以下、本発明の好適な実施の形態として、液体吐出装置をインクジェットプリンタに適用し、図面を参照しつつ説明する。先ず、図1を参照し、インクジェットプリンタ101の全体構成について説明する。
プリンタ101は、直方体形状の筐体101aを有する。筐体101aの天板上部には、排紙部15が設けられている。筐体101aの内部空間は、上から順に空間A,B,Cに区分できる。空間Aでは、記録媒体である用紙Pへの画像形成と、用紙Pの排紙部15への搬送が行われる。空間Bでは、用紙Pの搬送経路への給紙が行われる。空間Cからは、空間Aの4つのインクジェットヘッド1(液体吐出ヘッド)に対してインクが供給され、空間Aの処理液ヘッド2に対して処理液が供給される。
空間Aには、4つのインクジェットヘッド1(以下、ヘッド1と称する)、処理液ヘッド2(以下、ヘッド2と称する)、用紙Pを搬送方向(図1中左方から右方に向かう方向)に搬送する搬送機構16、用紙Pをガイドするガイド部、用紙Pを乾燥させる乾燥機構31、タッチパネル90(図2参照)、及び、制御装置100等が配置されている。
4つのヘッド1は、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローのインクの液滴をそれぞれ吐出する。ヘッド2は、4つのヘッド1よりも搬送方向上流側に配置されており、処理液の液滴を吐出する。これら4つのヘッド1及びヘッド2は、同一構造を有しており、いずれも主走査方向に長尺な略直方体形状を有するライン式ヘッドである。また、4つのヘッド1及びヘッド2は、副走査方向に所定ピッチで並び、ヘッドホルダ35を介して筐体101aに支持されている。ここで、副走査方向とは搬送機構16の搬送方向と平行な方向であり、主走査方向とは副走査方向に直交する方向であって水平面に沿った方向である。
各ヘッド1,2の下面は、複数の吐出口が開口した吐出面1a,2aとなっている。ヘッドホルダ35は、ヘッド1,2の吐出面1a,2aと搬送ベルト8との間に記録に適した所定の間隙が形成されるように、ヘッド1,2を保持している。また、各ヘッド1,2は、制御装置100により制御される複数のアクチュエータ(不図示)を備えている。これらのアクチュエータは、選択的に複数の吐出口からインク又は処理液が吐出されるように、処理液又はインクに吐出エネルギーを付与する。なお、本実施形態においては、主走査方向及び副走査方向の解像度はいずれも600dpiとなるよう構成又は設定されており、用紙P上に、主走査方向(印字幅方向)および搬送方向にそれぞれ1/600インチ間隔で区画された複数の格子状の単位領域(画素領域)D(図5(a)参照)が仮想的に定められている。
搬送機構16は、2つのベルトローラ6、7と、搬送ベルト8と、テンションローラ10と、プラテン18と、ニップローラ4と、剥離プレート5とを有している。搬送ベルト8は、両ローラ6、7の間に巻回されたエンドレスのベルトであり、テンションローラ10によってテンションが付加されている。プラテン18は、5つのヘッド1,2に対向配置され、搬送ベルト8の上側ループを内側から支える。ベルトローラ7は、図示しないモータによって図1中時計回りに回転される駆動ローラであって、搬送ベルト8を走行させる。ベルトローラ6は、搬送ベルト8が走行することによって回転する従動ローラである。搬送ベルト8の外周面には、弱粘着性のシリコン層が形成されている。ニップローラ4は、給紙ユニット101bから搬送されてきた用紙Pを搬送ベルト8の外周面に押さえ付ける。押さえ付けられた用紙Pは、シリコン層によって搬送ベルト8に保持される。剥離プレート5は、搬送ベルト8によって搬送されてきた用紙Pを、搬送ベルト8から剥離する。
ガイド部は、搬送方向に関して、搬送機構16を挟んで配置された上流側ガイド部及び下流側ガイド部を有している。上流側ガイド部は、ガイド13a,13bと送りローラ対14を有し、給紙ユニット101bと搬送機構16とを繋ぐ。下流側ガイド部は、ガイド29a,29b,29cと3つの送りローラ対28を有し、搬送機構16と排紙部15とを繋ぐ。
乾燥機構31は、搬送方向に関してヘッド1,2よりも下流であってガイド29bの構成部材として設けられている。乾燥機構31は、ヒータ及び加熱面31aを有する。加熱面31aは、ガイド29bの内面の一部である。ヒータが、制御装置100の制御によって通電されることで、加熱面31aが画像形成後の用紙Pを所定温度以上に加熱して乾燥する。なお、加熱面31aは複数の加熱領域に区画されており、加熱領域毎に加熱温度を異ならせることにより、加熱面31a上の加熱温度分布を異ならせることが可能とされている。これにより、ガイド29a,29b,29cにより形成された搬出路60において停止された用紙Pに対する加熱温度を、当該用紙Pの部分毎に異ならせることができる。
