JP5645165B2 - リビングラジカル重合の重合開始剤 - Google Patents

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Description

本発明は、リビングラジカル重合に用いられる重合開始剤およびそれを用いた重合方法に関する。より具体的には、本発明は、水酸基またはアミノ基を有する化合物とハロゲン化剤を反応させて得られる化合物をリビングラジカル重合の開始ドーマント種として用いる方法に関する。
詳細には、本発明の方法は、ハロゲン化剤を用いて、非共役構造を有するアルコール化合物または非共役構造を有するアミン化合物などをハロゲン化して、ハロゲン化誘導体化合物を生成する工程と、
該ハロゲン化誘導体化合物をリビングラジカル重合のドーマント種として用いて、ラジカル反応性不飽和結合を有するモノマーのリビングラジカル重合を行う工程であって、該ハロゲン化誘導体化合物からハロゲンが脱離して生成するラジカルを該モノマーの不飽和結合と反応させることを含む、工程、
を包含する。
従来から、ビニルモノマーを重合してビニルポリマーを得る方法として、ラジカル重合法が周知であったが、ラジカル重合法は一般に、得られるビニルポリマーの分子量を制御することが困難であるという欠点があった。また、得られるビニルポリマーが、様々な分子量を有する化合物の混合物になってしまい、分子量分布の狭いビニルポリマーを得ることが困難であるという欠点があった。具体的には、反応を制御しても、重量分子平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)として、2〜3程度にまでしか減少させることができなかった。
このような欠点を解消する方法として、1990年頃から、リビングラジカル重合法が開発されている。すなわち、リビングラジカル重合法によれば、分子量を制御することが可能であり、かつ分子量分布の狭いポリマーを得ることが可能である。具体的には、Mw/Mnが2以下のものを容易に得ることが可能であることから、ナノテクノロジーなどの最先端分野に用いられるポリマーを製造する方法として脚光を浴びている。
リビングラジカル重合方法は、例えば、後述する特許文献1〜4および非特許文献1〜6に開示されている。
リビングラジカル重合を効率よく行うために、従来、ハロゲン化炭化水素などがいわゆるドーマント種として使用されていた。しかし、ハロゲン化炭化水素などをドーマント種として使用する場合、予め当該ハロゲン化炭化水素などを合成もしくは入手しておく必要がある。従って、ドーマント種の合成などの必要がないプロセスが望まれていた。
また、リビングラジカル重合方法は、いわゆる星型ポリマー(図3)、櫛型ポリマー(図4)、表面グラフトポリマー(図5)などと呼ばれる、複雑な構造のポリマー製品を製造するために使用できることが知られている。具体的には、例えば、所望の製品のポリマー鎖配列に対応するように配列された複数の開始基を有する化合物を使用する方法がある。このような場合には、特に、その複数の開始基を有する化合物を調製することが必要であり、全体としてのプロセスが複雑になるという欠点があった。
他方、リビングラジカル重合においては、高価な触媒を大量に必要とするという欠点もあった。
このような遷移金属錯体触媒を用いる場合には、使用量として多量の遷移金属錯体触媒が必要であり、反応後に使用された大量の触媒を製品から完全に除去することが容易でないという欠点があった。また不要となった触媒を廃棄する際に環境上の問題が発生し得るという欠点があった。さらに、遷移金属には毒性の高いものが多く、製品中に残存する触媒の毒性が環境上問題となる場合があり、遷移金属を食品包装材、生体・医療材料などに使用することは困難であった。また、反応後に製品から除去された触媒の毒性が環境上問題となる場合もあった。さらに、導電性の遷移金属がポリマーに残存するとそのポリマーに導電性が付与されてしまって、レジストや有機ELなどの電子材料に使用することが困難であるという問題もあった。また、錯体を形成させないと反応液に溶解しないため、配位子となる化合物を用いなければならず、このために、コストが高くなり、かつ、使用される触媒の総重量がさらに多くなってしまうという問題もあった。さらに、配位子は、通常、高価であり、あるいは煩雑な合成を要するという問題もあった。また、重合反応に高温(例えば、110℃以上)が必要であるという欠点があった(例えば、上記非特許文献1では、110℃において重合を行っている)。
このように、従来、効率良くリビングラジカル重合を行うために、触媒とドーマント種とを組み合わせて使用することが一般的に行われていた。
例えば、特許文献1(特開2002−249505号公報)は、Cu、Ru、Fe、Niなどを中心金属とする錯体を触媒として使用し、請求項1において、重合開始剤となるドーマント種として有機ハロゲン化物を用いることを記載している。
また、特許文献2(特開平11−322822号公報)は、ヒドリドレニウム錯体を触媒として使用し、ハロゲン化炭化水素をドーマント種として使用することを記載している。
非特許文献1(Journal of The American Chemical Society 119,674−680(1997))は、4,4’−ジ−(5−ノニル)−2,2’−ビピリジンを臭化銅に配位させた化合物を触媒として使用し、1−フェニルエチルブロミドをドーマント種として使用することを記載している。非特許文献1に記載されていた銅錯体触媒では、ポリマー1kgを重合する際に必要とされる触媒の費用がおよそ数千円になっていた。
なお、触媒を用いる必要がないリビングラジカル重合方法も公知である。例えば、ニトロキシル系、およびジチオエステル系の方法が知られている。しかし、これらの方法においては、特殊な保護基をポリマー成長鎖に導入する必要があり、この保護基が非常に高価であるという欠点がある。また、重合反応に高温(例えば、110℃以上)が必要であるという欠点がある。さらに、生成するポリマーが好ましくない性能を有しやすいという欠点がある。すなわち、生成するポリマーがその高分子本来の色と異なる色に着色されたものになりやすく、また、生成するポリマーが臭気を有するものになりやすいという欠点がある。
他方、非特許文献2(Polymer Preprints 2005, 46(2), 245−246)および特許文献3(特開2007−92014号公報)は、Ge、Snなどを中心金属とする化合物を触媒として使用し、有機ハロゲン化物をドーマント種として使用することを開示する。また、特許文献4(国際公開WO2008/139980号公報)は、窒素またはリンを中心金属とする化合物を触媒として使用することを開示する。
また、非特許文献3はリン化合物を触媒として使用し、有機ハロゲン化物をドーマント種として使用することを開示する。
このように、従来、リビングラジカル重合を効率良く行うためには、触媒とドーマント種とを組み合わせて用いることが当業者の技術常識であった。
そして、ドーマント種としては、ハロゲン化アルキルなどが好ましいと考えられており、アルコール化合物をドーマント種として使用できるとは考えられていなかった。
他方、ポリマーを合成する反応とは関係のない低分子化合物の研究においては、アルコールなど様々な化合物とハロゲンとの反応が研究されている。
例えば、非特許文献4は、モノ−t−ブチルジメチルシリル化ジオールの酸化環状化方法を記載している。非特許文献4は、その途中の反応においてN−ヨウ化こはく酸イミド(NIS)がモノ−t−ブチルジメチルシリル化ジオールの水酸基をヨウ素化する反応が開示されているが、その反応をモノ−t−ブチルジメチルシリル化ジオールの酸化環状化方法以外の方法に用いることについての記載はない。すなわち、ポリマーの合成に用いることについての記載はない。
また、非特許文献5は、環状エーテルを良好な収率で合成するために、分子内水素引き抜き反応(intramolecular hydrogen abstraction)のためにジアセトキシヨードベンゼン((AcO)IPh)およびIの混合物を用いることを記載している。非特許文献5には(AcO)IPhおよびIの混合物がアルコールをヨウ素化する反応が開示されているが、環状エーテルの合成以外の目的にその反応を使用することの記載はない。その反応をポリマーの合成に用いることについての記載はない。
また、非特許文献6は、ベンズイソチアゾリン化合物を合成する方法を記載している。非特許文献6は、その中間体を合成する際に、(AcO)IPhおよびIの混合物がアミンをヨウ素化する反応が生じることを記載している(Scheme 1)が、その反応をベンズイソチアゾリン化合物合成方法以外の方法に用いることについての記載はない。すなわち、ポリマーの合成に用いることについての記載はない。
さらに、非特許文献7は、芳香族カルボン酸からγ−ラクトンまたはδ−ラクトンを合成する方法を記載している。非特許文献7は、ラクトン環を合成する際に、水素引抜反応およびハロゲン化反応を用いて環を形成できることを記載し(7089頁のPath A)、PhI(OCOCFおよびIの混合物、Hg(OAc)およびIの混合物、Pb(OAc)およびIの混合物がその試薬として使用できることを記載している(Table 3)が、その反応をラクトンの合成方法以外の方法に用いることについての記載はない。すなわち、ポリマーの合成に用いることについての記載はない。
特開2002−249505号公報 特開平11−322822号公報 特開2007−92014号公報 国際公開WO2008/139980号公報
Journal of The American Chemical Society 119,674−680(1997) Polymer Preprints 2005, 46(2), 245−246, 「Germanium− and Tin−Catalyzed Living Radical Polymerizations of Styrene」、American Chemical Society, Division of Polymer Chemistry Polymer Preprints 2007, 56(2), 2452「ゲルマニウムおよびリン化合物を用いた新しいリビングラジカル重合」高分子学会、第56回高分子討論会 Tetrahedron Lett.30,4791−4794(1989) Tetrahedron Lett.25,1953−1956(1984) Tetrahedron 55,14885−14900(1999) Tetrahedron Lett.36,7089−7092(1995)
本発明は、上記問題点の解決を意図するものであり、製造に煩雑な工程を必要としない新規なドーマント種を用いたリビングラジカル重合方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果として、本発明を完成させた。すなわち、本発明によれば、以下の重合方法などが提供され、そのことにより上記課題が解決される。
(1) リビングラジカル重合方法であって、以下の工程:
アルコール化合物の水酸基の水素をハロゲン化することが可能なハロゲン化剤により、アルコール化合物をハロゲン化して、該水酸基中の水素がハロゲンに置換されたハロゲン化誘導体化合物を生成する工程であって、ここで、該アルコール化合物の水酸基が結合している原子が非共役構造を有している、工程、および
該ハロゲン化誘導体化合物をリビングラジカル重合のドーマント種として用いて、ラジカル反応性不飽和結合を有するモノマーのリビングラジカル重合を行う工程であって、該ハロゲン化誘導体化合物からハロゲンが脱離して生成するラジカルを該モノマーの不飽和結合と反応させることを含む、工程、
を包含する、方法。
(2) 前記アルコール化合物中の水酸基が結合している原子が炭素またはケイ素である、上記項1に記載の方法。
(3) 前記アルコール化合物中の水酸基が結合している原子がSp混成軌道を有する炭素であるか、またはカルボン酸を構成する炭素である、上記項1に記載の方法。
(4) 前記ハロゲン化剤が、アルコールをヨウ素化することが可能なヨウ化剤であるか、またはアルコールを臭素化することが可能な臭素化剤である、上記項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
(5) 前記ハロゲン化剤が、アルコールをヨウ素化することが可能なヨウ化剤である、上記項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
(6) 前記ハロゲン化剤が、以下の式4の構造を有し、
式4 R−C(=O)−NX−C(=O)−R
ここで、Xはハロゲンであり、
およびRはそれぞれ独立して任意の置換基であり、RおよびRは互いに連結されて環構造を形成してもよく、
該ハロゲン化剤は、リビングラジカル重合の触媒としても作用する、
上記項1〜5のいずれか1項に記載の方法
(7) 前記ハロゲン化剤において、RおよびRは互いに連結されてアルキレンまたは置換アルキレンとなって、前記式4の構造が環構造となり、
ここで、該アルキレンの炭素数は1〜10であり、
該置換アルキレンにおけるアルキレンの炭素数は1〜10であり、
該置換アルキレンにおける置換基がハロゲンまたは水酸基から選択される、
上記項6に記載の方法。
(8) 前記式4の構造が5員環構造または6員環構造であり、Xがヨウ素である、上記項7に記載の方法。
(9) 前記ハロゲン化剤がN−ヨウ化コハク酸イミドである、上記項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
(10) 前記アルコール化合物中の水酸基が結合している原子がケイ素である、上記項1に記載の方法。
(11) 前記アルコール化合物が、固体である、上記項1に記載の方法。
(12) 前記アルコール化合物が、シリコン基板である、上記項1に記載の方法。
(13) 前記ハロゲン化剤が(AcO)IPhおよびIの混合物である、上記項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
(14) 反応性不飽和結合を有するモノマーをラジカル重合して得られるポリマー鎖の末端にポリオール化合物の残基が結合しているポリマーであって、
該ポリオール化合物の水酸基に由来する酸素原子が、該ポリマー鎖の末端のモノマー残基中の反応性不飽和結合を構成していた2つの炭素原子のうちのいずれか一方に直接結合している、ポリマー。
(15) 反応性不飽和結合を有するモノマーをラジカル重合して得られるポリマー鎖の末端が結合した基板であって、
該ポリマー鎖の末端のモノマー残基中の、反応性不飽和結合を構成していた2つの炭素原子のうちのいずれか一方に、基板表面の酸素原子が直接結合している、基板。
(16) 反応性不飽和結合を有するモノマーをラジカル重合して得られるポリマー鎖の末端にシラノール化合物の残基が結合しているポリマーであって、
該シラノール化合物の水酸基に由来する酸素原子が、該ポリマー鎖の末端のモノマー残基中の反応性不飽和結合を構成していた2つの炭素原子のうちのいずれか一方に直接結合している、ポリマー。
(17) リビングラジカル重合方法であって、以下の工程:
アミノ基の窒素に結合している水素をハロゲン化することが可能なハロゲン化剤により、1級または2級のアミン化合物のアミノ基の窒素に結合している水素をハロゲン化して、該アミン化合物の水素がハロゲンに置換されたハロゲン化誘導体化合物を生成する工程であって、ここで、該アミン化合物の該アミノ基が結合している原子が非共役構造を有している、工程、および
ハロゲン化誘導体化合物をリビングラジカル重合のドーマント種として用いて、ラジカル反応性不飽和結合を有するモノマーのリビングラジカル重合を行う工程であって、該ハロゲン化誘導体化合物からハロゲンが脱離して生成するラジカルを該モノマーの不飽和結合と反応させることを含む、工程、
を包含する、方法。
本発明によれば、複雑な構造の開始ドーマント種を必要としないリビングラジカル重合のための開始剤系およびそれを用いた重合方法が提供される。
本発明の開始剤系においては、様々なアルコール化合物やアミン化合物を使用することが可能になり、従来不可欠であった煩雑な開始基の設計は不要となる。そして、水酸基またはアミノ基を有する様々な有機もしくは無機の化合物を開始剤系に用いることが可能になる。この開始剤系に使用可能な化合物は、有機化合物であってもよく、無機化合物であってもよい。また、低分子量の化合物であってもよく、高分子量の化合物であってもよい。また、この開始剤系に使用可能な化合物は、液体であってもよく、固体であってもよい。この開始剤系に固体を使用する場合、その表面に水酸基またはアミノ基が存在すれば、その内部に水酸基またはアミノ基が存在する必要はない。すなわち、表面に水酸基またはアミノ基が存在する任意の固体材料が、本発明の開始剤系に使用可能となる。例えば、半導体の基板や、その他の基板、粒子、ファイバー、電極などの固体材料を、開始剤系に使用することが可能となる。さらに、ラジカル重合以外の重合方法で得られるポリマーであって、水酸基またはアミノ基を有するポリマー(例えば、ポリエステル)を開始剤系に使用することも可能となるため、ラジカル重合以外の重合方法で得られる部分とリビングラジカル重合で得られる部分とを有するブロックポリマーを製造することが容易になる。このようなブロックポリマーの合成は、従来にはできなかったり、プロセスが多段階で煩雑であった(多岐の分野で望まれているが、実用化が難しかった)。
本発明の開始剤系は、高い活性を有するため、重合反応に高温(例えば、110℃以上)を必要とすることもなく、そして触媒の使用量を低減することができる。また、この開始剤系は、高い活性を有するため、重合反応に高温(例えば、110℃以上)を必要とすることもなく、そして触媒の使用量を低減することができる。
特に、ハロゲン化窒素(−NX−)を含有するハロゲン化剤を用いる実施形態においては、当該ハロゲン化剤が触媒としても作用するため、当該ハロゲン化剤と、開始ドーマント種と、モノマーとの3種類の材料のみで、重合用組成物とすることが可能になり、単純な配合でリビングラジカル重合を行うことが可能になる。
また、この開始剤系は、ポリマー成長鎖を反応中に保護するために高価な特殊な保護基を必要とすることもない。
さらに、本発明の方法により得られたポリマーから得られる成形品は、成形時に着色したり臭いがついたりすることが実質的にないという利点を有する。
化合物1(RO−M−I、R=ベンジル)のH NMRスペクトルを示す。 MMA(M)(8000mM、バルク中),ベンジルアルコール(R=ベンジル)(240mM)およびNIS(240mM)、80C(実施例1、entry 1)の混合物についての、RO−H、RO−M−I(化合物1)、ベンズアルデヒド(化合物3)、NISおよびNHS(N−水素化コハク酸イミド)の濃度の時間(t)に対するプロットを示す。 本発明の方法で得られる星型ポリマーの模式図を示す。 本発明の方法で得られる櫛型ポリマーの模式図を示す。 本発明の方法で得られる表面グラフトポリマーの模式図を示す。
以下に、本発明をさらに詳細に説明する。
(好ましい実施形態の概要)
理解の容易のために、まず、本発明の好ましい実施形態の1つの例の概要を説明する。
スキーム1aに、リビングラジカル重合の基本的プロセスを記載する。すなわち、リビングラジカル重合反応は、ドーマント種(スキーム中の「Polymer−X」)の生長ラジカル(スキーム中の「Polymer・」)への可逆的活性化反応に基づいている。
(スキーム1a)

