JP5594670B2 - 液−液界面を利用する被覆型複合物質の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、被覆型複合物質を製造する方法に関する。
医薬品、化粧品など様々な分野で利用される粉体を使った材料の特性は、粉体の形状、粒子径および粒子径分布によって非常に大きな影響を受ける。そのため、材料に所望の機能を発揮させるためには、個々の粒子の形態を精緻に制御することが重要となってくる。
粒子生成方法のなかでも晶析法は、目的の特性を持った結晶を再現性よく製造できる技術として注目されており、これまでにも研究がなされてきた。この晶析法は、過飽和状態で起こる核発生や結晶成長を利用して気相や液相から結晶を析出させる操作であり、粒子生成過程での形態制御が可能である。しかし、冷却法、蒸発法のような晶析法では、加熱、冷却操作により溶液内を過飽和状態にさせ結晶を得ることが一般的であり、熱エネルギーが必要である。また系内の温度の制御は非常に困難であり、そのため粒子形態がばらつくといった問題がある。
さらに貧溶媒法では、溶媒添加時に生成する局所的な高過飽和により、得られる結晶は様々な形状を有し粒子径がばらつくといった問題がある。
一方、本発明者は、各種物質の溶液から、特別な加熱や冷却手段を使用しなくとも、簡単に表面積の大きな結晶を得る方法として、液−液界面を利用する結晶析出方法を提案している(特許文献1参照)。
前記液−液界面晶析法は、相互溶解する2溶媒A、Bを接触させ、その液−液界面上で結晶を析出、成長させる晶析法である。結晶化物質は溶媒Aにのみ溶解するものを選択する。このように2液を接触させると、相互溶解度曲線にしたがって溶液A’の溶媒Aが溶媒Bへ移動することで界面近傍では溶媒が減少し、同時に溶媒Bが溶媒Aに溶解することで結晶化物質の溶解度が低下することから過飽和度が高くなり液―液界面上で結晶化物質を析出させ、成長させることができる。
この液−液界面晶析法によれば、従来の晶析法の操作とは異なり、結晶化に際し熱エネルギーを用いないため、常温・恒温で操作が可能である。また、結晶の析出場を界面に限定するため、系内の過飽和度が比較的均一になり、連続的に結晶を成長させることができるという利点を有する。
しかし、特許文献1の方法では、2液の界面形状を制御することが難しいため、粒子形態の制御が難しく、また、析出した結晶の形態を保持して回収することが困難であった。
特開2006−281193号公報
したがって、本発明は、穏和な条件下および簡易な工程にて、物質の大きさや形態を制御できる方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、前記課題を解決するために研究を重ねた結果、
溶質Sを溶媒Aに高濃度に溶解してなる溶液A’と、
前記溶媒Aに対して親和性を有するが混和性が低く、且つ、前記溶質Sを実質的に溶解しない溶媒Bと、
前記溶媒Aおよび溶媒Bのいずれにも溶解しない担体C
とを用意し、
前記担体Cの表面を溶液A’で被覆した後、当該担体Cの被覆表面を溶媒Bと接触させることにより、前記担体Cの表面上に、前記溶質Sを晶析させることにより、前記課題を解決することに成功した。
本発明の方法によれば、担体Cの表面を溶液A’で被覆した後、当該被覆表面を溶媒Bと接触させるため、担体Cの表面形状に沿って2液間の界面を形成することができる。そして、担体Cの表面に付着した溶液A’の溶媒Aが、溶媒Bに溶解するに伴って、溶質Sを析出させ、結晶として成長させ、その結果、前記担体Cの表面を、晶析した溶質Sにより被覆することができ、有用物質からなる表層を有する担体(被覆型複合体)を製造することができる。そのため、任意の形状およびサイズに作製した担体を用いることにより、単独では形態を制御しにくい物質であっても、任意の形状とサイズを持ち、表面が当該物質からなる複合体を得ることができる。
また当該方法は、物質のコーティング方法としても有用である。特に、当該方法は、常温で実施することができるため、熱に弱い物質であっても、担体上に晶析させて担体をコーティングすることができる。さらに、一般に、無機物質を有機物質でコーティングすることは難しいとされているが、本発明によれば、無機物質/有機物質からなる被覆型複合体であっても容易に製造することができる。
また、前記溶液A’で被覆された状態の前記担体Cを、前記溶媒Bに噴霧する方法によれば、当該担体Cの被覆表面全体を溶媒Bと効率よく接触させることができる。