空間Bには、給紙ユニット101bが配置されている。給紙ユニット101bは、給紙トレイ11及び給紙ローラ12を有する。このうち、給紙トレイ11が、筐体101aに対して着脱可能となっている。給紙トレイ11は、上方に開口する箱であり、複数の用紙Pを収納可能である。給紙ローラ12は、給紙トレイ11内で最も上方にある用紙Pを送り出す。
空間Cには、タンクユニット101cが筐体101aに対して着脱可能に配置されている。タンクユニット101cは、4つのインクタンク17a及び1つの処理液タンク17bが着脱可能に装着されている。各インクタンク17aは、シアン、マゼンタ、イエロー、及びブラックのインクがそれぞれ貯留されており、対応するヘッド1にチューブ(不図示)及びポンプ(不図示)を介して接続されている。同様に、処理液タンク17bは、無色透明な処理液が貯留されており、ヘッド2にチューブ(不図示)及びポンプ(不図示)を介して接続されている。
一般的に、顔料インクに対しては顔料色素を凝集させる処理液が使用され、染料インクに対しては染料色素を析出させる処理液が使用される。処理液の材料は、カチオン系高分子やマグネシウム塩等の多価金属塩を含有する液体等、適宜に選択可能である。かかる処理液とインクとが混ざると、多価金属塩等がインクの着色剤である染料又は顔料に作用して、不溶性又は難溶性の金属複合体等が凝集又は析出により形成される。
次に、制御装置100について、図1〜図7を参照しつつ説明する。制御装置100は、プリンタ101各部の動作を制御してプリンタ101全体の動作を司る。制御装置100は、外部装置(プリンタ101と接続されたPC等)から受信した画像データ(記録指令)に基づいて、画像形成動作を制御する。具体的には、制御装置100は、外部装置から記録指令を受信すると、給紙ユニット101b、搬送機構16、各送りローラ対14,28等を駆動する。給紙トレイ11から送り出された用紙Pは、上流側ガイド部によりガイドされ搬送機構16に送られる。搬送機構16によって搬送されてきた用紙Pは、ヘッド2のすぐ下方を通過する際に、制御装置100によってヘッド2が制御され、用紙P上の画像が形成される領域である画像形成領域I(図5(b)参照)に処理液が吐出される。その後、当該用紙Pが、4つのヘッド1のすぐ下方を通過する際に、制御装置100によってヘッド1が制御され、用紙P上の処理液が付着した領域に、各ヘッド1から各色のインク滴が順に吐出される。これにより、用紙P上に所望のカラー画像が形成される。このとき、用紙P上の処理液上にインク滴が着弾すると、処理液がインク滴の色素成分を凝集又は析出させるため、用紙Pにおけるインク滲みが防止される。なお、処理液及びインクの吐出動作は、用紙Pの先端を検知する用紙センサ(不図示)からの検知信号に基づいて行われる。そして、画像が形成された用紙Pは、剥離プレート5によって搬送ベルト8から剥離された後、下流側ガイド部によりガイドされて、筐体101a上部の開口22から排紙部15に排出される。
また、本実施形態に係るライン式ヘッドプリンタは、搬送される用紙Pに処理液およびインクが吐出されるため、シリアル式ヘッドプリンタと比較して印刷が高速となる。その反面、搬送経路を用紙Pが搬送される間にインクが十分に乾燥する時間がないため、用紙Pにカールが発生し易い。カールした用紙Pは、排紙部15へ排紙されたときに整然と積層されず、折れたり飛散したりするなどの不具合が発生する。そこで、本実施形態に係る制御装置100は、用紙Pに発生するカール度合を予測し、予測されたカール度合に応じてカールを矯正するための対策をとる。ここで「カール度合」とは、用紙Pに発生するカールの量を直接的又は間接的に表し、カールの大きさの指標となるものである。なお、この用紙Pのカール度合は、用紙Pに或る領域を設定した場合に、当該領域の用紙P上の位置および当該領域に吐出される液体量に加えて当該領域に吐出される液滴数より影響を受けることがしられている。
また、用紙P上において、単位面積当たりの吐出される液体量が多い濃領域がある場合、排紙部15にて排紙した用紙Pを重ねたときに、この濃領域の印字部分が前の用紙Pに転写(裏移り)する問題が生じる。そこで、本実施形態に係る制御装置100は、単位面積当たりの吐出される液体量が多い濃領域がある場合には、この濃領域に吐出される液体量を減らす対策をとる。
