JP5596823B2 - ランセット穿刺デバイス - Google Patents

Description

本発明は穿刺デバイスに関する。より詳細には、本発明は、血液のような体液採取に供されるランセット穿刺デバイスに関する。

糖尿病患者の血糖値の測定には、その患者の血液を採取する必要がある。採取される血液は微少量であってよい。従って、血糖値の測定には、血液を少量採取することができる穿刺デバイスが使用されることになる。かかる穿刺デバイスは、身体の所定箇所を穿刺するための穿刺針が設けられたランセット（例えば特許文献１）およびインジェクターから一般に構成されている。インジェクターは、ランセットを所定箇所に向かって発射させる機能を有している。使用に際しては、ランセットをインジェクターに装填した後、インジェクター内のプランジャーを利用してランセットを発射させ、所定箇所を穿刺する。

糖尿病患者の血液採取に用いる穿刺デバイスには、優れた操作性や高い安全性などが求められる。例えば、穿刺時の操作が簡単であって、穿刺後のランセットの取り扱いに安全策が施されたデバイスであることが望ましい。特に、穿刺後のランセットにおいては、通常、被採血者の血液が穿刺針に付着しており、被採血者以外の人（例えば採血作業を実施する看護師および医師等の医療従事者の身体）が誤って触れてしまった場合、穿刺針により身体を傷付けてしまう可能性がある。そのように傷づけられてしまうと、傷口から被採血者の血液が体内に入り込み、感染症に罹ってしまう危険がある。

米国特許明細書第５３８５５７１号公報

本出願人は、これまでに以下で説明する穿刺デバイスについて発明を為しており、その発明に関する出願を行っている（国際特許公開第２００７／０１８２１５号公報、出願日：２００６年８月８日、発明の名称：「穿刺デバイスならびにそれを構成するランセットアッセンブリおよびインジェクターアッセンブリ」）。図面を参照しながら、この発明に係るランセットアッセンブリおよびインジェクターアッセンブリを簡潔に説明する（以後では、「インジェクターアッセンブリ」を「インジェクター」とも称して説明する）。図５０にランセットアッセンブリ１０００の外観を示すと共に、図５１にインジェクター２０００の外観を示す。図５０に示すように、ランセットアッセンブリ１０００は、ランセット１０１０および保護カバー１０２０から構成されている。図５２および図５３に示すように、ランセット１０１０は、ランセットボディ１０４０、ランセットキャップ１０６０および穿刺針１０５０を有して成る。金属製の穿刺針１０５０は、樹脂製のランセットボディ１０４０およびランセットキャップ１０６０にまたがって存在している。穿刺針１０５０の先端部は、ランセットキャップ１０６０によってカバーされていると共に、ランセットキャップ１０６０とランセットボディ１０４０とが弱化部材１０８０を介して一体に結合している。図５０および図５３に示すように、保護カバー１０２０は、ランセットボディ１０４０の一部を包囲するように設けられている。このようなランセットアッセンブリ１０００は、インジェクター２０００に装填された後でランセットキャップ１０６０が取り外される。これにより、穿刺針１０５０の先端部が露出するので、ランセットを穿刺に供すことができる。

図５１に示すインジェクター２０００は、ランセットアッセンブリ１０００と組み合わせて用いて、穿刺針１０５０の先端が露出した状態のランセットボディを発射させることができるデバイスである。インジェクター２０００は、「ランセットボディの後端部と係合でき、ランセットボディを穿刺方向に発射させるプランジャー２０４０」を有して成る（図５４参照）。インジェクター２０００に装填するに際しては、図５４に示すように、ランセットアッセンブリ１０００をインジェクター２０００の前端開口部２１４０から挿入する。ある程度挿入すると、図５５に示すように、ランセットアッセンブリ１０００の後方部分１１６０が、プランジャー２０４０の先端部２６４０, ２６６０によって把持される。引き続いて挿入を継続すると、プランジャー２０４０が後退して発射エネルギーが蓄積される。つまり、プランジャー２０４０の後退により、プランジャー２０４０に設けられたバネ（図示せず）が圧縮する（従って、その圧縮状態を解放すると、プランジャーが前方へと瞬時に移動し、ランセットが発射されることになる）。プランジャーが後退して発射エネルギーが蓄積された状態のインジェクター２０００を図５６に示す。

ランセットアッセンブリ１０００のインジェクター２０００への装填が完了すると、ランセットキャップ１０６０を取り外して穿刺針１０５０の先端を露出させる。ランセットキャップ１０６０の取外しについて説明すると次のようになる。図５２および図５３に示すように、ランセットボディ１０４０とランセットキャップ１０６０とは、その間に位置する弱化部分１０８０によって一体に結合されている。かかる弱化部材１０８０は、ランセットボディ１０４０とランセットキャップ１０６０とを穿刺針の周囲で相対的に反対方向に回すことによって破壊させることができ（図５６にはＧ方向に回す態様が示されている）、それによって、ランセットキャップ１０６０を取り外すことができる。

穿刺に際しては、例えば指先などの穿刺すべき所定の部位に対してインジェクター２０００の前端開口部２１４０をあてがった後、トリガー部材５１４０のプレス部分５４２０を押す（図５７参照）。かかるプレス部分５４２０の押し込みによって、プランジャー２０４０が前方へと発射され（つまり、圧縮されていたバネが解放され）、穿刺針によって穿刺が行われることになる。

ここで、このような穿刺デバイスでは、上述したように穿刺に際してランセットアッセンブリ１０００のインジェクター２０００への装填操作が必要であり、その分だけ使用者に負担を強いるものとなっている。また、上述の穿刺デバイスは、“ランセットアッセンブリ”と“インジェクター”という少なくとも２つの要素を構成部品としているので、デバイス全体としてはコンパクトなサイズであるとは言い難く（特にインジェクターのサイズは比較的大きくデバイス体積の多くを占めている）、全体としてコンパクトなサイズが望まれている。

本発明は、上記事情に鑑みて為されたものである。つまり、本発明の課題は、操作性に優れたコンパクトな穿刺デバイスを提供することである。また、更なる別の課題は、穿刺後の安全性にも優れた穿刺デバイスを提供することでもある。

上記課題を解決するため、本発明では、ランセット、射出バネ、トリガー部材およびそれらを収容するホルダー（ランセットホルダー）から成るランセット穿刺デバイスであって、
ランセットが、ランセットボディ、ランセットキャップおよび穿刺針を有して成り、穿刺針がランセットボディおよびランセットキャップにまたがってこれらの中に存在しており、
トリガー部材が、ホルダー内部に位置する対のアーム部を有して成り、
射出バネがランセットボディに取り付けられ、穿刺前では射出バネの圧縮状態が維持されるようにランセットボディがトリガー部材のアーム部に係止しており、
ランセットキャップがランセットから取り外される前の状態ではトリガー部材をホルダー内部に押し込むことができない一方、ランセットからランセットキャップが取り外されるとトリガー部材をホルダー内部に向かって押し込むことができ、
トリガー部材の前記押込みに際してはアーム部が撓んでランセットボディの前記係止が解除されることを特徴とする、ランセット穿刺デバイスが提供される。

かかるランセット穿刺デバイスでは、ランセットボディの係止を解除すると、圧縮されていた射出バネが伸びることに起因して、「露出した穿刺針を備えたランセットボディ」が穿刺方向へと発射される。また、本発明のランセット穿刺デバイスは、ホルダーの内壁（特にホルダーの前方側または後方側における内壁面）にスロープ部が設けられていることが好ましく、トリガー部材の押込みに際してアーム部がスロープ部を擦動することによってアーム部が撓む。

本発明に係るランセット穿刺デバイスの特徴の１つは、「ランセット」と「トリガー部材」と「ホルダー（ランセットホルダー）」と「射出バネ」といった４つの部材から実質的に構成され、デバイス構成が比較的シンプルとなっていることである。また、いわゆる“インジェクター”を用いておらず、ランセット穿刺デバイス全体のサイズが比較的小さくなっている。特に、ランセットのランセットボディおよび穿刺針ならびに射出バネの全てがトリガー部材からはみ出すことなくトリガー部材の内側または内部に位置しており、それによっても、コンパクトな穿刺デバイスが効果的に実現されている。ここでいう「ランセットのランセットボディおよび穿刺針ならびに射出バネの全てがトリガー部材からはみ出すことなくトリガー部材の内側または内部に位置している」とは、トリガー部材の内部空間にランセットボディ、穿刺針および射出バネの全てが配置されており、ランセットボディ、穿刺針および射出バネのいずれの一部もトリガー部材から突き出るようになっていない態様を実質的に指している（例えば、後述で参照する図１２、図２９および図４３で示されるような態様である）。これらに鑑みてみると、本発明に係るランセット穿刺デバイスは、射出機構がランセット自体に好適に組み込まれており、それによって、コンパクトなデバイス・サイズが実現されているともいえる。

更に、本発明では、穿刺前において射出バネの圧縮状態が維持されるようにランセットボディがトリガー部材のアーム部に係止しているが、かかる係止の解除をランセットキャップの取外しを通じて行えることも本発明の特徴の１つであるといえる。具体的には、本発明のランセット穿刺デバイスが穿刺操作前の状態（即ち、穿刺針の先端がランセットキャップによりカバーされた状態）にある場合、ランセットキャップの把持部以外の部分が、ホルダーとの相互作用に起因してトリガー部材の押込みを防止する作用を供している。これについて一例を挙げる。ランセットキャップがランセットに取り付けられている状態においては、例えばトリガー部材のアーム部の先端部が「ランセットキャップに設けられたキャップアーム部の先端部」と「ホルダーに設けられたスロープ部」との間に位置付けられており、その結果、“トリガー部材のホルダー内への押込み”が防止されている。つまり、外からの押圧によりトリガー部材をランセットホルダー内部へと押し込もうとしても、トリガー部材のアーム部の先端部がランセットキャップのキャップアーム部の先端部とスロープ部との双方に当接するので（つまり、トリガー部材のアーム部とランセットキャップのキャップアーム部とがスロープ部で競り合った状態にあるので）、トリガー部材をランセットホルダー内部へと押し込むことができないようになっている。このことは、ランセットキャップが取り付けられた状態では、ランセットボディの係止解除ができないこと、即ち、穿刺針が発射されることがないことを意味している。その一方で、ランセットキャップを取り外すと、ホルダー内においてトリガー部材のアーム部の移動スペースが生まれ、その結果、外側からの押圧に対してトリガー部材をホルダー内部へと押し込むことができるようになる。このことは、ランセットキャップが取り外された状態では、ランセットボディの係止解除が可能となること、即ち、穿刺針の発射が可能となることを意味している。

本明細書において、トリガー部材のアーム部に関して用いる「撓む」という用語は、アーム部がホルダー内の空間において変位するあらゆる種類の態様を実質的に意味している。従って、例えば一例として「撓む」とは、アーム部がランセットホルダー内において外側に変位する態様、特に、対を成すアーム部の先端部の自由端が相互に離れる方向に移動するようにアーム部が全体として外側に開く態様を意味している。

ある好適な態様では、“トリガー部材の後方側の内壁面（後端の内側壁面）に設けられたバネ取付け部”に対して射出バネが取り付けられており、そのバネ取付け部は、自由端と固定端とを有する長尺部材が湾曲して成る形態を有している。

上記のような特徴を有するランセット穿刺デバイスは、種々の態様で実現することができる。

（Ａタイプのランセット穿刺デバイス）
Ａタイプのランセット穿刺デバイスは、トリガー部材の対のアーム部の前方側が自由端を成す一方、その後方側が固定端を成しており、後方からトリガー部材に外力を加えることに起因してアーム部を撓ます特徴を有したデバイスである。

具体的には、Ａタイプのランセット穿刺デバイスは、
トリガー部材の後端部がホルダーの後端開口部（特に後方開口端）から外向きに突出すると共に、該後端部から前方に向かって延在するトリガー部材の対の外側アーム部がホルダーの側壁外面上に位置するように、トリガー部材が全体としてホルダー内に配置されており、
ランセットキャップの前方部分がホルダーの前端開口部から外向きに突出すると共に、ランセットがホルダーに対して後方に移動しないように、該前方部分の側方に設けられた対部分がホルダーの前端部に隣接し、あるいは該前方部分の他の部分がホルダーの前端開口部に隣接しており、
ランセットのランセットボディおよび穿刺針ならびに射出バネの全てがトリガー部材の対のアーム部からはみ出すことなく該対のアーム部の内側・内部に位置していると共に、対のアーム部の各々は、その前方側が自由端を成す一方、その後方側が固定端を成しており、穿刺前においては、ランセットボディの各々の側方に係合し、それによって、射出バネが圧縮された状態を維持しており、また
穿刺操作時のトリガー部材の押込みに際してトリガー部材をホルダーに対して前方へと移動させると、対のアーム部が外向きに広がり、それによって、各アーム部のランセットボディの各側方に対する係合が解除されることを特徴としている。

Ａタイプのランセット穿刺デバイスでは、ランセットキャップがランセットから取り外されると、トリガー部材を前方に押し込むことができる。具体的には、トリガー部材の後端部または対の外側アーム部に対して外力が加えられることに起因して、トリガー部材がホルダーに対して前方へと移動するようにトリガー部材をホルダー内部へと押し込むことができる。

Ａタイプのランセット穿刺デバイスのある好適な態様では、トリガー部材がホルダーに対して前方に移動する際に、ホルダーの前方側内壁に設けられたスロープ部上を各アーム部（特にその自由端）が滑動することになり、その結果、各アーム部が自動的に外向きに広がる。

Ａタイプのランセット穿刺デバイスの別のある好適な態様では、ランセットキャップが、その前方部分の対部分から後方に向かって延在する対のキャップアーム部を有して成る。かかる態様では、ランセットキャップがランセットに取り付けられている状態（即ち、ランセットキャップがランセットから取り外される前の状態）において、ランセットキャップの各キャップアーム部の先端部とホルダーのスロープ部との間にトリガー部材の各アーム部の先端部が位置していることが好ましい。このような位置関係が構築されていると、ランセットキャップがランセットに取り付けられている状態において、外からの押圧によりトリガー部材をホルダー内部へと押し込もうとしても、トリガー部材の各アーム部の先端部がランセットキャップの各キャップアーム部の先端部とスロープ部との双方に当接し、それによって、トリガー部材をホルダー内部へと押し込むことができないようになっている。

Ａタイプのランセット穿刺デバイスの更に別のある好適な態様では、トリガー部材のアーム部の外側に再使用防止ウイングが斜め後方に延在するように設けられている一方、ホルダー内壁には再使用防止突起が設けられており、
穿刺操作時のトリガー部材の押込みに際しては、アーム部の再使用防止ウイングがホルダーの再使用防止突起上を擦動してそれを超えるまで前方へと移動することになり、
穿刺後においては、再使用防止ウイングと再使用防止突起とが係止可能な状態となり、それによって、トリガー部材の後方移動が制限され、穿刺後のトリガー部材を穿刺前の状態へと戻すことができないようになっている。

（Ｂタイプのランセット穿刺デバイス）
Ｂタイプのランセット穿刺デバイスは、トリガー部材の対のアーム部の前方側が固定端を成す一方、その後方側が自由端を成しており、前方からトリガー部材に外力を加えることに起因してアーム部を撓ます特徴を有したデバイスである。

具体的には、Ｂタイプのランセット穿刺デバイスは、
トリガー部材の前端の穿刺開口部のみがホルダーの前端開口部（特に前方開口端）から外向きに突出するように、トリガー部材が全体としてホルダー内に配置されており、
ランセットキャップの前方部分がホルダーの前端開口部から外向きに突出すると共に、ランセットがホルダーに対して後方に移動しないように、該前方部分の側方に設けられた対部分がホルダーの前端開口部に隣接しており、
トリガー部材の対のアーム部の各々は、その前方側が固定端を成す一方、その後方側が自由端を成しており、穿刺前においては、ランセットボディの各々の側方に係合し、それによって、射出バネが圧縮された状態を維持しており、また
穿刺操作時のトリガー部材の押込みに際してトリガー部材をホルダーに対して後方へと移動させると、対の各アーム部が外向きに広がり、それによって、各アーム部のランセットボディの各側方に対する係合が解除されることを特徴としている。