特に、前記担体Cを分散させた溶液A’を、前記溶媒Bに噴霧する方法が好ましい。この方法によれば、担体Cを溶液A’に分散させることで、担体Cの表面を溶液A’で効率よく濡らす(被覆する)ことができ、また、担体Cを溶液A’ごと溶媒Bに噴霧すればよいため、操作が簡便である。この方法によれば、100μm以下の微細な被覆型複合体であっても、効率よく製造することができる。
また、前記溶質Sが結晶多形を有する物質である場合、準安定形および/または不安定形の結晶形として晶析させることが可能である。物質が結晶多形を有する場合、結晶形によって、結晶の融点や溶解度のような物理的・化学的性質は異なるため、多形転移を制御することは非常に重要となる。本発明によれば、結晶多形を有する物質を、不安定形もしくは準安定形として晶析させることが可能である。
本発明によれば、簡単な工程および穏和な条件により、非常に微細な担体(平均粒子径100μm以下)であっても、その表面を被覆することができる。したがって、単独では形態を制御しにくい物質であっても、担体の形態を制御することにより、任意の大きさや形状を有し、表層が当該物質からなる複合体を製造することができる。また、本発明によれば、従来、複雑な工程や特殊な製造条件が必要とされていた、微細物質のコーティングや有機物による無機物のコーティングであっても、容易に実施することができる。
(A)は実施例に用いた実験装置を模式的に示す図であり、(B)は実験装置内のノズルの拡大断面図である。 実施例1で製造した被覆型複合粒子のSEM写真である。 実施例2で製造した被覆型複合粒子のSEM写真である。 実施例3で製造した被覆型複合粒子のSEM写真である。 実施例4で、平均粒子経5.71μmのシリカを用いて実験を行った際のSEM写真である。 実施例4で、平均粒子経30.9μmのシリカを用いて実験を行った際のSEM写真、および粒子径分布のグラフである。 実施例5で製造した被覆型複合粒子のSEM写真である。 XRDにより測定した、グリシンの結晶多形の測定結果である(実施例6)。 XRDにより測定した、グリシンの結晶多形の測定結果である(実施例7)。
本発明で使用される溶質Sは無機物質であっても有機物質であってもよい。有機物質の例として、グリシンやタウリンといったアミノ酸を挙げることができる。無機物質の例として、塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸二水素カリウムを挙げることができる。なお、例示した上記溶質と組み合わせて使用する溶媒としては、溶媒Aとして水、溶媒Bとして1−ブタノール、イソブチルアルコール、2−ブタノン等が好適である。
本発明にかかる溶媒Bは、溶媒Aと親和性があるが、溶媒Aと混和性が低い溶媒である必要がある。
溶媒Aと親和性がある溶媒とは、常温で溶媒Aにわずかでも溶解する溶媒を意味する。すなわち、溶媒Aに対する溶解度が1〜2wt%程度の溶媒でもよい。より好ましくは溶媒Aに対する溶解度が4.0wt%以上の溶媒を用いる。
溶媒Aと混和性が低いとは、溶媒Aと溶媒Bの互いへの溶解度が36wt%以下であることを意味する。
このように溶媒Aおよび溶媒Bとして、わずかに相互溶解するが本質的には混ざり合わない2液を用いることにより、被覆時に安定な液−液界面を形成することができ、均一な被覆が可能になる。
より具体的には、溶媒Aおよび溶媒Bとして、互いへの溶解度が2wt%〜36wt%程度の2溶媒を用いることが好ましく、溶解度が7wt%〜34wt%程度の2溶媒を用いることがさらに好ましく、溶解度が7.8wt%〜20wt%程度の2溶媒を用いることが特に好ましい。このような2溶媒の例として、水と1−ブタノール、水とイソブチルアルコール、水と2−ブタノン等の組合せが挙げられる。
また、溶媒Bについて、溶質Sを実質的に溶解しないとは、溶質の溶解度が8.6×10-2 mol/kg未満であることを意味する。
本発明で使用される担体Cは無機物質であっても有機物質であってもよい。粒子形態の制御を目的とする場合、所望の形態に制御しやすい物質が好ましく、例としてシリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3),ゼオライト等を挙げることができる。コーティングを目的とする場合は、所望の物質を担体に用いて当該方法を行うことができる。例えば、酸化鉄をコーティングして磁性複合粒子とし、細胞分離や診断用のキャリアに応用する、あるいは酸化チタンをコーティングして複合粒子とし、光触媒、顔料、紫外線防止材等へ応用する、あるいはフェライト(Fe2O3)を有機物でコーティングし、核磁気共鳴診断(MRI)用の造影剤として応用する、などを目的とする場合は、それぞれ酸化鉄、酸化チタン、フェライトを担体として用いればよい。
