JP5634525B2 - リチウム一次電池 - Google Patents

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Description

本発明は、リチウム一次電池に関する。
リチウム一次電池は、エネルギー密度が高く、保存性などの信頼性に優れ、また、小型化および軽量化が可能である。このことから、各種電子機器の主電源およびメモリバックアップ用電源として、リチウム一次電池の需要は年々増加している。近年、スマートキー(登録商標)に代表されるように、リチウム一次電池の用途を車分野に展開することが期待されている。このような背景のもと、リチウム一次電池の特徴である高いエネルギー密度を維持したまま、出力特性、特に、瞬時の大電流特性であるパルス(間欠)放電特性を向上させることが要望されている。
リチウム一次電池の一つに、正極活物質としてフッ化黒鉛を用い、負極活物質として金属リチウムまたはその合金を用いた、フッ化黒鉛リチウム電池が知られている。フッ化黒鉛リチウム電池は、正極活物質であるフッ化黒鉛が864mAh/gという大きな電気容量密度を有し、熱的および化学的に安定であり、長期保存特性に優れている。
特許文献1には、フッ化黒鉛リチウム電池の正極材料に金属または金属酸化物の微粒子を添加することが開示されている。このような微粒子の添加により、正極材料と集電体との間の密着性が増すため、正極材料と集電体との間の接触抵抗が低減され、低温での電流特性に優れたリチウム一次電池が得られる。しかし、添加された微粒子は、電池反応に関与せず、正極材料と集電体との間の密着性を改善するのみであるため、大電流特性の改善には限界がある。また、この微粒子のように電池反応に関与しない物質を正極材料に添加することは、電池のエネルギー密度の実質的な低下につながる。
特許文献2には、ベンゾキノン誘導体を含む非水電解液を用いたフッ化黒鉛リチウム電池が開示されている。非水電解液中のベンゾキノン誘導体が電子を受け取る反応は、固体である正極活物質が電子を受け取る反応よりも速く、かつ、ベンゾキノン誘導体は、放電時の正極電位に近い電位において還元される。そのため、大電流の放電時には正極活物質よりも先にベンゾキノン誘導体が反応する。このような一次電池は、大電流の放電時の過電圧を小さくし、電圧低下を抑制することができる。
しかし、このような一次電池において、ベンゾキノン誘導体は非水電解液中に存在する。したがって、放電により還元状態へと変化したベンゾキノン誘導体を、放電前の酸化状態のベンゾキノン誘導体へと変換することは困難である。そのため、一次電池の間欠的な使用において、複数回にわたって電圧降下を抑制する効果を得ることは困難である。また、非水電解液中に存在するベンゾキノン誘導体は、正極活物質として機能しない。放電時の電流の一部はベンゾキノン誘導体の還元反応により消費されるため、放電効率、すなわちエネルギー密度が低くなる。
ところで、特許文献3には、蓄電デバイスに用いられる正極活物質として、複数のフェナントレンキノン化合物の残基と、その間に配置されたリンカー部位とを有する有機化合物およびその重合体が開示されている。この正極活物質を用いた蓄電デバイスは、高いエネルギー密度、および優れた充放電サイクル特性を示す。
特開2007−200681号公報 国際公開第2007/032443号 国際公開第2009/118989号
以上のように、リチウム一次電池の出力特性を改善する試みはなされているものの、リチウム一次電池の特徴である高いエネルギー密度を維持したまま、複数回の使用にわたって優れたパルス放電特性を示すリチウム一次電池に関する知見は不足している。
本発明は、これらの事情に鑑みてなされたものであり、エネルギー密度を大きく低下させることなく、出力特性、特に、パルス放電特性を向上させたリチウム一次電池を提供することを目的とする。
すなわち、本発明は、
リチウムイオンを吸蔵することができる第一活物質と、リチウムイオンを吸蔵および放出することができる第二活物質とを含む正極を備え、
当該リチウム一次電池が開回路状態にある間に、前記第二活物質が前記第一活物質によって自然充電されるリチウム一次電池を提供する。
本発明では、正極において第一活物質と第二活物質とが用いられている。第一活物質として、リチウムイオンを吸蔵することができる材料を用いることにより、十分なエネルギー密度を確保できる。第二活物質として、リチウムイオンを吸蔵および放出することができる材料を用いることにより、優れたパルス放電特性を得ることができる。さらに、当該リチウム一次電池が開回路状態にある間に、還元状態の第二活物質が第一活物質によって、酸化状態の第二活物質へと自然充電される。したがって、本発明のリチウム一次電池によれば、第二活物質として、第一活物質よりも出力特性(特に、パルス放電特性)に優れた材料を用いることで、第二活物質に由来する良好なパルス放電特性を複数回にわたって得ることができる。第二活物質は第一活物質とともに正極活物質として機能するので、エネルギー密度の低下の問題は起こりにくい。以上のように、本発明によると、エネルギー密度を大きく低下させることなく、出力特性、特に、パルス放電特性の向上したリチウム一次電池を提供できる。
本発明によるリチウム一次電池の一実施形態であるコイン型リチウム一次電池を示す模式的な断面図である。 実施例1における間欠放電試験の結果を示すグラフである。 比較例1における連続放電試験の結果を示すグラフである。
以下、本発明のリチウム一次電池の実施形態を説明する。図1は、本発明によるリチウム一次電池の一実施形態であるコイン型リチウム一次電池1の模式的な断面を示している。この一次電池1は、コイン型ケース50、封口板51、およびガスケット52によって内部が密閉された構造を有する。一次電池1の内部には、正極活物質層11および正極集電体12を備える正極10と、負極活物質層21および負極集電体22を備える負極20と、セパレータ30とが収められている。正極10および負極20はセパレータ30を挟んで対向し、正極活物質層11および負極活物質層21がそれぞれセパレータ30と接するように配置されている。正極10、負極20、およびセパレータ30からなる電極群には、電解液31が含浸されている。
正極活物質層11は、少なくとも2種の活物質を正極活物質として含む。少なくとも2種の活物質のうちの1種は、リチウムイオンを吸蔵することができる第一活物質である。少なくとも2種の活物質のうちのもう1種は、リチウムイオンを吸蔵および放出することができる第二活物質である。すなわち、第二活物質はリチウム二次電池にも使用できる正極活物質である。電解液31は、リチウムイオンとアニオンとの塩を含む電解質を含有している。
本実施形態のリチウム一次電池が高容量と高出力(優れたパルス放電特性、つまり繰り返しの出力特性)とを実現できる理由として、以下に説明する2つの理由が挙げられる。
第1の理由は、正極に含まれる活物質が2種であること、および、当該2種の活物質のそれぞれが有する材料特性、特に、放電特性にある。
正極に含まれる2種の活物質のうち、1種は、リチウムイオンを吸蔵することができる正極活物質(第一活物質)である。第一活物質は、リチウム一次電池の正極における主たる活物質である。なお、「主たる活物質」とは、リチウム一次電池の全容量に対して50%以上の容量を占める活物質を意味する。第一活物質として、放電に伴い負極から正極にリチウムイオンが移動することによって3V級の高電圧および高容量を実現することができる材料、特に、無機化合物を好適に使用できる。他方、正極に含まれる2種の活物質のうち、他の1種は、リチウムイオンを吸蔵および放出することができる正極活物質(第二活物質)である。第二活物質は、第一活物質よりも出力特性の良好な材料であることが好ましい。特に、第二活物質としては、リチウムイオンと可逆な酸化還元反応を行う有機化合物が好ましい。
リチウムイオンを吸蔵できる無機化合物を第一活物質として用い、リチウムイオンと酸化還元反応を行える有機化合物を第二活物質として用いることで、高容量と繰り返し大電流特性とを両立できる理由は必ずしも明らかではないが、発明者らは次のように考えている。すなわち、第一活物質は固体粒子の状態で存在するため、粒子の内部ではリチウムイオンの拡散距離および電子伝導距離が比較的長く、これらに由来する抵抗値が大きく、結果としてリチウムイオンとの反応が遅くなる。これに対し、有機化合物である第二活物質は、特定の有機溶媒に分散または溶解させることが可能であり、これによって分子レベルで分散した状態で存在することが可能であるため、活物質内のリチウムイオン拡散距離は短くなり、反応速度が速くなる。このように、第二活物質である有機化合物がリチウムイオンを吸蔵する反応は、第一活物質がリチウムイオンを吸蔵する反応よりも速い。リチウムイオンとの反応が速いことは、大電流特性が良好であることを意味する。
通常、リチウムイオンとの反応が遅い活物質を用いて大電流放電を行った場合、反応抵抗が大きいため、電圧は開回路電圧から大きく降下する。その後、時間の経過とともに活物質とリチウムイオンとの反応経路が形成されるにつれて、電圧がゆっくりと上昇し、放電を行えるようになる。放電電流値が小さいときは電圧降下が小さく無視できるが、放電電流値が大きいとき(大電流放電を行ったとき)は、電池が搭載されている機器の動作下限電圧以下にまで電圧が降下し、機器を作動できないことがある。すなわち、活物質とリチウムイオンとの反応が遅い場合、利用できる放電電流値の範囲が狭くなることがある。
