以下、本発明を実施するための形態(以下「実施形態」という)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
まず、縦型の洗濯乾燥機について説明する。
図1は、第1実施形態に係る洗濯機内部を、図2は洗濯機外装を示している。この洗濯機の外装は、鋼板製の筐体1とその上部に取り付けたトップカバー2および操作・表示パネル3により構成する。この操作・表示パネル3は、電源スイッチ3a,操作ボタン3b,表示器3cを備える。トップカバー2は、蓋2aと主に給水に関連する部品を収納する後部収納部2bとで構成する。
洗濯機の内部において、有底で円筒形状の水を貯める外槽4は、筐体上部の4隅より4本の吊り棒5により弾性的に支持されている(図では1本のみ示す)。この外槽4内には、円筒形状の洗濯槽6を回転自在に設ける。洗濯槽6の側面には多数の脱水穴6aを設け、上縁部には流体バランサ6bを設ける。また、洗濯槽6の底部には、回転翼7を回転可能に設ける。外槽4の底面外側には、支持板8を取り付け、この支持板8に駆動装置9を固定する。この駆動装置9により、脱水時には回転翼7を洗濯槽6に固定し、洗濯槽6を一方向に回転駆動させる。また洗濯時には、回転翼7は洗濯槽6から切り離され、洗濯槽6内で正転・逆転し、水および衣類を搖動させる。
トップカバー2の後部には給水口10を設け、後部収納部2b内には給水弁11,冷却水給水弁12を設け、これらを接続し、給水ユニットを構成する。この給水弁11により、外槽4に洗濯用水が供給される。洗濯機上部に設けた水位センサ13により水位を検知することにより、供給される水量は制御される。水位センサ13は、外槽4の下部で外槽4とつながった空気室14とチューブ15で繋がっており、空気室14内の圧力を検出している。
外槽4の底面には、洗濯用水の排水を行う排水弁16を設け、この排水弁16に接続した排水ホース17を介して洗濯用水を洗濯機外に排出する。
また、外槽4の後ろには乾燥時に冷却除湿を行うダクト18を設ける。このダクト18と外槽4はゴム質のジャバラ管19で接続されている。ダクト18のジャバラ管19とは反対側にファン20が設けられ、乾燥時にはファン20を動作させ、ダクト18内の空気がファン20に吸い込まれる。ファン20の吐出側にヒータ21が設けられ、その先は外槽4に繋がっている。外槽4の上面には、外槽4の空気を逃がさないように、内蓋22が設けられている。
乾燥時ではファン20を動作させ、空気を循環させながら乾燥する。ファン20から吐出された空気をヒータ21で温め、洗濯槽6に吹き込む。洗濯槽6内の湿った衣類を温めて水分を蒸発させる。蒸発した水分を含んだ空気はダクト18内に送り込まれる。このとき冷却水給水弁12を開き、ダクト18内に給水し、ダクト18内で湿った空気と接触することで水冷除湿し、乾いた空気に戻す。この空気がファン20に吸い込まれ、またヒータ21に向けて吐出される。このように空気を循環させながら、衣類の水分を蒸発させて乾燥を行う。
ダクト18のファン20の吸い込み側に温度センサA23aが、ヒータ20の下流に温度センサB23bが設けられる。これら温度センサ23a,23bにより乾燥運転が制御される。
また、モータ9にはその回転を検出するホール素子あるいはフォトインタラプタなどで構成される回転検出器24を設ける。
また、外槽4の動きを検出する加速度センサ25を外槽4の胴部外周に固定する。この加速度センサ25はMEMS技術で作られたチップ状のセンサであり、外槽4の上下方向,径方向,周方向の3方向の振動量を検知できる振動検出装置である。この加速度センサ25は抵抗等の電子部品とともに電子基板に実装され、プラスチック製のケース内に収められている。このケースの中には樹脂が流し込まれ、基板に水がかからないようにコーティングされている。また、加速度センサ25は外槽4の吊り棒5で支えられた部分の略鉛直上に設ける。吊り棒5により外槽4,洗濯槽6,衣類等の重量を支えるため、この付近は強固に作られている必要があり、外側に向かってリブが立てられている。このように強固に作られた部分に加速度センサ25を固定する。やわらかい部分に取り付けると、外槽4の動き以外に、外槽4自体の変形も検出してしまうため、望ましくない。
