JP5645493B2 - 多糖類検査装置および多糖類検査方法 - Google Patents

多糖類検査装置および多糖類検査方法 Download PDF

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この発明は多糖類検査装置および多糖類検査方法に関し、より詳しくは、血液凝固阻止剤の一つであるヘパリンのような多糖類を検査する検査装置および検査方法に関する。
血液凝固阻止剤の一つであるヘパリンについては、2007年から2008年にかけて、毒性物質(過硫酸化コンドロイチン硫酸(OSCS;over-sulfated chondroitin sulfate))が混入していた事例が数百例も報告されて、大きな社会問題となった。このため、医薬医療関係者の間では、在庫の又は流通段階にあるヘパリンが正常品であるか否かを迅速にかつ精度良く確認したいというニーズがある。
しかしながら、本出願人が知る限り、現在のところ、そのような便利な手段は知られていない。
特開2007−005410号公報
そこで、この発明の課題は、血液凝固阻止剤の一つであるヘパリンのような多糖類が正常品であるか否かを迅速にかつ精度良く確認できる多糖類検査装置および多糖類検査方法を提供することにある。
本発明者は、IR−MALDI装置(赤外光−マトリックス支援レーザ脱離イオン化装置)を利用すれば、ヘパリンのような多糖類が正常品であるか否かを精度良く検査できる可能性があることに着目した。知られているように、IR−MALDI装置では、測定対象物に赤外光(特に中赤外光)を照射するので、弱い化学結合を分子内にもつ分子を壊すことなく、副次生成物の生成を抑えてイオン化できるからである(特許文献1(特開2007−005410号公報)参照)。
そこで、上記課題を解決するため、この発明の多糖類検査装置は、
赤外レーザ光を発生するレーザ光源と、
測定対象物としての多糖類とこの多糖類のためのマトリックスとの混合物からなる試料が載置される試料台と、
上記レーザ光源からの上記赤外レーザ光を上記試料台上の上記試料へ導く光学系と、
上記赤外レーザ光を受けて上記試料が発生したイオンを、上記イオンの質量電荷比に応じて分離する質量分析部と、
前記質量分析部により分離されたイオンを検出するイオン検出器と、
上記イオン検出器の出力に基づいて、上記試料の質量スペクトルを得るデータ取得部と、
上記データ取得部が得た上記質量スペクトルに基づいて、上記測定対象物に上記多糖類とは別の毒性物質が混入しているか否かに応じて上記多糖類が正常品であるか否かを判定する判定部とを備えたことを特徴とする。
本明細書で、「Aの質量スペクトル」と言うときは、A由来のイオン、例えばAから幾つかのプロトン(H)や基が除去されたり、マトリックスからの幾つかの元素が付加されたりしてなるイオンの質量スペクトルを含む意味である。
この発明の多糖類検査装置では、レーザ光源からの赤外レーザ光が光学系によって試料台上の試料へ導かれる。すると、試料台上の試料に含まれた測定対象物が、マトリックスの助けを受けてイオン化してイオンとなる。続いて、上記試料が発生したイオンは、上記質量分析部によって上記イオンの質量電荷比に応じて分離されて、上記イオン検出器に達して検出される。データ取得部は、上記イオン検出器の出力に基づいて、上記試料の質量スペクトルを得る(飛行時間質量分析法(TOFMS))。そして、判定部は、上記データ取得部が得た上記質量スペクトルに基づいて、上記測定対象物に上記多糖類とは別の毒性物質が混入しているか否かに応じて上記多糖類が正常品であるか否かを判定する。

この多糖類検査装置では、赤外レーザ光(特に中赤外光が望ましい。)を試料に照射するので、弱い化学結合を分子内にもつ分子を壊すことなく、副次生成物の生成を抑えて、上記試料をイオン化できる。したがって、窒素レーザのような紫外光を用いる場合に比して、質量分析の分解能やS/N比(信号対ノイズ比)を高めることができる。この結果、上記測定対象物としての上記多糖類が正常品であるか否かの判定の精度が高まる。また、上記判定部は、例えばコンピュータ用のソフトウエアによって構成され得る。そのようにした場合、自動的に判定を行うことができ、したがって迅速な判定が可能となる。
