JP5633124B2 - 金属膜付きフィルム - Google Patents

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本発明は金属膜付きフィルム及び金属膜付き接着フィルム、並びに、これらを用いた回路基板の製造方法に関する。
各種電子機器に広く使用されている多層プリント配線板、フレキシブルプリント配線板等の回路基板は、電子機器の小型化、高機能化のために、層の薄型化や回路の微細配線化が求められている。そして、その製造方法としては、例えば、内層回路基板上に接着フィルムにより硬化性樹脂組成物を積層し、該硬化性樹脂組成物を硬化して絶縁層を形成した後、該絶縁層をアルカリ性過マンガン酸カリウム溶液等の酸化剤で粗化し、その粗面に無電解めっきによりめっきシード層を形成し、次いで電解めっきにより導体層を形成する、セミアディティブ法が知られている。ここで、該方法では、密着強度の高い導体層を得るために、上記のように、絶縁層表面を酸化剤で粗化し、表面に凹凸を形成して導体層との間にアンカー効果が得られるようにする必要があるが、回路形成時にエッチングで不要なめっきシード層を除去する際、アンカー部分のシード層が除去され難く、アンカー部分のシード層を十分に除去し得る条件でエッチングした場合、配線パターンの溶解が顕著化し、微細配線化の妨げになるという問題が生じていた。
このような問題を解決する方法として、金属膜付きフィルムにより基板上の硬化性樹脂組成物層やプリプレグ表面に金属膜層を転写し、転写された金属膜層上にめっき等により導体層を形成する方法が試みられている。例えば、特許文献1では、支持体上に水溶性高分子離型層を介して金属膜層を形成してなる金属膜付きフィルムを用いることで、酸化剤で粗化されていない絶縁層表面に密着性及び均一性の高い金属膜層を形成でき、その結果、回路形成におけるエッチングを温和な条件で実施できて微細配線化に優れた効果が発揮されることが示された。しかしながら、特許文献1に記載の金属膜付きフィルムを用いて製造された回路基板(多層プリント配線板)では、高温高湿下において導体層の絶縁層への密着強度が低下する傾向にあり、高温高湿下での導体層の密着強度の維持性について改良の余地が残されていた。また、フラッシュエッチング時間の短縮化についても改良の余地が残されていた。
国際公開第2008/105480号パンフレット
本発明の課題は、高温高湿下での絶縁層に対する密着強度の維持性に優れる導体層形成を可能にする金属膜付きフィルム及び金属膜付き接着フィルムを提供することである。
また、高温高湿下での絶縁層に対する密着強度の維持性に優れる導体層を形成でき、しかも、フラッシュエッチング時間の短縮化を図ることできる、回路基板の製造方法を提供することである。
本発明者らは鋭意検討の結果、金属膜付きフィルム又は金属膜付き接着フィルムの水溶性高分子離型層に特定のナノ無機充填材を含有させることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の内容を含む。
(1)支持体、該支持体上に形成されたナノ無機充填材含有水溶性高分子離型層、及び該離型層上に形成された金属膜層を有することを特徴とする金属膜付きフィルム。
(2)ナノ無機充填材がナノシリカである、上記(1)記載の金属膜付きフィルム。
(3)水溶性高分子が水溶性セルロース樹脂である、上記(1)又は(2)記載の金属膜付きフィルム。
(4)支持体がプラスチックフィルムである、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の金属膜付きフィルム。
(5)金属膜層が、クロム、ニッケル、チタン、ニッケル・クロムアロイ、アルミニウム、金、銀及び銅からなる群より選択される金属により形成された1層又は2層以上の層である、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の金属膜付きフィルム。
(6)金属膜層が銅により形成されている、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の金属膜付きフィルム。
(7)金属膜層が蒸着法又は/及びスパッタリング法により形成されたものである上記(1)〜(6)のいずれかに記載の金属膜付きフィルム。
(8)離型層の層厚が0.1μm〜20μmである上記(1)〜(7)のいずれかに記載の金属膜付きフィルム。
(9)金属膜層の層厚が50nm〜5000nmである上記(1)〜(8)のいずれかに記載の金属膜付きフィルム。
(10)上記(1)〜(9)のいずれかに記載のフィルムの金属膜層上に硬化性樹脂組成物層を形成してなることを特徴とする金属膜付き接着フィルム。
(11)以下の工程(A)〜(D)を含む回路基板の製造方法;
(A)基板上に形成された硬化性樹脂組成物層に、上記(1)〜(9)のいずれかに記載の金属膜付きフィルムを、金属膜層が硬化性樹脂組成物層表面に接するように積層する工程、
(B)硬化性樹脂組成物層を硬化して絶縁層を形成する工程、
(C)支持体を剥離する工程、及び
(D)金属膜層上に存在する離型層を水溶液で溶解除去する工程。
(12)以下の工程(A’)〜(D)を含む回路基板の製造方法;
(A’)基板上に、上記(10)記載の金属膜付き接着フィルムを、硬化性樹脂組成物層が内層回路基板に接するように積層する工程、
(B)硬化性樹脂組成物層を硬化して絶縁層を形成する工程、
(C)支持体を剥離する工程、及び
(D)金属膜層上に存在する離型層を水溶液で溶解除去する工程。
(13)(E)金属膜層上に電解めっきにより導体層を形成する工程をさらに含むことを特徴とする、上記(11)又は(12)記載の方法。
(14)(F)金属膜層を除去する工程をさらに含むことを特徴とする、上記(11)又は(12)記載の方法。
(15)(J)無電解めっきにより金属膜層を形成する工程をさらに含むことを特徴とする、上記(12)又は(13)記載の方法。
(16)(G)電解めっきにより導体層を形成する工程をさらに含むことを特徴とする、上記(15)記載の方法。
(17)硬化性樹脂組成物層が、繊維からなるシート状基材に硬化性樹脂組成物が含浸されたプリプレグからなる、上記(11)記載の方法。
(18)上記(1)〜(9)のいずれかに記載の金属膜付きフィルム2枚の間に、1枚以上のプリプレグを金属膜層がプリプレグ側となるように配置し、減圧下で加熱及び加圧して金属膜層をプリプレグに積層してなる金属張積層板。
(19)上記(10)記載の金属膜付き接着フィルム2枚の間に、1枚以上のプリプレグを硬化性樹脂組成物層がプリプレグ側となるように配置し、減圧下で加熱及び加圧して硬化性樹脂組成物層をプリプレグに積層してなる金属張積層板。
本発明によれば、水溶性高分子離型層に特定のナノ無機充填材を含有させることにより、高温高湿下での絶縁層に対する密着強度の維持性に優れる導体層形成を可能にする金属膜付きフィルム及び金属膜付き接着フィルムを提供できるようになった。
また、かかる金属膜付きフィルム又は金属膜付き接着フィルムを使用することにより、回路基板の微細配線化を有利に進めることができ、しかも、高温高湿下での信頼性に優れる回路基板を効率よく製造することができる。
また、回路基板製造において、金属膜付きフィルム又は金属膜付き接着フィルムから基板上に転写した金属膜層を除去し、金属膜層を再形成する手順を採ることで、配線パターン(回路パターン)形成後にシード層をエッチング除去するフラッシュエッチング時間を短縮することができる。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
[金属膜付きフィルム]
本発明の金属膜付きフィルムは、支持体、該支持体上に形成されたナノ無機充填材含有水溶性高分子離型層、及び該離型層上に形成された金属膜層を有する。
<支持体>
支持体は自己支持性を有するフィルム乃至シート状物であり、金属箔、プラスチックフィルム等を用いることができ、特にプラスチックフィルムが好適に用いられる。金属箔としては、アルミニウム箔、銅箔等が挙げられる。支持体層として金属箔を用いる場合で金属膜付きフィルムが離型層を有しない場合は、形成される金属膜層とは別の金属からなる金属箔が採用される。プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリカーボネート等が挙げられ、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルムが好ましく、中でも、安価なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。また支持体層表面は、コロナ処理等の表面処理が施してあってもよい。また金属膜層や離型層が存在しない側の支持体層フィルム表面にも、マット処理、コロナ処理等の表面処理が施してあってもよい。
支持体の層厚は、10μm〜70μm、好ましくは15μm〜70μmである。層厚が小さすぎると、取り扱い性に劣る、支持体の剥離性低下や平滑な金属膜層の形成に不具合が生じるなどの問題がある。また、層厚が大きすぎると、コスト的に不利となり実用的でない。
また、支持体は、離型層が形成される側の表面の算術平均粗さ(Ra)が50nm以下(即ち、0以上、50nm以下)であることが好ましく、より好ましくは40nm以下、さらに一層好ましくは35nm以下、とりわけ好ましくは30nm以下である。算術平均粗さ(Ra)がこの範囲を超えると、金属膜付きフィルムを製造する際に金属膜層のクラックが発生しやすくなる。また離型層が形成されない側の支持体表面の算術平均粗さ(Ra)も、金属膜付きフィルムを巻き取ってロール状とする場合に、該表面が金属膜層と接触し、クラックを引き起こすおそれがあるため、上記と同じ範囲内とするのが好ましい。
支持体表面の算術平均粗さ(Ra)を50nm以下とするには、特に制限はなく、当業者に公知の方法を用いることができる。ポリエチレンテレフタレートフィルム等のプラスチックフィルムは、一般に、製造後にロール状に巻き取るのを容易にするため、充填材を含有させて表面凹凸が付与されており、該充填材含有量を小さくすることによりRa値を低下させることができる。また市販の支持体を用いることもでき、T60(東レ(株)製、ポリエチレンテレフタレートフィルム、Ra=22nm)、A4100(東洋紡績(株)製、ポリエチレンテレフタレートフィルム、平滑面側Ra=12nm)、Q83(帝人デュポンフィルム(株)製、ポリエチレンナフタレートフィルム、平滑面側Ra=32nm)、等が挙げられる。算術平均粗さ(Ra値)の測定は、公知の方法を用いることができ、非接触型算術平均粗さ計(ビーコインスツルメンツ社製WYKO NT3300等)などの装置を用いて測定することができる。
また、支持体としてカーボンブラックを含有するプラスチックフィルムを使用することで、後述の回路基板の製造工程でのレーザー加工によるブラインドビア形成における加工性を向上させることができる。このようなプラスチックフィルムとしては、上述のT60(東レ(株)製)、A4100(東洋紡績(株)製)、Q83(帝人デュポンフィルム(株)製)等や、リンテック(株)製のアルキッド型離型剤(AL−5)付きポリエチレンテレフタレートフィルム、ダイアホイル(登録商標)B100(三菱化学ポリエステルフィルム(株)製、ポリエチレンテレフタレートフィルム)等が挙げられる。
<ナノ無機充填材含有水溶性高分子離型層>
本発明における「ナノ無機充填材含有水溶性高分子離型層」とは、水溶性セルロース樹脂、水溶性ポリエステル樹脂及び水溶性アクリル樹脂から選択される1種又は2種以上の水溶性高分子にナノ無機充填材を配合せしめた高分子組成物を層状に形成したものである。
水溶性セルロース樹脂、水溶性ポリエステル樹脂及び水溶性アクリル樹脂のなかでも、水溶性セルロース樹脂又は水溶性ポリエステル樹脂が好ましく、水溶性セルロース樹脂が特に好ましい。なお、水溶性樹脂はいずれか1種が単独で用いられるが、2種以上を混合して用いることもできる。また、当該離型層は、単層で形成されるが、使用される水溶性樹脂が互いに異なる2以上の層から形成される多層構造であってもよい。
(水溶性セルロース樹脂)
本発明でいう「水溶性セルロース樹脂」とは、セルロースに水溶性を付与するための処理を施したセルロース誘導体のことであり、好適には、セルロースエーテル、セルロースエーテルエステル等が挙げられる。
セルロースエーテルは、セルロースポリマーに1以上のエーテル連結基を与えるために、セルロースポリマーの1以上の無水グルコース繰り返し単位に存在する1以上のヒドロキシル基の変換により形成されるエーテルのことであり、エーテル連結基には、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基(炭素数1〜4)及びヒドロキシアルコキシ基(炭素数1〜4)から選択される1種以上の置換基により置換されていてもよいアルキル基(炭素数1〜4)が挙げられる。具体的には、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、3−ヒドロキシプロピルなどのヒドロキシアルキル基(炭素数1〜4);2−メトキシエチル、3−メトキシプロピル、2−メトキシプロピル、2−エトキシエチルなどのアルコキシ(炭素数1〜4)アルキル基(炭素数1〜4);2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルまたは2−(2−ヒドロキシプロポキシ)プロピルなどのヒドロキシアルコキシ(炭素数1〜4)アルキル基(炭素数1〜4)、カルボキシメチルなどのカルボキシアルキル基(炭素数1〜4)等が挙げられる。ポリマー分子中のエーテル連結基は単一種でも複数種でもよい。すなわち、単一種のエーテル連結基を有するセルロースエーテルであっても、複数種のエーテル連結基を有するセルロースエーテルであってもよい。
セルロースエーテルの具体例としては、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びこれらの水溶性塩(ナトリウム塩のアルカリ金属塩等)が挙げられる。
なお、セルロースエーテルにおける単位グルコース環あたりに置換されたエーテル基の平均モル数は特に限定されないが、1〜6が好ましい。また、セルロースエーテルの分子量は重量平均分子量が20000〜60000が好適である。