この加速度センサ25のほかに異常振動のみを検知するために、筺体1と外槽4の隙間に細い板状のレバー27とそのレバー27の付け根に取り付けたマイクロスイッチ28により構成された異常振動検出器29を設ける。マイクロスイッチ28はトップカバー2内に固定され、レバー27はマイクロスイッチ28のスイッチ部に回転可能に吊り下げられるように取り付けられる。レバー27は長さ10cm程度の樹脂部材で作られ、外槽4胴部の上方と接触するように配される。外槽4がこのレバー27に接触したら、レバー27が回転し、その回転を受けて、マイクロスイッチ28のスイッチ部が動作し、異常振動を検知する。
また、外槽4を覆う筐体1の下部にはモータ9,ファン20,ヒータ21などを制御する制御装置26を設ける。図3にこの制御装置26のブロック図を示す。制御装置26はマイクロコンピュータ(マイコン)31を中心に構成されている。使用者により操作ボタン3bから運転コースが入力され、その運転コースに合った運転パターンを運転パターンデータベース32から呼び出し、そのデータに沿って運転する。その運転は基本的にはモータ9の制御であり、モータ制御部33により制御される。モータ制御部33は、回転検出器24からの信号をもとに回転速度算出部34で回転速度を求めた結果を用いてモータ9を制御する。また、洗濯するための水量を制御するために水位制御部35は水位センサ13の出力を監視し、給水弁11,排水弁16の開閉を制御する。また、乾燥時においては温度センサ23a,23bの結果にもとづきヒータ制御部36,ファン制御部37によりヒータ21,ファン20を制御する。また、脱水時の運転制御もこの制御装置26のマイコン31で行われる。加速度センサ25ならびに異常振動検出器29の出力をマイコン31に取り込み、振動判定部38にて振動の大きさ並びに異常振動かどうかを判定し、モータ制御部33を通して、モータ9を制御する。
このような洗濯乾燥機において、回転翼を正転・逆転し、水および衣類を搖動させながら、洗い,すすぎを行った後、脱水を行う。先述したように、脱水時では衣類の片寄りが原因で振動が発生する。洗濯槽6は衣類の片寄り方や回転速度により左右,前後,上下に複雑に振動する。この振動が大きすぎると外槽4が筺体1に接触してしまう、さらには筺体1までも移動させてしまうことがある。このような振動を未然に防ぐために、加速度センサ25および異常振動検出器29を設けている。異常振動検出器29は外槽4の振動の仕方によってはレバー27に接触しにくい場合があり、そのときには振動の検知が遅れ、対処が遅れてしまう。そのため、複数方向を検知できる加速度センサ25を主に考えて脱水制御する。具体的には、加速度センサ25による異常振動検知レベルは異常振動検出器29による異常振動検知レベルと同じもしくは低く設定する。このようにすることで異常振動検出器29が振動を検出するより先に、加速度センサ25が振動を検出し、脱水制御できるようになる。
このように加速度センサ25による脱水制御と異常振動検出器29による脱水制御の2つの方式より制御される脱水運転のフローを図4に示す。また、図5に脱水時の回転速度の変化を示す。
脱水を開始し(S1)、排水弁16を開き(S2)、外槽4に溜まっている水を排水する。それと同時に、加速度センサ25の感度を高感度側に設定する(S3)。本実施形態における加速度センサ25は3方向の加速度を検知でき、各方向とも2段階に感度を切り替えて計測できるものであり、3方向とも同時に感度が切り替わるものである。高感度側の感度は0.66V/Gであり、低感度側は0.22V/Gに設定している。(単位のGは重力加速度を示す。)本発明はこの感度でなくてもよく、また、2段階の感度ではなく、3段階以上でも構わない。また、3方向同時に切り替わらずに、個別に切り替えるものでもよい。また、感度の切り替えは、加速度センサ25の端子に電圧を加えるか加えないかで切り替えることができる。