NIS(N−ヨウ化コハク酸イミド)を触媒として用いる場合(スキーム1b)、NISは、Polymer・の不活性化剤(スキーム中の「I−A」)として作用し、その場でN−スクシンイミドラジカル(N−コハク酸イミドラジカル)を発生する。N−スクシンイミドラジカルは、Polymer−Iの活性化剤として作用し、Polymer・およびNISを生成する。このサイクルにより、Polymer−Iの頻繁な活性化が可能になる。メカニズムとしては、このプロセスは、NISを連鎖移動剤として用いる可逆的連鎖移動(reversible chain transfer、RT)プロセスであり、この可逆的連鎖移動プロセスにより触媒的にPolymer−Iは活性化される。このような連鎖移動剤を(当該文章中では)触媒と称する。
(スキーム1b)

本発明によれば(スキーム2a)、単離したヨウ化アルキルの代わりに、アルコール化合物R−OH(またはアミン化合物)からハロゲン化剤により誘導される化合物を開始ドーマント種として用いる。
(スキーム2a)

従来から、リビングラジカル重合反応において、末端にアルコール化合物を導入する方法が検討されていた。その従来の方法においては、リビングラジカル重合のドーマント種として知られている化合物を、エステル化またはアミド化などの方法により、当該アルコール化合物に結合させて、得られたアルコール誘導体化合物を単離および精製して、ドーマントとして用いるというプロセスが行われていた(スキーム2b)。
(スキーム2b)

このようなプロセスでは、一旦、ドーマント種を単離、精製するという工程を行うため、原料のアルコール化合物から所望のポリマーを得るまでの全体のプロセスとして効率が低い。
しかしながら、本発明の方法においては、ドーマント種を単離、精製するという工程を行う必要がない。すなわち、アルコール化合物またはアミン化合物をハロゲン化した後、得られた化合物を単離、精製せずにそのまま重合反応を行うことができる。例えば、アルコール化合物またはアミン化合物をハロゲン化した後、ラジカル開始剤(例えば、AIBNなど)および必要に応じて触媒を添加することにより、ハロゲン化反応を行った反応容器から材料を移動することなく、重合反応を行うことができる。
アルコールは、ハロゲン化剤(例えば、NISなどのヨウ素化剤)によりハロゲン化(例えば、ヨウ素化)することができる(スキーム3a)。
(スキーム3a)

ハロゲン化されたアルコールのハロゲンと酸素との間の結合は切断されやすく、熱などのエネルギーを加えることにより、アルコキシラジカル(RO・)およびハロゲンラジカル(例えば、ヨウ素ラジカル(I・))を生じさせることができる(スキーム3b)。
(スキーム3b)

ここで、Rが非共役系である場合(例えば、Rがアルキルなどである場合)、モノマー(M)の存在下で反応を行えば、RO・はモノマーMに結合することが可能であり、その後ハロゲン(例えば、I・)によりキャップされてアルキルハライド(例えば、アルキルヨージド、RO−M−I)を形成することができる(スキーム3c)。ここで、mは、モノマー単位の数を示す。
(スキーム3c)

