(実施の形態)
本発明の新聞用紙は、古紙パルプを主成分として含む原料パルプと填料とを、少なくとも構成成分としたものである。
前記古紙パルプとしては、例えば茶古紙、クラフト封筒古紙、雑誌古紙、新聞古紙、チラシ古紙、オフィス古紙、段ボール古紙、更紙古紙、上白古紙、ケント古紙、模造古紙、地券古紙等から製造される離解古紙パルプ、離解・脱墨古紙パルプ、離解・脱墨・漂白古紙パルプ等が例示され、これらの中から1種又は2種以上を適宜選択して使用することができる。
本発明において、環境保全の面や、得られる新聞用紙の白紙不透明度を維持しながら、嵩高性を充分に付与するという点から、古紙パルプの量は、原料パルプ全量の50〜100質量%、さらには60〜90質量%であることが好ましい。
原料パルプとしては、本発明の目的を阻害しない限り、前記古紙パルプの他にも、例えば、ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、サーモグランドパルプ(TGP)、グランドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)等の機械パルプ;広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹半晒クラフトパルプ(LSBKP)、針葉樹半晒クラフトパルプ(NSBKP)、広葉樹亜硫酸パルプ、針葉樹亜硫酸パルプ等の化学パルプといった種々のパルプの中から、1種又は2種以上を適宜選択し、その割合を調整して使用することができる。
なお、化学パルプを製造する際の漂白方法についても特に限定はないが、漂白工程で塩素ガスのような分子状塩素を使用せずに漂白したECFパルプ、さらには、二酸化塩素のような塩素化合物をも使用せずに漂白したTCFパルプが、環境保全の点から好ましい。
新聞用紙においても資源の有効利用という観点から、近年特に、古紙パルプの利用、高配合化が求められているが、古紙パルプの増配は、所定の用紙強度を確保することが困難になるとともに、インキセット性、インキ着肉性等の印刷適性を低下させる場合がある。
古紙パルプの中でも、新聞古紙が脱墨処理された脱墨パルプを使用することが、構成原料が近似であり、資源のリサイクルの面で最も効率よい。しかしながら、特に新聞古紙中には、何度もリサイクルされた脱墨パルプが存在し、繰り返される再生化処理によってパルプ繊維の劣化が進み、不透明度が低下するだけでなく、脆くなり、紙粉や粉落ちが発生したり、用紙表面の繊維がオフセット印刷ブラケットに取られるといった問題が生じる。
しかしながら、本発明においては、以下に詳述するように、原料パルプに内添する填料として、ホワイトカーボン(A)、炭酸カルシウム(B)及び再生粒子(C)という、特定の3種類の化合物が併用されているので、古紙パルプの短所がカバーされながら、印刷適性も向上するという相乗効果が生み出される。
(A)ホワイトカーボン
填料の1つであるホワイトカーボン(A)としては、例えば、ケイ酸アルカリ水溶液に、アルカリ難溶性かつ酸可溶性の粒子を分散させたのち、鉱酸を添加してケイ酸アルカリ水溶液を中和し、さらに析出したホワイトカーボンに対して、最初にケイ酸アルカリ水溶液に分散させた粒子と少なくとも同モル以上の鉱酸を添加して製造された、反応後乾燥段階を経ないホワイトカーボン(以下、未乾燥ホワイトカーボンという)を使用することが特に好ましい。
さらに詳しくは、例えば、SiO2/R´2O(モル比、R´はNa又はKを示す)が2.0〜3.4の範囲にあるケイ酸アルカリ水溶液(ケイ酸ナトリウム水溶液又はケイ酸カリウム水溶液)に、硫酸等の鉱酸を添加し、ケイ酸アルカリ水溶液を中和する。鉱酸は1回で添加しても複数に分割して添加してもよい。複数に分割して添加する場合、1回目の鉱酸の添加はケイ酸アルカリ水溶液の温度が20〜60℃の範囲で行われ、ケイ酸アルカリ水溶液を中和させるのに必要な鉱酸量の10〜50質量%を添加する。さらにケイ酸アルカリ水溶液を、85℃以上かつ水溶液の沸点未満の範囲まで昇温した後、必要に応じて熟成時間を設け、その後2回目以降の鉱酸を一度に、あるいは連続的に添加する。添加後、必要に応じて熟成時間を設けてもよい。
前記のごとき方法にて製造されたホワイトカーボンには、アルカリ難溶性かつ酸可溶性
の粒子が包含されており、この粒子を溶解するために、さらに鉱酸を添加する。このとき鉱酸は、最初に分散させたアルカリ難溶性かつ酸可溶性の粒子と少なくとも同モル以上の量を添加し、ホワイトカーボンを含むスラリーのpHを4〜6の範囲に調整することが好適である。
ホワイトカーボンは、その製造工程で反応を終えた段階では、1次粒子が小さく、粒子径は比較的揃っているものの、反応後の安定期においては1次粒子の形では存在しておらず、凝集して2次粒子を形成している。
また、ホワイトカーボンは、製品化の段階における乾燥処理を経ると、2次粒子が凝集塊を形成し、さらに粗大粒子が生じる場合がある。理由は定かではないが、スラリー状態の未乾燥ホワイトカーボンは、一部シリカ原子を有さず、−SiOHの形で遊離しており、2次元的な構造部分が網管となり表面が多孔性を呈している。これに対して、乾燥したホワイトカーボンは、SiO2の四面体が基本構造になり、酸素を共有して3次元の網目構造を呈する。
したがって、ホワイトカーボンを一度乾燥させた場合には、表面の−SiOHによるセルロース繊維との結合力が減少するので、反応を終えたホワイトカーボンは、スラリー状態のままで、乾燥処理を施さずに湿式粉砕を行い、安定期に生じた過大な2次凝集体の細分化を図ったうえで、填料として原料パルプに内添することが、例えば抄速1300m/分以上といった高速抄造が可能であり、かつ、例えば17〜20万部/時といった高速オフセット輪転印刷にも対応しながら、軽量であり、紙粉の発生もなく、不透明度、特に印刷不透明度に優れた本発明に基づく新聞用紙を得るに好適である。
前記湿式粉砕を経ても残留する過大なホワイトカーボンの凝集塊を除去したり、レーザー解析法による、ホワイトカーボンの体積平均粒子径を3〜10μm、好ましくは4〜9μm、より好ましくは5〜8μmに、かつ粒子径が1〜30μmのホワイトカーボン粒子の割合を80質量%以上に容易に調整するには、前記湿式粉砕に次いで分級処理を施すことが好ましい。
レーザー解析法によるホワイトカーボンの体積平均粒子径が3μm未満では、抄紙工程における脱水処理での流失が多くなり、白水中に多く残留し、他の異物と結合して設備の汚損や毀損の原因となる恐れがある。逆にホワイトカーボンの体積平均粒子径が10μmを超えると、用紙表面に凝集塊として点在する様相を呈し、用紙表面の強度低下、紙粉の発生、不透明度、特に印刷不透明度の低下を招く恐れがある。したがって、本発明にて填料として用いるホワイトカーボンは、レーザー解析法による体積平均粒子径が3μm以上、さらには4μm以上、特に5μm以上であることが好ましく、また10μm以下、さらには9μm以下、特に8μm以下であることが、例えば抄速1300m/分以上といった高速抄造が可能であり、かつ、例えば17〜20万部/時といった高速オフセット輪転印刷にも対応しながら、軽量であり、紙粉の発生もなく、不透明度、特に印刷不透明度に優れた新聞用紙を得るに好ましい。
さらに、レーザー解析法による粒子径が1〜30μmのホワイトカーボン粒子の割合を好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは82質量%以上とすること、すなわち粒子径をシャープにすることで、紙層中におけるホワイトカーボンの分散性を高め、均質な紙層を形成することができる。これにより、用紙表面の強度を向上させ、紙粉の発生を抑制し、同時に不透明度、特に印刷不透明度を向上させることができる。なお、レーザー解析法による粒子径が1〜30μmのホワイトカーボン粒子の割合をできる限り100質量%に近づけることが好ましいものの、微細な1次粒子の集合体であるホワイトカーボンを工業的に生産するにあたり、100質量%とすることは困難であり、製造コストの点から、
粒子径が1〜30μmのホワイトカーボン粒子の割合は多くとも実情95質量%程度である。
なお、本明細書において、レーザー解析法とは、サンプル10mgをメタノール溶液8mLに添加し、超音波分散機(出力:80W)で3分間分散させた分散溶液について、粒径分布測定装置(レーザー方式のマイクロトラック粒径分析計、日機装(株)製)にて解析する方法をいう。
本発明においては、例えば前記のごとくして得られた未乾燥ホワイトカーボンを、あらかじめ8質量%以下の濃度に希釈し、その希釈液を原料パルプ中に内添して抄紙することが好ましい。
未乾燥ホワイトカーボンは、高剪断速度で見かけ粘度が低下する特性(チキソトロピック性)を有し、ホワイトカーボンの2次凝集体や凝集塊に対して剪断力を与えると、凝集が壊れ、次々と小さな凝集粒になる。この剪断力により小さな凝集粒を得るため、かつホワイトカーボンの2次凝集体や凝集塊による問題を発生させないようにするためには、ホワイトカーボンをあらかじめ、好ましくは8質量%以下、さらに好ましくは3〜7.5質量%、特に好ましくは3〜6質量%の濃度に希釈、分散させたうえで、原料パルプ中に内添することが望ましい。なお、既存設備の分散能力、2次凝集体に対する剪断力を効果的に付与する点や、分散後のホワイトカーボンの粒度分布をブロードにさせないという点から、ホワイトカーボンの濃度が8質量%以下となるように、あらかじめ希釈することが、例えば抄速1300m/分以上といった高速抄造において好ましい。
さらに、このような小さな凝集粒の再凝集化を防止するために、未乾燥ホワイトカーボンの希釈液はスクリーン前段で原料パルプに添加することが好適である。
(B)炭酸カルシウム
填料の1つである炭酸カルシウム(B)は、好適には軽質炭酸カルシウムである。該軽質炭酸カルシウムの形状としては、例えば針状、柱状、球状、紡錘状、立方体状等があり、本発明においてはいずれも使用可能であるが、カルサイト系軽質炭酸カルシウム、すなわち立方体状の軽質炭酸カルシウム及び紡錘状軽質炭酸カルシウムが好ましく、3次元方向に結晶突起を有する毬栗状の軽質炭酸カウシウム(以下、毬栗炭酸カルシウムという)が特に好ましい。
カルサイト系軽質炭酸カルシウムが好適な理由は定かではないが、カルサイト系軽質炭酸カルシウムはアラゴナイト系炭酸カルシウムやバテライト系炭酸カルシウムに比べて、紙層中での分散性が良好で、前記ホワイトカーボン(A)や後述する再生粒子(C)との均一な分散性、特に前記未乾燥ホワイトカーボンや、後述する第1燃焼工程において300℃以上、500℃未満の温度で燃焼処理して得られた再生粒子との均一な分散性に優れ、用いる填料に起因する品質の偏りが少ない。よって、本発明の新聞用紙のように、36〜48g/m2といった低坪量であっても、コールドセット型インキを使用した高速多色オフセット輪転印刷の際に、オフセット輪転印刷操業性が良好で、高いインキ着肉性を有しながら、インキセット性も良好で印刷不透明度が改善され、印刷適性に優れる。
前記毬栗炭酸カルシウムは、水酸化カルシウムに二酸化炭素含有気体を反応させ、例えば紡錘状や柱状の安定なカルサイト型結晶構造の炭酸カルシウムや、準安定なアラゴナイト型結晶構造の炭酸カルシウムを得る過程において、二酸化炭素含有気体の供給方法を調整したり、脱水、乾燥、熱処理を施す際に、例えば縮合リン酸あるいはその金属塩等の添加剤を添加することで紡錘状や柱状の結晶構造が凝集・結晶化して得られる。
カルサイト系炭酸カルシウムの場合には、カルサイトが他の結晶構造よりも安定であるので、天然にも石灰石として産出されている。また人工的には、例えば天然の石灰石を高温で酸化カルシウムと二酸化炭素とに分解し(不純物の除去作用あり)、酸化カルシウムを水に入れて水酸化カルシウムとした後(消和)、これに、下記反応式のごとく条件(温度、濃度、撹拌の程度)を制御しながら二酸化炭素を吹き込むことで、カルサイト系炭酸カルシウムを得ることができる。
Ca(OH)2+CO2→CaCO3+H2O
またアラゴナイト系炭酸カルシウムの場合も、カルサイト系炭酸カルシウムの製法とほぼ同じであり、その生成時の反応条件を調整することにより、アラゴナイト系炭酸カルシウムを得ることができる。例えば下記反応式のごとく、苛性化反応槽で、消石灰と水とを用い、攪拌翼を取り付けた攪拌機で攪拌混合して石灰乳を調製し、炭酸ソーダの添加速度、添加時間、温度条件を適宜調整して苛性化反応をさせて得られる。
Na2CO3+CaO+H2O→CaCO3+2NaOH
本発明に用いられる毬栗炭酸カルシウムは、JIS K 5101−13−1に記載の「顔料試験方法−第13部:吸油量−第1節:精製あまに油法」に準拠した吸油量が150mL/100g以上、BET比表面積が50m2/g以上、及び体積平均粒子径が1.8〜10μmであることが好ましい。