Ｂタイプのランセット穿刺デバイスでは、ランセットキャップがランセットから取り外されると、トリガー部材を後方に押し込むことができる。具体的には、トリガー部材の前端の穿刺開口部に対して外力が加えられることに起因して、トリガー部材がホルダーに対して後方へと移動するようにトリガー部材をホルダー内部へと押し込むことができる。

Ｂタイプのランセット穿刺デバイスのある好適な態様では、トリガー部材がホルダーに対して後方に移動する際に、ホルダーの後方側内壁に設けられたスロープ部上を各アーム部（特にその自由端）が滑動することになり、その結果、各アーム部が自動的に外向きに広がる。

Ｂタイプのランセット穿刺デバイスの別のある好適な態様では、ランセットボディの側方向きにおいてトリガー部材の各アーム部に力を作用させる部材を各アーム部は有して成る。かかる「ランセットボディの側方向きにおいてトリガー部材の各アーム部に力を作用させる部材」は、ホルダーの内壁を押すか、あるいは各アーム部が外向きに広がり始めるとホルダーの内壁を押すプッシュバック部であることが好ましい。例えば、プッシュバック部は、各アーム部から斜め外向きに突出するアームの形態であってよい。

Ｂタイプのランセット穿刺デバイスの更に別のある好適な態様では、トリガー部材の後方側壁面の外側に再使用防止ウイングが斜め前方に延在するように設けられている一方、ホルダー内壁には再使用防止突起が設けられており、
穿刺操作時のトリガー部材の押込みに際しては、トリガー部材の再使用防止ウイングがホルダーの再使用防止突起上を擦動してそれを超えるまで後方へと移動することになり、
穿刺後においては、再使用防止ウイングと再使用防止突起とが係止可能な状態となり、それによって、トリガー部材の前方移動が制限され、穿刺後のトリガー部材を穿刺前の状態へと戻すことができないようになっている。

（Ｃタイプのランセット穿刺デバイス）
Ｃタイプのランセット穿刺デバイスは、トリガー部材の対のアーム部の前方側が固定端を成す一方、その後方側が自由端を成しており、後方からトリガー部材に外力を加えることに起因してアーム部を撓ます特徴を有したデバイスである。

具体的には、Ｃタイプのランセット穿刺デバイスは、
トリガー部材の後端の押圧部のみがホルダーの後端開口部（特に後方開口端）から外向きに突出するように、トリガー部材が全体としてホルダー内に配置されており、
ランセットキャップの前方部分がホルダーの前端開口部から外向きに突出すると共に、ランセットがホルダーに対して後方に移動しないように、該前方部分の側方に設けられた対部分がホルダーの前端部に隣接し、あるいは該前方部分の他の部分がホルダーの前端開口部に隣接しており、
トリガー部材の対のアーム部の各々は、その前方側が固定端を成す一方、その後方側が自由端を成しており、穿刺前においては、ランセットボディの各々の側方に係合し、それによって、射出バネが圧縮された状態を維持しており、また
穿刺操作時のトリガー部材の押込みに際してトリガー部材をホルダーに対して前方へと移動させると、各アーム部が外向きに広がり、それによって、各アーム部のランセットボディの各側方に対する係合が解除されることを特徴としている。

Ｃタイプのランセット穿刺デバイスでは、ランセットキャップがランセットから取り外されると、トリガー部材の前方に押し込むことができる。具体的には、トリガー部材の後端の押圧部に対して外力が加えられることに起因して、トリガー部材がホルダーに対して前方へと移動するようにトリガー部材をホルダー内部へと押し込むことができる。

Ｃタイプのランセット穿刺デバイスのある好適な態様では、トリガー部材がホルダーに対して前方に移動する際に、ホルダーの前方側内壁に設けられたスロープ部上を各アーム部（特にその自由端）が滑動することになり、その結果、各アーム部が自動的に外向きに広がる。

Ｃタイプのランセット穿刺デバイスの別のある好適な態様では、トリガー部材が、その本体の側面に、可撓性部材（または可撓性部分）を有して成り、ランセットキャップがランセットに取り付けられている状態（即ち、ランセットキャップがランセットから取り外される前の状態）においては、ランセットキャップの本体部とホルダーの壁部との間にトリガー部材の可撓性部材が位置している。特に、トリガー部材の可撓性部材は、ホルダーの壁部に設けられた凹部分に収納されるように位置付けられていることが好ましい。このような状態においては、外からの押圧によりトリガー部材をホルダー内部へと押し込もうとしても、トリガー部材の可撓性部材がランセットキャップの本体部とホルダーの壁部との双方に当接し、それによって、トリガー部材をホルダー内部へと押し込むことができない一方、ランセットキャップがランセットから取り外されると、トリガー部材への押圧によって可撓性部材が撓むことができ、トリガー部材をホルダー内部へと押し込むことができる。

Ｃタイプのランセット穿刺デバイスの更に別のある好適な態様では、トリガー部材の前方側壁面の外側に再使用防止ウイングが斜め後方に延在するように設けられている一方、ホルダー内壁には再使用防止突起が設けられており、
穿刺操作時のトリガー部材の押込みに際しては、トリガー部材の再使用防止ウイングがホルダーの再使用防止突起上を擦動してそれを超えるまで前方へと移動することになり、
穿刺後においては、再使用防止ウイングと再使用防止突起とが係止可能な状態となり、それによって、トリガー部材の後方移動が制限され、穿刺後のトリガー部材を穿刺前の状態へと戻すことができないようになっている。

本発明では、好適な射出バネ取付け部を備えたランセット穿刺デバイスも提供される。かかるランセット穿刺デバイスは、
ランセット、射出バネ、トリガー部材およびそれらを収容するホルダーから成るランセット穿刺デバイスであって、
トリガー部材の後方側内壁に設けられたバネ取付け部に対して射出バネが取り付けられており、
バネ取付け部が、自由端と固定端とを有する長尺部材（特に“全体が矩形状の略板状部材”）が湾曲して成る形態を有していることを特徴とする。例えば、バネ取付け部においては、自由端と固定端とを有する長尺部材が釣針形態やＵ字状形態などのフック形態を有している。このような射出バネ取付け部は、ランセット穿刺デバイスの組立てを容易にさせ得る（特に、かかる射出バネ取付け部が設けられていることによって、射出バネをトリガー部材に取り付ける際に容易な取り付けが実現される）。

更には、本発明においては、上述および後述の本発明の穿刺デバイスを構成する「ホルダー」、「ランセット」および「トリガー部材」も提供されると共に、「ホルダー、ランセット、トリガー部材および射出バネを有して成る、本発明の穿刺デバイスに組み立てるための穿刺デバイスキット」も提供される。

本発明のランセット穿刺デバイスは、上述したように、「ランセット」と「トリガー部材」と「ホルダー」と「射出バネ」といった４つの要素から実質的に構成されているので、デバイス構成が非常にシンプルとなっている。具体的には、本発明のランセット穿刺デバイスは、ホルダー内に“ランセット”、“トリガー部材”およびこれらに接続した“射出バネ”が収容されることに起因して比較的簡単な構成となっている。また、射出バネを除いて他の要素は樹脂を射出成形することによって簡単に製造できる（尚、射出バネは、通常金属製であるものの、樹脂製であってもよく、例えばつる巻きバネ、波方形状バネ等の形態の樹脂製バネであってもよい）。

ランセット穿刺デバイスの全体サイズは、主としてホルダーのサイズにより決まるが、それに収容される要素を可及的に小さいサイズとすることによってホルダー自体をコンパクトにでき、その結果、本発明の穿刺デバイスを全体としてコンパクトにできる。このようなコンパクトなサイズであるために、本発明のランセット穿刺デバイスは運搬効率・保管スペースの点で優れている。また、指で摘める程度のサイズにできることから実際の使用時の操作性が向上している。

本発明のランセット穿刺デバイスは、ランセットキャップが取り付けられた使用前の状態では、ランセットボディのトリガー部材との係止を解除できず、ランセットを発射できないので、意図しない偶発的なランセットの発射が防止されている。

更に、本発明のランセット穿刺デバイスは、一旦穿刺に供した穿刺針を再び使用できない構造となっているので、衛生、安全性等の点で優れている。即ち、ランセット穿刺デバイスの使用者は、デバイスを“使い捨てタイプ（ディスポーザブル・タイプ）”として用いるしかなく、使用済みの本発明のランセット穿刺デバイスが誤って他の被採血者の採血に使用されることがない。

図１（ａ）および（ｂ）は、Ａタイプのランセット穿刺デバイスの外観図である。 図２は、Ａタイプのランセット穿刺デバイスの外観図である。 図３は、Ａタイプのランセット穿刺デバイスの外観図および分解斜視図である。 図４（ａ）および（ｂ）は、Ａタイプのランセット穿刺デバイスの内部構造を示した斜視図および上面図である。 図５(ａ）は、Ａタイプにおいて、ランセット（特にランセットボディの係止部）を表しており、図５（ｂ）は、Ａタイプにおいて、トリガー部材（特にアーム部の被係止部）を表している。 図６（ａ）および（ｂ）は、Ａタイプのランセット穿刺デバイスに用いられるランセットホルダーの外観図である。 図７は、使用者が行う穿刺操作の態様を模式的に表した図である。 図８（ａ）および（ｂ）は、Ａタイプのランセット穿刺デバイスに用いられるランセットの外観図である。 図９は、Ａタイプのランセット穿刺デバイスの断面図である。 図１０（ａ）および（ｂ）は、Ａタイプのランセット穿刺デバイスに用いられるトリガー部材の外観図である。 図１１は、Ａタイプのランセット穿刺デバイスに用いられる射出バネの外観図である。 図１２（ａ）および（ｂ）は、使用前のＡタイプのランセット穿刺デバイスの内部構造を示した斜視図および上面図である。 図１３（ａ）および（ｂ）は、キャップが取り外されたＡタイプのランセット穿刺デバイスの内部構造を示した斜視図および上面図である。 図１４（ａ）および（ｂ）は、Ａタイプにおいて、トリガー部材のアーム部に対するランセットボディの係止が解除された時点の態様を表した斜視図および上面図である。 図１５（ａ）〜（ｄ）は、Ａタイプにおいて、トリガー部材の押し込み時のアーム部の経時変化を模式的に表した図である。 図１６（ａ）および（ｂ）は、Ａタイプにおいて、「露出した穿刺針を備えたランセットボディ」が穿刺方向へと発射された態様を表した斜視図および上面図である。 図１７（ａ）および（ｂ）は、Ａタイプのランセット穿刺デバイスの穿刺時の態様を表した斜視図および上面図である。 図１８（ａ）〜（ｃ）は、Ａタイプにおいて、穿刺深さ調整機構を説明するための模式図である。 図１９は、Ａタイプにおいて、再使用防止機構を説明するための上面図である。 図２０（ａ）〜（ｆ）は、使用時のＡタイプのランセット穿刺デバイスの経時変化を模式的に表した上面図である。 図２１（ａ）〜（ｆ）は、使用時のＡタイプのランセット穿刺デバイスの経時変化を模式的に表した側断面図である。 図２２（ａ）〜（ｃ）は、本発明のランセット穿刺デバイスの組立て時におけるバネ取付け部の経時態様を示した模式図である。 図２３（ａ）および（ｂ）は、Ｂタイプのランセット穿刺デバイスの外観図である。 図２４は、Ｂタイプのランセット穿刺デバイスの外観図である。 図２５は、Ｂタイプのランセット穿刺デバイスの外観図および分解斜視図である。 図２６（ａ）は、Ｂタイプの穿刺デバイスを構成するホルダーを示した斜視図である。 図２６（ｂ）は、図２６（ａ）に示すホルダーの上側側半分を切除した状態を示した斜視図である。 図２６（ｃ）は、図２６（ａ）に示すホルダーの上側側半分を切除した状態を示した上面図である。 図２７（ａ）は、Ｂタイプのランセット穿刺デバイスを構成するトリガー部材を示した斜視図である。 図２７（ｂ）は、Ｂタイプのランセット穿刺デバイスを構成するトリガー部材を示した上面図である。 図２８（ａ）は、Ｂタイプのランセット穿刺デバイスを構成するランセットを示した斜視図である。 図２８（ｂ）は、Ｂタイプのランセット穿刺デバイスを構成するランセットを示した上面図である。 図２９は、使用前のＢタイプのランセット穿刺デバイスの内部構造を示した斜視図である。 図３０は、Ｂタイプにおいて、ランセットに射出バネを取り付ける様子を、これらの上面図を用いて模式的に示したものである。 図３１は、Ｂタイプにおいて、ランセットを取り付けた射出バネをトリガー部材に取り付ける様子を、これらの上面図を用いて模式的に示したものである。 図３２は、Ｂタイプにおいて、射出バネに取り付けたランセットおよびトリガー部材をホルダー内に組み込むことによって本発明の穿刺デバイスを形成する様子を、これらの上面図を用いて模式的に示したものである。 図３３は、図３２に示すようにして形成された本発明の穿刺デバイスを斜視図にて模式的に示す。 図３４（ａ）は、Ｂタイプのランセット穿刺デバイスを用いて対象部位を穿刺する過程を順に示す一連の図３４において、図３３に示す状態の組み立てられた状態の穿刺デバイスの上面図を、ホルダーおよびトリガー部材の上側半分を切除した状態でその内部の状態が分かるように模式的に示す。 図３４（ｂ）は、Ｂタイプのランセット穿刺デバイスを用いて対象部位を穿刺する過程を順に示す一連の図３４において、図３４（ａ）の状態の後、ランセットからランセットキャップを取り外した状態（但し、トリガー部材の前端部については上側半分を切除した状態）を模式的に示す。 図３４（ｃ）は、Ｂタイプのランセット穿刺デバイスを用いて対象部位を穿刺する過程を順に示す一連の図３４において、図３４（ｂ）の状態の後、トリガー部材の前端開口部に穿刺すべき対象部位をあてがっている様子（尚、デバイス自体は図３４（ｂ）の状態と同じである）を模式的に示す。 図３４（ｄ）は、Ｂタイプのランセット穿刺デバイスを用いて対象部位を穿刺する過程を順に示す一連の図３４において、図３４（ｃ）の状態の後、トリガー部材の前端開口部に穿刺すべき対象部位に穿刺デバイスを押し付けることによって、トリガー部材をホルダーに対して後退させ、その結果、トリガー部材のアーム部が広がり、アーム部のランセットボディに対する係合が解除した状態を模式的に示す。 図３４（ｅ）は、Ｂタイプのランセット穿刺デバイスを用いて対象部位を穿刺する過程を順に示す一連の図３４において、図３４（ｄ）の状態の後、アーム部のランセットボディに対する係合が解除した後、射出バネが瞬間的に伸張した結果、穿刺針の先端部が突出したランセットボディが前進してトリガー部材のストッパーに衝突し、穿刺針の先端部の一部分（最先端部含む部分）がトリガー部材の前端開口部から突出して対象部位を穿刺している状態を模式的に示す。 図３４（ｆ）は、Ｂタイプのランセット穿刺デバイスを用いて対象部位を穿刺する過程を順に示す一連の図３４において、図３４（ｅ）の状態の後、伸張した射出バネが元の長さに戻った結果、穿刺針の先端部がトリガー部材の前端部内に引っ込んだ状態を模式的に示す。 図３５は、Ｂタイプのランセット穿刺デバイスを用いて対象部位を穿刺する過程を順に示す一連の図３４に対応し、図３５（ａ）は、図３４（ａ）に対応する斜視図を模式的に示す。 図３５は、Ｂタイプのランセット穿刺デバイスを用いて対象部位を穿刺する過程を順に示す一連の図３４に対応し、図３５（ｂ）は、図３４（ｂ）に対応する斜視図を模式的に示す。 図３５は、Ｂタイプのランセット穿刺デバイスを用いて対象部位を穿刺する過程を順に示す一連の図３４に対応し、図３５（ｃ）は、図３４（ｃ）に対応する斜視図を模式的に示す。 図３５は、Ｂタイプのランセット穿刺デバイスを用いて対象部位を穿刺する過程を順に示す一連の図３４に対応し、図３５（ｄ）は、図３４（ｄ）に対応する斜視図を模式的に示す。 図３５は、Ｂタイプのランセット穿刺デバイスを用いて対象部位を穿刺する過程を順に示す一連の図３４に対応し、図３５（ｅ）は、図３４（ｅ）に対応する斜視図を模式的に示す。 図３５は、Ｂタイプのランセット穿刺デバイスを用いて対象部位を穿刺する過程を順に示す一連の図３４に対応し、図３５（ｆ）は、図３４（ｆ）に対応する斜視図を模式的に示す。 図３６（ａ）および（ｂ）は、Ｃタイプのランセット穿刺デバイスの外観図である。 図３７は、Ｃタイプのランセット穿刺デバイスの外観図である。 図３８は、Ｃタイプのランセット穿刺デバイスの外観図および分解斜視図である。 図３９（ａ）は、Ｃタイプの穿刺デバイスを構成するホルダーの斜視図である。図３９（ｂ）および３９（ｃ）は、図３９（ａ）に示すホルダーの上側側半分を切除した状態を示した斜視図および上面図である。 図４０（ａ）は、Ｃタイプのランセット穿刺デバイスを構成するトリガー部材を示した斜視図である。図４０（ｂ）は、図４０（ａ）に示すトリガー部材の裏側を示した斜視図である。 図４１（ａ）〜（ｃ）は、Ｃタイプのランセット穿刺デバイスを構成するトリガー部材を示した上面図、側面図および側断面図である。 図４２（ａ）〜（ｃ）は、Ｃタイプのランセット穿刺デバイスを構成するランセットを示した斜視図、上面図および断面図である。 図４３は、使用前のＣタイプのランセット穿刺デバイスの内部構造を示した斜視図である。 図４４は、穿刺デバイス組立て時における射出バネおよびバネ取付け部の態様をデバイス全体の組立て態様と併せて示した模式図である。 図４５は、トリガー部材の押し込み防止機構を説明するための模式図である。 図４６（ａ）〜（ｅ）は、使用時のＣタイプのランセット穿刺デバイスの経時変化を模式的に表した斜視図である。 図４７（ａ）〜（ｅ）は、使用時のＣタイプのランセット穿刺デバイスの経時変化を模式的に表した上面図である。 図４８は、本発明に係るランセット穿刺デバイスの外観の変更例を模式的に示した上面図、側面図、下面図および端面図である。 図４９は、図４８に示すランセット穿刺デバイスの斜視図である。 図５０は、ランセットアッセンブリの外観を表した斜視図である。 図５１は、インジェクターの外観を表した斜視図である。 図５２は、ランセットの外観を表した斜視図である。 図５３は、ランセットの内部が分かるように、図５０のランセットアッセンブリを半分割した場合の斜視図である。 図５４は、ランセットアッセンブリがインジェクターに装填される前の態様を示した斜視図である。 図５５は、ランセットアッセンブリの装填によりランセットがプランジャー先端部に把持された態様を示した斜視図である。 図５６は、ランセットアッセンブリの装填が完了し、プランジャーが後退できない状態となった態様を示した斜視図である。 図５７は、ランセットキャップが外されて穿刺可能状態となった態様を示した斜視図である。

