以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
先ず、図1〜3に、本発明に従う構造とされたコンタクトレンズ10を示す。コンタクトレンズ10は、全体として略球冠形状を有しており、良く知られているように、眼球における角膜の表面に重ねて装用されることによって使用されるようになっている。そして、本実施形態のコンタクトレンズ10は、レンズ外形の中心軸であるレンズ幾何中心軸12を通って互いに直交する鉛直径方向線14および水平径方向線16が、装用状態において鉛直方向および水平方向とされる。なお、以下の説明において、図1中の水平径方向右方を鼻側(θ=0,360)として表す。さらに、ここからレンズ幾何中心軸12回りにそれぞれ90度、180度、270度だけ左方向に回転させた方向、即ち、鉛直径方向上方、水平径方向左方、鉛直径方向下方をそれぞれ、上側(θ=90)、耳側(θ=180)、下側(θ=270)として表す。
なお、本実施形態のコンタクトレンズ10は、ソフトタイプおよびハードタイプの何れのコンタクトレンズであっても良い。その材質も限定されるものでなく、例えばソフトタイプのコンタクトレンズとしては、従来から公知のPHEMA(ポリヒドロキシエチルメタクリレート)やPVP(ポリビニルピロリドン)等の含水性材料の他、アクリルゴムやシリコーン等の非含水性材料等も採用可能である。また、ハードコンタクトレンズとしては、PMMA(ポリメチルメタアクリレート)やSiMA/MMAポリマー等のガス透過性レンズ(RGPレンズ)等の材料が採用され得る。
より詳細には、本実施形態のコンタクトレンズ10は、図1に示された正面視において円形状とされており、図2〜3に示されているように、略凸状球冠面とされたレンズ前面18と、略凹状球冠面とされたレンズ後面20を有している。
また、かかるコンタクトレンズ10は、構造上、中央部分において正面視で略円形に広がる光学部22と、光学部22の周囲を取り囲むようにして正面視で略円環形状に広がる周辺部24と、周辺部24の周囲でレンズ最外周縁部に位置してレンズ前後面を接続するエッジ部26とによって構成されている。
光学部22は、要求される視力矯正機能等の光学特性として、例えば単一焦点や二以上の多焦点のレンズ度数を実現するように、レンズ前面18とレンズ後面20に対して適切な曲率半径の球面や非球面をベースとした光学面形状が与えられる。かかる光学部22は光学特性が周方向で特定の方向性を有していても良く、例えば、球面レンズ度数を有する近視や遠視の矯正用の光学特性の他、円柱レンズ度数を有する乱視矯正用の光学特性を有していても良い。または、複数のレンズ度数を有する老視矯正用のバイフォーカルレンズやマルチフォーカルレンズ、或いは焦点が連続的に変化するようなプログレッシブレンズ等の光学特性などであっても良い。
具体的に例示すると、光学部22のレンズ前面18とレンズ後面20の一方の面が角膜曲率半径等を考慮した曲率半径の球冠面形状とされると共に、他方の面が必要とされるレンズ度数を与える曲率半径の球冠面形状とされる。また、それらレンズ前後面18,20の一方において、必要に応じて特定の径方向軸をもつトーリック面が付加される。
なお、本実施形態における光学部22は、光学部22の幾何中心軸がレンズ幾何中心軸12と等しくされていると共に、光学部22の厚さ寸法がレンズ幾何中心軸12に関する対称位置において略等しくされていることによって、光学部22の重心位置が光学部22の幾何中心軸上に位置せしめられるようにされている。即ち、本実施形態では、コンタクトレンズ10の光学部22には、重心を下方に偏倚させて周方向位置を安定させる目的でのプリズムが設定されていない。
一方、周辺部24は、装用状態で人眼の角膜から更に外周側に広がって結膜までも覆う外径寸法と径方向幅寸法をもって、図1に示される正面視において円環帯状で形成されている。好適には、周辺部24について、内径寸法:φPa、外径寸法:φPbおよび径方向幅寸法:Bpが、それぞれ、下式で表される範囲内に設定される。
6mm≦φPa≦10mm
10mm≦φPb≦18mm
1mm≦Bp≦5mm
蓋し、周辺部24の内径寸法:φPaが6mmに満たないと、光学部22に充分な領域面積を設定し難くなり、一方、周辺部24の内径寸法:φPaが10mmを超えると、周辺部24に充分な径方向幅寸法を設定し難くなる。また、周辺部24の外径寸法:φPbが10mmに満たないと、周辺部24に充分な径方向幅寸法を設定し難くなると共に、装用状態で人眼の結膜を充分な面積で安定して覆うことが難しくなり、一方、周辺部24の外径寸法:φPbが18mmを超えると、人眼への装用に支障が発生したり眼瞼への過干渉が問題となるおそれがある。更にまた、周辺部24の径方向幅寸法:Bpが1mmに満たないと、装用状態で人眼の結膜を充分な面積で安定して覆うことが難しくなり、一方、周辺部24の径方向幅寸法:Bpが5mmを超えると、光学部22に充分な領域面積を設定し難くなったり、レンズ外径が過大となって装用への支障が発生する等の問題が発生し易い。
なお、本実施形態では、周辺部24の内周縁部において、レンズ前面18およびレンズ後面20の両方で、光学部22の外周端縁に対して径方向で滑らかに繋がる移行領域28が形成されている。本発明では、このような移行領域28は必須でないが、移行領域28を設けて、光学部22と周辺部24とをレンズ径方向で折れ点をもたないで滑らかに繋がる表面形状をもって接続することにより、装用感の更なる向上が図られ得る。
ところで、周辺部24は、コンタクトレンズ10の光学特性に影響を与えるものではないことから、その形状を、要求される光学特性による拘束を受けることなく設定することが出来る。そして、周辺部24のレンズ前面18およびレンズ後面20は、コンタクトレンズ10に対して装用時の位置安定性や装用感が良好に発揮されるように、形状設定されている。
先ず、レンズ径方向断面における周辺部24のレンズ前後面18,20の形状としては、装用時の角膜へのフィッティングや涙液交換性能等の他、設計および製作の作業性等を考慮すると、例えば円弧形状の他、二次曲線形状や円錐曲線形状等が、好適に採用される。なお、一層良好な装用感を実現するために、周辺部24は、その内周側において上述の移行領域28を設けることにより光学部22に対して折れ点のない滑らかな表面形状で接続されることが望ましい。また、周辺部24の外周縁部においても、エッジ部26に対して、レンズ前後面18,20が、何れも、折れ点のない滑らかな形状で接続されることが望ましい。
次に、レンズ周方向断面における周辺部24のレンズ後面20は、そのリフト量が周方向で変化せしめられるように形状設定されている。
具体的には、周辺部24のレンズ後面20は、図2の鉛直径方向断面と図3の水平径方向断面とを重ね合わせて示す図4およびその要部を拡大して示す図5から明らかなように、レンズ幾何中心軸12回りの同一円周上に位置する同一の径方向位置であっても、周方向位置に応じて、レンズ幾何中心軸12方向での位置が異ならされている。