本発明の溶液A’において、溶質Sを高濃度に溶解したとは、飽和濃度の75%以上の溶質が溶解されていることを意味する。飽和濃度の90%〜100%の溶質が溶解されていることが好ましく、また、過飽和であってもよい。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
溶質Sとしてグリシンを、溶媒Aとして水を、溶媒Bとして1−ブタノール(以下単にブタノールと称する)を、担体Cとしてシリカ(SiO2)粒子を用いて実験を行った。また、図1Aに示す実験装置を使用した。
グリシン(溶質S)を水(溶媒A)に溶解してグリシン飽和水溶液(3.463mol/L:溶液A’)を調製した。この飽和水溶液に平均粒子径72.5μmのシリカ粒子(担体C)を10重量%(水溶液中のグリシン質量の10重量%:以下同じ)添加し、スターラーで撹拌して(撹拌条件300rpm)、シリカ粒子の全表面がグリシン飽和水溶液で濡れる(被覆される)ようにした。次に、このシリカ粒子を含むグリシン飽和水溶液(担体Cを分散状態で含む溶液A’)を図1Aに示すようにセットし、液体ローラポンプで吸い取り、ブタノール(溶媒B)200mlが入ったビーカーに、上部から噴霧した。図中に示すドラフターには、ノズルが設置されており、ノズルの先端で気体と液体を衝突させることによって微細な液滴を作製することができる。ノズルは、二流体(気体1+液体1)以上を流出させることにより、液滴を作製できるものであればよい。本実施例では、図1Bに示すように、円錐状にスリットが入っておりその円錐に沿って気体と液体が流れて先端で衝突するノズル(ペンシルノズル)を用いた。気体は図に示すエアコンプレッサーを通じ、ガス流量計によって流出速度を調節してノズルの内管に供給される。
本実施例では、気体の流出速度を20L/min、液体(担体Cを含む溶液A’)の流出速度を8ml/minに設定し、5秒間噴霧し、60秒間静置した後、ろ過装置によって固液分離を行った。
図2に、固液分離によって採取した固体の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を示す。写真から、グリシンで被覆されたシリカ粒子の存在が確認できた。
実施例1により、グリシン−シリカ複合粒子の作製が可能であることが分かったが、破損して当初の球形を保持していないシリカ粒子が散見された。複合物質の形態制御のためには、シリカ粒子の形態を保つことが重要であるため改良を試みた。考察の結果、シリカ粒子の破損は、水溶液を撹拌する際のスターラーにより生じた可能性があるため、撹拌方法をスターラーから波動式シェーカーに変更して実験を行った。波動式シェーカーにより、約傾斜角5°,100rpmで30分間撹拌を行った以外は、実施例1と同じ条件により実験を行った。
さらに、シリカ粒子を30重量%(水溶液中のグリシン質量の30重量%:以下同じ)添加した場合についても、同様に実験を行った。
図3に、固液分離によって採取した固体のSEM写真を示す。グリシンで被覆されたシリカ粒子の存在が確認できるとともに、シリカ粒子の破損が減少し、シリカ粒子の当初の形態を保有した球形被覆型複合粒子を多く作製することができることが分かった。またシリカの量が変化しても同じように被覆型複合粒子の作製ができることが分かった。
噴霧条件が複合粒子の作製に与える影響を調べるため、ノズルに供給する溶液A’(シリカ粒子含有グリシン飽和水溶液)の液体流出速度を2、4、6、8、10ml/minと変化させて実験を行った。シリカ粒子の添加量は30重量%とした。その他の条件は、実施例2と同一である。
図4に、各液体流出速度にて得られたシリカ粒子のSEM写真を示す。どの水溶液流速においても、グリシンで被覆された球形のシリカ粒子の存在が確認された。
担体の粒子径を制御することにより、複合粒子の粒子径を制御することができるかを調べるために、担体(シリカ)の平均粒子径を5.71μm、30.9μmの二種類に変更して実験を行った。シリカの添加量は10重量%で行なった。その他の実験条件は実施例2と同一である。なお、シリカ粒子の平均粒子径は、SEMによって測定した際の画像解析により算出したMartin粒子径である。