（Ａタイプのランセット穿刺デバイス）
１００ ランセット
１３０ ランセットボディ
１３１ ランセットボディに設けられた係止部（係合部）
１３３ ランセットの後端
１３４ ランセットボディに設けられた穿刺深さ調整ウイングａ
１５０ 穿刺針
１５０ａ 穿刺針の先端
１７０ ランセットキャップ
１７１ ランセットキャップのキャップアーム部
１７１ａ キャップアーム部の先端部
１７５ ランセットキャップの前方部分
１７５ａ 対部分
１７５ｂ 対部分の間のキャップ領域（中央領域）
２００ ホルダー（ランセットホルダー）
２０３ ホルダーの開口端（穿刺開口部）
２２０ ホルダーの内壁面
２２２ トリガー部材のアーム部の先端部の周囲に生じた空間
２３０ 鍔部
２５０ ホルダー内壁面に設けられたスロープ部
２５０ａ スロープ面
２６０ ホルダー内壁面に設けられた突起ｄ
２８０ 突出部
２８０ａ 突出部の前方側面（スロープ面）
２８０ｂ 突出部の後方側面（穿刺深さ調整面）
３００ 射出バネ
４００ トリガー部材
４２０ トリガー部材のアーム部（トリガー部材の内側アーム部）
４２０ａ アーム部の先端部
４２０ａ１ アーム部の先端部の面
４２１ トリガー部材のアーム部に設けられた被係止部（係合部）
４２３ トリガー部材に設けられた再使用防止ウイングｃ
４４０ トリガー部材の第２のアーム部（トリガー部材の外側アーム部）
４５０ トリガー部材の嵌合部（射出バネの取付け部）
４５０ａ バネ取付け部の自由端側に設けられた突起
４５０ａ１ バネ取付け部の自由端側に設けられた第１突起
４５０ａ２ バネ取付け部の固定端側に設けられた第２突起
４５５ トリガー部材の後端側の内壁面
４６０ トリガー部材に設けられた抜け防止ウイング
５００ Ａタイプのランセット穿刺デバイス

（Ｂタイプのランセット穿刺デバイス）
１００’ ランセット
１０８’ 弱化部分
１３０’ ランセットボディ
１３１’ ランセットボディに設けられた係止部（係合部）
１３３’ 後方部分
１３６’ 前端面
１３８’ 突起
１５０’ 穿刺針
１５０ａ’ 穿刺針の先端部
１７０’ ランセットキャップ
１７２’ ランセットキャップの後方部分
１７５’ ランセットキャップの前方部分
１７５ａ’ 対部分
１７５ｂ’ 対部分の間のキャップ領域（中央領域）
２００’ ホルダー（ランセットホルダー）
２０２’ 前端
２０３’ 開口部
２１０’ 後方端部
２１２’ 空間部
２１４’ 壁部
２１６’ 開口部
２１７’ 前方端面（傾斜面）
２１８’ 突起（凸部）
２１９’ 後方端面
２５０’ スロープ部
２５０ａ’ スロープ部のスロープ面
３００’ 射出バネ
３０２’ 前端
３０４’ 後端
４００’ トリガー部材
４０２’ 前端部
４０４’ 後方部分
４０６’ 空間部
４０８’ 前端開口部
４１６’ プッシュバック部
４２０’ アーム部
４２１’ トリガー部材のアーム部に設けられた被係止部（係合部）
４２２’ 滑動部
４２４’ 再使用防止ウイング
４２６’ 抜け出し防止ウイング
４３２’ 壁面
４５０’ フック形態のバネ係合部
４５０ａ’ 突起
４５０ａ１’ バネ取付け部の自由端側に設けられた第１突起
４５０ａ２’ バネ取付け部の固定端側に設けられた第２突起
４８０’ 最後端部
４８２’ ステップ部
５００’ Ｂタイプのランセット穿刺デバイス
６００’ 穿刺すべき対象部位

（Ｃタイプのランセット穿刺デバイス）
１００” ランセット
１０８” 弱化部分
１３０” ランセットボディ
１３３” ランセットボディの後方部分
１３６” ランセットボディの前端面
１３８” 突起
１５０” 穿刺針
１５０ａ” 穿刺針の先端部
１７０” ランセットキャップ
１７２” ランセットキャップの後方部分（即ち、キャップ本体部）
１７２ａ” キャップ本体部の側壁面
１７５” ランセットキャップの前方部分
１７５ａ” 対部分
１７５ｂ” 対部分の間のキャップ領域（中央領域）
１３１” ランセットボディに設けられた係止部（係合部）
１３３” ランセットの後端
２００” ホルダー（ランセットホルダー）
２０３” ホルダーの前端開口部
２１７” 傾斜面
２１８” 突起（凸部）
２１９” 突起の後方端面
２５０” ホルダーのスロープ部
２５０ａ” スロープ部のスロープ面
２７０” ホルダーの後端開口部
２９０” ホルダー壁部
２９５” ホルダー壁部に設けられた凹部
２９５ａ” 凹部を成す壁面
２９５ｂ” 凹部の前方スロープ面
３００” 射出バネ
４００” トリガー部材
４０６” トリガー部材の空間部
４２０” トリガー部材のアーム部
４２１” トリガー部材のアーム部に設けられた被係止部（係合部）
４２２” 滑動部
４２４” 再使用防止ウイング
４２６” 抜け出し防止ウイング
４３０” トリガー部材の本体側面
４５０” トリガー部材の嵌合部（フック形態のバネ係合部）
４５０ａ” 突起
４５０ａ１” バネ取付け部の自由端側に設けられた第１突起
４５０ａ２” バネ取付け部の固定端側に設けられた第２突起
４５１” トリガー部材の後端
４７０” トリガー部材の後端の押圧部
４９０” トリガー部材の可撓部材・可撓性部分（ベロ部）
５００” Ｃタイプのランセット穿刺デバイス

（関連技術）
１０００ ランセットアッセンブリ
１０１０ ランセット
１０２０ 保護カバー
１０４０ ランセットボディ
１０５０ 穿刺針
１０６０ ランセットキャップ
１０８０ 弱化部材
１１４０ ランセットボディの前方部分
１１６０ ランセットボディの後方部分
２０００ インジェクター
２０４０ プランジャー
２１４０ インジェクターの前端開口部
２６４０,２６６０ プランジャーの先端部
５１４０ トリガー部材
５２４０ プランジャーに設けられた突起
５２６０ トリガー部材の後方部分端部
５４２０ トリガー部材のプレス部分

添付図面を参照して本発明のランセット穿刺デバイスについて詳細に説明する。尚、これらの説明に付随して、ランセット穿刺デバイスを構成するホルダー、トリガー部材、ランセットおよび射出バネならびにそれらから構成される穿刺デバイス用キットも併せて説明する。上述したことであるが、以下の特徴を有するランセット穿刺デバイスをそれぞれ「Ａタイプ」、「Ｂタイプ」および「Ｃタイプ」と称して説明する。

・Ａタイプ：トリガー部材の対のアーム部の前方側が自由端を成す一方、その後方側が固定端を成しており、後方からトリガー部材に外力を加えることに起因してアーム部を撓ます特徴を有したデバイス。

・Ｂタイプ：トリガー部材の対のアーム部の前方側が固定端を成す一方、その後方側が自由端を成しており、前方からトリガー部材に外力を加えることに起因してアーム部を撓ます特徴を有したデバイス。

・Ｃタイプ：トリガー部材の対のアーム部の前方側が固定端を成す一方、その後方側が自由端を成しており、後方からトリガー部材に外力を加えることに起因してアーム部を撓ます特徴を有したデバイス。

まず、「Ａタイプ」のランセット穿刺デバイスについて説明し、その後、「Ｂタイプ」および「Ｃタイプ」のランセット穿刺デバイスを順に説明する。特に説明を付していない事項または各タイプに固有でない事項については、「Ａタイプ」、「Ｂタイプ」および「Ｃタイプ」の全てに当てはまることに留意されたい。

本明細書で用いる“方向”については次の通り規定する。穿刺に際して穿刺針が発射される方向が「前」方向であり、その反対の方向が「後」方向である。また、ランセット穿刺デバイスから離れる方向が「外」方向であり、その反対の方向（即ち、デバイス内部へと向かう方向）が「内」方向ないしは「内部」方向である。

［Ａタイプのランセット穿刺デバイス］
《ランセット穿刺機構の基本的構成》
（基本構成）
図１〜図３は、Ａタイプのランセット穿刺デバイス５００を示している。図１および図２はＡタイプのランセット穿刺デバイス５００の外観図を示しており、図３はＡタイプのランセット穿刺デバイス５００の分解図・展開図も併せて示している。図３に示すように、本発明に係るランセット穿刺デバイス５００は、「ランセット１００」、「ホルダー（特にランセットホルダー）２００」、「射出バネ３００」および「トリガー部材４００」から主に構成されている。

図４に示すように、ランセット穿刺デバイス５００は、ランセットホルダー２００内にランセット１００、射出バネ３００およびトリガー部材４００が収容された構造を有している。具体的には、図４（ａ）に示すように、ランセット１００の後端とトリガー部材４００の後端との間において射出バネ３００が挟み込まれるように、射出バネ３００がランセットホルダー２００内に収容されている。更に具体的には、図４（ｂ）に示すように、ランセットホルダー２００内においては、射出バネ３００の一方の端部が、ランセット１００の後端１３３に取り付けられていると共に、射出バネ３００の他方の端部が、「トリガー部材４００の一対のアーム部４２０の間の嵌合部４５０」に取り付けられている。図３と図４とを比較すると分かるように、ランセットホルダー２００内の射出バネ３００は、「ランセット１００」と「一対のアーム部４２０の間の嵌合部４５０」との間で圧縮された状態となっている。特に本発明のランセット穿刺デバイス５００では、ランセットボディ１３０に取り付けられた射出バネ３００が圧縮された状態となるように、トリガー部材４００のアーム部４２０に対してランセットボディ１３０が係止している（例えば図４（ｂ）参照）。尚、かかる係止に関与する「ランセットボディ１３０の係止部１３１（即ち、アーム部との係合部）」および「トリガー部材４００のアーム部４２０の被係止部４２１（即ち、ランセットボディとの係合部）」については、図５（ａ）および図５（ｂ）も参照されたい。

図１、図３および図４に示す態様から分かるように、特にＡタイプのランセット穿刺デバイス５００においては、トリガー部材の後端部４７０がホルダー２００の後端開口部２７０（特に図示するような後方開口端）から外向きに突出している。また、Ａタイプのランセット穿刺デバイス５００では、トリガー部材の後端部４７０から前方に向かって延在するトリガー部材の対の外側アーム部４４０がホルダー２００の側壁外面上に位置している。更には、図１および図３に示す態様から分かるように、ランセットのランセットキャップ１７０についていえば、その前方部分１７５がホルダーの前端開口部２０３から外向きに突出している。かかるランセットキャップ態様では、ランセットキャップの前方部分１７５の側方に設けられた対部分１７５ａがホルダーの前端部２０４に隣接しており、および／または、ランセットキャップの前方部分１７５の他の部分（特に対部分１７５ａの間のキャップ中央領域１７５ｂ）がホルダーの前端開口部２０３（即ち、穿刺開口部）に隣接しており、それによって、ランセット１００がホルダー２００に対して後方に移動しないようになっている。

以上のようなＡタイプのランセット穿刺デバイスでは、ランセットキャップがランセットから取り外された際、トリガー部材の後端部４７０または対の外側アーム部４４０に対して外力が加えられることに起因して、トリガー部材４００がホルダー２００に対して前方へと移動するようにトリガー部材をホルダー内部へと押し込むことができるようになっている。

以下ではＡタイプのランセット穿刺デバイス５００の各構成要素について説明していく。

（ホルダー）
ホルダー（特に、ランセットを収納する観点からいうと“ランセットホルダー”）２００は、図６に示すように、例えば全体として角筒の形態を有している。かかるホルダー２００は比較的小さく、例えば図６に示される長さ（Ｌ、Ｈ、Ｗ、Ｄ）は、Ｌ＝３１〜３４ｍｍ（例えば約３２ｍｍ）、Ｈ＝５〜７ｍｍ（例えば約６ｍｍ）、Ｗ＝８〜１１ｍｍ（例えば約９ｍｍ）、Ｄ＝４〜６ｍｍ（例えば約５ｍｍ）とすることができる。ホルダー２００の形状については必ずしも角筒の形態に限定されるものではなく、例えば円筒の形態であってもよい。ホルダー２００は、一般的なランセットに用いられる樹脂材料であれば、いずれの種類の樹脂材料から形成してもよい。図示するように、ホルダー２００は、その前方に開口端２０３を有している。かかる開口端２０３は、穿刺デバイスの組立てに際してランセット１００のホルダー挿入が行われる部分であると共に、穿刺に際して穿刺すべき部位（例えば指先）にあてがわれる部分でもある。

