JP5641991B2 - 熱処理変形の小さい機械構造用鋼材 - Google Patents
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ただし、
J9mm/J1.5mm=(ジョミニー式一端焼入法により測定される焼入端からの距離9mmにおける硬さ)÷(ジョミニー式一端焼入れ法により測定される焼入端からの距離1.5mmにおける硬さ)……(1)
J11mm/J1.5mm=(ジョミニー式一端焼入法により測定される焼入端からの距離11mmにおける硬さ)÷(ジョミニー式一端焼入法により測定される焼入端からの距離1.5mmにおける硬さ)……(2)
Cは、機械構造用部品として鋼材の焼入焼戻し後の強度もしくは浸炭焼入焼戻し後の芯部強度を確保するために必要な元素であるとともに、熱処理変形を小さくするために所定の範囲に調整する必要がある。その範囲は0.15%未満では強度を確保できず、0.35%を超えると熱処理による変形が大きくなり過ぎる。そこでCは0.15〜0.35%とし、望ましくは0.20〜0.30%、より望ましくは0.22〜0.27%とする。
Siは、脱酸に必要な元素であるとともに、鋼に必要な強度、焼入性を付与するために有効な元素である。しかし、Siが0.10%未満ではその効果が得られず、1.50%を超えると機械加工性を低下させる。そこでSiは0.10〜1.50%とし、望ましくは0.20〜1.00%とする。
Mnは、焼入性を確保するために必要な元素である。しかし、Mnが0.10%未満では焼入性への効果は十分に得られず、1.00%を超えると機械加工性を低下させる。そこでMnは0.10〜1.00%とし、望ましくは0.20〜0.80%、より望ましくは0.20〜0.55%とする。
Pは、スクラップから含有される不可避な元素であるが、粒界に偏析して衝撃強度や曲げ強度などの特性を低下させる。そこでPは0.030%以下とする。
Sは、被削性を向上させる元素であるが、非金属介在物であるMnSを生成して横方向の靱性および疲労強度を低下する。そこでSは0.030%以下とする。
Niは、焼入性および靱性を向上させる元素であり、その効果を得るためには0.20%以上の添加が必要である。しかし、Niは3.00%を超えて含有すると加工性を著しく低下させ、かつ、コストアップとなる。そこでNiは3.00%以下とする。
Crは、焼入性を確保するために必要な元素である。しかし、Crが0.90%未満では焼入性への効果を十分に得られず、1.90%を超えると浸炭を阻害し、また機械加工性も低下する。そこでCrは0.90〜1.90%とし、望ましくは1.10〜1.80%とする。
Moは、焼入性および靱性を向上させる元素であり、その効果を得るには0.05%以上の添加が必要である。しかし、Moは0.50%を超えて含有すると加工性を低下させる。そこで、Moは0.05〜0.50%とする。
Cuは、スクラップから含有される不可避な元素であるが、時効性を有し、強度を上昇させる効果がある。しかし、Cuは0.30%を超えると熱間加工性を低下する。そこで、Cuは0.30%以下とする。
Alは、脱酸材として使用される元素であり、また後述のようにNと結合してAlNとして析出して結晶粒粗大化抑制効果をもたらす。この効果を得るため、Alは0.008%以上の添加が必要である。一方、Alを0.800%を超えて添加すると大型のアルミナ系介在物を形成し、疲労特性および加工性を低下する。そこで、Alは0.008〜0.800%とし、望ましくは0.014〜0.600%とする。
Bは、極少量の含有によって鋼の焼入性を著しく向上させる元素であり、添加することによって他の合金元素の添加量を減らすことができるため、鋼材コストを下げるのに有効である。Bは、0.0003%未満では焼入性の向上効果が小さく、一方、0.0050%を超えると強度を低下させる。そこで、Bは0.0003〜0.0050%とし、望ましくは、Bは0.0010〜0.0050%とする。
Oは、鋼中に不可避的に含有される元素である。しかし、Oが0.0030%を超えて含有されると酸化物の増加による加工性や疲労強度の低下を招く。そこでOは0.0030%以下とし、望ましくは0.0020%以下とする。
Nは、鋼中でAlNやNb窒化物として微細析出し、結晶粒粗大化を防止する効果をもたらし、その効果を得るために0.0020%以上添加する必要がある。しかし、0.0100%を超えると窒化物が増加し、疲労強度や加工性が低下する。そこで、Nは0.0020〜0.0100%とし、望ましくは0.0020〜0.0080%とする。
Tiは、鋼中のCと結び付いて炭化物を微細に形成し、結晶粒粗大化を防止する効果をもたらすが、その効果を得る場合には、Tiを0.020%以上を添加する必要がある。一方、0.200%を超える添加は、機械加工性を損なうため、上限は0.200%とする。