ハイポヨーダイト(RO−I)はまた、挿入(insertion)メカニズムにより直接モノマーMと反応して、RO−M−Iを形成することもできる。
このように、アルコールから誘導されたハロゲン化物(RO−M−X)は、リビングラジカル重合のドーマント種として使用することができる。例えば、モノマー、ラジカル開始剤、および触媒(例えば、NIS)と、アルコールから誘導されたハロゲン化物とを混合することにより、リビングラジカル重合を行うことができる。そして、アルコールから誘導されたハロゲン化物は、重合を行う前に単離する必要もなく、精製する必要もない。そのため、アルコールから誘導されたハロゲン化物を得る工程の後、得られた材料をハロゲン化反応のための反応容器から移動することなく、同じ容器の中で、重合反応を行うことができる。すなわち、アルコール化合物から、ポリマーを得るまでの全体のプロセスを1つの反応容器で行うこと(いわゆるワンポットプロセス)が可能になる。
ここで、アルコール化合物としては、その水酸基が結合する原子が非共役系である限り、任意のアルコール化合物が使用可能である。また、ヒドロキシ酸(例えば、カルボン酸)も使用可能である。
従来技術において採用されていた、ドーマント種への結合反応などの化学的方法を用いる必要なく、様々なアルコール化合物を用いて、そのアルコール化合物が末端に結合したリビングラジカルポリマーを得ることができる。そのため、ラジカル重合により得られるポリマーの末端に官能基を導入することが容易になる。また、様々なブロック重合体を得ることも容易になる。複雑な分岐構造のポリマーの合成も容易である。例えば、星型ポリマーと呼ばれるポリマー(図3)や、櫛型ポリマーと呼ばれるポリマー(図4)などの複雑な分岐構造のポリマーを合成したい場合には、その所望のポリマーの構造に対応するポリオール化合物を開始種の原料として用いれば、所望の分岐構造を有するポリマーが得られる。
(本発明のさらなる詳細な説明)
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
まず、本明細書中の用語を説明する。
(リビングラジカル重合)
本明細書において「リビングラジカル重合」とは、ラジカル重合反応において連鎖移動反応および停止反応が実質的に起こらず、単量体が反応しつくした後も連鎖成長末端が活性を保持する重合反応をいう。この重合反応では、重合反応終了後でも生成重合体の末端に重合活性を保持しており、モノマーを加えると再び重合反応を開始させることができる。
リビングラジカル重合の特徴としては、モノマーと重合開始剤の濃度比を調節することにより任意の平均分子量をもつ重合体の合成ができること、また、生成する重合体の分子量分布が極めて狭いこと、ブロック共重合体へ応用できること、などが挙げられる。なお、リビングラジカル重合は「LRP」と略される場合もある。
(アルコール化合物)
本発明において、アルコール化合物としては、水酸基を有する化合物であって、その水酸基が結合している原子が非共役構造を有している化合物が使用可能である。ここで、アルコール化合物には、ヒドロキシ酸(例えば、カルボン酸)も含む。すなわち、水酸基がヒドロキシ酸の一部を構成している化合物も含む。
水酸基が結合している原子が共役構造を有している場合には、水酸基の水素が脱離して生じるラジカルが共鳴安定化されてしまうため、開始基として充分な反応性を有することができない。水酸基が結合している原子が非共役構造(例えば、sp混成軌道を有する炭素)を有している場合には、水酸基の水素が脱離して生じるラジカルが共鳴安定化されることがなく、開始基としての反応性を有することが可能である。
非共役構造の具体例としては、例えば、水酸基が結合している原子(以下、便宜上「第1原子」)と、さらにその第1原子に結合している複数の原子(以下、便宜上「第2原子」との間の結合が単結合のみである構造が挙げられる。また、当該複数の第2原子のうち1つと、第1原子との間の結合のみが二重結合または三重結合であっても、その二重結合または三重結合が、他の二重結合または三重結合と共鳴しない構造であれば、非共役構造である。
ヒドロキシ酸は、水酸基が結合する第1原子が第2原子のうちの1つの酸素原子との間に二重結合を有するが、開始基として充分な反応性を有する。例えば、カルボン酸は、sp混成軌道を有するが、開始基として充分な反応性を有することが可能である。そのため、カルボン酸などのヒドロキシ酸は、共役構造を有するものであっても、開始基として使用することができる。
アルコール化合物は、化合物中に1つの水酸基を有する化合物であってもよく、2つ以上の水酸基を有する化合物であってもよい。例えば、以下の構造を有するポリオールを使用することができる。

また、アルコール化合物中の水酸基が結合する原子は、炭素であってもよく、炭素以外の原子であってもよい。すなわち、有機アルコールに限らず、無機アルコールを使用することが可能である。無機アルコールの例としては、例えば、シラノールが挙げられる。
また、表面に水酸基を有する固体も、アルコール化合物として使用できる。一般に、固体材料は、その材料そのものに水酸基を有さなくても、その表面が空気と接触することにより、空気中の水分と反応して、表面に水酸基が生成することが公知である。そのため、材料中に水酸基を有さない材料であっても、空気と接触させることにより表面に水酸基を生成させれば、本発明におけるアルコール化合物として使用することができる。
従って、有機または無機の固体材料が、本発明におけるアルコール化合物として使用することができる。特に、空気中の水分と反応しやすい無機材料は好ましく使用できる。具体的には、例えば、半導体基板などの材料として使用されるシリコン基板や、電極材料として使用されるITOなど、各種の固体材料をアルコール化合物として使用することができる。
(アミン化合物)
本発明において、アミン化合物としては、アミノ基を有する化合物であって、そのアミノ基が結合している原子が非共役構造を有している化合物が使用可能である。アミノ基は1級のアミノ基であってもよく、2級のアミノ基であってもよい。
アミノ基が結合している原子が共役構造を有している場合には、アミノ基の水素が脱離して生じるラジカルが共鳴安定化されてしまうため、開始基として充分な反応性を有することができない。アミノ基が結合している原子が非共役構造(例えば、sp3混成軌道を有する炭素)を有している場合には、アミノ基の水素が脱離して生じるラジカルが共鳴安定化されることがなく、開始基としての反応性を有することが可能である。
1つの実施形態においては、2級アミン化合物を用いることができる。この場合、ハロゲン化工程においては、2級アミンの窒素に結合している水素をハロゲン化することが可能なハロゲン化剤により、2級アミン化合物をハロゲン化して、該アミン化合物の水素がハロゲンに置換されたハロゲン化誘導体化合物を生成する。そして重合工程においては、ハロゲン化誘導体化合物をリビングラジカル重合のドーマント種として用いて、ラジカル反応性不飽和結合を有するモノマーのリビングラジカル重合を行う。ここで、該ハロゲン化誘導体化合物からハロゲンXが脱離して生成するラジカルを該モノマーの不飽和結合と反応させる。
(ハロゲン)
本明細書において「ハロゲン」とは、周期表17族に属するフッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)などの元素の1価の基をいう。好ましくは、臭素またはヨウ素であり、より好ましくはヨウ素である。
(ハロゲン化剤)
ハロゲン化剤としては、公知のハロゲン化剤を使用することが可能である。
ハロゲン化剤としては、そのハロゲン化剤のハロゲン原子が、窒素原子または炭素原子に結合しているものが好ましい。ハロゲン化剤のハロゲン原子が、窒素原子に結合している場合には、その窒素原子が、2つのカルボニル基に結合していることが好ましい。すなわち、以下の式の部分構造を有するハロゲン化剤が好ましい。
−C(=O)−NX−C(=O)−
また、ハロゲン化剤のハロゲン原子が、炭素原子に結合している場合には、その炭素原子が、共役構造を有していることが好ましい。すなわち、以下の式の部分構造をその分子の骨格として有するハロゲン化剤が好ましい。
−M=CX−M
式中、MおよびMは、それぞれ独立して、共役構造を形成し得る原子およびその原子に結合した水素である。例えば、MおよびMがCHであって、以下の式の部分構造を有するハロゲン化剤が好ましい。
−CH=CX−CH=
上述したNIS、またはPhI(OAc)およびIの混合物などが好ましく使用可能である。
また、ハロゲンがヨウ素である場合のハロゲン化剤(すなわち、ヨウ素化剤)は、その3価のヨウ素を含むものが好ましい。
例えば、アルコール化合物をハロゲン化するハロゲン化剤としては、以下のハロゲン化剤(NIS、またはPhI(OAc)およびIの混合物)が好ましく使用可能である。