一実施形態の多糖類検査装置では、上記判定部は、上記質量スペクトル内に、毒性物質の特定の基の質量を表すピークが存在するか否かに応じて、上記測定対象物としての上記多糖類が正常品であるか否かを判定することを特徴とする。
この一実施形態の多糖類検査装置では、上記質量スペクトル内に、毒性物質の特定の基の質量を表すピークが存在するか否かに応じて判定を行うので、上記測定対象物としての上記多糖類が正常品であるか否かの判定の精度がさらに高まる。
本明細書で、「ピーク」とは、質量スペクトルにおける強度のピークを意味する。
一実施形態の多糖類検査装置では、上記判定部は、上記質量スペクトル内で、毒性物質の特定の基の質量を表すピークの強度が或る基準値以下であるか否かに応じて、上記測定対象物としての上記多糖類が正常品であるか否かを判定することを特徴とする。
この一実施形態の多糖類検査装置では、上記質量スペクトル内で、毒性物質の特定の基の質量を表すピークの強度が或る基準値以下であるか否かに応じて判定を行うので、上記測定対象物としての上記多糖類が正常品であるか否かの判定の精度がさらに高まる。
一実施形態の多糖類検査装置では、上記毒性物質を表す上記特定の基は硫酸基であることを特徴とする。
この一実施形態の多糖類検査装置では、上記毒性物質を表す上記特定の基は硫酸基であるから、上記測定対象物としての上記多糖類がヘパリンであり、上記毒性物質が過硫酸化コンドロイチン硫酸(OSCS)で有る場合に、上記ヘパリンが正常品であるか否かを精度良く判定することができる。
一実施形態の多糖類検査装置では、
上記測定対象物としての上記多糖類と同じ多糖類からなる正常品について、上記測定対象物のための測定条件と同じ測定条件で得られた質量スペクトルを記憶する比較基準記憶部を備え、
上記判定部は、上記測定対象物の質量スペクトルと上記正常品の質量スペクトルとを比較して、上記測定対象物としての上記多糖類が正常品であるか否かを判定することを特徴とする。
この一実施形態の多糖類検査装置では、上記判定部は、上記測定対象物の質量スペクトルと上記正常品の質量スペクトルとを比較して、上記測定対象物としての上記多糖類が正常品であるか否かを判定するので、上記測定対象物としての上記多糖類が正常品であるか否かの判定の精度がさらに高まる。
ここで、上記判定部は、上記測定対象物の質量スペクトルと上記正常品の質量スペクトルとを比較する際に、上記測定対象物の質量スペクトルから上記正常品の質量スペクトルを差し引いて差分をとり、この差分のスペクトルに上記毒性物質の上記特定の基の質量を表すピークが存在するか否か、またはそのピークの強度が或る基準値以下であるか否かに応じて、判定を行っても良い。
一実施形態の多糖類検査装置では、上記マトリックスはカルボニル基を含むことを特徴とする。
この一実施形態の多糖類検査装置では、上記マトリックスがカルボニル基(−(C=O)−)を含む。ここで、カルボニル基の吸収波長は6μm付近であることから、赤外レーザ光(特に中赤外光)を比較的良く吸収して、上記測定対象物としての上記多糖類がイオン化するのを良く助けることができる。
一実施形態の多糖類検査装置では、上記マトリックスは酢酸ナトリウムと尿素を含むことを特徴とする。
この一実施形態の多糖類検査装置では、上記マトリックスは酢酸ナトリウムと尿素を含むので、赤外レーザ光(特に中赤外光)を吸収して、上記測定対象物としての上記多糖類がイオン化するのを良く助けることができる。
一実施形態の多糖類検査装置では、上記マトリックスは、さらにエチレンジアミン四酢酸の三ナトリウム塩を含むことを特徴とする。
この一実施形態の多糖類検査装置では、上記マトリックスは、酢酸ナトリウムと尿素に加えて、さらにエチレンジアミン四酢酸の三ナトリウム塩を含むので、赤外レーザ光(特に中赤外光)をさらに良く吸収して、上記測定対象物としての上記多糖類がイオン化するのを良く助けることができる。
一実施形態の多糖類検査装置では、上記マトリックスは尿素を含むことを特徴とする。
この一実施形態の多糖類検査装置では、上記マトリックスは尿素を含むので、赤外レーザ光(特に中赤外光)を吸収して、上記測定対象物としての上記多糖類がイオン化するのを良く助けることができる。
この発明の多糖類検査方法は、
試料台上に、測定対象物としての多糖類とマトリックスとの混合物からなる試料を載置し、