毬栗炭酸カルシウムの吸油量が150mL/100g未満であると、例えばコールドセット型オフセット印刷での白紙不透明度の低下や、滲みが大きくなる恐れがあり、一方250mL/100gを超えると、印刷インキ中のビヒクル成分が用紙内部に浸透し、優れた印刷濃度が得られ難くなる恐れがある。したがって、毬栗炭酸カルシウムの吸油量は、150mL/100g以上、さらには160mL/100g以上であることが好ましく、250mL/100g以下、さらには240mL/100g以下であることが好ましい。
毬栗炭酸カルシウムのBET比表面積が50m2/g未満であると、凝集構造における空隙が減少するため、インキ吸収性が低下する恐れがあり、一方150m2/gを超えると、填料分散液の希釈粘度が高くなって操業性が低下したり、取り込んだコールドセット型オフセットインキの乾燥性が低下してコスレ汚れや印刷の裏移りが発生する恐れがある。したがって、毬栗炭酸カルシウムのBET比表面積は、50m2/g以上、さらには60m2/g以上であることが好ましく、また150m2/g以下であることが好ましい。
なお、本明細書において、毬栗炭酸カルシウムのBET比表面積は、全自動BET比表面積測定装置(型番:フロソーブ2300、(株)島津製作所製)にて測定した値をいう。
毬栗炭酸カルシウムの体積平均粒子径が1.8μm未満であると、填料として添加した際に、用紙を構成するパルプ繊維間の空隙内部に入り込み易くなり、かかる毬栗炭酸カルシウムが有する、用紙構成を嵩高にする効果が発揮され難くなり、結果として印刷適性が低下する恐れがあり、一方10μmを超えると、パルプ繊維との接触面積が少なくなり、その結果、抄紙段階や印刷段階で紙粉が発生したり、印刷適性の低下が生じる恐れがある。したがって、毬栗炭酸カルシウムの体積平均粒子径は、1.8μm以上、さらには2.3μm以上、特に3μm以上であることが好ましく、また10μm以下、さらには9.6μm以下、特に9μm以下であることが好ましい。
なお、本明細書において、毬栗炭酸カルシウムの体積平均粒子径は、サンプル10mgをメタノール溶液8mLに添加し、超音波分散機(出力:80W)で3分間分散させた分散溶液について、粒径分布測定装置(レーザー方式のマイクロトラック粒径分析計、日機
装(株)製)にて測定した値をいう。
さらに、毬栗炭酸カルシウムのアスペクト比(粒子の長径と短径との比(長径/短径))は、新聞用紙の不透明度及び印刷適性のさらなる向上の点から、3.3以下、さらには3.0以下であることが好ましく、また新聞用紙の紙力低下を充分に抑制する点から、2.1以上、さらには2.3以上であることが好ましい。
本発明において、特定の3種類の填料を原料パルプ中に均一に分散するためには、例えば前記のごとくして得られた毬栗炭酸カルシウムを、あらかじめ、好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは2〜10質量%、特に好ましくは3〜9質量%の濃度に希釈、分散させたうえで、その希釈液を原料パルプ中に内添して抄紙することが望ましい。
なお、炭酸カルシウム(B)は、マシンチェスト、ファンポンプ、サクションから抄紙機インレットの間のいずれにおいても、原料パルプに添加することができるが、オフセット輪転印刷における印刷適性や印刷不透明度をより向上させるには、ファンポンプ前段で炭酸カルシウム(B)を添加することが効果的である。
(C)再生粒子
填料の1つである再生粒子(C)は、製紙スラッジを主原料とし、脱水工程、乾燥工程、燃焼工程及び粉砕工程を経て得られた無機粒子である。
原料に用いる製紙スラッジには特に限定がないが、なかでも、古紙パルプを製造する古紙処理工程の脱墨工程で排出される脱墨フロスが特に好ましい。
脱墨フロスを燃焼して得られる再生粒子は、循環使用が可能なものであるので、廃棄物としての埋め立て等の処分が不要であり、環境負荷の低減と、省資源化に大きく貢献するものである。また、主原料が古紙処理工程の脱墨工程で生じる脱墨フロスである場合、安価であり、新たな天然無機鉱物の使用量を抑えることができ、製造コストが充分に削減されるという利点がある。さらにこのような再生粒子を用いることで、抄紙時の灰分歩留りが高く、ワイヤー摩耗等の抄紙設備の摩耗劣化を来たすことがなく、さらに樹脂成分が微細な状態下で再生粒子に吸着することで、樹脂分の凝集によるピッチトラブルを防ぎ、抄紙設備汚れを殆ど起こさず、低コストかつ高い操業性で新聞用紙を製造することができる。
なお、前記再生粒子を製造する際には、後述するように、脱墨フロスの造粒工程、各工程間に設けられる分級工程等を経てもよい。また再生粒子の製造設備には、各種センサーを設け、被処理物や設備の状態、処理速度のコントロール等を行うことが望ましい。以下の具体的説明で示す移送流路、給送流路、配送流路、循環流路、返送流路等の各種流路は、例えば管、ダクト等で構成することができる。
特に古紙のリサイクル工程で排出される脱墨フロスが、製紙原料由来の材料からなり、鉄分やその他重金属等の不純物の混入が少ないので、前記再生粒子の主原料として好適である。そして、古紙再生工程では、あらかじめ古紙自体の選別を行うので、脱墨フロスは、その無機物の組成が経時的に安定したものであり、得られる再生粒子の組成も安定したものとなる。これら脱墨フロスには、無機物として例えば炭酸カルシウム、カオリン、タルク、二酸化チタン、シリカ、アルミナ等が含有される。なお、再生粒子の全原料における脱墨フロスの割合は、固形分として50質量%以上、さらには60質量%以上とすることが好ましい。
本発明では、製紙スラッジとして前記のごとき脱墨フロスを用い、燃焼工程として少な
くとも第1燃焼工程及び第2燃焼工程が行われ、該第1燃焼工程において300℃以上、500℃未満の温度で燃焼処理された再生粒子を再生粒子(C)として用いることが好ましい。そこで、再生粒子の4つの製造工程について順を追って詳細に説明する前に、燃焼工程、特に第1燃焼工程について簡潔に説明する。
例えば、製紙用スラッジを燃焼する場合、(1)特開2003−119695号公報には、乾燥物を炉内の酸素濃度が0.1体積%以下となる実質的に酸素が存在しない貧酸素状態で、具体的には間接加熱炉(外熱燃焼炉)によって乾燥及び炭化処理し、次に炭化物に含まれる有機物由来の炭素を酸化させて脱炭素する方法、具体的には間接加熱炉によって白化処理する方法が提案されている。また、該公報には、後者の白化処理において内熱ロータリーキルン炉を使用することも開示されている。
他方、(2)特開2002−275785号公報には、炭化後に再燃焼のためにロータリーキルン炉を使用することも開示されている。
さらに、(3)特許第3808852号公報には、原料スラッジとして脱墨スラッジを用い、これを乾燥させる乾燥工程と、乾燥させた脱墨スラッジをサイクロン型燃焼炉の炉上部から炉内に供給し、旋回下降させつつ燃焼させ、未燃分を含む一次燃焼物を得る一次燃焼工程と、該サイクロン型燃焼炉に連通し、その下端からの未燃分を含む一次燃焼物を受けて、機械的な攪拌により酸素との接触を促進させながら、一次燃焼工程の燃焼熱を利用して所定の白色度となるまで燃焼させる二次燃焼工程とを含む、脱墨スラッジからの白色顔料又は白色填料の製造方法が提案されている。
また、(4)特開2004−176208号公報には、塗工紙製造工程の排水処理汚泥から填料を製造する際に、成形汚泥を1つのロータリーキルン炉内で乾燥、炭化、燃焼させる方法が提案されている。
前記(1)、(2)及び(4)に記載の方法は、古紙パルプを製造する古紙処理設備の脱墨工程においてパルプ繊維から分離された脱墨フロスを主原料とするものではなく、製紙スラッジを主原料とするものであり、得られる再生粒子は、本発明に用いられる再生粒子とは異なるものと考えられる。
一方、(3)に記載の方法によれば、本発明に用いられる再生粒子と略同様の再生粒子を得ることができるが、該方法では、サイクロン式流動燃焼炉を使用し、乾燥物を燃焼し、次いで二次燃焼を行っている。
燃焼工程においてサイクロン式流動燃焼炉を使用する場合、それ自体の形式に由来するものと考えられるが、サイクロン式では、一般に数十〜数百ミクロンの原料と空気とを旋回流として供給口から供給し、空気の旋回作用により空気と効果的に混合さて原料を燃焼する。したがって、原料に含有される微粒子が排ガスとともに系外に排出されて製品歩留りが低下したり、主原料である脱墨フロスの燃焼時間(加熱時間)が短時間であるため未燃分が生じやすく、最終的に得られる燃焼物の品質、特に形状が一定でなく、燃焼物の白色度にもバラツキが生じる場合がある。
そこで、第1燃焼炉と、該第1燃焼炉にて燃焼された脱墨フロスを再度燃焼する、後の第2燃焼炉とを有する、少なくとも2段階の燃焼工程に供し、前記第1燃焼炉において、例えば300℃以上、500℃未満という比較的低温で燃焼処理を行うことで、過剰燃焼が起こらず、より品質の安定した再生粒子を製造することができる。
具体的には、脱水後の原料の乾燥及び燃焼が一連で行われ、内熱による第1燃焼炉にお
ける燃焼時間(滞留時間)が30分を超えて90分以下、より好適には40〜80分、最適には50〜70分であることが望ましい。また、本体が横置きで中心軸周りに回転する内熱(直接加熱)キルン炉により、前記脱水後の原料の乾燥及び燃焼(一次燃焼)を行い、次に、第1燃焼炉から得られる燃焼物を外熱による第2燃焼炉にて再度燃焼(二次燃焼)し、その燃焼時間(滞留時間)が60分以上、より好適には60〜240分、特に好適には90〜150分、最適には120〜150分であることが望ましい。さらに、本体が横置きで中心軸周りに回転する外熱(間接加熱)キルン炉、特に燃焼温度を容易に調整可能な外熱電気炉により、二次燃焼することがより好ましい。
また、後に図面と共に説明する再生粒子の製造方法では、前記第1燃焼炉として内熱キルン炉を、第2燃焼炉として外熱キルン炉を例示しているが、これらのキルン炉としは公知の燃焼炉を使用することができる。また、キルン炉に限定されることなく、流動床炉、ストーカー炉、サイクロン炉、半乾留・負圧燃焼式炉等の公知の燃焼炉を用いることができる。なお本発明においては、先の一次燃焼を内熱による第1燃焼炉で行い、後の二次燃焼を外熱による第2燃焼炉で行う、少なくとも2段階の燃焼炉であれば、公知のいずれの燃焼炉も好適に使用することができる。さらに、この外熱による第2燃焼炉としては、重油等を熱源にした間接加熱方式の燃焼炉等を用いた公知の燃焼方法を採用することもできる。
第1燃焼炉として好適に用いられる内熱キルン炉では、乾燥及び燃焼を1つの炉で行うことができ、供給口から排出口に至るまで、緩やかに安定的に乾燥及び燃焼が進行し、かつ燃焼物の微粉化が抑制される。また、第2燃焼炉として好適に用いられる外熱キルン炉で燃焼を行うと、その端部から所定の滞留時間をもって一次燃焼後の燃焼物を二次燃焼した後、他端部の排出口から排出することができ、さらに外熱により燃焼物に均一な熱が加わるので、均一に燃焼が行われ、燃焼にバラツキが生じない。さらに、キルン炉内壁の回転による摩擦によって燃焼物が緩やかに攪拌されるので、微粉化が起こり難い。その結果、最終的な燃焼物の品質及び形状がより安定したものとなる。
例えば前記したように、第1燃焼炉において、原料中の微細繊維や塗工紙に多用される有機高分子化合物であるラテックス、印刷により付与されたインク成分等を効率よく燃焼させるために、水分率を40%未満に脱水乾燥させ、高温で燃焼させる方法を採用することができるが、第1燃焼炉において、例えば300℃以上、500℃未満という比較的低温で加温操作することにより、原料に含有される有機物が燃焼ガス化し、この燃焼ガスを燃焼(酸化)させることで、得られる再生粒子の品質安定性や白色度がさらに向上する。
このように、燃焼工程における乾燥及び燃焼を、好適には内熱キルン炉及び外熱キルン炉にて、少なくとも2段階の燃焼炉にて行うことで、より均一で安定性に優れた再生粒子を得ることができる。
好適な燃焼炉として用いられる内熱キルン炉又は外熱キルン炉は、内部耐火物を円周状でなく、六角形や八角形とすることで燃焼物を滑らせることなく持ち上げて攪拌することができるが、現実には、キルン炉として円筒形であり、燃焼物攪拌用のリフターを設けることが、原料の均一な燃焼と、品質の均一化を図ることができる点で最適である。これは、第1燃焼炉において、低温でじっくりと原料全体を燃焼することを意図することとも関係すると考えられる。
さらに、より好適な再生粒子を得るための燃焼炉について以下に説明する。
従来から慣用的に用いられてきた燃焼炉は、ストーカー炉(固定床)、流動床炉、サイクロン炉、キルン炉の4種に大別することができる。
(ストーカー炉(固定床))
脱墨フロスの燃焼度合いの調整が困難であり、燃焼物が不均一になり易いうえ、灰分の多い脱墨フロスの燃焼では、火格子間のクリアランスから落塵を生じてしまう。火格子を通して燃焼物の下に空気を吹上げて燃焼させるため、炭酸カルシウム等が飛灰となり、排ガスとともに排ガス設備へ送られ、歩留が低下し易い。
(流動床炉)