また、ハロゲン化剤として、ビス(トリフルオロアセトキシヨード)ベンゼン(PhI(OCOCF)とIの混合物も好ましく使用可能である。さらに、ハロゲン化剤として、Hg(OAc)とIの混合物やPb(OAc)とIの混合物を用いることもできる。
アミン化合物をハロゲン化するハロゲン化剤としても、公知のハロゲン化剤が使用可能である。例えば、PhI(OAc)およびIの混合物などが好ましく使用可能である。
(モノマー)
本発明の重合方法には、モノマーとして、ラジカル重合性モノマーを用いる。ラジカル重合性モノマーとは、有機ラジカルの存在下にラジカル重合を行い得る不飽和結合を有するモノマーをいう。このような不飽和結合は二重結合であってもよく、三重結合であってもよい。すなわち、本発明の重合方法には、従来から、リビングラジカル重合を行うことが公知の任意のモノマーを用いることができる。
すなわち、本発明の方法においては、上記スキーム3cとして記載したメカニズムにより、ラジカルRO・にモノマーが反応する工程が繰り返される。ここで、ラジカルRO・は、例えば、有機過酸化物が開裂して生成するラジカルに類似した構造を有するので、ラジカルRO・は、有機過酸化物が開裂して生成するラジカルと同様の反応性を有することになり、有機過酸化物が開裂して生成するラジカルと同様に、様々なモノマーの重合に使用することができる。
より具体的には、いわゆるビニルモノマーと呼ばれるモノマーを用いることができる。ビニルモノマーとは、一般式「CH=CR」で示されるモノマーの総称である。
この一般式においてRがメチルであり、Rがカルボシキシレートであるモノマーをメタクリレート系モノマーといい、本発明に好適に用いることができる。
メタクリレート系モノマーの具体例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ノニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、ブトキシエチルメタクリレート、メトキシテトラエチレングリコールメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−クロロ2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、2−ヒドロキシ3−フェノキシプロピルメタクリレート、ジエチレングリコールメタクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート、2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート等が挙げられる。また、メタクリル酸も用いることができる。
上記ビニルモノマーの一般式においてRが水素であり、Rがカルボキシレートで示されるモノマーは、一般にアクリル系モノマーと言い、本発明に好適に使用可能である。
アクリレート系モノマーの具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ノニルアクリレート、ベンジルアクリレート、グリシジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、n−オクチルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、メトキシテトラエチレングリコールアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−クロロ2−ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−ヒドロキシ3−フェノキシプロピルアクリレート、ジエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、2−(ジメチルアミノ)エチルアクリレートなどが挙げられる。また、アクリル酸も使用可能である。
上記ビニルモノマーの一般式においてRが水素であり、Rがフェニルで示されるモノマーはスチレンであり、本発明に好適に使用可能である。Rがフェニルまたはフェニル誘導体で示されるモノマーは、スチレン誘導体といい、本発明に好適に使用可能である。具体的には、o−、m−、p−メトキシスチレン、o−、m−、p−t−ブトキシスチレン、o−、m−、p−クロロメチルスチレン、o−、m−、p−クロロスチレン、o−、m−、p−ヒドロキシスチレン、o−、m−、p−スチレンスルホン酸等が挙げられる。また、Rが芳香族である、ビニルナフタレン等が挙げられる。
上記ビニルモノマーの一般式においてRが水素であり、Rがアルキルであるモノマーはアルキレンであり、本発明に好適に使用可能である。
本発明には、2つ以上のビニル基を有するモノマーも使用可能である。具体的には、例えば、ジエン系化合物(例えば、ブタジエン、イソプレンなど)、アリル系を2つ有する化合物(例えば、ジアリルフタレートなど)、メタクリルを2つ有するジメタクリレート(たとえばエチレングリコールジメタクリレート)、アクリルを2つ有するジアクリレート(たとえばエチレングリコールジアクリレート)などである。
本発明には、上述した以外のビニルモノマーも使用可能である。具体的には、例えば、ビニルエステル類(例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酢酸ビニル)、上記以外のスチレン誘導体(例えば、α−メチルスチレン)、ビニルケトン類(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトン)、N−ビニル化合物(例えば、N−ビニルピロリドン、N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール)、(メタ)アクリルアミドおよびその誘導体(例えば、N−イソプロピルアクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド)、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、マレイン酸およびその誘導体(例えば、無水マレイン酸)、ハロゲン化ビニル類(例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、テトラクロロエチレン、ヘキサクロロプロピレン、フッ化ビニル)、オレフィン類(例えば、エチレン、プロピレン、1−ヘキセン、シクロヘキセン)などである。
これらは単独で使用してもよいし、また2種類以上併用してもよい。
上述したモノマーの種類と、アルコール化合物またはアミン化合物の種類との組み合わせは特に限定されず、任意に選択されたモノマーに対して任意に選択されたアルコール化合物またはアミン化合物を用いることが可能である。
(ラジカル反応開始剤)
本発明のリビングラジカル重合方法においては、必要に応じて、必要量のラジカル反応開始剤を用いる。このようなラジカル反応開始剤としては、ラジカル反応に使用する開始剤として公知の開始剤が使用可能である。例えば、アゾ系のラジカル反応開始剤および過酸化物系のラジカル開始剤などが使用可能である。アゾ系のラジカル反応開始剤の具体例としては、例えば、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメトキシブァレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−ジメトキシ−2,4−ジメチルブァレロニトリル)が挙げられる。過酸化物系のラジカル開始剤の具体例としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−butyl peroxybenzoate(BPB)、di(4−tert−butylcyclohexyl) peroxydicarbonate(PERKADOX16)、過酸化二硫酸カリウムが挙げられる。
ラジカル開始剤の使用量は特に限定されないが、好ましくは、反応液1リットルに対して、1ミリモル以上であり、より好ましくは、5ミリモル以上であり、さらに好ましくは、10ミリモル以上である。また、好ましくは、反応液1リットルに対して、500ミリモル以下であり、より好ましくは、100ミリモル以下であり、さらに好ましくは、50ミリモル以下である。
なお、ラジカル開始剤は、ハロゲン化反応を行う前に添加してもよく、ハロゲン化反応を行った後、重合反応を行う直前に添加しても良い。ハロゲン化反応を行った後、重合反応を行う直前に添加することが好ましい。
(触媒)
本発明においては、リビングラジカル重合法のための触媒として公知の触媒を使用することができる。触媒は、リビングラジカル重合の際に、ドーマント種からハロゲンを引き抜いて、ラジカルを生成させる。従って、本発明において、触媒は、ドーマント種として使用される化合物の、生長反応を抑制している基をはずして活性種に変換し生長反応をコントロールする。
具体的には、例えば、特許文献1に記載された、Cu、Ru、Fe、Niなどを中心金属とする錯体、非特許文献1に記載されていた銅錯体触媒、非特許文献2および特許文献3に記載された、Ge、Snなどを中心金属とする化合物、非特許文献3に記載されたリン化合物、特許文献4に記載された窒素またはリンを中心金属とする化合物などの公知の触媒を使用することができる。また、酸素原子を中心元素とする触媒も使用することができる。さらに、炭素原子を中心元素とする触媒も使用することができる。
より具体的には、例えば、以下の化合物を触媒として使用することができる。
(1)ゲルマニウム、スズ、またはアンチモンから選択される少なくとも1つの中心元素と、該中心元素に結合した少なくとも1つのハロゲン原子とを含む化合物、
(2)窒素またはリンから選択される少なくとも1つの中心元素と、該中心元素に結合した少なくとも1つのハロゲン原子とを含む化合物、
(3)酸素からなる少なくとも1つの中心元素と、該中心元素に結合したハロゲン原子と、該中心元素に結合した炭素原子、ケイ素原子、窒素原子またはリン原子とを含む化合物、
(4)炭素からなる少なくとも1つの中心元素と、該中心元素に結合したハロゲン原子とを含み、該中心元素には、さらに、電子吸引性置換基または該中心元素と一緒になって共鳴構造を形成する置換基が2つまたは3つ結合しており、ここで、該置換基が2つ存在する場合、該2つの置換基は互いに連結されて該中心元素と該2つの置換基が環構造を形成してもよく、該置換基が3つ存在する場合、該3つの置換基のうちの2つが互いに連結されて該連結された2つの置換基と中心元素とが環構造を形成してもよく、該3つの置換基が互いに連結されて環構造を形成してもよく、該中心元素に結合した置換基により、該中心元素からハロゲン原子が脱離して生成する炭素ラジカルが安定化される化合物、
(5)炭素からなる少なくとも1つの中心元素と、該中心元素に結合したハロゲン原子とを含み、該中心元素には、さらに、該中心元素からハロゲン原子が脱離して生成する炭素ラジカルを安定化することの可能な電子供与性置換基が2つまたは3つ結合しており、ここで、該置換基が2つ存在する場合、該2つの置換基は互いに連結されて該中心元素と該2つの置換基が環構造を形成してもよく、該置換基が3つ存在する場合、該3つの置換基のうちの2つが互いに連結されて該連結された2つの置換基と中心元素とが環構造を形成してもよく、該3つの置換基が互いに連結されて環構造を形成してもよい、化合物。
なお、本明細書において「中心元素」とは、触媒となる化合物を構成する原子のうち、ハロゲン原子と結合して主に触媒作用を担う原子を意味する。
また、触媒は、いわゆる前駆体型の触媒であってもよい。従って、本明細書中では、特にことわらない限り、いわゆる前駆体型の触媒を含めて「触媒」と記載する。
前駆体型の触媒としては、例えば、ラジカル開始剤から生じたラジカルと反応して活性化ラジカルを生じさせることが可能な化合物が挙げられる。より具体的には、ラジカル開始剤から生じたラジカルが、該前駆体型触媒の化合物中の水酸基等から水素原子を引き抜いて、活性化ラジカルを生じさせて、生じた活性化ラジカルが触媒として作用するというメカニズムを用いることができる。
ここで、触媒の中心元素が、炭素、窒素、酸素またはリンである場合、これらの中心元素は、共役構造を有することが好ましい。すなわち、中心元素には、さらに、電子吸引性置換基または該中心元素と一緒になって共鳴構造を形成する置換基が結合していることが好ましい。
触媒の使用量は、いわゆる「溶媒量」(すなわち溶媒としての効果を達成するのに必要な量)よりも少ない量とすることができる。本発明の方法において、触媒は、リビングラジカル重合を触媒するのに充分な量で使用されればよく、それ以上に添加する必要はない。
具体的には、例えば、好ましい実施形態では、反応溶液1リットルに対して、触媒使用量を10ミリモル(mM)以下とすることが可能である。さらに好ましい実施形態では、反応溶液1リットルに対して、触媒使用量を5ミリモル以下とすることが可能であり、2ミリモル以下とすることも可能である。さらには、1ミリモル以下とすることも可能であり、0.5ミリモル以下とすることも可能である。重量基準では、触媒使用量を反応溶液のうちの1重量%以下とすることが可能である。好ましい実施形態では、0.75重量%以下とすることが可能であり、また0.70重量%以下とすることも可能であり、さらに好ましい実施形態では、0.5重量%以下とすることが可能であり、0.2重量%以下とすることも可能であり、さらには0.1重量%以下とすることも可能であり、0.05重量%以下とすることも可能である。すなわち、溶媒として効果を奏するよりも「格段に」少ない量とすることが可能である。
1つの実施形態において、本発明では、ハロゲン化剤として、触媒の作用を有する化合物を使用することができる。例えば、ハロゲン化剤として、窒素にハロゲンが結合した式4の構造を有する化合物を用いる場合、その窒素が触媒の中心元素として作用することが可能となり、重合反応においてリビングラジカル重合反応触媒となる。
式4 R−C(=O)−NX−C(=O)−R
このようなハロゲン化剤を用いる場合には、そのハロゲン化剤以外の触媒を含まない原料組成物で重合を行うことができる。
(溶媒)
モノマーなどの反応混合物が反応温度において液体であれば、必ずしも溶媒を用いる必要はない。必要に応じて、溶媒を用いてもよい。ハロゲン化工程または重合工程のいずれか一方において溶媒を用いてもよく、ハロゲン化工程および重合工程の両方において溶媒を用いてもよい。必要でなければ、ハロゲン化工程および重合工程の両方において溶媒を用いないでもよい。ハロゲン化工程の後に重合工程を行い、そしてハロゲン化工程および重合工程の両方において溶媒を用いる場合、その溶媒は同一であってもよく、異なってもよいが、同一の溶媒を用いることが好ましい。すなわち、ハロゲン化工程の際に用いた溶媒をそのまま重合工程にも用いることが好ましい。
溶媒としては、従来、リビングラジカル重合に用いられていた溶媒をそのまま使用することが可能である。溶媒を用いる場合には、その使用量はハロゲン化反応および重合反応が適切に行われる限り特に限定されないが、モノマー100重量部に対して1重量部以上用いることが好ましく、10重量部以上用いることがより好ましく、50重量部以上用いることがさらに好ましい。溶媒の使用量が少なすぎる場合には、反応溶液の粘度が高くなりすぎる場合がある。また、モノマー100重量部に対して2000重量部以下とすることが好ましく、1000重量部以下とすることがより好ましく、500重量部以下とすることがさらに好ましい。溶媒の使用量が多すぎる場合には、反応溶液のモノマー濃度が薄くなりすぎる場合がある。
モノマーと混ざり合わない溶媒を用いることにより、乳化重合や、分散重合、懸濁重合を行うこともできる。例えば、スチレンやメタクリレートをモノマーとした場合、水を溶媒とすることで、乳化重合や、分散重合、懸濁重合を行うことができる。
(その他の添加剤等)
上述したリビングラジカル重合のための各種材料には、必要に応じて、公知の添加剤等を必要量添加してもよい。そのような添加剤としては、例えば、重合抑制剤などが挙げられる。
(従来のドーマント種)
本発明の方法においては、上述したドーマント種を用いるので、基本的に、従来の低分子ドーマント種を使用する必要はない。しかし、必要に応じて、従来の低分子ドーマント種、たとえば、炭素−ハロゲン結合を有する有機ハロゲン化物などを併用してもよい。ただし、所望のアルコール化合物もしくはアミン化合物を末端とするポリマーのみを高い純度で得るためには、原料組成物中に従来の低分子ドーマント種を実質的に含まないことが好ましい。
(原料組成物)
上述した各種原料を混合することにより、本発明のリビングラジカル重合の材料として適切な原料組成物が得られる。得られた組成物は、従来公知のリビングラジカル重合方法に用いることができる。
1つの実施形態では、原料組成物は、上述した各種原料以外の原料を含まない。例えば、環境問題などの観点から、原料組成物は、遷移金属を含む原料を実質的に含まないことが好ましい。1つの好ましい実施形態では、原料組成物は、開始剤、触媒、触媒前駆体化合物、ラジカル反応性不飽和結合を有するモノマー、溶媒、およびドーマント種に使用される材料(アルコール化合物、アミン化合物およびハロゲン化剤)以外の原料を実質的に含まない。また、原料組成物は、リビングラジカル重合に無関係な材料(例えば、エピスルフィド化合物など)を実質的に含まないことが好ましい。
なお、本願明細書中で「実質的に含まない」とは、その含有量が、本発明の方法に影響を与えない量であることをいう。例えば、実質的に含まない場合、その含有量は、原料組成物中の1%以下であることが好ましく、0.1%以下がさらに好ましく、0.01%以下がさらに好ましい。0.001%以下、0.0001%以下もしくは0.00001%以下とすることが特に好ましく、0%であることが最も好ましい。
1つの実施形態では、原料組成物は、アルコール化合物またはアミン化合物と、ハロゲン化剤と、ラジカル開始剤と、触媒または触媒前駆体と、ラジカル反応性不飽和結合を有するモノマーとを含み、さらに溶媒を含んでもよい。
また、NISなどの、触媒としても作用し得る化合物をハロゲン化剤として用いる場合には、原料組成物は、ハロゲン化剤以外に触媒または触媒前駆体を実質的に含まない配合とすることができる。
(ハロゲン化工程)
本発明の方法においては、アルコール化合物またはアミン化合物をハロゲン化する工程を行う。そしてこの工程により、リビングラジカル重合方法において低分子ドーマント種として使用可能なハロゲン化物を合成する。
ハロゲン化工程では、例えば、アルコール化合物を用いる場合、例えば、以下の工程が行われる。
すなわち、アルコールをハロゲン化することが可能なハロゲン化剤により、式1のアルコール化合物をハロゲン化して、該アルコールの水素がハロゲンに置換された式2の化合物を生成する。
式1 ROH
式2 ROX
ここで、RはOHと結合してアルコール化合物を形成し得る任意の基であり、Xはハロゲンであり、該式1のアルコール化合物の水酸基が結合している原子が非共役構造を有している。ここで、式1のアルコール化合物は、ヒドロキシ酸であってもよい。
また、アミン化合物を用いる場合、例えば、以下の工程が行われる。
アミンをハロゲン化することが可能なハロゲン化剤により、式5のアミン化合物をハロゲン化して、該アミンの水素がハロゲンに置換された式6の化合物を生成する。
式5 RNHR
式6 RNXR
ここで、Xはハロゲンであり、該式5のアミン化合物のアミノ基が結合している原子が非共役構造を有している。
ハロゲン化工程の反応条件としては、そのハロゲン化反応が進む限り、任意の反応条件が使用可能である。
ハロゲン化工程の際には、必要に応じて溶媒を使用することができる。また、重合に用いるモノマーが液体である場合には、重合用のモノマーをハロゲン化工程の溶媒として使用することも可能である。
(反応温度)