一方、セルロースエーテルエステルは、セルロース中に存在する1以上のヒドロキシル基および1以上の好適な有機酸またはその反応性誘導体との間で形成され、それによりセルロースエーテルにおいてエステル連結基を形成するエステルのことである。なお、ここでいう「セルロースエーテル」は上述の通りであり、「有機酸」は脂肪族または芳香族カルボン酸(炭素数2〜8)を含み、脂肪族カルボン酸は、非環状(分枝状または非分枝状)または環状であってもよく、飽和または不飽和であってもよい。具体的には、脂肪族カルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、マレイン酸等の置換又は非置換の非環状脂肪族ジカルボン酸;グリコール酸または乳酸などの非環状脂肪族ヒドロキシ置換モノカルボン酸;リンゴ酸、酒石酸、クエン酸などの非環状脂肪族ヒドロキシ置換ジ−またはトリ−カルボン酸等が挙げられる。また、芳香族カルボン酸としては、炭素数が14以下のアリールカルボン酸が好ましく、1以上のカルボキシル基(例えば、1、2または3のカルボキシル基)を有するフェニルまたはナフチル基などのアリール基を含むアリールカルボン酸が特に好ましい。なお、アリール基は、ヒドロキシ、炭素数が1〜4のアルコキシ(例えば、メトキシ)およびスルホニルから選択される、同一または異なってもよい1以上の(例えば、1、2または3)の基により置換されていてもよい。アリールカルボン酸の好適な例には、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸またはトリメリット酸(1,2,4−ベンゼントリカルボン酸)等が挙げられる。
有機酸が1以上のカルボキシル基を有する場合、好適には、酸のただ1つのカルボキシル基が、セルロースエーテルに対してエステル連結を形成する。ヒドロキシプロピルメチルセルロースサクシネートの場合、各サクシネート基の1つのカルボキシル基がセルロースとエステル連結を形成し、他のカルボキシル基が遊離の酸として存在する。「エステル連結基」は、セルロースまたはセルロースエーテルと、既述の好適な有機酸またはその反応性誘導体による反応により形成される。好適な反応性誘導体には、無水フタル酸などの酸無水物が含まれる。
ポリマー分子中のエステル連結基は単一種でも複数種でもよい。すなわち、単一種のエステル連結基を有するセルロースエーテルエステルであっても、複数種のエステル連結基を有するセルロースエーテルエステルであってもよい。ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートは、サクシネート基とアセテート基の両方を有するヒドロキシプロピルメチルセルロースの混合エステルである。
好適なセルロースエーテルエステルは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはヒドロキシプロピルセルロースのエステルであり、具体的には、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルローストリメリテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートトリメリテート、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルセルロースブチレートフタレート、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートフタレートサクシネートおよびヒドロキシプロピルセルロースアセテートトリメリテートサクシネート等が挙げられ、これらは1種又は2種以上を使用できる。これらの中でも、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートフタレートが好ましい。
なお、セルロースエーテルエステルにおける単位グルコース環あたりに置換されたエステル基の平均モル数は特に限定されないが、0.5%〜2%が好ましい。また、セルロースエーテルエステルの分子量は重量平均分子量が20000〜60000が好適である。
セルロースエーテル、セルロースエーテルエステルの製法は公知であり、天然由来のセルロース(パルプ)を原料とし、定法に従って、エーテル化剤、エステル化剤を反応させることによって得ることができるが、本発明では市販品を使用してもよい。信越化学工業(株)製「HP−55」、「HP−50」、「60−SH」(ともにヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート)等が挙げられる。
(水溶性ポリエステル樹脂)
本発明でいう「水溶性ポリエステル樹脂」とは、多価カルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と多価アルコールまたはそのエステル形成性誘導体を主たる原料とする重縮合反応によって合成されるような、実質的に線状のポリマーからなるポリエステル樹脂であって、分子中または分子末端に親水基が導入されたものである。ここで、親水基としては、スルホ基、カルボキシル基、燐酸基等の有機酸基またはその塩等が挙げられ、好ましくは、スルホ基またはその塩、カルボキシル基またはその塩である。水溶性ポリエステル樹脂としては、特にスルホ基もしくはその塩及び/又はカルボキシル基もしくはその塩を有するものが好ましい。
当該ポリエステル樹脂の多価カルボン酸成分の代表例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸などであり、これらは、単独使用でも2種以上の併用でもよい。また、上記の種々の化合物と共に、p−ヒドロキシ安息香酸などのようなヒドロキシカルボン酸、マレイン酸、フマル酸またはイタコン酸などのような不飽和カルボン酸も少量であれば併用してもよい。
当該ポリエステル樹脂の多価アルコール成分の代表例としては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,6−ヘキサングリコール、1,4−シクロヘキサンメタノール、キシリレングリコール、ジメチロールプロピオン酸、グリセリン、トリメチロールプロパンまたはポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール等であり、これらは、単独使用でも2種以上の併用でもよい。
当該ポリエステル樹脂の分子中または分子末端への親水基の導入は公知慣用の方法で行えばよいが、親水基を含有するエステル形成性化合物(芳香族カルボン酸化合物、ヒドロキシ化合物等)を共重合する態様が好ましい。
スルホン酸塩基を導入する場合、5−スルホン酸ナトリウムイソフタル酸、5−スルホン酸アンモニウムイソフタル酸、4−スルホン酸ナトリウムイソフタル酸、4−メチルスルホン酸アンモニウムイソフタル酸、2−スルホン酸ナトリウムテレフタル酸、5−スルホン酸カリウムイソフタル酸、4−スルホン酸カリウムイソフタル酸および2−スルホン酸カリウムテレフタル酸等から選ばれる1または2種以上を共重合するのが好適である。
また、カルボキシル基を導入する場合、たとえば、無水トリメリット酸、トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ピロメリット酸、トリメシン酸、シクロブタンテトラカルボン酸、ジメチロールプロピオン酸等から選ばれる1または2種以上を共重合するのが好適であり、当該共重合反応の後、アミノ化合物、アンモニアまたはアルカリ金属塩などで中和せしめることによって、カルボン酸塩基を分子中に導入することが出来る。
水溶性ポリエステル樹脂の分子量は特に制限はないが、重量平均分子量が10000〜40000が好ましい。重量平均分子量が10000未満では、層形成性が低下する傾向となり、40000を超えると、溶解性が低下する傾向となる。
本発明において、水溶性ポリエステル樹脂は、市販品を使用することができ、互応化学工業(株)製の「プラスコート Z−561」(重量平均分子量:約27000)、「プラスコート Z−565」(重量平均分子量:約25000)等が挙げられる。
(水溶性アクリル樹脂)
本発明でいう「水溶性アクリル樹脂」とは、カルボキシル基含有単量体を必須成分として含有することで、水に分散乃至溶解するアクリル樹脂である。
当該アクリル樹脂は、より好ましくは、カルボキシル基含有単量体及び(メタ)アクリル酸エステルが必須の単量体成分であり、必要に応じてその他の不飽和単量体を単量体成分として含有するアクリル系重合体である。
上記単量体成分において、カルボキシル基含有単量体としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノブチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノブチル等が挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸が好適である。
また、(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等のアルキルの炭素数が1〜18であるメタアクリル酸アルキルエステルが挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を用いることができる。
また、その他の不飽和単量体としては、芳香族アルケニル化合物、シアン化ビニル化合物、共役ジエン系化合物、ハロゲン含有不飽和化合物、水酸基含有単量体等をあげることができる。芳香族アルケニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン等を挙げることができる。シアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等を挙げることができる。共役ジエン系化合物としては、ブタジエン、イソプレン等をあげることができる。ハロゲン含有不飽和化合物としては、塩化ビニル、塩化ビニリデン、パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン等を挙げることができる。水酸基含有単量体としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、α−ヒドロキシメチルエチル(メタ)アクリレート等をあげることができる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
後述するように、本発明において、離型層は、好適には、水溶性セルロース樹脂、水溶性ポリエステル樹脂または水溶性アクリル樹脂を含む塗工液を支持体に塗布・乾燥する方法によって形成される。水溶性アクリル樹脂を使用する場合、その塗工液はエマルジョン形態でも、水溶液形態でも使用可能である。
水溶性アクリル樹脂をエマルジョン形態で使用する場合、コアシェル型エマルジョンが好適であり、コアシェル型エマルジョンでは、コアシェル粒子のシェルにカルボキシル基が存在することが重要であり、従って、シェルはカルボキシル基含有単量体及び(メタ)アクリル酸エステルを含むアクリル樹脂で構成される。
このようなコアシェル粒子の分散品(エマルジョン)は市販品を使用することができ、ジョンクリル7600(Tg:約35℃)、7630A(Tg:約53℃)、538J(Tg:約66℃)、352D(Tg:約56℃)(いずれもBASFジャパン(株)製)等が挙げられる。
水溶性アクリル樹脂を水溶液形態で使用する場合、当該アクリル樹脂は、カルボキシル基含有単量体及び(メタ)アクリル酸エステルを含むアクリル樹脂であり、比較的低分子量であることが重要である。よって、重量平均分子量が1000〜50000であるのが好ましく、重量平均分子量が1000未満では、層形成性が低下する傾向となり、重量平均分子量が50000を超えると、支持体との密着性が高くなり、硬化後の支持体の剥離性が低下する傾向となる。
このような水溶性アクリル樹脂の水溶液は、市販品を使用することができ、ジョンクリル354J(BASFジャパン(株)製)等を挙げることができる。
水溶性アクリル樹脂を含有させる形態として、エマルジョン形態と水溶液形態とでは、薄膜化しやすいという観点で、エマルジョン形態が好適である。
(ナノ無機充填材)
本発明において使用されるナノ無機充填材は、平均粒径が400nm以下の無機充填材を意味する。ナノ無機充填材の平均粒径とは、様々な方法により測定可能であるが、BET法と呼ばれる粉体粒子表面に吸着占有面積の判った分子を液体窒素の温度で吸着させ、その量から試料の比表面積を求める方法であるが、このBET法より求められた比表面積から求められたものである。
ナノ無機充填材の粒子形態は特に限定されず、略球状、直方体状、板状、繊維のような直線形状、枝分かれした分岐形状を用いることができる。ナノ無機充填材の種類としては、シリカ、ゼオライト、チタン酸化物、鉄酸化物、アルミニウム酸化物、ジルコニウム酸化物、ケイ酸塩、雲母、マイカ、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等が挙げられる。なかでも、シリカが好ましく、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、水分散性シリカ(コロイダルシリカ、気相シリカ等)が好ましく、コスト、汎用性の点から水分散性シリカがより好ましく、コロイダルシリカが更に好ましい。シリカとしては、特に限定されるものではないが、具体的には、球状のコロイダルシリカとして、日産化学工業社製のスノーテックス−C、スノーテックス−O、スノーテックス−N、スノーテックス−S、スノーテックス−OL、スノーテックス−XS、スノーテックス−XL、MP1040等があり、有機溶剤に分散させたオルガノシリカゾルとして、IPA−ST、MEK−ST、IPA−ST−ZL等がある。鎖状のコロイダルシリカとして、日産化学工業社製のスノーテックス−UP、スノーテックス−OUP等があり、オルガノシリカゾルとして、IPA−ST−UP等がある。気相シリカとしては、日本アエロジル社製のアエロジル130、アエロジル200、アエロジル200CF、アエロジル300、アエロジル300CF、アエロジル380、アエロジルMOX80等がある。