ホルダー２００の内壁面には、トリガー部材と協働して機能する“スロープ部”が設けられている。“スロープ部”は、例えば図４（ａ）および（ｂ）にて参照番号２５０で示されている。かかるスロープ部は、トリガー部材の押込みに際してトリガー部材のアーム部の先端が滑動または擦動する部分であり、穿刺操作時にてアーム部の撓みを可能にする。

図６に示すように、ホルダー２００の外面（特に外面の後方側）には、鐔部２３０が設けられている。かかる鐔部２３０には使用者が穿刺操作時に指をかけることができ、それゆえ、鐔部２３０はスムーズな穿刺操作に資する（図７参照）。

（ランセット）
ランセット穿刺デバイス５００に用いるランセット１００は、図８（ａ）および（ｂ）にて示される。特に図８（ｂ）には、ランセット１００がそれぞれ異なる側方から示されている。かかるランセット１００のサイズも、ホルダー２００と同様に小さく、ホルダー２００内に収容される大きさを有している。例えば図８（ａ）に示される長さ（Ｌ_１、Ｌ_２、Ｗ_１、Ｗ_２）は、Ｌ_１＝３６〜３８ｍｍ（例えば約３７ｍｍ）、Ｌ_２＝１３〜１６ｍｍ（例えば約１４ｍｍ）、Ｗ_１＝８〜１１ｍｍ（例えば約９ｍｍ）、Ｗ_２＝２〜３ｍｍ（例えば２．５ｍｍ）とすることができる。ランセット１００は、図示するように、ランセットボディ１３０、ランセットキャップ１７０および穿刺針１５０を有して成る（穿刺針１５０については図９を参照のこと）。穿刺針１５０は例えば金属製の針であってよい。穿刺針１５０は、図９の断面図に示すように、樹脂製のランセットボディ１３０、ランセットキャップ１７０にまたがってこれらの中に存在しており、穿刺針１５０の先端１５０ａがランセットキャップ１７０によってカバーされている。ランセットボディ１３０とランセットキャップ１７０とは、僅かな接点を介して一体的に結合されていることが好ましい。このようなランセット１００は、穿刺針１５０を金型にインサートして樹脂（例えばポリエチレン、ポリプロピレン等）を成型するいわゆるインサート成形によって製造することができ、接点部分は、このインサート成形の際に併せて製造することができる。従って、接点部分は、ランセットキャップ１７０およびランセットボディ１３０と同じ樹脂材料から形成され得る。かかる接点部分は、キャップ取り外し操作時にて破壊されることが求められ、それゆえ、接点部分を「弱化部分」または「易破壊部分」と呼ぶこともできる。尚、接点部分がより容易に破壊されるように、接点部分にノッチを設けてもよい。場合によっては、接点部分が予め切断されている形態、更には接点部分が存在しない形態であってもよく、ランセットキャップの“もぎり操作”によって、「穿刺針１５０の先端１５０ａが露出したランセットボディ１３０」を得ることができるのであれば、いずれの形態であっても構わない。ちなみに、ランセットキャップ１７０の前方部分１７５は、その前方端がフラットな形態となっており、その部分を使用者が指で摘まんで穿刺針の周囲でツイストまたは回転などのもぎり操作を行うことができ、この指で摘める部分が“把持部”に相当する。

ランセットキャップ１７０は、後方に向かって延在するキャップアーム部１７１を有して成る。図８（ａ）および（ｂ）に示されるように、キャップアーム部１７１は、ランセットキャップの前方部分１７５の対部分１７５ａから後方に向かって延在する一対のアーム部を成していることが好ましい。また、キャップアーム部１７１は、図示されるように、対を成す長尺部から構成されていることが好ましい。このようなキャップアーム部１７１では、図示するようにランセット１００の中心軸線（即ち、ランセット１００の長手方向の中央軸または穿刺針１５０を中心にして対称となるように各々のキャップアーム部１７１が後方に向かって延在していることが好ましい。キャップアーム部１７１の延在についていえば、ホルダー２００に組み込まれた際に、ホルダー２００の内部に至るまで後方へと延在している必要がある（図４（ａ）参照）。換言すれば、Ａタイプのランセット穿刺デバイス５００においては、ランセットキャップ１７０のキャップアーム部１７１の先端部は、ホルダー２００内に位置付けられている。このような特徴に起因して、“トリガー部材のホルダー内への押込み”が防止されることになる（後の段落で詳述する）。

ランセットボディ１３０においては穿刺針１５０の胴部が固定化されている。従って、穿刺に際しては、ランセットボディ１３０は穿刺針１５０と一体となって前方へと発射される。また、ランセットボディ１３０には、その側部に「ランセットをトリガー部材に係止させるための係止部１３１」が設けられていると共に、「穿刺時の穿刺深さを調整するためのウイングａ（１３４）」が設けられている（図８（ａ）参照）。

（トリガー部材）
ランセット穿刺デバイス５００に用いるトリガー部材４００は、図１０（ａ）および（ｂ）にて示される。特に図１０（ｂ）には、トリガー部材４００がそれぞれ異なる側方から示されている。かかるトリガー部材４００のサイズも、ホルダー２００およびランセット１００と同様に小さく、ホルダー２００内に収容される大きさを有している。例えば図１０（ａ）に示される長さ（Ｌ_３、Ｌ_４、Ｗ_３、Ｗ_４、Ｈ_１）は、Ｌ_３＝２９〜３１ｍｍ（例えば約３０ｍｍ）、Ｌ_４＝２２〜２４ｍｍ（例えば約２３ｍｍ）、Ｗ_３＝１１〜１４ｍｍ（例えば約１２ｍｍ）、Ｗ_４＝６〜９ｍｍ（例えば約７ｍｍ）、Ｈ_１＝３〜５ｍｍ（例えば４ｍｍ）とすることができる。トリガー部材４００は、少なくとも、ホルダー内部に位置することになる一対のアーム部４２０を有している。図１０に示すように、一対のアーム部４２０の各々は、その前方側が自由端を成す一方、後方側が固定端を成している。トリガー部材４００は、かかるアーム部４２０に加えて更に別のアーム部を備えている。即ち、トリガー部材４００は、図示するように、それぞれ対を成す長尺部から構成される２つのアーム部（４２０，４４０）を有して成ることが好ましい。より具体的には、トリガー部材４００は、ホルダー内部に設けられる一対のアーム部４２０およびランセットホルダー外面に設けられる一対の外側アーム部４４０を有して成る。これは、トリガー部材４００が、より内側に一対のアーム部４２０を備えると共に、より外側に一対の第２のアーム部４４０を備えているといえる。このようなトリガー部材４００は、ランセット１００と同様の樹脂（例えばポリエチレン、ポリプロピレン等）から成形したものであってよい。

ホルダー内部に位置することになるアーム部４２０は、全体として可撓性を有していることが好ましい。特に、対を成すアーム部４２０の先端部４２０ａ、即ち、自由端部（図１０（ｂ）参照）が相互に離れる方向に外側へと撓むことが好ましい。これにより、トリガー部材の押込みに際して、ランセットボディの係止解除が行われるようにアーム部４２０が好適に機能することになる。その一方、第２の外側アーム部４４０は、ホルダー外面（特にホルダーの側壁外面）に設けられるものであって、穿刺等に際して把持され得る部分であるので、特に可撓性を有している必要はない。

ホルダー内部に位置することになる一対のアーム部４２０の先端部４２０ａは、図１０（ａ）に示すように、先細くなったテーパー形状を有していることが好ましい。ここで、先端部４２０ａの面４２０ａ_１は、ホルダー２００のスロープ部２５０の面（例えば図４（ａ）参照）と相補的な形状を有していることが好ましく、それゆえ、トリガー部材の押込みに際してアーム部４２０の先端部４２０ａがスロープ部２５０上を好適に滑動または擦動することが可能となる。

ホルダー内部に位置することになるアーム部４２０には、穿刺前においてランセットボディ１３０が係止されることになる被係止部が設けられている。具体的には、図１０（ａ）に示すように、一対のアーム部４２０の内側の側面に***形状の被係止部４２１が形成されている。

尚、図１０（ａ）および（ｂ）に示すように、トリガー部材４００の後方側では、一対のアーム部４２０の間に、射出バネを取り付けるためのバネ取付け部４５０が設けられている。バネ取付け部４５０の設置位置から理解できるように、穿刺デバイスにおいては、トリガー部材に取り付けられた射出バネが一対のアーム部４２０に挟み込まれる形態でその内側に存在する。

（射出バネ）
射出バネ３００は、図１１にて斜視図で示されている。射出バネ３００は、その名の通り“射出”ないしは“発射”に供するものである。換言すれば、射出バネ３００は、穿刺針１５０、即ち、「露出した穿刺針を備えたランセットボディ」に対して発射または穿刺のための推進力を与えるバネである。かかる射出バネ３００は、上述したように、「一対のアーム部４２０の間の取付け部４５０」と「ランセット１００」との間にて圧縮された状態で設けられる（図４参照）。かかる射出バネ３００は金属製であることが好ましく、例えば金属製のコイルバネである。射出バネ３００のサイズは、ホルダー内に収容されるものではあれば、特に制限なく、例えば図１１に示される非圧縮時における長さ（Ｌ_５、Ｄ_１）は、Ｌ_５＝１５〜２０ｍｍ（例えば約１７ｍｍ）、Ｄ_１＝２．７〜３．５ｍｍ（例えば約３ｍｍ）であってよい。

《ランセット穿刺デバイスの全体構成・機能》
（ランセットボディの係止）
Ａタイプのランセット穿刺デバイス５００は、図１２（ａ）および（ｂ）に示すように、射出バネ３００の圧縮状態が維持されるようにランセットボディ１３０がトリガー部材４００のアーム部４２０に係止している。図示する態様から分かるように、ランセットのランセットボディ１３０および穿刺針１５０ならびに射出バネ３００の略全てがトリガー部材４００からはみ出すことなく該トリガー部材の内側に位置している。特にＡタイプのランセット穿刺デバイス５００では、図示されるように、ランセットボディ１３０および穿刺針１５０ならびに射出バネ３００の全てがトリガー部材４００の対のアーム部４２０からはみ出すことなく対のアーム部４２０の内側に位置している。

かかるランセット穿刺デバイス５００は、ランセット１００（またはそれに取り付けられた射出バネ３００）をホルダー前方開口端２０３から挿入すると共に、ホルダーの後方開口部からトリガー部材４００（およびそれに取り付けられた射出バネ３００）を挿入し、射出バネ３００を圧縮した状態でランセット１００とトリガー部材４００とを相互に連結することによって得られる（図３参照）。ちなみに、圧縮された射出バネに起因してトリガー部材４００には後方へと力が働くが、トリガー部材４００の抜け防止ウイング４６０がランセットホルダー内壁面の突起ｄ（または凸部ｄ）（２６０）に当接するために（図１２（ｂ）参照）、ホルダーからのトリガー部材の抜け落ちは防止されている。

すなわち、トリガー部材のアーム部４２０に対するランセットボディ１３０の係止は、図１２（ｂ）に示す態様から分かるように、「トリガー部材４００のウイング４６０」と「ランセットホルダー内壁面の突起ｄ（２６０）」との当接および「ランセットボディ１３０の係止部１３１」と「トリガー部材４００のアーム部４２０の被係止部４２１」との当接を介して行われると解することができる。かかる態様では、ランセットホルダー２００内では圧縮された射出バネ３００に起因してランセット１００に前方向の力が働いており、ランセット１００が前方向に移動しようとするものの、ランセットボディ１３０の係止部１３１がアーム部４２０の被係止部４２１に引っ掛っているので、そのようなランセット１００の前方向の移動は阻止されている。尚、ランセットボディ１３０はトリガー部材に４００に係止ないしは固定化されているのに対して、ランセットキャップ１７０はトリガー部材４００に係止・固定化されておらず、それゆえ、ランセットキャップ１７０は穿刺に際して取り外すことができる。

尚、ランセット穿刺デバイスの組み立てに際しては、射出バネ３００をトリガー部材４００に取り付けることになるが、本発明では、トリガー部材のバネ取付け部４５０が好適に機能し得る。具体的には、図１０および図２２に示すように、トリガー部材のバネ取付け部４５０が自由端と固定端とを有する湾曲形態の長尺部材から成っており、その形態ゆえに、ランセット穿刺デバイスの組立て（即ち、射出バネ３００の取り付け）が効果的に助力される。つまり、バネ取付け部４５０が図１０および図２２で示すように例えば釣針形態やＵ字状形態などのフック形態を有していると、バネ取付け部４５０が内側へと容易に撓むことができ（図２２（ａ）および（ｂ）参照）、射出バネのコイルへの係合が効果的に助力され得る。かかるバネ取付け部４５０は、外向きに突出する突起４５０ａを有していることが好ましい（特に図２２（ａ）に示すように自由端側に第１突起４５０ａ_１と固定端側に第２突起４５０ａ_２とが設けられていることが好ましい）。かかる場合、射出バネ３００のコイル径が一旦大きくなって突起４５０ａを乗り越えた後に元の径に戻ると、射出バネ３００とバネ取付け部４５０との嵌合は容易に解除できないようになる（図２２（ａ）〜（ｃ）参照）。

ランセット穿刺デバイスの組み立てが完成すると、ランセットのキャップアーム部がホルダー２００内に位置付けられることになる。具体的には、図１２に示すように、穿刺針の先端がランセットキャップ１７０によりカバーされている状態では、キャップのキャップアーム部１７１の先端部１７１ａがホルダー２００内に位置している。特に、図１２（ｂ）に示すように、キャップアーム部１７１の先端部１７１ａがランセットホルダーの内壁に沿ってその近傍に位置付けられている。より具体的には、キャップアーム部１７１の先端部１７１ａが、「ホルダーの内壁面２２０」とホルダーのスロープ部２５０との間の空間を通過するように延在している。これにより、図示するように、トリガー部材４００のアーム部４２０の先端部４２０ａが「ランセットキャップ１７０のキャップアーム部１７１の先端部１７１ａ」と「ホルダーのスロープ部２５０」との間に位置付けられることが可能となり、その結果、“トリガー部材のホルダー内への押込み”が防止されることになる。つまり、外からの押圧によりトリガー部材４００をランセットホルダー内部へと押し込もうとしても、トリガー部材４００のアーム部４２０の先端部４２０ａがランセットキャップ１７０のキャップアーム部１７１の先端部１７１ａ（より具体的には先端部の側面）とスロープ部２５０（より具体的にはスロープ部のスロープ面）との双方に当接するので、トリガー部材４００をランセットホルダー内部へと押し込めないようになっている。その一方で、図１３に示すように、ランセットキャップが取り外されると、そのキャップアーム部も取り除かれることになるので、トリガー部材４００のアーム部４２０の先端部４２０ａの周囲に空間が生まれることになる（“空間”については特に図１３（ｂ）の参照番号２２２を参照のこと）。それゆえ、トリガー部４００をホルダー内部に向かって前方へと押し込むと、アーム部４２０の先端部４２０ａがその空間へと移動するように撓むことができ、その結果、「ランセットボディ１３０の係止部１３１」と「トリガー部材４００のアーム部４２０の被係止部４２１」との係止解除につながる（図１４（ａ）および（ｂ）参照）。尚、スロープ部２５０のスロープ角α（図１３（ａ）参照）は、好ましくは１０°〜５０°程度、より好ましくは２０°〜４０°程度である。

トリガー部材４００のアーム部４２０の撓みについていえば、図１５（ａ）〜（ｄ）の経時変化図に示されるように、アーム部４２０の先端面４２０ａ_１がホルダーのスロープ部２５０のスロープ面２５０ａを滑動または擦動することに起因して、好ましくは、対を成すアーム部４２０の先端部４２０ａが相互に離れる方向に外側へとアーム部４２０が自動的に広がることになる。このように撓むことによって、「ランセットボディ１３０の係止部１３１」と「トリガー部材４００のアーム部４２０の被係止部４２１」との係止が確実に解除される（図１４参照）。係止部１３１と被係止部４２１との係止状態が解除されると、圧縮されていた射出バネ３００が伸びることになり、その結果、「露出した穿刺針を備えたランセットボディ」が穿刺方向へと発射される（図１６および図１７参照）。