炉内の流動媒体に珪砂のような粒子状の流動媒体を使用するため、珪砂が再生粒子へ混入し、品質の低下を招いてしまう。また均一な攪拌が困難である他、硅砂を流動層混合して燃焼させた後、硅砂と燃焼物とを分離し、硅砂は燃焼炉へ戻して燃焼物のみを取出すが、燃焼物も硅砂と同程度の粒径が生じるため、分離することができない。さらに、硅砂と浮遊した状態で燃焼させているため、燃焼度合いの調整が困難であり、品質のばらつきが生じる。燃焼炉のストーカー(階段状)を、所定幅で燃焼物が通過しながら燃焼が進むため、灰の攪拌が不充分となり、幅方向で燃焼にバラツキが生じる。また、硬度の高い珪砂との摩擦、衝突により、燃焼物が微粉化され飛灰となって系外へ排出され、歩留りが低下してしまう。
(サイクロン炉)
炉内を一瞬で通過するため、燃焼物中の固定炭素が充分に燃焼されず、再生粒子の白色度の低下に繋がる。さらに、風送により細かい粒子はサイクロンで分離されず、排ガスと一緒に排ガス処理工程に送られるため、歩留が低下してしまう。
これらのことから、本発明においては、燃焼炉としてキルン炉を用いることが最も好適である。さらに前記のごとく、先の第1燃焼炉を内熱キルン炉とし、後の第2燃焼炉を外熱キルン炉とすることが、以下の点から好適である。
外熱キルン炉は、キルン炉の外側に加熱設備を設けた構成であるため、キルン炉の構造が比較的複雑であるとともに、燃焼物を間接的に乾燥、燃焼させるため、多量の熱源が必要となる。したがって、脱水後の水分率が高い原料を乾燥、燃焼させる一次燃焼工程で、外熱キルン炉を第1燃焼炉として使用した場合には、乾燥・燃焼効率が低くなり、生産性が低下し、温度の制御が困難になるとともに多大なエネルギーコストを必要とし、費用対効果が低下してしまう恐れがある。
また、内熱キルン炉を第2燃焼炉として使用した場合には、残カーボンを燃焼するにおいて、炉内温度の調整に多量の希釈空気が必要であり、また多量の空気を投入しなければ燃焼熱を内熱キルン炉内に均一に伝えることが困難である。さらに炉内温度の変動を抑えることが困難であるため、燃焼物の過燃焼や燃焼ムラが生じ易い。しかも、通常加熱に使用される重油バーナーからの重油燃焼残カーボンやイオウ酸化物等による汚染が発生し、製品段階で白色度の低下やバラツキが生じ、得られる燃焼物の品質の均一化が困難となる恐れもある。
これらのことから、本発明においては、燃焼工程にて、先の第1燃焼炉を内熱キルン炉とし、後の第2燃焼炉を外熱キルン炉として用いることが最適である。
次に、本発明に用いられる再生粒子のより好適な製造方法の一例を、図面を参照しながらさらに詳細に説明する。
[概要]
再生粒子の製造設備フローは、脱水工程、乾燥工程、燃焼工程及び粉砕工程を有するが
、さらに、脱墨フロスの凝集工程又は造粒工程や、各工程間に分級工程等を設けてもよい。
図1は、再生粒子の製造設備フローの一部構成例(乾燥工程、燃焼工程及び燃焼工程を含む設備例)を示す概略図である。本設備には、各種センサーが備わっており、被燃焼物や設備の状態、処理速度のコントロール等を行っている。
図示しない、古紙パルプを製造する脱墨工程においてパルプ繊維から分離された脱墨フロスは、種々の操作を経て、同じく図示しない公知の脱水設備により脱水される。脱水後の原料は、35質量%以上、好ましくは90質量%未満、より好ましくは45〜70質量%、特に好ましくは50質量%を超えて60質量%以下の高含水状態とすることが望ましい。
かかる脱水後の原料10は、望ましくは、粉砕機(又は解砕機)により40mm以下の粒子径に粉砕しておく。かかる原料10が、貯槽12から切り出され、本体が横置きで中心軸周りに回転する内熱キルン炉である、第1燃焼炉14の一方側から装入機15により装入される。第1燃焼炉14の一方側には、排ガスチャンバー16が、他方側には排出チャンバー18が設けられている。排出チャンバー18を貫通して、熱風が第1燃焼炉14の他方側から吹き込まれ、前記一方側から装入され、第1燃焼炉14の回転に伴って前記他方側に順次移送される原料10の乾燥及び燃焼が行われる。
ここで、第1燃焼炉14内に吹き込む熱風は、酸素濃度が0.1〜20%となるように調製することが望ましい。炉内温度は、300℃以上、500℃未満、好ましくは400℃以上、500℃未満、特に400〜450℃であることが望ましい。熱風は、バーナー20Aを備える熱風発生炉20から吹き込まれる。
排ガスチャンバー16からは、乾燥・燃焼に供した排ガスが再燃焼室22に送り込まれる。排ガス中に含まれる燃焼物の微粉末は、排ガスチャンバー16の下部から排出され、再利用される。排ガスは、再燃焼室22でバーナーにより再燃焼が行われ、予冷器24により予冷された後、熱交換器26を通し、誘引ファン28により煙突30から排出される。ここで、熱交換器26は外気を昇温した後に、熱風発生炉20に送られ、第1燃焼炉14から吹き込まれる熱風の用に供せられ、排ガスチャンバー16からの排ガスの熱を回収する。排ガスの処理は、排ガス中に含まれる有害物質の除去に有効である。
第1燃焼炉14において乾燥及び燃焼処理を経た燃焼物は、本体が横置きで中心軸周りに回転する外熱キルン炉である、第2燃焼炉32に装入される。この装入される燃焼物の粒径としては、40μm以下が好適である。第2燃焼炉32での熱源としては、第2燃焼炉32内の温度コントロールが容易で長手方向の温度制御が容易な電気による調整が好適である。したがって、電気ヒーターにより間接的に第1燃焼炉14から得られる燃焼物を再び燃焼させる外熱式の第2燃焼炉32であることが望ましい。
第2燃焼炉32においては、酸素濃度を調整する空気あるいは酸素の供給機構(図示せず)にて、酸素濃度が5〜20%、好ましくは10〜20%、特に10〜15%となるように燃焼することが望ましい。燃焼温度は、550〜780℃、好ましくは600〜750℃であることが望ましい。また、第2燃焼炉内での滞留時間は、60分以上、好適には60〜240分、特に90〜150分であることが望ましく、残カーボンを完全に燃焼させるには120〜150分が最適である。
燃焼が終了した再生粒子は、冷却機34により冷却された後、振動篩機などの粒径選別機36により選別され、湿式粉砕機等を用いた粉砕工程で目的の粒子径に調整された燃焼
物が燃焼品サイロ38に一時貯留され、填料の用途先に仕向けられる。
なお、前記工程では脱墨フロスのみを原料として用いた場合を例示したが、脱墨フロスを主原料に、抄紙工程における製紙スラッジ等の他製紙スラッジを適宜混入させたものを原料とした燃焼物であってもよい。
以上、再生粒子の製造方法の概要を説明したが、その詳細及び応用例等を以下に説明する。
[原料]
古紙パルプ製造工程では、安定した品質の古紙パルプを連続的に生産する目的から、使用する古紙の選定、選別を行い、一定品質の古紙を使用する。そのため、古紙パルプ製造工程に持ち込まれる無機物の種類やその比率、量は、基本的に一定になる。しかも、再生粒子の製造方法において未燃物の変動要因となるビニールフィルム等のプラスチック類が古紙中に含まれていた場合においても、これらの異物は脱墨フロスを得る脱墨工程に至る前段階で除去することができる。したがって、脱墨フロスは、工場排水工程や製紙原料調成工程等、他の工程で発生する製紙スラッジと比べ、極めて安定した品質の再生粒子を製造するための原料となる。
なお、本明細書において、脱墨フロスとは、古紙パルプを製造する古紙処理工程において、主に、古紙に付着したインクを取り除く脱墨工程で、パルプ繊維から分離されるものをいう。
[脱水工程]
脱墨フロスのさらなる脱水には、公知の脱水手段を適宜使用することができる。本実施の形態における一例では、例えばスクリーンによって、脱墨フロスから水を分離して脱水する。スクリーンにおいて、水分率を90〜97質量%に脱水した脱墨フロスは、例えばスクリュープレスに送り、さらに所定の水分率まで脱水することが好適である。
脱水後の原料の水分率が70質量%を超えると、第1燃焼炉における乾燥・燃焼処理温度の低下を招き、加熱のためのエネルギーロスが多大になるとともに、原料の燃焼ムラが生じやすくなり、均一な燃焼を進め難くなる。さらに、排出される排ガス中の水分が多くなり、ダイオキシン対策における再燃焼処理効率の低下と、排ガス処理設備の負荷が大きくなる恐れがある。また、脱水後の原料の水分率が35質量%未満と低いと、脱墨フロスの過剰燃焼の原因となる。脱水後の原料の水分率を適宜調整することにより、脱水処理エネルギーの削減にも寄与することができる。
以上のように、脱墨フロスの脱水を多段工程で行って急激な脱水を避けると、無機物の流出を抑制することができ、脱墨フロスのフロックが硬くなりすぎる恐れがない。脱水処理においては、脱墨フロスを凝集させる凝集剤等の脱水効率を向上させる助剤を添加してもよいが、凝集剤には、鉄分を含まないものを使用することが好ましい。鉄分が含有されると、鉄分の酸化により再生粒子の白色度が低下する恐れがある。
脱墨フロスの脱水工程は、再生粒子の製造工程に隣接することが生産効率の面で好ましいが、あらかじめ古紙パルプ製造工程に隣接して設備を設け、脱水を行った物を搬送することも可能であり、トラックやベルトコンベア等の搬送手段によって定量供給機まで搬送し、この定量供給機から乾燥・燃焼工程に供給する。
かかる脱水後の原料10は、第1燃焼炉14に供給する操作において、望ましくは、粉砕機(又は解砕機)により平均粒子径が40mm以下の粒子径に揃えることが好ましく、
より好ましくは平均粒子径が3〜30mm、さらに好ましくは平均粒子径が5〜20mmの範囲になるように調整することが望ましい。さらに、粒子径が50mm以下の原料10の割合が、70質量%以上となるように粉砕しておくことがより好ましい。脱墨フロス中に含まれる炭酸カルシウムの熱変化を来たさない燃焼処理を図るため、原料の粒子径は均一であることが好ましいが、平均粒子径が3mm未満では、過燃焼になり易く、逆に40mmを超える平均粒子径では、原料芯部まで均一に燃焼を図ることが困難となる。
なお、本明細書において、前記平均粒子径及び粒子径の割合は、攪拌式の分散機で充分分散させた試料溶液を用いて測定した値をいい、各燃焼行程における粒子径は、JIS Z 8801−2(2000)「試験用ふるい−第2部:金属製板ふるい」にて規定の、1mm単位の孔径を有する金属製の板ふるいにて測定した値をいう。
また本発明では、前記脱水工程と次の乾燥工程との間で、好適にはシャワー水を含有させ、原料水分を水分含有割合で40〜85質量%の範囲で一定の割合に調整することが好ましい。このように、低温焼成を行う際に、あらかじめ原料を所定範囲の大きさに調整し、かつ水分を所定の割合で含有させることで、原料の過燃焼を防ぎながら、含有する燃焼物の揮発による燃焼ガス化を促し、均質な燃焼を促進させるといった効果を醸し出すことができる。
[第1燃焼工程(乾燥・燃焼工程)]
前記原料10が貯槽12から切り出され、第1燃焼炉14に供給される。第1燃焼炉14は、本体が横置きで中心軸周りに回転する内熱キルン炉方式からなり、第1燃焼炉14(内熱キルン炉14)の一方側から装入機15により装入される。熱風発生炉にて生成された熱風が、内熱キルン炉14の排出口側から、脱水物の流れと向流するように送り込まれ、内熱キルン炉14内が加熱される。内熱キルン炉14の一方側には、排ガスチャンバー16が、他方側には排出チャンバー18が設けられている。排出チャンバー18を貫通して、熱風が内熱キルン炉14の他方側から吹き込まれ、前記一方側から装入され、内熱キルン炉14の回転に伴って前記他方側に順次移送される原料の乾燥及び燃焼が行われる。
すなわち、本乾燥・燃焼工程は、脱水物を、本体が横置きで中心軸周りに回転する、内熱キルン炉によって乾燥・燃焼することにより、供給口から排出口に至るまで、緩やかに乾燥及び有機分の燃焼を行うことができ、燃焼物の微粉化が抑制され、凝集体の形成、硬い・柔らかい等さまざまな性質を有する脱水物の燃焼度合いの制御と粒揃えとを安定的に行うことができる。なお、乾燥を別工程に分割し、吹き上げ式の乾燥機を入れることも可能である。
ここで、内熱キルン炉14内に吹き込む熱風は、酸素濃度が0.1〜20%、さらには1〜17%、特に7〜15%となるように調節されることが好ましい。
原料の燃焼(酸化)により酸素が消費されるため、燃焼の状況によって酸素濃度に変動が生じる。酸素濃度が過度に低いと、充分な燃焼を図ることが困難である。燃焼炉内の酸素濃度は、原料の燃焼等によって酸素が消費されて低下するが、燃焼させるための熱風発生装置等により、空気等の酸素含有ガスを送風し、あるいは排気することで、酸素濃度を維持、調節することが可能であり、さらに酸素含有ガスを送風し、あるいは排気することで、燃焼炉内の温度を細かく調節することも可能になり、原料をムラなく均一に燃焼することができる。
第1燃焼炉の炉内温度(燃焼温度)は、好ましくは300℃以上、500℃未満、さらに好ましくは400℃以上、500℃未満、特に好ましくは400〜450℃であること