制御装置100は、CPU(Central Processing Unit)と、CPUが実行するプログラム及びこれらプログラムに使用されるデータを書き替え可能に記憶するROM(Read Only Memory)と、プログラム実行時にデータを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)とを含んでいる。制御装置100を構成する各機能部は、これらハードウェアとROM内のソフトウェアとが協働して構築されている。図2に示すように、制御装置100は、搬送制御部151と、画像データ記憶部152(画像データ記憶手段)と、液体量算出部153(液体量算出手段)、位置記憶部154(位置記憶手段)、液体量補正部155(液体量補正手段)、画像データ補正部156(画像データ補正手段)、判断部157(判断手段)、ヘッド制御部158(ヘッド制御手段)、カール抑制部159(カール抑制手段)、乾燥制御部160(乾燥制御手段)、入出力制御部161とを有している。
搬送制御部151は、用紙Pが給紙ユニット101bから排紙部15まで搬送されるように、給紙ユニット101b、各送りローラ対14,28及び搬送機構16を制御する。
画像データ記憶部152は、外部装置から転送された、用紙P上に形成すべき画像にかかる画像データを、インク吐出データ、及び処理液吐出データとして記憶する。インク吐出データ、及び処理液吐出データは、用紙P上の仮定領域H(図5(b)参照)に配置された複数の単位領域Dのそれぞれに形成するドットのドットサイズ(ドットの大きさ)を示すデータである。ドットサイズは、単位領域Dへ吐出するインクや処理液の量(ゼロ,小滴,中滴,大滴の4段階のいずれか)を示している。仮定領域Hとは、画像が形成される領域として仮定的に定められた用紙P上の領域のことである。また、単位領域Dの大きさは、主査方向に関しては、ヘッド1,2の長手方向に関する吐出口の開口ピッチ又はその整数倍に、副走査方向に関しては、ヘッド1,2の印字周期と用紙Pの搬送速度とを掛け合わせて得られる大きさに設定されている。なお、一般的に、画像データは、用紙Pの単位領域(画素領域)対応する色の濃度値を有しており、外部装置から転送された後に、制御装置100によりインク吐出データ、及び処理液吐出データに変換(又は、画像データを元に生成)される。
本実施形態においては、画像データ記憶部152は、図3に示すように、4つのヘッド1に関する4つのインク吐出データを記憶する。なお、図3に示す4つのインク吐出データは、用紙P上の後述の一つの評価領域E(8×6列の計48個分の単位領域D)に形成する画像に対応している。また、図4のS,M,Lとの記載は、その単位領域Dに形成するドットのドットサイズを示しており、S,M,Lのいずれの記載もない単位領域Dにはドットを形成しないことを示している。なお、ドットサイズS,M,Lは、ヘッド1から吐出される小滴,中滴,大滴の液滴と対応している。
図4は、処理液吐出データの一例として、図3に示すインク吐出データに対応した処理液吐出データを示している。なお、図4においてSの記載は、単位領域Dに形成するドットのドットサイズを示しており、記載のない単位領域Dにはドットを形成しないことを示している。なお、処理液吐出データのドットの大きさのSは、ヘッド2から吐出される小滴の液滴と対応している。処理液吐出データは、原則として、インク吐出データのドットが形成される各単位領域Dに対し選択的にドットサイズSのドットを形成するようにされている。この結果、処理液吐出データに基づいて処理液の吐出を行うヘッド2は、用紙Pのインクの着弾位置と処理液の塗布範囲とが一致するように、用紙P上のインクが吐出される各単位領域に対し選択的に小滴の処理液を吐出する。
液体量算出部153は、画像データ記憶部152に記憶されている画像データに係る画像を用紙P上の仮定領域Hに形成したと仮定した場合における、評価領域Eのそれぞれに吐出される液体量(以下、算出液体量とも称す)及び液滴数(以下、算出液滴数とも称す)を算出する。ここで、評価領域Eとは、1枚の用紙Pを所定の中領域に区画した領域のことである。例えば、図5(a)に示すように、1枚の用紙Pを副走査方向に8行、主走査方向に8列に区画すると、1枚の用紙Pは合計64個の評価領域Eに分かれる。なお、用紙P上の全ての評価領域Eは同じ形状にされている。また、この1つの評価領域Eは、複数の単位領域Dを有している。本実施形態においては、1つの評価領域Eには、8×6の単位領域Dを有している。