これに対し、リチウムイオンとの反応が高速である活物質を用いた場合、放電電流の取り出しに伴う電圧降下が小さいため、大電流での放電が可能となる。それゆえ、リチウムイオンと高速で反応できる第二活物質と第一活物質とを混合して用いることにより、第一活物質から電流を取り出すことが困難となる程の大電流で放電を行っても、第二活物質から電流を取り出すことができるため、電池として利用できる放電電流値の範囲を広くすることができる。
以上のとおり、リチウムイオンと可逆な酸化還元反応を行う有機化合物である第二活物質は、高出力、特に、優れたパルス放電特性に寄与することができる。さらに、第二活物質は、それ自身が酸化還元容量を有しているため、第一活物質とともに用いられてもエネルギー密度を大きく低下させることがない。すなわち、第二活物質は高容量と高出力との両方に寄与することができる。
第2の理由は、2種の活物質を用いることによる相乗効果である。これについて、以下、リチウム電極に対する第一活物質の放電深度0%における開回路電位と、第一活物質の平均放電電位と、リチウム電極に対する第二活物質の放電深度0%における開回路電位との関係から具体的に説明する。なお、「リチウム電極に対する活物質の放電深度0%における開回路電位」とは、負極としてリチウム電極を用い、当該活物質のみを正極活物質として含む正極を用いて構成されたリチウム一次電池の放電深度0%における開回路電圧を意味する。以下、リチウム電極に対する活物質の放電深度0%における開回路電位を、単に「活物質の開回路電位」と表記することがある。また、「活物質の平均放電電位」とは、リチウム電極に対する活物質の放電深度50%における放電電位を意味する。
まず、第二活物質の開回路電位が第一活物質の開回路電位よりも低いことが好ましい。第二活物質の開回路電位は、例えば、第一活物質の開回路電位よりも0.05V〜1.0V低いことが好ましい。
このような場合、正極から大電流を取り出す(高出力を必要とする)際に、高電位側の化合物、すなわち、第一活物質から先に電流が取り出される。第一活物質の放電反応は比較的遅いため、第一活物質から先に大電流を取り出そうとすると抵抗が大きくなり電圧が降下する。しかし、第一活物質よりも放電反応の比較的速い第二活物質は、電圧が第二活物質の放電開始電位にまで低下した時点で放電反応を開始できる。第二活物質の放電反応が進行している間に、第一活物質はリチウムイオンとの反応経路を形成して放電を行えるようになる。例えば、第一活物質をフッ化黒鉛とすると、放電反応の初期においてフッ化黒鉛の表面には抵抗の大きな被膜が形成されるため、電圧が降下し、第二活物質の放電反応が始まる。第二活物質の放電反応が進行している間に、フッ化黒鉛は抵抗の小さい被膜を表面に形成し、その後、第二活物質とともに放電反応を行うことができる。このように、大電流での放電に寄与できる第二活物質、すなわち、高出力を有する第二活物質と、高容量を有する第一活物質とは、互いに補完しながら放電できる。
さらに、第二活物質の開回路電位が、第一活物質の開回路電位よりも低く、かつ、第一活物質の平均放電電位よりも高いことがより好ましい。
このような場合、電池の放電を中断したときに第二活物質の充電電位が正極電位と第一活物質の放電電位との間に存在する、という関係を、広い放電深度範囲にわたって得やすい。非通電状態の電池においてこの関係が満足されるならば、放電状態の第二活物質は第一活物質によって自然充電される。つまり、放電により還元状態となった第二活物質は、放電されていない第一活物質によって酸化され、酸化状態、すなわち、充電状態の第二活物質へと変換される。仮に正極内の第二活物質のすべてが放電したとしても、第二活物質の充電電位が正極電位と第一活物質の放電電位との間にあれば、第二活物質は第一活物質によって自然充電される。自然充電された第二活物質は、再び大電流での放電に寄与することができる。
ここで、電池の放電深度がおおよそ5〜90%の領域は、電池の放電曲線における放電平坦部(プラトー領域)にあたり、この領域では通常の放電反応によって安定に電流を取出すことができる。また、この領域では、第一活物質は第二活物質を充電するための十分な容量を有する。これらの観点から、例えば、電池の放電深度が5%〜90%の範囲において、リチウム基準で[正極電位]>[第二活物質の充電電位]>[第一活物質の放電電位]の関係を満たせば、実用上問題ない。なお、本明細書中において、「正極電位」とは開回路状態での正極電位を意味する。正極電位は、負極に対する正極の電位、すなわち、電池電圧として定義される。開回路状態とは、電池と負荷との間の導通が遮断された状態、すなわち、電池が負荷に接続されていない状態(無負荷状態)を意味する。ただし、半導体スイッチに流れる漏れ電流など、極めて微弱な電流が流れている状態は無負荷状態とみなすことができる。このように、放電状態の第二活物質は第一活物質によって自然充電されるため、大量の第二活物質を正極に加えずとも、大電流での放電(大電流パルス放電)を複数回にわたって行うことができる。
以上の2つの理由により、本発明によって高容量と高出力(優れたパルス放電特性)とを有するリチウム一次電池を提供することができる。
以下、本実施形態のリチウム一次電池に用いることができる構成材料について説明する。
第一活物質としては、開回路電位が高く、高容量を有するリチウム一次電池用の正極活物質を用いることができる。エネルギー密度の観点から、第一活物質は、放電を行うことができる電位範囲をリチウム基準で約1.5〜4Vに有する正極活物質であることが好ましい。具体的な第一活物質としては、フッ化黒鉛、二酸化マンガン、塩化チオニルなどが挙げられる。中でも、フッ化黒鉛を第一活物質として用いることが好ましい。フッ化黒鉛を第一活物質として用いると、放電容量が大きく、放電挙動が平坦であるなどの理由により、高容量かつ放電特性の良好な正極とすることができる。フッ化黒鉛は、電解液の種類、試験電流値、温度などの条件によっても異なるが、リチウム基準でおおよそ2.0〜4.0Vにおいて放電を行うことができる。フッ化黒鉛の開回路電位はリチウム基準でおおよそ3.0〜3.8Vである。また、フッ化黒鉛の平均放電電位はリチウム基準で2.5〜3.2V程度である。二酸化マンガンは、リチウム基準でおおよそ2.0〜3.5Vにおいて放電を行うことができ、平均放電電位は2.7V程度である。塩化チオニルは、リチウム基準でおおよそ2.0〜4.0Vにおいて放電を行うことができ、平均放電電位は3.6V程度である。
第二活物質としては、リチウムイオンと可逆に酸化還元反応を行う有機化合物を用いることができる。上述したように、第一活物質の平均放電電位はリチウム基準で約1.5〜4Vであることが好ましい。したがって、第二活物質としては、リチウムイオンを吸蔵および放出することができる電位範囲がリチウム基準で約2〜4Vに存在する材料であることが特に好ましい。
一般に、リチウム一次電池を搭載する機器の動作下限電圧は2.0V程度である。そのため、本実施形態のリチウム一次電池の動作下限電圧も2.0V以上に設定される。本実施形態において、第一活物質の放電電位は、概ね2.5〜3.5Vに存在する。本実施形態のリチウム一次電池の平均放電電圧は2.3〜3.0V付近に存在する。したがって、第二活物質の平均放電電位は、リチウム一次電池の負極に対して2.0V以上に存在することが望ましい。第二活物質の平均放電電位は、第一活物質の平均放電電位と、第一活物質の0%の放電深度(DOD:Depth of Discharge)における開回路電位との間に存在することが好ましい。
有機化合物を第二活物質として用いることで、高容量と繰り返し高出力(優れたパルス放電特性)とを有するリチウム一次電池を実現しやすい理由として、以下に説明する4つの理由が挙げられる。
第一に、有機化合物は金属、金属酸化物などと比較して分子設計が容易であり、分子骨格および分子骨格へ導入する置換基によって、酸化還元電位をコントロールすることができる。例えば、電子受容性の置換基を分子骨格に導入すると、放電反応の電位はより高くなり、電子供与性の置換基を分子骨格に導入すると、放電反応の電位はより低くなる。このように、第二活物質が有機化合物である場合、その酸化還元電位および開回路電位を第一活物質の放電特性に応じてコントロールすることができる。具体的には、第一活物質の開回路電位より低く、第一活物質の平均放電電位より高い、という電位領域において酸化還元電位を有するように有機化合物を設計することができる。さらに、放電後の当該有機化合物が第一活物質により自然充電されるように、有機化合物を設計することができる。したがって、第二活物質として有機化合物を用いることで、第一活物質の選択肢を増やすことができる。