が望ましい。第1燃焼炉においては、容易に燃焼可能な有機物を緩やかに燃焼させ、燃焼し難い残カーボンの生成を抑える目的から、燃焼温度300℃以上、500℃未満の温度範囲で燃焼することが好ましい。過度に燃焼温度が低いと、有機物の燃焼が不充分となる恐れがあり、過度に燃焼温度が高いと、過燃焼が生じ、炭酸カルシウムの分解による酸化カルシウムが生成し易くなる。さらに、熱風の温度が500℃以上の場合は、硬い・柔らかい等の種々の性質を有する燃焼物の粒揃えが進行するよりも早く、乾燥・燃焼が局部的に進むため、粒子表面の未燃率と内部の未燃率との差を少なく均一にすることが困難になる。
なお、熱風は、バーナー20Aを備える熱風発生炉20から吹き込まれる。
排ガスチャンバー16からは、乾燥・燃焼に供した排ガスが再燃焼室22に送り込まれる。微粉末は、排ガスチャンバー16の下部から排出され、再び原料に配合されて再利用される。
排ガスは、再燃焼室22でバーナーにより再燃焼が行われ、予冷器24により予冷された後、熱交換器26を通し、誘引ファン28により煙突30から排出される。ここで、熱交換器26は外気を昇温した後に、熱風発生炉20に送られ、内熱キルン炉14から吹き込まれる熱風の用に供せられ、排ガスチャンバー16からの排ガスの熱を回収する。
第1燃焼炉は、脱墨フロス中に含有される燃焼容易な有機物を緩慢に燃焼させ、残カーボンの生成を抑制するため、好適には前記条件で30〜90分の滞留時間で燃焼させることが好ましい。40〜80分の滞留時間(燃焼時間)であることが、有機物の燃焼と生産効率の面でより好ましく、50〜70分の滞留時間(燃焼時間)であることが、恒常的な品質を確保するために特に好ましい。燃焼時間が30分未満では、充分な燃焼が行われずに残カーボンの割合が多くなる恐れがある。逆に燃焼時間が90分を超えると、原料の過燃焼による炭酸カルシウムの熱分解が生じ、得られる再生粒子が極めて硬くなる恐れがある。
特に、次工程の第2燃焼工程内に供給する燃焼物の未燃率が2〜20質量%となるように、乾燥・燃焼することが好ましく、未燃率を、より好ましくは5〜17質量%、特に好ましくは7〜12質量%にすることが望ましい。
前記のように、第2燃焼工程内に供給する燃焼物の未燃率を2〜20質量%にすることで、第2燃焼工程での燃焼を、短時間で効率よく行うことができると共に、外熱炉における安定した加熱により、硬度が低く、白色度が80%以上、低くとも70%以上の高白色度の燃焼物を得ることができる。特に、第2燃焼工程内に供給する燃焼物の未燃率が2質量%未満では、第1次燃焼炉におけるエネルギーコストが高くなると共に、燃焼物の硬度が比較的高くなっている場合があり、第2燃焼炉出口における燃焼物の白色度が低下する等、燃焼物の品質低下を来たす場合がある。
[第2燃焼工程]
内熱キルン炉14において乾燥及び燃焼処理を経た燃焼物は、移送流路を通して、本体が横置きで中心軸周りに回転する外熱ジャケット31を有する第2燃焼炉32にあたる外熱キルン炉に装入される。この第2燃焼炉32(外熱キルン炉32)では、燃焼物を外熱で加温しながら、キルン炉内壁に設けたリフターにより、原料の燃焼炉内での搬送を制御し、緩慢に燃焼させることで、さらに均一に未燃分を燃焼する。
第2燃焼炉における燃焼では、第1燃焼炉で燃焼しきれなかった残留有機物、例えば残カーボンを燃焼させるため、第1燃焼炉において供給される原料の粒子径よりも小さい粒
子径に調整された燃焼物を用いることが好ましい。乾燥・燃焼工程後の燃焼物(第2燃焼炉入口での燃焼物)は、平均粒子径が10mm以下、さらには1〜8mm、特に1〜5mmとなるように調整することが好ましい。
第2燃焼炉入口での燃焼物の平均粒子径が1mm未満では、過燃焼の恐れがあり、逆に平均粒子径が10mmを超えると、残カーボンの燃焼が困難で芯部まで燃焼が進まず、得られる再生粒子の白色度が低下する恐れがある。第2燃焼炉での安定した生産を確保するためには、平均粒子径が1〜8mmの燃焼物が70質量%以上となるように粒子径を調整することが好ましい。したがって、得られる再生粒子の品質を均一にするという観点における実用化可能性に、有益である。さらに、乾燥後に分級を行うと、小径な粒子の燃焼物を確実に除去することができ、また処理効率も向上するという利点がある。
外熱キルン炉32での外熱源としては、外熱キルン炉32内の温度コントロールが容易で長手方向の温度制御が容易な電気加熱方式の電気炉が好適である。したがって、電気ヒーターによる外熱キルン炉32であることが望ましい。
外熱に電気を使用することにより、温度の調整を細かく、かつ内部の温度を均一にコントロールすることが可能になり、凝集体の形成、硬い・柔らかい等種々の性質を有する脱水物の燃焼度合いの制御と粒揃えとを安定的に行うことができる。
さらに電気炉は、電気ヒーターを炉の流れ方向に複数設けることで、任意に温度勾配を設けることが可能であると共に、燃焼物の温度を一定時間、一定温度保持することが可能であり、第1燃焼炉を経た燃焼物中の残留有機分、特に残カーボンを第2燃焼炉で炭酸カルシウムの分解を来たすことなく未燃分を限りなくゼロに近づけることができる。本発明において、このような第2燃焼炉を用い、好適には、第1燃焼炉として前記内熱キルン炉を用いて300℃以上、500℃未満の温度で燃焼処理することによって、さらに好適には、第1燃焼炉として本体が横置きで中心軸周りに回転する内熱キルン炉を用い、脱水後の原料の水分率が35%以上となるように、内熱キルン炉内の酸素濃度を0.1〜20%に調整し、300℃以上、500℃未満の温度で燃焼処理することによって、最終的に、低いワイヤー摩耗度で、高白色度の再生粒子を得ることができる。
外熱キルン炉32においては、酸素濃度が5〜20%、より好ましくは10〜20%、最も好ましくは10〜15%となるように調整することが望ましい。酸素濃度は、第2燃焼炉に適宜の手段により酸素又は空気投入量のコントロールによって行うことができる。ただし、図1中、具体的な形態の図示は省略している。特に、外熱キルン炉内の酸素濃度が5%未満では、燃焼困難な残カーボンの燃焼が進まない恐れがある。
第2燃焼炉での燃焼温度は、550〜780℃、さらには600〜750℃であることが好ましい。第2燃焼炉では、前記したように、第1燃焼炉で燃焼しきれなかった残留有機物、特に残カーボンを燃焼させる必要があるため、第1燃焼炉よりも高温で燃焼させることが好ましい。第2燃焼炉での燃焼温度が550℃未満では、充分に残留有機物の燃焼を図ることが困難であり、逆に燃焼温度が750℃を超えると、燃焼物中の炭酸カルシウムの酸化が進行し、粒子が硬くなる恐れがある。
なお本明細書において、第1燃焼炉での燃焼温度(一次燃焼温度)は、第1燃焼炉の出口温度を、第2燃焼炉での燃焼温度(二次燃焼温度)は、放射温度計による第2燃焼炉の内壁表面温度を基準とする。
また、第2燃焼炉での滞留時間は、60分以上、より好適には60〜240分、特に好適には90〜150分、最適には120〜150分であることが望ましい。特に残カーボ
ンの燃焼は、炭酸カルシウムの分解をできる限り生じさせない高温で、緩慢に行う必要があり、第2燃焼炉での滞留時間が60分未満では、残カーボンの燃焼には短時間で不充分であり、逆に240分を超えると、炭酸カルシウムが分解する恐れがある。なお、燃焼物の安定した生産を行うには、滞留時間を60分以上で、過燃焼の防止、生産性の確保のためには、滞留時間を240分以下で燃焼させることが好適である。
外熱キルン炉32から排出される燃焼物(第2燃焼炉出口での燃焼物)の平均粒子径は、10mm以下、より好ましくは1〜8mm、最も好ましくは1〜4mmに調整することが好適である。
燃焼が終了した再生粒子は、冷却機34により冷却された後、振動篩機などの粒径選別機36により目的の粒子径のものが燃焼品サイロ38に一時貯留され、填料の用途先に仕向けられる。
[粉砕工程]
前記第2燃焼工程を経た燃焼物(再生粒子)は、さらに公知の分散・粉砕工程にて適宜必要な粒子径に微細粒化され、原料パルプの填料として使用される。
例えば、第2燃焼工程で燃焼後、得られた粒子を、ジェットミルや高速回転式ミル等の乾式粉砕機、又はアトライター、サンドグラインダー、ボールミル等の湿式粉砕機を用いて粉砕する。なお、本発明に填料として用いられる再生粒子は、後述するように、体積平均粒子径が5〜15μmの凝集体であることが好ましい。
[付帯工程]
例えば図1に示す再生粒子の製造設備において、より品質の安定化を求めるには、再生粒子の粒子径を、各工程で均一に揃えるための分級を行うことが好ましい。粗大粒子や微小粒子を前工程にフィードバックすることで、より品質の安定化を図ることができる。
また、乾燥工程の前段階において、脱水処理を行った脱墨フロスを造粒することが好ましく、さらには、造粒物の粒子径を均一に揃えるための分級を行うことがより好ましい。やはり、粗大造粒粒子や微小造粒粒子を前工程にフィードバックすることで、より品質の安定化を図ることができる。造粒には公知の造粒設備を使用することができ、回転式、攪拌式、押し出し式等の設備が好適である。
さらに、再生粒子の原料となり得るもの以外はあらかじめ除去しておくことが好ましく、例えば古紙パルプ製造工程の脱墨工程に至る前段階のパルパーやスクリーン、クリーナー等で砂、プラスチック異物、金属等を除去することが、除去効率の面で好ましい。特に鉄分の酸化物は微粒子の白色度低下の起因物質になるため、鉄分の混入を避け、選択的に取り除くことが推奨される。各工程を鉄以外の素材で設計又はライニングし、摩滅等により鉄分が系内に混入することを防止するとともに、さらに、乾燥・分級設備内等に磁石等の高磁性体を設置し、選択的に鉄分を除去することが好ましい。
好適な燃焼炉として用いられる内熱キルン炉又は外熱キルン炉は、内部耐火物を円周状でなく、六角形や八角形とすることで燃焼物を滑らせることなく持ち上げて攪拌することができるが、現実には、キルン炉として円筒形であり、燃焼物攪拌用のリフターを設けることが、原料の均一な燃焼と、品質の均一化を図ることができる点で最適である。これは、第1燃焼炉において、低温でじっくりと原料全体を燃焼することを意図することとも関係すると考えられる。
[第2燃焼炉のリフターについて]
第2燃焼炉内の内壁に、その一端側から他端側に向けて、螺旋状リフター及び/又は軸心と平行な平行リフターを配設することで、原料の均一な燃焼と、品質の均一化を図ることができる。特に、被燃焼物の装入側から排出側に向けて、螺旋状リフターと、軸心と平行な平行リフターとの順で配設することが望ましい。
前記リフターの構成によると、装入側から投入された内容物が、まず螺旋状リフターにて他端側に向けて適正量ずつ送り込まれながら持ち上げられて落下する間に、原料に起因する有機成分がガス化し、発生する燃焼ガス(可燃焼ガス)と効率的に接触し、さらに引き続いて平行リフターにて持ち上げられて落下する動作を繰り返すことで燃焼ガス(可燃焼ガス)と効率的に接触するので、熱交換効率よく内容物を燃焼させることができる。特に、螺旋状リフターにて平行リフターに送り込まれる内容物の量がコントロールされることで、平行リフター部分における内容物の持ち上げ・落下が適正に行われ、内容物の燃焼を均一かつ効率的に行うことができる。また、耐火物の損傷の恐れがないことから、燃焼物の純度の低下がなく、その生産能力も向上する。
また、螺旋状リフター及び平行リフターを、例えば耐熱性を有するステンレス鋼板等の金属製とすると、比較的温度が低いので高価な耐熱材料を用いなくても、充分に耐久性及び強度を確保することができると共に、耐火物製のリフター等と比して伝熱効率が高いので、一層熱効率が向上する。
第2燃焼炉にリフターを設けることにより、さらに硬質物質の少ない再生粒子の製造が可能になり、摩擦抵抗の低減を図ることができる。
前記第2燃焼炉のリフターを図面にて説明する。図2は第2燃焼炉の部分概略図であり、(a)は第2燃焼炉の一部破断概略断面図、(b)は第2燃焼炉の内部展開概略平面図である。図2において、被燃焼物は第2燃焼炉32の左側から装入され(図2(a)中、「装入」と示す)、回転駆動手段(図示せず)にて回転駆動可能に構成され、他端側から排出される。
第2燃焼炉32は、円筒状の外筐32Aの内面に、耐火キャスタブルや耐火レンガからなる耐火壁32Bを内張りして構成されている。第2燃焼炉32の耐火壁32Bの内面には、投入側において、第2燃焼炉32の軸心に対して45〜70°の傾斜角で傾斜した複数条(図2では8条)の螺旋状リフター4が等間隔に突設されている。さらにこの螺旋条リフター4の配設領域の他端側に、第2燃焼炉32の軸心と平行な適当長さの平行リフター5Aが、周方向に等間隔置きに複数(図2では8つ)かつ軸心方向に複数列(図2では8列)千鳥状に配列して突設されている。