本発明の方法のハロゲン化工程における反応温度は特に限定されない。好ましくは、10℃以上であり、より好ましくは、20℃以上であり、さらに好ましくは、30℃以上であり、いっそう好ましくは、40℃以上であり、特に好ましくは、50℃以上である。また、好ましくは、130℃以下であり、より好ましくは、120℃以下であり、さらに好ましくは、110℃以下であり、いっそう好ましくは、105℃以下であり、特に好ましくは、100℃以下である。
温度が高すぎる場合には、加熱のための設備等にコストがかかるという欠点がある。温度が室温以下の場合には、冷却のための設備等にコストがかかるという欠点がある。また、室温以下で重合するように反応混合物を調製すると、その反応混合物が室温では不安定で反応してしまうために、反応混合物の保管が困難になるという欠点がある。したがって、上記の、室温より少し高く、かつ過度に高すぎない温度範囲(例えば、50℃から100℃)は、実用的な意味において非常に好適である。
(反応時間)
本発明の方法のハロゲン化工程における反応時間は特に限定されない。好ましくは、15分間以上であり、より好ましくは、30分間以上であり、さらに好ましくは、1時間以上である。また、好ましくは、3日以下であり、より好ましくは、2日以下であり、さらに好ましくは、1日以下である。
反応時間が短すぎる場合には、充分にハロゲン化誘導体を得ることが難しい。反応時間が長すぎる場合には、プロセス全体としての効率が悪い。
(雰囲気)
本発明の方法におけるハロゲン化反応は、反応容器中に空気が存在する条件下で行ってもよい。また、必要に応じて窒素やアルゴンなどの不活性ガスで空気を置換しても良い。
(重合工程)
本発明の方法においては、上記ハロゲン化工程において得られたハロゲン化誘導体化合物を用いて重合工程を行う。
この重合工程においては、上記ハロゲン化工程において得られたハロゲン化誘導体化合物と、モノマーと、重合反応に必要な触媒を用いて重合を行う。上記ハロゲン化工程において得られたハロゲン化誘導体化合物を用いること以外は、基本的に通常の重合反応と同様に、重合反応を行うことができる。例えば、上記ハロゲン化工程において得られたハロゲン化誘導体化合物に対して、モノマーおよび触媒などの重合反応に必要な材料を添加することにより、重合を行うことができる。また、重合用モノマーをハロゲン化工程の溶媒として用いて、モノマーに溶解された状態のハロゲン化誘導体化合物を得て、それに触媒などの重合反応に必要なモノマー以外の材料を添加して重合を開始することもできる。
この重合工程においては、ハロゲン化誘導体化合物のハロゲンを利用できる任意のラジカル重合反応を行うことができる。好ましくは、ハロゲン化誘導体化合物をドーマント種として用いて、そのドーマント種と成長ラジカルとの間のハロゲンの交換を反応の制御に利用する重合反応である。
例えば、上記ハロゲン化工程においてアルコール化合物を用いる場合、ハロゲン化誘導体化合物、すなわち上記式2の化合物をリビングラジカル重合のドーマント種として用いて、ラジカル反応性不飽和結合を有するモノマーのリビングラジカル重合を行うことができる。ここで、該アルコール化合物からハロゲンXが脱離して生成する式3のラジカルを該モノマーの不飽和結合と反応させる。
式3 RO・
また、例えば、上記ハロゲン化工程においてアミン化合物を用いる場合、ハロゲン化誘導体化合物、すなわち上記式6の化合物をリビングラジカル重合のドーマント種として用いて、ラジカル反応性不飽和結合を有するモノマーのリビングラジカル重合を行うことができる。ここで、該アミン化合物からハロゲンXが脱離して生成する式7のラジカルを該モノマーの不飽和結合と反応させる。
式7 R(R)N・
重合工程は、ハロゲン化工程の後に行うことが可能であり、ハロゲン化工程に続けて行うことができる。また、ハロゲン化工程と同時に行うことも可能である。ハロゲン化工程に続けて行うことが好ましい。
重合工程は、ハロゲン化工程と同一反応容器内で行うことが可能である。別の反応容器に移して行っても良いが、プロセスの効率として、同一容器で行うことが好ましい。
重合工程のために使用されるラジカル開始剤(例えば、AIBN)は、ハロゲン化工程の前もしくは途中に添加されてもよく、ハロゲン化工程の終了後に添加されても良い。
この重合工程において好ましい重合反応の例としては、例えば、可逆移動触媒重合(RTCP)、原子移動ラジカル重合(ATRP)、有機化合物を触媒とした酸化還元型重合、および、ヨウ素移動重合である。
可逆連鎖移動触媒重合(Reversible Chain Transfer Catalyzed Polymerization(RTCP))としては、ゲルマニウム化合物、スズ化合物、アンチモン化合物、窒素化合物、リン化合物、炭素化合物、酸素化合物などを触媒として用いた反応が、本発明に利用可能である。ここで、ゲルマニウム化合物、スズ化合物、アンチモン化合物、窒素化合物、リン化合物、炭素化合物または酸素化合物を触媒として用いる場合、触媒として使用される化合物は、ゲルマニウム、スズ、アンチモン、窒素、リン、炭素または酸素から選択される中心元素と、中心元素に結合した少なくとも1つのハロゲン原子とを含む。可逆連鎖移動触媒重合においては、ハロゲン原子と結合した中心元素を有する触媒化合物が、上記スキーム1aのドーマント種(Polymer−X)から成長ラジカル(Polymer・)への可逆的活性化反応を触媒する。
可逆連鎖移動触媒重合を用いる場合には、例えば、上記ハロゲン化工程により得られたハロゲン化物に、可逆連鎖移動触媒重合用の触媒を添加することなどにより、重合を行うことができる。
1つの実施形態においては、NIS(N−ヨウ化コハク酸イミド)を可逆連鎖移動触媒重合の触媒として用いることができる。NISは、上述したハロゲン化工程の触媒として使用することができるので、すなわち、ハロゲン化工程および重合工程の両方の触媒として作用することができる。1つの好ましい実施形態においては、NISを用いてハロゲン化工程を行い、その後引き続きNISの存在下に重合のための材料(例えば、ラジカル開始剤)を添加して重合工程を行うことが可能である。
原子移動ラジカル重合(ATRP)としては、銅錯体化合物などの遷移金属錯体化合物などを触媒として用いた反応が公知である。いずれの公知の原子移動ラジカル重合も、本発明に利用することができる。
また、有機化合物を触媒とした酸化還元型重合のための触媒として、酸化還元能力を有する有機化合物であって、該有機化合物の還元状態と酸化状態との間の可逆的酸化還元反応により、リビングラジカル重合の触媒反応を行う触媒を使用することもできる。
このタイプの触媒は、好ましくは、可逆的酸化還元反応の際に酸化または還元される中心元素が、窒素、炭素、リン、硫黄、または酸素から選択され、酸化状態において中心元素が正の電荷、または正の部分電荷を有する。具体的には、この触媒は、例えば、以下の群の有機化合物から選択される:
トリエチルアミン;
トリブチルアミン;
テトラキスジメチルアミノアミン;
1,4,8,11−テトラメチル−1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン
トリブチルホスフィン;
トリフェニルホスフィン;
ビス(エチレンジチオ)テトラチアフルバレン(BTTF)
エチレンジアミン;
ジメチルエチレンジアミン;
テトラメチルエチレンジアミン;
テトラメチルジアミノメタン;
トリス(2−アミノエチル)アミン;
トリス(2−(メチルアミノ)エチル)アミン;
1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン;および
ヘマトポルフィリン。
また、ヨウ素移動重合の誘起剤として、成長ラジカルを与える有機化合物であって、成長ラジカルによるヨウ素の可逆的な交換反応(可逆的活性化反応)により、リビングラジカル重合を行う有機化合物を使用することもできる。そのような化合物には、アゾ化合物や過酸化物などがある。
原子移動ラジカル重合(ATRP)、有機化合物を触媒とした酸化還元型重合、および、ヨウ素移動重合を用いる場合には、例えば、上記ハロゲン化工程により得られたハロゲン化物に、それぞれ、原子移動ラジカル重合用の触媒、有機化合物を触媒とした酸化還元型重合用の触媒、およびヨウ素移動重合用に誘起剤を添加することなどにより、重合を行うことができる。
(反応温度)
本発明の方法の重合工程における反応温度は特に限定されない。好ましくは、10℃以上であり、より好ましくは、20℃以上であり、さらに好ましくは、30℃以上であり、いっそう好ましくは、40℃以上であり、特に好ましくは、50℃以上である。また、好ましくは、130℃以下であり、より好ましくは、120℃以下であり、さらに好ましくは、110℃以下であり、いっそう好ましくは、105℃以下であり、特に好ましくは、100℃以下である。
温度が高すぎる場合には、加熱のための設備等にコストがかかるという欠点がある。温度が室温以下の場合には、冷却のための設備等にコストがかかるという欠点がある。また、室温以下で重合するように反応混合物を調製すると、その反応混合物が室温では不安定で反応してしまうために、反応混合物の保管が困難になるという欠点がある。したがって、上記の、室温より少し高く、かつ過度に高すぎない温度範囲(例えば、50℃から100℃)は、実用的な意味において非常に好適である。
なお、重合工程を、ハロゲン化工程の後に行う場合、重合工程の反応温度は、ハロゲン化工程の反応温度と異なる温度としてもよく、同一の温度としても良い。
(反応時間)
本発明の方法の重合工程における反応時間は特に限定されない。好ましくは、15分間以上であり、より好ましくは、30分間以上であり、さらに好ましくは、1時間以上である。また、好ましくは、3日以下であり、より好ましくは、2日以下であり、さらに好ましくは、1日以下である。
反応時間が短すぎる場合には、充分な分子量(あるいは重合率(モノマー転化率))を得ることが難しい。反応時間が長すぎる場合には、プロセス全体としての効率が悪い。適切な反応時間とすることにより、優れた性能(適度な重合速度と副反応の軽減)が達成され得る。
(雰囲気)
本発明の方法における重合反応は、反応容器中に空気が存在する条件下で行ってもよい。また、必要に応じて窒素やアルゴンなどの不活性ガスで空気を置換しても良い。なお、重合工程を、ハロゲン化工程の後に行う場合、重合工程の雰囲気は、ハロゲン化工程の雰囲気と異なってもよく、同一であっても良い。
(ポリマー)
上述した方法により、所望のポリマーが得られる。得られたポリマーは、その末端に、アルコール化合物またはアミン化合物の残基が存在し、その残基に直接、モノマー残基が結合した構造を有する。
すなわち、アルコール化合物ROH、モノマーMおよびハロゲンXを用いた場合、得られるポリマーの構造は以下のとおりになる。
RO−M−X
式中、ROはアルコール化合物の残基であり、mはモノマー単位の数である。従って、mは、生長末端に1つのモノマーが結合する工程を繰り返す数によって決まる。モノマーが1つ結合した時点で重合反応を終了させれば、mは1となる。10万個のモノマーが結合した時点で重合反応を終了させれば、mは10万となる。そのため、mの下限は1である。mの上限については、モノマーを結合させる工程を繰り返すことが可能である限り、限定されず、例えば、mが1万、10万または100万であるポリマーを合成することも可能である。
アルコール化合物が複数の水酸基を有する化合物である場合、その水酸基の数をnとすると、得られるポリマーの構造は以下のとおりになる。
R(O−M−X)
nは自然数であり、上限は特にない。すなわち、多数の水酸基を有するアルコール化合物を用いれば、nの値を大きくすることが可能である。例えば、シリコン基板などは、巨大な分子の表面に極めて多数の水酸基が存在しているので、極めて大きい値のnを有するポリマーを合成することが可能である。
アミン化合物RNH、モノマーMおよびハロゲンXを用いた場合、得られるポリマーの構造は以下のとおりになる。
N−M−X
式中、RNはアミン化合物の残基であり、mはモノマー単位の数である。従って、mは、生長末端に1つのモノマーが結合する工程を繰り返す数によって決まる。mの下限は1である。mの上限については、モノマーを結合させる工程を繰り返すことが可能である限り、限定されず、例えば、mが1万、10万または100万であるポリマーを合成することも可能である。
アミン化合物が複数の水酸基を有する化合物である場合、その水酸基の数をnとすると、得られるポリマーの構造は以下のとおりになる。
(N−M−X)
nは自然数であり、上限は特にない。すなわち、多数のアミノ基を有するポリアミン化合物を用いれば、nの値を大きくすることが可能である。
(生成ポリマーの末端に結合するハロゲンの除去)
本発明の方法で得られる生成ポリマーは、末端にハロゲン(例えば、ヨウ素)を有する。このポリマーを製品に使用する際には、必要があれば、末端のハロゲンを除去して、使用することもできる。また、末端のハロゲンを積極的に利用し、これを別の官能基に変換して、新たな機能を引き出すこともできる。末端のハロゲンの反応性は、一般に高く、非常に様々な反応により、その除去や変換ができる。例えば、ハロゲンがヨウ素である場合のポリマー末端の処理方法の例を以下のスキームに示す。これらのスキームに示す反応などにより、ポリマー末端を利用することができる。また、ハロゲンがヨウ素以外である場合についても、同様にポリマー末端を官能基に変換することができる。
(スキームA)
(ポリマーの用途)
上述した本発明のリビングラジカル重合方法によれば、分子量分布の狭いポリマーが得られる。例えば、反応材料の配合や反応条件を適切に選択することにより、重合平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比Mw/Mnが1.5以下のポリマーを得ることが可能であり、さらに反応材料配合および反応条件を適切に選択することにより、Mw/Mnが1.4以下、1.3以下、1.2以下、さらには1.1以下のポリマーを得ることが可能となる。
本発明のリビングラジカル重合方法により得られるポリマーは、各種用途に使用可能である。例えば、レジスト、接着剤、潤滑剤、塗料、インク、分散剤、包装材、薬剤、パーソナルケア製品(整髪料・化粧品など)エラストマー(自動車材料、工業用品、スポーツ用品、電線被服材、建築資材など)、コーティング(粉体塗装など)などの生産に使用可能である。また、新しい電子・光学・力学・結晶・分離・潤滑・医療材料の創成に利用しうる。
本発明のリビングラジカル重合方法により得られるポリマーは、また、ポリマー中に残存する触媒量が少ないという点においても各種用途に有利に使用可能である。すなわち、従来の遷移金属系の触媒などに比べて触媒量を減らせるため、得られる樹脂の純度が高いものになり、高純度の樹脂が必要とされる用途にも好適に使用できる。触媒残渣は、用途に応じて、生成したポリマーから除去してもよいし、除去しなくともよい。このような各種用途に応じて、ポリマーは成形されたり、溶媒または分散媒に溶解または分散させたりすることがあるが、成形された後のポリマー、あるいは溶解または分散等された後のポリマーも本発明の利点を維持しているものであり、依然として本発明の重合方法で得られたポリマーの範囲に入るものである。
本発明の重合法を用いて合成したポリマーは分子量分布が狭く、ポリマー中の残存触媒量が少なく、かつコストが安いという利点を生かして、様々な用途に利用可能である。
例えば、ベンジルメタクリレートからなる分子量分布の狭い単独重合体、ランダム共重合体、ブロック共重合体は、高性能のレジストとして使用可能である。
また例えば、メタクリレート(例えば、ジメチルアミノメタクリレートや、2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、メタクリル酸、アクリレート、アクリル酸などの重合体は、接着剤、塗料、インク、顔料分散剤などの用途に使用可能である。
また、本発明の方法で多分岐ポリマーを合成すれば、潤滑剤として有用である。
また、本発明の方法で得られたポリマー(例えば、ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレートなど)は、薬剤除放材・医療材料にも有用である。
また、本発明の方法で得られたポリマー(例えば、ジメチルアミノメタクリレートや、メタクリル酸、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレートなど)は、パーソナルケア製品(例えば、整髪料や化粧品)にも有用である。
また、本発明の方法で得られたポリマー(例えば、(アクリレート、メタクリレート、スチレン、ジエンなど)は、エラストマーや、コーティングなどの用途にも有用である。
また、本発明の方法で得られるポリマーは、従来にない新しい電子材料・光学材料・力学材料・結晶材料・分離材料・潤滑材料・医療材料などの創製と製造にも有用である。
さらに本発明の方法は、例えば、表面グラフト重合に応用することも可能であり、高密度のポリマーブラシを製造して各種用途に用いることもできる。
また、触媒として、導電性を有さない化合物を用いた場合、導電性不純物がポリマー中に残存しないことが必要とされる用途(例えばレジストや有機EL等)においても、好適に使用可能なポリマーが得られる。
以下に、本発明の調製例および実施例を説明するが、本発明は、これらの調製例および実施例により限定されるものではない。
(使用した化合物)
使用した主なアルコール化合物の構造は以下のとおりである。
(調製例)
(entry 1)
メチルメタクリレート(MMA) (8000mM(bulk))、ベンジルアルコール(80mM)、NIS(80mM)を用いた。これらの材料を3gのメチルメタクリレート(MMA)に溶解して上記濃度の反応溶液とした。モノマー濃度は約8Mであった。これらの材料の溶解性は良好であり、均一な溶液が形成された。重合反応を進行させないために、ラジカル開始剤は添加しなかった。アルゴンにて残存酸素を置換して、この反応溶液を80℃に3時間加熱した。中間体、ハイポヨーダイト(RO−I)は、非常に不安定であって単離することができなかった。
反応後、反応混合物を分取GPCで分画した。最も高い分子量の種がRO−M−I(化合物1)(m=1)であった。化学量論上の量(アルコールに対して1当量のNIS)で用いた条件において、収率は40%であった。これをH NMRで分析した(図1)。また、元素分析を行った。m>1の化合物RO−M−Iは実質的に測定されなかった。I・の濃度が十分に高かったため、以下のスキーム4のpath 1もしくはpath 2の反応が起こったと考えられる。
(スキーム4)
結果を以下の表(表1)に示す。この結果から、ベンジルアルコール(1級アルコール)から誘導されたハイポヨーダイトがMMAの二重結合と反応できることが確認された。図2に、この反応における、原料化合物と生成化合物の濃度の時間変化を示す。
(entry 2〜3)
以下の表に示すとおり反応材料の量および反応条件を変更した以外は、entry 1と同様に実験を行った。
結果を以下の表に示す。この結果から、ベンジルアルコール(1級アルコール)から誘導されたハイポヨーダイトがMMAの二重結合と反応できることが確認された。
(entry 4)
調製例1のベンジルアルコールの代わりに、1−フェニルエチルアルコールを用いて実験を行った。その結果、対応する化合物RO−MMA−Iが得られた。化学量論上の量
(アルコールに対して1当量のNIS)で用いた条件において、収率は29%であった。
結果を以下の表に示す。この結果から、1−フェニルエチルアルコール(2級アルコール)から誘導されたハイポヨーダイトがMMAの二重結合と反応できることが確認された。
(entry 5)
調製例1のベンジルアルコールの代わりに、クミルアルコールを用いて実験を行った。その結果、対応する化合物RO−MMA−Iが得られた。化学量論上の量(アルコール
に対して1当量のNIS)で用いた条件において、収率は10%であった。
結果を以下の表に示す。この結果から、クミルアルコール(3級アルコール)から誘導されたハイポヨーダイトがMMAの二重結合と反応できることが確認された。なお、表中、Tは加熱温度であり、tは加熱時間である。