第二に、有機化合物を第二活物質として用いた場合、長期使用などにおいて電池の信頼性を維持しやすい。バナジウムなどの金属の酸化物を第二活物質として用いた場合、長期使用などにおいて第二活物質から金属溶出が起こり、電池の信頼性を低下させる可能性がある。特に、常時充電状態で存在する一次電池の場合は、正極活物質は常に充電状態の高電位状態にさらされるため、金属溶出が起こり、信頼性に影響を与えることが懸念される。本実施形態の一次電池では、第二活物質が常に第一活物質によって充電され、常に充電状態で存在するため、金属溶出の懸念がない有機化合物を第二活物質として用いることが望ましい。例えば、第一活物質として用いることができるフッ化黒鉛は、金属イオンを含まず、高容量であると同時に高い長期信頼性を有している。このフッ化黒鉛に、金属イオンを含む物質を第二活物質として組み合わせた場合、フッ化黒鉛の特徴である長期信頼性が損なわれる可能性がある。第二活物質として有機化合物を用いた場合、このような課題が生じにくい。
第三に、有機化合物を第二活物質として用いた場合、第二活物質粒子のサイズを容易に調整することができるとともに、正極を製造するために多様なプロセスを適用することができる。
一般的なリチウム一次電池における正極は、金属、金属酸化物などの活物質粒子を導電助剤などと混合して製造される。活物質の粒子は数ミクロン〜数10ミクロン程度の粒子径を有する。このような正極では、活物質の粒子内および粒子間において電子伝導およびイオン伝導による放電反応が起きる。粒子内および粒子間における電子伝導およびイオン伝導の速度はそれほど速くないため、結果として十分な放電反応速度および大電流特性を得ることが難しい。先に説明したように、第二活物質の粒子サイズを第一活物質よりも小さくすることによって、第一活物質よりも第二活物質の方が放電反応が速くなり、高出力特性を実現することができる。第二活物質が有機化合物であると、分子レベルでのサイズ調整が容易であるため、第一活物質の粒子サイズに応じて、それよりも小さいサイズに第二活物質を調整することができる。さらに、有機化合物は、たとえ高分子化合物であっても、分子設計および溶媒の選択によって特定の溶媒に溶解させることができる。そのため、第二活物質として有機活物質を含む正極を製造する際に多様なプロセスを採用できる。
例えば、以下に挙げるプロセスを採用することにより、第二活物質の薄膜を正極内に形成することができる。すなわち、有機化合物を溶解させた溶液を調製し、当該溶液中に第一活物質の粒子を分散させてペーストを得る。当該ペースト中に含まれる溶媒を除去することにより、第一活物質の粒子の表面を第二活物質の薄膜で被覆することができる。
また、次のようなプロセスを採用することも可能である。まず、第二活物質としての有機化合物と、導電助剤と、第二活物質を溶解しうる溶媒とを混合し、溶液を調製する。第二活物質としての有機化合物は、重合体であることが好ましい。次に、導電助剤と第二活物質との複合粒子が形成されるように、得られた溶液から溶媒を除去する。複合粒子において、第二活物質は、導電助剤の表面を被覆する薄膜の形態で存在している。導電助剤としては、例えば、カーボン粒子を使用できる。粒子の形状も特に限定されず、球状、繊維状などの公知の形状の導電助剤を使用できる。次に、第一活物質の粒子と、複合粒子とを混合し、第一活物質と第二活物質との混合材料を得る。混合材料には、必要に応じて、追加の導電助剤、バインダなどの添加剤を加えてもよい。得られた混合材料の成形体を正極活物質層として正極集電体の上に配置する。このようにして得られた正極と、負極と、セパレータとを組み立てることによってリチウム一次電池が得られる。
有機化合物である第二活物質の薄膜を正極内に形成した場合、高出力特性をさらに向上させることができる。有機化合物である第二活物質は、1分子としての反応速度が十分に速くても、正極内での反応速度が遅ければ、優れた高出力特性を得ることが困難になる。しかし、正極内において第二活物質が薄膜の形状を有していることにより、第二活物質の反応速度を1分子としての反応速度に近づけることができ、速い酸化還元反応を実現できる。さらに、第二活物質の薄膜で、第一活物質および導電助剤の表面を被覆することにより、第一活物質と第二活物質との間の接触面積が増えるため、第一活物質による第二活物質の自然充電を高い効率で行うことができる。第二活物質の薄膜を正極内に形成するプロセスとしては、上記に挙げた方法以外にも、第一活物質の粒子でできた正極を第二活物質が溶解した溶液中に浸漬させる方法などの多様なプロセスを採用することができる。
第四に、有機化合物は金属、金属酸化物などと比較して比重が小さい。そのため、第二活物質として有機化合物を用いることにより、リチウム一次電池を軽量化することができる。
第二活物質として使用できる有機化合物としては、分子内にC=Xで表される基を2つ以上有する有機化合物が挙げられる(「C」は炭素を表す)。ただし、C=Xで表される基は、第二活物質へのリチウムの吸蔵および放出に関与する基である。C=Xで表される基におけるXは、典型的には、酸素原子、硫黄原子またはC(CN)2である。すなわち、第二活物質として使用できる有機化合物として、分子内にケトン基を2つ以上有する有機化合物、分子内にチオケトン基を2つ以上有する有機化合物、分子内にシアノ基を2つ以上有する有機化合物などが挙げられる。さらに、分子内にスルフィド基を2つ以上有する有機化合物も第二活物質として好適に使用できる。
特に、芳香族骨格上に上述した基を有する有機化合物が好適に用いられる。ケトン基を2つ以上有する有機化合物、チオケトン基を2つ以上有する有機化合物、およびシアノ基を2つ以上有する有機化合物は、例えば、下記式(1)で表される構造を有する。式(1)において、Xは、酸素原子、硫黄原子またはC(CN)2である。R21〜R24は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜4のアルケニル基、アリール基、またはアラルキル基である。R21〜R24で示される各基は、置換基として、フッ素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子および珪素原子からなる群より選ばれる少なくとも1つの原子を含む基を有していてもよい。R21およびR22は互いに結合して環を形成していてもよい。R23およびR24は互いに結合して環を形成していてもよい。分子内にスルフィド基を2つ以上有する化合物としては、有機ジスルフィド化合物などが挙げられる。
なお、チオケトン基の反応機構は、キノンの反応機構と同じである。C(CN)2の反応機構は、4つのLiが関与することを除き、キノンの反応機構と同じである。ジスルフィドの反応機構は、R−S−S−R+2Li→2R−SLiで表される。
Figure 0005634525
第二活物質として用いられる有機化合物は、環状骨格を有する化合物であって、当該環状骨格を構成する炭素原子のうち、少なくとも2つの炭素原子がそれぞれケトン基を形成しており、当該環状骨格が、当該少なくとも2つのケトン基とともに共役系を構成している化合物(以下、簡単のため、「環状共役ケトン」と表記する)であることが好ましい。代表的な環状共役ケトンとしては、例えば、パラキノン化合物およびオルトキノン化合物が挙げられる。環状共役ケトンは、可逆な酸化還元反応を行うことができ、かつ、2電子反応を行うことができるため、高エネルギー密度を有する第二活物質として用いることができる。これについて、以下に説明する。
ケトン基は、マイナス電荷を有する電極反応部位であり、プラス電荷を有する移動キャリアと酸化還元反応を行うことができる。ケトン基の還元反応において、移動キャリアがリチウムイオンである場合、ケトン基の電荷密度(マイナス電荷)とリチウムイオンの電荷密度(プラス電荷)とが変化することにより、ケトン基における酸素原子とリチウム原子との間に結合が形成される。例えば、2つのケトン基をパラ位に有するパラキノン化合物とリチウムイオンとの酸化還元反応は、以下の式(2A)および式(2B)に示すように2段階反応で表される。
Figure 0005634525
ケトン基とリチウムイオンとの間で可逆な酸化還元反応が起こるためには、ケトン基とリチウムイオンとの間に形成された結合が電気化学反応によって解離可能である必要がある。式(2A)および式(2B)において、リチウムイオンと反応したパラキノン化合物における電荷分布は局在化している。このような場合、ケトン基とリチウムイオンとの間に形成された結合は比較的解離しにくい。そのため、パラキノン化合物の2つの反応電位は、オルトキノン化合物の2つの反応電位と比較して、互いに離れている場合が多い。「2つの反応電位」は、キノン化合物の2つのケトン基が独立して反応を行うときの、それぞれの還元電位を意味する。また、リチウムイオンに対する反応可逆性が低い。
これに対し、例えば、3つの隣接する炭素原子のそれぞれに酸素原子が結合したトリケトン化合物は、以下の式(3A)および式(3B)に示すように、2つの隣り合うケトン基がリチウムイオンを挟みこむように反応できる。このような場合、ケトン基のマイナス電荷が非局在化されるため、ケトン基とリチウムイオンとの間の結合力が緩和され、酸化還元反応の可逆性が高くなる。
Figure 0005634525
以上のとおり、2つのケトン基をオルト位またはビシナル位に有する環状共役ケトン(オルトキノン化合物、トリケトン化合物など)は、2つのケトン基が隣り合っていない化合物(パラキノン化合物など)に比べて、酸化還元反応の可逆性を向上させることができる。また、2電子が関与する還元反応の電位が近くなる場合が多い。
