JP5644756B2 - 可変動弁機構の制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、可変動弁機構の制御装置に関する。
特許文献1に示されるように、自動車等の車両に搭載される内燃機関として、吸気バルブの開閉特性を可変とする可変動弁機構が設けられたものが知られている。こうした内燃機関では、可変動弁機構の動作に起因して吸気バルブと排気バルブとのバルブオーバーラップ量が大きくなり過ぎないよう、同バルブオーバーラップ量のガード処理が行われる。詳しくは、バルブオーバーラップ量がその上限ガードに用いられるガード値を越えて大きくなるとき、同バルブオーバーラップ量が上記ガード値に抑えられるよう可変動弁機構が制御される。これによりバルブオーバーラップ量の過多が抑制される。
特開平8−246907公報
上述したように、吸気バルブと排気バルブとのバルブオーバーラップ量をガード値により上限ガードすれば、そのバルブオーバーラップ量の過多が抑制されるようにはなる。ただし、このようにバルブオーバーラップ量をガード値により上限ガードするとしても、内燃機関の過渡運転時など上記ガード値に対してバルブオーバーラップ量のオーバーシュートが生じる状況のもとでは、バルブオーバーラップ量の過多が生じることは避けられない。そして、バルブオーバーラップ量が小さくなる機関運転領域、例えば内燃機関の低回転低負荷領域で上述したバルブオーバーラップ量の過多が生じると、筒内での燃料の燃焼時に同筒内に残留する排気の量が過多になるなどして、上記燃料の燃焼が悪化するおそれがある。これは、バルブオーバーラップ量が小さいとき、上述したようにバルブオーバーラップ量の過多が生じると、同バルブオーバーラップ量全体に対する上記過多分の割合が大きくなり、それに伴うバルブオーバーラップ量の過多による筒内での燃料の燃焼への悪影響が大きくなるためである。従って、バルブオーバーラップ量が小さくなる機関運転領域で、上記ガード値に対するバルブオーバーラップ量のオーバーシュートが生じると、それに伴うバルブオーバーラップ量の過多によって筒内での燃料の燃焼状態が悪化する。
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、吸気バルブと排気バルブとのバルブオーバーラップ量が小さくなる機関運転領域で同バルブオーバーラップ量の過多が生じて筒内での燃料の燃焼が悪化することを抑制できる可変動弁機構の制御装置を提供することにある。
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1記載の発明によれば、内燃機関における吸気バルブと排気バルブとのうちの少なくとも吸気バルブの開閉特性を変更する可変動弁機構が、機関運転状態に基づいて動作される。この可変動弁機構の動作を通じて変化する上記バルブオーバーラップ量がガード値以上になるときには、そのバルブオーバーラップ量が上記ガード値に抑えられるよう可変動弁機構の制御が行われる。そして、上記ガード値に対しバルブオーバーラップ量のオーバーシュートが生じる状況のもとで内燃機関の筒内での燃料の燃焼が悪化するほどバルブオーバーラップ量が小さくなる機関運転状態のときには、上記ガード値がより減少側の値となるよう設定手段を通じて設定される。このため、バルブオーバーラップ量が上述したように小さくなる機関運転領域での内燃機関の過渡運転時、上記ガード値に対するバルブオーバーラップ量のオーバーシュートが生じたとしても、そのオーバーシュートに起因して筒内での燃料の燃焼時に同筒内に残留する排気の量を少なく抑えることができる。従って、バルブオーバーラップ量が小さくなる機関運転領域で同バルブオーバーラップ量の過多が生じて筒内での燃料の燃焼が悪化することを抑制できる。
ところで、吸気バルブの開弁時期が内燃機関の吸気行程よりも進角側であって、且つ同吸気行程に近い時期であるようなとき、設定手段により上記ガード値がより減少側の値となるよう設定されると、次のような状況が生じる可能性がある。すなわち、上記減少側の値に設定された後のガード値によるバルブオーバーラップ量の上限ガードを通じて、吸気バルブの開弁時期が内燃機関の吸気行程の開始時点よりも遅角側の時期へと変化し、内燃機関の吸気行程初期において吸気バルブが開弁しておらず、且つ排気バルブが開弁しているという状況が生じる可能性がある。こうした状況のもとでは、吸気行程でのピストンの移動に伴い内燃機関の排気通路から筒内への排気の逆流が生じやすくなるため、上述した上限ガードによってバルブオーバーラップ量を小さく抑えたとしても、筒内での燃料の燃焼時に同筒内に残留する排気の量が過多になり、それによって筒内での燃料の燃焼が悪化する。
こうしたことを考慮して、請求項1記載の発明では、吸気バルブの開弁時期が内燃機関の吸気行程よりも進角側に設定された閾値に対し更に進角側にあるときには、設定手段による上記ガード値のより減少側の値への設定が許容される。一方、吸気バルブの開弁時期が上記閾値よりも遅角側にあるという内燃機関の吸気行程に近い時期のときには、設定手段による上記ガード値のより減少側の値への設定が禁止手段を通じて禁止される。このため、より減少側の値に設定されたガード値によるバルブオーバーラップ量の上限ガードを通じて吸気バルブの開弁時期が内燃機関の吸気行程の開始時点よりも遅角側の時期へと変化することが抑制される。その結果、内燃機関の吸気行程初期において、吸気バルブが開弁しておらず、且つ排気バルブが開弁しているという状況が生じることも抑制される。従って、そうした状況下における吸気行程でのピストンの移動に伴い内燃機関の排気通路から筒内への排気の逆流が生じ、それに伴い筒内での燃料の燃焼時に同筒内に残留する排気の量が過多になって上記燃料の燃焼が悪化することを抑制できる。