感度を設定したら、加速度センサ25による脱水制御を開始する(S4)。続いて異常振動検出器29による脱水制御を開始する(S5)。これらの脱水制御では、振動が過大である、もしくは異常振動であると判断したら、洗濯槽6の回転速度を減速し、停止させ、振動を抑制する。このときの減速率は50rpm/sであり、脱水起動時の平均的な加速率より大きな変化率で減速させることで、短時間で停止させ、遠心力を急速に低下させて振動の増大を防ぐ。加速度センサ25による制御では、加速度センサ25の出力を計測し、その値があらかじめ設定した閾値より大きかったら振動が過大であると判断する。また、異常振動検出器29による制御では、マイクロスイッチ28が作動した回数を計測し、その値があらかじめ設定した回数より大きかったら異常振動であると判断する。このような制御の中、回転速度を上昇させる(S6)。加速率は25rpm/s(1秒間に25rpmの速度変化)で加速し、130rpmまで上昇させる(S7)。70〜90rpmには1次共振があり、この区間で一定速にならないように一気に通過させる。1次共振は外槽4が水平に振れ回る振動であり、上下方向にはあまり振動しない。よって、加速度センサ25の径方向および/もしくは周方向のセンサの出力により脱水制御を行う。また、異常振動検出器29による脱水制御では、マイクロスイッチ28が3回以上動作したら回転を停止する。
130rpmで10秒間回転させることにより、衣類から抜け出た水を一旦外槽4の外に排水する。外槽4と洗濯槽6の隙間に水が多く残ったまま加速すると、回転速度の上昇とともにさらに衣類から水が抜け出し、外槽4と洗濯槽6の隙間により多く水が溜まり、回転負荷が大きくなりすぎて、モータ9がロックしてしまう恐れがある。そのために、一気に高速回転まで加速せずに、階段状に回転速度を上昇させている。
130rpmで10秒間回転させた後、加速率25rpm/sで加速し(S8)、210rpmまで上昇させる(S9)。250rpm付近に2次共振があり、2次共振の手前まで一旦回転速度を上昇させる。その段階で加速度センサ25の感度を低感度側に切り替える(S10)。これは、2次共振をしっかりと検知するために行う。加速度センサ25による振動検出値は加速度に比例した電圧で出力される。(ここではアナログ値であるが、デジタル値でもよい。)先にも述べたが、加速度は回転速度の2乗に比例しており、低速回転では出力が小さい。この加速度をマイコン31で読み込むが、マイコン31内ではアナログ値をデジタル値に変換して処理している。そのため、電圧が小さすぎると、変換時の分解能によっては検出できない、もしくは非常に粗くしか振動量を把握することができない場合がある。逆に、高速回転では出力が大きく、マイコン31に入力できる電圧を超えてしまい、振動値を計測できない場合がある。もしくは、加速度センサの計測範囲を上回ってしまい、正しい振動値が出力されない場合もある。
そこで、洗濯槽6の回転速度に合わせて、感度を調整、もしくは切り替えて計測する。回転速度の低い1次共振はマイコン31の分解能で十分検知できるように高感度で振動を検知し、回転速度の高い2次共振はマイコン31および加速度センサ25の計測可能範囲を超えないように低感度で振動を計測する。
2次共振は1次共振とは異なり、外槽4の上部が振れ回る、もしくは、上部と下部が逆位相で振れ回るような振動をする。そのため径方向や周方向の加速度センサ以外にも上下方向の加速度センサ25の出力をもとに脱水制御する必要がある。ただし、上記のように3方向による制御ではなく、上下方向と径方向、もしくは上下方向と周方向の2方向による制御でも構わない。
このように2次共振に対しては上下方向を検知するが、この上下方向の加速センサ25の感度を変化させた時の出力を図4に示す。センサの感度を切り替えた時に出力が大きく変化していることが分かる。これはセンサ自体に1Gの重力加速度が作用しているために起こる。加速度センサの出力は約1.6Vのバイアス電圧がかけられ、振動とともにバイアス電圧を中心に電圧が上下する。しかし、重力方向(上下方向)に設置されている加速度センサは静止状態でも重力加速度を受けているため、バイアス電圧から1G分の電圧が出力されている。感度が異なると1G分の電圧も異なり、その差が図4のように現れる。この電圧差を振動として判断し、誤判定を下さないようにする必要がる。そこで、加速度センサ25の感度を切り替えた直後に、所定時間,加速度センサ25による脱水制御を行わないようにする(S11)。本実施形態における振動の判定は、1周期(1回転する時間)より長い、0.4秒間における全振幅(最大値−最小値)で評価している。このような計測方法のため、図4のような電圧差があると、その差も振動と判断してしまう。そこで、加速度センサの感度を切り替えた直後に加速度センサ25による脱水制御を行わないようにすることで、振動の誤判定を防ぐ。また、切り替えた後の約1秒間、電圧が安定しないため、その間も加速度センサ25による脱水制御を行わないようにする。
