JP5600018B2 - 放熱構造体 - Google Patents
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Description
発熱体の温度は、発熱体から発生する熱を効率よく放熱体に伝えるほど、低くなる。発熱体の温度はその耐熱温度以下とする観点から、好ましくは130℃以下、より好ましくは120℃、さらに好ましくは111℃以下である。130℃以上になると、発熱体を形成する半導体素子の働きが鈍くなったり故障したりする場合がある。なお、電子機器によっては、発熱体の耐熱温度が、120℃以下に制限される場合もある。
発熱体と放熱体との距離が離れる程、熱抵抗が大きくなり、発熱体の温度が高くなる。したがって、発熱体の温度が高くなりすぎないように、発熱体と放熱体との距離を選択することが重要である。
本発明の発熱体の出力(ワット数)は、100W以下、好ましくは80W以下、さらに好ましくは50W以下である。発熱体の出力が100Wより大きい場合は、発熱体の熱を十分逃がすことが困難となるため、発熱体の温度が耐熱温度以上まで上昇する場合がある。
本発明は、発熱体11が基板12上に複数個取り付けられている場合でも効率よく放熱できることにある。基板上に発熱体が一つしかない場合でも、本発明で用いるような高熱伝導性硬化性組成物を用いることで効率的に熱を逃がすことが可能である。
複数の発熱体と放熱体とのなす距離は、一致していても異なっていても良い。設計上は各発熱体と放熱体との距離が一致している場合でも、取り付け時の誤差や、発熱体の寸法公差、寸法のばらつき、などにより、実際の使用時には極わずかに両者の距離に差が生じる場合があることから、高熱伝導性硬化性組成物を使用することで、複数の発熱体と放熱体との距離の差をカバーすることが可能である。但しわずかな寸法のばらつき程度であれば、一般的な放熱シートを用いてもほぼ同様の効率で熱を逃がせる場合がある。しかし、複数の発熱体それぞれと放熱体との距離が増えるにつれ、種々のシートを張り合わせるための作業性が悪化すること、またシート同士の接着面を増やすことで、シート間に空気を巻き込みやすくなる可能性が高くなってしまい、それらに因って熱伝導性が低下するなどの問題がある。また、定かではないが、シート接着時において、シート表面のスキン同士の接着によって、熱伝導性を阻害すると思われる。従って、複数の発熱体それぞれと放熱体との間の距離に、差が大きければ大きいほど、本件の高熱伝導性硬化性組成物を用いた放熱構造の効果が明確となる。これらの距離の差が0.1mm以上ある場合に、高熱伝導性硬化性組成物の効果がより明確となるため好ましい。複数の発熱体と、放熱体とのなす距離が一定にはなっていない場合、両者の距離が最も近い状態と最も遠い状態との距離の差は、0.2mm以上であることがより好ましく、0.5mm以上であることがさらに好ましく、1.0mm以上であることが特に好ましく、1.5mm以上であることが最も好ましい。
図1を参照して、放熱体13の材質は、高熱伝導性を有しているほど放熱効率が高まるため好ましい。放熱体として好ましい素材は、アルミニウム、銅、マグネシウムをはじめとする高熱伝導性金属、グラファイト、ダイヤモンド等の高熱伝導性炭素材料、アルミナ、窒化アルミ、窒化ケイ素、等の高熱伝導性セラミックス、等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。放熱体の熱伝導率は、好ましくは15W/mK以上、より好ましくは20W/mK以上、さらに好ましくは30W/mK以上、最も好ましくは100W/mK以上であることが、放熱性向上のために好ましい。
図1を参照して、熱伝導性材料層14は、発熱体11、基板12、放熱体13、いずれとも接することにより、発熱体全体が熱伝導性材料層で覆われる構造となる。これらの接触面は、熱抵抗ができる限り小さくなるよう密着している必要がある。これにより、発熱体から生じる熱を効率よく放熱体に伝えることが可能となる。熱伝導性材料層の材料として、熱伝導性硬化性組成物を塗布した後で硬化させることにより、熱伝導性材料層と、発熱体・基板・放熱体との間の熱抵抗を非常に小さくすることが可能である。