ここにおいて、径方向断面におけるこのレンズ後面20の位置を、光学部22におけるレンズ後面20の延長面等の基準面に対するレンズ幾何中心軸12方向でのずれ量で表したものがリフト量とされる。本実施形態では、理解し易いように、周辺部24のレンズ後面20において、レンズ幾何中心軸12方向で最も後面側(図5中の下側)に位置する面を基準面20aとし、周辺部24の径方向中間部分におけるレンズ後面20のレンズ幾何中心軸12方向での該基準面20aに対する相対的な位置ずれ量を、リフト量:Δx(図5参照)とする。
また、かかるリフト量:Δxを周方向で異ならせることに伴って、レンズ後面20の径方向断面形状も、周方向で異ならせても良い。例えば、レンズ後面20の径方向断面形状を全周に亘って同一としつつ、リフト量:Δxを周方向で変化させるとレンズ後面20の傾きが変化してエッジリフト量(エッジ部26のレンズ幾何中心軸12方向の位置)も異なる。従って、エッジ部26のレンズ幾何中心軸12方向の位置を一定に保ちつつ、レンズ後面20のリフト量:Δxを周方向で変化させるには、レンズ後面20の径方向における曲率半径等の断面形状を変化させることが必要となる。
具体的には、周辺部24のレンズ後面20に関し、例えばレンズ幾何中心軸12回りにおける10度毎等の複数箇所で、それぞれ、リフト量:Δxとそれを実現する径方向断面形状を設定すると共に、それら複数箇所の周方向間では、線形補完や多項式補完、スプライン補完などの補完法で径方向断面形状を設定することができる。なお、リフト量:Δxの周方向変化は特に限定されるものではなく、例えば任意の有理関数で設定することができる。
そして、前述のように、周辺部24は人眼の結膜を覆うように広がって延びている。即ち、コンタクトレンズ10の装用の際には、結膜の表面に周辺部24におけるレンズ後面20が涙液等を介して当接することとなる。ここで、図6(a)〜(c)には、一般的な角膜、結膜の表面形状の周方向変化、即ち角膜の中心に対して、レンズ幾何中心軸12方向に対応する眼光学系の光軸方向における角膜の周辺領域の深さが示されている。図6(a)は人眼の写真であり、表面形状の測定の際における測定点が示されている。かかる測定では、角膜の中心から半径r=1,2,3,4,5,6,7mmの7つの同心円において、それぞれθ=0,360(鼻)、45(鼻上)、90(上)、135(耳上)、180(耳)、225(耳下)、270(下)、315(鼻下)の8点について測定した。なお、測定には株式会社トーメーコーポレーション製「前眼部OCT SS−1100」を使用した。
図6(b),(c)には、かかる測定の結果である、角膜の中心を0としたときの各点の光軸方向における深さが示されている。なお、これらの値は、サンプル数N=141個の人眼の値の平均値である。ここで、角膜の半径rの平均値はr=5.75mmであったため、r=1〜5mmが角膜の形状を示しており、r=6,7mmが角膜の外周側である結膜の形状を示している。図6(b)のグラフから明らかであるように、r=1〜5mmの各点では半径rが大きくなるにつれて、周上の各点の深さが略同様に大きくなっており、従って、人眼の角膜の領域は曲率が略一定の球面形状となっている。一方、r=6,7mmにおける各点を比較すると、耳側(θ=180)〜下側(θ=270)に比べて、鼻側(θ=0,360)において深さが小さくなっている。従って、人眼の結膜の領域では曲率が一定ではなく、非球面形状となっている。
図7および後述する図20,34には、測定を行った141眼のうち、結膜の形状が特徴的な3眼が示されている。特に、図7(a),(b)に示される結膜の形状は、鼻側(θ=0,360)および耳側(θ=180)において深さが小さくなっている一方、上側(θ=90)および下側(θ=270)において深さが大きくされている。なお、図7(b)は、角膜中心から半径r=6.0mmの周上のθ=0,360(鼻)、45(鼻上)、90(上)、135(耳上)、180(耳)、225(耳下)、270(下)、315(鼻下)の各点における、角膜中心に対する深さの具体的な数値を示している。例えば、鼻側(θ=0,360)において深さが−2.53mmとされているが、これは角膜中心に対して結膜の鼻側が眼光学系の光線入射方向奥側に2.53mmだけ離隔していることを表している。そして、これら図7(b)の値をグラフにしたものが図7(a)である。
本実施形態では、図7のような結膜の形状を考慮して、図8のような周方向リフト量:Δxが周辺部24のレンズ後面20に設定されている。即ち、角膜中心に対する深さが大きくなっている上側(θ=90)および下側(θ=270)が、レンズ幾何中心軸12方向において最も後面(基準面20a)とされており、要するにリフト量:Δxが0とされている。一方、角膜中心に対する深さが小さくなっている鼻側(θ=0,360)および耳側(θ=180)においては、所定のリフト量:Δxが設定されている。これにより、レンズ後面20を人眼の結膜の表面形状に対応した形状とすることが出来る。
ここにおいて、図8に示されているように、本実施形態のリフト量:Δxは周上で異ならされており、この周方向変化は略sin波形状とされている。具体的には、鼻側(θ=0,360)および耳側(θ=180)でリフト量:Δxが最大とされている一方、上側(θ=90)および下側(θ=270)でリフト量:Δxが0とされている。このことから明らかなように、周辺部24のレンズ後面20は、鉛直径方向線14および水平径方向線16に関して線対称形状とされている。
なお、リフト量:Δxの大きさは、コンタクトレンズ使用者個人の結膜形状に対応する形状とされても良いし、複数の人眼の平均値から求められても良い。また、レンズの材料に基づくレンズの曲げ剛性や、或いはコンタクトレンズの加工条件等から求められても良い。さらに、コンタクトレンズ10のレンズ幾何中心軸12を中心として、直径φ11mmの位置におけるΔxの最大値が、0.03≦Δx≦0.45mmの範囲となるように設定されることが好ましい。より好適には、Δxの最大値が、0.05≦Δx≦0.35mmの範囲となるように設定される。蓋し、Δxの最大値が0.03mmに満たないと、周辺部24におけるレンズ後面20の形状が結膜の表面形状に沿い難く、後述する装用感の向上効果が十分に発揮されないおそれがある。また、Δxの最大値が0.45mmを超えると、周辺部24が浮き上がり、コンタクトレンズ10と結膜の間に気泡が入り込むおそれがある。
一方、図1〜5に示されるように、コンタクトレンズ10の周辺部24におけるレンズ前面18には、厚さ変化を周方向に付すことによりコンタクトレンズ10を装用状態で周方向に位置決めする、薄肉部30と厚肉部32と、それらの間に位置する変化領域34が設けられている。これら薄肉部30、厚肉部32、変化領域34はそれぞれ、レンズ幾何中心軸12を中心に所定の角度で周方向に延びていると共に、それぞれ異なった周辺部レンズ厚さ:tを有している。なお、周辺部レンズ厚さ:tとは、周辺部24における径方向中間部分の法線方向においてのレンズ前面18とレンズ後面20の離隔距離を表している。具体的には、薄肉部30のレンズ厚さをTa、厚肉部32のレンズ厚さをTbとすると、Ta<Tbであり、変化領域34は、薄肉部30と厚肉部32との間を、折れ点を持たずに滑らかに接続している。なお、図4は、図2および図3の各断面図をレンズ幾何中心軸12を一致させて重ね合わせた図であり、図5は図4の要部拡大図である。また、図5において、実線が薄肉部30を、二点鎖線が厚肉部32を表している。