ところで、有機化合物は、分子量が大きいほど有機溶媒に対する溶解度が低下する。したがって、第二活物質として用いる有機化合物は、重合体(オリゴマーの概念を含む)であることが好ましい。これにより、第二活物質の非水電解液への溶解を抑制し、リチウム一次電池における繰り返しの出力特性の劣化を抑制することができる。第二活物質は、確実に固体の状態で正極中に存在できる。
重合体は、その分子量が大きいことが好ましい。具体的には、分子内に環状共役ケトン骨格を4個以上有することが好ましい。したがって、重合体の重合度は4以上であることが好ましい。これにより、非水電解液に溶けにくい第二活物質を実現することができる。重合体の重合度は、より好ましくは10以上であり、さらに好ましくは20以上である。なお、環状共役ケトン骨格とは、環状骨格であって、当該環状骨格を構成する炭素原子のうち、少なくとも2つの炭素原子がそれぞれケトン基を形成しており、当該環状骨格が、当該少なくとも2つのケトン基とともに共役系を構成している環状骨格を意味する。ケトン基を形成している2つの炭素原子は、環状骨格において、互いに隣接していることが望ましい。
環状共役ケトンは、例えば、下記式(4)に示す9,10−フェナントレンキノン骨格を繰り返し単位の中に含む重合体である。式(4)中、R1〜R8は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜4のアルケニル基、アリール基、またはアラルキル基である。R1〜R8で示される各基は、置換基として、フッ素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子および珪素原子からなる群から選ばれる少なくとも1つの原子を含む基を有していてもよい。
Figure 0005634525
また、環状共役ケトンは、下記式(5)または(6)に示す構造を有していてもよい。式(5)中、R25〜R28は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜4のアルケニル基、アリール基、またはアラルキル基である。R25〜R28で示される各基は、置換基として、フッ素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子および珪素原子からなる群より選ばれる少なくとも1つの原子を含む基を有していてもよい。
Figure 0005634525
式(6)中、R31〜R36は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜4のアルケニル基、アリール基、またはアラルキル基である。R31〜R36で示される各基は、置換基として、フッ素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子および珪素原子からなる群より選ばれる少なくとも1つの原子を含む基を有していてもよい。
Figure 0005634525
環状共役ケトンは、3つのケトン部位を有するトリケトン骨格を繰り返し単位の中に含む重合体であってもよい。トリケトン骨格は、例えば、下記式(7)で表される。式(7)中、R9およびR10は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、不飽和脂肪族基または飽和脂肪族基である。不飽和脂肪族基および飽和脂肪族基は、ハロゲン原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子または珪素原子を含んでいてもよい。R9およびR10は互いに結合して環を形成していてもよい。R9とR10とが互いに結合して形成される環には、フッ素原子、シアノ基、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数2〜4のアルケニル基、炭素原子数3〜6のシクロアルキル基、炭素原子数3〜6のシクロアルケニル基、アリール基およびアラルキル基からなる群より選ばれる少なくとも1つの置換基が結合していてもよく、置換基はフッ素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、および珪素原子からなる群より選ばれる少なくとも1つの原子を含んでいてもよい。
Figure 0005634525
環状共役ケトンは、4つのケトン部位を有するテトラケトン骨格を繰り返し単位の中に含む重合体であってもよい。テトラケトン骨格は、例えば、下記式(8)で表される。式(8)中、R11〜R16は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜4のアルケニル基、アリール基、またはアラルキル基である。R11〜R16で示される各基は、置換基として、フッ素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子および珪素原子からなる群より選ばれる少なくとも1つの原子を含む基を有していてもよい。式(8)で表されるテトラケトン骨格は、詳細には、ピレン−4,5,9,10−テトラオン骨格である。
Figure 0005634525
また、環状共役ケトンは、下記式(9)または(10)に示す構造を有していてもよい。式(9)中、R37およびR38は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜4のアルケニル基、アリール基、またはアラルキル基である。R37およびR38で示される各基は、置換基として、フッ素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子および珪素原子からなる群より選ばれる少なくとも1つの原子を含む基を有していてもよい。
Figure 0005634525
式(10)中、R41〜R44は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜4のアルケニル基、アリール基、またはアラルキル基である。R41〜R44で示される各基は、置換基として、フッ素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子および珪素原子からなる群より選ばれる少なくとも1つの原子を含む置換基を有していてもよい。
Figure 0005634525
環状共役ケトンは、特に限定されないが、フェナントレンキノン骨格、トリケトン骨格、テトラケトン骨格からなる群より選ばれる少なくとも1種の環状共役ケトン骨格を含むことが好ましい。中でも、環状共役ケトンはフェナントレンキノン骨格またはテトラケトン骨格を含む有機化合物(フェナントレンキノン化合物またはテトラケトン化合物)であることがより好ましい。また、上述した酸化還元反応の可逆性の観点から、これらの骨格における2つのケトン基は互いにオルト位にあることが好ましい。
環状共役ケトンは、環状共役ケトン骨格が直接結合した重合体、または、環状共役ケトン骨格とケトン部位を有さないリンカー部位との交互共重合体であることが好ましい。フェナントレンキノン骨格が直接結合した重合体の例を式(11)に示す。フェナントレンキノン骨格とケトン部位を有さないリンカー部位Lとの交互共重合体の例を式(12)に示す。リンカー部位Lは、例えば、ケトン基を含まない芳香族化合物の2価残基または3価残基であり、硫黄原子および窒素原子の少なくとも一方を含んでいてもよく、フッ素原子、飽和脂肪族基および不飽和脂肪族基からなる群より選ばれる少なくとも1つの置換基を有していてもよい。リンカー部位を有する環状共役ケトンは、環状共役ケトン骨格に由来する2段階の酸化還元反応を良好に行うことができる。リンカー部位Lは、典型的には、フェニレン基である。
Figure 0005634525
Figure 0005634525
式(11)および(12)を参照して説明したように、式(1)、(4)〜(10)に示す構造は、重合体の主鎖に含まれていてもよい。さらに、式(1)、(4)〜(10)に示す構造は、重合体の側鎖に含まれていてもよい。例えば、式(1)において、R21〜R24のいずれか1つが炭素を主成分とする重合体の一端と結合を形成していてもよい。「炭素を主成分とする重合体」は、原子%で炭素を最も多く含む重合体を意味する。同様に、式(4)におけるR1〜R8、式(5)におけるR25〜R28、式(6)におけるR31〜R36、式(7)におけるR9およびR10、式(8)におけるR11〜R16、式(9)におけるR37およびR38、式(10)におけるR41〜R44のいずれか1つが炭素を主成分とする重合体の一端と結合を形成していてもよい。酸化還元部位が側鎖に含まれた重合体の例を下記式(13)および(14)に示す。
式(13)中、R11、R13〜R16は、式(8)を参照して説明した通りである。R17は、炭素数1〜4のアルキレン鎖、炭素数2〜4のアルケニレン鎖、アリーレン鎖、エステル結合、アミド結合またはエーテル結合であり、置換基を有していてもよい。R18は、メチル基またはエチル基である。nは、2以上の整数である。
Figure 0005634525