或る1つの評価領域Eに吐出されるインク及び処理液の液滴数は、当該評価領域Eが有する全単位領域Dに吐出されるインク及び処理液の液滴の総数である。つまり、或る1つの評価領域Eに吐出される液滴数は、当該評価領域Eに相当するインク吐出データのドット数と処理液吐出データのドット数とを加算した値に等しい。本実施の形態において、或る1つの評価領域Eに吐出される液滴数は、ブラック、シアン、マゼンタおよびイエローの各インク吐出データ、及び処理液吐出データにおいて、この評価領域Eにおけるドット数をそれぞれカウントし、これを総計することにより求められる。例えば、図3(a)〜(d)、及び図4に示す8×6の単位領域Dが或る1つの評価領域Eのインク吐出データ及び処理液吐出データであるとすれば、この評価領域Eの液滴数は46滴(=ブラック6滴+シアン3滴+マゼンタ6滴+イエロー11滴+処理液20滴)である。また、同じ単位領域Dに異なるインクや処理液が吐出された場合は、その単位領域Dの液滴数を1滴としてもよい(この場合、図3(a)〜(d)、及び図4に示す評価領域Eにおける液滴数は20滴となる。)。なお、用紙P上の単位領域Dに吐出される液滴量を変化させる場合には、液滴量に応じた大きさの1滴の液滴を吐出する場合や、液滴量に応じて複数の等しい大きさの微小液滴を連続的に吐出する場合などがある。後者の場合に、実際は微小液滴の液滴数は多数であるが、これらを合わせて液滴数は1として数える。
また、或る1つの評価領域Eに吐出されるインク及び処理液の液体量は、当該評価領域Eが有する全単位領域Dに吐出されるインク及び処理液の液滴量の総量である。つまり、或る1つの評価領域Eに吐出される液体量は、当該評価領域Eに相当する全色のインク吐出データ及び処理液吐出データの、ドットサイズごとのドット数にそのドットサイズに対応する液滴量を乗じたものを総計することにより求められる。例えば、図3(a)〜(d)及び図4に示す8×6の単位領域Dが或る1つの評価領域Eのインク吐出データ及び処理液吐出データであるとすれば、この評価領域EのSサイズのドット数は30個であり、Mサイズのドット数は12個であり、Lサイズのドット数は4個である。そして、Sサイズの液滴量を7pl、Mサイズの液滴量を14pl、Lサイズの液滴量を21plとすると、この評価領域Eの液体量は462pl(=30×7pl+12×14pl+4×21pl)である。
位置記憶部154は、画像データに係る画像が形成される用紙P上の画像形成領域I、及び仮定領域Hの位置に対する画像形成領域Iの位置のオフセット情報を記憶する。オフセット情報は、オフセット方向及びオフセット量を含むデータである。「オフセット方向」とは、図5(b)に示すように、仮定領域Hの位置に対する画像形成領域Iの位置ずれ方向のことである。また、「オフセット量」とは、仮定領域Hの位置と画像形成領域Iの位置との差である。図5(b)に示す例では、画像形成領域Iは、図中の主走査方向に評価領域Eの主走査方向幅にして1.8個分、副走査方向に評価領域Eの副走査方向の幅にして1.4個分、仮定領域Hからオフセットされた位置に位置されている。
また、本実施形態においては、画像形成領域I及びオフセット情報のうち少なくともどちらか一方が、タッチパネル90を介してユーザから入力される。画像形成領域Iのみがユーザから入力された場合は、位置記憶部154は、画像形成領域Iを記憶し、且つこの画像形成領域Iの位置と仮定領域Hの位置とに基づいてオフセット情報を算出して記憶する。また、オフセット情報のみがユーザから入力された場合は、位置記憶部154はオフセット情報を記憶し、且つこのオフセット情報と仮定領域Hの位置とに基づいて画像形成領域Iを算出して記憶する。なお、画像形成領域I及びオフセット情報について、ユーザからの入力がされない場合は、画像形成領域Iの位置と仮定領域Hの位置が同じ(オフセット量0)として処理される。
液体量補正部155は、液体量算出部153により算出された算出液体量及び算出液滴数を、仮定領域Hの位置に対する画像形成領域Iの位置のオフセット方向及びオフセット量に基づいて補正する。以下、液体量補正部155による、算出液体量及び算出液滴数の補正方法について説明する。
まず、液体量補正部155は、図6(a)に示すように、評価領域Eのそれぞれの重心位置を、当該評価領域Eの代表座標とし、図6(b)に示すように、評価領域Eのそれぞれの代表座標をXY座標系に変換する。なお、図6(b)におけるX方向は主走査方向に、Y方向は副走査方向に対応する。また、図6(b)のXY座標系は、X方向については、1つの評価領域Eの主走査方向幅を1として、Y方向については1つの評価領域Eの副走査方向幅を1として正規化されている。
そして、液体量補正部155は、図7(a)に示すように、評価領域Eのうちの補正対象となる注目評価領域の代表座標を、位置記憶部154に記憶されているオフセット方向とは逆の方向に、オフセット量分だけ移動させた座標を、当該注目評価領域の移動座標とする。そして、液体量補正部155は、移動座標と、当該移動座標を囲む4つの代表座標のうち最も近い評価領域Eの代表座標(以下、近接代表座標と称する)との距離が補間規定値以下であるか否かを判断する。ここで、「補間規定値」とは、注目評価領域の液体量及び液滴数の補正を行う際に、バイリニア法による補間処理を行うか否かを決定する指標となるものであり、移動座標と近接代表座標との距離が、この補間規定値よりも大きい場合には補間処理が行われる。なお、この補間規定値は、タッチパネル90を介してユーザが設定するようにされていてもよいし、プリンタ101において予め設定されていてもよい。また、移動座標が4つの代表座標により囲まれていない場合、即ち、本実施形態においては、移動座標のXの値が1よりも小さいか8よりも大きい場合、若しくは移動座標のYの値が1よりも小さいか8よりも大きい場合には、液体量補正部155は、注目評価領域に吐出される液体量及び液滴数の値を零に補正する。