(実施例1)
以下のentry 1〜entry 14の実験を行った。
(entry 1)
MMA (8000mM(bulk))、ベンジルアルコール(80mM)、NIS(80mM)を用いた。これらの材料を3gのメチルメタクリレート(MMA)に溶解して上記濃度の反応溶液とした。モノマー濃度は約8Mであった。これらの材料の溶解性は良好であり、均一な溶液が形成された。アルゴンにて残存酸素を置換して、この反応溶液を80℃で1時間加熱した後、AIBN(40mM)を添加して80℃で3時間重合反応を行った。MMA、ベンジルアルコールおよびNISの混合から重合完了までの一連の作業は、同一の反応容器で、連続して行った。
なお、濃度の「mM」は、モノマー1リットルを基準とするミリモル数を示す。例えば、80mMは、モノマー1リットルに80ミリモルが溶解していることを意味する。濃度の「M」は、モノマー1リットルを基準とするモル数を示す。例えば、8Mは、モノマー1リットルに8モルが溶解していることを意味する。なお、MMAの場合、モノマー1リットルが(バルクが)、室温で8モルである。
以下の表に結果を示す。表中、t(h)は、AIBN添加前の加熱時間である。t(h)は、AIBN添加後の重合時間である。Mは、得られたポリマーの数平均分子量である。PDIはM/Mの比を示す。Mは重量平均分子量である。convは、モ
ノマーの転化率(重合率)である。
この実験の結果、残存していたNISがリビングラジカル重合の触媒として作用することが確認された。すなわち、高い分子量および低い分散度を有するポリマーが得られた。
(entry 2〜6)
以下の表に示す配合組成を用いた以外は、entry 1と同様に実験を行った。すなわち、MMA、ベンジルアルコールおよびNISのみを混合して80℃で1時間加熱した後、AIBNのみを添加して重合反応を行った。以下の表に結果を示す。
上記実験の結果、残存していたNISがリビングラジカル重合の触媒として作用することが確認された。すなわち、高い分子量および低い分散度を有するポリマーが得られた。
(entry 7〜8)
以下の表に示す配合組成および加熱時間を用いた以外は、entry 1と同様に実験を行った。すなわち、MMA、ベンジルアルコールおよびNISのみを混合して80℃で3時間加熱した後、AIBNのみを添加して重合反応を行った。以下の表に結果を示す。
(entry 9)
以下の表に示す配合組成および加熱時間を用いて、entry 1と同様に実験を行った。ただし、MMA、ベンジルアルコール、NISおよびAIBNのすべてを一度に混合し、80℃で加熱を行った。以下の表に結果を示す。
(entry 10)
以下の表に示す配合組成および加熱時間を用いて、entry 1と同様に実験を行った。ただし、MMA、ベンジルアルコール、NISおよびAIBNのすべてを一度に混合し、50℃で6時間加熱を行い、その後さらに80℃で2.5時間加熱を行った(合計加熱時間8.5時間)。以下の表に結果を示す。
(entry 11)
以下の表に示す配合組成および加熱時間を用いて、entry 1と同様に実験を行った。ただし、MMA/ベンジルアルコール/PhI(AcO)の3つを室温で1時間撹拌、その後、IとAIBNとNISを添加して重合(80℃)を行った。以下の表に結果を示す。なお、時間tはIとAIBNおよびNISを添加した後の時間である。
(entry 12〜13)
以下の表に示す配合組成および加熱時間を用いて、entry 1と同様に実験を行った。ただし、MMA、2−フェニルプロピオン酸/NISの3つを80℃で3時間加熱した後、AIBNのみを添加して重合(80℃)を行った。以下の表に結果を示す。時間tはAIBNの添加した後の時間である。
(entry 14)
以下の表に示す配合組成および加熱時間を用いて、entry 1と同様に実験を行った。ただし、MMA/p−メトキシクマル酸/NISの3つを80℃で3時間加熱後、AIBNのみを添加し重合(80℃)を行った。以下の表に結果を示す。時間tはAIBNの添加した後の時間である。
(実施例2)
(シリカウエハ表面からのグラフト重合)
本発明の方法は、アルコール化合物として、シリコンの表面に存在するSi−O−Hにも利用することができる。そのため、シリコン基板表面から、直接、重合を行うことが可能である。
(entry 1および2)
市販のシリコンウエハを約1cm×約1cm、厚み約0.5mmに切断してシリコン基板のサンプルとした。このシリコン基板を室温で約24時間以上空気中に放置して、表面のケイ素原子を空気中の水と十分に接触させた。このシリコン基板のサンプル1つと、MMA(8000mM)およびNIS(2mMまたは10mM)を実験に用いた。NISを3gのメチルメタクリレート(MMA)に溶解して上記濃度の反応溶液とした。モノマー濃度は約8Mであった。これらの材料の溶解性は良好であり、均一な溶液が形成された。得られた溶液に、シリコン基板のサンプルを浸漬し、アルゴンにて残存酸素を置換して80℃で1h加熱した。その後、AIBNのみを添加して重合(80℃)した(表6(時間tはAIBNの添加前の加熱時間、時間tはAIBNの添加後の加熱時間))。反応終了後、溶液からシリコン基板を取り出し、トルエンとメタノールでよく洗浄し、表面にグラフトされたポリメチルメタクリレート(PMMA)の膜厚を測定した。表6(entries 1と2)に示すように、5nm程度の膜厚のPMMAが生成し、シリコン基板からの重合が認められた。
(entry 3)
次に、entry 2の系において、AIBNの添加時に、フリー開始剤(基板に固定されていない開始剤(ヨウ化アルキル))としてCP−I(2−cyanopropyl
iodide)もあわせて添加し、重合を試みた(entry 3)。得られたポリマーのうち、フリーポリマー(基板に結合していないポリマー)の数平均分子量を分析した結果を以下の表に示す。フリーポリマーとグラフトポリマーのMは理論的に同じであると考えられるので、基板の面積、グラフト膜厚およびMnから、グラフト密度は0.06
chains/nmと計算された。
なお、表中、Mは、数平均分子量であり、
n,theoは、
で算出される理論値である。[MMA]および[CP−I]はそれぞれ、MMAとCP−Iの初期濃度(仕込み濃度)を表す。また、convは、モノマーの転化率(重合率)である。
(実施例3)(セルロースナノファイバー表面からのグラフト重合)
ホヤを硫酸処理し、セルロースナノファイバー(15nm×20nm×数μm)を得た。その後、溶媒をN,N−ジメチルアセトアミドに置換した。このナノファイバーの分散液1g(ナノファイバー含量:約0.3wt%)に、ポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート(PEGMA(分子量=475))またはMMAを0.6g、N−ヨウ化コハク酸イミド(NIS)を0.036g(100mM)を添加し、室温で4時間攪拌した。その後、AIBN(80 mM)のみ、あるいはAIBN(80 mM)とCP−I(フリー開始剤)(80 mM)を添加し、80℃で4h重合した。
AIBNを添加する前のナノファイバーをトルエンとエタノールで洗浄し、赤外吸収分光法(IR)で分析しところ、モノマーとしてPEGMAとMMAのいずれを用いた場合も、モノマーのカルボニル基に由来する赤外吸収(1720cm−1付近)が検出され、重合開始基の導入が確認された。赤外吸収の強度とナノファイバーの表面積から、重合開始基の表面密度は、PEGMAとMMAを用いた場合で、それぞれ、0.14および0.11 sites/nmであった。重合後のナノファイバーでは、さらにカルボニル基に由来する吸収は大きくなり、重合開始基からの重合が認められた。
(実施例4)
MMA(8000mM(bulk))、ベンジルアルコール(80mM)、NIS(80mM)を用いた。これらの材料を3g調製し、アルゴンにて残存酸素を置換して、この反応溶液を80℃で3時間加熱した。その後、TBA(40mM)、または、TDME(40mMまたは120mM)とヨウ素(10mMまたは40mM)を添加して80℃で以下の表に示す時間の重合を行った。なお、ラジカル開始剤は添加しなかった。実施例1−3はRTCP、実施例4は有機化合物を触媒とした酸化還元型重合である。すべての反応作業は、同一の反応容器で、連続して行った。以下の表に結果を示す。なお、t(min)は、TDMEおおびヨウ素添加後の重合時間である。