式(14)の重合体は、酸化還元部位(この場合、テトラケトン骨格)を含む繰り返し単位と、酸化還元部位を含まない繰り返し単位とで構成されている。2つの繰り返し単位は、記号*において互いに結合している。式(14)中、R11、R13〜R16は、式(8)を参照して説明した通りである。m、nは、それぞれ、2以上の整数である。酸化還元部位を含む繰り返し単位と、酸化還元部位を含まない繰り返し単位との比率(m:n)は、例えば、100:0〜20:80の範囲にある。また、酸化還元部位を含む繰り返し単位と酸化還元部位を含まない繰り返し単位との重合体は、交互共重合体、ランダム共重合体およびブロック共重合体のいずれであってもよい。
Figure 0005634525
第二活物質として使用できる有機化合物は重合体に限定されない。つまり、式(1)(4)〜(10)に示す構造を有する単量体、2量体、3量体などを第二活物質として使用できる可能性もある。
例えばポリアニリンのような導電性高分子化合物は、分子間の反発が大きいため、第二活物質として用いた場合、1つのアニリン骨格あたり0.25電子程度までしか反応することができず、エネルギー密度が低下する。環状共役ケトン骨格を有するオリゴマーまたは重合体は、分子間の反発がほとんどなく、1つの環状共役ケトン骨格中の1つのケトン基あたり1電子の反応を行うことができる。つまり、単位骨格中に2つのケトン基が存在すれば2電子、4つのケトン基が存在すれば4電子の反応を行うことができる。
電池の組み立て完了時において、第二活物質は、充電状態および放電状態(還元されてリチウム化された状態)のいずれであってもよい。なお、電池の組み立て完了時とは、正極および負極をそれぞれ作製し、セパレータを介して正極および負極が互いに対向するように電池ケース内に配置した後、電解液を加えて電極内に電解液を十分に浸漬させ、電池ケースの封口を行った時点の状態を意味する。しかし、エネルギー密度の観点からは、電池の組み立て完了時に第二活物質が充電状態であることが好ましい。言い換えれば、電池の放電深度0%において、実質的に全ての第一活物質が充電状態であることが好ましい。第二活物質が電池の組み立て完了時に放電状態である場合、電池の組み立て後、放電状態の第二活物質が第一活物質によって速やかに自然充電される。第二活物質を充電した分、第一活物質が放電するため、電池の容量は、第一活物質が放電した容量分、減少することになる。第二活物質が電池の組み立て完了時に充電状態である場合、第一活物質の有する容量と第二活物質の有する容量との両方を放電に使用することができるため、より高いエネルギー密度を実現できる。
正極における第二活物質の添加量は、リチウム一次電池の正極の全設計容量に占める第二活物質の設計容量で表して、例えば0.1〜50%、好ましくは1〜20%である。これにより、第一活物質に由来する高容量と第二活物質に由来する高出力との両方を実現したリチウム一次電池を構築することができる。
次に、リチウム一次電池1の残りの要素について説明する。
正極活物質層11は、第一活物質および第二活物質の他にも、必要に応じて、電極内の電子伝導性を補助する導電助剤、および/または、正極活物質層11の形状保持のための結着剤を含んでいてもよい。導電助剤は、例えば、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維などの炭素材料、金属繊維、金属粉末類、導電性ウィスカー類、導電性金属酸化物などであり、これらの混合物を用いてもよい。結着剤は、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂のいずれであってもよい。結着剤は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどに代表されるポリオレフィン樹脂;ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)などに代表されるフッ素系樹脂およびそれらの共重合体樹脂;スチレンブタジエンゴム、ポリアクリル酸およびその共重合体樹脂などであり、これらの混合物を用いてもよい。
正極集電体12としてはリチウム一次電池の正極集電体として公知の材料を用いることができる。正極集電体12は、例えば、アルミニウム、カーボン、ステンレスなどの金属でできた金属箔または金属メッシュである。正極集電体12として金属箔または金属メッシュを用いる場合、正極集電体12をケース50に溶接することによって良好な電気的接触を保つことができる。正極活物質層11がペレットおよびフィルムなどのように自立した形状を保っている場合、正極集電体12を用いずに正極活物質層11を直接、ケース50上に接触させた構成を採用してもよい。
負極活物質層21は負極活物質を含む。負極活物質としてはリチウムイオンを放出することができる公知の負極活物質が用いられる。負極活物質は、例えば、リチウムを吸蔵させた、天然黒鉛および人造黒鉛に代表される黒鉛材料;リチウムを吸蔵させた非晶質炭素材料;リチウム金属;リチウム−アルミニウム合金;リチウム含有複合窒化物;リチウム含有チタン酸化物;リチウムを吸蔵させた、珪素、珪素を含む合金および珪素酸化物;リチウムを吸蔵させた、錫、錫を含む合金および錫酸化物などであり、これらの混合物であってもよい。負極集電体22としてはリチウム一次電池の負極集電体として公知の材料を用いることができる。負極集電体22は、例えば、銅、ニッケル、ステンレスなどの金属でできた金属箔またはメッシュである。負極活物質層21がペレットおよびフィルムなどのように自立した形状を保っている場合、負極集電体22を用いずに負極活物質層21を封口板51上に直接接触させた構成を採用してもよい。
負極活物質層21は負極活物質の他にも、必要に応じて導電助剤および/または結着剤を含んでいてもよい。導電助剤および結着剤としては正極活物質層11において用いることのできる導電助剤および結着剤と同様の材料を用いることができる。
セパレータ30は電子伝導性を有しない樹脂、または不織布によって構成された層であり、大きなイオン透過度を有し、十分な機械的強度および電気的絶縁性を備えた微多孔膜である。耐有機溶剤性および疎水性に優れるという観点から、セパレータ30はポリプロピレン、ポリエチレン、またはこれらを組み合わせたポリオレフィン樹脂でできていることが好ましい。セパレータ30の代わりに、電解液を含んで膨潤し、ゲル電解質として機能するイオン伝導性を有する樹脂層を設けてもよい。
電解液31はリチウムイオンとアニオンとの塩を含む電解質を含有している。リチウムイオンとアニオンとの塩は、リチウム電池において用いることができる塩であれば特に限定されず、例えば、リチウムイオンと以下に挙げるアニオンとの塩が挙げられる。すなわち、アニオンとしてはハロゲン化物アニオン、過塩素酸アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、4フッ化ホウ酸アニオン(BF4 -)、6フッ化リン酸アニオン(PF6 -)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン、ビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミドアニオンなどが挙げられる。リチウムイオンとアニオンとの塩としてこれらの2種以上を組み合わせて用いてもよい。
電解質は、リチウムイオンとアニオンとの塩の他にも、固体電解質を含んでいてもよい。固体電解質としては、Li2S−SiS2、Li2S−B25、Li2S−P25−GeS2、ナトリウム/アルミナ(Al23)、無定形または低相転移温度(Tg)のポリエーテル、無定形フッ化ビニリデン−6フッ化プロピレンコポリマー、異種高分子ブレンド体ポリエチレンオキサイドなどが挙げられる。
電解質が液体である場合、電解質自身を電解液31として用いても、電解質を溶媒に溶解させて電解液31として用いてもよい。電解質が固体である場合、これを溶媒に溶解させて電解液31とすることができる。
電解質を溶解させる溶媒としては、非水電解液を用いたリチウム一次電池において用いることのできる公知の非水溶媒を用いることができる。具体的な非水溶媒としては環状炭酸エステルまたは環状エステルを含む溶媒を好適に用いることができる。なぜなら、環状炭酸エステルおよび環状エステルは、非常に高い比誘電率を有するからである。環状炭酸エステルとしては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどが挙げられ、中でも、プロピレンカーボネートが好ましい。なぜなら、プロピレンカーボネートは凝固点が−49℃とエチレンカーボネートよりも低いため、低温でもリチウム一次電池を作動させることができるからである。環状エステルとしては、例えばγ−ブチロラクトンが挙げられる。
非水溶媒の成分としてこれらの溶媒を含むことにより、電解液31における非水溶媒は全体として非常に高い誘電率を有することができる。非水溶媒としてこれらの溶媒のうちの1種のみを用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。非水溶媒の成分としては上記に挙げた以外にも、鎖状炭酸エステル、鎖状エステル、環状または鎖状のエーテルなどが挙げられる。具体的には、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジオキソラン、スルホランなどが挙げられる。