平均粒子径5.71μmのシリカを用いた際に得られた粒子のSEM写真を図5に示す。SEM写真から、グリシンはシリカ表面上で結晶化せず複合粒子が作製できていないことが分かった。また、粒子径分布を調べたところ、粒子径分布はシフトしていなかった。シリカの添加量を30重量%に変えて実験を行っても同じ結果が得られた。この原因は、生成したグリシン結晶に対してシリカ粒子が小さいため、グリシン結晶がシリカ上に存在するには不安定であったためと考えられる。SEM写真からも、グリシンはシリカ表面上に結晶化せずに個々に存在していることが分かる。
平均粒子径30.9μmのシリカを用いた際に得られた粒子のSEM写真と粒子径分布を図6に示す。SEM写真から、グリシンはシリカ表面に結晶化していることが分かる。また、粒子径分布は粒子径が大きい方向に約5μmほどシフトしていた。これらのことから平均粒子径30.9μmのシリカでは膜厚約2.5μmの複合粒子が作製できたことが分かった。
なお、平均粒子径30.9μmのシリカについて、添加量を30重量%とし、且つ、ノズルに供給するシリカ粒子含有グリシン飽和水溶液の液体流出速度を2、4、6、8、10ml/minで変化させて実験を行ったが、いずれの場合も被覆型複合粒子を作製することができた。
本実施例から、析出させる溶質に対し、ある程度以上の大きさを持つ担体(好ましくは、析出した溶質結晶の平均径に対し10倍程度以上の平均径を持つ担体)を用いたほうが、担体表面に溶質を析出させやすいと考えられる。しかし、ある程度以上の大きさがあれば、担体の大きさを変えることにより、作製する複合粒子の大きさを制御することができることが分かった。通常、平均粒子径20μm以上の担体であれば、十分被覆化できると考えられる。
水溶液濃度が複合粒子に及ぼす影響を調べるため、未飽和の6種の濃度のグリシン水溶液(0.866、1.299、1.731、2.164、2.597、3.030mol/L)を用いて実験を行った。シリカ(平均粒子径72.5μm)の添加量は各水溶液中のグリシン質量に対して30重量%とした。その他の実験条件は実施例2と同一である。
図7に、それぞれの濃度で作成した複合粒子のSEM写真を示す。図7から、グリシン濃度が上昇するにつれて、担体であるシリカが、結晶化したグリシンにより徐々に被覆されていることが分かる。2.597mol/L以上の濃度では、シリカ表面がほぼ全面被覆されていた。
さらに、平均粒子径30.9μmのシリカについて、未飽和の2種の濃度のグリシン水溶液(1.731、2.597mol/L)を用いて、複合粒子を作製した。シリカ添加量は10重量%とした。その他の実験条件は実施例2と同一である。
複合化の程度をSEM写真により観察した結果、1.731mol/Lでは複合化面積(被覆面積)が少なく、2.597mol/Lではシリカ表面がほぼ全面被覆されていることが分かった。
本実施例から、グリシン結晶は0.866mol/Lの濃度からでも析出することが分かったが、担体表面を均一に覆うためには、飽和濃度の約75%(2.597mol/L)以上とすることが好ましいと考えられる。
本実施例では、シリカの表面に析出させたグリシンの結晶多形をX線回折(XRD)により測定した。グリシン結晶には3種類の多形(α、β、γ)が存在し、その熱力学的安定性はγ>α>βの順となっている。したがって、グリシンの室温における熱力学的安定性は、γ形は安定形、α形は準安定形、β形はα形より安定性の低い準安定形である。β形は室温でα形やγ形に転移しやすいが低湿度ではβ形に保たれ、またα形は数ヶ月の期間でγ形に転移することが知られている。市販されているグリシンは通常γ形の結晶形を有する。
XRDの測定結果を図8に示す。溶媒に溶解する前のグリシン(試料)は最も安定なγ形のピークを示した(図8の一番上のデータ)。これに対し、飽和のグリシン水溶液を用いて、シリカの表面に析出させたグリシン結晶は、最も不安定なβ形のピークを示した(図8の一番下のデータ)。
さらに、ビーカーに入れたグリシン飽和水溶液(シリカ粒子なし)の液面に、ブタノールを静かに注いで、ブタノールとグリシン飽和水溶液を2層に保った状態で、両者の界面にグリシン結晶を析出させ、この結晶の多形をXRDで測定したところ、α形のピークを示した(図8の2段目のデータ)。