レーザ光源からの赤外レーザ光を光学系によって上記試料台上の試料へ導いて、上記試料に含まれた上記測定対象物を上記マトリックスの助けによってイオン化し、
上記試料が発生したイオンを、質量分析部によって上記イオンの質量電荷比に応じて分離してイオン検出器に到達させて検出し、
データ取得部によって、上記イオン検出器の出力に基づいて、上記試料の質量スペクトルを得、
上記データ取得部が得た上記質量スペクトルに基づいて、上記測定対象物に上記多糖類とは別の毒性物質が混入しているか否かに応じて上記多糖類が正常品であるか否かを判定することを特徴とする。

この多糖類検査方法では、赤外レーザ光(特に中赤外光が望ましい。)を試料に照射するので、弱い化学結合を分子内にもつ分子を壊すことなく、副次生成物の生成を抑えて、上記試料をイオン化できる。したがって、窒素レーザのような紫外光を用いる場合に比して、質量分析の分解能やS/N比を高めることができる。この結果、上記測定対象物としての上記多糖類が正常品であるか否かの判定の精度が高まる。また、上記判定は、例えばコンピュータ用のソフトウエアによって実行することができる。そのようにした場合、自動的に判定を行うことができ、したがって迅速な判定が可能となる。
以上より明らかなように、この発明の多糖類検査装置および多糖類検査方法によれば、血液凝固阻止剤の一つであるヘパリンのような多糖類が正常品であるか否かを迅速にかつ精度良く確認できる。
(A)はこの発明の一実施形態の多糖類検査装置の概略構成を示す図であり、(B)は測定対象物が異常品である場合の質量スペクトルを示す図であり、また、(C)は測定対象物が正常品である場合の質量スペクトルを示す図である。 上記多糖類検査装置の試料台を示す図である。 上記多糖類検査装置のデータ解析装置のブロック構成を示す図である。 上記多糖類検査装置のレーザ光源および光学系の一つの構成例を示す図である。 上記多糖類検査装置のレーザ光源および光学系の別の構成例を示す図である。 OSCSとヘパリンの化学構造を示す図である。 ヘパリンの異常品の質量スペクトルを示す図である。 ヘパリンの正常品の質量スペクトルを示す図である。
以下、この発明を図示の実施の形態によって詳細に説明する。
図1(A)は、この発明の一実施形態の多糖類検査装置(全体を符号10で示す。)の概略構成を示している。この多糖類検査装置10は、レーザ光源としてのIR光源11と、真空容器12と、この真空容器12内に設けられた試料台13と、質量分析部14と、イオン検出器17と、ビーム集光ユニット30と、データ解析装置50と、画像表示装置51と、制御信号を出力してこの装置の全体を制御するシステム制御部20とを備えている。
IR光源11は、赤外レーザ光、この例では波長5μm〜14μm(マイクロメータ)の範囲内の中赤外光を発生する。このような中赤外光を発生するレーザ光源は、例えば特開2005−331599号公報、特開2007−323021号公報などに開示された光源を用いてもよい。
真空容器12は、その内部が、システム制御部20からの制御信号によって制御される図示しない真空ポンプによって真空に排気されるようになっている。この例では、真空容器12は、試料台13、質量分析部14およびイオン検出器17を収容している。
なお、本実施の形態では、試料台13は質量分析部14と同様に真空容器12内に設けられるが、この構成に限られない。例えば、試料台13及び質量分析部14を大気圧の容器内に設けてもよい。また、試料台13が設けられる試料室を大気圧とし、キャピラリやオリフィスを介して真空環境となる質量分析部にイオンを導いてもよい。このようなAP−MALDI装置(大気圧マトリクス支援レーザ脱離イオン化装置)では、試料を容易に交換することができるので、利便性が高い。
試料台13は、この例では、真空容器12の下部に配置されている。この試料台13には、測定対象物としての多糖類とこの多糖類のためのマトリックスとの混合物からなる試料90が載置されるようになっている。図2に示すように、この試料台13は、IR光源11からの赤外レーザ光を試料90のうちの所望の部位に照射できるように、システム制御部20からの制御信号によって制御される移動機構40によって、水平面内で互いに垂直なX方向およびY方向に移動可能になっている。