この周辺部レンズ厚さ:tは、コンタクトレンズ使用者個人の眼瞼形状や眼瞼の厚さまたは圧力を考慮して設定することも出来るが、複数の人眼の眼瞼形状や眼瞼の厚さまたは圧力の平均値から求めても良い。また、周辺部レンズ厚さ:tの設定に際しては、レンズの形状に基づくレンズの重心位置や、レンズの材料に基づくレンズの曲げ剛性を、併せて考慮しても良い。更に具体的には、薄肉部30のレンズ厚さ:Ta(図5参照)の最大値は、好ましくは0.04≦Ta≦0.2mmの範囲内に設定されて、更に好ましくは0.06≦Ta≦0.15mmとされる。また、厚肉部32のレンズ厚さ:Tb(図5参照)の最大値は、好ましくは0.2≦Tb≦0.5mmの範囲内に設定されて、更に好ましくは0.25≦Tb≦0.4mmとされる。さらに、薄肉部30と厚肉部32のレンズ厚さの差:Tb−Taは、好ましくは0.1≦(Tb−Ta)≦0.4mmの範囲内に設定されて、更に好ましくは0.15≦(Tb−Ta)≦0.3mmとされる。
蓋し、薄肉部30のレンズ厚さ:Taの最大値が0.04mmに満たないと、コンタクトレンズ10の薄肉部30における強度が不十分となり、しわが発生したり、コンタクトレンズ10が破損したりするおそれがある。また、薄肉部30のレンズ厚さ:Taの最大値が0.2mmを超えると、厚肉部32との差が不十分となり、後述する周方向位置決め効果が十分に発揮されないおそれがある。同様に、厚肉部32のレンズ厚さ:Tbの最大値が0.2mmに満たないと、薄肉部30との差が不十分となり、後述する周方向位置決め効果が十分に発揮されないおそれがある。また、厚肉部32のレンズ厚さ:Tbの最大値が0.5mmを超えると、コンタクトレンズ10の装用感の悪化や酸素透過率の低下が惹起されるおそれがある。さらに、薄肉部30と厚肉部32のレンズ厚さの差:Tb−Taが0.1mmに満たないと、薄肉部30と厚肉部32の厚さの差が不十分となり、後述する周方向位置決め効果が十分に発揮されないおそれがある。一方、薄肉部30と厚肉部32のレンズ厚さの差:Tb−Taが0.4mmを超えると、薄肉部30と厚肉部32の間の変化領域34における変化が急峻なものとなり、コンタクトレンズ10の装用感が悪化するおそれがある。
特に、本実施形態のコンタクトレンズ10は、図1等に表されるように、鉛直径方向線14上で対向位置する上側(θ=90)および下側(θ=270)の所定領域に一対の薄肉部30,30が形成されている、いわゆるダブルシン構造とされている。それと共に、水平径方向線16上で対向位置する鼻側(θ=0,360)および耳側(θ=180)の所定領域には、一対の厚肉部32,32が形成されている。これらの薄肉部30,30はそれぞれ水平径方向線16を挟んで線対称形状とされており、鉛直径方向線14を跨いで周方向の左右両側に延び出している。また、厚肉部32,32はそれぞれ鉛直径方向線14を挟んで線対称形状とされており、水平径方向線16を跨いで周方向の上下両側に延び出している。
図9には、本実施形態におけるコンタクトレンズ10のレンズ幾何中心軸12回りの角度:θをθ=0からθ=360まで変化させた時の、周辺部24の径方向中央部分における、レンズ前面18と基準面20aとの対向面間距離およびレンズ後面20と基準面20aとの対向面間距離、さらにこれらの差である周辺部レンズ厚さ:tの変化が示されている。なお、図9中においては、実線でレンズ前面18の周方向厚さ変化が、一点鎖線でレンズ後面20の周方向厚さ変化が示されており、破線でこれらの差である周辺部レンズ厚さ:tが示されている。この図9から明らかなように、本実施形態では、一対の薄肉部30,30は、鉛直径方向線14から周方向で左右両側に同じ寸法(角度)で延び出しており、鉛直径方向線14に対しても線対称形状とされている。さらに、一対の厚肉部32,32は、水平径方向線16から周方向で上下両側に同じ寸法(角度)で延び出しており、水平径方向線16に対しても線対称形状とされている。
さらに、図9から明らかなように、一対の薄肉部30,30と一対の厚肉部32,32の間に位置する各変化領域34の形状も、鉛直径方向線14および水平径方向線16に対して線対称形状とされている。これにより、コンタクトレンズ10の周辺部24におけるレンズ前面18が、鉛直径方向線14および水平径方向線16に対して線対称形状とされていると共に、前述のように、周辺部24におけるレンズ後面20も鉛直径方向線14および水平径方向線16に対して線対称形状とされている。このことから、コンタクトレンズ10の周辺部24が鉛直径方向線14および水平径方向線16に対して線対称形状とされている。
また、図2および図3に示されているように、本実施形態では、薄肉部30と厚肉部32の何れにおいても、径方向断面形状では、レンズ前面18が全体として円弧状の略湾曲凸面とされていると共に、レンズ後面20が全体として円弧状の略湾曲凹面とされている。なお、径方向の曲率変化によって、周辺部24のレンズ前面18には部分的に凹部が、レンズ後面20には部分的に凸部が設けられていても良い。
さらに、本実施形態では、図9に示されているように、薄肉部30と厚肉部32におけるレンズ前面18では、それぞれの領域に対応するレンズ後面20の厚さ変化と略同様な厚さ変化が付されている。これにより、薄肉部30および厚肉部32では、周辺部レンズ厚さ:t(薄肉部30においてはTa、厚肉部32においてはTb)が一定とされている。
更にまた、図9に示されるように、一対の薄肉部30,30と一対の厚肉部32,32の間に位置する各変化領域34では、それぞれにおけるレンズ後面20の単位角度当たりの周方向変化率に比べて、レンズ前面18の単位角度当たりの周方向変化率が著しく大きくされている。これにより、各変化領域34では、レンズ前面18の単位角度当たりの周方向変化率が、各変化領域34全体の単位角度当たりの周方向変化率((Tb−Ta)/角度)を超えるものとされている。
このような形状とされている薄肉部30と厚肉部32のそれぞれは、レンズ幾何中心軸12回りにそれぞれ所定の角度θa 、θb (図1参照)で周方向に延びている。これらθa 、θb はそれぞれ、0度≦θa ≦80度、および0度≦θb ≦80度の範囲内に設定されることが望ましく、より好適には、30度≦θa ≦60度、および30度≦θb ≦60度とされる。また、薄肉部30と厚肉部32との間に設けられた変化領域34は、レンズ幾何中心軸12回りに所定の角度θa-b (図1参照)で延びており、20度≦θa-b ≦90度の範囲内とされることが望ましく、より好適には、30度≦θa-b ≦60度とされる。このように、θa 、θb 、θa-b の角度範囲を好適なものとすることにより、装用時における周方向位置の安定性の向上や装用感の更なる向上が図られ得る。なお、本発明においては、薄肉部30と厚肉部32のそれぞれのレンズ前面18は、周方向において、必ずしも一定の厚さである必要はなく、周方向において厚さが変化していても良い。