請求項2記載の発明によれば、可変動弁機構により吸気バルブの開閉特性が可変とされる他、排気バルブの開閉特性も可変動弁機構によって可変とされる。そして、バルブオーバーラップ量をガード値に抑えるための可変動弁機構の制御は、少なくとも吸気バルブの開閉特性を変更することによって実現される。また、前記吸気バルブの開弁時期が上記閾値よりも遅角側にあり、且つ前記排気バルブの閉弁時期が内燃機関の吸気行程開始時よりも遅角側にあるとき、前記設定手段による前記ガード値のより減少側の値への設定が禁止される。その結果、より減少側の値に設定されたガード値によるバルブオーバーラップ量の上限ガードを通じて内燃機関の吸気行程で吸気バルブが開弁しておらず且つ排気バルブが開弁しているという状況が生じることを的確に抑制できる。
請求項3記載の発明によれば、可変動弁機構に排気バルブの開閉特性を可変とするために排気側バルブタイミング可変機構が設けられており、この排気側バルブタイミング可変機構により内燃機関のクランクシャフトに対する排気カムシャフトの相対回転位相が可変とされる。この排気側バルブタイミング可変機構の動作により、排気バルブの閉弁時期が内燃機関の吸気行程中まで遅角する可能性が高くなる。従って、より減少側の値に設定されたガード値によりバルブオーバーラップ量が上限ガードされたとき、内燃機関の吸気行程で吸気バルブが開弁しておらず、且つ排気バルブが開弁しているという状況が生じる可能性も高くなる。しかし、こうした状況が生じないように上記ガード値のより遅角側の値への設定を禁止手段によって禁止することができる。
請求項4記載の発明によれば、可変動弁機構には吸気バルブに対するカム作用角を可変とするバルブリフト量可変機構、及び、内燃機関のクランクシャフトに対する吸気カムシャフトの相対回転位相を可変とする吸気側バルブタイミング可変機構が設けられる。そして、これらバルブリフト量可変機構及び吸気側バルブタイミング可変機構により、吸気バルブの開閉特性が可変とされる。また、バルブオーバーラップ量をガード値に抑えるための可変動弁機構の制御は、吸気バルブに対するカム作用角の実測値、及び、クランクシャフトに対する排気カムシャフトの相対回転位相の実測値に基づき、吸気側バルブタイミング可変機構を動作させることによって実現される。従って、仮にバルブリフト量可変機構の異常により吸気バルブに対するカム作用角を的確に変化させることができない状況になったとしても、吸気側バルブタイミング可変機構によりクランクシャフトに対する吸気カムシャフトの相対回転位相を変化させることで、バルブオーバーラップ量をガード値に抑える可変動弁機構の制御を実現することができる。
請求項5記載の発明によれば、可変動弁機構には吸気バルブに対するカム作用角を可変とするバルブリフト量可変機構、及び、内燃機関のクランクシャフトに対する吸気カムシャフトの相対回転位相を可変とする吸気側バルブタイミング可変機構が設けられる。そして、これらバルブリフト量可変機構及び吸気側バルブタイミング可変機構により、吸気バルブの開閉特性が可変とされる。また、バルブオーバーラップ量をガード値に抑えるための可変動弁機構の制御は、クランクシャフトに対する吸気カムシャフトの相対回転位相の実測値、及び、クランクシャフトに対する排気カムシャフトの相対回転位相の実測値に基づき、バルブリフト量可変機構を動作させることによって実現される。従って、仮に吸気側バルブタイミング可変機構の異常によりカムシャフトに対する吸気カムシャフトの相対回転位相を的確に変化させることができないとしても、バルブリフト量可変機構により吸気バルブに対するカム作用角を変化させることで、バルブオーバーラップ量をガード値に抑える可変動弁機構の制御を実現することができる。
本発明の可変動弁機構の制御装置が適用される内燃機関全体を示す略図。 吸気バルブのバルブタイミングの変化態様を示すタイミングチャート。 吸気バルブに対するカム作用角、及び、吸気バルブの最大リフト量の変化態様を示すタイミングチャート。 排気バルブのバルブタイミングの変化態様を示すタイミングチャート。 吸気バルブの目標バルブタイミングを算出するためのマップ。 上記制御装置による可変動弁機構の制御を行ったときの吸気バルブのバルブタイミングと吸気バルブに対するカム作用角との組み合わせを示すグラフ。 バルブオーバーラップ量のガード処理の実行手順を示すフローチャート。 (a)〜(c)は吸気バルブの開弁期間と排気バルブの開弁期間との関係を示す説明図。 吸気バルブに対する目標カム作用角を算出するためのマップ。
[第1実施形態]
以下、本発明を内燃機関の可変動弁機構に適用した第1実施形態について、図1〜図8を参照して説明する。
図1に示される内燃機関1においては、その燃焼室2に吸気通路3を通じて空気が吸入されるとともに、燃料噴射弁4から噴射された燃料が同燃焼室2に供給される。この空気と燃料とからなる混合気に対し点火プラグ5による点火が行われると、同混合気が燃焼してピストン6が往復移動し、内燃機関1の出力軸であるクランクシャフト7が回転する。そして、燃焼後の混合気は排気として各燃焼室2から排気通路8に送り出される。
内燃機関1における燃焼室2と吸気通路3との間は、クランクシャフト7からの回転伝達を受ける吸気カムシャフト11の回転に基づき吸気バルブ9が開閉動作することによって連通・遮断される。また、内燃機関1における燃焼室2と排気通路8との間は、クランクシャフト7からの回転伝達を受ける排気カムシャフト12の回転に基づき排気バルブ10が開閉動作することによって連通・遮断される。なお、 内燃機関1には、吸気バルブ9や排気バルブ10の開閉特性を可変とする可変動弁機構が設けられている。