図1に示すように、ビーム集光ユニット30は、IR光源11からの赤外レーザ光を試料台13上の試料90へ導いて照射させる。
イオン検出器17は、真空容器12内で試料台13に対向する位置、この例では真空容器12内の上部に設けられている。試料台13側の電極15とイオン検出器17側の電極16との間には、システム制御部20からの制御信号によって制御される図示しない高圧電源によって、試料90が発生したイオンをイオン検出器17へ向けて加速するための電圧(この例では20kV)が印加される。
質量分析部14は、試料台13とイオン検出器17との間に設けられた静電的な電磁レンズや多極型の高周波イオンガイドを含んでいる。この質量分析部14は、IR光源11からの赤外レーザ光を受けて試料90が発生した複数のイオンを、それらのイオンの質量電荷比m/zに応じて分離してイオン検出器17へ導く。
データ解析装置50は、イオン検出器17の出力をデータ解析して、データ解析結果を例えばLCD(液晶表示素子)のような画像表示装置51に表示させる。
図4は、IR光源11からビーム集光ユニット30までの光学系の一つの構成例を模式的に示している。IR光源11から出射した平行光線である赤外レーザ光は、軸外し放物面鏡35によって集光されて光ファイバ(この例では中空ファイバ)36の一端に入射する。それから、その赤外レーザ光は、光ファイバ36を通して伝送され、光ファイバ36の他端を通してビーム集光ユニット30の筐体31内に入る。
ビーム集光ユニット30の筐体31には、光ファイバ36の上記他端が接続された側から順に、コリメートレンズ32、集光レンズ33、ヘリコイドからなる位置調整機構34が設けられている。ビーム集光ユニット30の筐体31内に入った赤外レーザ光は、放射状に広がり、コリメートレンズ32によって平行光線に変換され、集光レンズ33によって試料90の表面へ向けて集光される。そして、その赤外レーザ光は、真空容器12の壁面に設けられたZnSeからなる窓12wを通して、試料90の表面へ照射される。照射される赤外レーザ光のスポット径は、数百μm程度(最小120μm)になっている。ここで窓材はZnSeの他、CaFやBaF等の中赤外光を透過させる窓材であってもよい。なお、AP−MALDIにおいては、必ずしも窓を構成しなくてもよい。
真空容器12内には、観察用カメラ18が設けられている。この観察用カメラ18によって、赤外レーザ光を照射中に試料90の表面を観察することができる。
IR光源11が発生する赤外レーザ光の波長が可変して設定されたとき、試料90上で赤外レーザ光の焦点がずれる傾向がある。このような焦点のずれは、この例では真空容器12内に設けられた観察用カメラ18によって試料90の表面を観察しながら、位置調整機構34によって焦点調整することで解消できる。
図5は、IR光源11からビーム集光ユニット30までの光学系の別の構成例を模式的に示している。なお、図5において、図4における構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付して、重複した説明を省略する。
この図5の構成例では、IR光源11から出射した平行光線である赤外レーザ光は、平面ミラー37,38によって反射されてビーム集光ユニット30′の筐体31内に入る。
ビーム集光ユニット30′の筐体31には、集光レンズ33、ヘリコイドからなる位置調整機構34が設けられている。ビーム集光ユニット30′の筐体31内に入った赤外レーザ光は、集光レンズ33によって試料90の表面へ向けて集光される。そして、その赤外レーザ光は、真空容器12の壁面に設けられたZnSeからなる窓12wを通して、試料90の表面へ照射される。
この図5の構成例では、図4の構成例に比して、ビーム集光ユニット30′内の部品数を低減できるという利点がある。なお、ビーム集光ユニット30′の筐体31内に入った赤外レーザ光を試料90の表面へ向けて集光するために、ビーム集光ユニット30′内の集光レンズ33に代えて、軸外し放物面鏡を設けても良い。
図3は、図1中に示したデータ解析装置50のブロック構成を示している。このデータ解析装置50は、データを記憶可能なメモリ52と、データ取得部53と、判定部54と、画像作成部55と、例えばLCD(液晶表示素子)のような画像表示装置51(図1中にも示したもの)とを備えている。