以上の実施形態により、高容量と高出力(優れたパルス放電特性)とを両立したリチウム一次電池を提供することができる。
また、従来、円筒型電池および角型電池における高出力化を目的として、電極の厚みおよび長さの最適化といった構造面からのアプローチが行われている。これに対し、本発明は材料面からのアプローチによって高出力化が実現できる。このため、外装ケースが単純であり、かつ、その形状を変更できない場合、例えば、コイン型電池の場合において、本発明は最も有効な高出力化のアプローチであるといえる。
以下に本発明の実施例を説明する。なお、本発明は実施例に限定されるものではない。
実施例において用いた各活物質の開回路電位および平均放電電位の測定方法は以下のとおりである。まず、酸化状態(充電状態)にある単一の活物質のみを正極活物質として含む正極と、リチウム金属である負極とを用いて図1に示すコイン型のリチウム一次電池を作製した。このリチウム一次電池に対して、電池作製時の状態のまま、電流負荷をかけずに電圧を測定することにより、当該活物質の開回路電位を得た。また、上記と同様にして作製したリチウム一次電池に対して放電特性を測定した。得られた放電曲線において放電深度50%における電位を、当該活物質の平均放電電位とした。
(実施例1)
実施例1では、リチウムイオンを吸蔵することができる第一活物質と、リチウムイオンを吸蔵および放出することができる第二活物質とを正極活物質として用い、図1に示すコイン型のリチウム一次電池を作製した。第一活物質としてはフッ化黒鉛(CF)nを用い、第二活物質としてはキノン化合物である式(15)に示す重合体Xを用いた。重合体Xの合成方法は、特許文献3等に詳細に記載されている。用いた重合体Xの分子量は重量平均分子量で9783(ポリスチレン標準に対する値)であり、その重合度はおおよそ30程度であった。なお、フッ化黒鉛(CF)nのDOD0%における開回路電位は3.15Vであり、平均放電電位は2.55Vであった。重合体XのDOD0%における開回路電位は3.05Vであった。
Figure 0005634525
[正極電極の作製]
式(15)で表される重合体Xを15mgと、フッ化黒鉛(CF)nを15mgと、導電助剤としてアセチレンブラックを80mgとを秤量し、これらを乳鉢に入れて混練した。さらに、結着剤としてポリテトラフルオロエチレン20mgを添加して乳鉢中で混錬した。こうして得られた合剤を、集電体であるステンレスメッシュ(ニラコ社製、30メッシュ)上に圧延ローラーで圧着し、真空乾燥を行い、直径16mmの円盤状に打ち抜くことによって正極を作製した。この正極における活物質の塗布重量は、フッ化黒鉛が1.5mg、重合体Xが1.5mgであった。
[リチウム一次電池の作製]
正極として上記で作製した正極を用い、負極としてリチウム金属(厚み0.3mm)を用いた。電解質を溶解させる溶媒として、炭酸エチレン(EC)と炭酸エチルメチル(EMC)とを体積比1:3で混合した溶媒を用いた。この溶媒中に、電解質として6フッ化リン酸リチウムを、濃度が1.25mol/L濃度となるように溶解させることにより電解液を作製した。
この電解液を、セパレータとしての多孔質ポリエチレンシート(厚み20μm)、正極、および負極に含浸させた。図1に示すような構成となるようにセパレータ、正極および負極をコイン型電池のケースに収納した。ガスケットを装着した封口板でケースの開口を閉じ、プレス機にてケースをかしめて封口した。以上により、実施例1のコイン型リチウム一次電池が得られた。
(実施例2)
実施例2では、リチウムイオンを吸蔵することができる第一活物質と、リチウムイオンを吸蔵および放出することができる第二活物質とを正極活物質として用い、図1に示すコイン型のリチウム一次電池を作製した。第一活物質としてはフッ化黒鉛(CF)nを用い、第二活物質としてはキノン化合物である式(16)に示す重合体Yを用いた。重合体Yは、重合体Xに対する還元状態である。
Figure 0005634525
まず、重合体Xに対して還元処理を施した。すなわち、重合体XをN−メチルピロリドンに溶解させた後、Li2CO3の水溶液に浸漬して還元処理を施すことにより、式(16)で表される重合体Yを得た。次いで、重合体Yを15mgと、フッ化黒鉛(CF)nを15mgと、導電助剤としてアセチレンブラックを80mgとを秤量し、これらを乳鉢に入れて混練した。さらに、結着剤としてポリテトラフルオロエチレン20mgを添加して乳鉢中で混錬した。こうして得られた合剤を、集電体であるステンレスメッシュ(ニラコ社製、30メッシュ)上に圧延ローラーで圧着し、真空乾燥を行い、直径16mmの円盤状に打ち抜くことによって正極を作製した。この正極における活物質の塗布重量は、フッ化黒鉛が1.5mg、重合体Yが1.5mgであった。
この正極を用いた以外は実施例1と同じ方法で、実施例2のコイン型リチウム一次電池を得た。
(実施例3)
実施例3では、リチウムイオンを吸蔵することができる第一活物質と、リチウムイオンを吸蔵および放出することができる第二活物質とを正極活物質として用い、図1に示すコイン型リチウム一次電池を作製した。第一活物質としてはフッ化黒鉛(CF)nを用い、第二活物質としてはテトラケトン化合物である式(17)に示す重合体を用いた。式(17)において、繰り返し単位の数を表すmとnの比率は、50:50であった。式(17)の重合体の重量平均分子量はポリスチレン換算で49840、重合度は112であった。式(17)の重合体の合成方法は、例えば、国際公開2011/111401号に詳細に記載されている。第二活物質が異なる点を除き、実施例1と同じ方法で実施例3のコイン型リチウム一次電池を得た。式(17)の重合体のDOD0%における開回路電位は、3.05Vであった。式(17)の重合体は、放電時に2段の平坦領域を有していた。それらの平坦領域における放電電位は、それぞれ、2.80V及び2.28Vであった。つまり、2段の平坦領域における放電電位の平均は2.54Vであった。
Figure 0005634525
(実施例4)
実施例4では、リチウムイオンを吸蔵することができる第一活物質と、リチウムイオンを吸蔵および放出することができる第二活物質とを正極活物質として用い、図1に示すコイン型のリチウム一次電池を作製した。第一活物質としてはフッ化黒鉛(CF)nを用い、第二活物質としてはパラキノン化合物である式(18)に示す重合体を用いた。式(18)において、繰り返し単位の数を表すmとnの比率は、50:50であった。式(18)の重合体の重量平均分子量はポリスチレン換算で50350、重合度は120であった。式(18)に示す重合体は、2−アミノアントラキノンを出発原料として使用することにより、式(17)に示す重合体と同じ方法で合成できる。第二活物質が異なる点を除き、実施例1と同じ方法で実施例4のコイン型リチウム一次電池を得た。式(18)の重合体のDOD0%における開回路電位は、3.02Vであった。式(18)の重合体は、放電時に2段の平坦領域を有していた。それらの平坦領域における放電電位は、それぞれ、2.33V及び2.20Vであった。式(18)の重合体の平均放電電位は2.26Vであった。
Figure 0005634525
(実施例5)
実施例5では、リチウムイオンを吸蔵することができる第一活物質と、リチウムイオンを吸蔵および放出することができる第二活物質とを正極活物質として用い、図1に示すコイン型のリチウム一次電池を作製した。第一活物質としては二酸化マンガン(MnO2)を用い、第二活物質としては式(17)に示す重合体を用いた。第一活物質および第二活物質が異なる点を除き、実施例1と同じ方法で実施例5のコイン型リチウム一次電池を得た。なお、二酸化マンガン(MnO2)のDOD0%における開回路電位は3.69Vであり、平均放電電位は2.76Vであった。
(比較例1)
比較例1ではリチウムイオンを吸蔵することができる第一活物質のみを正極活物質として用い、図1に示すコイン型のリチウム一次電池を作製した。第一活物質としてはフッ化黒鉛(CF)nを用いた。
フッ化黒鉛(CF)nを30mgと、導電助剤であるアセチレンブラックを80mgとを秤量し、これらを乳鉢で混練した。さらに、結着剤としてポリテトラフルオロエチレン20mgを添加して乳鉢中で混錬した。こうして得られた合剤を、集電体であるステンレスメッシュ(ニラコ社製、30メッシュ)上に圧延ローラーで圧着し、真空乾燥を行い、直径16mmの円盤状に打ち抜くことによって正極を作製した。この正極における活物質の塗布重量は、フッ化黒鉛が3.0mgであった。
この正極を用いた以外は実施例1と同じ方法で、比較例1のコイン型非水電解質一次電池を得た。
(比較例2)
比較例2では、リチウムイオンを吸蔵することができる第一活物質と、リチウムイオンを吸蔵および放出することができる第二活物質とを正極活物質として用い、図1に示すコイン型のリチウム一次電池を作製した。第一活物質としてはフッ化黒鉛(CF)nを用い、第二活物質としては以下の式(19)に示すラジカルポリマーZを用いた。なお、ラジカルポリマーZはニトロキシドラジカルであり、オキソアンモニウムカチオンに対する還元状態(放電状態)である。このオキソアンモニウムカチオンの開回路電位は3.6Vであった。