更にまた、変化領域34におけるレンズ前面18の具体的な傾斜角度や形状は、限定されるものでないが、変化領域34のレンズ前面18における周方向での傾斜角度の態様は適切な関数で表されることが望ましい。具体的には、一次関数で一定の傾斜角度をもって形成される他、例えば薄肉部30や厚肉部32に対して滑らかに接続されるスプライン関数や、sin、sin2 等の三角関数等をもって形成されていても良い。なお、図9に示されるように、本実施形態の変化領域34は一次関数により表されている。また、本実施形態の各変化領域34は鉛直径方向線14および水平径方向線16に対して線対称形状とされており、これにより、周辺部24も鉛直径方向線14および水平径方向線16に対して線対称形状とされているが、本発明においては必ずしも各変化領域34が線対称形状とされる必要はない。即ち、後述の実施形態のように、各変化領域34におけるレンズ前面18およびレンズ後面20のそれぞれの形状を異ならせても良い。
このような構造とされた周辺部24を有するコンタクトレンズ10は、適当な材料で予め重合成形されたブロックを直接に切削加工することで形成することも可能であるが、良好な量産性と優れた品質安定性の実現には、モールド成形によって製造することが望ましい。
具体的には、一般に、図10に示すように、レンズ後面20に対応した略球状凸面形状の成形面36を有する雄型38と、レンズ前面18に対応した略球状凹面形状の成形面40を有する雌型42とを用い、それら雌雄両型42,38を相互に型合わせすることによってそれぞれの成形面40,36間に画成された略密閉状の成形キャビティ44内で、所定の重合用モノマーを重合成形することによって、目的とするレンズ前後面18,20を備えたコンタクトレンズ10を製造する成形方法が、好適に採用される。
ここにおいて、雌雄両型42,38のそれぞれ成形面40,36は、目的とする形状の光学部22と周辺部24を与える成形面を備えており、それによって、製造されるコンタクトレンズ10において、所定の球面レンズ特性と円柱レンズ特性とを併せ備えた光学部22が形成されると共に、前述の如き所定の厚さ寸法の周方向変化が付された周辺部24が形成されるようになっている。その際、先ず、図8に示されるように、結膜の表面形状に応じてレンズ後面20の周方向形状、即ちリフト量:Δxの周方向形状を設計する。続いて、周辺部24のレンズ前面18において、薄肉部30、厚肉部32、変化領域34のそれぞれの周方向形状、即ち周辺部レンズ厚さ:tを設計する。これらの周方向形状と、レンズ材料や酸素透過率に基づくコンタクトレンズ10の全体の厚さ等を併せて考慮して、リフト量:Δxおよび周辺部レンズ厚さ:tの各寸法を設定する。これにより、周辺部24のレンズ前後面18,20の形状が決定されて、これらの形状をもってコンタクトレンズ10が製造される。なお、周辺部24のレンズ前後面18,20には、互いに対応する位置に所定の傾斜面等が付されていることから、雌雄両型42,38には相互に係止等される周方向の相対位置合わせ手段が設けられる。
このような形状とされたコンタクトレンズ10は、図11に示されるように、人眼46の角膜から結膜の表面を覆うように装用される。従来のソフトコンタクトレンズでは、光学部22の周囲の周辺部24が結膜まで覆うサイズとされていても、レンズ後面20が結膜表面に対応する形状とされていなかった。そのため、結膜の鼻側が相対的に***している人眼に従来のソフトコンタクトレンズを装用すると、この相対的に***している部分にコンタクトレンズの当接力が集中して作用し易く、この部分が圧迫されて装用感を悪化させるおそれがあった。本実施形態のコンタクトレンズ10の周辺部24におけるレンズ後面20では、鼻側(θ=0,360)におけるリフト量:Δxが大きくされていることにより、結膜において相対的に***している部分への局所的な当接が回避されて、従来のコンタクトレンズでは集中し易かった当接力を分散させることが出来る。これにより、装用感を悪化させる結膜の圧迫を軽減または回避することが出来て、装用感の向上が図られ得る。
また、本実施形態のコンタクトレンズ10の周辺部24は、鉛直径方向線14および水平径方向線16に対して線対称形状とされている。これにより、コンタクトレンズ使用者が上下方向および左右方向を判別して装用するという手間を必要としない。さらに、このように線対称形状とされることにより、コンタクトレンズ10の種類を少なくすることが出来て、コンタクトレンズ10の製造や管理、ストック、装用において、コンタクトレンズのメーカーや販売者、使用者の労力負担を大幅に軽減させることが出来る。
なお、図6(b)等から明らかなように、平均的な人眼の結膜の形状は、耳側(θ=180)から下側(θ=270)(特に耳下(θ=225))で深さが大きくなっており、図8におけるΔx=0がこの位置に設定されることがより好適である。しかしながら、前述のように、鼻側(θ=0,360)でΔxが最大となるように設定されること、および周辺部24が鉛直径方向線14および水平径方向線16に対して線対称形状とされることを考慮して、本実施形態では、鼻側(θ=0,360)および耳側(θ=180)でΔxが最大、上側(θ=90)および下側(θ=270)でΔxが0となる形状を採用している。
さらに、本実施形態のコンタクトレンズ10の装用状態では、左右両側に一対の厚肉部32,32が位置していると共に、上下両側に一対の薄肉部30,30が位置している。そして、これら左右両側に位置する一対の厚肉部32,32のマス釣り合い作用によって、コンタクトレンズ10における周方向の位置決めが実現される。また、瞬目や眼瞼下への食い込みに伴って、コンタクトレンズ10の変化領域34や厚肉部32,32に及ぼされる眼瞼圧や眼瞼からの押出し作用(レンズの滑り出し作用)も、コンタクトレンズ10に対して、所期の周方向位置(水平径方向線16が水平状態に位置せしめられた、図11に示す位置)への安定化作用が発揮される。特に本実施形態では、一対の厚肉部32,32がコンタクトレンズ10の左右に形成されていることから、瞬目に際して及ぼされる下方への押し出し力を、コンタクトレンズ10のレンズ幾何中心軸12から離れた左右それぞれに及ぼすことが出来て、左右の押し出し力の釣り合いによっても優れた周方向安定性が発揮され得る。また、各変化領域34におけるレンズ前面18の単位角度当たりの周方向変化率が各変化領域34全体の単位角度当たりの周方向変化率((Tb−Ta)/角度)を超えるものとされることにより、周辺部レンズ厚さ:tを増やさずとも、更なる眼瞼による押出し作用が発揮されて、周方向安定性が向上され得る。更に、周辺部レンズ厚さ:tが増加することがないことから、コンタクトレンズ10の酸素透過性も損なわれることがない。