後述するように、当該離型層は典型的には水溶性高分子及びナノ無機充填材を含む塗工液を支持体上に塗布、乾燥する方法によって形成されるが、コロイダルシリカ又はオルガノシリカゾルの粒径は、非常に小さく且つ比較的均一で粗粒がなく、すでに溶液に分散している状態であるので、水溶性高分子樹脂と混合させても凝集することが少ないため、均一な塗工が可能である。また、安価で容易に入手可能である点でも望ましいため、上記コロイダルシリカ及びオルガノシリカゾルを用いることが好ましい。
ナノ無機充填材の平均粒径の上限は、凹凸が大きくなりすぎ微細配線形成がしにくくなるのを防止するという観点から、400nmが好ましく、300nmがより好ましく、200nmが更に好ましい。一方、平均粒径の下限は、ナノ無機充填材を添加した効果を得るという観点から、3nmが好ましく、6nmがより好ましく、10nmが更に好ましい。
離型層中におけるナノ無機充填材の含有量の上限は、ナノ無機充填材の凝集による凹凸の増加を防止し、剥離層が脆くなりひび割れやすくなることを防止するという観点から、離型層中の不揮発分100質量%に対して、60質量%が好ましく、50質量%がより好ましく、40質量%が更に好ましい。一方、離型層中におけるナノ無機充填材の含有量の下限は、ナノ無機充填材を添加する効果を得るという観点から、10質量%が好ましく、20質量%がより好ましく、30質量%が更に好ましい。
支持体上への離型層の形成方法は特に限定されず、熱プレス、熱ロールラミネート、押出しラミネート、塗工液の塗布・乾燥等の公知の積層方法を採用できるが、簡便で、性状均一性の高い層を形成し易い等の点から、水溶性高分子及びナノ無機充填材を含む塗工液を塗布・乾燥する方法が好ましい。塗工液に使用する溶媒としては、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤、イオン交換水、市水などの水、イソプロピルアルコール、エタノール、メタノールなどのアルコール系溶媒、DMF、NMPを挙げることができる。
本発明において、ナノ無機充填材含有水溶性高分子離型層は、単層でも、多層(積層)でもよい。多層の場合、個々の層毎に水溶性樹脂の種類、ナノ無機充填材の種類、ナノ無機充填材の粒径等を変更したり、後述の帯電防止剤、エネルギー吸収性フィラー等を使用する場合に、それらを含有する層と含有しない層を設ける等の、個々の層毎に組成を変更することができる。
また、ナノ無機充填材含有水溶性高分子離型層の層厚の上限は、樹脂組成物を硬化させる際に、金属膜層と離型層との熱膨張率の相違によって金属膜層にひびや傷が入ることを防止する観点から、20μmが好ましく、10μmがより好ましく、5μmが更に好ましい。一方、層厚の下限は、支持体の剥離性低下を防止するという観点から、0.05μmが好ましく、0.1μmがより好ましく、0.2μmが更に好ましい。ここでいう「層厚」とは離型層が単層の場合はその厚みであり、多層の場合は、多層の総厚みである。
ナノ無機充填材含有水溶性高分子離型層の表面には、ナノ無機充填材を含有することによる微細な凹凸が形成される。該離型層表面の算術平均粗さ(Ra)の上限は、400nmが好ましく、300nmがより好ましい。一方、算術平均粗さ(Ra)の下限は、10nmが好ましく、30nmがより好ましい。なお、ここでいう算術平均粗さ(Ra)の測定は、公知の方法を用いることができ、非接触型算術平均粗さ計(ビーコインスツルメンツ社製WYKO NT3300等)などの装置を用いて測定することができる。
ナノ無機充填材含有水溶性高分子離型層は、ナノ無機充填材を含むことで、水溶性高分子離型層が有する支持体に対する優れた離型性と、均一な金属膜層の転写を可能にする優れた金属膜層転写性を有するとともに、転写後の金属膜層に絶縁層への優れた密着性を付与する。
本発明において、ナノ無機充填材含有水溶性高分子離型層は帯電防止剤を含んでいてもよい。
帯電防止剤は静電気による帯電を抑制し得るものであれば特に限定されないが、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤が好ましい。市販されている帯電防止剤の具体例としては、カチオン系界面活性剤として、フローレンAE−2(共栄社化学(株)製)、ホモゲノールL18、L1820(花王(株)製)、アニオン系界面活性剤として、エレクトロストリッパーME−2(花王(株)製)、ノニオン系界面活性剤として、エレクトロストリッパーEA(花王(株)製)等が挙げられる。
帯電防止剤の割合は、水溶性高分子(固形分)及び帯電防止剤の合計質量を100質量%とすると、0.1質量%〜15質量%の範囲が好ましく、1質量%〜10質量%の範囲が更に好ましい。0.1質量%未満では、帯電防止効果が十分に発揮されない傾向にあり、15質量%を超える場合には、支持体の剥離性が低下する傾向にある。
また、後述の回路基板の製造工程でのレーザー加工によるブラインドビア形成またはスルーホール形成の際の加工性を向上させる目的で、離型層には、エネルギー吸収性フィラーを含有させることができる。エネルギー吸収性フィラーとしては、カーボン粉、金属化合物粉、金属粉又は溶剤可溶性の黒色染料等の公知のものを使用できる。該エネルギー吸収性フィラーは、離型層が多層からなる場合は、そのうちの1層のみに含有されていてもよい。
カーボン粉としては、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、アントラセンブラック等のカーボンブラックの粉末、黒鉛粉末、またはこれらの混合物の粉末などが挙げられる。金属化合物粉としては、酸化チタン等のチタニア類、酸化マグネシウム等のマグネシア類、酸化鉄等の鉄酸化物、酸化ニッケル等のニッケル酸化物、二酸化マンガン、酸化亜鉛等の亜鉛酸化物、二酸化珪素、酸化アルミニウム、希土類酸化物、酸化コバルト等のコバルト酸化物、酸化錫等のスズ酸化物、酸化タングステン等のタングステン酸化物、炭化珪素、炭化タングステン、窒化硼素、窒化珪素、窒化チタン、窒化アルミニウム、硫酸バリウム、希土類酸硫化物、またはこれらの混合物の粉末などが挙げられる。金属粉としては、銀、アルミニウム、ビスマス、コバルト、銅、鉄、マグネシウム、マンガン、モリブデン、ニッケル、パラジウム、アンチモン、ケイ素、錫、チタン、バナジウム、タングステン、亜鉛、またはこれらの合金若しくは混合物の粉末などが挙げられる。黒色染料としては、アゾ(モノアゾ、ジスアゾ等)染料、アゾ−メチン染料、アントラキノン系染料キノリン染料、ケトンイミン染料、フルオロン染料、ニトロ染料、キサンテン染料、アセナフテン染料、キノフタロン染料、アミノケトン染料、メチン染料、ペリレン染料、クマリン染料、ペリノン染料、トリフェニル染料、トリアリルメタン染料、フタロシアニン染料、インクロフェノール染料、アジン染料、またはこれらの混合物などが挙げられる。黒色染料は水溶性樹脂中への分散性を向上させるため溶剤可溶性の黒色染料であるのが好ましい。これらエネルギー吸収性フィラーは、各々単独で用いても良く、異なる種類のものを混合して用いてもよい。エネルギー吸収性フィラーは、レーザーエネルギーの熱への変換効率や、汎用性等の観点から、カーボン粉が好ましく、特にカーボンブラックが好ましい。
エネルギー吸収性フィラーの配合量は、離型層全体(離型層の固形分全体の合計量100質量%)当たり、0.05〜40質量%、好ましくは0.1〜20質量%、より好ましくは1〜10質量%である。添加量が少ないと、レーザー加工性の向上が充分に発揮されない傾向にあり、添加量が多いと離型層の製膜性が低下し、離型層の調製が困難になる傾向にある。
また、離型層には、ナノ無機充填材の分散性向上、水溶性高分子樹脂との密着性向上等を目的として、シランカップリング剤等のカップリング剤やオルガノシラザン化合物等を配合することができる。また、ナノ無機充填材を定法に従ってカップリング剤やオルガノシラザン化合物で予め表面処理してから水溶性高分子に含有させてもよい。
カップリング剤としては、アミノプロピルメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)アミノプロビルトリメトキシシラン等のアミノシラン系カップリング剤;グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、グリシジルブチルトリメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン系カップリング剤;メルカトプロピルトリメトキシシラン、メルカトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプトシラン系カップリング剤;メチルトリメトキシシラン;オクタデシルトリメトキシシラン;フェニルトリメトキシシラン;メタクロキシプロピルトリメトキシシラン;イミダゾールシラン;トリアジンシラン等のシラン系カップリング剤の他、ブチルチタネートダイマー、チタンオクチレングリコレート、ジイソプロポキシチタンビス(トリエタノールアミネート)、ジヒドロキシチタンビスラクテート、ジヒドロキシビス(アンモニウムラクテート)チタニウム、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、トリーn−ブトキシチタンモノステアレート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリイソステアロイイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミドエチル・アミノエチル)チタネートのチタネート系カップリング剤等が挙げられる。オルガノシラザン化合物としては、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサフェニルジシラザン、ジメチルアミノトリメチルシラン、トリシラザン、シクロトリシラザン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメテルシクロトリシラザン等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上を使用することができる。
カップリング剤及び/又はオルガノシラザン化合物等の配合量は、離型層中の不揮発分100質量%当たり、0.01〜2質量%が好ましい。
また、ナノ無機充填材含有水溶性高分子離型層と支持体間での剥離性を向上させるために、アルキッド樹脂、シリコーン樹脂及びフッ素樹脂等から選ばれるいずれか1種または2種以上で構成される他の離型層を支持体上に存在させることができる。すなわち、ナノ無機充填材含有水溶性高分子離型層が金属膜層側にが配置され、アルキッド樹脂、シリコーン樹脂及びフッ素樹脂等から選ばれるいずれか1種または2種以上で構成される他の離型層が支持体側に配置されるように、金属膜層と支持体の間にナノ無機充填材含有水溶性高分子離型層と他の離型層とを積層することができる。なお、離型層がナノ無機充填材含有水溶性高分子離型層のみである場合、支持体の剥離は、支持体とナノ無機充填材含有水溶性高分子離型層の界面で行われ、離型層がナノ無機充填材含有水溶性高分子離型層とアルキッド樹脂離型層との積層である場合、支持体の剥離は、ナノ無機充填材含有水溶性高分子離型層とアルキッド樹脂離型層の界面で行われる。
離型層がナノ無機充填材含有水溶性高分子離型層とアルキッド樹脂離型層との積層である場合、ナノ無機充填材含有水溶性高分子離型層の層厚は0.01〜0.4μmが好ましく、アルキッド樹脂離型層の層厚は0.01〜0.2μmが好ましい。
<金属膜層>
金属膜層としては、金、白金、銀、銅、コバルト、クロム、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ、インジウム等の金属単体のほか、適宜2種類以上の金属の固溶体(アロイ)などのあらゆる種類の金属を使用することができる。中でも、コスト、蒸着法やスパッタリング法の汎用性、電気伝導性の点から、クロム、ニッケル、チタン、ニッケル・クロムアロイ、アルミニウム、金、銀及び銅が好ましく、銅が特に好ましい。また、金属膜層は単層であっても異なる金属の2層以上の積層で構成されていてもよい。回路基板製造での、銅層を基板上の硬化性樹脂組成物層表面やプリプレグ表面に積層して該硬化性樹脂組成物層やプリプレグを熱硬化する工程において、樹脂組成物やプリプレグへの銅の拡散によって樹脂の熱劣化(分解)等が懸念される系では、銅層上にクロム層、ニッケル・クロムアロイ層又はチタン層を設けることができる。すなわち、離型層上に銅層を形成した後、クロム層、ニッケル・クロム層又はチタン層を更に形成することができる。
金属膜層の形成は、蒸着法、スパッタリング法及びイオンプレーティング法から選ばれる1種又は2種以上の方法で行なうことができ、膜性能の点から、蒸着法及び/又はスパッタリング法で行なうのが好ましい。
スパッタリング法は、公知の方法を用いることができ、支持体を真空容器内に入れ、アルゴン等の不活性ガスを導入し、直流電圧を印加して、イオン化した不活性ガスをターゲット金属に衝突させ、叩き出された金属により支持体上(離型層を有する場合は離型層上)に膜形成を行うことができる。また、蒸着法(真空蒸着法)も、公知の方法を用いることができ、支持体を真空容器内に入れ、金属を加熱蒸発させることにより支持体上(離型層を有する場合は離型層上)に膜形成を行うことができる。また、イオンプレーティング法も、公知の方法を用いることができ、支持体を真空容器内に入れ、グロー放電雰囲気下で、金属を加熱蒸発させ、イオン化した蒸発金属により支持体上(離型層を有する場合は離型層上)に膜形成を行うことができる。
なお、予め形成しておいた金属フィルム乃至シートを支持体にラミネートする等の、上述の蒸着法、スパッタリング法及びイオンプレーティング法以外の方法で金属層(膜)を形成することも可能である。
金属膜層の層厚は特に制限はないが、50nm〜5000nmであり、好ましくは50nm〜3000nm、より好ましくは100nm〜3000nm、とりわけ好ましくは100nm〜1000nmである。層厚が小さすぎる場合、回路基板の製造において、電解めっき操作中の傷等により、金属膜層にムラが生じ、導体層形成に不具合が生じるおそれがある。一方、層厚が大きすぎる場合、スパッタリング法又は/及び蒸着法による金属膜の形成に長時間を要し、コスト的観点から好ましくない。なお、上記のような銅層/クロム層、ニッケル・クロムアロイ層又はチタン層の2層構造とする場合の全体の層厚は上記と同じであり、またクロム層、ニッケル・クロム層又はチタン層の厚さは好ましくは5nm〜100nm、より好ましくは5nm〜50nm、とりわけ好ましくは5nm〜30nm、最も好ましくは5〜20nmである。