熱伝導性材料層は、熱を効率的に外部に伝える必要があることから、高熱伝導性の材料を用いる必要がある。熱伝導率は具体的には0.9W/mK以上、好ましくは1.0W/mK以上、さらに好ましくは1.2W/mK以上であるとよい。このような高熱伝導性材料を用いることにより、発熱体が空気と接している場合と比較して、発熱体の熱を効率よく逃がすことが可能となる。熱伝導性材料層の熱伝導率測定は、材料に硬化性組成物を用いた場合には材料を十分硬化させた後に、京都電子工業(株)製ホットディスク法熱伝導率測定装置TPA−501を用い、4φサイズのセンサーを厚み3mm、直径20mmの円盤状サンプル2枚で挟む方法にて23℃で測定することができる。
熱伝導性材料層は、室温における硬化前の粘度が50Pa・s以上の、流動性を有するが比較的高粘度な硬化性組成物を塗布することが好ましい。硬化前の粘度が50Pa・s以下程度の低粘度であると、図2を参照して、塗布後に発熱体と放熱体との間の硬化物が流失してしまうなどして、塗布時の作業性が低下してしまうという課題が生じる。硬化前の粘度は好ましくは100Pa・s以上、より好ましくは300Pa・s以上、最も好ましくは500Pa・s以上である。硬化前の粘度は、23℃雰囲気下でBS型粘度計を用いて2rpmの条件で測定した値を用いる。硬化前の粘度の上限値に特に制限は無いが、あまり粘度が高すぎると、塗布が困難となったり、塗布時に空気を巻き込んでしまい熱伝導性を低下させる一因となったりする場合があるため、一般的には10000Pa・s以下、好ましくは6000Pa・s以下のものが用いられる。
熱伝導性硬化性組成物は、炭素-炭素二重結合同士での重合によって硬化する硬化性ビニル系重合体(I)と、熱伝導性充填材(II)とを少なくとも含有する硬化性組成物が用いられる。これらの他に必要に応じて、硬化性液状樹脂を硬化させるためのラジカル開始剤(III)や重量平均分子量が100以上3000以下である可塑剤(IV)や、熱伝導性硬化性組成物の熱老化防止剤、増量剤、チクソ性付与剤、接着性付与剤、脱水剤、カップリング剤、紫外線吸収剤、電磁波吸収材、充填剤、溶剤、等が添加されていても良い。
硬化性ビニル系重合体は、分子内に反応性基を有し硬化性があるビニル系重合体が用いられる。硬化性ビニル系重合体の具体例としては、硬化性アクリル系樹脂、硬化性メタクリル系樹脂、などが挙げられる。反応性基としては、エポキシ基、加水分解性シリル基、ビニル基、アクリロイル基、SiH基、ウレタン基、カルボジイミド基、無水カルボン酸基とアミノ基との組合せ、など各種の反応性官能基を用いることができる。これらが2種類の反応性基の組合せ、あるいは反応性基と硬化触媒との反応、により硬化する場合には、2液型組成物として準備した後、基板や発熱体へ塗布する際に2液を混合することにより、硬化性を得ることができる。あるいは加水分解性シリル基を有する硬化性樹脂の場合には、空気中の湿気と反応して硬化できることから、一液型室温硬化性組成物とすることも可能である。ビニル基とSiH基とPt触媒との組合せの場合や、ラジカル開始剤とアクリロイル基の組み合わせ、などの場合には、一液型硬化性組成物あるいは二液型硬化性組成物とした後、架橋温度にまで加熱させたり、紫外線や電子線などの架橋エネルギーを付与したりすることにより、硬化させることもできる。
硬化性ビニル系樹脂の中でも、低分子量シロキサンによる電子機器内汚染の問題がないこと、耐熱性に優れていること、等から、硬化性アクリル系樹脂を用いるのが好ましい。硬化性アクリル系樹脂としては、公知のさまざまな反応性アクリル樹脂を用いることができる。これらの中でも、分子末端に反応性基を有するアクリル系オリゴマーを用いるのが好ましい。これら硬化性アクリル系樹脂としては、リビングラジカル重合、中でも特に原子移動ラジカル重合にて製造された硬化性アクリル系樹脂と、ラジカル開始剤との組合せを最も好ましく用いることができる。このような樹脂の例として、(株)カネカ製カネカXMAPが良く知られている。
硬化性ビニル系樹脂の中でも、前記(I)のビニル系重合体の両末端もしくは片末端に架橋性(メタ)アクリロイル基を1分子あたり平均して少なくとも1個有し、かつ、そのうち分子末端に平均で0.8個以上であるビニル系重合体(I)と、開始剤(III)とを用いることにより、加熱処理を施すことで硬化可能な硬化性組成物を得ることができるものが好ましい。前記(I)のビニル系重合体の架橋性(メタ)アクリロイル基の数は特に限定されないが、架橋させるという観点から、上記(メタ)アクリロイル系基の個数の平均値は、1分子あたり1.0個以上が好ましく、1.1個以上がより好ましい。上限は、硬化したとき柔軟になるという観点からは、1分子あたり2.0個以下が好ましい。