しかし、加速度センサ25による制御を行わないと、この時間に異常振動が発生しても、振動を止めることができない。そこで、あらかじめ異常振動が発生したとき、もしくは過大な振動が発生したときを想定して、回転速度を減速させる。先述したが、異常振動等を検知したときには、回転速度を低下させて振動を抑える制御を行っているが、それとほぼ同じ動作を異常振動の発生の有無にかかわらず行うようにする。このようにすることで、異常振動が発生しても減速中のため、振動は収まる方向であり、その後脱水制御を再開させた段階で、過大な振動を検知しても、そのまま減速し続ける制御を行うため、通常の異常振動検知後の動作と変わりないようになる。
よって、加速度センサ25による制御を中断したら、洗濯槽6の回転を減速させる(S12)。減速率は15rpm/sであり、異常振動時と同等もしくそれよりも緩やかに減速させる。また、この区間でも、加速度センサ25とは別の振動検出装置である異常振動検出器29による制御は有効であり、こちらで異常振動を検知することもでき、より安全である。このときにはマイクロスイッチ28が1回以上動作したら回転を停止するようにし、脱水中における本検知手段の中でもっとも感度が高くなるようにすることが望ましい。
このように減速させ、180rpmに達したら(S13)、加速度センサ25による制御を再開させ(S14)、減速をやめる。180rpmに達する時間は2秒であり、センサ出力も十分安定した状態となる。180rpmでは20秒間一定速で回転させ(S15)、130rpmと同様に衣類から水を抜く。1次共振通過後の130rpmより長い時間を設定し、2次共振通過前にできるだけ水分を取り除き、洗濯槽内の重量を軽くする。2次共振の振動は1次共振の振動と異なり、上部と下部が逆位相で振れ回るようなねじれ振動を伴っており、ジャイロ剛性の影響が出やすい。回転体の慣性モーメントが大きいとジャイロ剛性が強くなり、共振周波数が高くなり、振動が大きくなる。よって、振動を小さくして共振を通過させるためには、回転体の慣性モーメントを小さくする必要があり、できるだけ水分を取り除き、軽くすることが望ましい。また、2次共振の振動はねじれ振動であり、外槽4と洗濯槽6の隙間に溜まる水が上下に動き易く、水が排水されにくいため、隙間に水が溜まりやすい。そのためにも、共振通過前にできるだけ水を抜いておく方が望ましい。そのため、2次共振(ねじれ振動)の手前において略一定速で運転する時間は、他の脱水起動中における略一定速で運転する時間より長くする。
そのあと、再び加速させて330rpmまで上昇させる(S16)。330rpmで5秒間回転させた後(S17)、再び加速させ(S18)、600rpmで5秒間回転させ(S19)、再び加速させ(S20)、最高脱水回転速度となる900rpmまで上昇させ、5分間回転させて脱水する(S21)。その後、加速度センサ25による脱水制御をオフし(S22)、異常振動検知器29による脱水制御もオフし(S23)、減速し(S24)、回転を停止させ(S25)、脱水を終了させる(S26)。このときの減速率は50rpm/sであり、異常振動検知時と同じ程度で、素早く減速させる。このような運転制御により脱水の起動中にセンサ感度を切り替えても安全に脱水できるようになる。
本実施形態では感度を切り替えたとほぼ同時に回転速度を低下させているが、あらかじめ回転速度を低い状態にした後または減速中に、加速度センサ25の感度を切り替えても構わない。また、先述したが異常振動検出器29による脱水制御を併用することで、より安全になるが、なくても構わない。
また、加速度センサ25を切り替えた後、所定時間,加速度センサ25による脱水制御を中断せずに、異常振動と判定する閾値を、切り替え前と比べて高くする、もしくはフィルタ処理等により、感度を切り替える際の異常振動の誤判定を回避してもよく、その場合でも、減速することで、異常振動の発生を抑制し、より安全に感度を切り替えることができる。