以上、本発明の第一の実施形態について詳述してきたが、これはあくまでも例示であって、本発明は、かかる実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものではない。
次に、図12〜15には、本発明の第二の実施形態としてのコンタクトレンズ48が示されている。なお、以下の説明において、前記第一の実施形態と同一の部位に対して同一の符号を付すことにより詳細な説明を省略する。また、本実施形態のコンタクトレンズ48の正面図は前記第一の実施形態のコンタクトレンズ10の正面図(図1)と実質的に同一であるから省略する。さらに、本実施形態における図12〜15は、それぞれ前記第一の実施形態における図2〜5に対応するものである。
本実施形態のコンタクトレンズ48は、前記第一の実施形態のコンタクトレンズ10のエッジ部26において、周方向でレンズ幾何中心軸12方向の位置を異ならせたものである。即ち、本実施形態のコンタクトレンズ48はエッジ部26において、エッジリフトを採用している。特に、本実施形態のコンタクトレンズ48では、図13等に示されるように、鼻側(θ=0,360)および耳側(θ=180)のエッジ部26、要するにコンタクトレンズ48の周辺部24における一対の厚肉部32,32から続いて延びるエッジ部26にエッジリフトが設定されている。一方、図12等に示されるように、上側(θ=90)および下側(θ=270)のエッジ部26、要するに周辺部24における一対の薄肉部30,30から続いて延びるエッジ部26の位置は前記第一の実施形態と同一とされている。その結果、図14,15に示されるように、本実施形態のコンタクトレンズ48のエッジ部26は、周方向で所定のエッジリフト量:Δy(図15参照)だけ変化している。即ち、エッジリフト量:Δyとは、エッジ部26において、レンズ幾何中心軸12方向で最も後面側(図15中の下方)を基準位置としたときの変化量である。特に、本実施形態の周方向のエッジリフト量:Δyの変化形状は、周方向のリフト量:Δxの変化形状(本実施形態の周方向のリフト量変化は、前記第一の実施形態に準ずるものであり、従って図8の形状)に対応している。
また、エッジリフトが設定されている鼻側(θ=0,360)および耳側(θ=180)と、エッジリフトが設定されていない上側(θ=90)および下側(θ=270)との間のエッジ部26、要するに周辺部24における各変化領域34から続いて延びる各エッジ部26は、位置の異なる周方向両端を、折れ点を形成せずに滑らかに接続している。特に、本実施形態においては、各変化領域34から続いて延びる各エッジ部26は鉛直径方向線14および水平径方向線16に対して線対称形状とされている。これにより、本実施形態のコンタクトレンズ48の周辺部24は、鉛直径方向線14および水平径方向線16に対して線対称形状とされている。
なお、直径φ14mmの位置におけるΔyの最大値は、好ましくは0.05≦Δy≦0.7mmに設定されて、より好ましくは0.3≦Δy≦0.6mmとされる。蓋し、前記第一の実施形態におけるリフト量:Δxと同様に、Δyの最大値が0.05mmに満たないと、周辺部24におけるレンズ後面20の形状が結膜の表面形状に沿い難く、装用感の向上効果が十分に発揮されないおそれがある。また、Δyの最大値が0.7mmを超えると、涙液等により周辺部24が浮き上がり、コンタクトレンズ48と結膜の間に気泡が入り込むおそれがある。
このような形状とされた本実施形態のコンタクトレンズ48は、鼻側(θ=0,360)にエッジリフトが設定されているため、前記第一の実施形態のコンタクトレンズ10に比べて、鼻側が相対的に***している人眼の結膜の表面形状に更に対応した形状とされ得る。このことから、本実施形態のコンタクトレンズ48は前記第一の実施形態のコンタクトレンズ10に比べて、結膜の圧迫がより軽減され得て、更なる装用感の向上を図ることが出来る。
また、前記第一の実施形態と同様に、一対の薄肉部30,30が装用状態で上下方向に形成されると共に、一対の厚肉部32,32が装用状態で左右方向に形成されていることから、前記第一の実施形態と同様に周方向の安定効果が発揮される。さらに、前述のように、本実施形態のコンタクトレンズ48の周辺部24は前記第一の実施形態と同様に、鉛直径方向線14および水平径方向線16に対して線対称形状とされていることから、前記第一の実施形態と同様にコンタクトレンズ48の製造や管理、ストック、装用における労力負担の軽減効果が発揮され得る。
なお、本実施形態において、エッジ部26は鉛直径方向線14および水平径方向線16に対して線対称形状とされているが、本発明においては必ずしもその必要はない。
次に、図16〜19には、本発明の第三の実施形態としてのコンタクトレンズ50が示されている。なお、本実施形態における図16〜19は、それぞれ前記第一の実施形態における図1〜3、および図5に対応するものである。
本実施形態のコンタクトレンズ50では、前記第一の実施形態とは異なり、耳側(θ=180)のリフト量:Δxが0とされている。要するに、鼻側(θ=0,360)のレンズ後面20において所定のリフト量:Δxが最大値として設定されている一方、上側(θ=90)の薄肉部30、耳上側(θ=135)の変化領域34、耳側(θ=180)の厚肉部32a、耳下側(θ=225)の変化領域34、下側(θ=270)の薄肉部30におけるレンズ後面20において、リフト量:Δxが最小値の0とされている。
ここで、図19に示されるように、本実施形態の周辺部24におけるレンズ前面18には、それぞれ鼻側(θ=0,360)と耳側(θ=180)に同じ周辺部レンズ厚さ:t(Tb)を有する厚肉部32,32aが設けられているが、鼻側(θ=0,360)と耳側(θ=180)においてレンズ後面20の位置が異なるため、それぞれのレンズ前面18の位置が異なっている。なお、図19の周辺部24においては、実線が薄肉部30、一点鎖線が鼻側(θ=0,360)の厚肉部32、二点鎖線が耳側(θ=180)の厚肉部32aを示している。ここで、両厚肉部32,32aのそれぞれのレンズ後面20は重なって示されるため、これらのレンズ後面20は一点鎖線で示している。そして、鼻側(θ=0,360)の厚肉部32の周方向両側における変化領域34,34(鼻上側および鼻下側(それぞれθ=45,315))が、水平径方向線16に対して線対称形状とされている。このため、本実施形態のコンタクトレンズ50の周辺部24は、水平径方向線16に対して線対称形状とされている一方、鉛直径方向線14に対しては非対称形状とされている。
さらに、図20(a),(b)には、前記第一の実施形態の図7に示された結膜とは別の特徴を有する結膜の形状が示されている。即ち、結膜の鼻側(θ=0,360)で角膜中心に対する深さが小さくなっている一方、上側(θ=90)から下側(θ=270)で角膜中心に対する深さが大きくなっている。なお、図20(b)は、角膜中心から半径r=6.0mmの周上の各点における、角膜中心に対する深さの具体的な数値を示している。そして、これら図20(b)の値をグラフにしたものが図20(a)である。