内燃機関1の可変動弁機構は、クランクシャフト7に対する吸気カムシャフト11の相対回転位相を可変とする吸気側バルブタイミング可変機構13と、吸気バルブ9に対するカム作用角を可変とするバルブリフト量可変機構14とを備えている。これら吸気側バルブタイミング可変機構13及びバルブリフト量可変機構14の動作により、吸気バルブ9の開閉特性が可変とされる。詳しくは、吸気側バルブタイミング可変機構13を動作させると、図2に示されるように吸気バルブ9の開弁期間を一定に保持した状態で同バルブ9の開弁時期及び閉弁時期が共に進角又は遅角する。また、バルブリフト量可変機構14を動作させると、図3に示されるように吸気バルブ9に対する吸気カムの作用角と吸気バルブ9の最大リフト量とが互いに同期しても変化する。
上記可変動弁機構は、図1に示すクランクシャフト7に対する排気カムシャフト12の相対回転位相を可変とする排気側バルブタイミング可変機構15も備えている。この排気側バルブタイミング可変機構15の動作により、排気バルブ10の開閉特性が可変とされる。詳しくは、排気側バルブタイミング可変機構15を動作させると、図4に示されるように排気バルブ10の開弁期間を一定に保持した状態で同バルブ10の開弁時期及び閉弁時期が共に進角又は遅角する。
次に、上記可変動弁機構を制御するための制御装置の電気的構成について、図1を参照して説明する。
可変動弁機構の制御装置は、内燃機関1の各種運転制御を実行する電子制御装置26を備えている。この電子制御装置26は、上記制御に係る各種演算処理を実行するCPU、その制御に必要なプログラムやデータの記憶されたROM、CPUの演算結果等が一時記憶されるRAM、外部との間で信号を入・出力するための入・出力ポート等を備えて構成されている。
電子制御装置26の入力ポートには、以下に示す各種センサが接続されている。
・自動車の運転者によって踏み込み操作されるアクセルペダル27の踏み込み量(アクセル操作量)を検出するアクセルポジションセンサ28。
・吸気通路3に設けられたスロットルバルブ29の開度(スロットル開度)を検出するスロットルポジションセンサ30。
・吸気通路3を通じて燃焼室2に吸入される空気の量を検出するエアフローメータ32。
・クランクシャフト7の回転に対応する信号を出力し、エンジン回転速度の算出等に用いられるクランクポジションセンサ34。
・吸気カムシャフト11の回転位置に対応した信号を出力する吸気側カムポジションセンサ35。
・排気カムシャフト12の回転位置に対応した信号を出力する排気側カムポジションセンサ36。
・バルブリフト量可変機構14の駆動量を検出する駆動量検出センサ37。
電子制御装置26の出力ポートには、吸気側バルブタイミング可変機構13の駆動回路、バルブリフト量可変機構14の駆動回路、及び排気側バルブタイミング可変機構15の駆動回路などが接続されている。
そして、電子制御装置26は、上記各種センサから入力した検出信号に基づき、機関回転速度や機関負荷(内燃機関1の1サイクル当たりに燃焼室2に吸入される空気の量)といった機関運転状態を把握する。なお、機関回転速度はクランクポジションセンサ34からの検出信号に基づき求められる。更に、機関負荷は、アクセルポジションセンサ28、スロットルポジションセンサ30、及び、エアフローメータ32等の検出信号に基づき求められる内燃機関1の吸入空気量と機関回転速度とから算出される。
また、電子制御装置26は、クランクポジションセンサ34及び吸気側カムポジションセンサ35からの検出信号に基づき吸気バルブ9の実際のバルブタイミング(開閉タイミング)を測定する一方、駆動量検出センサ37からの検出信号に基づき吸気バルブ9に対する実際のカム作用角(吸気バルブ9の実際の最大リフト量)を測定する。更に、電子制御装置26は、クランクポジションセンサ34及び排気側カムポジションセンサ36からの検出信号に基づき排気バルブ10の実際のバルブタイミング(開閉タイミング)を測定する。
そして、電子制御装置26は、機関負荷や機関回転速度といった機関運転状態、並びに、吸気バルブ9のバルブタイミングの実測値、吸気バルブ9に対するカム作用角の実測値、及び排気バルブ10のバルブタイミングの実測値に基づき、上記出力ポートに接続された各種駆動回路に指令信号を出力する。こうして内燃機関1における吸気バルブ9のバルブタイミングの制御、吸気バルブ9に対するカム作用角の制御、及び、排気バルブ10のバルブタイミングの制御等が電子制御装置26を通じて実施される。これら吸気バルブ9のバルブタイミングの制御、吸気バルブ9に対するカム作用角の制御、及び排気バルブ10のバルブタイミングの制御に関しては、吸気バルブ9と排気バルブ10とのバルブオーバーラップ量を考慮しつつ、内燃機関1の燃費及び出力が最良となるように行われる。