Nbは、炭化物あるいは窒化物を形成し、結晶粒粗大化防止効果をもたらす。特に鋼中に微細に分散したナノオーダーサイズのNbCまたはNb(C,N)が結晶粒の成長を抑制する。Nbが0.02%未満では、その効果は得られず、0.20%を超えると析出物の量が過剰となり加工性を低下する。そこで、Nbは0.02〜0.20%、望ましくは0.02〜0.12%とする。
本発明の手段における、鋼材の熱処理変形を小さくするために、マルテンサイト変態開始温度(Ms点)を460℃以下に規制する必要がある。Ms点を460℃以下に規制することで熱処理変形を小さくできる理由は、焼入れした際に、部品の冷却がたとい不均一であっても、冷媒の冷却性能が高い温度域でマルテンサイト変態が起こることを回避でき、その結果、マルテンサイト変態の時期が部品の部位によって大きくずれることが抑制できるからである。そこでMs点を460℃以下に規制するが、望ましくはMs点は450℃以下に規制する。なお、この場合の熱処理変形とは、軸状の部品の曲りやギヤの歯の倒れやねじれのことである。
鋼材のジョミニー式一端焼入法により測定される鋼材の焼入端からの距離1.5mmにおける硬さのJ1.5mmと、距離9mmにおける硬さのJ9mmと、距離11mmにおける硬さのJ11mmとから算出されるJ9mm/J1.5mmの値を0.68〜0.97に規制し、J11mm/J1.5mmの値を0.63〜0.94に規制する理由は、この範囲とすることで鋼材の熱処理変形が小さく抑えられるからである。ここで言う熱処理変形とは、部品の焼入れ前後における寸法(長さ、径、厚み)の変化のことである。なお、ジョミニー焼入性の適切な制御によって、熱処理変形が抑制されるメカニズムについては、未だ解明できていないが、鋼材の焼入性が低すぎても、また、高すぎても熱処理変形が大きくなることが発明者らによって実験的に明らかとなっている。
自動車や産業機械などに使用されるギヤやシャフトなどの動力伝達用の部品として用いられる機械構造用鋼として、表1に示す本発明例のNo.1〜23の成分組成と残部Feおよび不可避不純物からなる機械構造用鋼を真空誘導溶解炉にて溶製し、100kgの鋼塊を得た。
ただし、
J9mm/J1.5mm=(ジョミニー式一端焼入法により測定される焼入れ端からの距離9mmの硬さ)÷(ジョミニー式一端焼入法により測定される焼入れ端からの距離1.5mmの硬さ)……(1)
J11mm/J1.5mm=(ジョミニー式一端焼入法により測定される焼入れ端からの距離11mmの硬さ)÷(ジョミニー式一端焼入法により測定される焼入れ端からの距離1.5mmの硬さ)……(2)
Claims (4)
- 質量%で、C:0.15〜0.35%、Si:0.10〜1.50%、Mn:0.10〜1.00%、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Cr:0.90〜1.90%、Cu:0.30%以下、Al:0.008〜0.800%、B:0.0003〜0.0050%、O:0.0030%以下、N:0.0020〜0.0100%を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなる機械構造用鋼であり、該鋼からなる鋼材のマルテンサイト変態開始温度(Ms点)が460℃以下であり、該鋼材についてのジョミニー式一端焼入法により測定される鋼材の焼入端からの距離1.5mmにおける硬さのJ1.5mmおよび距離9mmにおける硬さのJ9mmを用いて、下記の式(1)によって算出したJ9mm/J1.5mmの値が0.68〜0.97の範囲にあり、さらに距離1.5mmにおける硬さのJ1.5mm、および距離11mmにおける硬さのJ11mmを用いて、下記の式(2)によって算出したJ11mm/J1.5mmの値が0.63〜0.94の範囲にあることを特徴とする熱処理変形の小さい機械構造用鋼材。
ただし、
J9mm/J1.5mm=(ジョミニー式一端焼入法により測定される焼入端からの距離9mmの硬さ)÷(ジョミニー式一端焼入法により測定される焼入端からの距離1.5mmの硬さ)……(1)
J11mm/J1.5mm=(ジョミニー式一端焼入法により測定される焼入端からの距離11mmの硬さ)÷(ジョミニー式一端焼入法により測定される焼入端からの距離1.5mmの硬さ)……(2) - 質量%で、C:0.15〜0.35%、Si:0.10〜1.50%、Mn:0.10〜1.00%、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Cr:0.90〜1.90%、Cu:0.30%以下、Al:0.008〜0.800%、B:0.0003〜0.0050%、O:0.0030%以下、N:0.0020〜0.0100%を含有し、さらにNi:0.20〜3.00%、Mo:0.05〜0.50%の1種または2種を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなる機械構造用鋼であり、該鋼からなる鋼材のマルテンサイト変態開始温度Ms点)が460℃以下であり、該鋼材についてのジョミニー式一端焼入法により測定される鋼材の焼入端からの距離1.5mmにおける硬さのJ1.5mmおよび距離9mmにおける硬さのJ9mmを用いて、下記の式(1)によって算出したJ9mm/J1.5mmの値が0.68〜0.97の範囲にあり、さらに距離1.5mmにおける硬さのJ1.5mm、および距離11mmにおける硬さのJ11mmを用いて、下記の式(2)によって算出したJ11mm/J1.5mmの値が0.63〜0.94の範囲にあることを特徴とする熱処理変形の小さい機械構造用鋼材。