また、金属膜層の好適態様として、多層プリント配線板の製造における、導体層形成前のブラインドビア形成工程、デスミア工程での、転写された金属膜層(銅層)の損傷のために、金属膜層を支持体側から銅エッチング液耐性を有する第1金属層と銅又は銅アロイからなる第2金属層をこの順に積層した構成を採用してもよい。これにより、回路基板製造において、ビア底下地銅層又は銅アロイ層の表面を銅エッチング液でエッチングした場合でも、転写された金属膜層の表面がほとんどエッチングされず、ビア底の残渣除去(デスミア)が十分に行うことができる。
第1金属層は、銅エッチング液耐性を有する金属からなる金属層であり、「銅エッチング液耐性を有する金属」とは、銅層や銅アロイ層のエッチング処理に使用される銅溶解性を有する酸性薬液及び/又はアルカリ性薬液に対しても実質的にほとんど溶解されない(エッチングされない)性質を有する金属を意味する。銅エッチング液への耐性としては、特定の銅エッチング液により銅層を2μm溶解する時間において、同じ銅エッチング液により同時間内に溶解する金属層が0.1μm以下となる範囲を設定することができ、そのような特性を有する金属層を銅エッチング液耐性を有する第1金属層として採用することができる。このような金属は、絶縁層表面の粗化及びビア形成後のビア底のデスミア処理に使用するアルカリ性過マンガン酸カリウム溶液等の酸化剤溶液に対しても難溶解性である。
かかる「銅エッチング液耐性を有する金属」の具体例としては、ニッケル、ニッケルアロイ、チタン、チタンアロイ等が挙げられる。ニッケルアロイの例としてはニッケル・クロムアロイが挙げられる。チタンアロイの例としては、チタン・クロムアロイが挙げられる。これらの中でも、スパッタリングや蒸着等で容易に形成できる点、コストや汎用性の観点からニッケルもしくはニッケルアロイが好ましい。
当該第1金属層の層厚は10nm〜500nmが好ましく、10nm〜200nmがより好ましい。層厚が10nm未満の場合、銅エッチング液耐性の効果が十分に得られない傾向となり、500nmを超える場合、スパッタリングや蒸着による層形成で発生する熱により支持体が劣化する、コスト的に不利になる等の傾向にある。
第2金属層は、銅層又は銅アロイ層であり、銅アロイ層としては、コスト、蒸着法やスパッタリング法等の汎用性、電気伝導性の点から、ニッケル−銅アロイ、チタン−銅アロイが好ましい。第2金属層として特に好ましいのは銅層である。第2金属層の層厚は50nm〜5000nmが好ましく、50nm〜3000nmがより好ましく、さらに好ましくは100nm〜3000nm、とりわけ好ましくは100nm〜2000nmである。層厚が小さすぎる場合、回路基板製造において、電解めっき操作中の傷等により、金属層にムラが生じ、導体層形成に不具合が生じるおそれがある。一方、層厚が大きすぎる場合、蒸着法やスパッタリング法等による金属膜の形成に長時間を要し、コスト的観点から好ましくない。
金属膜層としてかかる第1金属層と第2金属層の積層構成を採用する場合に、硬化性樹脂組成物層の熱硬化の際に、銅層の硬化性樹脂組成物層への拡散によって樹脂の熱劣化(分解)等が懸念される系では、これを抑制するために、必要により、第3金属層を設けても良い。第3金属層に好適な金属としては、クロム、ニッケル・クロムアロイ又はチタンを挙げることができる。当該第3金属層の層厚は5nm〜100nmが好ましく、5nm〜50nmがより好ましい。また第2金属層と第3金属層の合計の層厚は50nm〜5000nmが好ましく、50nm〜3000nmがより好ましく、さらに好ましくは100nm〜3000nm、とりわけ好ましくは100nm〜2000nm、最も好ましくは100nm〜1000nmである。
本発明の金属膜付きフィルムにおける金属膜層の転写は、少なくとも表層が硬化性樹脂組成物よりなる被着体(被転写体)に、当該フィルムを、金属膜層が被着体(被転写体)の表面に接するよう重ねて積層し、この状態で硬化性樹脂組成物を硬化した後、支持体を剥離し、金属膜層上に存在する離型層を水溶液で溶解除去することによって行われる。
すなわち、硬化性樹脂組成物の硬化により金属膜層は被着体(被転写体)に強固に接着する一方、支持体の剥離後は金属膜層上に剥離層が残存するが、水溶性セルロース層、水溶性ポリエステル樹脂層又は水溶性アクリル樹脂層からなる離型層は水溶液で溶解除去できるので、硬化性樹脂組成物よりなる被着体と金属膜層間の膨れや、金属膜層のしわ、亀裂等を発生することなく、金属膜層が均一に転写される。なお硬化処理前に剥離した場合、金属膜層が十分に転写されない、硬化性樹脂組成物の硬化後に金属膜層に亀裂が入る等の不具合が生じ易くなる。
[金属膜付き接着フィルム]
本発明の金属膜付き接着フィルムは、上述した金属膜付きフィルムの金属膜層上に硬化性樹脂組成物層が形成されたものである。すなわち、本発明の金属膜付き接着フィルムは、支持体、ナノ無機充填材含有水溶性高分子離型層、金属膜層に加え、硬化物樹脂組成物層を有する。
<硬化性樹脂組成物層>
該硬化性樹脂組成物層に使用する硬化性樹脂組成物は、回路基板の絶縁層に適したものであれば特に限定されない。エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂、フェノール樹脂、ビスマレイミド−トリアジン樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ビニルベンジル樹脂等の熱硬化性樹脂にその硬化剤を少なくとも配合した組成物が使用される。特にエポキシ樹脂及び硬化剤を含有する熱硬化性樹脂組成物が好ましい。
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールのジグリシジルエーテル化物、ナフタレンジオールのジグリシジルエーテル化物、フェノール類のグリシジルエーテル化物、及びアルコール類のジグリシジルエーテル化物、並びにこれらのエポキシ樹脂のアルキル置換体及び水素添加物等が挙げられる。エポキシ樹脂は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
エポキシ樹脂は、これらの中でも、耐熱性、絶縁信頼性等の観点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましい。具体的には、ジャパンエポキシレジン(株)製「コピコート828EL」(液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、DIC(株)製「HP4032」、「HP4032D](ナフタレン型2官能エポキシ樹脂)、DIC(株)製「HP4700」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂)、東都化成(株)製「ESN−475V」「ESN−185V」(ナフトール型エポキシ樹脂)、ダイセル化学工業(株)製「PB−3600」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂)、日本化薬(株)製「NC3000H」、「NC3000L」、「NC3100」、「NC3000」(ビフェニル型エポキシ樹脂)、ジャパンエポキシレジン(株)製「YX4000」(ビフェニル型エポキシ樹脂)、東都化成(株)製GK3207(ビフェニル型エポキシ樹脂)、ジャパンエポキシレジン(株)製「YX8800」(アントラセン骨格含有型エポキシ樹脂)などが挙げられる。
エポキシ樹脂は、樹脂シートの形態で使用する場合、耐熱性や破断強度とラミネート性を両立するために、1分子中に2以上のエポキシ基を有する室温(20℃等)で液状の芳香族系エポキシ樹脂、または融点以上で溶解させた後、室温にて液状となる結晶性芳香族系エポキシ樹脂と、1分子中に3以上エポキシ基を有する室温(20℃等)で固体状の芳香族系エポキシ樹脂を併用して用いるのが好ましい。また該固体状の芳香族系エポキシ樹脂は、ガラス転移温度等の物性向上のため、エポキシ当量が230以下のものが好ましく、エポキシ当量が150〜230の範囲にあるものがさらに好ましい。該液状の芳香族系エポキシ樹脂と固体状の芳香族系エポキシ樹脂の割合は、質量比で1:0.3〜2の範囲が好ましく、1:0.5〜1の範囲がより好ましい。
硬化剤としては、アミン系硬化剤、グアニジン系硬化剤、イミダゾール系硬化剤、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤、フェノール系硬化剤、トリアジン骨格含有ナフトール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、酸無水物系硬化剤又はこれらのエポキシアダクトやマイクロカプセル化したもの、活性エステル系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、シアネートエステル樹脂等を挙げることができる。フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤、トリアジン骨格含有ナフトール系硬化剤が好ましい。硬化剤は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤の具体例としては、MEH−7700、MEH−7810、MEH−7851(明和化成(株)製)、NHN、CBN、GPH(日本化薬(株)製)、SN−170、SN−180、SN−190、SN−475、SN−485、SN−495、SN−375、SN−395(東都化成(株)製)、TD2090(DIC(株)製)等が挙げられる。トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤の具体例としては、LA3018、LA7052、LA7054、LA1356(DIC(株)製)等が挙げられる。
活性エステル化合物は、エポキシ樹脂の硬化剤として機能し、一般にフェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N−ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましく用いられる。活性エステル化合物は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に耐熱性等の観点から、カルボン酸化合物とフェノール化合物又はナフトール化合物とから得られる活性エステル化合物が好ましい。カルボン酸化合物としては、安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。フェノール化合物又はナフトール化合物としては、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、カテコール、α−ナフトール、β−ナフトール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラック等が挙げられる。活性エステル化合物は2種以上を併用してもよい。活性エステル化合物としては、特開2004−427761号公報に開示されている活性エステル化合物を用いてもよく、また市販のものを用いることもできる。市販されている活性エステル化合物としては、ジシクロペンタジエニルジフェノール構造を含むものとして、EXB−9451、EXB−9460(DIC(株)製)、フェノールノボラックのアセチル化物としてDC808、フェノールノボラックのベンゾイル化物としてYLH1026(ジャパンエポキシレジン(株)製)、などが挙げられる。
ベンゾオキサジン化合物の具体的例としては、F−a、P−d(四国化成(株)製)、HFB2006M(昭和高分子(株)製)などが挙げられる。
シアネートエステル樹脂は、ノボラック型(フェノールノボラック型、アルキルフェノールノボラック型など)シアネートエステル樹脂、ビスフェノール型(ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型など)シアネートエステル樹脂およびこれらが一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。好ましいシアネートエステル樹脂としては、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート(オリゴ(3−メチレン−1,5−フェニレンシアネート)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルフェニルシアネート)、4,4’−エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2−ビス(4−シアネート)フェニルプロパン、1,1−ビス(4−シアネートフェニルメタン)、ビス(4−シアネート−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,3−ビス(4−シアネートフェニル−1−(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4−シアネートフェニル)チオエーテル、ビス(4−シアネートフェニル)エーテル等の2官能シアネート樹脂、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂、これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。市販されているシアネートエステル樹脂としては、ロンザジャパン(株)製PT30(フェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂、シアネート当量124)、ロンザジャパン(株)製、BA230(ビスフェノールAジシアネートの一部または全部がトリアジン化され、三量体となったプレポリマー、シアネート当量232)、ロンザジャパン(株)製、DT4000(ジシクロペンタジエン型多官能シアネートエステル樹脂、シアネート当量140)等が挙げられる。