（穿刺深さ調整機構）
本発明のランセット穿刺デバイス５００には好ましくは穿刺深さ調整機構が備わっている。具体的には、図１８に示すように、ランセットボディ１３０に穿刺深さ調整ウイングａ（１３４）が設けられている一方、ホルダー２００に穿刺深さ調整突起ｂ（２６０）が設けられている。図１８（ａ）〜（ｃ）に示すように、穿刺に際してはランセットボディのウイングａ（１３４）がホルダーの突起ｂ（２６０）に衝突することになり、それによって、穿刺時にてホルダーの開口端から露出する穿刺針長さが制限される（「開口端から露出する穿刺針長さ」については図１８（ｂ）の“Ｌ_６”を参照のこと）。つまり、ウイングａ（１３４）と突起ｂ（２６０）との衝突によって穿刺針の前方向の動きが制限され、その結果、穿刺深さ（即ち、ホルダーの開口端２０３から露出する穿刺針の長さ）が規定されることになる。それゆえ、「ランセットボディ１３０におけるウイングａ（１３４）の設置位置」および／または「ホルダー２００における突起ｂ（２６０）の設置位置」を適宜変更することによって“穿刺深さ”を調整することができる。尚、ホルダー２００における突起ｂ（２６０）は、スロープ部２５０と一体的に形成されていることが好ましい。

（再使用防止機構）
本発明のランセット穿刺デバイス５００には好ましくは再使用防止機構が備わっている。図１９は穿刺後のランセット穿刺デバイス５００の態様を示している。再使用防止機構に寄与する主たる部分は、「トリガー部材４００のアーム部（４２０）の外側に設けられた再使用防止ウイングｃ（４２３）」と「ホルダー内壁に設けられた再使用防止突起ｄ（または凸部ｄ）（２６０）」である。図示する態様から分かるように、穿刺後に射出バネ３００の圧縮状態を再度得るべくランセットボディ１３０を後退させようとしても、ランセットボディ１３０に連結されたトリガー部材４００のウイングｃ（４２３）がホルダーの突起ｄ（２６０）に当接することになり、トリガー部材４００の後方移動が制限され、穿刺後のトリガー部材４００を穿刺前の状態へと戻すことができないようになっている。つまり、使用済み穿刺デバイスを穿刺前の状態へと戻すことはできない。これにより、使用済み穿刺針が再使用される虞がなく、衛生面や安全性の点でも望ましいものとなる。このような再使用防止機構を有するデバイスの態様から、本発明のランセット穿刺デバイスを「シングル・ユース・デバイス」と称すこともできる。ちなみに、図示する態様から分かるように、穿刺前にてトリガー部材の“抜け落ち防止”に機能していた「トリガー部材４００のウイング４６０」が「ホルダー内壁に設けられた段差部２６２」に当接することによってもランセットボディの後退が阻止されるので、その点で再使用防止機能の強化が図られている。

《穿刺デバイスの使用態様》
以下では、本発明のランセット穿刺デバイスの使用態様について説明しておく。図２０および図２１は、それぞれランセット穿刺デバイス５００の経時変化を示している。ここで、図２０（ａ）〜２０（ｆ）と図２１（ａ）〜２１（ｆ）とは、アルファベット部分が同じものであれば、それぞれ相互に同じ時点の状態を示していることに留意されたい。

穿刺前の状態の本発明のランセット穿刺デバイス５００は図２０（ａ）および図２１（ａ）に示される。穿刺に際しては、まず、図２０（ｂ）および図２１（ｂ）に示す態様から分かるように、ランセットからランセットキャップ１７０が取り外される。ランセットキャップ１７０の取外しには、図示するように、ランセットキャップ１７０を“もぎり取る”ことが好ましい。具体的には、ランセットキャップ１７０（特に把持部１７２）を回転させて「ランセットボディ１３０とランセットキャップ１７０との接点部分」を破壊させた後、ランセットキャップ１７０を前方向に向かって引き抜く。別の表現を用いると、一方の手でホルダー２００を外側からつまんで保持した状態で、他方の指でランセットキャップ１７０の把持部１７２を捻りながら引き抜く。これによって、ホルダー２００内において「露出した穿刺針１５０を備えたランセットボディ１３０」を得ることができる（図２０（ｃ）および図２１（ｃ）参照）。次いで、穿刺すべき所定の部位（例えば指先）にホルダー２００の開口端２０３をあてがった後、トリガー部４００をホルダー内部に向かって押し込む操作を行う（図２０（ｄ）および図２１（ｄ）参照）。トリガー部の押し込みは、ホルダー２００を保持した状態でトリガー部の後端部を前方へと押圧することによって行ってもよい。あるいは、ホルダー外面に設けられるトリガー部材の第２の外側アーム部４４０を指でつまんだ状態で穿刺デバイスを「穿刺すべき所定の部位」へと押さえ付けることによって行ってよい（即ち、“印鑑を押す”ような操作であってもよい）。トリガー部材４００が押圧されると、トリガー部材の内側アーム部４２０の先端部がスロープ部を擦動することにより内側アーム部４２０が外側に撓み、その結果、ランセットボディの係止部１３１とアーム部４２０の被係止部４２１との当接状態が解除される（図２０（ｄ）および図２１（ｄ）は、当接状態が解除された時点の態様を示している）。つまり、トリガー部材４００のアーム部４２０に対するランセットボディの係止が解除されることになる。ランセットボディの係止が解除されると、圧縮されていた射出バネ３００が伸びることによって、露出した穿刺針１５０を備えたランセットボディ１３０が穿刺方向へと発射される。発射後では、穿刺方向にランセットボディ１３０が移動して、ホルダーの開口端２０３から穿刺針１５０が露出することになり、開口端２０３にあてがわれた所定の部位が穿刺される（図２０（ｅ）および図２１（ｅ）参照）。穿刺後は、伸びた射出バネ３００が元の形状に戻ろうとするので、穿刺針１５０が素速く後退することになる。具体的には、「露出した穿刺針１５０を備えたランセットボディ１３０」は射出バネ３００に取り付けられているので、その射出バネに引っ張られる形態でランセットボディ１３０が後退することになり、最終的には、穿刺針１５０がホルダー２００内へと収納される。穿刺後の状態は、図２０（ｆ）および図２１（ｆ）に示される。

最後に、トリガー部の押し込みについて付言しておく、上述したように、本発明の穿刺デバイスでは、ホルダーを保持した状態でトリガー部の後端部を前方へと押圧することによって行うことができるし、あるいは、トリガー部材の第２の外側アーム部を指でつまんだ状態で穿刺デバイスを「穿刺すべき所定の部位」へと押さえ付けることによっても行うことができる。つまり、より具体的な態様でいうと以下の３つの“押し込み態様”が可能であり、その点でも操作性が優れているといえる。

（１）人差し指と中指とを鐔部２３０にかけた状態で親指によりトリガー部の後端部４７０を押圧する（図７および図１参照）。
（２）親指と中指とを鐔部にかけた状態で人差し指によりトリガー部の後端部４７０を押圧する。
（３）親指と人差し指とによってトリガー部材の第２の外側アーム部４４０をつまんだ状態でそのまま穿刺デバイスを「穿刺すべき所定の部位」へと押さえ付ける（即ち、押印するような操作を行う）。

このように“押込み態様”に多様性があることは、トリガー部材の押込みストロークが比較的短いことに主に起因しており、例えば、図２０（ｄ）に示すようなストローク距離Ｌ_７は約３〜７ｍｍ程度となっている。

［Ｂタイプのランセット穿刺デバイス］
《ランセット穿刺機構の基本的構成》
（基本構成）
図２３〜図２５は、Ｂタイプのランセット穿刺デバイス５００’を示している。図２３および図２４はＢタイプのランセット穿刺デバイス５００’の外観図を示しており、図２５はＢタイプのランセット穿刺デバイス５００’の分解図・展開図も併せて示している。図２５に示すように、本発明に係るランセット穿刺デバイス５００’は、「ランセット１００’」、「射出バネ３００’」、「トリガー部材４００’」および「ホルダー（特にランセットホルダー）２００’」から主に構成されている。尚、図２６は、Ｂタイプのランセット穿刺デバイスを構成するホルダー２００’を示し、図２７は、Ｂタイプのランセット穿刺デバイスを構成するトリガー部材４００’を示し、図２８は、Ｂタイプのランセット穿刺デバイスを構成するランセット１００’を示している。

図２９には、ホルダー２００’の上側半分を切除した状態のランセット穿刺デバイス５００’が示されている。かかる図２９に示すように、ランセット穿刺デバイス５００’は、ホルダー２００’内にランセット１００’、射出バネ３００’およびトリガー部材４００’が収容された構造を有している。具体的には、図２９に示すように、ランセット１００’の後端とトリガー部材４００’の後端４５１’との間において射出バネ３００’が挟み込まれるように、射出バネ３００’がホルダー２００’内に収容されている。更に具体的には、図２９に示すように、ランセットホルダー２００’内においては、射出バネ３００’の一方の端部が、ランセット１００’の後端１３３’に取り付けられていると共に、射出バネ３００’の他方の端部がトリガー部材４００’の嵌合部４５０’に取り付けられている。図２５と図２９とを比較すると分かるように、ホルダー２００’内の射出バネ３００’は、「ランセット１００’」と「トリガー部材４００’の後端の嵌合部４５０’」との間で圧縮された状態となっている。特に本発明のランセット穿刺デバイス５００’では、ランセットボディ１３０’に取り付けられた射出バネ３００’が圧縮された状態となるように、トリガー部材４００’のアーム部４２０’に対してランセットボディ１３０’が係止している（例えば図２９参照）。尚、かかる係止に関与する「ランセットボディ１３０’の係止部１３１’」および「トリガー部材４００’のアーム部４２０’の被係止部４２１’」については、図２７（ａ）および図２８（ａ）も参照されたい。

図２３、図２５および図２９に示す態様から分かるように、Ｂタイプのランセット穿刺デバイス５００’においては、トリガー部材４００’の前端の穿刺開口部４１０’のみがホルダー２００’の前端開口部２０３’（特に図示するような前方開口端）から外向きに突出するように、トリガー部材４００’が全体としてホルダー２００’内に配置されている。また、図２３および図２９に示す態様から分かるように、ランセットキャップ１７０’についていえば、その前方部分１７５’がホルダーの前端開口部２０３’から外向きに突出している。かかるランセットキャップ態様では、前方部分１７５’の側方に設けられた対部分１７５ａ’がホルダーの前端開口部２０３’に隣接しており、ランセット１００’がホルダー２００’に対して後方に移動しないようになっている。

以上のようなＢタイプのランセット穿刺デバイスでは、ランセットキャップがランセットから取り外されると、トリガー部材を後方に押し込むことができる。具体的には、トリガー部材４００’の前端の穿刺開口部４１０’に対して外力が加えられることに起因して、トリガー部材４００’がホルダー２００’に対して後方へと移動するようにトリガー部材をホルダー内部へと押し込むことができる。

Ｂタイプのランセット穿刺デバイスを構成するには、図３０にて矢印Ａで示すように、射出バネ３００’の前端部３０２’をランセット１００’の後方部に接続して図３１に示す状態とする；次に、その状態の射出バネ３００’の後端部３０４’に、図３１にて矢印Ｂで示すように、トリガー部材４００’の後端部分に接続して図３２に示す状態とする、即ち、射出バネが圧縮されて、トリガー部材のアーム部がランセットボディの側方に係合した予備アッセンブリの状態とする；その後、トリガー部材、ランセットおよびこれらを接続している射出バネの予備アッセンブリを、図３２の矢印Ｃで示すように、ランセットの前方部分を除いてホルダー２００’の内部空間内に挿入することによって、本発明の穿刺デバイスのアッセンブリ（即ち、組立）が完了する。このように組立が完了した本発明の穿刺デバイスを図３３に斜視図にて模式的に示す。

以下ではＢタイプのランセット穿刺デバイス５００’の各構成要素について説明していく。

（ホルダー）
図２６に、Ｂタイプの穿刺デバイスを構成するホルダー２００’の好ましい態様を模式的に示す。図示するように、ホルダー２００’は全体としては筒状であり、穿刺方向に対して垂直な断面は実質的に矩形である。その前端２０２’に開口部２０３’を有し、この開口部を経て、トリガー部材、ランセットおよび射出バネで構成された予備アッセンブリが挿入されることになる。

図２６（ｂ）および図２６（ｃ）に示すように、ホルダー２００’の側方の内壁にスロープ部２５０’が設けられている。このスロープ部２５０’は、前方に向かってホルダーの中心向きに（内向きに）傾斜するスロープ面２５０ａ’を有している。図示した態様では、このスロープ部は、ホルダーの両側の側面の上側と下側に設けられている（下側のスロープ面のみ図示）。後述するように、かかるスロープ面２５０ａ’上をトリガー部材のアーム部の一部分が滑動または擦動することになる。具体的には、ホルダー２００’に対してトリガー部材４００’を後方に移動させると、アーム部４２０’の自由端がスロープ面２５０ａ’上を前方から後方に向かって滑動または擦動し、その結果、アームが自動的に外向きに広がる。

ホルダー２００’は、後方端部２１０’に開口している空間部２１２’を有する。穿刺デバイスの使用後は、この空間部２１２’には、後述するように、トリガー部材の最後端部が嵌まり込むと共に、空間部２１２’を規定する壁部２１４’に該最後端部を規定するステップ部が当接するようになっている。尚、そのように嵌まり込んだ状態では、空間部を規定する開口部２１６’から最後端部の端面が見えるのが好ましく、開口部２１６’と端面が実質的に面一またはそれに近い状態にあるのが好ましい。即ち、該端面が開口部２１６’から見えると、穿刺デバイスは使用済みであることが容易に分かる。

ホルダー２００’は、スロープ部２５０’の後方側に突起（凸部）２１８’を有している。後述するように、この突起２１８’は、トリガー部材４００’の抜け出し防止ウイング４２６’または再使用防止ウイング４２４’と協働して、使用前のトリガー部材４００’のホルダー２００’からの抜け出し防止に寄与し、また、使用後にあっては、「トリガー部材４００’をホルダー２００’に対して前方に移動させて穿刺可能状態に戻ること」を未然に防止する。

ホルダー２００’の形態は、図示した態様に限定されるものではなく、上述のように予備アッセンブリを収容でき、また、上記スロープ部および上記突起を有する限り、いずれの他の適当な形態であってもよく、例えば円筒の形態であってもよい。ホルダー２００’は、一般的なランセットに用いられる樹脂材料であれば、いずれの適当な樹脂材料から形成してもよい。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂から形成するのが特に好ましい。

（ランセット）
図２８に、Ｂタイプのランセット穿刺デバイスを構成するランセットの好ましい態様を模式的に示す。図示したランセット１００’は、ランセットキャップ１７０’およびランセットボディ１３０’を有して成る。これらは、その間に位置する弱化部分１０８’によって一体に接続され、また、これらの間に跨って穿刺針１５０’（（図２８（ｂ））では一部分が見えている）が延在している。穿刺針の先端部１５０ａ’は、ランセットキャップ１７０’によって覆われ、穿刺に際して弱化部分１０８’を破壊してランセットキャップを除去することによって、針先端部１５０ａ’がランセットボディ１３０’の前端面１３６’から前方に向かって突出した状態が得られる。

ランセットボディ１３０’は、トリガー部材のアーム部に対する係止に供する係止部を有している。つまり、トリガー部材の被係止部に係合できる係合部１３１’（例えばステップ状部または角状部）をその両側の側方に有している。また、ランセットボディ１３０’は、射出バネ３００’の前端部が係合できる突起１３８’を後方部分１３３’に有している。