メモリ52は、データ取得部53や判定部54が取り扱う計算過程のデータや、計算の結果として得られたデータ、つまり質量スペクトルを表すデータを格納することができる。
データ取得部53は、イオン検出器17の出力に基づいて演算を行って、試料90の質量スペクトルを得る。この質量スペクトルは、例えば後述の図7Aに示すようなものである。
判定部54は、データ取得部53が得た質量スペクトルに基づいて、測定対象物としての多糖類が正常品であるか否かを判定する。具体的には、図1(B),図1(C)に示すように、質量スペクトルに毒性物質の特定の基の質量を表すピーク(P1,P2,…とする。)が存在するか否か、またはそのピークP1,P2,…の強度が或る基準値以下であるか否かに応じて、判定を行う。この基準値は、試料90に含まれた毒性物質の割合の、予め定められた許容量に対応する。ここで、図1(B)は、測定対象物としての多糖類に毒性物質の特定の基の質量を表すピークP1,P2,が或る基準値を超える強度で含まれていて、異常品であると判定される場合を示している。一方、図1(C)は、測定対象物としての多糖類に毒性物質の特定の基の質量を表すピークP1,P2,が或る基準値以下の強度しか含まれておらず、正常品であると判定される場合を示している。
この例では、判定部54はさらに、ピークP1,P2,…の強度に基づいて、測定対象物としての多糖類が正常品であるか否かの判定の信頼度を表す確率(パーセント)を算出する。この確率が100%であれば、判定の信頼度が完全であることを示す。
図3中に示す画像作成部55は、データ取得部53が得た質量スペクトルを画像表示装置51に表示するための2次元画像データを作成する。これにより、質量スペクトルを表す2次元画像が、画像表示装置51の表示画面に表示される。
また、画像表示装置51の表示画面には、判定部54による算出結果に基づいて、例えば「正常品(確率99.0%)」、「異常品(確率99.9%)」というように、測定対象物としての多糖類が正常品であるか又は異常品であるかを表す情報と、その判定の確率を表す情報とが併せて表示される。
上述のデータ解析装置50におけるデータ取得部53と、判定部54と、画像作成部55は、ソフトウエア(コンピュータプログラム)によって構成されている。
次に、上記多糖類検査装置10によって測定対象物としての多糖類が正常品であるか否かを判定する検査方法について、具体例を挙げて説明する。
この例では、測定対象物としての多糖類は血液凝固阻止剤の一つであるヘパリンとし、毒性物質はOSCS(過硫酸化コンドロイチン硫酸;over-sulfated chondroitin sulfate)とする。なお、図6の上段にOSCSの四硫化二糖の繰り返し単位を示し、図6の下段にヘパリンの三流化二糖の繰り返し単位を示している。
検査は次のようなフローで行う。
ステップS1; 測定対象物であるヘパリンの検査試料を作製する。
ステップS2; 断片化されたヘパリンをマトリックスと混合する。
ここで、へパリン50pmol(ピコモル)に対し、マトリックスとして酢酸ナトリウム5nmol(ナノモル)と尿素1μmol(マイクロモル)を加える。そして、この測定対象物としてのへパリンとマトリックスとの混合物を試料90とする。
ステップS3; 試料90を矩形板状のサンプルプレート19(図2中に示す。)に滴下する。
ステップS4; サンプルプレート19上の試料90を乾燥する。
ステップS5; 真空容器12内の試料台13上に、試料90が載ったサンプルプレート19を取り付ける。
ステップS6; 検査装置10を動作させて、IR光源11からの赤外レーザ光(この例では波長6μm、スポット径が数百μm、時間10nsec(ナノ秒)のパルスレーザ)を試料90に照射する。
ステップS7; データ解析装置50のデータ取得部53によって、試料90の質量スペクトルを得る。
ここで、得られる質量スペクトルは、例えば図7Aに示すようなものである。図7Aでは、横軸は質量電荷比m/zを表す。縦軸はイオンの相対強度を表し、最大ピークが100%になるように規格化されている。
図7Aの例では、[M−4H+3Na]、[M−3H+2Na]、[M−2H+Na]、[M−SO−2H+Na]がそれぞれヘパリン(の三硫化二糖)由来のイオンを表している。なお、Mはヘパリンの三硫化二糖を表している。一方、[OSCS−5H+4Na]、[OSCS−4H+3Na]、[OSCS−3H+2Na]がOSCS由来のイオンを表している。