本実施形態では、図20のような結膜の形状を考慮して、図21のような周方向リフト量:Δxが周辺部24のレンズ後面20に設定されている。即ち、角膜中心に対する深さが大きくなっている上側(θ=90)から下側(θ=270)が、レンズ幾何中心軸12方向において最も後面(基準面20a)とされており、要するにリフト量:Δxが0とされる。一方、角膜中心に対する深さが小さくなっている鼻側(θ=0,360)においては、所定のリフト量:Δxが設定されている。
このような形状とされた本実施形態のコンタクトレンズ50では、前記第一の実施形態に比べて、周辺部24におけるレンズ後面20の形状が、図6(b)等に示される平均的な結膜の表面形状に更に対応したものとされている。即ち、図6(b)に示されるように、平均的な人眼の結膜は耳側(θ=180)から下側(θ=270)にかけて深さが大きくなっている一方、鼻側(θ=0,360)で相対的に***している形状となっている。これに対して、前記第一の実施形態のコンタクトレンズ10では鼻側(θ=0,360)のレンズ後面20において、所定のリフト量:Δxが設定されて結膜の鼻側における圧迫を回避している一方、対称性を考慮に入れて、耳側(θ=180)のレンズ後面20にも所定のリフト量:Δxが設定されていた。ここにおいて、本実施形態のコンタクトレンズ50においては、鼻側(θ=0,360)のレンズ後面20では第一の実施形態と同様に所定のリフト量:Δxを設定する一方、少なくとも上側(θ=90)から下側(θ=270)にかけて、レンズ後面20のリフト量:Δxを0、即ち同一面とすることにより、周辺部24のレンズ後面20が更に結膜表面に対応した形状とされている。
このことから、本実施形態のコンタクトレンズ50は、前記第一の実施形態のコンタクトレンズ10に比べて、装用感の向上が図られ得る。また、前記第一の実施形態と同様に、装用状態において上下方向に一対の薄肉部30,30が、左右方向に一対の厚肉部32,32aが設けられていることから、前記第一の実施形態と同様に周方向の安定性が図られ得る。なお、前述のように、一対の厚肉部32,32aのレンズ前面18の位置が異ならされているが、周方向安定性の効果は十分に発揮される。このように、本発明においては、一対の薄肉部30,30、或いは一対の厚肉部32,32におけるそれぞれレンズ前面18の位置は必ずしも同じでなくても良い。
次に、図22〜24には、本発明の第四の実施形態としてのコンタクトレンズ52が示されている。なお、本実施形態のコンタクトレンズ52の正面図は前記第三の実施形態のコンタクトレンズ50の正面図(図16)と実質的に同一であるから省略する。また、本実施形態における図22〜24は、それぞれ前記第三の実施形態における図17〜19に対応するものである。さらに、図24の周辺部24においては、実線が薄肉部30、一点鎖線が鼻側(θ=0,360)の厚肉部32、二点鎖線が耳側(θ=180)の厚肉部32aを示している。ここで、薄肉部30と厚肉部32aのそれぞれのレンズ後面20は重なって示されるため、これらのレンズ後面20は実線で示している。
本実施形態のコンタクトレンズ52は、前記第三の実施形態のコンタクトレンズ50にエッジリフトを採用したものである。本実施形態におけるエッジリフトは、鼻側(θ=0,360)のエッジ部26、要するにコンタクトレンズ52の周辺部24における鼻側(θ=0,360)の厚肉部32から続いて延びるエッジ部26にのみ所定のエッジリフト量:Δyだけ設けられている。そして、図22,23に示されるように、少なくとも上側(θ=90)から下側(θ=270)にかけてはエッジリフト量:Δyは0とされている。従って、本実施形態の周方向のエッジリフト量:Δyの変化形状は、周方向のリフト量:Δxの変化形状(本実施形態の周方向のリフト量変化は、前記第三の実施形態に準ずる)に対応している。
このような形状とされたコンタクトレンズ52は、前記第二の実施形態と同様に、鼻側(θ=0,360)にエッジリフトが設定されているため、前記第三の実施形態のコンタクトレンズ50に比べて、鼻側が相対的に***している人眼の結膜の表面形状に更に対応した形状とされ得る。また、前記第三の実施形態と同様に、耳側(θ=180)におけるリフト量:Δxが0とされている。即ち、鼻側(θ=0,360)に所定のリフト量:Δxが設定される一方、少なくとも上側(θ=90)から下側(θ=270)にかけてはリフト量:Δxが0とされていることから、前記第一および第二の実施形態に比べて、本実施形態の周辺部24のレンズ後面20をより結膜の表面形状に対応した形状とすることが出来る。これにより、本実施形態のコンタクトレンズ52は、前記第一〜第三の実施形態におけるコンタクトレンズ10,48,50に比べて、更なる装用感の向上が図られ得る。
また、前記第三の実施形態と同様に、装用状態における上下方向に一対の薄肉部30,30が、左右方向に一対の厚肉部32,32aが形成されていることから、前記第三の実施形態と同様に、周方向安定性の効果が発揮され得る。
次に、図25〜28には、本発明の第五の実施形態としてのコンタクトレンズ54が示されている。なお、本実施形態における図25〜28は、それぞれ前記第一の実施形態における図1〜3、および図5に対応するものである。
本実施形態におけるコンタクトレンズ54は、図25〜27に示されるように、周辺部24の上側(θ=90)に薄肉部56が、下側(θ=270)に厚肉部58が、更にこれら薄肉部56と厚肉部58の間である鼻側(θ=0,360)および耳側(θ=180)のそれぞれには、変化領域60,60が形成されている。これらの薄肉部56および厚肉部58は周方向に延びており、鉛直径方向線14に跨っていると共に、鉛直径方向線14に対して線対称形状とされている。また、各変化領域60,60は周方向に延びており、各変化領域60,60におけるレンズ前面18はそれぞれが水平径方向線16に跨っていると共に、水平径方向線16に対して線対称形状とされている。さらに、各変化領域60,60は相互に鉛直径方向線14に対して線対称形状とされている。これらのことから、本実施形態の周辺部24におけるレンズ前面18は、鉛直径方向線14に対して線対称形状とされている一方、水平径方向線16に対して非対称形状とされている。
また、これらの薄肉部56および厚肉部58は、前記第一の実施形態と同様に、レンズ幾何中心軸12回りにそれぞれ所定の角度θa ’、θb ’(図25参照)で延びている。これらθa ’、θb ’はそれぞれ、0度≦θa ’≦120度、および20度≦θb ’≦120度の範囲内に設定されることが望ましく、より好適には、30度≦θa ’≦80度、および40度≦θb ’≦100度とされる。また、薄肉部56と厚肉部58との間に設けられた各変化領域60は、レンズ幾何中心軸12回りに所定の角度θa-b ’(図25参照)で延びており、120度≦θa-b ’≦180度の範囲内とされることが望ましく、より好適には、140度≦θa-b ’≦160度とされる。このように、θa ’、θb ’、θa-b ’の角度範囲を好適なものとすることにより、装用時における周方向位置の安定性の向上や装用感の更なる向上が図られ得る。