MMA:メチルメタクリレート (8M(バルク))
BzOH:ベンジルアルコール
TDME(1,4,8,11−テトラメチル−1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン)
TBA(トリブチルアミン)
NIS:N−ヨウ化コハク酸イミド
(実施例5)
ベンジルメタクリレート(BzMA)(8000mM(bulk))、ベンジルアルコール(80mM)、NIS(80mM)を用いた。これらの材料を3g調製し、アルゴンにて残存酸素を置換して、この反応溶液を80℃で3時間加熱した。その後、AIBN(40mM)を添加して80℃で以下の表に示す時間重合した。すべての反応作業は、同一の反応容器で、連続して行った。以下の表に結果を示す。なお、t(min)は、AIBN添加後の重合時間である。


BzMA:ベンジルメタクリレート (8M(バルク))
BzOH:ベンジルアルコール
AIBN:アゾビスイソブチロニトリル
NIS:N−ヨウ化コハク酸イミド
(実施例6)
スチレン(St)(8000mM(bulk))、ベンジルアルコール(80mM)、NIS(80mM)を用いた。これらの材料を3g調製し、アルゴンにて残存酸素を置換して、この反応溶液を80℃で3時間加熱した。その後、AIBN(80mM)を添加して80℃で以下の表に示す時間重合した。すべての反応作業は、同一の反応容器で、連続して行った。以下の表に結果を示す。なお、t(min)は、AIBN添加後の重合時間である。


