荷重がケース部材70の開口側に向けて作用されることとなるが、カバー部材71をケース部材70に対して回転させて組み付けることで嵌合溝72の開口方向をケーブル31,32による荷重方向に対して傾斜させることができる。すなわち、本実施の形態においては、嵌合溝72の開口方向をケーブル31,32による荷重方向に対して傾斜させることで、ケーブル31,32の荷重によってケース部材70とカバー部材71との組み付けが外れてしまうことを防止することができる。
また、支持壁72との間で被覆壁77を保持するための保持リブ73を設けるようにしたので、回転軸55に軸方向の荷重が掛かったときに、回転軸55の軸方向端面を覆う被覆壁77が保持リブ73により支持されるため、被覆壁77が変形してしまうことを防止することができる。
なお、本実施の形態においては、ケース部材70にブラケット74aを設けるようにしたが、カバー部材71にブラケットを設けるようにしても良い。また、本実施の形態においては、カバー部材71の一対の被覆壁77にそれぞれ揺動軸58a,58bを設けるようにしたが、ケース部材70の一対の支持壁72にそれぞれ揺動軸58a,58bを設けるようにしても良い。また、本実施の形態においては、ケース部材70の支持壁72に突出部としてのボス部72aを設けるとともに、カバー部材71の被覆壁77に嵌合溝77aを形成するようにしたが、カバー部材71の被覆壁77に回転軸55の軸方向内側に突出する突出部を設けるとともに、ケース部材70の支持壁72に回転軸55の径方向一方側に開口する嵌合溝を形成するようにしても良い。
次に、ガイドプーリケース63の構造について詳細に説明する。図17はガイドプーリケースの分解斜視図であり、図18はガイドプーリケースの内部構造を示す背面図である。図19は図18におけるE部を拡大して示す斜視図であり、図20は図18におけるF−F線に沿う拡大断面図である。
ガイドプーリケース63は、ガイドプーリ50や回転軸62の軸方向先端側を覆うケース部材84と、ケース部材84に組み付けられるカバー部材85とを有しており、カバー部材85に対してケース部材84を回転軸62の軸方向先端側から組み付けることにより形成されている。
カバー部材85は、ケーブル31,32の配索方向に沿って延びる樹脂製のケース半体である。カバー部材85の長手方向一端部は回転軸62の径方向に延びる略円板形状に形成されており、その軸心には回転軸62の軸方向に貫通する貫通孔85a(図8に示す)が形成されている。この貫通孔85aに回転軸62が挿通されることにより、カバー部材85の長手方向一端部が回転軸62に回動自在に支持されている。そして、回転軸62の軸方向先端側に回転自在に支持されたガイドプーリ50の軸方向一端面(回転軸62の軸方向基端側における端面)がカバー部材85の長手方向一端部により覆われている。また、カバー部材85の長手方向他端部は、カバー部材85の長手方向一端部よりも回転軸62の軸方向基端側に配置されて回転軸62の径方向に延びている。このカバー部材85の長手方向他端部には、回転軸62の軸方向先端側に開口する長孔形状の連結溝65bが形成されている。
一方、ケース部材84は、カバー部材85とほぼ同様の外郭形状に形成されてケーブル31,32の配索方向に沿って延びるとともに、その長手方向と直交する側つまり回転軸62の軸方向基端側に開口する樹脂製のケース半体である。ケース部材84の長手方向一端部は回転軸62の軸方向基端側に開口する有底の略円筒形状に形成されており、その底壁の軸心には、カバー部材85の貫通孔85aに対向させて、回転軸62の軸方向基端側に開口する有底の挿入孔84a(図8に示す)が形成されている。このケース部材84の長手方向一端部の側壁には、ケース部材84の長手方向一端側に開口する引出孔64が形成されている。また、ケース部材84の長手方向他端部は、ケース部材84の長手方向一端部よりも回転軸62の軸方向先端側に配置されて回転軸62の径方向に延びる底壁を備え、ケース部材84の長手方向他端側に開口して形成されている。このケース部材84の長手方向他端部の底壁には、カバー部材85の連結溝65bに対向させて、回転軸62の軸方向基端側に開口する長孔形状の連結溝65aが形成されている。
図17に示すように、カバー部材85の長手方向一端部を回転軸62に回動自在に取り付けるとともに、カバー部材85の長手方向他端部の連結溝65bにドア側プーリケース53の揺動軸58bを挿入し、ドア側プーリケース51,52とガイドプーリ50との間でケーブル31,32を配索した状態で、カバー部材85にケース部材84が組み付けられる。ケース部材84はカバー部材85に対して回転軸62の軸方向先端側から組み付けられ、ケース部材84の長手方向一端部の挿入孔84aに回転軸62の軸方向先端部が回動自在に挿入されるとともに、ケース部材84の長手方向他端部の連結溝65aにドア側プーリケース53の揺動軸58aが挿入された状態で、カバー部材85に固定ネジ86により固定される。固定ネジ86は、カバー部材85に形成された組付孔85bに回転軸62の軸方向基端側から挿入され、ケース部材84の内部に形成されたねじ孔84bに締結されている。これにより、ガイドプーリケース63は、長手方向一端部において回転軸62に回動自在に支持されるとともに、長手方向他端部においてドア側プーリケース53に揺動自在に取り付けられる。