詳しくは、機関負荷及び機関回転速度といった機関運転状態に基づき吸気バルブ9に対するカム作用角、及び排気バルブ10のバルブタイミングが制御される一方、上記機関運転状態に基づき目標バルブオーバーラップ量が定められる。更に、そのときの吸気バルブ9に対するカム作用角の実測値、排気バルブ10のバルブタイミングの実測値、及び機関負荷に基づき、上記目標オーバーラップ量を実現するために必要な吸気バルブ9のバルブタイミングの目標値(目標バルブタイミング)が図5のマップを参照して算出される。すなわち、吸気バルブ9に対するカム作用角の実測値及び排気バルブ10のバルブタイミングの実測値に基づき機関負荷aに対応したマップを参照して、その機関負荷aに対応した目標バルブタイミングが求められる。また、吸気バルブ9に対するカム作用角の実測値及び排気バルブ10のバルブタイミングの実測値に基づき機関負荷b(>a)に対応したマップを参照して、その機関負荷bに対応した目標バルブタイミングが求められる。その後、機関負荷aに対応した目標バルブタイミングと機関負荷bに対応した目標バルブタイミングとを用いて現在の機関負荷に基づく補間計算を行うことにより、現在の機関負荷に対応した目標バルブタイミングが算出される。そして、上記現在の機関負荷に対応した目標バルブタイミングと吸気バルブ9のバルブタイミングの実測値とに基づき、その目標バルブタイミングが実現するように吸気バルブ9のバルブタイミングが制御される。その結果、吸気バルブ9と排気バルブ10とのバルブオーバーラップ量が、上述した目標バルブオーバーラップ量とされるようになる。
なお、上述したように吸気バルブ9のバルブタイミングの制御、吸気バルブ9に対するカム作用角の制御、及び排気バルブ10のバルブタイミングの制御を実行した場合、吸気バルブ9のバルブタイミングと吸気バルブ9に対するカム作用角との組み合わせが、機関運転状態の変化に伴って例えば図6の実線上で変化するようになる。
次に、吸気バルブ9と排気バルブ10とのバルブオーバーラップ量を上限ガードするためのガード処理について説明する。
こうしたガード処理は、吸気バルブ9と排気バルブ10とのバルブオーバーラップ量が大きくなり過ぎて内燃機関1の筒内(燃焼室2)での燃料の燃焼が悪化しないようにすることを目的に実施される。このガード処理では、バルブオーバーラップ量の上限ガードに用いられるガード値を求め、同ガード値を越えてバルブオーバーラップ量が大きくなるとき、そのバルブオーバーラップ量が上記ガード値に抑えられるよう可変動弁機構が制御される。この実施形態では、吸気バルブ9のバルブタイミングが遅角されるように吸気側バルブタイミング可変機構13が制御される。以上のようなガード処理を実行することにより、バルブオーバーラップ量の過多が抑制される。なお、上記ガード処理は、具体的には、以下の[1]〜[3]の手順で行うことが考えられる。
[1]機関負荷を最大と仮定した条件のもとで現在の機関回転速度に基づき吸気バルブ9と排気バルブ10との目標バルブオーバーラップ量を求め、その求められた目標バルブオーバーラップ量を上記ガード値として設定する。
[2]機関負荷を最大とし、且つ排気バルブ10のバルブタイミングを最遅角とした条件のもと、上記ガード値として設定された目標オーバーラップ量を実現するために必要な吸気バルブ9のバルブタイミングをガード用バルブタイミングとして求める。すなわち、吸気バルブ9に対するカム作用角の実測値、上記機関負荷の最大値、及び排気バルブ10のバルブタイミングの最遅角値に基づき、図5のマップを利用して吸気バルブ9の目標バルブタイミングを求め、その求められた目標バルブタイミングをガード用バルブタイミングとする。
[3]ガード用バルブタイミングと吸気バルブ9のバルブタイミングの制御に用いられる目標バルブタイミングとを比較する。なお、この目標バルブタイミングが上記ガード用バルブタイミングよりも進角側の値でなければ、目標バルブオーバーラップ量がガード値未満である旨判断し、上記目標バルブタイミングに基づき吸気バルブ9のバルブタイミングを制御する。一方、上記目標バルブタイミングが上記ガード用バルブタイミングよりも進角側の値であれば、目標バルブオーバーラップ量がガード値以上である旨判断し、上記ガード用バルブタイミングを吸気バルブ9のバルブタイミングの制御に用いられる目標バルブタイミングとして設定する。この目標バルブタイミングに基づき吸気バルブ9のバルブタイミングを制御する。
以上の[1]〜[3]の手順を実施することにより、吸気バルブ9と排気バルブ10とのバルブオーバーラップ量が上記ガード値を越えて大きくなるとき、同バルブオーバーラップ量が上記ガード値に抑えられ、それによってバルブオーバーラップ量の過多が抑制される。
ただし、内燃機関1の過渡運転時など上記ガード値に対してバルブオーバーラップ量のオーバーシュートが生じる状況のもとでは、バルブオーバーラップ量の過多が生じることは避けられない。そして、バルブオーバーラップ量が小さくなる機関運転領域、例えば内燃機関1の低回転低負荷領域で上述したバルブオーバーラップ量の過多が生じると、筒内での燃料の燃焼時に同筒内に残留する排気の量が過多になるなどして、[発明が解決しようとする課題]の欄に記載した理由により、上記燃料の燃焼が悪化するおそれがある。
このため、本実施形態では、バルブオーバーラップ量が判定値未満という小さい値になる機関運転状態のときには、上記ガード値をより減少側の値となるよう設定して上記ガード処理を実施する。詳しくは、上記ガード処理における上記[1]〜[3]の手順のうち、[1]及び[2]に代えて以下の[1a]及び[2a]の手順を用いてガード処理が実施される。
[1a]機関負荷を最大値未満の予め定められた値(設定値)であると仮定した条件のもとで現在の機関回転速度に基づき、吸気バルブ9と排気バルブ10との目標バルブオーバーラップ量を求める。こうして求められた目標オーバーラップ量は、上記[1]で求められたものよりも小さくなる。そして、上記目標オーバーラップ量をガード値として設定する。