Figure 0005634525
ラジカルポリマーZを15mgと、フッ化黒鉛(CF)nを15mgと、導電助剤としてアセチレンブラックを80mgとを秤量し、これらを乳鉢に入れて混練した。さらに、結着剤としてポリテトラフルオロエチレン20mgを添加して乳鉢中で混錬した。こうして得られた合剤を、集電体であるステンレスメッシュ(ニラコ社製、30メッシュ)上に圧延ローラーで圧着し、真空乾燥を行い、直径16mmの円盤状に打ち抜くことによって正極を作製した。この正極における活物質の塗布重量は、フッ化黒鉛が1.5mg、ラジカルポリマーZが1.5mgであった。
この正極を用いた以外は実施例1と同じ方法で、比較例2のコイン型リチウム一次電池を得た。
(比較例3)
比較例3では、リチウムイオンを吸蔵することができる第一活物質と、リチウムイオンを吸蔵および放出することができる第二活物質とを正極活物質として用い、図1に示すコイン型のリチウム一次電池を作製した。第一活物質としてはフッ化黒鉛(CF)nを用い、第二活物質としてはコバルト酸リチウム(LiCoO2)を用いた。コバルト酸リチウムは、後述の比較例4で用いた酸化状態のコバルト酸リチウム(Li0.5CoO2)に対する還元状態(放電状態)である。
コバルト酸リチウム(LiCoO2)を15mgと、フッ化黒鉛(CF)nを15mgと、導電助剤としてアセチレンブラックを80mgとを秤量し、これらを乳鉢に入れて混練した。さらに、結着剤としてポリテトラフルオロエチレン20mgを添加して乳鉢中で混錬した。こうして得られた合剤を、集電体であるステンレスメッシュ(ニラコ社製、30メッシュ)上に圧延ローラーで圧着し、真空乾燥を行い、直径16mmの円盤状に打ち抜くことによって正極を作製した。この正極における活物質の塗布重量は、フッ化黒鉛が1.5mg、コバルト酸リチウムが1.5mgであった。
この正極を用いた以外は実施例1と同じ方法で、比較例3のコイン型リチウム一次電池を得た。
(比較例4)
比較例4では、リチウムイオンを吸蔵することができる第一活物質と、リチウムイオンを吸蔵および放出することができる第二活物質とを正極活物質として用い、図1に示すコイン型のリチウム一次電池を作製した。第一活物質としてはフッ化黒鉛(CF)nを用い、第二活物質としては酸化状態のコバルト酸リチウム(Li0.5CoO2)を用いた。なお、酸化状態のコバルト酸リチウムの開回路電位は4.2Vであった。
まず、コバルト酸リチウム(LiCoO2)を濃度14g/Lのチオ硫酸カリウム水溶液に浸漬して化学酸化することにより、酸化状態のコバルト酸リチウム(Li0.5CoO2)を得た。次いで、酸化状態のコバルト酸リチウムを15mgと、フッ化黒鉛(CF)nを15mgと、導電助剤としてアセチレンブラックを80mgとを秤量し、これらを乳鉢に入れて混練した。さらに、結着剤としてポリテトラフルオロエチレン20mgを添加して乳鉢中で混錬した。こうして得られた合剤を、集電体であるステンレスメッシュ上に圧延ローラーで圧着し、真空乾燥を行い、直径16mmの円盤状に打ち抜くことによって正極を作製した。この正極における活物質の塗布重量は、フッ化黒鉛が1.5mg、酸化状態のコバルト酸リチウムが1.5mgであった。
この正極を用いた以外は実施例1と同じ方法で、比較例4のコイン型リチウム一次電池を得た。
[電池の放電特性の評価]
実施例1〜5および比較例1〜4において得たコイン型リチウム一次電池に対して、以下のように放電特性の評価を行った。なお、これらの試験は全て、25℃の恒温槽環境内に電池を置いて行った。
実施例1〜5および比較例1〜4の電池に対して、放電容量評価を行った。放電容量評価では、電池の設計容量に対して20時間率(0.05CmA)となる電流値にて定電流放電を行うことにより、放電容量を測定した。なお、放電下限電圧は2.0Vとした。
実施例1〜5の電池は、全て、設計通りの放電容量を有していた。実施例1〜5および比較例1〜4の電池に対して、出力(パルス放電特性)評価を行った。出力(パルス放電特性)評価では、電池の放電深度(DOD:Depth of Discharge)が0%、25%、50%、および75%である状態のそれぞれにおいて、5秒間の放電が確認できる最大電流値を測定した。なお、放電は、上記放電容量評価の結果として得られた放電容量に対して20時間率(0.05CmA)となる電流値にて、定電流で放電することにより行った。また、放電下限電圧は2.0Vとした。すなわち、まず、組み立て完了後の電池をそのまま用いて放電し、DOD0%における最大電流値を測定した。放電時間が5時間に達した後、10時間の休止時間を置いた。この後、再び放電を開始してDOD25%における最大電流値を測定した。同様に、5時間の放電と10時間の休止とを交互に繰り返すことにより、DOD50%および75%における最大電流値を測定した。
放電容量評価および出力評価の結果を表1にまとめて示す。
Figure 0005634525
表1に示すように、比較例1の電池では、正極活物質としてフッ化黒鉛のみを用いたため出力が低かった。特に、フッ化黒鉛は放電反応の初期における電子伝導性が低いため、DOD0%における出力が2mAと最も小さい電流値になった。
他方、実施例1および実施例2の電池では、正極活物質として第一活物質と第二活物質とを用い、第二活物質としてはキノン化合物を用いたため、いずれの放電深度(DOD)においても比較例1より高い出力を得ることができた。フッ化黒鉛(CF)nの開回路電位は3.15Vであり、平均放電電位は2.55Vである。重合体Xの開回路電位は3.05Vである。よって、実施例1および実施例2において、第二活物質の開回路電位(3.05V)は第一活物質の開回路電位(3.15V)よりも低く、第一活物質の平均放電電位(2.55V)よりも高い。後の説明から理解できるように、実施例1および実施例2における電池の正極の全設計容量に対するキノン化合物(第二活物質)の設計容量は21%(0.3mAh/1.4mAh)と小さい。キノン化合物の添加量が少ないにも拘わらずいずれの放電深度(DOD)においても高出力を実現できたのは、放電状態のキノン化合物が、電池が開回路状態で放置される間にフッ化黒鉛によって充電され、再び放電できるようになったからである。
実施例2では、電池の組み立て完了時においてキノン化合物が還元状態(放電状態)であったのに対し、実施例1では、電池の組み立て完了時においてキノン化合物が酸化状態(充電状態)であった。そのため、実施例1の電池では実施例2の電池よりも大きな放電容量が得られた。このように、電池の組み立て時に第二活物質が充電状態で添加されることによって、より高いエネルギー密度を実現できる。具体的には、実施例1および実施例2において、フッ化黒鉛およびキノン化合物の設計容量はそれぞれ1.1mAhおよび0.3mAhであった。実施例2の電池の放電容量がフッ化黒鉛の設計容量に等しい1.1mAhであったのに対し、実施例1の電池の放電容量はフッ化黒鉛およびキノン化合物の設計容量の合計に等しい1.4mAhであった。
実施例1と同様に、実施例3および実施例4においても比較例1より高い出力を得ることができた。フッ化黒鉛(CF)nの開回路電位は3.15Vであり、平均放電電位は2.55Vである。式(17)の重合体の開回路電位は3.05Vである。式(18)の重合体の開回路電位は3.02Vである。よって、実施例3および実施例4において、第二活物質の開回路電位は第一活物質の開回路電位(3.15V)よりも低く、第一活物質の平均放電電位(2.55V)よりも高い。また、実施例3および実施例4における電池の正極の全設計容量に対するキノン化合物(第二活物質)の設計容量は、それぞれ、実施例3で22%(0.36mAh/1.6mAh)、実施例4で14%(0.20mAh/1.4mAh)と小さい。キノン化合物の添加量が少ないにも拘わらずいずれの放電深度(DOD)においても高出力を実現できたのは、放電状態のキノン化合物が、電池が開回路状態で放置される間にフッ化黒鉛によって充電され、再び放電できるようになったからである。さらに、実施例3では高容量な第二活物質(テトラケトン骨格を含む繰り返し単位を有する重合体)を用いたため、実施例3の電池は大きい放電容量を有していた。実施例3の電池の各DODにおける最大電流値は、実施例4の電池の各DODにおける最大電流値よりも大きかった。
実施例5においても高い出力を得ることができた。二酸化マンガン(MnO2)のDOD0%における開回路電位は3.69Vであり、平均放電電位は2.76Vであった。二酸化マンガン(MnO2)のみの正極を用いて0.5mAhの放電容量を有するリチウム一次電池を作製し、実施例5と同様の試験を行った場合、DOD0%では0.2mA程度の電流しか取り出すことができなかった。これに対し、実施例5では試験を行った全てのDODで高い電流を得ることができた。この理由は、以下のように推測される。