なお、前記光重合開始剤を使用する場合、必要により、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ベンゾキノン、パラターシャリーブチルカテコール等の重合禁止剤類を添加することもできる。
熱伝導性硬化性組成物に用いられる熱伝導性充填材(II)としては、市販されている一般的な良熱伝導性充填材を用いることが出来る。なかでも、熱伝導率、入手性、絶縁性や電磁波シールド性や電磁波吸収性などの電気特性を付与可能、充填性、毒性、等種々の観点から、グラファイト、ダイヤモンド、等の炭素化合物;酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛等の金属酸化物;窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等の金属窒化物;炭化ホウ素、炭化アルミニウム、炭化ケイ素等の金属炭化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物;炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等の金属炭酸塩;結晶性シリカ:アクリロニトリル系ポリマー焼成物、フラン樹脂焼成物、クレゾール樹脂焼成物、ポリ塩化ビニル焼成物、砂糖の焼成物、木炭の焼成物等の有機性ポリマー焼成物;Znフェライトとの複合フェライト;Fe−Al−Si系三元合金;金属粉末、等が好ましく挙げられる。
充填材容積率(容量%)=(充填材重量比率/充填材比重)÷[(樹脂分重量比率/樹脂分比重)+(充填材重量比率/充填材比重)]×100
ここで、樹脂分とは、熱伝導性充填材を除いた全成分を指す。
本発明の熱伝導性材料層に使用する熱伝導性硬化性組成物中に含まれる可塑剤(IV)は、特に限定されないが、物性の調整、性状の調節等の目的により、例えば、ジブチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジ(2−エチルヘキシル)フタレート、ジイソデシルフタレート、ブチルベンジルフタレート等のフタル酸エステル類;ジオクチルアジペート、ジオクチルセバケート、ジブチルセバケート、コハク酸イソデシル等の非芳香族二塩基酸エステル類;オレイン酸ブチル、アセチルリシリノール酸メチル等の脂肪族エステル類;ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステル等のポリアルキレングリコールのエステル類;トリクレジルホスフェート、トリブチルホスフェート等のリン酸エステル類;トリメリット酸エステル類;ポリスチレンやポリ−α−メチルスチレン等のポリスチレン類;ポリブタジエン、ポリブテン、ポリイソブチレン、ブタジエン−アクリロニトリル、ポリクロロプレン;塩素化パラフィン類;アルキルジフェニル、部分水添ターフェニル、等の炭化水素系油;プロセスオイル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオール、これらポリエーテルポリオールの水酸基の片末端または両末端もしくは全末端をアルキルエステル基またはアルキルエーテル基などに変換したアルキル誘導体等のポリエーテル類;エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸ベンジル、E−PS等のエポキシ基含有可塑剤類;セバシン酸、アジピン酸、アゼライン酸、フタル酸等の2塩基酸とエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等の2価アルコールから得られるポリエステル系可塑剤類;アクリル系可塑剤を始めとするビニル系モノマーを種々の方法で重合して得られるビニル系重合体類等が挙げられる。これらを単独で、又は2種以上混合して使用することもできる。
本発明の熱拡散フィルムとしては、グラファイトフィルムを含むものが好ましく用いられる。グラファイトフィルムは厚み方向と比べて面方向に高熱伝導率であるという特徴を有している。グラファイトフィルムの面方向の熱伝導率は、50W/mK以上、好ましくは100W/mK以上、さらに好ましくは200W/mK以上、最も好ましくは500W/mK以上である。一方グラファイトフィルムの厚さ方向の熱伝導率は、30W/mK以下、好ましくは20W/mK以下、より好ましくは10W/mK以下であるとよい。グラファイトフィルムの厚さ方向の熱伝導率が30W/mKより大きいと、発熱体から発熱した熱が拡散する前に、放熱体に直接伝わってしまう。一方、厚さ方向の熱伝導率が30W/mK以下であると、発熱体から伝達された熱を厚さ方向にあまり伝えず面方向へ逃がす割合が大きくなるため好ましい。