St:スチレン (8M(バルク))
BzOH:ベンジルアルコール
AIBN:アゾビスイソブチロニトリル
NIS:N−ヨウ化コハク酸イミド
(実施例7)
アクリロニトリル(AN)(8000mM(bulk))、ベンジルアルコール(80mM)、NIS(80mM)を用いた。これらの材料を3g調製し、アルゴンにて残存酸素を置換して、この反応溶液を80℃で3時間加熱した。その後、AIBN(80mM)を添加して70℃で以下の表に示す時間重合した。すべての反応作業は、同一の反応容器で、連続して行った。以下の表に結果を示す。なお、t(min)は、AIBN添加後の重合時間である。


AN:アクリロニトリル (8M(バルク))
BzOH:ベンジルアルコール
AIBN:アゾビスイソブチロニトリル
NIS:N−ヨウ化コハク酸イミド
(実施例8)
MMA(8000mM(bulk))、アルコール(水酸基のモル濃度で80mM)、NIS(80mM)を用いた。これらの材料を3g調製し、アルゴンにて残存酸素を置換して、この反応溶液を80℃で3時間加熱した。その後、AIBN(60mM)を添加して80℃で以下の表に示す時間重合した。2つの水酸基をもつエチレングリコールとプロピレングリコールからは2つの水酸基から両方向に鎖の伸びた高分子が、3つの水酸基をもつペンタエリスリトールからは4つの水酸基から鎖の伸びた4本鎖(星型)高分子が生成した。いずれの場合も、すべての反応作業は、同一の反応容器で、連続して行った。以下の表に結果を示す。なお、t(min)は、AIBN添加後の重合時間である。なお、MnとPDIは、テトラヒドロフラン(THF)を溶出液とするゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)で測定した、直鎖のポリ(メチルメタクリレート)換算値である。


MMA:メチルメタクリレート (8M(バルク))
AIBN:アゾビスイソブチロニトリル
NIS:N−ヨウ化コハク酸イミド
(実施例9)
MMA(8000mM(bulk))、アセチルセルロース(水酸基のモル濃度で80mM)、NIS(80mM)を用いた。これらの材料を3g調製し、アルゴンにて残存酸素を置換して、この反応溶液を80℃で3時間加熱した。その後、AIBN(60mM)を添加して80℃で以下の表に示す時間重合した。アセチルセルロースは、Mnは50000のものを用い、1グルコースユニットあたり0.5個の水酸基を有するもの(アセチル置換度(DS)=2.5)のものを用いた。この重合により、アセチルセルロースを幹鎖、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)を枝鎖とするくし型高分子が生成した。なお、t(min)は、AIBN添加後の重合時間である。なお、MnとPDIは、テトラヒドロフラン(THF)を溶出液とするゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)で測定した、直鎖のPMMA換算値である。


MMA:メチルメタクリレート (8M(バルク))
AIBN:アゾビスイソブチロニトリル
NIS:N−ヨウ化コハク酸イミド
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、当業者の技術常識に基づいて特許請求の範囲と等価な範囲を理解することができる。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
上述したとおり、本発明者らは、アルコール化合物またはアミン化合物およびハロゲン化剤を開始ドーマント種の生成のために利用する新しい開始剤系のリビングラジカル重合方法(精密制御ラジカル重合)を発明した。この新しい重合方法によれば、様々な化合物を開始基として使用することが可能であり、その様々な化合物をリビングラジカル重合ポリマーの末端に容易に導入することができる。
世界の高分子化合物生産量の半分以上はラジカル重合によるが、リビングラジカル重合は、各種高付加価値材料の生産に応用できる。具体的には、例えば、熱可塑性エラストマー(自動車材料、工業用品、医療材料、履物、スポーツ用品、玩具、電線被覆材、建設・土木資材、樹脂改質など)レジスト、有機EL、接着剤、ポリマーアロイ、各種フィラー添加剤、潤滑剤、界面活性剤、塗料、インク、包装材、薬剤(例えば、医薬除放材)、パーソナルケア製品(化粧品、整髪料など)などの生産に応用でき、市場規模は極めて大きい。本発明のリビングラジカル重合は、新しい電子材料、光学材料、分離材料、または生体材料を生産する優れたプロセスとして幅広く利用され得る。

Claims (15)

  1. リビングラジカル重合方法であって、以下の工程:
    アルコールの水酸基の水素をハロゲン化することが可能なハロゲン化剤により、アルコール化合物をハロゲン化して、該水酸基中の水素がハロゲンに置換されたハロゲン化誘導体化合物を生成する工程であって、ここで、該アルコール化合物の水酸基が結合している原子が非共役構造を有している、工程、および
    該ハロゲン化誘導体化合物をリビングラジカル重合のドーマント種として用いて、ラジカル反応性不飽和結合を有するモノマーのリビングラジカル重合を行う工程であって、該ハロゲン化誘導体化合物からハロゲンが脱離して生成するラジカルを該モノマーの不飽和結合と反応させることを含む、工程、
    を包含
    ここで、該アルコール化合物中の水酸基が結合している原子が炭素またはケイ素である、
    方法。
  2. 前記アルコール化合物中の水酸基が結合している原子がSp混成軌道を有する炭素である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記ハロゲン化剤が、アルコールをヨウ素化することが可能なヨウ化剤であるか、またはアルコールを臭素化することが可能な臭素化剤である、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
  4. 前記ハロゲン化剤が、以下の式4の構造を有し、
    式4 R−C(=O)−NX−C(=O)−R
    ここで、Xはハロゲンであり、
    およびRはそれぞれ独立して任意の置換基であり、RおよびRは互いに連結されて環構造を形成してもよく、
    該ハロゲン化剤は、リビングラジカル重合の触媒としても作用する、
    請求項1〜のいずれか1項に記載の方法
  5. 前記ハロゲン化剤において、RおよびRは互いに連結されてアルキレンまたは置換アルキレンとなって、前記式4の構造が環構造となり、
    ここで、該アルキレンの炭素数は1〜10であり、
    該置換アルキレンにおけるアルキレンの炭素数は1〜10であり、
    該置換アルキレンにおける置換基がハロゲンまたは水酸基から選択される、
    請求項に記載の方法。
  6. 前記式4の構造が5員環構造または6員環構造であり、Xがヨウ素である、請求項に記載の方法。
  7. 前記ハロゲン化剤がN−ヨウ化コハク酸イミドである、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
  8. 前記アルコール化合物が、固体である、請求項1に記載の方法。
  9. 前記アルコール化合物が、シリコン基板表面の水酸基を有する化合物である、請求項1に記載の方法。
  10. 前記ハロゲン化剤がジアセトキシヨードベンゼン((AcO)IPh)およびIの混合物である、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
  11. 請求項1に記載のハロゲン化誘導体化合物をドーマント種として用いて、反応性不飽和結合を有するモノマーをリビングラジカル重合して得られるポリマー鎖の末端にポリオール化合物の残基が結合しているポリマーであって、
    該ポリオール化合物の水酸基に由来する酸素原子が、該ポリマー鎖の末端のモノマー残基中の反応性不飽和結合を構成していた2つの炭素原子のうちのいずれか一方に直接結合している、ポリマー。
  12. 請求項1に記載のハロゲン化誘導体化合物をドーマント種として用いて、反応性不飽和結合を有するモノマーをリビングラジカル重合して得られるポリマー鎖の末端が結合した基板であって、
    該ポリマー鎖の末端のモノマー残基中の、反応性不飽和結合を構成していた2つの炭素原子のうちのいずれか一方に、基板表面の酸素原子が直接結合している、基板。
  13. 請求項1に記載のハロゲン化誘導体化合物をドーマント種として用いて、反応性不飽和結合を有するモノマーをリビングラジカル重合して得られるポリマー鎖の末端にシラノール化合物の残基が結合しているポリマーであって、
    該シラノール化合物の水酸基に由来する酸素原子が、該ポリマー鎖の末端のモノマー残基中の反応性不飽和結合を構成していた2つの炭素原子のうちのいずれか一方に直接結合している、ポリマー。
  14. リビングラジカル重合方法であって、以下の工程:
    アミノ基の窒素に結合している水素をハロゲン化することが可能なハロゲン化剤により、1級または2級のアミン化合物のアミノ基の窒素に結合している水素をハロゲン化して、該アミン化合物の水素がハロゲンに置換されたハロゲン化誘導体化合物を生成する工程であって、ここで、該アミン化合物の該アミノ基が結合している原子が非共役構造を有している、工程、および
    ハロゲン化誘導体化合物をリビングラジカル重合のドーマント種として用いて、ラジカル反応性不飽和結合を有するモノマーのリビングラジカル重合を行う工程であって、該ハロゲン化誘導体化合物からハロゲンが脱離して生成するラジカルを該モノマーの不飽和結合と反応させることを含む、工程、
    を包含する、方法。
  15. 前記リビングラジカル重合を行う工程が、前記ハロゲン化誘導体化合物以外の低分子ドーマント種を用いずに行われる、請求項14に記載の方法。
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