[2a]機関負荷を上記設定値とした条件のもと、上記ガード値として設定された目標オーバーラップ量を実現するために必要な吸気バルブ9のバルブタイミングをガード用バルブタイミングとして求める。すなわち、上記機関負荷の設定値、吸気バルブ9に対するカム作用角の実測値、及び排気バルブ10のバルブタイミングの実測値に基づき、図5のマップを利用して吸気バルブ9の目標バルブタイミングを求め、その求められた目標バルブタイミングをガード用バルブタイミングとする。こうして求められたガード用バルブタイミングは、上記[2a]で求められたものよりも遅角側の値になる。
次に、本実施形態における可変動弁機構の制御装置の動作について、ガード処理ルーチンを示す図7のフローチャートを参照して説明する。このガード処理ルーチンは、電子制御装置26を通じて、例えば所定時間毎の時間割り込みにて周期的に実行される。
同ルーチンにおいて、S105の処理はガード処理における上記[1]及び[2]の手順を行うためのものであり、S106の処理はガード処理における上記[1a]及び[2a]の手順を行うためのものであり、S107の処理は上記[3]の処理を行うためのものである。また、S101〜S104の処理は、ガード処理において、上記[1]及び[2]の手順を選択するか、あるいは上記[1a]及び[2a]の手順を選択するかを判断するためのものである。このS101〜S104の処理ではそれぞれ、以下の判断が行われる。
・現在の機関回転速度及び機関負荷に基づき求められる目標バルブオーバーラップ量が、上記判定値未満という小さい値であるか否かの判断(S101)。
・現在の機関回転速度が所定値未満であるか否か、言い換えれば内燃機関1が筒内での燃料の燃焼時に同筒内に残留する排気の量の過多によりストールする可能性があるほど低回転であるか否かの判断(S102)。
・現在の吸気バルブ9の開弁時期が内燃機関1の吸気行程よりも進角側にある閾値に対し更に進角側に存在するか否かの判断(S103)。
・現在の機関負荷が所定値未満であるか否か、言い換えれば目標バルブオーバーラップ量が小さい値になる機関運転領域にあるか否かの判断(S104)。
ガード処理ルーチンにおけるS101の処理で否定判定がなされると、すなわち現在の機関回転速度及び機関負荷に基づき求められる目標バルブオーバーラップ量が判定値未満という小さい値ではない旨判断されると、S105及びS107の処理を通じて上記[1]、[2]、[3]の手順によるバルブオーバーラップ量のガード処理が実行される。
一方、S101の処理で肯定判定がなされた場合には、S102〜S104すべてで肯定判定がなされることを条件に、S106及びS107の処理を通じて上記[1a]、[2a]、[3]の手順によるバルブオーバーラップ量のガード処理が実行される。この上記[1a]、[2a]、[3]の手順によるバルブオーバーラップ量のガード処理では、上記[1]、[2]、[3]の手順によるバルブオーバーラップ量のガード処理と比較して、ガード処理に用いられるガード値がより減少側の値となるように設定される。このため、バルブオーバーラップ量が判定値未満という小さい値になる機関運転領域での内燃機関1の過渡運転時に、上記ガード値に対するバルブオーバーラップ量のオーバーシュートが生じたとしても、そのオーバーシュートに起因して筒内での燃料の燃焼時に同筒内に残留する排気の量が少なく抑えられる。従って、バルブオーバーラップ量が小さくなる機関運転領域で同バルブオーバーラップ量の過多が生じて筒内での燃料の燃焼が悪化することは抑制される。
ところで、吸気バルブ9の開弁時期が内燃機関1の吸気行程(吸気上死点から吸気下死点まで)よりも進角側であって、且つ同吸気行程に近い時期であるようなとき、S106の処理を通じてガード値がより減少側の値となるよう設定されると、次のような状況が生じる可能性がある。すなわち、上記減少側の値に設定された後のガード値によるバルブオーバーラップ量の上限ガードを通じて、吸気バルブ9の開弁時期が内燃機関1の吸気行程の開始時点(吸気上死点)よりも遅角側の時期へと変化し、内燃機関1の吸気行程初期において吸気バルブ9が開弁しておらず、且つ排気バルブ10が開弁しているという状況が生じる可能性がある。
なお、図8において、(a)は吸気バルブ9の開弁時期が吸気行程の開始時点よりも進角側の時期になった状態を示しており、(b)は吸気バルブ9の開弁時期が吸気行程の開始時点と重なった状態を示しており、(c)は吸気バルブ9の開弁時期が吸気行程の開始時点よりも遅角側の時期になった状態を示している。
この図8(c)においては、吸気バルブ9の開弁時期が内燃機関1の吸気行程の開始時点よりも遅角側の時期となる他、排気バルブ10の閉弁時期が吸気行程の開始時点よりも遅角側の時期であって、且つ吸気バルブ9の開弁時期よりも遅角側の時期となっている。従って、図8(c)は、内燃機関1の吸気行程初期において吸気バルブ9が開弁しておらず、且つ排気バルブ10が開弁しているという上述した状況となる。こうした状況のもとでは、吸気行程でのピストン6の移動に伴い内燃機関1の排気通路8から筒内への排気の逆流が生じやすくなるため、上述した上限ガードによってバルブオーバーラップ量を小さく抑えたとしても、筒内での燃料の燃焼時に同筒内に残留する排気の量が過多になり、それによって筒内での燃料の燃焼が悪化する。
こうしたことを考慮して、図7のガード処理ルーチンにおいてS103の処理が実行される。このS103の処理を通じて、吸気バルブ9の開弁時期が内燃機関1の吸気行程よりも進角側に設定された閾値に対し更に進角側にあるときに、S106の処理による上記ガード値のより減少側の値への設定が実行される。一方、S103の処理を通じて、吸気バルブ9の開弁時期が上記閾値よりも遅角側にあるという内燃機関1の吸気行程に近い時期のときには、S106の処理による上記ガード値のより減少側の値への設定が禁止される。すなわち、S106の処理によるガード値の設定ではなく、S105によるガード値の通常どおりの設定が行われる。