グラファイトフィルムの面方向の熱拡散率は、光交流法による熱拡散率測定装置(アルバック理工(株)社製LaserPit)を用いて、グラファイトフィルムを4mm×40mmのサンプル形状に切り取り、20℃の雰囲気下、10Hzにおいて測定した。グラファイトフィルムの厚さ方向の熱拡散率測定には、京都電子工業(株)製のLFA−502を用いレーザーフラッシュ法で測定した。グラファイトフィルムを直径10mmにカットし、このフィルム両面を黒化処理した後、室温でレーザーフラッシュ法による厚さ方向の熱拡散率測定を行なった。また、グラファイトフィルムの熱容量を熱容量が既知である参照標準物質Moとの比較から算出し、別途測定される密度とあわせ、次の式(1)
λ=α×d×Cp (1)
から算出した。式(1)において、λは熱伝導率を、αは熱拡散率を、dは密度を、Cpは比熱容量をそれぞれ表わす。
グラファイトフィルムは、場合によっては粉落ちが発生し、機器内を汚染する可能性がある。また、グラファイトフィルムは導電性を示すために、電子機器基板の短絡を招く恐れもある。このような理由から、本発明のグラファイトフィルムは、保護フィルムと貼り合わせて用いる方が好ましい。保護フィルムとしては、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステルなどのフィルムの片面にアクリル系、シリコーン系、エポキシ系、ポリイミド系の粘着材や接着剤が形成されたフィルムが好ましい。また、ポリエステル系などのホットメルトタイプ(熱可塑性)のフィルムであってもよい。また、熱放射率の高いテープは、貼り合わせると非接触の際の熱の伝達量が増加するため、好ましい。樹脂テープは熱伝導率が悪いので、薄いものがよい。なお、熱拡散フィルムのうち熱伝導性材料層と接している面については、グラファイトフィルムの粉落ちや短絡の原因となる可能性が小さいため、保護フィルムを用いなくても良い。保護フィルムを用いないほうが熱伝導性は向上するため好ましいが、熱拡散フィルムの製造時に保護フィルムを一部分だけ取り外す必要があることから、生産コストアップの原因となる場合がある。
グラファイトフィルムを含む熱拡散フィルムで拡散された熱は、放熱体に粘着材、接着剤などの接着層により貼り付けて用いるのが好ましい。本発明において接着層として用いられる粘着材または接着剤の材質は、アクリル系、シリコーン系、エポキシ系またはポリイミド系の樹脂である。このような粘着材および接着剤は熱伝導率が悪いので、接着層は基本的に薄いほうがよい。
本発明で好ましく用いられるグラファイトフィルムの第一の製法は、グラファイト粉末をシート状に押し固めたグラファイトフィルムである。グラファイト粉末がフィルム状に成型されるためには粉末がフレーク状、あるいは鱗片状になっている必要がある。この様なグラファイト粉末の製造のための最も一般的な方法がエキスパンド(膨張黒鉛)法と呼ばれる方法である。これはグラファイトを硫酸などの酸に浸漬し、グラファイト層間化合物を作製し、しかる後にこれを熱処理、発泡させてグラファイト層間を剥離するものである。剥離後、グラファイト粉末を洗浄して酸を除去し薄膜のグラファイト粉末を得る。この様な方法で得られたグラファイト粉末をさらに圧延ロール成型してフィルム状のグラファイトを得る。この様な手法で得られた、膨張黒鉛を用いて作製されたグラファイトフィルムは柔軟性にとみ、フィルム面方向に高い熱伝導性を有するので本発明の目的に好ましく用いられる。
[硬化性アクリル系樹脂の合成例1]
アクリロイル基両末端ポリアクリル酸n−ブチルの合成例:臭化第一銅を触媒、ペンタメチルジエチレントリアミンを配位子、ジエチル−2,5−ジブロモアジペートを開始剤として、アクリル酸n−ブチルを重合し、数平均分子量22500、分子量分布1.15の末端臭素基ポリ(アクリル酸n−ブチル)を得た。この重合体300gをN,N−ジメチルアセトアミド(300mL)に溶解させ、アクリル酸カリウム8.3gを加え、窒素雰囲気下、70℃で3時間加熱攪拌し、アクリロイル基両末端ポリ(アクリル酸n−ブチル)(以下、重合体〔1〕という)の混合物を得た。この混合液中のN,N−ジメチルアセトアミドを減圧留去した後、残渣にトルエンを加えて、不溶分をろ過により除去した。濾液のトルエンを減圧留去して、重合体〔1〕を精製した。精製後の重合体〔1〕の数平均分子量は22800、分子量分布は1.15、平均末端アクリロイル基数は2.0であった。