また、平行リフター5Aは、図2の右側に排出部に向かって連続的に形成されている(図示せず)。この場合、装入側では低温であるので、装入側の平行リフター5Aは、ステンレス鋼板等の耐熱性及び耐腐食性を有する金属板にて形成することが望ましく、排出部側では高温となるので、排出部側の平行リフター5Aは、耐火物性とすることが望ましい。
なお、図2では、螺旋状リフター4はその長手方向に適当間隔おきに配設した取付ブラケット6に固定されて配設されている。また、各平行リフター5Aは、それぞれの取付ブラケット5Bに固定されて配設されている。
さらに必要に応じて、螺旋状リフター又は平行リフターの一方のみを設けることも可能である。
[シリカ被覆について]
以上、填料である再生粒子の好適な製造方法の一例を詳細に説明したが、さらに本発明においては、該再生粒子として、前記のごとき工程を経て得られた再生粒子の表面をシリカで被覆した、シリカ被覆再生粒子も好適に用いることができる。
表面をシリカで被覆したシリカ被覆再生粒子は、その表面が高い多孔性を有し、比表面積が飛躍的に高くなっているので、オフセットインキの吸収乾燥性を向上させ、印刷濃度の向上を充分に図ることができると共に、印刷不透明度をさらに向上させることができる。
なお、本発明に用いられる、古紙処理工程の脱墨工程にて生じる脱墨フロスは、近年の中性抄紙化に伴い、炭酸カルシウムの含有量が増加傾向にあり、得られる再生粒子中のカルシウムの割合も高くなる傾向がある。このようにカルシウムの割合が高い再生粒子を填料として用いると、得られる新聞用紙の白紙不透明度がやや低下する場合があるが、表面にシリカを析出させたシリカ被覆再生粒子は、製紙用途の無機粒子としての機能が非常に高く、該シリカ被覆再生粒子を填料として用いた新聞用紙は、その白紙不透明度及び吸油性が充分に向上する。
再生粒子の表面を被覆するシリカについては、天然に産出するシリカではなく、何らかの化学反応による合成シリカであれば特に制限なく使用することが可能である。具体的には、例えばコロイダルシリカ、シリカゲル、無水シリカ等があげられる。これらの合成シリカは、高比表面積、ガス吸着能の高さ、微細性、細孔への浸透力や吸着力の大きさ、付着性の高さ、高吸油性等の優れた特性を活かして、幅広い分野で利用されているものである。これらのうち、コロイダルシリカは、珪酸化合物から不純分を除去して無水珪酸ゾルとし、pH及び濃度を調整してゾルを安定化させた、球状、連鎖状、不定形等の形状を有する非晶質シリカである。シリカゲルは、珪酸ナトリウムを無機酸で分解することによって得られる含水珪酸である。また無水シリカは、四塩化ケイ素の加水分解によって得られるものである。
シリカ被覆再生粒子は、前記燃焼工程において得られた再生粒子を珪酸アルカリ溶液中にて懸濁するとともに鉱酸を添加し、該再生粒子の周囲をシリカで被覆して得ることができ、例えば以下の方法を好適に採用することができる。
まず、再生粒子を珪酸アルカリ溶液に添加、分散させ、スラリーを調製した後に加熱攪拌しながら、液温を70〜100℃程度、より好ましくは密閉容器内で所定の圧力に保持して鉱酸を添加し、シリカゾルを生成させる。次いで最終反応液のpHを8〜11程度の範囲に調整することにより、再生粒子の表面にシリカを析出させることができる。このようにして再生粒子の表面に析出されるシリカは、珪酸アルカリ(例えば珪酸ナトリウム:水ガラス)を原料として、硫酸、塩酸、硝酸等の鉱酸の希釈液と高温下で反応し、加水分解反応と珪酸の重合化により得られる、粒子径が10〜20nm程度のシリカゾル粒子である。
また、珪酸ナトリウム溶液等の珪酸アルカリ溶液に希硫酸等の鉱酸を添加することによって生成する、粒子径が数nm程度のシリカゾル微粒子を、再生粒子の多孔性を有する表面全体を被覆するように付着させ、該シリカゾル微粒子の結晶成長に伴う、無機粒子表面上のシリカゾル微粒子と再生粒子に包含されるケイ素やカルシウム、アルミニウムとの間で生じる結合により、無機粒子の表面にシリカを析出させることもできる。この場合、珪酸アルカリ溶液に酸を添加してpHを7〜9程度の範囲に調整し、中和することが好ましい。
なお、前記珪酸アルカリ溶液の種類には特に限定がないが、入手が容易である点から珪酸ナトリウム溶液(3号水ガラス)が特に望ましい。かかる珪酸アルカリ溶液の濃度としては、再生粒子中のシリカ成分が低下し、再生粒子の表面にシリカが析出し難くならないようにするには、溶液中の珪酸分(SiO2換算)が3質量%以上であることが好ましく、再生粒子の表面に析出されるシリカが、シリカゾルの形態からホワイトカーボンになり、再生粒子の多孔性が阻害され、不透明度や印刷適性の向上効果が不充分になる恐れをなくすには、かかる珪酸分が10質量%以下であることが好ましい。
このように、本発明に用いられる再生粒子(C)は、好ましくは、その粒子構成成分中に、カルシウム、ケイ素及びアルミニウムの3成分を含有している。X線マイクロアナライザー(型番:E−MAX・S−2150、(株)日立製作所/(株)堀場製作所製)による元素分析において、該再生粒子の粒子構成成分には、酸化物換算で、カルシウムとケイ素とアルミニウムとが、30〜82:9〜35:8〜35、さらには40〜82:9〜30:9〜30、特に60〜82:9〜20:9〜20の質量割合で含有されていることが好ましい。カルシウムとケイ素とアルミニウムとの質量割合がこのような範囲に調整された再生粒子は、比重が軽く、過度の水溶液吸収が抑制され、かつ過度の硬さを有しないものである。
また、特に再生粒子(C)がシリカ被覆再生粒子である場合には、前記X線マイクロアナライザーによる元素分析において、該シリカ被覆再生粒子の粒子構成成分には、酸化物換算で、カルシウムとケイ素とアルミニウムとが、30〜62:29〜55:9〜35の質量割合で含有されていることが好ましい。カルシウムとケイ素とアルミニウムとの質量割合がこのような範囲に調整されたシリカ被覆再生粒子は、比重が軽く、過度の水溶液吸収が抑制され、かつ過度の硬さを有しないだけでなく、シリカ被覆効果も相まって、過大な摩擦抵抗の発生が抑制される。
なお、再生粒子(C)(以下、シリカ被覆再生粒子を含む概念として記載する)において、酸化物換算のカルシウムとケイ素とアルミニウムとの合計含有割合は、再生粒子の粒子構成成分中の85質量%以上、さらには90質量%以上であることが好ましい。
再生粒子(C)の粒子構成成分中のカルシウムとケイ素とアルミニウムとの質量割合を、酸化物換算で前記範囲内に調整するには、本来、脱墨フロスにおける原料構成を調整することが好ましいが、乾燥工程や燃焼工程、さらには必要に応じて分級工程において、由来が明確な塗工フロスや調整工程フロスをスプレー等で含有させる方法や、焼却炉スクラバー石灰を含有させる方法を採用することも可能である。
例えば、再生粒子(C)中のカルシウムの調整には中性抄紙系の排水スラッジや、塗工紙製造工程の排水スラッジを、ケイ素の調整には不透明度向上剤として多量添加されている塗工紙製造系の排水スラッジを、アルミニウムの調整には酸性抄紙系等の硫酸バンドが使用された抄紙系の排水スラッジや、クレーの使用量が多い上質紙抄造工程の排水スラッジを適宜用いることができる。
また再生粒子(C)において、カルシウムとケイ素とアルミニウムとの合計含有割合を、酸化物換算で前記範囲に調整するには、例えば排水スラッジの凝集処理に鉄分を含有しない凝集剤を使用する手段、製造設備工程を鉄以外の素材で設計又はライニングし、摩滅等により鉄分が系内に混入するのを防止したり、さらには乾燥・分級設備内に磁石等の高い磁性体を設置して鉄分を除去する手段等を採用することが可能である。特に鉄分は、酸化により白色度を低下させる起因物質になるため、選択的に除去することが好ましい。
また、例えば前記のごとき製造方法で得られる再生粒子(C)は、示差熱熱重量同時測
定装置による示差熱分析において、700℃近傍で生じる炭酸カルシウムの分解(酸化カルシウムへの変化)における減量率が50%以上となるように、脱墨フロスの燃焼を制御することで、より正確にカルシウム成分の酸化の進行を抑制し、再生粒子(C)が硬くなるのを防止することができる。
かくして得られる再生粒子(C)は、湿式粉砕にて分散濃度、温度、時間を適宜設定することにより、容易に体積平均粒子径を調整することができる。
再生粒子(C)の体積平均粒子径は、好ましくは0.1〜20μm、より好ましくは5〜15μmである。体積平均粒子径が0.1μm未満であると、再生粒子(C)を填料として用いる効果が低く、坪量36〜48g/m2の低坪量において、コールドセット型インキを使用して多色オフセット高速輪転印刷する場合に、オフセット輪転印刷操業性が良好で、高いインキ着肉性を有しながら、インキセット性も良好で印刷不透明度が改善された、印刷適性に優れる新聞用紙が得られ難くなる恐れがある。逆に体積平均粒子径が20μmを超えると、用紙表面に存在する比較的粒径の大きい再生粒子(C)の存在割合が多くなり、紙粉や印刷設備の毀損が生じる原因になる恐れがある。
また、粒子化条件の調整により、再生粒子(C)において5〜15μmの粒子径を有する粒子が全体の60質量%以上、さらには62質量%以上を占めるシャ−プなものであることが好ましい。5〜15μmの粒子径を有する粒子が全体の60質量%未満であると、粒子の体積分布がブロードな状態になるがゆえに、得られる新聞用紙の地合いムラや紙質強度のムラが生じ易くなる恐れがある。
なお、本明細書において、再生粒子(C)の体積平均粒子径及び体積分布は、サンプル10mgをメタノール溶液8mLに添加し、超音波分散機(出力:80W)で3分間分散させた分散溶液について、粒径分布測定装置(レーザー方式のマイクロトラック粒径分析計、日機装(株)製)にて解析して得た。
さらに、再生粒子(C)は、マシンチェスト、ファンポンプ、サクションから抄紙機インレットの間のいずれにおいても、原料パルプに添加することができるが、オフセット輪転印刷における印刷適性や印刷不透明度をより向上させるには、サクションから抄紙機インレットの間で、さらにはインレット前段で添加することが効果的である。
本発明では、ホワイトカーボン(A)、炭酸カルシウム(B)及び再生粒子(C)という、形状や粒子径が異なる3種の填料が併用されるので、基紙内部の種々の空隙がこれらの填料で充填され、吸収乾燥型の新聞用オフセットインキのビヒクル分が素早く吸収されて染み透しがなく、輪転機が高速化したり、両面カラー用タワープレス機による印刷インキ量が増加しても、充分な吸収乾燥性が発揮され、印刷不透明度及び印刷適性を向上させることができる。
特に本発明では、ホワイトカーボン(A)が未乾燥ホワイトカーボンであり、炭酸カルシウム(B)が毬栗炭酸カルシウムであり、再生粒子(C)が製紙スラッジとして古紙パルプを製造する古紙処理工程の脱墨工程で排出される脱墨フロスを用い、燃焼工程として少なくとも第1燃焼工程及び第2燃焼工程が行われ、該第1燃焼工程において300℃以上、500℃未満の温度で燃焼処理して得られたであることが、印刷不透明度及び印刷適性のさらなる向上の点から好ましい。
填料の配合割合は、ホワイトカーボン(A):炭酸カルシウム(B):再生粒子(C)=5〜30:15〜70:20〜70(質量比)、さらには10〜25:20〜65:25〜65(質量比)であることが、充分な吸収乾燥性が発揮され、印刷不透明度及び印刷
適性を向上させる効果が大きいという点で好ましい。
なお、ホワイトカーボン(A)の配合によってさらにインキセット性は高まるが、ホワイトカーボン(A)の配合量があまりにも多い場合には、インキの沈み込みが発生し、インキ濃度の低下が生じる恐れがある。また、ホワイトカーボン(A)は高価であるため、できる限りその使用量を少なくすることが生産コストの低減において好ましい。これらの点からも、ホワイトカーボン(A)、炭酸カルシウム(B)及び再生粒子(C)の配合割合を前記範囲に設定することが好ましい。
原料パルプに対する填料全体の配合量は、得られる新聞用紙の紙中灰分が、JIS P
8251「灰分試験方法」に記載の方法に準拠して測定して7〜15%、さらには8〜14%、特に9〜13%となるように調整することが好ましい。新聞用紙の紙中灰分が7%未満では、新聞用紙にフルカラー印刷を施した際の、各色フルカラーインキのインキセット性が不充分になり、インキの裏移りやインキの擦れの問題が生じ易くなる恐れがある。逆に新聞用紙の紙中灰分が15%を超えると、抄紙工程における断紙トラブルが生じ易く、生産性が低下すると共に、系内の汚れの問題も生じる場合がある。さらに、高速輪転印刷における断紙トラブルが生じ易くなり、印刷操業性を低下させる原因になる場合がある。
なお、本発明においては、原料パルプに対する填料の分散性を向上させるために、分散剤を添加してもよい。該分散剤の種類には特に限定がなく、例えばポリアクリル酸塩、ポリカルボン酸塩、ポリリン酸塩等の一般的な無機填料用分散剤を使用することができる。