液体量補正部155は、補間規定値以下であると判断した場合には、注目評価領域に吐出される液体量及び液滴数の値を当該移動座標に最も近い評価領域Eの算出液体量及び算出液滴数の値に補正する。一方、移動座標と、近接代表座標との距離が補間規定値よりも大きいと判断した場合には、移動座標の周囲にある4つの評価領域Eの算出液体量及び算出液滴数の値を用いたバイリニア法による補間処理を行い、注目評価領域に吐出される液体量及び液滴数の値を、当該補間処理により算出された値に補正する。なお、以下においては、上記のように液体量補正部155により補正された、評価領域Eに吐出される液体量及び液滴数を、補正後液体量及び補正後液滴数とそれぞれ称す。
以下、具体的に、図7(a)に示すように、注目評価領域の代表座標が(7,7)であり、補間規定値が0.3に設定されている場合について説明する。図5(b)に示すように、画像形成領域Iが、X方向に1.8、Y方向に1.4、仮定領域Hからオフセットされていたとすると、図7(b)に示すように、移動座標はX方向に−1.8、Y方向に−1.4だけ代表座標から移動させた(5.2,5.6)となる。そして、この移動座標に最も近い評価領域Eの代表座標(5,6)を近接代表座標とする。
このとき、移動座標と近接代表座標との距離(√((5.2−5)2+(5.6−6)2)=√0.20)は補間規定値0.3よりも大きいため、バイリニア法による補間処理を行う。具体的には、移動座標を囲む周囲の4代表座標の評価領域Eの算出液滴数及び算出液滴量の加重平均値(移動座標からの距離に比例した係数を重みとする)を求め、求めた値を当該注目評価領域の補正後液滴数及び補正後液滴量の値とする。即ち注目評価領域の補正後液滴量は次式により求められる。なお、次式において、評価領域の後に記載されたXY座標値は、その評価領域の代表座標を表す。
注目評価領域(7,7)の補正後液滴量 = 評価領域(5,6)の算出液滴量×0.8×0.6+評価領域(6,6)の算出液滴量×0.2×0.6+評価領域(5,5)の算出液滴量×0.8×0.4+評価領域(6,5)の算出液滴量×0.2×0.4
注目評価領域の補正後液滴数についても同様に求められる。また、液体量補正部155は、注目評価領域を順にかえて、用紙P上の全ての評価領域Eについて補正後液体量及び補正後液滴数を求める。
画像データ補正部156は、評価領域Eの算出液体量、及び補正後液体量のうちいずれか一方を用いて、算出液体量又は補正後液体量が液体量規定値以上である評価領域Eにおいて、当該評価領域Eに吐出される液体量を少なくするように画像データの補正をする画像データ補正処理を行う。具体的には、評価領域Eの算出液体量又は補正後液体量が液体量規定値以上の場合に、画像データ記憶部152に記憶されている画像データを、当該評価領域Eに吐出される液体量が少なくなるように補正して、当該補正後の画像データを記憶する。ここで、「液体量規定値」とは、裏移り防止を目的として設定された値である。本実施形態においては、吐出される液体量が液体量規定値以上であるとされた評価領域Eについて、当該評価領域Eに対応するインク吐出データを、優先度の低いドットから順に、吐出される液体量が液体量規定値未満となるまで、ドットサイズをより小さいドットサイズへ変換(例えば、LサイズをMサイズに変換)する。なお、優先度とは、形成される画像の画像品質に及ぼす影響度合いを表し、優先度が低いほど、画像品質への影響度合いは低い。画像データ補正部156は、本発明の処理手段に相当する。優先度の具体例としては、同じ単位領域Dについて、1色のインクが吐出される単位領域Dと複数色のインクが吐出される単位領域Dでは、1色のインクが吐出される単位領域Dの優先度を低くして小さいドットサイズへ変換を行う。これは、単色の場合、色合自体は変化しないため画像品質への悪影響が少なくなると考えられるためである。また、色の濃度が低い単位領域Dほど優先度を低くして小さいドットサイズへ変換を行う。これも、画像品質への悪影響が少なくなると考えられるためである。