ステップS8; 試料90の質量スペクトルにおいて、毒性物質としてのOSCSの特定の基の質量を表すピークの強度を相対強度で検出する。
図7Aの例では、OSCS由来のイオンの質量を表すピークのうち、最も大きい[OSCS−5H+4Na]イオンのピークの強度を相対強度で検出する。
ステップS9; 毒性物質としてのOSCSの特定の基の質量を表すピークの強度に基づいて、試料90に含まれたOSCSの割合を定量化する。
図7Aの例では、[OSCS−5H+4Na]イオンのピークの強度が相対強度で20%であることに基づいて、試料90に含まれたOSCSの割合を定量化する。
ステップS10; データ解析装置50の判定部54によって、試料90に含まれたOSCSの割合(特定の基の質量を表すピークの強度に対応する)が予め定められた許容量以下であるか否かに応じて、測定対象物としてのヘパリンが正常品であるか否かを判定する。
この検査方法では、赤外レーザ光、特に波長6μmの中赤外光を試料90に照射するので、へパリンのように弱い化学結合を分子内にもつ分子を壊すことなく、副次生成物の生成を抑えて、試料90をイオン化できる。したがって、窒素レーザのような紫外光を用いる場合に比して、質量分析の分解能やS/N比を高めることができる。この結果、測定対象物としてのへパリンが正常品であるか否かの判定の精度を高めることができる。また、上記判定は、実質的にコンピュータプログラムによって実行しているので、自動的に判定を行うことができる。したがって、迅速な判定が可能となる。
また、この検査方法では、測定対象物としてのヘパリンに対し、マトリクスとしてマトリックスとして酢酸ナトリウムと尿素を用いている。このマトリックスは、赤外レーザ光を良く吸収して、ヘパリンがイオン化するのを良く助けることができる。
なお、8糖以上で構成されたヘパリンに対しては、ヘパリン50pmolに対するマトリックスとして、酢酸ナトリウム5nmolと尿素1μmolに加えて、さらにEDTA(3Na)(つまり、エチレンジアミン四酢酸(エデト酸)の三ナトリウム塩)200pmolを添加するのが望ましい。
また、測定対象物としてのヘパリン(試料ターゲット)に対し、マトリクスとしての尿素2mol/L(モル/リットル)の濃度の尿素水溶液(50%アセトニトリル)を塗布しても良い。
上述のマトリックスはいずれもカルボニル基(−(C=O)−)を含む。ここで、カルボニル基の吸収波長は6μm付近であることから、上記検査方法で用いている赤外レーザ光(特に波長6μmの中赤外光)を比較的良く吸収して、ヘパリンがイオン化するのを良く助けることができる。したがって、カルボニル基を分子内にもつ化合物であればマトリックスとして使用できる可能性がある。
図3中のデータ解析装置50におけるメモリ52を、正常品の質量スペクトルを記憶する比較基準記憶部として用いることができる。
すなわち、測定対象物の判定を行うのに先立って、メモリ52に、測定対象物としての多糖類(この例ではヘパリン)と同じ多糖類からなる正常品について、測定対象物のための測定条件と同じ測定条件で得られた質量スペクトル(図7Bに示す。)を記憶させておく。そして、判定部54は、測定対象物の質量スペクトルと正常品の質量スペクトルとを比較して、測定対象物としての多糖類が正常品であるか否かを判定する。
より具体的には、判定部54は、測定対象物の質量スペクトルと正常品の質量スペクトルとを比較する際に、測定対象物の質量スペクトルから正常品の質量スペクトルを差し引いて差分をとり、この差分のスペクトルに毒性物質の特定の基の質量を表すピークP1,P2,…が存在するか否か、またはそのピークP1,P2,…の強度が或る基準値以下であるか否かに応じて、判定を行う。このようにした場合、測定対象物としての多糖類が正常品であるか否かの判定の精度をさらに高めることができる。
なお、上述の実施形態では、図4,図5に示したように、光源11からビーム集光ユニット30,30′までの光学系は、真空容器12外に設けられている。しかしながら、これに限られるものではない。光源11からビーム集光ユニット30までの光学系は、真空容器12内に設けても良い。一方、観測用カメラ18は、真空容器12外に配置されて、窓を通して試料90の表面を観測するようになっていても良い。