ランセットキャップ１７０’は、穿刺針の先端部１５０ａ’を覆う部分を含む後方部分１７２’およびその前方に位置する前方部分１７５’を有している。後方部分１７２’の後端部は、穿刺針の先端部を包囲すると共に、弱化部分１０８’を介してランセットボディ１３０’の前端面に対向している。ランセットキャップの前方部分１７５’は、その側方に対部分１７５ａ’を備えている。より具体的には、ランセットキャップの前方部分１７５’は、両側にて後方に突出する対部分１７５ａ’を有し、また、かかる対部分の間には、その他の部分として中央部１７５ｂ’を有している。ホルダー２００’、トリガー部材４００’、ランセット１００’および射出バネ３００’が組み立てられた状態にあるＢタイプのランセット穿刺デバイスでは、対部分１７５ａ’および／または中央部１７５ｂ’が、ホルダー２００’の前端開口部２０３’に隣接するか、あるいは、わずかな隙間を介して前端開口部２０３’と対向している。それゆえ、ホルダー２００’に対してランセット１００’を後退させようとしても、対部分１７５ａ’および／または中央部１７５ｂ’が、ホルダー２００’の前端開口部２０３’を規定する壁に当接し、その結果、更に後退させることはできないようになっている。

図示する態様では、ランセットキャップ１７０’の前方部分１７５’は、その前方端部がフラットな形態であり、その部分を指で摘まんで穿刺針の周囲でツイストまたは回転させることによって、弱化部分１０８’を破壊できるようになっている（つまり、このように指で摘める部分が“把持部”である）。このような破壊を容易ならしめるために、ランセットボディ１３０’は、ホルダーおよびトリガー内に位置できるが、穿刺針の周囲で回転できない全体として角柱形態とする一方、ランセットキャップ１７０’の後方部分１７２’はトリガー部材の円筒形状の前端部４０２’内で回転できる円柱形態とすることが好ましい。これにより、ホルダーを保持した状態でランセットキャップを摘まんでツイストすると、ランセットボディは回転しないが、ランセットキャップは回転できるので、弱化部分１０８’が破壊される。尚、弱化部分における、穿刺針を覆う樹脂の厚さを適宜選択したり、ランセットを形成する樹脂を適切に選択したりすることによって、ツイストまたは回転で弱化部分１０８’をより好適に破壊できるようになる。

（トリガー部材）
図２７に、Ｂタイプの穿刺デバイスを構成するトリガー部材の好ましい態様を模式的に示す。図示するトリガー部材４００’は、穿刺前の穿刺デバイスの状態において、その中央部にランセット１００’および射出バネ３００’を収容する空間部４０６’を有している。かかる空間部は、全体としては底部を有する箱の形態となっていることが好ましく、空間部４０６’の前端から筒状の前端部４０２’が前向きに突出している。前端部４０２’の開口部４０８’には穿刺すべき所定の対象があてがわれることになる。

トリガー部材４００’は、その両側の側方に後方に向かって延在する一対のアーム部４２０’を有している。図２７に示すように、対のアーム部４２０’の各々は、その前方端が固定端を成す一方、その後方側が自由端を成している。かかるアーム部４２０’は、全体として可撓性を有していることが好ましい。各アーム部４２０’は、その内側に、ランセットの係止部１３１’が係合できる係合部４２１’（例えばランセットボディの係止部１３１’が係止できるステップ状部または角状部を成す被係止部）を有している。図示する態様では、各アーム部４２０’は、係合部４２１’の上側および下側に滑動部４２２’を有している。Ｂタイプのランセット穿刺デバイスは、ホルダー２００’に対してトリガー４００’を後退させると、滑動部４２２’がホルダー内壁に設けたスロープ部２５０’上、詳しくはそのスロープ面２５０ａ’上を滑動または擦動するように構成されている。このように滑動・擦動する結果、図２７（ａ）および図２７（ｂ）にて矢印にて示すように、アーム部４２０’はその前方の付け根付近（即ち、固定端）を支点として外向きに広がることになる。

図示したトリガー部材４００’の各アーム部４２０’は、その外側にプッシュバック部４１６’を有している。プッシュバック部４１６’は、アーム部４２０’から外向きに突出するのが好ましく、図示するように斜め前方向きに突出するのが特に好ましい。Ｂタイプのランセット穿刺デバイスにおいて、プッシュバック部４１６’の先端部は、ホルダー内壁に接するか、あるいは若干の隙間を隔てて存在する。その結果、アーム部４２０’が外向きに広がると、プッシュバック部４１６’はホルダーの内壁に向かって押圧され、その反作用によってアーム部を内向きにプッシュバックしようとする（即ち、押し戻そうとする）ように力を加えるように機能する。このようなプッシュバック部は、図示するように、アーム部から外向きに、好ましくは斜め外向きに、突出する補助アームの形態であるのが好ましい。

このようなプッシュバック部４１６’をアーム部４２０’に設けると、意図してトリガー部材がホルダーに対して後方に移動して穿刺しようとする場合のように比較的大きな力が穿刺デバイスに作用する場合とは異なる状況下で、何らかの理由によってある程度の力がアーム部４２０’に作用してアーム部が外向きに広がろうとする場合には、プッシュバック部４１６’がアーム部を押し戻し、その結果、トリガー部材の係合部４２１’がランセットボディの係合部１３１’に係合している状態を確保することができる。

Ｂタイプのトリガー部材４００’は、空間部の後端に後方に突出する最後端部４８０’を有している。穿刺が終了した段階においては、この最後端部４８０’はホルダー２００’の空間部２１２’に嵌まり込むと共に、該最後端部を規定するステップ部４８２’が空間部２１２’を規定する壁部２１４’に当接している。尚、図３４（ｅ）に示すように、最後端部４８０’が空間部２１２’から若干突出していると、更に端面が目立つように着色されていると、穿刺デバイスが使用済みであることを、使用者は更に容易に認識できる。

図示するように（特に図２９に示すように）、トリガー部材４００’は、その側壁面の外面（特に後方側に位置する側壁面の外面）に、突起状またはアーム状の形態の再使用防止ウイング４２４’を有すると共に、その後方側に突起状またはアーム状の形態の抜け出し防止ウイング４２６’を有している。これらのウイング（４２４’、４２６’）は、ホルダー２００’の両側の側方内壁に設けた突起２１８’と協働することによって、それぞれの機能を果たすことになる。尚、ホルダーの内壁に設けられた突起２１８’についていえば、図２６（ｃ）に示すように、その前方部２１７’が前に向かって外向きに広がる傾斜面（即ち、テーパー面）を有するのが好ましい。

本発明の穿刺デバイスを組み立てるに際しては、予備アッセンブリをホルダーに挿入すると、抜け出し防止ウイング４２６’がホルダーの側方内壁に設けた突起２１８’の前方部に接触して傾斜面２１７’上を内向きに変形しながら、擦動し、突起２１８’を乗り越えることになる。このように乗り越えると、ウイング４２６’は元の形状に戻り、本発明の穿刺デバイスの組立が完了する。

図２６（ｃ）に示すように、突起２１８’はその後方端面２１９’が、図示するように穿刺方向に対して垂直またはそれに近い角度で延在するのが好ましい。その結果、突起２１８’を一旦乗り越えてその後方に移動したウイング４２６’は、突起２１８’を乗り越えて前方に移動することはできない。即ち、使用前の穿刺デバイスにおいて、トリガー部材４００’の抜け出し防止ウイング４２６’は、ホルダー２００’の突起２１８’の後方に位置し、その結果、ホルダー２００’に対してトリガー４００’を前方に移動させることができず、従って、ホルダー２００’からのトリガー部材４００’の抜け出しが効果的に防止される。

一方、Ｂタイプのランセット穿刺デバイスの使用後にあっては、抜け出し防止ウイング４２６’の前方側の再使用防止ウイング４２４’が、上述の乗り越えと同様に変形してもとの形状に回復した結果、ホルダー２００’の側方内壁に設けた突起２１８’を乗り越えた後の状態となる。その結果、ホルダー２００’に対してトリガー４００’を前方に移動させることができず、従って、ホルダー２００’とトリガー部材４００’との位置関係を穿刺前の状態に戻すことはできない。その結果、開いた状態のトリガー部材のアーム部を閉じることができず、従って、トリガー部材の係合部４２１’は、ランセットボディの係合部１３１’に再度係合できない。これは、一旦使用したランセットボディを再度チャージ状態にして穿刺に用いることはできないことを意味している。このようなウイング４２４’および４２６’の変形および元の形状の回復は、トリガー部材４００’を樹脂（例えばポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂）によって形成し、その弾性を利用することによって容易に達成できる。よって、これらのウイングは、全体として可撓性を有していることが好ましいといえる。

尚、トリガー部材４００’は、バネ取付け部４５０’を有して成るが、かかるバネ取り付け部が、ランセット穿刺デバイスの組立てに際して好適に機能し得る。具体的には、図２７（ｂ）および図２２に示すように、トリガー部材のバネ取付け部４５０’が自由端と固定端とを有する湾曲形態の長尺部材から成っており、その形態ゆえに、ランセット穿刺デバイスの組立て（即ち、射出バネ３００’の取り付け）が効果的に助力される。つまり、バネ取付け部４５０’が図２７（ｂ）および図２２で示すように例えば釣針形態やＵ字状形態などのフック形態を有していると、バネ取付け部４５０’が内側へと容易に撓むことができ（図２２（ａ）および（ｂ）参照）、射出バネのコイルへの係合が効果的に助力され得る。かかるバネ取付け部４５０’は、外向きに突出する突起４５０ａ’を有していることが好ましい（特に図２２（ａ）に示すように自由端側に第１突起４５０ａ_１’と固定端側に第２突起４５０ａ_２’とが設けられていることが好ましい）。かかる場合、射出バネ３００’のコイル径が一旦大きくなって突起４５０ａ’を乗り越えた後に元の径に戻ると、射出バネ３００’とバネ取付け部４５０’との嵌合は容易に解除できないようになる（図２２（ａ）〜（ｃ）参照）。

（射出バネ）
射出バネ３００’は、ランセット、より詳しくは穿刺針の先端部が露出したランセットボディの“射出”ないしは“発射”に用いる。換言すれば、射出バネ３００’は、穿刺針１５０’、即ち、「先端部が露出した穿刺針を備えたランセットボディ」に対して発射または穿刺のための推進力を与えるバネ（例えば金属製のコイルバネ）である。

図３０〜図３２を参照して説明したように組み立てることによって形成されたＢタイプの穿刺デバイス５００’が図３３に斜視図にて示されている。図示されるように、ランセットキャップの前方部分１７５’がホルダー２００’の前端開口部２０３’に接触または（若干の隙間を隔てて）隣接した状態となっている。その結果、ホルダー２００’に対してランセットを後退させようとしても、前方部分の対部分１７５ａ’が、ホルダー２００’の前端開口部２０３’を規定する壁に当接し、更に後退させることはできないようになっている。

この状態において、一方の手の指でホルダー２００’を保持し、他方の手の指でランセットの前端部を指で摘まんで、図３３の矢印で示すように、穿刺針の延在方向（一点鎖線で示す方向）の周囲の方向でこれらを相互に反対に回転またはツイストすると、“弱化部分”を破壊できる。その後、穿刺針の延在方向に沿ってこれらを引き離すように引っ張ると、ホルダー内で穿刺針の先端部が露出するようになる。

図３３に示す穿刺デバイス５００’の内部の状態を、図３４（ａ）に模式的に示す。理解できるように、トリガー部材４００’がホルダー２００’内に位置し、抜け出し防止ウイング４２６’がホルダー２００’の側方内壁に設けた突起２１８’にその後方から当接している。従って、トリガー部材４００’をホルダー２００’から引き抜くことはできない、即ち、トリガー部材はホルダー内に保持されている。そのような状態のトリガー部材４００’の係合部４２１’がランセットの係合部１３１’に係合している。従って、射出バネ３００’が圧縮された状態であっても、トリガー部材４００’の係合部４２１’とランセットの係合部１３１’との係合に起因して、ランセット１００’は、ホルダー２００’内で射出バネ３００’が圧縮した状態で保持されている。

尚、図示した態様では、プッシュバック部４１６’は、アーム部４２０’から斜め前方に向かって突出する追加的または補助的なアームの形態であり、その先端部は、ホルダー２００’の側方内壁に接触状態となっている。

次に、図３４（ａ）〜（ｆ）の上面図および図３５（ａ）〜（ｆ）の斜視図を参照して、Ｂタイプの穿刺デバイス５００’を用いて対象部位を穿刺する過程を順に説明する。

まず、図３４（ａ）および図３５（ａ）に示した状態のＢタイプのランセット穿刺デバイス５００’のホルダー２００’において、上述のようにツイストすることによってランセットの弱化部分１０８’を破壊する。次いで、ランセットキャップ１７０’を、図３４（ｂ）および図３５（ｂ）にて矢印で示すように、ランセットボディ１３０’から遠ざけて、穿刺針の先端部１５０ａ’がランセットボディから前向きに突出した状態とする。ランセットキャップ１７０’を除去すると、ホルダー２００’の前端開口部２０３’からトリガー部材４００’の前端部４０２’が前方に突出した状態となる。図３４（ｂ）および図３５（ｂ）に示す状態では、穿刺針の先端部１５０ａ’が突出したランセットボディ１３０’は、係止部１３１’と被係止部４２１’との係合関係によってトリガー部材４００’の空間部４０６’内に確実に保持されている。

次に、図３４（ｂ）および図３５（ｂ）に示す状態のランセット穿刺デバイス５００’において、突出しているトリガー部材の前端開口部４０８’に穿刺すべき対象部位６００’をあてがう。このように対象部位をあてがった状態を図３４（ｃ）および図３５（ｃ）に示す。

その後、図３４（ｃ）および図３５（ｃ）に示す状態のランセット穿刺デバイス５００’において、対象部位６００’に穿刺デバイスが近づくように、ホルダー２００’を対象部位６００’に押し付ける。即ち、押印するような操作を行う。これにより、ホルダー２００’に対してトリガー部材４００’を後退させるような力を加える。尚、Ｂタイプのランセット穿刺デバイスでは、トリガー部材４００’のアーム部４２０’は、プッシュバック部４１６’を有し、これがアーム部の広がりを抑制するように、即ち、アーム部をランセットボディの側方に向かって押すように、作用することになる。従って、加える力は、プッシュバック部４１６’によって作用する力より大きい力を加えて、トリガー部材を後退させる。

このようにトリガー部材４００’を後退させると、アーム部４２０’の滑動部４２２’がホルダー２００’の側方内壁に設けたスロープ部２５０’上を後方に移動する。スロープ部２５０’は、後方に向かってホルダーの側方内壁に近づくスロープ面２５０ａ’を有するので、トリガー部材４００’が後方に移動するにつれて、滑動部４２２’は後方外側に（詳しくは斜め後方外側に）移動する。滑動部４２２’はアーム部４２０’の一部分であるので、全体としてのアーム部４２０’も同様に後方外側に移動する。即ち、図３４（ｄ）にて矢印で示すように、アーム部が外側に広がる。尚、図３４（ｃ）および図３４（ｄ）におけるプッシュバック部４１６’の形状を比較すると容易に理解できるように、図３４（ｄ）においては、プッシュバック部４１６’は、元の形状から若干内向きに変形している。

アーム部４２０’が外側に広がると、その係合部４２１’も外側に移動し、その結果、ランセットボディの係合部１３１’との係合関係を維持することが不可能となる。即ち、係合状態が解除されることになる。このように係合状態が解除された様子が図３４（ｄ）および図３５（ｄ）に示される。係合状態が解除されると、「圧縮された射出バネ３００’が伸張しようとすることによるランセットボディ１３０’の前方への移動」を阻止するものが無くなるので、先端部が突出しているランセットボディ１３０’は瞬間的に前方に移動する。

射出バネ３００’は圧縮されていた状態から一瞬のうちに伸張するので、射出バネ３００’の元の形状（即ち、力が実質的に作用していない場合のバネの形状）よりも伸び、穿刺針の先端部１５０ａ’の少なくとも一部分がトリガー部材４００’の前端開口部４０８’から突出する。前端開口部４０８’には対象部位があてがわれているので、突出する先端部は対象部位に突き刺さることになる。尚、トリガー部材４００’の前端部の後方に位置する壁面４３２’にランセットボディの一部分（図示した態様では係合部１３１’）が衝突して、ランセットボディ１３０’の前進は止められるように構成されている。このように対象部位を穿刺している状態を図３４（ｅ）および図３５（ｅ）に示している。

