JP5639977B2 - 熱可塑性樹脂フィルムの延伸方法及び装置、並びに溶液製膜方法 - Google Patents
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Description
図1に示すように、溶液製膜設備10は、ドープ12からフィルム13をつくる流延装置15と、フィルム13の延伸処理を行なうクリップテンタ17と、フィルム13の乾燥を進める乾燥装置18と、フィルム13を巻き芯に巻き取る巻取装置19とを有する。
図2に示すように、クリップテンタ17は、ケーシング42と、ケーシング42内に配された延伸装置43とを備える。ケーシング42内には、フィルム13を導入する入口42Aと、フィルム13を外部へ送り出す出口42Bが設けられる。また、ケーシング42の内部には、搬送路42Rが、入口42Aから出口42Bにかけて形成される。ケーシング42は、フィルム13の搬送方向(以下、方向Z1と称する)の上流側から順に、予熱エリア42AA、拡幅エリア42AB、熱緩和エリア42AC及び冷却エリア42ADに区画される。なお、熱緩和エリア42AC及び冷却エリア42ADは省略してもよい。
予熱用空調機55Aは、搬送路42Rの上方及び下方にそれぞれ配される。搬送路42Rの上方に配された予熱用空調機55Aと搬送路42Rの下方に配された予熱用空調機55Aとは同様の構造を有するため、以下、搬送路42Rの上方に配された予熱用空調機55Aについて説明し、搬送路42Rの下方に配された予熱用空調機55Aの説明は省略する。
図1に示すように、各空調機55B〜55Dは、それぞれ、搬送路42Rの上方及び下方に配される。搬送路42Rの上方に配された各空調機55B〜55Dと搬送路42Rの下方に配された各空調機55B〜55Dとは同様の構造を有するため、以下、搬送路42Rの上方に配された拡幅用空調機55Bについて説明し、それ以外の空調機55B〜55Dの詳細な説明は省略する。
図1に示すように、熱緩和用空調機55Cは、熱緩和用ガス送出器を用いて、搬送路42Rに向けて所定の温調ガスを送り出す。同様に、冷却用空調機55Dは、冷却用ガス送出器を用いて、搬送路42Rに向けて所定の温調ガスを送り出す。
図3に示すように、ガス供給機58は、所定の温度の過熱水蒸気60を予熱用ガス送出器56へ送る。予熱用ガス送出器56は、超音波振動器56V(図4参照)を用いて、ダクト56Dを振動させる。予熱工程では、ノズル56Nを用いて、振動状態のダクト56Dを通った過熱水蒸気60をフィルム13に向けて送り出す。これにより、Z2方向において均一の量の過熱水蒸気60をフィルム13に向けて送り出すことができる。そして、振動状態のダクト56Dを通った過熱水蒸気60は、フィルム13にあたる。
拡幅エリア42ABのZ1方向上流端である位置PSでは、フィルム13を方向Z2へ拡幅する拡幅工程が開始する。そして、クリップ50が耳部を把持したまま位置PSから位置PEへ到達すると、レール51,52の間隔に応じた拡幅率(例えば、5%以上50%以下)で、フィルム13が拡幅される。拡幅率は、位置PSにおけるフィルム13の幅をW1とし、位置PEにおけるフィルム13の幅をW2としたときに、100×(W2−W1)/W1、と表される。拡幅エリア42ABのZ1方向下流端である位置PEでは、フィルム13を方向Z2へ拡幅する拡幅工程が完了する。ガス供給機68は、所定の温度(例えば、80℃以上200℃以下)の温調ガス65を拡幅用ガス送出器66へ送る。拡幅用ガス送出器66は、温調ガス65をフィルム13へあてる。温調ガス65がフィルム13にあたることにより、フィルム13は、拡幅が可能な状態となる。
熱緩和用空調機55Cは、所定の温度(例えば、80℃以上200℃以下)の温調ガスをフィルム13に向けて送り出す。熱緩和用空調機55Cからの温調ガスがフィルム13にあたることにより、フィルム13は、拡幅工程によって生じた歪みが緩和可能な状態となる。
冷却用空調機55Dは、所定の温度(例えば、50℃以上150℃以下)の温調ガスをフィルム13に向けて送り出す。温調ガスがフィルム13にあたることにより、フィルム13の温度は、所定の温度まで下がる。
Re=|n1−n2|×d
n1は遅相軸の屈折率,n2は進相軸2の屈折率,dはフィルムの厚み(膜厚)を表す
Rth={(n1+n2)/2−n3}×d
n3は厚み方向の屈折率を表す。
上記実施形態では、熱可塑性樹脂フィルムの原料となる熱可塑性樹脂は、特に限定されず、例えば、セルロースアシレートや環状ポリオレフィン等がある。