このため、吸気バルブ9の開弁時期が上記閾値よりも遅角側にあるという内燃機関1の吸気行程に近い時期のとき、より減少側の値に設定されたガード値によるバルブオーバーラップ量の上限ガードを通じて吸気バルブ9の開弁時期が内燃機関1の吸気行程の開始時点よりも遅角側の時期へと変化することが抑制される。その結果、図8(c)に示すように、内燃機関1の吸気行程初期において、吸気バルブ9が開弁しておらず、且つ排気バルブ10が開弁しているという状況が生じることも抑制される。従って、そうした状況に起因して吸気行程でのピストン6の移動に伴い内燃機関1の排気通路8から筒内への排気の逆流が生じ、それに伴い筒内での燃料の燃焼時に同筒内に残留する排気の量が過多になって上記燃料の燃焼が悪化することを抑制できる。
以上詳述した本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)現在の機関回転速度及び機関負荷に基づき求められる目標バルブオーバーラップ量が判定値未満という小さい値であるときには、上記[1a]、[2a]、[3]の手順によるバルブオーバーラップ量のガード処理が実行される。このときのガード処理では、上記[1]、[2]、[3]の手順によるバルブオーバーラップ量のガード処理と比較して、ガード処理に用いられるガード値がより減少側の値となるように設定される。このため、バルブオーバーラップ量が判定値未満という小さい値になる機関運転領域での内燃機関1の過渡運転時に、上記ガード値に対するバルブオーバーラップ量のオーバーシュートが生じたとしても、そのオーバーシュートに起因して筒内での燃料の燃焼時に同筒内に残留する排気の量を少なく抑えることができる。従って、バルブオーバーラップ量が小さくなる機関運転領域で同バルブオーバーラップ量の過多が生じて筒内での燃料の燃焼が悪化することを抑制できる。
(2)吸気バルブ9の開弁時期が内燃機関1の吸気行程よりも進角側に設定された閾値に対し更に進角側にあるときには上記ガード値のより減少側の値への設定が許容される一方、吸気バルブ9の開弁時期が上記閾値よりも遅角側にあるという内燃機関1の吸気行程に近い時期のときには上記ガード値のより減少側の値への設定が禁止される。このため、吸気バルブ9の開弁時期が上記閾値よりも遅角側にあるという内燃機関1の吸気行程に近い時期のとき、より減少側の値に設定されたガード値によるバルブオーバーラップ量の上限ガードを通じて吸気バルブ9の開弁時期が内燃機関1の吸気行程の開始時点よりも遅角側の時期へと変化することが抑制される。その結果、内燃機関1の吸気行程初期において、吸気バルブ9が開弁しておらず、且つ排気バルブ10が開弁しているという状況が生じることも抑制される。従って、そうした状況に起因して吸気行程でのピストン6の移動に伴い内燃機関1の排気通路8から筒内への排気の逆流が生じ、それに伴い筒内での燃料の燃焼時に同筒内に残留する排気の量が過多になって上記燃料の燃焼が悪化することを抑制できる。
(3)可変動弁機構には吸気バルブ9に対するカム作用角を可変とするバルブリフト量可変機構14、及び、内燃機関1のクランクシャフト7に対する吸気カムシャフト11の相対回転位相を可変とする吸気側バルブタイミング可変機構13が設けられる。そして、これらバルブリフト量可変機構14及び吸気側バルブタイミング可変機構13により、吸気バルブ9の開閉特性が可変とされる。また、バルブオーバーラップ量をガード値に抑えるための可変動弁機構の制御は、吸気バルブ9に対するカム作用角の実測値、及び、排気バルブ10のバルブタイミング(クランクシャフト7に対する排気カムシャフト12の相対回転位相)の実測値に基づき、吸気側バルブタイミング可変機構13を動作させることによって実現される。従って、仮にバルブリフト量可変機構14の異常により吸気バルブ9に対するカム作用角を的確に変化させることができない状況になったとしても、吸気側バルブタイミング可変機構13の上記動作を通じて吸気バルブ9のバルブタイミングを変化させることにより、バルブオーバーラップ量をガード値に抑える可変動弁機構の制御を実現することができる。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について図9を参照して説明する。
この実施形態では、吸気バルブ9と排気バルブ10とのオーバーラップ量が次のように制御される。
すなわち、機関負荷及び機関回転速度といった機関運転状態に基づき目標バルブオーバーラップ量が定められる。更に、そのときの吸気バルブ9のバルブタイミングの実測値、排気バルブ10のバルブタイミングの実測値、及び機関負荷に基づき、上記目標オーバーラップ量を実現するために必要な吸気バルブ9に対するカム作用角の目標値(目標カム作用角)が図9のマップを参照して算出される。すなわち、吸気バルブ9のバルブタイミングの実測値及び排気バルブ10のバルブタイミングの実測値に基づき機関負荷aに対応したマップを参照して、その機関負荷aに対応した目標カム作用角が求められる。また、吸気バルブ9のバルブタイミングの実測値及び排気バルブ10のバルブタイミングの実測値に基づき機関負荷b(>a)に対応したマップを参照して、その機関負荷bに対応した目標カム作用角が求められる。その後、機関負荷aに対応した目標カム作用角と機関負荷bに対応した目標カム作用角とを用いて現在の機関負荷に基づく補間計算を行うことにより、現在の機関負荷に対応した目標カム作用角が算出される。そして、上記現在の機関負荷に対応した目標カム作用角と吸気バルブ9に対するカム作用角の実測値とに基づき、その目標カム作用角が実現するように吸気バルブ9に対するカム作用角の制御が行われる。その結果、吸気バルブ9と排気バルブ10とのバルブオーバーラップ量が、上述した目標バルブオーバーラップ量となるように制御される。