ケース部材84とカバー部材85とが互いに組み付けられた状態では、図8に示すように、回転軸62の軸方向先端面にケース部材84の底壁が突き当てられ、回転軸62の軸方向先端側がガイドプーリケース63により覆われている。このように、ガイドプーリケース63により回転軸62を覆うようにしたので、回転軸62の防水性を向上させることができる。
ガイドプーリケース63の内部には、ガイドプーリ50とドア側プーリ51,52との間に位置して、一対のケーブル31,32に摺接するシール部材としてのゴム製の一対のシールラバー87が設けられている。シールラバー87は略直方体形状に形成されており、その軸心にケーブル31,32がそれぞれ挿通されている。図20に示すように、シールラバー87の内周面には、ケーブル31,32の外周面に弾性的に摺接されるリップ部87aが形成されており、このシールラバー87によりケーブル31,32に付着した雨水や塵埃等の付着物をケーブル31,32から除去するようにしている。つまり、ガイドプーリケース63の内部において、ガイドプーリ50からドア側プーリ51,52に引き込まれるケーブル31,32に付着した付着物がシールラバー87により除去される。
図18に示すように、ガイドプーリケース63のケース部材84には、一対のシールラバー87を保持する一対のシール保持部88が設けられている。シール保持部88は、シールラバー87のケーブル31,32に沿う方向(縦方向)への移動を規制する縦方向規制壁88aと、シールラバー87のケーブル31,32に沿う方向と直交する方向(横方向)への移動を規制する横方向規制壁88bとを備えている。シール保持部88の縦方向規制壁88aはシールラバー87が横方向に移動自在となるように僅かな隙間を介してシールラバー87に対向して設けられ、回転軸62の軸方向基端側に開口するケーブル溝89が形成されており、ケーブル溝89にケーブル31,32が移動自在に挿通されている。シール保持部88の横方向規制壁88bは、シールラバー87が横方向に移動自在となるように所定のクリアランス90を介してシールラバー87に対向して設けられている。
図10に示すように、センタアーム19が回動されるとガイドプーリ50とドア側プーリ51,52との軸間距離が変化してドア側プーリ51,52へのケーブル31,32の巻き掛け長さが変わるため、ガイドプーリケース63に対してケーブル31,32が横方向に首振りすることになる。このとき、シール保持部88の横方向規制壁88bとシールラバー87との間には所定のクリアランス90が設けられているので、シールラバー87がケーブル31,32に追従してシール保持部88内を横方向に移動することが可能となっている。
このように、シールラバー87をガイドプーリ50とドア側プーリ51,52との間に設けるようにしたので、ケーブル31,32に付着した雨水等の付着物がドア側プーリケース53内に進入することが抑制され、回転軸55が被水することを抑制することができる。つまり、ケーブル31,32に付着した付着物をドア側プーリ51,52に到達する前に除去することができる。また、シールラバー87をガイドプーリ50とドア側プーリ51,52との間に設けることで、シールラバー87をそれぞれのプーリ50〜52から離れた位置に配置することができ、ケーブル31,32に付着した付着物をプーリ50〜52から離れた位置で除去することができる。したがって、シールラバー87により除去された異物が回転軸55,62およびプーリ50〜52に付着することが抑制され、ケーブル31,32に付着した異物の除去を効率良く行うことができるため、異物が回転軸55,62およびプーリ50〜52に付着することによる異音やフリクションの発生を防止することができる。
また、シールラバー87を保持するシール保持部88に対してシールラバー87が移動自在となるように、シールラバー87とシール保持部88との間にクリアランス90を設けるようにしたので、ケーブル31,32の移動に追従してシールラバー87を移動させることができる。これにより、シールラバー87とケーブル31,32との擦れが抑制されるため、シールラバー87の耐久性が向上されるとともに、シールラバー87のシール性を保つことができる。
さらに、シールラバー87を方向性がでないように略直方体形状としたので、シールラバー87の組み付け時に方向性を考慮する必要がなく、シールラバー87の組み付け作業が容易となる。なお、シールラバー87の形状としては略直方体形状に限定されることはなく、例えば、方向性がでないように略円筒形状としても良い。
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、前記実施の形態においては、ガイドプーリ50を一対のプーリ溝50a,50bを備えた2段プーリとしたが、一対のプーリによりガイドプーリ50を形成するようにしても良い。