さらに、図28には、図26,27の各断面図におけるレンズ幾何中心軸12を一致させて、薄肉部56、厚肉部58、変化領域60を重ね合わせた図の要部拡大図が示されている。なお、図28においては、実線が変化領域60を、一点鎖線が薄肉部56を、二点鎖線が厚肉部58を示している。また、薄肉部56と厚肉部58におけるレンズ後面20が重なって示されるため、これらのレンズ後面20は一点鎖線で示している。この図28に示されるように、上側(θ=90)および下側(θ=270)である薄肉部56および厚肉部58のレンズ後面20が基準面20a、即ちリフト量:Δxが0とされて、鼻側(θ=0,360)および耳側(θ=180)である各変化領域60,60のレンズ後面20には所定のリフト量:Δxが設定されている。
このような形状とされた本実施形態のコンタクトレンズ54は、前述のように、周辺部24のレンズ後面20における鼻側(θ=0,360)に所定のリフト量:Δxが設定されていることから、レンズ後面20の形状を鼻側が相対的に***している人眼の結膜の表面形状に対応させることが出来る。これにより、装用感の向上が図られ得る。
また、前記第一〜第四の実施形態においては、装用状態で上下方向に一対の薄肉部30,30が設けられると共に、左右方向に一対の厚肉部32,32が設けられて、これらの重量バランスに基づいて周方向位置決めの効果が発揮されている。一方、本実施形態のコンタクトレンズ54のように、装用状態で上方に薄肉部56が設けられると共に、下方に厚肉部58が設けられている、いわゆるプリズムバラスト構造でも、これらの重量バランスに基づいた周方向位置決め効果が発揮され得る。
さらに、本実施形態のコンタクトレンズ54の周辺部24は、装用状態で左右対称形状とされていることから、コンタクトレンズ使用者がコンタクトレンズ54の左右を判別することなく装用することが可能である。
次に、図29には、本発明の第六の実施形態としてのコンタクトレンズ62が示されている。本実施形態におけるコンタクトレンズ62は、前記第五の実施形態のコンタクトレンズ54における薄肉部56と変化領域60、および厚肉部58と変化領域60のそれぞれの境界が装用状態で水平方向(図29中の左右方向)に延びているものである。なお、本実施形態におけるコンタクトレンズ62の横断面図および縦断面図、さらに各断面図を重ね合わせた図は、前記第五の実施形態の図26〜28と実質的に略同一であるため省略する。
このような形状とされた本実施形態のコンタクトレンズ62において、周辺部24のレンズ後面20の形状は前記第五の実施形態に準ずるものである。即ち、上側(θ=90)および下側(θ=270)でリフト量:Δxが0とされていると共に、鼻側(θ=0,360)および耳側(θ=180)で所定のリフト量:Δxが設定されている。このことから、前記第五の実施形態と同様に、周辺部24のレンズ後面20を結膜の表面形状に対応させることが出来て、装用感の向上が図られ得る。
また、本実施形態のように、薄肉部56と変化領域60、および厚肉部58と変化領域60のそれぞれの境界を装用状態で水平方向(図29中の左右方向)とすることにより、薄肉部56と厚肉部58の領域を広く取ることが出来る。これにより、薄肉部56と厚肉部58の重量差を大きくすることが出来て、コンタクトレンズ62の周方向位置決め効果の更なる向上が図られ得る。なお、このように、本発明において薄肉部56と変化領域60、および厚肉部58と変化領域60のそれぞれの境界は、径方向に延びている必要はない。例えば、本実施形態のように、全ての境界が水平方向に延びていても良いし、一部の境界が水平方向に延びていても良い。或いは、これらの境界が装用状態で鉛直方向(図29中の上下方向)に延びていても良い。
さらに、前記第五の実施形態と同様に、本実施形態のコンタクトレンズ62の周辺部24は、装用状態で左右対称形状とされていることから、コンタクトレンズ使用者がコンタクトレンズ62の左右を判別することなく装用することが可能である。
次に、図30〜33には、本発明の第七の実施形態としてのコンタクトレンズ64が示されている。なお、本実施形態における図30〜33は、それぞれ前記第一の実施形態における図1〜3、および図5に対応するものである。
本実施形態のコンタクトレンズ64における周辺部24には、上側(θ=90)に薄肉部56が設けられていると共に、耳下側(θ=225)および鼻下側(θ=315)に一対の厚肉部58,58が設けられている。また、これら薄肉部56と一対の厚肉部58,58の間には一対の変化領域60,60が設けられている。さらに、下側(θ=270)、即ち一対の厚肉部58,58の周方向中間部分には、中間部66が設けられていると共に、この中間部66の周方向両端、即ち中間部66と一対の厚肉部58,58の間には、一対の変化領域68,68が設けられている。
具体的には、これら薄肉部56、厚肉部58、中間部66、変化領域60,68は周方向に延びている。そして、薄肉部56および中間部66は鉛直径方向線14に跨っていると共に、鉛直径方向線14に対して線対称形状とされている。一方、各一対の厚肉部58,58、変化領域60,60、変化領域68,68はそれぞれ、相互に鉛直径方向線14に対して線対称形状とされている。これらのことから、本実施形態の周辺部24におけるレンズ前面18は、鉛直径方向線14に対して線対称形状とされている一方、水平径方向線16に対して非対称形状とされている。
なお、中間部66は所定のレンズ厚さ:Tcを有しており、一定形状で周方向に延びている。この中間部66のレンズ厚さ:Tcは、厚肉部58のレンズ厚さ:Tbと比較して、Tc<Tbとされている。また、中間部66のレンズ厚さ:Tcは薄肉部56のレンズ厚さ:Taには依存しておらず、TcはTaより小さくされても、大きくされても、等しくされても良い。なお、本実施形態の中間部66のレンズ厚さ:Tcは、薄肉部56のレンズ厚さ:Taと厚肉部58のレンズ厚さ:Tbの中間、即ちTa<Tc<Tbとされている。ここにおいて、中間部66のレンズ厚さ:Tcの最大値は、好適には0.2≦Tc≦0.5mmとされており、更に好適には0.25≦Tc≦0.4mmとされる。蓋し、Tcの最大値が0.2mmに満たないと、中間部66と一対の厚肉部58,58との差が大きくなり、変化領域68,68が急峻な形状となるおそれがある。また、Tcの最大値が0.5mmを超えると、中間部66と一対の厚肉部58,58との差が小さくなり、実質的に厚肉な領域が広がるため、装用感が悪化するおそれがある。