セルロースアシレートのアシル基は1種類だけでも良いし、あるいは2種類以上のアシル基が使用されていても良い。2種類以上のアシル基を用いるときは、その1つがアセチル基であることが好ましい。セルロースの水酸基をカルボン酸でエステル化している割合、すなわち、アシル基の置換度が下記式(I)〜(III)の全てを満足するものが好ましい。なお、以下の式(I)〜(III)において、A及びBは、アシル基の置換度を表わし、Aはアセチル基の置換度、またBは炭素原子数3〜22のアシル基の置換度である。なお、トリアセチルセルロース(TAC)の90重量%以上が0.1mm〜4mmの粒子であることが好ましい。
(I) 2.0≦A+B≦3.0
(II) 1.0≦ A ≦3.0
(III) 0 ≦ B ≦2.0
ドープを調製する溶剤としては、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン,トルエンなど)、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタン,クロロベンゼンなど)、アルコール(例えば、メタノール,エタノール,n−プロパノール,n−ブタノール,ジエチレングリコールなど)、ケトン(例えば、アセトン,メチルエチルケトンなど)、エステル(例えば、酢酸メチル,酢酸エチル,酢酸プロピルなど)及びエーテル(例えば、テトラヒドロフラン,メチルセロソルブなど)などが挙げられる。なお、本発明において、ドープとはポリマーを溶剤に溶解または分散して得られるポリマー溶液,分散液を意味している。
以下の方法により、実験1〜2を行った。各実験の詳細は、実験1について詳細に行い、実験2について、実験1と同じ箇所の説明は省略し、異なる部分の説明をする。
ドープ12の調製に用いた化合物の処方を下記に示す。
セルローストリアセテート(置換度2.86) 100 質量部
トリフェニルホスフェート(TPP) 10 質量部
マット剤(AEROSIL R972) 0.03質量部
の組成比からなる固形分を
ジクロロメタン 80 質量部
メタノール 13.5 質量部
n−ブタノール 6.5 質量部
からなる混合溶剤に適宜添加し、攪拌溶解してドープ12を調製した。
なお、ここで使用したセルローストリアセテート(TAC)は、残存酢酸量が0.1質量%以下であり、Ca含有率が58ppm、Mg含有率が42ppm、Fe含有率が0.5ppmであり、遊離酢酸40ppm、さらに硫酸イオンを15ppm含むものであった。また6位水酸基の水素に対するアセチル基の置換度は0.91であった。また、全アセチル基中の32.5%が6位の水酸基の水素が置換されたアセチル基であった。また、このTACをアセトンで抽出したアセトン抽出分は8質量%であり、その質量平均分子量/数平均分子量比は2.5であった。また、得られたTACのイエローインデックスは1.7であり、ヘイズは0.08、透明度は93.5%であった。このTACは、綿から採取したセルロースを原料として合成されたものである。
実験2では、予熱エリア42AAにおいて、超音波振動器によって振動しているダクト内を通った過熱水蒸気に代えて、乾いた熱気(湿度2%RH以下、温度180℃)をフィルム13へあてたこと、拡幅エリア42ABにてフィルム13にあてた温調ガスの温度が温度180℃であったこと、及び熱緩和エリア42ACにてフィルム13にあてた温調ガスの温度が温度170℃であったこと以外は、実験1と同様にして、フィルム13をつくった。
得られたフィルム13について、次の評価を行なった。
ロール状のフィルム13からサンプルフィルム(長さ10mm)を切り出し、自動複屈折率計を用いて、サンプルフィルムの長手方向において連続的に面内レターデーションReを測定した。そして、面内レターデーションReの測定値のうち、最大値から最小値を減じて、面内レターデーションReの変動量を得た。面内レターデーションReの変動量を表1に示す。
サンプルフィルムを温度25℃,湿度60%RHで2時間調湿し、自動複屈折率計(KOBRA21ADH 王子計測(株))にて589.3nmにおける垂直方向から測定したレターデーション値の外挿値より次式に従い算出した。
Re=|nX−nY|×d
nXは、遅相軸方向における屈折率,nYは進相軸方向の屈折率,dはフィルムの厚み(膜厚)を表す。
13 フィルム
15 流延装置
17 クリップテンタ
42R 搬送路
50 クリップ
51、52 レール
55 空調機
55A 予熱用空調機
56 予熱用ガス送出器
56D ダクト
56N ノズル