エポキシ樹脂と硬化剤の配合比率は、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤、フェノール系硬化剤、トリアジン骨格含有ナフトール系硬化剤、ナフトール系硬化剤の場合、エポキシ樹脂のエポキシ当量1に対してこれら硬化剤のフェノール性水酸基当量が0.4〜2.0の範囲となる比率が好ましく、0.5〜1.0の範囲となる比率がより好ましい。反応基当量比がこの範囲外であると、硬化物の機械強度や耐水性が低下する傾向にある。
本発明における熱硬化性樹脂組成物には、硬化剤に加え、硬化促進剤をさらに配合することができる。このような硬化促進剤としては、イミダゾール化合物、ジアザビシクロ化合物、有機ホスフィン・ホスホニウム化合物等が挙げられる。具体例としては、四国化成(株)製の2MZ(2-メチルイミダゾール)、C11Z(2-ウンデシルイミダゾール)、C17Z(2−ヘプタデシルイミダゾール)、1.2DMZ(1,2−ジメチルイミダゾール)、2E4MZ(2−エチル−4−メチルイミダゾール)、2PZ(2−フェニルイミダゾール)、2P4MZ(2−フェニル−4−メチルイミダゾール)、1B2MZ(1−ベンジル−2−メチルイミダゾール)、1B2PZ(1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール)、2MZ−CN(1 - シアノエチル−2−メチルイミダゾール)、C11Z−CN(1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール)、2E4MZ−CN(1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール)、2PZ−CN(1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール)、C11−CNS(1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト)、2PZCNS−PW(1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト)、2MZ−A(2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、C11Z−A(2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン)、2E4MZ−A(2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン)、2MA−OK(2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物)、2PHZ−PW(2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール)、2P4MHZ−PW(2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール)、TBZ(2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾール、SFZ(1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムクロライド)、P−0505(エポキシ−イミダゾールアダクト)等のイミダゾール化合物、サンアプロ(株)製のU-CAT SA 1(DBU-フェノール塩)、U-CAT SA 102(DBU-オクチル酸塩)、U-CAT SA 506(DBU-p-トルエンスルホン酸塩)、U-CAT SA 603(DBU-ギ酸塩)、U-CAT SA 810(DBU-オルトフタル酸塩、U-CAT SA 831、841、851、U-CAT 881(DBU-フェノールノボラック樹脂塩)、U-CAT 5002(N-ベンジルDBU-テトラフェニルボレート塩)等のジアザビシクロ化合物、北興化学工業(株)製、TPP−S(トリフェニルホスフィントリフェニルボラン)、TPP−K(テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート)、TBP−DA(テトラブチルホスホニウムデカン酸塩)などの有機ホスフィン・ホスホニウム化合物などが挙げられる。硬化促進剤を用いる場合、エポキシ樹脂に対して0.1〜3.0質量%の範囲で用いるのが好ましい。
本発明における熱硬化性樹脂組成物には、硬化後の組成物に適度な可撓性を付与する等の目的で熱可塑性樹脂を配合することができる。熱可塑性樹脂としては、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン等が挙げられる。熱硬化性樹脂は2種以上を組み合わせて用いてもよい。当該熱可塑性樹脂は熱硬化性樹脂組成物の不揮発分を100質量%としたとき、0.5〜60質量%の割合で配合するのが好ましく、より好ましくは3〜50質量%である。熱可塑性樹脂の配合割合が0.5質量%未満の場合、樹脂組成物粘度が低いために、均一な熱硬化性樹脂組成物層を形成することが難しくなる傾向となり、60質量%を超える場合、樹脂組成物の粘度が高くなり過ぎて、基板上の配線パターンへの埋め込みが困難になる傾向となる。
フェノキシ樹脂の具体例としては、東都化成(株)製FX280、FX293、ジャパンエポキシレジン(株)製YX8100、YL6954、YL6974、YL7482、YL7553、YL6794、YL7213、YL7290等が挙げられる。
ポリビニルアセタール樹脂はポリビニルブチラール樹脂が好ましく、ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては、電気化学工業(株)製、電化ブチラール4000−2、5000−A、6000−C、6000−EP、積水化学工業(株)製エスレックBHシリーズ、BXシリーズ、KSシリーズ、BLシリーズ、BMシリーズ等が挙げられる。
ポリイミドの具体例としては、新日本理化(株)製のポリイミド「リカコートSN20」および「リカコートPN20」が挙げられる。また、2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を反応させて得られる線状ポリイミド(特開2006−37083号公報記載のもの)、ポリシロキサン骨格含有ポリイミド(特開2002−12667号公報、特開2000−319386号公報等に記載のもの)等の変性ポリイミドが挙げられる。
ポリアミドイミドの具体例としては、東洋紡績(株)製のポリアミドイミド「バイロマックスHR11NN」および「バイロマックスHR16NN」が挙げられる。また、日立化成工業(株)製のポリシロキサン骨格含有ポリアミドイミド「KS9100」、「KS9300」等の変性ポリアミドイミドが挙げられる。
ポリエーテルスルホンの具体例としては、住友化学(株)製のポリエーテルスルホン「PES5003P」等が挙げられる。
ポリスルホンの具体例としては、ソルベンアドバンストポリマーズ(株)製のポリスルホン「P1700」、「P3500」等が挙げられる。
本発明における熱硬化性樹脂組成物には、硬化後の組成物の低熱膨張化等のために無機充填材を含有させることができる。無機充填材としては、シリカ、アルミナ、雲母、マイカ、珪酸塩、硫酸バリウム、水酸化マグネシウム、酸化チタン等が挙げられ、シリカ、アルミナが好ましく、特に無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ等のシリカが好ましい。シリカとしては球状のものが好ましい。なお、無機充填剤は絶縁信頼性の観点から、平均粒径が3μm以下であるのが好ましく、平均粒径が1.5μm以下であるのがより好ましい。無機充填材の平均粒径はミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的にはレーザー回折式粒度分布測定装置により、無機充填材の粒度分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材を超音波により水中に分散させたものを好ましく使用することができる。レーザー回折式粒度分布測定装置としては、(株)堀場製作所製 LA−500等を使用することができる。
無機充填材は、耐湿性、分散性等の向上のため、アミノプロピルメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)アミノプロビルトリメトキシシラン等のアミノシラン系カップリング剤、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、グリシジルブチルトリメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン系カップリング剤、メルカトプロピルトリメトキシシラン、メルカトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプトシラン系カップリング剤、メチルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メタクロキシプロピルトリメトキシシラン、イミダゾールシラン、トリアジンシラン等のシラン系カップリング剤、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサフェニルジシラザン、ジメチルアミノトリメチルシラン、トリシラザン、シクロトリシラザン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメテルシクロトリシラザン等のオルガノシラザン化合物、ブチルチタネートダイマー、チタンオクチレングリコレート、ジイソプロポキシチタンビス(トリエタノールアミネート)、ジヒドロキシチタンビスラクテート、ジヒドロキシビス(アンモニウムラクテート)チタニウム、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、トリーn−ブトキシチタンモノステアレート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリイソステアロイイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミドエチル・アミノエチル)チタネートのチタネート系カップリング剤などの1種以上の表面処理剤で処理されていてもよい。
熱硬化性樹脂組成物中の無機充填剤の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の不揮発分を100質量%とした時、好ましくは20〜90質量%であり、より好ましくは20〜70質量%である。無機充填剤の含有量が20質量%未満の場合、熱膨張率の低下効果が十分に発揮されない傾向にあり、無機充填剤の含有量が90質量%を超えると、硬化物の機械強度が低下するなどの傾向となる。
本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化物の機械強度を高める、応力緩和効果等の目的で固体状のゴム粒子を含有してもよい。ゴム粒子は、樹脂組成物を調製する際の有機溶媒にも溶解せず、エポキシ樹脂等の樹脂組成物中の成分とも相溶せず、樹脂組成物のワニス中では分散状態で存在するものが好ましい。このようなゴム粒子は、一般には、ゴム成分の分子量を有機溶剤や樹脂に溶解しないレベルまで大きくし、粒子状とすることで調製される。ゴム粒子としては、コアシェル型ゴム粒子、架橋アクリルニトリルブタジエンゴム粒子、架橋スチレンブタジエンゴム粒子、アクリルゴム粒子などが挙げられる。コアシェル型ゴム粒子は、粒子がコア層とシェル層を有するゴム粒子であり、外層のシェル層がガラス状ポリマー、内層のコア層がゴム状ポリマーで構成される2層構造、または外層のシェル層がガラス状ポリマー、中間層がゴム状ポリマー、コア層がガラス状ポリマーで構成される3層構造のものなどが挙げられる。ガラス層は、メタクリル酸メチルの重合物などで構成され、ゴム状ポリマー層は、ブチルアクリレート重合物(ブチルゴム)などで構成される。コアシェル型ゴム粒子の具体例としては、スタフィロイドAC3832、AC3816N、(ガンツ化成(株)商品名)、メタブレンKW-4426(三菱レイヨン(株)商品名)が挙げられる。アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)粒子の具体例としては、XER-91(平均粒径0.5μm、JSR(株)製)などが挙げられる。スチレンブタジエンゴム(SBR)粒子の具体例としては、XSK-500(平均粒径0.5μm、JSR(株)製)などが挙げられる。アクリルゴム粒子の具体例としては、メタブレンW300A(平均粒径0.1μm)、W450A(平均粒径0.5μm)(三菱レイヨン(株)製)を挙げることができる。
配合するゴム粒子の平均粒径は0.005〜1μmの範囲が好ましく、0.2〜0.6μmの範囲がより好ましい。本発明におけるゴム粒子の平均粒径は、動的光散乱法を用いて測定することが出来る。適当な有機溶剤にゴム粒子を超音波などにより均一に分散させ、FPRA-1000(大塚電子(株)製)を用いて、ゴム粒子の粒度分布を質量基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。
ゴム粒子を配合する場合の含有量は、樹脂組成物中の不揮発分100質量%に対し、1〜10質量%の範囲であるのが好ましく、2〜5質量%の範囲であるのがより好ましい。
本発明における熱硬化性樹脂組成物には、必要に応じて他の成分を配合することができる。他の成分としては、有機リン系難燃剤、有機系窒素含有リン化合物、窒素化合物、シリコーン系難燃剤、金属水酸化物等の難燃剤、シリコーンパウダー、ナイロンパウダー、フッ素パウダー等の充填剤、オルベン、ベントン等の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系の消泡剤又はレベリング剤、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系、シラン系カップリング剤等の密着性付与剤、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、カーボンブラック等の着色剤等を挙げることができる。