判断部157は液体量フラグを記憶する。この液体量フラグは、オン状態のときは、画像データ補正部156が用いる評価領域Eのそれぞれに吐出される液体量として、液体量補正部155により補正された補正後液体量を用いることを示し、オフ状態のときは液体量算出部153により算出された算出液体量を用いることを示す。判断部157は、外部装置から記録指令を受信したときに、液体量フラグのオンオフ状態に基づいて、画像データ補正部156が用いる評価領域Eのそれぞれに吐出される液体量として、液体量算出部153により算出された算出液体量、及び液体量補正部155により補正された補正後液体量のうちのいずれを用いるかを判断する。なお、液体量フラグのオンオフ状態の設定(選択)は、タッチパネル90を介して入力されるユーザの操作入力に基づいて行われる。これにより、画像データ補正部156が用いる評価領域Eのそれぞれに吐出される液体量として、液体量算出部153により算出された算出液体量、及び液体量補正部155により補正された補正後液体量のうちのいずれを用いるかをユーザが選択することができる。なお、液体量フラグのオン、オフ状態の選択をユーザが選択するのではなく、制御の内容に応じて制御装置100が選択してもよい。
ヘッド制御部158は、画像データ補正部156に記憶されているインク吐出データ及び処理液吐出データ、及び位置記憶部154に記憶されている画像形成領域Iに基づいて、用紙Pに対して所望の体積の処理液やインクを吐出するように、各ヘッド1,2の吐出動作を制御する。
カール抑制部159は、カール予測部159aと、カール矯正部159bとを有している。カール予測部159aは、液体量補正部155により補正された各評価領域Eの補正後液滴数および補正後液体量を利用して、用紙Pのカール度合を予測する。このカール度合の予測には、制御装置100に予め記憶された、各評価領域Eの液体量および液滴数と用紙Pのカール度合との相関関係を示す液体−カール相関データが用いられる。液体−カール相関データは、実験的または理論的に作成されたマップ又は式であって、評価領域Eの位置ごと、すなわち、評価領域Eごとに作成されている。カール抑制部159は、液体−カール相関データを用いて、評価領域E毎にカール度合を算出する。そして、算出された全評価領域Eのカール度合を比較し、そのうち最大の値を用紙Pのカール度合として予測する。
カール矯正部159bは、カール予測部159aにより予測された、用紙Pのカール度合を用いて、カールしようとする用紙を矯正するために必要な矯正時間を算出する。ここで「矯正時間」とは、搬出路60において用紙Pの搬送を停止させる時間のことである。この矯正時間の算出には、制御装置100に予め記憶された、用紙Pのカール度合と矯正時間との相関関係を示すカール−矯正時間データが用いられる。カール−矯正時間データは、実験的または理論的に作成されたマップ又は式であって、用紙Pのカール度合が大きくなるほど矯正時間が長くなる傾向を有する。
このように、カール矯正部159bにより矯正時間が算出されるが、この矯正時間は調整係数aにより修正されてもよい。用紙Pの種類が普通紙より密度の小さい用紙であるときはカールが発生する傾向が高い。また、ヘッド1,2周辺の環境湿度が所定の湿度より低い湿度であるときはカールが発生する傾向が高い。そこで、調整係数aを上記のような1つ以上の因子の影響を受ける変数とし、算出された矯正時間と調整係数aとを掛け合わせたものを真の矯正時間としてもよい。また、矯正時間は、用紙Pに対する乾燥機構31による加熱処理も考慮して算出されてもよい。
カール矯正部159bは、搬送制御部151を介して、用紙Pが算出した矯正時間だけ搬出路60において停止されるように、送りローラ対28等を制御する。具体的には、カール矯正部159bは、搬出路60の終端部分に設けられた排紙センサ(不図示)を用いて、用紙Pが搬送機構16から搬出路60へ送り出されたことを検出し、矯正時間だけ送りローラ対28の回転を停止させる。これにより、用紙Pが送りローラ対28で挟まれて矯正(拘束)された状態で所定の矯正時間だけ維持され、ここで用紙Pに塗布されたインクや処理液が乾燥するので用紙Pのカールの発生が抑制される。
乾燥制御部160は、液体量補正部155により補正された各評価領域Eの補正後液体量を利用して、乾燥機構31の加熱温度分布を算出する。具体的には、液体量補正部155により補正された補正後液体量に基づいて、吐出される液体量が多い評価領域Eほど、この評価領域Eに対応する加熱面31a上の加熱領域の加熱温度が高くなるように、加熱温度分布を算出する。そして、乾燥制御部160は、算出した加熱温度分布に基づいて、乾燥機構31を制御する。これにより、用紙P上の画像形成領域Iの位置のオフセットに対応して補正された、補正後液体量を用いて、用紙Pを部分毎に乾燥させることができるので、画像ムラや記録媒体のカールを適切に抑制することができる。