アクリロイル基片末端ポリアクリル酸n−ブチルの合成例:臭化第一銅を触媒、ペンタメチルジエチレントリアミンを配位子、2−ブロモブチル酸エチルを開始剤として、アクリル酸n−ブチルを重合し、数平均分子量11800、分子量分布1.08の片末端臭素基ポリ(アクリル酸n−ブチル)を得た。この重合体1050gをN,N−ジメチルアセトアミド(1050g)に溶解させ、アクリル酸カリウム19.7gを加え、窒素雰囲気下、70℃で3時間加熱攪拌し、アクリロイル基片末端ポリ(アクリル酸n−ブチル)(以下、重合体〔2〕という)の混合物を得た。この混合液中のN,N−ジメチルアセトアミドを減圧留去した後、残渣にトルエンを加えて、不溶分を濾過により除去した。濾液のトルエンを減圧留去して、重合体〔2〕を精製した。精製後のアクリロイル基片末端重合体〔2〕の数平均分子量は11900、分子量分布は1.09、平均末端アクリロイル基数は0.90であった。
[熱伝導性硬化性組成物の製造例1]
合成例1で得られた重合体〔1〕50部、合成例2で得られた重合体〔2〕50部、BF−083(水酸化アルミニウム、日本軽金属製)500部、酸化亜鉛1種(酸化亜鉛、堺化学工業製)380部、ナイパーBW(ベンゾイルパーオキサイド、日本油脂製)1部、TCP(トリクレジルホスフェート、大八化学製)100部、アデカスタブAO−60(ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、アデカ製)1部、を加え、充分に混合、さらに3本ロールに3回通して混練し、熱伝導性材料層用組成物Aを得た。
上記熱伝導性材料用組成物Aを150℃×15分間プレスして、3mm厚の放熱シートを得た。得られた放熱シートの熱伝導率は、2.1W/mKであった。
[熱伝導性硬化性組成物の製造例2]
合成例1で得られた重合体〔1〕50部、合成例2で得られた重合体〔2〕50部、BF−083(水酸化アルミニウム、日本軽金属製)670部、パーブチルI(t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、日本油脂製)4部、UP1021(無官能基タイプアクリル系ポリマー、東亞合成製)100部、アデカスタブAO−60(ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、アデカ製)1部、を加え、充分に混合、さらに3本ロールに3回通して混練し、熱伝導性材料層用組成物Bを得た。上記熱伝導性材料層用組成物Bを150℃×15分間プレスして、3mm厚の放熱シートを得た。得られた放熱シートの熱伝導率は、1.7W/mKであった。
[熱伝導性硬化性組成物の製造例3]
合成例1で得られた重合体〔1〕50部、製造例2で得られた重合体〔2〕50部、PTX−60(球状窒化ホウ素、モメンティブパフォーマンスマテリアルズ製)260部、パーブチルI(t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、日本油脂製)1部、TCP(トリクレジルホスフェート、大八化学製)100部、アデカスタブAO−60(ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、アデカ製)1部、を加え、充分に混合、さらに3本ロールに3回通して混練し、熱伝導性材料層用組成物Cを得た。上記熱伝導性材料層用組成物Bを150℃×15分間プレスして、3mm厚の放熱シートを得た。得られた放熱シートの熱伝導率は、4.5W/mKであった。
ホットディスク法熱伝導率測定装置TPA−501(京都電子工業(株)製)を用い、4φサイズのセンサーを厚み3mm、直径20mmの円盤状サンプル2枚で挟む方法にて、熱伝導材料層の熱伝導率を測定した。熱伝導性材料層として硬化性組成物を用いた場合には、上記熱伝導性硬化性組成物の製造例にて作成した放熱シートを使用し、熱伝導率を測定した。
[ポリイミドフィルムAの作製] 4,4’−オキシジアニリンの1当量を溶解したDMF(ジメチルフォルムアミド)溶液に、ビロメリット酸二無水物の1当量を溶解してポリアミド酸溶液(18.5質量%)を得た。
厚さ75μmのポリイミドフィルムAを黒鉛板に挟み、電気炉を用いて窒素雰囲気下で、1000℃まで昇温した後、1000℃で1時間熱処理して炭素化処理(炭化処)を行ない、炭素化フィルムAを得た。