続いて、第2の実施形態を説明する。本実施形態は第1の実施形態と洗濯乾燥機の構成は同じであり、脱水の加速パターンが異なる。基本的には第1の実施形態と同じであり、感度を切り替えた後の動作が異なる。脱水運転のフローを図7に示す。また、図8に回転速度の変化を示す。
脱水を開始し(S31)、排水弁を開き(S32)、水槽に溜まっている水を排水する。それと同時に、加速度センサ25の感度を高感度側に設定する(S33)。感度を設定したら、加速度センサ25による脱水制御を開始する(S34)。続いて異常振動検出器29による脱水制御を開始する(S35)。このような制御の中、回転速度を上昇させる(S36)。加速率は25rpm/sで加速し、130rpmまで上昇させる(S37)。130rpmの一定速で10秒間回転させ、衣類から抜け出した水を一旦外槽4の外に排水する。130rpmで10秒回転させた後、加速率25rpm/sで加速し(S38)、180rpmまで上昇させ(S39)、加速度センサ25の感度を低感度側に設定し(S40)、加速度センサ25による制御を中断する(S41)。その後加速率を低くし、10rpm/sの加速率でゆっくりと加速させる(S42)。
第1の実施形態と同様に加速度センサ25の感度を切り替えた後の2秒程度、加速度センサ25による脱水制御を中断させる。この間に衣類が遠心力を受けて、急に移動して、振動が急激に大きくならないように、加速率を低くする。加速率を低くすることで、回転速度の上昇を抑え、遠心力の急な増加を抑え、衣類が急に移動しないようにする。よって、加速度センサによる脱水制御を中断している最中では異常振動が発生しにくくなり、安全に感度を切り替えることができる。また、速度を減速もしくは一定速にしないことで、脱水起動時間を短縮することができる。また、第1の実施形態と同様に異常振動検出器29による脱水制御を行うことで、より安全に切り替えることができる。
緩やかに加速させ、200rpmに達したら(S43)、加速度センサ25による脱水制御を再開させる(S44)。加速度センサ25による脱水制御を中断している区間は、2次共振の手前であり、共振通過中には制御を再開させる。その後、加速率を25rpm/sの高い加速率に変えて(S45)、330rpmまで上昇させ(S46)、2次共振をすばやく通過させる。330rpmで5秒間、一定の回転速度で回転させ、外槽4と洗濯槽6の隙間に溜まった水を排水する。そのあと、再び加速させ(S47)、600rpmで5秒間回転させ(S48)、再び加速させ(S49)、最高脱水回転速度となる900rpmまで上昇させ、5分間回転させて脱水する(S50)。その後、加速度センサによる脱水制御をオフし(S51)、異常振動検知による脱水制御もオフし(S52)、減速し(S53)、回転を停止させ(S54)、脱水を終了させる(S55)。このときの減速率は50rpm/sであり、異常振動検知時と同じ程度で、素早く減速する。このような脱水制御により脱水起動中にセンサ感度を切り替えても安全に脱水できるようになる。また、加速度センサ25による脱水制御をしない区間において、減速および一定速にしないことで、時間を短縮することができる。
本実施形態では時間短縮も考え、感度を切り替えたとほぼ同時に加速率を、切り替え前と比べて低くしているが、洗濯槽6の回転速度をあらかじめ高い加速率から低い加速率に低下させて、ゆっくりと加速している状態にした後、加速度センサ25の感度を切り替えても、異常振動が発生しにくく、安全である。
また、先述したが異常振動検出器による制御を併用することで、より安全になるが、なくてもかまわない。
続いて、第3の実施形態について図9〜図12を用いて説明する。本実施形態はドラム式洗濯乾燥機の例である。図9はドラム式洗濯乾燥機の外観図であり、図10は内部の構造を示すために筐体の一部を切断して示した側面図である。