56V 超音波振動器
60 過熱水蒸気
Claims (12)
- フィルム移動路の両側に配され熱可塑性樹脂フィルムの両側縁部を把持する1対の把持具と、前記1対の把持具を前記フィルム移動路に沿って移動させる把持具移動機構とを備えた延伸装置を用いて、前記熱可塑性樹脂フィルムを延伸する熱可塑性樹脂フィルムの延伸方法において、
前記熱可塑性樹脂フィルムの幅方向の間隔が一定の状態で移動する前記1対の把持具によって前記両側縁部が把持された前記熱可塑性樹脂フィルムへ、超音波振動器により振動状態となった被振動部材を通過した過熱水蒸気をあてる予熱工程と、
前記予熱工程の後に行われ、前記間隔が漸増しながら移動する前記1対の把持具によって前記両側縁部が把持された前記熱可塑性樹脂フィルムへ温調ガスをあてる拡幅工程と、
前記拡幅工程の後に行われ、前記1対の把持具によって前記両側縁部が把持された前記熱可塑性樹脂フィルムへ温調ガスをあてて、前記拡幅工程によって前記熱可塑性樹脂フィルムに生じた歪みを緩和する熱緩和工程とを有することを特徴とする熱可塑性樹脂フィルムの延伸方法。 - 溶剤含有率が40質量%以下の前記熱可塑性樹脂フィルムに対し前記予熱工程を行なうことを特徴とする請求項1項記載の熱可塑性樹脂フィルムの延伸方法。
- 前記拡幅工程にて前記熱可塑性樹脂フィルムへあてる前記温調ガスは、過熱水蒸気であることを特徴とする請求項1または2記載の熱可塑性樹脂フィルムの延伸方法。
- 前記熱緩和工程にて前記熱可塑性樹脂フィルムへあてる前記温調ガスは、過熱水蒸気であることを特徴とする請求項1ないし3のうちいずれか1項記載の熱可塑性樹脂フィルムの延伸方法。
- 前記予熱工程において、前記延伸装置及び前記フィルム移動路を収容するケーシングのフィルム入口に向けて、前記過熱水蒸気を送り出すことを特徴とする請求項1ないし4のうちいずれか1項記載の熱可塑性樹脂フィルムの延伸方法。
- 熱可塑性樹脂及び溶剤を含むドープを支持体に向けて流出して、前記ドープからなる膜を前記支持体に形成する膜形成工程と、
前記膜に乾燥風をあてて前記膜から前記溶剤を蒸発させる膜乾燥工程と、
前記膜乾燥工程を経た前記膜を前記支持体から剥ぎ取って前記熱可塑性樹脂フィルムを得る剥取工程とを有し、
請求項1ないし5のうちいずれか1項記載の熱可塑性樹脂フィルムの延伸方法を前記熱可塑性樹脂フィルムに対し行なうことを特徴とする溶液製膜方法。 - 予熱エリア、拡幅エリア、及び熱緩和エリアの順に熱可塑性樹脂フィルムが通るように設定されたフィルム移動路の両側に配され、前記予熱エリアにおける前記熱可塑性樹脂フィルムの幅方向の間隔が前記熱可塑性樹脂フィルムの移動方向上流側から下流側に向かって一定であり、前記拡幅エリアにおける前記間隔が前記移動方向上流側から下流側に向かって漸増する1対のレールと、
前記1対のレールに沿って移動し、前記熱可塑性樹脂フィルムの両側縁部を把持可能な1対の把持具と、
前記予熱エリアに設けられ、前記予熱エリアにある前記熱可塑性樹脂フィルムへ過熱水蒸気をあてる予熱用ガス送出器とを備え、
前記予熱用ガス送出器は、
前記過熱水蒸気が流通するダクトと、
前記ダクトのうち前記フィルム移動路の対向部に形成され、前記フィルム移動路に向けて前記過熱水蒸気を先端から送り出すノズルと、
前記過熱水蒸気を振動させる超音波振動器とを有することを特徴とする熱可塑性樹脂フィルムの延伸装置。 - 前記ノズルの先端は、前記フィルム移動路、前記1対のレール、前記1対の把持具、及び前記予熱用ガス送出器を収容するケーシングのフィルム入口に向かって延設されたことを特徴とする請求項7記載の熱可塑性樹脂フィルムの延伸装置。
- 前記超音波振動器は前記ダクトに取り付けられたことを特徴とする請求項7または8記載の熱可塑性樹脂フィルムの延伸装置。
- 前記超音波振動器は前記ノズルに取り付けられたことを特徴とする請求項7ないし9のうちいずれか1項記載の熱可塑性樹脂フィルムの延伸装置。
- 前記拡幅エリアに設けられ、前記拡幅エリアにある前記熱可塑性樹脂フィルムへ過熱水蒸気をあてる拡幅用ガス送出器を備えたことを特徴とする請求項7ないし10のうちいずれか1項記載の熱可塑性樹脂フィルムの延伸装置。
- 前記熱緩和エリアに設けられ、前記熱緩和エリアにある前記熱可塑性樹脂フィルムへ過熱水蒸気をあてる熱緩和用ガス送出器を備えたことを特徴とする請求項7ないし11のうちいずれか1項記載の熱可塑性樹脂フィルムの延伸装置。
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