炭素化フィルムA(縦200mm×横200mm;面積400cm2)を、縦270mm×横270mm×厚さ3mmの板状の平滑なグラファイト板で上下から挟み、300mm×横300mm×厚さ60mmの黒鉛容器(容器A)内に保持し、容器Aの温度が3000℃になるまで加熱し、炭素化フィルムAをグラファイト化してグラファイトフィルムを作製した。この熱処理後のグラファイトフィルムを、単板プレスで厚さ方向に圧縮して、グラファイトフィルムAを得た。面方向熱拡散率は9.0cm2/s、面方向熱伝導率は1150W/mK、厚さ方向熱伝導率は5.0W/mK、厚さは40μmであった。
グラファイトフィルムBは、ジェルテック(株)製のグラファイトフィルム「λ300μm品」である。面方向熱拡散率は3.0cm2/s、面方向熱伝導率は210W/mK、厚さ方向熱伝導率は50W/mK、厚さは300μmであった。
上記グラファイトフィルムA、Bの熱伝導率は、次の式(1)
λ=α×d×Cp (1)
から算出した。ここで、式(1)において、λは熱伝導率を、αは熱拡散率を、dは密度を、Cpは比熱容量をそれぞれ表わす。なお、グラファイトフィルムの熱拡散率、密度、比熱容量は以下に示す方法で求めた。
グラファイト化の進行状況を、フィルムの面方向の熱拡散率を測定することによって判定した。熱拡散率が高いほど、グラファイト化が顕著であることを意味している。熱拡散率は、光交流法による熱拡散率測定装置(アルバック理工(株)社製LaserPit)を用いて、グラファイトフィルムを4mm×40mmのサンプル形状に切り取り、20℃の雰囲気下、10Hzにおいて測定した。
レーザーフラッシュ法によるグラファイトフィルムの厚さ方向の熱拡散率および熱伝導率測定には、JIS R1611−1997に準拠した京都電子工業(株)製のLFA−502を用いた。グラファイトフィルムを直径10mmにカットし、このフィルムの両面をグラファイト化(黒鉛化)処理した後、室温でレーザーフラッシュ法による厚さ方向の熱拡散率測定を行なった。また、グラファイトフィルムの熱容量を熱容量が既知である参照標準物質Moとの比較から算出した。これら測定したグラファイトフィルムの厚さ方向の熱拡散率、密度、熱容量から厚さ向の熱伝導率を算出した。
グラファイトフィルムの密度は、グラファイトフィルムの質量(g)をグラファイトフィルムの縦、横、厚さの積で算出した体積(cm3)で除することにより算出した。なお、グラファイトフィルムの厚さは、任意の10点で測定した平均値を使用した。密度が高いほど、グラファイト化が顕著であることを意味している。
グラファイトフィルムの厚さの測定方法としては、50mm×50mmのフィルムを厚さゲージ(ハイデンハイン(株)社製HEIDENHAIN−CERTO)を用いて室温(25℃)の恒温室にて、任意の10点を測定し、平均して測定値とした。
グラファイトフィルムの比熱測定は、エスアイアイナノテクノロジー株式会社製の熱分析システム、示差走査熱量計DSC220CUを使用して、20℃から260℃まで10℃/minの昇温条件で測定を実施した。
図1を参照して、幅5mm×5mm×厚さ1mmのシリコン製の出力1.5Wの発熱体11a、及び幅5mm×5mm×厚さ1.2mmのシリコン製の出力1.0Wの発熱体11b、幅30mm×20mm×厚さ0.8mmのエポキシ樹脂製で容器状の形状をした基板12に固定される。発熱体11に対向して距離Daが1.00mm、距離Dbが0.80mm、の間隔を有する位置に支持されるように、厚さ1.2mm、幅35mm×25mm×高さ10mm、のアルミニウムA6061製で熱伝導率180W/mKの放熱体13が取り付けられている。発熱体11a及び11bをいずれも完全に覆い、基板12及び放熱体13に接する状態で、熱伝導性硬化性組成物Aを、空気層を含まないよう注意しながら充填塗布して硬化させる方法により、熱伝導性材料層14を設けた。このような放熱構造体について、発熱開始から600秒経過後(定温状態となったとき)の発熱体の中心部の温度TH(℃)および放熱体のうち発熱体に最も近い部分(この部分は発熱体中心部の真上に位置する)の温度TC(℃)を測定することにより、放熱特性を評価した。発熱体11aの中心部温度THaは92.2℃、放熱体のうち発熱体11aに最も近い部分の外側温度TCaは82.5℃、発熱体11bの中心部温度THbは86.1℃、放熱体のうち発熱体11bに最も近い部分の外側温度TCbは81.9℃であった。