前記分散剤の使用量は、填料100質量部に対して0.1〜2質量部、さらには0.5〜1.5質量部であることが好ましい。分散剤の使用量が2質量部を超えると、分散性能がよくなりすぎ、シェアに対して安定な凝集体が得られ難くなる場合がある。逆に分散剤の使用量が0.1質量部未満では、スラリー粘度が極端に高くなってしまい、ハンドリングに問題が生じる場合がある。
本発明の新聞用紙を得るには、前記原料パルプからなるパルプスラリーに填料を添加し、例えば好適にはpH6〜10、さらに好適にはpH6.5〜9.5の中性〜アルカリ性となるようにpH等の条件を調整して、長網型抄紙機、ツインワイヤー型抄紙機等の通常の抄紙機にて抄紙する方法を採用することができるが、本発明においては、原料パルプの調製段階で凝結剤を添加し、さらに該原料パルプの調製段階に続く抄紙工程前段で凝集剤を添加することが、パルプ懸濁液中に混在する微細な無機粒子の凝集を推進し、さらに、原料パルプに無機粒子を付着させ填料歩留りを向上させる、濾水性が向上しウェットエンドの安定性が得られるといった利点があるので好ましい。
前記のごとく原料パルプの調製段階で添加することが好ましい凝結剤としては、例えばポリアクリルアミド(PAM)、ポリビニルアミン(PVAm)、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(ポリダドマック、PDADMAC)、ポリアミン(PAm)、ポリエチレンイミン(PEI)等の有機高分子系凝結剤や、硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウム等の無機系凝結剤があげられる。これらの中でも、PAM、PDADMAC、PAm及びPEIの少なくとも1種を用いることが好ましい。
前記有機高分子系凝結剤は、填料であるホワイトカーボン(A)、炭酸カルシウム(B)及び再生粒子(C)のうち、再生粒子(C)をパルプ中に留め、濾水性を向上させることができるという点から、その電荷密度が3meq/g以上、さらには10meq/g以上であることが好ましい。かかる電荷密度が3meq/g未満の場合、パルプのカチオン要求量を所定値まで上昇させるには有機高分子系凝結剤の添加量を多くしなければならず
、コストが高くなり、新聞用紙の地合(シートフォーメーション)が低下する恐れがある。また有機高分子系凝結剤の平均分子量は70万〜130万、さらには80万〜120万であることが好ましい。かかる平均分子量が70万未満では、凝集力が弱く、填料の湿紙への定着が不充分となり、その結果、目的とする効果の向上が望めない恐れがあり、一方130万を超えると、凝集力が強過ぎるため、新聞用紙の紙合が低下し、紙合を良好に維持するためには添加量を少なくしなければならず、やはり目的とする効果の向上が望めない恐れがある。
有機高分子系凝結剤の添加量は、カチオン要求量低減率と、有機高分子系凝結剤添加後の紙料濾液のカチオン要求量とが満足されるように調整することが好ましい。したがって、有機高分子系凝結剤の添加量は、後述する無機系凝結剤の添加量にも左右されるが、原料パルプに対して固形分で1000〜4000ppm、さらには1200〜3800ppmであることが好ましい。かかる有機高分子系凝結剤の添加量が1000ppm未満では、その効果が不充分となる恐れがあり、一方4000ppmを超えると、紙の地合が低下し、コストも上昇する恐れがある。
また無機系凝結剤の添加量は、原料パルプに対して0.1〜5.0質量%、さらには0.1〜3.0質量%であることが好ましい。
なお、前記凝結剤の中でも特にカチオン性凝結剤を用いる場合には、その添加量は、原料パルプに対して純分で50〜400ppm、さらには100〜300ppmであることが好ましい。かかるカチオン性凝結剤としては、後述する凝集剤と同様の高分子化合物、すなわちカチオン性水溶性重合体又は共重合体を使用することができるが、その分子量が小さいものを用いることが好ましい。すなわち、カチオン性凝結剤としては、平均分子量が100万〜120万であり、かつカチオン性単量体の割合が5〜100モル%、さらには10〜100モル%のカチオン性水溶性重合体又は共重合体を使用することができる。かかるカチオン性凝結剤の代表例としては、例えばPAm、PEI等があげられる。カチオン性凝結剤の平均分子量が100万未満であると、該カチオン性凝結剤を用いた効果が充分に発現されない恐れがあり、一方120万よりも大きくても、所望の効果の向上があまり望めず、コスト高となる恐れがある。
本発明においては、前記したように、原料パルプの調製段階で凝結剤を添加することが好ましいが、例えば、前記原料パルプ及び填料、並びに必要に応じて内添サイズ剤、定着剤、歩留り向上剤、カチオン化剤、紙力増強剤、消泡剤等の各種製紙助剤等は、配合チェストで混合されて完成原料となる。したがって、配合チェストからマシンチェストの間で凝結剤が添加されることが好ましく、該凝結剤を完成原料に充分に混合するには、配合チェストへ添加することがより好ましい。
特に、後述する凝集剤としてカチオン性凝集剤を用いる場合には、原料パルプの調製の初期段階、すなわちパルプスラリーに対して早い段階で、前記凝結剤を添加することが好ましい。そしてその後、凝集剤を抄紙工程前段、すなわち抄紙網前のヘッドボックスにおいて添加することが最適である。かかる添加手順を採ると、抄紙原料が抄紙網にのる前のスラリー溶液状態において、凝結剤の凝集効果により、パルプ繊維と填料との付着性が高まるとともに、抄紙網では凝集剤の凝集効果により、パルプ繊維と填料との付着性がより強固となる。その結果、填料の紙中への歩留りがさらに向上する。そして、このような添加手順を採った場合には、填料の歩留りのさらなる向上とともに、スムーズな抄紙作業が進行するといった効果も発現される。
本発明においては、前記原料パルプの調製段階で凝結剤を添加した後、さらに該原料パルプの調製段階に続く抄紙工程前段で凝集剤を添加することが好ましい。
前記凝集剤としては、アニオン性を呈するパルプや填料に対してカチオン性凝集剤が特に好適である。かかるカチオン性凝集剤としては、例えば平均分子量が800万〜1200万、さらには850万〜1100万であり、かつカチオン性単量体の割合が5〜100モル%、さらには10〜100モル%のカチオン性水溶性重合体又は共重合体を使用することができる。かかるカチオン性凝集剤の代表例としては、例えばPAM等があげられる。カチオン性凝集剤の平均分子量が800万未満であると、該カチオン性凝集剤を用いた効果が充分に発現されない恐れがあり、一方1200万よりも大きくても、所望の効果の向上があまり望めず、コスト高となる恐れがある。
凝集剤の添加は、前記したように、抄紙工程前段、すなわち抄紙網前のヘッドボックスにおいて行われることが特に好ましい。これにより、抄紙網において欠損する填料の量を格段に低減させることができる。
また凝集剤の添加量は、原料パルプに対して純分で100〜150ppm、さらには120〜140ppmであることが好ましい。凝集剤の添加量が100ppm未満であると、填料の歩留り向上効果が充分に得られない恐れがあり、一方150ppmを超えると、新聞用紙の地合が低下する恐れがある。
本発明では、例えば前記凝結剤や凝集剤を使用することにより、新聞用紙の地合指数を5〜10%、さらには6〜9.5%、特に7〜8.5%に調整することが好ましい。本発明の新聞用紙は、輪転機で印刷される関係で、所定の引張り強度が必要となる。したがって、所定の縦方向の引張り強度を得るためには、地合指数が5%以上であることが好ましい。一方地合指数が10%を超えても、充分な縦方向の引張り強度が得難いとともに、例えばオフセット印刷において、特にカラー印刷でのインキの吸収ムラが生じ、印刷適性、特に印刷不透明度の低下に繋がる恐れがある。
なお、本明細書において、新聞用紙の地合指数とは、シートフォーメーションテスター((株)東洋精機製作所製)にて測定した値をいう。
さらに本発明の新聞用紙を製造する際には、複数の紙料を調製して種箱に供給する前に、各紙料のスラリーをオンラインのカチオンデマンド測定装置に供して測定したカチオンデマンド測定値に基づき、調製段階にて添加する凝結剤の添加量を制御することもできる。
このように、オンラインで凝結剤の添加量を制御することで、最適なカチオンデマンドによる電位制御が可能である。特に、迅速なカチオンデマンド測定値をフィードバックし、これを制御することが可能であり、抄紙機のワイヤーパートでの濾水性の安定化を図ることができるとともに、ウェットパートでの断紙の低減のみならず、得られる新聞用紙の地合を良好に維持することができる。
なお、前記カチオンデマンドとは、アニオン物質が有する総電荷のことである。また、アニオン物質(アニオントラッシュ)とは、負(マイナス)に帯電した物質であり、パルプ(微細繊維を含む)、填料(ホワイトカーボン(A)、炭酸カルシウム(B)及び再生粒子(C))、各種ウェットエンド製紙助剤(その他の填料、内添サイズ剤、消泡剤等)、樹脂ピッチ、溶出リグニン等のことである。
アニオン物質にカチオン性凝結剤を添加し、凝結させたものに、アニオン性(もしくはカチオン性)凝集剤を添加することで、凝結したアニオン物質が凝集し、フロックを形成する。かかるメカニズムの下で、主に、ピッチをパルプに吸着させて極小な状態で紙料と
ともに工程を通過させるか、系外に排出させ、ピッチ濃度の低減を図ることができる。これにより、汚れ、欠陥、断紙等を減少させることができ、生産性のさらなる向上が可能となる。またアニオン物質での中和により、歩留りのさらなる向上が可能となり、アニオン物質が凝集し、フロックを形成すると、濾水状態が良好になる。かかる理由により、濾水状態に関しては、カチオンデマンド(又はその量)が低いことが好ましい。
なお、前記のごときオンラインのカチオンデマンドを測定する装置の代表例としては、カチオンデマンド測定装置(型番:PCT15又はPCT20、mutek社製)があげられる。該カチオンデマンド測定装置では、紙料を試験機のセル中に導入すると、上下ピストンの稼動にてセルシリンダーとピストンとの間にサンプル液の流れが生じ、コロイド粒子の表面電荷の歪みによって電気が生じる。パルプ懸濁液中のコロイド状溶解物質粒子は、イオンにより電気を帯びており、これを利用することでチャージ要求量を高分子電解質測定によって測定する。
かくして抄紙工程を経て本発明の新聞用紙が得られるが、本発明においては、さらに新聞用紙の表裏面に、少なくとも水溶性高分子化合物を含む塗工層が設けられることが好ましい。
これにより、例えばコールドセット型オフセットインキのビヒクル分が素早く吸収され、輪転機の高速化や両面カラー用タワープレス機の使用によって印刷インキ量が増加しても、充分な吸収乾燥性が発現され、さらに優れた印刷不透明度、印刷適性等を確保することができる。
本発明に用いられる填料と水溶性高分子化合物との組合せが好適な理由としては、炭酸カルシウム(B)、特に毬栗炭酸カルシウムが3次元の多孔性に富み、大きな比表面積を有しており、例えば澱粉及び/又はポリビニルアルコール(PVA)といった水溶性高分子化合物との相乗効果に基づく、新聞用紙表面にオフセットインキ受理剤を塗布した際の成膜性に優れていることがあげられる。特に毬栗炭酸カルシウムは、通常の炭酸カルシウムよりも吸油量が大きく、コールドセット型オフセットインキを新聞用紙表面で素早く吸収乾燥し、水溶性高分子化合物と組み合わせることにより、坪量が36〜48g/m2と軽量であっても、さらに優れた印刷不透明度の向上効果を発現する。
好適な水溶性高分子化合物としては、例えば澱粉、PVA等があげられ、これらは単独で又は同時に用いることができる。
前記澱粉の種類には特に限定がないが、例えば変性澱粉は、紙中に浸透しながら、引張り強度や表面強度を向上させる効果を有するものの、中性又はアニオン性を示すため、アニオン性を呈するパルプ繊維表面への定着性が低く、被膜性が低い。したがって、本発明では、アニオン性を呈するパルプ繊維表面への定着性が高いカチオン性の澱粉を用いることが好ましい。カチオン性の澱粉の場合には、パルプ繊維に対する定着性が高く、被膜性に優れ、また表面強度も向上する。
さらに前記澱粉としては、エステル化澱粉がより好ましい。エステル化澱粉を用いた場合には、インキ濃度及びインキセット性が飛躍的に向上する。かかるエステル化澱粉を得る際の原料澱粉としては、例えば未処理澱粉、処理澱粉の他、各種澱粉含有物があげられる。このような原料澱粉の代表例としては、例えば小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、トウモロコシ澱粉、甘薯澱粉、タピオカ澱粉、サゴ澱粉、米澱粉、モチトウモロコシ粉、高アミロース含量トウモロコシ澱粉等の未処理澱粉;小麦澱粉、タピオカ澱粉、コーンフラワー、米粉等の澱粉含有物に、酸化、酸処理化等を行った処理澱粉等があげられる。これらの中でも、タピオカ澱粉は、エステル変性物が、粘性、被膜性、弾力性、伸展性の面で他の穀物澱
粉類よりも優れる点で好ましい。