なお、熱硬化性樹脂組成物層は、繊維からなるシート状補強基材中に上述の熱硬化性樹脂組成物を含浸したプリプレグで形成されてもよい。プリプレグに用いるシート状繊維基材は特に限定されず、ガラスクロス、アラミド不織布、液晶ポリマー不織布等のプリプレグ用基材として常用されているものを用いることができる。絶縁基材に用いる場合には、厚さが10〜150μmのものが好適に用いられ、特に10〜100μmのものが好ましい。シート状繊維基材の具体的な例としては、ガラスクロス基材として、旭シュエーベル(株)製スタイル1027MS(経糸密度75本/25mm、緯糸密度75本/25mm、布重量20g/m、厚さ19μm)、旭シュエーベル(株)製スタイル1037MS(経糸密度70本/25mm、緯糸密度73本/25mm、布重量24g/m、厚さ28μm)、(株)有沢製作所製1078(経糸密度54本/25mm、緯糸密度54本/25mm、布重量48g/m、厚さ43μm)、(株)有沢製作所製2116(経糸密度50本/25mm、緯糸密度58本/25mm、布重量103.8g/m、厚さ94μm)、などが挙げられる。また液晶ポリマー不織布として、(株)クラレ製の芳香族ポリエステル不織布のメルトブロー法によるベクルス(目付け量6〜15g/m)やベクトランなどが挙げられる。
プリプレグは、公知のホットメルト法、ソルベント法などにより製造することができる。ホットメルト法は、樹脂組成物を有機溶剤に溶解することなく、樹脂組成物と剥離性の良い離型紙に一旦コーティングし、それをシート状繊維基材にラミネートする、あるいはダイコータにより直接塗工するなどして、プリプレグを製造する方法である。またソルベント法は、樹脂組成物を有機溶剤に溶解した樹脂組成物ワニスにシート状繊維基材を浸漬することにより、樹脂組成物ワニスをシート状繊維基材に含浸させ、その後乾燥させる方法である。また、支持体上に積層された熱硬化性樹脂組成物からなる樹脂シートをシート状繊維基材の両面から加熱、加圧条件下、連続的に熱ラミネートすることで調製することもできる。
ワニスを調製する場合の有機溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等を挙げることができる。有機溶剤は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
乾燥条件は特に限定されないが、プレス工程における温度で熱硬化性樹脂組成物が流動性及び接着性を有する必要がある。従って、乾燥時には熱硬化性樹脂組成物の硬化をできる限り進行させないことが重要となる。一方、プリプレグ内に有機溶剤が多く残留すると、硬化後に膨れが発生する原因となるため、熱硬化性樹脂組成物中への有機溶剤の含有割合が5質量%以下、好ましくは2質量%以下となるように乾燥させる。具体的な乾燥条件は、熱硬化性樹脂組成物の硬化性やワニス中の有機溶媒量によっても異なるが、30〜60質量%の有機溶剤を含むワニスにおいては、80〜180℃で3〜13分乾燥させることができる。
熱硬化性樹脂組成物層は異なる種類の熱硬化性樹脂組成物からなる2層以上で形成されていてもよく、プリプレグ層と繊維状シート基材を含まない層からなる2層以上で形成されていてもよい。
熱硬化性樹脂組成物層の層厚は、内層回路基板の配線回路(導体層)の厚み等によっても異なるが、層間での絶縁信頼性等の観点から、10〜150μmの範囲が好ましく、15〜80μmの範囲がより好ましい。
熱硬化性樹脂組成物層をプリプレグで形成する場合、層厚は20〜250μmの範囲であり、ガラスクロスのコスト及び絶縁基材として所望される剛性の観点から、20〜180μmであることがより好ましく、さらには20〜150μmであることがより好ましい。
本発明の金属膜付き接着フィルムにおいて、硬化性樹脂組成物層の厚さは、内層回路導体層の厚み等によっても異なるが、層間での絶縁信頼性等の観点から、10〜150μmが好ましく、より好ましくは15〜80μmである。
本発明の金属膜付き接着フィルムは、前述の金属膜付きフィルムの製造における金属膜層の形成工程後、金属膜層表面に硬化性樹脂組成物層を形成することで製造することができる。硬化性樹脂組成物層の形成方法は公知の方法を用いることができ、有機溶剤に樹脂組成物を溶解した樹脂ワニスを調製し、この樹脂ワニスを、ダイコータなどを用いて、金属膜付きフィルムの金属膜層上に塗布し、更に加熱、あるいは熱風吹きつけ等により有機溶剤を乾燥させて樹脂組成物層を形成させることにより製造することができる。
有機溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。有機溶剤は2種以上を組みわせて用いてもよい。
乾燥条件は特に限定されないが、樹脂組成物層への有機溶剤の含有量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。ワニス中の有機溶剤量、有機溶剤の沸点によっても異なるが、30〜60質量%の有機溶剤を含むワニスを50〜150℃で3〜10分乾燥させることにより、樹脂組成物層が形成される。
また、金属膜付き接着フィルムは、金属膜付きフィルムとは別に、支持体上に硬化性樹脂組成物層を形成した接着フィルムを作製し、これら金属膜付きフィルムと接着フィルムとを硬化性樹脂組成物層と金属膜層が接触するように加熱条件下で貼り合わせる方法によって作製することもできる。接着フィルムは公知の方法により製造することができ、その支持体及び硬化性樹脂組成物層には前述のものが適用される。硬化性樹脂組成物層がプリプレグからなる金属膜付き接着フィルムを得る場合は、プリプレグを支持体上に、真空ラミネート法により積層することで接着フィルムを作製すればよい。
金属膜付きフィルムと接着フィルムの貼り合わせは、金属膜付きフィルムの金属膜層と接着フィルムの硬化性樹脂組成物層とが対向するように、それらを重ねて、熱プレス、熱ロール等で加熱圧着する。加熱温度は、60〜140℃が好ましく、より好ましくは80〜120℃である。圧着圧力は、1〜11kgf/cm(9.8×10〜107.9×10N/m)の範囲が好ましく、2〜7kgf/cm(19.6×10〜68.6×10N/m)の範囲が特に好ましい。
[金属膜付きフィルム又は金属膜付き接着フィルムを使用した回路基板の製造]
本発明の金属膜付きフィルム又は金属膜付き接着フィルムを用いた回路基板の製造方法は、以下の(A)〜(D)の工程を含む方法(以下、「第1方法」ともいう)か、又は、以下の(A’)〜(D)の工程を含む方法(以下、「第2方法」ともいう)である。
(A)基板上に形成された硬化性樹脂組成物層に、本発明の金属膜付きフィルムを、金属膜層が硬化性樹脂組成物層表面に接するように積層する工程、
(B)硬化性樹脂組成物層を硬化して絶縁層を形成する工程、
(C)支持体を剥離する工程、及び
(D)金属膜層上に存在する離型層を水溶液で溶解除去する工程。
(A’)基板上に、金属膜付き接着フィルムを、硬化性樹脂組成物層が基板に接するように積層する工程、
(B)硬化性樹脂組成物層を硬化して絶縁層を形成する工程、
(C)支持体を剥離する工程、及び
(D)金属膜層上に存在する離型層を水溶液で溶解除去する工程。
なお、本発明でいう「基板」とは、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等や、これら基板の片面又は両面にパターン加工された(回路形成された)導体層を有し、回路基板を製造する際に、さらに絶縁層および導体層が形成されるべき中間製造物となる所謂「内層回路基板」を含む概念である。また、本発明でいう「回路基板」は、絶縁層と回路形成された導体層を有していれば、特に限定されず、多層プリント配線板、フレキシブルプリント配線板等の各種回路基板が挙げられる。
第1方法での工程(A)における、基板上に形成する硬化性樹脂組成物層に使用する硬化性樹脂組成物は、多層配線基板の絶縁層に適したものであれば特に限定されない。前述の金属膜付き接着フィルムの硬化性樹脂組成物層を構成する硬化性樹脂組成物と同様のものが適用され、その具体例も前述のものが踏襲される。また、基板上への硬化性樹脂組成物層の形成は公知の方法を用いることができる。
第1方法での工程(A)において、基板上に形成する硬化性樹脂組成物層としてプリプレグを用いる場合、単一のプリプレグ又は複数枚のプリプレグを重ねて多層化した多層プリプレグでもよく、そのプリプレグの片面又は両面に、金属膜付きフィルムを、その金属膜層がプリプレグ表面に接するよう重ねて積層することができる。
また、第1方法での工程(A)の基板上に形成された硬化性樹脂組成物層への金属膜付きフィルムの積層は、作業性及び一様な接触状態が得られやすい点から、ロールやプレス圧着等でフィルムを基板上の硬化性樹脂組成物層にラミネート処理するのが好ましい。なかでも、真空ラミネート法により減圧下でラミネートするのが好適である。また、ラミネートの方法はバッチ式であってもロールでの連続式であってもよい。
ラミネートの条件は、一般的には、圧着圧力を1〜11kgf/cm(9.8×10〜107.9×10N/m)の範囲とし、空気圧が20mmHg(26.7hPa)以下の減圧下でラミネートするのが好ましい。
真空ラミネートは市販の真空ラミネーターを使用して行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、(株)名機製作所製 バッチ式真空加圧ラミネーター MVLP−500、ニチゴー・モートン(株)製 バキュームアップリケーター、(株)日立インダストリイズ製 ロール式ドライコータ、日立エーアイシー(株)製真空ラミネーター等を挙げることができる。
また、第2方法での基板上に金属膜付き接着フィルムを積層する工程(A’)では、ロールやプレス圧着等で金属膜付き接着フィルムを基板にラミネートする。この場合も、真空ラミネート法により減圧下でラミネートするのが好ましく、その際のラミネート条件や真空ラミネーターも上記第1方法での工程(A)での条件が踏襲される。
工程(B)の硬化性樹脂組成物層の硬化処理は、熱硬化処理であり、その条件は、硬化性樹脂の種類等によっても異なるが、一般に硬化温度が120〜200℃、硬化時間が15〜90分である。なお、比較的低い硬化温度から高い硬化温度へ段階的に硬化させる、又は上昇させながら硬化させる方が、形成される絶縁層の表面のしわ防止の観点から好ましい。
工程(C)の支持体の剥離は、手動で剥離してもよく、自動剥離装置により機械的に剥離してもよい。硬化性樹脂組成物層の硬化処理前に剥離した場合、金属膜層が十分に転写されない、硬化性樹脂組成物の硬化後に金属膜層に亀裂が入る等の不具合が生じ易い傾向があり、支持体の剥離は、硬化性樹脂組成物層の硬化処理後に行うことが好ましい。
工程(D)において、金属膜層上に存在する離型層を溶解除去するための水溶液としては、好ましくは、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を0.5〜10質量%の濃度で水に溶解させたアルカリ性水溶液等が挙げられる。回路基板等の製造上問題のない範囲で、水溶液中には、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコールが含まれていてもよい。溶解除去の方法は特に限定されず、支持体を剥離した後、水溶液中に基板を浸漬させて溶解除去する方法、水溶液をスプレー状や霧状に吹き付けて溶解除去する方法等が挙げられる。水溶液の温度は、室温〜80℃であり、浸水、吹き付け等の処理時間は10秒〜10分で行うことができる。アルカリ性水溶液としては、回路基板製造に使用される、アルカリ現像機のアルカリ型現像液(例えば、0.5〜2質量%の炭酸ナトリウム水溶液、25℃〜40℃)、ドライフィルム剥離機の剥離液(例えば、1〜5質量%の水酸化ナトリウム水溶液、40℃〜60℃)、デスミア工程で使用する膨潤液(例えば、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム等を含むアルカリ水溶液、60℃〜80℃)等を使用することもできる。
上記(A)〜(D)の工程、又は、(A’)〜(D)の工程を経た後、転写された金属膜層をそのまま導体層とするか、或いは、さらに転写された金属膜層をシード層として該金属膜層上に電解めっきにより導体層を形成する工程(工程(E))を行うことができる。転写された金属膜層の絶縁層への接触面には、ナノ無機充填材含有水溶性高分子離型層の表面の微細な粗面が反映した微細な粗面が形成されており、転写された金属膜層は絶縁層に対して高い密着強度で積層される。なお、転写された金属膜層の表面の算術平均粗さ(Ra)は30〜400nmで、離型層がナノ無機充填材を含まない水溶性高分子離型層からなる金属膜付きフィルムを使用した場合の転写された金属膜層の表面の算術平均粗さ(Ra)(20〜300nm)よりも若干大きくなるものの、比較的低い値を保っており、微細配線化の妨げになることはない。なお、ここでいう算術平均粗さ(Ra)の測定は、公知の方法を用いることができ、例えば、非接触型算術平均粗さ計(例えば、ビーコインスツルメンツ社製WYKO NT3300等)などの装置を用いて測定することができる。
工程(E)での電解めっきで形成する導体層は、通常は、金属膜層と同じ金属種の層であるが、異なる金属種の層を形成することもできる。金属膜層が銅層である場合、または銅層上にクロム層又はニッケル・クロムアロイ層が形成されている場合には、電解めっきによる銅層を形成することが好ましい。なお、電解めっきによる導体層の厚みは、金属膜層の厚み、所望の回路基板のデザインにもよるが、一般的には、3〜35μm、好ましくは5〜30μmである。
また、本発明においては、上記(A)〜(D)の工程、又は、(A’)〜(D)の工程を経た後、転写された金属膜層を除去する工程(工程(F))を行うことができる。
該工程(F)は、金属膜層を形成する金属を溶解させる溶液によりエッチング除去することにより行われる。また、ブラインドビアの形成、さらに必要によりデスミアを行った後に行うことができる。ここでのエッチング液は金属膜層の種類に応じて公知のものが選択され、例えば、金属膜層が銅の場合、塩化第二鉄水溶液、ペルオキソ二硫酸ナトリウムと硫酸の水溶液などの酸性エッチング液、メック(株)製のCF−6000、メルテックス(株)製のE−プロセス―WL等のアルカリ性エッチング液を用いることができる。また、金属膜層がニッケルの場合には、硝酸/硫酸を主成分とするエッチング液を用いることができ、市販品としては、メック(株)製のNH−1865、メルテックス(株)製のメルストリップN−950等が挙げられる。なお、金属膜層上に離型層が残存する場合で、離型層と金属膜層を同時に除去できる場合は、同時に除去しても良い。金属膜層除去後の絶縁層表面の算術平均粗さ(Ra)は、微細配線化の観点から、200nm以下が好ましく、80nm以下がより好ましく、70nm以下がより好ましく、60nm以下がより好ましい。