この実施形態では、バルブオーバーラップ量のガード処理を実現するための可変動弁機構の制御、すなわちバルブオーバーラップ量をガード値に抑えるための可変動弁機構の制御として、吸気バルブ9に対するカム作用角を小さくするバルブリフト量可変機構14の制御が行われる。なお、上記ガード処理は、具体的には、以下の[4]〜[6]の手順で実施される。
[4]機関負荷を最大と仮定した条件のもとで現在の機関回転速度に基づき吸気バルブ9と排気バルブ10との目標バルブオーバーラップ量を求め、その求められた目標バルブオーバーラップ量を上記ガード値として設定する。
[5]機関負荷を最大とし、且つ排気バルブ10のバルブタイミングを最遅角とした条件のもと、上記ガード値として設定された目標オーバーラップ量を実現するために必要な吸気バルブ9に対するカム作用角をガード用カム作用角として求める。すなわち、吸気バルブ9のバルブタイミングの実測値、上記機関負荷の最大値、及び排気バルブ10のバルブタイミングの最遅角値に基づき、図9のマップを利用して吸気バルブ9に対する目標カム作用角を求め、その求められた目標カム作用角をガード用カム作用角とする。
[6]ガード用カム作用角と吸気バルブ9に対するカム作用角の制御に用いられる目標カム作用角とを比較する。なお、この目標カム作用角が上記ガード用カム作用角よりも大きい値でなければ、目標カム作用角がガード値未満である旨判断し、上記目標カム作用角に基づき吸気バルブ9に対するカム作用角を制御する。一方、上記目標カム作用角が上記ガード用カム作用角よりも大きい値であれば、バルブオーバーラップ量がガード値以上である旨判断し、上記ガード用カム作用角を吸気バルブ9に対するカム作用角の制御に用いられる目標カム作用角として設定する。この目標カム作用角に基づき吸気バルブ9に対するカム作用角を制御する。
また、バルブオーバーラップ量が判定値未満という小さい値になる機関運転状態のときには、上記ガード値をより減少側の値となるよう設定して上記ガード処理を実施すべく、同ガード処理のための上記[4]〜[6]の手順のうち[4]及び[5]に代えて以下の[4a]及び[5a]の手順が採用される。
[4a]機関負荷を最大値未満の予め定められた値(設定値)であると仮定した条件のもとで現在の機関回転速度に基づき、吸気バルブ9と排気バルブ10との目標バルブオーバーラップ量を求める。こうして求められた目標オーバーラップ量は、上記[4]で求められたものよりも小さくなる。そして、上記目標オーバーラップ量をガード値として設定する。
[5a]機関負荷を上記設定値とした条件のもと、上記ガード値として設定された目標オーバーラップ量を実現するために必要な吸気バルブ9に対するカム作用角をガード用カム作用角として求める。すなわち、上記機関負荷の設定値、吸気バルブ9のバルブタイミングの実測値、及び排気バルブ10のバルブタイミングの実測値に基づき、図9のマップを利用して吸気バルブ9に対する目標カム作用角を求め、その求められた目標カム作用角をガード用カム作用角とする。こうして求められたガード用バルブタイミングは、上記[5a]で求められたものよりも小さい値になる。
この実施形態によれば、第1実施形態の(1)及び(2)の効果に加え、以下に示す効果が得られる。
(4)可変動弁機構には吸気バルブ9に対するカム作用角を可変とするバルブリフト量可変機構14、及び、内燃機関1のクランクシャフト7に対する吸気カムシャフト11の相対回転位相を可変とする吸気側バルブタイミング可変機構13が設けられる。そして、これらバルブリフト量可変機構14及び吸気側バルブタイミング可変機構13により、吸気バルブ9の開閉特性が可変とされる。また、バルブオーバーラップ量をガード値に抑えるための可変動弁機構の制御は、吸気バルブ9のバルブタイミングの実測値、及び、排気バルブ10のバルブタイミングの実測値に基づき、バルブリフト量可変機構14を動作させることによって実現される。従って、仮に吸気側バルブタイミング可変機構13の異常により吸気バルブ9のバルブタイミングを的確に変化させることができない状況になったとしても、バルブリフト量可変機構14の上記動作を通じて吸気バルブ9に対するカム作用角を変化させることにより、バルブオーバーラップ量をガード値に抑える可変動弁機構の制御を実現することができる。
[その他の実施形態]
なお、上記各実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。
・第1実施形態のガード処理ルーチン(図7)におけるS103の処理で否定判定がなされたとき、排気バルブ10の閉弁時期が吸気行程の開始時点よりも遅角側にあるか否かを判断し、ここで肯定判定であるときにS105に進むようにする一方、否安定であるときにはS105に進むようにしてもよい。この場合、吸気バルブ9の開弁時期が吸気行程よりも進角側にある閾値に対し遅角側の時期であり、且つ排気バルブ10の閉弁時期が吸気行程開始時よりも遅角側にあるとき、上記ガード値のより減少側の値への設定が的確に禁止される。その結果、より減少側の値に設定されたガード値によるバルブオーバーラップ量の上限ガードを通じて内燃機関1の吸気行程で吸気バルブ9が開弁しておらず且つ排気バルブ10が開弁しているという状況が生じることを的確に抑制できる。