外郭を構成する筐体61は、ベース61hの上に取り付けられており、左右の側板61a,61b,前面カバー61c,背面カバー61d,上面カバー61e,下部前面カバー61fで構成されている。左右の側板61a,61bは、コの字型の上補強材(図示せず)、前補強材(図示せず)、後補強材(図示せず)で結合されており、ベース61hを含めて箱状の筐体61を形成し、筐体として十分な強度を有している。また、ベース61hの四隅には洗濯機全体を支持する脚74が設けられている。
ドア62は前面カバー61cの略中央に設けた衣類を出し入れするための投入口を塞ぐためのもので、前補強材に設けたヒンジで開閉可能に支持されている。ドア開放ボタン62aを押すことでロック機構(図示せず)が外れてドアが開き、ドアを前面カバー61cに押し付けることでロックされて閉じる。前補強材は、後述する外槽の開口部と同心に、衣類を出し入れするための円形の開口部を有している。
筐体61の上部中央に設けた操作・表示パネル63は、電源スイッチ64,操作ボタン65,表示器66を備える。操作・表示パネル63は筐体61下部に設けたメイン制御装置67に電気的に接続している。
図10に示すドラム68は回転可能に支持されており、その外周壁および底壁に通水および通風のための多数の貫通孔を有し、前側端面に衣類を出し入れするための開口部68aを設けてある。開口部68aの外側にはドラム68と一体の流体バランサ68cを備えている。外周壁の内側には軸方向に延びるリフタ68bが複数個設けてあり、洗濯,乾燥時にドラム68を回転すると、衣類はリフタ68bと遠心力で内周壁に沿って持ち上がり、重力で落下するように動きを繰り返す。ドラム68の回転中心軸は、水平または開口部68a側が高くなるように傾斜している。
円筒状の外槽70は、ドラム68を略同軸上に内包し、前面は開口し、後側端面の外側中央にモータ69を取り付ける。モータ69の回転軸は、外槽70を貫通し、ドラム68と結合している。前面の開口部には外槽カバー70aを設け、外槽内への貯水を可能としている。外槽カバー70aの前側中央には、衣類を出し入れするための開口部70bを有している。
開口部10bと前補強材(図示せず)に設けた開口部は、ゴム製のベローズ71で接続しており、ドア62を閉じることで外槽70を水封する。外槽70の底面最下部には、排水口70dが設けてあり、排水ホース72が接続している。排水ホース72の途中には排水弁(図示せず)が設けてあり、排水弁を閉じて給水することで外槽70に水を溜め、排水弁を開いて外槽70内の水を機外へ排出する。
外槽70は、下側をベース61hに固定されたサスペンション73(コイルばねとダンパで構成)で防振支持されている。また、外槽70の上側は上部補強部材に取り付けた補助ばね(図示せず)で支持されており、外槽70の前後方向へ倒れを防ぐ。洗剤容器は筐体61内の上部左側に設けており、その前部の開口から引き出し式の洗剤トレイ75を装着する。洗剤容器の後ろ側には、給水弁(図示せず)や風呂水給水ポンプ,水位センサなど給水に関連する部品を設けてある。洗剤容器は、外槽70に接続されている。給水弁は多連弁で、洗剤容器,水冷除湿機構を備えた乾燥ダクト78へ給水する。カバー61eには、水道栓からの給水ホース接続口76,風呂の残り湯の吸水ホース接続口77が設けてある。
乾燥ダクト78は筐体61の背面内側に縦方向に設置され、ダクト下部は外槽70の背面下方に設けた吸気口70cにゴム製の蛇腹管A78aで接続される。乾燥ダクト78内には、水冷除湿機構を内蔵しており、給水弁から水冷除湿機構へ冷却水を供給する。冷却水は乾燥ダクト78の壁面を伝わって流下し吸気口70cから外槽70に入り排水口70dから排出される。
乾燥ダクト78の上部は、筐体1内の上部前方右側に設置した乾燥フィルタ80に接続している。乾燥フィルタ80はダクト78内に挿入されており、引き出すことが可能である。乾燥フィルタ80はメッシュ式のフィルタであり、このフィルタを通過することで糸くずが除去される。乾燥フィルタ80の掃除は、乾燥フィルタ80を引き出してメッシュ式のフィルタを取り出して行う。また、乾燥フィルタ80の挿入部の下面には開口部が設けてあり、この開口部は送風ユニット82の吸気口と繋がっており、送風ユニット82に空気が吸い込まれる。