入出力制御部161は、タッチパネル90の画面の表示を制御し、且つタッチパネル90を介してユーザから操作入力を受け付ける。
次に、プリンタ101の動作について、図8を参照しつつ説明する。まず、制御装置100が外部装置から記録指令を受信する(A1)と、液体量算出部153が、画像データ記憶部152に記憶されている画像データに係る画像を用紙P上の仮定領域Hに形成したと仮定した場合における、評価領域Eのそれぞれに吐出される算出液体量及び算出液滴数を算出する(A2)。このように、画像形成領域Iが位置記憶部154に記憶される前に、液体量算出部153により、評価領域Eのそれぞれに吐出される算出液体量及び算出液滴数の算出が行われるので、この算出液体量及び算出液滴数を用いた画像データ補正処理等の処理を早い段階で開始することができ、その結果、プリンタ101の処理効率を向上させることができる。
次に、判断部157が、液体量フラグがオン状態であるかオフ状態であるかを判断する(A3)。オン状態であると判断した場合(A3:YES)には、ステップA5の処理に移る。一方、オフ状態であると判断した場合(A3:NO)には、画像データ補正部156が、液体量算出部153により算出された算出液体量を用いて、画像データ補正処理を開始する(A4)。
次に、制御装置100は、位置記憶部154に画像形成領域Iが記憶されているか否かを判断する(A5)。画像形成領域Iが記憶されていないと判断した場合(A5:NO)には、ステップA5の処理を繰り返す。一方、画像形成領域Iが記憶されていると判断した場合(A5:YES)には、液体量補正部155が、液体量算出部153により算出された算出液体量及び算出液滴数を、仮定領域Hの位置に対する画像形成領域Iの位置のオフセット方向及びオフセット量に基づいて補正する(A6)。そして、液体量補正部155により補正された補正後液体量及び補正後液滴数を用いて、カール抑制部159が用紙Pのカール度合の予測及び矯正時間の算出を開始し、且つ乾燥制御部160が加熱温度分布の算出を開始する(A7)。なお、上述のステップA3の処理において液体量フラグがオン状態であると判断していた場合(A3:YES)には、ステップA7の処理において、画像データ補正部156が、液体量補正部155により補正された補正後液体量を用いて、画像データ補正処理を開始する。
次に、制御装置100は、画像データ補正部156による画像データ補正処理が終了しているか否かを判断する(A8)。画像データ補正処理が終了していないと判断した場合(A8:NO)には、ステップA8の処理を繰り返す。一方、画像データ補正処理が終了したと判断した場合(A8:YES)には、搬送制御部151が搬送機構16を駆動して、用紙Pを搬送させるとともに、ヘッド制御部158が、画像データ補正部156により補正された画像データを用いて、用紙P上の画像形成領域Iに画像が形成されるように、ヘッド1,2の吐出動作を制御する(A9)。これにより、画像データ補正部156が、液体量算出部153により算出された算出液体量を用いて画像データ補正処理を行っていた場合には、当該画像データ補正処理が液体量補正部155による補正が行われる前に開始されているので、画像形成動作を早く行うことができ、その結果、プリンタ101の処理効率を上げることができる。一方、画像データ補正部156が、液体量補正部155により補正された補正後液体量を用いて画像データ補正処理を行っていた場合には、正確な液体の吐出量分布に基づいて画像データをより正確に補正することができるので、裏移りを確実に防止することができる。なお、液体量フラグがオフ状態の場合には、評価領域Eに対応する実際の用紙Pの領域における正確な液体量が把握できない場合(オフセット量が大きい場合)があるので、液体量フラグがオフ状態の場合における画像データ補正処理は全てのインク吐出データ(又は処理液吐出データ)に対して行ってもよい。
ステップA9の処理の後、カール抑制部159が、搬送制御部151を介して送りローラ対28等を制御して、用紙Pが算出した矯正時間だけ搬出路60において停止させる(A10)。また、乾燥制御部160が、乾燥機構31を制御して、算出した加熱温度分布に基づいて、搬出路60にて停止されている用紙Pを乾燥させる。これにより、画像ムラや記録媒体のカールを適切に抑制することができる。以上、プリンタ101の動作について説明した。
以上、本実施形態によると、用紙P上に区画された複数の評価領域Eのそれぞれに吐出される液体量を算出した後に、用紙P上の画像形成領域Iの位置がオフセットされた場合であっても、このオフセットに対応して評価領域Eのそれぞれに吐出される液体量が補正されるので、用紙Pに吐出される液体の正確な吐出量分布を求めることができる。