なお、排気側バルブタイミング可変機構15によりクランクシャフト7に対する排気カムシャフト12の相対回転位相が可変とされる内燃機関1の場合、排気バルブ10の閉弁時期が吸気行程中まで遅角する可能性が高くなる。従って、より減少側の値に設定されたガード値によりバルブオーバーラップ量が上限ガードされたとき、内燃機関1の吸気行程で吸気バルブ9が開弁しておらず、且つ排気バルブ10が開弁しているという状況が生じる可能性も高くなる。しかし、上述した処理を採用すれば、こうした状況が生じないように上記ガード値のより遅角側の値への設定を的確に禁止することができる。
・第1実施形態と第2実施形態とでのバルブオーバーラップ量の制御を組み合わせて行うことも可能である。例えば、バルブリフト量可変機構14に異常が生じているときに第1実施形態でのバルブオーバーラップ量の制御を実施する一方、吸気側バルブタイミング可変機構13に異常が生じているときには第2実施形態でのバルブオーバーラップ量の制御を実施するようにしてもよい。
・第1実施形態及び第2実施形態において、バルブオーバーラップ量を制御するに当たり、排気側バルブタイミング可変機構15による排気バルブ10のバルブタイミングの調整も用いて行うようにしてもよい。
・第1実施形態及び第2実施形態において、排気バルブ10の開閉特性の可変として、排気バルブ10に対するカム作用角の可変を採用してもよい。この場合、内燃機関1の可変動弁機構に排気バルブ10用のバルブリフト量可変機構が設けられる。
1…内燃機関、2…燃焼室、3…吸気通路、4…燃料噴射弁、5…点火プラグ、6…ピストン、7…クランクシャフト、8…排気通路、9…吸気バルブ、10…排気バルブ、11…吸気カムシャフト、12…排気カムシャフト、13…吸気側バルブタイミング可変機構、14…バルブリフト量可変機構、15…排気側バルブタイミング可変機構、26…電子制御装置(設定手段、禁止手段)、27…アクセルペダル、28…アクセルポジションセンサ、29…スロットルバルブ、30…スロットルポジションセンサ、32…エアフローメータ、34…クランクポジションセンサ、35…吸気側カムポジションセンサ、36…排気側カムポジションセンサ、37…駆動量検出センサ。

Claims (5)

  1. 吸気バルブと排気バルブとのうちの少なくとも吸気バルブの開閉特性を変更する可変動弁機構が設けられる内燃機関に適用され、機関運転状態に基づき前記可変動弁機構を動作させる一方、その動作を通じて変化する前記吸気バルブと排気バルブとのバルブオーバーラップ量がガード値以上になるときには、前記バルブオーバーラップ量が前記ガード値に抑えられるよう前記可変動弁機構を制御する可変動弁機構の制御装置において、
    前記ガード値に対し前記バルブオーバーラップ量のオーバーシュートが生じる状況のもとで内燃機関の筒内での燃料の燃焼が悪化するほど前記バルブオーバーラップ量が小さくなる機関運転状態のとき、前記ガード値をより減少側の値に設定する設定手段と、
    前記吸気バルブの開弁時期が内燃機関の吸気行程よりも進角側に設定された閾値に対し更に進角側にあるときに前記設定手段による前記ガード値のより減少側の値への設定を許容する一方、前記吸気バルブの開弁時期が前記閾値よりも遅角側にあるときには前記設定手段による前記ガード値のより減少側の値への設定を禁止する禁止手段と、
    を備えることを特徴とする可変動弁機構の制御装置。
  2. 前記可変動弁機構は、前記排気バルブの開閉特性も変更するものであり、
    前記バルブオーバーラップ量を前記ガード値に抑えるための前記可変動弁機構の制御は、少なくとも前記吸気バルブの開閉特性を変更することによって実現されるものであり、
    前記禁止手段は、前記吸気バルブの開弁時期が前記閾値よりも遅角側にあり、且つ前記排気バルブの閉弁時期が内燃機関の吸気行程の開始時点よりも遅角側にあるとき、前記設定手段による前記ガード値のより減少側の値への設定を禁止する
    請求項1記載の可変動弁機構の制御装置。
  3. 前記可変動弁機構は、内燃機関のクランクシャフトに対する排気カムシャフトの相対回転位相を可変とする排気側バルブタイミング可変機構を備えており、その排気側バルブタイミング可変機構の動作を通じて前記排気バルブの開閉特性を変更する
    請求項2記載の可変動弁機構の制御装置。
  4. 前記可変動弁機構は、前記吸気バルブに対するカム作用角を可変とするバルブリフト量可変機構、及び、内燃機関のクランクシャフトに対する吸気カムシャフトの相対回転位相を可変とする吸気側バルブタイミング可変機構を備えており、
    前記バルブオーバーラップ量を前記ガード値に抑えるための前記可変動弁機構の制御は、前記吸気バルブに対するカム作用角の実測値、及び、前記クランクシャフトに対する排気カムシャフトの相対回転位相の実測値に基づき、前記吸気側バルブタイミング可変機構を動作させることによって実現される
    請求項3記載の可変動弁機構の制御装置。
  5. 前記可変動弁機構は、前記吸気バルブに対するカム作用角を可変とするバルブリフト量可変機構、及び、内燃機関のクランクシャフトに対する吸気カムシャフトの相対回転位相を可変とする吸気側バルブタイミング可変機構を備えており、
    前記バルブオーバーラップ量を前記ガード値に抑えるための前記可変動弁機構の制御は、前記クランクシャフトに対する吸気カムシャフトの相対回転位相の実測値、及び、前記クランクシャフトに対する排気カムシャフトの相対回転位相の実測値に基づき、前記バルブリフト量可変機構を動作させることによって実現される
    請求項3記載の可変動弁機構の制御装置。
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