ただし、
J9mm/J1.5mm=(ジョミニー式一端焼入法により測定される焼入端からの距離9mmの硬さ)÷(ジョミニー式一端焼入法により測定される焼入端からの距離1.5mmの硬さ)……(1)
J11mm/J1.5mm=(ジョミニー式一端焼入法により測定される焼入端からの距離11mmの硬さ)÷(ジョミニー式一端焼入法により測定される焼入端からの距離1.5mmの硬さ)……(2) - 質量%で、C:0.15〜0.35%、Si:0.10〜1.50%、Mn:0.10〜1.00%、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Cr:0.90〜1.90%、Cu:0.30%以下、Al:0.008〜0.800%、B:0.0003〜0.0050%、O:0.0030%以下、N:0.0020〜0.0100%を含有し、さらにTi:0.020〜0.200%、Nb:0.02〜0.20%の1種または2種を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなる機械構造用鋼であり、該鋼からなる鋼材のマルテンサイト変態開始温度(Ms点)が460℃以下であり、該鋼材についてのジョミニー式一端焼入法により測定される鋼材の焼入端からの距離1.5mmにおける硬さのJ1.5mmおよび距離9mmにおける硬さのJ9mmを用いて、下記の式(1)によって算出したJ9mm/J1.5mmの値が0.68〜0.97の範囲にあり、さらに距離1.5mmにおける硬さのJ1.5mmおよび距離11mmにおける硬さのJ11mmを用いて、下記の式(2)によって算出したJ11mm/J1.5mmの値が0.63〜0.94の範囲にあることを特徴とする熱処理変形の小さい機械構造用鋼材。
ただし、
J9mm/J1.5mm=(ジョミニー式一端焼入法により測定される焼入れ端からの距離9mmの硬さ)÷(ジョミニー式一端焼入法により測定される焼入れ端からの距離1.5mmの硬さ)……(1)
J11mm/J1.5mm=(ジョミニー式一端焼入法により測定される焼入れ端からの距離11mmの硬さ)÷(ジョミニー式一端焼入法により測定される焼入れ端からの距離1.5mmの硬さ)……(2) - 質量%で、C:0.15〜0.35%、Si:0.10〜1.50%、Mn:0.10〜1.00%、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Cr:0.90〜1.90%、Cu:0.30%以下、Al:0.008〜0.800%、B:0.0003〜0.0050%、O:0.0030%以下、N:0.0020〜0.0100%を含有し、さらにNi:0.20〜3.00%、Mo:0.05〜0.50%の1種または2種を含有し、さらにTi:0.020〜0.200%、Nb:0.02〜0.20%の1種または2種を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなる機械構造用鋼であり、該鋼からなる鋼材のマルテンサイト変態開始温度(Ms点)が460℃以下であり、該鋼材についてのジョミニー式一端焼入法により測定される鋼材の焼入端からの距離1.5mmにおける硬さのJ1.5mmおよび距離9mmにおける硬さのJ9mmを用いて、下記の式(1)によって算出したJ9mm/J1.5mmの値が0.68〜0.97の範囲にあり、さらに距離1.5mmにおける硬さのJ1.5mm、および距離11mmにおける硬さのJ11mmを用いて、下記の式(2)によって算出したJ11mm/J1.5mmの値が0.63〜0.94の範囲にあることを特徴とする熱処理変形の小さい機械構造用鋼材。
ただし、
J9mm/J1.5mm=(ジョミニー式一端焼入法により測定される焼入れ端からの距離9mmの硬さ)÷(ジョミニー式一端焼入法により測定される焼入れ端からの距離1.5mmの硬さ)……(1)
J11mm/J1.5mm=(ジョミニー式一端焼入法により測定される焼入れ端からの距離11mmの硬さ)÷(ジョミニー式一端焼入法により測定される焼入れ端からの距離1.5mmの硬さ)……(2)
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