図３４（ｅ）および図３５（ｅ）に示す状態では、上述のように射出バネ３００’は元の形状よりも伸びた状態にあるので、ランセットボディの前進が止められた瞬間、壁面４３２’における反作用によってランセットボディは後方に移動し始めることになり、射出バネ３００’は最終的には元の形状に戻る。そのように元の形状に戻った様子を図３４（ｆ）および図３５（ｆ）に示す。このように戻った状態において、ランセットボディから突出している穿刺針の先端部がトリガー部材４００’の前端開口部４０８’から十分に後方に位置するように、射出バネ３００’を選定しておくことが好ましい。

尚、ホルダー２００’に対してトリガー部材４００’を後退させたことによって、トリガー部材の再使用防止ウイング４２４’は、ホルダー２００’の側方内壁に設けた突起２１８’を乗り越えて後方に移動している。また、トリガー部材４００’の最後端部４８０’は、ホルダー２００’の後端に位置する空間部２１２’に嵌まり込むと共に、ステップ部４８２’は、ホルダー２００’の後端を規定する壁部２１４’に当接している（図２６（ｂ）および２７（ｂ）も併せて参照のこと）。

従って、図３４（ｆ）および図３５（ｆ）に示す状態において、ホルダー２００’に対してトリガー部材４００’を前方に移動させようとしても、再使用防止ウイング４２４’が突起２１８’に当接するため、トリガー部材を前方に移動させることができない。また、図３４（ｆ）および図３５（ｆ）に示す状態において、ホルダー２００’に対してトリガー部材４００’を後方に移動させようとしても、トリガー部材のステップ部がホルダーの壁部に当接するため、トリガー部材４００’は後方に移動することができない。

従って、一旦図３４（ｆ）および図３５（ｆ）に示す状態になると、ホルダー２００’に対するトリガー部材４００’の位置関係を実質的に変えることはできないので、ランセットボディ１３０’を後退させたとしても、トリガー部材のアーム部は広がったままであり、よって、トリガー部材の係合部４２１’とランセットボディの係合部１３１’との係合関係を再形成することは不可能である。その結果、一旦使用した、穿刺針の先端部が突出しているランセットボディを再度使用して穿刺することはできない。これにより、使用済み穿刺針が再使用される虞がなく、衛生面や安全性の点でも望ましいものとなる。このような再使用防止機構を有するデバイスの態様から、Ｂタイプのランセット穿刺デバイスも、Ａタイプと同様、「シングル・ユース・デバイス」と称すことができる。

［Ｃタイプのランセット穿刺デバイス］
《ランセット穿刺機構の基本的構成》
（基本構成）
図３６〜図３８は、Ｃタイプのランセット穿刺デバイス５００”を示している。図３６および図３７はＣタイプのランセット穿刺デバイス５００”の外観図を示しており、図３８はＣタイプのランセット穿刺デバイス５００”の分解図・展開図も併せて示している。図３８に示すように、本発明に係るランセット穿刺デバイス５００”は、「ランセット１００”」、「射出バネ３００”」、「ホルダー（特にランセットホルダー）２００”」および「トリガー部材４００”」から主に構成されている。図３９は、Ｃタイプのランセット穿刺デバイスを構成するホルダー２００”を示し、図４０および４１は、Ｃタイプのランセット穿刺デバイスを構成するトリガー部材４００”を示し、図４２は、Ｃタイプのランセット穿刺デバイスを構成するランセット１００”を示している。

ホルダー２００”の上側半分を切除した状態のＣタイプのランセット穿刺デバイス５００”を図４３に示す。かかる図４３に示すように、ランセット穿刺デバイス５００”は、ホルダー２００”内にランセット１００”、射出バネ３００”およびトリガー部材４００”が収容された構造を有している。具体的には、図４３に示すように、ランセット１００”の後端１３３”とトリガー部材４００”の後端４５１”との間において射出バネ３００”が挟み込まれるように、射出バネ３００”がホルダー２００”内に収容されている。更に具体的には、図４３に示すように、ホルダー２００”内においては、射出バネ３００”の一方の端部が、ランセット１００”の後端１３３”に取り付けられていると共に、射出バネ３００”の他方の端部がトリガー部材４００”の嵌合部４５０”に取り付けられている。ＡタイプおよびＢタイプと同様、ホルダー２００”内の射出バネ３００”は、「ランセット１００”」と「トリガー部材４００”の後端の嵌合部４５０”」との間で圧縮された状態となっている。特に本発明のランセット穿刺デバイス５００”では、ランセットボディ１３０”に取り付けられた射出バネ３００”が圧縮された状態となるように、トリガー部材４００”のアーム部４２０”に対してランセットボディ１３０”が係止している。尚、かかる係止に関与する「ランセットボディ１３０”の係止部１３１”」および「トリガー部材４００”のアーム部４２０”の被係止部４２１’」については、図４０（ａ）および図４２（ａ）も参照されたい。

図３６、図３８および図４３に示す態様から分かるように、Ｃタイプのランセット穿刺デバイス５００”においては、トリガー部材４００”の後端の押圧部４７０”のみがホルダー２００”の後端開口部２７０”（特に図示するような後方開口端）から外向きに突出するように、トリガー部材４００”が全体としてホルダー２００”内に配置されている。また、図３６または図４３に示す態様から分かるように、ランセットキャップ１７０”についていえば、その前方部分１７５”がホルダーの前端開口部２０３”から外向きに突出している。かかるランセットキャップ態様では、前方部分１７５”の側方に設けられた対部分１７５ａ”がホルダーの前端開口部２０３”に隣接しており、および／または、ランセットキャップの前方部分１７５”の他の部分（特に対部分１７５ａ”の間のキャップ中央領域１７５ｂ”）がホルダーの前端開口部２０３”（即ち、穿刺開口部）に隣接しており、それによって、ランセット１００”がホルダー２００”に対して後方に移動できないようになっている。

以上のようなＣタイプのランセット穿刺デバイスでは、ランセットキャップがランセットから取り外されると、トリガー部材を前方に押し込むことができる。具体的には、トリガー部材４００”の後端の押圧部４７０”に対して外力が加えられることに起因して、トリガー部材４００”がホルダー２００”に対して前方へと移動するようにトリガー部材をホルダー内部へと押し込むことができる。

Ｃタイプのランセット穿刺デバイスの組み立ては、ＡタイプおよびＢタイプと実質的に同様である。つまり、射出バネ３００”が圧縮された状態で保持されるように、ランセット１００”、射出バネ３００”、ホルダー２００”およびトリガー部材４００”が相互にアッセンブリされることによって穿刺デバイスが得られる（図３８または図４４参照）

以下ではＣタイプのランセット穿刺デバイス５００”の各構成要素について説明していく。

（ホルダー）
図３９に、Ｃタイプの穿刺デバイスを構成するホルダー２００”の好ましい態様を模式的に示す。図示するように、ホルダー２００”は全体としては筒状であり、穿刺方向に対して垂直な断面は実質的に矩形である。

図３９（ｂ）および図３９（ｃ）に示すように、ホルダー２００”の側方の内壁にスロープ部２５０”が設けられている。このスロープ部２５０”は、前方に向かってホルダーの外側向きに（外向きに）傾斜するスロープ面２５０ａ’を有している。図示した態様では、このスロープ部は、ホルダーの両側の側面の上側と下側に設けられている（下側のスロープ面のみ図示）。後述するように、かかるスロープ面２５０ａ”上をトリガー部材のアーム部４２０”の一部分が滑動または擦動することになる。具体的には、ホルダー２００”に対してトリガー部材４００”を前方に移動させると、アーム部４２０”の自由端がスロープ面２５０ａ”上を後方から前方に向かって滑動または擦動し、その結果、アームが自動的に外向きに広がる。

ホルダー２００”は、スロープ部２５０”の前方側に突起（凸部）２１８”を有している。後述するように、この突起２１８”は、トリガー部材４００”の抜け出し防止ウイング４２６”または再使用防止ウイング４２４”と協働して、使用前のトリガー部材４００”のホルダー２００”からの抜け出し防止に寄与し、また、使用後にあっては、「トリガー部材４００”をホルダー２００”に対して後方に移動させて穿刺可能状態に戻ること」を未然に防止する。

ＡタイプおよびＢタイプと同様、ホルダー２００”の形態は、図示した態様に限定されるものではなく、トリガー部材、射出バネおよびランセットを収容でき、また、上記スロープ部および上記突起を有する限り、いずれの他の適当な形態であってもよく、例えば円筒の形態であってもよい。ホルダー２００”は、一般的なランセットに用いられる樹脂材料であれば、いずれの適当な樹脂材料から形成してもよい。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂から形成するのが特に好ましい。

（ランセット）
図４２に、Ｃタイプのランセット穿刺デバイスを構成するランセットの好ましい態様を模式的に示す。図示するように、ランセット１００”は、ランセットキャップ１７０”およびランセットボディ１３０”を有して成る。これらは、その間に位置する弱化部分１０８”によって一体に接続され、また、これらの間に跨って穿刺針１５０”（（図４２（ｃ）参照）が延在している。穿刺針の先端部１５０ａ”は、ランセットキャップ１７０”によって覆われ、穿刺に際して弱化部分１０８”を破壊してランセットキャップを除去することによって、針先端部１５０ａ”がランセットボディ１３０”の前端面１３６”から前方に向かって突出した状態が得られることになる。

ランセットボディ１３０”は、トリガー部材のアーム部に対する係止に供する係止部を有している。つまり、トリガー部材の被係止部に係合できる係合部１３１”（例えばステップ状部または角状部）をその両側の側方に有している。また、ランセットボディ１３０”は、射出バネ３００”の前端部が係合できる突起１３８”を後方部分１３３”に有している。

ランセットキャップ１７０”は、穿刺針の先端部１５０ａ”を覆う部分を含む後方部分１７２”およびその前方に位置する前方部分１７５”を有している。後方部分１７２”の後端部は、穿刺針の先端部を包囲すると共に、弱化部分１０８”を介してランセットボディ１３０”の前端面に対向している。ランセットキャップの前方部分１７５”は、その側方に対部分１７５ａ”を備えている。より具体的には、ランセットキャップの前方部分１７５”は、両側にて後方に突出する対部分１７５ａ”を有し、また、かかる対部分の間には、その他の部分として中央部１７５ｂ”を有している。ホルダー２００”、トリガー部材４００”、ランセット１００”および射出バネ３００”が組み立てられた状態にあるＣタイプのランセット穿刺デバイスでは、対部分１７５ａ”および／または中央部１７５ｂ”が、ホルダー２００”の前端開口部２０３”に隣接するか、あるいは、わずかな隙間を介して前端開口部２０３”と対向している。それゆえ、ホルダー２００”に対してランセット１００”を後退させようとしても、対部分１７５ａ”および／または中央部１７５ｂ”が、ホルダー２００”の前端開口部２０３”を規定する壁に当接し、その結果、更に後退させることはできないようになっている。

図示する態様では、ランセットキャップ１７０”の前方部分１７５”は、その前方端部がフラットな形態であり、その部分を使用者が指で摘まんで穿刺針の周囲でツイストまたは回転させることによって、弱化部分１０８”を破壊できるようになっている（つまり、このように指で摘める部分が“把持部”である）。このような破壊を容易ならしめるために、ランセットボディ１３０”は、ホルダーおよびトリガー内に位置できるが、穿刺針の周囲で回転できない全体として角柱形態とする一方、ランセットキャップ１７０”の後方部分１７２”はホルダーの円筒形状の前端部２０３”内で回転できる円柱形態とすることが好ましい。これにより、ホルダーを保持した状態でランセットキャップを摘まんでツイストすると、ランセットボディは回転しないが、ランセットキャップは回転できるので、弱化部分１０８”が破壊される。

（トリガー部材）
図４０および４１に、Ｃタイプの穿刺デバイスを構成するトリガー部材の好ましい態様を模式的に示す。図示するトリガー部材４００”は、穿刺前の穿刺デバイスの状態において、その中央部にランセット１００”および射出バネ３００”を収容する空間部４０６”を有している。かかる空間部は、全体としては底部を有する箱の形態となっていることが好ましい。

トリガー部材４００”は、その両側の側方にて後方に向かって延在する一対のアーム部４２０”を有している。図４０および４１に示すように、対のアーム部４２０”の各々は、その前方端が固定端を成す一方、その後方側が自由端を成している。かかるアーム部４２０”は、全体として可撓性を有していることが好ましい。各アーム部４２０”は、その内側に、ランセットの係止部１３１”が係合できる係合部４２１”（例えばランセットボディの係止部１３１”が係止できるステップ状部または角状部を成す被係止部）を有している。図示する態様では、各アーム部４２０”は、係合部４２１”の上側および下側に滑動部４２２”を有している。Ｃタイプのランセット穿刺デバイスは、ホルダー２００”に対してトリガー４００”を前進させると、滑動部４２２”がホルダー内壁に設けたスロープ部２５０”上、詳しくはそのスロープ面２５０ａ”上を滑動または擦動するように構成されている。このように滑動・擦動する結果、図４０（ａ）および図４１（ａ）にて矢印にて示すように、アーム部４２０”はその前方の付け根付近（即ち、固定端）を支点として外向きに広がることになる。

図示するように（特に図４０（ａ）および４１（ａ）に示すように）、トリガー部材４００”は、その側壁面の外面（特に前方側に位置する側壁面の外面）に、突起状またはアーム状の形態の再使用防止ウイング４２４”を有すると共に、その前方側に突起状またはアーム状の形態の抜け出し防止ウイング４２６”を有している。これらのウイング（４２４”、４２６”）は、ホルダー２００”の両側の側方内壁に設けた突起２１８”と協働することによって、それぞれの機能を果たすことになる。尚、ホルダーの内壁に設けられた突起２１８”についていえば、図３９（ｃ）に示すように、その後方部が後ろに向かって外向きに広がる傾斜面２１７’（即ち、テーパー面）を有するのが好ましい。

図３９（ｃ）に示すように、ホルダーの突起２１８”はその前方端面２１９”が、図示するように穿刺方向に対して垂直またはそれに近い角度で延在するのが好ましい。その結果、デバイスの組み立てに際して突起２１８”を一旦乗り越えてその前方に移動したトリガー部材のウイング４２６”は、突起２１８”を乗り越えて後方に移動することはできない。即ち、使用前の穿刺デバイスにおいて、トリガー部材４００”の抜け出し防止ウイング４２６”は、ホルダー２００”の突起２１８”の前方に位置し、その結果、ホルダー２００”に対してトリガー４００”を後方へと移動させることができず、従って、ホルダー２００”からのトリガー部材４００”の抜け出しが効果的に防止される。

一方、Ｃタイプのランセット穿刺デバイスの使用後にあっては、抜け出し防止ウイング４２６”の後方側の再使用防止ウイング４２４”が、上述の乗り越えと同様に変形してもとの形状に回復した結果、ホルダー２００”の側方内壁に設けた突起２１８”を乗り越えた後の状態となる。その結果、ホルダー２００”に対してトリガー４００”を後方へと移動させることができず、従って、ホルダー２００”とトリガー部材４００”との位置関係を穿刺前の状態に戻すことはできない。その結果、開いた状態のトリガー部材のアーム部を閉じることができず、従って、トリガー部材の係合部４２１”は、ランセットボディの係合部１３１”に再度係合できない。これは、一旦使用したランセットボディを再度チャージ状態にして穿刺に用いることはできないことを意味している。このようなこのようなウイング４２４”および４２６”の変形および元の形状の回復は、トリガー部材４００”を樹脂（例えばポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂）によって形成し、その弾性を利用することによって容易に達成できる。よって、これらのウイングは、全体として可撓性を有していることが好ましいといえる。