また、本発明における回路基板の製造方法では、無電解めっきによる金属膜層の形成工程(工程(J))を更に含ませることができる。該工程(J)は、工程(D)の後の金属膜層上に無電解めっきを施して新たな金属膜層を形成する第1の態様と、工程(F)の後の露出した絶縁層表面に無電解めっきにより新たな金属膜層を形成する第2の態様がある。また、該工程(J)で形成した新たな金属膜層をシード層としてさらに電解めっきにより導体層を形成する工程(工程(G))を行うことができる。
工程(J)の無電解めっきによる金属膜層の形成は、公知の方法により行うことができる。例えば、第1の態様の場合、工程(D)の後の金属膜層上にパラジウム等のめっき触媒を付与した後、無電解めっき液に含浸することで金属膜層を形成することができる。また、第2の態様の場合、絶縁層表面を界面活性剤等で処理し、パラジウム等のめっき触媒を付与した後、無電解めっき液に含浸することで金属膜層を形成することができる。該金属膜層として銅、ニッケル、金、パラジウム等が挙げられるが、銅が好ましい。また、その厚みは、0.1〜5.0μmが好ましい。樹脂表面の十分な被覆、コストの点から、0.2〜2.5μm程度がより好ましく、特に好ましくは0.2〜1.5μm程度である。なお、上記金属膜層は、無電解めっきの一種であるダイレクトプレーティング法によって形成してもよい。
工程(G)の電解めっきによる導体層形成はセミアディティブ法等、公知の方法により行うことができる。例えば、めっきレジストを形成し、上記の無電解めっきによる金属膜層をめっきシード層として、電解めっきにより導体層を形成する。電解めっきによる導体層(電解めっき層)は銅が好ましく、その厚みは所望の多層プリント配線板のデザインによるが、一般的には、3〜35μm、好ましくは5〜30μmである。電解めっき後、めっきレジストをアルカリ性水溶液等のめっきレジスト剥離液で除去後、めっきシード層の除去を行い、配線パターン(回路パターン)が形成される。めっきシード層(無電解めっきによる金属膜層)の除去の方法は、前述の工程(F)と同様の方法にて行うことができる。
本発明の回路基板の製造方法では、公知の方法により、ブラインドビアやスルーホールの形成を行ってもよい。例えば、多層プリント配線板のビルドアップされた絶縁層では、一般にブラインドビアにより層間の導通が行われる。スルーホールの形成は一般にコア基板において行われるが、絶縁層形成後にスルーホールが形成されてもよい。この場合、デスミア工程と同様の処理(例えば、後掲記載の酸化剤によるデスミア処理)をスルーホールに適用することができる。なおスルーホール形成には、一般に機械ドリルが用いられ、ブラインドビアの形成には、一般に炭酸ガスレーザー、YAGレーザー等レーザーが用いられる。
本発明方法において、ブラインドビアを形成する工程(工程(H))は、支持体がプラスチックフィルムの場合には支持体を除去する前の支持体上から行うことができる。すなわち、(B)硬化性樹脂組成物層を硬化し絶縁層を形成する工程の後、(C)支持体を剥離する工程の前に行うことができる。また、支持体剥離後、離型層が残存する場合は、離型層上から行うこともできる。すなわち、(C)支持体を剥離する工程の後に行うことができる。また、ブラインドビアは、金属膜層の除去(工程(F))の前に形成することが好ましい。金属膜除去前にブラインドビアを形成し、アルカリ性過マンガン酸溶液等の酸化剤処理によりデスミアを行う場合に、絶縁層表面が粗化されてしまうことがあるが、これを防げるため、金属膜層除去前にブラインドビアを形成するのは微細配線化を達成する上で好ましい。
本発明方法において、ブラインドビアの形成工程(工程(H))の後に行うデスミア工程(工程(I))は、プラズマ等のドライ法、アルカリ性過マンガン酸溶液等の酸化剤処理によるウエット法など公知の方法により行うことができる。デスミア工程は、主としてブラインドビア形成により生じたビア底残渣を除去する工程であり、ビア壁面の粗化を行う目的で行うことができる。特に、酸化剤によるデスミアは、ビア底のスミアを除去すると同時に、ビア壁面が酸化剤で粗化され、壁面のめっき密着強度を向上させることができる点で好ましい。
デスミア工程は、支持体上からブラインドビアを形成した場合、支持体の剥離前(工程(C)の前)に行うこともできる。また支持体を剥離後に(工程(C)の後)、離型層が残存する場合は、さらに離型層除去後(工程(D)の後)に行うのが好ましい。また上述したように、絶縁層表面が粗化されるのを防ぐため、デスミア工程は少なくとも金属膜層を除去する工程(工程(F))の前に行うのが好ましい。酸化剤によるデスミア工程は、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理及び中和液による中和処理をこの順に行うことによって行われる。膨潤液としてはアルカリ溶液、界面活性剤溶液等が挙げられ、好ましくはアルカリ溶液であり、該アルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液等が挙げられる。市販されている膨潤液としては、アトテックジャパン(株)製のスウェリング・ディップ・セキュリガンスP(Swelling Dip Securiganth P)、スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU(Swelling Dip Securiganth SBU)等を挙げることができる。酸化剤としては、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウムや過マンガン酸ナトリウムを溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液を挙げることができる。アルカリ性過マンガン酸溶液等の酸化剤による粗化処理は、60℃〜80℃に加熱した酸化剤溶液に10分〜30分付すことで行われる。また、アルカリ性過マンガン酸溶液における過マンガン酸塩の濃度は5〜10質量%とするのが一般的である。市販されている酸化剤としては、アトテックジャパン(株)製のコンセントレート・コンパクト CP、ドージングソリューション セキュリガンスP等のアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。また、中和液としては、酸性の水溶液が好ましく、市販品としては、アトテックジャパン(株)製のリダクションソリューシン・セキュリガントP(中和液)が挙げられる。
なお、ブラインドビア形成工程でビア周辺に金属膜層が存在しない部分が形成されるが、デスミア工程において、該ビア周辺の金属膜層の存在しない部分には粗化処理により凹凸の粗化面を形成することができる。ビア周辺は回路形成時にエッチングする必要はなく、ビア周辺を粗化面とすることにより、その後に行う無電解めっきによる金属膜層との密着がより強固になり、ブラインドビアの接続信頼性を高めることができる。
デスミア工程後に、工程(F)を行った場合、ビア底の下地金属層表面も同時にエッチングすることができる。ビア底の下地金属層表面をエッチングすることで、ビア底のスミアをより完全に除去することができる。金属膜層及びビア底下金属層の金属が銅である場合、銅エッチング溶液により、銅膜層のエッチングと同時に、ビア底下地銅層表面のエッチングによるスミア除去を行うことができる。
後掲実施例から分かるように、本発明によれば、低粗度の絶縁層表面に、高密着強度の導体層を形成することができる。また、基板上の絶縁層表面は、ナノ無機充填材含有水溶性高分子離型層表面の微細な粗面が反映された算術平均粗さ(Ra)が100〜200nmの適度な粗さになり、微細配線化に有利に作用する。また、高温高湿下での導体層の絶縁層への密着強度の維持性に有利に作用する。さらに、ドライフィルムとの密着性が向上し、パターン形成の際にドライフィルムが金属膜層から剥がれにくくなるという有利な効果も期待される。また、金属膜付きフィルム又は金属膜付き接着フィルムから転写された基板上の金属膜層を除去し、露出した絶縁層表面に無電解めっきにより金属膜層を再度形成する手順を採ることで、ビア形成時にデスミアを行ったときの絶縁層表面が粗化されてしまうのを防止することができ、微細配線化に有利に働くだけでなく、フラッシュエッチングの時間も短縮されて、回路基板の生産性が向上する点でも好ましい。
[金属張積層板]
本発明の金属膜付きフィルム又は金属膜付き接着フィルムを使用して新規な金属張積層板を提供することもできる。
かかる本発明の金属張積層板は、本発明の金属膜付きフィルムを2枚用意し、金属膜付きフィルムの金属膜層がプリプレグ側となるように、それら2枚の金属膜付きフィルムの間に1枚以上のプリプレグを配置し、減圧下で加熱及び加圧して金属膜層をプリプレグに積層することで得ることができる。
また、本発明の金属膜付き接着フィルムを2枚用意し、金属膜付き接着フィルムの硬化性樹脂組成物層がプリプレグ側となるように、それら2枚の金属膜付き接着フィルムの間に1枚以上のプリプレグを配置し、減圧下で加熱及び加圧して金属膜層をプリプレグに積層することで得ることもできる。
本発明の金属張積層板において、プリプレグには、前述の本発明の金属膜付き接着フィルムの硬化性樹脂組成物層の一例として記載したプリプレグと同様のプリプレグを使用することができ、その具体例も前述のものが踏襲される。また、プリプレグを2枚以上使用する場合、硬化性樹脂組成物の組成、シート状繊維基材の材料や厚み等のうちの一つ又は全部が互いに異なるものを用いても、互いに同一のプリプレグを用いてもよい。また、金属膜付き接着フィルムを使用した金属張積層板では、あらかじめ減圧下で加圧及び加熱されたプリプレグを用いることができる。このような予め減圧下で加圧及び加熱されたプリプレグとしては、市販されている金属張積層板の金属層を除去したプリプレグを挙げることができる。
減圧下、加熱及び加圧を行う積層工程は、一般の真空ホットプレス機を用いて行うことができる。例えば、加熱されたSUS板等の金属板を支持体層側両面からプレスすることにより行うことができる。
プレス条件は、減圧度を通常1×10−2MPa以下、好ましくは1×10−3MPa以下の減圧下とする。加熱及び加圧は、1段階で行うことも出来るが、樹脂のしみだしを制御する観点から2段階以上に条件を分けて行うのが好ましい。2段階以上に条件を分けて行うのが好ましい。例えば、1段階目のプレスを、温度が70〜150℃、圧力が1〜15kgf/cmの範囲、2段階目のプレスを、温度が150〜250℃、圧力が1〜40kgf/cmの範囲で行うのが好ましい。
市販されている真空ホットプレス機としては、例えば、MNPC−V−750−5−200(株)名機製作所製)、VH1−1603(北川精機(株)製)等が挙げられる。
本発明の金属張積層板は、プリプレグ又は硬化性樹脂組成物層を硬化後、最外層の支持体を剥離し、金属膜層上に存在する離型層を除去して、回路基板の製造に供することができるが、金属膜層上の離型層を除去後、さらに金属膜層を除去し、無電解めっきにより金属膜層を再度形成して、回路基板の製造に供するようにしてもよい。
硬化性樹脂組成物層(プリプレグ)の硬化条件は硬化性樹脂の種類等によっても異なるが、一般に硬化温度が120〜250℃、硬化時間が15〜90分である。なお、比較的低い硬化温度から高い硬化温度へ段階的に硬化させる、又は上昇させながら硬化させる方が、形成される絶縁層表面のしわ防止の観点から好ましい。
金属張積層板における最外層の支持体の剥離、金属膜層上の離型層の除去は、前述の[金属膜付きフィルム又は金属膜付き接着フィルムを使用した回路基板の製造]の欄で説明した支持体の剥離方法、離型層の除去方法をそのまま適用することができる。また、金属膜層上の離型層を除去後、さらに金属膜層を除去し、無電解めっきにより金属膜層を再度形成する場合の、金属膜層の除去、無電解めっきによる金属膜層の形成も、前述の[金属膜付きフィルム又は金属膜付き接着フィルムを使用した回路基板の製造]の欄で説明した金属膜層の除去方法、無電解めっきによる金属膜層の形成方法をそのまま適用することができる。
金属張積層板の金属膜層を利用して電解めっきによる導体層形成を行うことによって回路基板を製造することができる。かかる導体層形成はセミアディティブ法等の公知の方法により行うことができ、例えば、めっきレジストを形成し、上記の金属膜層をめっきシード層として、電解めっきにより導体層を形成する。電解めっきによる導体層(電解めっき層)は銅が好ましく、その厚みは所望の回路基板のデザインによるが、一般的には、3〜35μm、好ましくは5〜30μmである。電解めっき後、めっきレジストをアルカリ性水溶液等のめっきレジスト剥離液で除去後、めっきシード層の除去を行い、配線パターンが形成される。
かかる金属張積層板を使用した回路基板の製造方法では、スルーホールの形成工程を含ませることができる。スルーホール形成には、一般に機械ドリルが用いられるが、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー等レーザーを用いても良い。
スルーホールの形成は、支持体層がプラスチックフィルムの場合には支持体層を除去する前の支持体層上から行うことができる。また、支持体層を除去した後、離型層上から行うこともできる。また、金属膜層を除去し、無電解めっきにより金属膜層を再度形成する態様を採る場合、スルーホールは金属膜層の除去前に形成することが好ましい。金属膜除去前にスルーホールを形成し、アルカリ性過マンガン酸溶液等の酸化剤処理によりデスミアを行う場合に、絶縁層表面が粗化されてしまうことがあるが、これを防げるため、金属膜層除去前にスルーホールを形成するのは微細配線化を達成する上で好ましい。
また、スルーホール形成後は、デスミア工程を行うのが好ましい。かかるデスミア工程は、前述の[金属膜付きフィルム又は金属膜付き接着フィルムを使用した回路基板の製造]の欄で説明した、デスミア工程に準拠するものであり、薬液、条件等は、前述のものが踏襲される。支持体層上からスルーホールを形成した場合、デスミアは支持体層の剥離前に行うこともできるが、通常は、支持体層の剥離後(離型層が残存する場合は、さらに離型層の除去後)に行うのが好ましい。また、絶縁層表面が粗化されるのを防ぐため、デスミア工程は金属膜層を除去する工程の前に行うのが好ましい。