この実施形態では、測定対象物は血液凝固阻止剤の一つであるヘパリンであるものとした。当然ながら、これに限られるものではなく、この発明の多糖類検査装置および多糖類検査方法は、ヘパリン以外の多糖類にも広く適用することができる。
10 多糖類検査装置
11 IR光源
12 真空容器
30,30′ ビーム集光ユニット
50 データ解析装置
51 画像表示装置
90 試料

Claims (10)

  1. 赤外レーザ光を発生するレーザ光源と、
    測定対象物としての多糖類とこの多糖類のためのマトリックスとの混合物からなる試料が載置される試料台と、
    上記レーザ光源からの上記赤外レーザ光を上記試料台上の上記試料へ導く光学系と、
    上記赤外レーザ光を受けて上記試料が発生したイオンを、上記イオンの質量電荷比に応じて分離する質量分析部と、
    前記質量分析部により分離されたイオンを検出するイオン検出器と、
    上記イオン検出器の出力に基づいて、上記試料の質量スペクトルを得るデータ取得部と、
    上記データ取得部が得た上記質量スペクトルに基づいて、上記測定対象物に上記多糖類とは別の毒性物質が混入しているか否かに応じて上記多糖類が正常品であるか否かを判定する判定部とを備えたことを特徴とする多糖類検査装置。
  2. 請求項1に記載の多糖類検査装置において、
    上記判定部は、上記質量スペクトル内に、毒性物質の特定の基の質量を表すピークが存在するか否かに応じて、上記測定対象物としての上記多糖類が正常品であるか否かを判定することを特徴とする多糖類検査装置。
  3. 請求項1に記載の多糖類検査装置において、
    上記判定部は、上記質量スペクトル内で、毒性物質の特定の基の質量を表すピークの強度が或る基準値以下であるか否かに応じて、上記測定対象物としての上記多糖類が正常品であるか否かを判定することを特徴とする多糖類検査装置。
  4. 請求項2または3に記載の多糖類検査装置において、
    上記毒性物質を表す上記特定の基は硫酸基であることを特徴とする多糖類検査装置。
  5. 請求項1から4までのいずれか一つに記載の多糖類検査装置において、
    上記測定対象物としての上記多糖類と同じ多糖類からなる正常品について、上記測定対象物のための測定条件と同じ測定条件で得られた質量スペクトルを記憶する比較基準記憶部を備え、
    上記判定部は、上記測定対象物の質量スペクトルと上記正常品の質量スペクトルとを比較して、上記測定対象物としての上記多糖類が正常品であるか否かを判定することを特徴とする多糖類検査装置。
  6. 請求項1から5までのいずれか一つに記載の多糖類検査装置において、
    上記マトリックスはカルボニル基を含むことを特徴とする多糖類検査装置。
  7. 請求項6に記載の多糖類検査装置において、
    上記マトリックスは酢酸ナトリウムと尿素を含むことを特徴とする多糖類検査装置。
  8. 請求項7に記載の多糖類検査装置において、
    上記マトリックスは、さらにエチレンジアミン四酢酸の三ナトリウム塩を含むことを特徴とする多糖類検査装置。
  9. 請求項6に記載の多糖類検査装置において、
    上記マトリックスは尿素を含むことを特徴とする多糖類検査装置。
  10. 試料台上に、測定対象物としての多糖類とマトリックスとの混合物からなる試料を載置し、
    レーザ光源からの赤外レーザ光を光学系によって上記試料台上の試料へ導いて、上記試料に含まれた上記測定対象物を上記マトリックスの助けによってイオン化し、
    上記試料が発生したイオンを、質量分析部によって上記イオンの質量電荷比に応じて分離してイオン検出器に到達させて検出し、
    データ取得部によって、上記イオン検出器の出力に基づいて、上記試料の質量スペクトルを得、
    上記データ取得部が得た上記質量スペクトルに基づいて、上記測定対象物に上記多糖類とは別の毒性物質が混入しているか否かに応じて上記多糖類が正常品であるか否かを判定することを特徴とする多糖類検査方法。
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