また、これらの薄肉部56および一対の厚肉部58,58は、前記第五の実施形態と同様に、レンズ幾何中心軸12回りにそれぞれ所定の角度θa ’’、θb ’’(図30参照)で延びている。これらθa ’’、θb ’’はそれぞれ、0度≦θa ’’≦80度、および0度≦θb ’’≦60度の範囲内に設定されることが望ましく、より好適には、30度≦θa ’’≦60度、および20度≦θb ≦40度とされる。さらに、薄肉部56と各厚肉部58との間に設けられた各変化領域60は、レンズ幾何中心軸12回りに所定の角度θa-b ’’(図30参照)で延びており、60度≦θa-b ’’≦140度の範囲内とされることが望ましく、より好適には、80度≦θa-b ’’≦120度とされる。そして、中間部66はレンズ幾何中心軸12回りに所定の角度θc (図30参照)で延びており、0度≦θc ≦60度の範囲内とされることが望ましく、より好適には、20度≦θc ≦40度とされる。また、中間部66と各厚肉部58との間に設けられた各変化領域68は、レンズ幾何中心軸12回りに所定の角度θb-c (図30参照)で延びており、10度≦θb-c ≦60度の範囲内とされることが望ましく、より好適には、20度≦θb-c ≦40度とされる。このように、θa ’’、θb ’’、θa-b ’’、θc 、θb-c の角度範囲を好適なものとすることにより、装用時における周方向位置の安定性の向上や装用感の更なる向上が図られ得る。
さらに、図33には、図31,32の各断面図におけるレンズ幾何中心軸12を一致させて、薄肉部56、厚肉部58、変化領域60を重ね合わせた図の要部拡大図が示されている。なお、図33において中間部66の図示は省略している。また、図33においては、実線が変化領域60を、一点鎖線が薄肉部56を、二点鎖線が厚肉部58を示している。ここで、薄肉部56と厚肉部58におけるレンズ後面20が重なって示されるため、これらのレンズ後面20は一点鎖線で示している。この図33に示されるように、上側(θ=90)と耳下側(θ=225)および鼻下側(θ=315)である薄肉部56および一対の厚肉部58,58のレンズ後面20が基準面20a、即ちリフト量:Δxが0とされて、鼻側(θ=0,360)および耳側(θ=180)を含む各変化領域60,60のレンズ後面20には所定のリフト量:Δxが設定されている。
このような形状とされた本実施形態のコンタクトレンズ64は、前述のように、周辺部24のレンズ後面20における鼻側(θ=0,360)に所定のリフト量:Δxが設定されていることから、レンズ後面20の形状を鼻側が相対的に***している人眼の結膜の表面形状に対応させることが出来る。これにより、装用感の向上が図られ得る。
また、本実施形態のコンタクトレンズ64は、装用状態で水平径方向左右に一対の厚肉部58,58が設けられた、いわゆるペリバラスト構造とされており、更に装用状態で上方に薄肉部56が設けられている。これにより、前記第五の実施形態と同様に、これらの重量バランスに基づいた周方向位置決め効果が発揮され得る。
さらに、前記第五の実施形態と同様に、本実施形態のコンタクトレンズ64の周辺部24は、装用状態で左右対称形状とされていることから、コンタクトレンズ使用者がコンタクトレンズ64の左右を判別することなく装用することが可能である。
次に、図34には、本発明の第八の実施形態としてのコンタクトレンズにおけるレンズ後面20のリフト量:Δxの周方向変化が示されている。なお、レンズ前面18の形状は、前記第一〜第七の実施形態におけるレンズ前面18の何れもが採用され得るため、本実施形態では省略する。本実施形態では、鼻上側(θ=45)のレンズ後面20におけるリフト量:Δxが最大とされると共に、耳下側(θ=225)のレンズ後面20においてリフト量:Δxが最小の0とされている。
ここで、図35(a),(b)には、前記第一および第三の実施形態の、それぞれ図7および図20に示された結膜とは別の特徴を有する結膜の形状が示されている。即ち、結膜の鼻上側(θ=45)で角膜中心に対する深さが小さくなっている一方、耳下側(θ=225)で角膜中心に対する深さが大きくなっている。なお、図35(b)は、角膜中心から半径r=6.0mmの周上の各点における、角膜中心に対する深さの具体的な数値を示している。そして、これら図35(b)の値をグラフにしたものが図35(a)である。
本実施形態では、図35のような結膜の形状を考慮して、図34のような周方向リフト量:Δxが周辺部24のレンズ後面20に設定されている。即ち、角膜中心に対する深さが大きくなっている耳下側(θ=225)が、レンズ幾何中心軸12方向において最も後面(基準面20a)とされており、要するにリフト量:Δxが0とされる。一方、角膜中心に対する深さが小さくなっている鼻上側(θ=45)においては、所定のリフト量:Δxが設定されている。
図6(b)に示されるように、平均的な人眼の結膜の表面形状は鼻側(θ=0,360)から鼻上側(θ=45)にかけて相対的に***している。また一方、耳下側(θ=225)では相対的に深さが大きくなっている。従って、前述のような形状とされた本実施形態のコンタクトレンズの周辺部24におけるレンズ後面20は、平均的な人眼の結膜の表面形状に更に一層対応しており、より一層の装用感の向上が図られ得る。
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更,修正,改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
さらに、前記実施形態の各態様は任意に組み合わせることが可能である。例えば、前記第五〜第七の実施形態のような装用状態で上下非対称とされるコンタクトレンズに、前記第二の実施形態等で採用されているエッジリフトを組み合わせる等をしても良い。
また、前記実施形態の各コンタクトレンズには、必要に応じて、レンズの周方向位置を判別するためのガイドマークが付され得る。このガイドマークはコンタクトレンズ使用者の視界や装用感に影響を与えることなく、且つ目視により視認可能であれば、特に限定されるものではないが、例えば顔料等によるドット状のマーク等が挙げられる。これにより、コンタクトレンズ使用者が本発明に従うコンタクトレンズを装用する際に、上下或いは左右の判別を容易に行うことが出来る。このように、コンタクトレンズの装用状態での方向とは、コンタクトレンズ使用者が装用することのみによって判別されるものではなく、非装用状態であってもガイドマーク等により判別可能である。
更にまた、前記実施形態では、薄肉部30および厚肉部32におけるレンズ前面18の形状は対応するレンズ後面20の形状と略同様とされており、これにより、それぞれの周辺部レンズ厚さ:tが一定とされていた。本発明は、この形状に限定されるものではなく、必ずしも薄肉部30および厚肉部32における周辺部レンズ厚さ:tが一定とされている必要はない。即ち、薄肉部30および厚肉部32は、周方向において、厚さが変化していても良い。
また、前記実施形態においては、コンタクトレンズとして真円のものが示されているが、これに限定されず、楕円形であっても良い。更にまた、レンズの外周の一部を弦方向に直線形状とした、トランケーション法によるレンズについても、本発明は実施可能である。