基板12を図2の形状に変更した以外は実施例1と同様の構成にて、放熱構造体の放熱性を評価した。発熱体11aの中心部温度THaは104.8℃、放熱体のうち発熱体11aに最も近い部分の外側温度TCaは84.9℃、発熱体11bの中心部温度THbは95.9℃、放熱体のうち発熱体11bに最も近い部分の外側温度TCbは84.2℃であった。
図3を参照して、幅5mm×5mm×厚さ1mmのシリコン製の出力1.5Wの発熱体11a、及び幅5mm×5mm×厚さ1.2mmのシリコン製の出力1.0Wの発熱体11b、幅30mm×20mm×厚さ0.8mmのエポキシ樹脂製で板形状の基板12に固定される。発熱体11に対向して距離Daが1.00mm、距離Dbが0.80mm、の間隔を有する位置に支持されるように、幅100mm×50mm×厚さ1.0mmのSUS405製で熱伝導率27W/mKの放熱体13が、基板12全体を包むように取り付けられている。発熱体11a及び11bをいずれも完全に覆い、基板12及び放熱体13に接する状態で、熱伝導性硬化性組成物Aを空気層を含まないよう注意しながら充填塗布して硬化させる方法により、熱伝導性材料層14を設けた。このような放熱構造体について、発熱開始から600秒経過後(定温状態となったとき)の発熱体の中心部の温度TH(℃)および放熱体のうち発熱体に最も近い部分(この部分は発熱体中心部の真上に位置する)の温度TC(℃)を測定することにより、放熱特性を評価した。発熱体11aの中心部温度THaは82.4℃、放熱体のうち発熱体11aに最も近い部分の外側温度TCaは70.3℃、発熱体11bの中心部温度THbは73.6℃、放熱体のうち発熱体11bに最も近い部分の外側温度TCbは67.0℃であった。
図4を参照して、幅5mm×5mm×厚さ1mmのシリコン製の出力1.5Wの発熱体11a、及び幅5mm×5mm×厚さ1.2mmのシリコン製の出力1.0Wの発熱体11b、幅30mm×20mm×厚さ0.8mmのエポキシ樹脂製で板形状の基板12に固定される。発熱体11に対向して距離Daが1.10mm、距離Dbが0.90mm、の間隔を有する位置に支持されるように、幅100mm×50mm×厚さ1.0mmのSUS405製で熱伝導率27W/mKの放熱体13が、基板12全体を包むように取り付けられている。放熱体の発熱体に対向する面には、グラファイトフィルムAよりなるグラファイト層16と厚み30μmのアクリル系粘着剤よりなる接着層17と厚み30μmのPETフィルムよりなる保護フィルム18とからなる、幅60mm×40mm×厚み100μmの熱拡散フィルム15が貼り付けられている。発熱体11a及び11bをいずれも完全に覆い、基板12及び熱拡散フィルム15に接する状態で、熱伝導性硬化性組成物Aを空気層を含まないよう注意しながら充填塗布して硬化させる方法により、熱伝導性材料層14を設けた。このような放熱構造体について、発熱開始から600秒経過後(定温状態となったとき)の発熱体の中心部の温度TH(℃)および放熱体のうち発熱体に最も近い部分(この部分は発熱体中心部の真上に位置する)の温度TC(℃)を測定することにより、放熱特性を評価した。発熱体11aの中心部温度THaは77.8℃、放熱体のうち発熱体11aに最も近い部分の外側温度TCaは60.9℃、発熱体11bの中心部温度THbは69.7℃、放熱体のうち発熱体11bに最も近い部分の外側温度TCbは59.8℃であった。
熱伝導性材料層15として熱伝導性硬化性組成物Bを塗布後硬化させたこと以外は、実施例1と同様の構成を有する放熱構造体の放熱性を評価した。発熱体11aの中心部温度THaは94.3℃、放熱体のうち発熱体11aに最も近い部分の外側温度TCaは82.7℃、発熱体11bの中心部温度THbは87.0℃、放熱体のうち発熱体11bに最も近い部分の外側温度TCbは82.0℃であった。
熱伝導性材料層15として熱伝導性硬化性組成物Cを塗布後硬化させたこと以外は、実施例1と同様の構成を有する放熱構造体の放熱性を評価した。発熱体11aの中心部温度THaは87.2℃、放熱体のうち発熱体11aに最も近い部分の外側温度TCaは82.7℃、発熱体11bの中心部温度THbは84.0℃、放熱体のうち発熱体11bに最も近い部分の外側温度TCbは82.0℃であった。
放熱体の発熱体に対向する面に、グラファイトフィルムBよりなるグラファイト層16と厚み30μmのアクリル系粘着剤よりなる接着層17と厚み30μmのPETフィルムよりなる保護フィルム18とからなる、幅60mm×40mm×厚み360μmの熱拡散フィルム15を貼り付けたこと以外は、実施例5と同様の構成を有する放熱構造体の放熱性を評価した。発熱体11aの中心部温度THaは76.9℃、放熱体のうち発熱体11aに最も近い部分の外側温度TCaは60.0℃、発熱体11bの中心部温度THbは68.9℃、放熱体のうち発熱体11bに最も近い部分の外側温度TCbは59.0℃であった。