送風ユニット82は、駆動用のモータ82a,ファン(図示せず)、ファンケース82bで構成されている。ファンケース82bにはヒータ83が内蔵されており、ファン羽根車から送られる空気を加熱する。送風ユニット82の吐出口は温風ダクト84に接続する。温風ダクト84は、ゴム製の蛇腹管B84aを介して外槽カバー70aに設けた温風吹き出し口85に接続している。本実施形態では、送風ユニット82が筐体1内の上部右側に設けてあるので、温風吹き出し口85は外槽カバー70aの右斜め上の位置に設け、温風吹き出し口85までの距離を極力短くするようにしてある。
脱水運転時および乾燥運転時の風の流れは次のようになる。ファンを回転させ、ヒータ83に向けて空気を送りだす(矢印91)。ヒータ83に通電し、空気を温め温風にし、温風ダクト84へ送る。温風吹き出し口85からドラム68内に高速の温風が吹き込み(矢印92)、湿った衣類に当たり、衣類を温め、衣類から水分が蒸発する。高温高湿となった空気は、ドラム68に設けた貫通孔から外槽70に流れ、吸気口70cから乾燥ダクト78に吸い込まれ、乾燥ダクト78を下から上へ流れる(矢印93)。乾燥ダクト78の壁面には、水冷除湿機構からの冷却水が流れ落ちており、高温高湿の空気は冷却水と接触することで冷却除湿され、乾いた低温空気となり、フィルタ80を通り糸屑が取り除かれ、送風ユニット82に吸い込まれる(矢印94)。そして、ヒータ83で再度加熱され、ドラム68内に吹き込むように循環する。
ダクト78のファン20の吸い込み側に温度センサA95が、ヒータ83の下流に温度センサB96が設けられる。これら温度センサ95,96により乾燥運転が制御される。
また、モータ69にはその回転を検出するホール素子あるいはフォトインタラプタなどで構成される回転検出器97を設ける。
また、外槽70の動きを検出する加速度センサ98を外槽70の下部の胴部外周に固定する。この加速度センサ98はMEMS技術で作られたチップ状のセンサであり、上下方向,径方向,周方向の3方向を検出できるものである。この制御装置67の内部の構成は第1の実施形態とほぼ同じであり、説明を省略する。
このようなドラム式洗濯乾燥機において、図11,図12のように脱水運転制御する。図11は運転フローを示し、図12はドラムの回転速度の変化を示す。ドラム式洗濯乾燥機は脱水の回転速度が高く、加速度センサの感度を3段階に切り替える。一番高い感度は0.66V/G、中間の感度は0.22V/G、一番低い感度は0.17V/Gとする。また、第1の実施形態と異なる防振装置で外槽を支持しているため、振動の様子も異なり、加速パターンが異なる。また、レバーとマイクロスイッチで構成された異常振動検出器はなく、加速度センサ98による脱水制御のみで振動を検知しながら脱水する。
脱水を開始し(S61)、排水弁を開き(S62)、水槽に溜まっている水を排水する。それと同時に、加速度センサ98の感度を高感度の0.66V/Gに設定する(S63)。感度を設定したら、加速度センサ98による脱水制御を開始する(S64)。加速度センサ98の出力を計測し、その値があらかじめ設定した閾値より大きかったら振動が過大であると判断し、減速して回転を停止させる。このような制御のもと、加速率12rpm/sでゆっくりと加速させる(S65)。ゆっくり加速させることで、ドラム68内壁面に衣類を均一に分散させながら張り付かせる。衣類がドラム68内壁面に張り付き始める55rpmより少し高い、100rpmまで上昇させ、5秒間一定速で運転する(S66)。このときに、加速度センサ98の出力の大きさにより、衣類の片寄りを判断し、運転制御する。衣類の片寄りが大きい場合には、共振通過時に異常振動を発生させる可能性が高いと判断し、一旦衣類がドラム68内壁面からはがれる回転速度(約40rpm)まで減速させ、そこから再度加速し、100rpmまで上昇させる。ドラム式洗濯乾燥機の場合、1次共振は140rpm付近に現れるが、1次共振の前に衣類の片寄りを判断し、片寄りが少なくなるように修正する運転制御を行う。この1次共振は外槽70が左右に振動する振動形態である。