前記エステル化澱粉において、そのエステル化度には特に限定がないが、導入されるエステル結合の平均数で、グルコース単位あたり1〜3、さらには1〜2であることが好ましい。エステル化澱粉の中でも、ヒドロキシエステル化澱粉が好ましい。該ヒドロキシエステル化澱粉は、原料澱粉に酸化処理を施し、カルボキシメチル基をヒドロキシエチル基へ還元反応させることにより、容易にかつ安価に得ることができる。中でも、エステル変性された澱粉の末端基に疎水性基を導入した、疎水性基含有エステル変性タピオカ澱粉を使用することが最適である。
さらに本発明で好適に使用することができるエステル化澱粉としては、末端基にカルボン酸「−COOH」構造を有し、中性領域において「−COO−」のようにイオン化することで、水素結合による繋がりを確保することができずに反発性を示すことに基づく、チキソトロピカルな挙動を示すエステル変性澱粉が、新聞用紙表面への塗工時は流動性を示しながら、塗工後は用紙中に浸透し難く、用紙表面に高い被膜性を呈する点から好ましい。特に後述する被膜性の高いPVA等と併用することによって、原料パルプに添加する填料である炭酸カルシウム(B)、特に毬栗炭酸カルシウムが多量に用いられるとしても、インキ濃度やインキセット性のさらなる向上が図られる。このようなエステル化澱粉としては、タピオカ澱粉を主原料にエステル変性させた1−オクテニルコハク酸エステル化澱粉が特に好ましい。1−オクテニルコハク酸エステル化澱粉は、粘性、被膜弾力性、被覆性の点で特に優れており、例えば後述するPVAと併用することにより、印刷操業性及び被覆性と、インキ濃度及びインキセット性とのさらなる向上を図ることができる。
なお、本発明に用いられる澱粉としては、平均分子量が60万〜300万、さらには80万〜280万のものが、用紙表面の被覆性とインク成分を用紙表面に留めながら、溶媒成分を紙中に取り込み吸収乾燥性を向上させるという点から好ましい。
また前記澱粉としては、粘度(10%)が30×10-3Pa・s以下、さらには15×10-3〜25×10-3Pa・sのものが、用紙表面において、粘度が高いことから紙中に浸透せず、紙表面に留まることができるという点から好ましい。
前記したように、水溶性高分子化合物としては、澱粉の他にも例えばPVAがあげられる。一般にPVAを単独で新聞用紙の表裏面に塗工した場合には、澱粉を単独で塗工した場合と比べて、略3倍の表面強度を示し、被膜性に優れる反面、かかる被膜性が高いために、コールドセット型インキのように、用紙中に溶媒が浸透して乾燥する印刷インキを用いると、印刷インキの溶媒の吸収性が低く、充分なインキセット性が得られない恐れがある。またPVAを単独で一定量塗工しようとすると、該PVAを含む塗工剤の粘性が高く、例えばフィルムトランスファー方式では、断紙、抄紙設備の汚れ、粕、紙面の汚れ等が生じる場合がある。ところが、このようなPVAを澱粉と併用することで、印刷インキの溶媒の用紙中への浸透を適度に促しながら、インキ填料成分を用紙表面に留める被膜性が向上するとともに、インキセット性の低下も充分に抑制される。
PVAの種類には特に限定がなく、本発明で用いることができるPVAには、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のPVAの他に、末端をカチオン変性したPVAやアニオン性基を有するアニオン変性PVA等の変性PVAも含まれる。
ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のPVAとしては、平均重合度が300〜3000、さらには1000〜2400、特に1700〜2000のものが、澱粉との相溶性に優れ、均質な被膜が得られ易いという点から好ましい。
また通常のPVAとしては、ケン化度が80〜100のものが好ましく、ケン化度が90〜100の完全ケン化PVAがより好ましい。完全ケン化PVAを用いた場合には、部分ケン化PVAを用いた場合よりも、新聞用紙表面に、耐水性や耐熱性を有する被膜がより得られ易い。
このようなPVAを用いると、澱粉との親和性がよく、短時間で澱粉とPVAとのブレンドが可能であり、操業性をさらに向上させることができるとともに、塗工設備においてミストの発生を低減させることができる。
以上の特性を有するPVAを用いることにより、高いインキ濃度を得ながら、オフセットインキの高いインキセット性を実現することができる。また、印刷後に新聞用紙を積層した際に、裏面へのインキ転写を充分に防止することもできる。
澱粉とPVAとを併用する場合、両者の割合(澱粉:PVA(固形分質量比))は、10:0.8〜10:2、さらには10:0.9〜10:1.2であることが好ましい。澱粉に対するPVAの割合が10:2を上回ると、両者を含んだ塗工剤の粘性が急激に上昇するため、塗工ムラやミストが発生し、塗工品質の低下や設備周辺の汚損が生じる恐れがあり、一方10:0.8を下回ると、澱粉とPVAとの相溶性には問題がないものの、新聞用紙表面に塗付した際に、澱粉とPVAとの相乗効果が得られず、用紙中への浸透や塗工ムラが生じる恐れがある。したがって、両者の割合をこの範囲に設定することで、澱粉とPVAとの相乗効果を確保することができ、インキ中の填料成分を新聞用紙表面に留めることによって高いインキ濃度を発現させると同時に、インキ中の溶媒を素早く新聞用紙内部に吸収させ、早いインキセット性を発現させることができる。
新聞用紙の表裏面に、少なくとも水溶性高分子化合物を含む塗工剤を塗工する場合、片面あたりの水溶性高分子化合物の量が、固形分で0.2〜2g/m2、さらには0.5〜1.5g/m2となるように調整することが好ましい。水溶性高分子化合物の量が0.2g/m2を下回ると、水溶性高分子化合物による充分な被膜性を得ることが困難となり、インキ中の填料成分が新聞用紙表面で留まり難く、充分に高いインキ濃度が得られない恐れがあり、一方2g/m2を上回ると、塗工設備周辺に水溶性高分子化合物を含む塗工剤のミストが多量に発生し、周辺機器を汚損するとともに、汚れに起因する断紙、用紙の欠陥が生じる恐れがある。
澱粉、PVAといった水溶性高分子化合物を含む塗工剤を新聞用紙の表裏面に塗工する際には、例えばゲートロールコータ、ブレード等のフィルムトランスファー方式を採用することが好ましい。中でも、特にゲートロールコータによる塗工は、他の塗工方法と異なり、低塗工量にて新聞用紙表面に被覆性の高い輪郭塗工を施す際に最適であり、塗工剤に急激なせん断力がかからないので、循環使用する塗工剤の安定性に優れ、高速で均質な被膜を得ることができる。特に、チキソトロピカルなエステル変性澱粉を用いた場合には、新聞用紙表面への塗工時は流動性を示しながら、塗工後は流動性が抑制され、塗工剤が用紙中に浸透し難く、用紙表面に留まって新聞用紙に高い被膜性が付与される。
なお、新聞用紙表裏面に、水溶性高分子化合物として澱粉及びPVAを主成分とする塗工剤を塗工する際には、前記フィルムトランスファー方式を採用しなくとも、例えばサイズプレスやロッドメタリングサイズプレス等、従来公知の塗工手段を採用することも可能ではある。しかしながら、新聞用紙表面の凹凸に沿った輪郭塗工を施さなければ、澱粉及びPVAによる被覆性が不充分となり、例えばコールドセット型インキを使用して多色オフセット輪転印刷する場合に、インキ濃度、インキセット性、インキ着肉性等の印刷適性に充分に優れた新聞用紙が得られ難くなる恐れがある。したがって、低濃度、低塗工量にて澱粉及びPVAを主成分とする塗工剤を新聞用紙表裏面に塗工するには、フィルムトラ
ンスファー方式を採用することが最適である。
かくして得られる本発明の新聞用紙は、JIS P 8124「紙及び板紙−坪量測定方法」に記載の方法に準拠して測定した坪量が36〜48g/m2である。かかる坪量が36g/m2未満では、不透明度や紙質強度が不充分であり、17〜20万部/時間にも及ぶ近年の高速印刷においては、断紙が生じ易くなるという問題が発生する。逆に48g/m2を超える坪量では、本発明の新聞用紙のごとき構成でなくとも不透明度を確保することが可能なうえ、近年の新聞用紙の軽量化に反する。
また本発明の新聞用紙は、JIS P 8149「紙及び板紙−不透明度試験方法(紙の裏当て)」に記載の方法に準拠して測定した白紙不透明度が90%以上、好ましくは90.5%以上である。かかる白紙不透明度が90%未満であると、印刷前の白紙外観が低下するだけでなく、オフセット印刷後の印刷物の見映えも低下する。
さらに本発明の新聞用紙は、印刷不透明度が85%以上、好ましくは90%以上である。かかる印刷不透明度が85%未満であると、オフセット印刷後の印刷物の見映えが低下するだけでなく、裏抜けが生じる。
なお、本明細書において、新聞用紙の印刷不透明度とは、オフセット輪転印刷機(型番:RI−2型、石川島産業機械(株)製)で、オフセット輪転印刷用インキ(商品名:ニューズゼットナチュラリス(墨)、大日本インキ化学工業(株)製)のインキ量を変えて印刷し、印刷面反射率が9%のときの、印刷前の裏面反射率に対する印刷後の裏面反射率の比率:(印刷後の裏面反射率/印刷前の裏面反射率)×100(%)として求めた値(反射率の測定:分光白色度測色機(スガ試験機(株)製))のことをいう。
次に、本発明の新聞用紙を以下の実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、本明細書において、調製例1、並びに実施例1、5、9及び13は、各々参考調製例1、並びに参考例1、5、9及び13である。
調製例1〜4(再生粒子の製造)
原料として脱墨フロス(脱墨古紙パルプを製造する古紙処理工程のフローテーション工程から排出された脱墨フロス)を用い、図1に示す製造設備フローに従って、表1〜2に示す条件にて脱水工程、第1燃焼工程(乾燥・燃焼工程)及び第2燃焼工程を順次行い、第2燃焼工程にて粒子を凝集させた後、粉砕工程にて湿式粉砕処理を施し、再生粒子1〜4を得た。
調製例1〜4において、第1燃焼工程では、本体が横置きで中心軸周りに回転する、重油・ガスの混焼バーナーによる内熱キルン炉(表1中、内熱キルンと示す)を用い、第2燃焼工程では、外熱電気キルン炉(表2中、外熱キルンと示す)を用いた。
なお、調製例4においては、再生粒子を珪酸ナトリウム溶液(水ガラス)に添加、分散させてスラリーを調製した後、加熱攪拌しながら、液温を90℃に保持して希硫酸を添加し、シリカゾルを生成させた。次いで最終反応液のpHを9に調整し、再生粒子の表面にシリカを析出させてシリカ被覆再生粒子を得た。
得られた再生粒子(及びシリカ被覆再生粒子)について、その粒子構成成分中のカルシウム、ケイ素及びアルミニウムの含有量(酸化物換算)、カルシウム、ケイ素及びアルミニウムの合計含有割合(酸化物換算)、体積平均粒子径、外観、ワイヤー摩耗度、生産性及び品質安定性について調べた。これらの結果を表3〜4に示す。
なお、表1〜4に示す各種測定値は、以下の方法にて測定した。
(ア)脱水物の水分率
試料を採取し、JIS P 8127「紙及び板紙−水分試験方法−乾燥器による方法」に記載の方法に準拠して測定した。
(イ)脱水物の平均粒子径及び粒子分布
JIS Z 8801−2(2000)「試験用ふるい−第2部:金属製板ふるい」にて規定の金属製の板ふるいにて平均粒子径を測定し、粒子径が50mm以下の粒子の割合を算出した。
(ウ)第1燃焼炉内上端部及び第2燃焼炉のバーナー近傍での酸素濃度
ガス分析装置(型番:PG250型、(株)堀場製作所製)にて測定した。
(エ)第1燃焼工程後の燃焼物の未燃率
電気マッフル炉をあらかじめ600℃に昇温後、ルツボに試料を入れて約3時間で完全燃焼させ、燃焼前後の重量変化から未燃率を算出した。
(オ)再生粒子中のカルシウム、ケイ素及びアルミニウムの含有量(酸化物換算)
X線マイクロアナライザー(型番:E−MAX・S−2150、(株)日立製作所/(株)堀場製作所製)にて粒子構成成分の元素分析を行った。また、これらカルシウム、ケイ素及びアルミニウム各々の含有量から、再生粒子の粒子構成成分中の、カルシウムとケイ素とアルミニウムとの合計含有割合(酸化物換算)を算出した。
(カ)再生粒子の体積平均粒子径及び粒子分布
再生粒子のサンプル10mgをメタノール溶液8mLに添加し、超音波分散機(出力:80W)で3分間分散させた分散溶液について、粒径分布測定装置(レーザー方式のマイクロトラック粒径分析計、日機装(株)製)にて解析し、体積平均粒子径及び5〜15μmの粒子径を有する粒子の割合を測定した。
(キ)外観
目視にて再生粒子の色を観察し、白色と灰色とに区分した。
(ク)ワイヤー摩耗度
摩耗度試験装置(日本フィルコン(株)製)を用い、スラリー濃度2質量%にて3時間、プラスチックワイヤー摩耗度を測定した。
(ケ)生産性
原料の脱水効率、生産性及び粉砕に必要な電力を各々5段階評価し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:いずれも高い評価でバランスが最もよかった。
○:平均してよい評価であった。