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって何等限定されるものではない。なお、以下の記載中の「部」は「質量部」を意味する。
まずは測定方法・評価方法について記載する。
<支持体の剥離性の評価>
支持体を手で剥離することにより、支持体の剥離性を評価した。評価として、剥離が容易にできた場合を○とし、剥離が困難な場合を×とした。
<導体層の密着強度の評価(剥離強度測定)>
導体層の剥離強度の測定をJIS C6481に準拠して行った。導体厚は30μmとした。
<高温高湿下での導体層の密着強度の維持性評価(HAST後の剥離強度測定)>
電解めっき後に剥離強度を測定したサンプルを、130℃で85%RHの環境下で、100時間放置するHAST(highly accelerated temperature and humidity Stress Test)を実施した。その後室温に戻し、導体層の剥離強度の測定をJIS C6481に準拠して行った。
<絶縁層の算術平均粗さ(Ra)の測定>
絶縁層の算術平均粗さ(Ra)の測定は、作製した多層プリント配線板上の銅めっき層を銅エッチング液で除去し、非接触型算術平均粗さ計(ビーコインスツルメンツ製WYKO NT3300)を用いて、VSIコンタクトモード、50倍レンズにより測定範囲を121μm×92μmとして、絶縁層の算術平均粗さ(Ra)を求めた。
<フラッシュエッチング時間の測定>
実施例1と比較例1のサンプルに関しては、無電解めっきまでのサンプルを用意し、無電解めっきの除去時間の測定を行った。無電解めっきの膜厚は約1.0μmであった。その後、(株)荏原電産製の回路形成用フラッシュエッチング薬液でSACプロセスを使用し、1.0μmの無電解銅めっきが完全に除去される時間を測定した。また、実施例3と参考例1に関しては、金属膜層を熱硬化性樹脂組成物上に積層し、硬化させ、剥離層を除去したサンプルを用いて、上記と同様な評価を行った。
〔実施例1〕
<金属膜付きフィルムの作製>
厚み38μmのポリエチレンテレフタレート(以下PETと略す)フィルム上に、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学工業(株)製「60−SH」)の固形分2%と、鎖状コロイダルシリカ(日産化学工業(株)製「スノーテックス−UP」、平均粒径:40〜100nm)の固形分0.8%の水とイソプロピルアルコールの質量比が3:1の混合溶媒からなる溶液をバーコータにより塗布し、熱風乾燥炉を用いて75℃から140℃まで昇温速度0.11℃/秒で昇温することで溶剤を除去し、PETフィルム上に厚みが1μmのヒドロキシプロピルメチルセルロース層を形成させた。次いで、ヒドロキシプロピルセルロース層上にスパッタリング(E−400S、キャノンアネルバ(株)製)により、銅層500nmを形成し、金属膜付きフィルムを作製した。
<接着フィルムの作製>
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量180、ジャパンエポキシレジン(株)製「エピコート828EL」)28部と、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂(エポキシ当量163、大日本インキ化学工業(株)製「HP4700」)28部、フェノキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製「XY6954BHBH30」20部と、MEK15部とシクロヘキサノン15部の混合液に撹拌しながら加熱溶解させた。そこへ、フェノール系硬化剤であるトリアジン構造を含むノボラック樹脂(固形物のフェノール性水酸基当量125、DIC(株)製「LA7054」、窒素含有量約12質量%)27部、ナフトール系硬化剤(水酸基当量215、東都化成(株)製「SN−485」)の固形分50%のMEK溶液27部、硬化触媒(2E4MZ)0.1部、球形シリカ(平均粒径0.5μm、アドマッテックス製「SOC2」アミノシラン処理)70部、フェナントリレン型リン化合物(三光(株)製「HCA−HQ」平均粒径2μm)6部、ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業(株)製「KS−1」)をエタノールとトルエンの質量比が1:1の混合溶媒に溶解した固形分15%の溶液30部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスを作製した。厚み38μmのPETフィルム上に上記ワニスをダイコータにより塗布し、熱風乾燥炉を用いて溶剤を除去し、硬化性樹脂組成物層の厚みが40μmである接着フィルムを作製した。
<基板への硬化性樹脂組成物層形成>
18μm厚の銅層で回路が形成されているガラスエポキシ基板の銅層上をCZ8100(アゾール類の銅錯体、有機酸を含む表面処理剤(メック(株)製))で処理して粗化を施した。上記接着フィルムを銅回路表面と接するようにし、バッチ式真空加圧ラミネーターMVLP−500((株)名機製作所製商品名)を用いて、回路基板の両面にラミネートした。ラミネートは30秒間減圧して気圧を13hPa以下で行った。次いで、室温に冷却後、接着フィルムの支持体を剥離し、回路基板の両面に硬化性樹脂組成物層を形成した。
<金属膜付きフィルムによる金属膜転写>
上記金属膜付きフィルムを、金属膜層が上記硬化性樹脂組成物層と接するようにして基板に積層した。積層は、バッチ式真空加圧ラミネーターMVLP−500((株)名機製作所製商品名)を用いて、回路基板の両面にラミネートすることにより行った。ラミネートは、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とし、その後30秒間、圧力7.54kgf/cmでプレスすることにより行った。その後、硬化性樹脂組成物層を110℃で30分、更に180℃で30分間硬化させ、絶縁層(硬化物層)を形成した。該絶縁層から金属膜転写用フィルムの支持体であるPETフィルムを剥離した。剥離性は良好で手で容易に剥離された。その後、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート層を1%炭酸ナトリウム水溶液で溶解除去した。金属膜層は均一に転写され、樹脂と金属層間の膨れ、金属層のしわ、金属層の亀裂といった異常は見られなかった。
<金属膜層の除去>
上記金属膜層が転写された基板を、塩化第二鉄水溶液に25℃で10分間浸漬して、金属膜層を除去した、
<導体層層形成>
上記金属膜層が除去されて露出した絶縁層上に、下記のアトテックジャパン(株)製薬液を使用した無電解銅めっきプロセスを使用して無電解銅めっきを行い、膜厚1μmの銅めっき層を形成した。その後、電解銅めっきを行って計30μm厚の導体層(銅層)を形成して多層プリント配線板を得た。
<アトテックジャパン(株)製薬液を使用した無電解銅めっきプロセス>
1.アルカリクリーニング(樹脂表面の洗浄と電荷調整)
商品名:Cleaning cleaner Securiganth 902
条件:60℃で5分
2.ソフトエッチング(ビア底、導体の銅の洗浄)
硫酸酸性ペルオキソ二硫酸ナトリウム水溶液
条件:30℃で1分
3.プレディップ(次工程のPd付与のための表面の電荷の調整が目的)
商品名:Pre. Dip Neoganth B
条件:室温で1分
4.アクティヴェーター(樹脂表面へのPdの付与)
商品名:Activator Neoganth 834
条件:35℃で5分
5.還元(樹脂に付いたPdを還元する)
商品名:Reducer Neoganth WA
:Reducer Acceralator 810 mod.の混合液
条件:30℃で5分
6.無電解銅めっき(Cuを樹脂表面(Pd表面)に析出させる)
商品名:Basic Solution Printganth MSK-DK
:Copper solution Printganth MSK
:Stabilizer Printganth MSK-DK
:Reducer Cu の混合液
条件:35℃で20分
〔実施例2〕
<金属膜付きフィルムの作製>
鎖状コロイダルシリカ(日産化学工業(株)製「スノーテックスUP」)の代わりに、球状コロイダルシリカ(日産化学工業(株)製「MP1040」)を使用した以外は、実施例1と同様にして金属膜付きフィルムを作製した。
金属膜付きフィルムとして、上記作製した金属膜付きフィルムを使用した以外は、実施例1と同様にして、基板への金属膜層の転写、金属膜層の除去、導体層形成を行って、多層プリント配線板を得た。
〔実施例3〕
<金属膜付きフィルムの作製>
鎖状コロイダルシリカ(日産化学工業(株)製「スノーテックスUP」)の代わりに、球状コロイダルシリカ(日産化学工業(株)製「MP1040」)を使用した以外は、実施例1と同様にして金属膜付きフィルムを作製した。
金属膜付きフィルムとして、上記作製した金属膜付きフィルムを使用し、基板に積層した後、金属膜層の除去を行わず、該金属膜層をシード層として電解めっきを行った以外は実施例1と同様にして、多層プリント配線板を得た。
〔比較例1〕
球状コロイダルシリカ(日産化学工業(株)製「MP1040」)を用いなかった以外は実施例3と同様な方法にて多層プリント配線板を得た。この方法は、国際公開第2008/105480号パンフレットに記載の方法に相当する。
Figure 0005633124
表1の結果から、実施例1〜3は絶縁層表面の算術平均粗さ(Ra)が小さいにもかかわらず、十分に高い剥離強度を示した。また、HAST後の剥離強度においても十分な値を維持していた。一方、比較例1は同等な剥離強度があるものの、HAST後の剥離強度の低下が大きかった。また、フラッシュエッチングに長時間を要した。
水溶性高分子離型層に更に特定のナノ無機充填材を含有させることにより、高温高湿環境下での絶縁層への導体層の密着強度の維持性に優れ、回路基板製造でのフラッシュエッチング時間の短縮化が達成できる金属膜付きフィルムを提供できるようになったことは極めて意義深い。




Claims (21)

  1. 支持体、該支持体上に形成されたナノ無機充填材含有水溶性高分子離型層、及び該離型層上に形成された金属膜層を有することを特徴とする金属膜付きフィルム。
  2. ナノ無機充填材がナノシリカである、請求項1記載の金属膜付きフィルム。
  3. ナノシリカがコロイダルシリカ又はオルガノシリカゾルである、請求項2記載の金属膜付きフィルム。
  4. 水溶性高分子が水溶性セルロース樹脂である、請求項1〜3のいずれか1項記載の金属膜付きフィルム。
  5. ナノ無機充填材含有水溶性高分子離型層の表面の算術平均粗さ(Ra)が30nm〜400nmである、請求項1〜4のいずれか1項記載の金属膜付きフィルム。
  6. 支持体がプラスチックフィルムである、請求項1〜のいずれか1項記載の金属膜付きフィルム。
  7. 金属膜層が、クロム、ニッケル、チタン、ニッケル・クロムアロイ、アルミニウム、金、銀及び銅からなる群より選択される金属により形成された1層又は2層以上の層である、請求項1〜のいずれか1項記載の金属膜付きフィルム。
  8. 金属膜層が銅により形成されている、請求項1〜のいずれか1項記載の金属膜付きフィルム。
  9. 金属膜層が蒸着法又は/及びスパッタリング法により形成されたものである請求項1〜のいずれか1項記載の金属膜付きフィルム。
  10. 離型層の層厚が0.1μm〜20μmである請求項1〜のいずれか1項記載の金属膜付きフィルム。
  11. 金属膜層の層厚が50nm〜5000nmである請求項1〜10のいずれか1項記載の金属膜付きフィルム。
  12. 請求項1〜11のいずれか1項記載のフィルムの金属膜層上に硬化性樹脂組成物層を形成してなることを特徴とする金属膜付き接着フィルム。
  13. 以下の工程(A)〜(D)を含む回路基板の製造方法;
    (A)基板上に形成された硬化性樹脂組成物層に、請求項1〜11のいずれか1項記載の金属膜付きフィルムを、金属膜層が硬化性樹脂組成物層表面に接するように積層する工程、
    (B)硬化性樹脂組成物層を硬化して絶縁層を形成する工程、
    (C)支持体を剥離する工程、及び
    (D)金属膜層上に存在する離型層を水溶液で溶解除去する工程。
  14. 以下の工程(A’)〜(D)を含む回路基板の製造方法;
    (A’)基板上に、請求項1記載の金属膜付き接着フィルムを、硬化性樹脂組成物層が基板に接するように積層する工程、
    (B)硬化性樹脂組成物層を硬化して絶縁層を形成する工程、
    (C)支持体を剥離する工程、及び
    (D)金属膜層上に存在する離型層を水溶液で溶解除去する工程。
  15. (E)金属膜層上に電解めっきにより導体層を形成する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項1又は1記載の方法。
  16. (F)金属膜層を除去する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項1又は1記載の方法。
  17. (J)無電解めっきにより金属膜層を形成する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項1又は1記載の方法。
  18. (G)電解めっきにより導体層を形成する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項1記載の方法。
  19. 硬化性樹脂組成物層が、繊維からなるシート状基材に硬化性樹脂組成物が含浸されたプリプレグからなる、請求項1記載の方法。
  20. 請求項1〜11のいずれか1項記載の金属膜付きフィルム2枚の間に、1枚以上のプリプレグを金属膜層がプリプレグ側となるように配置し、減圧下で加熱及び加圧して金属膜層をプリプレグに積層してなることを特徴とする金属張積層板。
  21. 請求項1記載の金属膜付き接着フィルム2枚の間に、1枚以上のプリプレグを硬化性樹脂組成物層がプリプレグ側となるように配置し、減圧下で加熱及び加圧して硬化性樹脂組成物層をプリプレグに積層してなることを特徴とする金属張積層板。
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