本実施例により、シリカ表面に析出させたグリシン結晶は、溶解前の最も安定なγ形から、最も不安定なβ形に変化していることが分かった。また、平面の液−液界面で析出した結晶形はα形であることから、同じ液−液界面を利用した結晶析出法であっても、噴霧によりシリカ粒子表面に析出させた結晶と、平面上の二層間に析出させた結晶では結晶形が異なることが分かった。
また、溶解前のグリシン試料およびグリシン−シリカ複合粒子を示差走査熱量測定(DSC)で測定し、グラフからそれぞれの融点を読み取ると、溶解前のグリシン試料は242℃となり、噴霧実験により作製したグリシン−シリカ複合粒子では227.6℃となった。このことからも、グリシンの多形変化が確認された。
グリシン水溶液の濃度が、シリカ表面に析出するグリシンの結晶形に与える影響を調べた。それぞれの濃度におけるXRD測定結果を図9に示す。図の8つのデータは、上から順に、溶解前のグリシン試料、並びに、0.866mol/L、1.299mol/L、1.731mol/L、2.164mol/L、2.597mol/L、3.030mol/L、3.463mol/L(飽和状態)の溶液を用いてシリカ表面上に析出させたグリシン結晶のデータを示す。未飽和状態の6種類の水溶液を用いて析出させたグリシン結晶はα形のピークを強く示す。しかし、濃度が高くなるにつれてβ形の混在が確認された。飽和状態である3.463mol/Lではほぼβ形のピークを示しているので、グリシン水溶液を未飽和の状態にすることでα形グリシンが結晶化することが分かった。
このことから、濃度を変化させるといった非常に簡単な操作で、シリカ表面に析出するグリシンの結晶形をコントロールできる可能性があることが分かった。
担体Cとして、直径1cm、厚さ1.5mmの円形のシリカ膜を作製した。また、グリシン(溶質S)を水(溶媒A)に溶解してグリシン飽和水溶液(溶液A’)を調製した。
このグリシン飽和水溶液に前記シリカ膜を30秒間浸漬してシリカ膜の表面をグリシン飽和水溶液で濡らした(被覆した)後、当該シリカ膜をビーカー内のブタノール(溶媒B)中に静かに落下させて浸漬し、60秒間静置後、固液分離した。
このシリカ膜のSEM写真を確認したところ、シリカ膜(担体C)上にグリシン(溶質S)が析出しており、噴霧した場合と同様、被覆複合化されていることが確認できた。
本実施例からも、担体の形態を変えることにより、任意の形態の被覆型複合物質を製造できることが確認できた。
上記の各実施例から、本発明を用いれば、室温で、かつ短時間で均一な被膜を有する複合体が製造できることが実証された。

Claims (7)

  1. 溶質Sを溶媒Aに高濃度に溶解してなる溶液A’と、
    前記溶媒Aに対する溶解度が2wt%〜36wt%であり、且つ、前記溶質Sを実質的に溶解しない溶媒Bと、
    前記溶媒Aおよび溶媒Bのいずれにも溶解しない担体C
    とを用意し、
    前記担体Cの表面を溶液A’で被覆した後、当該担体Cの被覆表面を溶媒Bと接触させることにより、前記担体Cの表面上に、前記溶質Sを晶析させることによって、
    担体Cの形状を有し、且つ、表層が溶質Sからなる被覆型複合物質を製造する方法。
  2. 前記溶液A’で被覆された状態の前記担体Cを、前記溶媒Bに噴霧することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  3. 前記溶質Sが結晶多形を有する物質であり、前記担体Cの表面上に晶析する溶質Sが、準安定形および/または不安定形の結晶形を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記担体Cの平均粒子径が20μm〜100μmであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記溶質Sがアミノ酸であり、前記溶媒Aが水であり、前記溶媒Bが1−ブタノール、イソブチルアルコールまたは2−ブタノンであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記担体CがSiOからなることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  7. 前記溶質Sがタウリンまたはグリシンであることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
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