△:脱水効率、生産性及び粉砕に必要な電力のいずれかに問題があった。
×:実操業が困難であった。
(コ)品質安定性
白色度、粒子径、一定時間間隔における生産量の各項目について、変動程度を測定し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:いずれの項目も全く変動がなかった。
○:いずれの項目も殆ど変動がなかった。
△:いずれかの項目に変動が認められた。
×:いずれの項目にも変動が認められた。
表4に示された結果から、調製例1〜4の再生粒子は、いずれも白色度が高く、ワイヤー摩耗度が低く、生産性及び品質安定性にも優れたものであることがわかる。特に調製例2〜4のように、第1燃焼工程において300℃以上、500℃未満の温度で燃焼処理して得られた再生粒子は、ワイヤー磨耗度がさらに低くより優れたものであることがわかる。
実施例1〜13及び比較例1〜7
新聞古紙から製造した脱墨古紙パルプ(表5中、DIPと示す)及びサーモメカニカルパルプ(表5中、TMPと示す)を、表3に示す割合で混合して原料パルプとした。この原料パルプに、填料として、ホワイトカーボン(A)、炭酸カルシウム(B)及び再生粒子(C)を表5〜7に示す割合及び添加場所で添加し、さらに表8に示す凝結剤を添加してパルプスラリーを得た。
なお、表5〜7に示す填料は、以下のとおりである。
未乾燥:未乾燥ホワイトカーボン
乾燥:乾燥ホワイトカーボン
毬栗:毬栗炭酸カルシウム
重質:重質炭酸カルシウム
紡錘型:紡錘型炭酸カルシウム
また、表5〜6に示す各種測定値は、以下の方法にて測定した。
(i)ホワイトカーボンの体積平均粒子径
ホワイトカーボンのサンプル10mgをメタノール溶液8mLに添加し、超音波分散機(出力:80W)で3分間分散させた分散溶液について、粒径分布測定装置(レーザー方式のマイクロトラック粒径分析計、日機装(株)製)にて測定した。
(ii)炭酸カルシウムの吸油量
JIS K 5101−13−1「顔料試験方法−第13部:吸油量−第1節:精製あまに油法」に記載の方法に準拠して測定した。
(iii)炭酸カルシウムのBET比表面積
全自動BET比表面積測定装置(型番:フロソーブ2300、(株)島津製作所製)にて測定した。
(iv)炭酸カルシウムの体積平均粒子径
炭酸カルシウムのサンプル10mgをメタノール溶液8mLに添加し、超音波分散機(出力:80W)で3分間分散させた分散溶液について、粒径分布測定装置(レーザー方式のマイクロトラック粒径分析計、日機装(株)製)にて測定した。
次いで、得られたパルプスラリーに表8に示す凝集剤を添加し、約6.5の抄紙pHにて長網型抄紙機で抄紙して基紙を製造した。
なお、表8に示す凝結剤及び凝集剤は以下のとおりであり、添加量は原料パルプに対する量である。
PEI:ポリエチレンイミン
PAM:ポリアクリルアミド
次に、得られた基紙の表裏面に、表9に示す水溶性高分子化合物と水とを撹拌混合し、固形分濃度を1〜20質量%に調整した塗工液を、表10に示す塗工方式で、片面あたりの水溶性高分子化合物の量が、固形分で表10に示す値となるように塗工し、新聞用紙を得た。
なお、表9に示す水溶性高分子化合物は、以下のとおりである。
エステル化澱粉:1−オクテニルコハク酸エステル化澱粉
得られた新聞用紙について、以下の方法にて各物性を測定した。これらの結果を表11に示す。
(a)坪量
JIS P 8124「坪量測定方法」に記載の方法に準拠して測定した。
(b)紙面pH
紙面用pH測定キット(共立理化学研究所製)にて、試薬(MPC−BCP、pH4.8〜6.8)を使用し、変色標準計で目視にて測定した。
(c)紙中灰分
JIS P 8251「紙、板紙及びパルプ−灰分試験方法−525℃燃焼法」に記載の方法に準拠して測定した。
(d)地合指数
シートフォーメーションテスター((株)東洋精機製作所製)にて測定した。
(e)白色度
JIS P 8148(2001)「紙、板紙及びパルプ−ISO白色度(拡散青色光反射率)の測定方法」に記載の方法に準拠して測定した。
(f)白紙不透明度
JIS P 8149(2000)「紙及び板紙−不透明度試験方法(紙の裏当て)」に記載の方法に準拠して測定した。
(g)印刷不透明度
オフセット輪転印刷機(型番:RI−2型、石川島産業機械(株)製)で、オフセット輪転印刷用インキ(商品名:ニューズゼットナチュラリス(墨)、大日本インキ化学工業(株)製)のインキ量を変えて印刷し、印刷面反射率が9%のときの、印刷前の裏面反射率に対する印刷後の裏面反射率の比率:
(印刷後の裏面反射率/印刷前の裏面反射率)×100(%)
を求めた。なお、これら反射率の測定には、分光白色度測色機(スガ試験機(株)製)を用いた。
(h)不透明度差
白紙不透明度と印刷不透明度との差(絶対値)を求めた。
(i)インキ濃度
RI印刷適性試験機(型番:RI−2型、石川島産業機械(株)製)を使用し、金属ロールとゴムロールとの間隙に30rpmの速度で通紙し、オフセット印刷インキ(商品名:ニューズゼットナチュラリス(墨)、大日本インキ化学工業(株)製、インキ使用量:0.85mL)にて印刷した(試験片:CD方向50mm、MD方向100mm)。3回刷りまでの印刷サンプルを恒室状態(JIS P 8111「紙、板紙及びパルプ−調湿及び試験のための標準状態」に準拠)にて24時間乾燥した。1回刷り、2回刷り、3回刷り印刷サンプルについて、各々無作為に選択した印刷部位10箇所のインキ濃度をマクベス濃度計にて測定し、これらの平均値を求めた。
(j)面積割合
得られた新聞用紙の印刷表面について、一定面積の領域を、走査型電子顕微鏡付属のX線マイクロアナライザー(型番:E−MAX、(株)堀場製作所製)を用い、12000倍で試料の異なる個所を25箇所、前記X線マイクロアナライザーによるカルシウム、ケイ素及びアルミニウムの酸化物換算の元素分析によるマッピング写真像を撮影し、画像解析装置(型番:ルーゼックス、(株)ニレコ製)にて、カルシウム、ケイ素及びアルミニウムが重なって検出される面積を再生粒子の存在する領域の面積(C)として測定し、またケイ素単独の領域をホワイトカーボンの存在する領域の面積(A)として、カルシウム単独で検出される領域を炭酸カルシウムの存在する領域の面積(B)として、それぞれの面積割合を算出し、(A)、(B)及び(C)合算の領域面積の全測定領域面積における存在割合を、面積割合とした。
次に、得られた新聞用紙について、以下の試験例1〜5に基づいて各特性を調べた。その結果を表12に示す。
試験例1(インキセット性)
RI印刷適性試験機(型番:RI−2型、石川島産業機械(株)製)を使用し、新聞用インキ(商品名:ニューズゼットナチュラリス(藍)、大日本インキ化学工業(株)製)にてベタ印刷した後、コート紙を印刷面に重ねて一定圧力で圧着した。コート紙へのインキの転移状況を目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:コート紙表面全体に全く汚れが生じていない。
○:コート紙表面の一部に僅かに汚れが生じているが、実用上問題がない。
△:コート紙表面全体に汚れが認められる。
×:コート紙表面全体の汚れが著しい。
なお、前記評価基準のうち、◎及び○の場合を実使用可能と判断する。
試験例2(インキ着肉性)
オフセット印刷機(型番:小森SYSTEMC−20、(株)小森コーポレーション製)を使用し、新聞用カラーインキ(商品名:ニュースウェブマスター エコピュア、サカタインクス(株)製)にて連続10000部のカラー4色印刷を行った。得られた印刷物について、画像の鮮明さ及び濃淡ムラを目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:画像が鮮明で濃淡ムラが全くなく、インキ着肉性に優れる。
○:画像が鮮明で濃淡ムラが殆どなく、インキ着肉性が良好である。
△:一部に、画像が不鮮明な箇所及び濃淡ムラがあり、インキ着肉性が良好でない。
×:全体的に、画像が不鮮明で濃淡ムラが著しく、インキ着肉性に劣る。
なお、前記評価基準のうち、◎及び○の場合を実使用可能と判断する。
試験例3(表面強度)
JIS K 5701−1「平版インキ−第1部:試験方法」に記載の方法に準拠し、転色試験機(型番:RI−1型、石川島産業機械(株)製)を使用し、インキタック18の1回刷りの条件で印刷した。新聞用紙表面の取られを目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:新聞用紙表面全体に全く取られがない。
○:新聞用紙表面の一部に僅かに取られが生じているが、実用上問題がない。
△:新聞用紙表面全体に取られが認められる。
×:新聞用紙表面全体に取られが著しい。
なお、前記評価基準のうち、◎及び○の場合を実使用可能と判断する。
試験例4(インキ吸収ムラ)
オフセット印刷機(型番:小森SYSTEMC−20、(株)小森コーポレーション製)を使用し、新聞用カラーインキ(商品名:ニュースウェブマスター エコピュア、サカタインクス(株)製)にてカラー4色印刷を行った。得られた印刷物について、藍/赤重色部分のインキ濃度ムラを目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:インキ濃度ムラが全くなく、均一で鮮明な画像である。
○:インキ濃度ムラが殆どなく、均一な画像である。
△:一部に、インキ濃度ムラが認められ、画像が不鮮明な箇所がある。
×:全体的に、インキ濃度ムラが著しく、不鮮明な画像である。
なお、前記評価基準のうち、◎及び○の場合を実使用可能と判断する。
試験例5(印刷操業性)
(1)剣先詰まり
オフセット輪転印刷機(型番:LITHOPIA BTO−N4、三菱重工業(株)製)を使用し、50連巻きの新聞用紙にて印刷を行った。剣先詰まり発生の有無を調べ、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:剣先詰まりが全く発生しなかった。
○:巻き取り1本で剣先詰まりが1回しか発生しなかった。
△:巻き取り1本で剣先詰まりが2〜3回発生した。
×:巻き取り1本で剣先詰まりが4回以上発生した。
なお、前記評価基準のうち、◎及び○の場合を実使用可能と判断する。
(2)ブランケット紙粉パイリング
オフセット印刷機(型番:小森SYSTEMC−20、(株)小森コーポレーション製)を使用し、連続5000部のカラー4色印刷を行った。ブランケット非画像部における紙粉発生・堆積の有無を目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:紙粉の発生が全く認められない。
○:紙粉の発生が僅かに認められるが、ブランケット上での堆積は全く認められない。
△:紙粉の発生が認められ、ブランケット上に堆積している。
×:ブランケット上での紙粉の堆積が著しい。
なお、前記評価基準のうち、◎及び○の場合を実使用可能と判断する。
(3)ネッパリ性(ブランケット粘着性))
新聞用紙を幅約4cm×長さ約6cmの大きさに切断したサンプル2枚を用意し、水に10秒間浸漬した後、これらサンプル2枚を素早く密着させた。これをカレンダーに線圧100kg/cmで通紙し、24時間室温乾燥した後、手作業にてサンプル2枚の剥離(Tピール剥離試験模倣官能試験)を行い、剥離の度合いを以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:剥離するまでもなく、全く接着していなかった。
○:一部僅かに接着していたが、容易に剥離することができた。
△:接着しており、剥離し難い箇所があった。
×:全体的に接着しており、剥離時に接着面からの繊維の毛羽立ちが認められた。
なお、前記評価基準のうち、◎及び○の場合を実使用可能と判断する。
表11〜12に示されるように、実施例1〜13の新聞用紙はいずれも、填料としてホワイトカーボン(A)、炭酸カルシウム(B)及び再生粒子(C)を組み合わせて原料パルプに内添して得られたものであるので、坪量が約36〜46g/m2と軽量でありながら、白色度及び白紙不透明度が高く、高い印刷不透明度が維持されている。しかも実施例
1〜13の新聞用紙はいずれも、1.2〜1.4程度の適度に高いインキ濃度を有しながら、インキセット性及びインキ着肉性も良好で印刷適性に優れるだけでなく、表面強度も高く、さらに印刷操業性にも優れ、特に高速多色オフセット輪転印刷に好適な優れた特性を具備したものである。
これに対して、比較例1〜7の新聞用紙は、填料としてホワイトカーボン(A)、炭酸カルシウム(B)及び再生粒子(C)の少なくとも1つが内添されていないため、特に白紙不透明度が低く、印刷不透明度も比較的低い。しかも比較例1〜7の新聞用紙はいずれも、インキセット性及びインキ着肉性が低く印刷適性に劣るうえ、表面強度も低く、印刷操業性も良好でないことから、例えば高速多色オフセット輪転印刷に必要な特性を具備しないものである。