また、本実施形態によると、評価領域Eの位置と、液体量補正部155により補正された評価領域Eの補正後液体量及び補正後液滴数とを用いて、用紙Pに液体が吐出されることにより発生するカール度合を予測するため、予測されるカール度合を正確なものにすることができる。その結果、用紙Pのカールを適切に抑制することができる。また。カール度合の予測は、補正後液体量のみならず補正後液滴数を用いて予測しているため、予測されるカール度合をより正確なものにすることができる。
また、本実施形態によると、液体量補正部155により補正された評価領域Eの補正後液体量を用いて加熱温度分布を算出し、当該加熱温度分布に基づいて用紙Pを部分毎に乾燥させているため、画像ムラや用紙Pのカールを適切に抑制することができる。
また、本実施形態によると、画像データ補正部156が、液体量算出部153により算出された算出液体量を用いて画像データの補正を行う場合には、当該画像データの補正が、液体量補正部155による算出液体量の補正が行われる前に開始されるため、プリンタ101の処理効率を向上することができる。
また、本実施形態によると、画像データ補正部156が用いる評価領域Eのそれぞれに吐出される液体量として、液体量算出部153により算出された算出液体量、及び液体量補正部155により補正された補正後液体量のうちのいずれを用いるかを、ユーザが選択することができる。従って、処理の内容に応じて、プリンタ101の処理効率を優先するか、裏移り防止のための処理の正確さを優先するかをユーザが選択することができる。
また、本実施形態によると、液体量補正部155は、補間処理を用いて、補正後液体量及び補正後液滴数を算出しているため、用紙Pに吐出される液体の吐出量分布をより正確に求めることができる。
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、上述の実施形態においては、各評価領域Eは8×6の単位領域Dを有する構成にされているが、各評価領域Eが1つの単位領域Dのみから構成されていてもよいし、用紙P上の半分の領域を占める複数の単位領域Dから構成されていてもよい。即ち、用紙P上において、少なくとも2つの評価領域Eが存在するようにされていればよい。
また、上述の実施形態においては、評価領域Eの代表座標は、当該評価領域の重心位置とされているが、特にこれに限定されるものではなく、評価領域E内の同一位置であれば他の位置を代表座標としてもよい。また、液体量補正部155が行う補間処理としてバイリニア法を用いているが、バイキュービック法等の補間方法を用いて補間処理が行われてもよい。またさらに、上述の実施形態においては、液体量補正部155が補正を行う際には、上述のように移動座標と近接代表座標とが補間規定値以上離れている場合に補間処理を行うようにされているが、補間処理を行わずに、移動座標に最も近い評価領域の算出液体量及び算出液滴数を、注目評価領域の補正後液体量及び補正後液滴数としてもよい。この場合、補間処理を行わない分、プリンタ101の処理効率を向上させることができる。また、液体量補正部155により補正を行う際において、補間処理を行うか否かをユーザが選択することができるようにされていてもよい。
また、上述の実施形態では、画像形成領域Iが記憶されていないと判断した場合には、ステップA5(図8)の処理を繰り返す構成であるが、画像形成領域Iが記憶されていない場合に、画像形成領域Iの位置と仮定領域Hの位置が同じ(オフセット量0)として処理してもよい。
また、上述の実施形態では、液体量フラグのオン状態、オフ状態の選択をユーザが選択する構成であるが、常に液体量フラグのオフ状態に設定しておき、常に画像データ補正処理が液体量及び液滴数の補正より先に行われる構成であってもよい。
また、上述の実施形態では、ブラックのインクジェットヘッド1だけでなく、シアン、マゼンタ、イエローのインクジェットヘッド1を有する構成であるが、シアン、マゼンタ、イエローのインクジェットヘッド1を有さない構成であってもよい。また、処理液ヘッド2を有さない構成であってもよい。
また、搬送機構16が、2つのベルトローラ6、7と、搬送ベルト8と、テンションローラ10と、プラテン18とを有している構成であるが、搬送ベルトを有せず、複数の拍車ローラ38等により用紙Pを搬送する構成であってもよい。
また、カール矯正部159bにより算出された矯正時間が或閾値より大きい場合には、画像データ補正部156が、インク又は処理液のドットサイズ、液滴数を減らして矯正時間が短くなるようインク吐出データ又は処理液吐出データを変更してもよい。
また、本発明は、インク以外の液体を吐出する液体吐出装置にも適用可能である。さらに、プリンタに限定されず、ファクシミリやコピー機などにも適用可能である。