100rpm時に衣類の片寄りが少ないと判断したら、先ほどより高い加速率となる25rpm/sで、1次共振をすばやく通過させ(S67)、170rpmで5秒間運転する(S68)。その後、25rpm/sの加速率で270rpmまで上昇させる(S69,S70)。この区間の210rpm付近に2次共振があり、この回転速度をすばやく通過させる。2次共振は外槽70が上下に振動する振動形態である。また、300rpmには外槽70が前後に振動する3次共振があり、この手前の270rpmまで一旦上昇させる。270rpmに達したら、加速度センサ98の感度を中間の感度0.22V/Gに切り替える(S71)。その後、加速度センサ98による脱水制御を2秒間中断する(S72)。この2秒間において、回転速度を15rpm/sの減速率で240rpmまで減速する(S73,S74)。加速度センサ98による脱水制御を中断しても、減速することにより、異常振動の発生を防止するとともに、たとえ異常振動が発生したとしても、回転を停止する方向に向かわせており、異常振動を収束させることができ、安全である。
加速度センサによる脱水制御を2秒間中断した後、再開させる(S75)。240rpmで18秒間運転し(S76)、その後加速率25rpm/sで加速させ(S77)、3次共振を通過させる。ひとつ前の一定速区間(170rpm)より長い時間一定速で回転させ、3次共振の前にできるだけ水を抜き、重量を軽くさせて、3次共振を通過させ易くする。
3次共振を通過させ、380rpmで5秒間運転し(S78)、その後25rpm/sの加速率で600rpmまで上昇させ(S79,S80)、さらに25rpm/sの加速率で一旦930rpmまで上昇させる(S81,S82)。930rpmに達したら、加速度センサ98の感度を低感度である0.17V/Gに切り替え(S83)、加速度センサ98による脱水制御を2秒間中断する(S84)。感度を切り替えたら、回転速度を15rpm/sの減速率で900rpmまで減速し(S85,S86)、加速度センサによる脱水制御を再開させる(S87)。
ドラム式洗濯乾燥機の場合、脱水回転速度は高く、1200rpmまで上昇させる。同じ変位量でも1200rpmにおける加速度センサの出力は900rpmにおける出力に比べて1.78倍であり、センサの計測範囲、もしくはマイコンへの入力範囲を超える可能性がある。1200rpmの振動を計測するために、感度を低下させる。ここでも同様に、感度を切り替えると同時に加速度センサによる脱水制御を中断し、回転速度を減速させる。このようにすることで、感度を切り替えるときに加速度センサによる脱水制御を中断しても、異常振動の発生時に対して安全に対処できる。
900rpmを長めに運転して、衣類から水分を抜き、片寄った衣類の重量を低減させる。具体的には600rpmの時間は5秒であるのに対して、900rpmの時間は1分とする(S88)。その後、25rpm/sの加速率で1200rpmまで上昇させ(S89,S90)、5分間脱水する。
高速回転させるためには衣類の片寄りを少なくする必要があり、1200rpm/sの手前でできるだけ水を抜くことで、それに比例して片寄った衣類の重量も低減し、1200rpmの高速回転を実現させる。ただし、このように900rpmでの時間を長くしても片寄った衣類の重量が所定の値より下がらない場合には、1200rpmに上げずに900rpmで運転させ続け、脱水を終了させる。この判定にも加速度センサ98を利用し、所定の片寄った衣類の重量に相当する振動が検出されたときには、脱水回転速度を上昇させないようにする。
1200rpm(もしくは900rpm)での脱水運転を所定の時間行った後、加速度センサによる制御をやめ(S91)、50rpm/sの高い減速率で減速させ(S92)、ドラムの回転が停止したら(S93)、脱水を終了する(S94)。
このようにドラム式洗濯乾燥機においても、回転速度に適した感度で計測するために、加速度センサの感度を切り替える必要があり、センサの感度を切り替えるとほぼ同時に減速することで、安全に感度を切り替えることができる。
以上のように、加速度センサの感度を切り替えることで、センサ出力が不安定になり、振動を誤検知し易くなる状況に対して、切り替えた直後はこの加速度センサによる脱水制御を行わなくするとともに、洗濯槽の回転速度を減速することで、異常振動の発生を防止するとともに、たとえ発生しても、あらかじめ振動を収束させるように対処しており、安全に感度を切り替えることができる。なお、本発明は乾燥機能を有さない洗濯機に対しても適用可能である。