式(17)の重合体の開回路電位は3.05Vであり、二酸化マンガンの開回路電位(3.69V)よりも低く、二酸化マンガンの平均放電電位(2.76V)よりも高い。放電反応に伴う二酸化マンガンの抵抗は比較的大きい。そのため、二酸化マンガンのみを正極に用いたリチウム一次電池から大電流を取り出そうとすると、二酸化マンガンの電位降下が大きく、下限電位である2.0Vに直ちに到達する。これに対し、式(17)の重合体を二酸化マンガンと併用した実施例5の電池では、式(17)の重合体が大電流放電を担い、その後、二酸化マンガンが放電を行う。その結果、大電流を取り出すことが可能となる。キノン化合物の添加量が少ないにも拘わらずいずれの放電深度(DOD)においても高出力を実現できたのは、放電状態のキノン化合物が、電池が開回路状態で放置される間に二酸化マンガンによって充電され、再び放電できるようになったからである。
実施例3の電池と実施例5の電池とを比較すると、出力特性に関しては、同等の性能を有していた。3ヶ月保存後のパルス特性に関しては、実施例3が実施例5よりも良好な特性を示した。このように、長期信頼性に関しては、第一活物質と第二活物質がともに有機物である実施例3が良好な性能を示した。
実施例3と実施例4とを比較すると、DOD0%〜25%の範囲においては同程度の出力特性が得られた。しかし、DOD50%以降において、パラキノン化合物を用いた実施例4の電池の出力特性は低下した。このような現象の起こる要因として、2つの要因が考えられる。1つの要因は、式(17)に代表されるオルトキノン化合物の平均放電電位よりも、式(18)のパラキノン化合物の平均放電電位が低いことにある。式(18)のパラキノン化合物の平均放電電位は2.26Vであった。放電試験の下限カット電圧は2.0Vであるため、大電流放電を行った場合、パラキノン化合物の放電電位が下限電位に達する。結果として、大電流での放電が困難となる。他の1つの要因は、パラキノン化合物とオルトキノン化合物との間の充放電可逆性の違いにある。オルトキノン化合物は、良好な充放電サイクル効率を有しているため、第一活物質によって効率的に充電される。これに対し、構造上の理由により、パラキノン化合物の第一活物質による充電の効率は、オルトキノン化合物よりも若干劣る。これらの要因が重なって、実施例4では、DOD50%以降で出力特性が低下した。
大電流を取り出す場合、電池の内部抵抗のため大きな過電圧が生じ、電位降下が起きる。リチウム一次電池を搭載する機器の動作下限電圧を考慮すると、電池の動作下限電圧は2.0V程度に設定される。したがって、2.0V以下で良好な出力特性が得られても実質的な意味がなく、2.0V以上で電流を取り出す必要がある。この場合、第一活物質の開回路電位よりも低い平均放電電位を有するものの、なるべく高い平均放電電位を有する第二活物質を用いることが有効となる。この観点から、平均放電電位の低いパラキノン化合物よりも、オルトキノン化合物を用いることが望ましい。さらに、第一活物質の平均放電電位と、第一活物質の開回路電位との間に、第二活物質の平均放電電位が存在することが望ましい。この場合、電流特性の良い第二活物質が先に放電を行うため、効率的に大電流を取り出すことが可能となる。
比較例4の電池では、正極活物質として第一活物質と第二活物質とを用い、第二活物質としては酸化状態のコバルト酸リチウムを用いた。そのため、放電容量は第一活物質であるフッ化黒鉛の設計容量(1.1mAh)よりも大きい1.3mAhとなり、DOD0%において比較的高い出力が得られたが、DOD25%以降において出力が低くなった。比較例4の電池における第二活物質である、酸化状態のコバルト酸リチウム(Li0.5CoO2)の開回路電位は4.2Vであり、第一活物質の開回路電位(3.15V)よりも高い。酸化状態のコバルト酸リチウムによる高出力効果がDOD0%においてしか得られなかったのは、一度放電状態(コバルト酸リチウム)となった第二活物質がフッ化黒鉛によって自然充電されなかったからである。このような電池は高出力なリチウム一次電池としては不十分であるといえる。各放電深度において高出力を得るためには、一度放電した第二活物質が電池内部で再充電されることがキーとなっている。
比較例3で用いた第二活物質は、コバルト酸リチウムであり、放電状態(還元状態)であった。比較例4の場合と同様に、コバルト酸リチウムはフッ化黒鉛によって自然充電されなかった。そのため、比較例3の電池では、DOD0%においてさえ高出力効果が得られず、放電容量も第一活物質(フッ化黒鉛)の設計容量に等しい1.1mAhとなった。
比較例2で用いた第二活物質は、ラジカルポリマーZであり、放電状態(還元状態)であった。ラジカルポリマーZに対する充電状態(酸化状態)であるオキソアンモニウムカチオンの開回路電位は3.6Vであり、第一活物質の開回路電位(3.15V)よりも高い。ラジカルポリマーZの充電が起こる電位は第一活物質の開回路電位よりもはるかに高いため、第一活物質のラジカルポリマーZはフッ化黒鉛によって自然充電されなかった。そのため、比較例2の電池では、高出力効果が得られず、放電容量も第一活物質(フッ化黒鉛)の設計容量に等しくなった。
また、実施例1において得たコイン型リチウム一次電池に対して間欠放電試験を行った。すなわち、18時間率(0.055CmA)となる電流で3時間放電した後、12時間の休止時間を置く、という操作を繰り返し行うことにより間欠放電カーブを得た。なお、放電下限電圧は2Vとした。この結果を図2に示す。また、比較のために、比較例1において得たコイン型リチウム一次電池に対して連続放電試験を行った。すなわち、放電下限電圧を2Vとし、18時間率(0.055CmA)となる電流で放電することにより、連続放電カーブを得た。この結果を図3に示す。
図3に示すように、比較例1の電池はDOD0〜17%において、フッ化黒鉛の材料特性に由来する大きな電圧低下を生じた。これに対し、キノン化合物が添加されている実施例1の電池は、図2に示すように、DOD0〜17%における電圧が大幅に上昇した。このことから、キノン化合物の添加が放電開始初期の高電圧化および高出力化に寄与していることが分かる。また、図2に示すように、DOD17%、33%、50%、67%、および83%のいずれにおいても、電池の放電休止後、すなわち、開回路状態において放置された後、放電電圧の向上が確認できた。これは、放電後のキノン化合物がフッ化黒鉛により再充電されたことによる電圧上昇を意味する。以上のことから、キノン化合物がフッ化黒鉛により繰り返し再充電され、かつ、いずれの放電深度においても放電開始時にキノン化合物が放電できること、すなわち、複数回の使用にわたって高出力が得られるリチウム一次電池を提供できることが確認された。
本発明のリチウム一次電池は、高容量、かつ高出力特性を有する。特に、本発明のリチウム一次電池は、パルス放電特性に優れているため、瞬間的に大電流を必要とする各種携帯機器などにおいて好適に用いることができる。

Claims (11)

  1. リチウムイオンを吸蔵することができる第一活物質と、リチウムイオンを吸蔵および放出することができる第二活物質とを含む正極を備えたリチウム一次電池であって
    前記第二活物質が、環状骨格を有する化合物であって、前記環状骨格を構成する炭素原子のうち、少なくとも2つの炭素原子がそれぞれケトン基を形成しており、かつ少なくとも2つの前記ケトン基とともに前記環状骨格が共役系を構成している化合物の重合体であり、
    当該リチウム一次電池が開回路状態にある間に、前記第二活物質が前記第一活物質によって自然充電されるリチウム一次電池。
  2. 当該リチウム一次電池の組み立て完了時に、前記第二活物質が充電状態である請求項1に記載のリチウム一次電池。
  3. 前記重合体が、フェナントレンキノン骨格またはテトラケトン骨格を含む繰り返し単位を有する、請求項1に記載のリチウム一次電池。
  4. 前記正極が導電助剤をさらに含み、
    前記第二活物質としての前記重合体が前記導電助剤の表面を被覆する薄膜の形態で存在している請求項1に記載のリチウム一次電池。
  5. 前記第一活物質がフッ化黒鉛または二酸化マンガンである請求項1に記載のリチウム一次電池。
  6. リチウム電極に対する前記第二活物質の放電深度0%における開回路電位が、リチウム電極に対する前記第一活物質の放電深度0%における開回路電位よりも低い請求項1に記載のリチウム一次電池。
  7. 前記リチウム電極に対する前記第二活物質の放電深度0%における前記開回路電位が、リチウム電極に対する前記第一活物質の平均放電電位よりも高い請求項6に記載のリチウム一次電池。
  8. 前記第二活物質の平均放電電位が、前記第一活物質の放電深度0%における開回路電位以下であり、当該リチウム一次電池の負極に対して2.0V以上である請求項1に記載のリチウム一次電池。
  9. 前記重合体は、以下の式(15)で表される重合体である請求項1に記載のリチウム一次電池。
    Figure 0005634525
  10. 前記重合体は、以下の式(16)で表される重合体である請求項1に記載のリチウム一次電池。
    Figure 0005634525
  11. 前記重合体は、以下の式(17)で表される重合体である請求項1に記載のリチウム一次電池。
    Figure 0005634525
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