尚、トリガー部材４００”は、バネ取付け部４５０”を有して成るが、かかるバネ取り付け部が、ランセット穿刺デバイスの組立てに際して好適に機能し得る。これはＡタイプとＢタイプと同様である。念のため説明しておくと、図２２に示すように、トリガー部材のバネ取付け部４５０”が自由端と固定端とを有する湾曲形態の長尺部材から成っており、その形態ゆえに、ランセット穿刺デバイスの組立て（即ち、射出バネ３００”の取り付け）が効果的に助力される。つまり、バネ取付け部４５０”が図２２で示すように例えば釣針形態やＵ字状形態などのフック形態を有していると、バネ取付け部４５０”が内側へと容易に撓むことができ（図２２（ａ）および（ｂ）参照）、射出バネのコイルへの係合が効果的に助力され得る。かかるバネ取付け部４５０”は、外向きに突出する突起４５０ａ”を有していることが好ましい（特に図２２（ａ）に示すように自由端側に第１突起４５０ａ_１”と固定端側に第２突起４５０ａ_２”とが設けられていることが好ましい）。かかる場合、射出バネ３００”のコイル径が一旦大きくなって突起４５０ａ”を乗り越えた後に元の径に戻ると、射出バネ３００”とバネ取付け部４５０”との嵌合は容易に解除できないようになる（図２２（ａ）〜（ｃ）参照）。尚、図４４には、参考のため、穿刺デバイス組立て時における射出バネ３００”およびバネ取付け部４５０”の態様をデバイス全体の組立て態様と併せて示しておく。

（射出バネ）
射出バネ３００”は、ＡタイプとＢタイプと同様、ランセット、より詳しくは穿刺針の先端部が露出したランセットボディの“射出”ないしは“発射”に用いる。換言すれば、射出バネ３００”は、穿刺針１５０”、即ち、「先端部が露出した穿刺針を備えたランセットボディ」に対して発射または穿刺のための推進力を与えるバネ（例えばコイルバネ）である。

（トリガー部材の押し込み防止機構）
次に、Ｃタイプのランセット穿刺デバイスの“トリガー部材の押し込み防止機構”について説明する。Ｃタイプのランセット穿刺デバイスであっても、ＡタイプおよびＢタイプと同様、ランセットキャップの把持部以外の部分が、ホルダーとの相互作用に起因してトリガー部材の押込みを防止する作用を奏している。特に、Ｃタイプのランセット穿刺デバイスは、図４０および図４１（特に図４０（ｂ））に示すようにトリガー部材４００”がその本体の側面４３０”に可撓性部材（または可撓部分）４９０”を備えており、その可撓性部材４９０”が、「ランセットキャップの把持部以外の部分」および「ホルダー」と協働する特徴を有している。

図示されるように、かかる可撓性部材４９０”は、トリガー側壁面と一体的に設けられていることが好ましく（それゆえ、トリガー部材と一体成形されているものであってよい）、前方側に自由端および後方側に固体端を備えた長尺形態を有していることが好ましい。そして、図示されるように、可撓性部材４９０”は、側壁面を成す平面と実質的に略面一に設けられているものの、少なくとも一部（特に自由端部）はその側壁面から外側に僅かに突出していることが好ましい（特に図４１（ｃ）参照）。尚、「可撓性部材４９０”」にいう「可撓性」とは、かかる部材４９０”が内部方向（即ち、トリガー部材の内側）へと変位できる態様を指しており、特に、その自由端部が内側に向かって動くことができる態様を指している。

図４５（ａ）に示すように、ランセットキャップ１７０”がランセットから取り外される前の状態では、ランセットキャップの本体部１７２”（即ち、穿刺針の先端１５０ａ”を包囲している部分）とホルダーの壁部２９０”との間に、トリガー部材の可撓性部材４９０”が位置している。特に、図示されるように、トリガー部材の可撓性部材４９０”は、ホルダーの壁部２９０”に設けられた凹部２９５”に収納されるように位置付けられることが好ましい（「凹部２９５”」については、図３９（ｂ）も併せて参照のこと）。ここで、可撓性部材４９０”と凹部２９５”とは全体として略相補的な形状を有していることが好ましく、それゆえ、可撓性部材４９０”が長尺形態を有する一方、凹部２９５”が溝形態を有することが好ましい。

ランセットキャップ１７０”がランセットから取り外される前の状態では、外からの押圧によりトリガー部材をホルダー内部へと押し込もうとしても（即ち、トリガー部材をホルダーに対して前方へと移動するように押し込もうとしても）、トリガー部材１７０”の可撓性部材４９０”がランセットキャップの本体部１７２”とホルダーの壁部２９０”との双方に当接し、それによって、トリガー部材をホルダー内部へと押し込むことができない状態となっている。より具体的には、外からの押圧によりトリガー部材を前方に向かってホルダー内部へと押し込もうとしても、図４５（ａ）に示すように、トリガー部材の可撓性部材４９０”が「ランセットキャップの本体部１７２”の側壁面１７２ａ”」と「ホルダーの壁部２９０”の溝形態凹部２９５”の壁面２９５ａ”」との双方に当接するので（特に、撓性部材４９０”が「キャップの本体部１７２”の側壁面１７２ａ”」と「溝形態凹部２９５”の壁面２９５ａ”」との間で挟まれた状態で保持されるので）、トリガー部材４００”をホルダー内部へと押し込むことができないようになっている。このことは、ランセットキャップが取り付けられた状態では、ランセットボディの係止解除・係合解除ができないこと、即ち、穿刺針が発射されることがないことを意味している。その一方で、図４５（ｂ）に示されるようにランセットキャップを取り外すと、可撓性部材４９０”の移動スペースが生まれ、その結果、外側からの押圧に対してトリガー部材をホルダー内部へと押し込むことができるようになる。より具体的には、ランセットキャップがランセットから取り外された状態では、トリガー部材がホルダーに対して前方へと押圧されると、可撓性部材４９０”が溝形態凹部２９５”の前方スロープ部２９５ｂ”に滑動または擦動されつつ撓み（押圧される可撓性部材４９０”に起因した溝部壁面からの反作用の力でもって撓み）、その結果、可撓性部材４９０”が前方へと移動できるので、トリガー部材をホルダー内部へと押し込むことができる（図４５（ｂ）参照）。従って、「ランセットボディ１３０”の係止部１３１”」と「トリガー部材４００”のアーム部４２０”の被係止部４２１”」との係止が解除され、穿刺針１５０”が発射される（図４５（ｃ）参照）。

次に、図４６（ａ）〜（ｅ）の上面図および図４７（ａ）〜（ｅ）の斜視図を参照して、Ｃタイプの穿刺デバイス５００”を用いて対象部位を穿刺する過程を順に説明する。

まず、図４６（ａ）および図４７（ａ）に示した状態のＣタイプのランセット穿刺デバイス５００”のホルダー２００”を保持した状態で、ランセットキャップ１７０”をツイストすることによってランセットの“弱化部分”を破壊する。この際、ランセットキャップ１７０”を、図４６（ｂ）および図４７（ｂ）にて矢印で示すように、ランセットボディ１３０”から遠ざけて、穿刺針の先端部１５０ａ”がランセットボディから前向きに突出した状態とする。図４６（ｂ）および図４７（ｂ）に示すように、穿刺針の先端部１５０ａ”が突出したランセットボディ１３０”は、係止部１３１”と被係止部４２１”との係合関係によってトリガー部材４００”の内部空間部４０６”内に確実に保持されている。

次に、図４６（ｂ）および図４７（ｂ）に示す状態のランセット穿刺デバイス５００”において、突出している穿刺開口部、即ち、ホルダーの前端開口部２０３”に穿刺すべき対象部位をあてがう。

その後、図４６（ｃ）および図４７（ｃ）に示すように、トリガー部材の後端の押圧部４７０”に対して前方へと外力を加える。即ち、ホルダー２００”に対してトリガー部材４００”を前進させるような力を加える。

トリガー部材４００”をホルダー２００”に対して前進させると、アーム部４２０”の滑動部４２２”がホルダー２００”の側方内壁に設けたスロープ部２５０”上を前方に移動する。スロープ部２５０”は、前方に向かってホルダーの外側に近づくスロープ面を有するので、トリガー部材４００”が前方に移動するにつれて、滑動部４２２”は前方外側（詳しくは斜め前方外側）へと移動する。滑動部４２２”はアーム部４２０”の一部分であるので、全体としてのアーム部４２０”も同様に前方外側へと移動する。即ち、トリガー部の押し込みに伴って、アーム部４２０”が外側に自動的に広がることになる。

アーム部４２０”が外側に広がると、その係合部４２１”も外側に移動し、その結果、ランセットボディの係合部１３１”との係合関係を維持することが不可能となる。即ち、係合状態が解除される。係合状態が解除されると、「圧縮された射出バネ３００”が伸張しようとすることによるランセットボディ１３０”の前方への移動」を阻止するものが無くなるので、先端部が突出しているランセットボディ１３０”は瞬間的に前方に移動する（図４６（ｄ）および図４７（ｄ）参照）。

射出バネ３００”は圧縮されていた状態から一瞬のうちに伸張するので、射出バネ３００”の元の形状（即ち、力が実質的に作用していない場合のバネの形状）よりも伸び、穿刺針の先端部１５０ａ”の少なくとも一部分がホルダーの前端開口部２０３”から突出する。前端開口部２０３”には対象部位があてがわれているので、突出する先端部は対象部位に突き刺さることになる。尚、ホルダー２００”の前端開口部２０３”を形作るホルダー内壁面２３２”にランセットボディの一部分（図示した態様では係合部１３１’）が衝突して、ランセットボディ１３０”の前進は止められるように構成されている（図４６（ｄ）および図４７（ｄ）参照）。

図４６（ｄ）および図４７（ｄ）に示す状態では、上述のように射出バネ３００”は元の形状よりも伸びた状態にあるので、ランセットボディの前進が止められた瞬間、内壁面２３２”における反作用によってランセットボディは後方に移動し始めることになり、射出バネ３００”は最終的には元の形状に戻る。そのように元の形状に戻った様子を図４６（ｅ）および図４７（ｅ）に示す。

ここで、ホルダー２００”に対してトリガー部材４００”を押圧して前進させたことによって、トリガー部材の再使用防止ウイング４２４”は、ホルダーの側方内壁に設けた突起２１８”を乗り越えて前方に移動している。従って、図４６（ｅ）および図４７（ｅ）に示す状態において、ホルダーに対してトリガー部材を後方に移動させようとしても、再使用防止ウイング４２４”が突起２１８”に当接するため、トリガー部材を後方に移動させることができない。

従って、一旦図４６（ｅ）および図４７（ｅ）に示す状態になると、ホルダーに対するトリガー部材の位置関係を実質的に変えることはできないので、ランセットボディ１３０”を後退させたとしても、トリガー部材のアーム部は広がったままであり、よって、トリガー部材の係合部４２１”とランセットボディの係合部１３１”との係合関係を再形成することは不可能である。その結果、一旦使用した、穿刺針の先端部が突出しているランセットボディを再度使用して穿刺することはできない。これにより、使用済み穿刺針が再使用される虞がなく、衛生面や安全性の点でも望ましいものとなる。このような再使用防止機構を有するデバイスの態様から、Ｃタイプのランセット穿刺デバイスも、ＡタイプおよびＢタイプと同様、「シングル・ユース・デバイス」と称すことができる。

以上、本発明の実施形態について説明してきたが、あくまでも典型例を例示したに過ぎない。従って、本発明はこれに限定されず、種々の態様が考えられることを当業者は容易に理解されよう。例えば以下の態様が考えられる。

● 上述の態様で参照した図面では、穿刺針（１５０、１５０’、１５０”）は、最先端が尖った“針形態”を有するものであったが、必ずしもかかる形態に限定されない。例えば、穿刺針（１５０、１５０’、１５０”）は、先端部の一側面が鋭利になった“ブレード形態（blade）”であってもよい。

● また、本発明のランセット穿刺デバイスは、Ａタイプ、ＢタイプおよびＣタイプで示されたような外観に限定されるものではなく、種々の外観で実現することができる。例えば図４８および図４９で示されるような外観で本発明のランセット穿刺デバイスを実現することができる。図４８および図４９に示す態様では、フランジ状または鍔状の突出部２９０'''がホルダーの外面に設けられている。かかるフランジ状または鍔状の突出部２９０'''は、特にＢタイプの穿刺デバイスなどで“押印操作”によって穿刺を行う際に好適なグリップ力を供する作用を奏する。つまり、突出部２９０'''によって、図示するＧ部分を指で摘んだ際に指がホルダー外面上を滑ることなく確実にホルダーを把持することができ、その結果、「穿刺すべき所定の部位」に対して穿刺デバイスを効果的に押さえ付ける操作を行うことができる。また、このようなフランジ状または鍔状の突出部２９０'''では、ホルダーを把持する際に適所なポジションへと指を案内できるグリップ位置決め効果も奏されることになる。つまり、ホルダーに対する指の接触感覚にのみ頼ってホルダーを把持する場合であっても、鍔状の突出部２９０'''が指と触れることで、把持すべきポジションを間接的に把握することができる。
このようなフランジ状または鍔状の突出部２９０'''は、ホルダー（特にホルダー壁部）と一体成形によって設けてよく、ホルダーの原料樹脂と同じ樹脂から成るものであってよい。特に本発明ではフランジ状または鍔状の突出部２９０'''が、人間工学的な見地から設けられており、例えば図４８に示す突出部２９０'''の突出角度αは、好ましくは１０°〜９０°、より好ましくは３０°〜６０°、例えば約４５°となっている。また、同様の見地から、突出部２９０'''が、ホルダーの前方側外面に設けられており、例えば穿刺開口端から約１０ｍｍ〜約２０ｍｍ離れた位置（例えば約１５ｍｍ離れた位置）に設けられている。また、突出部２９０'''の後方側面に対して指がより好適にフィットするように、突出部２９０'''またはその後方側面にアール（Ｒ）が付けられていてよく、例えば５０Ｒや２０Ｒなどのアールが付けられていてよい。
ちなみに、図４８および図４９で示すように、ホルダー壁には、ホルダー内部を外側から目視できるウインドウ（ウインドウ開口部）２９９'''が設けられていてよい。特に、図示するような位置においてウインドウ（ウインドウ開口部）２９９'''が設けられている場合では、ランセットキャップを取り外すと、ランセットの穿刺針が見えるようになる。つまり、穿刺前・発射前のデバイスにおいてはウインドウ（ウインドウ開口部）２９９'''を介して外側から穿刺針を見ることができるようになっている。その一方、穿刺後・発射後のデバイスにおいては、射出バネ（特に係止解除された圧縮されていない射出バネ）に起因してランセットボディが全体として前側に位置しているので、ウインドウ（ウインドウ開口部）２９９'''を介して外側からランセットボディを見ることができるようになる。つまり、使用者にとってみれば、ウインドウ２９９'''から見えるものが「穿刺針」であるか、或いは「ランセットボディ」であるかによって、“穿刺前”か“穿刺後”であるかを容易に判別することができる。

本発明のランセット穿刺デバイスは、コンパクトであり操作性に優れているだけでなく、衛生面や安全性にも優れたものである。従って、糖尿病患者の採血に使用できることは当然のこと、その他の採血を必要とする各種用途においても好適に本発明のランセット穿刺デバイスを利用することができる。

関連出願の相互参照

本出願は、日本国特許出願第２００９−２３３４２８号（出願日：２００９年１０月７日、発明の名称：「ランセット穿刺デバイス」）および日本国特許出願第２００９−２４１３８５号（出願日：２００９年１０月２０日、発明の名称：「穿刺デバイス」）に基づくパリ条約上の優先権を主張する。当該出願に開示された内容は全て、この引用により、本明細書に含まれるものとする。

Claims (1)

1. ランセット、射出バネ、トリガー部材およびそれらを収容するホルダーから成るランセット穿刺デバイスであって、
   トリガー部材の後方側内壁に設けられたバネ取付け部に対して射出バネが取り付けられており、
   バネ取付け部が、自由端と固定端とを有する長尺部材が湾曲して成るフック形態を有しており、また
   フック形態の長尺部材の自由端側に第１突起が設けられている一方、フック形態の長尺部材の固定端側に第２突起が設けられていることを特徴とする、ランセット穿刺デバイス。