図5を参照して、幅5mm×5mm×厚さ1mmのシリコン製の出力1.5Wの発熱体11a、及び幅5mm×5mm×厚さ1.2mmのシリコン製の出力1.0Wの発熱体11b、幅30mm×20mm×厚さ0.8mmのエポキシ樹脂製で容器状の形状をした基板12に固定される。発熱体11に対向して距離Daが1.00mm、距離Dbが0.80mm、の間隔を有する位置に支持されるように、厚さ1.2mm、幅35mm×25mm×高さ10mm、のアルミニウムA6061製で熱伝導率180W/mKの放熱体13が取り付けられている。発熱体11a及び11bと放熱体13にのみ接する状態で、熱伝導性硬化性組成物Aを、空気層を含まないよう注意しながら充填塗布して硬化させる方法により、熱伝導性材料層14a及び14bを設けた。このような放熱構造体について、発熱開始から600秒経過後(定温状態となったとき)の発熱体の中心部の温度TH(℃)および放熱体のうち発熱体に最も近い部分(この部分は発熱体中心部の真上に位置する)の温度TC(℃)を測定することにより、放熱特性を評価した。発熱体11aの中心部温度THaは96.8℃、放熱体のうち発熱体11aに最も近い部分の外側温度TCaは83.3℃、発熱体11bの中心部温度THbは88.0℃、放熱体のうち発熱体11bに最も近い部分の外側温度TCbは82.5℃であった。
図6を参照して、幅5mm×5mm×厚さ1mmのシリコン製の出力1.5Wの発熱体11a、及び幅5mm×5mm×厚さ1.2mmのシリコン製の出力1.0Wの発熱体11b、幅30mm×20mm×厚さ0.8mmのエポキシ樹脂製で板形状の基板12に固定される。発熱体11に対向して距離Daが1.00mm、距離Dbが0.80mm、の間隔を有する位置に支持されるように、厚さ1.2mm、幅35mm×25mm×高さ10mm、のアルミニウムA6061製で熱伝導率180W/mK放熱体13が取り付けられている。発熱体11a及び11bと放熱体13にのみ接する状態で、熱伝導性硬化性組成物Aを空気層を含まないよう注意しながら充填塗布して硬化させる方法により、熱伝導性材料層14a及び14bを設けた。このような放熱構造体について、発熱開始から600秒経過後(定温状態となったとき)の発熱体の中心部の温度TH(℃)および放熱体のうち発熱体に最も近い部分(この部分は発熱体中心部の真上に位置する)の温度TC(℃)を測定することにより、放熱特性を評価した。発熱体11aの中心部温度THaは125.5℃、放熱体のうち発熱体11aに最も近い部分の外側温度TCaは86.8℃、発熱体11bの中心部温度THbは108.0℃、放熱体のうち発熱体11bに最も近い部分の外側温度TCbは85.9℃であった。
Claims (2)
- 複数の発熱体と、前記複数の発熱体を固定する基板と、前記基板に対して前記発熱体に対向した位置にある放熱体と、前記発熱体、前記基板および前記放熱体に接する熱伝導性材料層とを備え、前記熱伝導性材料層は前記複数の発熱体の表面を被覆しており、前記熱伝導性材料層と前記放熱体との間に、グラファイトフィルムを含む熱拡散フィルムが存在し、熱伝導性材料層と放熱体とが前記熱拡散フィルムを介して接触しており、前記熱伝導性材料層が、炭素-炭素二重結合同士での重合によって硬化する硬化性ビニル系重合体(I)と、熱伝導性充填材(II)とを少なくとも含有する熱伝導性硬化性組成物を、前記発熱体と前記基板と前記放熱体のいずれにも接触するように塗布した後硬化させた、熱伝導率0.9W/mK以上の材料よりなる放熱構造体であって、
前記複数の発熱体と前記放熱体とのなす距離が一定にはなっておらず、両者の距離が最も近い状態と両者が最も遠い状態での距離の差が0.1mm以上あることを特徴とする、放熱構造体。 - 前記熱伝導性硬化性組成物が、架橋性(メタ)アクリロイル基を平均して少なくとも一個有するビニル系重合体(I)、熱伝導性充填材(II)、ビニル系重合体(I)の開始剤(III)、可塑剤(IV)を少なくとも含有し、かつ室温における硬化前の粘度が50Pa・s以上であることを特徴とする、請求項1に記載の放熱構造体。
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